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163 Graduate School of Policy and Management, Doshisha University 概 要 本論文の目的は日本の企業における評価者 面談と被評価者の動機づけとの関係について評価者である上司がどのような面談を行うこと で部下の動機づけができるかを理論的に考察す ることである特に上司によるコーチングと自 律性支援に着目し部下の動機づけに対する効 果を先行研究のレビューにより検討しようとす るものである部下の動機づけには職場によって様々な状況 があるが本論文では評価者面談という状況を 取り上げた近年人的資源管理論において注目 を集めているパフォーマンスマネジメントに対 して理論的な貢献ができると考えたからであるまた本論文により人事評価制度についても 何らかの示唆を提示したい人事評価制度を通 して部下を評価し伝えることはとても重要で あるにも関わらず人事評価制度の目的のひと つである部下の人材育成や動機づけが十分に達 成されていないと思われるからである本論文で取り上げるテーマは多くの研究領域 と隣接しているためそれらの領域の主な関連 先行研究をレビューする本論文で扱う先行研 究の範囲は人事評価制度目標管理制度評価 結果のフィードバックとパフォーマンスマネ ジメントコーチング内発的動機づけと外発 的動機づけ自己決定理論自律性支援であるこれらのテーマのレビューを通してそれぞれ の研究領域がどのように関係しているのかを考 察し仮説を提示する1はじめに 昨今国をあげて働き方が見直されているこれまでのような働き方では企業は生き残るこ とができない時代でありどのようにすれば企 業と社員がともに良い関係を構築することがで きるのかが問われている企業と社員の関係は 採用に始まり配置異動教育訓練働く条 件や働き方の整備働きぶりの評価昇進や賃 金などの処遇決定最後は退職で終わるこの 一連の流れの中で働きぶりの評価は会社ある いは評価者が部下に対してこうなってほしいと いう方向に行動を変えるという重要な機能を もっている今野佐藤 2009)。多くの企業で は評価制度を取り入れて社員 1 年間の業績を評 価するとともに動機づけや育成を行っているでは実際に評価を通じて部下の動機づけや育成 ができているのであろうか日本の人事部が実施した日本の人事部 人 事白書 2017によると評価結果が何に活用 されているかという質問に対し昇格昇進と 答えた割合が 84基本給が 80.4賞与が 78.4人材開発育成が 31%となっており評価結果が人材育成にはあまり活かされていな いことがわかる成果業績の評価と処遇反映等の実態』(務行政研究所 2016によると成果業績の 評価に関する現状の課題として上位 3 つに次 の項目をあげている1 :「評価者による視 判定のバラつきが大きい一般社員 67.3管理職 59.82 :「評価の判定が標 準評価寄りに中心化する傾向がある一般 社員 49.6 管理職 42.0 3 :「評価基準 があいまいなため判定がメリハリに欠ける一般社員 39.8管理職 40.2%となってい 評価者面談が被評価者の動機づけにもたらす効果の研究 コーチングと自律性支援に着目して久保田 康司

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163Graduate School of Policy and Management, Doshisha University

概 要

 本論文の目的は、日本の企業における評価者面談と被評価者の動機づけとの関係について、評価者である上司がどのような面談を行うことで部下の動機づけができるかを理論的に考察することである。特に上司によるコーチングと自律性支援に着目し、部下の動機づけに対する効果を先行研究のレビューにより検討しようとするものである。 部下の動機づけには職場によって様々な状況があるが、本論文では評価者面談という状況を取り上げた。近年、人的資源管理論において注目を集めているパフォーマンス・マネジメントに対して理論的な貢献ができると考えたからである。 また、本論文により人事評価制度についても何らかの示唆を提示したい。人事評価制度を通して、部下を評価し伝えることはとても重要であるにも関わらず、人事評価制度の目的のひとつである部下の人材育成や動機づけが十分に達成されていないと思われるからである。 本論文で取り上げるテーマは多くの研究領域と隣接しているため、それらの領域の主な関連先行研究をレビューする。本論文で扱う先行研究の範囲は人事評価制度、目標管理制度、評価結果のフィードバックとパフォーマンス・マネジメント、コーチング、内発的動機づけと外発的動機づけ、自己決定理論、自律性支援である。これらのテーマのレビューを通して、それぞれの研究領域がどのように関係しているのかを考察し、仮説を提示する。

1.はじめに

 昨今、国をあげて働き方が見直されている。これまでのような働き方では企業は生き残ることができない時代であり、どのようにすれば企業と社員がともに良い関係を構築することができるのかが問われている。企業と社員の関係は採用に始まり、配置・異動、教育訓練、働く条件や働き方の整備、働きぶりの評価、昇進や賃金などの処遇決定、最後は退職で終わる。この一連の流れの中で働きぶりの評価は、会社あるいは評価者が部下に対してこうなってほしいという方向に行動を変えるという重要な機能をもっている(今野・佐藤 2009)。多くの企業では評価制度を取り入れて社員 1年間の業績を評価するとともに、動機づけや育成を行っている。では実際に評価を通じて部下の動機づけや育成ができているのであろうか。 日本の人事部が実施した『日本の人事部 人事白書 2017』によると、評価結果が何に活用されているかという質問に対し、昇格・昇進と答えた割合が 84%、基本給が 80.4%、賞与が78.4%、人材開発・育成が 31%となっており、評価結果が人材育成にはあまり活かされていないことがわかる。 『成果・業績の評価と処遇反映等の実態』(労務行政研究所 2016)によると、成果・業績の評価に関する現状の課題として上位 3つに次の項目をあげている。1位:「評価者による視点・判定のバラつきが大きい」は、一般社員67.3%、管理職 59.8%、2位:「評価の判定が標準評価寄りに中心化する傾向がある」は、一般社員 49.6%、管理職 42.0%、3位:「評価基準があいまいなため、判定がメリハリに欠ける」は、一般社員 39.8%、管理職 40.2%となってい

評価者面談が被評価者の動機づけにもたらす効果の研究―コーチングと自律性支援に着目して―

久保田 康司

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久保田 康司164

が、これらは基本的に同一の制度を意味すると述べている。高橋(2010)は人事評価、人事考課、人事査定、勤務評定などいずれも同様の意味であり、民間企業では人事評価や人事考課が使われていると述べている。また、今野・佐藤(2009)も人事評価と人事考課は同じ意味であると述べている。本論文においても、人事評価・人事考課・人事査定は同等の意味として扱うものとする。記載については引用する書籍や論文に準ずるが、それ以外は人事評価を使うものとする。 人事評価の定義は論者によって様々である。McGregor(1960=1966: 91)は従業員を経営目標に向かって努力させるために、従業員に対して指示をし、それが遂行されたかを判定して賞罰を与える人事管理の技法であると述べている。遠藤(1999)は産業心理学の研究成果を踏まえて整備された、従業員の「働きぶり」を評価しようとする制度であると定義している。三輪(2003)は、企業組織全体の業績向上を最終的な目的として、それに対する労働者個々の貢献度や貢献可能性を、公式化された科学的あるいは合理的な方法によって定期的に評価し、その結果に基づいて労働者の処遇の改定をはじめ、個別の選抜・配置・異動・能力開発等の決定に役立てるための制度と定義している。 これらの定義から本論文では、人事評価を企業の業績向上のために、社員の働きぶりや貢献度を客観的に評価し、人事管理上の諸決定に活用するために整備された制度であると定義する。

2. 2 人事評価では何を評価するのか

 人事評価では社員の何を評価するのであろうか。この点についても様々な議論が存在するが、多くの企業では、社員の「成績」と「情意」と「能力」の 3つを中心に人事評価がなされてきた。高橋(2010)はこれら 3つを以下のようにまとめている。「成績」とは社員が担当する業務をどれだけ遂行したかを評価するものであり、一定期間に従業員が示した実績や成果を判断する。「能力」は職務を遂行するうえで必要とされる能力を、本人がどの程度保有しているか(保有能力)を評価するものである。「情意」は与えられた職務に対する態度や意欲、行動などを測ろうとする。成果や数字に表れることのない影の努力、意欲の高さなど目標達成のプロ

る。その他に「似かよった目標設定が続いたり、コミュニケーションがなおざりになっているなど、目標管理制度の運用が形骸化している」は、一般社員 38.9%、管理職 33.0%で、「成果・業績の評価結果が処遇反映以外(人材育成等)で十分活用されていない」は、一般社員 31.0%、管理職 29.5%となっており、主に評価者に起因する問題が多く指摘されている。 では、評価者面談における評価者の能力はどのようなものなのだろうか。『人事評価制度の最新実態』(労務行政研究所 2014)によると、評価結果を何らかの形でフィードバックしている企業の割合は 87.4%に上っており、そのうちフィードバック面談を実施している企業の割合は 91.0%とフィードバックを行う企業のほとんどで面談を実施している。評価者の評価能力について、「現場の評価者の評価能力は、ほとんどバラつきがなく、ほぼ適正な評価ができている」という質問については「どちらともいえない」が 46.5%と多いものの、「当てはまらない」「あまり当てはまらない」を合計した否定的評価が 35.4%に上り、肯定的評価は 18.1%にとどまっている。 これらの調査結果から様々な問題点が浮かび上がってくるが、評価面談時の部下との面談の方法については実態や問題が明らかにされていない。面談の方法は評価者任せになっており、どのような面談が行われているのかブラックボックスになっているのが現状である。面談でコミュニケーションが上手く取れている上司のもとでは被評価者である部下はやる気が高く、コミュニケーションが上手く取れていない上司のもとでは被評価者のやる気が低くなってしまうことが予想される。

2.人事評価制度

2. 1 人事評価とは何か

 人事評価を概観するにあたり、人事考課あるいは人事査定との違いについて確認しておきたい。人事評価、人事考課、人事査定は違う言葉ではあるが、同じ意味で扱われているといえる。遠藤(1999)は、人事考課、人事評価、勤務評定、業績評価、人事査定など名称は様々である

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評価者面談が被評価者の動機づけにもたらす効果の研究 165

3.目標管理制度

3. 1 目標管理とは何か

 人事評価制度において成果主義が注目されるようになると、「成績」「情意」「能力」の中でも「成績」つまり、評価期間中における目標の達成度合いである業績(達成成果)に重点が置かれるようになり、その業績評価を行う具体的な方法として目標による管理が注目されるようになった。目標による管理(Management by Objectives : MBO)は Drucker(1954)が「自己管理による目標管理」を提示したことによって始まったとされている。 McGregor(1960=1966: 38-9)は管理行動を考える際の人間観として、X理論と Y理論を提唱し、その中で目標管理制度について述べている。X理論は、人は生まれつき怠け者で厳しい賞罰で統制しなければ働かないとう前提に立ち、Y理論は、人は条件次第で目標達成に努力し自ら進んで責任を取ろうという前提に立っている。この Y理論から、責任を引き受けることは目標達成を納得することと相互に関連し合っているということであり、目標が外から押しつけられたときには、ほんとうの納得というものはなされない。目標決定にあたってのある程度の「連帯」というものは、Y理論に基づいた経営計画に欠くことのできない一面なのであるという考え方が提唱された(McGregor 1960=1966: 79)。 Odiorne(1979=1983: 51)は目標管理について、組織における上位と下位の管理者が協力して共通の目標を明らかにし、その目標に基づいてそれぞれの責任分野を定め、その基準により業務を遂行し、個々のメンバーの業績を評価するプロセスであると定義している。 また Odiorne(1987=1993: 94)は目標管理について、すべての上司と部下が年度初めや四半期ごとに、または最低年に 1回でも目標について協議することが大切で、このような協議は正式に計画されたものであり、目標、期待される業績、優先されるものおよび計画について話し合いを行うことであると述べている。そして目標について協議することは、部下と企業組織全体の仕事と計画を統合することであり、事前に同意し目標に向かって貢献することにより、部下は自己統制のもとで自由に仕事をすることができると述べている。

セスで本人が行ってきた、見過ごされがちな行動にも幅を広げて評価の対象としている。 社員の何を評価するのかについて、Beer et al.(1984=1990: 138)は達成成果と行動の企業文化への合致度という視点で社員の効果性を定義し、それを評価することを主張している。達成成果とは、セールス、コスト、利益、マーケットシェアといった数量的に測定できるものである。企業文化への合致度とはプロセスの側面、すなわちどのように職務が遂行されたかという過程の側面(経験から導き出された行動、態度、特性)が企業文化に合致しているかというものである。この達成成果と行動の企業文化への合致度を図示したものが図 1である。

 達成成果が高く行動の企業文化への合致度が高ければ、効果性の高い従業員と評価することができ、達成成果が低く行動の企業文化への合致度が低ければ、効果性の低い従業員と評価することができるというものである。これらの 2つの象限にいる従業員は評価しやすいが、逆にこれらの象限に入らない従業員、つまり達成成果は高いが行動の企業文化への合致度が低い従業員と、達成成果は低いが行動の企業文化への合致度が高い従業員の評価をすることの難しさを指摘している。 本項では人事評価において従業員の何を評価するのかを概観した。次項では、人事評価と密接な関係にある目標管理制度について概観する。

高い 低い

高い

効果性の高い従業員

低い

?効果性の低い

従業員

行動の企業文化への合致度

達成成果

図 1 効果性の区分(Beer et al. 1984=1990: 139)

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久保田 康司166

んど勘案できない。③ほとんどの職務記述書は、社員がやるべき業務を限定する。④業務を検証する際の関心事が部下へのカウンセリングにあるとすれば、業績評価では上司と部下が一緒になって、業務プロセス全体を考慮し、これを考察すべきである。⑤目標を設定したり進歩させたりできない。なぜなら、そのための時間が短すぎるばかりか、組織の様々なレベルにまたがるような交流が図られていないからである。 三輪(2003)はMBOの問題点を、①全般管理システムとしてではなく、人事管理、とりわけ人事考課の道具としてのみ捉えられがちである。②目標の設定と評価のみに注意が払われ、途中での上司と部下とのコミュニケーションや協力が軽視されがちである。③画一的な手法が全社の労働者に適用されており、職種間や階層間での職務の特質が考慮されていないと述べている。 また太田(2008)は人事考課に内在する問題点として、人事考課が個人の能力や業績をどれだけ正しく評価できているか、相対評価による制度そのものの限界、数字で評価することの限界などをあげている。 このように成果主義の流れの中で目標管理制度が広がってきたわけであるが、様々な問題も指摘されてきた。その中のひとつに目標に対する結果を上司がいかに部下に伝えるかが注目されるようになった。それが評価結果のフィードバックである。

4. 評価結果のフィードバックとパフォーマンス・マネジメント

4. 1 フィードバックとは何か

 人事評価制度が内包する問題点や限界を克服するために、多くの企業では様々な取り組みをしている。例えば、評価の透明性を高めるために評価基準を公開することや、評価結果を部下にフィードバックする取り組みなどがなされている(太田 2008)。 中原(2017)はフィードバックとは以下のような部下に対する 2つの働きかけであると述べている。①情報通知:たとえ耳の痛いことであっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果を正しく通知すること(現状を把握し、向き

 目標管理制度では目標設定が重要になってくるが、McConkie(1979: 32)は既存の研究をレビューし、それまでの研究者が述べていることを以下の 9点に整理した。①ゴールや目標が明確でなければならない。②ゴールや目標に対する結果が明らかに測定できなければならない。③個人のゴールは組織全体のゴールにつながっていなければならない。④目標は定期的に見直されなければならない。⑤ゴールが達成されるまでの期間が明確にされていなければならない。⑥結果の指標はできる限り定量化ができるか、さもなければ少なくとも検証できるものでなければならない。⑦条件が保障される限り、目標は柔軟で変更可能でなければならない。⑧目標は結果を達成するまでの行動計画が含まれていなければならない。⑨目標は重要度によって優先順位が割り当てられていなければならない。 奥野(2004)はMcConkieの議論を発展させ、①全社目標から個人目標までの目標の連鎖体系が成り立っている。あるいは意識されていること。②上司と部下が話し合い、双方が合意する目標を設定すること。③目標は明確であり、時限的であり、目標管理シートなどに記述されること。④上司は部下の援助者、相談者である。特に、目標の実行期間中には上司は部下を放任するのではなく支援すること。⑤一定の期間ごとに上司と部下の面談を行い、その期の目標の達成度を評価することの 5点に整理している。 以上からわかるように、目標は上司からの押し付けではなく、部下と協議しお互いが合意できることが重要であるといえる。

3. 2 目標管理の緒問題

 前項で概観したように、成果主義の浸透により目標管理制度が普及することになったが、様々な問題点も指摘されるようになった。Levinson(1970=2005: 74-6)は、MBO がうまく機能していない根本的な理由は「相手は人間である」という視点が全く欠けているからであるとしたうえで、次のような問題を指摘している。①いかに詳細に職務を規定しても、概してスタティックなものばかりであり、結局のところ項目の羅列でしかない。②あらかじめ設定しておいた目標や職務内容では、そこには記されていない、個人の裁量に委ねられる領域をほと

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評価者面談が被評価者の動機づけにもたらす効果の研究 167

言葉で説明がなされており、人事評価からパラダイムシフトと呼べるほどの大きな転換点といわれている(Latham and Mann 2006)。パフォーマンス・マネジメントは人材の評価や開発に連動したマネジメントツールとして英語圏の諸国で普及しており(須田 2005)、日本でも外資系企業や大企業を中心に注目されている。 パフォーマンス・マネジメントにおける上司の役割は、上長として部下の仕事ぶりや能力を評価する役割から、評価データをベースにしたコーチングによって人材を育成する役割へと移行し、評価のあり方も定期的で 1回性の色彩が強かった制度的実施形態から、系時的で継続的なマネジメント施策へと変化してきている(高橋 2010)。ところが現時点ではパフォーマンス・マネジメントがコンセプトとして明確に確立されているわけではなく、明確な概念規定を欠くがゆえに混沌としたものとなっている(福井 2012)。特にアメリカではパフォーマンス・マネジメントの革新が起こっており、社員の評価をやめて業績を最大化するための上司によるコミュニケーションの強化をするパフォーマンス・デベロップメントという概念も出てきている(松岡 2016; 入倉 2016)。 本論文はパフォーマンス・マネジメントの概念規定を探求するものではなく、パフォーマンス・マネジメントでも言及される人事評価と被評価者の動機づけに焦点を当てて考察するものである。そこで本論文のパフォーマンス・マネジメントの定義は前述の高橋(2010)が述べているとおり、「個人成果の向上を目的として、職務上のパフォーマンスについての評価データをフィードバックするとともに、データ解釈と目標設定のプロセスで、積極的にコーチングの技法を活用すること」とする。 パフォーマンス・マネジメントの中核をなす要素は、コーチングと評価情報のフィードバックだといえる(高橋 2010)が、評価情報のフィードバックとコーチングの組み合わせについて、Luthans and Peterson(2003)はフィードバックとコーチングを効果的に組み合わせることによって、自己認識や個人業績を向上できるだけでなく、それ以外にも職務満足と組織コミットメントを高め、転職意思を低め、組織全体の成果を向上させることができると述べている。また、古川(2011,2013)は評価面談の機

合うことの支援)。②立て直し:部下が自己のパフォーマンス等を認識し、自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画をたてる支援を行うこと(振返りと、アクションプランづくりの支援)。 また、フィードバックには職場の複数のメンバーから主にマネジャークラスに対して行う 360度フィードバックがある。Chappelow(1998=2011: 32)は、360度フィードバックとは、広範囲な仕事仲間からマネジャーのパフォーマンスについての意見を組織的に収集する方法のことであると定義している。そして、意見を収集する対象者としては、同僚、直属の部下、上司、上司の同僚、さらに顧客、サプライヤー、ときには家族の一員など組織の外の人が含まれる場合もあり、広範に情報を収集することによって、フィードバックを受ける者は自己認知よりも広い視野の認知が得られ、より正確な自画像をつかめるようになると述べている。 以上のようにフィードバックには主に上司などの特定の個人により行う 1対 1のフィードバックと、複数の関係者から意見を収集する360度フィードバックの 2つがある。いずれもフィードバックを受ける対象者が自分だけでは知ることができない情報を、第 3者によって客観的な事実にもとづいて提供することがフィードバックだといえる。 人事評価に関する既存研究では評価者によるフィードバックの研究の実績が多く蓄積されている。Kluger and DeNisi (1996) はフィードバックに関する膨大な数の先行研究をレビューした。彼らは既存研究をメタ分析してフィードバックの効果を明らかにする試みを行った。その結果、フィードバックによりパフォーマンスは改善するものの、3分の 1のケースでフィードバックはパフォーマンスを低下させていると述べている。

4. 2  パフォーマンス・マネジメントとは何か

 人事評価は何のために行うかというと、従来は部下の業績や職務行動を評価して処遇に反映させるという人事管理的目的をもっていたが、近年では業績向上を基軸にして人材の能力開発や行動の変革をもたらす人材育成目的を持つものへと変わってきている(Fletcher 2001)。この流れはパフォーマンス・マネジメントという

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久保田 康司168

くものであり、自己指向的学習を育て、実証的で倫理的・専門的な実践を組み込むものである。クライアントは心的健康に重大な問題がないことが前提であり、機知に富み、自ら解決を見つけることに進んでかかわるのである。

5. 2 コーチングの分類

 コーチングには様々な種類が存在する。松尾(2015)はコーチング研究には、エグゼクティブ・コーチング(executive coaching)と管理者コーチング(managerial coaching)があると述べている。エグゼクティブ・コーチングは仕事の有効性を高めるために、外部コーチが上級マネジャーを支援することを指し、管理者コーチングは職場において上司が部下の職務遂行をサポートする活動である。 また、Beattie et al.(2014)は、管理者コーチングには階層制コーチング(hierarchical coaching)、同僚によるコーチング(peer coaching)、チーム・コーチング(team coaching)、組織横断コーチング(cross-organizational coaching)があると述べている。階層制コーチングは主にラインマネジャーが直属の部下に対して行うコーチングであり、管理者コーチングの中でももっとも一般的で、幅広く研究されている。同僚によるコーチングは、従業員同士が特定の仕事についてお互いに学び合うことができるよう、実用的な支援を行うものである。チーム・コーチングはスポーツの世界のコーチングと似ている職場でのコーチングである。チーム・コーチングでは、ゴールやターゲットがチームメンバーを巻込んで検討され、メンバーに同意されなければならず、チームメンバーはお互いを補完するためにベストの役割を果たすことが求められる。マネジャーは定期的にフィードバックを行い、チームメンバー間の複雑な関係性を管理しなければならないのである。組織横断コーチングは最近新しく開発されたものであり、2つ以上の組織間の協働によって行われる。全く異なった組織から選抜された者同士がお互いにコーチとなるものである。なお、本論文で扱うコーチングは管理者コーチングの中の階層制コーチングを指すものとするが、記載については引用する文献に準じた表現とし、それ以外はコーチングに統一する。

会を通じて評価結果が被評価者に提示(フィードバック)されることは、事実に基づいた管理職と部下との間の双方向コミュニケーションであり、それを手段とする管理職のコーチングにより、意欲と学習が同時に促進される可能性が高くなると述べている。 これらのようにパフォーマンス・マネジメントではフィードバックとコーチングが最適な組み合わせだといわれているが、なぜ評価者面談にコーチングを取り入れることによって被評価者の満足度ややる気が上がるのだろうか。そこで、次章ではコーチングに関する既存研究を概観する。

5.コーチング

5. 1 コーチングとは何か

 コーチングは管理者にとって必須のスキルだといわれており、多くの企業で取り入れられている。Likert(1967)は集団管理法における監督者の手法としてコーチングに言及している。それは、コーチング・システムに乗り出した企業の営業所の集団会合における、監督者の集団の司会者としての行動に関するものである。集団の様々な問題や課題に対する対策や目標設定を監督者(司会者)は自ら行うのではなく、あくまでも援助的、建設的、問題解決的基盤にたって集団の方向づけを行うものである。監督者(司会者)は支持的な態度を示すが、けっして、集団の自己を委縮させるような態度は取らず、集団が潜在能力を十分自覚するのを援助するような高い業績目標を設定するよう集団を励ますのである(Likert 1967=1968: 64-5)。 コーチングを日本に普及させた株式会社コーチ・エイの伊藤(2010)はコーチングとは対話を重ねることを通して、クライアント(コーチングを受ける対象者)が目標達成に必要なスキル、知識、考え方を備え、行動することを支援し、成果を出させるプロセスと定義している。Grant(2008=2011: 29)は、コーチングは結果に焦点をあてて、目標設定やブレーンストーミング、活動計画を通して自己指向的な学習を育てることを目指す活動であると述べている。つまり、コーチングは協力的で人ごとにあつらえられており、解決に焦点をあて、体系立てられて広がってい

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評価者面談が被評価者の動機づけにもたらす効果の研究 169

コーチングを取り入れることでなぜ部下は動機づけられるのだろうか。特にパフォーマンス・マネジメントではコーチングが重要であるといわれているが、その理論的根拠は明らかにされていない。コーチングは上司が部下に対して強制的に目標設定や指示命令をするわけではなく、部下に質問を投げかけて考えさせることが基本にある。部下からすると上司からの強制ではなく、自ら考えることで主体的に動くことができるのである。それは自律と他律という考え方や、それらの理論を含む内発的動機づけと外発的動機づけで説明ができるかもしれない。次章では、その内発的動機づけと外発的動機づけについての既存研究を概観する。

6.内発的動機づけと外発的動機づけ

6. 1  内発的動機づけ・外発的動機づけとは何か

 内発的動機づけと外発的動機づけは教育心理学の分野でよく取り上げられている。Murray(1964=1966: 106)は外発的(extrinsic)動機づけと内発的(intrinsic)動機づけの区別として次のように述べている。報酬は活動に対して外発的であり、活動と報酬の間になんら生来的な結合はなく、活動は報酬を得るために遂行される。しかしながら、探索や遊びその他の活動もまた報酬になることがある。つまり、そのような行動はそれ自身のために、何か生来的な快または満足のためになされるかもしれない。感性、好奇、活動、操作、認知のような動機は他の動機と関連がないように見えるし、より単純な他の動機を基礎として学習されたものではなく、内発的に動機づけられている行動に関与している。このような動機が内発的動機である。 Deci(1980=1985: 40)は外発的動機づけと内発的動機づけを次のように定義している。外発的動機づけとは、人びとがある活動を遂行することに対して金銭、賞賛、罰の回避などの報酬を受け取ることに動機づけられている場合である。内発的動機づけとは明白な外的報酬が全く存在せず、当該活動そのものに動機づけられている場合である。 Kohn(1993=2001: 404)は内発的動機づけを

5. 3 コーチングの効果とアセスメント

 コーチングの効果については多くの研究が行われてきた。例えば、Kim(2014)は韓国の企業に勤める従業員 234名のデータを用いて調査を行った結果、コーチングは従業員の役割を明確にすること、仕事への満足、組織コミットメント、仕事の成果に効果があると述べている。さらに Kim et al.(2014)はアメリカ行政団体に勤める 534名と韓国の行政団体に勤める 270名の職員のデータを用いて調査を行った結果、コーチングは職員の役割を明確にすること、仕事への満足、仕事の成果に効果があると述べている。 松尾(2015)は管理者コーチングに関する実証研究をレビューし、その効果について 4点でまとめている。第 1に管理者コーチングは、部下の職務満足、スキル、サービス品質へのコミットメント、業績を高める。第 2に管理者コーチングが部下の業績に好影響を及ぼすには特定の条件が必要であるとして、部下が受ける毎月のコーチングの程度が、部下の業績改善にポジティブな影響を与える。第 3に管理者コーチングは部下個人だけでなくチーム活動にも影響する。第 4に「人間の能力が発展可能である」という考えを持っているマネジャーの方が、「人間の能力は変わらない」という考えを持っているマネジャーよりも、部下に対してコーチング活動を実施する傾向が見られる。 コーチングの行動を評価するアセスメントツールについては、前述の Kim(2014)が引用している Ellinger et al.(2011)のコーチング行動測定の 5つの質問項目や、日本におけるコーチングの専門機関であり最大手の株式会社コーチ・エイが提供する Accelerate your Coaching Effectiveness(以下、Ayce)など様々なものがある。Ayceは世界中のコーチが利用するコーチング評価のためのウェブシステムで、国際コーチ連盟(ICF)のコア・コンピテンシーに則した厳選された設問「話を聞く」「質問する」など、コーチとして重要なスキルを 2,000件以上のコーチングデータを用いて分類し、ICFのコア・コンピテンシーに基づいて重要項目を抽出したものである。Ayceに採用された設問はコーチに必要な関わりを網羅しており、定量的に評価することが可能であるとされている(URL 1)。 本章ではコーチングについて概観したが、

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久保田 康司170

欲」、同じく外発的動機は「手段的な学ぶ意欲」と言い換えることができる。 後者の「自律―他律」という観点によると、学習に自律的すなわち自由意思によって取り組む場合が内発的動機づけであり、学習に他律的すなわち主に他者からのプレッシャーによって仕方なく取り組む場合が外発的動機づけである。このような「自律―他律」という観点によって規定される内発的動機は「自律的な学ぶ意欲」、同じく外発的動機は「他律的な学ぶ意欲」と言い換えることができる。 櫻井(2009)は「目的―手段」の観点と「自律―他律」の観点を X軸と Y軸とし、図 2の左のように 4つの象限に分けてそれぞれに位置する動機のあり方を検討している。また、速水(1998)も図 2右のように 4つの象限に分けてそれぞれに位置する動機のあり方を検討している 1。図 2右の「統合的動機づけ」、「同一化的動機づけ」、「取り入れ的動機づけ」、「外的動機づけ」についての詳細は後述する。 図 2左の第 1象限の目的的で自律的というのは「典型的な内発的動機」に相当し、図 2右で表現されるように「完全なる内発的動機づけ」といえる。逆に図 2左の第 3象限の手段的で他律的というのは「典型的な外発的動機」で、図2右で表現されるように「完全なる外発的動機づ

ある活動をそれ自体のために ― つまり、それが与えてくれる満足のために ― したいという欲求のことであり、外発的動機づけをある活動をすれば何か他の利益が得られるので、それを求めてその活動をすることであると定義している。 これらの定義からわかるように、活動そのもの自体が目的であることが内発的動機づけであり、活動することによって何か他のものが得られることを目的としているのが外発的動機づけであるといえる。

6. 2 内発的動機と外発的動機の分類

 内発的動機づけと外発的動機づけ研究は、国内では教育心理学の分野で知見が多い。櫻井(2009)は学ぶ意欲と動機づけについて、内発的動機づけと外発的動機づけという概念を下記の表 1のように「目的―手段」と「自律―他律」という 2つの観点でとらえることができると説明している。 前者の「目的―手段」という観点によると、学習することが目的である場合が内発的動機であり、学習することが手段である場合が外発的動機である。この考えは前項の定義と同義である。このような「目的―手段」という観点によって規定される内発的動機は「目的的な学ぶ意

分類の観点動機

内発的動機 外発的動機

目的―手段(目標性)

学習が目的 学習は手段

目的的な学ぶ意欲 手段的な学ぶ意欲

例:面白いから学ぶ 例:ご褒美が欲しいから学ぶ  憧れの大学に入りたいから学ぶ

自律―他律(自発性)

自律的な取り組み 他律的な取り組み

自律的な学ぶ意欲(自ら学ぶ意欲)

他律的な学ぶ意欲(統制的な学ぶ意欲)

例:自ら進んで学ぶ 例: 教師がやりなさいと言うので仕方なく学ぶ

表 1 内発的動機と外発的動機の分類(櫻井 2009)

1 速水の図は目的と手段の位置が櫻井のものと左右逆のため、比較して見やすいよう筆者にて加筆修正し軸を統一した。なお、

目的

他律

自律

手段 目的

他律

自律

手段

手段的な

学ぶ意欲

自律的な学ぶ意欲

(自ら学ぶ意欲)

典型的な内発的動機

(内発的な学ぶ意欲)

社会化された

外発的動機

典型的な外

発的動機

(外発的な

学ぶ意欲)

完全なる

内発的

動機づけ

完全なる

外発的動機づけ表層的なおもしろ

さを与えることから

くる疑似内発的動

機づけ

同一化的

動機づけ

取り入れ的

動機づけ

統合的

動機づけ

外的動機づけで表現した円と四角形は速水の図には記載がないが、解説の中で用いられているため、筆者にて該当すると思われる箇所を検討し、図中に表現したものである。

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評価者面談が被評価者の動機づけにもたらす効果の研究 171

る。次章ではこの自律的に働く意欲を説明するための理論として自己決定理論について概観する。

7.自己決定理論

7. 1 自己決定理論とは何か

 目標管理制度では部下の目標設定は上司がするものではなく、部下自らが考えて設定し、上司との対話によりお互いが納得することが重要であるとされてきた。具体的には、評価者面談では期初の面談で上司と部下が対話をしながら年度目標を設定するのが特徴であり、上司から目標を一方的に押し付けるものではない。Deci and Flaste(1995=1999: 212)は職場とそのメンバーにとって、最適な目標を設定するもっとも良い方法は、彼らを目標設定の過程にかかわらせることである。自律性を支援し、目標の設定に積極的な役割を果たさせることで、仕事や課題に専念できる最適な目標が得られると述べている。 この考えは自己決定理論(self-determination theory)として説明がなされている。Deci(1980=1985: 33-4)は「意志」2を定義したうえ

け」といえる。図 2左の第 2象限の手段的で自律的というのは、手段的であることを重視すれば外発的動機(外発的な学ぶ意欲)であるが、自律的であることを重視すれば内発的動機づけになり、櫻井(2009)が「どっちつかずの動機」と述べているように、そのとらえ方や表現に混乱が見られる。第 4象限の目的的で他律的というのは櫻井と速水ではとらえ方は異なるが、本論文の主旨からは重要な論点ではないと考えられる。 櫻井らの議論を仕事に置き換えて考えてみると、「目的―手段」という観点では仕事そのものが目的というのはあまり現実的ではない。仕事そのものが楽しく没頭することもあるが、仕事をした結果、報酬としての給与がなければ生活をすることができないため、現実的には仕事をするのは外的報酬が全くない状態の内発的に動機づけられているとは言いがたい。「自律―他律」という観点では、上司の指示で働く他律ではなく、自らの自由意思で働く自律という考え方は現実的にあり得るものである。そのため自律的に働く意欲があるという意味で、内発的に動機づけられていると考えることができる。Deci(1980=1985: 33-4)は内発的動機づけについてのひとつの側面は、自己決定的であろうとする欲求であると述べてい

目的

他律

自律

手段 目的

他律

自律

手段

手段的な

学ぶ意欲

自律的な学ぶ意欲

(自ら学ぶ意欲)

典型的な内発的動機

(内発的な学ぶ意欲)

社会化された

外発的動機

典型的な外

発的動機

(外発的な

学ぶ意欲)

完全なる

内発的

動機づけ

完全なる

外発的動機づけ表層的なおもしろ

さを与えることから

くる疑似内発的動

機づけ

同一化的

動機づけ

取り入れ的

動機づけ

統合的

動機づけ

外的動機づけ

(櫻井 2009;速水 1998をもとに筆者が作成)図 2 自律と他律をクロスしたときの内発的―外発的動機の分類

2 本論文で使う「意志」と「意思」の違いであるが、一般的に強い気持ちがある場合を意志、自分の考えを表す場合を意思と表現することが多いが、Deciの文献では訳者によって異なるため、それぞれの文献に従うものとする。

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久保田 康司172

7. 2 有機的統合理論

 内発的動機づけと外発的動機づけは、内発と外発というように 2項対立的に議論されることが多かった。自己決定理論では、その 2つを自己決定性という視点で 1次元上での両極としてとらえ、外発的動機づけは連続性を持つものとして 4つに分類している。それが自己決定理論の中の第 2のサブ理論である有機的統合理論である。Ryan and Deci(2000)は図 3のように人の動機づけを無動機づけから、外発的動機づけ、内発的動機づけへと連続的に捉えており、外発的動機づけを 4つに分類して有機的統合理論を説明している。4つの分類とは外的調整、取り入れ的調整、同一化的調整、統合的調整である。 外的調整とは外的な報酬や罰など、外部からの統制に従う段階である。取り入れ的調整は自身や他人からの求め、罪悪感や心配などを避けるためにプレッシャーを感じて外部からの統制に従う段階である。同一化的調整は行動に価値を認めており、また目標を個人的に認めている段階である。統合的調整は自身の価値観と行動や活動を行う価値観が一致している状態である。 本章では自己決定することの大切さを自己決定理論や有機的統合理論という考えに基づいて検討した。次章では Deciの主張の 1つである自律性支援について既存研究を概観する。

で「自己決定」の定義づけを行った。まず意志については次のように定義をしている。「意志とは、自らの欲求をどのように充足すべきかを選択することのできる、人間の力量である」。次に自己決定について次のように定義している。「自己決定は自己の意志を活用する過程である」。また Deci and Ryan(2002)は個人の自己決定、つまり自律性の程度によって個人のパフォーマンスが左右されるとする理論であるとも述べている。 評価者面談でフィードバックとコーチングの組み合わせが機能する理論的な根拠として、この自己決定理論によって説明ができるのではないかと考えた。なぜならば、目標を決める上司と部下の面談の場でコーチングを活用することは、目標を上司が押し付けるのではなく、上司が質問によるコミュニケーションをすることで、部下からやりたいとことや目標を引き出し、様々な選択肢の中から部下が自ら選んで目標を設定し、それを上司が期待する目標とすり合わせながら決めていくものだからである。このことから上司のコーチングによって、部下のパフォーマンスや動機づけが変わると考えられる。

調整スタイル

無動機づけ

内発的動機づけ

外的調整取り入れ的調整

同一化的調整

統合的調整

関連するプロセス

有能感の欠如

外的な報酬や罰

自我関与行動に価値を認めている

目標の統合

興味楽しさ

関連性の欠如

従順自身や他人からの承認

目標を個人的に認めている

一致固有の満足

非意図的 誘導

認められた因果関係の位置

非自己的 外的 外的寄り 内的寄り 内的 内的

外発的動機づけ

図 3 人の動機づけの分類(Ryan and Deci 2000)

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評価者面談が被評価者の動機づけにもたらす効果の研究 173

8. 2 自律性支援とは何か

 前項で定義した自律であるが、自律性支援(サポート)とは何をすることなのか。Deci and Flaste(1995=1999: 137)は、自律性の支援とは、他者―子どもや生徒や従業員―を自分自身の満足のために操作すべき対象と見るのではなく、支援する価値のある人間として認めながら、能動的にかかわっていくことであり、彼らの立場に立ち、彼らの視点から世界を見ることであると述べている。 Reeve(2009: 159)は自律性支援を「教師が生徒への指導中に、内面的な動機づけの源泉を明らかにし、それを育み、発展させるような対人的な感情や行動」と定義し、それと対をなす概念としてコントールを「教師が生徒への指導中に、特定の方法に従うように考えさせ、感じさせ、振る舞わせるように生徒にプレッシャーを与えるような対人的な感情や行動」と定義している。 鹿毛(2013)は Deci and Flaste(1995)の定義に加え、自律性支援とはその人らしいユニークな学習や成長の方向性を認め、それを支え

8.自律性支援

8. 1 自立と自律の違い

 本論文におけるキーワードは自律性支援である。よく「自立」と「自律」という言葉が混同されて使われるが、まずその違いについて見ておきたい 3。片岡(2004)は「自立」と「自律」の違いについて次のように述べている。自立はdependence(依存、従属)に対する用語としてindependence(独立、自活)ないし self-help(自助)を意味し、他の援助や支配から離れて独り立ちすることを意味する。自律は heteronomy(他律)に対する用語として autonomy(自治)を意味し、外部の支配から離れて自らの規範で意思決定して行動することを意味する。ただし現実にはこの両者はかなりの場合に重なっており、論者間でも意識的に区別して使い分けるケースは少ない。本論文では Deci and Flaste(1995=1999: 3)に従い autonomyの自律とする。

自律性支援 コントロール定義他者の内面的な動機づけ資源(motivational resourse)を認め、促し、発達させようとする対人的な心情や行動

定義所定の考え方、感じ方、振る舞い方に従わせる方向で他者に対してプレッシャーを与えようとする対人的な心情や行動

現実化する条件・他者の立場に立つ・個人的な成長の機会に価値を置く

現実化する条件・他者に対して特定の成果に向けてプレッシャーを与える・特定の成果を重点目標として位置付ける

教育的な行動・内面的な動機づけ資源を育む・柔軟な言葉を駆使する・合理的理由をわかりやすく伝える・ネガティブ感情の表出を認め、受け入れる

教育的な行動・外的な動機づけ要因を駆使する・プレッシャーを与えるような言葉を駆使する・合理的理由の説明を軽視する・ネガティブ感情を抑えて葛藤を解決する力を要求する

動機づけスタイルが「自律性支援」の人の発言や行為・傾聴する・他者が語る時間を許容する・合理的理由を伝える・努力することを励ます・進歩や熟達をほめる・当人が何を望んでいるのかを尋ねる・質問に応答する・他者の立場を認める

動機づけスタイルが「コントロール」の人の発言や行為・教材を占有する・正答を説明する・正答を伝える・指示や命令を与える・ 「すべきだ」(should)、「しなければならない」(must :

have to)といった言葉遣いをする・相手をコントロールするような質問をする・相手に多くのことを要求するように見える

表 2 動機づけスタイル:自律性支援とコントロールの比較(鹿毛 2013)

3 広辞苑第 7版(新村編 2018)によると自立は「他の援助や支配を受けず、自分の力で判断したり身を立てたりすること。ひとりだち」、自律は「自分の行為を主体的に規制すること。外部からの支配や制御から脱して、自身の立てた規範に従って行動すること」と定義している。このように自立と自律は語源的に見れば少し意味が異なる。

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久保田 康司174

司の指示によって働くという他律的なものではなく、自らの自由意思で自律的に働く意欲があるという意味でより内発的に動機づけられていると考えられる。日本ではコーチングに関する研究の蓄積はスポーツ科学や心理学の分野に多いものの、経営学の分野では研究の蓄積が十分だとはいえない。 また、内発的動機付けと外発的動機づけに関する研究は教育心理学の分野に多いが、経営学の分野では十分な蓄積があるとはいえない。藤田(2004)は、内発的動機づけの理論は概念が難しく、どうしても曖昧さがつきまとってしまうため、企業の現場にどのように応用すればいいのか、現実に起こっている問題とどのように整合性を保てばいいのかという点で多くのハードルが残されていると指摘している。 今後の研究課題として、評価者面談を実施している企業において評価者である上司はどのような面談をすれば部下の動機づけにつながるか、具体的には上司のコーチングの程度と自律性支援の程度によって、部下の動機づけにどのような影響を与えるかを検証するための量的および質的な研究が求められる。 これらの研究課題に対し、以下の仮説を提示する。 「評価者面談において、部下に対しコーチングを行い、部下の自律性を支援する上司ほど、コーチングを行わず、自律性を支援しない上司に比べてより部下の動機づけをすることができる」。 この仮説に対する実証研究を進めることで、人的資源管理論での理論的な貢献が可能であると思われる。 最後に本論文に残された課題を指摘する。本論文のテーマには関連する領域が広いが、ここで述べている先行研究の領域だけでは不十分である。今後は期待理論やパス・ゴール理論など、さらに関連する領域の先行研究もレビューし、より多角的に考察を行うことが必要である。また本論文は先行研究のレビューを通して考察を行い、仮説を導出することを目的にしているため、具体的なリサーチデザインが述べられていない。今後、具体的なリサーチデザインを立て、実証研究を進めなければならない。

るように他者と関わるスタンスを指すとし、Reeve(2009)の自律性支援とコントロールの定義を発展させて、表 2のように自律性支援とコントロールを比較した。 自律性支援を概観するとコーチングの考え方と親和性が高いといえそうである。特に自律性を支援する人の発言や行為はコーチのクライエントに対する発言や行為に近いと思われる。  本章では自律性支援について既存研究を概観した。自律性支援とコントロールを対比すると自律性支援が望ましいといえる。この自律性支援は評価者面談における上司の部下に対する行動や態度にも当てはめることができる。つまり目標は上司から押し付けられ、強制的にその目標達成のために働かせるのがコントロールであり、部下の立場に立ち部下に自由を与えて自己決定をさせるための支援を行うことが自律性支援だということができる。

9.おわりに

 本論文では評価者面談と被評価者の動機づけとの関係について取り上げ、評価者である上司がどのような面談を行うことで部下の動機づけができるのか、特に上司によるコーチングと自律性支援に着目し、部下の動機づけに対する効果について先行研究のレビューを通して考察した。本章ではこれまでの先行研究のレビューをもとに仮説を提示する。 本論文で述べてきたとおり、人事評価制度や目標管理制度は多くの企業で導入され、長年にわたって運用がなされているが、うまくいっているとは言いがたい。評価者面談で上司によるフィードバックを通じて部下の動機づけを行い、人材育成に活かすという考え方はパフォーマンス・マネジメントとして関心が高まっているが、日本では外資系企業や大企業が中心にパフォーマンス・マネジメントをどのように取り入れていくのかを模索しており、まさしく混沌とした状況になっている。人的資源管理論において、パフォーマンス・マネジメントに関する研究蓄積はまだ十分とはいえない。 評価者面談では上司によるコーチングが重要なコミュニケーション手段として注目されているが、コーチングによる部下の動機づけは、上

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評価者面談が被評価者の動機づけにもたらす効果の研究 175

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久保田 康司176

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【参考 URL】

1. コーチング研究所 LLP(2017)「調査ツール Accelerate your Coaching Effectiveness(Ayce)」株式会社コーチ・エイホームページ(2017年 8月 6日閲覧、https://cri.coacha.com/services/ayce/)。