30
1 アジア通貨危機 通貨危機と金融危機 アジア通貨危機の発生メカニズム:資本収支危機 ダブル・ミスマッチ:通貨ミスマッチと満期ミスマッチ 東アジア経済圏と東アジアにおける金融協力

Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

1

Ⅵ アジア通貨危機

• 通貨危機と金融危機

• アジア通貨危機の発生メカニズム:資本収支危機

• ダブル・ミスマッチ:通貨ミスマッチと満期ミスマッチ

• 東アジア経済圏と東アジアにおける金融協力

Page 2: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

2

アジア通貨危機

•1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけに、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴落し(通貨危機)、金融機関や企業の破綻が相次ぎ、実体経済にも深刻な影響を及ぼした(経済危機)⇒why?

•ヘッジファンドを筆頭とする投資ファンドや、欧米の金融機関が、一斉にアジア諸国から短期資金を引き揚げたのが一因。

•タイ、インドネシア、韓国の3カ国は国際通貨基金(IMF)の支援を求めることとなった。

Page 3: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

3

通貨危機(currency crisis)①固定相場制を採用している国の通貨が、外国為替市場で大量に

売り浴びせられ、

②通貨当局による自国通貨の防衛(外貨準備を用いた自国通貨の買い支え)にもかかわらず、

③外貨準備が枯渇してしまうと、自国通貨の価値が維持できなくなり、通貨価値が暴落することを意味する。

当該通貨が売り浴びせられるのは、近い将来その国の通貨価値が維持できない(通貨価値が大きく下落する)という予想から、通貨価値を維持している(通貨価値が高い)間に売っておこうとするからである。

また、通貨危機に陥った国は、国際通貨基金(IMF)から短期資金(国際流動性=通常は米ドル)の供与を受け、枯渇した外貨準備を補填すると同時に、IMFからは通貨危機に陥った要因を除去するような緊縮政策をコンディショナリティーとして求められる。

Page 4: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

4

タイの通貨危機

• タイの通貨バーツの場合、1ドル=25バーツ(1バーツ=0.04ドル)という固定相場制(ドルペッグ制)を採用

• 経常収支の悪化(対外支払いの必要性)から、外国為替市場ではバーツを売ってドルを買う動き(ドル需要)が強まっていた。固定相場制を採用している場合、外国為替市場でドルを供給するのは通貨当局であるので、通貨当局の外貨準備は減少し始める。

• 外貨準備が減少し始めると、やがて通貨当局はバーツを切り下げるのではないか(例えば1ドル=30バーツ[1バーツ=0.03ドル])という予想から、多くの市場参加者はバーツが高いうちに売っておきたいという動機から、一斉にバーツを売り浴びせることとなった。

• そのため、タイの中央銀行の外貨準備は枯渇し、実際に(自己実現的に)バーツの通貨価値は大きく下落し(1ドル=40バーツ[1バーツ=0.025ドル])以下に急落し、固定相場制を維持できなくなったのである。

Page 5: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

5

外国為替市場

Page 6: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

6

Page 7: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

7

金融危機(financial crisis)企業の倒産や銀行の破綻などをきっかけに、金融機関が(短期)金融市場での資金調達[資金繰り]が困難

となり、流動性が不足することによって短期金利が上昇し、ますます金融市場での資金調達が困難となり、金融機関の破綻が相次ぐこと。

⇒中央銀行による金融市場への資金供給(「最後の貸し手」Lender of Last Resort:LLR)⇒破綻した金融機関への公的資金の投入(資本注入)⇒金融機関が抱える不良債権へ処理

Page 8: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

8

金融市場の仕組み

家 計

銀 行

銀 行

企 業

ブローカー 中央銀行

家 計

企 業

預金金利

融資

貨幣供給増

対顧客市場(小売市場)

市場(卸売市場)

対顧客市場(小売市場)

銀 行

銀 行

融資金利

金利

資金

資金

手数料

手数料

貨幣供給量減

債券売却

債券購入

Page 9: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

9

家 計

銀 行

銀 行

企 業

家 計

企 業

預金取り付け

融資

銀 行

銀 行

融資金利

金利

中央銀行

最後の貸し手(LLR)

預金保険機構

金融危機(流動性リスク⇒システミック・リスク⇒短期金利[コールレートの上昇])

金 融 危 機

Page 10: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

10

以下の点を考えながらビデオを見て下さい

①なぜタイ経済は1990年代にバブル景気に湧いたのか?

②なぜタイの通貨バーツは暴落したのか?

③なぜバーツが暴落することによりタイ経済は危機に陥ったのか?

④世界大恐慌など「世界を駆け巡るマネーの歴史」から、どんな教訓が得られると思うか?

⑤「世界を駆け巡るマネー」(ヘッジファンド、年金基金、株式投資で15万ドルの利益を上げた6歳の少年、投資コンテストで優勝した高校生等々)を、どう考えるか?

Page 11: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

11

ヘッジファンド(hedge fund)個人や企業から資金を集め、それを運用する投資信託(ファンド)の一種。しかし、広く大衆から資金を集める金融機関が、顧客保護のため、金融当局の規制や監督の対象となるのに対して、ヘッジファンドは、

①少数の富裕層や年金基金などの顧客(アメリカの場合は顧客数が99人まで)から大口の資金を集めているため、規制や監督の規制外に置かれている。

②また、規制や税の関係から、本拠地をタックス・ヘイブンなどのオフショア市場に置いている場合がほとんどである。

③このように、金融当局からの情報開示義務を回避しているため、その数や資金量についての実態が明らかではない。

④しかし、規制の対象外となっていることから、資金を、リスクは高いが、高い収益率も期待できる(ハイリスク・ハイリターンの) 金融商品の形態で、運用している。⑤さらに、顧客からの出資(自己資本)を上回る金融機関から借入れを行い、レバレッジを高めることにより、自己資本収益率を上げている。

したがって、たとえ一部のヘッジファンドによる一部の資金であれ、その規模は、特定の新興市場を買い占めたり(過剰な資金流入)、売りさばいたり(過剰な資本流出)することができるくらい巨額である。

Page 12: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

① HFは、1ドル=25バーツの時点で、将来のバーツ切り下げを見越して、バーツの空売りを行なった(バーツを借り入れ、25バーツで1ドルを買った)。

② 実際に、バーツが、1ドル=35バーツに下落した時点で、バーツを買い戻して、1ドル当たり10バーツの利益を稼ぎ出した(1ドルで35バーツを買い、25バーツを返却した)。

12

Page 13: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

① この時点で、HFに対して、25バーツで1ドルを売ったのは、中央銀行。つまり交

換性を停止していないので、中央銀行は無制限にドルを供給する義務があった。HFは、猛烈な勢いでバーツを売り浴びせた(=中央銀行の外貨準備を枯渇させるくらい、1日で数十億ドルのドルを買いまくった)。

② この時点で、HF(バーツに対してショート・ポジション)に対して、1ドルで35バーツ

を売ったのは、バーツを投げ売りでもして為替差損を回避したいバーツの保有者(つまり、バーツに対してロング・ポジションにある外国銀行)で、早くバーツを売ってしまわないと1ドルを購入するのに50バーツも支払わなければならない。

③ さらに、バーツが1ドル=50バーツ近くまで下落したとき、バーツの売買は成立するだろうか? もちろん成立する。それは、

– (a)バーツに対してショート・ポジションにあるHFがバーツを買い(買い戻す=できるだけ安い価格で買いたいから)、

– (b)バーツに対してロング・ポジションにある外銀がバーツを売る(これ以上バーツが下落すれば、ますます為替差損が大きくなるから)。

13

Page 14: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

14

アジア通貨危機のメカニズム(タイのケース)

Page 15: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

15

「資本収支危機」としてのアジア通貨危機

資本収支危機(vs.経常収支危機)

資本の自由化→資本流入(資本黒字)→自国通貨高

→固定相場維持のための自国通貨売り介入→インフレ→自国通貨の過大評価

→輸出競争力の低下→経常赤字

Page 16: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

16

アジア危機における「ダブル・ミスマッチ」

(1)満期ミスマッチ(maturity mismatch)現地の金融機関が、16国際金融市場から資金を短期で借り入れ、それを国内企業に長期で貸し付け。

→国内企業への融資が不良債権化したために、国際金融市場での借換えが困難。

(2)通貨ミスマッチ(currency mismatch)現地の金融機関が、国際金融市場から資金をドル建てで借入れ、それを国内企業に現地通貨建てで貸し付け。

→現地通貨の対ドル相場が大幅に下落、ドルを返済するために必要な現地通貨建て支払額が大幅に増大。

Page 17: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

17

ASEAN+3(ASEANプラス日本・中国・韓国)の東アジア地域金融協力の枠組み

① 危機が発生した際における流動性供給スキームの構築⇒チェンマイ・イニシアティブ(CMI) 2国間スワップ協定網⇒CMIのマルチ化② 平時における「ドル建ての短期資金の流入」に依存しない「現地

通貨建て投資資金」の安定的な供給スキームの創出⇒アジア債券市場の育成

(a)アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)⇒供給側(下)からのアプローチ

(b)アジア・ボンド・ファンド(ABF)⇒需要側(上)からのアプローチ

ABF1 [June 2003, US $1 billion] ABF2 [May 2005, US$2 billion]

⇒アジア共通通貨(ACU)の可能性

Page 18: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

18

2国間スワップとしてのCMI

Page 19: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

19

CMIのマルチ化(2010年)・2010年3月、CMIマルチ化契約が発効。

・一本の契約の下で、通貨スワップ発動のための当局間の意思決定の手続きを共通化し、支援の迅速化・円滑化。

・スワップの発動条件は、基本的にIMF融資とリンク

http://www.mof.go.jp/international_policy/financial_cooperation_in_asia/cmi/index.html

Page 20: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

20

アジア債券市場の育成• 「外国通貨建ての短期資金」を借り入れ、それを「現地通貨建て

の長期資金」として貸し付けていたという「通貨と期間のダブル・ミスマッチ」が、アジア通貨危機の一因。

• アジア債券市場が育成され、現地通貨建ての長期資金が調達できれば、このダブル・ミスマッチは解消されるはず、という論拠。

• 債券市場(欧米型) vs. 銀行融資(アジア型)という問題に帰着。

→債券市場の育成には、「欧米流の市場原理主義」の貫徹が必要不可欠。これまでアジアで債券市場が育成されなかったのは、市場を必要としない相対取引である銀行融資が主流であったから。貸し手(銀行)が保有する借り手(企業)の情報は、市場において取引できないので、企業と銀行の取引は、継続的かつ長期的関係が維持される。

Page 21: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

21

アジア債券市場の育成をめぐる動向

(出所) 財務省のホームページ(http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/ABMI-ABF.pdf)

Page 22: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

22

銀行融資(bank loan) vs. 債券市場(bond market)

• 銀行融資(相対取引)⇒関係的ファイナンス(relational finance)⇒銀行(貸し手)が企業(借り手) との間に「長期・継続的関係」を維持

⇒両者の間の情報の非対称性(逆選択・モラルハザード)を軽減するため。

⇒途上国、アジア諸国で優位

• 債券市場(市場を必要)⇒距離を置いたファイナンス (arm’s-length finance)⇒先進国、欧米諸国で優位

Page 23: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

23

東アジアにおける中間的金融市場

B経済: 「関係的ファイナンス」が支配的A経済:「距離を置いたファイナンス」が支配的

ビッグバンによる金融統合

Case 1 : 収斂(Convergence) Case 2 : 経路依存性(Path dependence)

「関係的ファイナンス」は消滅 「関係的ファイナンス」も存続

東アジアにおける中間的金融市場

Page 24: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

24

アジアにおける証券化の動き• 証券化とは、銀行などの原資産の保有者(オリジネーター)が、融

資や不動産などの原資産を、特別目的事業体(Special Purpose Vehicle: SPV)や特別目的会社(Special Purpose Company: SPC)に売却し、SPVが証券の発行体となって、買い取った原資産を裏付けとして証券を投資家に売却する仕組み。

• 「特別目的会社」(SPC)「特別目的事業体」(SPV):企業や銀行など、資産の原保有者から原資産を購入し、買い取った原資産を裏付けとして、株式や債券など証券を発行する特別な目的のために設立される「発行体」。

例:「銀行融資の証券化」• オリジネーターであるA銀行、B銀行、C銀行が保有する原資産(例

えば住宅ローンや中小企業向け融資などの銀行融資)をプーリングし、それをSPVに譲渡

• SPVは、それを裏付けとして証券を発行し、投資家への証券の売却代金は、オリジネーターである銀行に、譲渡代金として支払い。

Page 25: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

25

アジア債券市場と証券化の概念図

(出所)川村[2003]

Page 26: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

26

8,360億ドル

8.8 兆ドル

10倍以上

(国別)

秋山(2014)

cf.日本国債は8.5兆ドル。社債も含めた円債市場全体は約9.2兆ドル。

Page 27: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

27

(国債・社債別)

糠谷(2013)

Page 28: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

NHKスペシャル「世紀を超えて」第6集・マネーの嵐が駆け抜ける

NHKスペシャル「世紀を超えて」

世界 ビッグパワーの攻防 第6集・マネーの嵐が駆け抜ける

Typed by C.F Top Page

ワシントン  株式で15万ドルの利益を上げた6歳の少年  投資に関する参考意見を議会で証言  アジア金融危機   90年代、資金がタイに殺到、2年前に一気に引き上げる   当時不動産業・今サンドウィッチ売り  実体経済をはるかに越えた金融市場 世界・ビッグパワーの戦略 第6集・マネーの嵐が駆け抜ける ニューヨーク・JPモルガン  絶大な信用力を背景に世界の資金を集める  つい最近まで超大資本しか相手にしない  その時代の成長市場への投資   19世紀・アメリカ大陸横断鉄道の資金を集める   日本の高度成長・中東の油田開発 90年代の始めタイに目をつける  成長を加速しようとするタイ   金融の自由化   欧米や日本の資本が進出  タイの利点は高金利と固定相場   10年で資金が2倍になる(利率7%)上に為替リスクが無い  タイのバブルが始まる   欲しいだけの資金を得て開発が始まる   株式市場は一気に拡大   際限無く流れ込む資金がタイの企業を一気に巨大なものとする  銀行やノンバンクは次々と資金を投入   審査が甘くなった面も  論文「幻のアジアの奇跡」   生産性が向上しないまま、経費は延びつづけている 1996年・ドル高に連動してタイバーツの競争力が低下  IMFからのバーツの切り下げ勧告  民間があまりにも多くの外貨建て負債を抱えていたので政府が切り下げをしなかった  余りにもタイ側は自信過剰すぎた  JPモルガンはこの時期からすでにタイから資金を引き上げていた タイタニック号

http://cf.tomangan.org/memo/990627.htm (1/3)2009/03/03 19:57:52

Page 29: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

NHKスペシャル「世紀を超えて」第6集・マネーの嵐が駆け抜ける

 5日後に氷山に激突する豪華客船  欧州から米国への資金運搬船と言う側面   JPモルガンの下にある海運会社   2億5千万ポンドを運んでいたとも 国境を越える資金の力  最初に力を見せ付けたのは米国の大恐慌  第1次対戦で疲弊しなかった米国に資金が殺到   欧州から船に乗って資金がやってくる   路上で株取引を行う  ブローカーズローン   株そのものを担保として株を買う  経済学者J・ガルブレイス   投機家の心理は常に同じ    経済が新たな局面に入ったと思い込んでしまう    投機をする時には楽観論に支配されてしまう  暗黒の木曜日   英国の金利引上げに応じて資金が流出し大暴落へ   次々に破産に陥っていく人々  エンパイア・ステートビル   大恐慌直後に完成   繁栄の象徴となるはずが入居者はほとんど無かった   まだ入っている金歯を貴金属店に売りに来た客 ダイ・ハード3  連邦準備銀行を襲い金塊を根こそぎ奪う  連邦準備銀行   世界各国の資金1440億ドル分の金が保管される   金本位制がかつては暴走を押さえていた  ニクソンショック   金兌換を停止   変動相場制に以降  コンピューターの登場   金と言う制御装置を失い、コンピューターによって膨張を加速されるマネー ヘッジファンド大会  1000を越えるヘッジファンドが1100億ドルの資金を動かしている  2年前タイに目をつける   過大評価されている市場に攻撃をかける   タイ経済に止めを刺す  97年5月   タイ経済はさらに悪化   固定レート時に先物契約を行いその後バーツを売り浴びせ切り下げに追い込む   普段の30倍の規模でバーツ売りを行う   タイ中央銀行は必死の買い支えで対抗する    390億ドルの外貨準備は一気に減っていく   5/15に国外持ち出しを禁止

http://cf.tomangan.org/memo/990627.htm (2/3)2009/03/03 19:57:52

Page 30: Ⅵアジア通貨危機 - 京都大学iwamoto/cgi-bin/wp/wp-content/...2018/07/01  · 2 アジア通貨危機 •1997年7月、タイの通貨バーツの急落をきっかけ に、インドネシアや韓国などで波及的に通貨が暴

NHKスペシャル「世紀を超えて」第6集・マネーの嵐が駆け抜ける

   海外のバーツが不足・短期市場では1000%を記録    数億ドルの損失をヘッジファンドは受ける   6月に新大蔵大臣が就任    外貨準備はすでに使い果たされていた    変動相場制への移行以外にタイを守れなくなる   7/2に主要銀行を招集し変動相場へ移行する    バーツの大暴落が始まる    半年で半値以下にまで暴落   56のノンバンクが廃業・6つの銀行が国有化される    経済成長率は-8%・失業率は3倍    大規模開発も中止  ヘッジファンドの力に一国では対抗できない  タイ企業への融資は半分は不良債権になった   すべては幻・手に入る金が人の金である事を忘れていた  アルゼンチン   マネーに翻弄される恐怖から免れるために究極の選択をしようとしている   自国通貨ペソを捨て米ドルを流通させる   投機的資金は流入しにくくなるがドルが攻撃されることはありえない   安定した本物の成長を目指す ウィスコンシン州の高校  6000の高校が参加した投資コンテストで優勝  商品はGEの株券200株・時価2万5千ドル JPモルガン  今過小評価されているのは日本  この安値の時期に投資すれば5年後には莫大な利益 バンコクで唯一活気ある場所  借金を背負った人が手放した物品の取引所 ジョン・ガルブレイス92歳  1920の大恐慌以来経済を見つめてきた  楽観論の誘惑に惹かれ前回の教訓を忘れたころ再びバブルはやってくる

http://cf.tomangan.org/memo/990627.htm (3/3)2009/03/03 19:57:52