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1 AISARPA情報を併用した 海上交通観測手法の開発 瀨田 広明、鈴木 治、鈴木秀司、天野 宏 (鳥羽商船高等専門学校)

AISを用いた海上交通のリアルタイム解析 ー ESモデ … 本研究で使用した航海計器 船舶に通常搭載されている航海計器を使用。AIS「FURUNO

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AISとARPA情報を併用した海上交通観測手法の開発

瀨田 広明、鈴木 治、鈴木秀司、天野 宏

(鳥羽商船高等専門学校)

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AISは実時間での他船の船位などが即時に把握できるので、AISを用いた海上交通の解析方法が提案されている。

AIS非搭載船(例えば500t以下の船舶)についての情報がない。

はじめに

海上交通の解析は、実態観測後にレーダ映像を画像処理するのが一般的で、その解析後に、交通流シミュレーション等で評価。

解析に時間や費用が掛かる。

AISとARPAを併用することにより、解析の効率化を目指した海上交通観測手法の構築とAIS非搭載船を含めた海上交通の安全性評価を実時間で行うシステムを開発する。

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本研究で使用した航海計器

船舶に通常搭載されている航海計器を使用。

AIS「FURUNO FA-150」

レーダ(ARPA)「FURUNO FAR-2827」

DGPS「Trimble NT200D」練習船「鳥羽丸」

G.T. 244 tLoa 40m, B 8m

Sバンド 25kwビーム幅 2.3°方位分解能 2.5°ARPA機能 最大100隻AIS情報機能AISとARPAの自動整合機能

鳥羽丸船内で観測を実施

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各種航海計器の出力(NMEA)内容

!AIVDM,1,1,,B,15ROH<0vjwam3IvCgWfkSRlp00Rj,0*48!AIVDO,1,1,,,16K>GA001fanOO`ChL6b<`<r0000,0*08!AIVDM,2,1,1,A,56KVjHP2:W6T`oK?C>1<Pu@teF0l59F2222222169HI4<5OB084mDhBj,0*02!AIVDM,2,2,1,A,H88888888888880,2*55

受信日時、メッセージID、MMSIコード、緯度・経度、針路、速力、船種、船名

$RATTM,27,0.80,144.2,T,6.48,283.9,T,0.80,-0.2,N,,T,,,M*36$RATTM,28,3.91,278.2,T,10.83,88.8,T,0.87,10.5,N,,T,,,M*22$RATTM,27,0.80,141.8,T,6.32,299.5,T,0.80,0.3,N,,T,,,M*1F$RATTM,24,0.30,230.5,T,13.59,284.0,T,0.28,0.9,N,,T,,,M*27

ターゲット番号、自船からの方位・距離、船速、最接近時間、最接近距離

測位時間、緯度・経度、針路、速力

$GPGGA,090033,3436.707,N,13813.182,E,2,6,001.39,00016,M,00039,M,02,0692*5B$GPGLL,3436.71,N,13813.18,E,090023,A*27$GPZDA,090024,29,05,2007,00,00*4C$GPVTG,000,T,006,M,000.0,N,000.0,K*48

AIS

ARPA

DGPS

NMEA (National Marine Electronics Associationの略)データ転送の標準フォーマット。

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NMEAデータ受信・解析システム

$RATTM,28,3.51,279.7,T,10.76,88.2,T,0.82,9.2,N,,T,,,M*10!AIVDM,1,1,,B,15ROH<0vjwam3IvCgWfkSRlp00Rj,0*48!AIVDO,1,1,,,16K>GA001fanOO`ChL6b<`<r0000,0*08$GPGGA,120838,3431.630,N,13743.722,E,2,6,001.21,00009,M,00039,M,03,0692*7D$GPGLL,3431.63,N,13743.72,E,120838,A*2D$GPVTG,264,T,271,M,011.2,N,020.7,K*4D$RATTM,24,0.34,222.0,T,13.29,240.9,T,0.22,-2.8,N,,T,,,M*07

$PAISTOBA,1,A,20070806,002257,354139000,1,35.0361,1,136.8444,0.0,341.0,0.0,0.0,3$PAISTOBA,1,B,20070806,002257,353608000,1,35.04450166666667,1,136.85241833333333,206.7,192.0,0.0,0.0,2$PAISTOBA,1,C,20070806,002303,431200068,1,34.979433,1,136.707717,166.000000,166.000000,10.200000,0.0,$PAISTOBA,1,D,20070806,002303,01,1,34.950199,1,136.710633,0.430000,0.430000,0.000000,0.0,18 

各NMEAセンテンスを受信、混合、保存

○:モニタリング装置などでそのまま利用可能×:受信内容が容易に判断しづらく、利用しにくい

NMEAセンテンスを変換(海上交通解析、データベース)

○:内容を簡単に判読でき、利用が容易(形式を統一)×:データ量が大きくなる

AIS!AIVDM!AIVDO

ARPA$RATTM

DGPS$GPGGA$GPGLL$GPZDA$GPVTG

船内LA

N

陸上䷄义携帯䵿船舶電話䶵乊

RS232C

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伊良湖水道でのシステム検証実験(鳥羽丸)

伊良湖水道航路航行船舶の実態調査

AISによる伊良湖水道航路の観測は報告済。 SバンドレーダのARPA情報でどの程度まで捕捉可能か検証。

2008年4月2日12時~4日12時(48時間連続観測) 天候:晴れ  風向:北北西  風速:7m  波高:80cm 4マイルレンジで観測を実施。 ARPAは手動捕捉   (目標判別は人間が行う)

AISとARPA情報の自動整合は無し。   (AIS情報と比較するため) 目視観測を併用。   (ARPA情報に船種・船型を付加するため)

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観測時のレーダ映像 ゲイン→大

航跡結果が内側による。

小型船が捕捉可。 乗移りの可能性大。

ゲイン→小 航跡結果が外側による。

小型船が捕捉困難。

乗移りの可能性小。

ARPAによる航跡は船型やアスペクトにより変化。レーダのゲイン調整の仕方

伊良湖水道航行中のAISの位置と合うようにゲインを調整。

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AIS情報による航跡結果(2日間)

1目盛り1000m

神島

伊良湖

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ARPA情報による航跡結果(2日間) 捕捉隻数

総隻数    2286隻 20トン以下 1585隻 20トン以上の  非搭載船  377隻 AIS搭載船  324隻

ロスト、乗移り隻数 ロスト 952隻 (9割以上が20トン以下) 乗移り 64隻

1目盛り1000m、距離円0.5マイル

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20トン以上の航跡結果(2日間) AIS搭載船はAISの位置情報で表示

  (赤色)

20トン以上のAIS非搭載船はARPAとDGPSから生成した位置を表示

  (青色)

過去に行われている研究結果から、AISとARPAの併用は事実上問題ない精度とされている。

1目盛り1000m

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伊良湖水道航路の観測結果

20トン以上のAIS非搭載船の位置情報はARPAとDGPSを併用することで取得可能。

20トン以上の船舶の動的情報を実時間で把握することが可能。

テキスト形式(データベース化)で保存しているので、情報の抽出が容易。

Xバンドレーダを使うことで精度向上が期待。

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航行中におけるシステム検証実験(鳥羽丸)

航行時における他船情報の取得と操船困難性評価

AISによる実時間での操船困難性評価は実施済。 ARPA情報を含めた評価を実時間で検証。

2007年5月29日~5日30日御前崎~鳥羽の航海中

天候:晴れ  風向:南東  風速:3m  波高:50cmレーダレンジは適宜変更。

AISとARPA情報の自動整合は有り。

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「鳥羽丸」航行中における海上交通観測例

後からでも自他船の航跡を確認することが可能。

天竜川沖を航行中の自船、AIS搭載船、AIS非搭載船の航跡を示す。

34.48

34.52

34.56

137.65 137.67 137.69 137.71 137.73 137.75

自船(鳥羽丸)

AIS搭載船①

AIS非搭載船③AIS搭載船②

AIS搭載船③

AIS非搭載船②

AIS非搭載船①

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ESモデルの適用 環境ストレスモデル(ESモデル)とは自船を取り巻く周辺環境が操船の困難さの面において

操船者に課す環境負荷を定量的に数値表現するモデル。

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900

時間(秒)

ES値

AISとARPAを併用

AISのみ

ARPA情報を併用することで、より正確な評価をすることが可能となった。

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まとめ

AIS,ARPA,GPSのNMEAセンテンスを連続受信・保存し、実時間で海上交通の安全性評価を行うシステムを構築した。

他船の位置はARPAが自動的にトラッキングするので、観測要員の削減が可能となった。さらに、画像解析の必要がなく解析に要する時間も短縮された。

AIS情報にARPA情報を加味することで、20トン以上の船舶の動的情報を入手することが可能となり、より実海面に近い情報収集と評価が可能となった。

ARPA情報に船種・船型情報を観測中に付加するシステムを構築し、解析を容易にする予定。

小型船舶(20トン以下)の情報の入手方法について検討したい。

  携帯やAPRS (Automatic Position Report System) 等を利用

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伊良湖

神島