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Department of Architecture,School of Science and Engineering, Waseda University 早稲田大学理工学部建築学科卒業論文 指導教授 渡辺仁史 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響 An Effect of Urban Pedestrian s Behavior on the Cognition on Sence of Time U1008 石井 宏樹

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

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2010年度,卒業論文,石井宏樹

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Page 1: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

Department of Architecture,School of Science and Engineering, Waseda University

早稲田大学理工学部建築学科卒業論文        指導教授 渡辺仁史

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

An Effect of Urban Pedestrian’ s Behavior on the Cognition on Sence of Time

  U1008

石井 宏樹

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U1008

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

石井 宏樹

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目次

In d e x

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

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目次 

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第1部 : 論文編

第1章:序章1 語句の定義

2 研究目的

3 研究の流れ

4 研究背景  4-1 建築における『時間』    4-1-1 時間の中の都市

    4-1-2 時間軸を見据えた建築

  4-2 さまざまな学問における『時間』    4-2-1 日本時間学会の設立

    4-2-2 認知心理学における『時間』

  4-3 歩行空間における快適性    4-3-1 東京駅周辺における歩行空間の快適性

    4-3-2 歩行空間における快適性

5 既往研究  5-1 感覚時間に関する既往研究    5-1-1 認知心理学的な時間研究の基礎調査

    5-1-2 場所と感覚時間に関する既往研究

  5-2 距離認知に関する既往研究    5-2-1 地上空間における距離認知に関する既往研究

    5-2-2 地上空間における距離認知に関する既往研究

6 研究の位置づけ

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

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目次 

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第2章:感覚時間に影響を及ぼす要因の抽出1 基礎研究

  1-1 歩行に影響する要素  1-2 個々の歩行者の条件と平均速度  1-3 人間の意識の中にある歩行距離  1-4 歩行速度と空間認識

2 実験1.「歩行速度制限を伴う空間移動実験」  2-1 実験方法    2-2 実験結果

  2-3 考察

3 調査2.「自由歩行中の買物行動者の追跡調査」

  3-1 調査方法

  3-2 調査結果

  3-3 考察

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都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

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目次 

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第3章:感覚時間に影響を及ぼす空間刺激の組み合わせ評価  実験3.「感覚時間に影響を及ぼす空間刺激の組み合わせ評価」

1 実験場所の選定調査  1-1 東京駅周辺地区の歩行空間の概要  1-2 選定調査の方法  1-3 選定調査の結果  1-4 分析 ー主成分分析ー  1-5 実験場所概要

2 実験方法  1-1 実験概要  1-2 実験の流れ

3 結果・考察  3-1 結果  3-2 考察

4 分析・考察  4-1 分析手法  4-2 分析 -ラフ集合分析-    4-2-1 感覚時間の長い集団の分析結果

    4-2-2 感覚時間の短い集団の分析結果

  4-3 考察

第4章:まとめ

1 まとめ2 展望  おわりに

    謝辞    参考文献

第2部:資料編

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序章第 1 章

C h a p t e r 1

1 語句の定義

2 研究目的

3 研究の流れ

4 研究背景

  4-1 建築における『時間』

    4-1-1 時間の中の都市

    4-1-2 時間軸を見据えた建築

  4-2 さまざまな学問における『時間』

    4-2-1 日本時間学会の設立

    4-2-2 認知心理学における『時間』

  4-3 歩行空間における快適性

    4-3-1 東京駅周辺における歩行空間の快適性 

    4-3-2 歩行空間における快適性

5 既往研究

  5-1 感覚時間に関する既往研究

    5-1-1 認知心理学的な時間研究の基礎調査

    5-1-2 場所と感覚時間に関する既往研究

  5-2 距離認知に関する既往研究

    5-2-1 地上空間における距離認知

    5-2-2 地上空間における距離認知

6 研究の位置づけ

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

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都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

感覚時間に影響する要因の抽出実験第 2 章

C h a p t e r 2

1 基礎研究

  1-1 歩行に影響する要素

  1-2 個々の歩行者の条件と平均速度

  1-3 人間の意識の中にある歩行距離

  1-4 歩行速度と空間認識

2 実験1.「歩行速度制限を伴う空間移動実験」

  2-1 実験方法  

  2-2 実験結果

  2-3 考察

3 調査2.「自由歩行中の買物行動者の追跡調査」

  3-1 調査方法

  3-2 調査結果

  3-3 考察

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都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

感覚時間に影響を及ぼす空間刺激の組み合わせ評価第 3 章

C h a p t e r 3

 実験3.「感覚時間に影響を及ぼす空間刺激の組み合わせ評価」

1 実験場所の選定調査

  1-1 東京駅周辺地区の歩行空間の概要

  1-2 選定調査の方法

  1-3 選定調査の結果

  1-4 分析 ー主成分分析ー

  1-5 実験場所概要

2 実験方法

  1-1 実験概要

  1-2 実験の流れ

3 結果・考察

  3-1 結果

  3-2 考察

4 分析・考察

  4-1 分析手法

  4-2 分析 -ラフ集合分析-

    4-2-1 感覚時間の長い集団の分析結果

    4-2-2 感覚時間の短い集団の分析結果

  4-3 考察

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都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

まとめ第 4 章

C h a p t e r 4

1 まとめ

2 展望

  おわりに

    謝辞

    参考文献

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資料編第二部

P a r t Ⅱ D a t a

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

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-001-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

A n E f f e c t o f U r b a n P e d e s t r i a n ' s B e h a v i o r                             on t h e C o g n i t i o n o n S e n c e o f T i m e

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はじめに 

-002-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

はじめに

時間というものは常日頃から、人間とは引き離せないものである。時間という概念を創り出したのは人間であるが、どちらかと言えば、私たち人間は時間に振り回されながら生きている。

時は人を待たず時は金なりさまざまなことわざが昔から存在するがその中でも、時が過ぎるのを忘れる

ということわざがある。心地よい、楽しい時間はすぐに過ぎ去ってしまう .そのように感じられることをことわざにしたものである。

歩いている時間を心地よいと思うのはそう多くない。東京の最果てにある大好きな島を歩きまわる。東京のど真ん中の丸の内を歩きまわる。私にとってはどちらも時が過ぎるのを忘れるほど心地よい。

歩行する際にもっと時間を短く感じさせることは出来ないのか。

様々な印象を与える空間で、他の感覚とは異なり独自の時間感覚器官を持たない人間が、五感のすべてを最大限に利用し、特殊な感覚でしか捉えられない時間を、どのように感じるか。

私は歩行空間において感覚時間に関する研究を行うことにした。

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-003-

目次I n d e x

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

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第1部 : 論文編  第1章 : 序章

    1 研究目的

   2 語句の定義

   3 研究背景

     3-1 建築学における『時間』

     3-2 さまざまな学問における『時間』

     3-3 歩行空間における『快適性』

   4 既往研究

     4-1 感覚時間に関する既往研究

     4-2 認知距離に関する既往研究

    4-2-1 地上空間における既往研究

4-2-2 地下空間における既往研究

    5 研究の位置づけ

   

   6 研究の流れ

 第2章 : 感覚時間に影響する因子の抽出実験

   1 基礎研究

     1-1 感覚時間に関する基礎研究

      1-2 歩行に関する基礎研究

   2 実験 1.「歩行速度制限を伴う空間移動実験」

      ~感覚時間に影響を及ぼす個人的要因の抽出~

     2-1 実験方法

     2-2 実験結果

     2-3 考察

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目次 

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目次 

-005-

   3 実験 2.「自由歩行中の買物行動者の追跡調査」

      ~感覚時間に影響を及ぼす空間的要因の抽出~

     3-1 調査方法

     3-2 調査結果

     3-3 考察

 第3章 : 実験 3「東京駅周辺における空間移動実験」     ~空間的要因の関わりが感覚時間に及ぼす影響~

   1 実験空間の選定

      東京駅周辺基礎調査 - 街頭アンケートによる空間評価 - 

      1-1 調査概要

      1-2 調査結果

     1-3 考察

   2 実験方法

     

   3 実験結果

   4 結果分析

      ー感覚時間モデルの作成ー

 第4章 : まとめ    1 感覚時間とは

   2 展望

    

    終わりに

     謝辞

     参考文献

第2部 : 資料編

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

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-006-

論文編第一部

P a r t Ⅰ M a i n C h a p t e r

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

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-007-

序章第 1 章

C h a p t e r 1

1 研究目的

2 語句の定義

3 研究背景

  3-1 建築学における『時間』

  3-2 さまざまな学問における『時間』

  3-3 歩行空間における『快適性』

4 既往研究

  4-1 感覚時間に関する既往研究

  4-2 認知距離に関する既往研究

 4-2-1 地上空間における既往研究

   4-2-2 地下空間における既往研究

5 研究の位置づけ   

6 研究の流れ

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第 1章 序章 

-008-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

1 語句の定義

■都市歩行

 都市空間における実際の状況を考慮した歩行のこと。

■空間刺激

 都市歩行時における、行動と認知に影響する刺激のこと。本研究では、『自由度』『注意度』『スケール感』を空間刺激として定義する。

□『自由度』 歩きやすさ、歩行速度、歩行の促進・阻害に関する「空間刺激」のひとつ。□『注意度』 情報量に関する「空間刺激」のひとつ。□『スケール感』 開放感、空間の広がりに関する「空間刺激」のひとつ。

■感覚時間

 ある出来事が生じてから時間がどれくらいの速さで過ぎるのか、あるいはどれくらいの時間が過ぎたのかという主観的時間に関する経験は、心理的時間と呼ばれる。心理学的時間の研究では、これを外的な時計を使わずに内的な時計によって客観的な時間を評価させる。その際に計測する時間の長さによって、その評価方法が時間知覚(time perception)、時間評価(time estimation)の 2つに分かれる。時間知覚とは、5秒ほど以内の心理的現在の範囲内でのごく短い時間についての評価であり、その範囲を超えた時間は、時間評価と呼ばれている[注 1]。 本研究では、時間評価による心理的時間のことを『感覚時間』、実際の時間・絶対的時間・客観的時間を『物理的時間』と定義する。 また、物理的時間と、感覚時間とを比較した際には、双方の時間にずれが生じる場合が有る。物理的時間よりも感覚時間が短い場合、物理的時間よりも感覚時間が長い場合、物理的時間と感覚時間がほぼ等しい場合、のおおよそ 3つの感じ方がある。「時が過ぎるのを忘れるほど楽しかった。」というのは、物理的時間よりも感覚時間が短い場合にあたる。[図 1-1]

[注 1] 松田文子:序章

 現代のアウグスティヌ

ス , 北大路書房 , (1996)

物理的時間

感覚時間(心理的時間)

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第 1章 序章 

-009-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■感覚時間比

 物理的時間と感覚時間のずれを割合で表したもの。時間の感じ方が読み取れる。負の値ほど、時間を長く感じていることを示し、正の値ほど、時間を短く感じていることを示す。 感覚時間比 =( 感覚時間-物理的時間 ) / 物理的時間

■個人的要因

 感覚時間に影響を及ぼす要因として、個々の歩行者の条件を指す。性別、身長、歩きやすさによる被服状態などの歩行者の状態がこれにあたる。

■空間的要因

 感覚時間に影響を及ぼす要因として、歩行者をとりまく周囲の環境条件を指す。群集、坂、道路幅員などの経路環境などの環境条件がこれにあたる。

■作成法

 あらかじめ一定の時間を定め、その時間だと感じた時点で報告してもらうという感覚時間の計測方法。

■評価法

 あらかじめ決められた作業を与え、自分が感じた時間の長さを口頭で評価してもらうという感覚時間の計測方法。

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第 1章 序章 

-010-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

2 研究目的

 都市空間歩行時においては感覚時間に違いがある。また、感覚時間を変える要因としては、心理的要因、環境的要因があるといわれているが、都市空間での歩行では、目的の違い・歩行速度・歩行のしやすさなどが影響していると考えられる。

 歩行者の行動と認知が、時間感覚にどういった影響があるかを明らかにし、感覚時間が短く、距離が長い場合でも快適に歩けるような都市空間が備えている条件を探ることを目的とする。

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第 1章 序章 

-011-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

3 研究の流れ

 本研究の流れを以下に示す。

実験空間の決定

『自由度』「被服」「経験」「歩行速度」

速度制限されている実験で、歩行の阻害・促進に関する「空間刺激」である、『自由度』が感覚時間に影響を及ぼすことが分かった。また、「被服状態」「経験」「歩行速度」の個人的要因が抽出された。

複数の空間的要因と、歩行時における『自由度』『情報注目度』『スケール感』の 3 つの「空間刺激」が抽出された。

4

3-1

3-2

買物行動中の自由歩行者の追跡調査      

実験空間選定のための街頭調査 /         東京駅周辺における空間の印象評価

『空間刺激』に対する歩行者の行動と認知が感覚時間に及ぼす影響に関する実験

まとめ:感覚時間が短く、快適に歩ける都市空間の備えている条件の探索

歩行速度を制限した空間移動実験

□□

□□□□□□□□□

□□□

歩行者の空間刺激の認知と感覚時間の関係性に着目して分析を行う。

□□

□■

□■

□■

□□

□■

『自由度』『情報注目度』『スケール感』□■

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第 1章 序章 

-012-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

4 研究背景

4-1 建築における『時間』4-1-1 時間の中の都市

 以下は、「都市の中の時間」[注 1][図 4-1-1-1]にて『都市・建築・空間-時間-人間』という観念を示したケヴィン・リンチが論じた、著書のねらいと結論である。

 「外部環境の形態が、どのようにして現在を拡大する柔軟な時間イメージを強化することができるだろうか。その知識が、環境変化の取り扱いを改善するうえで、どのうように利用できるだろうか。

環境的時間の意識が、社会や心理の変化となんらかの関連をもっているだろうか。これらを論じ

ることが本書のねらいである。」

 「効果的行動と内的幸福は、強固な時間イメージによって支えられる。そこに必要なのは、生き生きとした現在の意識で、それは未来と過去に密接に結びつき、変化を知覚し、運営し、楽しむ

ことができなければならない。」「空間と時間は私たちの体験を秩序づける大きな枠組みである。私たちは時間-場所の中で生活しているのである。」 「私たちは、環境をデザインするとき、時間と空間の両面にわたって、その質の配分を考慮しなければならない。それと同じように、私たちは、環境イメージを空間と時間の両面からーつまり

時間ー場所として考えなければならない。時間-場所の環境イメージは、必要な変化を促進する

役割を果たすことができる。私たちは、心の状態を変化させて世界の躍動を楽しむことができる。

また、世界を変化させて私たちの心の構造と調和させることもできる。」

 ケヴィン・リンチは、従来の人々の時間に対する視点に疑問符を投げかけた。「人々は、遠い過去には価値を付加し、未来には願望を投影するものの、現在の時間は消化すべきスケジュー

ルの指標としてしか理解していない。」彼は、本書において空間と時間の両面から環境イメージを築いていかなければならないと強く主張している。そこで、これまでの単なる空間の表現でしかなかった環境デザインに、時間を参加させる様々な方法を提案することで、現在の環境を生き生きと体験させ、私たちをとりまく都市の環境に新しいアプローチの可能性があることを示唆した。

[注 1]ケヴィン・リンチ

/東京大学大谷幸夫研究

室訳:時間の中の都市 -

内部の時間と外部の時間 -

, 鹿島出版会 , [1975]

Page 24: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-013-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

 また、ケヴィン・リンチは、さまざまな側面から『都市・建築・空間-時間-人間』という関わりについて考察を行っている。次ページ以降、『歴史、文学・芸術、個人的経験、地球環境、哲学』と『生理・心理』などのさまざま側面からの考察をまとめる。

□歴史 という側面からの考察

 「なぜ、誰のために、としっかりと考慮した上で、効果的に過去を選択することは、未来の建設を促進するものでもある。」として、特定の事物を保護するよりも場所の継続感覚をつくり上げること重視し、人々が生活しているすべての空間に一世代から二世代にわたる歴史的文脈をはっきり表示することを提案した。この継続性は、近い過去と中間的過去ばかりでなく近い未来としており、必ず直前の状態のなんらかの要素、断片、象徴を保存する。それらは、象徴性、過去の人間活動との直接的結びつき、過去の環境の総合的感覚を伝えるものであるとしている。 また、各時代の重複する痕跡が美的に表現される『積層法』を計画的手法として利用することで、過去の豊かな痕跡を視覚的に累積することができるということを示した。例として、シラクサの大聖堂ではドリス式の骨組が中世の外壁を突き破って飛び出している様子を挙げた。「それは、さまざまな時代の痕跡を視覚的に重ね合わせた、一種の時間のコラージュで、その中の痕跡は互いに修正しあい、新しく付け加えられた痕跡によって修正されていく。」と考察している。

□文学・芸術 という側面からの考察

 景観における時間表現の可能性に対し、原理も明らかにされていないため、ほとんど開発がなされていないとして、芸術の分野を思索の手がかりとすることを示した。そこでは、音楽、演劇などの時間芸術の持続時間は私たちの環境体験に似通っているとし、そこに人々の注意が計画的に集中させられるような、急激な変化に応用された場合には有効であるとしている。一方、もう1つの手法として映像を挙げた。歪曲が前提となってしまうが、時間的動きと空間的動きが存在し、観客に対して両者が情緒的につながり合いが存在することに着目している。このように、景観の内容を制御したり形態を素早く操作したりすることは出来ないが、環境デザインに有効な類似点を見出すことができると考察した。 また、スタウアヘッドの庭園などを例に挙げ、移動に伴う連続的変化を演出するシークエンスデザインは、変化しない環境においても変化する環境と同じ効果を挙げることができると言及している。

Page 25: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-014-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

□個人的経験 という側面からの考察

 「日常生活に付随する感情においては、歴史的な記念建造物がその中で占めている場所は小さなものであることに気づく。」と発言し、血縁関係、個人的な経験など、近い過去の連続性の方が、遠く離れた時間よりも、個人の感情にははるかに強く訴えかけると考察している。 夏と冬の広葉樹の状態を例に挙げ、エピソードのデザインを利用することで、人々の個人的経験と期待に、共鳴を呼び起こすような対比的状態をつくり出すことと、時間を不連続的な周期的パターンに組織化することができるとができると考察した。

□地球環境 という側面からの考察

 保全という言葉にの説明に、枯渇の危惧される石油資源などを例に挙げ、「予測の困難な長期的な未来に思いをめぐらして、そのような未来に重要性をもつと思われる資源を現在の時点で維持することである。」と述べた。 汚染されたテムズ川にデザインされたトイレタンクの浮球は、海水の動きを視覚化しているとして、環境変化の直接表示を利用することで、現在の連続的変貌を劇的に演出できる、と提案した。

□哲学 という側面からの考察

 「魔術、必然的進歩、永遠の実在などに対する信頼の喪失、科学によって開拓された時間と空間の果てしない展望、歴史を首尾一貫したプロセスとして理解する能力の欠如-これらのすべてが

私たちの時間イメージに重苦しい圧迫を加え、個人を疎外し、目的のない現在に閉じ込めている。」 「過去と未来は、回想や予想という現在のプロセスとして、現在の中にある。私たちは、現在の中に生きているのであって、他のいかなる時間の中にも生きることはできない。」と述べたうえで、アウグスティヌスの「過去のものごとの現在、現在のものごとの現在、未来のものごとの現在」を引用し、自分たちの過去、現在、未来について、現在を中心の軸としていることを改め強調した。

Page 26: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-015-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

最後に、本研究の扱う分野として『心理・生理』の考察を紹介する。

■生理・心理 という側面からの考察 「人間の体のサイクルに代表される内部の時間と、社会的、集団的な外部にある時間を調和させることが本書のテーマである。」

 このように述べ、私たちの内部の時間と、社会的な外部の時間には差異があることに着目し、著書のテーマを述べた。 そのうえで、人間は、外部の時間の連続性と同時性を認識する能力は高いものの、内部に生物学的な時計が備わっていることで、外部にある持続時間を不正確に認識することがあると指摘した。しかし、現在の中で効果的に活動できるように、頭脳構造において知的発明である物理的時間という仮説を用いることで、内部の時間と外部の時間を「修正」しているとも述べている。

 「心理学上の現在とは、知覚した出来事をただちに秩序づけることにほかならない。時間の知覚は、空間の知覚と同じ構造を持っており、それは印象を分類し対比する。」 「時間の中に自己の位置を設定するのに利用できる材料は、例えば空間的な手がかりなどがあるが、場所の意識に利用できる材料より遥かに少ない。」 時間の知覚は、空間の知覚と同じ構造を持っているとし、そのうえで、例えば空間的な手がかり、の印象を分類し対比すると述べた。しかしながら、空間の知覚と全く同じではなく、時間の知覚は、場所の意識に利用できる材料がとても少ないと指摘している。

「また、空間の知覚と同じように、6 つほどの刺激を組織化する。『現在』はそこに向けられる配慮次第で『短く』も『長く』もなるのである。」 

 先の「修正」に関して認知心理学から、『現在』に向けられる、内部の状態や、外部の誘導、つまり様々な空間の印象や刺激によって、時間の知覚は『短く』も『長く』もなり、評価は著しく主観的なものになると考察している。 最終的に、時間について長さが正確で、安定している抽象的時間は正反対であるが、この内部の時間こそが、人間が生きている、人間らしくある、という感覚なのだとこの側面からの考察を締めくくっている。

Page 27: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-016-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

 『心理・生理』という側面からの考察では、「内部の時間」「生物学的な時計」「『現在』に対する時間の長さの評価」「空間的な手がかり」などのキーワードを紹介した。 このようにリンチは、試論であり実証的な実験はしていないものの、1975 年という早い年代に、時間を考慮した空間の認知という概念を示し、大きく人々の知見を広めたといえる。 その後、現在に至るまで様々な認知心理学的な時間の研究がなされている。このような学術的取り組みが進んだ結果、時間学という新たな学問領域を確立する動きも見られるようになった(詳しくは次項を参照)。  

 そこで、本研究では、リンチの示した心理・生理の側面[図 4-1-2-1]の考察、現在まで進められている認知心理学からの時間へアプローチなどより、『都市空間内における歩行行動と時間の知覚』に着目してゆくことをここで述べておく。

生理・心理

Time

Space

City

Architecture

Person芸術・文学

個人的経験

歴史

地球環境

哲学

図 4-1-2-1 『都市・建築・空間ー人間ー時間』における『生理・心理』

Page 28: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-017-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

4-1-2 時間軸を見据えた建築

 時間を建築に取り込んだ例として、スケルトンインフィル、メタボリズム、神宮の式年遷宮などがある。 これらは建築計画上の時間変化への対応として解釈できる。

□スケルトンインフィル

 スケルトン・インフィルとは、従来の構造体と内装の耐用年数を予め想定する建築に対し、躯体はそのままで、外装内装を何度でも入れ替えられるものである。 スケルトンとは柱・梁・床などの構造躯体を示し、インフィルとは間仕切り壁・仕上げ材・様々な設備の総称である。 パイプシャフトの共用部分への分離や、二重床・二重天井による電気配線の埋め込みなどによる修繕工事の簡便さが特徴としてみられる。近年では従来の鉄筋コンクリート造の集合住宅から、木造住宅にも用いられるようにもなった。定義はおよそ次のようなものとされる。

 構造体の耐震性が高い。 建物が長持ちして価値が低下しない。 空間にゆとりがある。 空間が整形で室内に柱型や梁型がでない。 多様な間取りが可能である。 将来のリフォームが容易である。 設備配管のメンテナンスが容易である。

 木造においても様々なスケルトンインフィル住宅があるが、上記の定義を完全に満たすような建築は少ない。例として建築家村井正と構造エンジニアのアラン・バーデンによるエアロハウス[図 4-1-2-1]などがある。   

[ 注 ]wikipedia:http://

en.wikipedia.org/wiki/

Main_Page

[注 2]エアロハウス HP:

http://www.aerohouse.

net/

図 4-1-2-1 エアロハウス

Page 29: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-018-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

[ 注 ]wikipedia:http://en.wikipedia.o r g /w i k i /Ma in_Page

□メタボリズム

 メタボリズムは、当時の日本の人口増加圧力と都市の急速な更新、膨張に応えるもので、スケールの大きく、有機的な成長を可能にする柔軟で拡張性の高い構造が特徴であった。 代表的な作品として、黒川紀章の中銀カプセルタワービル[図 4-1-2-2]、菊竹清訓のソフィテル東京[図 4-1-2-3]がある。 無数の生活用ユニットが高い塔や海上シリンダーなどの巨大構造物に差し込まれており、古い細胞が新しい細胞に入れ替わるように、古くなったり機能が合わなくなったりした部屋などのユニットをまるごと新しいユニットと取り替えることで、社会の成長や時間の変化に対応し、成長を促進することが構想された。空間や機能が変化する「生命の原理」が、将来の社会や文化を支えるという理念を示す、メタボリズムの一例である。

図 4-1-2-2 黒川紀章:中銀カプセルタワービル 図 4-1-2-3 菊竹清訓:ソフィテル東京

Page 30: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-019-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

[注 3]http://www.sengu.info/index.html伊勢神宮式年遷宮広報本部 公式ウェブサイト

□神宮式年遷宮 伊勢神宮では、20年という決まったスパンごとに建築が更新されてゆく。式年遷宮は伊勢神宮において行われる定期的に行われる遷宮であり、神宮では、内宮(皇大神宮)・外宮(豊受大神宮)の二つの正宮の正殿、14の別宮の全ての社殿を造り替えて神座を遷す[図 4-1-2-4]。 萱葺屋根の掘立柱建物で正殿等が造られており、塗装していない白木を地面に突き刺した掘立柱は、風雨に晒されると礎石の上にある柱と比べて老朽化し易く、耐用年数が短い。このため、原則として 20年ごとに行われるのである。 古くは 690 年に第 1回が行われ、1993 年の第 61回式年遷宮まで、およそ 1300 年にわたって行われている。

図 4-1-2-4 伊勢神宮の式年遷宮

Page 31: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-020-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

4-2 さまざまな学問における『時間』4-2-1 日本時間学会の設立

 時間学の分野では、日本時間生物学会が 1994 年に発足し、2009 年 6月には様々な研究分野の枠を超えて研究を行い、時間額という学問領域の確立を目的とする日本時間学会が設立された。[注 3][図 4-2-1-1] 時間に関する研究はこれまでにも多数あったが、そのほとんどは個別の学問領域のなかで行われてきた。時間学の領域においては、文系と理系、基礎理論と応用理論の枠を取り払った融合的な研究が目指されている。 例えば、人間の時間認知は時計の時間とどのような「ずれ」を見せるのか、といった問題群や、生物時計のメカニズム、時間管理の社会政策、文化圏ごとの暦の多様性がある。  また、哲学や物理学で取り組まれてきた「時間とは何か」についての理論研究も、時間学の大切な基盤となっている。こうした諸分野の研究を「社会的時間と人間的時間の調和」という視点から体系化するような融合的研究が、時間学の領域では可能となる。時間学会では、学際的特徴を生かし、近縁の学会との交流や学術集会の合同開催を通して、時間学の重要性を伝えるとともに、異なる思想や技術を積極的に取り入れている。 これまで、時間学の主流であった理学系、医学系、農学系などだけでなく、これからはさらに数学系、工学系、社会学系などが加わり、総合科学として発展することが学問の深化につながると期待されている。また、2010 年 6月には第 2回大会が行われ、時間の豊かさとは何か、といった研究が行われている。

[注 3]http://wwwsoc.nii.

ac.jp/jsts2/shushi.html 

日本時間学会ホームペー

図 4-2-1-1 日本時間学会 

Page 32: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-021-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

4-2-1 認知心理学における『時間』

 前述した時間学において、1996 年には松田文子[注 4][図 4-2-2-1]、2008 年2009 年には一川誠[注 5][注 6][図 4-2-2-2]が、認知心理学における人間の時間認知に関する書籍を発行し、「時間認知」が注目を集めている。 これらの書籍は、さまざまな分野において明らかになった時間学を体系立てて説明している。このようにアプローチすることで、建築学研究もさらに進んでいくと期待できる。(時間認知に関する研究は次の既往研究にて述べることとする。) 本研究では、「時間の中の都市」の空間-時間概念と、これらの書籍の認知心理学的な時間研究に着目し、空間における人間の感覚に目を向けることとする

[注 4]松田文子:心理的

時間ーその広くて深いな

ぞ , 北大路書房 , [1996]

[注 5]一川誠:大人の時

間はなぜ短いのか , 集英社

新書 , [2008]

[注 6]一川誠:時計の時

間、心の時間 , 教育評論社

, [2009]

図 4-2-2-1 心理的時間 

図 4-2-2-2 時計の時間、心の時間 

Page 33: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-022-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

4-3 歩行空間における快適性

 『歩行空間の快適性』として、人間が五感すべてをもちいて感じる『時間』という指標で、その場の総合的な評価が出来るのではないかと検討していく。

4-3-1 東京駅周辺における歩行空間の快適性

  本研究の実験空間である東京駅周辺の快適な歩行空間の必要性について述べる。 東京駅周辺である、大手町・丸の内・有楽町地区[以下、大丸有地区]では、古くから首都東京の玄関として、実に計画的に開発が行われてきた。 現在では、千代田区、東京都、大丸有地区再開発計画推進協議会、JR 東日本の 4者により構成される「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり懇談会」が、公共と民間の協力・協調[P. P. P.]によって都心に相応しいまちづくりを進めることを目的としたガイドライン[図 4-3-1-1][注 7]に沿って再開発が行われている。そのガイドラインには将来像として、8つの目標[表 4-3-1-1]があり、その内の 1つには「便利で快適に歩けるまち」という豊かな歩行者空間を創造することが盛り込まれている。 また、2007 年には大手町地区には歩行者の中心となる軸が存在していないとし、回遊性、快適性向上のため丸の内・有楽町地区の歩行者中心軸である仲通り機能を延伸し、豊かで快適な歩行の中心軸を形成することを検討した報告書[注 8]が懇談会に提出されている[図 4-3-1-2]。

 このように、まちづくりの手本となるような都市においても、快適で豊かな歩行空間が求められている。 しかし、ここでいう「快適で」「豊かな」歩行空間とは、交通量に基づき幅員構成を求めるような、既往の設計、一様な空間計画で実現されるものではない。より場所における空間の特性や人間の感覚を大切にした計画が必要であると考えられる。

[ 注 7] 大 手 町・ 丸 の

内・有楽町地区まちづく

り ガ イ ド ラ イ ン 2008:

http://www.aurora.dti .

ne.jp/~ppp/guideline/

index.html

[注 8]大手町・丸の内・

有楽町地区まちづくりガ

イドライン 2008 , 資料編

p7

将来像として掲げる8つの目標

(1)時代をリードする国際的なビジネスのまち

(2)人々が集まり賑わいと文化のあるまち

(3)情報化時代に対応した情報交流・発信のまち

(4)風格と活力が調和するまち

(5)便利で快適に歩けるまち

(6)環境と共生するまち

(7)安心・安全なまち

(8)地域、行政、来街者が協力して育てるまち

表 4-3-1-1 ガイドライン内の 8 つの目標

Page 34: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-023-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

[ 注 7] 大 手 町・ 丸 の

内・有楽町地区まちづく

り ガ イ ド ラ イ ン 2008:

http://www.aurora.dti .

ne.jp/~ppp/guideline/

index.html

[注 8]大手町・丸の内・

有楽町地区まちづくりガ

イドライン 2008 , 資料編

p7

図 4-3-1-2 大手町仲通り延伸計画 

図 4-3-1-1 街づくりガイドライン

Page 35: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-024-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

4-3-2 歩行空間における快適性

 歩行移動では、電車などの他手段による移動とは異なり、移動自体が目的の一部になりうることや、 周辺空間や周辺環境からの影響を受けやすいことから、移動における快適性が必要とされている。 さらに、歩行を日々の運動として捉えると、病気を予防するためにも移動における快適性への配慮は欠かせない。有酸素運動である歩行には、体脂肪の燃焼や、末梢血管抵抗性の低下、インスリン受容体の感受性の改善などにより、肥満、高血圧、糖尿病などのいわゆる生活習慣病の改善や予防に効果があると言われている[注 9]。さらに、現代人の健康感を示すものとして、内閣府が発表した「体力・スポーツに関する世論調査」( 対象 : 全国の 20 歳以上の男女計 3,000 人、有効回答者数 1,848 人 )[注 9][図 4-3-2-1]がある。ここでは、肥満や運動不足を自覚する人の割合が、1991 年の調査開始以来、最高となっていることが分かる。

 以上のことから、快適で豊かな、歩行を促進するような歩行空間の整備が必要とされていることが分かる。そこで、実際に歩いた時間よりも、歩いたと感じられる時間を短くする可能性に着目したい。 感覚時間を短縮させる、そのような人間の感覚に訴えかける歩行空間こそ、快適で豊かなものなのではないだろうか。また、空間快適性が向上見込まれる歩行空間の整備により、移動の質 (Quality of Transport)[文][表 4-3-2-1]をボトムアップすることが可能になるのではないか[図 4-3-2-2]。( ここでいう移動の質とは、杉山らの研究による歩行空間の評価方法であり、空間快適性、移動容易性、情報提供性、介助性の 4要素によって定義されている。) 具体的には、雰囲気が明るく見通しが良い「空間快適性」の向上する歩行空間が整備されることで、自分のペースで歩きやすいという「移動容易性」、目的地や周囲の状況が分かりやすい「情報提供性」、周囲の人に気軽に助けを頼める、安心感のある雰囲気がある「介助性」、などの向上による相乗効果で、全体的な移動の質の向上が期待できる。 

 このように移動の質を向上させることで、より快適に移動することが可能になり、歩行距離の延長、歩行促進も期待できるのではないか。

[注 9]文献: http://www.

human.ac . jp/gakusei/

dayori/memo.php?p=14

[注9]内閣府「体力・スポー

ツに関する世論調査平成

18 年」

 [文]杉山郁夫:移動の

質の定量化に基づく歩行

空間の評価方法 に関する

研究(2005)

Page 36: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-025-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

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肥満を感じる

運動不足を感じる

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時間

移動の質Quality

of

Transport

移動容易性(mobility)

空間快適性(amenity)

情報提供性(information)

介助性   (assistance)

快適性の高い空間整備により、時間を短く感じさせることで、

長い時間を歩いても移動の質を維持しやすい空間が期待できるのではないか。

Page 37: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-026-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

5 既往研究

5-1 感覚時間に関する既往研究

5-1-1 認知心理学的な時間研究の基礎調査

 

 ここでは、この後の要因の抽出実験にあたり、認知心理学ですでに明らかとなっている時間研究の成果を以下に挙げる。[注 5][注 6] 

■空間的要因の効果

 広い空間は時間を長く感じさせる。 大きな音が鳴っていて、それが騒がしいと感じられる際に時間が長く感じられる。

■生理的要因の効果

 興奮剤は時間を長く感じさせ、鎮痛剤は短く感じさせる。 体温が高くなると心理的時間は長くなり、平熱よりも下がると短くなる。 心的時計の進み方は身体的代謝に対応する。このため、一日のうちで変動する身体的代謝は、起床後間もない朝の時間帯には心的時計はゆっくり進み、徐々に早くなって午後にピークに達し、以後次第にゆっくり進むようになる。

■心理的要因の効果

 現在の出来事に対する関心度、動機付けが高くなるほど、時間の経過は意識されないので、その経過時間は短く感じられる。つまり、時間経過に注意が向くほど、同じ時間がより長く感じられる。 知覚される刺激がまとまりを持って体系化されているほど、短く評価される。たとえば、相互に無関係な映像を次々と見せられるよりも、ストーリーのある映像の連鎖の方が短く感じられる。

■能動的に行う作業の効果

 作業が魅力的であればあるほど、作業の難易度が高ければ高いほど、すなわち活動水準が高いほど、その作業の経過時間は心理的に短く評価される。

第1章 序章 

[注 5]松田文子:心理的

時間ーその広くて深いな

ぞ , 北大路書房 , [1996]

[注 6]一川誠:大人の時

間はなぜ短いのか , 集英社

新書 , [2008]

Page 38: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-027-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■精神テンポの効果

 人それぞれが心地よいと感じるテンポを 「精神テンポ 」という。個人の精神テンポは長い年月を経てもあまり変わらない。作業のペースが自分のテンポと異なる場合、心拍数が上昇する。これはストレスを感じていることを示している。

■都市の時間と農村の時間

 都市部と比較した際に、農村やその他の地域では時間がゆっくり流れるように感じる、という場合がある。これは、都市部においては時間を意識させるものが多い、頻度が高いなどの理由が考えられる。電車の例で言えば、都市部と郊外では電車に対する感覚が違う。3分おきにホームに到着する電車を常に目にすることで、常に時間を意識する。こんなことから、都市では速い速度で時間が流れてゆくように感じられやすいのである。

 以上のように、人間の時間の感じ方には、心理・生理的なメカニズムなどによって様々な特徴がある。 次項では、場所と「感覚時間」に関する既往研究を述べる。  

[注 5]松田文子:心理的

時間ーその広くて深いな

ぞ , 北大路書房 , [1996]

[注 6]一川誠:大人の時

間はなぜ短いのか , 集英社

新書 , [2008]

Page 39: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-028-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

5-1-2 場所と感覚時間に関する既往研究

 本研究のテーマである「場所と感覚時間」についての既往研究を以下にまとめる。

 明るさと音の大きさではその受容器が異なるように物理的属性に対応した受容器が存在するが、時間は五感すべてで知覚される高次で非特異な感覚である。矢川らは、このような感覚時間に着目し、さまざまな場で人が感じる時間の長さが人と場との関わりの適否を判断する指標となりうるかを考察した。 人の生活する場は、個別の要因の単なる寄せ集めに依存するのではなく、複合された複雑な要因の交互作用の結果である。場の環境心理研究において様々な評価方法が存在しているが、この研究では、心理的問題という尺度から場のアフォーダンスを導くという試みがなされている。

 [文 1]矢川麻紀子:感覚時間による場と人との交換作用の指標化[1999] 被験者を市街地の2つの歩行コースにて歩行させ、感覚時間を計測し、心理評価を行った。結果として、緑視率が大きくなるに従って「好ましい」「のんびりする」イメージが大きくなり、時刻の刻みはゆっくりし時間を短く感じた。騒音が大きくなるに従って、「好ましくない」イメージが大きくなり、刻みは速くなり時間を長く感じてた。つまり、安らぎや快適さが感じられる環境、好ましい景観であれば、長く感じていることが分かった。

 [文 2]矢川麻紀子:人と場の関わりと感覚時間に関する基礎的考察[2001] 実験場所を広げ、住宅や商店など、都市内のさまざまな 8カ所の歩行空間で感覚時間を計測し、心理評価を行った。結果としては、落ち着いている人ほど感覚時間の短い人が多く出現し、雑然とした場所ほど感覚時間の長い人が多く出現した。しかし、落ち着いてはいるが楽しくはなく、心が沈んでいる人にとっては雑然とした寂しい場所に来ると感覚時間の短い人が多く出現した。以上のように人の感覚時間は人の心理状態によって、また空間の印象によって変化するが、それらの単なる線形結合によるものではないことが分かった。

 [文 3]藤本麻起子:歩行空間における感覚時間に関する研究[2004] 実験空間をさらに増やし、計 18カ所の歩行空間にて、感覚時間を計測し、心理評価を行った。全体的に、都会的なオフィスでは、単調で飽きる、などの理由から感覚時間の長い人が多く出現した。商店街では、うるさい、見ていて飽きないなどの理由で感覚時間の長い人も短い人も、同様に出現した。 さまざまな場所で実験を行ったが、既存研究と同様の傾向が結果から得られた。

 [文 1]矢川麻紀子:感

覚時間による場と人との

交換作用の指標化[1999]

 [文 2]矢川麻紀子:人

と場の関わりと感覚時

間に関する基礎的考察

[2001]

 [文 3]藤本麻起子:歩

行空間における感覚時間

に関する研究[2004]

Page 40: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-029-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

 [文 4]矢川麻起子:人と人の位置関係がもたらす居心地と感覚時間[2002] [文 5]藤本麻起子:照度・色温度を制御した室内における感覚時間の変化に関する研究[2003] 以上の実際の空間を歩行する以外にも、パーソナルスペースや[文 4]、照度・色温度[文5]などと感覚時間との変化に関する実験が行われており、さまざまな角度から感覚時間に関するアプローチがなされている。

 以上のように矢川らの研究では、感覚時間が場所と人との交感作用を計測する、心理的な尺度となりうることを示唆した。

 しかし、「感覚時間」に関する研究は、心理状態や、オフィス、公園などの場所性によって感覚時間が変わることを示しているが、具体的に空間の構成要素に着目したものではない。 次項では、具体的に空間の構成要素に着目した研究の多い、「認知距離」について述べることとする。 

 [文 4]矢川麻起子:人

と人の位置関係がもた

らす居心地と感覚時間

[2002]

 [文5]藤本麻起子:照度・

色温度を制御した室内に

おける感覚時間の変化に

関する研究[2003]

Page 41: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-030-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

5-2 距離認知に関する既往研究

5-2-1 地上空間における距離認知に関する既往研究

 認知心理学的アプローチで、現代都市空間を歩行する人を対象に分析するにあたり、「認知距離」と「認知時間」は強い関連があるといえる。つまり「歩いた距離から歩いた時間を感じる」わけであるので、以下に、「距離認知」のメカニズムについて、既往研究をまとめる。その上で、前述したとおり、これらが一致しない現象について検討する。

 

 距離知覚に関しての既往研究[[文 6]より引用]

 「今までに明らかにされた距離近くに影響を及ぼす要因としては、広域スケールでは場所の地理的イメージや目的地に対する親近感などが、歩行スケールでは坂・階段や経路の奥行きの見えといっ

た移動時に直接体験される経路の物理的特徴が報告されている。また、移動スケールの大小に関

わらず共通して影響を及ぼす要因としては経路の曲折・交差点の数があり、これらが経路に関す

る記憶情報を増加させたり経路を文節化したりするため距離が長く近くされると説明されている。

[文 7~ 13]」

 「距離知覚についての主な既往研究と影響要因についてまとめる。影響要因は、経路の物理的特徴に関わる「刺激中心要因群」と、被験者本人の年齢や性別、所得差などの「被験者中心要因群」、

経路や目的地に対するイメージなどの「被験者・刺激中心要因群」に大別される[文 14]。」

 引用[文 6]大野隆造:

歩行移動時の距離知覚に

及ぼす経路の形状と周辺

環境の影響歩行経路 , 日

本建築学会計画系論文集

No.580,Pp.79-[2004]

 [ 文 7]MILGRAM S.:

<no title>, Environment

and cognition[1973]

 [ 文 8]SADALLA E.

K.:Retrieval prosesses

in distance cognition ,

Memory and Cognition 7,

291-296, [1979]

 [ 文 9]SADALLA E.

K .: T h e p e r c e p t i o n

of t raversed d is tance

, E n v i r o nm e n t a n d

Behavior 12(1) , 65-79,

[1980]

 [ 文 10]SADALLA

E . K .:The percept ion

of traversed distance-

i n t e r s e c t i o n s ,

E n v i r o n m e n t a n d

Behavior 12(2), 167-182,

[1980]

 [ 文 11]STAPLIN L.

J .:Distance cogntion

in urban environments ,

Professional Gepgrapher

33(3), 302-310, [1981]

 [ 文 12]ALLEN G .

L .:A deve lopmenta l

p e r s p e c t i v e o n t h e

diffects of "subdividing"

macrospatial experience

, Journal of Experimental

P s y c h o l o g y , H uman

Learnin and Memory 7,

120-132, [1981]

Page 42: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-031-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

 「Appleyard[文 15]は所得差や階級意識による社会的な居住領域の認識が距離判断に影響するとし、Canter ら[文 16]や Lee[文 17]は、目的地が街の中心部の方向にあるか周辺かといった

場所の意味が影響要因となり、好ましい目的地ほど距離は短く近くされるとしている。また、混

雑している道路[文 18]など障害物のある経路や地形が複雑な経路[文 16]はいずれも長く知覚

されることも報告されている。」

 「一方、歩行移動による距離知覚に影響を与える要因は「刺激中心要因群」に分類されるものが多く、Okabe[文 19]や大野ら[文 18]が階段の影響について、上り下りともに距離は平地より

も長く知覚されることを報告しており、その理由として上りの歩行に要する身体的エネルギー負

荷に加え、上り下り両方における勾配のある道路を安全に歩くための情報処理に費やされる労力

の影響を挙げている。」

 [文 20]五十嵐日出夫:環境要因を考慮した意識距離に関する研究、土木学会 第 53 回年次学術講演会講演概要集第 4 部、pp.772- 773[1998]五十嵐ら[文 20]は、実時間を時間認識の側面から考察し、意識距離に影響を及ぼすと考えられる季節や天気などの周辺環境要因に関する不快感度について評価を行った。その結果、「地点間を移動する際、諸要素から受ける不快感度が強いほど意識距離は長くなる」ということを実証している。

 [文 21]西出和彦:歩行時における空間の距離認知[1999]西出ら[文 21]は、歩行時における「主観的な距離」と「客観的な距離」との「ずれ」を分析し、歩行速度と、経験的な要素、流動的な視点をもつ行為の 3要素が距離認知に影響を及ぼすことを示唆した。

 [文 22]大野隆造:通い慣れた屋外経路における歩行者の距離認知に関する研究 , 日本建築学会計画系論文集 No.549, Pp.193-198,[2001] 大野ら[文 22]は、通い慣れた屋外経路における距離認知に関する研究を行った。 結果として、坂は上りが長く、下りが短く認知されるが、 階段は上り下りどちらも長く認知される傾向があり、人・自転車の多いところは長く、商店や樹木の多いところは 短く認知される傾向があること、また、閉鎖的な空間を通ってきた場合、開放的なところは短く認知される傾向を明らかにした。

 [ 文 13]ALLEN G. L.:

Ef fects o f the cogni t ive

o r g a n i z a t i o n o f r o u t e

knowledge on judgements

of macrospatial distance ,

Memory and Cognition 13,

218-227,[1985]

 [ 文 14]BRIGGS R .:

Methodo log i e s f o r t he

mesurement of cognitive

distance , Environmental

Knowing, Theories, Research

and Methods, [1976]

 [ 文 15]APPLEYARD

D.:Sty les and Methods

o f S t r u c tu r i ng A C i t y ,

Environment and Behavior

2(1), 100-116, [1970]

 [ 文 16]CANTER D.:

Distance estimation in cities

, Environment and Behavior

7(1), 59-80, [1975]

 [ 文 17]LE E T . R .:

Perce ived d is tance as a

funct ion of d i rect ion in

the city , Environment and

Behavior 2(1), 40-51, [1970]

 [文 18]大野隆造:通い慣

れた屋外経路における歩行

者の距離認知に関する研究

[2001]

 [ 文 19]OKABE A .:

Di s tance and d i r ec t ion

judgment in a large-scale

natural environment, Effects

of a slope and winding trail

, Environment and Behavior

18(6), 755-772, 1986

Page 43: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-032-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

  [文 23]大野隆造:歩行移動時の距離知覚に及ぼす経路の形状と周辺環境の影響歩行経路 , 日本建築学会計画系論文集 No.580,Pp.79-[2004]大野ら[文 23]は曲折角度および T字路などの交差点の形状に注目し、これらと「自動車交通量」および「経路幅」、「視覚情報量」の距離知覚に対する影響について、実際の街路における実験によって確かめた。 結果として、「直角曲折」を含む経路と「経路幅」の狭い経路、「自動車交通量」の多い経路の距離が長く知覚されることが確かめられた。同時に、これらの要因は、各要因が単独に変化する経路においては多くの人に同様の影響を与えるが、要因同士が混在する経路においてはそれらのうちのどれが影響を及ぼすかは人によって異なることが明らかになった。

 「距離認知」に関する研究は、坂、曲がり角、などの空間の構成要素単体に着目したもの、または、「曲折」「交通量」「経路幅」などの経路状態、つまり複数の構成要素に着目したものが挙げられる。特に、複数の構成要素に着目したものにおいては、それらのうちのどれが影響を及ぼすかは人によって異なることが明らかになっている。

 [文 20]五十嵐日出夫:

環境要因を考慮した意識

距離に関する研究、土木

学会 第 53 回年次学術講

演会講演概要集第 4 部、

pp.772- 773[1998]

 [文 21]西出和彦:歩

行時における空間の距離

認知[1999]

 [文 22]大野隆造:通

い慣れた屋外経路におけ

る歩行者の距離認知に

関する研究 , 日本建築学

会計画系論文集 No.549,

Pp.193-198,[2001]

 [文 23]大野隆造:歩

行移動時の距離知覚に及

ぼす経路の形状と周辺環

境の影響歩行経路 , 日本

建築学会計画系論文集

No.580,Pp.79-[2004]

Page 44: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-033-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

4-2-2 地上空間における距離認知に関する既往研究

地上だけでなく地下空間においても距離認知の研究は進められている。

 [文 24]西出和彦:地下歩行空間における認知距離に関する研究[2008] 西出ら[文 24]は、地下歩行空間において距離の認識に関する実験を行った。 その結果、個人差はあるものの、そこに存在する情報の知覚の仕方が大きな影響を与えていることがわかった。

 [文 25]鈴木聡士 : 意識距離の短縮効果を有する歩行空間の創出に関する基礎的研究、地域学研究第 32 巻第 1 号、pp.173-188[2002] 鈴木ら[文 25]は、地下通路を対象に周辺環境と意識距離の関係について研究した。 その結果、歩行環境に対して「良い」と感じる空間では意識距離が短縮される傾向があることや、地下通路環境における意識距離短縮効果を有する空間特性を明らかにした。

 [文 26]大野隆造:地下鉄駅における主観的な移動距離および深さに影響する環境要因 , 日本建築学会計画系論文集 No.610,P.87-92,[2006] 大野ら[文 26]は、地下鉄駅において移動の手段や経路の構成、空間のデザインなど、主観的な移動距離や深さの評定に影響を及ぼすと考えられる環境要因に関する研究を行った。 結果として移動の手段においては、エスカレータおよび階段、歩行による水平方向の移動といった移動手段の異なる地下鉄駅構内の経路において、これら移動方法によって主観的移動距離が異なることを示した。また、地下鉄駅空間のデザインにおいては、主観的移動距離および深さに影響する環境要因として以下の 4つを示した。 1、通路幅の広い経路では主観的に距離を短く、深さ を浅く感じた。2、吹き抜けの空間では主観的に距離を短く、深さを浅く感じた。3、折り返しのある経路はない経路よりも距離を長く感じた。ただし、吹き抜け空間では影響されない。4、明るいと感じられる経路では主観的に距離を短く、深さを浅く感じた。開放感、清潔感、安心感が感じられる経路においても同様に短く感じられた。

 以上のように、地下空間を構成する要素が多くないことと、地下空間における距離認知の研究が十分に進んでいることから、本研究においては、地下空間ではなく、地上での感覚時間に関する研究を行うこととする。

 [文 24]西出和彦:地

下歩行空間における認知

距離に関する研究[2008]

 [文 25]鈴木聡士 : 意識

距離の短縮効果を有する

歩行空間の創出に関する

基礎的研究、地域学研究

第 32 巻第 1 号、pp.173-

188[2002]

 [文 26]大野隆造:地

下鉄駅における主観的な

移動距離および深さに

影響する環境要因 , 日本

建築学会計画系論文集

No.610,P.87-92,[2006]

 

Page 45: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 1章 序章 

-034-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

6 研究の位置づけ

  「感覚時間」に関する認知心理学的な時間研究では、リンチの述べた、生理・心理的なメカニズムによる人間の時間の試論を実証する基礎的なものとして紹介した。 また、「場所と感覚時間」に関する研究では、「好ましい」などに代表される心理状態や、オフィスや公園などの場所性によって感覚時間が変わることを示した。  認知心理学的アプローチで、現代都市空間を歩行する人を対象に分析するにあたり、「認知距離」と「認知時間」は強い関連があるといえることから、「認知距離」に関する研究についても述べておく。 認知距離に関する研究は、「坂」「曲折」などの空間の構成要素単体に着目したもの、または、「曲折」「交通量」「経路幅」などの経路状態、つまり複数の構成要素に着目したものが挙げられる。さまざまな構成要素の違いにより、認知距離に変化があることを示した。 

 以上より、本研究の位置づけを示す[図 6-1]。「感覚時間」「場所と感覚時間」に関する既往研究では、人間の『行動』と時間について示したものは少なく、『歩行行動中』のものはほとんどない。 また、「認知距離」研究では、空間の構成要素によって認知距離が変化することを示したが、『その空間の構成要素をどのように認知したか』に着目したものはない。 そこで、本研究においては、『都市空間の歩行時における行動と認知と感覚時間』に着目する。

本研究

既往研究場所性

様々な心理

行動していない

感覚時間 距離認知

空間構成要素

空間行動中

認知

様々な心理

感覚時間空間刺激

空間行動中

空間構成要素

Page 46: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-035-

感覚時間に影響する因子の抽出実験第 2 章

C h a p t e r 2

1 基礎研究

  1-1 感覚時間に関する基礎研究

 1-2 歩行に関する基礎研究

2 実験 1.

  「歩行速度制限を伴う空間移動実験」

   ~感覚時間の個人的要因の抽出~

  2-1 実験方法

  2-2 実験結果

  2-3 考察

3 実験 2.

  「自由歩行中の買物行動者の追跡調査」

   ~感覚時間の空間的要因の抽出~

  3-1 調査方法

  3-2 調査結果

3-3 考察

Page 47: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-036-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

1 基礎研究

歩行中の感覚時間の計測を行うにあたり、歩行に関する基礎的な知見をまとめたものを、この項にて示す。

1-1 歩行に影響する要素、感覚時間に影響を及ぼすと思われる要素

 歩行に影響を与える要因は様々なものがある[注 8][表 1-1-1]。 それらを大別すると、「個々の歩行者の条件」と、「歩行者をとりまく周囲の環境条件」の 2 つがある。既往研究との比較でも、感覚時間に影響を与える要素はほぼ網羅していると思われる。

[注 12]日本建築学会編:

設計資料集成 3 , 単位空間

1 , 丸亀

表 1-1-1 歩行に作用するファクター

個人的要素

心理状態 不安 焦り 神経質 憂鬱 多忙 陽気 思索

肉体的条件 性別 年齢 体重 身長 歩行力 健康状態 身体障害

被服・装備 衣服 履物 荷物 各種装備 杖

歩行目的 通勤 通学 業務 買い物 食事 散歩 行楽

歩行状態 歩行速度が速い 歩行速度が遅い 視線の方向 経験の有無 その他

環境的要素

光 自然光 人工光 空気 気温 湿度 気流 清浄度

天候 晴れ 雨 曇り におい 悪臭 芳香

時期 季節 曜日 時間帯 その他

空間的要素 場所 都市の規模 雰囲気 歴史性 風土性 都市の規模 開放感 閉鎖感

経路環境 歩行路幅員 道路幅員 道路幅含む道幅 長さ 形状 路面状態 形態

ボリューム テクスチュアー 路上駐車 曲折角度 交通量 路上駐車 緑

歩行設備 信号の量 上り坂 下り坂 階段 種類 レベル変化 勾配

視覚環境 店舗 情報量(見もの) 風景の変化 見通し 街路景観 交通量 サイン

対向者 自転車 誘導標識 群集 混雑度合い 種類・速度

音 BGM 騒がしい 静かだ その他

感覚時間に影響を及ぼすと考えられる要素[歩行に作用するファクターより引用]

Page 48: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-037-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

1-2 個々の歩行者の条件と平均速度

 人々は歩行の際に、個々人の条件と、環境的な条件によって歩行速度が変化する[表1-2-1]。  [文 27]渡辺仁史:建

築計画における行動シ

ミュレーションに関する

研究[1978]

 [文 28]樫村:観覧空

間における歩行速度の変

化に関する研究[2000]

表 1-2-1 歩行者の違いによる平均歩行速度一覧

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Page 49: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-038-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

1-3 人間の意識の中にある歩行距離

 人々は歩行の際に、歩く距離に対しさまざまな意識を持っている[表 1-3-1]。 距離 600m~ 800mを例にとると、標準速度 60m/分で歩行する際には 10分程度歩行すると、バスなどの代替手段を必要とする時間、距離になると示している。 また、ここに示されている最小単位としては、90%の人が満足する距離として、200mが挙げられている。さらに、歩くことを問題としない距離として、400mが示されている。 

1-4 歩行速度と空間認識

 移動速度の違いによって人が認識している空間は異なる[注 8][文 21]。速度が速くなる程、見えているものの密度は疎になりインパクトのあるもののみ目に入ってくる。速度が遅くなる程、見えているものの密度は密になり、細かなものも目に入ってくる。また見ている範囲 ( 視野 ) も速度によって広くなったり狭くなったりする。 また、歩行速度の違いによって認知距離は異なる。歩行速度と認知距離   距離を長く感じられる空間→歩行速度が遅い 距離を短く感じられる空間→歩行速度が速い

[注 10]日本建築学会編:

設計資料集成 3 , 単位空間

1 , 丸亀

[注 10]日本建築学会編:

設計資料集成 3 , 単位空間

1 , 丸亀

 [文 21]西出和彦:歩

行時における空間の距離

認知[1999]

表 1-3-1 人間の意識の中にある歩行

人間の意識の中にある歩行距離

計測したもの(距離) 属性 どこで 出典

1220

600~800

70%の人が歩いて苦としない距離 業務・目的地まで 歩行者意識調査報告書,東京都総合交通対策室

バスなどの代替手段が必要な距離 イエデポリ OECD,楽しく歩ける街,PARCO出版局

720 70%の人が歩いて苦としない距離 業務・鉄道駅まで 歩行者意識調査報告書,東京都総合交通対策室

500 50%の人がそれ以上歩くのをいやがる距離 ブーラドン 国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社

500 目的地まで歩いて良いとする距離 目的地 外部空間の設計,彰国社

500 81%の人が歩く距離 イエデポリ OECD,楽しく歩ける街,PARCO出版局

450 最適歩行時間を5分とした距離 ランコーン・ニュータウン ニュータウンの環境計画,彰国社

400

300~400

歩くことを問題としない距離 レーベマルク 国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社

歩く意欲が減少している距離 イエデポリ OECD,楽しく歩ける街,PARCO出版局

350 歩いても良い距離 なし 住環境の理論と設計,鹿島出版社

300 70%以上の人が歩いても良いとした距離 バス停まで 国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社

300 最大許容歩行距離 空港(IATA) 国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社

300 100%近くの人がバスターミナルまで歩いてくる距離バスターミナル 歩行者の空間,鹿島出版会

300 市民の90%が満足する距離 プーラドン 国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社

300 普通に気持ち良く歩ける距離 なし 外部空間の設計,鹿島出版会

200 90%の人が満足する距離(最高距離) なし 国際交通シンポジウム,人間と交通,朝日新聞社

Page 50: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-039-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

2 実験 1.「歩行速度制限を伴う空間移動実験」

■実験の目的

 歩行速度、肉体条件、経験などの中で、どの要素が時間の感じ方に影響を及ぼしているかを明らかにし、感覚時間に影響を及ぼしている個人的要因の抽出を行うことを目的とする。

■実験概要

 感覚時間に影響を及ぼす要因として、個人的要因と空間的要因がある。そこで、個人要因の抽出を目的とした実験を行う。この実験では、西早稲田キャンパスの歩行経験が十分にあると見込まれる、理工学部の学生を被験者とする。同一空間で実験を行うこと、被験者数を大きくすることで、環境要因を分析対象から排除し、分析を行う。

図 2-2 実験風景

Page 51: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-040-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

2-1 実験方法

■実施日

 2010 年 5月 28日

■被験者

 早稲田大学建築学科学生[105 名]

■実験場所

 早稲田大学西早稲田キャンパス

■機材・用具

 アンケート用紙、ストップウォッチ、コースマップ

Page 52: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-041-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

□実験手順[図 2-1-1] 被験者を速度の異なる 4グループに振り分ける[100m/ 分、80m/ 分、60m/ 分、40m/ 分]。 その際に被験者に教示を行う。 4グループに 2人の実験者がつき、1人の実験者があらかじめ指定したコース[図2-1-2]を速度を管理しながら、被験者を連れて歩く。 被験者には 5、10 分経過したと思った時点で 2度挙手をしてもらい、もう 1人の実験者に報告してもらう。その際、実験者が物理的時間を記録し、被験者の感覚時間を把握する。 実験後に、感覚時間・身長・被服条件などをアンケートで答えてもらい、性別・身長・被服条件・速度と感覚時間の分析を行い、個人的要因の抽出を行う。

 * 速度の制限は、小刻みに通過地点を設け、先頭の実験者に各地点ごとに提示された時間で歩くように指示した。

図 2-1-1 実験フロー

4

被験者を速度の異なる以下の4グループに振り分ける。

以下の教示を行ったのち、各グループに2名の実験者がつき、1人が実験経路(図)を速度を管理しながら、被験者を連れて歩く。

被験者には5、10分経過したと思った時点で2度挙手をしてもらい、実験者に報告してする。(その際、実験者が時計時間を記録し、被験者の時間の感じ方を把握する。)

実験後にアンケートに答えてもらい、感覚時間と個人的要素の分析を行う。

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Page 53: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-042-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

図 2-1-2 ルートマップ

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Page 54: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-043-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

□歩行速度の制限

 本実験は、基礎研究(本論文 P.38)歩行速度と認知距離の関係より、歩行速度によって感じられる距離の長さが異なること着目した。 そこで、被験者を歩行速度の異なる 4つの集団に分けた。(本論文 P.37)にて前述した平均歩行速度より、急ぎ足の通勤・通勤・遅い・展覧会、などの数値を参考にし以下の表[表 2-1-1]のような速度設定を行った。 速度の制限は、小刻みに通過地点を設け、先頭の実験者に各地点ごとに記載された時間で歩くように提示した[図 2-1-3]。 

表 2-1-1 歩行速度の異なる 4つの集団

図 2-1-3 通過時間を記したルートマップ(60m/ 分)

はやい 100m/分

通勤・通学 80m/分

標準速度 60m/分

おそい 40m/分

グループ別の歩行速度

Page 55: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-044-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

□歩行時間の設定

 本実験は、感覚時間が 10分となるまでの物理的時間を記録するものとなっている。ここで定めた 10分とは、標準速度 60m/分で、都市圏内での「バスなどの代替手段を必要」とする、距離 600m~ 800mを歩行する際にかかるであろう時間である。

□教示内容

 教示した内容を、以下の表に示す[表 2-1-2]。感覚時間を把握すること、しっかりとした歩行速度制限を行うことを念頭に置き、教示を行った。

□アンケート

 以下にアンケート項目[表 2-1-3]、アンケート用紙[図 2-1-4]を示す。

表 2-1-2 教示内容

表 2-1-3 アンケート項目

数を数えないこと。

列を乱さないよう歩くこと。

自分の前にいる人から2m以上離れないこと。

アンケート中に被験者同士で相談しないこと。

10分が経過したと思っても、実験終了までついて歩いていくこと。

教示内容

性別

歩行速度

身長

普段と比べた実験時の歩行ペース(歩きたい速度との比較)

実験空間の歩行経験

感覚時間が5分,10分のときの実際の時間

アンケート内容

被服条件(歩きやすい、歩きにくい)

Page 56: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-045-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

図 2-1-4 アンケート用紙

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Page 57: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-046-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

2-2 実験結果

■被験者

 早稲田大学建築学生:103 名

■属性

  歩行速度の異なる 4集団  100m/ 分:25名  80m/ 分:25名  60m/ 分:27名  40m/ 分:26名  ■実験結果

 アンケートの結果の詳細は資料編に示す。

 挙手という手段を取ったため、感覚時間が 5分の場合、周囲の様子に大きく影響されたグループがあった。 また、同様の理由で感覚時間が 10分の場合、その集団内の全員が挙手すれば、実験が終わることから、まわりに影響された被験者が多くいた。 以上の理由から、『被服条件』『経験』『歩行速度』では、5分の結果では t 検定により有為差が見られたにも関わらず、10分の結果では有為差が見られなかったという分析結果が出た。 以上より、感覚時間 10分ではなく 5分のデータを用いて結果を示すこととする。

第2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

Page 58: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-047-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■性別

 男女別にみた結果を以下に示す[図 2-2-1]。

 男女間で t 検定を行ったところ、有為差は見られなかった。性別は感覚時間に影響を及ぼす要因ではない。

第2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

図 2-2-1 性別

男 女

第3四分点 0.09 0.08

最大値 0.43 0.42

最小値 -0.70 -0.55

第1四分点 -0.40 -0.42

平均値 -0.16 -0.15

男 女

63 40

性別(人)

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

Page 59: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-048-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■身長

 身長別にみた結果を以下に示す。[図 2-2-2]。

 身長の違いで t 検定を行ったところ、有為差は見られなかった。身長は感覚時間に影響を及ぼす要因ではない。

第2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

図 2-2-2 身長

170cm未満 170cm以上

51 50

身長(人) 170cm未満 170cm以上

第3四分点 0.09 0.05

最大値 0.28 0.43

最小値 -0.55 -0.70

第1四分点 -0.37 -0.40

平均値 -0.14 -0.17

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

Page 60: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-049-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■被服状態

 被服状態の歩きやすさ別にみた結果を以下に示す[図 2-2-3]。

 被服状態で t検定を行ったところ、有為差が見られた。 歩きにくい服装をしている被験者の方が時間を長く感じていることが分かる。 つまり、被服状態は感覚時間に影響を及ぼす。  

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

図 2-2-3 被服状態

歩きやすい 歩きにくい

84 17

被服状態(人) 歩きやすい 歩きにくい

第3四分点 0.03 0.19

最大値 0.28 0.42

最小値 -0.70 -0.37

第1四分点 -0.44 -0.26

平均値 -0.19 0.02

Page 61: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-050-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■経験

 実験空間を歩いた経験があるかどうかについての結果を以下に示す[図 2-2-4]。

 経験別で t検定を行ったところ、有為差が見られた。 被験者が理工学部の生徒であったにも関わらず、校舎の外周付近を歩いたことの無い被験者が存在した。少数ではあったが、経験のない被験者の方が、より長く時間を感じていた。 これより、経験の有無は感覚時間に影響を及ぼす要因であると考えられる。 

第2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

図 2-2-4 経験

経験なし 経験あり

第3四分点 0.28 0.08

最大値 0.37 0.43

最小値 -0.20 -0.70

第1四分点 0.01 -0.41

平均値 0.11 -0.17

無し 有り

11 88

経験(人)

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

Page 62: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-051-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■歩きたい速度との比較

 歩行速度に対し、どう感じたかについての結果を以下に示す[図 2-2-5]。

 歩行速度の数値ではなく、被験者が制限された歩行速度に対し、どのように感じたかを指標として分析を行った。ここでは、速いと感じた被験者ほど時間を短く感じていることが分かる。遅い、少し遅いと感じた被験者については、今回行った歩行速度の制限によって、歩きたい速度で歩けなかった、つまり自由に歩行できなかったことが原因の1つとして考えられる。 以上より、歩きたい速度で歩けるか、歩行時の自由度は感覚時間に影響を及ぼす要因である。また、自由に歩行できなかったという歩行阻害要因が、感覚時間に影響を及ぼしている。

第2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

図 2-2-5 歩行速度に対しどう感じたか

遅い 少し遅い 普通 少し速い 速い

第3四分点 0.17 0.03 0.02 -0.06 -0.22

最大値 0.43 0.17 0.25 0.19 -0.13

最小値 -0.63 -0.40 -0.70 -0.52 -0.48

第1四分点 -0.35 -0.24 -0.42 -0.45 -0.44

平均値 -0.04 -0.09 -0.19 -0.23 -0.34

速い 少し速い 普通 少し遅い 遅い

17 14 16 32 52

歩行速度をどう感じたか(人)

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

Page 63: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-052-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■速度の制限

 速度別にみた結果を以下に示す[図 2-2-6]。 歩行速度では差が見られた。40m/ 分、80m/ 分、100m/ 分においては、速度が速いほど時間を短く感じている。既往研究[文 21]においても歩行速度が速い、遅いの 2つの場合では、速い方が認知距離が短い、という知見がある。 60m/ 分の集団においては報告方法として挙手という手段を取ったため、周囲の報告の様子に大きく影響された被験者が多く見られた。60m/ 分のみ値がズレたのはこのような被験者の心理状態が影響していると考えられる。 これより、歩行速度は感覚時間に影響を及ぼす要因である。 また、40m/ 分、80m/ 分、100m/ 分の集団は、速すぎる、遅すぎるなどの理由から歩行の阻害要因となり、感覚時間と物理的時間に差が出たという見方が出来る。80m/分は、被験者の年齢や通学での移動時の歩行速度を考慮すると、普段歩くペースに最も近いことが、他の集団に比べ感覚時間と物理的時間に差が出なかったことの理由だと思われる。

第2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

図 2-2-6 速度

40m/分 60m/分 80m/分 100m/分

第3四分点 0.20 -0.31 -0.02 -0.30

最大値 0.43 0.25 0.07 -0.13

最小値 -0.08 -0.70 -0.28 -0.52

第1四分点 0.09 -0.48 -0.17 -0.47

平均値 0.17 -0.35 -0.09 -0.37

100m/分 80m/分 60m/分 40m/分

25 25 27 26

歩行速度(人)

[文 21]西出和彦:歩行

時における空間の距離認

知(1999)

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

Page 64: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-053-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

2-3 考察

 今回の実験の考察を以下に記す。

□身長 身長は感覚時間に影響を及ぼす要因ではない。□被服状態

 被服状態は感覚時間に影響を及ぼす個人的要因である。また、歩きにくい服装をしている被験者の方が時間を長く感じていることが分かる。  □経験 被服状態は感覚時間に影響を及ぼす個人的要因である。また、その空間の歩行経験のない被験者の方が、より長く時間を感じている。□歩行速度と歩きたい速度との比較 歩きたい速度で歩けるか、歩行時の自由度は感覚時間に影響を及ぼす要因である。また、自由に歩行できなかったという歩行阻害要因が、感覚時間に影響を及ぼしている。□歩行速度の制限

 40m/ 分、80m/ 分、100m/ 分の集団は、速すぎる、遅すぎるなどの理由から歩行の阻害要因となり、感覚時間と物理的時間に差が出た。80m/分は、被験者の年齢や通学での移動時の歩行速度を考慮すると、普段歩くペースに最も近いことが、他の集団に比べ感覚時間と物理的時間に差が出なかったことの理由だと思われる。

 以上より、今回の実験で、『被服状態』『経験の有無』が感覚時間に影響を及ぼす個人的要因と抽出された。 また、『性別』『身長』は感覚時間に影響を及ぼす個人的要因ではないと判断した。

 さらに、感覚時間に影響を及ぼす要因として、『歩行速度の制限』『歩行速度と歩きたい速度との比較』より、自分の歩きたいように歩けない状態、『歩行時の自由度』があるのではないか、という知見が得られた。 このように考えると、『被服状態』『経験の有無』も歩行を阻害するものとして見ることができる。本実験では、『歩行の自由度』に関するものであったといえる。 これは歩行空間の空間的要因にも同じ『歩行の自由度』の属性のものがある可能性があるのではないか、と考えられる。

第2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

Page 65: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-054-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

3 調査 2.「自由歩行中の買物行動者の追跡調査」

■目的

 都市の規模、経路環境、階段の有無、街路景観、嗅覚情報、群集などの中で、どのような空間的要因が感覚時間に影響しているかを追跡調査によって明らかにし、感覚時間に影響を及ぼす空間的要因の抽出を行うことを目的とする。

■概要

 実験 1において、個人要因の抽出を行った。そこで、調査 2として空間的要因の抽出を目的とした追跡調査を行うこととした。この調査では、買物行動中の対象者の追跡調査を行うことで実験1では得られなかった、日常的な生活の中での感覚時間にせまる。 どのような要因が感覚時間に影響を及ぼすのかを、対象者の発話により空間的要因を列挙してもらうことで明らかとする。

図 3 実験風景

Page 66: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-055-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

3-1 調査方法

■実施日

 2010 年 6月 28日、7月 2日、7月 8日、7月 22日、8月 5日、8月 23日

■対象者

 早稲田大学建築学科学生[10名]

■実施場所

 丸の内  銀座 秋葉原

■機材・用具

 アンケート用紙、周辺地図、IC レコーダー[図 3-1-1]

□調査手順

 各場所において、買物を行う対象者に協力を依頼し、1~ 2時間程度の追跡調査を行う。 追跡調査中は自由に買物行動をしてもらい、店舗間の移動など、主に行動の合間で、時間が長く感じたり、短く感じたり、感覚時間に影響しそうな要因を発話によって列挙してもらう。調査中の発話内容の記録から、被験者がどのような空間的要因に興味を持ったかを把握する。 対象者が買物行動を終了するまで追跡調査を行う。

図 3-1-1  ICD-UX71-S[SONY 社製]

Page 67: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-056-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

3-2 調査結果

■被験者

 早稲田大学建築学生:10名

■属性

 調査場所  丸の内:5名   銀座:3名  秋葉原:2名

■調査結果

 次項に、対象者の発話による、空間的要因の列挙から作成したネットワーク図を示す[図 3-2-1][図 3-2-2]。 以下の図において、円の大きさが要素の大きさであり、線の長さ、線の太さ影響力・関係性の強さを示す。

第2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

感覚時間

身長

健康状態

スケール感

視覚環境

感覚時間

要素の大きさ

記入例

 線の長さ

関係性の強さを表

す。短いほど強い。

 線の太さ

関係性の強さを表

す。太いほど強い。

図 3-2-1  ネットワーク図記入例

Page 68: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-057-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

 A3で!図 3- 2- 1ネットワーク

感覚時間

身長

健康状態

スケール感

視覚環境

感覚時間

感覚時間

心理状態

要素の大きさ

 記入例

肉体的条件

体重

身長

歩行力

健康状態

身体障害

荷物

各種装備

歩行目的

歩行状態

歩行速度

 速い

歩行速度

 遅い

視線の方向

経験の有無

天候

時期

雰囲気

経路環境

自由度

注意度

歩行路幅員

道路幅員

歩行設備

信号の量

上り坂

店舗

情報量

(見もの)

空気

におい

道路幅含む

  道幅

交通量

風景の変化

群集

混雑度合い

路面状態

路上駐車

都市の規模

スケール感

ボリューム

視覚環境

見通し

開放感

閉鎖感

 線の長さ

関係性の強さを表

す。短いほど強い。

 線の長さ

関係性の強さを表す。短いほど強い。

 線の太さ

関係性の強さを表

す。太いほど強い。

不安

焦り

神経質

憂鬱

多忙

陽気

年齢

思索

通勤

買い物

食事

散歩

自然光

人工光

気温

湿度気流

清浄度

晴れ

曇り

悪臭

芳香

季節

曜日

時間帯

レベル変化

歴史性

風土性

曲折角度

下り坂

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

図 3-2-1 ネットワーク図

Page 69: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-058-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

3-3 考察

 「歩行路幅員」「交通量」「群集」「混雑度合い」「路上駐車」「路面状態」「緑」「見通し」「開放感」「閉鎖感」「店舗」「情報量(見もの)」「風景の変化」「騒がしい」などの空間的要因が歩行者の発話から多く抽出された。 これより、これらを次項以後で抽出された空間的要因として扱う。

 しかし、本調査では都市歩行中の買物行動者に対し、発話を利用して調査を進めたが、多くの対象者が発話したものは、「曲折」「上り坂」などの具体的な空間構成要素ではなく、歩きやすい・騒がしい・開放感、などの『自由に歩きにくい』『注意が向けられた』『目的地までが遠く見える』といった歩行者の行動と認知に影響するような複数の空間的要因であった。 そこで、本研究では、これら複数の空間的要因を「空間刺激」[図 3-3-1]と定義し、『自由度』『注意度』『スケール感』の 3項目にまとめた。

□『自由度』 歩きやすさ、歩行速度、歩行の促進・阻害に関する「空間刺激」のひとつである。 「歩行路幅員」「交通量」「群集」「混雑度合い」「路上駐車」「路面状態」などがこれにあたる。

□『注意度』 情報量に関する「空間刺激」のひとつである。 「店舗」「情報量(見もの)」「風景の変化」「騒がしい」などがこれにあたる。

□『スケール感』 開放感、空間の広がりに関する「空間刺激」のひとつである。 「緑」「見通し」「開放感」「閉鎖感」などがこれにあたる。

 

Page 70: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-059-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

 [文 23]大野隆造:歩

行移動時の距離知覚に及

ぼす経路の形状と周辺環

境の影響歩行経路 , 日本

建築学会計画系論文集

No.580,Pp.79-[2004]

  本調査から、同じ空間を歩いている場合でも、複数の空間的要因で構成される「空間刺激」を、どのように認知するかによって、感覚時間に及ぼす影響が変化することがあると仮説が立てられる。 大野ら[文 23]によって明らかにされた、「要因同士が混在する経路においてはそれらのうちのどれが影響を及ぼすかは人によって異なる」ことも、このような仮説のもとにはうまく成り立つと考えられる。

 次章の実験 3では、これらの「空間刺激」がどのように感覚時間に影響を及ぼすのか、どのような関係で影響を及ぼすのかを明らかにする。

情報に対する注意度

空間の広がり

  スケール感

移動容易性に関わる自由度

情報に対する注意度空間の広がり

  スケール感

移動容易性に関わる自由度

情報に対する注意度空間の広がり

  スケール感

移動容易性に関わる自由度

均一に進む物理的時間 外的刺激により歪められる感覚時間

図 3-3--1 空間刺激イメージ図

Page 71: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-060-

第 3 章

C h a p t e r 3

1 実験場所の選定

   -東京駅周辺基礎調査-

  1-1 調査概要

  1-2 調査結果

  1-3 考察

2 実験方法

3 実験結果

4 結果分析

  ー感覚時間モデルの作成ー

~空間的因子の関わりが感覚時間に及ぼす影響~

感覚時間に影響を及ぼす空間刺激の組み合わせ評価

訂正します!!

Page 72: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-061-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

実験 3.「東京駅周辺における空間移動実験」

1 実験場所の選定調査

 実験場所を東京駅周辺に設定する。 そこで、東京駅周辺にて空間的要因の評価を街頭アンケートで行うことにより、設定した実験場所の候補地から実験場所を選定する。 1-1 東京駅周辺地区の歩行空間の概要

 東京駅周辺である大手町、丸の内、有楽町地区では、街の歴史や現在の地区特性を活かしたまちづくりを推進していくため、地区が 4 つのゾーンに分けられている(注 7)。 このうち、本実験で主に着目する丸の内ゾーン、有楽町ゾーン西側の街並みを特徴づける重要な要素として、整然と連続的に建ち並ぶ建物群がある。この連続的な街並みを活かした「街並み形成型」のまちづくりが目指されている[表 1-1-1](注 4)。  

[ 注 4] 大 手 町・ 丸 の

内・有楽町地区まちづく

りガイドライン 2008:

http://www.aurora.dti .

ne.jp/~ppp/guideline/

index.html

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

表 1-1-1 「街並み形成型」まちづくりのルール

大名小路

有楽町駅前広場 周辺

行幸通り

(街並み調和型)

コンセプト 通り・広場 中間領域の形成 日比谷通り (街並み調和型)

【都心景観軸】 ・街区に整然と建物が建ち並ぶ街並みの尊重

・スカイラインの統一性に配慮

・皇居外苑やお濠に面する景観、周辺建物へ配慮したファサードの創出、素材・色彩等を勘案した秩序と風格ある街並みの形成

【象徴広場】 ・周辺の大街区に、整然と建ち並ぶ建物群による心象風景の継承及び再構築

・整然としたなかにも潤いや憩いのある広場環境の維持

・広場を囲む対称性に配慮し、素材・色彩等を勘案した、風格ある景観の維持

・地区の「表玄関」としての機能や景観に配慮しながら、広場の囲われ感を創出する中間領域を形成する。

・歩道部のしつらえ、低層部の表情、沿道部の表出機能、歩行者ネットワークの連続性に配慮する。

・お濠の水面と皇居の緑を楽しみながら、快適に散策できる中間領域を形成する。

・歩道のしつらえ、低層部の表情、沿道部の表出機能、歩行者ネットワークの連続性等に配慮する。

【象徴軸】 ・東京駅と皇居を結ぶ軸として象徴性・ゲート性の配慮による、素材・色彩等を勘案した、風格ある空間構成の継承

・植栽・舗装等による親しみやすい街路の形成

・アイストップ・ビスタ景の保全

【業務・交流軸】 ・地区内の3つの拠点を結び、地区内の人の流れを誘導する主要な軸

・「表通り」としての性格に配慮し、ビジネス街の玄関口としての空間構成と活気や賑わいの醸成

・銀座、日比谷地区と連携する有楽町地区の拠点

・ターミナル機能を充実しつつ、沿道部に賑わい機能を誘導し、活動的な歩行者空間を形成

・地区の玄関口としての機能に配慮し、商業機能や文化・交流機能が充実した多様な機能が融合した中間領域を形成する。

・歩道のしつらえ、低層部の表情、沿道部の表出機能、歩行者ネットワークの連続性等や特に線路沿いの補助 97号線の歩行者環境整備に配慮する。

・業務・交流軸として歩行者空間や情報・交流機能の充実及び丸の内ゾーンでの風格ある景観イメージの継承、有楽町ゾーンでの賑わい機能の連続性等に配慮した中間領域を形成する。

・歩道部のしつらえ、低層部の表情、沿道部の表出機能、歩行者ネットワークの連続性に配慮する。

・アメニティ・賑わい軸として育成用途の連続感、ヒューマンスケールの創出、街のコモンスペースを演出する緑等、通りを挟んで歩車道一体となった中間領域を形成する。

・歩道の車道側への拡幅による歩行者空間の充実や歩車道の一体感のあるしつらえ、低層部の表情、沿道部の表出機能、歩行者ネットワークの連続性等に配慮する

【アメニティ・賑わい軸】 ・街区に整然と建物が建ち並ぶ街並みを再構築し、ヒューマンスケールの「憩い」空間を創出 ・建物両側の親密感のある、活力に満ち、魅力ある街並みを実現

・建物低層部は、立地特性や建物の特性に応じて店舗や飲食店を誘導して賑わいのある通りとして整備

・象徴軸としての風格と歩行者空間の充実による親しみやすさに配慮した中間領域の形成を図る。

・歩道のしつらえ、低層部の表情、沿道部の表出機能、歩行者ネットワークの連続性等に配慮する。

丸の内駅前広場 周辺 (街並み調和型)

仲通り (賑わい形成型)

Page 73: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-062-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

 また、この地区においては、日比谷通り、行幸通り、仲通りなど、人々の歩行移動における軸が設定されており、それぞれの軸の特徴を活かした、「街並み形成型」のまちづくりのルールによって歩行空間が形成される[注 4]。   以上より、本実験においては、丸の内・有楽町ゾーンの多様な軸に着目し、実験場所の候補地を定め、街頭調査による空間評価アンケートを行ってゆくこととする[図1-1-1][図 1-1-2]。

図 1-1-1 4 つのゾーン

図 1-1-2 6 つの軸 

500m40030050 100 150 2000

N

丸の内ゾーン、有楽町ゾーン西側街並み形成型

八重洲ゾーン、有楽町ゾーン東側公開空地ネットワーク型

大手町ゾーン公開空地ネットワーク型

仲通り

内堀通り

大名小路 大名小路

日比谷通り日比谷通り

永代通り

晴海通り 行幸通り

JR東京駅

JR有楽町駅

馬場先通り

日本橋川沿い

[ 注 4] 大 手 町・ 丸 の

内・有楽町地区まちづく

りガイドライン 2008:

http://www.aurora.dti .

ne.jp/~ppp/guideline/

index.html

Page 74: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-063-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

1-2 調査方法

■目的

 前章では、歩行の阻害感・自由感に起因する歩行時の『自由度』、周辺情報量とその認識量に起因する『注意度』、空間の広がり・開放感に起因する『スケール感』、の 3つを「空間刺激」と定義した。その上で、『自由度』『注意度』『スケール感』の「認知」の仕方が感覚時間に影響を及ぼすと仮説を立てた。実験 3では、実験場所を東京駅周辺に設定し、以上のことを明らかとする。

 そこで、物理的な測定数値によって実験場所を選定するのではなく、『自由度』『注意度』『スケール感』に関する空間的要因をどう「認知」したのか、その場にいる歩行者に評価してもらう。これらを参考にすることで、空間刺激に対する「認知」の仕方がより多様になるように、実験場所を選定することを目的とする。

■概要

 前項で示した東京駅周辺の概要より、実験場所の候補地を決定し、街頭調査をアンケートにて行う。アンケートでは、調査 2にて明らかとなった、歩行の阻害感・自由感に起因する歩行時の『自由度』、周辺情報量とその認識量に起因する『注意度』、空間の広がり・開放感に起因する『スケール感』、の 3つの「空間刺激」に関する空間的要因をどう認知したのか、その場にいる歩行者に評価してもらう。 最終的に、主成分分析をこのアンケート結果に用いて分析することで、実験場所を選定する。

□実施日時 2010 年 9月 13日(月曜日) 9:00~12:00 14:00~17:00

□実験場所の候補地の選定

 前項にて示した東京駅周辺の概要より、以下の 2点を考慮して実験場所の候補地の選定を行った。

・東京駅周辺の歩行空間の軸となる日比谷通り、永代通り、仲通り、大名小路、馬場先通り、などを含めた東京駅周辺の街路を網羅する。・第 2章の基礎研究にて示した「人間の意識の中にある歩行距離」から、「90%の人が歩いても良いとする距離」200mと、「目的地まで歩いて良いとする距離」500mの間の距離を「快適に歩くことができる距離」と設定し、実験場所の候補地とする。

 以下に 1~ 20 までの実験場所の候補地を記した地図と、場所の写真を示す[図1-2-1][図 1-2-2]。

Page 75: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-064-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

図 1-2-1 実験場所の候補地

0m0m

50m100m 250m 500m

N ↑

6

5

4

7

8

9

13

14

15

16

3

111

1

12

10

20

2

1

19

18

17

Page 76: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-065-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

図 1-2-2 実験場所の候補地の写真

Page 77: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-066-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

□アンケート[図 1-2-3] 質問項目 ◇ 性別 ◇ 年齢 ◇ 職業 ◇ 訪れた目的 ◇ 訪れる頻度

 以下は、歩行の阻害感・自由感に起因する歩行時の『自由度』、周辺情報量とその認識量に起因する『注意度』、空間の広がり・開放感に起因する『スケール感』、の 3つを「空間刺激」に関する、今までの調査で抽出された空間的要因の一部である。抽出された要因の中から東京駅周辺の空間に該当するものを取捨選択し、回答数を向上させるため質問項目を最低限にした結果、以下の項目となった。

『スケール感』 ◆ 歩道の広さ              ◆ 開放感

  『自由度』 ◆ 車通り       ◆ 歩行者の多さ     

  『注意度』 ◆ 店舗の多さ              ◆ 情報量、見るものの多さ       ◆ 騒がしさ

Page 78: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-067-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

図 1-2-3 アンケート用紙

性別

毎日ではないが良く来る たまに来る ほとんど来ないほぼ毎日

現在早稲田大学で建築学を学んでいる石井宏樹と申します。卒業論文で、東京駅周辺をテーマに研究しようと

考えております。東京駅周辺を訪れる人の意識調査にご協力お願いします。なお、本アンケートは、卒業論文の

業基礎調査以外に使用することはありませんので、ご理解のほど、ご協力お願いいたします。

年代

職業

この場所にはどのくらいの頻度で来られますか?

本日、この場所に来た目的をお教えください。

現在いる場所から受ける印象について、以下の形容詞対から近いものに○をつけて下さい。

アンケートは以上です。お忙しい中、ご協力ありがとうございました。

当てはまるところのチェックボックス  に、チェック  または、答えをご記入ください。

女性男性

speednom nowdo place

10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代

仕事 ショッピング その他

会社員 専業主婦 学生 自営業

車通りが多い例) 1 2 3 4 5 車通りが少ない

その他

多いにそう思う 特に何も思わない 多いにそう思う

歩道が狭い 1 2 3 4 5 歩道が広い

閉鎖的 1 2 3 4 5 開放的

車通りが少ない 1 2 3 4 5 車通りが多い

歩行者が少ない 1 2 3 4 5 歩行者が多い

店舗が少ない 1 2 3 4 5 店舗が多い

見るもの(情報量)が少ない 1 2 3 4 5 見るもの(情報量)が多い

寂しい 1 2 3 4 5 騒がしい

Page 79: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-068-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

1-3 調査結果

■実施日時 2010 年 9月 13日(月曜日) 9:00~12:00 14:00~17:00 ■有効回答数

 60名

■属性

 20カ所の実験場所候補地につき 3つの回答を得た。 性別、職業、年齢は以下に示す[表 1-3-1][表 1-3-2][表 1-3-3]。

■実験結果

 アンケートの結果の詳細は資料編に示す。

表 1-3-1 性別

表 1-3-2 年齢

表 1-3-3 職業

性別 人数[人] 割合[%]

男性 32 53.33%

女性 28 46.67%

年齢 人数[人] 割合[%]

20代 20 33.33%

30代 15 25.00%

40代 13 21.67%

50代 10 16.67%

60代 2 3.33%

職業 人数[人] 割合[%]

会社員 45 75.00%

専業主婦 4 6.67%

学生 9 15.00%

無回答 2 3.33%

Page 80: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-069-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

1-4 分析ー主成分分析ー

 街頭調査より得られたアンケートをもとに、項目の評価に重みをつけ、『自由度』『注意度』『スケール感』を総合得点化することで、実験場所の選定をする。このために主成分分析を行った(使用ソフト名:SPSS Statistics 17)。

 主成分分析とは、いくつかの指標に重みをつけて総合指標を計算しなければならないとき、「総合指標の分散(情報量)を最大化する」という考え方で重みを定める方法である。

 以下に結果を示す。 まず、分散に着目する。 第 1因子の情報量は 40.287%、第 2因子の情報量は 22.427%、第 3因子の情報量は15.512%である。したがって第1因子から第3因子までの情報量は78.226%となる[表1-4-1][表 1-4-2]。

 

[文 6]石村貞夫:SPSS

による多変量データ解

析とその手順 , 東京図書

(1997)

表 1-4-1 説明された分散の合計

累積 %分散の %合計 累積 %分散の %合計抽出後の負荷量平方和初期の固有値

1234567 100.0002.574.180

97.4263.831.26893.5955.229.36688.36610.139.710

78.22715.5121.08678.22715.5121.08662.71422.4271.57062.71422.4271.57040.28740.2872.82040.28740.2872.820

成分成分

説明された分散の合計

因子抽出法: 主成分分析

表 1-4-2 共通性

因子抽出後初期歩道の広さ閉鎖ー開放車通りの多さ歩行者の多さ店舗の多さ情報量の多さ寂しいー騒がしい .6131.000

.7691.000

.7581.000

.7481.000

.8461.000

.8661.000

.8761.000

共通性

因子抽出法: 主成分分析

Page 81: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-070-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

 次に、因子負荷量の大きい値に着目する[表 1-4-3]。第 1因子は店舗、情報量、騒がしさといった変数に、第 2因子は車通り、歩行者の多さ、第 3因子は歩道、開放感に関連している。 これより、第 1因子=「注意度」、第 2因子=「自由度」、第 3因子=「スケール感」と名付けることとする[表 1-4-4]。

表 1-4-3 成分行列

321成分

歩道の広さ閉鎖ー開放車通りの多さ歩行者の多さ店舗の多さ情報量の多さ寂しいー騒がしい .484.286.545

.325-.031.814

.113-.555.661

.304.629.509-.230.865-.210.498-.179-.765.582.054-.731

成分行列

因子抽出法: 主成分分析a. 3 個の成分が抽出されました

表 1-4-4 実験場所候補地の因子得点

主成分分析 3因子

場所 自由度 注意度 スケール感

1.199 0.459 0.378

0.295 -1.083 0.636

-0.317 -0.608 0.292

0.149 -1.628 -0.985

0.009 -0.421 -0.816

1.220 0.281 0.734

-1.354 0.293 1.575

-0.843 -0.358 0.989

0.734 -0.809 0.481

0.363 -1.000 -1.123

-1.452 -0.569 0.427

0.023 -0.404 -0.610

-1.958 1.640 -1.478

1.273 1.548 1.575

1.283 1.733 -0.859

0.181 -0.325 -1.895

0.697 -0.997 0.440

-1.355 -0.049 1.073

0.660 0.868 -0.421

-0.807 1.429 -0.414

因子得点の低いもの

因子得点の高いもの

選定された実験場所

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

Page 82: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-071-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

 以上より、20ある実験場所候補地から以下の点を考慮した上で、それぞれの因子得点[表 1-3-4]が高い、普通、低い値をそれぞれ、『自由度』『注意度』『スケール感』から、得点の高さの組み合わせが異なるように選択し、6カ所の実験場所を決定した。 また、水色に塗られた番号が選定された実験場所を示す。

 考慮した点 ・東京駅周辺では、日比谷通り、行幸通り、仲通りなど、人々の歩行移動における軸が設定されており、それぞれの歩行空間の軸の特徴を活かした、「街並み形成型」のまちづくりのルールによって歩行空間が形成される。これより、同じ印象を受けやすいと考えられるため、連続した通りを選ばないこととした。 ・被験者に、歩行距離から歩行時間を推測させないために、同じ距離の場所は選ばないこととした。

 選定結果より、20の実験場所から『自由度』『注意度』『スケール感』3つの因子得点を 3軸の座標空間上にプロットし、選定された実験場所を示す[図 1-4-1]。

図 1-4-1 実験場所候補地の因子得点

Place Number : 1Place Number : 2Place Number : 3Place Number : 4Place Number : 5Place Number : 6Place Number : 7Place Number : 8Place Number : 9Place Number : 10

Place Number : 11Place Number : 12Place Number : 13Place Number : 14Place Number : 15Place Number : 16Place Number : 17Place Number : 18Place Number : 19Place Number : 20

-2

-1

0

1

2

-2-1012

-2-1012

10

11

1

1213

14

15

16

23

5

6

7

8

9

19

20

18

17

4

Y Data自由度

X Data

注意度

Z Data

スケール感

Page 83: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-072-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

1-5 実験場所概要

 以下に実験場所の地図、写真を示す[図 1-5-1][図 1-5-2]。 「街並み形成型まちづくり」を参考に 6箇所の実験場所の特徴を記述する。 ここにて、実験場所候補地番号を実験場所番号へ変更する。

例)実験場所候補地番号→実験場所番号:特徴の記述。  4→①:[294m]大通りである日比谷通り沿いの、空間の広がりが大きい歩行空間である。【都心景観軸】として、街区に整然と建物が建ち並び、スカイラインの統一性に配慮がなされている。

 3→②:[189m]行幸通り広場付近の歩行空間である。【象徴広場・象徴軸】として、整然としたなかにも潤いや憩いのある広場である。また、地区の「表玄関」としての景観と、東京駅と皇居を結ぶ軸として象徴性・ゲート性、2点の配慮による、素材・色彩 等を勘案した、伝統的な風格が感じられる。

 7→③:[209m]大名小路、仲通りを横切り、日比谷通りへと向かう空間である。ヒューマンスケールで親しみを感じさせる。また、整備が行き届いており、整然としている。

 11→④:[375m]仲通り沿いの歩行空間である。 【アメニティ・賑わい軸】として、街区に整然と建物が建ち並ぶ街並みを再構築し、ヒューマンスケールの「憩い」空間を創出している。また、建物低層部は、立地特性や建物の特性に応じて店舗や飲食店を誘導して賑わいのある通りとして整備されている。

 20→⑤:[364m]有楽町駅前広場周辺へと飲食店が連なりながらのびてゆく歩行空間である。沿道部ににぎわい機能を誘導し、活動的な歩行者空間を形成している。

 14 →⑥:[325m]有楽町駅前広場周辺から日比谷通りへとのびる歩行空間である。有楽町のにぎわいが顕著に表れている。

 また、以下のように、実験場所の候補地を決定する際に実験場所の距離を決定した。

 第 2 章の基礎研究にて示した「人間の意識の中にある歩行距離」から、「90% の人が 歩いても良いとする距離」200m と、「目的地まで歩いて良いとする距離」500m の間 の距離を「快適に歩くことができる距離」と設定し、実験場所の候補地とする。

Page 84: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-073-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

図 1-5-1 実験場所

0m0m

50m100m 250m 500m

N ↑

1

3

6

2

4

5

0(デモ)

Page 85: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-074-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

図 1-5-2 実験場所の写真

Page 86: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-075-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

実験 3.「東京駅周辺における空間移動実験」

2 実験方法

1-1 実験概要

■実験目的

異なる実験場所を歩行した際に、時間の感じ方が異なることを明らかにした上で、前章で得られた仮説である、以下の 3項目について明らかとする。

 歩行の『自由度』に対する「認知」の仕方(歩行阻害感、歩行自由感)が感覚時間に影響を及ぼすこと。 歩行中の『注意度』に対する「認知」の仕方(周辺情報量とその認識量)が感覚時間に影響を及ぼすこと。 歩行空間の『スケール感』に対する「認知」の仕方(開放感、空間の広がり)が感覚時間に影響を及ぼすこと。

さらに、『自由度の高さ』『注意度の高さ』『スケールの大きさ』という、認知された 3 つの空間刺激の組み合わせが感覚時間に影響を及ぼすことを明らかとする。

■実験概要

  街頭調査にて選定した東京駅周辺の 6カ所の実験場所を、21名の被験者に歩行してもらい、感覚時間に関するアンケートを行う。

Page 87: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-076-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

 

□実施日時

 2010 年 10 月 05日(火曜日) 2010 年 10 月 15日(金曜日) 9:00~12:00 14:00~17:00

□実施場所

 東京駅周辺(大手町、丸の内、有楽町)

□被験者

 早稲田大学生: 8 名   建築学生:13名

□必要機材・用具

 ストップウォッチ アンケート用紙 ルートマップ  

図 1-1-1 実験風景

図 1-1-2 実験風景

Page 88: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-077-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

図 1-1-5 実験風景

図 1-1-4 実験風景

図 1-1-3 実験風景

Page 89: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-078-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

1-2 実験の手順

 次項に実験のフローを示す[図 1-2-1]。

□実験手順

 東京駅周辺の街頭アンケートをもとに選定した 6カ所を実験場所とする。 まずはじめに、『経験の有無』という個人的要因を考慮し、被験者には実験前に全ての空間を歩行してもらう。 次に、教示[表 1-2-1]を行ったのち、実験場所以外で 1度、実際に指定されたルートを歩行し、それにかかった時間を自身で確かめるという、デモンストレーションを行う。この歩行が、その空間を移動する時間の目安となる。  1. 実験場所を実験者が先導して歩行し、被験者には先導者が止まる地点まで自由な速度で歩行してもらう。その際、被験者は各自が持つストップウォッチを経過時間を見ないように、実験者に見せるために計測する。 2. 歩行後、各自のストップウォッチを回収し、経過時間を把握する。 3. 実験場所の空間的要因の評価のアンケートを行う。

 以上の実験行程 1、2、3を 6カ所の実験場所で行う。 これらのアンケートの結果をもとに分析を進める。

□教示内容

 実験 1で得られた感覚時間に影響を及ぼす個人的要因より、『被服状態』『歩行速度』を考慮し、歩きやすい服装、自由なペースでの歩行を教示で示した[表 1-2-1]。

表 1-2-1 教示内容

教示内容

歩きやすい服装で参加すること。

指示された地点から、目的地に向かって歩くこと。

自分のペースで歩くこと。

周囲のものは自由に見ても良いが、途中で立ち止まらないこと。

時間を数えないこと。時計を外し、時間を見ないこと。

Page 90: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-079-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

図 1-2-1 実験フロー

2

3-1

3-2

3-3

4

 実験前に、被験者に全ての空間を歩行してもらう。

 教示を行ったのち、実験空間以外で1度、実際に指定されたルートを歩行し、それにかかった時間を自身で確かめるという、デモンストレーションを行う。

 実験空間を実験者が先導して歩行し、被験者には先導者が止まる地点まで自由な速度で歩行してもらう。その際、被験者は各自が持つストップウォッチを経過時間を見ないように、実験者に見せるために計測する。

 実験空間の空間的要因の評価のアンケートを行う。 

 歩行後、各自のストップウォッチを回収し、経過時間を把握する。

以上の1~3の実験行程を実験空間6カ所で行う。これらのアンケートの結果をもとに分析を進める。

□□□

□■

□□□

□■

□□□

□■

□□

□□

□ □□

□□□ □ ■

□ □■■

□□

□□

□ □■■

□□□□

□■

□□□

□□■

□□□

□■

□□□

□□

□■

□□

□□

□ □ □□■

Page 91: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-080-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

□アンケート アンケート用紙を以下に示す[図 1-2-2]。

図 1-2-2 アンケート用紙

【実験後】にお答えください。

本日は実験にご協力いただきありがとうございます。

以下のアンケートにお答えください。

日付:  2010/   / NUMBER:

名前: 性別:  女 ・ 男 DISTANCE:

場所: 年齢:      歳 SPEED:

感覚時間       : TIME:

時間の感覚の感じ方に関する質問です。( 該当するものに○をつけて下さい。 )

まったく分からなかった ほぼ正確に時間がつかめた

1 2 3 4 5

空間のイメージに関する質問です。

1 「歩行時の自由度」に関する質問です。

自由度が低い 1 2 3 4 5 自由度が高い

多いにそう思う 特に何も思わない 多いにそう思う

車通りが少ない 1 2 3 4 5 車通りが多い

歩行者が少ない 1 2 3 4 5 歩行者が多い

路上駐車が少ない 1 2 3 4 5 路上駐車が多い

信号の量が少ない 1 2 3 4 5 信号の量が多い

路面状態が悪い 1 2 3 4 5 路面状態が良い

2 「歩行時の注意度」に関する質問です。

情報量・注意度が低い 1 2 3 4 5 情報量・注意度が高い

多いにそう思う 特に何も思わない 多いにそう思う

緑が少ない 1 2 3 4 5 緑が多い

店舗が少ない 1 2 3 4 5 店舗が多い

見るもの(情報量)が少ない 1 2 3 4 5 見るもの(情報量)が多い

寂しい 1 2 3 4 5 騒がしい

3 「歩行時の空間の広がり(スケール感)」に関する質問です。

スケールが小さい スケールが大きい

空間に広がりがあまりない 空間に広がりがある

多いにそう思う 特に何も思わない 多いにそう思う

閉鎖的 1 2 3 4 5 開放的

歩道が狭い 1 2 3 4 5 歩道が広い

(車道も含む)道幅が狭い 1 2 3 4 5 (車道も含む)道幅が広い

道のりが遠くに感じた 1 2 3 4 5 道のりが近くに感じた

風景が全く変化しなかった 1 2 3 4 5 風景が著しく変化した

21 3 4 5

Page 92: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-081-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

□実験場所概要 

 以下に実験場所の地図、写真を示す[図 1-2-3][図 1-2-4]。

図 1-2-3 実験場所

0m0m

50m100m 250m 500m

N ↑

1

3

6

2

4

5

0(デモ)

図 1-2-4 実験場所の写真

Page 93: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-082-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

3 結果・考察

3-1 結果

■実施日時 2010 年 10 月 05日(火曜日) 2010 年 10 月 15日(金曜日) 9:00~12:00 14:00~17:00

■実施場所 東京駅周辺(大手町、丸の内、有楽町)6カ所 ■被験者早稲田大学建築学科学生:13名        大学生: 8 名

■実験結果 次項より、被験者 21名、実験場所 6カ所の全 126 データを結果のグラフにて示す。また、アンケートの結果の詳細は資料編に示す。

Page 94: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-083-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■実験場所別 実験場所別にみた結果を以下に示す[図 3-1]。

 特に 4の仲通り沿いの実験場所では特に短く、6の有楽町駅から日比谷通りに向かう空間では、長く感じられていることが分かる。実験場所 4、6の感覚時間は、他の空間と有意な差があることが t検定により分かった。 これより、 歩行空間の違いによって感覚時間が異なる場合があることが分かる。 しかし、同じ実験場所でも、人によって感じ方は変わる[図 3-2]。これは、その空間をどのように認知したかによるものではないだろうか。

図 3-1 実験場所別にみた感覚時間

図 3-2 実験場所 6の感覚時間

他の値に比べ絶対値の大きい値を示す

実験空間番号 1 2 3 4 5 6

第3四分点 0.21 0.21 0.17 -0.13 0.17 0.22

最大値 0.33 0.41 0.35 0.18 0.46 0.57

最小値 -0.32 -0.42 -0.38 -0.30 -0.33 -0.25

第1四分点 0.00 -0.06 -0.08 -0.25 -0.04 0.13

平均値 0.07 0.08 0.01 -0.16 0.07 0.15

人数 21 21 21 21 21 21

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

Page 95: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-084-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■空間刺激別『自由度』 『自由度』の評価数値の異なる集団別にみた結果を以下に示す[図 3-4]。

 自由度が低いと認知した場合、時間を長く感じ、高い場合は短く感じている傾向が見てとれる。 傾向をより分かりやすく見るために、評価を、「低い」「普通」「高い」の 3集団に分けたグラフを次項に示す。

図 3-4 自由度の評価数値でみる感覚時間

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

低い やや低い 普通 やや高い 高い

第3四分点 0.20 0.23 0.16 -0.05 0.19

最大値 0.28 0.57 0.28 0.21 0.41

最小値 0.06 -0.32 -0.15 -0.35 -0.42

第1四分点 0.11 0.10 -0.02 -0.20 -0.25

平均値 0.16 0.15 0.08 -0.10 -0.03

人数 8 40 19 31 28

Page 96: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-085-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■空間刺激別『自由度』 『自由度』評価の異なる 3集団別にみた結果を以下に示す[図 3-5]。

 検定をおこなったところ、「低い」「普通」「高い」のすべての組み合わせに有意な差があった。 これより、空間刺激『自由度』の認知の仕方は感覚時間に影響を及ぼすことが分かる。

図 3-5 自由度の評価数値でみる感覚時間

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

低い 普通 高い

第3四分点 0.23 0.16 0.17

最大値 0.57 0.28 0.41

最小値 -0.32 -0.15 -0.42

第1四分点 0.10 -0.02 -0.21

平均値 0.15 0.08 -0.05

人数 48 19 59

Page 97: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-086-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■空間刺激別『自由度』 『自由度』が大きく影響したものとして、「実際の歩行速度と自分の歩きたい速度の比較」した評価数値別にみた結果を以下に示す[図 3-6]。

 歩きたい速度より遅いと感じている場合には、感覚時間が長いことが分かる。

図 3-6 歩きたい速度との比較別にみる感覚時間

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

速い 少し速い 普通 少し遅い 遅い

第3四分点 0.20 0.24 0.19 0.18 0.30

最大値 0.29 0.33 0.46 0.29 0.57

最小値 -0.24 -0.25 -0.35 -0.32 0.10

第1四分点 -0.01 -0.14 -0.13 0.03 0.12

平均値 0.08 0.05 0.03 0.06 0.24

人数 6 8 83 22 7

Page 98: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-087-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■空間刺激別『注意度』 『注意度』の評価数値の異なる集団別にみた結果を以下に示す[図 3-7]。

 注意度が低いと認知した場合、時間を長く感じ、高い場合は短く感じている傾向が見てとれる。 傾向をより分かりやすく見るために、評価を、「低い」「普通」「高い」の 3集団に分けたグラフを次項に示す。 

図 3-7 注意度の評価数値の異なる集団別にみた感覚時間

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

低い やや低い 普通 やや高い 高い

第3四分点 0.23 0.26 0.16 0.18 0.16

最大値 0.27 0.41 0.22 0.46 0.57

最小値 -0.15 -0.33 -0.15 -0.42 -0.35

第1四分点 0.15 0.15 -0.02 -0.22 -0.19

平均値 0.16 0.16 0.07 -0.01 -0.01

人数 8 22 18 32 46

Page 99: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-088-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■空間刺激別『注意度』 『注意度』評価の異なる 3集団別にみた結果を以下に示す[図 3-8]。

 検定をおこなったところ、「低い - 高い」「低い - 普通」の組み合わせに有意な差があった。 これより、空間刺激『注意度』の認知の仕方は、感覚時間に影響を及ぼすことが分かる。

図 3-8 注意度の評価数値でみる感覚時間

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

低い 普通 高い

第3四分点 0.25 0.16 0.18

最大値 0.41 0.22 0.57

最小値 -0.33 -0.15 -0.42

第1四分点 0.15 -0.02 -0.12

平均値 0.16 0.07 0.02

人数 30 18 72

Page 100: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-089-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■空間刺激別『スケール感』 『スケール感』の評価数値の異なる集団別にみた結果を以下に示す[図 3-9]。

 スケール感が小さいと認知した場合、時間を長く感じ、高い場合でも長く感じている傾向が見てとれる。 傾向をより分かりやすく見るために、評価を、「小さい」「普通」「大きい」の 3集団に分けたグラフを次項に示す。 

図 3-9 注意度の評価数値の異なる集団別にみた感覚時間

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

小さい やや小さい 普通 やや大きい 大きい

第3四分点 0.27 0.17 -0.00 0.18 0.21

最大値 0.57 0.30 0.26 0.35 0.41

最小値 -0.33 -0.35 -0.30 -0.38 -0.42

第1四分点 0.07 -0.15 -0.11 -0.23 -0.08

平均値 0.15 0.01 -0.05 0.02 0.08

人数 15 47 13 27 24

Page 101: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-090-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

■空間刺激別『スケール感』 『スケール感』評価の異なる 3集団別にみた結果を以下に示す[図 3-10]。

 結果の傾向から、既往研究にて、開放感のある広い空間では時間を長く感じるという知見がある。 空間刺激『スケール感』の認知の仕方は、感覚時間に影響を及ぼすことが言えるのではないだろうか。

図 3-10 スケール感の評価数値でみる感覚時間

□感覚時間

 物理的時間と感覚時

間のずれを割合で表し

たもの。時間の感じ方

が読み取れる。

 負の値ほど時間を短

く感じていることを示

し、正の値ほど時間を

長く感じていることを

示す。

感覚時間比 =( 感覚時

間-物理的時間 ) / 物理

的時間

小さい 普通 大きい

第3四分点 0.19 0.00 0.21

最大値 0.46 0.26 0.41

最小値 -0.25 -0.30 -0.42

第1四分点 -0.13 -0.10 -0.10

平均値 0.06 -0.03 0.08

人数 62 13 51

Page 102: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-091-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

3-2 考察

 以上の結果から考察を行う。  異なる実験場所を歩行した際に、時間の感じ方が異なることを明らかとなった。

 さらに、前章で得られた仮説である、以下の 3項目についても明らかとした。

 歩行の『自由度』に対する「認知」の仕方(歩行阻害感、歩行自由感)が感覚時間に影響を及ぼすこと。 歩行中の『注意度』に対する「認知」の仕方(周辺情報量とその認識量)が感覚時間に影響を及ぼすこと。 歩行空間の『スケール感』に対する「認知」の仕方(開放感、空間の広がり)が感覚時間に影響を及ぼすこと。

  そこで、上記で明らかとした「認知」の仕方だけでなく、『自由度』『注意度』『スケール感』という、「認知」された 3 つの項目の組み合わせに着目し、感覚時間の分析を行うこととする。

Page 103: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-092-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

森典彦:ラフ集合と感性 ,

海文堂出版(2004)

* 項目の組み合わせを「決

定ルール」と呼ぶ。

4 分析

4-1 分析手法  『自由度の高さ』『注意度の高さ』『スケール感の大きさ』という、「認知」された 3 つの項目の組み合わせと感覚時間の長さに着目し、『自由度の高さ』『注意度の高さ』『スケール感の大きさ』の「認知」の仕方と感覚時間との関係性を明らかにするために、ラフ集合分析を用いることとする。

 ラフ集合の決定的な利点は、「項目の組み合わせ *による評価が可能」ということである。人は感性において、非線形な判断をすることが多いために、各属性の独立性を前提とする多変量解析などの線形的な分析では求められないことが多い。しかし、ラフ集合分析を用いれば変数が単独ではなく、組み合わせで求められる意味で、非線形な問題にも対処できる。 たとえば、多変量解析にかけると[図 4-1-1]のような、項目ごとにどのような係数のとき最も好まれるかという結果を得ることができる。しかし今回のような、感性によるアンケート調査の場合、数値では表わすことができない。また多変量分析のように細かい記述は、対象をより精密に特定するものの、本質が見極めにくくなりやすいという欠点を持っている。ラフ集合分析は、「対象の集合をうまく特定できる範囲で情報を荒くすることで、対象の集合の程よい記述を求められる手法」である。

□ C.I. 値について ラフ集合では、評価指標として C.I. 値を用いる。これは、同じ決定属性を選んだサンプルのなかで、決定ルールが占める割合を表している。

□決定属性 ラフ集合分析をする際、対になる決定属性が必要となる。“感覚時間が長い” “感覚時間が短い” とし、ラフ集合分析にかけた。また、このラフ集合ソフトウェア Ver.1.0 で使用できるサンプルの上限数が 100 であるため、サンプルはこの上限を超えない数で、“感覚時間が正確” なものを除外して行った。

 

図 4-1-1 今までの重回帰分析による結果

Page 104: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-093-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

4-2 分析4-2-1 感覚時間の短い集団の分析結果

 以下に「感覚時間が長い」集団の分析結果を示す[図 4-2-1]。□項目が 1つの場合 まず、組み合わせのない、項目が 1つの場合に着目する。 項目が 1つの場合、「自由度が低い」「スケール感が大きい」「注意度が高い」「注意度が低い」「スケール感が小さい」「自由度が高い」などが多くの割合を占める。

 上位の、特に「自由度が低い」「スケール感が大きい」といった項目は、実験 1や既往研究にて示したように、時間を長く感じさせやすいと言える。

 また、「注意度高い」「注意度が低い」など、一見矛盾した項目が存在するが、これは項目の組み合わせによるものであると理解できる。

□項目が 2つの場合 次に項目が 2つの組み合わせに着目する。 項目が 2つの場合、「注意度が低い - スケール感が大きい」「自由度が低い - スケール感が小さい」「自由度が低い - 注意度が低い」が時間を長く感じる組み合わせとして挙げられる。

 『スケール感』が大きい場合には、「注意度が低い」と時間を長く感じる。また、『スケール感』が小さい場合には、「自由度が低い」と時間を長く感じることが分かる。    長い 自由度 注意度 スケール感 C.I.値

a1 小さい a1 0.605

c3 大きい c3 0.500

b3 大きい b3 0.474

b1 小さい b1 0.474

c1 小さい c1 0.447

b1c3 小さい 大きい b1c3 0.447

a1c1 小さい 小さい a1c1 0.447

a1b3c1 小さい 大きい 小さい a1b3c1 0.421

a3 大きい a3 0.316

a3b1c3 大きい 小さい 大きい a3b1c3 0.316

a1b1 小さい 小さい a1b1 0.132

a1b1c3 小さい 小さい 大きい a1b1c3 0.105

図 4-2-1 感覚時間が長い場合

Page 105: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-094-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

□項目が 3つの場合 最終的に組み合わせが 3つの場合に着目する。 今回の実験では、以下のように認知した場合が、時間を長く感じている。

 「自由度が低い - 注意度が高い - スケール感が小さい」 「自由度が高い - 注意度が低い - スケール感が大きい」 「自由度が低い - 注意度が低い - スケール感が大きい」 

 「自由度が低い」「スケール感が大きい」といった項目は、実験 1や既往研究にて示したように、特に時間を長く感じさせることに影響している。 しかし、「自由度が高い」場合でも時間を長く感じることはある。「注意度が低く、スケール感が大きい」場合がこれにあたる。

 『スケール感』が大きい場合には、「注意度が低い」と時間を長く感じる。また、『スケール感』が小さい場合には、「自由度が低い」と時間を長く感じることが分かる。  

Page 106: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-095-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

4-2-2 感覚時間の短い集団の分析結果

 以下に「感覚時間が短い」分析結果を示す[図 4-2-2]。

□項目が 1つの場合 まず、組み合わせのない、項目が 1つの場合に着目する。 項目が 1つの場合、「注意度が高い」「自由度が高い」「スケール感が小さい」「スケール感が大きい」などが多くの割合を占める。

 上位の、特に「自由度が低い」「注意度が高い」といった項目は、時間を短く感じさせやすいと言える。

 また、「スケール感が大きい」「スケール感が小さい」など、一見矛盾した項目が存在するが、これは項目の組み合わせによるものであると理解できる。

□項目が 2つの場合 次に項目が 2つの組み合わせに着目する。 項目が 2つの場合、「自由度が高い - 注意度が高い」「注意度が高い - スケール感が大きい」「自由度が高い - スケール感が小さい」が時間を短く感じる組み合わせとして挙げられる。

 『スケール感』が大きい場合には、「注意度が高い」と時間を短く感じる。また、『スケール感』が小さい場合には、「自由度が高い」と時間を短く感じることが分かる。   

短い 自由度 注意度 スケール感 C.I.値

b3 大きい b3 0.895

a3 大きい a3 0.842

a3b3 大きい 大きい a3b3 0.763

c1 小さい c1 0.500

a3c1 大きい 小さい a3c1 0.474

c3 大きい c3 0.395

a3b3c1 大きい 大きい 小さい a3b3c1 0.395

b3c3 大きい 大きい b3c3 0.395

a3b3c3 大きい 大きい 大きい a3b3c3 0.263

a1 小さい a1 0.132

a1b3c3 小さい 大きい 大きい a1b3c3 0.132

c2 普通 c2 0.105

図 4-2-2 感覚時間が短い場合

Page 107: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-096-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

□項目が 3つの場合 最終的に組み合わせが 3つの場合に着目する。 今回の実験では、以下のように認知した場合が、時間を短く感じている。

 「自由度が高い - 注意度が高い - スケール感が小さい」 「自由度が高い - 注意度が高い - スケール感が大きい」 「自由度が低い - 注意度が高い - スケール感が大きい」 

 「自由度が高い」「注意度が高い」が多いといった項目は、実験 1や既往研究にて示したように、特に時間を短く感じさせることに影響している。 しかし、「自由度が低い」場合でも時間を短く感じることはある。「注意度が高い - スケール感が大きい」場合がこれにあたる。  『スケール感』が大きい場合には、「注意度が高い」場合だと短く感じる。また、『スケール感』が小さい場合には、「自由度が高い」場合だと短く感じることが分かる。   

Page 108: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-097-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

4-3 考察

 本実験においては、異なる実験場所を歩行した際に、時間の感じ方が異なることを示した上で、以下の仮説を明らかとした。

 歩行の『自由度』に対する「認知」の仕方(歩行阻害感、歩行自由感)が感覚時間に影響を及ぼすこと。 歩行中の『注意度』に対する「認知」の仕方(周辺情報量とその認識量)が感覚時間に影響を及ぼすこと。 歩行空間の『スケール感』に対する「認知」の仕方(空間の広がり)が感覚時間に影響を及ぼすこと。

 また、「認知」された『自由度の高さ』『注意度の高さ』『スケール感の大きさ』の組み合わせと「感覚時間が短い場合」と「感覚時間が長い場合」に着目して分析を行うことで、『自由度』『注意度』『スケール感』の 3つの「空間刺激」の関係性に対する「認知」の仕方が感覚時間に影響を及ぼすことを明らかとした。

 以下に、『自由度の高さ』『注意度の高さ』『スケール感の大きさ』のうち、2項目、3項目の組み合わせとそのときの C.I. 値 を示した表を、それぞれ、感覚時間の長い場合と短い場合で示す[表 4-3-1][表 4-3-2][表 4-3-3][表 4-3-4]。 それにより、『自由度』『注意度』『スケール感』を 3つの軸とした、3つの「空間刺激」の組み合わせが表す感覚時間のグラフを示す[図 4-3-1]。

 『自由度の高さ』『注意度の高さ』『スケール感の大きさ』がそれぞれ、矢印の向きに小さい、普通、高い、の 3段階で示され、そのときの感覚時間が長い場所、短い場所の特徴を示すものである。 このグラフは、3項目の組み合わせが座標軸にプロットされ、2項目の組み合わせは、直線で示される。また、その集団に占められる割合の高さを示す C.I. 値 の値が大きいほど、プロットされた点、直線は、 太く示される。また、2項目の組み合わせで感覚時間が長い場所では直線が黄色い点線で、また、短い場所では茶色い実線で示される。2項目の組み合わせで感覚時間が短い場所では点が黄色で、また、長い場所では茶色い実線で示される。また、プロットされた点は、感覚時間の長い場合だと、短い場合だと紫色で示される。

 グラフより、示された直線上にプロットされた点は、時間の同じ感じ方をしていることが分かる。 

Page 109: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 感覚時間に影響を及ぼす空間刺激評価 

-098-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

スケール感

点、線の太さが太いほどC.I.値が大きいことを示す

感覚時間が長い

感覚時間が短い

注意度

-1

-1

-1

+1

+1

+1

0

自由度

図 4-3-1  「空間刺激」の組み合わせが表す感覚時間のグラフ

組み合わせ 3項目 組み合わせ 2項目

短い 自由度 注意度 スケール感 C.I.値 短い 自由度 注意度 スケール感 C.I.値

a3b3c1 1 1 -1 a3b3c1 0.395 a3b3 1 1 a3b3 0.763

a3b3c3 1 1 1 a3b3c3 0.263 a3c1 1 -1 a3c1 0.474

a1b3c3 -1 1 1 a1b3c3 0.132 b3c3 1 1 b3c3 0.395

a3b3c2 1 1 0 a3b3c2 0.105 a3c2 1 0 a3c2 0.105

a3b1c1 1 -1 -1 a3b1c1 0.079

表 4-3-1  3 項目の組み合わせと CI 値

    (感覚時間の短い場合)

表 4-3-3  3 項目の組み合わせと CI 値

    (感覚時間の長い場合)

表 4-3-2  2 項目の組み合わせと CI 値

    (感覚時間の短い場合)

表 4-3-4  2 項目の組み合わせと CI 値

    (感覚時間の長い場合)組み合わせ 3項目 組み合わせ 2項目

長い 自由度 注意度 スケール感 C.I.値 長い 自由度 注意度 スケール感 C.I.値

a1b3c1 -1 1 -1 a1b3c1 0.421 b1c3 -1 1 b1c3 0.447

a3b1c3 1 -1 1 a3b1c3 0.316 a1c1 -1 -1 a1c1 0.447

a1b1c3 -1 -1 1 a1b1c3 0.105 a1b1 -1 -1 a1b1 0.132

a1b2c1 -1 0 -1 a1b2c1 0.053 a1c2 -1 0 a1c2 0.053

a2b1c3 0 -1 1 a2b1c3 0.053 a2c3 0 1 a2c3 0.053

Page 110: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

まとめ第 4 章

C h a p t e r 4

1 まとめ

2 展望

    

    終わりに

     謝辞

     参考文献

Page 111: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 4 章 まとめ 

-100-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

1 まとめ

 本研究は、 歩行者の行動と認知、時間感覚に着目し、以下のことを明らかとした。

  実験 1 歩きたい速度で歩けない、という歩行時の阻害感や自由度の制約が、大きく感覚時間に影響を及ぼしている。

 実験 2 都市歩行時に空間が与える刺激として、『自由度』『注意度』『スケール感』があり、それに対し、以下のような仮説を立てた。

 歩行の『自由度』に対する「認知」の仕方(歩行阻害感、歩行自由感)が感覚時間に影響を及ぼす。 歩行中の『注意度』に対する「認知」の仕方(周辺情報量とその認識量)が感覚時間に影響を及ぼす。 歩行空間の『スケール感』に対する「認知の」仕方(空間の広がり、開放感)が感覚時間に影響を及ぼす。

 実験 3

 実験 2 の仮説を明らかにした。 また、「認知」された『自由度の高さ』『注意度の高さ』『スケール感の大きさ』の組み合わせと「感覚時間が短い場合」と「感覚時間が長い場合」に着目して分析を行うことで、『自由度』『注意度』『スケール感』の 3 つの「空間刺激」の関係性に対する「認知」の仕方が感覚時間に影響を及ぼすことを明らかとした。

Page 112: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 4 章 まとめ 

-101-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

2 展望

  本研究では、歩行という行動中における感覚時間、また、都市空間の与える刺激に対しての認知と感覚時間、この 2 点に着目した。 そこで、都市空間の与える刺激の「認知」の仕方と、感覚時間との関係性を明らかにし、感覚時間が短く、距離が長い場合でも快適に歩けるような都市空間が備えている条件を探った。  条件を明らかにすることはできなかったものの、歩行の阻害感・自由感に関する『自由度』、周辺情報量とその認識量に関する『注意度』、空間のひろがり、開放感などに関する『スケール感』などの「認知」の仕方の組み合わせが、感覚時間に影響を及ぼすことが明らかとなった。被験者数を大幅に増やすことで、感覚時間の短い組み合わせが明らかとなることが期待される。

 しかし、本研究では、歩行目的のない状態での空間移動という基礎的な実験であったため、日常の場面を想定しきれていないという課題がある。

 今後の感覚時間研究では、買物など、歩行の目的を持った場合での調査が必要である。本研究では要素が複雑となってしまい扱うことは出来なかったが、買物行動者の心理状態か、行為か、空間的要因か、何が感覚時間に大きく作用するものかを明らかにすれば、飛躍的に研究手法が発展するだろう。

 また、通勤などで、あらかじめかかる時間の予測のついた状態では、どのように時間を感じるだろうか。時間は予測でき知っている状態であるが、時間をどう感じたかどうかについては変化しうるものである。これらの調査方法の検討も必要であろう。

 「島じかん」なる観念もある。人によって抱くイメージは違うであろうが、それが何なのか、何が影響しているのかを探ることで興味深い結果に結びつくこともあるだろう。

 また、複数の都市において感覚時間の違いを計測することで、都市性の違いが浮かび上がってくるかもしれない。

  いずれにせよ、感覚時間研究の数はまだ少ない。 時間感覚とは、五感刺激とは異なり、独自の感覚器官がない。複数の要因に左右される場合もあれば、なにか1つの要因にのみ影響されることもある、それゆえに非常に複雑で、線形モデルのように単純に表すことのできないものである。  複雑であるがゆえに、丁寧に、地道に仮説と検証とを繰り返していくことが感覚時間研究には必要であると感じられた。

Page 113: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

おわりに 

-102-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

おわりに

----- 謝辞 -----

 「睡眠」から船出した私の研究は早くも座礁した。その後、「歩行数増加、歩いて健康」という浮き輪に捕まりながら漂流していた私を拾い上げたのは「感覚時間」という巨大な帆船であった。歩みは速いものではなく、風を受けながらきまぐれに進む・・・

 ここで、船長からクルーを紹介する。 まずは、仁史先生、このような研究の場を与えていただき、ありがとうございました。 夏子さん、常に的確なアドバイスでここまで導いていただき、本当に助かりました。楽しく強く健康な夏子さん、八王子での体力には本当に驚かされました。新入りへのクルーへの「杯を乾かす」という儀式であやうく私は漂流するところでした。忘れません。また飲みにいきましょう。 林田さん、常に温かく見守っていただき、ありがとうございました。海老狸とエスカップが私を救ってくれました。 西氏、もう一度あのたこ焼きが食べたいです。オカタツ氏、航海中に歌った love you only、私たちのテーマソングです。馬淵氏、プリンターが動きません。笑。ダイエットなんてやめてさっさと飲みにいきましょう。エロジマシ、探し物はなんですか?ポケットに入ったミニマックですか?奥津氏、またあのスタバに行きたいです。親分!! JJ さん、もう悪ふざけはしないので麺珍に行きましょう。オッチーさん、CDTV をご覧のみなさん・・笑。いつも配慮をありがとうございます。たばこをせびってごめんなさい、かわ D さん、木戸さん、ゆりゆり、まーしー、しょうへい、かんなり氏、まっちょ・・うわ多い・・富田氏、ドロップが足りません!ゆかりさん、UD でサノケンがなければ私は論文を書けませんでした。ししょー、餃子が食べたいです。の D、コスプレぼくは大丈夫です。じょん、今度泊まりにいきます。ガースーはギースー?ばーちー?すぎたつさんのタイピングに憧れます。たすけさん、いつもお疲れさまです。ジャンボさん、いつもお世話になっております。ジャンボリー!笑。すみません。おー、向野くん! 小笠原航海中に出会った菖蒲さん、被験者の方々、ほんとうにありがとうございました! 父、母、そして家族、つねに気遣ってくれたおかげで今の体調があります。ありがとう。おじいちゃん、今度お見舞いにいきます。

 そして田名網祐さん、坂田礼子大先生、ほんとうにありがとうございます。 研究を進める、論文を書き上げる、常にお二人の助力があったからこその論文です。 論文でここまで積極的にやれて、本当に幸せでした。  ありがとうございました。   ただただ、ありがとうございました。 11 日のプレゼンは残っていますが、あとはおふたりの修論です。 精一杯応援させていただきます。 ー第 1 部航海を終えて。ー ー第 2 部航海へー  2010 年 11 月 8日     石井宏樹

Page 114: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

参考文献 

-103-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

ー参考文献ー

 ■既往論文

 [論文 ]杉山郁夫:移動の質の定量化に基づく歩行空間の評価方法 に関する研究(2005)

 [論文 1]矢川麻紀子:感覚時間による場と人との交換作用の指標化[1999]

 [論文 2]矢川麻紀子:人と場の関わりと感覚時間に関する基礎的考察[2001]

 [論文 3]藤本麻起子:歩行空間における感覚時間に関する研究[2004]

 [論文 4]矢川麻起子:人と人の位置関係がもたらす居心地と感覚時間[2002]

 [論文 5]藤本麻起子:照度・色温度を制御した室内における感覚時間の変化に関する研究[2003]

 [論文 6]大野隆造:歩行移動時の距離知覚に及ぼす経路の形状と周辺環境の影響歩行経路 , 日本建築学会計画系論文集 No.580,Pp.79-[2004]

 [論文 7]MILGRAM S.:<no title>, Environment and cognition[1973]

 [ 論 文 8]SADALLA E. K.:Retrieval prosesses in distance cognition , Memory and Cognition 7, 291-296, [1979]

 [ 論 文 9]SADALLA E. K.:The perception of traversed distance , Environment and Behavior 12(1), 65-79, [1980]

 [ 論 文 10]SADALLA E. K.:The perception of traversed distance-intersections , Environment and Behavior 12(2), 167-182, [1980]

Page 115: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

参考文献 

-104-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

ー参考文献ー

 ■既往論文

 [ 論 文 11] STAPLIN L. J.:Distance cogntion in urban environments , Professional Gepgrapher 33(3), 302-310, [1981]

 [ 論 文 12]ALLEN G. L.:A developmental perspective on the diffects of "subdividing" macrospatial experience , Journal of Experimental Psychology, Human Learnin and Memory 7, 120-132, [1981]

 [ 論 文 13]ALLEN G. L.:Effects of the cognitive organization of route knowledge on judgements of macrospatial distance , Memory and Cognition 13, 218-227,[1985]

 [ 論 文 14]BRIGGS R.:Methodologies for the mesurement of cognitive distance , Environmental Knowing, Theories, Research and Methods, [1976]

 [ 論 文 15]APPLEYARD D.:Styles and Methods of Structuring A City , Environment and Behavior 2(1), 100-116, [1970]

 [ 論 文 16]CANTER D.:Distance estimation in cities , Environment and Behavior 7(1), 59-80, [1975]

 [ 論 文 17]LEE T. R.:Perceived distance as a function of direction in the city , Environment and Behavior 2(1), 40-51, [1970]

 [論文 18]大野隆造:通い慣れた屋外経路における歩行者の距離認知に関する研究[2001]

 [ 論 文 19]OKABE A.:Distance and direction judgment in a large-scale natural environment, Effects of a slope and winding trail , Environment and Behavior 18(6), 755-772, 1986

Page 116: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

参考文献 

-105-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

ー参考文献ー

 ■既往論文

 [論文 20]五十嵐日出夫:環境要因を考慮した意識距離に関する研究、土木学会 第 53 回年次学術講演会講演概要集第 4 部、pp.772- 773[1998]

 [論文 21]西出和彦:歩行時における空間の距離認知[1999]

 [論文 22]大野隆造:通い慣れた屋外経路における歩行者の距離認知に関する研究 , 日本建築学会計画系論文集 No.549, Pp.193-198,[2001]

 [論文 23]大野隆造:歩行移動時の距離知覚に及ぼす経路の形状と周辺環境の影響歩行経路 , 日本建築学会計画系論文集 No.580,Pp.79-[2004]

 [論文 24]西出和彦:地下歩行空間における認知距離に関する研究[2008]

 [論文 25]鈴木聡士 : 意識距離の短縮効果を有する歩行空間の創出に関する基礎的研究、地域学研究第 32 巻第 1 号、pp.173-188[2002]

 [論文 26]大野隆造:地下鉄駅における主観的な移動距離および深さに影響する環境要因 , 日本建築学会計画系論文集 No.610,P.87-92,[2006] 

 [論文 27]渡辺仁史:建築計画における行動シミュレーションに関する研究[1978]

 [論文 28]樫村:観覧空間における歩行速度の変化に関する研究[2000]

Page 117: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

参考文献 

-106-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

ー参考文献ー

 ■参考文献

[注 1]エアロハウス HP:http://www.aerohouse.net/

[注 2]伊勢神宮式年遷宮広報本部 公式ウェブサイト:http://www.sengu.info/index.html

[注 3]http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsts2/shushi.html 日本時間学会ホームページ

[注 4]大手町・丸の内・有楽町地区まちづくりガイドライン 2008:http://www.aurora.dti.ne.jp/~ppp/guideline/index.html

[注 5]大手町・丸の内・有楽町地区まちづくりガイドライン 2008 , 資料編p7

[注 6]文献: http://www.human.ac.jp/gakusei/dayori/memo.php?p=14

[注 7]内閣府「体力・スポーツに関する世論調査平成 18 年」

[注]wikipedia:http://en.wikipedia.org/wiki/Main_Page

Page 118: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

参考文献 

-107-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

ー参考文献ー

 ■参考文献

[文 1]ケヴィン・リンチ/東京大学大谷幸夫研究室訳:時間の中の都市 - 内部の時間と外部の時間 - , 鹿島出版会 , [1975]

[文 2]松田文子:心理的時間ーその広くて深いなぞ , 北大路書房 , [1996]

[文 3]一川誠:大人の時間はなぜ短いのか , 集英社新書 , [2008]

[文 4]一川誠:時計の時間、心の時間 , 教育評論社 , [2009]

[文 5]日本建築学会編:設計資料集成 3 , 単位空間 1 , 丸亀

[文 6]石村貞夫:SPSS による多変量データ解析とその手順 , 東京図書(1997)

[文 7]森典彦:ラフ集合と感性 , 海文堂出版(2004)

[文 8]石村貞夫:SPSS による分散分析と多重比較の手順 , 東京図書(1997)

Page 119: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編第二部

P a r t Ⅱ D a t a

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

Page 120: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響 -109-

基礎研究

D a t a

Page 121: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-110-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

感覚時間が短い場合時間が速く過ぎ去ったと感じる場合

天候気候昼

晴れた日

気持ち不安

笑っている

考え事をしている

わくわくしている体調酔っている

空腹歩行状態

何も考えずに歩けるとき

今、自分がどれくらい歩いたか自覚している時

ナビをしてもらっている時

目的地あり なし

考え方寄り道をしている

興味の有る場所

何も考えていない時

考え事をしている時

見知らぬ場所

人ごみ

歩行環境

あえて「歩く」という手段をとった時

往路か復路か

信号の量

曲がり道

風景が変わる

歩きやすさ

~しながらサンダルをはいた時

新しい靴を履いた時

探し物をしながら

音楽を聴きながら

友人といるとき

話しながら

デート中

場所川のそば

ショッピング

下北沢ぶらぶら

ディズニーランド

商店街

天候気候夜

湿度

気温

天候

気持ち不安

焦り

緊張

体調腹痛

空腹

睡眠不足

周辺環境人ごみ

人の流れの方向

群衆密度

歩行環境往路か復路か

信号の量

人がいるかいないか

直線かどうか

同じ風景

歩きやすさ

~しながら迷っている時

ヒールを履いている時

空いている

感覚時間が長い場合時間が遅く過ぎ去ったと感じる場合

時間の感じ方が普段と変わるさまざまな場面[ブレインストーミングによる]

Page 122: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-111-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

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歩行目的別における時感の感じ方とその理由[ブレインストーミングによるもの]

Page 123: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-112-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

実験 1

D a t a

Page 124: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-113-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

80m/ 分

100m/ 分

Page 125: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-114-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

40m/ 分

60m/ 分

Page 126: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-115-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 2章 感覚時間に影響する因子の抽出実験 

-115-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

実験 1結果生データA3× 5枚

80m/分 16 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.02 04:53 293 -0.05 10:27 627

80m/分 17 ○ ○ ○ ○ 無回答 無回答 無回答 無回答 無回答 ○ -0.03 05:10 310 -0.10 11:00 660

80m/分 18 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.07 05:20 320 -0.13 11:20 680

80m/分 19 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.16 05:49 349 -0.23 12:15 735

80m/分 20 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.03 04:50 290 -0.17 11:44 704

80m/分 21 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.10 04:30 270 0.05 09:29 569

80m/分 22 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.17 05:52 352 -0.02 10:09 609

80m/分 23 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.07 04:40 280 -0.02 10:12 612

80m/分 24 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.19 04:02 242 0.08 09:12 552

80m/分 25 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.02 05:05 305 0.03 09:41 581

60m/分 1 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.37 06:50 410 -0.49 14:53 893

60m/分 2 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.50 07:31 451 -0.31 13:03 783

60m/分 3 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.47 07:20 440 -0.46 14:33 873

60m/分 4 ○ ○ ○ ○ ○ 無回答 無回答 -0.50 07:31 451 -0.33 13:15 795

60m/分 5 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.40 06:59 419 -0.38 13:45 825

60m/分 6 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.48 07:25 445 -0.32 13:11 791

60m/分 7 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.32 06:35 395 -0.20 11:57 717

60m/分 8 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.61 08:03 483 -0.50 14:58 898

60m/分 9 ○ ○ 無回答 無回答 ○ ○ ○ -0.42 07:05 425 -0.48 14:50 890

60m/分 10 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.70 08:30 510 -0.50 15:00 900

60m/分 11 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.17 05:50 350 -0.05 10:30 630

60m/分 12 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.26 06:18 378 -0.18 11:49 709

60m/分 13 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.08 05:25 325 0.08 09:10 550

60m/分 14 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.25 03:45 225 0.10 09:03 543

60m/分 15 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.08 04:35 275 0.10 09:03 543

60m/分 16 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.30 06:30 390 -0.34 13:23 803

60m/分 17 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.37 06:50 410 -0.25 12:28 748

60m/分 18 ○ ○ ○ ○ 無回答 無回答 無回答 無回答 無回答 ○ -0.55 07:45 465 -0.27 12:39 759

60m/分 19 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.51 07:32 452 -0.28 12:49 769

60m/分 20 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.33 06:40 400 -0.11 11:07 667

60m/分 21 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.63 08:10 490 -0.50 14:58 898

60m/分 22 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.35 06:45 405 -0.19 11:53 713

60m/分 23 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.33 06:40 400 -0.26 12:34 754

60m/分 24 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.48 07:23 443 -0.39 13:55 835

60m/分 25 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.47 07:21 441 -0.21 12:06 726

60m/分 26 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.46 07:19 439 -0.21 12:07 727

60m/分 27 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.46 07:18 438 -0.49 14:55 895

40m/分 1 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.15 04:15 255 -0.03 10:18 618

40m/分 2 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.10 04:30 270 -0.25 12:30 750

40m/分 3 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.43 02:52 172 -0.03 10:20 620

40m/分 4 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.43 02:52 172 -0.00 10:02 602

40m/分 5 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.17 04:10 250 -0.07 10:41 641

40m/分 6 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.03 04:50 290 -0.13 11:20 680

40m/分 7 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.22 03:55 235 0.10 09:00 540

40m/分 8 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.20 04:00 240 0.06 09:24 564

40m/分 9 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.37 03:10 190 0.08 09:10 550

40m/分 10 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.42 02:55 175 0.08 09:12 552

40m/分 11 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.17 04:09 249 -0.07 10:42 642

40m/分 12 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.28 03:37 217 -0.00 10:01 601

40m/分 13 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.16 04:12 252 -0.50 15:00 900

40m/分 14 ○ ○ ○ ○ ○ ○ -0.08 05:25 325 -0.42 14:10 850

40m/分 15 ○ ○ ○ ○ 無回答 無回答 無回答 無回答 無回答 無回答 無回答 0.05 04:45 285 0.00 10:00 600

40m/分 16 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.18 04:05 245 0.17 08:20 500

40m/分 17 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.08 04:35 275 -0.04 10:22 622

40m/分 18 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.16 04:12 252 0.08 09:10 550

40m/分 19 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.17 04:10 250 -0.07 10:40 640

40m/分 20 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.08 04:35 275 -0.11 11:07 667

40m/分 21 ○ ○ 無回答 無回答 ○ ○ ○ 0.12 04:25 265 -0.12 11:10 670

40m/分 22 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.08 04:35 275 -0.04 10:25 625

40m/分 23 ○ ○ ○ 無回答 無回答 ○ ○ 0.09 04:32 272 0.04 09:37 577

40m/分 24 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.09 04:32 272 0.04 09:37 577

40m/分 25 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.17 04:10 250 0.07 09:17 557

40m/分 26 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 0.17 04:10 250 0.01 09:52 592

合計 63 40 51 50 84 17 88 12 17 14 16 32 52 88 11 -0.15 346 -0.16 694

結果:実験.1

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都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

-120-

有意差なし

有意差なし

『性別』の違いによる感覚時間の差

『身長 170cm未満、以上か』の違いによる感覚時間の差

有意差あり

『経験の有無』の違いによる感覚時間の差

実験 .1 検定結果 (5 分間)

Page 132: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-121-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

有意差あり

有意差あり

有意差あり 有意差あり

等分散でない

有意差あり

どのサンプル間に差があるか

サンプル間に差があるか

等分散かどうか

『歩きたい速度との違い』:「遅い -少し速い」「遅い -速い」「少し遅い -少し速い」「少し遅い -速い」で有為差がみられた。

『実際の歩行速度と歩きたい速度との比較』の違いによる感覚時間の差

実験 .1 検定結果 (5 分間)

Page 133: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-122-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

性別

実験 .1   グラフによる結果 (10 分間)

身長

Page 134: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-123-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

被服状態

実験 .1   グラフによる結果 (10 分間)

経験の有無

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-124-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

歩きたい速度との比較

実験 .1   グラフによる結果 (10 分間)

速度

Page 136: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-125-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

有意差なし

有意差なし

『性別』の違いによる感覚時間の差

『身長 170cm未満、以上か』の違いによる感覚時間の差

有意差なし

『経験の有無』の違いによる感覚時間の差

実験 .1 検定結果 (10 分間)

Page 137: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-126-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

調査 2

D a t a

Page 138: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-127-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

6/28 銀座 sample no.1

調査中の歩行軌跡

Page 139: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-128-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

7/02 銀座 sample no.1

調査中の歩行軌跡

Page 140: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-129-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

7/08 丸の内 sample no.2

調査中の歩行軌跡

Page 141: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-130-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

街頭調査

D a t a

資料編 

Page 142: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-131-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

9/13 街頭調査ーアンケートー

Page 143: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

第 3章 東京駅周辺における空間移動実験 

-132-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

街頭調査結果生データA3× 1枚

23 8 女 20代 学生 買い物 まれに 4 5 4 4 4 4 3

24 8 女 20代 会社員 仕事 頻繁に 5 5 4 3 4 3 3

25 9 男 50代 会社員 仕事 まれに 5 5 4 1 1 1 3

26 9 男 30代 会社員 仕事 毎日 5 5 5 3 4 4 4

27 9 男 40代 会社員 仕事 たまに 5 4 5 5 1 3 3

28 10 男 20代 会社員 仕事 たまに 4 3 5 3 4 3 3

29 10 女 30代 会社員 仕事 まれに 4 5 4 4 1 1 4

30 10 男 40代 会社員 仕事 毎日 4 4 5 4 1 1 3

31 11 女 40代 その他 その他 まれに 5 5 4 1 1 1 3

32 11 男 40代 会社員 仕事 毎日 4 5 3 1 4 3 3

33 11 女 30代 専業主婦 買い物 まれに 5 5 3 3 5 4 3

34 12 女 20代 会社員 買い物 まれに 5 1 5 1 4 1 3

35 12 男 30代 会社員 仕事 毎日 5 3 4 1 4 4 4

36 12 女 40代 専業主婦 買い物 たまに 5 3 5 3 3 4 4

37 13 女 20代 学生 バイトの面接 まれに 3 4 1 4 5 4 4

38 13 男 50代 会社員 その他 たまに 1 1 4 1 4 4 3

39 13 女 20代 学生 買い物 たまに 1 1 4 4 4 4 3

40 14 男 30代 会社員 仕事 たまに 5 3 5 5 1 5 4

41 14 男 50代 会社員 仕事 頻繁に 4 3 4 5 5 5 5

42 14 女 20代 会社員 仕事 頻繁に 4 1 4 5 3 5 5

43 15 男 50代 会社員 買い物 毎日 3 4 5 4 4 4 4

44 15 女 20代 学生 買い物 たまに 1 4 5 5 5 5 4

45 15 女 20代 学生 買い物 まれに 1 1 5 5 3 3 5

46 16 男 50代 会社員 仕事 たまに 1 1 5 4 1 1 5

47 16 女 20代 学生 買い物 たまに 5 4 4 4 1 1 1

48 16 女 50代 会社員 仕事 まれに 4 3 3 3 3 4 3

49 17 女 20代 学生 ライブ まれに 5 5 4 3 3 4 3

50 17 女 30代 無回答 買い物 たまに 5 5 5 4 1 1 4

51 17 男 40代 会社員 仕事 たまに 5 4 5 3 1 1 5

52 18 女 30代 会社員 仕事 毎日 5 4 4 4 4 5 3

53 18 女 30代 専業主婦 買い物 たまに 5 5 4 3 4 1 4

54 18 男 40代 会社員 仕事 毎日 5 4 4 3 3 3 3

55 19 女 40代 会社員 その他 まれに 4 1 4 5 1 1 1

56 19 女 20代 会社員 仕事 毎日 4 4 5 5 5 5 5

57 19 男 20代 会社員 仕事 毎日 4 1 4 5 3 3 3

58 20 男 30代 会社員 仕事 たまに 3 3 4 3 4 4 3

59 20 男 20代 会社員 仕事 毎日 4 4 1 4 4 4 4

60 20 男 30代 会社員 仕事 頻繁に 1 1 4 3 5 5 5

結果:街頭調査

Page 144: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-133-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

FACTOR /VARIABLES 歩道の広さ 閉鎖ー開放 車通りの多さ 歩行者の多さ 店舗の多さ 情報量の多さ 寂しいー騒がしい /MISSING LISTWISE /ANALYSIS 歩道の広さ 閉鎖ー開放 車通りの多さ 歩行者の多さ 店舗の多さ 情報量の多さ 寂しいー騒がしい /PRINT INITIAL KMO EXTRACTION FSCORE /PLOT EIGEN ROTATION /CRITERIA FACTORS(3) ITERATE(99) /EXTRACTION PC /ROTATION NOROTATE /SAVE REG(ALL) /METHOD=CORRELATION.

因子分析

出力の作成日付コメントデータ

アクティブ データセットフィルタ重み付け分割ファイル作業データファイル内の行数欠損値の定義

使用されたケース

シンタックス

プロセッサ時間経過時間必要な最大メモリFAC1_5FAC2_5FAC3_5

入力

欠損値処理

リソース

作成された変数

成分得点 3成分得点 2成分得点 17692 (7.512K) バイト0:00:00.4850:00:00.469

F A C TO R /VARIABLES 歩道の広さ 閉鎖ー開放 車通りの多さ 歩行者の多さ 店舗の多さ 情報量の多さ 寂しいー騒がしい /MISSING LISTWISE /ANALYSIS 歩道の広さ 閉鎖ー開放 車通りの多さ 歩行者の多さ 店舗の多さ 情報量の多さ 寂しいー騒がしい /PRINT INITIAL KMO EXTRACTION F S CO R E /PLOT EIGEN ROTATION /CRITERIA FACTORS(3) ITERATE(99) /EXTRACTION PC /ROTATION NOROTATE /SAVE REG(ALL) /METHOD=CORRELATION.

LISTWISE: 統計量はすべての変数に欠損値がないケースに基づいています。

MISSING=EXCLUDE: ユーザー欠損値は欠損として取り扱われます。

24<なし><なし><なし>データセット2

C:\Documents and Settings\健康ゼミ\デスクトップ\winishii\20101001項目数12.sav

02-10-2010 18:31:19

記録

[データセット2] C:\Documents and Settings\健康ゼミ\デスクトップ\winishii\20101001項目数12.sav

Page 13

Kaiser-Meyer-Olkin の標本妥当性の測度近似カイ2乗自由度有意確率

Bartlett の球面性検定

.00221

44.454

.571

KMO および Bartlett の検定

因子抽出後初期歩道の広さ閉鎖ー開放車通りの多さ歩行者の多さ店舗の多さ情報量の多さ寂しいー騒がしい .6131.000

.7691.000

.7581.000

.7481.000

.8461.000

.8661.000

.8761.000

共通性

因子抽出法: 主成分分析

累積 %分散の %合計 累積 %分散の %合計抽出後の負荷量平方和初期の固有値

1234567 100.0002.574.180

97.4263.831.26893.5955.229.36688.36610.139.710

78.22715.5121.08678.22715.5121.08662.71422.4271.57062.71422.4271.57040.28740.2872.82040.28740.2872.820

成分成分

説明された分散の合計

因子抽出法: 主成分分析

Page 14

 街頭調査 ー主成分分析ー

成分番号7654321

固有値

3.0

2.5

2.0

1.5

1.0

0.5

0.0

因子のスクリー プロット

321成分

歩道の広さ閉鎖ー開放車通りの多さ歩行者の多さ店舗の多さ情報量の多さ寂しいー騒がしい .484.286.545

.325-.031.814

.113-.555.661

.304.629.509-.230.865-.210.498-.179-.765.582.054-.731

成分行列a

因子抽出法: 主成分分析a. 3 個の成分が抽出されました

Page 15

3 の成分1.0 0.

5 0.0-0.5 -1

.0

2

の成分

1.0

0.5

0.0

-0.5

-1.0

1 の成分1.00.50.0-0.5-1.0

寂しいー騒がしい

情報量の多さ

歩行者の多さ

店舗の多さ

歩道の広さ

閉鎖ー開放

車通りの多さ

成分プロット

321成分

歩道の広さ閉鎖ー開放車通りの多さ歩行者の多さ店舗の多さ情報量の多さ寂しいー騒がしい .446.182.193

.300-.020.289

.104-.353.235

.280.401.181-.212.551-.075.459-.114-.271.536.034-.259

主成分得点係数行列

因子抽出法: 主成分分析 成分得点

321123 1.000.000.000

.0001.000.000

.000.0001.000成分成分

成分得点共分散行列

因子抽出法: 主成分分析 成分得点

FACTOR /VARIABLES 歩道の広さ 閉鎖ー開放 車通りの多さ 歩行者の多さ 店舗の多さ 情報量の多さ

Page 16

Page 145: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-134-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

実験 3

D a t a

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-135-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

Page 147: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-136-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

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-137-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

実験 1結果生データA3× 20 枚

23 8 女 20代 学生 買い物 まれに 4 5 4 4 4 4 3

24 8 女 20代 会社員 仕事 頻繁に 5 5 4 3 4 3 3

25 9 男 50代 会社員 仕事 まれに 5 5 4 1 1 1 3

26 9 男 30代 会社員 仕事 毎日 5 5 5 3 4 4 4

27 9 男 40代 会社員 仕事 たまに 5 4 5 5 1 3 3

28 10 男 20代 会社員 仕事 たまに 4 3 5 3 4 3 3

29 10 女 30代 会社員 仕事 まれに 4 5 4 4 1 1 4

30 10 男 40代 会社員 仕事 毎日 4 4 5 4 1 1 3

31 11 女 40代 その他 その他 まれに 5 5 4 1 1 1 3

32 11 男 40代 会社員 仕事 毎日 4 5 3 1 4 3 3

33 11 女 30代 専業主婦 買い物 まれに 5 5 3 3 5 4 3

34 12 女 20代 会社員 買い物 まれに 5 1 5 1 4 1 3

35 12 男 30代 会社員 仕事 毎日 5 3 4 1 4 4 4

36 12 女 40代 専業主婦 買い物 たまに 5 3 5 3 3 4 4

37 13 女 20代 学生 バイトの面接 まれに 3 4 1 4 5 4 4

38 13 男 50代 会社員 その他 たまに 1 1 4 1 4 4 3

39 13 女 20代 学生 買い物 たまに 1 1 4 4 4 4 3

40 14 男 30代 会社員 仕事 たまに 5 3 5 5 1 5 4

41 14 男 50代 会社員 仕事 頻繁に 4 3 4 5 5 5 5

42 14 女 20代 会社員 仕事 頻繁に 4 1 4 5 3 5 5

43 15 男 50代 会社員 買い物 毎日 3 4 5 4 4 4 4

44 15 女 20代 学生 買い物 たまに 1 4 5 5 5 5 4

45 15 女 20代 学生 買い物 まれに 1 1 5 5 3 3 5

46 16 男 50代 会社員 仕事 たまに 1 1 5 4 1 1 5

47 16 女 20代 学生 買い物 たまに 5 4 4 4 1 1 1

48 16 女 50代 会社員 仕事 まれに 4 3 3 3 3 4 3

49 17 女 20代 学生 ライブ まれに 5 5 4 3 3 4 3

50 17 女 30代 無回答 買い物 たまに 5 5 5 4 1 1 4

51 17 男 40代 会社員 仕事 たまに 5 4 5 3 1 1 5

52 18 女 30代 会社員 仕事 毎日 5 4 4 4 4 5 3

53 18 女 30代 専業主婦 買い物 たまに 5 5 4 3 4 1 4

54 18 男 40代 会社員 仕事 毎日 5 4 4 3 3 3 3

55 19 女 40代 会社員 その他 まれに 4 1 4 5 1 1 1

56 19 女 20代 会社員 仕事 毎日 4 4 5 5 5 5 5

57 19 男 20代 会社員 仕事 毎日 4 1 4 5 3 3 3

58 20 男 30代 会社員 仕事 たまに 3 3 4 3 4 4 3

59 20 男 20代 会社員 仕事 毎日 4 4 1 4 4 4 4

60 20 男 30代 会社員 仕事 頻繁に 1 1 4 3 5 5 5

結果:街頭調査

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Page 163: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
Page 164: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
Page 165: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
Page 166: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
Page 167: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
Page 168: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響
Page 169: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-158-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

等分散

有意差あり

有意差あり

有意差あり

有意差あり

有意差あり

有意差あり

有意差あり

等分散かどうか

実験空間:「1-4」「2-4」「3-4」「5-4」「6-4」で有意差がみられた。

どのサンプル間に差があるか

サンプル間に差があるか

実験空間の違いによる感覚時間の有意差があるか

実験 .3 検定結果

Page 170: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-159-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

有意差あり

有意差あり

有意差あり 有意差あり

等分散でない

どのサンプル間に差があるか

サンプル間に差があるか

等分散かどうか

『自由度』:「低い -高い」「普通 - 低い」「普通 - 高い」で有為差がみられた。

『自由度』の高さの違いによる感覚時間の差

実験 .3 検定結果

Page 171: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-160-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

有意差あり

有意差あり

有意差あり 有意差なし

どのサンプル間に差があるか

サンプル間に差があるか

等分散かどうか

『注意度』:「低い -高い」「普通 - 低い」で有意差がみられた。

『注意度』の高さの違いによる感覚時間の差

等分散でない

実験 .3 検定結果

Page 172: 都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

-161-都市歩行時における行動と認知が感覚時間に及ぼす影響

資料編 

有意差なし

等分散である

サンプル間に差があるか

等分散かどうか

『スケール感』:有為差がみられなかった。

『スケール感』の大きさの違いによる感覚時間の差

有意差なし

等分散でない

サンプル間に差があるか

等分散かどうか

『歩きたい速度との比較』:有為差がみられなかった。

『歩きたい速度との比較』の速さの違いによる感覚時間の差

実験 .3 検定結果