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川内温廃水訴訟原告団ニュ-ス第2号             Cropped

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川内原発「温廃水」訴訟のポイント2

被告は虚偽に基づいて1、2号機の 拡散範囲を「2km内外」とした

川内原発「温廃水」訴訟原告団

事務局長 向原祥隆

川内原発がいったん放出した温廃水を再び再取水

する再循環をしているという、どうしようもない欠

陥原発であることは、前回紹介しました。

安全協定では、「取水口と放水口の温度差が7度以

下」、と決められていますが、高温の温廃水を再取水

することで、環境よりも7度以上の高温の温廃水を

放出することになるのです。

この再循環については、九電がどれほど否定しよ

うが、数々の証拠が九電を木っ端みじんに打ち砕い

てくれるでしょう。

実際、九電鹿児島支店に説明を求めて出向いた際、

九電本社から派遣された2人の技術要員も、再循環

の証拠を突きつけられるや、マスコミも見守る衆人

監視の中でなんら抗弁できず、15分間、ただ沈黙

を続ける始末だったのです。

放水口と取水口の位置(本件準備書 2-22 より作成)

しかし、高温域がどこまで広がっているかは、な

かなか確認することができませんでした。

温廃水がまともに流れてくる、いちき串木野市羽

島漁協の漁獲が最盛期の5分の1に激減し、さらに、

土川から羽島にかけての磯で、ワカメ、ヒジキ、テ

ングサなどの海藻が全滅するという異変が実際に起

きています。

九電はかねてより「海水温度が 1 度以上上昇する

範囲は、ほとんどが沖合い2km 内外」とホームペー

ジ等で発表しています。「2km」を越えた異変は、

原発とは無関係という立場なのです。

(1)九電の虚偽データを発見

そんな中で、九電作成の県への報告書に、海域の

水温をすべて記した水温水平分布図があることを知

ったのは、再循環の証拠集めをしている最中でした。

試しに、コピーして持ち帰り、つらつら眺めてい

たら、とんでもないインチキを発見したのです。

なんと、九電の描いた等温線の外側にも、広い範

囲で高い温度が記されていました。

意図的に等温線を書き換えた例。平 19.2.4(小さくて見え

ませんが、縦の線上に温度が記してあります)

意図的に等温線を書き換えた例。平 16.8.2

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川内原発「温廃水」訴訟のポイント2

被告は虚偽に基づいて1、2号機の 拡散範囲を「2km内外」とした

川内原発「温廃水」訴訟原告団

事務局長 向原祥隆

川内原発がいったん放出した温廃水を再び再取水

する再循環をしているという、どうしようもない欠

陥原発であることは、前回紹介しました。

安全協定では、「取水口と放水口の温度差が7度以

下」、と決められていますが、高温の温廃水を再取水

することで、環境よりも7度以上の高温の温廃水を

放出することになるのです。

この再循環については、九電がどれほど否定しよ

うが、数々の証拠が九電を木っ端みじんに打ち砕い

てくれるでしょう。

実際、九電鹿児島支店に説明を求めて出向いた際、

九電本社から派遣された2人の技術要員も、再循環

の証拠を突きつけられるや、マスコミも見守る衆人

監視の中でなんら抗弁できず、15分間、ただ沈黙

を続ける始末だったのです。

放水口と取水口の位置(本件準備書 2-22 より作成)

しかし、高温域がどこまで広がっているかは、な

かなか確認することができませんでした。

温廃水がまともに流れてくる、いちき串木野市羽

島漁協の漁獲が最盛期の5分の1に激減し、さらに、

土川から羽島にかけての磯で、ワカメ、ヒジキ、テ

ングサなどの海藻が全滅するという異変が実際に起

きています。

九電はかねてより「海水温度が 1 度以上上昇する

範囲は、ほとんどが沖合い2km 内外」とホームペー

ジ等で発表しています。「2km」を越えた異変は、

原発とは無関係という立場なのです。

(1)九電の虚偽データを発見

そんな中で、九電作成の県への報告書に、海域の

水温をすべて記した水温水平分布図があることを知

ったのは、再循環の証拠集めをしている最中でした。

試しに、コピーして持ち帰り、つらつら眺めてい

たら、とんでもないインチキを発見したのです。

なんと、九電の描いた等温線の外側にも、広い範

囲で高い温度が記されていました。

意図的に等温線を書き換えた例。平 19.2.4(小さくて見え

ませんが、縦の線上に温度が記してあります)

意図的に等温線を書き換えた例。平 16.8.2

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九電が描いた温排水の1度上昇の等温線は「2k

m内外」でした。温排水の拡散範囲を意図的に小さ

く見せようとしていたわけです。温度通りに等温線

を引けば、1度上昇の範囲は広大になります。5キ

ロを超えるものも、続々出てきます。

出るは、出るは、私が確認した2002年以降、

なんと17枚のインチキがありました。なんと報告

書の2回に1回、50%のウソツキ率。

朝日新聞 2010.2.3

朝日新聞でも、大きく報道されました。

九電は、急きょ、「外側の高温域は、温廃水と無関

係な暖水塊である」と発表しました。あろうことか、

鹿児島県もそれを認めてしまいました。

私たちは鹿児島大、九州大の海流の専門家に聞い

てみました。1人は、「原発の可否を論ずるつもりは

ない」とことわりながら、「インチキ以外の何物でも

ない。100 人が見たら 100 人とも、そう言うだろう」

と話しました。「放水口から舌状に伸びていることか

ら、温排水以外は考えられない」と。

(2)環境影響評価法上の手続きについて

では、九電のこのウソが、どのような法律違反に

なるのでしょう。

ちょっとややこしいのですが、ご説明します。事

業者(九電)は環境影響評価を行った後、その内容

をまとめた準備書を出します。これも、法に基づく

ことなのです。

準備書の手続を環境影響評価法は以下のように定

めています。

法16条で事業者の「準備書についての公告及び

縦覧」の義務を示し、

法18条で住民の「準備書についての意見書の提

出」の権利を示し、

法19条では事業者(九電)に、知事及び関係市

町村長へ「意見の概要及び当該意見についての事業

者の見解を記載した書類の送付」を義務付けていま

す。

法20条は、それを受けて知事が事業者に意見を

述べる、と定めます。

これらの法は、虚偽または誤った事実を前提にし

ていません。仮に法19条で、九電が虚偽または誤

った事実に基づく見解を記載した書類を、知事及び

関係市町村長に送付した場合、法20条により知事

が事業者に意見を述べる際、知事は虚偽または誤っ

た事実に基づいて意見を述べることになるのです。

(3)九電は法19条に違反した

18条に基づく住民の意見では、原発周辺の環境

異変について、多くの指摘がありました。それに対

して、九電は、「1、2号機の温廃水の影響範囲外だ

から無関係である」と、切り捨ててきたのです。

なぜならば、「当社が定期的に実施している川内原

子力発電所の温排水影響調査(海域モニタリング)

では、1、2号機運転中における海水温度が 1 度以

上上昇する範囲は、ほとんどが2km内外となって

いる」からです。

九電は、法19条に基づいて、5カ所にわたって

上記のような見解を記載して、知事及び関係市町村

長あてに書類を送付しました。

この「2km内外」が大ウソだったのです。

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火力発電所

太平橋

いちき串木野市

西方海岸

湯田海岸

唐浜海岸

久見崎海岸

寄田海岸

◎◎

��

2009.3.14

2009.5.1

2009.2.24

2009.4.272009.7.24

2009.3.25

2009.4.32009.4.1

2009※12009※22009※3

2009.6.18

2009.5.27

2009.2.20

2009.6.52009.4.27

2008.5.21

2009.2.28

2008.1.25

2008.3.17

2006.4.24(白骨化)

2006.4.24

2006.5.22

2007.4.282007.2.12

2007.5.2

2007.5.4

2007.9.172007.10月上旬�*

サメ1.162.23.113.294.54.8(3匹)4.9(3匹)4.124.254.306.56.126.136.209.49.1111.111.611.1911.27(2匹)12.30(3匹)

ダツ1.91.162.53.16(6匹)4.34.84.105.30(3匹)6.5(3匹)6.66.16

エイ1.93.113.29(3匹)4.55.30(2匹)5.31(2匹)6.6

※1 ※2 ※3

◎ アオウミガメ

○ ウミガメ ( アカ・アオ不明 )� アカウミガメ

� コマッコウ鯨� イルカ▲ エイ♣ 水鳥*ダツ� サメ ウミガメ異常行動

しるし 生物名など2006200720082009

年代別色分け

死亡漂着の生物名と年月日

1km

2km

0

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海海海海のののの墓標墓標墓標墓標

河野たつひと

三日月形の弧を描く小さな入江にボクのふるさと

はあった。山が海にせまる狭いエリアに集落があり海

岸との境にはアダンやオオハマボウの防潮の木立、静

かな夜の潮騒は魚たちの寝息のように流れた。

夏になると子供たちは、家で服を脱ぎそのまま海

飛び込んだ。砂浜が子どもたちの遊び場で、日が暮れ

るまで遊び、暑い夜は潮風の香りと満天の星空の下で

合宿するのが常だった。水平線上に浮かぶ汽船に都会

への夢を乗せていた。

夏は台風。渚に流れついた漂流物を探し珍しいもの

を見つけるのも楽しみの一つだった。流木、難破船の

木片、漁船のウキのガラス玉に付着した烏帽子貝に漂

流の長い時を感じて、子供なりの不思議な感動を覚え

たものだった。何よりも荒波にも割れることなく漂着

した裸電球を見つけた時には宝物を探し当てた気分

だった。まだ奄美大島に電気がない時代のクリスタル

な文明の片鱗だったのかもしれない。

台風が過ぎた翌朝、弟が渚に打ちあげられていた大

きな甲イカを拾

ってきたことがある。昨夜の暴風雨に

弱っていたがまだ生きていた。次の日ボクも

「柳の下

のドジョウ」を狙って朝早く海岸を探したが漂着した

魚はいなかった。次の日も、それ以降も。ボクの記憶

の中で魚の死亡漂着はほとんどなかった。

数年後、海岸と集落の間にバス通りができ、海を遮

る高い堤防ができた。文明が水平線を遮り、それが村

人たちの未来まで奪

っているように見えた。

時は五十数年経ち、ここは川内原発の建つ寄田海岸。

ハマボウフウや

コウボウムギや

ハマヒルガオが初夏

の陽射しを浴びていた午後、ボクは初めて温廃水調査

に加わった。沖からの風に波頭は白く叫び幾重にも連

なって渚に浸みていく。

昔のふるさとの海岸の記憶が蘇り、郷愁に浸ったの

だったが、視線を変えると原子力発電所と高いフェン

ス。近づいていくと海浜植物の群生する

一帯に流木の

杭がいくつも立っている。それは死亡漂着した亀や鮫、

イルカや他の魚類たちの亡骸を葬

った墓標だった。

一九六〇年台の初頭に

「世界残酷物語」という映画

があった。ヤコペッティという監督の映画でしたがそ

の中のエピソードに、ビキニ環礁で水爆実験の被害を

受けた亀の話がある。

産卵した後海に帰っていくはずの亀が、放射能に冒

されて本能を失い、海に帰らず陸に上がって、結局灼

熱の太陽の陽射しを受けて死亡していくのだ。そして

ショッキングなのは白骨化した死体が海岸を埋め尽

くしている光景だった。

ボクはこの映画で放射能の怖さを知

ったのだが、

Nさんが魚たちの墓を掘る前に撮

った亀やサメなど

の死亡漂着写真に、あの時以上の衝撃を受けたのだっ

た。

海や山に行っても魚や鳥や他の動物の死体に遭遇

することがあまりないのが不思議だが、それは醜い屍

をさらすことがないよう自然の神秘な仕掛けなので

はないか。すべての生き物に与えられた生命の尊厳、

自然の摂理なのではないか。

事故や犯罪や戦争による無残な死は許されない死

の姿で、それを防ぐのは社会や国家の責任である。

子供時代に海辺の村に遊び、海を子供なりに知った

者にとって、魚の死亡漂着という異常な光景に出合う

ことのなかったことを考えると、この寄田海岸の魚た

ちの死は放射能による海洋汚染以外に原因は考えら

れない。自然と戯れ、遊び、自然の神秘に目を見はる

心が直感する真実であり、私たちはこの寄田海岸に死

亡漂着した魚たちの警鐘を深く心に受け止め、原発増

設の暴挙を止めなければならない。

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