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目次 遠隔映像モニタリング高付加価値化技術 - NTT · 2019-09-02 · 昨今の治安悪化やテロ懸念の増大に伴い、家庭、通学路、空港などさまざまな場所で、監視カメラの設置が急速に進んできています。

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目次�

H-AP-1

H-AP-2

H-AP-3

H-AP-4

H-AP-5

介護予防システム�

次世代型ブログ検索システム(BLOGRANGER)�

コンタクトセンタ業務に革新をもたらす音声処理技術�(コンタクトセンタ音声仲介技術)�

遠隔映像モニタリング高付加価値化技術�

高リアリティ3D CG技術�

放送・広告・音楽・ゲームなどのコンテンツのネットワーク流通を支援・促進するための技術�

copyright(C)2006NTT

介護予防サーバ群�健診システム�データベース�

サーバ��

コンテンツ蓄積�サーバ�

WWW�サーバ�

映像配信�サーバ�

映像通信会議�サーバ�

「おたっしゃ21」�健診用PC�

�データセンター�自治体��

スタジオ�介護施設�

体育館、公民館�介護施設�

フレッツ・ADSL フレッツ・ADSL

iモードセンター�

iモード端末�

DMZ*��ルータ�

�ファイアウォール�

Bフレッツ��

Bフレッツ��

Bフレッツ��

ルータ� ルータ�

モデム��

モデム��

在宅端末�

テレビ�

拠点端末�ライブ配信サーバ�

大型TV、�プロジェクタなど�

管理用PC

ビデオカメラ��

ライブ拠点� 拠点�保健師など� 高齢者宅�

インターネット�

* DMZ : DeMilitarized Zone

NTTサイバーソリューション研究所�

 急速に進展する高齢化社会において、介護費用は年々増加しており、要介護となることを防止したり、たとえ要介護状態になっても、

悪化を食い止めることが急務となっています。�

 NTT研究所では、高齢者が介護状態に陥らないように、運動指導・食事指導などを遠隔で行うため、映像配信技術と多地点TV会議

技術を利用した、介護予防システムを開発しました。高齢者の老化の度合いを測定するため、問診や体力測定を行い、それぞれの

高齢者に最適なプログラムを提供することができます。また、多地点TV会議の映像により、離れている仲間とも一緒に運動教室に

参加できるため、継続性が高められます。配信される映像は、その日の体調(腰が痛い、膝が痛いなど)に合わせて、運動の種類を動的

に変えることが可能です。また、多くの映像コンテンツを用意しているため、各人の運動能力に応じて、少しずつ難易度を高めていく

ことも可能です。高齢者の運動の様子は映像として蓄積されているため、保健師などの管理者が時間の空いている時に映像を確認し、

問題点がある場合はビデオメッセージを利用してアドバイスすることができます。�

 このシステムは、2003年度に北海道美唄市で在宅ハイリスク高齢者への効果を共同実験で検証し、2005年度にテルウェル

西日本株式会社のデイサービスセンターにおいて、比較的軽い要介護者への効果を検証しました。その結果を受け、NTT東日本、

NTT西日本、NTTコミュニケーションズから、自治体や介護事業者などに販売を行っています。�

介護予防システムの構成�

介護予防�

介護予防システム�

H-AP-1

copyright(C)2006NTT

検索語�

感想表現�選択ラベル� リンク先�

選択ラベル� ブロガー�選択ラベル�

検索結果�

トピック�選択ラベル�

分類整理する観点を�タブで切り替え�

NTTサイバーソリューション研究所�

 ブログは、記事の編集作業が容易であることや、記事の更新情報をタイムリーに通知できるなどの特長から、個人による新しい情報

通信メディアとして急速に普及しつつあります。ブログによって配信された情報は、マスメディアでは取り上げられていない最新の

話題や消費者の生の声を多く含み、新しいニュースソースやマーケティング情報としての活用が期待されています。「BLOGRANGER」

は、このようなニーズを満たすために開発したブログ専用の検索エンジンで、キーワード入力による検索結果を有用な4つのフィルタを

通して、多角的に分類・整理することで、膨大なブログ記事の中から、最新の注目記事や消費者の生の声を容易に探し出せるようにし

たものです。�

 具体的な利用方法は、探したい記事に関するキーワードを入力して検索ボタンを押し、さらに4種類のフィルタ選択タブ(「トピック

で選ぶ」、「ブロガーで選ぶ」、「リンク先で選ぶ」、「感想で選ぶ」)のうちの一つをクリックすることで、トピック別、ブロガー別、リンク

先別、感想表現別の4つの視点から検索結果を分類・整理して表示することができます。これらの4つのフィルタを実現するため、

NTT研究所では、検索結果をトピックごとに分類するトピック分類ラベル抽出技術、注目のブロガー(ブログを書く人)を抽出する

情報提供者ランキング技術、記事の参照先リンクを抽出する参照先リンク抽出技術、「面白い」「便利」といった評価表現単位に記事を

分類する評価表現ラベル抽出技術を開発しました。�

 このシステムの技術面・運用面での実用性検証を目的とした公開実験サービスをNTTグループの総合ポータルサイト「goo」に

開設されている実験サイト上で、2005年12月から実施しています。この検証結果をフィードバックし、2006年度内に「goo」の

検索サービスの一つとして商用化される予定です。�

�BLOGRANGERは、日本電信電話株式会社の登録商標です。�

BLOGRANGERのユーザインタフェース�

ブログ 情報検索 サーチエンジン�

次世代型ブログ検索システム(BLOGRANGER)�

H-AP-2

copyright(C)2006NTT

お客さま�

CSR

ワンクリックで�ドキュメント閲覧��

CSR端末の画面イメージ�

話題に応じてドキュメントを自動検索�

プリンタで印刷ができなくて、困っているのですが。�

プリンタのトラブルですね。サービスコールは表示されていますか?�

サービスコール××番の場合についてお答えします。�

NTTサイバースペース研究所�

 お客さまからの申し込み受付、問い合わせ応対を行うコンタクトセンタは、企業の顔として、企業イメージを向上するための重要な

存在となっています。その業務の特性から、(1)顧客に対して品質の高い応対を行う、(2)品質を落とすことなく応対を効率化する、

ことが重要課題として捉えられており、CTI*1、CRM*2といったハード面での投資、あるいはCSR*3の研修などのソフト面での投資が

なされています。企業のサービスの多様化、複雑化に伴い、CSRに求められる業務知識、端末操作が増える反面、CSRの離職、入れ

替わりも多く、コンタクトセンタでは新人の教育に多くの時間を費やしています。�

 コンタクトセンタ音声仲介技術は、音声認識、音声合成、言語処理技術の組み合わせによって、コンタクトセンタの業務改善を実現

するものです。顧客とCSRの応対音声を音声認識によってテキストに変換することで、キーワードによる応対の検索や、応対終了後の

レポート・履歴作成の時間短縮が可能となります。また、顧客との応対内容に応じて、CSRが必要とする情報・文書の候補を自動的に

表示することもできます。これらの技術は、特に経験が少ない初心者CSRの応対品質の向上、効率化において効果を発揮します。

さらに、肉声に近い音声合成が可能となったことから、CSR応対業務のうち、定型的な案内については機械に任せ、応対時間を大幅に

削減することも可能となりました。�

 現在、コンタクトセンタでのフィールドテストを実施して、その効果を定量的に測定しています。NTTグループでは、お客さまとの

接点となる重要なコンタクトセンタを数多く運営しています。こうしたコンタクトセンタでの業務向上を目指して、この技術の導入

展開を推進していきます。さらに、顧客との応対音声には、企業の業績を向上させる重要な情報や、応対を改善するためのヒントが

隠されているため、これらの有効な情報を抽出するスピーチ・マイニング技術の研究も同時に進めていきます。�

�*1 CTI: Computer Telephony Integration�*2 CRM: Customer Relationship Management�*3 CSR: Customer Service Representative (顧客との応対を行う担当者、オペレータ、コミュニケータなどとも呼ばれます。)�

音声認識による自動ドキュメント検索�

音声認識 音声合成 情報検索�

コンタクトセンタ業務に革新をもたらす音声処理技術�(コンタクトセンタ音声仲介技術)�

H-AP-3

copyright(C)2006NTT

動き検出技術��

見守りモニター�

カメラ映像� 動きを検出!� 検出された�動き領域�

長所 : 照明環境の変化に強い�

顔検出技術�

カメラ映像� 顔を検出!� 検出された�顔領域�

長所 : 顔の向きの変化に強い�

メール�送信�

訪問者�不審者�

子供の帰宅�遠隔見守り� 外出先で確認�

人物を検知しました。 駆けつけサービスを依頼する場合は、��http://***.ntt.co.jp��をクリックして下さい。��

11/25 15:28 11/25 15:28 11/25 15:28

動きを検出� 顔を検出�

動き検出画像� 顔検出画像��

ネット�ワーク�

NTTサイバースペース研究所�

 昨今の治安悪化やテロ懸念の増大に伴い、家庭、通学路、空港などさまざまな場所で、監視カメラの設置が急速に進んできています。

ところが、多数のカメラ映像を監視者が常時目視することは事実上困難であり、不審者検知、危険検知に十分に活用できていない、

という問題が浮き彫りになってきました。この問題を解決するため、NTT研究所では、不審者や危険につながる状況の検知に役立つ

画像処理技術の研究開発を進めています。�

 NTT研究所では、映像モニタリングシステムの中で最も基本的な機能である、映像の中で何らかの動きがあったことを検出する

「動き検出技術」、および人の顔を検出する「顔検出技術」を開発しました。動き検出技術は照明環境の変動に強く、顔検出技術は

顔の向きの変動に強いという長所をもっており、さまざまな場所に設置されるカメラ映像において安定的に動作します。また、これらの

技術を活用したホームセキュリティ向けのプロトタイプシステム「見守りモニター」を開発しました。このシステムは、カメラの前に

顔や動いているものが現れたことを検知し、電子メールで通知するシステムです。撮影された画像の中から、顔や動いている物体を

切り出して送付することにより、携帯電話などの小さな画面でも見やすく表示することができます。これらに加え、映像からより高度に

物体や状態を検知する技術の研究開発も進めています。�

 今後、NTTグループ会社との連携の下、開発した画像処理技術を活用して、法人分野での映像監視やタウンセキュリティ*分野に

おいてビジネスを展開していく予定です。また、ホームセキュリティ分野での活用も並行して進めていく予定です。�

�* タウンセキュリティ: 市街地、住宅地など、特定の地域を対象とした防犯のこと。�

動き・顔検出技術を活用した「見守りモニター」�

画像認識 映像監視 ホームセキュリティ�

遠隔映像モニタリング高付加価値化技術�

H-AP-4

copyright(C)2006NTT

マーカー�

カメラ付き携帯電話�での撮影画像�

認識・合成�サーバ�

返信される合成画像�

NTTマイクロシステムインテグレーション研究所�

 NTT研究所では、従来より物体を多方向から撮影し、約10分で写真品質の3次元コンテンツデータを自動生成する撮影装置を

開発してきました。また、生成されたコンテンツデータを実空間の撮影画像中にあるマーカーの位置に違和感なく合成表示するシス

テムの開発を進めてきました。合成表示はPCだけでなく、携帯電話でも実行可能です。さらに、この研究成果の実用化を目標に活動を

行いました。�

 生成した3次元コンテンツデータをWebブラウザで広く利用可能なFlashコンテンツに変換するツールを開発することにより、

一般の家庭用PCからでも商品を写真品質で自由な角度から眺めることが可能になり、オンラインショップなどへの適用を可能にしま

した。�

 また、国立民族学博物館で開催された特別展示に参加して、収蔵物の3次元コンテンツ化と展示物の仮想利用体験が可能な展示

システムを構築しました。大画面の合成表示システムにより、本来なら触れることすらできない貴重な収蔵品を手に触れ、あるいは

着用するなどの体験を仮想的に楽しむことができ、好評を得ました。このような取り組みの結果、いくつかの博物館にシステムを導入

しました。�

 このほか、テレビ局の夏季のイベントでは、仮想的なお面をかぶるアトラクションを提供し、来場者に楽しんでいただいただけで

なく、テレビ番組でも紹介され、その面白さを広くアピールすることができました。�

 さらに、映画会社の協力を得て、お正月映画のプロモーション活動として、鑑賞割引券付きのマーカーをWeb上に掲示し、各家庭の

プリンターでマーカーを印刷、携帯電話で合成を楽しむ公開実験を実施し、キャンペーン効果を確認できました。�

 今後は、以上のような経験を活かし、NTTグループ会社を通してビジネス化を強力に推進していく予定です。�

�Flashは、マクロメディア株式会社の登録商標です。�

携帯電話でのサービス例�

高リアリティ3Dキャプチャ 拡張現実感 画像認識・画像合成 モバイルサービス�

高リアリティ3D CG技術�

H-AP-5

目次�

H-PF-1

H-PF-2

H-PF-3

H-PF-4

H-PF-5

セキュア企業網アクセス制御システム(SENACSY)�

高性能でセキュアなアドレス解決サーバ(SHARE)�

ユビキタスサービス指向プラットフォーム�

非圧縮ハイビジョン対応マルチストリームサーバ�(i-Visto eXmedia server)�

非圧縮HDTV信号6多重無線伝送システム�

著作権管理・決済・配信などの電子商取引やコンテンツ流通ビジネスに不可欠な共通機能を実現するための技術�

copyright(C)2006NTT

外出先�PHS�IPsec����接続プロファイル�

(接続設定情報)��

認証トークン��

ユーザへ�配布�

SENACSY�接続ツール�

ワンクリック��

営業本部LAN 開発本部LAN��

企画部LANDEC GL DEC GL

認証VLAN*1��

社内無線LAN

社内SW直収�

地域IP網�

フレッツ・スポット、�公衆無線LANなど�

mopera/ISP経由�

社内利用時� 社外利用時��

自席�

会議室��

支社・事務所など��

自宅��

ホテル・駅など�

インターネットカフェなど�

検疫ネットワーク��

PHS/携帯で�社内RAS*2利用�

プロファイル発行システムを�用いた管理者の運用フロー��

接続ツールを使用したユーザの利用シーン�

ネットワーク管理者�

SENACSYプロファイル発行システム��発行��

本社��

*1 VLAN: Virtual Local Area Network *2 RAS: Remote Access Service

フレッツ・スポットは、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社の登録商標です。�moperaは、株式会社NTTドコモの登録商標です。�

接続�

接続�

接続�接続�

接続�

接続�

接続�

NTT情報流通プラットフォーム研究所�

 近年、Bフレッツなどの光回線や無線LANシステム等の普及により、ネットワークへの接続環境が広帯域化、多様化し、いつでも

場所を意識せずに、最適な接続手段を用いて、企業LANへの接続を実現したいというニーズが高まっています。このような中、NTT

研究所では、セキュア企業網アクセス制御システム(SENACSY*)の開発を進めてきました。�

 SENACSYを用いて企業LANに接続する場合、ユーザはPCの煩雑な初期設定や場所に応じたネットワークの設定変更・接続

操作を意識したり、通信経路上での盗聴を心配したりする必要はありません。あらかじめネットワーク管理者が発行するプロファイルを

専用の接続ツールに読み込むことで、どこからでもワンクリックで、希望するネットワークまで安心して接続することが可能です。また、

オプションの検疫機能により、PCのセキュリティ状態をチェックして、安全なPCのみ企業LANへの接続を許可することや、危険なPC

を隔離した上で、OSパッチやウイルス定義ファイルを更新するためのネットワーク環境を提供することが、容易に可能となります。�

 このシステムは、2005年度の初めに完成しましたが、2005年度はNTTの研究所内やNTT持株本社ビルへの社内導入を重点的に

進め、システム構築と運用に関するノウハウ蓄積を行いました。その結果、これまでに安定したシステムの稼動実績を積み上げて

います。また、2005年度末には、西日本エリアの大学のお客さまにも商用システムとして提供し、利用を開始いただいています。

今後は、こうした導入実績をベースに、企業や大学のお客さまへの展開を積極的に進めるとともに、モバイル・ユビキタスをキーワード

に、NTTグループのネットワークサービスとの連携を強化し、より広範囲のお客さまに、より便利にお使いいただけるよう開発を進める

予定です。�

�* SENACSY: Secure Enterprise Network Access Control System��Bフレッツは、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社の登録商標です。��

SENACSYの概要�

セキュア企業網アクセス制御システム(SENACSY)�

H-PF-1

VPN IPsec 802.1x PKI 検疫 プロファイル�

copyright(C)2006NTT

SHAREなど��

インターネット上の�権威サーバ�

インターネット�

SHARE�(フルサービスリゾルバ)�

高セキュリティ対策技術��

ユーザ��

ユーザ��

・・・��

発IPアドレス#A��

発IPアドレス#B��DNSクライアント�

初期アクセス網�

閉域網�

●Alternateルート機能�問い合わせ先ドメイン名により閉域網とインターネットにクエリを振り分け可能�

200,000�

150,000�

100,000�

50,000�

0

1.5�

1�

0.5�

0

スループット�平均応答時間�

[query per second]�

[msec]�

SHARE��

Nominum�CNS

BIND9���

SHAREのクエリ処理のスループット・平均応答時間は、ほかのDNS実装より優れている。�また、収容ドメイン数増加時にもほとんどクエリ処理性能が劣化しない特徴を有する。�DDNS*更新性能も100TPS以上を実現している。��

SHARE�(権威サーバ)�

高性能アドレス解決技術��

高セキュリティ対策技術�

VIEW#A��

VIEW#B��

* DDNS: Dynamic updates in the Domain Name System

150,000�

100,000�

50,000�

0

1.5�

1�

0.5�

0

スループット�平均応答時間�

[query per second]�

[msec]�

SHARE��

Nominum�ANS

BIND9���

●発IPアドレス通知機能�SHARE同士の通信では、DNSクライアントの発IPアドレスを権威サーバに通知可能�

●利用者VIEWアクセス制御�発IPアドレスごとにクエリ応答内容を変更可能�

高性能アドレス解決技術��

NTT情報流通プラットフォーム研究所�

 安心・安全なフルIPの次世代ネットワークを実現し、お客さまの多様なニーズにお応えできる多彩なブロードバンド・ユビキタスサー

ビスを提供するためには、人とモノとを含めたあらゆる通信の大規模なアドレス解決が可能な、高性能でセキュアなアドレス解決サーバ

が必要です。このような必要性に応えるために、IPv6対応のDNS*1/ENUM*2/ONS*3サーバ「SHARE*4」を開発しました。�

 SHAREの特長は、市販のDNS製品に比べて、高性能で高セキュリティである点です。高性能を実現している主な技術は、「意味

分割索引(Semantic Division Index)技術」です。この技術によって、BIND*59に比べて同一ハードウェア・ソフトウェア条件で、

数倍~数十倍のスループットを実現しました。特に権威サーバとしては、1ゾーンに管理するドメイン数が、100万エントリー規模に

増加してもほとんど性能劣化を生じない、優れたスケーラビリティを実現しています。SHAREは、ローエンドUNIX・Linuxサーバ上で

動作可能であり、設備投資面でも優れたコストパフォーマンスを実現しました。一方、高セキュリティについては、キャッシュポイゾニング

攻撃やDNS応答を悪用したDoS攻撃などの市販のDNSによく見られる既知のセキュリティ脆弱性を、設計段階から防いでいます。

そのほかにも「利用者Viewアクセスコントロール技術」「発IPアドレス通知技術」などによって、アドレス情報の開示を市販のDNS

製品よりも詳細な分解能で制御可能となり、お客さまのプライバシーをきめ細やかに保護します。SHAREは、2005年3月からNTT

西日本の「フレッツ・光プレミアムサービス」に利用されています。�

 SHAREは、NTTの次世代ネットワークの基幹となるアドレス解決サーバとして、今後も機能拡充を進めていく予定です。�

�*1 DNS: Domain Name System�*2 ENUM: tElephone Number Mapping�*3 ONS: Object Name Service�*4 SHARE: Secure and High-performance Address Resolver�*5 BIND: Berkeley Internet Name Domain��フレッツ・光プレミアムは、西日本電信電話株式会社の登録商標です。�

高性能でセキュアなアドレス解決サーバ(SHARE)�

高性能でセキュアなアドレス解決サーバ(SHARE)�

H-PF-2

DNS ENUM ONS

copyright(C)2006NTT

家電連携サービス�(カメラとセンサ連動した高齢者

見守りなど)�

買い物支援サービス�(ユーザ位置、嗜好に応じ、�近傍機器で商品推薦)�

お好みシナリオサービス�(ポータルサイト機能を自由に�組み合わせ、携帯から利用)�

出張支援サービス�(スケジュールに応じ、家でも�会社でも出張をリマインド)�

乗り物�� 同値関係�

継承関係�

意味関係を用いた柔軟な発見、選択�

コンポーネント��

コンポーネント��

コンポーネント��

サービス記述�(OWL-S*1)�

Webサービス�(WSDL*2、UPnP*3)�

サービス実体�(デバイスなど)�

サービス�シナリオ��

予定表�

地 図� モニター�

�利用する機能を意味的メタデータで抽象記述�

サービスコンポーネントに意味的なメタデータを付与して抽象化�

①シナリオ入力��

③インタフェース� 解決・合成�

サービス�コンポーネント�発見機能�

カテゴリA�

カテゴリB��

特急電車� カテゴリE��

電 車��

Train��

サービス�合成エンジン��

*1 OWL-S: Web Ontology Language for Service   *2 WSDL: Web Service Description Language   *3 UPnP: Universal Plug and Play

②適切な機能発見��

抽象化�

適合するサービスコンポーネントを�発見・インタフェース解決�

NTTネットワークサービスシステム研究所�

 ユビキタスサービス指向プラットフォームは、近い将来のユビキタス環境構築に向けて、ユーザ個人個人に合わせたコンテキスト

アウェアサービスを作り出す技術です。NTT研究所では、この実現にあたり、あらかじめ想定されるすべてのサービスを準備するの

ではなく、ユーザの状況(コンテキスト)に応じて、動的にサービスコンポーネントを発見・合成するアプローチで検討してきました。

具体的には、サービスシナリオをSemantic Web技術を用いて意味的メタデータで記述し、それを解釈実行するサービス合成エン

ジンが実行時にコンテキストに適合するコンポーネントを発見・結合することでサービスを実現します。�

 BPEL*などの市販のサービス連携技術と比べると、厳密にインタフェース指定をするのではなく、意味的メタデータで記述した

シナリオから、実行時に適切なコンポーネントを発見・実行することが特徴です。たとえ適切なものが存在しなくても、意味的に近い

代替のコンポーネントを実行するという柔軟な動作が可能です。2005年度は、この考え方に基づき、プロトタイプ化したサービス

合成エンジンの機能拡張、メタデータ解決機能の充実、エンジン処理の高速化(10,000シナリオ/h以上)に取り組んできました。�

 この技術により、サービスシナリオを記述するだけで、ユーザは多彩なサービスを受けることができます。展開先としては、ポータル

サイト機能をコンポーネントとして組み合わせたお好みシナリオサービス、ホームゲートウェイに合成エンジンを搭載した家電連携サー

ビスなどのソリューションを検討しています。2006年2月には、この技術により構築したショッピング支援システムを青森県五所川原市

エルムの街ショッピングセンターで1カ月間実証実験を行い、好評を得ました。今後は、ユビキタスサービス指向プラットフォームを

より利用しやすくするための、メタデータ自動付与ツール、サービスシナリオ作成エディタなどを充実させていきます。�

�* BPEL: Business Process Execution Language

ユビキタスサービス指向プラットフォームの概要�

ユビキタスサービス指向プラットフォーム�

H-PF-3

ユビキタス サービス指向 サービス合成 Webサービス�

copyright(C)2006NTT

i‐Visto�eXmedia server

i‐Visto�gateway

i‐Visto�eXmedia server

商用IP ネットワーク� LAN

素材アーカイブ�

中継現場� 放送局�

放送局� ポストプロダクション�

ノンリニア編集機�

サーバ間素材転送機能により�遠隔地からも素材を取得�

撮影映像をダイレクトに�サーバに蓄積�

複数の編集者が�同一の素材を利用�

IP網を使って遠隔地から編集�撮影中映像も利用可能�

NTT未来ねっと研究所、NTTネットワークサービスシステム研究所�

 近年、地上波デジタル放送やノンリニア編集システム*1などの普及に伴い、映像の高精細化とデジタル化が急速に進んでいます。

一方、IPネットワークの広帯域化および低価格化も急速に進んでいます。このような背景のもと、NTT研究所では、非圧縮ハイビジョン

映像をはじめとする高品質映像を、IPネットワークを使って蓄積配信できるサーバ、i-Visto eXmedia serverを開発しました。�

 このサーバでは、複数のPCを内部ネットワークで結合したクラスタ構成を採用し、NTT研究所で開発した高速かつ低遅延なクラ

スタ内データ転送技術を実装することにより、最大25Gbit/sの高い同時配信性能を実現しました。この性能は、非圧縮のハイビジョン

映像なら16本を、ハイビジョンVTR品質の圧縮映像なら200本を同時に配信できる性能に相当します。また、同時に複数のユーザ

が、サーバに蓄積されている任意の映像を取り出すことも可能です。i-Visto gatewayを使って、カメラ映像を商用IPネットワーク

経由でリアルタイムに蓄積することもできますので、遠隔地からの複数の中継映像を1本のIPネットワークでサーバに収録すること

も可能です。�

 2005年度は、放送局と共同でさまざまな運用実験を行いました。まず、夏の全国高校野球選手権大会の映像を非圧縮のまま伝送し、

本サーバに収録。サーバの粗編集機能*2を用いて、ニュース素材作成のワークフローに適用できることを実証しました。また、愛・

地球博会場に設置したカメラをIPネットワークを通じて遠隔操作し、その映像を放送局まで伝送。生放送番組の素材として、半年間に

わたり安定的に利用することができました。そのほか、前述の高校野球映像の愛・地球博会場エキスポビジョンへの中継、アムステル

ダムとの遠隔双方向ジャムセッションなど、高品質、低遅延伝送の特長を生かした実証実験を行い、このシステムの優位性と実用レベル

の安定性をユーザとともに実証しました。今後も高機能化開発を推進するとともに、運用実績を積み重ね、商用化を進める予定です。�

�*1 ノンリニア編集システム: ディスクに格納された映像素材を自由に編集することができるコンピュータベースの編集システム。�*2 粗編集機能: 任意の映像の任意のシーンを連続的に取り出す機能。�

i‐Visto eXmedia server を使った映像ネットワークシステム�

非圧縮ハイビジョン対応マルチストリームサーバ�(i-Visto eXmedia server)�

H-PF-4

非圧縮HDTV IPネットワーク伝送�

copyright(C)2006NTT

無線受信機�

10Gbit/s 無線�中継局�

i-Visto

放送局�中継車�

光ファイバ:10Gbit/s

光ファイバ:10Gbit/s同軸/(光ファイバ):�1.5Gbit/s 分配装置�

(i-Visto)��

多重化装置�(i-Visto)�

120GHz帯�ミリ波無線装置�

HEMT増幅器集積�UTC-PDモジュール�

無線送信機�

NTTマイクロシステムインテグレーション研究所、NTTフォトニクス研究所、NTT未来ねっと研究所、NTTネットワークサービスシステム研究所�

 地上波デジタル放送の開始に伴い、放送局では非圧縮ハイビジョン(HDTV*1)信号(伝送速度:1.5Gbit/s)の多重無線伝送に

対するニーズが高まっています。�

 NTT研究所では、ギガビットを大きく超える広帯域伝送を実現するために、120GHz帯ミリ波無線を研究しています。この無線では、

送信機にNTT研究所において開発された高電子移動度トランジスタ(HEMT*2)増幅器付きの単一走行キャリアフォトダイオード

(UTC-PD*3)モジュールを使用しています。送信機の最大出力は10dBmで、直径45cmのカセグレインアンテナを用いた場合の

伝送距離は1.5kmと見積もられています。この無線システムは、10Gbit/sの伝送能力を有しており、世界初となる10ギガビット

イーサネット信号の無線伝送に成功しています。�

 120GHz帯ミリ波無線と、NTT研究所が開発したインターネットHDTVビデオスタジオシステム「i-Visto*4」とを組み合わせる

ことにより、HDTV信号を最大6回線、同時に遅延なく無線伝送することが可能です。i-Vistoゲートウェイは、非圧縮HDTV信号を

リアルタイムで10ギガビットイーサネットなどの光IPネットワーク上に多重して伝送することが可能です。現在、実用化に向けてこの

多重無線伝送システムを用いて、テレビ局との共同実験を実施しています。�

 今後、光ファイバの敷設が困難な中継先やゴルフ場などの大規模中継における遅延や、画像劣化のない映像コンテンツ制作に、

HD非圧縮無線伝送の利用が期待できます。�

�*1 HDTV: High Definition Television�*2 HEMT: High Electron Mobility Transistor�*3 UTC-PD: Uni Traveling Carrier-Photodiode�*4 i-Visto: Internet Video Studio Systems for HDTV Production��

非圧縮HDTV信号6多重無線伝送システム

非圧縮HDTV信号6多重無線伝送システム�

H-PF-5

120GHz帯ミリ波 HDTV映像 非圧縮伝送 チャネル多重�

目次�

H-NW-1

H-NW-2

H-NW-3

H-NW-4

H-NW-5

GEMnet2による遠隔胎児医療診断�

次世代フォトニックネットワークに最適なROADMシステム�

曲げフリー光ファイバコード�

FTTH対応先行光配線キット�

広域ユビキタスネットワーク用ワイヤレスシステム技術�

帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などのネットワーク基盤を実現する技術�

copyright(C)2006NTT

*1 SINET : Science Information Network*2 WDM : Wavelength Division Multiplexing*3 GEANT : The pan-European multi-gigabit research network*4 CENIC : The Corporation for Education Network Initiatives in California

GEANT*3��

CENIC*4Abilene

NTTNTT武蔵野研究武蔵野研究�開発開発センタ��

NTTNTT厚木研究厚木研究�開発開発センタ��

NTTNTT横須賀研究横須賀研究�開発開発センタ��

国立成育国立成育�医療医療センター��

GEMGEMNETNET2Empowered by photonic technologiesEmpowered by photonic technologies

NTT武蔵野研究�開発センタ��

NTT厚木研究�開発センタ��

NTT横須賀研究�開発センタ��

国立成育�医療センター��

GEMNET2Empowered by photonic technologies

日本�

ヨーロッパ�

北アメリカ�

UCSF

ボストン�小児病院�Pacific Wave

Bフレッツ�

遠隔胎児�医療実験�

GEMnet2国際回線�

GEMnet2�WDM*2ネットワーク��

SINET*1

´

NTTサービスインテグレーション基盤研究所�

 胎児医療とは、臓器などに異常があり、生命の危険が高い妊娠10週台後半~30週の胎児に対して、内科的治療や外科手術を施して

生命を救う医療です。日本では専門医が少ないため、希望しても受診できない場合が多いのが現状です。そこで、専用回線や一般の

インターネット網を利用した遠隔医療システムがこれまでにも開発されてきましたが、コストがかかる上に、高精細な映像を瞬時に

送受信して診断を下すには、ネットワークの品質や医療情報セキュリティ確保の面で問題が多いとされてきました。こうした中、NTT

研究所では、遠隔胎児医療の可能性を模索していた国立成育医療センターとの共同検討に着手し、超高速実験ネットワーク

GEMnet2*1を用いた遠隔胎児医療の実現に向けた実験を実施することになりました。高品質で超高速のネットワーク技術を利用

することにより、大容量、低遅延の信号伝送が可能になります。�

 2005年度までに、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)、ボストン小児病院の協力で、ネットワーク性能試験および

映像伝送試験を行い、日米間での検討を開始しました。今後は、これらの成果に基づき、外部の医療機関、学術機関、研究教育ネット

ワークとの連携による日米間の国際協力の下で、国立成育医療センター、UCSFの医療倫理委員会の審査を経て、遠隔胎児医療の

実証実験を実施します。実験では、医療画像MPEG2コーデック*2を用いた3次元超音波スキャナ動画像*3、内視鏡画像伝送、

HDTV*4による高精細な医療動画像伝送の評価を行います。また、ネットワーク技術の観点から、医療情報の秘匿性を確保するための

暗号技術適用法や品質確保技術の検討・評価を行います。�

 この実験の成果を踏まえ、ネットワーク品質・セキュリティ確保などに関するさらなる検討を進めます。さらに、内外の医療機関や

海外教育研究ネットワークとの一層の連携強化を図り、少子高齢化問題に対応する遠隔医療の普及に向けて、よりグローバルな見地

から研究開発ならびにコーディネート活動を進めていきます。�

�*1 GEMnet2: Global Enhanced Multifunctional Network 2 (NTT研究所が、構築・運用する実験用ネットワーク。NTT研究開発センタ間をWDM接続するとともに、国内外の研究教育ネットワークと相互接続。)�

*2 MPEG2コーデック: リアルタイムで映像信号をDVDビデオなどで用いられているMPEG2映像データ圧縮方式に変換/復元する装置。�*3 3次元超音波スキャナ動画像: ディジタル画像処理により3次元画像をリアルタイム表示を可能とする次世代型超音波画像診断装置。�*4 HDTV: High Definition Television��

実験のネットワーク構成�

GEMnet2による遠隔胎児医療診断�

H-NW-1

遠隔胎児医療 研究教育ネットワーク GEMnet2

copyright(C)2006NTT

* DCN:Data Communications Network �

次世代フォトニックネットワークに最適なROADMシステムの特徴は、遠隔からの光パス設定・開通および波長ネットワーク用OSSによる保守の一元化です。�

【ROADMのメリット】�波長単位のAdd/Drop機能により、遠隔からの光パス再構成が可能�

光伝送セクション�

光伝送セクション�

�光パス�

�【OTNレイヤ管理技術の概要】�

A社製ROADM�

A社製ROADM�

B社製ROADM�

B社製ROADM�

A社製ROADM�

DCN*など�

波長ネットワーク用OSS��【波長ネットワーク用OSSのメリット】�

波長ネットワーク用OSSを通してマルチベンダ構成のシステムを管理し、保守を一元化�(OTNレイヤ管理技術を活用)�

ex.32波�

NTTネットワークサービスシステム研究所、NTT未来ねっと研究所、NTTフォトニクス研究所�

 近年、ネットワークのIP化に伴い、フォトニックネットワークシステムへの要求条件が変化してきました。従来の電話や専用線サービス

の伝送だけではなく、需要予測の難しい大容量サービスの迅速な提供や、ネットワークの負荷急増への対応が求められています。

特に最近では、一本の光ファイバで複数の異なる波長を同時に伝送し、ネットワーク容量を飛躍的に増大できるWDM*1技術が注目

されています。NTT研究所では、ネットワーク拠点間の高スループットな相互接続を確保するとともに、WDM信号中の任意の波長を

ネットワーク拠点で分岐挿入可能にしたシステムの開発に取り組み、次世代フォトニックネットワークの構築に最適なROADM*2シス

テムを開発しました。�

 ROADMシステムは、遠隔からの波長パスの設定・開通が可能なリング型のフォトニックネットワークシステムです。遠隔からの

設定・開通を可能とするため、NTT固有技術である波長合分波器、光スイッチを具備したROADMサブボード(任意の波長を選択

可能なサブシステム)を採用しています。また、世界標準であるOTN*3管理方式と波長ネットワーク用OSS*4を世界に先駆けて実装し、

波長パスの管理および故障評定方式を確立しました。このシステムを活用することにより、需要変動を面的に吸収し、かつ迅速に

さまざまなルータ間、スイッチ間にトランスポート機能を提供できます。また、統一された保守インタフェースを用いて、フォトニックネット

ワークを運用することが可能となります。�

 今後は、システムの多波長化、大容量化とリング長の長延化に取り組み、IPネットワークへのマイグレーションに対応した開発を

推進する予定です。�

�*1 WDM: Wavelength Division Multiplexing�*2 ROADM: Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer�*3 OTN: Optical Transport Network�*4 OSS: Operation Support System��

ROADMシステムの主な特徴�

次世代フォトニックネットワークに最適なROADMシステム�

H-NW-2

ROADM光スイッチング技術 PLC光スイッチ技術 OTN技術 マルチレイヤ管理技術�

copyright(C)2006NTT

宅内配線への適用例��

光LANなどへの適用例��

直角曲げ状態� 折り返し状態� 結び状態��

束ね状態��

PC��

光コンセント�(光コネクタローゼット)�

ONU*1��

曲げフリー光ファイバコード��

ルータ�

光情報コンセント��

メディアコンバータ��

UTP*2ケーブル��

スイッチ��

曲げフリー光ファイバコード��

*1 ONU: Optical Network Unit   *2 UTP: Unshielded Twist Pair cable

NTTアクセスサービスシステム研究所�

 光サービスの急速な普及により、一般の家庭内に光ファイバが配線されているのが当たり前の時代になりつつあります。今後さらに

光ファイバ回線を短期間で大量に開通していく中で、お客さまに十分に満足していただけるように配線するには、専門的な知識が

なくても、メタルコード並みに取り扱え、簡単かつ美しく光ファイバを配線できる方法が望まれています。これらの要望に対応するため、

NTT研究所では、「曲げ」「折り」「結び」が自在な、メタルコード同様に取り扱える光ファイバコードの開発をコンセプトに取り組み

ました。�

 この光ファイバコードは、曲げに強い「ホーリーファイバ*1」と、それを保護する「コード被覆部」、および「防塵機能付きコネクタ」

から構成されています。ホーリーファイバは、コア部に高屈折率ガラス、その外周のクラッド部に空孔付きガラスを有する空孔アシスト

型ファイバを使用し、飛躍的な許容曲率半径の縮小化を実現しています。コード被覆部は、外径を4mmφとし、曲げたり踏みつけたり

しても、中の光ファイバへの負担を軽減する構造としています。また、取り扱い性が悪くならないように、しなやかに曲がる柔軟な

材料を採用し、光ファイバの余長部分を結んだり束ねたりしても、通信に影響を与えないだけでなく、解いた時にコードに癖がつき

にくいという点も特長の一つです。防塵機能付きコネクタは、標準のSCコネクタ*2と互換性があり、シャッター機構により光ファイバ

先端を保護する防塵機能などを有しています。�

 この光ファイバコードは、家庭内に光コンセント*3さえあれば、市販の延長用の電気コードや電話コードを配線するように、特別な

光の専門知識がなくても簡単に宅内の光ファイバ配線工事ができるようになります。また、光LANなどへも適用することができます。�

 今後、この光ファイバコードは、光サービスの普及拡大へ貢献することが期待できます。�

�*1 ホーリーファイバ: 空孔構造を有する光ファイバの総称。代表例に空孔アシスト型(高屈折率コア、数個の空孔)、フォトニック結晶型(石英ガラスコア、数十個の空孔)、フォトニックバンドキャップ型(中空コア、数十個の空孔)などがあります。�

*2 SCコネクタ: NTT研究所の基礎研究段階からの光部品開発によって生み出された光コネクタ。加入者系の光アクセスシステムの開発と共に経済化光コネクタとして誕生し、事実上世界標準の光コネクタとなっています。�

*3 光コンセント: 光のコネクタインタフェースを有し、スイッチボックスにはめこむ「埋め込みタイプ」と、壁面に設置する「露出タイプ」があります。�

曲げフリー光ファイバコードの適用例��

曲げフリー光ファイバコード�

H-NW-3

ホーリーファイバ 光ファイバコード SCコネクタ�

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屋外側��

屋内側��

(SCタイプ)�

SCタイプ�

MUタイプ�

カバー�

正面� 背面�

配管�

短ブーツ装着�

(伸長状態)�

従来ブーツ装着�

光カールコード� 通線ひも�

ドロップ光ファイバ�

曲げフリー光ファイバコードなど�

情報端末�

ONU*

光カールコード�戻り防止部材�

光アウトレット�(埋め込み型)�

ユーザ設置光キャビネット�

引き込み用けん引端�

光カールコード�(短ブーツ光コネクタ)�

配管(Φ16mm)�

*ONU:Optical Network Unit

NTTアクセスサービスシステム研究所�

 2010年の3,000万光アクセス化に向けて、今後想定されるFTTH大量開通時代に備えるためには、住宅内光配線工事の作業

効率を向上させて、短期間に大量に開通することが必要となります。そこでNTT研究所では、住宅内光配線工事のスキルレス化と

工事時間短縮を実現する「FTTH対応先行光配線キット」を開発しました。このキットは、光配線用配管が整備されている住宅を対象

として、光カールコードを用いた配管配線技術、および配線に必要な各種物品から構成され、従来NTTが実施してきた住宅内光配線

工事を、だれでも簡単に実施することができます。�

 FTTH対応先行光配線キットを用いた住宅内光配線イメージを図に示します。屋外のユーザ設置光キャビネットから宅内の光アウト

レットまでの光配線に必要な物品一式をキット化しています。このキットの特長は、両端に光コネクタの付いた伸縮性の高い光カール

コードを配管配線に用いることです。光カールコードの伸縮性により、長さが異なる配管でも同じ仕様の光カールコードが使用可能

となり、余長を配管内に吸収できるため、光ファイバの余長処理作業が不要となります。また、両端光コネクタ付き光カールコードに

より、現場でのコネクタ取り付け作業も不要となります。そのほか、光カールコードを配管配線するために必要な物品として、光コネ

クタに装着して光カールコードを配管内でけん引する引き込み用けん引端、光カールコードが収縮して配管内に吸い込まれることを

防止する光カールコード戻り防止部材も開発しました。また、従来のブーツを約4分の1に短尺化(7mm)した光コネクタも開発し、

光キャビネットや光アウトレットなどの光配線物品の小型化も可能にしました。�

 FTTH対応先行光配線キットは、2006年度中の商用化を目指した取り組みを進めています。また、住宅内光インフラ構築のための

スキルレスな光配線物品のメニュー化に向けた研究開発をより一層推進します。�

住宅内光配線イメージ�

FTTH対応先行光配線キット�

H-NW-4

FTTH 宅内配線 先行光配線�

copyright(C)2006NTT

DB��

IP ネットワーク��

: 広域ユビキタスネットワーク用無線端末��

固定CO2センサ�

移動CO2センサ�

交通量把握�

位置確認�在庫・待ち客情報�

CO2排出量�

運転情報・警告�

個別環境負荷評価�

沿道遮蔽度�

緑地化度�

経路選択�

NTT未来ねっと研究所�

 公共空間、一般家庭、工場、森林や海洋などからもたらされるさまざまなセンシング情報を、センサを用いて収集、応用する、あるいは

アクチュエータ*1を駆動して制御・管理することで、安心・安全でより便利な社会を実現するため、NTT研究所では、超小型無線端末

を用いた広域ユビキタスネットワークの研究開発を進めてきました。一般に、センサやアクチュエータの取り扱うデータ量は小さく、

またバッテリ駆動での長寿命化が求められることから、この研究では、無線区間におけるデータ伝送速度を低速な9,600bit/s程度

とし、距離減衰が小さく、回折による電波の回りこみが期待できるVHF*2帯やUHF*3帯の周波数を利用して、数kmのセル半径と

することにより、無線端末の小型化、低消費電力化とネットワークの広域化、経済化を実現する各種技術開発をフィールド実験と併せて

進めてきました。�

 具体的には、広域ユビキタスネットワークへのサービス要求条件から無線区間におけるシステム要求条件を整理し、センサやアク

チュエータなどのユーザ端末とのインタフェース仕様、広域ユビキタスネットワーク装置とのインタフェース仕様、および無線インタ

フェース仕様をまとめました。特に、無線インタフェース仕様では、基地局と無線端末間の機能分担を整理し、適用するセル構成、ダイ

バーシチ*4、誤り制御および変復調技術などの、ワイヤレスシステム技術に関する計算機シミュレーション結果を基に、システム諸元を

まとめました。さらに、フィールド試験で得られた結果を用いた無線回線設計から、無線方式設計条件をまとめました。�

 今後は、得られた無線方式設計条件の妥当性を室内実験、フィールド実験で検証するとともに、商用化に向けたワイヤレスシステム

技術の研究開発に取り組んでいきます。�

�*1 アクチュエータ: 入力されたエネルギーを物理運動量に変換するものであり、機械・電気回路の構成要素です。電気モータが最も代表的なアクチュエータであり、電気エネルギーから機械エネルギーへの変換を行っています。�

*2 VHF: Very High Frequency�*3 UHF: Ultra High Frequency�*4 ダイバーシチ: フェージングなどの無線特有の現象に起因する受信信号レベルの変動を補償して、通信品質を向上させる技術です。ダイバーシチには、複数の受信アンテナを用いて信号を受信し、受信レベルの高いアンテナを選択する方法や、受信信号を合成する方法などがあります。�

広域ユビキタスネットワークのシステムイメージ�

広域ユビキタスネットワーク用ワイヤレスシステム技術�

H-NW-5

広域ユビキタス ワイヤレスシステム�

目次�

H-SW-1

H-SW-2

H-SW-3

TypeB-ICチップ対応携帯電話 ー愛知万博実証実験ー�

オゾンサンプラー技術�

高周波インバータ方式蛍光灯用電磁妨害波抑制技術�

ユビキタスサービスを実現する端末技術およびソリューションビジネスにつながるソフトウエア技術�

copyright(C)2006NTT

miniSD�ELWISE��

TypeB-ICチップ�対応携帯電話�

(NTTドコモ開発)�

①電子チケット��

⑤写真プリント��

④電子マネー��

②電子ポスター��

③コンテンツ再生��

電子チケットを使って入場�

お気に入りの写真から情報入手�

iモード経由でお気に入りの写真の関連情報を入手し、miniSDへ格納�

miniSDをPCに差し替え、�iモードから取得した情報を利用してコンテンツ再生�

お気に入りの写真をプリント�

電子マネーを使って買い物�

NTTサービスインテグレーション基盤研究所�

 2004年度に開発したTypeB*1-ICチップ搭載miniSDカード*2(miniSD ELWISE)をTypeB-ICチップ対応携帯電話(NTTドコモ

開発)のminiSDスロットへ搭載することにより、大容量、着脱可という特徴に加え、SDインタフェース経由のiアプリとICチップ間

の接触通信、および外部端末との非接触通信を行うことができます。これらの特長を活かした実証実験システムにより、miniSD ELWISE、

およびTypeB-ICチップ対応携帯電話の連携サービスについて、評価・検証しました。�

 2005年7月28日から30日に愛知万博会場において、miniSD ELWISEとTypeB-ICチップ対応携帯電話を用いた実証実験

を、NTTグループ会社と共同で実施しました。両者を組み合わせた多目的利用に関する実証実験として、写真展の中で来場者に

両者を貸し出し、コンテンツ再生サービスや電子チケットサービスなどを体験していただきました。来場者のアンケート結果より、

miniSD ELWISEの着脱性、および非接触利用を契機としたiアプリ連携起動について、操作性の観点から評価されました。今回

の実証実験は、マスメディアにも取り上げられ(掲載16件)、研究成果を内外にアピールすることができました。�

 両者を組み合わせることにより、PCやデジタル家電と連携したコンテンツ配信や、非接触ICカード通信規格の国際標準準拠が

必要なサービスの携帯電話での利用が期待できます。さらに、iモードのネットワーク機能を使い、ICチップに対してサービスを追加

することも可能となります。�

 今後は、この評価結果をベースに多目的ICカードELWISEの展開に向けたサービス検討を進めていく予定です。�

�*1 TypeB: ISO14443で規定された非接触ICカード通信手順の一つ。�*2 miniSDカード: 携帯電話などに組み込むため、小型化されたSDカード、SD Associationにて仕様を規定。��miniSDは、SD Associationの商標です。�iモード、iアプリは、株式会社NTTドコモの登録商標です。�ELWISEは、日本電信電話株式会社の登録商標です。�

実証実験概要�

TypeB-ICチップ対応携帯電話 -愛知万博実証実験-�

H-SW-1

非接触ICカード 携帯電話�

copyright(C)2006NTT

色素材料�

オゾン:O3

薬紙/多孔質ガラス�

ほかのガス�

原理��

チーズ加工工場での使用例��

薬紙の色が変化して、被爆量が目視できる� オゾン曝露��

曝露前��

NTT環境エネルギー研究所�

 オゾンは、そのすぐれた洗浄・殺菌能力から、食品加工、清掃、洗浄業を始め、浄水場での塩素に変わる殺菌剤として、幅広く用いら

れる物質となってきました。しかし、成層圏のオゾン層とは異なり、身の回りにあるオゾンには環境基準が設けられ、大気汚染物質と

位置付けられています。すでにアメリカでは、オゾンが今後警戒すべき物質とされ、日本においても、国立環境研究所が21世紀を

「光化学オキシダントの世紀」と位置付けて警鐘を鳴らし、地表面のオゾン濃度増加に対する危機感が増しています。NTT研究所では、

身の回りに存在するオゾンを簡単な蓄積型サンプラーにより測定する方法を開発しました。�

 NTT研究所では、特定の色素を挿入した多孔質ガラス*に、二酸化炭素や窒素酸化物などを吸着させ、ガラスの透過率変化を測定

することで定量化するセンサを開発してきました。この原理を利用し、ある色素がオゾンと反応して脱色反応が起こることに着目、

オゾンの測定が可能になることを確認しました。多孔質ガラスは、膨大な表面積を有するため、非常に低濃度のオゾンであっても、

目視で確認できるほどの退色が起こります。この退色によって、オゾンにどれだけさらされていたかが簡単にわかります。また、小さく

軽いガラスをバッチ型にし、各自の胸などにつけ、個人のオゾン曝露量が評価できるように工夫しました。�

 アメリカでは、水道局や食品包装、洗浄業など、オゾン環境で働く人々に1日8時間のオゾン曝露量基準が設けられており、各自が

退色によって、すぐに確認できる技術として着目され、すでにテストセールで好評を得ています。�

 オゾンは、今後も工業的・商用的に応用用途が広がっていくと考えられ、身の回りのオゾン濃度はより高まって汚染物質となって

いくと考えられます。開発したオゾンサンプラーを市場に展開し、見えない脅威を見えるようにし、さらにユーザの声を研究開発に

取り入れることで、より市場に適合した製品を開発していく予定です。また、オゾン以外の有害汚染物質についての研究を展開する

予定です。�

�* 多孔質ガラス: 非常に小さな穴が無数にあいたガラス。�

オゾンサンプラーの原理・使用例・退色�

オゾンサンプラー技術�

H-SW-2

化学センサ ユビキタスセンサ�

copyright(C)2006NTT

電子安定器内部�

製品外観�

LCフィルタ�(定常電磁妨害波抑制回路)��

過渡電磁妨害波抑制回路�

NTT環境エネルギー研究所�

 医療機器などに代表される電磁妨害波に敏感な精密機器が設置されている環境では、電子機器から放射される電磁妨害波が、

それら機器動作に影響を及ぼすことが危惧されているため、電磁妨害波を抑制する技術が重要です。最近のパワーエレクトロニクス

技術の進展により、比較的高い周波数でスイッチングを行って省エネ効果をもたらすインバータ技術が搭載された機器(例えば蛍光灯

など)が多数市場に出回っています。電磁妨害波を多量に発生するため、EMC*(電磁環境両立性)の問題を未然に防ぐ必要があります。�

 従来から照明用に使用されているラピッドスタート方式蛍光灯器具は、電磁雑音が比較的少なく、これらの機器などへの影響が

少ないことが知られていましたが、省エネ効果がないという欠点がありました。一方、市販されているインバータ蛍光灯は、電磁雑音

レベルが大きく、またスイッチ操作により発生する過渡電磁雑音が著しく大きいため、省エネを目的として従来の照明器具と交換すると、

EMC問題が発生する危険性がありました。こうした問題を解決するため、電磁妨害波抑制技術と、過渡電磁妨害波抑制技術を開発し

ました。また、35%の省エネを達成し、RoHS規格準拠、水銀利用量の少ない細蛍光管採用などの特長を有した高周波インバータ

方式電子安定器搭載蛍光灯器具を開発しました。(単相100V用と単相200V用を用意)�

 NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズに成果提供を実施し、NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)より商品化展開

を行っており、NTTグループ会社でも通信機械室の壁照明の更改に本品を導入予定です。また、通信装置架照明についても、NTT

グループ会社への導入が検討されています。さらに、電磁妨害波に敏感な医療機器が置かれる環境(病院など)の照明器具としての

販売も、NTT-ATより予定されています。�

�* EMC: ElectroMagnetic Compatibility

電磁妨害波抑制技術の高周波インバータ方式蛍光灯用電子安定器への実装状況�

高周波インバータ方式蛍光灯用電磁妨害波抑制技術�

H-SW-3

EMC 機械室蛍光灯 省エネルギー�

目次�

H-CT-1

H-CT-2

H-CT-3

H-CT-4

H-CT-5

10Gbit/s級APD-ROSAモジュール�

光電融合型高速シリアル-パラレル双方向素子(OCTA)�

未来の電話 : t-Room�

核スピン量子コンピュータに向けた核スピンの精密制御�

フォトニック結晶ナノ光共振器を用いた光スイッチ�

光デバイス、材料科学や情報科学など次代を担う先端技術�

copyright(C)2006NTT

NTTフォトニクス研究所�

 近年のインターネットや携帯電話の急速な普及に伴い、通信トラフィックは増加の一途をたどっており、通信システムの高速、

大容量化への要望が高まっています。これを受けて、10Gbit/s級光通信システムの導入が進められていますが、コアネットワーク

およびメトロネットワークの経済化を実現するためには、ノード間の伝送距離延伸が有効です。システムに用いられるキー部品の

一つに受光モジュールがあります。現在、広く用いられているpinフォトダイオードと比較し、素子自体に増幅機能を持つアバランシェ

フォトダイオード(APD*1)は受信感度が高く、光アンプを用いることなく伝送距離の延伸が可能なことから、ネットワークの経済化に

大きなインパクトを与えます。�

 NTT研究所では、新しい素子構造のAPDを考案し、高信頼化、高歩留まり化を実現するとともに、このAPD素子とトランスインピー

ダンスアンプを実装した小型、低コストなROSA*2と呼ばれるモジュールを開発しました。開発したモジュールは、業界標準のXMD-

MSA*3規格に準拠しており、光および電気インタフェースとして、LC型レセプタクルおよびフレキシブルプリント基板を備えています。

波長1.55μm、伝送レート10.7Gbit/sのNRZ*4光信号に対する最小受信感度は-27.0dBmで、このモジュールが10Gbit/s級

光通信システムへ十分に適用できるという良好な結果を得ました。�

 10Gbit/s級APD-ROSAモジュールは、2006年度にNTTグループ会社から製品化の予定です。�

�*1 APD: Avalanche Photodiode�*2 ROSA: Receiver Optical Sub Assembly �*3 XMD-MSA: 10-Gbit/s Miniature Device-Multi Source Agreement�*4 NRZ: Non Return to Zero

10Gbit/s級APD-ROSAモジュールの外観写真�

アバランシェフォトダイオード XMD-MSA ROSA 光通信システム 受信感度�

10Gbit/s級APD-ROSAモジュール�

H-CT-1

copyright(C)2006NTT

電気クロック�発生器��

P ペイロードP��

入力パケット� 出力パケット��

L P L′�

光クロック�発生器��

入力ラベルL

L

SP変換�トリガー�

PS変換�トリガー�

出力ラベルL′�1×2�スイッチ��

光変調器��L′�

PD��

2mm

CMOS�回路�

OCTA

NTTフォトニクス研究所�

 将来の光パケットスイッチルータの実現には、高速非同期光パケットに対するラベル認識・交換機能が必要不可欠です。これまで

NTT研究所では、シリアル-パラレル(SP)変換器とパラレル-シリアル(PS)変換器を開発し、入出力光ラベルとCMOS*1回路間の

インタフェースに用いることで、ラベル処理を実現しました。しかし、将来の大容量ルータには、多数の光ラベル処理器が必要であり、

さらなる小型、低消費電力化が要求されます。今回NTT研究所では、SP/PS双方向変換機能を有する新たな光クロックトランジスタ

アレイ(OCTA*2)を提案・作製しました。�

 入力光パケットのラベルは、ペイロード*3から切り離され、PD*4と光クロック発生器に入力されます。PDは入力ラベルを電気信号に

変換し、光クロック発生器は入力パケットに同期した単一光パルスを発生します。OCTAは、この光パルスをトリガーとして、高速シリアル

な入力ラベル電気信号を低速パラレル信号に変換し、CMOS回路に書き込みます(SP変換)。CMOS回路では、ラベルのアドレス

情報が抽出され、出力ラベルが決定されます。新たなラベルは、CMOS回路から並列信号としてOCTAに供給され、光トリガーの照射に

より、シリアル電気信号へ変換されます(PS変換)。さらに、そのラベルは光変調器で光信号に変換され、ペイロードと結合されること

により、光パケットのラベル交換が完了されます。実験では、40Gbit/s、8ビットラベルのSP/PS双方向変換動作を実証しました。�

 今回新たに作製したOCTAは、1チップで高速信号とCMOS回路間のインタフェースが可能であり、光ラベル処理器などの低コスト、

低消費電力、小型化が期待されます。今後は、光ラベル処理器のモジュール化を行い、光パケットルータへの適用を目指します。�

�*1 CMOS: Complementary Metal Oxide Semiconductor�*2 OCTA: Optically Clocked Transistor Array�*3 ペイロード: 通信パケットのうちラベル部分(行き先などの付加情報)を除いた、本来転送したいデータ本体のことを指します。�*4 PD: Photodetector�

ラベル交換の動作原理とOCTAチップ�

光電子回路 光パケットスイッチ�

光電融合型高速シリアル-パラレル双方向素子(OCTA)�

H-CT-2

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デモ展示模様 ��

t-Roomのハードウェア構成�

遠隔地に同じシステムを配置、ネットワークで接続�

ディスプレイとカメラ、スピーカーとマイクの配置�

時差のある会議への参加�

京都�

音サーバ�

画像サーバ�

対面のカメラで部屋の様子を撮影して対地に送信�

過去のコラボレーションに重畳して参加ができる�

厚木�

音サーバ�

画像サーバ�

過去の会議に参加�Aさんが参加した�過去の会議に参加�

Aさん�Aさん�

数日後�

時間がないから、�少し早送りして…�

Aさん�Aさん�

今の意見�もう一度聞こう�

Aさん�Bさん�

横から見た図�

マイク�

スピーカー�スピーカー�

カメラaディスプレイb

上から見た図�

カメラa

ディスプレイb

過去の映像を再生� 過去の映像に重畳して録画�

NTTコミュニケーション科学基礎研究所�

 せっかくテレビ会議システムがあっても、やはり直接面談して話をしなければならないと思う状況は、相変わらず多いのではない

でしょうか。従来のテレビ会議システムでは、品質の高い映像音響や仮想現実技術を用いて、高臨場感を作り出そうとしていました。

しかし従来のシステムでは、同じ部屋にいる人との間なら当然成立するような以下の状況を伝えることができませんでした。�

 Aさんの斜め向かいにBさんがいれば、BさんからもAさんは斜め向かいに見えます。Aさんから見たBさんとの距離と、Bさんから

見たAさんとの距離は当然同じです。Aさんが移動すれば、Bさんの見える向きや距離が変わりますが、Bさんからも変わります。その

動きを端でみているCさんには、2人の位置関係がすぐに伝わります。同じ部屋にいる場合には、当然伝わることが、従来のテレビ会議

システムでは伝えられませんでした。NTT研究所では、あたかも同じ部屋にいるかのような感覚のことを「同室感」と名付け、遠隔地

にいる人々に、そしてさらに時差のある場所にいる人々に、同室感をもたらすようなテレビ会議システム「t-Room」を開発しました。�

 2005年6月に開催されたNTTコミュニケーション科学基礎研究所オープンハウス2005では、来場された多数のお客さまに

実際に同室感を体験していただき、大変な好評を得ました。同年12月には、t-RoomのオフィシャルWebサイト「未来の電話」

(http://www.mirainodenwa.com/)を開設しました。このサイトには、t-Roomの技術解説やダウンロード可能なデモビデオ

(11分)など、t-Roomに関するさまざまな情報が掲載されています。時差のある場所にいる人に同室感を与えるためには、t-Room内

での前の会議を記録しておいて、その様子を再生しながら現在の会議を進めていきます。さらにその現在の会議の様子が、未来の

会議で再生されます。この会議の再生は、あたかも電子メールにおけるテキストの引用のような役割を果たします。ぜひサイト内の

デモビデオをご覧ください。�

 NTT研究所は、t-Roomを未来の電話だと考えています。t-Roomを通じてさまざまな通信サービスを提供し、t-Roomを通じて

携帯電話にもPCにもつながり、t-Roomを通じて人と人とがコミュニケーションする。t-Roomの無限の可能性に期待してください。���

t-Roomの仕組みとデモ展示模様�

テレビ会議 大型ディスプレイ 没入型遠隔コラボレーション環境�

未来の電話 : t-Room

H-CT-3

copyright(C)2006NTT

cm

ICパッケージ上の�半導体チップ���

デバイス中心部�

3

33

2

22

1

11

4

44

5

55

周波数(MHz)�

ナノ領域の69,71Ga、�75Asを制御��

バックゲート�

バリア�

チャネル��

GaAs

絶縁体��

高周波電流��

パルス幅(ms)�

アンテナゲート��

実験に用いた半導体チップ、その中に作りこまれたナノデバイスの概略図、ならびにAsのNMR共鳴周波数近傍で観測されたナノデバイスの抵抗変化のカラープロット。Asの特徴である4つの状態間のさまざまな量子力学的遷移が精密に制御され明瞭な振動が観測されている。�

交流振動磁界�交流振動磁界�0.8�

0.6�

0.4�

0.2�

0.040.20 40.25 40.30

NTT物性科学基礎研究所�

 量子力学の特性を利用すると0か1かではなく、0と1の任意の重ね合わせが可能な、まったく新しい量子力学的なビット(量子ビット)

が可能になります。これを集積すると、量子コンピュータが実現されます。この実現に向けた研究では、どのようにして理想的な量子

ビットを作るかが最大の課題になります。周囲の影響を受けずに、量子力学的な性質が長時間保てる核スピンも有力な候補であり、

核スピンをいかに固体中でうまく制御するかが大きな課題になっていました。�

 NTT研究所では、高品質半導体の薄膜中に閉じ込められた電子が、極低温強磁場中で分数量子ホール効果という特殊な状態を

作る時に、条件によって電子と核スピンの強い結合が生じることを確認しました。さらに、この現象をナノ領域での核スピンの精密

制御に応用することに成功しました。コンパクトに集積化された構造を用いることにより、これまでにない高精度な核スピン制御が

可能になり、ナノデバイスを構成するGa、Asのすべての核に対し、それらに特有な4つに分裂した状態間の量子力学的な重ね合わせが

任意に制御できることが確認されました。�

 これは複数の量子状態を持つ核スピンを、世界で初めて精密に制御したものです。ナノデバイスで、しかも全電気的に核スピンが

制御できたことで、規模拡大可能な核スピン量子コンピュータに一歩近づきました。また、この技術は極めて少量の物質を対象にした

ナノスケールの新しいNMR*(核磁気共鳴)技術としても魅力的なものです。�

�* NMR: Nuclear Magnetic Resonance

半導体ナノスケールデバイスにおける核スピンのコヒーレント制御�

量子コンピュータ 半導体ナノデバイス 核スピン�

核スピン量子コンピュータに向けた核スピンの精密制御�

H-CT-4

copyright(C)2006NTT

フォトニック結晶ナノ共振器光スイッチの構造��

共振器の透過スペクトルと動作原理��

全光スイッチング動作�

全光双安定メモリ動作�

穴の周期は400nm 出力導波路��

入力導波路�

電子顕微鏡写真� 模式図�超小型共振器�

0�

-5�

-10�

-15�

-20�

-25�

-30�

-351500 1520 1540 1560 1580

Wavelength(nm)�

Transmittance(dB)� OFF ON

mode B�(signal)

mode A�(control)

λ�A�

1�

0.1�

0.01�

-200 0 200 400 600Time (ps)

Signal transmission (a.u.)

ON

OFF

50(ps)�

267(ps)�

δ=-0.45(nm)�δ= 0.01(nm)�

100�

10-1�

10-2�

0 400 800 1200

100�

10-1�

10-2�

10-3�

10-4

Time (ps)

Power out (a.u.)

Power in (a.u.)

Set

mode B mode A

OFF

OFF

ON ON

Reset

(2)�

(1)�(3)�

(1)制御パルスなし (2)setパルスのみ (3)set & resetパルス��

NTT物性科学基礎研究所�

 Bフレッツに代表される光技術は、近年ネットワークのさまざまな個所に適用され、情報通信の高速大容量化に役立っていますが、

光技術は電子技術と比べた場合、素子サイズが大きい、信号処理の消費電力が大きいという問題がありました。NTT研究所では、

従来からこの根源的な弱点を克服するために、ナノ加工技術で作製するフォトニック結晶と呼ばれる人工的な屈折率の周期構造を

用いて、光を強く閉じ込め、相互作用を増強することを目指してきました。�

 フォトニック結晶を用いると、従来技術では不可能な超小型の共振器が実現可能となりますが、そのような超小型共振器を用いると、

消費電力を劇的に低減できることが理論的に予測されていました。NTT研究所では、シリコンフォトニック結晶中の超小型光共振器と

導波路により構成される光スイッチを、世界に先駆けて実現しました。この素子は、2つの共振モードを持つ共振器で構成されており、

0.1立方ミクロンの体積に光が閉じ込められています。2個のモードを信号光と制御光として用い、制御光により信号光の共振波長

をシフトすることでスイッチ動作を実現しています。スイッチ速度は100ピコ秒*1、動作エネルギーは100フェムトジュール*2であり、

シリコンを用いた光スイッチとしては、世界で最も低エネルギーで動作しています。この素子は、双安定メモリ動作しているため、

論理処理に適用可能であり、チップ内に多数個集積可能であることから、実現困難と考えられてきたワンチップ光論理処理回路の

実現の可能性を示しています。この素子の実現には、NTT研究所の高いフォトニック結晶作製技術がベースとなっており、NTTでは

昨年度フォトニック結晶導波路の世界最低伝播損失値、およびフォトニック結晶共振器の世界最高Q値も実現しています。�

 今後、この素子をベースとした光処理回路の実現を目指して、複数素子の集積化を試みるとともに、単体素子動作についても、

さらなる低エネルギー化、高速化を目指します。�

�*1 ピコ秒: 10の12乗分の1秒�*2 フェムトジュール: 10の15乗分の1ジュール��Bフレッツは、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社の登録商標です。�

フォトニック結晶超小型共振器による全光スイッチの構造と動作説明�

フォトニック結晶 光集積回路 光共振器�

フォトニック結晶ナノ光共振器を用いた光スイッチ�

H-CT-5