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97 Vol. 66 No.10 1.火力サービスにおける ICT 活用 近年,地球規模で環境問題への関心が高まる中,発電 事業においてもこれまで以上に高効率化,低炭素化への 要求が高まっており,当社では,ガスタービンと蒸気ター ビンを組み合わせ,いっそうの高効率化と環境負荷低減 電“GTCC(Gas Turbine Combined Cycle)”を推進している。 発電事業の使命は電力の安定供給であり,高効率化, 低炭素化と同時に,発電設備を安定的に稼動させること が重要なのは言うまでもない。そのため,運転開始後も プラントが安全かつ安定的に稼働しているか,効率性が 保たれているかを見守るため,三菱日立パワーシステム ズ(以下MHPS)では,1999年に遠隔監視センターを 発足し,GTCCプラントの運転状態を24時間体制で監 視することで,設備トラブルによるプラント停止を未然 に防止するとともに,稼働率の維持,向上のための技術 サービスを提供している。 さらに最近では,クラウドやビッグデータ解析などの ICT(Information & Communication Technology) を適用し,信頼性の向上以外の新たな顧客価値の創出に も取り組んでいる。遠隔監視で蓄積したノウハウを基に, 24時間の遠隔監視員によるサポートまでは求めていな いお客様に対して,アラーム時の自動リアルタイムガイ ダンスや,運転データから予想される効率向上などの サービスメニューの提案等を行っている。 2.遠隔監視システムの構成 MHPSの遠隔監視システムの概略構成図を図1に示 す。遠隔監視システムは,発電設備の運転データを発電 所内に設置されたデータサーバにて収集,通信回線を利 用して遠隔監視センターに送信することにより,設備の 運転状態を遠隔監視センターで常時監視できるようにす るシステムである。また運転データは監視端末上にリア ルタイム表示されるとともに,センター内のデータサー バに永久的に保存される。これによりリアルタイム監視 はもちろん,過去の運転データを容易に調査できるよう になった。 運転データは,まずプラント制御装置から発電所内に 653 5.今後の火力発電所の保守管理技術 Maintenance Management Technology of the Future Thermal Power Plant 三菱日立パワーシステムズ株式会社 富 田 康 意 図1 遠隔監視システム概略構成図 Yasuoki TOMITA (MITSUBISHI HITACHI POWER SYSTEMS, LTD) 原稿受付 平成27年8月24日

5.今後の火力発電所の保守管理技術...5.今後の火力発電所の保守管理技術(富田 康意) 99 10 図4 遠隔監視サービス 一方,クラウドモニタリングサービスの場合は,安価

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5.今後の火力発電所の保守管理技術(富田 康意)

97

Vol. 66 No.10

1.火力サービスにおけるICT活用

近年,地球規模で環境問題への関心が高まる中,発電

事業においてもこれまで以上に高効率化,低炭素化への

要求が高まっており,当社では,ガスタービンと蒸気ター

ビンを組み合わせ,いっそうの高効率化と環境負荷低減

を 実 現 す る 複 合 発 電“GTCC(Gas Turbine

Combined Cycle)”を推進している。

発電事業の使命は電力の安定供給であり,高効率化,

低炭素化と同時に,発電設備を安定的に稼動させること

が重要なのは言うまでもない。そのため,運転開始後も

プラントが安全かつ安定的に稼働しているか,効率性が

保たれているかを見守るため,三菱日立パワーシステム

ズ(以下MHPS)では,1999年に遠隔監視センターを

発足し,GTCCプラントの運転状態を24時間体制で監

視することで,設備トラブルによるプラント停止を未然

に防止するとともに,稼働率の維持,向上のための技術

サービスを提供している。

さらに最近では,クラウドやビッグデータ解析などの

ICT(Information & Communication Technology)

を適用し,信頼性の向上以外の新たな顧客価値の創出に

も取り組んでいる。遠隔監視で蓄積したノウハウを基に,

24時間の遠隔監視員によるサポートまでは求めていな

いお客様に対して,アラーム時の自動リアルタイムガイ

ダンスや,運転データから予想される効率向上などの

サービスメニューの提案等を行っている。

2.遠隔監視システムの構成

MHPSの遠隔監視システムの概略構成図を図1に示

す。遠隔監視システムは,発電設備の運転データを発電

所内に設置されたデータサーバにて収集,通信回線を利

用して遠隔監視センターに送信することにより,設備の

運転状態を遠隔監視センターで常時監視できるようにす

るシステムである。また運転データは監視端末上にリア

ルタイム表示されるとともに,センター内のデータサー

バに永久的に保存される。これによりリアルタイム監視

はもちろん,過去の運転データを容易に調査できるよう

になった。

運転データは,まずプラント制御装置から発電所内に

653

5.今後の火力発電所の保守管理技術Maintenance Management Technology of the Future Thermal Power Plant

三菱日立パワーシステムズ株式会社 富 田 康 意*

図1 遠隔監視システム概略構成図

*Yasuoki TOMITA(MITSUBISHI HITACHI POWER SYSTEMS, LTD)原稿受付 平成27年8月24日

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設置された遠隔監視用データサーバに送られる。そして,

遠隔監視用データサーバに収集された運転データは,リ

アルタイムデータとして遠隔監視センター側にリアルタ

イムに送信されるとともに,1秒周期で一定期間保存さ

れる。

運転データの送信には,より高いセキュリティ性を確

保 す る た め にMPLS-VPN(Multi Protocol Label

Switching-Virtual Private Network)と呼ばれる仮想

専用線を使用している。

また,後述するように最新の取組では,クラウド技術

を使ったより簡便な運転情報の収集方法についても実装

を開始している。いずれの場合もプラントおよび運転

データのセキュリティには万全の対策を取っている。

3.遠隔監視システムの基本機能

遠隔監視システムは,基本機能としてトレンドグラフ

や系統図画面,異常発生時のアラーム機能など発電所と

同様の監視機能を持ち,通常のリアルタイム監視におい

てはこれらの監視画面にて運転状態監視やアラーム確認

などを行っている。また帳票作成機能によって収集され

る運転データは様々な分析に利用されている。

3.1 リアルタイムトレンド画面

リアルタイムトレンド表示機能では,Webサーバに

一時保存されたリアルタイムデータを基に,図2に示す

ようなトレンドグラフが表示される。

図2 リアルタイムトレンド画面

3.2 系統図画面

系統図画面の一例を図3に示す。図3に示した制御信

号画面を始め,燃料系統画面,排ガス温度分布監視画面,

軸受監視画面など,各系統の運転状態が一目で分かるよ

うな系統図画面を使用している。

図3 系統図画面

3.3 監視項目

遠隔監視システムによる運転データのサンプリング項

目数には,通信容量を考慮した制限を設けており,アナ

ログ,デジタル合わせて1ユニットあたり約2,000点の

データを取込んでいる。ガスタービンの代表的な監視項

目を以下に示す。

・回転数,発電機出力

・CSO(Control Signal Output:制御信号)

・燃料温度,流量,制御弁開度

・空気圧縮機入口/出口温度,圧力

・ブレードパス温度,排ガス温度

・NOx(窒素酸化物)

・燃焼振動

・軸振動,軸受メタル温度

・ロータ冷却空気温度

・ディスクキャビティ温度

監視対象はガスタービンであり,約2,000点のサンプ

リング項目はガスタービン関係のデータが主体である

が,蒸気タービンやHRSG(Heat Recovery Steam

Generator:排熱回収ボイラ)などプラント全体の主要

パラメータも取込んでいる。

3.4 遠隔監視サービス

遠隔監視システムの導入によって,従来にはない迅速

な運転支援が可能となった。従来お客様からの情報に頼

るしかなかったトラブル発生情報を,遠隔監視センター

では発生直後に把握でき,トラブル発生時のデータに加

え過去のデータも即座に収集,分析可能となったため,

トラブルシュートに要する時間は飛躍的に短縮された。

またトラブルの未然防止,早期発見のための異常診断技

術の向上にも力を入れている(図4)。

654

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図4 遠隔監視サービス

一方,クラウドモニタリングサービスの場合は,安価

で簡便な運転情報の共有を主目的とするため,24時間

の監視はオプションとしている。

4.異常診断

4.1 早期発見の重要性

ガスタービンの運転監視において,従来の異常診断は

各種運転パラメータが管理値以内で運転されているかど

うかというものであった。管理値を超えればアラームが

発生し異常検知できるが,その時点で既に損傷が進んで

いるケースも少なくない。一方で,遠隔監視システムの

導入によりトラブル事例の解析が進むと,多くの重大ト

ラブルにおいてアラーム発生前に“小さな兆候” (図5)

が現れていたことがわかった。つまり,その“小さな兆

候”を早期発見できれば損傷を最小限に抑えることがで

きる。しかしながら,ガスタービンの監視パラメータ数

は主要パラメータだけでも100項目以上あり,大気条件

や運転条件など様々な要因により変化するため,発電所

の運転員が,通常のリアルタイム監視においてそれらを

判断,検知することは容易ではない。

4.2 パターン監視

アラーム発生前の小さな兆候を検知するのに有効な異

常診断手法としてパターン監視(パターン認識の応用)

がある。パターン監視とは,過去の正常状態と現在の状

態を比較することで,現在の状態が正常であるか,ある

いは正常状態から逸脱している(=異常)かどうかを判

定する手法である。

ブレードパス温度偏差変化事象におけるパターン監視

例を紹介する。ブレードパス温度(BPT)とはタービ

ン最終段翼後流の燃焼ガス温度のことであり,BPT偏

差はそのバラツキを示すもので,ガスタービンの燃焼状

態を監視する上で最も重要なパラメータの一つである。

BPT偏差にはガスタービン出力との相関があり,各

計測点が固有のパターンを持つ。

図6はBPT偏差変化時のトレンドグラフであり,わ

ずかな変化は確認できるものの,管理値内のためアラー

ムは発信されずこれだけでは異常と認識するのは難し

い。

時間

偏差(℃)

出力(M

W)

#4BPT偏差 ガスタービン出力

BPT偏差上限管理値

BPT偏差下限管理値

図6 BPT偏差変化事象トレンドグラフ

一方,図7はガスタービン出力とBPT偏差の2変量

の相関(=パターン)をX-Yグラフで表した最も単純

なパターン監視例であり,過去の正常パターンからの逸

脱が確認できる。

655

時間

パラメータA パラメータB パラメータC 管理値

”小さな兆候”

アラーム発生

早期発見

図5 小さな兆候 図7 BPT偏差変化事象パターン監視

ガスタービン出力(MW)

#4B

PT偏差(℃)

過去の正常パターン

最近のパターン

下限管理値

上限管理値

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遠隔監視センターでは,蓄積された膨大なヒストリカ

ルデータを活用し,BPT偏差を始めとした主要パラメー

タのパターン監視を行っているが,データの加工処理と

診断(チェック)は人力に頼り時間を要すため,それぞ

れの主要パラメータについての診断には限界があった。

4.3 MT法を用いた異常診断

そこで,多変量データを包括的に診断できるパターン

認識の手法としてマハラノビス・タグチ法(MT法)の

適用を検討した。

4.3.1 MT法

MT法では,多変量データをもとに正常な集団を単位

空間と定義し,診断対象のデータの単位空間からの距離

をマハラノビス距離(MD)として求める。k次元の

MD2は式(1)で示される。

   ……(1)

ここで,kは項目数,i,jは1~k,αijは相関行列の

逆行列の i j 成分,mi,mj,σi,σjはそれぞれ単位空間

における平均値および標準偏差である。

そして,図8のようにMDが小さければ正常,大きけ

れば異常と判定できる。また,SN比によって異常原因

の特定も可能である。

図8 MT法の概念

対象

対象

単位空間

中心

距離が近い=正常

距離が遠い=異常

原因診断

4.4 ベイジアンネットによる原因推定

MT法のSN比により,どの信号が異常かを知ること

が出来るが,その異常が実際に何が原因で起きているか

を推定するのが,ベイジアンネットによる原因推定機能

である。

ベイジアンネットは,原因が既知の事象の蓄積データ

から,ベイズ理論に基づき,原因が未知の事象の原因を

推定できる手法である。また,その際に,専門家がどの

ように原因を特定していくかと言う専門知識(FTA,

Fault Analysis Tree)をあらかじめ組み込んでおくこ

ともできる。

4.5 実際の異常検知事例

遠隔監視システムによって取り込んでいるリアルタイ

ムデータを利用し,MDおよびSN比を5分周期で計算

し,任意のしきいを超えればアラームを発信させている。

さらに検知された異常に対しては,ベイジアンネット

による原因診断の機能を活用し,より監視能力を向上し

ている。

実際の異常検知事例を紹介する。図9は監視対象パラ

メータ122項目からなる運転状態のMD時系列トレンド

であり,MDが増加している箇所が確認できる。そして,

MD増加時のSN比の差(図10)を見てみると,4番

BPT偏差が大きな値を示しており,これが異常の原因

であると推定できる。

-20

-10

0

10

20

30

2010/4/27

0:00

2010/4/27

4:48

2010/4/27

9:36

2010/4/27

14:24

2010/4/27

19:12

2010/4/28

0:00

℃, M

D

BPT-4 偏差 MD

図9 監視パラメータのMDトレンド

0

2

4

6

8

10

12

BPT#4偏

発電

機出

BPT#8偏

BPT#2偏

BPT#7偏

BPT#6偏

BPT#18偏

BPT#17偏

BPT#1偏

BPT#5偏

SN比

 (d

b)

※上位10件を表示

図10 MD増加時のSN比

これに基づき,BPT偏差に異常が現れる原因をベイ

ジアンネットにより推定し,スプリングクリップの異常

との診断結果が得られた。定検が近かったので対策部品

等を準備し,早期に処置することができた。

5.クラウド利用による遠隔監視の拡張

近年のICTの高度化,特にクラウドによる大規模デー

タの収集と高度な分析技術の適用は,これまで主に信頼

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性向上の手段に特化していた遠隔監視を,より幅の広い

顧客価値実現の手段と位置付けることが可能になった。

たとえば,プラントの運転状況をモニタリングしてお

くことで,出力増強を求めるお客様には適切なタイミン

グで出力向上のメニューを提案できたり,様々なアラー

ムへの対応履歴を蓄積・活用することで,運転に不慣れ

なお客様にアラーム発生時の運転ガイダンスを提示す

る,等のサービスが可能となる。さらに,OEMとして

の専門家のガイダンスや相談を,共通の運転情報を見な

がら遠隔からのWEB会議形式でお客様が求めるタイミ

ングで行うことも可能となった。

5.1 クラウドモニタリングサービス

プラントの高い信頼性保証のためには,24時間のサ

ポート体制や万が一の通信や保存データのバックアップ

機能が充実した従来の遠隔監視サービスが適している

が,そこまでのサービスは必要としないものの,適宜

OEMからのアドバイスに有効性を感じてくださるお客

様には,クラウドを用いた運転情報の監視サービスを提

供している。24時間のサポートではないが,アラーム

時のガイダンスや,プラント状態に応じた適切な改善メ

ニューの提案をより簡易な仕組みで提供できる。

この場合も,セキュリティ上の脅威(信号の傍受やプ

ラント制御への侵入)に対しては万全の対策がとられて

いる。

図11 クラウドモニタリングサービス

5.2 アラーム時の自動ガイダンス

アラームが発生した時に,慣れない運転員をサポート

するために,自動的にそのアラームに対応した運転マ

ニュアルの該当ページを運転員のPCに表示する機能

が,ガイダンスPCサービスである。

OEMとして蓄積したオペレーションのガイダンス

や,アラームに対する原因特定(FTA)等の機能を有

する。さらに,運転員が実際に何を行ってその結果がど

うだったかを入力できるので,蓄積された入力により,

経験を積むほどにより正確で必要性の高いアドバイスの

表示が可能になる。

Single Data base

Control unit(Netmation)

Data Uploader(gateway)

Guidence PC

Guidance PC

Power Station

Head Quarter

Guidance PCManagers

図12 ガイダンスPC

5.3 お客様との繋がり強化

運転データをお客様と共有できることで,OEMとし

て,お客様が必要とされるメニューを必要とするタイミ

ングで提案しやすくなる。

提案の判断は,半自動処理により各種パラメータの状

態をみて予め用意してある各種のサービスメニューの中

から候補を抽出し,提案するようになっている。提案手

段としても,担当者のコンタクトだけでなく,カスタマー

ポータルと言うお客様とのコミュニケーション用の

WEBサイトに,適宜メニューや必要情報を提示できる

ようにしている。

カスタマー・ポータル・サイト

技術広報

パーツ・カタログ

技術文書

RMC レポート (遠隔監視サービスを採用頂いたお客様向け)

図13 カスタマーポータル

8.まとめ

遠隔監視システムは,迅速な運転支援や高度な異常診

断を実現し,発電プラントの安定運用に大きく貢献する

ものであり,通信システムや監視技術の進歩によって,

今後さらなる発展が期待される。特に異常診断(パター

ン監視)による異常の早期発見はプラント稼働率向上の

カギであり,アラーム発生前の“小さな兆候”をキャッ

チすることで,重大トラブルを未然防止し,機器の損傷

およびプラントの計画外停止を最小限に抑えることがで

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きる。また,本報文で紹介したMT法は,単に異常診断

精度を向上させるのみならず,監視の効率化,省力化に

も大きな効果が期待できる。

さらにベイジアンネットによる原因推定機能を組み合

わせることで,予兆の早期発見から原因に応じた早期対

応までを効率よく行うことが可能となる。

また新たなICT活用の取組として,クラウドによる運

転データの共有を通じたお客さんとのコミュニケーショ

ン強化,アラーム時の自動だガイダンス,必要なタイミ

ングで必要なメニューの提示を行うこと,等のサービス

の実現にも取り組んでいる。

今後も異常診断技術の向上による遠隔監視サービスの

強化と,コミュニケーション向上を主目的とした新たな

クラウド利用のサービス,またそれらが無駄なくアップ

グレードできる仕組みを通して,お客様価値の向上に貢

献していきたい。

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