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学部 4 年 卒業論文・卒業設計 1 2 3 4 5 6 Music Eurythmy 7 Art Art 8 9 10 11 12 背景 ウォルドルフ教育は,教育に意識の高い人々には一定の知名度を得ていますが,一般的には十 分に認知されているとは言いがたい教育法です.オーストリアの人智学者,哲学者,彫刻家,神 秘家,そして建築家であるルドルフ・シュタイナーが創設し,現在も最高級のホテルとして有名 Waldorf Astoria のタバコ工場部門の共同経営者がその思想に賛同したことではじまりました. 卒業論文においてシュタイナーの建築作品がウォルドルフ教育の教材で用いられる様々な工芸 品,例えばおもちゃのディテールに及ぼしている影響に関して,その根元となる人智学からはじ まる考察を展開しました.全文がアップロードされています (http://issuu.com/minorumatsui/docs/ steiner-and-manufacturers) ので御覧ください.卒業設計の簡単な記録についてはこちら (http://issuu. com/minorumatsui/docs/diplomawaldorf ) を御覧ください. 一方,慶應義塾は横浜市青葉区に小中一貫校を慶應義塾創立 150 年記念事業のひとつとして新 設する計画でしたが,財政状況から小学校のみの開設としました. コンセプト 本設計は当初小中学校であった計画が小学校に縮小し,単純計算で生徒数が 6/9 になったこの計 画に対して,小学校新設予定敷地からかなり遠い場所に孤立しているグラウンドを有効活用でき ないかというところからスタートします.私の提案は以下のようなものです:たとえば,この小 さな土地に,同じくらい小さな,1学年30人程度の,小中高一貫のウォルドルフ学校を創立し てはどうか. 小学校新設予定地 東急田園都市線 江田駅 グラウンド予定地 SAMSUNG Global Design Project 2011 Chiba University MATSUI Minoru

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Portfolio June

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Page 1: A4 Portfolio

学部 4年 卒業論文・卒業設計

1

2

3

4

5 6

Music

Eurythmy

7

Art

Art8

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10

11

12

背景

 ウォルドルフ教育は,教育に意識の高い人々には一定の知名度を得ていますが,一般的には十

分に認知されているとは言いがたい教育法です.オーストリアの人智学者,哲学者,彫刻家,神

秘家,そして建築家であるルドルフ・シュタイナーが創設し,現在も最高級のホテルとして有名

なWaldorf Astoriaのタバコ工場部門の共同経営者がその思想に賛同したことではじまりました.

 卒業論文においてシュタイナーの建築作品がウォルドルフ教育の教材で用いられる様々な工芸

品,例えばおもちゃのディテールに及ぼしている影響に関して,その根元となる人智学からはじ

まる考察を展開しました.全文がアップロードされています (http://issuu.com/minorumatsui/docs/

steiner-and-manufacturers)ので御覧ください.卒業設計の簡単な記録についてはこちら (http://issuu.

com/minorumatsui/docs/diplomawaldorf )を御覧ください.

 一方,慶應義塾は横浜市青葉区に小中一貫校を慶應義塾創立 150年記念事業のひとつとして新

設する計画でしたが,財政状況から小学校のみの開設としました.

コンセプト

本設計は当初小中学校であった計画が小学校に縮小し,単純計算で生徒数が 6/9になったこの計

画に対して,小学校新設予定敷地からかなり遠い場所に孤立しているグラウンドを有効活用でき

ないかというところからスタートします.私の提案は以下のようなものです:たとえば,この小

さな土地に,同じくらい小さな,1学年30人程度の,小中高一貫のウォルドルフ学校を創立し

てはどうか.

小学校新設予定地

東急田園都市線 江田駅

グラウンド予定地

SAMSUNG Global Design Project 2011 Chiba University MATSUI Minoru

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outdoor roof

indoor roof

beam

bookshelf

2FPublic circulationLibrary

1FSchool classrooms

site

Design Methods

Design Principles

Anthroposophy

General Principles

ストラテジー 学年 1クラスではあまりに小さいと思われるかもしれませんが,ウォルドルフ学校では標準的な規模です.学年が進むに連れて少しずつ教室の形が変わるというポピュラーな手法,それぞれの学年にあったゲーテ的な色彩計画など基本的なデザインガイドライン (もちろん強制ではありません )にのっとりつつ,日本的な空間感覚を採り入れています.

CIのコンテクストから:複製技術時代の建築 右にシュタイナーの哲学的思想から個々のデザイン手法にいたるまでのダイアグラムを示しました. 卒業論文の結論のひとつとして彼の思想が理想的な CI(Corporate Identity)として働いている,というものがあります.彼の思想に賛同する者が彼の芸術に賛同し,結果的に彼の賛同者は同じアイデンティティを異なる道筋で達成していたからです. 彼の思想とデザイン手法に基づいて卒業設計をした私もまた賛同者のひとりであり,彼の壮大な CIの枝葉のうちの一本です.ベンヤミンの投げかけた複製技術時代の芸術の姿は,もしかしたら彼にあるのかもしれないと考えました.卒業制作当時の題名:xerrox copyはまたそこから来ています.現代最も創造的になりうる可能性を秘めているパソコンの原型をつくりあげたのがコピー機会社の Xerox Inc.であったことがとても感慨深く,また同名のアルバムをリリースした alva notoの理念が非常に参考になったからです.

造形 フォルムは有機的建築を強く意識しました.ここでいう有機的建築とは決して自由曲面の多用ではありません. シュタイナーの重要な建築理念に建築が人間になる,というものがあります.建築を有機体として捉えること.ものを吸込み,ものを吐き出すこと.共有すること.異物を拒むこと.成長すること.修正すること.間違えること.影響を受け,影響をあたえること.考えること...無数の生命活動を統合的に表現しました.

制作風景

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参考:使用した,または使用可能なソフトウェア一覧

Softwarekenntnisse(In order of proficiency): McNeel Rhinoceros®/Rhino® OSX | Autodesk AutoCAD® /3ds MAX® /Sketchbook Express® | mental images Mental Ray® |

| Nemetschek VectorWorks®/RenderWorks® | Adobe InDesign® /Illustrator®/Photoshop®/Dreamweaver® |

| Microsoft Word®/Excel®/Powerpoint® | Apple Xcode®/GarageBand®/Keynote®/Pages®/Numbers® | ESRI ArcGIS® | Chaos Group VRay® | Maxon Cinema4D® | Luxion KeyShot® |

| Ableton Live® | Wolfram Mathematica® | MSC Marc MENTAT | MathWorks MATLAB® | Siemens PLM SolidEdge® | Microsoft Visual C++® | Turbolinux Turbolinux® |

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Strata学部 4年春学期スタジオ課題

1st Phase “HyperStrata: Urban Ventilator”

2nd Phase “Strata: Termites’ nest”

3rd Phase “Strata: Emerging City”

4th Phase “Strata: Voxelated Slum”

横浜市武蔵小杉地区の旧い工場敷地にコンプレックスを計画する課題です.武蔵小杉に代表される東急東横線沿線は同じような駅の周りに同じようなコンディションが拡がる,大規模な無顔貌性を備えています.

Kowloon Walled City. An ugly but somehow attractive chaotic residential/commercial integrated building. Positive vertical growth of city

Negative vertical growth of human area. Model of diggers in coalpit. Explicit example showing that in such specific situation even human would live like termites...but not

in MK.

NEGATIVE VERTICAL GROWTH

J A C K I N G U P T H E GROUNDLEVEL AND LIVING IN THERE

P I L I N G U P T H E GROUNDLEVEL IN "STRATA" AND LIVING IN THERE

POSITIVE VERTICAL GROWTH

HORIZONTAL

G ROW T H O F

B U I L D I N G S ,

V E R T I C A L

G R O W T H

O F T H E C I T Y

Strataはそのような都市の大量生産へのアンチとして働きます.中心となるコンセプトは多様性,特に中井久夫の言うところの,都市における腐葉土のような条件の積極的な構築です.

1st Phase “HyperStrata: Urban Ventilator” は最初の試みです.都市における「敷地」という奇妙な白地をタブラ・ラサと捉えることを否定せず,無地のキャンバスを可能なかぎり沢山積層して,それを市民という建築家=シロアリ= Termiteに委ねることにより,この建物は単一の知性により組み立てられた建物というよりも集合知能により多様に築かれた都市の性格を帯び始めます.

次にシロアリの生態やその空調システム,九龍城やファベッラのようなスラムでの創発的な形態に興味を持ちました.如何にしてデザインしないことをデザインするか?その一見矛盾した問題を追求したのが 2nd Phase “Strata: Termites’ nest” でした.平面図は動線と自由曲線的な chamberの融合で成り立っています.より自由な断面が得られ,ヴォイドと島状の chamberが入り乱れる独特の形

状をとりました.ふつう建物は縦方向に伸び,都市は水平に肥大化します.Strataにおいては建物は水平に押しつぶされ,都市は垂直に成長します.デザイナである私がこの建物で制限したものはルールだけです.形態はその一例に過ぎません.ルールは大まかに三つです.1. 指定された建蔽率に達するまで 2階以上突出して建設してはならない.2. 下階のヴォイドをみだりに不正ではならない.3. 周囲の建物の如何なる自由な活動も妨げてはならない.

2nd 2nd 2nd 2nd

2nd

2nd 2nd 2nd Phase

1st Phase 1st Phase

1st Phase 1st Phase

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一見更に変化の激しい「有機的な」形状にかわったように見えます.下の断面図で比較すると,左が 2nd Phase, 右が 3rd Phaseで目立った違いはないように思われます.しかし内部でのストラテジーは大きな変革が加えられています.今まで「動線を含むキャンバスの外縁は建築家が設定,その中で市民が建設する」というスキームに支配されていたシステム構造が,3rd Phaseでは変化します.

 まず外皮の凹凸の激しいファサードは,内部で行われる真に有機的な活動を視覚的に表現することを目的としました.九龍城のファサードは確かに建築家にとってはたまらなく魅力的ですが,武蔵小杉のクライアントが同様にそう感じるとは限りません.魅力的なシンボルとしての存在感はこの一枚のファサードで担うことができます.この表皮はいわば「箍 [ タガ ]」です.内部での自由奔放な活動が溢れ出してしまわないように抑える樽とも言えます.

 いっぽうファサード内部では打って変わって創発的な相互作用の場になります.決定されているのは外縁だけ,その内部は如何様にも建設可能です.オフィスの隣に銭湯が,その隣にホームレスの貯まる空室,その隣がレストランで廊下を挟んで不動産屋・・・といった混沌とした,しかしルールに律せられた不思議な自治が築かれることを期待した設計です.

 さて,ここで設計を終えることも可能でしたが,これではいくらなんでも現実感に乏しすぎます.そこで内部がどのように設計されうるかを,限界はありますが想像しながら一枚一枚の平面図を独立して,ヴォイドの位置と末端でのキャンティレバーのスタック問題,構造的に無理のない積み重ね方を意識しながら書いてみました.その結果が次の4th Phase “Strata: Voxelated Slum”です.

3rd Phase

3rd Phase

2nd Phase

2nd Phase

3rd Phase

Termites’ nestは一定の評価を得ることができましたが,更なるブラッシュアップを求められたとき,どうしても自由曲線による平面図に無理が生じていると感じました.理由はシンプルです:私たちは人間であって,シロアリではありません.シロアリにとってあの美しい曲面と優美な曲線のロフトによる究極に有機的な巣構造が如何に自然で当然の産物であっても,日本人にとって最も自然で有機的な形態は,むしろ幾何的なのではないか.「有機的建築」という括弧付きの建築ジャンルにおいて,私が指摘したいことのひとつがここにあります.人間が猿から進化した猿の一種と捉え続ける限り,人間の作った物,人工物もまた,自然の産物です.ですから強迫的に幾何形状を避けてもほんとうの意味での有機体としての建築は得られないと思ったのです.次の 3rd Phase “Strata: Emerging City”ではこのディレンマの解決を試みました.

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これが最終的な Strataの姿です.Helzog & De Meuronの Pixelated Cityになぞらえて,三次元的な拡張を許容する多様体としての都市を,Voxelated Slumという姿で設計しました.数個の大きめのヴォイドと南北の歩道,東西の大通り,端から成長するヴォリューム,直角を基本とする外縁などといった特徴を持ちます. 以下に当時のプレゼンテーションボードでの英語表記のコンセプトを掲載します.

conceptMK lacks slum. In the city of paranoia, there is no place for vulgarity. MK has always been a safe, clean, homogeneous, equable, deadpan, mean, expensive, and dull space. In the city of hyper-economics, there is no place even for bicycles...because they are worthless in terms of economic efficiency. MK is always an economist, she just never has let a slum happen inside her. Let just citizens build their own buildings, because this is not an architecture. This is a proposal of 12-times-refrained-ground ---strata.

perspective 2

4th Phase

4th Phase4th Phase

4th Phase

4th Phase

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