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松下ヨシナリ世界耐久報告書

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松下ヨシナリが2011年に参戦した世界耐久の報告書です

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ご挨拶

関係者各位                           2012年 1月 吉日    

拝啓

寒さが身に染むこの頃ではありますが、皆様ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。また平素より格別のお引き立てを賜り、深く感謝を申し上げます。マン島TTレースの前後に開催され、参戦させて頂きましたFIM世界耐久選手権、第1戦ボルドール24時間耐久(4月)と、第4戦ル・マン24時間耐久(9月)のご報告を本書面にて報告させて頂きます。

2011年未曾有の災害に見舞われ、様 な々葛藤と、想いを携えての初挑戦となった世界耐久戦ですが「自分自身のできる活動を、全力で行うことで、復興に向け勇気と元気を発信したい」との想いから、参戦を決行致しました。

詳細は別紙の掲載誌に譲りますが、ボルドールもルマンも、夢の24時間耐久の舞台は、決して甘いものではなく、どちらも完走叶わず、辛酸を舐める結果となりました。しかし、これは、自分にとって新しいチャレンジの始まりなのだと考えました。自分に出来ることは、この賭けるべき挑戦の場を日本の皆さんに伝え、発信することです。そして、わたくしに続くあらたな挑戦者が多く出ることを願っています。このチャレンジを独りでも多くの方々に届けることこそ、私の役割なのだと感じながら、報告書を作成しております。

今後もオートバイを楽しみながら、業界の発展、そして日本の復興に貢献していけるならこれほど幸せなことはございません。本年度もますますのご支援、ご鞭撻を賜りたくどうぞよろしくお願い申し上げます。

敬具モーターサイクルジャーナリスト

松下ヨシナリ

Photograph by Takuro Nagami

- 2 -2011 Copyright (c) club TROFE. All rights reserverd.

Photograph by TakaoIsobe.

- 3 -2011 Copyright (c) club TROFE. All rights reserverd.

ボルドール 2 4 時 間 耐 久 レ ー ス

2011年 4月16日(土)~4月17日(日)決勝レース

初めての24時間レース参戦 4月12日(火)にフランスに渡り、ボルドー郊外のマニクールサーキットへ移動。私にとって、初めての海外の国際サーキット。初めてのS1000RRレーシングマシン。初めてのチーム。初めてのピレリータイヤという、とにかく初めてづくしのチャレンジでした。不安をかかえる私でしたが、チームの面々は暖かく迎えてくれ、終始リラックスして走行することが出来ました。マニクールサーキットは独特なアップダウンというかウネリを持ち、ブラインドコーナーと長いストレートを持つ、日本にはないテクニカルな高速コースで、攻略に苦戦しましたが、予選の最後には31番車に乗るライダーの中でトップタイムを記録し、高い評価を得ることに成功し、決勝レースに臨むこととなりました。

ギッシリ埋まった観客席ヨーロッパで、耐久レース選手権は非常に人気が高く、75回を数える伝統のボルドールを観戦しようと10万人を優に超えるファンが押し寄せ、スタート時には「まるでアリの這い出る隙間もないのではないか」と思うほど、ギッシリ人で埋め尽くされたスタンドに、僕は感動すら憶えました。

栄誉と悪夢FIM世界耐久選手権のSSTクラスに2台のBMW S1000RRでフル参戦しているドイツの有力チーム『PENZ13.com BMW Racing Team』は、第1チームがゼッケン13番。第2チームがゼッケン31番をつけて参戦。その第2チーム。ゼッケン#31番車で、急遽24時間に参戦することになった私でしたが、予選でのタイムが良かったこともあり、チームからは栄誉あるスタートライダーを指名されました。しかし、スタート後わずか4周の第2コーナーで転倒してしまうのです。その後、約50分のロスを経てマシンを修復し、レースに復帰するものの、第3ライダーの転倒により、マシンに決定的なダメージを負い、スタート後4時間でのリタイヤとなってしまいました。

非常に残念な想いでしたが、この急な参戦での私のライディングが高評価され、この後5月~6月のマン島TTレースでの完走も手伝い、チームから「9月のルマン24時間も一緒に戦わないか?」とオファーを頂くことになったのです。

RESULT

■予選    BEST TIME 1′46″992 SSTクラス17位 予選総合44位

■24Hレース  リタイヤ(4時間)

Photograph by TakaoIsobe.

- 4 -2011 Copyright (c) club TROFE. All rights reserverd.

ル・マン 2 4 時 間 耐 久 レ ー ス

2011年 9月24日(土)~9月25日(日)決勝レース

耐久レースの聖地、Lu Mans へ オートバイのル・マン24時間耐久は、4輪車とは異なるコースで行われます。2輪は13キロにも及ぶ4輪コースの一部分に当たる、ブガッティーサーキットと呼ばれる約4.5キロのトラックが舞台となります。人生2回目のフランスは、耐久レースの聖地ル・マンということになりました。コース自体はボルドール24hの舞台となるマニクールサーキットよりは単純なレイアウトですが、それゆえ難しさもありました。今回の参戦に当たり「確実に24時間を走り切る」という至上命題のもと、無理はせずに確実に、淡 と々走行することを予選から心掛けました。結果、スターティンググリッドは偶然4月のボルドールと同じ、総合44番となりました。

まさかのスタートライダー指名タイムを抑え気味に走行していたので、31番車ではタイム的には1番遅かったのですが、マン島TTを共に走り切ったチームオーナーのリコ・ペンツコファー氏は、私の実力を高く評価してくれており、ボルドールに引き続き、松下をスタートライダーに指名しました。相棒のスティーブ選手、クリスティアン選手も異論はなく、私がスタートをつとめる事となったのです。

24時間に棲む魔物毎年天候が不順な事で有名なル・マンですが、予選から決勝まで、毎日素晴らしい天候に恵まれ、青空のもと、午後3時に24時間の過酷な戦いがスタートしました。「ル・マン式スタート」で世界的に有名な、あのル・マン24時間レースで、まさか自分自身がル・マン式スタートを切るなどとは夢にも考えた事はありませんでした。この経験は、初めてマン島を走った時の感動に匹敵する、私にとって大きな宝物となりました。

レースは順調に進み、私たち#31は、3時間後には23位まで順位を上げ、シングルフィニッシュも視野に入ってきた4時間目、幾つか重なった不運から、わたし自身が転倒を喫します。しかし幸運なことにダメージは殆ど無いに等しく、ロスもトータルで4分ほどでレースに戻ることが出来ました。この時、順位を325位まで落とします。

漆黒の闇の中を走り続けていた#31番車でしたが、なんとレース開始10間が経過したところで、ミッションに不具合が生じ、痛恨のリタイヤとなってしまいました。鈴鹿8耐よりも長い、10時間。レースはまだ半分も終わっていない、深夜1時の出来事でした…。

RESULT

■予選    BEST TIME 1′44″385 SSTクラス20位 予選総合44位

■24Hレース  リタイヤ(10時間)

Photograph by TakaoIsobe.

- 5 -2011 Copyright (c) club TROFE. All rights reserverd.

ル・マン 2 4 時 間 耐 久 レ ー ス

FIM世界耐久選手権シリーズ2011を終えて

この挑戦を通じ、僕自身の未熟さと、24時間レースの厳しさを知りました。しかしこれが、自分のような実績のないライダーでも、「諦めず、奢らず、前を向いて進み続ければ、チャンスは必ず巡ってくる」という、若手ライダーへのメッセージになれば本望です。しかし、皆様の支援を受けて2度も24時間にチャレンジしたにもかかわらず、完走の夢が叶わなかったことは、2012年の私の進むべき道を指し示しているような気がしてなりません。松下佳成、42歳、可能な限り前進を続けたいと存じます。是非とも、引き続きのご支援、どうぞよろしくお願い申し上げます。

ありがとうございました!

- 6 -2011 Copyright (c) club TROFE. All rights reserverd.

お知らせ・お問い合わせ先

Yoshinari Matsushita in PENZ13.com BMW Racing TeamFIM Endurance World Championship 2011 Challenge!

各位におきましては、報告書に目を通していただき、誠にありがとうございます。 乱筆乱文をご容赦ください。御礼の送付物や、報告書の製作、及びご報告が遅れましたこと、手弁当で集まった有志と、素人のチーム運営とご理解くださりますようお願い申し上げます、重ねてお詫び申し上げます。

様 な々想いを乗せて駆け抜けました2011年、マン島TT、ボルドール24時間、ルマン24時間でしたが、いま無事にこのレポートを書き終えることができ、無上の喜びを感じています。オートバイが好きで、オートバイに関わる人達が好きで、この活動を続けています。僕は本当の意味のプロレーシングライダーではないかも知れません。しかし、多くの方々に、若かりし日に夢破れた40歳過ぎの男が挑戦する様を、リアルに、格好つけずに発信することで、多くのメッセージを送る事ができたなら、本当に幸せです。信じられないような災害を経験した我が国ではありますが、まだ諦めることは決してなく、前進することの大切さを、オートバイを通じて体現し、語り続けていこうと思っております。今後もこの馬鹿者へのご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。みなさま、ほんとうに ありがとうございました。 

■関連サイト●松下ヨシナリ公式ウェブサイト「44ma2.com」>>>http://44ma2.com/●松下ヨシナリの毎日が最高! | MOTONAVI.NET >>>http://www.moto-navi.net/guest/matsushita/●松下の革ジャン放浪記(ペアスロープHP内) >>> http://www.pair-slope.co.jp/06-8-Manzo/0-menu.htm※是非ご覧ください!!

●松下佳成 連絡先

club TROFE 事務局  〒336-0017 埼玉県さいたま市南区南浦和3-18-15

アップデザインズ内 TEL:048-886-1779 携帯電話:090-4137-2861

メール:[email protected]

■お問い合せ

取材、写真の貸し出し等のご依頼も含め、お気軽にご連絡ください。

松下ヨシナリ

■参戦協力:淺田ふみよ、佐野道子(ウイック・ビジュアル・ビューロウ) ■HP 製作:三上勝久(Ride Publication) ■写真:長見拓郎