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- 13 - 1 学習意欲がつながる評価 (評価研究プロジェクト) (1)プロジェクトのねらい 児童の学習意欲を高め,学力向上へと結び付けていくために, 「関心・意欲・態度」に係 る評価の基本的な考え方を示し,研究を進めていく。 (2)研究の内容 ① 「学習意欲」を高め,自らの伸びを実感させる評価について ② 学びの成果を実感する場について ア 「一枚ポートフォリオ評価」←「学びを実感する場」として単元学習の中で活用 イ 「ぐんぐんタイム」←基礎・基本定着タイムの中での自己評価カードの工夫 ウ 国語科・算数科の重点目標についての取組( 「聞き耳タイム」「作文発表」等)の計画 エ 言語技術指導についての研修 オ 暗唱についての取組 (3)具体的な取組 ① 「学習意欲」を高め,自らの伸びを実感させる評価について 「Ⅱ 研究の概要 2 主題設定の理由」で述べたように,児童の学習意欲を高め,自ら の伸びを実感させるには,「有能感」「自己決定感」を育てることが重要である。 そこで,今年度は,下表のように「目標をもたせ,自分自身の学習の成果を繰り返し振り 返らせることで学ぶことの意味を感得させる。」場として「一枚ポートフォリオ評価」と「ぐ んぐんタイム」を中心に据えて取り組むこととした。 1 応答的な環境を用意する。 2 学習内容を理解させる。 ○ 目標をもたせ,学習の成果を繰り返し 心と脳を鍛える。振り返らせることで学ぶこと の意味を感得させる。 ○ 分かる授業をつくり学ぶ楽しさを実感させる。 ○ 積み重ねを大切にする。 3 自己選択,自己決定させる。 4 自信をもたせる。 ○ 成功経験・成就感を多くもたせる。 ○ ほめる。子どもの成長を認め期待する。 5 努力ができるように援助する。 ○ どのようにしたら努力できるか。 ○ 効果的な学習方法を指導する。 6 適切な評価を用いる。 ○ 絶対評価に加え個人内評価も取り入れる。 〈有能感〉〈自己決定感〉を育てるために 「やる気」の向上 自分は できるん だ。 自分はやろ うと思えばで きるんだ。 自分のこ とは自分で 決めている んだ。 自分は周り の人から受け 入れられてい るんだ。 Ⅲ 研究の実際

Ⅲ 研究の実際utis/3kennkyuu/19kiyou/19-13-49.pdf- 13 - 1 学習意欲がつながる評価(評価研究プロジェクト) (1)プロジェクトのねらい 児童の学習意欲を高め,学力向上へと結び付けていくために,「関心・意欲・態度」に係

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1 学習意欲がつながる評価(評価研究プロジェクト)

(1)プロジェクトのねらい

児童の学習意欲を高め,学力向上へと結び付けていくために,「関心・意欲・態度」に係

る評価の基本的な考え方を示し,研究を進めていく。

(2)研究の内容

① 「学習意欲」を高め,自らの伸びを実感させる評価について

② 学びの成果を実感する場について

ア 「一枚ポートフォリオ評価」←「学びを実感する場」として単元学習の中で活用 イ 「ぐんぐんタイム」←基礎・基本定着タイムの中での自己評価カードの工夫 ウ 国語科・算数科の重点目標についての取組(「聞き耳タイム」「作文発表」等)の計画

エ 言語技術指導についての研修

オ 暗唱についての取組

(3)具体的な取組

① 「学習意欲」を高め,自らの伸びを実感させる評価について

「Ⅱ 研究の概要 2 主題設定の理由」で述べたように,児童の学習意欲を高め,自ら

の伸びを実感させるには,「有能感」「自己決定感」を育てることが重要である。

そこで,今年度は,下表のように「目標をもたせ,自分自身の学習の成果を繰り返し振り

返らせることで学ぶことの意味を感得させる。」場として「一枚ポートフォリオ評価」と「ぐ

んぐんタイム」を中心に据えて取り組むこととした。

1 応答的な環境を用意する。

2 学習内容を理解させる。

○ 目標をもたせ,学習の成果を繰り返し

心と脳を鍛える。振り返らせることで学ぶこと

の意味を感得させる。

○ 分かる授業をつくり学ぶ楽しさを実感させる。

○ 積み重ねを大切にする。

3 自己選択,自己決定させる。

4 自信をもたせる。

○ 成功経験・成就感を多くもたせる。

○ ほめる。子どもの成長を認め期待する。

5 努力ができるように援助する。

○ どのようにしたら努力できるか。

○ 効果的な学習方法を指導する。

6 適切な評価を用いる。

○ 絶対評価に加え個人内評価も取り入れる。

〈有能感〉〈自己決定感〉を育てるために

「やる気」の向上

自分は

できるん

だ。

自分はやろ

うと思えばで

きるんだ。

自分 のこ

とは自分で

決めている

んだ。

自分は周り

の人から受け

入れられてい

るんだ。

Ⅲ 研究の実際

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一枚ポートフォリオ評価とは,堀 哲夫が 2002 年に開発したもので,教師のねらいとする

学習の成果を,学習者が一枚のシート(OPP : One Page Portfolio)の中に学習前・中・後の学習

履歴として記録し,それを自己評価させる方法をいう。学習による変容を学習者自身が具体的

内容を通して可視的かつ構造化された形で自覚できるので,その変容から学ぶ意味を感じ取る

ことができる。また,教師はそれを見て,授業評価に活用することができるという利点がある。

引用・参考文献:堀 哲夫(2006)「一枚ポートフォリオ評価 小学校編」日本標準

② 学びを実感する場について ア 「一枚ポートフォリオ評価」(OPPA : One Page Portfolio Assessment)

児童が「分かった」「できた」という喜びを味わうためには,児童自らが学びや伸びを

実感できるようにすることが重要である。そこで,本年度は,学習の前後で自らの変容を

認識できる方法の一つとして「一枚ポートフォリオ評価」を活用した取組を行っている。

■ 一枚ポートフォリオ評価の効果

・ 学習目的を意識化

見通しをもった学習

・ 学習履歴の振り返り

・ 学習の情意面のみならず,

認知面も自己評価

・ 一枚ポートフォリオ作成における授業の吟味

・ 学習前の児童の実態を把握

・ 学習履歴の見取り

・ 学習後の成果を把握

・ 学習の様子を保護者に知らせる。

一枚ポートフォリオ評価とは

児童の視点としてのねらい

教師の視点としてのねらい

診断的評価ができる。

形成的評価ができる。 授業を評価することができる。

(発問の適否,教材の効果など)

授業展開の

工夫に生か

せる。

学習目標を明確にできる。

授業の構想ができる。

総括的評価ができる。

学習による変容を確認しやすい。

「学習すると変わる。」

「学習するとできるようになる。」

学び方を学べる。

「~をしたからできた。」

「~を聞いたから分かった。」

学習の意味が自覚できる。 学習の効力感

学習意欲 自己評価能力が高まる。

説明責任が果たせる。

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■ 一枚ポートフォリオ評価の実際

《国語科》

診断的評価(学習前)

この作品に初めて触れた段階での記述。既習事

項や生活経験などからの考えを把握する。

一枚ポートフォリオの

構成の仕方や位置づけ

教師は,児童の学んだことを価値

付けるコメントを記入すると同時

に,次の学習に生かしていく。

総括的評価(学習後)

学習後の知識や考え,感想。 と比較した児童

の変容,読みの深まりなどについて評価する。

形成的評価

(学習中)

本時に分かったことや感想

を1時間のまとめとして記

述。記入する際の教師の問い

かけは,できるだけ毎回同じ

ものにして,それぞれの記述

内容を比較しやくする。

学習前・中・後の比較による自己評価

学習前に書いた と学習後に書いた とを比較して自己評価する。毎時間の学習履

歴 を同一紙面上で見ることで,学習による自己の変容が評価しやすくなっており,自

分の成長を感じ取りやすい。また,変容した要因や学習を通しての成果と課題などを考え

させて学びの価値付けをすることにより,児童の自己評価能力も高まる。

CA

A B

5年「動物の体」一枚ポートフォリオの例

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1年生向け「一枚ポートフォリオ」の工夫

1年生はひらがなの習得中であり,文章を書くという活動は難しいが,「書きたい」

という思いはある。そこで,教材文や写真を引用するなど工夫することで一枚ポート

フォリオを活用していった。このようにすることで,児童は,今,どこを学んでいる

かが分かりやすくなり,学んだことの振り返りもしやすくなった。

ここに挙げている「どうぶつのはな」という教材の学習においては,「おもしろい

ところをかこう」という問いかけで毎回書かせている。その際,一枚ポートフォリオ

は,「○○について書きなさい。」と教師の意図することを直接に問うのではなく,「今

日勉強したなかであなたが1番大切だと思っていることを書きましょう。」など学習

内容から最も遠いところから聞く方法をとることが大切であると言われている。教師

が考えている最も遠いところからの働きかけで教師の意図する内容が書かれていれ

ば,その授業において重視したい内容にかかわる資質・能力が育っていると判断でき

るからである。ここに挙げている児童についてみると,最初, 「ぞうのはながおも

しろい。」という感想であったのが,最後に 「ぞうのはながながくてつよそうだか

らです。」と,学んだことが表われた記述になっており,学びの変容がうかがえる。

1年「どうぶつのはな」一枚ポートフォリオの例

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《算数科》

4年「角とその大きさ」一枚ポートフォリオの例

算数科での工夫

算数科では,評価問題を

解かせることによって考え

方を学習することの意味に

気付かせるようにした。

2年「ひきざんのひっさん」一枚ポートフォリオの例

児童は分かったことを

自分の言葉で表現する。

教師は学習の方向

性や励ましをコメン

トする。

学習前後で同じ問題をさせることで比較

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イ ぐんぐんタイム ■ ねらい

・ 視写や漢字練習・計算練習を繰り返し行い,基礎・基本の確実な定着を図る。 ・ 言語技術指導を行い,基礎的な話し方の技能を身に付けさせ,児童の論理的思考力を

伸ばす。 ・ 6年間の見通しをもって行うことにより,基礎・基本の定着を図る。

■ 時間

・ 月~金曜日(但し水曜日は除く)13:35~13:50 ■ 内容

国語科 月曜日・・・漢字テスト及び反復練習 木曜日・・・聞き耳タイム・視写・音読・対話などの言語技術指導 算数科 火・金曜日・・・主に100マス計算などの計算練習

つまずきのある単元の練習問題 習ったことの習熟問題

■ 実施方法

・ 学習した記録を残し,児童が達成感を味わえるようにする。 (学年毎に「ぐんぐんカード」作成)

・ 自分の力の伸びが分かるように,同じことを繰り返し行わせる。 ・ 2年・4年は,1学級あたりの人数が多いため,複数体制で指導に入り,個別指導を

行う。 ■ 取組の実際

《スモールステップで評価》 ぐんぐんカードの例

暗唱できるとシールがもら

えるので,児童はそれを励みに

意欲的に取り組んでいる。

授業中だけでなく,ぐんぐん

タイムでも鉛筆の持ち方の指

導をしている。児童には毎回自

己評価させ,常に正しい持ち方

を意識させるようにしている。

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《「1学期を振り返って」のアンケートから》

タイムを計ることで,目標

をもち,意欲をもって取り組

んでいる。その結果,集中力

がついたと実感している。

タイムや点を記録していくことで

意欲をもって取り組んでいる。 振り返りを簡単な記号にしている

ことで,無理なく継続できる。

タイムが縮んだり,点が上がったりするとシール

がもらえる。児童は力の伸びを実感し,花丸を書い

たり「ハッピー」と書き添えたりして学習に喜びを

感じていることが分かる。

タイム,点だけでなく毎回感想を書い

ている。この児童は前回の結果と比べて

感想を書き,自分の励みにしている。 それに対して教師は,コメントやシー

ルなどで児童を励ましている。

ぐんぐんタイムの

漢字テストで満点を

取ることを励みに家

庭でも努力している。

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2 学びがつながる評価(授業改善プロジェクト)

(1)プロジェクトのねらい

○ 指導と評価の一体化をめざした授業づくりについて研究を進める。

単元目標の達成状況を把握するために行う評価を次の授業に生かし,達成状況の改善

へとつなげる。

このような「指導と評価の一体化」を図ることによって,児童の学習意欲や学力向上へと

結び付けていく。

(2)研究の内容

① 指導と評価の一体化を目指した授業づくりを行う。

授業実践

② 検証授業を行い,評価の客観性を検証する。

③ 評価を生かした指導体制の研究を進める。

④ 評価を生かした指導に資する指導案についての研究を進める。

⑤ 教科ブロックごとに評価交流会を行い,より客観的な評価規準の作成,評価のすり合わせ,

評価の具体例の蓄積を行う。

⑥ 個に応じた指導の工夫を行う。

指導方法,指導体制(少人数指導,TT)等

⑦ 他校との連携を図り,より客観的な評価の在り方について研究を進める。

⑧ 一枚ポートフォリオを生かした授業づくり(国語科・算数科)を行う。

【学習状況の評価について】

本校では,「努力を要する(C)」状況と判断する児童を必ず,「おおむね満足できる(B)」

状況に高めることを一番に考えている。そのため,児童の実現状況の見取りを「おおむね満足

できる(B)」状況と「努力を要する(C)」状況の2層で捉え「努力を要する(C)」状況を

具体的に示し,具体的なつまずきを見つけ,それに対応した手立てを考えている。

「十分満足できる(A)」状況と判断する様相は,「おおむね満足できる(B)」状況と判断

する児童の中で幅広く想定し,あらかじめ限定しないことにしている。このことは,「A」を

無理に設定することで,「B」の設定(学習指導要領でつけなくてはいけない力)が下がって

しまうことを防ぐことにもなる。

A・・・「十分満足できる」状況 B・・・「おおむね満足できる」状況 C・・・「努力を要する」状況

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(3)具体的な取組

① 国語科での取組

(3年 単元名「だんらくごとに内ようをとらえながら読もう ―自然のかくし絵―」)

【児童の実態】

【単元の流れ】

【教師の願い】

・ 文章から根拠を見つける力や自分なりの考えをもって主体的に読む力が不十分であ

る。 ・ 語彙数が少ないため文章の内容を理解しにくい。 ・ 進んで本を読む児童が多いが,様々なジャンルの本を読むには至っていない。

1 教材文を通読し,学習計画を立てる。

① 教材文を通読し,初発の感想をまとめる。 ② 感想を発表し,段落を考えて学習計画を立てる。

2 段落ごとに書かれている内容を読み取る。

① 形式段落①②を読み,保護色とは何かを読み取る。 ② コノハチョウの例をもとに「自然のかくし絵」に

ついての説明と,保護色の役割を読み取る。 ③ トノサマバッタの保護色について正しく読み取る。(本時)

④ ゴマダラチョウの幼虫の保護色について正しく読み取る。 ⑤ 保護色が役立つ場合と,役立たない場合について正しく読み取る。 ⑥ 段落ごとに要点をまとめ,文章全体の構成をとらえる。

3 ほかの昆虫や生き物の生態について書かれた本や文章を読む。

① ほかの昆虫や生き物の生態に関する本を読み,紹介文を書く。 ② 読み終わった本について紹介し合う。

「かくす」という言葉が何度も使われています。

「ほご色」って何だろう。

相互作用重視少人数指導

大事な言葉に気

を付けて読むと,

よく分かるね。

Aコース Bコース Cコース

説明文というと,難しいというイメージがあるけれど,この授

業では,読む楽しさを味わわせたいです。言葉や文章表現を大切

にさせつつも,子どもたちが昆虫や動物などの自然界のふしぎさ

に関心を持って「もっと読みたい」という意欲につながるように,

発問や学習活動,ワークシート等の工夫をします。

Plan 単元の計画を立てました。

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【本時のねらい】◎ トノサマバッタの保護色について正しく読み取る。 【学習の展開】 ★は評価のポイント

主な学習活動 指導上の留意点と評価

1 本時の学習課題をつかむ。

2 本時で学習するところを音読す

る。

・ 形式段落⑥を音読する。

3★トノサマバッタの保護色につい

て読み取る。

(1) トノサマバッタの体の色につ

いて確認する。

・ 緑色

・ かっ色

(2) トノサマバッタに色をぬり,

それぞれが選んだ背景に置き,

その場所を選んだ理由をワー

クシートに書く。

・ ほご色になる場所だから。

・ 緑色のバッタは緑色の草むら,

かっ色のバッタはかれ草やおち

葉の上の方が目立たないから。

・ 身をかくすのにいい場所だか

ら。

・ てきの目をだませるから。

(3) 自分がその場所を選んだ理由

を発表する。

4 トノサマバッタの保護色につい

てまとめる。

・ 「保護色」の役割を確認したう

えで,⑥段落の要点を視写する。

5 次時の学習について知る。

・ バッタについての生活経験を想起させることで児童

の興味を高め,学習課題につなげる。

・ 学習課題を意識させながら読ませる。

・ トノサマバッタをいつもすんでいる場所に「選んで

返す」という活動を取り入れることで,児童が目的意

識をもって文章を読むようにする。

・ 教科書や掲示物などで,今まで学習してきたことも

振り返りながら考えるよう確認しておく。

〈手立て〉

・ 保護色をもつ他の昆虫や動物について紹介し,関心

をもたせる。

トノサマバッタの色のひみつを見つけよう。

〈具体の評価規準〉

○ トノサマバッタの体の色とすんでいる場所の色

との対応を読み取っている。 〈評価方法〉

ワークシート・発言

【努力を要する状況(C)と判断する児童への手立て】

教科書の2枚の写真を指し,バッタがそれぞれ異

なる場所にいることの意味に気付かせるようにす

る。 【おおむね満足できる状況(B)と判断する児童への手立て】

文章面だけ書いている児童には,その意味も問い

〈十分満足できる状況(A)と判断するキーワード〉

・ 保護色が役立つわけ

・ 身をかくす

・ 敵の目をだます

総括につなげる評価を行う時間を評価のポイントとし,

単元に設定。そこでは,Bの中のAも見取る。

本時の目標に到達でき

たかどうかを見取るた

めに具体的に設定する。

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色を選んでバッタを置く活動

読み取りの手がかりの掲示 学習計画を掲示

本時に使ったワークシート

【教室掲示】

文章から根拠を見つけさせるために,読み取りのめあてやてがかり,大事にしたい言葉などを教

室内に掲示した。

【読みの必然性を伴う活動】

学習活動の中に,読みの必然性を伴う活動を取り入れ

た。具体的には,本文に出てくる緑色のバッタとかっ色

のバッタ,どちらかになったつもりで,いつもすんでい

る場所に帰るという活動である。それぞれの色のバッタ

になったつもりで,「緑色の草むら」か「かれ草やおち葉」

のどちらかを「えらんで」置くことにより,なぜその場

所なのかという読みの必然性が生まれた。

【ワークシート】

授業では,自分の考えを持たせるためのワ

ークシートを用意した。また,本時は,「どう

してその場所にしたのか」という理由を,自

分がトノサマバッタになったつもりで書かせ

た。児童は自分の考えを書くことによって自

信をもって発表につなげられるようになった。

また,視写によるまとめも取り入れた。

ここかな? わたしは体の色が

緑だから・・・

Do 指導の工夫を図りました。

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・ 評価規準と発問がうまくつながっていた。 ・ 見取るタイミングはよかった。実際の経験をもとにしているので理解が早かった。 ・ 少人数に分かれた時,評価のずれがある可能性があるので評価のすり合わせが必要。

・ ワークシートにたくさん書いていても,内容が焦点化されていないものについては,

本文にもどってまとめさせた方がいいのではないか。

【板書】

板書は,保護色の役割を視覚的・対比的にとら

えられるように色を効果的に使った。また,キー

ワードはカードに書いて提示した。本時の「めあ

て」と「まとめ」も呼応させて書くようにし,ワ

ークシートを書く手立てとなるようにした。

ア 協議会から

【評価規準は適切であったか】

【指導と評価は適切であったか】

・ ワークシートに書くとき,「わたしはトノサマバッタです。」と前もって書かせるこ

とで,バッタになりきって書くことが容易になった。なりきらせることによって,書

きやすくなっている。 ・ 課題の見通しが掲示で分かりやすかった。 ・ めあてが十分に把握できていない児童には個別に指導した。 ・ 絵や写真が効果的に使われていた。 ・ 説明文であっても,文章面を追う授業ではなかったので楽しかった。 ・ 文章に迫るために,発問でゆさぶりをかけることが効果的であった。 ・ 説明文では,児童に気付かせるための「しかけ」が効果的である。

参観者は,本時の評価

規準に基づき,座席表に

A・B・Cを記入。協議

会では,座席表にA・

B・Cごとの付箋紙を貼

り評価の客観性などを

協議する。

グループ協

議で出た意見

を交流した後,

協議の柱に沿

って全体で協

議する。

Check 指導と評価を振り返りました。

協議会での板書

授業後の板書

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イ 一枚ポートフォリオから

【一枚ポートフォリオ評価で見えてくるもの】

学習を振り返って―児童の感想―

BC

総括的評価(学習後)

「ほご色と自然のかくし絵

は同じかんけいがあると思

います。」というふうに結ん

でおり,筆者のいう「自然の

かくし絵」という意味を的確

にとらえたことが分かる。

診断的評価(学習前)

「自然のかくし絵」につい

て,「身をかくす」ということ

に触れているが,何によってか

くすかというところは,「葉や

いろんな物を使って」というと

らえであり,「ほご色」につい

ては触れていない。

学習前・中・後の比較による自己評価

「読むときには,そのじょうきょうにあわせて読む

ことが分かりました。」と,ねらいにそって大事な言葉

に着目しながら読むことの大切さに気付いている。

また,人の話を聞くことの大切さに気付き,自らも

発表できるようになったことを実感していることがう

かがえる。

形成的評価

(学習中)

児童の学んだこ

とを価値付けるコ

メントを記入する

と同時に,次の学

習に生かしていっ

た。

一枚ポートフォリオを書く児童

ABC

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【学習前後での読み取りの変容】 一枚ポートフォリオ と の比較から

【児童が学びの成果をどう実感しているか】 一枚ポートフォリオ から

C児

この児童は,言葉や文章から「こそあど言葉(指示語)」や「つなぎ言葉(接続語)」などの大

切な言葉を見つけながら読んだことを学びの成果として挙げている。また,友達の意見を聞くこ

とによって,自分の気付きも増え,読み取りが深まったようである。

B児の変容

この児童は,最初「身をかくす」という

キーワードに着目していた。この時,教師

は「どんなふうに身をかくすのか,これか

ら考えていきましょう。」とコメントを返し

た。学習後,この児童が「何のために」「ど

のように」というところにも着目していた

ことから,教師のコメントが学習を導いた

ことが分かる。

A児の変容

「『自然のかくし絵』とは何でしょう。」

という問いに対しこの児童は,最初の読み

の時,既に「同じ色」「かくれる」といった

キーワードに着目していたが,学習後はさ

らに,「ほご色」という言葉に着目し,その

意味や役割,具体についても触れながら答

えている。

学びの変容

A C

D 学びの実感

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E児

この児童は,最初「『自然のかくし絵』って何だろう?」と疑問を持ちながら学習に入ったが,

勉強していくにつれてその意味に気付いている。「はじめて知りました。」「~というのは知りま

せんでした。」といった段階から「ようやく分かりました。」「~が大事でした。」「すごい。」と実

感する段階に至るまでの学習による変容が見取れる。

D児

この児童は,学習を重ねるごとに理解が深まったことを書いている。特に,最初自分が思って

いたことが,学習の中で「えっ!」と揺さぶられていったことを自分の学習履歴を振り返りつつ

挙げている。このことは,「べんきょうをいっしょうけんめいつみかさねていくたびに,自分の

力がのびていくんだと思いました。」と,自分の変容への気付きとなって表れている。

わたしは,さいしょの時に,うっすら分かった。次は,少し分か

った。その次は,まあまあ分かった。次は,まあ分かった,分かっ

た。さい後に,すごくよく分かっていった・・・みんなでやって,

うっすら分かったのが,すごくよく分かったに変わっていたので,

べんきょうしたかいがありました。

・・・べんきょうをつみかさねていくたびに自分の力がのびてい

くんだと思いました。

ぼくはさいしょ自然のかくし絵ってなんだろ?と思って,自然のこ

ん虫たちがかくれてる絵かなと思っていました。でも,この自然の

かくし絵のべんきょうをして,ようやく分かりました。てきから身

をまもることのほご色というのがだいじでした。・・・ 学びの実感

学びの実感

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ウ 生活の中から

F児の日記には,かえるや

かたつむりがうまく隠れてい

るのを見つけて「すごいなぁ」

と感心し,「また,いろいろな

自然のかくし絵を見つけてみ

たい。」と関心が高まっている

様子がうかがえる。学習後も児

童の関心が高まり,学んだこと

が生活の中につながっている

ことがうかがえる。

【指導の工夫にどう生かすか】

ワークシートに自分の考えを書かせることにより,児童は自分の考えを自信を持って発表して

いったが,児童相互の発言が絡み合って読みが深まるまでには至らなかった。お互いの意見が絡

み合うような教師の発言・発問を工夫し相手意識をもって共に学び合う意欲につなげていきたい。

【一枚ポートフォリオをどう活用するか】

この単元では,大きなまとまりごとに,授業の最後に一枚ポートフォリオを書かせた。そこで

の児童の姿は,先に述べた通り「学びの変容」「学びの実感」が見取れるものであった。

しかし,この取組をする中で見えてきた課題もある。これまでの一枚ポートフォリオでは,学

習中には「今日分かったことを書きましょう」のように自己評価として書かせていたが,授業中,

ワークシートに書きつくした後,再度一枚ポートフォリオに書くとなったら,かえって児童の意

欲が下がることもあるのである。どうすれば自分自身の学びを振り返って実感できるようなもの

になるかが協議会で議論された。一枚ポートフォリオは毎回書かせればよいというものではなく,

ポイントを決めて書かせる方がよいのではという意見もあった。また,指導者からは「リライト

作文を利用したらどうか」という提案をいただいた。例えば,おうちの人に対して「今日分かっ

たことを手紙のように書いてみて」という設定で書かせてはどうかというものである。誰かに話

すようにして書くことで書きやすくなってくるうえ,おうちの人からも返事を書いてもらうと意

欲が高まるという利点がある。

そこで,今後は,そのような改善点を生かした一枚ポートフォリオを作成し活用していくこと

にした。

Action 振り返ったことを生かします。

F児の日記

相手意識をもたせた一枚ポートフォリオを活用していきます。

ねらいに迫る発問の工夫をしていきます。 改善のポイント1

改善のポイント2

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② 算数科での取組

(6年 単元名「分数のたし算とひき算 ―分数の計算のしかたを考えよう―」)

【児童の実態】

【単元の流れ】

【教師の願い】

・ 式には表すことができても,その理由の説明の仕方がまだ分からない児童がいる。 ・ 自力解決の時間に,まだ自分で考えようとしない児童がいる。

1 等しい分数

① ジュースの量の大小を比較する。 ② 等しい分数をつくる。

③ 約分する。(本時)

④ 通分して分数の大きさを比べる。 ⑤ 最小公倍数を使って通分する。

2 分数のたし算・ひき算

① 異分母分数のたし算・ひき算をする。 ② 異分母分数のたし算・ひき算をし,答えを約分する。

3 まとめ

① 練習問題をする。 ② 評価テストをする。

分母が異なっているけれど,どうやって大きさを比

べるのかな。

習熟度別少人数指導

約分をしても,もうこれ

以上できないか,いつも確

認しないといけないな。

のぞみコース ひかりコース こだまコース

個々の実態に合わせた習熟度別少人数指導を取り入れることで,よ

り意欲的に学習に取り組んでほしいと思います。できる喜びが自信と

なり,意欲の高まりへとつながっていくと考えます。6年生で学習す

る「分数のたし算・ひき算」は異分母分数を扱うので,通分,約分と

いった作業をともないます。正確に計算ができるようになることと,

なぜそのような作業をするのかを説明できるようになってほしいと

思います。そのためにも,習熟の時間だけでなく,自力解決の時間も

確保し,しっかりと考えられるようにしていきます。

Plan 単元の計画を立てました。

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【本時のねらい】 ◎ 約分の意味とその方法について理解する。(こだまコース)

【学習の展開】 ★は評価のポイント

主な学習活動 指導上の留意点と評価

つかむ

考える

ねりあげる

まとめる

1 前時を振り返る。

・等しい分数について復習する。

2 本時の学習課題をつかむ

・約分について知る。 約分→分数の分母と分子を同

じ数でわって,分母の

小さい分数にすること

約分の仕方→分母と分子を,

それぞれの公約

数でわる。 ・P49②をする。 3★約分の仕方を自力で考える。

・問題を解き,約分の仕方をノ

ートに書く。 4 約分の仕方を発表し合う。

5 まとめる。

6 確かめ問題をする。

・P40④をする。 7 振り返る。

・計算スキルをする。 ・一枚ポートフォリオを書く。

・前時までの学習を振り返りやすいように,掲示物を用

意しておく。

・約分の定義と仕方をしっかりと押さえるために,ノー

トに写させ,繰り返し音読をさせる。

〈手立て〉

・約分が終わってもまだ約分できないかといつも確かめ

ることと,最大公約数でわると約分は1回ですむこと

と,約分のよさを確認する。 ・スキルとポートフォリオについては,授業後に評価し,

次時に生かす。

〈評価規準〉

○約分するには,分母と分子を公約数でわればよいと

いうことが説明できている。 〈評価方法〉

観察・ノート

【努力を要する状況(C)と判断する児童への手立て】

・掲示物より,等しい分数,公約数について既習事項

を思い出させる。 ・口頭でヒントを与えたり,ノートに赤鉛筆で書いて

なぞらせたりする。 ・約分表を用意しておく。 【おおむね満足できる状況(B)と判断する児童への手立て】

・どうしてそうするのか,理由まで説明できるように

考えることを呼びかける。 ・算数はかせ(速く・簡単・正確)の方法を考えるよ

う助言する。 〈十分満足できる状況(A)と判断するキーワード〉

・分かりやすい説明 ・最大公約数でわる理由

18 24

を約分しよう。

約分の仕方を説明できるようになろう。

15 3

= 20 4

÷5

÷5

約分するには,分母と分子を公約数でわって,分母の最も小さい分数にすればよい。

本時の目標に到達できたかどうかを見取る

ために評価規準などを具体的に設定する。

予想される意見

・分母と分子を2(3・6)

でわるといい。 ・分母と分子を2でわって,

3でもう1回わるといい。

総括につなげる評価を行う時間を評価のポイントとし,

単元に設定。そこでは,Bの中のAも見取る。

キーワードには記号,式,図なども含む。

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授業の終わりで取り組む計算スキル

振り返りのための掲示

グループで発表準備(ひかりコース)

【教室掲示】

前時までの学習を振り返るために,「分数の数直線」と「等しい分数

の作り方」を教室内に掲示した。

【自分で考える活動】

自力で問題を解決しようとする態度を育成するため,自分で考える

時間,グループで話し合う時間,全体で話し合う時間などを設定した。

まず自分の考えをノートに書き,それを全体やグループで発表し,ま

とめていった。ただし,習熟のための時間もきちんと確保する必要が

あるので,自力解決の時間を必要以上にはとらないようにしている。

【計算スキル】

授業の終わりに,本時の振り返りとして,「計算スキル」をおこな

っている。本時の学習内容が理解できているかを評価するためである。

理解が不充分な児童には,個別指導をするなどの対応をしている。

【習熟度別少人数指導】

② 算数科での取組

等しい分数を作るには…

Do 指導の工夫を図りました。

のぞみコース

自分の考えをより分かり

やすく表現できるようにす

る。

ひかりコース

自力解決やグループの話

し合いにより,自分の考え

に自信をもたせ積極的に学

習に参加できるようにす

る。

こだまコース

スモールステップで学習

を進め,自分の考えの説明の

仕方などを丁寧に指導する

ことにより,どの児童も自力

で取り組むことができるよ

うにする。

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・ どのコースも,約分の仕方について自分の考えをノートに書かせたり,グループで

話し合った考えをホワイトボードに書かせたり,発表させたりした。その活動の様子

から約分について説明できるかどうか評価することができたので,評価規準は適切で

あったと考えられる。

ア 協議会から

【評価規準は適切であったか】

【評価と指導は適切であったか】

・ 約分について説明するという授業だったが,それぞれの児童の実態に合わせて指導

の工夫がなされていた。 「のぞみコース」・・・ 説明の仕方をより深くより細かく追求していったが,児童

は最後まで意欲的に学習し,活発に発言していた。 「ひかりコース」・・・ 具体物を使って興味を高め,グループで話し合ったことを

ホワイトボードに書いて説明していた。一斉では発表できな

い児童も自信を持って発表できていた。 「こだまコース」・・・ 細かい手立てをし,電子ボードや約分表を効果的に使うこ

とで説明ができていた。 ・ 集団解決の時,それぞれの考え方をどの順番で発表させるとより理解が深まるかを

考えて指名したので,効果的であった。 ・ ノートには,パターンを決め分かりやすく書くことを継続して指導する。 ・ 授業のまとめは,実態に応じて児童の言葉でまとめさせるようにしてきたが,今後

もそのことを大切にしていきたい。 ・ 毎時間授業の終わりに評価問題「計算スキル」に取り組ませ,一枚ポートフォリオ

に感想を書かせていったことで,学習の理解度を早い段階で教師がつかみ対応できた

ことはよかった。また,一枚ポートフォリオでの教師のコメントが,児童とのよいコ

ミュニケーションとなり,学習意欲を高めることができた。

参観者は,本時の評価

規準に基づき,座席表に

A・B・Cを記入。協議

会では,座席表にA・

B・Cごとの付箋紙を貼

り評価の客観性などを

協議する。

グループ協議

で出た意見を交

流した後,協議

の柱に沿って全

体で協議する。

Check 指導と評価を振り返りました。

協議会での板書

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イ 一枚ポートフォリオから

【一枚ポートフォリオ評価で見えてくるもの】

診断的評価(学習前)

自分の考えと比べなが

ら関心をもって授業に取

り組んでいることが分か

る。

総括的評価(学習後)

異分母分数のたし算

ひき算は,通分すれば

できることをつかんで

いる。

学習前・中・後の比較

による自己評価

初めと比べて学習を

重ねる内にだんだん理

解し,すらすらと問題

が解けるようになった

喜びを感じていること

が分かる。

形成的評価(学習中)

異分母分数は,通分す

れば比べることができ

ることをつかんでいる。

一枚ポートフォリオを書く児童

A B C

学習を振り返って―児童の感想―

今日の勉強

で分かった

ことは・・・

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【児童が学びの成果をどう実感しているか】

一枚ポートフォリオ ~学習を振り返っての感想から~

一枚ポートフォリオ ~形成的評価~から

一枚ポートフォリオ ~形成的評価から~

D児

この児童は,通分の仕方を間違って理解し

ていることが分かる。そのことを教師がつか

み,すぐに個別指導にて対応するとともに次

時の学習で再確認し,理解させることができ

た。

C児

この児童は学習課題をきちんととらえ,そ

れに対する自分なりの考えをまとめて書いて

いる。本時の学習を確実に理解していること

が分かる。

学びの確認

児童の書いた内容を個別指導や次の時

間の授業の構成の見直しに活用する。

B児

この児童は学習の初めと比べてスムーズに

問題が解けるようになり,難しいと思ってい

た学習を簡単だと思えるようになっているこ

とが分かる。

A児

この児童は学習課題をきちんととらえ,確

学習を重ねていくうちに,あいまいだった

ところに自信が持てるようになっていったこ

とが分かる。

学びの変容

わかりました!

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一枚ポートフォリオ から

E児

分数のたし算ひき算の学習で手応えを感じ,

次の分数のかけ算わり算の学習にも意欲を高め

ていることが分かる。

F児

初めは分数の学習に意欲的でなかったが,

学習の終わりには学習が楽しくなり意欲が向

上したことが分かる。

学びへの意欲

D B

G児

学習が進むうちにより早くより正確にできる

仕方がわかり,学習する喜びを感じていること

が分かる。

H児

児童の言葉には肯定的評価を心がけ,認め

励ましていくことで,児童のやる気を引き出

そうとした。この児童は家庭学習で分からな

いことがあると休憩時間にも積極的に教師に

質問をし,意欲的に学習していた。

児童の書いた内容に

可能な限り適切なコ

メントを書いて返す

ようにする。 私たちのグル

ープの考えを

発表します。

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I児の変容

予習をしてある程度の知識を持っていたこ

の児童は,学習の場面でただ計算の仕方だけ

を分かっていても本当に理解したことにはな

らないことを学んでいる。自分なりに根拠を

もって考え,友だちにも説明できるようにな

り,学習を深めることができた。

【習熟度別少人数指導の効果はあったか】

○児童の変容

のぞみコース

ひかりコース

J児の変容

この児童は,一斉学習では自分の考えに自

信がもてず,ほとんど発表しなかったが,グ

ループで話し合うことで自分の考えに自信

がもて,全体の場でも発表ができるようにな

った。

自分の考えを発

表したい!

みんなの考えを出し合ってホ

ワイトボードに書いていく。

自分の考えをノート

にまとめる。

私たちの考えは・・・

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こだまコース

○学習後の様子

・単元テストの結果・・・ 学年平均が90点を超え,努力を要すると判断される児童(70

点以下)もいなかった。

・算数への意識・・・・・ 算数に苦手意識を持ち発表をほとんどしなかった児童が40%い

たが,学習後算数が苦手と答えた児童は8%に減った。

・発表への意欲・・・・・ グループで話し合った後では,70%の児童が自分の考えを発表

できるようになった。

【一枚ポートフォリオをどう活用するか】

実践を進めていくうちに,一枚ポートフォリオが,児童の意欲を高めたり,児童の学習状況を

評価したりするのに,大変効果的であることが分かってきた。今後さらに一枚ポートフォリオを

有効に活用していくとともに,使い方や作り方を工夫していきたいと考える。

まず一つ目は,一枚ポートフォリオを書かせる時間を絞るということである。当初は毎時間一

枚ポートフォリオを書かせる計画だったが,実際に授業をしていく中で書かせる必要のない時間

もあることに気付いた。今後は,「意欲の変容」や「学習理解を評価したい時間」に絞って一枚

ポートフォリオを書かせるようにし,それを指導計画に入れていく。

二つ目は,書きやすい一枚ポートフォリオの工夫をするということである。児童に書かせる時,

相手意識をもたせたり要点を絞ったりした方が書きやすく,教師も評価しやすい。例えば,「今

Action 振り返ったことを生かします。

K児の変容

初めは分数の意味もあいまいだったが,学

習することにより理解できるようになり,学

習に自信を持って取り組めるようになった。

電子ボードを使って集中させる

約分表

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日習ったことを,お家の人にお話するつもりで書いてみよう。」など,その学年や単元に応じた

書かせ方を工夫していく。

三つ目は,児童の一枚ポートフォリオへの記述を基に授業を見直し改善していくということで

ある。例えば,児童の記述から学習を充分理解していないことが読み取れた場合,授業計画を見

直し確実に理解させていったり,個別指導をしてつまずきを改善していったりする。

最後に四つ目は,授業の最初と最後で児童自身が自らの伸びを実感できるような一枚ポートフ

ォリオを工夫していくということである。児童自身が自らの伸びを実感できれば学習のさらなる

意欲へとつながっていく。例えば,授業の初めにやって難しかった問題が,終わりにはスラスラ

とできるようになると喜びを感じる。初めと比べて自分がどう変わったかを感想に書かせること

により自らの伸びを実感させる。

【ノートをどう活用するか】

分かりやすいノートは,筋道を立てて学習していくために効果的で,学習が理解しやすく自分

の考えもまとめやすい。そのために,ある程度ノートの書き方のパターンを決めておくことが大

切である。そして,その指導を継続していくことでノートの使い方を児童自身に定着させていく。

定着が進めば,基本的なノートのパターンをベースにしながら,自分なりの工夫をし,より分か

りやすいノートにしていくであろう。

ノートの書き方の例

【少人数指導の工夫改善をどうするか】

習熟度別少人数指導をした結果,児童の学習意欲の高まり,理解の深まり,学力の向上が見ら

れた。これらのことから,児童の実態や単元の内容に合わせた少人数指導が有効であることが考

えられる。今後も,しっかり児童の実態分析をし,単元の特徴を踏まえたうえで,積極的に少人

数指導を取り入れていきたい。

一枚ポートフォリオの使い方や作り方を工夫していきます。 改善のポイント1

改善のポイント2 ノートの書き方のパターンを決め,分かりやすいノート指導を

します。

日付

学習課題(赤線で囲

問題文(必要に応じて)

自分の考え(後で消さない)

まとめ(児童の言葉で)

みんなの考え

練習問題

改善のポイント3 少人数指導を積極的に行います。

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③ 特別支援学級での取組(国語科)

(1年 単元名「おはなしだいすき ―はらぺこあおむし―」)

【児童の実態】

【単元の流れ】

【教師の願い】

・ 文字がすらすら読めないために,音読の声も小さく,発音も不明瞭で,楽しく活動

できない。内容の理解にも時間がかかる。 ・ おしゃべりは好きだが,語彙数が少なく,対話も単語のみですませることも多い。 ・ 自信を持って,人前で発表したり,歌ったりなど自己表現することが難しい。

1 絵本を読み語り,学習計画を立てる。

① はらぺこあおむしのお話を知る。

2 場面ごとに描かれている内容を読み取る。

① 日曜日,あおむしが生まれた様子を読み,表現する。 ② 月曜日,あおむしが生まれた様子を読み,表現する。

③ 火曜日,あおむしが生まれた様子を読み,表現する。

④ 水曜日,あおむしが生まれた様子を読み,表現する。 ⑤ 木曜日,あおむしが生まれた様子を読み,表現する。

⑥ 金曜日,あおむしが生まれた様子を読み,表現する。 ⑦ 土曜日,あおむしが生まれた様子を読み,表現する。 ⑧ あおむしの大へんしんの様子を読み,表現する。(本時)

3 ひまわり集会で発表する。

① ひまわり集会で「はらぺこあおむし」を楽しくお話する。

「まだまだおなかはぺっこぺこ」っていう言葉が

何度も出てくるね。

「はらぺこあおむし」って,毎日毎日

いっぱい食べるんだねえ。

あおむしくんが、

だんだん太っちょ

になっていくよ。

エリック・カールの絵本の世界で楽しく遊びましょう。リズミ

カルな言葉を復唱したり,絵を描いたり,想像した言葉を吹き出

しに書き込んだり,身体表現活動をしたりと,お話をより豊かに

理解し,読む楽しさを味わいましょう。体験を生かし,他教科と

の関連を図りながら,わくわくする活動を展開していきます。

Plan 単元の計画を立てました。

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【本時のねらい】◎ あおむしの大変身の様子を読み,表現する。

【学習の展開】 ★は評価のポイント

主な学習活動 指導上の留意点と評価

1 あおむしが誕生して土曜日ま

でのお話を一緒に読む。 2 本時の学習課題をつかむ。

3 おなかいっぱいになったとこ

ろから,さなぎになるところまで

のお話を読み,表現する。 ・ 食べた物の数を数える。

・ あおむしになって一つずつ食べ

ていく動作をしながら,あおむしの

気持ちを簡単なことばで話す。

・ おなかがいたくなったところを動

作をつけて読む。

4★さなぎからちょうになるとこ

ろを表現する。

・ さなぎになるところを一緒に読

む。

・ お話に合わせてさなぎからちょう

になるところを表現する。

・ ちょうの気持ちを話して,ふきだ

しに書く。

・ ちょうになって楽しくとびまわる。

5 学習のまとめをする。

・ 次時の学習について聞き,かたづ

けをする。

・ 前時までに学習したところを声に出して読み,お話の流れ

を想起できるようにする。

・ 楽しい雰囲気で学習できるように自分で作ったものを掲示

したり展示したりしておく。

・ 計算の意味が分かるように,絵カードで示す。

・ これまで食べた物を並べてみることで,あおむしがたくさん

食べたことが分かるようにする。

・ 手作りのあおむしを見ることで,たくさん食べたことや,こん

なに食べたのでおなかがいたくなったことを確かめる。

・ 既習の手作り絵本を掲示し,読みのヒントにする。

・ はらぺこだったあおむしがはじめに比べて大きくなったこと

を,手作りのあおむしを見て確かめる。

・ 確認しやすいように,絵本の文を掲示する。

・ 意欲を持ってお話できるように,実際に育てたさなぎを近く

に置いておく。

・ ちょうになって楽しく表現できるように,音楽やちょうの羽を

準備しておく。

・ お話をつくりあげていったことを認め,次時は,「ひま

わり集会」で「はらぺこあおむし」のお話をすることを

知らせる。

〈評価規準〉

○ 蝶になった喜びを,話したり動作化したりして表現して

いる。

あおむしさんのだいへんしんをやってみよう

本時の目標に到達できたかどうかを見取るために具体的に

設定する。

本時のねらいに迫る場面であり,児童の反応を

評価するポイント。

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色を選んで羽のもようを作る活動

読み取りの手がかりの掲示

【教室掲示】

絵から豊かにイメージをふくらませていけるように,絵本のページや,児童がつぶやいた言葉な

どを吹き出しに書き残して掲示していった。

読み取りのめあてや手がかり,大事にしたい言葉などを教室内に掲示した。

【読み取ったことを生かす活動】

絵本を読むだけで終わるのではなく,学習活動の中に,読み取ったこと

を生かす活動を取り入れた。具体的には,紙粘土であおむしを作る活動の

中で,あおむしの大きさの変化に気付き,太っちょあおむしになったの

はなぜなのか,何をいくつ食べたのか,と注意深く確かめながら,読ん

でいくことができた。さなぎや蝶の羽をローラー版画遊びで作成する時,絵本を

繰り返し見て,さなぎやちょうの気持ちを想像することができた。

身体表現活動をする中で,あおむしやちょうになりきり,想像をふくらませ,楽しみながら思い

をつぶやき,豊かにお話を味わうことができた。

まだまだおなか

は,ぺっこぺこ!

はらぺこあおむしく

んは,こんなにたく

さん食べたんだね。

やったあ!お外は広くて

気持ちいいなあ。 ふう~。きつかったよ。

さなぎの中でじいっと

していたからね。

そおっと羽を広げるんだよ。

まだ,かわいていないからね。

Do 指導の工夫を図りました。

繰り返し振り返ることで,深く豊かに

話の内容を読み取っている。

学習内容を理解 自己選択・自己決定

活動が楽しくなり,自分で,どんなものを準備し,

どこで活用するかイメージが持てるようになる。

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本単元で使ったワークシート

曜日ごとに1つずつ食べたものが増えていくことを確認しながらマグ

ネットで置いていき,視覚的に増えたことをとらえる。

【ワークシート】

授業では,自分の思いを

持つことができるように,ワーク

シートを用意し自分なりに捉えた姿を絵で表し,

吹き出しを付けて,自由につぶやきを書くことで,

イメージ豊かに読むことができるようにした。

また,1時間の学習のまとめとして,キーセンテンスや繰り返

されている言葉を視写する活動も取り入れた。1時間ごとに,世

界にたった一つの自分だけの「はらぺこあおむし」の絵本のページ

が増えていく。

【板書】

【教室環境】

【合科的指導と体験的活動】

パネルシアターでいつも登

場するぴよこちゃんに、お

手紙で「はらぺこあおむし」

のことを教えてあげよう。

ぴよこちゃんからのお返事

は,教師が児童に答えて欲

しいことを質問形式で書い

たりする。

授業後の板書

あおむしやさなぎ,ちょうになりきって,

吹き出しにつぶやきを書いていく。

キーセンテンス

を視写をする。

学習の見通しを提示してお

き,毎時間始めに確認する。

ちょうが遊べる花壇の雰囲気 教室から巣立った

アゲハチョウのさなぎ

アゲハチョウを育て一緒に遊んだ時の写真

を掲示し,体験を想起させるコーナー

育てていたアゲハチョウがかえったときの

感動を,ジャンボ絵手紙に。 進んで思いを絵日記に。

なにしてるのかな。

アゲハチョ

ウがたんじ

ょうしてび

っくり。

「そとにはな

してくれてあ

りがとう。」っ

てアゲハチョ

ウがいってた

よ。

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・ 前時までの活動では,自分なりに読み取ったことをつぶやいたり,身体表現を楽し

んだりすることができていた。 ・ 児童の興味関心や体験に沿って授業を構成したので,意欲的に読むことができた。

・ 人の視線が気になり,検証授業では落ち着いて活動に入ることができなかった。児

童の実態を十分配慮して,教室環境づくりや活動を組み立てていく必要がある。 ・ 身体表現活動でどこまで求めるのか。実態に合った活動を考えていく必要がある。

【お家の人に伝えよう】

ア 協議会から

【評価規準は適切であったか】

【評価と指導は適切であったか】

イ 一枚ポートフォリオから

・ ワークシートに書く前に,紙粘土の模型を動かしたり,身体表現をしたりすること

で,あおむしやさなぎ,ちょうになりきって書くことが容易になった。また,対教師

ではなく,ぴよこちゃんというキャラクターに語ることで,自分ではなく生き物にな

りきって考え,話しやすくなっていた。 ・ 課題の見通しを掲示しておくことで,児童も安心して学習活動に取り組めた。 ・ 発問の意図が理解しにくい時には,キャラクターからの問いかけにして,できるだ

け自分で気付き,考えられるようにした。 ・ 絵や写真が効果的に使われ,児童は好きなものに囲まれたギャラリーで楽しい時間

をつくっている。 ・ 児童に気付かせるための「しかけ」として,ぴよこちゃんへの手紙を効果的に使い

たかった。

Check 指導と評価を振り返りました。

お家の人に「はらぺこあおむし」のお話を。

「クイズを出すよ。」 お家の人も一緒に楽しみ,歌うパネルシアター

さて

ここでクイズ

です。あおむしくん

が食べたものは何

でしょう。

♪わたしは

かわいいぴ

ん・・・♪

自信を持つ お家の人から受け入れられているんだ。

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イ 1冊の絵本作りから

【学習前後での読み取りの変容】 ワークシート(1冊の絵本のページの比較から)

【児童が学びの成果をどう実感しているか】

【人前では自分をうまく表現できない状況で,いかに児童の個性を尊重し伸ばしていく活動

が考えられるか】

【指導の工夫にどう生かすか】

児童は,家族や仲間の前でお話ができたことで大変満足し,「おしまい!」と,晴れ晴れ

とした顔で話し終えた。そして自分の話や準備した物,がんばりをほめてもらったことで,

一つ自信を付けることができた。最初は,一度読んだ本には興味が持てなかったのが,さ

まざまな活動の中で自分だけのお話を作り上げていったことに喜びを感じ,手作り絵本や

あおむしを何度も出してはお話を楽しんでいた。

学習を振り返って―児童の感想

はらぺこあおむしの発表をする

おうちのひとのまえでも,ひまわりがっ

きゅうのおともだちのまえでもちゃんとお

はなしできたよ。クイズにこたえてくれた

り,いっしょにうたってくれたりしたから

うれしかったよ。

A C

実体験を生かした活動を他教科とも関連させながら仕組み,学

びの足跡が実感できる楽しい表現活動を工夫していきます。

児童の実態にぴったりの活動を工夫していきます。 改善のポイント1

改善のポイント2

にちようび

ぽん!たまごから、

ちっぽけなあおむしが

うまれました。

またにちようび

おなかのぐあいもすっ

かりよくなりました。も

う、はらぺこじゃない

よ。おおきくてふとっち

ょになったのです。

学びの変容

児童は,学習を重ねるごとに絵本のことばをそのまま視写するのではなく,自分

の言葉で書いている。理解が深まるにつれて,だんだんと登場人物(あおむし)に

なりきっており,「もう,はらぺこじゃないよ。」という言葉になっている。自分の

生活体験を思い出しながら,「さなぎは,ずっとずっとじっとしていて,死んだのか

と思ったよね。」などと振り返りつつ学習していた。

Action 振り返ったことを生かします。

成功感・成就感

これで「はら

し」のお話は

おしまい!

学びの実感

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3 保護者とつながる評価(評価情報公開プロジェクト)

(1)プロジェクトのねらい

評価についての考え方や評価規準,評価方法についての情報を,教育活動の計画などととも に児童や保護者に説明する情報公開を行う。そのことによって,児童・保護者・教師が評価を 共有し,児童の学習意欲を高めていく。

(2)研究の内容 ■ 情報公開による評価の共有化

① 三者(児童・保護者・教師)が共有できる「あゆみ」 ② 「参観日の授業について」のプリント配付

③ 学校評価に係る保護者アンケート

(3)具体的な取組

■ 情報公開による評価の共有化

① 三者(子ども・保護者・教師)が共有できる「あゆみ」

「あゆみ」(通知表)は,学校にとっては指導方法を振り返り,授業改善につなげるも

のであるが,児童にとっても自分の学習・生活を振り返るものであり,保護者にとっては,

児童の学習状況を把握し,児童への意欲付けの資料として活用できるものにならなくては

ならない。このような視点から,昨年度は,評価項目や形式の全面的な見直しを行った。

ア 昨年度末の保護者アンケート結果

昨年度末に保護者に「あゆみ」についてアンケートを行ったところ,次のような結果

であった。

がんばった点や努力してほしい点がよく分かった

85%96%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

平成17年度 平成18年度

評価項目は分かりやすい内容であった

93% 94%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

平成17年度 平成18年度

あてはまらないあてはまる

子どもの学習の様子を適切に評価してあった

78%95%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

平成17年度 平成18年度

家庭で子どもをほめたり励ましたりするのに役立った

90% 96%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

平成17年度 平成18年度

所見欄は,分かりやすい言葉で書いてあった

98% 96%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

平成17年度 平成18年度

保護者アンケートの「あゆみ」に関する項目の結果

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このように,「あゆみ」に対しては,おおむね分かりやすい内容であると評価を得た。

特に,「子どもの学習の様子を適切に評価してあった。」「家庭で子どもをほめたり励ま

したりするのに役立った。」「がんばった点や努力してほしい点がよく分かった。」とい

う評価内容の項目では,一昨年度よりもよくなったという評価を得た。これは,保護者

が学校で行っている児童に対する評価について理解されてきたということの現われで

あると考えられる。

イ 3者(児童・保護者・教師)の共有できる「あゆみ」

本年度は,「あゆみ」が児童にとって自らの伸びを実感でき,学習意欲を育てるものと

なるよう改訂することにした。

そこで参考になったのは,福岡教育大学の井上正明名誉教授が,通知表の基本的視点

として,『通知表のなかに子どもたちの学校での諸活動の様子などを連絡する欄ととも

に,子どもや家庭の保護者などが参画できる余地を設けておくことが大切になろう。』

(通知表工夫・記入事例集より引用)と書かれていることである。

そこで,「あゆみ」の中に児童と保護者が記入する欄を設けることとした。児童自身

が,自らの学びを振り返り,生かしていけるようにした。さらに,保護者も子どもへの励

ましを記入することで,子どもを育てるための保護者・学校の共同支援体制をより確か

なものにしたいと考えた。

「あゆみ」3ページ目

児童に自分自身の学校生活を振り返

らせて,「がんばったこと」,またこれ

から「がんばりたいこと」を書かせた。

1学期の学習や生活を振り返って,

子どもへの励ましの言葉を保護者も記

入してもらった。

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ウ ファイル式通知表

「あゆみ」は学期ごととし,見えやすい大きさにした。ファイル

には,学期ごとの「あゆみ」が蓄積することになる。

ファイル式「あゆみ」

「あゆみ」の表紙

学期の表紙

1・2ページ目

エ 「評価について」のリーフレット配付

本年度も,「あゆみ」とともに評価について説明するリーフレットを配付した。このリ

ーフレットは昨年度のものを基にし,新たに本年度改訂した「あゆみ」についての説明を

加えた。このリーフレットを使って,9月には教育説明会を行った。

保護者に配付したリーフレット

「あゆみ」の本年度改訂したところに

ついての説明をしている。

P1 P3

P2

本校の「評価に

ついて」の考え方

について説明して

いる。

学校では学びを

つなげていくこと,

家庭では,肯定的

評価等で意欲につ

なげてほしいことを

説明している。

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② 参観日の学習指導案について

授業参観に際し,授業のねらいや評価規準などを伝えるために,本年度も授業プランを作

成,配付した。(例①)目標にせまるための学習の進め方を分かりやすく説明し,日々の授

業での取組への理解を図った。保護者と児童とが授業について話し合う資料ともなり,児童

の学習意欲の向上につながるものと考えている。

6月の参観後,保護者から,「これまでどのように学習したか,これからどのように学習

していくのか,ということも書かれていると,より分かりやすい」という意見をもらった。

そこで9月の参観日には,そのことも付け加えることとした。(例②)

参観日の授業プラン例①

参観日の授業プラン例②

これまでの学習について説明

する。

これからの学習について説明

する。

より細かな指導

をするために,学年

を班毎に3つのコ

ースに分けて,少人

数で学習します。

授業形態を変更

させる場合(少人数

指導)は,何のため

に,どのように分け

るかを説明する。

この授業で目標に到達しているか

どうかを見取る評価規準を知らせ

る。

学習内容は,できるだけ簡潔に,

分かりやすく伝える。

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③ 学校評価に係る保護者アンケート

学校評価に係る保護者アンケートは,家庭教育に関するものと学校教育に関するものの2

種類を行っている。本年度は,家庭教育に関するものは,保護者自らに家庭での教育を自己

点検・自己評価してもらうことでPTAと連名でアンケートを依頼した。この結果について

は,PTAの立場からもまとめていくよう連携協議している。これにより保護者も評価につ

いて考え,理解を深めることができ,学校と家庭が共に同じ方向で児童に対してかかわるこ

とが可能となり,学校と家庭の教育力の向上につながると考える。

保護者アンケート

PTA会長と連名でアンケ

ートを依頼した。

教育説明会

保護者へのプレゼンテーションの一部