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AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジをいた mAb LC/MS 分析 一次元および二次元 LC/MS 評価 アプリケーションノート 著者 Suresh Babu C.V., Anne Blackwell, and Timothy Rice Agilent Technologies, Inc. Koen Sandra Research Institute for Chromatography, Kortrijk, Belgium 生物製剤 概要 このアプリケーションノートではAgilent AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジをいることでLC 分離されたモノクローナル抗体 (mAb) 質量分析計での特性解析前にいかに効果 脱塩されたかを紹介します。今回調査により、再現性質量スペクトルとトー タルイオンクロマトグラム (TIC) られたことからAdvanceBio 脱塩 RP カートリッジのした性能実証されましたまたAgilent 1290 Infinity 2D-LC/MS ソリューションによりハートカットいて mAb のオンライン脱塩特性解析うことができましたはじめに モノクローナル抗体 (mAb) 、重要治療用タンパクカテゴリに位置付けられて いますmAb 不均一性のモニタリングには多様分析ツールが必要となりこうし 生体分子特性解析のためのルーチン分析法として使用されているのが液体クロ マトグラフィー /質量分析 (LC/MS) です。一般mAb 製剤には、前処理および保管のた 不揮発性塩可溶化剤まれていますところがこれらの試薬存在するとイオ 化抑制により質量分析結果悪影響がおよぶ原因となりLC/MS アプリケーションが 制限されますそのためMS 分析前にこれらの洗浄剤除去することが重要になり ます。今回調査では、新しい脱塩カートリッジの性能一次元および二次元 LC/MS よるタンパクアプリケーションで評価しました。脱塩のための逆相 LC メソッドの開発ポリマーベースの脱塩材料使用しました。脱塩性能評価するために、塩サンプルの分離実験 (1D) 2 種類多次元分離実験 (イオン交換クロマトグラフィーと 逆相クロマトグラフィーのわせ) 実施しましたこのアプリケーションノートでは質量分析計にこれらの脱塩カートリッジをわせた脱塩アプローチにより、溶液中 および洗浄剤まれるサンプルにおいてタンパク質量スペクトルがいかにされたかを紹介します

AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジを mAb LC/MS 分析...Suresh Babu C.V., Anne Blackwell, and Timothy Rice Agilent Technologies, Inc. Koen Sandra Research Institute for Chromatography,

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Page 1: AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジを mAb LC/MS 分析...Suresh Babu C.V., Anne Blackwell, and Timothy Rice Agilent Technologies, Inc. Koen Sandra Research Institute for Chromatography,

AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジを用いた mAb の LC/MS 分析 一次元および二次元 LC/MS の評価

アプリケーションノート

著者

Suresh Babu C.V., Anne Blackwell, and Timothy Rice Agilent Technologies, Inc.

Koen Sandra Research Institute for Chromatography, Kortrijk, Belgium

生物製剤

概要

このアプリケーションノートでは、Agilent AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジを用いることで、LC で分離されたモノクローナル抗体 (mAb) が質量分析計での特性解析前にいかに効果的に脱塩されたかを紹介します。今回の調査により、再現性の高い質量スペクトルとトータルイオンクロマトグラム (TIC) が得られたことから、AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジの一貫した性能が実証されました。また、Agilent 1290 Infinity 2D-LC/MS ソリューションにより、ハートカット法を用いて mAb のオンライン脱塩と特性解析を行うことができました。

はじめに

モノクローナル抗体 (mAb) は、重要な治療用タンパク質カテゴリに位置付けられています。mAb の不均一性のモニタリングには多様な分析ツールが必要となり、こうした生体分子の特性解析のためのルーチン分析法として使用されているのが液体クロマトグラフィー /質量分析 (LC/MS) です。一般に、mAb 製剤には、前処理および保管のため不揮発性塩や可溶化剤が含まれています。ところが、これらの試薬が存在すると、イオン化抑制により質量分析結果に悪影響がおよぶ原因となり、LC/MS アプリケーションが制限されます。そのため、MS 分析前にこれらの塩や洗浄剤を除去することが重要になります。今回の調査では、新しい脱塩カートリッジの性能を一次元および二次元 LC/MS によるタンパク質アプリケーションで評価しました。脱塩のための逆相 LC メソッドの開発には、ポリマーベースの脱塩材料を使用しました。脱塩性能を評価するために、塩を含むサンプルの分離実験 (1D) と、2 種類の多次元分離実験 (イオン交換クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーの組み合わせ) を実施しました。このアプリケーションノートでは、質量分析計にこれらの脱塩カートリッジを組み合わせた脱塩アプローチにより、溶液中に塩および洗浄剤が含まれるサンプルにおいてタンパク質の質量スペクトルがいかに改善されたかを紹介します。

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実験方法

機器機器およびカラムの構成を図 1A および図 1B に示します。オンライン脱塩は 1D および 2D モードで行いました。図 1A は、サンプルをカラムに効果的に導入し、MS 分析前に塩を廃液へと溶出させるための MS バルブの切り替えを示しています。図 1B は 2D-LC/MS の構成です。二次元目のカラムでは、脱塩カラムと MS バルブ切り替えモードを組み合わせています。

メソッド

1D LC/MS

カラム: Agilent AdvanceBio 脱塩 RP cartridge、 2.1 × 12.5 mm、10 µm、1,000 Å (p/n PL1612-1102)

流量: 0.75 mL/min

溶媒 A: 0.1 % FA

溶媒 B: 0.1 % ギ酸 ACN 溶液

流量: 0.4 mL/min

グラジエント: 時間 (分) %B 0 5 0.5 5 3.0 80 4.0 80 4.1 5 6.0 5

カラム温度: 室温

注入量: 5 µL

サンプル温度: 5 ° C

MS パラメータ

ガス温度: 350 ° C

シースガス温度: 400 ° C

ガス流量: 8 L/min

シースガス流量: 11 L/min

ネブライザ: 35 psi

VCap: 5,000 V

ノズル電圧: 1,000 V

フラグメンタ: 200

図 1. A) MS バルブ切り替え。B) 2D-LC/MS の構成。

MS への溶出時サンプル導入および脱塩時

廃液

MS

Agilent AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジLC

フロー

クォータナリポンプ

IEX (1D カラム)

オートサンプラ

廃液

A

B

バイナリポンプ

Q-TOF MS

塩廃液

タンパク質

1

2

3 4

5

6 廃液

MS

Agilent AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジ

Agilent AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジ

(2D カラム)

LC フロー 1

2

3 4

5

6

2D LC/MS (IEX → 脱塩 RP)

一次元目ポンプ (IEX)

溶媒 A: 水

溶媒 B: NaCl (850.0 mM)

溶媒 C: NaH2PO4 (41.0 mM)

溶媒 D: NaH2PO4 (55.0 mM)

流量: 0.75 mL/min

グラジエント: 時間 (分) %A %B %C %D 0 30.3 0.0 59.6 10.1 2 26.0 5.0 56.9 12.1 8 21.5 10.0 54.9 13.6 20 13.3 19.0 51.9 15.8 35 30.3 0.0 59.6 10.1

ポストタイム: 10 分

二次元目ポンプ (RP)

溶媒 A: 0.1 % FA

溶媒 B: 0.1 % ギ酸 ACN 溶液

流量: 0.4 mL/min

グラジエント: 時間 (分) %B 0 5 0.5 5 3.0 80 4.0 80 4.1 5 6.0 5

²D グラジエントストップタイム: 6.0 分

2D サイクルタイム: 6.1 分

サンプルと溶媒モノクローナル抗体サンプルは地元の薬局から購入し、メーカーの指示に従って保管しました。すべての溶媒は LC グレードのものでした。

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オートサンプラ

注入量: 5 µL

サンプル温度: 5 ° C

カラム (IEX → 脱塩 RP)

一次元目カラム: Agilent Bio MAb NP5、4.6 × 250 mm、PEEK (p/n 5190-2407)

二次元目カラム: Agilent AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジ、 2.1 × 12.5 mm、10 µm、1,000 Å (p/n PL1612-1102)

カラムコンパートメント

一次元目カラム: 室温

二次元目カラム: 室温

マルチハートカット

動作モード: 一次元目のリテンションタイムにもとづくハートカット (2D タイムセグメント) により時間ベースのマルチハートカットを実行。 不純物のハートカットをサンプリング時間 0.04 分で実施 (ループ充填 > 200 %)。

検出

一次元目 DAD パラメータ: 波長 280 nm/4 nm、参照波長: 360 nm/100 nm

二次元目 MS パラメータ

ガス温度: 350 ° C

シースガス温度: 400 ° C

ガス流量: 8 L/min

シースガス流量: 11 L/min

ネブライザ: 35 psi

VCap: 5,000 V

ノズル電圧: 1,000 V

フラグメンタ: 200

LC ストリームのタイミング: 0 分: 廃液へ 10.8 分: MS へ 14.6 分: 廃液へ

結果と考察

最初の実験では、脱塩効果を調べるために、mAb サンプルの 2D-LC/MS 分析を、二次元目で AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジを使用した場合と使用しない場合について実施しました。図 2 に実験結果を示します。赤のスペクトルでは、MS 機器に入った塩により MS シグナルが大幅に抑制されています。これに対し、青のスペクトルでは、二次元目の AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジにより塩が除去され、高品質の MS シグナルが得られています。この実験から、脱塩により MS シグナルの抑制が効果的に低減されたことが実証されました。

0

1

2

3

4

5

6

200 600 1,000 1,400 1,800 2,200 2,600 3,000 3,400 3,800 4,200 4,600 5,000 5,400 5,800

カウント

×104

Agilent AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジなしの場合の MS スペクトル。信号が抑制されています。

Agilent AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジを用いた場合の MS スペクトル。高品質の検出が実現されています。

質量電荷比 (m/z)

図 2.2D-LC/MS (IEX → 脱塩 RP) による mAb サンプルの分析結果。二次元目で Agilent AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジを 用いて脱塩した場合 (青) と脱塩なしの場合 (赤) の質量スペクトルを示しています。

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次に、脱塩手順を評価するために、mAb 製剤サンプルを用いて 2D-LC/MS 実験を実施しました。この実験では、一次元目でイオン交換 (IEX) カラムを使用し、二次元目で AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジを使用しました。一次元目のクロマトグラフィーで得られたピーク領域 (図 4 の赤のボックス) をハートカットして二次元目のカラムに移送し、その後 MS で検出しました。図 4 は、この実験で得られたトータルイオンクロマトグラム (TIC) のピーク、m/z スペクトル、およびデコンボリュートしたスペクトルです。このデータから、AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジによって塩が効果的に除去され、2D 構成で高品質の質量スペクトルが得られたことがわかります。

次に、脱塩プロセスに対する塩濃度の影響を調べるために、mAb サンプルにさまざまな濃度の NaCl を混合してジチオスレイトール (DTT) で還元し、脱塩カラムを用いて一次元モードで分析しました。図 3 は、重鎖タンパク質のスペクトルをデコンボリュートしたものです。さまざまな糖型 (G0F、G1F、および G2F) が現れています。サンプル中の塩濃度が高いほど信号強度が弱くなり、また塩濃度の高いサンプルでは Na 付加体のピークが現れていますが、NaCl の有無に関わらず、サンプル間で同様の相対定量結果が得られています。この結果は、AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジの優れた脱塩効果を示しています。

300 mM NaCl

00.51.01.52.02.5

50,597.550,759.7

50,921.550,451.2

50,597.550,759.7

50,922.550,451.8

0

0.4

0.8

1.250,597.5

50,759.3

50,921.150,451.9

50,100 50,200 50,300 50,400 50,500 50,600 50,700 50,800 50,900 51,000 51,100 51,200 51,300 51,400

150 mM NaCl

0

0.4

0.8

1.2

No NaCl

Coun

tsCo

unts

Coun

ts

×105

×105

×105

G0FG1F

G2F

Deconvoluted mass (amu)

図 3. 重鎖タンパク質のデコンボリュートしたスペクトル。NaCl を含む mAb サンプルを DTT による還元後、 Agilent AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジを用いて分析しました。NaCl の有無に関わらず、サンプル間で 糖型において同様の相対定量結果が得られています。

相対定量結果糖型 NaCl なし 150 mM NaCl 300 mM NaCl

% G0F 49.6 50.9 50.0% G1F 41.5 41.2 41.5% G2F 8.9 7.9 8.5

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一次元目:

AB

C D

UV 信号 (280 nm)

時間 (分)6 8 10 12 14 16 18 20

吸光度

(mAU

)

0

50

100

150

200

250

300

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.51 2 2 3

取り込み時間 (分)2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30

廃液 MS 廃液二次元目:MS (TIC)

二次元目:m/z スペクトル

二次元目:デコンボリュートしたスペクトル

カウント

カウント

カウント

x104 x104

x108

0

1

2

3

4

5

6

2,200 2,600 3,000 3,400 3,800 4,2000

1

2

3

4

5147,079.24

147,241.30147,404.41

147,566.22

146,936.93148,026.91

デコンボリュートした質量数 (amu)146,800 147,200 147,600 148,000

質量電荷比 (m/z)

図 4. 一次元目カラムとして Agilent Bio MAb NP5 (IEX)、二次元目カラムとして Agilent AdvancedBio 脱塩 RP カートリッジを用いた mAb サンプルの 2D-LC/MS スペクトル。一次元目のクロマトグラムから選択したメインピークを捕捉して AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジへ移送することにより、 塩が効果的に除去され、高品質の MS 結果が得られました。

脱塩手順の再現性を評価するために、2D 構成で mAb を 3 回繰り返し注入して分析しました。このとき、一次元目でイオン交換クロマトグラフィーを使用し、二次元目で脱塩カートリッジを使用しました。その結果を図 5 に示します。抽出イオンクロマトグラム (EIC) のピークと質量スペクトルの高さ、形状、および m/z 信号強度について高い再現性が得られていることがわかります。このことから、注入間の優れた再現性により、AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジの一貫した性能が実現されていることが裏付けられました。

結論

Agilent AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジを用いることで、LC で分離されたモノクローナル抗体を質量分析計での特性解析前に効果的に脱塩することができます。注入間の優れた再現性により、AdvanceBio 脱塩 RP カートリッジの一貫した性能が実現されます。また、Agilent 1290 Infinity 2D-LC/MS ソリューションにより、ハートカット法を用いて mAb のオンライン脱塩と特性解析を行うことができました。

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詳細情報

本文書のデータは代表的な結果を記載したものです。アジレント製品とサービスの詳細については、アジレントのウェブサイト www.agilent.com/chem/jp をご覧ください。

二次元目: m/z スペクトル二次元目: MS (EIC、48+)A B

注入 1 回目

廃液 MS 廃液

01234567

1 2廃液 MS 廃液2 3

1 2 2 3

1 2 2 3

01234567

注入 3 回目

01234567

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 3001234567

2,400 2,600 2,,800 3000 3,400 3,600 3,800

廃液 MS 廃液

3,200

注入 2 回目

取り込み時間 (分)

カウント

x104

カウント

x104

カウント

x104

カウント

x104

01234567

カウント

x104

01234567

カウント

x104

質量電荷比 (m/z)

図 5. 一次元目カラムとして Agilent Bio MAb NP5 (IEX)、二次元目カラムとして Agilent AdvancedBio 脱塩 RP カートリッジを用いた mAb サンプルの 2D-LC/MS スペクトル。二次元目の EIC (A) と m/z スペクトル (B) を示しています。

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カストマコンタクトセンタ0120-477-111 [email protected]

本製品は一般的な実験用途での使用を想定しており、医薬品医療機器等法に基づく登録を行っておりません。本文書に記載の情報、説明、 製品仕様等は予告なしに変更されることがあります。アジレントは、 本文書に誤りが発見された場合、また、本文書の使用により付随的 または間接的に生じる損害について一切免責とさせていただきます。

アジレント・テクノロジー株式会社 © Agilent Technologies, Inc. 2016Printed in Japan, August 1, 20165991-7065JAJP