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1 治療のはなし 糖尿病の食事のはなし(基本編) Q. 糖尿病の食事療法って、難しいでしょうか? A. いいえ、そんなことはありません。 糖尿病をお持ちの方にも、そうでない方にも、適正なエネルギー量で、バランスの良い、規則正しい食事は、みん なにとっての健康食です。 糖尿病の食事療法について、基本的なことをお伝えします。 実践的な内容をお知りになりたい方は、糖尿病の食事 のはなし(実践編)もご覧ください。 ただし、高血圧のある方は、減塩が大切です。糖尿病で腎臓の合併症が進行すると、量を控えた方がよい食べ物 があります。(詳しくは糖尿病の食事のはなし(実践編)もご覧ください。) Q. 糖尿病だと、食べてはいけないものがあるのでしょうか? A. いいえ、糖尿病だからといって食べてはいけないものはありません。 食事療法では毎日のちょっとした心がけが大切です。 ゆっくり、よくかんで食べる。 朝食、昼食、夕食を規則正しく食べる。 バランスよく食べる。 食事は腹八分目でストップしておく。 夜遅く、寝る前には食べない。 ちょっとしたことですが、食事療法を効果的にするコツです。うまく続けられないことも、もちろんあります。そ んなときは、時々、好きなものを食べてもよいご褒美の日を作ってもよいでしょう。 食事療法のコツ 1 日に必要なエネルギー量 1 日あたりの適正なエネルギー量の計算には、下の式が用いられます。 体格(身長・体重)と身体活動量で、1 日の食事で摂取する適正なエネルギー量が決まります。性別・年齢・血 糖コントロール・合併症があるかないか、などによって糖尿病の方ごとに状況が異なり、下の計算式に当てはま らない方もいます。実際には、主治医と相談して決めましょう。 1 日の適正なエネルギー量(kcal)=標準体重(kg)(注1)×身体活動量(注2) 糖尿病のある方は、高血圧の予防のために、減塩が大切です。 (男性 1 日 8g 未満、女性 1 日 7g 未満) 減塩とは

治療のはなし - NCGMdmic.ncgm.go.jp/content/040_020_02.pdf1 治療のはなし 糖尿病の食事のはなし(基本編) Q.糖尿病の食事療法って、難しいでしょうか?A.いいえ、そんなことはありません。糖尿病をお持ちの方にも、そうでない方にも、適正なエネルギー量で、バランスの良い、規則正しい食事は、みん

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Page 1: 治療のはなし - NCGMdmic.ncgm.go.jp/content/040_020_02.pdf1 治療のはなし 糖尿病の食事のはなし(基本編) Q.糖尿病の食事療法って、難しいでしょうか?A.いいえ、そんなことはありません。糖尿病をお持ちの方にも、そうでない方にも、適正なエネルギー量で、バランスの良い、規則正しい食事は、みん

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治療のはなし

糖尿病の食事のはなし(基本編)

Q. 糖尿病の食事療法って、難しいでしょうか?A. いいえ、そんなことはありません。糖尿病をお持ちの方にも、そうでない方にも、適正なエネルギー量で、バランスの良い、規則正しい食事は、みん

なにとっての健康食です。

糖尿病の食事療法について、基本的なことをお伝えします。 実践的な内容をお知りになりたい方は、糖尿病の食事

のはなし(実践編)もご覧ください。

ただし、高血圧のある方は、減塩が大切です。糖尿病で腎臓の合併症が進行すると、量を控えた方がよい食べ物があります。( 詳しくは糖尿病の食事のはなし(実践編)もご覧ください。)

Q. 糖尿病だと、食べてはいけないものがあるのでしょうか?A. いいえ、糖尿病だからといって食べてはいけないものはありません。

食事療法では毎日のちょっとした心がけが大切です。

◎ゆっくり、よくかんで食べる。

◎朝食、昼食、夕食を規則正しく食べる。

◎バランスよく食べる。

◎食事は腹八分目でストップしておく。

◎夜遅く、寝る前には食べない。

ちょっとしたことですが、食事療法を効果的にするコツです。うまく続けられないことも、もちろんあります。そ

んなときは、時々、好きなものを食べてもよいご褒美の日を作ってもよいでしょう。

食事療法のコツ

1日に必要なエネルギー量

1 日あたりの適正なエネルギー量の計算には、下の式が用いられます。

体格(身長・体重)と身体活動量で、1日の食事で摂取する適正なエネルギー量が決まります。性別・年齢・血

糖コントロール・合併症があるかないか、などによって糖尿病の方ごとに状況が異なり、下の計算式に当てはま

らない方もいます。実際には、主治医と相談して決めましょう。

1 日の適正なエネルギー量(kcal)=標準体重(kg)(注 1)×身体活動量(注 2)

糖尿病のある方は、高血圧の予防のために、減塩が大切です。

(男性 1日 8g 未満、女性 1日 7g 未満)

減塩とは

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栄養素の配分・バランスのとれた食事

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エネルギーのもととなる三大栄養素は、炭水化物・たんぱく質・脂質です。

◎炭水化物  ブドウ糖となり、私たちのからだのエネルギー源となります。

◎たんぱく質  筋肉や臓器などからだを形作る重要な栄養素です。

◎脂質  からだのエネルギーとなり、ホルモン、細胞などを作る材料となります。

それぞれ、からだの中では欠かすことのできない栄養素です。

また、骨や歯の材料となるのは、カルシウムなどのミネラルです。身体の働きを正常に保つためにも、さまざまなミネラル(鉄・銅・亜鉛など)やビタミンなどが必要です。からだを作り、からだの調子を整えるには、さまざまな栄養素をバランスよく食べることが大切です。

(注 1 )標準体重

 標準体重(kg)= 身長(m)×身長(m)×22

(注 2 )身体活動量

 軽労作(デスクワークが多い職業など):25 ~ 30(kcal/kg 標準体重)

 普通の労作(立ち仕事が多い職業など):30 ~ 35(kcal/kg 標準体重)

 重い労作(力仕事が多い職業など):35 ~(kcal/kg 標準体重)

例:身長 160 センチメートルでデスクワークが多い人の場合 標準体重:1.6(m)×1.6(m)×22=56.3(kg)

 身体活動量:軽労作となるため、身体活動量は、25 ~ 30(kcal/kg 標準体重)

 1日の食事で摂取した方がよい適切なエネルギー量:56.3(kg)×25 ~ 30(kcal/kg 標準体重)=1,400 ~ 1,700(kcal)

 と、計算できます。

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Q. では、バランスのとれた食事とはどんな食事ですか?A. いろいろな栄養素を、適量とるのが、バランスのとれた食事です。

具体的には、主食(ごはん、パン、めん類など)、良質なたんぱく質を含むおかず(魚類、大豆製品、卵、肉類な

ど)、野菜、きのこ、こんにゃく、海藻、乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)、果物など 1日の中でいろいろな食品

を組み合わせて摂取することでバランスのよい食事に近づきます。

栄養相談を受けられる際は、普段召し上がっている食事の写真や食事記録があると、より具体的なアドバイスを

受けることができるかと思います。食事写真や食事記録はどんな形でもけっこうですので、栄養相談の際にお持

ちになるとよいでしょう。

糖尿病のお食事についての実際は、糖尿病の食事のはなし(実践編)をご覧ください。

注:炭水化物、たんぱく質、脂質の配分例

 炭水化物:摂取エネルギーの 50 ~ 60%

 たんぱく質:標準体重 1kg 当たり 1.0 ~ 1.2g(1 日約 50 ~ 80g)

 脂質:摂取エネルギーの 20 ~ 25%

適正なエネルギー量の範囲内で、バランスのよい食事をとるために参考になるのが、「糖尿病食事療法のための食品交換表」です。食品交換表では、私たちが日常食べている食品を、多く含まれている栄養素によって、6つの食品グループ(6つの表)と調味料に分けて、80kcal(1 単位)のエネルギーを含む食品の重量を掲載してい

ます。食品交換表を活用することで、日々の献立づくりの幅が広がります。

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栄養相談を受けるにあたって

図 1:バランスのよい食事

参考文献

渡邊早苗・寺本房子・松崎政三 編・著 Nブックス 三訂 臨床栄養管理 建帛社 2015

日本糖尿病学会 編 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2013 第 3刷 南光堂 2014

日本糖尿病学会 編・著 糖尿病治療ガイド 2014-2015 文光堂 2014

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項目目次

糖尿病ってなに? ・糖尿病ってなに?

 ・メタボってなに?

 ・糖尿病予備群といわれたら

診断と検査 ・糖尿病は早く見つけましょう

 ・糖尿病と関連する検査

 ・日本に糖尿病は何人くらいいるの?

治療のはなし ・糖尿病の治療ってどんなものがあるの?

 ・糖尿病の食事のはなし(基本編)

 ・糖尿病の食事のはなし(実践編)

 ・糖尿病の運動のはなし

 ・低血糖

 ・シックデイ

 ・フットケア

薬のはなし ・薬で血糖値が下がるしくみ

 ・血糖値を下げる飲み薬

 ・血糖値を下げる注射薬

 ・血糖自己測定について

合併症 ・糖尿病の急性合併症のはなし

 ・糖尿病の慢性合併症について知っておき

  ましょう

 ・神経障害

 ・網膜症

 ・腎症 

 ・大血管症

 ・糖尿病足病変

関連する病気 ・感染症

 ・認知症

 ・うつ病

 ・がん

 ・ホルモンの病気と糖尿病

 ・骨粗鬆症

 ・歯周病

糖尿病とともに生きる ・糖尿病と言われたら

 ・働く世代

 ・こども・思春期

 ・妊娠と糖尿病

 ・高齢者

 ・家族が糖尿病と言われたら

 ・糖尿病とお金の話

 ・糖尿病と社会保障、福祉制度

 ・糖尿病の方の災害の備え

 ・糖尿病の方の旅行

・社会全体で糖尿病とむき合う手段(統計情報・疫学

  研究とエビデンスについて)

 

1 型糖尿病 ・1型糖尿病ってどんな病気?

 ・1型糖尿病の治療について

 ・1型糖尿病と付き合っていく

 

 

 

糖尿病情報センターのホームページには下記の項目があります。

閲覧、PDF ダウンロードができますので、ぜひご活用下さい。