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CVTセッション
■ はじめに
閉塞性動脈硬化症のスクリーニングにおいて,ABIは最も普及している検査法といえる.ABIが異常低値や異常高値を呈する場合,心筋梗塞などの心血管イベントの発症が多くなるため,TASC IIにおいて,ABIが0.90以下ならびに1.40を超える場合には潜在性心血管イベントの存在を疑うべきとされている.また,ACC/AHA 末梢動脈疾患診療ガイドライン2011においても0.90以下ならびに1.40以上を異常値としている.また,施設によっては血管内治療の前後で数値を確認し,改善の有無を判断することがルーチン化されている.今回,脈管専門医からみたABIの位置づけについて解説する.
■ ABIで読み解く血管病変
ABIを考える際,数値のみで評価していないだろうか? ABIが0.90以下の場合,下肢動脈に有意な狭窄を疑うが,透析患者や糖尿病患者においては,病変部の石灰化が高度になると重症下肢病変であってもABIが正常値や1.40以上を呈する場合がある.また,血管炎で狭窄している場合もあるため,ABI値のみで動脈硬化を考えるのではなく,血管病としてのABI検査の役割を考える必要がある.他にも,ABIの数値ではなく波形をみることにより,新たな病変が見つかることもある.特に上肢においては,左右の収縮期血圧のうち高い方で計算しているため,上肢血圧に左右差があった場合は波形および上肢血圧の数値を必ず確認する.同時に,検査者にはぜひとも異常波形を確認した場合は主治医に一報連絡する,あるいは実測で血圧値を再確認する習慣づけを依頼したい.
■ ABIを地域診療に活かす
公共交通網の整備が不十分な地方都市においては,自動車が主な交通手段であり,住民の歩行機会が少ないことが推測される.そのため,不認識の動脈硬化を有する市民や,跛行症状を呈しない潜伏性PAD患者の存在が疑われる.このような患者を拾い上げるには,市民講座にABIを導入する方法は有用である.様々な地域でTake ABIが開催されており,当院でも定期的に,「あなたの血管は大丈夫?」として市民講座を開催し,頸動脈エコーによる総頸動脈IMTとABI計測を組み合わせて評価している.昨年は100人の市民に対して検査を行ったところ,内頸動脈狭窄2例,ABIが0.9以下の症例を1例で認めた.また,上腕血圧の左右差が確認された症例も1例存在した.地方都市の高齢者における動脈硬化の進展状況は我々の想定を下回り有病者が少なかったが,検査の都合で人数制限をせざるをえず,健康志向の強い方が応募したことが一因と考えられた.
■ おわりに
ABIは簡便に動脈硬化の評価ができる有用な検査法といえる.脈管専門医としては,単に依頼をして数値結果を確認して下肢動脈の狭窄・閉塞を判断するのみではなく,様々なデータから疾患を読み解く必要がある.さらに,CVTと密に連携し,専門家としての啓蒙活動を行うことも重要な役割と考える.
○濱口 浩敏北播磨総合医療センター神経内科
脈管専門医からみたABI の位置づけC-3