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Instructions for use Title 6.地震の時間的分布に関連する諸問題(その1) : 地震の回数と時間間隔の分布について Author(s) 宇津, 徳治 Citation 北海道大学地球物理学研究報告, 22, 73-93 Issue Date 1969-08-30 DOI 10.14943/gbhu.22.73 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/13964 Type bulletin (article) File Information 22_p73-93.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

6.地震の時間的分布に関連する諸問題(その1) : …...6. 地震の時間的分布に関連する諸問題 (その 1)I 一一地震の回数と時間間隔の分布につい

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Instructions for use

Title 6.地震の時間的分布に関連する諸問題(その1) : 地震の回数と時間間隔の分布について

Author(s) 宇津, 徳治

Citation 北海道大学地球物理学研究報告, 22, 73-93

Issue Date 1969-08-30

DOI 10.14943/gbhu.22.73

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/13964

Type bulletin (article)

File Information 22_p73-93.pdf

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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6. 地震の時間的分布に関連する諸問題 (その 1)

I 一一地震の回数と時間間隔の分布につい℃一一

宇津徳治

(北海道大学理学部地球物理学教室)

一昭和 44年4月受理一

I.まえがき

地震の発生の時間的性質を統計的に調べた研究はこれまでにも多数発表されている。

では,そのうち比較的簡単に取り扱えるものとして,一定期間毎の地震回数の度数分布と,相

続く二つの地震の時間間隔の度数分布について,従来なされた研究結果を検討し,新たな考察

を加えてゆくことにする。

地震の時間的分布については,たとえば地震の規模の分布 (GUTENBERG-RICHTERの式)に

見られるような普遍的な分布法則は無い。しいていえば,一般の地震はある見方をすれば,時

間的に定常的でかつラン夕、、ムに起っているとみなせる(すなわち POISSON過程と考えられる)

場合があるということである。この場合,地震は母集団としては時間に関し一様分布で,観測

される地震の回数のふらつきはランダ、ム・サンプリングの結果と考えられる。 この他, 特殊な

場合として,余震に関する改良大森公式が挙げられる。この公式も母集団についてのものであ

るから,観測される余震の回数は必然的にサンプリングによるふらつきを伴うものと考えられ

る。本論文においても,一般の地震に対して一様分布,余震に対して改良大森公式を,時間的

分布の諸性質を考察するうえでの標準として念頭においている。

本論文は地震の発生の時間的性質の一面を初歩的な方法で取り扱ったにすぎない。別の面

からの考察については次報以後で論じたいと思っている。

11. 地震の時間間隔の分布

まず,地震をその回数の時間的分布が f(ので表わされる母集団からのランダム・サンプル

と見なす場合,すなわち地震はお互いに独立で,f(t)が一定とみなせる tの短い範囲内では時

間的にランダムに起っているが,その活動度の時間的変動はあり得る場合を考える。もし,地

震の発生(の確率)が定常的,すなわち

f(t) =ν (一定 (1)

であるとすれば,一つの地震と次の地震の時間間隔 τの分布は指数分布

。(,)=ν6町 (2)

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74 宇津徳治

に従うことはよく知られている。

f(t)が任意の闘数のときは,tl-:::;'t三三らにおけるデータに関する τの分布は

引で)=j::仰 (3)

となる。この式に (1)を入れれば直ちに (2)が得られる。また,余震について,改良大森公式

f(め=A(t+ο-p

が成り立ち p>lの場合には,O-:::;,t<∞の範囲のデータに関して

利← Kr(2ーす)τ (2-~LB

ただし B,Kは定数で

B =kj;-pZ1む愉

K = A-(!-~) cp-I

(づ)となる。 c→0のときは B→0となりゅ(r)は

仲)→Kr(づ)r-q

ただし

q=づとL、う幕分布に接近する1)。

f(t)=Ae一叫 (α>0)

のときには O-:::;'t<∞の範囲について

....-At'

仲)=Al A;r2一江-;-(1十Aτ)[

となるが,Ar→∞のとき

仲)→す γ2

(4 )

(5 )

(6)

(7)

(8 )

(9 )

(10)

(11)

(12)

である。 (12)の収欽はかなり速く ,Ar=5と10のとき {(r-2JA)-ifJ(r)}Jゆ(τ)はそれぞれ 0.042お

よび 0.0005となる。

地震の発生が時間的にランダムでかつ定常的であれば,相続く二つの地震の時間間隔 Tの

分布は指数分布になるが,定常的でなければ指数分布にはならないし,また,定常的であって

も,ランダムでない場合,すなわち地震同志に独立性がない場合L 一般には指数分布にはな

1) 千秋鋭夫;余震間隔の分布に関する確率論的考察,地震 (ii),12 (1959), 149-161.

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75 地震の時間的分布に関連する諸問題(その 1)

…一川川町}

HHHHHHHUHHHHH柚

'←→

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怜TiLLLJi ー-i>t

?→T .,. ." 門I1:1

iii ! li ~ 11

川J 1: 1-ll

市?!, I! Ijll ~ I! I 1,11 Jjl・!t! I

111'1 I !i! I • J;! i I !:! I μヰ4

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円以川川

Hh川hいけ寸いけ叫

5,一→

S2-rrf 53す71:;i j

s#4

玄5i斗よ!

15,1521531 1 1 11 1 1 1 I 1 1 ・・|…卜 1 1 |I I I I I |1 1 1 15n 1

小領域 SI>S2,…, Snでは地震発生はランタムではなくても,

これらを一緒にしてI:;Siとしてみるとみかけ上ランダムにな

る例。点は-つの地震を表わす。

Fig. 1. Superposition of non-random processes

produces apparent randomness.

第 1図

さらに観測された τの分布が指数分布になったからといって,地震の発生が本質的にらない。

比較的狭いたとえば第 1図のように,ランダムで互いに独立であるとは必らずしもいえない。

そのような空間が多空間 S], S2,… Snに起っている地震は著るしい続発性があるときでも,

時間間隔の分布がほとんど指数分布数集った広い空間L;Siについてまとめて統計をとれば,

に一致するとL、う場合も考えられるからである2)。

あるいは“指数分“時間間隔の分布が指数分布であるから地震の発生はランダムであるぺ

布からずれているからラン夕、、ムでなし、"と述べてある論文を散見するが,指数分布になること

をラン夕、、ムに起っていると称するのならばそれだけのことであるが,指数分布になっているか

あるいは,指数分布になっていないから地震の発生は互いら地震は互いに独立に起っている,

に関係があると考えているならば正しくない。確言できることは,地震の発生が時間的に定常

的でかつランダムであるときには指数分布になるということであり,従ってもし指数分布とは

異なる分布をしているときは,地震発生が定常的でないか,あるいは定常的であってもランダ、

ムでないときである。なおこれと同じことは次章で扱う一定期間当りの地震回数の PorSSON分

布への適合性と地震発生の偶発性との関連についてもいえる。すなわち,地震の発生が時間的

に定常的でかつランダムであるときには一定期間当りの回数の分布は POlSSON分布になるこ

と,従ってこの命題の対偶も成り立つが,逆および裏は必らずしも成立しない。

ー定期間毎の地震回数の分布

一定の時間間隔 .dtの中に起る地震の回数 nの分布ρ(n)は,地震が定常的でかつランダム

に起っているときは (1)式の νを用いて

111.

(13) (νL1t)n ~-"A

p(n) =一万「 fd

T. UTSU; On the Time Interval between Two Consecutive Earthquakes, Tech. Bul1. No. 17,

USCGS (1962), 1-5.

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76 字 津 徳治

という PQISSON分布で、表わされる。 p(n)のグラフの形は同じデータについても 4tを変えれば

変る。

t] ::;;,t::;;'t2におけるデータに関して,任意の f(のに対する ρ(n)は

42UF

4ι ltttlI

4L

,d

aa fJ t

、屯,J一

4L-

d一1・

A叫一

n

fJ一

rJ

、、一βEa--Ed

一一n

r(14)

となる。たとえばf(t)として余震の改良大森公式 (4)を用いれば O::;;'t手んに対して,n:2:1の

とき

C

B

1↑主的

十一叶

バ竹下K

一一n

bA

ただし

kz(Adt)2fptt, (16)

B= ~ f∞ "f-;162dz,は7)n ! JAc-1J 4t

正r rA(t,+c)-P,1t

c=苛)0' Xnヲ -1e-X dx (18)

となる。 c→0のとき B→0,さらにん→∞のとき

C→0となり p(n)は

内)→K巾ーす)/山となる。 (c→0,tl→∞のとき K→0となるがこれ

は B→0,c→0よりも遅い。んが充分大きければ

B=O, C=O, KキOと考えてよい。)n→∞のとき

p(n)は

ρ(n)→Knγ (20)

ただし

r=吋という幕分布に接近する。 (9)と(21)から

(21)

q+r= 3 (22)

が得られる。 l<p<∞の pに対してと,q, rと

も1と2の聞を変化するだけで, ρ=2のとき q=

r=1.5となる。

(20)の事分布は nがそれほど大きくなっても

充分よく (19)を近似する。第 2図に n-r のグラフ

(15)

r{n・をνr{n+ il

|♂

IO4

10 100 n

第 2図巾-*)jr(均一1)と

n-r (r=1+i)の関係

Fig. 2・Relationbetween r(n-t)j印 1)

and n-r (r=l+i)

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地震の時間的分布に関連する諸問題(その 1) 77

とr(づ)jr刊を示す点り=1と2の場合について示

n4程度以上でで、両者はほとんど一致する。 しかし n4程度以下のデータまで用いしかも p(n)=

Kn-r が成り立つとして rを決めると,rは大きく出すぎることになる。

j(t)が (10)の指数関数のときは

rAJt _>>-1 __~ J___ r(n,AL1t)

p(n) =五五T~o Xn-1 e-~ dx = '\'Ä~~t.J (23)

ただし Tは第 1種不完全ガンマ関数を表わす。

IV. 時間間隔の分布と地震回数の分布の関係

地震の時間的分布の表現としてこれまでにf(め,<t(,), ρ(n)の三つを考えたが,地震が時間

的にランぎムに起っている場合には,j(めを与えれば (3),(14)によりがい), p(n)は決まる。 しカミ

しランダムではないとき, たとえば一つの地震が起ると引続き地震が起り易く(あるいは逆に

起りにくく) なるような場合,すなわち地震の発生が互いに独立でなく続発性(あるいは間欠

性, 周期性など)が怠るようなときには, j(t) , <t(,), p(n)の関係は必らずしも一義的に決まる

とはいえない。 また一義的に決まる場合があってもその関係は地震がランダムに起っていると

きと同じものとは限らない。地震の発生にある規則性がある場合などを考えれば,<t(,)は等し

し、が p(n)は著るしく異なるような二つのモデル地震群を作ることは容易である。

SUZUKI and SUZUKI3)はp(n)が (20)の如く n→という幕分布で表わされることと,<t(,)が

(8)の如く ,-qという幕分布で表わされることとが同等であり ,rとqの聞には (22)式,r+q=3

が成り立つと述べている。(同論文では震源の空間的分布を論じているが,木質的には時間的分

布の場合でも同じである。) しかしが(けがで q の型のとき p(n) が n~1' の型となるのは, j(t)と

して余震の場合の如く t-P の型を与えたときに近似的に成り立つことであって, 一般的に成り

立つわけではない。 引けがで寸の型でも p(n)が n-r の型にならない例は次に示される。

p(η)とり(τ)の関係を理解するため,自然、地震についての調査例を述べる前に,乱数を用い

て,次のような分布法則に従う母集団からのランダム・サンフ。ルとみなせるデータを発生させ,

それについて今まで、に述べたことが成り立っていることを確めてみよう。使用したデータの数

は 2000個でこれだけあれば時間的分布の詰性質を概観するには充分である。

時間間隔 Tが

。(,)= A(,+c)-q (24)

の分布をしており, 地震の発生の確率は時刻 tには依らず定常的である場合,すなわち (24)の

分布に従う乱数'1>'2, '2酬を発生させ,n番目の地震は時刻九=Z17zに起るとする場合。

3) Z. SUZUKI and K SUZUKI; On Space Distribution Function of Earthquakes, Sci. Rep. Tohoku

Univ. Ser. 5, 17 (1965), 9-23.

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78 宇津徳治

ここで、は qのin'Hi4/3とした。 Cは時間の単位を C とすることにより 1とおける。 Aはや的

d,=2000から A=2000/3となる。(以下f(め,<t(,), p(η)は確率密度でなく,それに地震総数を

掛けたものを表わすものとする。) , ~c に対して (24) は等分布 A ,-q とみなして差支えない。

(始めからゆ (,)=A,-q とおくことができないので (24) のようにおいて,必要に応じ ,~c の部分

を考える。)

2) 発震時 tが

f(t) = A(t+c)-P (25)

の分布をしている場合。このときは 1)のデータを小さいほうから順に並べたものをんとおけ

ば,A=2000/3, P=4/3, c=1の場合が得られる。時間間隔は改めて 'i=ti+l-ti(i=1,2,…,

1999)とおいて得られる。但5)は余震の改良大森公式そのものであり ,t~c に対しては f(め=

At-p とし、う粟分布とみなせる。

第 3図に実際に作られたデータについて上記のゆ(,)と f(t)(両者はここでは同一)の分布

'・.・・......・10'

. . ... fCtl=寸EF∞τ百日万「

. . . ¥

。r

o${.τ}包ーー‘mゐ一守ーoーD口τ/3 7言ー

¥ f(!J

or

i¥ ぺ -413 ・413

k_t 日

。同

IO2

¥ IO'

1¥ IO.

102

104

ド10

6

t orτ

第 3図 f(t)=A(t+c)-pという分布をもっ母集団からの 2000個の

ラ γ ダム・サンプノレの tの分布 (P=4f3,c=l)。

Fig. 3. Frequency distribution of t for 2000 random samples from a pop-

ulation having a distribution f(t) = A (t十c)-p,p=4f3, c=l

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地震の時間的分布に関連する諸問題(その 1)

を両対数グラフとして示す。

すでに述べたように (25)に対する時間間隔の分布は t::?>1に対して

ただし

。(,)= kj,-q

1 5 q=2一一=~P 4

(26)

(27)

になるはずであり,また一定の時間間隔 L1t中に起る回数 nの分布は L1t;;:Pl,nと4に対して

ただし

p(η)=k2nー伊

1 7 r=l+一

P 4

一10" . ••

--e. 、

Id 一

"-

tpl'r1

10-{!

IO4

1c1

又¥ 、

中t甘

for f[t)=~口町3廿+1]4/3

人;京¥ -r-5'4

¥ ¥

'¥『

ごさId 10

4 10

6

τー

第 4図 第 3図に示された tのサンプノレについての T の分布。

T はある tとその次に大きい tとの差

Fig. 4. Ferquency distribution of '1" for the same samples as in Fig. 3.

'1" denotes the difference in t between two successive samples

when they are arranged in order of t.

(28)

(29)

79

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80 宇 津 徳治

となるはずである。第 4図には (25)に対するでの分布を,第 5図(白丸)には nの分布を示す

が,確かに両者とも存分イriで,傾斜 q,1-の値も (27),(29)のとおりになっている。 第 5図の黒

丸は累積度数 P(n)= .E p(m)を示すがその傾斜は r-l=1/p=3/4となっている。また η4以

下ではちょうど第2図にみられるように客分布を表わす直線から上へずれている。 L1t;a:> 1でな

くても (28)がほぼ成り立っていることも注目される。

T の分布が (24)のときこれに対する nの分布を第 6図に示す。 L1t = 100, 1000, 10000の場

合がプロットされており, 黒丸は第5図と同じく累積度数である。 この場合 p(n)としては明

らかに幕分布ではなく,むしろ指数分布でよく近似される。そのパラメータ(第6図の直線の

傾斜など)は L1tに依り著るしく異なっている。第5図の場合は傾斜 -rは L1tに関せず一定で

200013 plN for仰‘「口百官司

. 。.・ Alo0.1

'. 『、‘、。'z "s •••

。0¥。勾ノー

〆“

~ At. 100

10 100 n n

第 5図 第 3図に示された tのサンプノレを 11t悶

隔で分けたときの各期間内の回数万の

分布(白丸)。 黒丸は π の大きい方から

の累積度数。

Fig. 5. Frequency distribution of n for the

same samples as in Fig. 3. n denotes

the number of samples falling in each

interval of t with a Jength of 11t.

Solid circles indicate cumuJative fre-

quencles

附加申T):平野~, f(t):st,

。。

. .

",. 100 '" -1000

。。

20 0 20 n n

'" • 10000

. .

広 20 40 n

60

第 6図 第 3図に示された tのサンプノレをそのま

ま T のサンフノレとみなし,これから決め

た tを L1t間隔で分けたときの各期間内

の回数刀の分布(白丸)。黒丸は n の大

きい方からの累積度数。

Fig. 6. Fnequency distribution of n for 2000 random samples from a popuJation

having a distribution O(r)=A (r+c)-p, p=4j3, c=l. n denotes the number

of samples falling in each interval of

t with a Jength of L1t. r has trans-勿る

formed into t by tm = L: ri・(m=1,2,

...,20∞)

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地震の時間的分布に関連する諸問題(その 1) 81

あった。これは特別な場合であり,一般には p(n)の中に含まれるパラメータの値は L1tに依存

するものである。これは“最小 2乗法で決めた係数聞に存在する系統的関係川)によるのではな

く,p(n)という分布に本質的なものである。もちろんこのような純確率論的に期待あれる関係

は存在するが,これによる係数の値の変動は大きなものではない。

以上の如く時間間隔の分布が r-q の型をしていても, これが余震系列のときのように rp

の型の時間的分布の結果として導かれたもののときは,回数の分布は n-r の型となるが,時間

間隔が r-q の型の分布からのランダム・サンフ。ルとして与えられる場合は,回数の分布は指数

分布に近いものになる。もしこの両方の性質が混在していれば,p(n)は片対数のグラフでは上

に凹で,両対数のグラフでは上に凸になるような型となるであろうと想像される。

v. 時間間隔の分布のいくつかの例

自然地震について,時間間隔 T あるいは一定期間中の地震回数 nの分布を研究した結果

は多数あるが,ここではこれら諸研究を参照しながら,筆者が調べた諸例を用いて,これらの

分布の性質を考察してゆく。

時間間隔の分布としては,地震の発生が定常的でランダ、ムであるとき期待される指数分布

を基準にして, これとの適合の良否を論じたものが多L、5)。 これらによると多くの場合ごく近

4) 安芸敬一;最小自乗法によって決めた係数相互間の関係について,地震 (ii),14, 199-2∞. 5) T. TERADA; On the Frequency of Earthquakes and AlIied Phenomena, Proc. Tokyo Math.

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82 宇 津 徳治

In and near Japon

• • • • • • • • • • • • • • • • • • AII shocks

M;と6

h~60Km

1926-196日

ω a

hucωコUω』斗

。¥。

o.~ 100 200 300 dcys

τァ第 7図 1926年-1968年におけ

'. る日本付近の M?6,h三三60". (E日ludingf町'eshockso"nd oftershocksl kmの地震の時間間隔での'" '. 分布(白丸)。黒丸は?の大'. '" '. きい方からの累積度数。上'.

図は全地震,下図は余震,

前震を除いたもの。

Fig. 7. Frequency distribu-

tion of time intervals be司

;f、ヘ tween earthquakes for the

earthquakes with M ? 6

and 11::::: 60 km occurring

in and near Japan during

1926-1968.

。下、

。100 200 300 days

-r

T. UTSU;前出 2).

本谷義信・三品博達;十勝岳の 1962年 6月の噴火に際しての地震計調l的調査(第 2報),北大地球物理学

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(1968), 57-63.

N. YAMAKAWA; Foreshocks, Aftershocks and Earthquake Swarms (V), Papers Met. Geophys.,

19 (1968), 437-445.

T. UTSU; Time and Space Distribution of Deep Earthquakes in Japan, ]. Fac. Sci. Hokkaido

Univ., Ser. VII, 3 (1969), in press

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地震の時間的分布に関連する諸問題(その 1) 83

似的に指数分布にあてはまるが, 'の小さい範囲(数時間ないし数日)で,の度数が指数分布

から期待されるものよりも大きくなる傾向がみえる。多くの筆者はこれを地震の続発性(持続

性)のためと解しているが,各地震がそれぞれ続発性を有していると考えるよりも,比較的少

数の大きな地震が余震を伴っていることが原因と考えたほうがよい場合が多いと思われる。余

震を殆ど伴わない深発地震は指数分布とかなりよく一致する6) し, また余震を取除いたデータ

に対しては指数分布がよくあてはまるという例もある 7)。

例として第 7図に 1926年から 1968年末までの 43年間に日本付近に起った M 6以上,深

さ 60km以浅の地震について時間間隔の分布を調べた結果を示す。上の地震は全地震につい

て,下の図はその中から他の地震の余震または前震と見なせるものを除いたものについての結

果で,白丸は, 5日毎の度数,黒丸は時間間隔が T以上のものの度数を示す。この図によれば,

余震等を除けば残りの地震(本震)の時間間隔の分布は指数分布にかなりよく一致している。

全地震についてはし、わゆる続発性が著るしいが,これは余震のためで、あることがわかる。なお

第 7図中の直線はある範囲のデータが直線に載りその範囲外のデータは外れることを示す目安

としてヲI¥,、たものにすぎない(第 8,9図についても同じ)。

第 8図は 1926年から 1967年末までの 42年間に図中に示す浦河周辺の領域 1/8)に発生し

た λ15以七深さ 60km以浅の地震についての時間間隔の分布を示す。 この領域には M6.8

Hokkaido

。081

hEωコ

MRR

-.

0.lo 100 200 300 400 500 600 days

第 8図 1926年-1967年に浦河周辺の領域 l'に起った M"?5,hs60km

の地震の時間間隔 T の分布(白丸),黒丸は累積度数

Fig. B. Frequency distribution of time intervals between earthquakes

for the earthquakes with M"? 5 and h三60km occurring in

the vicinity of Urakawa, Hokkaido during 1926-1967.

6) S. YAMAGUTI; 前出 5)の7番目.

v. N. GAISKli; 前出 5).

T. UTSU; 前出 5).

7) A. B. M. SCHLANGER; 前出 5).

v. N. GAISKli; 前出 5).

8) 宇津徳治;北海道およびその周辺の地震活動,北大地球物理学研究報告, 20 (1968), 51-75.

Page 13: 6.地震の時間的分布に関連する諸問題(その1) : …...6. 地震の時間的分布に関連する諸問題 (その 1)I 一一地震の回数と時間間隔の分布につい

84 宇津徳治

を越える地震は起っておらず,従って M5以上の地震で5JJjの地震の余震とみなせるものは僅

かしかない。このことから,<200daysの範聞で、指数分布によく合っていることが理解される。

T > 200 daysではその度数が T< 200daysにあてはめた直線から期待されるものよりかなり大

きし全体としては (2)式による指数分布からややずれている。 これは地震発生の定常性が完

全でないためで、あろうと思われる。この領域は市)119)が調べた A地域(関東地方内陸部でほぼ

• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • ・ Matsushiro S愉orm

Dec. 9 -18. 1965

。。。。。。。

。。

。。。。

。。。

o 20 40 60 80 min.

τ

• • • • • • • • • • • • • • • • • ・

Nov. 1-25, 1966

。司ポn。. . . . .

。 00 --<ミ。 .

100 200 300 40p min.

第9図 1965年 12月9日-18日(松代群発地震初期)および

1966年 11月 1日-25日(後期)における松代での有

感地震の時間間隔 T の分布(白丸),黒丸は累積度数。

Fig. 9. Frequency distributions of time intervals between felt earthquakes

for two periods in the Matsushiro earthquake swarm.

9) 市川政治;前出 5).

Page 14: 6.地震の時間的分布に関連する諸問題(その1) : …...6. 地震の時間的分布に関連する諸問題 (その 1)I 一一地震の回数と時間間隔の分布につい

地震の時間的分布に関連する諸問題(その 1) 85

指数分布に合っている)と,地震の大部分が地殻の直下,マントルの最上部に起っていること,

地震活動が活発な割に λ16.8を越える大地震が少なくとも調査期間中は無いことなどの点で

よく似ている。

第 9図は松代群発地震の最盛期の前と後で活動がほぼ定常的とみなせる二つの期間につい

て松代観測所での有感地震の時間間隔の分布を示す。全体としてほぼ指数分布に合っているが

10分程度より短い間隔に対する度数はかなり多くなっている。

地震発生の定常性が著るしく失われている場合,たとえば余震系列や群発地震などでかな

り長い期間を対象とした場合などでは,時間間隔の分布は指数分布から著るしくずれ, (8)のよ

うな案分布でかなりよく表わされることが多し、10)。 この場合でも余震それぞれが続発生を持つ

のではなし短い期聞をとってその聞ではほぼ定常的とみなせるようにすると,その期間内で

は指数分布がほぼ成り立っていることが示されている11)。

余震の場合は,その時間的減衰が (4)の改良大森公式で、表わされ,時間間隔の分布が幕分布

で、表わされる例がいくつか挙げられている 12)。 ただしその指数 q と改良大森公式の指数 pと

第 1表 余震の時間間隔分布の指数の観測値 qoと計算値 qc(=2-(lfp))の比絞

Table 1. Comparison between observed and calculated indices

qo and qc in the distribution function of time intervals

between two successive aftershocks.

余震系列 |ρIqc I qo I文献 余震 系列

丹後 1927 1.1 * 1.09 1.23 友田10)S. E. Alaska

1958 三陸沖 1933 1.5* 1.33 1.5 千秋1) 男鹿半島沖 1964

福井 1948 1.3* 1.23 1.48 友田10)Cremasta,

Greece 1966 十勝沖 1952 1.1 * 1.09 1.8 千秋1) 色 丹 島 i中 1967

* UTSUI3)による値

UTSU2)

R. G. A.l2)

COMMINAKIS et a1.12)

広田12)

10) 友田好文;地震の時間間隔分布及び之と地震動の最大振幅の分布との関連に関する統計的記述,地震

(ii), 7 (1954), 155-169.

田中康裕;群発地震の偶発性について,験震時報, 27 (1962), 7-15.

11) 千秋鋭夫;前出 1).

K. MOGI; Study of Elastic Shocks Caused by the Fracture of Heterogeneous Materials and

lts Relation to Earthquake Phenomena, Bull. Earthq. Res. Inst., 40 (1962), 125-173.

12) 千秋鋭夫;前出 1).

T. UTSU; 前出 2).

RESEARCH GROUP FOR AFTERSHOCKS (TOHOKU UNIV.); On the Aftershocks of Oga Earth-

quake, May 7, 1964, Sci. Rep. Tahoku Univ. Ser. 5, 16 (1965), 146-163.

P. COMMINAKIS, ]. DRAKOPOULOS, G. MOUMOULIDIS, and B. PAPAZACHOS; Foreshock and

Aftershock Sequence the Cremasta Earthquake and Their Relation to the Waterloading of

the Cremasta Artificial Lake, Ann. Geo五s.,21 (1968), 39ー71

広田知保 1968年 1月 29日色丹島沖地震の余震活動,北大地球物理学研究報告, 21 (1969), 33-43.

13) T. UTSU; A Statistical Study on the Occurrence of Aftershocks, Geophys. Mag., 30 (1961),

521← 605.

Page 15: 6.地震の時間的分布に関連する諸問題(その1) : …...6. 地震の時間的分布に関連する諸問題 (その 1)I 一一地震の回数と時間間隔の分布につい

86 宇 津 徳治

の関係は第 1表に示すとおり (9)の関係とはわずかに異なり, (9)によって pから求めた qcよ

りも観測から求めた qoの方がやや大きい。 この原因としては, 1): (9)が成り立つのは c→0で

かつ t=Oから∞までに発生した全余震について τの分布を求めたものに対してであるが実

際にはこの条件は充たされていないことと, 2):余震自身に若干の続発生がある, あるいは二

次余震を伴うことがあるので,の小さい範囲の度数が少し増していることなどが考えられ

る。しかしそのいずれの影響がどの程度きいているかを観測データから求めることは実際には

容易ではない。

時間間隔の分布としてはこのほか対数正規分布をあてはめた例lめもあるが,重要視する必

要はないであろう。

VI. 地震回数の分布のいくつかの例

一定期間中の地震回数 nの分布としては,地震の発生が定常的でランダムであるとき期待

される PorSSON分布を基準として,これとの適合の良否を論じた研究が多い15)。これらによる

14) T. TERADA; 前出 5).

C. LOMNITZ; Estimation Problems in Earthquake Series, Techtonophys., 2 (1964), 193-203.

C. LOMNITZ; On Andean Structure, Part !I, Bull. Seism. Soc. Am., 54 (1964), 1271-1281.

15) 中村左衛門太郎;東京の地震の頻度について,気象集誌, 39 (1920), 79-82.

岸上冬彦・河角 広;統計地震学に於ける Schwankungの理論の応用,震研奨報, 4 (1928), 75-85.

井上宇胤;地震回数の統計的研究,震研奨報, 10 (1932), 43-54; 地震, 5 (1933), 21-32, 99-111,

W.INOUYE; 前出 5).

E. WANNER; 前出 5).

高橋治一郎;地震出現回数の統計的諸性質,気象集誌 (ii),15 (1937), 7-16.

飯田汲事;前出 5).

竹花i峰夫;最近 30年間の本邦地震有感回数の統計,験震時宇佐, 10 (1940), 95-146.

本間正作; フヰジッピン群島に於ける地震観測結果に就て, ~余震時報, 12 (1942), 249-262.

松本政次;前出 5).F. KISHINOUYE; Statistical Investigations of Monthly Numbers of Earthquakes Felt at Tokyo,

Bull. Earthq. Res. Inst., 26 (1948), 73-79. F. KISHINOUYE and M. KOTAKA; A Statistical Investigation of Conspicuous Earthquakes in

Japan during the Period 1933-1943, Bull. Earthq. Res. Inst., 28 (1950), 109-114. K. AKI;前出 5).

市川政治;前出 5).

V. N. GAISKII; Some Features of the Seismic Process from a Study of Earthquakes in

Tadzhikistan, Bull. (IZV.) Acad. Sci. USSR, Ser. Geophys., (1961), 574-577. L. KNOPOFF: The Statistics of Earthquakes in Sourthern California, Bull. Seism. Soc. Am.,

54 (1964), 1871-1873.

P. WALKNER M.; Statistical Analysis of Earthquake Occurrence in Japan, 1926-1956, Bull I.I.S.E.E., 2 (1965), 1-27,

V. N. GAISKII;前出 5).

S. G. FERRAS; Test of Poisson Process for Earthquakes in Mexico City, J. Geophys. Res., 72 (1967), 3741-3742.

R. PAGE; Aftershocks and Microaftershocks of the Great Alaska Earthquake of 1964, Bull Seism Soc. Am., 58 (1968), 1131-1168.

W. E. T. SMITH, K. WHITHAM and W. T. PICI王E; A Microearthquake Swarm in 1965 near

Mould Bay, N. W. T., Canada, Bull. Seism. Soc. Am., 58 (1968), 1991-2011

Page 16: 6.地震の時間的分布に関連する諸問題(その1) : …...6. 地震の時間的分布に関連する諸問題 (その 1)I 一一地震の回数と時間間隔の分布につい

地震の時間的分布に関連する諸問題(その 1) 87

と多くの場合 POISSON分布から多少ずれて nの小さいところ (n=Oまたはその近く)と nの

大きいところで度数が POISSON分布から期待されるものよりも大きくなる傾向がみられる16)。

これは時間間隔'7:り分~布のときにみられる指数分布からのずれに対応するものである。余震を

ほとんど伴わない非浅発地震については, POISSON分布とよく一致する例が示されているし17に

また余震を取除いたグータに対しては POISSON分布が適合するという例も報告されている 18)。

KNOPOFFI9) ,の例では余震を除いても POISSON分布に合うようにはならないとされているが,同

論文の方法では,余震を完全に除いたとはいえないであろう。

20

O

Inロnd.neロr---Jopan

1926 -1968

M孟6 h~60Km

O

Excluding

foreshocks ロnd

ロflershocks

n (per 6 monlhsl n (per 6 monlhsl

第 10図

Fig. 10.

1926年-1968年における日本付近の M二三6,h三三60kmの地震の半年

ごとの回数の分布(黒丸)とこれに対応する POISSON分布(白丸)。

Frequency distribution of numbers of earthquak巴sper half

year for the same earthquakes as in Figure 7. Solid circles

represent the corresponding POISSON distribetion.

第 10図は第 7図と同じデータを用いて,

のである。

日本付近の半年毎の地震回数の分布を示したも

全地震を用いた場合(左図)では一致は悪い白丸は対応する POISSON分布を示し,

が,余震等を除いたものについてみると, 右図のようにかなりよく一致している。 第 11図は

第 8図と同じデータによる浦河付近の 1年毎の地震回数分布で POISSON分布とはややずれて

いるが大きくずれてはいない。 この領域 Yと似ている市川の A地域でもやはり POISSON分布

に合っている。

第 12図は第 9図と同じデータによる松代群発地震中の二つの期間における 1時間および

3時間ごとの有感地震回数の分布でやはり POISSON分布からややずれている。

地震の発生が定常でなければ回数 nの分布は POISSON分布に適合しない。 これはたとえ

ば竹花20)の統計結果によく出ている。 地震年回数の変動が大きい地点のデータは POISSON分

16)安芸敬一;統計地震学の現状,地震 (ii),8 (1956), 205-228

17) V. N. GAISKII; 前出 15).

T. UTSU; 前出 5)

18) E. W ANNER ;前出 5).

19) L. KNOPOFF; 前出 15)

20)竹花峰夫;前出 15).

Page 17: 6.地震の時間的分布に関連する諸問題(その1) : …...6. 地震の時間的分布に関連する諸問題 (その 1)I 一一地震の回数と時間間隔の分布につい

88

10 Region l'

1926-1967

M主5,h~60Km

o 5 10 n iper ye口rl

第 11図 1926年-1967年に浦河周辺の

領域 l'(第 8図)に起った M?5,h~60km の地震の 1 年ごとの回数

の分布(黒丸)とこれに対応する

PorSSON分布(白丸)。

Fig. 11. Freqeuncy distribution of

numbers of earthquakes per year

for the same earthquakes as in

Fig. 8. Solid circles represent the

corresponding POISSON distribu-

tIOn.

宇津徳治

O

Matsushira Sw口rm

Dec.9-18

1965

Nov. 1-25

1966

o 5 10 n (per 3 hours)

第 12図 1965年 12月9日-18日,および 1966年 11月 1

日-25日における松代での有感地震の 1時間および 3

時間ごとの回数の分布(黒丸)とこれに対応する Pors-

SON分布(白丸)。

Fig. 12. Frequency distributions of numbers of

巴arthquakes per hour and per three hours

for the same earthquakes as in Fig. 9. Solid

circles represent the corresponding PorSSON

distributions.

:(fjに合わないが,年回数が著るしく変動はしていない地点のデータは PorSSON分布によく一致

している。 PorSSON分布以外の分布としては,複合 PorSSON分布,正規分布, POLYA-EGGEN-

BERGER分布その他が試みられている21)。 もっともパラメータの数が多しその値が自由に選

べるような分布を持ってくれば観測データに合わせ易いのは当然ともいえる。

VII. 適合度の検定および考察

時間間隔 T の分布が指数分布に適合するか否かとか, 地震回数 nの分布が PorSSON分布

に適合するか否かなどの検定にはふつうがテストが行なわれる22)。このとき母集団のノ4ラメー

タ νの値は不明であるから,N 個の地震のデータを用いるときはその最尤推定値 ν=(N-l)j

(tN-t1) (ただし tlotNは最初と最後の地震の発震時)で代用する。 従って自由度は hを階級の

21) W. INOUYE; 前出 15)

石本巳四雄;明治 9年以降東京観測各月地震回数統計,震研集報, 14 (1936), 610-615.

F. KISHINOUYE; 前出 15).

市川政治;前出 5).

C. LOMNlTZ; Statistical Prediction of Earthquakes, Rev. Geophys., 4 (1966), 377-393

V. N. GAISKII; 前出 5)

22) F. KISHINOUYE; 前出 15j・

市川政、冶;前出 5)

A. B. M目 SCHLANGER; 前出 5.

D. VERE-]ONES and R. B. DA VIES ;前出 5).

S. G. FERRAS;前出 15)

Page 18: 6.地震の時間的分布に関連する諸問題(その1) : …...6. 地震の時間的分布に関連する諸問題 (その 1)I 一一地震の回数と時間間隔の分布につい

地震の時間的分布に関連する諸問題(その 1) 89

数とすると k-2となる。

HAMADA23)は異なった方法を用いて松代の極徴小地震の時間間隔の分布の指数分布への適

合性を論じているが,これを統計的検定法として確立するためには若干の改良が必要と思わ

れる。

さて第 V,VI章でとりあげた次の五つの地震系列について, χ2テストを行なった。

(i) 1926-1968年の日本付近の M二三6,h::;;;60kmの地震全部(第 7,10図参照),

(ii) 上記地震の中から余震または前震を除いたもの(第 7,10図参照),

(iii) 1926-1967年の間の浦河周辺に起った M:2:.5,h三60kmの地震全部(第 8,11図参照),

(iv) 1965年 12月9日-18日の松代での有感地震全部(第 9,12図参照),

(v) 1966年 11月1日-25日の松代での有感地震全部(第 9,12図参照)。

第 2表 本論文で扱った五つの地震系列についての

二つの仮説の検定(第 7-12図参照)

Table 2. Test of two hypotheses for five earthquake sequenc喧S

treated in this pap巴r(cf. Figs. 7-12)

!日本付近 I~ ~ I浦 河周辺|I926-1'968い司 左 1926一目前|松代有感

仮 説 M?6 余震等除外 Mミ~5つ 196卸2月h:;:60kmい、 |h:;:60km I

τの分布は指数分布に適合する x 0.001 I 00.1 X 0.1 X 0.001

nの分布は POISSON分布に適合する IX 0.001 I 00.1 0 0.1 I x 0.001

x 0.001;仮説は有意水準日=0.001で棄却される

x 0.01 " x 0.05 " x 0.1 " 00.1 "

0.01

0.05 " "

が a=0.001では棄却されない

0.01 " 0.1 " 0.05 " 0.1 でも棄却されない

松代有感

1966年11月

x 0.001

X 0.001

結果は第2表に示すとおりである。いちいろ検定の過程を記すことは省略するが,たとえ

ば (iv)の松代地震の場合は次のように行なった。

気象庁地震月報には発震時が分位で、示されているので,時間間隔 τは分位までしか決らな

い。,=0分は実は 0-0.5分,,=1分は 0.5-1.5分;・とみなして,分単位で 0-1.5,1.5-3.5,

3.5-6.5, 6.5-10.5, 10.5-15.5,15.5-25.5,25.5-40.5,40.5以上の 8階級に分け χ2を求めると

34.4となる。これは自由度6の χ2分布の α=0.001点の値 22.5より大きいから,指数分布への

適合は危険率 0.1%で棄却される。また 1時間ごとの回数 η が0,1, 2, 3, 4, 5, 6, 7,および8

以上の 9階級に分け χ2を求めると 41.8となるが, これは自由度7の χ2分布の α=0.001点の

値 24.3より大きし、から, POISSON分布への適合性も危険率0.15もで棄却される。

上記5つの系列についてはいろいろな統計的仮説の検定が次報において行なわれ,第2表

と同じ形式で示される。単に地震の発生が定常的かつランダムであるという仮説を検定するの

23) K. HAMADA; 前出 5).

Page 19: 6.地震の時間的分布に関連する諸問題(その1) : …...6. 地震の時間的分布に関連する諸問題 (その 1)I 一一地震の回数と時間間隔の分布につい

90 宇津徳治

ならば,地震回数 11が時間に関して一様分布であること,すなわち (1)式への適合度の X2テス

トを行なったほうが簡単なので, まずこれから始めるべきであろう。 この検定は LEXISの比

(PorSSONの分散指数)の有意性の検定と同等である。

時間間隔の分布が指数分布に適合しないとき,あるいは地震回数の分布が PorSSON分布に

適合しないときは,地震の発生の定常性か,独立性(偶発性)か,あるいはその両方が成り立た

ないときである。このいずれが原因であるかを判断するのは簡単ではない。定常性とか偶発性

とかは確率過程としては明確に定義できょうが,現実の地震系列を扱う立場からは,どのよう

な確率モデルを採用したならば近似度がよいか,あるいは便利であるか,あるいは物理的に有

意義で、あるかなどにより,見方を変えれば変ってくるものである。時間的に一様分布な母集団

からのランダム・サンプルについては異論はないが, これからずれている地震系列が見出され

たとき如何に解釈するかは任意性が残されている。

定常性が成り立たないというときには,地震系列の発生地域全般にわたって作用している

地震を起す原因となる何かが時間的に変化していると考え,偶発性が成り立たないというとき

には,一つの地震の発生がその付近の局所的な地震を起す原因となる何かの状態を変えている

と考える立場もあり得るが,地震発生の統計結果からその様な区別をつけることは現状ではむ

ずかしい。

余震系列について時間間隔の分布が指数分布に適合しない,また回数の分布が PorSSON分

布に適合しないのは,余震に続発性があるためというよりも,定常性が成り立っていないため

というべきかも知れない。しかし先に扱った松代群発地震の一部については,この不適合のお

もな原因は一つの地震から数分の聞に次の地震がとくに多く起っていることによるもので,調

査期間全般にわたる定常性の多少の悪さ(次報参照)はほとんど影響していない。従ってこの

場合は偶発性が成り立っていないとみなすのが普通であろうが,地震活動度が短期間に脈動状

あるいはパルス状に変る(すなわち定常的で、なしうためとも解釈できないことはない。 どの程

度の時間尺度で見ているかの問題である。

日本付近の Mミ6の地震のうち余震等を除いたものについては,指数分布, PorSSON分布

にほぼ合っている。従って一つの大きな地震が起ると,その余震は別として,他にも大きな地

震が起り易くなるとはこのデータからはいえない。

余震の存在は地震統計に大きな影響を及ぼしている。余震を含めたデータの統計を地震一

般のもつ性質として解釈すると,しばしば問題の本質をはずれた結論に導かれることがある。

大きな地震ほど稀にしか起らず,このような地震が多数の余震を伴うから,たとえば地震発生の

定常性,偶発性,周期性などの検定結果の解釈などは余震をどう扱ったかに大きく依存する問。

24) H. ]EFFREYS; Aftershocks and Periodicity in Earthquakes, Gerl. Beitr. Geophys., 56 (1938),

111-139.

安芸敬一;前出 16).

Page 20: 6.地震の時間的分布に関連する諸問題(その1) : …...6. 地震の時間的分布に関連する諸問題 (その 1)I 一一地震の回数と時間間隔の分布につい

地震の時間的分布に関連する諸問題(その 1) 91

余麗の存在は地震のマグニチュードの分布25)や空間的分布の問題にも大きく関連するであろう。

地震の発生が本質的にランダムであるとすれば,研究の対象としての興味の大半は失われ

てしまうが,実際は地震の発生にはいろいろな性質があり,それが混合してみかけ上ランダム

に近い状況になっているのであろう。調査する時間,空間,マグニチュードの範囲を変えてゆ

けば, そのうちの一つの性質が比較的はっきりと現われてくるものと思われる(たとえば直径

数百 km程度の範囲に千年程度の期間にわたって起った M8クラスの地震を対象とすると,

100-200年程度の間隔でかなり規則的に起っていることなど)。従って適当に選ばれたデータ

を,適当な地震発生の確率モテ、ルと比較し,さらにモデルの型やそれを特徴づけるパラメータ

と地震発生に関連する物理現象ないし地学現象との関係を追求してゆくことが望まれる26)。

地震の発生は少なくとも時間,空間,マグニチュードの 5次元の分布として記述すべきで

あろう。複雑さを避けるためそのうちの一次元だけを取り上げて論ずることが多いが,各次元

はまったく独立ではないので,将来は多次元のモデルを考えてゆく必要があろう。

VIII. 結論

本報のおもな結論は次のとおりである。

(1) 地震の発生が時間的に定常かつラン夕、、ムであるときには,相次ぐ二つの地震の時間間

隔の分布は指数分布になり,また一定の期間当りの地震回数の分布は POISSON分布になること

はよく知られているが,この定理の逆および裏は必らずしも成り立たないことを注意したい。

たとえば時間間隔の分布が指数分布に適合するからといってその地震は互に独立な事象である

ともいえないし,適合しないからといって独立な事象でないともいえない。

(2) 地震回数の時間的分布が余震のようにf(t)=Arp で表わされるときは t=Oから∞

までの範範のデータについて時間間隔の分布ばゆい)=ムτペ一定期間 L1t当りの回数の分布は

p(n)キkzn-r(n2A)となり ,q=3-r=2一(ljp)で rは L1tに依らない。しかし上記の仮定をは

ずし一般的にゆ(r)=k)r-q とp(n)=k2n-r が同等であるとはいえない。

(3) 時間間隔の分布を指数分布と比較した研究,地震回数の分布を POISSON分布と比較し

た研究は約 50年前から行なわれ, 多くの地震系列についての結果が多数発表されている。全

般的にみてそれぞれ指数分布および POISSON分布からややずれているものが多い。 指数分布

や POISSON分布によく合っているものは,地震の発生がほぼ定常的な範囲を扱かい,かつ余震

25)宇津徳治;余震を考慮した場合の地震の規模別度数分布,験震時報, 28 (1964), 129-136.

26)たとえば,友田好文:地震統計とモデ、ノレ,地震 (ii),8 (1956), 196-204.

安芸敬一;前出 16).

C. LOMNITZ and A. HAX; Clustering in Aftershock Sequences, The Earth beneath the Con-

tinents, A. G. U. Geophys. Monogr. 10 (1966), 502-508.

D. VERE-JONES and R. B. DAVIES;前出 5).

D. VERE-JONES; A Markov Model for Aft巴rshockOccurrence, Pure Appl. Geophys., 64 (1966),

31-42.

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92 宇津徳治

等がほとんど含まれていないもの(深い地震のように余援が無いもの, 余震を意識して取り除

いたもの,扱った系列中の大きな地震の余震がその系列中に含まれない程度の規模以上に限っ

たものなど)である。

(4) 余震系列についての時間間隔の分布はほぼゆ(,)=k2,-Qに適合するが qは 2ー(ljp)よ

りやや大きい。これは t→∞までデータを用いていないことが一つの理由であろう。

(5) 地震の発生が定常かつランダムであるという仮説の検定には,時間間隔の分布の指数

分布への適合性,および地震回数の分布の POISSON分布への適合性の /(2テストが有効である。

五つの地震系列についてこの検定を行なった(第2表参照)。ただし,上記仮説の検定だけが目

的ならばこのような手聞をかけなくても,地震回数の時間的変化が時間に関して一様分布に適

合するかどうかのがテストを行なえば多くの場合済んでしまうことである(次報参照)。

(め 地震の発生は本質的にはランダムな現象でないであろうから,それに見合うモデルを

考え,地震発生と関連があると思われるいろいろな物理現象ないし地学現象と関係づけてゆく

ことが期待される。

6. Some Problems of the Distribution of

Earthquakes in Time (Part 1)

By Tokuji UTSU

(Department of Geophysics, Faculty of Science, Hokkaido University)

(つづく)

This is the fIrst part of a series of papers dealing with statistical properties of the

occurrence of巴arthquakesin time. The frequency of earthquakes per unit time interval

which is denoted by n and the length of time interval between two successive earthquakes

which is denoted by τare investigated in this paper.

It is well known that, if the earthquake occurrence is a stationary and random

process, , has a neagtive exponential distribution and n has a POISSON distribution. The

converse is not always true. A good fit of , to a negative exponential distribution or

a good fit of n to a POISSON distribution does not necessarily mean that the earthquakes

are essentially independent events.

Several tens of papers have been published in the last half century concerning the

comparison between observed and theoretical distributions of , or n for various earth-

quake sequences. A review of these papers leads to a conclusion that a similar type of

departure from an exponential distribution or a POISSON distribution is commonly ob-

served for most sequences, but for some sequences a fairly close agreement between

observed and theoretical distributions has been obtained. The latter sequences usually

do not contain remarkable aftershock sequences or swarms.

If the rate of earthquake occurrence is represented by an inverse power law f(t) =

At-P (as in the case of an aftershock sequence), the frequency distributions of , and n

for th巴 data0ζt<∞ also follow inverse power laws tt(,)=kJ,-q and 1り(n)キk2n-r(η之4)

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地震の時間的分布に関連ずる諸問題(その 1) 93

with a relation q=3-r=2一(lfp). The equivalence between the two expressions ofり(,)

and p(n) does not always hold, if the above-mentioned assumption for f(t) is removed.

Distibutions of , for several aftershock sequences fit the inverse power law, but the ob-

served indices qo are somewhat larger than the calculated values qc from the observed

values of p.

AXえtestfor the goodness of fit to an exponential distribition or a POISSON distribu-

tion has been performed for five earthquake sequences (cf. Figs. 7-12 and Table 2).

These sequences wiIl be investigated from different points of view in later papers. For

the purpose of testing the stationarity and randomness of the earthquake occurrence in

a sequence, a χ人testfor the goodness of fit of the rate of occurrence to a uniform dis-

tribution with respect to time is a simple and sensitive method.

The occurrence of earthquakes may not be a random phenomenon, though the

apparent randomness is sometimes observed due to mixing of essentialIy non-random

processes. (to be continued)