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37 第Ⅳ章 テレビ普及モデル構築に関する基本概念の説明と先行研究の紹介 前章では、代表的な普及モデルである「Bass モデル」について理論的な考察をおこな った。本章では、本論文の目的である「アナログテレビ(ANTV)の普及分析とデジタル テレビ(DTV )の普及予測」の準備として、以下の2つの点について説明する。まず第 1は、カラーテレビのマーケット構造と、普及要因からみたモデル構築の基本概念につい て説明する。また第2は、本論文の第Ⅵ~Ⅹ章の分析と予測にもちいる「Bass モデル」 の発展型モデルやその他の普及モデルについて、代表的な先行研究の紹介と理論的な考察 をおこなう。 4.1 テレビ普及モデル構築の基本概念 ここでは、カラーテレビのマーケットを例にとって、耐久消費財普及モデルの主要構成 要因、すなわちカラーテレビの普及状況を説明するのに必要な「マーケット構造」、およ び「普及速度に影を及ぼす要因」について説明する。 普及モデルにおける「マーケット構造」とは、市場において、だれが製品の供給してい る (「供 給 者 」) の か 、 当該 製 品 を購 入 し よ うと す る のは ど の よう な タ イ プの 購 入 者(「 購 入 者 のタ イ プ 」) で あ る のか 、 ま た彼 ら は 、 どの よ う な理 由 (「購 入 理 由 区分 」) によ り 当 該製品を購入しようとするのか、を指定し体系的に分したものである。 また、普及モデルにおける「普及速度に影を及ぼす要因」(以下、省略して「普及要 因」と呼ぶ)とは、それらマーケットを構成する各タイプの「購入者」が、それぞれのタ イプの購入理由に基づく要により当該製品を購入しようするとき、その購入行動に影を与える要因のことである。 市場に異なるタイプの「購入者」、異なるタイプの「要(購入理由区分)」、および異 なる「普及要因」が存在する場合、当該製品の普及分析や将来予測をおこなうには、それ ぞれのタイプや要因別にモデルを構築し、その目的に合致したデータを個々に使用する必 要がある。したがって、「Bass モデル」、等の普及モデルをもちいて「アナログテレビ ANTV)の普及分析とデジタルテレビ(DTV)の普及予測」をおこなうためには、その 基本的な市場であるカラーテレビの「マーケット構造」と「普及要因」を具体化すること から始めなければならない。 4.1. ①は、このカラーテレビの「マーケット構造」と「普及要因」概略を記載したも のである 1 。同図は、供給者であるメーカーおよび販売業者から出荷された製品が、流通 経路をつうじて市場に供給され、消費者によって購入される流れを示している。購入者は、 1 本図は、Bayus, Hong and Labe (1989) p9 に掲載されている Fig.3 をもとに、筆者が改良を加えたものである。

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第Ⅳ章 テレビ普及モデル構築に関する基本概念の説明と先行研究の紹介

 前章では、代表的な普及モデルである「Bass モデル」について理論的な考察をおこな

った。本章では、本論文の目的である「アナログテレビ(ANTV)の普及分析とデジタル

テレビ(DTV)の普及予測」の準備として、以下の2つの点について説明する。まず第

1は、カラーテレビのマーケット構造と、普及要因からみたモデル構築の基本概念につい

て説明する。また第2は、本論文の第Ⅵ~Ⅹ章の分析と予測にもちいる「Bass モデル」

の発展型モデルやその他の普及モデルについて、代表的な先行研究の紹介と理論的な考察

をおこなう。

4.1節 テレビ普及モデル構築の基本概念

 ここでは、カラーテレビのマーケットを例にとって、耐久消費財普及モデルの主要構成

要因、すなわちカラーテレビの普及状況を説明するのに必要な「マーケット構造」、およ

び「普及速度に影 を及ぼす要因」について説明する。

 普及モデルにおける「マーケット構造」とは、市場において、だれが製品の供給してい

る(「供給者」)のか、当該製品を購入しようとするのはどのようなタイプの購入者(「購

入者のタイプ」)であるのか、また彼らは、どのような理由(「購入理由区分」)により当

該製品を購入しようとするのか、を指定し体系的に分 したものである。

 また、普及モデルにおける「普及速度に影 を及ぼす要因」(以下、省略して「普及要

因」と呼ぶ)とは、それらマーケットを構成する各タイプの「購入者」が、それぞれのタ

イプの購入理由に基づく 要により当該製品を購入しようするとき、その購入行動に影

を与える要因のことである。

 市場に異なるタイプの「購入者」、異なるタイプの「 要(購入理由区分)」、および異

なる「普及要因」が存在する場合、当該製品の普及分析や将来予測をおこなうには、それ

ぞれのタイプや要因別にモデルを構築し、その目的に合致したデータを個々に使用する必

要がある。したがって、「Bass モデル」、等の普及モデルをもちいて「アナログテレビ

(ANTV)の普及分析とデジタルテレビ(DTV)の普及予測」をおこなうためには、その

基本的な市場であるカラーテレビの「マーケット構造」と「普及要因」を具体化すること

から始めなければならない。

 図 4.1.①は、このカラーテレビの「マーケット構造」と「普及要因」概略を記載したも

のである1。同図は、供給者であるメーカーおよび販売業者から出荷された製品が、流通

経路をつうじて市場に供給され、消費者によって購入される流れを示している。購入者は、

1 本図は、Bayus, Hong and Labe (1989) p9に掲載されている Fig.3 をもとに、筆者が改良を加えたものである。

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「家 」と政府等の機関・協会・団体・企業、などの「機関、等」との2つに区別される

が、それぞれ当該製品にたいして異なる購入動機をもっており、異なる購入行動をとる。

本稿では分析対象を「家 」に限定するが、この「家 」は、「初回購入」、「 加購入」、

もしくは「置換購入」のいずれかの理由により、市場に供給された製品を 要する2。そ

れらの各「購入理由区分」による購入行動は、たとえ同じ家 の購入であったとしても別々

の理由や要因によって決定されるので、それらの説明にはそれぞれ異なった普及モデルが

必要となる。

 また、これらの家 の購入行動は、「購入要因」により、その購入量や普及スピードに

ついて影 を受ける。本稿では、Bass モデルを例にとり、「購入要因」を「Bass モデルの

購入要因」と「それ以外の付加的購入要因」に分 する。「Bassモデルの購入要因」とは、

Bass モデルの構成要素である「先導的購入要因」、「 随的購入要因」、「市場 模」、およ

び「累積購入数」である3。「それ以外の付加的購入要因」は、さらに「製品に直接かかわ

る要因」と「製品に直接かかわらない要因」とに分 することができる。前者は、当該製

品の価格、機能、品 、デザイン、利用できるソフト(コンテンツ)、広告、利用可能な

時間的要因、等をいう。後者は、購入者の所得、ライフスタイル、流行、物価、景気、他

の製品の状況、等、をさす。このように、カラーテレビを例とした耐久消費財の普及モデ

ルは、「供給者」、「購入者区分」、「購入理由区分」、および「購入要因」の4つの要素から

なり、各要素のいろいろな組み合わせから構成されている。

 以下、先ほどの概略図により、当該製品の出荷、流通・販売、購入の流れにしたがって、

カラーテレビの「マーケット構造」と「普及要因」の説明をおこなう。

A. 「供給者」

 「供給者」は、テレビを製造する国内メーカー、その流通に携わる流通業者や販売業者

から構成される。また、テレビが海外生産品の場合には、海外メーカーや国内メーカーの

海外法人および輸入業者も、その構成員である。

B. 購入者区分

 カラーテレビの「市場」には「家 」と「機関・協会・団体・企業、等(以下、「機関、

等」と呼ぶ)2つのタイプの「購入者」が存在する。「家 」とは人々が生 を営む場で

あり、「機関、等」は仕事やその他の目的を達成するために けられた組織である。両者

の間では、その存在目的、構成人員、資金源(収入源)製品の使用目的、等に相違がある

2 「初回購入」、「 加購入」、および「置換購入」の各「購入理由区分」は、以下の③で説明する。3 これらの要因の詳細ついては、第Ⅲ章「Bass モデルの基礎的考察」を参照。

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ので、その製品の購入行動にも大きな違いが存在する。したがって、カラーテレビの普及

分析や予測をおこなうには、これらの「購入者区分」ごとに個々に実行する必要がある。

 ① 家

 本稿では、家 をつぎのような理由で、アナログテレビ、およびデジタルテレビの普及

分析の主対象として選択する。

 (a) 家 は、テレビという製品の性 上最も重要な購入者であり、その保有数も他を

圧倒している4。したがって、その普及分析をおこなう対象としては、最適な分析単位で

あると考えられる。また、テレビの主たる購入者は家 であり、その機器の仕様も主とし

て家 で使用されるのに適するよう製作されている。テレビという情報媒体によって提供

される放送番組は、政治・経済・教育情報など「機関、等」により利用可能な情報のほか

に、娯楽的要素が大きなウエイトを占めている。これらの娯楽番組は主として家 を主体

とした視聴向けに制作されている。これらのことより、当該製品の普及分析の対象として

の「購入者区分」は、家 に重点おいても問題ないものと判断される。

 (b) 家 はその存在目的、構成人員、資金源(収入源)、製品の使用目的、等が「機関、

等」に比べ、比 的均 であるため、 量経済モデルによる分析が比 的実行しやすい。

また、分析に必要データも政府関係機関により整備されている。

 ② 機関、等

 本稿では、「アナログテレビとデジタルテレビの普及分析および将来予測か」ら、「機関、

等」の 要を除外する。その理由は以下のとおりであるが、おおむね「家 」による 要

を分析対象とした点と対照をなす。

 (a) 「機関、等」では、主要な業務用途のためにテレビを使用するのではなく、副次

的な用途、たとえば、 客サービスや限定された一 の情報収集用に使用するケースが多

いものと考えられる。したがって、「機関、等」にとって、テレビは主要な 備にはあた

らないので、一家に必ず一台以上保有されている「家 」の状態と比べてその重要度は相

対的に低く、保有されている台数も少ない5。

 (b) 「機関、等」は「家 」に比べて多種多様であり、その存在目的、組織 模、構

成員数、使用可能資金、製品の使用目的、等が不均一であるため、テレビの 要行動が予

測しづらく、モデル化が困難である。また、分析に要するデータも家 に比べて不 がち

である。

 以上のような理由で本稿では、「家 」によるテレビの購入に焦点をあてて分析および

4 現在、国内に存在するテレビは 100 百万台以上といわれているが(日本経済新聞、2004年 12月 1 日付け)、そのうちの大 分が家 に保有されているものと想像される。内閣府の公表する世帯あたりのテレビ保有数デ

ータでは 2002年で 2.35台であるが、これを世帯数 47百万世帯で換算すると、約 110百万台となる。5 上記注にしめされるように、「家 」における保有数、総販売数、平均使用年数、等の数値から逆算した「機

関、等」におけるテレビの保有数は、家 のそれに比べてはるかに少ない。

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予測を実行する。しかし、留意すべき点は、「機関、等」による 要が「家 」による

要に比べればその比重は小さいものの、決して「無視することが可能である」と結論づけ

て分析対象から除外するのではない、ということである。つまり、これらは、その形態の

多様性より普及分析のためのモデル化がおこないづらく、また、分析用データが十分に整

備されていないため、やむなく分析対象から除外するのである6。したがって、本論文で

分析および予測が可能なテレビの普及数は「家 」において購入されるものに限定される。

C. 購入理由区分

 「購入者」である「家 」の購入行動は、その購入理由により「初回購入」、「 加購入」、

および「置換購入」も3つのタイプに区分される。「初回購入」は、その製品を初めて買

う場合をさし、「 加購入」は、現在保有している製品に加えて、さらにもう一台同種の

製品を購入する場合をいう。「置換購入」は、故障や老朽化、等の理由により、現在保有

している製品を廃棄し、同種の製品に買い換える場合をいう。

 これら3つのタイプの購入理由区分は、耐久消費財の普及状況を説明する購入行動のな

かで最も基本的なものあり、他の派生的な購入行動は、これら3つの基本的購入理由区分

をもとにして説明することができる。たとえば、次項 D.②にしめすいろいろな付加要因

の影 を取り入れた普及モデルは、これら基本となる3タイプの購入モデルに、それぞれ

の付加要因を加えることにより使用される。

 また、これら3つのタイプの購入理由による購入行動は、異なった状況にある購入者が、

それぞれ異なった購入動機により、異なった購入要因の影 を受けてなされる。したがっ

て、これらの状況をより精密に分析するには、それぞれの購入理由区分に応じた、個別の

普及モデルを使用するほうが望ましい。本稿では、第Ⅵ章から第Ⅷ章で、「初回購入」、「

加購入」、および「置換購入」の3つのタイプの購入理由による 要を説明するために、

3つの普及モデルをもちいて実証分析をおこなう。ここでは、以下にその概要を簡単に説

明する。

 ① 「初回購入モデル」

 本モデルは、Bass モデルをほぼそのままのかたちで使用する最も基本的なモデルであ

り、普及率より得られる「初回購入数データ」を、世帯数データを基礎とした「市場 模」

をもちいて分析し、アナログテレビの初回購入による 要の将来予測を実行するものであ

る。また、本モデルより得られた初回購入数の予測値はつぎの「 加購入モデル」による

将来予測に利用される。

6 実際、「機関、等」によるテレビの 要分析および将来予測を実施した先行研究は少なく、筆者は唯一、Bayus,Hong and Labe (1989)を知るのみである。

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 ② 「 加購入モデル」

 本モデルは、初回購入の普及モデルである Bass モデルを、 加購入にも利用できるよ

う筆者が改良したものである。同モデルでは、保有数と「初回購入数データ」より得られ

る「 加購入数データ」を、世帯数と人口の両方のデータを考慮した「市場 模」をもち

いて分析し、アナログテレビの 加購入による 要の将来予測を実行するものである。本

モデルより得られた 加購入数予測値は、上記初回購入数予測値とあわせて、保有数の予

測値を作成するのに利用される。

 ③ 「置換購入モデル」

 本モデルは、「購入数データ」と上記②の「 加購入モデル」により得られた保有数の

予測値より得られる「置換購入数」を利用して、将来の「置換購入 要」を予測するモデ

ルある。また、本モデルは、上記①、②の2つの Bass モデルを基礎普及モデルとはこと

なり、平均使用年数と置換数分布の概念を利用した普及モデルであり、本論文のなかでは

唯一の「 Bass 型モデル」である。なお、本モデルにより得られた置換購入数将来予測

値は、第Ⅸ節の「世代交代モデルによる分析と予測」において、アナログテレビとデジタ

ルテレビの世帯交代を考慮した普及予測に利用される。

 これら、各「購入理由区分」により分 された各購入数、すなわち「初回購入数」、「

加購入数」、および「置換購入数」は、それぞれにおいて重要な意味をもつが、相互に組

み合わせることにより、テレビをはじめとする耐久消費財の普及状況の全体像をしめすパ

ーツとなる。「世代交代モデル」もそれら3つの購入数の組み合わせにより構成される。

D. 購入要因

 ここまでは、カラーテレビのケースを例にした、普及モデルの構成の観点から「供給者

(メーカー、流通・販売業者、輸入業者)」、「購入者区分(家 と機関、等)」、および「購

入理由区分(初回購入、 加購入、置換購入)」の3つの「市場構成要素」について説明

した。

 ここでは、これら「市場構成要素」からより生ずる購入行動に影 を与え、その普及モ

デル内で、普及数や普及スピードを決定する「購入速度に影 を及ぼす要因(購入要因)」

について説明する。「購入要因」は、説明する普及モデルのタイプにより異なる。したが

って、ここでは、本稿でもちいる中心的普及モデルである Bassモデルを例に説明する。

 本稿では、「購入要因」を、「Bass モデル購入要因」と「Bass モデル以外の付加的購入

要因(以下、略して「付加要因」と呼ぶ)」に分 する。「Bassモデルの購入要因」とは、

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Bass モデルや Bass モデルを発展させた改良型モデルに共通してもちいられる一般的な影

要因である。「付加要因」とは、それら「Bass モデル購入要因」に 加して持ちいるこ

とにより、より特殊な状況における普及状況や、ある特定の要因が当該製品の普及にどの

ような影 を与えるか、を分析することができる特殊的な影 要因である。

 ① Bassモデル購入要因

 「Bass モデル購入要因」は、「先導購入」、「 随購入」、「市場 模」、および「累積購

入数」の4種の要因である。これらの要因は、Bassモデルを基礎とした普及モデルでは、

概ね共通的に使用されるものである7。

 ② Bassモデル以外の付加要因

 「Bassモデル以外の付加要因(付加要因)」は、さらに当該「製品に直接かかわる要因」

とそれ以外の「製品に直接かかわらない要因」とに分 することができる。Bass モデル

を基礎とする「Bass 発展型」の普及モデルでは、前者のケースでは、当該製品の価格、

機能、品 、デザイン、利用できるソフト(コンテンツ)、広告、利用可能時間、等の影

を取り入れたものがある。また、後者では、購入者の所得、物価、景気、ライフスタイ

ル、流行、他の製品の状況、等、の外 的な影 を考慮したものがある。これら「Bass

モデル発展型」の普及モデルでは、付加要因を 加的にもちいることにより、従来の Bass

モデルをより特殊的な普及状況を説明するモデルに改良・発展させることができる。

  (a)製品に直接かかわる要因

   (1)製品価格:分析対象製品の価格を付加要因としてモデル内に取り入れたものは、

多数存在する。それは、価格が消費者の購入行動を分析するに当たって、極めて重要な影

を与える要因であるからである。この価格の影 は、さまざまなかたちでモデル内に取

り入れられているが、代表的なものは、残存市場 模に影 を与える変数として利用され

ている。また、価格は、実際の価格データを単独で使用したり、平均所得との比率で用い

たり、もしくは、製造コストを基礎に算定した価格変数を採用したものもある。

   (2)製品の機能、品 、デザイン、ソフト(コンテンツ):製品の価格と同様に、製

品の機能、品 、デザイン、等の要素は、製品の普及において重要な役割を果たす。ただ

し、これらの要因は、製品や番組の技術水準やクオリティーの問題であったり、または、

購入者の嗜好や流行を含むものである。したがって、これらの要因は、データとして数値

化することが難しく、 量モデルによる実証分析にはあまり適さないかもしれない。ただ

7 むろんこの例外も存在する。たとえば Bass モデルを基礎とした普及モデルのなかには、「先導購入のパラメーター」を使用しないものもある。本稿では、第Ⅶ章にて「先導購入のパラメーター(

r fs[ ])」をゼロと 定

したケースもテストしている。

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し、少数の論文では、企業の研究費の支出額を説明変数としてもちいて製品の改良や技術

変化の要素を普及モデルに取り入れた研究が発表されている8。

   (3)広告:広告は、多くの消費財や耐久消費財において、当該製品の知名度をあげ、

製品差別化を促す点で、普及への影 が大きい要因のひとつである。したがって、広告(多

くの場合、企業の宣伝広告費の額を変数として取り入れたもの)を「購入要因」としてと

りあげた普及モデルは多い。ただし、これらの研究は、どちらかといえば、企業単位のレ

ベルの分析が中心となる。本稿では、アナログテレビとデジタルテレビの社会単位での普

及状況の分析を主眼としているので、広告の要因は考慮しない。

   (4)利用可能な時間的要因:時間的要因には、いくつかのとらえ方が存在する。第

1のとらえ方は、当該製品の耐用年数や平均使用年数の概念である。本稿では、Bass モ

デルベースではないが、「置換購入モデル」に、この平均使用年数を重要な購入要因とし

て使用している。また、第2のとらえ方は、「使用期限」の概念である。ここでいう使用

期限とは、上記の耐用年数とはことなり、ある時期に当該製品が使用不可能になる状況を

想定している9。たとえば、本論文の関連でいえば、アナログテレビは、2011 年でアナロ

グ波による放送が打ち切られるため、それ以降は使用することができなくなることが予定

されている10。したがって、アナログテレビの購入数は、将来(もしくは既に)必ずその

影 を受けることは確実である。このような「使用期限」が重大かつ特殊な影 を及ぼす

場合には、付加要因として普及モデルに取り入れるのが望ましい11。

  (b)製品に直接かかわらない要因

   (1)購入者の所得、物価、景気:内 要因と同様に、所得、物価、景気、等、数値

化されてデータとして存在するものについては、当該製品の購入数を説明する要因として、

多くの普及モデルに取り入れられている。たとえば、所得には「国民所得」データが、物

価には「消費者物価指数」が、そして景気には「GDP」、等のデータが整備されている。

これらのデータは、購買力をしめす変数として単独で使用されたり、上記 1).i)でしめした

ように、製品価格と組み合わされて製品の実 価格をあらわす変数として用いられる。

   (2)ライフスタイル、流行:これらの要因については、内 要因における製品の性

能、品 、デザイン、等の要因と同様に、これらの影 をしめすデータが十分に存在しな

い。したがって、当該製品の購入数に影 を与える重要な要因であるにもかかわらず、普

8 たとえば、Bayus(1994)。9 「使用期限」を付加要因として取り入れた先行研究には、Swami and Khairnar (2003)がある。同論文は、コンサートチケットの販売数と価格が、開演が迫るにつれ上昇し、開演と同時に激減・急落するようすを独自の

モデルをもちいて説明している。10 詳細は、第Ⅸ章参照。11 本稿では、いったん、この「使用期限を考慮したモデル」を、アナログテレビ放送の打ち切りの影 を検

証するために導入しようと検討した。しかし、デジタルテレビの普及予測段階で、当初の予想よりデジタルテ

レビの普及スピードが速く、このような「使用期限」による影 が顕著に表れるまえに、アナログテレビとデ

ジタルテレビの「世代交代」がおおかた決着してしまう結果となった。したがって、このような、「使用期限

を考慮したモデル」は、」興味深いものであるが、ここでは使用しなかった。

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及モデルの影 要因として使用されることは少ない。

   (3)他の製品の普及状況:これらの購入要因は2つのタイプに分 することができ

る。第1のタイプは、同種の製品の普及なかでの、たとえば、従来の機種と新型機種との

あいだで生ずる相互的な影 である。このようなタイプ普及要因を使用するモデルでは、

一方の世代の製品の購入数を、他方の購入数に影 を与える購入要因として使用している

12。本稿においても、第Ⅸ章「世代交代モデルによる分析と予測」で、このタイプの購入

要因を応用したモデルをもちいて、デジタルテレビ(新世代製品)がアナログテレビ(旧

世代製品)の市場を奪いながら普及する状況を説明する。

 第2のタイプは、異種の製品の普及における相互的な影 、たとえば、テレビとビデオ

のように、お互いが補完的な役割を果たしながら普及するモデルである。ただし、このタ

イプの普及要因をもちいるモデルは、理論的には提 されているものの、実際に実証分析

に使用できるかたちにまで完成されていないようである13。

4.2節 本論文で使用する「Bassモデル発展型」普及モデル等の理論と先行研究の状況

 本節では、本論文の第3 「実証分析(第Ⅵ章からⅨ章)」で分析と予測に用いる「Bass

モデル」の発展型モデル、等の普及モデルについて、代表的な先行研究の紹介をおこなう。

まず、本論文の第Ⅵ章「初回購入モデルによる推定と将来予測」では、「初回購入モデル」

として「Bass モデル」とほぼ同じものを使用する。しかし、同モデルの理論的な考察は

第Ⅲ章で既に実施しているので、ここでは、第Ⅶ章「 加購入モデルによる推定と将来予

測」、第Ⅷ章「置換購入モデルによる推定と将来予測」と、第Ⅸ章「世代交代モデルによ

る推定と将来予測」に関連した先行研究をそれぞれ紹介する。また、最後に日本のデジタ

ルテレビの普及に関する実証研究についても紹介をおこなう。

A.  加購入モデルに関する先行研究

 「 加購入」を説明するモデルは「初回購入」や「置換購入」に関するものにくらべ、

論文数が極端に少ない14。このうち、Bass型の 加購入モデルには Norton and Bass (1987)

12 このタイプの研究には、以下の第2節で取り上げる Norton and Bass (1987)や野口・ 嶋(2001)のモデルがある。13 Bayus, Hong and Labe (1989)参照。14 「 加購入モデル」の論文数が少ない理由はさだかではないが、1つにはマーケティング分析の関心が、

製品の世帯普及率ではなく、販売数の分析・予測にあるためであると推測される。つまり、耐久消費財の販売

者であるメーカーや販売店は、今後何台販売可能であるかを 求し、それが「初回購入分」であるか「 加購

入分」であるかはあまり気にかけない。したがって、これら多くの普及モデルは、「初回購入」と「 加購入」

の合 である「保有数の純増」を説明するモデルと「置換購入数」を説明するモデルの2つを用いて、販売デ

ータの分析をおこなっている。ただし、筆者は、テレビのような世帯に複数普及している製品の分析には、「初

回購入分」と「 加購入分」を区別して分析・予測する方が適切だと考える。何故なら、テレビにおける「初

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の研究があるが、同論文はどちらかというと、旧型製品の保有者が新型製品を購入する際

の購入行動、すなわち新旧製品間の相互的な影 を説明する普及モデルであり、単純な同

一世代の製品の「 加購入」とは えない。したがって、同論文は以下 C 項の「世代交

代モデル」の項であらためて説明する。

 一般的な「 加購入」モデルに関する先行研究では、Bayus, Hong and Labe (1989)によ

るモデルが存在する。ただし、同モデルは、Bass 型の普及モデルに基礎をおいたもので

はなく本稿の「 加購入モデル」の基礎として採用していないので、ここでは参考として

簡単に説明する。

 なお、本論文で提示した 加購入モデル、すなわち 加購入行動を Bass 型モデルによ

って説明した論文は見つけることができなかった。

 ① Bayus, Hong and Labe (1989)の 加購入モデル

 本モデルは、当期 加購入数を「購入者の購買力」と「社会(世帯)の製品保有数」の

2つの購入要因で説明するモデルであり、前者は「実 可処分所得」、後者は 5 年以上使

用されている製品の数(「累積販売数-累積廃棄数」、で表される)のデータが使用される。

製品の当期 加購入数を

s(t)、実 可処分所得を

Y (t)、5 年以上使用されている製品の保

有数(累積販売数-累積廃棄数)を

A5 (t)、α、β、およびγをもとめるパラメーター、

Δは前期との差分を表すとすると、モデル式は以下の式 4.2.①で表され、Bass 型モデルと

は異なる線形モデルとなっている15。

   

s(t) = a + bDA5 (t) + gDY (t)                    4.2.①

   

s(t):当期 加購入数、

Y (t):実 可処分所得、

   

A5 (t):5年以上使用されている製品の保有数(累積販売数—累積廃棄数)。

 なお、同論文は 1960年代から 1980 年代にかけての米国におけるカラーテレビの普及状

況を、「初回購入」、「 加購入」、「置換購入」の3種 の購入理由区分と、「法人等による

購入」、および他の関連製品の影 を考慮した「関連(周辺)製品の 要による購入

(Peripheral Product Related Sales)」を説明する4つの「 Bass 型モデル」を提示してい

る。

B. 置換購入モデルに関する先行研究

  加購入モデルに比べて、置換購入モデルについて 及した先行研究はいくぶん多く発

回購入分」は家族全員で使用するため共有性が く、2台目以降では世帯構成員個人での使用の可能性が い

ため、それぞれの普及パターンは、かなり異なると考えられるからである。15 Bayus, Hong and Labe (1989)、13 ページによる。なお、「5年以上使用されている保有数」は、いくつかの年数による推定結果中最もフィットがよかったから採用した、とのことである。

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表されている。ただし、ここで紹介する置換購入モデルは、初回購入モデルである Bass

型モデルと組み合わせて製品の普及分析に用いられるものの、それ自身はこれらのモデル

とは異なるタイプのモデルである。何故なら、「置換購入」は、主として既存製品の老朽

化や故障、新製品の登場、上級機種へのグレードアップ、等の要因により引き こされる

受動的な行動であり、初回購入や 加購入のような能動的な行動ではない。そのため、同

モデルは、Bass 型モデルの「先導的」および「 随的」などの購入者の自発的行動に基

づく購入要因ではなく、「平均使用年数」や「生存率」もしくは「故障率」、および「新製

品の投入サイクル」といった時間の経過に伴って必然的に生ずる購入要因より構成される。

 また、置換購入モデルは、その置換メカニズムのモデルへの表現方式によりいくつかの

タイプに分 することができる。第1は、購入した製品が一定期間後に一度にすべて(故

障し)置き換えられるとするもの、第2は、それが一定期間後のある期間内に確率的に(故

障し)置き換えられるとするもの、第3は、マクロ的な視点から個々の製品の購入時期を

考慮せず、社会全体の保有数のある一定割合が置き換えられると仮定するものである。第

1については、以下①に示す Lawrence and Lawton (1981)のモデルが著名である。第2に

ついては、同じく②の Olson and Choi (1985)および Kamakura and Balasubramanian (1987)型

の置換購入モデルが代表的で研究であり、他の多くの同モデルに関する研究がこの方式を

採用している。なお、第③については、耐久消費財の置換購入に限れば、該当する代表的

先行研究をあげることはできないが、マクロ分析での資本ストックの減耗・置換投資のモ

デルでは広く用いられている。当該製品の普及が進み普及飽和水準に づいた状態(当該

備の投資が行き渡った状態)では、このようなモデルが、置換購入(置換投資)の状況

を上手く説明することができるものと考えられる16。

 以下では、上記のうち第1と第2のタイプのモデルについての先行研究を紹介する。な

お、本稿第Ⅷ章の置換購入モデルは、この第2のタイプに属するものであるが、以下で説

明する「置換分布関数」に本稿独自の台形型の分布を用いている。

 ① Lawrence and Lawton (1981)の置換購入モデル

 本モデルは、置換購入数(

n r[ ] (s))を、初回購入数(

n n[ ] (t))と平均耐用年数(

i)の2

つの要素を用いて説明するもので、t 年の初回購入数

n n[ ] (t)は t 年から平均耐用年数 i 年後

s 年(

s = t + i)に全て故障し、その全てが置き換えられるという、最も単純な仮定を採用

するモデルである。したがって、s年の置換購入数(

n r[ ] (s))は t 年の初回購入数(

n n[ ] (t))

に等しく、これは式 4.2.②および表 4.2.①の Replacement Purchase 欄で示される17。同表で

16 Bayus, Hong and Labe (1898)では、 加購入モデルに、保有数の一定割合が 加購入されると仮定する方式

を採用している。当該製品の普及が進み飽和普及水準に づいた時点では、当期購入分のほとんどが置換購入

分となり、初回購入分と 加購入分は無視できるほど小さな比率となると仮定できる。したがって、このよう

な飽和状態では、このタイプの置換購入モデルによる分析が有効であると考えられる。17 同研究では、 加購入の概念は考慮されておらず、 加購入は初回購入の一 であると 釈されている。

なお、表は Lawrence and Lawton (1981)、538 ページ、Table 22-1 による。

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は、平均耐用年数 i はすべて8年であると仮定されている。したがって、1967 年の初回

購入(Original Purchase)数 12.1は、8年後の 1975年に置換購入(Replacement Purchase)

数 12.1となって現れる。また、つぎの年 1968年の初回購入数 16.7は、同様に8年後の 1976

年の置換購入数 16.7となる。

   

n r[ ] (s) = n n[ ] (t)、ただし

s = t + i                     4.2.②

   

n r[ ] (s):s年の置換購入数、

n n[ ] (t):t 年の初回購入数、

i:t 年に購入された当該製

   品の平均耐用年数。

 また、s年の総購入数(

n(s))は、s年の初回購入数(

n n[ ] (s))と s年の置換購入数(

n r[ ] (s))

の合 であるので、式 4.2.③および前出表 4.2.①の Total 欄で表される。前出同表の 1975

年の総購入数(Total)は、1975 年の初回購入数 60.4 と同年の置換購入数 12.1 との合 、

すなわち 72.5である。なお、図 4.2.①は、この総購入数の時系列を示したものである18

   

n(s) = n n[ ] (s) + n r[ ] (s)                          4.2.③

   

n(s):s年の総購入数。

 ② Olson and Choi (1985)および Kamakura and Balasubramanian (1987)の置換購入モデル

 本モデルは、上記①のモデルと同様に、当期購入数は、初回購入数と置換購入数を表す

2つのモデルで構成され、上式 4.2.③によって示される。しかし、上記①の置換購入モデ

ルでは t 年の購入数が平均耐用年数後に全て置き換えられると仮定するのに対し、本モデ

ルでは製品の使用年数は、確率的に分布すると仮定する。t 年に購入された初回購入分が

i 年後の s年に使用されている確率(生存率)を

Q(i)とすると、s年の置換数

n r[ ] (s)は、

   

n r[ ] (s) = Q(i -1) - Q(i)[ ]i=1

s-t

 * n n[ ] (s - i)                   4.2.④

   

n r[ ] (s):s年の置換購入数、

n n[ ] (s - i):

s - i年の初回購入数、

   

Q(i):t 年に購入された初回購入数が i 年後に使用されている確率(生存率)。

で表すことができる。上式は、s 年に使用されなくなった製品の数であるが、100%の置

換率を仮定するとこの数が s 年の置換数となる。なお、この i 年後に置換の必要が生ずる

確率を置換分布関数(

f (s))で表すと、生存率との関係は、

   

Q(s) = 1- f (i)i=1

s-t

                            4.2.⑤

となる。

18 Lawrence and Lawton (1981)、539 ページ、Figure 22-8。

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 この置換分布関数(

f (s))に、Olson and Choi (1985)では Rayleigh分布を、Kamakura and

Balasubramanian (1987)では h-type という分布関数を用いており、それら分布関数を用い

て推定した置換購入数(白 テレビ)は図 4.2.②のような形をとる19。なお、他の研究で

は、Triangular、Poisson、Gamma、Weibull、Truncated Normal、等のさまざまな分布関数

を用いていろいろな耐久消費財の普及分析がおこなわれている20。

C. 世代交代モデルに関する先行研究

 「世代交代モデル」とは、同種の製品の新旧2つの「製品モデル」、もしくは第1世代、

第2世代、および第3世代といった3つ以上の「製品モデル」、の間に生ずる相互的な普

及メカニズムを説明するモデルである。「製品モデル」や「世代」の用 は、第Ⅸ章で詳

しく説明しているが、前者はある製品の「型」や「版」を意味し、後者はその製品が技術・

品 ・アイデア・デザイン、等で大きく進歩し、以前の製品モデルと顕著な差別化が可能

となった場合、それぞれの製品モデルをグループ化して区別する呼称である。通常、新世

代製品は旧世代製品より性能や品 において優れているので、前者は先行する後者の市場

を奪いながら普及し、最後には全ての市場を占める。本モデルは、Bass モデルにおける

新製品の普及過程(最初は漸増するが、普及中期では急増し、最後はまた漸減してゆく普

及パターン)をもとに、このような同種の製品の異なる世代の製品が市場に供給された場

合の相互的な普及メカニズム、すなわち新旧世代製品の普及数や普及スピードの増加と減

少とを説明するものである。

 なお、世代交代モデルを市場 模の 定方法から分 すると、2つのタイプに分けるこ

とができる。第1のタイプは「新旧世代製品」の販売市場が全く同じであると考えるモデ

ルで、新世代製品の購入数増加分がすぐに旧世代製品の市場の減少につながると考えるも

のである。このタイプのモデルでは、新世代製品のモデル式も旧世代製品のモデル式も、

同じ市場 模(

M (t))を共有するかたちをとる。第2のタイプは「新旧世代製品」の販

売市場は一 重なっているが全く同一ではないと考えるモデルで、新世代製品の購入数増

加分のある一定の割合が旧世代製品の市場の減少につながるが、残りは前者が独自に開拓

した市場 模であると考えるものである。このタイプのモデルでは、新旧世代製品のモデ

ル式ではそれぞれ、旧世代製品の市場 模(

M 1 (t))と新世代製品の市場 模(

M 2 (t))

の両方を用いる。本稿第Ⅸ章で採用する世代交代モデルには上記第1のタイプが該当する

が、参考となる先行研究はなく、筆者が考案したものである。同モデルは、存在テレビの

ような普及状況が飽和水準に づいた製品において、新世代製品が優先的に普及し、その

残りを旧世代製品が埋めるかたちで普及が進むと仮定するもので、前者の性能が後者に比

19 Kamakura and Balasubramanian (1987)、7 ページ、Fig.2。20 たとえば、Islam and Meade (2000)では、これら様々な置換分布関数を用いたモデルの説明力を比 してい

る。

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して圧倒的に いケースを想定している。第2のタイプは、Norton and Bass (1987)に代表

的される世代交代モデルで、コンピュータ用メモリ(DRAM、SRAM)や MPU のように

市場が拡大過程のある製品の「世代交代」を説明するものである。

 第1のタイプのモデルは第Ⅸ章で詳しく説明しているので、ここでは第2のタイプのモ

デルについて 説する。

 ① Norton and Bass (1987)の世代交代モデル

 本モデルは、図 4.2.③に示されるように、相互に重なり合った普及期間をもつ複数世代

の製品の普及状況を分析するモデルある。同図は、コンピュータ用のメモリのように技術

進歩の著しい製品の世代別普及状況(当期購入数)を表している。同モデルにおける典型

的なケースでは、最初の第1世代(Generation One)製品は緩やかに増加する傾向をしめ

すが、より性能の い第2世代(Generation Two)製品が投入されるとその普及速度は減

速し、まもなく当期普及数はピークを える。つぎの第2世代の製品は第1世代の製品よ

りも急速に増加し、前者が投入されなかった場合後者が達していた普及数よりもさらに

い水準まで普及する。しかし、そのつぎの第3世代(Generation Three)製品が投入され

ると先ほどの第1世代製品同様その普及速度は減速し、まもなく当期普及数はピークに達

して、それ以降は減少し始める。各世代の普及数がこのようなカーブを描くのは、2つの

複合的な普及パターンの効果による。第1の普及パターンは、新世代の製品が旧世代製品

の市場を一 奪いながら普及するためである。したがって、新製品の普及に伴い旧製品の

市場は縮小して、普及速度の減速が生じ最後には普及の停止をもたらす。第2の普及パタ

ーンは、新世代製品がそれ独自の市場を開拓し、旧世代製品が到達できなかった水準まで

普及その普及が進むことである。したがって、新世代製品は旧世代製品の縮小分よりも

い普及水準に到達する。

 Norton and Bass (1987)では、このような異なる世代間の相互普及メカニズムを、以下の

式 4.2.⑥をもとにモデル式を構築している。同式は、本稿第Ⅲ章、式 3.3.①の Bass モデル

の基本式を比率で表したものである。もう一度同式の構成要素を説明すると、

r pは先導

購入のパラメーター、

r fは 随購入のパラメーター、

mは市場 模(飽和普及水準)、

N (t)は累積購入数を表す。なお、

f (t)は購入比率、

F (t)は累積購入比率であり、それぞれ

当期購入数(

n(t))と累積購入数(

N (t))を市場 模(

m)で割ったものである。

   

f (t)1- F (t)

= r p + r f

N (t)m

= r p + r f F (t)                   4.2.⑥

 上式より、累積購入数(

N (t))は市場 模(

m)と累積購入比率(

F (t))の積であるの

で式 4.2.⑦が導かれる。Norton and Bass (1987)では、この状態をまだ新世代製品が投入さ

れるまでの単一世代の製品のみが存在する状態であると想定する。

   

N (t) = mF (t)                             4.2.⑦

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 つぎに、第2世代製品が投入された場合を想定する。第1世代製品の累積購入数を

N 1 (t)、市場 模を

m1、累積購入比率を

F 1 (t)、第2世代製品の累積購入数を

N 2 (t)、市場

模を

m 2、累積購入比率を

F 2 (t)とすると、第2世代製品の発売後、第2世代製品はそれ

自身が開拓した市場 模(

m 2)と第1世代製品から奪った市場 模(

F 1 (t)m1)の2種

の市場 模を飽和普及水準として普及を開始する。したがって、第2世代製品の累積購入

数(

N 2 (t))は、式 4.2.⑨で表される。一方、第1世代製品の累積購入数は第2世代製品

に奪われた市場 模(

F 2 (t)F 1 (t)m1)分だけ飽和普及水準が減少した状態に普及パターン

に変化する。したがって、第1世代製品の累積購入数(

N 1 (t))は式 4.2.⑧となる。

   

N 1 (t) = F 1 (t)m1 - F 2 (t)F 1 (t)m1 = F 1 (t)m1 1- F 2 (t)( )              4.2.⑧

   

N 2 (t) = F 2 (t) m 2 + F 1 (t)m1( )                       4.2.⑨

 なお、同論文の実証 分では、以下の式 4.2.⑩~式 4.2.⑬を用いて、互いに普及時期の

重なる4世代の DRAMの普及分析をおこなっている21。

   

N 1 (t) = F 1 (t)m1 1- F 2 (t)( )                        4.2.⑩

   

N 2 (t) = F 2 (t) m 2 + F 1 (t)m1( ) 1- F 3 (t)( )                   4.2.⑪

   

N 3 (t) = F 3 (t) m 3 + F 2 (t) m 2 + F 1 (t)m1( )[ ] 1- F 4 (t)( )               4.2.⑫

   

N 4 (t) = F 4 (t) m 4 + F 3 (t) m 3 + F 2 (t) m 2 + F 1 (t)m1( )[ ][ ]              4.2.⑬

D. 「価格モデル」に関する先行研究

 価格要素を普及モデルに取り入れた先行研究は数多く存在し、様々なタイプの論文が発

表されている。ここでは、それらのうち代表的のものについて簡単に紹介する。

 「Bass 型モデル」に価格要素を取り入れたものは大きく分けて、価格がその基本構成

要素のうち、①「残存市場 模(

M (t) - N (t -1))」に影 をあたえるもの(式 4.2.⑭)、②

「市場 模(

M (t))」に影 をあたえるもの(式 4.2.⑮)、③「先導購入要因(

r p)」と「

随購入要因(

r f)」に影 をあたえるもの(4.2.⑯)、の3タイプに分 される22。

 ① 

n(t) = r p + r f * N (t -1) M (t)( )[ ] * f M (t) - N (t -1),P(t)( )          (4.2.⑭)

21 推定方法の詳細については、Norton and Bass (1987)、1076ページ参照。同モデルによる推定は、上記の2式の

F i (t)に具体的な関数、

F i (t) = 1- exp(-bi )[ ] 1+ a i exp(-bi )[ ]、(ただし、

a i = r fi r p

i、

bi = r pi + r f

i)、

を代入して実施する。なお、同論文では、パラメーターの数を減らすために、

r piおよび

r fiは、各世代(i)同

じである(すなわち、

r pi = r p、

r fi = r f)との仮定をおいて、

r p、

r f、および

m1~

m 4の6つのパラメー

ターを推定している。22 ③「先導購入要因(

r p)」と「 随購入要因(

r f)」に影 をあたえるものには、そのどちらか1つ、

r p

または

r fのみに影 をあたえると考えるタイプのものも考えられる。

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 ② 

n(t) = r p + r f * N (t -1) f M (t),P(t)( )( )[ ] * f M (t),P(t)( ) - N (t -1)( )      (4.2.⑮)

 ③ 

n(t) = f1 r p ,P(t)( ) + f2 r f ,P(t)( ) * N (t -1) M (t)( )[ ] * M (t) - N (t -1)( ) 23     (4.2.⑯)

 多くの先行研究は、上記3タイプを中心に様々な価格要素を含むモデルを構築して実証

分析をおこなっているが、たとえば、 Kalish(1985)では上記②が、 Kamakura and

Balasubramanian(1988)や Jain and Rao(1990)では上記③のタイプのものが、結果的に最も有

効であったと結論づけている24。

 また、「Bass 型モデル」で価格要素を取り入れたものには、上記のような「初回購入モ

デル」だけではなく、「置換購入モデル」に価格要素を加えたものもある。これらの研究

は、「Bass 型モデル」に「 Bass 型の置換モデル」を組み合わせたものであるが、モデ

ル式の「初回購入」を表す 分への価格の影 が間接的に「置換購入」に影 をあたえる

ものと、「置換購入」を表す 分に直接影 を与えるものとがある。前者のタイプの研究

には本節 B.項で紹介した Kamakura and Balasubramanian (1987)を、後者のタイプには Mesak

and Berg (1995)をあげることができる。

 なお、本稿では採用することができなかったが、予測において、t 期の製品価格 p(t)(ま

たは、生産費用)が累積販売数 X(t)(または、累積生産数)の関数であると考え、式 4.2.

⑰に示されるような右下がりの曲線となるいわゆる「コスト・ラーニング・カーブ(また

は、「エクスペリエンス・カーブ」)」を用いた論文も数多く発表されている。本稿の作業、

および本章で 及した文献の多くは、製品市場の 要側を分析しているが、これに対し上

記関数は同市場の供給側を考慮するものであり、大量生産に基づくコスト低下と価格下落

が製品普及を加速するという事実を反映している。したがって、これらの研究は、製品の

将来価格を予測し、それを価格要素を含むモデル(「価格モデル」)に適用することにより

当該製品の普及の将来予測をおこなう際に有効であると考えられるので、本研究の今後に

おいて検討すべき 題であると考えている 25。これらの研究の代表的なものには、Bass

(1980)、Bayus (1993)、Rao and Bass (1985)、Sharp(1984)、等がある。

   

p(t) = qX (t)-l                           (4.2.⑰)

   ただし、p(t):t 期の製品価格、X(t):t 期までの累積的販売数、θ:初期価格、

   λ:コスト・ラーニング係数。

23 これらの式では、関数記号(

f )を「一般的な関数関係の存在」を示すために使用している。通例のように、特定の関数関係を固定して考える用法ではない。したがって、本来は

f1、

f2のように区別して使用され

る場合についても、同一記号

f を適用している。ただし、式 4.2.⑯のようなケースでは、同一式内にある

f1 r p ,P(t)( )と

f2 r f ,P(t)( )は同じではないので、

f1、

f2と区別して表示している。

24 Mahajan, Muller and Bass (1990)、14 ページ。25 第Ⅺ章「おわりに」を参照。

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E. 日本のデジタルテレビの普及に関する実証研究

 日本における情報機器やサービスの普及に関する分析や予測は、いろいろな民間調査機

関等により多数公表されているが、そのほとんどが結果のみを記述した商業的な報告であ

る。一方、本稿で紹介すべき実証研究、すなわち、使用データや分析・予測方法を公表し

たうえでなされる学術的な実証研究の数はさほど多くはなく、日本のデジタルテレビの普

及に関するものは、以下に紹介する山下(1999)の研究のみである。

 ① 山下(1999)の研究

 山下(1999)の研究は、「Bass モデル」を使用して過去の日本のアナログテレビ(カラ

ーテレビ)の普及状況を分析し、得られた推定値を利用して将来のデジタルテレビの普及

予測を実施するものである。同研究の特徴は、(1)デジタルテレビの普及パターンがアナ

ログテレビのそれと 似している、(2)デジタルテレビはアナログテレビの後継機種では

なく全くの新製品である、と仮定していることである。すなわち、デジタルテレビは、普

及面においてその性 がアナログテレビに似ているが、その機能面においてはそれとはか

なり異なるため、アナログテレビからの置換 要を考慮するよりは、全くの新製品として

普及予測をおこなったほうが適切であると考える。

 同研究による推定式は、式 4.2.⑱により示されるが、これは第Ⅲ章式 3.6.②に示した「Bass

モデル」の推定式に価格項目を 加したものであり、いわば価格要素を考慮した「初回購

入モデル」である。

   

n(t) = a + bN (t -1) - gN 2 (t -1) +dP(t)                  4.2.⑱

   ただし、

P(t) = p(t) Y (t)

   

p(t):テレビ受像器の価格、

Y (t):家 所得

 山下(1999)では、将来予測において、上式の価格項目の

p(t)にデジタルテレビやデジ

タルチューナーの予想価格を使用し、デジタル放送開始時点以降のデジタルテレビとチュ

ーターの普及予測を実施している。同論文は、地上デジタル放送開始の約5年も前の時期

にその将来普及状況を予測したという点において、先見的な研究であった。

 また、同研究は、上記の特徴(2)のようにデジタルテレビを全くの新製品と仮定する点

で本稿実証分析とはアプローチが異なるが、「Bass モデル」を用いた「日本のデジタルテ

レビの普及予測」という点において、本稿研究の出発点となる 範的な先行研究である。

4.3節 本章のまとめ

 本章の前半では、カラーテレビの普及モデルを構成する基本概念である「マーケット構

造」と「普及要因」について購入者側に視点をおいて説明した。また、後半では、本論文

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の実証分析に関連する先行研究について「Bass発展型モデル」を中心に紹介した。

 カラーテレビのマーケットは、供給者であるメーカーおよび販売業者の他、家 や公共

機関・企業等からなる機関により構成される。本稿の分析対象である家 の購入行動は、

その購入理由により「初回購入」、「 加購入」、および「置換購入」に区分される。それ

らの各「購入理由区分」による 要は、それぞれが購入者の異なる理由、状況、や「購入

要因」により決定されるので、それらの異なる 要による製品の普及状況を説明するには、

それぞれに適した個別の普及モデルが必要となる。

 普及モデルにおける「購入要因」とは、購入者の購入行動(購入速度)に影 を与える

要因であり、「Bass モデル」では、「先導購入」、「 随購入」、「市場 模」、および「累積

購入数」の 4 つが基本的な購入要因である。同モデルの発展型モデルでは、これら基本的

購入要因に加え「付加的な購入要因(付加要因)」が取り入れられている。「付加要因」は、

製品の価格、機能、品 、デザイン、広告、および利用できるコンテンツや時間、等製品

に直接かかわるものと、購入者の所得、物価、景気、流行、等直接製品に係わらないもの

とに分 することができる。

 先行研究の紹介では、まず、「 加購入モデル」において、「 加購入数」を「購入者の

購買力」と「社会の製品保有数」の 2つの購入要因により導出する、Bayus, Hong and Labe

(1989)の「 Bass 型モデル」を説明した。また、「置換購入モデル」では、「置換購入数」

を「初回購入数」と「平均使用年数」の 2つの要素によりもとめる Lawrence and Lawton (1981)

の簡素なモデルと、製品の使用年数が確率的に分布すると仮定する Olson and Choi (1985)

および Kamakura and Balasubramanian (1987) 型のモデルについて説明した。さらに、「世

代交代モデル」では、市場 模の 定方法により、「新旧世代製品」の市場が全く同一で

あるモデルと、これら製品の市場は重なりあうが「新世代製品」独自の市場を開拓するた

め市場 模が拡大するモデル、の 2 つに区分できることを説明した。また、後者の例とし

て、コンピューター用のメモリ、等市場が拡大過程にある製品の世代交代を説明する Norton

and Bass (1987)のモデルを紹介した。「価格モデル」では、Kalish (1985)、Kamakura and

Balasubramanian (1988)、Jain and Rao (1990)等、いくつかの代表的先行研究や、価格が「置

換購入」にも影 を与えるモデル、コスト・ラーニング・カーブを採用したモデルについ

て簡単に述べた。最後に、日本のデジタルテレビの普及に関する実証研究としてパイオニ

ア的存在である、山下(1999)の研究を紹介した。

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第Ⅳ章 図

図 4.1.①

出所:Bayus, Hong and Labe(1989)をもとに筆者が作成。

表 4.2.①

出所:Lawrence and Lawton (1981)、538 ページ、Table 22-1。

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図 4.2.①

出所:Lawrence and Lawton (1981)、539 ページ、Figure 22-8。

図 4.2.②

出所:Kamakura and Balasubramanian (1987)、7 ページ、Fig.2。

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図 4.2.③

出所:Norton and Bass (1987)、1070 ページ、Figure 1。