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7-10 植物

7-10 植物368 表7-10-2 現地調査方法(植物) 調査項目 調査方法 シダ植物 ・種子植物 ・任意観察・任意採集:調査範囲を踏査し、目視観察によって、生育している種を記録し

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7-10 植物

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7-10 植物 7-10-1 現況調査

1)現地調査

(1)調査方法

事業計画地及びその周辺の植物(シダ植物・維管束植物、蘚苔類、地衣類、藻類、菌類及び植物

群落)について、生育している種及び生育状況の確認のために、現地調査を実施した。現地調査概

要を表 7-10-1 に、調査方法を表 7-10-2 に示す。

(2)調査時期

植物相の調査時期については、各調査項目の主要な種等の地上部の出現時期や、種の識別に適

した時期の違いを考慮し、春~秋季に設定した。

植物群落の状況については、植物が繁茂し、階層構造や被度等が判別しやすい夏季に設定した。

表 7-10-1 現地調査概要(植物)

調査項目 調査方法 調査位置 調査期間

シダ植物

・種子植物

任意観察

・任意採集

事業計画地及び事業

計画地敷地境界から

200m の範囲

平成 20 年 11 月 19 日~20 日

平成 21 年 5月 1日、7日、12 日、22 日

平成 21 年 7月 27 日~31 日

平成 21 年 8月 6日~7日

蘚苔類 任意観察

・任意採集 17 地点

平成 21 年 5月 22 日、

平成 21 年 6月 5日、6月 19 日

地衣類 任意観察

・任意採集 16 地点

平成 21 年 5月 22 日、

平成 21 年 6月 5日、6月 19 日

藻類 任意観察

・任意採集 16 地点

平成 21 年 5月 22 日、

平成 21 年 6月 5日、6月 19 日

植物相

菌類 任意採集

事業計画地及び事業

計画地敷地境界から

200m の範囲

平成 21 年 5 月 22 日

平成 21 年 6 月 26 日

平成 21 年 7 月 13 日、24 日

平成 21 年 8 月 7 日、19 日

平成 21 年 9 月 4 日、18 日

平成 21 年 10 月 2 日、13 日、23 日

平成 21 年 11 月 2 日、16 日、24 日

植生図作成

事業計画地及び事業

計画地敷地境界から

200m の範囲の踏査 植生

(植物群落の状況)

群落組成調査 70 地点

平成 21 年 5月 22 日

平成 21 年 7月 27 日~31 日

平成 21 年 8月 6日~7日

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表 7-10-2 現地調査方法(植物)

調査項目 調査方法

シダ植物

・種子植物

・任意観察・任意採集:調査範囲を踏査し、目視観察によって、生育している種を記録し

た。その場で目視による同定が困難な種については、必要に応じて室内同定を行い、

種を判別・記録した。

蘚苔類

地衣類

・調査範囲を踏査し、周囲の地形、日照、湿度、地表の状況、周囲の植生(植物群落)

等に留意して調査地点を設定し、地表、石上、樹幹等の目視観察によって、生育して

いる種を記録した。その場で目視による同定が困難な種については、必要に応じて室

内同定を行い、種を判別・記録した。

藻類

・調査範囲を踏査し、周囲の地形、日照、湿度、地表や水域の状況、周囲の植生(植物

群落)等に留意して調査地点を設定し、水や川底にある土、河川周辺の土壌、樹皮等に

生育している種を任意に採取し、室内同定を行って、種を判別・記録した。

植物相

菌類

・任意観察・任意採集:調査範囲を踏査、目視観察によって、生育している植物種を記録

した。その場で目視による同定が困難な種については、必要に応じて室内同定を行い、

種を判別・記録した。

植生

(植物群落の状況)

・植生図の作成:航空写真を判読するとともに、調査範囲内を踏査し、主要な植物群落

のタイプとその分布状況を記録し、既存の現存植生図「第 2 回自然環境保全基礎調査

(植生調査)(環境庁 1982 年)」等を参考にして、現存植生図を作成した。

・植物社会学的植生調査:主要な植物群落に方形枠(コドラート)を設定し、方形枠内の

植物種の出現状況(種名、階層、被度・群度等)を記録することにより、主要な植物群落

の状況を記録した

※現地調査時及び室内同定による種の識別等について、広島大学の協力を仰いだ。

植物社会学的植生調査について、被度および群度の基準は、次に示すとおりである。

[被度]

5:調査面積の 3/4 以上を覆う。個体数は任意。

4:調査面積の 1/2~3/4 を覆う。個体数は任意。

3:調査面積の 1/4~1/2 を覆う。個体数は任意。

2:調査面積の 1/10~1/4 を覆う。個体数は任意。

1:個体数が多いか散生し、調査面積を覆う割合が 1/10 以下。

+:散生し、調査面積を覆う割合が極めて少ない。

[群度]

5:枝葉が相互に接触して全面を覆う。

4:群度 5の状態に穴があいている。

3:まばら状あるいは大きいパッチ状に生育している。

2:小さいパッチ状に生育している。

1:単生している。

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任意観察・任意採集法

植物相(シダ・種子植物)調査 植物相(蘚苔類・地衣類・藻類)調査

植物相(菌類)調査 植物群落調査

(3)調査地点

各調査項目の調査範囲及び調査地点を、図 7-10-1~4 に示す。

植物の調査は、本事業の影響する可能性のある範囲及び各調査項目の主要な種等の生育特性を

考慮し、事業計画地及びその周辺約 200m の範囲を対象に実施した。

調査方法は専ら任意踏査(任意観察・任意採集)によったが、蘚苔類、地衣類、藻類及び植生(植

物群落の状況)については、周囲の地形や植生等に留意した調査地点を設定して実施した。

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図 7-10-1 植物相調査位置

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①蘚苔類、地衣類、藻類

蘚苔類、地衣類、藻類の調査地点の位置を、図 7-10-2 に示す。各調査地点の環境は、地形、日

照、湿度、地表の状況及び植生(植物群落)等の状況は表 7-10-3 に示すとおり、谷-渓流(1、2、3、

7、11、12、13、14)、谷-渓流なし(9、15)、尾根(4、5、10)、路傍(6、8、17)、送電線鉄塔付近

(16)等に設定した。

また、藻類については、チスジノリ(渓流部)、カワモズク類(細流)、シャジクモ類(斜面と渓流

の間の平坦な湿地に)等が、事業計画地及びその周辺で確認される可能性があることについて、地

点設定等の際に留意した。

表 7-10-3 調査地点の状況(蘚苔類、地衣類、藻類)

調査

地点 地形 日照 湿度 地表の状況 周囲の植生(植物群落)等

1 谷 半日陰 高い 水量がある小渓流、

石礫

樹林に覆われている。斜面:高木林(コナラ群落、ア

カマツ-コバノミツバツツジ群落)、谷部:低木林(ウ

ツギ群落)

2 谷 半日陰 高い 水量がある小渓流、

石礫、岩

樹林やネザサ群落に覆われている。

斜面:高木林(コナラ群落、スギ・ヒノキ植林)、谷部:

ネザサ群落、スギ・ヒノキ群落

3 谷 薄暗い 高い 水量がある小渓流、

土、石礫

樹林に覆われている。斜面:高木林(コナラ群落、シ

リブカガシ群落)、谷部:コナラ群落、スギ・ヒノキ

植林、ウツギ群落

4 尾根 半日陰 低い 土、落葉 樹林に覆われている。斜面:高木林(アカマツ-コバ

ノミツバツツジ群落)

5 尾根 半日陰 低い 土、落葉 樹林に覆われている。斜面:高木林(アカマツ-コバ

ノミツバツツジ群落)

6 谷 明るい 低い 山道沿い、土、落葉 山道沿いで日当たりが良い。斜面:高木林(コナラ群

落、竹林)、谷部:ネザサ群落

7 谷 薄暗い 高い 水量がある小渓流、

土、石礫

樹林に覆われている。斜面:高木林(コナラ群落、シ

リブカガシ群落)、谷部:高木林(スギ・ヒノキ植林)

8 路傍 明るい 法尻が所々

湿る

道路沿い、

土、草地(法面)

道路沿いで日当たりが良い。斜面:高木林(コナラ群

落、アカマツ-コバノミツバツツジ群落)、法面:人

工草地

9 谷 薄暗い 高い 土、落葉 樹林に覆われている。斜面:高木林(コナラ群落、シ

リブカガシ群落)、谷部:放棄水田雑草群落

10 尾根 半日陰 低い 土、落葉 樹林に覆われている。斜面:高木林(コナラ群落、シ

リブカガシ群落)

11 谷 半日陰 高い 水量がある小渓流、

石礫、岩

樹林や草地に覆われている。斜面:高木林(コナラ群

落)、谷部:ネザサ群落、ススキ群落

12 谷 半日陰 高い 水量の少ない小渓流、

樹林や草地に覆われている。斜面:高木林(コナラ群

落)、谷部:放棄水田雑草群落、ウツギ群落

13 谷 半日陰 高い 水量の少ない小渓流、

土、石礫

樹林や草地に覆われている。斜面:高木林(コナラ群

落)、谷部:スギ・ヒノキ植林、放棄水田雑草群落

14 谷

半日陰、

谷部は明る

高い 水量がある小渓流、

樹林やネザサ群落に覆われている。谷部は日当たり

が良い。斜面:高木林(コナラ群落)、谷部:ネザサ群

15 谷 半日陰 低い 土、落葉 樹林に覆われている。斜面:高木林(コナラ群落、ス

ギ・ヒノキ植林)

16 尾根 明るい 低い 送電線鉄塔付近、

土、岩、草

送電線鉄塔付近で日当たりが良い。斜面:高木林(ア

カマツ-コバノミツバツツジ群落)、伐採跡群落

17 谷 明るい 適湿 道路沿い、

土、草地(法面) 日当たりが良い。水田、畑、一年生雑草群落等

※調査地点 17 は蘚苔類のみ実施した。

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図 7-10-2植物相調査位置

図 7-10-2 植物相調査地点 (蘚苔類・地衣類・藻類)

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図 7-10-3 植物相調査位置

図 7-10-3 植物相調査地点(菌類)

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②植物群落(植物社会学的植生調査)

調査地点の位置を、図 7-10-4 に示す。また、調査地点(コドラート)番号と植物群落との対応を、

表 7-10-4 に示す。

表 7-10-4 調査地点(コドラート)番号と植物群落の対応(植物群落) 植物群落 調査地点(コドラート)番号

シリブカガシ群落 No.40、55、58

アラカシ群落 No.49

コナラ群落 No.8、16、33、47、65

アカマツ-コバノミツバツツジ群落 No.3、4、9、19、22、25、27、28、34、39、53、63

ヌルデ-アカメガシワ群落(高木) No.7、36、50

ヌルデ-アカメガシワ群落(低木) No.5、18、67

ヒメコウゾ群落 No.62

ウツギ群落 No.24、37、38、51

伐採跡群落 No.23

ネザサ群落 No.6、11、20、31、44

ススキ群落 No.35、43

クズ群落 No.66

セイタカアワダチソウ群落 No.68

一年生草本群落 No.59、60

ツルヨシ群落 No.69

ヨシ群落 No.21、26

放棄水田雑草群落 No.1、2、12、13、14、17、29、30、32、41、57

竹林 No.42、45(モウソウチク林)、No.48(マダケ林)

スギ・ヒノキ植林 No.10、46、54

樹園地 No.15

畑地雑草群落 No.70

水田雑草群落 No.61

人工草地 No.52、56(オニウシノケグサ群落)、

No.64(オオキンケイギク群落)

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図 7-10-4植物群落調査

図 7-10-4 植物群落調査地点

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7-10-2 調査結果

1)現地調査

(1)植物相

①シダ植物・種子植物

事業計画地及びその周辺で確認されたシダ植物・種子植物は、表 7-10-5(1)に概要を示すとおり、

改変区域内 114 科 508 種、改変区域外 109 科 469 種、合計 122 科 612 種であった。確認種数が 600

種を超えていることは、調査範囲の植生が代償植生(人為植生、二次植生)中心で、特に放棄水田

に多様な種が存在していることが大きいと考えられる。科別にみると、改変区域内外ともイネ科

の種数が多く、次いでキク科、バラ科、マメ科が多くなっている。確認種一覧を「資料編」に示

す。

調査範囲は瀬戸内海沿岸部の海抜約 100m~340m の山麓地で、尾根と谷が入り組む起伏に富んだ

地形がみられ、確認された種には、南方系の常緑広葉樹林帯の要素の種(ツブラジイ、シリブカガ

シ、タブノキ、ハンゲショウ、クロバイ、クモラン等)と、北方系ないし落葉広葉樹林帯(ブナ帯)

の要素の種(ダイセンミツバツツジ、ヤマボウシ、チュウゴクザサ等)が含まれている。また、山

口県東部から広島県西部にかけての地域に分布が限定されるものとして、サンヨウアオイ、ヒメ

ヤマツツジ等が確認されている。

生育地の状況としては、尾根部や斜面上部のやや乾いた場所にはアカマツやネズの高木があり、

林内にソヨゴ、リョウブ、コバノミツバツツジ等が生育していた。また、斜面にはコナラを主体

とした落葉広葉樹林が広がり、林内にリョウブ、クリ、アラカシ等が生育していた。

半日陰の谷間に沿ってスギやヒノキの植林がみられる場所では、シダ類が多く確認された。日

当たりの良い谷間にはネザサやススキが群生していた。これらの谷には、沢筋等の湿潤地にハナ

タデ、ハンゲショウ、キツネノボタン、ヤノネグサ等の湿生植物が生育し、植栽由来とみられる

イヌコリヤナギ、ヒイラギナンテン、ボケ等も点在しているため、古くは耕作地(水田)として利

用されていたものと考えられる。

人為的なかく乱の影響を受けている市街地や道路等には、セイタカアワダチソウ、ヒメムカシ

ヨモギ、ヒメジョオン等の帰化植物が多く生育していた。

表 7-10-5(1) シダ植物・種子植物の調査結果概要

改変区域内 改変区域外 合計 分類群

科数 種数 科数 種数 科数 種数

シダ植物 18 62 17 48 18 65

裸子植物 5 7 4 5 6 8

離弁花類 54 210 55 207 59 257 双子葉 植物 合弁花類 26 114 22 104 27 132

種子

植物 被子

植物 単子葉植物 11 115 11 105 12 150

合計 114 科 508 種 109 科 469 種 122 科 612 種

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②蘚苔類

事業計画地及びその周辺で確認された蘚苔類は、表 7-10-5(2)に概要を示すとおり、蘚類 26 科

101 種、苔類 26 科 68 種、ツノゴケ類 1科 1種、合計 53 科 170 種であった。確認種一覧を「資料

編」に示す。

確認種には、渓畔等の湿った岩や石につく種(アオハイゴケ、オオサワゴケ、ホウオウゴケ、ホ

ソバミズゼニゴケ等)が多く含まれている。また、山地の林下や岩上に生えるナミガタスジゴケや

クサゴケ等も、低地に生えることの多いアズマゼニゴケやヒダハイチイゴケ等も含まれている。

湿った土の上に生えるコスギゴケやゼニゴケ、樹幹等につくカラヤスデゴケやイワイトゴケ、生

葉上に生えるヨウジョウケビラゴケやヒメクサリゴケ、カビゴケ等も確認された。

表 7-10-5(2) 蘚苔類の調査結果概要

調査範囲 分類群 主な種

科数 種数

蘚類

ヒメタチゴケ、イクビゴケ、エゾスナゴケ、ホウオ

ウゴケ、ヤノウエノアカゴケ、ススキゴケ、イクタ

マユハケゴケ、ハマキゴケ、ハリガネゴケ、ツルチ

ョウチンゴケ、タマゴケ、タチヒダゴケ、ヒノキゴ

ケ、アブラゴケ、ノミハニワゴケ、トヤマシノブゴ

ケ、コカヤゴケ、キヨスミイトゴケ、アカイチイゴ

ケ、クシノハゴケ、ミヤマサナダゴケ、ヒロツヤゴ

ケ、カガミゴケ、ナガハシゴケ、チャボヒラゴケ、

イワイトゴケ

26 101

苔類

コマチゴケ、ゼニゴケ、ジャゴケ、アズマゼニゴケ、

ケゼニゴケ、ホソバミズゼニゴケ、マキノゴケ、エ

ゾヤハズゴケ、クモノスゴケ、ヤマトフタマタゴケ、

ナガサキテングサゴケ、チヂミカヤゴケ、ヤマトケ

ビラゴケ、カラヤスデゴケ、ジャバウルシゴケ、ヤ

マトヨウジョウゴケ、チャボマツバウロコゴケ、ム

クムクゴケ、コスギバゴケ、オオウロコゴケ、コハ

ネゴケ、オタルヤバネゴケ、ウニヤバネゴケ、ノコ

ギリコオイゴケ、トサホラゴケモドキ、オオホウキ

ゴケ

26 68

ツノゴケ科 アナナシツノゴケ 1 1

合計 53 科 170 種

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③地衣類

事業計画地及びその周辺で確認された地衣類は、表 7-10-5(3)に概要を示すとおり、4科 21 種

で、いずれも平地や低山地に一般的にみられる種であった。確認種一覧を「資料編」に示す。

表 7-10-5(3) 地衣類の調査結果概要

調査地点 科名 種和名

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

ヘリトリゴケ ヘリトリゴケ ●

ハナゴケ ヒメジョウゴゴケ ●

コアカミゴケ ●

ヒメレンゲゴケ ● ● ● ● ●

ウメノキゴケ コナウチキウメノキゴケ ● ● ● ●

チョロギウメノキゴケ ● ● ● ● ●

ヒカゲウチキウメノキゴケ ● ● ●

トゲウメノキゴケモドキ ● ●

コナヒメウメノキゴケ ● ●

ウメノキゴケ ● ● ●

マツゲゴケ ● ●

オオマツゲゴケ ● ● ●

モジゴケ コナモジゴケ ●

クロモジゴケ ● ●

セスジモジゴケ ●

サクラモジゴケ ● ●

ホソモジゴケ ● ● ● ● ●

ナマリモジゴケ ●

ボンジゴケ ● ●

コフキモジゴケ ● ●

不完全地衣類 レプラゴケ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

合計 4 科 21 種 6 3 6 4 2 5 7 3 2 2 5 6 3 1 3 3

注 1)種名及び分類は次の文献に準拠した。

「Yoshimura I., Harada H., Okamoto T., Matsumoto T., Miyawaki H. & Takahashi K. (2007)

Taxonomic Arrangement of Lichens and Lichen-allies of Japan. Lichenology 5 (2): 95-100.」

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④藻類

事業計画地及びその周辺で確認された藻類は、表 7-10-5(4)に概要を示すとおり、9科 21 種で

あった。確認種一覧を「資料編」に示す。

事業計画地及びその周辺には、大型藻類(チスジノリ、カワモズク及びシャジクモ類等)が生育

できるような安定した水域がなく、これらの大型藻類は確認されなかった。

表 7-10-5(4) 藻類の調査結果概要

調査地点 分類群 種和名

1 2 3 4 5 6 注) 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

藍藻類

ノストク目

スキトネマ科 スキトネマ科の一種 ●

ノストク科 ノストク属の一種 ● ●

珪藻類

(目、科不詳) 珪藻類の一種 ●

緑藻類

クロロコックム目

クロロコックム科 ミルメキアの一種 ● ● ●

オオキスチス科 Chlorella ellipsoidea ● ●

Chlorella luteoviridis ● ● ● ● ● ●

Graesiella emersonii ● ● ● ● ●

Graesiella vacuolata ● ● ● ● ● ● ● ● ●

Elliptochloris reniformis

Elliptochloris subsphaerica

● ● ● ● ● ● ● ●

ロボスファエラ属の一種 ●

Pseudochlorella pyrenoidosa

Pseudococcomyxa simplex ● ● ● ● ● ● ●

Scotiellopsis terrestris

● ● ●

スケネデスムス科 コエラストレラ属の一種 ● ● ● ● ● ● ●

スケネデスムス属の一種 ●

ウロトリクス目

ウロトリクス科 Klebsormidium flaccidum ●

クレブソルミジウム属の

一種 ● ● ● ● ● ●

Stichococcus bacillaris ● ●

シグネマ目

メソタエニウム科 Cylindrocystis brebissonii

ウルバ藻綱

ウルバ目

アワビモ科 Pseudodendoclonium printzii

合計 6 目 9 科 21 種 12 5 6 6 4 - 7 3 4 2 3 5 3 3 2 4

注 1)種名及び分類は「淡水藻類-淡水産藻類属総覧(内田老鶴圃新社,2007 年)に準拠した。 注 2)調査地点 6は調査地点 4及び 5と類似した環境と判断し、試料を採集しなかった。

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⑤菌類

事業計画地及びその周辺で確認された菌類は、表 7-10-5(5)に概要を示すとおり、44 科 200 種

であった。確認種一覧を「資料編」に示す。

主に尾根から斜面中上部にかけて多くの菌類が確認され、また、確認種には、木材腐朽菌のキ

ヒラタケ、ニガクリタケ、カイガラタケ、ハナビラニカワタケ、キクラゲ、コロコブタケ、菌根

菌のテングタケ、クリフウセンタケ、クサウラベニタケ、オウギタケ、アカヤマドリ、ベニイグ

チ、クロハツ、落葉・落枝等を分解するエセオリミキ、スギエダタケ、アシナガタケ、モグラ類

の巣に発生する菌根菌のナガエノスギタケ、蛾類の蛹から発生するサナギタケやハナサナギタケ

が含まれている。

表 7-10-5(5) 菌類の調査結果概要

調査範囲 分類群 目 主な種

科数 種数

担子菌亜門

ハラタケ

キヒラタケ、コオトメノカサ、ムラサ

キシメジ、テングタケ、ウラベニガサ、

ザラエノハラタケ、ムジナタケ、ツチ

ナメコ、ニガクリタケ、クリフウセン

タケ、チャヒラタケ属未知種、クサウ

ラベニタケ、ニワタケ、オウギタケ、

アカヤマドリ、ベニイグチ、クロハツ

17 125

ヒダナシタケ

ナギナタタケ、ホウキタケ属未知種、

サガリハリタケ、キウロコタケ、イボ

タケ、ニセニクハリタケ、カイガラタ

ケ、マンネンタケ、サビアナタケ

11 53

ニセショウロ ツチグリ 1 2

ケシボウズタケ クチベニタケ 1 1

ホコリタケ ヒナツチガキ、ノウタケ 2 3

シロキクラゲ ハナビラニカワタケ 1 1

キクラゲ キクラゲ、ヒメキクラゲ 2 4

アカキクラゲ ツノフノリタケ 1 2

子嚢菌亜門 ズキンタケ カベンタケモドキ、ニセキンカクアカ

ビョウタケ、モエギビョウタケ 3 3

チャワンタケ ノボリリュウタケ、アラゲコベニチャ

ワンタケ 2 3

バッカクキン サナギタケ、ハナサナギタケ 2 2

クロサイワイタケ クロコブタケ 1 1

合計 44 科 200 種

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(2)陸生植物(植物群落)

事業計画地及びその周辺の主要な植物群落等は、現存植生図(図 7-10-5)に示すとおり、16 単位

の植生区分及び 9単位の土地利用区分その他に区分された。各群落の代表的な地点等、群落組成

調査を実施した地点は、図 7-10-4 に示す 70 箇所である。また、群落区分別の面積集計表を、表

7-10-5 に示す。

事業計画地及びその周辺の山林には、斜面から尾根部にかけてコナラ群落とアカマツ-コバノミ

ツバツツジ群落が広く分布し、また、シリブカガシ群落やアラカシ群落が小面積で点在していた。

谷部の古い耕作地跡地には、ネザサ群落、ススキ群落、放棄水田雑草群落等の草地、ウツギ群落

の低木林、ヌルデ-アカメガシワ群落等が分布し、コナラ群落の高木林等に遷移している場所や、

スギ・ヒノキや竹類が植林されている場所もみられた。事業計画地周辺の北側と西側には市街地、

造成地、道路等が広がり、道路の法面に人工草地、クズ群落、ヌルデ-アカメガシワ群落等が分布

し、樹園地や畑地、水田の農耕地もみられた。

1982 年(昭和 57 年)頃の植生図(第 2 回自然環境保全基礎調査(植生調査)、環境庁)によると、

事業計画地には、コバノミツバツツジ-アカマツ群集が尾根部や斜面に広く分布していた。コバノ

ミツバツツジ-アカマツ群集は、自然林が伐採されたあとに成立するアカマツ二次林のタイプの一

つで、広島県の森林植生の中では最も広い面積を占める植生であり、事業計画地周辺に広く分布

する花崗岩地に顕著に成立するものである。石内川沿いの平野部(大師橋から下流部にかけての大

字石内の範囲内)には、水田地帯が広がっていた。

この、事業計画地のコバノミツバツツジ-アカマツ群集は、1979(昭和 54 年)の「広島市現存植

生図」(鈴木、豊原、安藤、中野)では「アカマツ-アラカシ群集」として取り扱われている。また、

広島市現存植生図では、事業計画地及びその周辺の植生として、アカマツ-アラカシ群集のほか、

伐採跡地に属する「アカメガシワ群落」と、耕作地に属する「水田」の分布が記載されている。

事業計画地周辺において、「第 3 回自然環境保全基礎調査 広島県自然環境情報図」(環境庁、

1989(平成元年))及び環境省のホームページ(J-IBIS)によると、事業計画地及びその周辺に特定植

物群落は分布していない。

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表 7-10-6 群落区分別面積集計表

区分 群落名 調査範囲(ha)

事業計画地 内(ha)

改変区域内 (ha)

シリブカガシ群落 1.5 0.7 0.6

アラカシ群落 0.1 0.1 0.03

コナラ群落 67.4 41.8 34.6

アカマツ-コバノミツバツツジ群落 45.5 23.8 20.4

ヌルデ-アカメガシワ群落(高木) 1.8 1.3 1.0

ヌルデ-アカメガシワ群落(低木) 2.9 0.8 0.8

ヒメコウゾ群落 0.2 0.0 0.0

ウツギ群落 2.0 1.7 1.6

二次林

伐採跡群落 0.4 0.01 0.0

ネザサ群落 6.8 6.6 6.5

ススキ群落 1.2 0.4 0.4

クズ群落 1.7 0.1 0.1

セイタカアワダチソウ群落 0.2 0.0 0.0

一年生草本群落 0.4 0.01 未満 0.01 未満

ヨシ群落 0.2 0.1 0.1

植生区分

二次草地

放棄水田雑草群落 1.0 0.9 0.8

竹林 2.3 1.3 1.1 植林

スギ・ヒノキ植林 2.6 1.4 1.2

樹園地 0.8 0.1 0.1

畑地雑草群落 1.1 0.0 0.0

水田雑草群落 0.9 0.0 0.0 耕作地等

人工草地 0.4 0.1 0.1

ゴルフ場跡 0.7 0.0 0.0

市街地、道路、造成地等 34.6 0.8 0.8

土地利用区分

その他

開放水域 1.0 0.01 未満 0.01 未満

合計 177.8 82.0 70.2

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各々の植生区分の確認内容は、以下に示すとおりである。

①シリブカガシ群落(コドラート番号No.40、55、58)

高木層にシリブカガシが優占する常緑広葉樹林で、ヤブツバキクラス域にみられる二次林であ

る。事業計画地及びその周辺の斜面下部から斜面中部に分布する。調査範囲の北側に比較的面積

の大きなものがある他は、小規模である。

群落組成調査地点の植生高は 16~20m で、出現種数は 16~30 種であった。

高木層の植被率は 90~100%、シリブカガシが優占し、アラカシ、コナラ等が出現する。亜高

木層の高さは 8~10m、植被率は 20~60%で、シリブカガシ、リョウブ、アラカシ、ヤブツバキ等

が出現する。低木層の高さは 3~5m、植被率は 40~80%で、コバノミツバツツジ、ヒサカキ、ヤ

ブツバキ、ヤブムラサキ、シリブカガシ、コガクウツギ等が出現する。草本層の高さは 0.3~1m、

植被率 15~70%で、ウラジロ、シシガシラ、ツルアリドオシ、サルトリイバラ、フユイチゴ、ヤ

ブコウジ等が出現する。コケ層の植被率は 3~30%であった。

②アラカシ群落(コドラート番号No.49)

高木層にアラカシが優占する常緑広葉樹林で、ヤブツバキクラス域にみられる二次林である。

事業計画地内の斜面下部から斜面中部に小規模で点在する。

群落組成調査地点の植生高は 20m で、出現種数は 20 種であった。

高木層の植被率は 95%、アラカシが優占し、コナラが混生する。亜高木層の高さは 10m、アラ

カシ、ヤマフジがみられ、植被率は 20%と低かった。低木層の高さは 6m、植被率は 50%で、ア

ラカシ、ヒサカキ、コガクウツギ、コバノミツバツツジ、ヤブツバキ等が出現する。草本層の高

さは 0.6m、植被率は 20%と低く、ベニシダ、テイカカズラ等が出現する。コケ層の植被率は 10%

と低かった。

③コナラ群落(コドラート番号No.8、16、33、47、65)

高木層にコナラが優占する落葉広葉樹林で、ヤブツバキクラス域にみられる二次林である。事

業計画地及びその周辺の斜面下部から斜面上部に広く分布し、元はアカマツ林であったが、アカ

マツが松枯れで衰退した後に、コナラが優占するようになった林分と考えられる。

群落組成調査地点の植生高は 14~18m で、出現種数は 27~46 種であった。

高木層の植被率は 70~95%で、コナラが優占し、アラカシ、アベマキ、リョウブ、クリ等が出

現する。亜高木層の高さは 8~10m、植被率は 40~90%で、コナラ、リョウブ、アラカシ、ネジキ、

ウリハダカエデ等が出現する。低木層の高さは 3~5m、植被率は 70~90%で、ヒサカキまたはコ

バノミツバツツジが優占し、ネジキ、アセビ、ミヤマガマズミ、ヤブツバキ、ヤブムラサキ、イ

ヌツゲ、コバノガマズミ、アラカシ等も出現する。草本層の高さは 0.5~1m、植被率は 30~80%

とばらつき、シシガシラ、ヒサカキ、ツルアリドオシ、ヤブコウジ、ベニシダ、フユイチゴ、ジ

ャノヒゲ等が出現する。コケ層の植被率は 1~30%であった。

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④アカマツ-コバノミツバツツジ群落

(コドラート番号No.3、4、9、19、22、25、27、28、34、39、53、63)

高木層にアカマツ、ネズ、コナラが優占する常緑針葉と落葉広葉樹の混交林で、ヤブツバキク

ラス域にみられる二次林である。事業計画地及びその周辺の尾根部から斜面中部に広く分布する。

群落組成調査地点の植生高は 10~20m、出現種数は 18~42 種で、各階層の植被率についてばら

つきが大きかった。

高木層の植被率は 30~90%で、植生高の低い林分もみられた。亜高木層の高さは 8~10m、植被

率は 20~90%で、ソヨゴ、ネズ、リョウブ、アカマツ、クリ、コナラ、アラカシ等が出現する。

低木層の高さは 3~5m、植被率は 40~100%で、コバノミツバツツジまたはヒサカキが優占する林

分が多く、その他にネジキ、アセビ、ミヤマガマズミ、クロキ、コシアブラ、ヤマウルシ、オオ

バヤシャブシ、カンサイスノキ、シャシャンボ等も出現する。草本層の高さは 0.4~1.5m、植被

率は 25~100%で、コシダが優占する植分が多く、その他にウラジロ、イヌツゲ、ヒサカキ、コ

ナラ、ヤブコウジ、サルトリイバラ、オオバノトンボソウ、ヤマウルシ等も出現する。コケ層の

植被率は 0~10%と低かった。

⑤ヌルデ-アカメガシワ群落(高木)(コドラート番号No.7、36、50)

高木層にアカメガシワが優占する落葉広葉樹林で、ヤブツバキクラス域にみられる二次林であ

る。事業計画地及びその周辺の谷部から斜面下部の放棄された耕作地や伐採跡地等に分布してお

り、ウツギ群落やネザサ群落から遷移したとみられる林分もみられる。

群落組成調査地点の植生高は 10~14m、出現種数は 35~46 種であった。

高木層の植被率は 20~90%とばらつき、植生高の低い林分もみられた。亜高木層の高さは 6~

8m、植被率は 30~60%で、ヌルデ、エゴノキ、クリ、アカメガシワ等が出現する。低木層の高さ

は 3~4m、植被率は 30~70%であり、ウツギ、ネザサ、アカメガシワ等が出現する。草本層の高

さは 1~2m、植被率は 90~100%と高く、ネザサ、ハナタデ、ススキ、コチヂミザサ、ミズヒキ、

テリハノイバラ、ハンゲショウ、イノデ、クサイチゴ等が確認された。

⑥ヌルデ-アカメガシワ群落(低木)(コドラート番号No.5、18、67)

先駆的な落葉広葉樹(アカメガシワ、ヤマハゼ、ヌルデ)の低木林で、事業計画地及びその周辺

の道路法面や谷部の伐採跡地等に分布している。

群落組成調査地点の植生高は 2.5~3m、出現種数は 10~26 種であった。低木層の植被率は 70

~100%で、アカメガシワ、ヤマハゼ、ヌルデが優占する。草本層の高さは 0.4~1m、植被率は 90

~100%と高く、フユイチゴ、ヌルデ、コヌカグサ、ススキ、セイタカアワダチソウ、ヘクソカズ

ラ、アカメガシワ、ヨモギ等が出現する。コケ層の植被率は 1~5%と低かった。

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⑦ヒメコウゾ群落(コドラート番号No.62)

先駆的な落葉広葉樹のヒメコウゾの低木林で、事業計画地周辺の道路法面ややや陰湿な河岸法

面の伐採跡地等に小規模に分布する。

群落組成調査地点の植生高は 2.5m、出現種数は 17 種であった。低木層には優占種のヒメコウ

ゾにクズ等が混生し、植被率は 100%である。草本層の高さは 1.5m、植被率は 80%で、ツルヨシ、

ノイバラ、ススキ、ヒメコウゾ、ヨモギ等が出現する。コケ層の植被率は 1%と低かった。

⑧ウツギ群落(コドラート番号No.24、37、38、51)

ウツギの優占する低木林で、大部分が事業計画地及びその周辺の谷部の古い耕作地跡地に分布

する。

群落組成調査地点の植生高は 3m、出現種数は 17~30 種であった。低木層には優占種のウツギ

にヤマフジ、クズ等が混生し、植被率は 70~100%である。草本層の高さは 0.3~1m、植被率は

50%で、ミズヒキ、ハナタデ、ミゾシダ、コチヂミザサ、ツボスミレ、ハンゲショウ等が出現す

る。コケ層の植被率は 0~30%であった。

⑨伐採跡群落(コドラート番号No.23)

東側の尾根部の送電線鉄塔付近の、定期的な刈り取りが施されていると考えられる地点に分布

している小規模な低木林-草地である。

群落組成調査地点の植生高は 2m、出現種数は 22 種である。低木層にはリョウブが生育し、植

被率は 5%と低い。草本層の高さは 1.2m、植被率は 70%で、コナラ、ネザサ、ウラジロ、ヒサカ

キ、コバノミツバツツジ等が出現する。コケ層の植被率は 1%と低かった。

⑩ネザサ群落(コドラート番号No.6、11、20、31、44)

ササ類の優占する二次草地で、事業計画地及びその周辺の谷部や斜面下部の古い耕作地跡地に

広く分布する。

群落組成調査地点の植生高は 1.6~2.5m、出現種数は 6~19 種であった。低木層または草本層

にネザサが高い割合で優占し、フジ、クズ、ヘクソカズラ、ミツバアケビ、アオツヅラフジ等の

つる性植物が目立ち、その他にミズヒキ、ワラビ、ノブドウ、アキノタムラソウ、テリハノイバ

ラ等が確認された。

⑪ススキ群落(コドラート番号No.35、43)

ススキが優占する二次草地で、事業計画地の谷部の古い耕作地跡地に点在する。

群落組成調査地点の植生高は 1.8~2m、出現種数は 15~17 種であった。草本層の植被率は 80

~100%であり、ススキの他に、ハンゲショウ、ナワシロイチゴ、ヤノネグサ、ノブドウ、イ等が

確認された。

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⑫クズ群落(コドラート番号No.66)

つる性植物のクズが優占する二次草地で。造成跡地等に成立している。事業計画地周辺の道路

法面や河岸法面等に分布する。

群落組成調査地点の植生高は 1.2m、出現種数は 12 種であった。草本層の植被率は 100%で、

クズの他に、フユイチゴ、ヘクソカズラ、アオツヅラフジ、ノイバラ、ツルウメモドキ、ヨモギ

等が確認された。

⑬セイタカアワダチソウ群落(コドラート番号No.68)

帰化植物のセイタカアワダチソウが優占する二次草地で、造成等跡地等に成立している。事業

計画地周辺の道路付近の平地に点在する。

群落組成調査地点の植生高は 1.2m、出現種数は 8種であった。草本層の植被率は 100%で、セ

イタカアワダチソウの他に、ヒカゲイノコズチ、クズ、ヒメジョオン、メマツヨイグサ等が確認

された。

⑭一年生草本群落(コドラート番号No.59、60)

一年生草本のメヒシバやヒメムカシヨモギ等が優占する二次草地で、造成等の人為的な影響を

受けた跡地や耕作地跡地に成立している。事業計画地周辺の平地や農耕地等に点在する。

群落組成調査地点の植生高は 0.8~1.6m、出現種数は 9~11 種であった。草本層の植被率は 85

~100%で、メヒシバやヒメムカシヨモギの他に、ヒメジョオン、スギナ、ヨモギ、カタバミ等

も確認された。

⑮ツルヨシ群落(コドラート番号No.69)

ツルヨシの優占する草地で、調査範囲においては、河川改修等の人為的な影響を受けた後の河

岸に成立した二次草地と考えられる。石内川と己斐峠川に小面積が点在する。

群落組成調査地点の植生高は 1.2m で、ツルヨシの単一群落で、植被率は 100%であった。

⑯ヨシ群落(コドラート番号No.21、26)

ヨシが優占する二次草地で、事業計画地及びその周辺の谷部や平地の水田跡等に点在する。

群落組成調査地点の植生高は 1.8m、出現種数は 14 種である。草本層の植被率は 90~95%で、

ヨシの他に、ハナタデ、ミズヒキ、ヤブマメ、ミゾシダ、ヌスビトハギ、ヒメジソ、ツボスミレ

等が確認された。

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⑰放棄水田雑草群落(コドラート番号No.1、2、12、13、14、17、29、30、32、41、57)

湿生植物のハナタデ、ハンゲショウ、ヒメゴウソ、キツネノボタン、ミゾソバ、ネコノメソウ、

キショウブ、アシボソ等が優占する二次草地で、事業計画地及びその周辺の谷部の水田跡等に分

布する。

群落組成調査地点の植生高は 0.7~1.5m、出現種数は 6~64 種である。草本層の植被率は 70

~100%で、アシボソ、ヌマダイコン、ヤノネグサ、クサヨシ、ショウブ、ミズヒキ、ヌマダイ

コン、ススキ、アゼナルコ、クサヨシ、イワヒメワラビ、サトメシダ等もみられた。コケ層の植

被率は 0~80%とばらつきが大きく、また、ウツギ、イヌツゲ等の低木類の生育もみられた。

土地利用区分の確認内容は、以下に示すとおりである。

⑱竹林(モウソウチク林(コドラート番号No.42、45)、マダケ林(コドラート番号No.48))

高木層、亜高木層にタケ類(モウソウチクあるいはマダケ)が優占する植栽あるいは植栽由来

(逸出)の林分で、事業計画地及びその周辺の谷部や斜面中~下部に分布する。

群落組成調査地点の植生高は 12(マダケ林)~18m(モウソウチク林)、出現種数は 6(マダケ林)

~26 種(モウソウチク林)である。高木層の植被率は 70~100%で、コナラやアカマツが残存する

林分もみられた。モウソウチク林ではリョウブやコナラが混生する亜高木層を分けられる林分も

あり、高さは 6~10m、植被率は 30~90%であった。

モウソウチク林の低木層の高さは 3~5m、植被率は 60~80%、ヒサカキ、コバノミツバツツジ、

ソヨゴ、ネジキ、ナツハゼ、アセビ、カクレミノ、クロキ等が確認された。草本層の高さは 0.5

~0.8m で、植被率は 10~20%と低く、ヒサカキ、ヤブコウジ、サルトリイバラ等が出現した。

コケ層の植被率は 3~15%と低かった。

マダケ林の低木層と草本層の植被率は低く、ヤツデ、ヒサカキ、ジャノヒゲ、ベニシダ等が確

認された。コケ層の植被率は 10%であった。

⑲スギ・ヒノキ植林(コドラート番号No.10、46、54)

高木層にスギが優占する植林地で、事業計画地及びその周辺の谷部や斜面中~下部に分布する。

群落組成調査地点の植生高は 20~24m、出現種数は 21~44 種である。高木層の植被率は 85~

90%で、ヒノキが混生する林分もみられた。亜高木層の高さは 10~12m、植被率は 10~30%で、

スギ、テイカカズラ、イヌビワ等が確認された。低木層の高さは 3~5m、植被率は 50~60%であ

り、ヒサカキ、コアカソ、ヤブツバキ、ネズミモチ、リョウブ、スギ、ウツギ、ヤブムラサキ等

が確認された。

草本層の高さは 0.5~1m、植被率は 10~80%とばらつきが大きかった。谷部ではミゾシダ、イ

ワガネゼンマイ、リョウメンシダ等のシダ類が多く、その他にミズヒキ、コチヂミザサ、サネカ

ズラ、ツタ、ヤブコウジ、シシガシラ、イノデ、ウラジロ、テイカカズラ、フユイチゴ、ベニシ

ダ等も確認された。コケ層の植被率は 5~40%であった。

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⑳樹園地(コドラート番号No.15)

クリやカキノキ等の落葉果樹園、庭木のサルスベリ等の苗圃等で、調査範囲の西側と北側に分

布する。

群落組成調査地点の植生高は 4m、出現種数は 20 種であった。低木層(果樹や苗木)の植被率は

50%である。草本層の高さは 1.2m、植被率は 90%であり、ネザサが優占し、ヨウシュヤマゴボウ、

ヨモギ、ガガイモ、ミズヒキ等が確認された。

○21畑地雑草群落(コドラート番号No.70)

調査範囲の北側と西側に分布する畑地で、サトイモ等が栽培されている。

群落組成調査地点の植生高は 1m、植被率は 90%、出現種数は 7種で、カタバミ、コゴメガヤツ

リ、トキワハゼ等の耕作地雑草が確認された。

○22水田雑草群落(コドラート番号No.61)

調査範囲の北側と西側に分布する水田である。

群落組成調査地点の植生高は 1m、植被率は 100%、出現種数は 6種で、ウキクサ、タネツケバ

ナ等の水田雑草が確認された。また、植被率は低いながらも、コケ層が確認された。

○23人工草地(オニウシノケグサ群落(コドラート番号No.52、56)、オオキンケイギク群落(コドラ

ート番号No.64))

オニウシノケグサやオオキンケイギク等の外来草本が植栽された人工草地で、調査範囲の北側

の道路法面に分布する。

オニウシノケグサ群落の植生高は 0.7~0.9m、植被率は 100%で、セイタカアワダチソウ、シナ

ダレスズメガヤ、ヒメジョオン等の外来草本も多く出現していた。その他ヨモギ、オニタビラコ、

ノゲシ等も出現し、出現種数は 15~17 種であった。コケ層の植被率は 30~40%であった。

オオキンケイギク群落の植生高は 0.9m、植被率は 95%で、メマツヨイグサ、コマツヨイグサ、

コバンソウ、オッタチカタバミ等の帰化植物が多く出現し、出現種数は 14 種であった。コケ層の

植被率は 5%であった。

○24ゴルフ場

調査範囲の南側に分布するゴルフ場跡地である。植栽されたシバ以外に、ツツジ類等の植栽樹

がみられる。周辺植生からクズやネザサ、ススキ、ヒメムカシヨモギ等が侵入し繁茂している。

○25造成地、住宅地、道路等

調査範囲の北側に五月丘団地、南側に梅の木団地が広がり、西側に商業施設や造成地が広がる。

また、事業計画地の西側に県道 71 号線(広島湯来線)、北側に県道 265 号線(伴広島線)が通る。

○26開放水面

調査範囲の西側に石内川と北側に己斐峠川があり、調査範囲の北側に小面積のため池がある。

Page 24: 7-10 植物368 表7-10-2 現地調査方法(植物) 調査項目 調査方法 シダ植物 ・種子植物 ・任意観察・任意採集:調査範囲を踏査し、目視観察によって、生育している種を記録し
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事業計画地周辺及びその周辺で確認された主要な植物群落について、表 7-10-7 に示す植生自然

度区分(「緑の国勢調査 自然環境保全調査報告書(環境庁 1976 年)」)に照らし合わせた植生自

然度図を、図 7-10-6 に示す。

調査範囲の山腹斜面~谷部にかけては、代償植生とみられる樹林地や草地が広く分布している。

自然林に近い二次林(植生自然度 8)としてはシリブカガシ群落、二次林(植生自然度 7)としては、

アラカシ群落、アカマツ-コバノミツバツツジ群落、コナラ群落、ヌルデ-アカメガシワ群落(高

木)等、植林地及び植栽由来の樹林地(植生自然度 6)としては、スギ・ヒノキ植林と竹林が挙げら

れる。低木林(二次林)や高茎の二次草地(植生自然度 5)としては、ヌルデ-アカメガシワ群落(低

木)、ウツギ群落、ヒメコウゾ群落、ススキ群落、ネザサ群落、ツルヨシ群落、ヨシ群落等が挙げ

られる。低茎の二次草地(植生自然度 4)としては、伐採跡群落、クズ群落、一年生草本群落、放

棄水田雑草群落が挙げられる。

また、平坦地には、樹園地(植生自然度 3)や、セイタカアワダチソウ群落、人工草地、畑地雑

草群落、水田雑草群落、ゴルフ場跡(植生自然度 2)、市街地、造成地、道路等(植生自然度 1)等が

多く分布している。

表 7-10-7 植生自然度区分

植生

自然度 区分内容及び基準 群落単位名

10

自然草原、湿原

高山ハイデ、風衝草原、自然草原等、

自然植生のうち単層の植物社会を形成する地区

該当なし

9

自然林(極相林、天然林)

エゾマツ-トドマツ群集、ブナ群集等、

自然植生のうち多層の植物社会を形成する地区

該当なし

8

二次林(自然林に近いもの)

ブナ、ミズナラ再生林、シイ・カシ萌芽林等、

代償植生であっても、特に自然植生に近い地区

シリブカガシ群落

7

二次林

クリ-ミズナラ群落、クヌギ-コナラ群落等、

一般には二次林と呼ばれる代償植生地区

アラカシ群落、

アカマツ-コバノミツバツツジ群落、

コナラ群落、ヌルデ-アカメガシワ群落(高木)

6 造林地、常緑針葉樹、落葉針葉樹、常緑広葉樹等

の植林地

スギ・ヒノキ植林、

竹林(モウソウチク林、マダケ林)

5 二次草地(背の高い草原)

ササ群落、ススキ群落等の背丈の高い草原

ヌルデ-アカメガシワ群落(低木)、ウツギ群落、

ヒメコウゾ群落、ススキ群落、ネザサ群落、ツル

ヨシ群落(小面積のため図から省略)、ヨシ群落

4 二次草地(背の低い草原)

シバ群落等の背丈の低い草原

伐採跡群落、クズ群落、一年生草本群落、放棄水

田雑草群落

3 農耕地(樹園地)

果樹園、桑園、茶畑、苗圃等の樹園地 樹園地

2

農耕地(水田、畑地)

水田、畑地等の耕作地

緑の多い住宅地(緑被率60%以上)

セイタカアワダチソウ群落、人工草地(オニウシノ

ケグサ群落、オオキンケイギク群落)

畑地雑草群落、水田雑草群落、ゴルフ場跡

1 市街地、造成地

植生のほとんど残存しない地区 市街地、造成地、道路等

その他 自然裸地、開放水域 開放水面

Page 26: 7-10 植物368 表7-10-2 現地調査方法(植物) 調査項目 調査方法 シダ植物 ・種子植物 ・任意観察・任意採集:調査範囲を踏査し、目視観察によって、生育している種を記録し

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図 1-10-6植生自然度