6
ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と情報の氾濫。 「消費者が見えない時代」の マーケティング手法とは? NAKAJIMA Hiroshi 株式会社MM総研 取締役所長 特集 マーケティングの 未来を探る。 消費者の嗜好がますます多様化する一方で、ITの発達によって情報が氾濫するなか、 従来のマーケティング手法では消費者の動向は掴みにくくなっています。 「消費者が見えない時代」とされる今日、マーケティング手法はどのように進化していかなければならないのでしょうか。 博報堂生活総合研究所 エグゼクティブフェローで東京経済大学教授の関沢英彦氏と MM総研 取締役所長の中島洋氏にマーケティングの現在のトレンド、そして将来像を探っていただきました。 Special Issue 04 Club Unisys + PLUS VOL.05

ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と …ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と情報の氾濫。 「消費者が見えない時代」の

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と …ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と情報の氾濫。 「消費者が見えない時代」の

ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と情報の氾濫。 「消費者が見えない時代」の マーケティング手法とは?

NAKAJIMA H

irosh

i

株式会社MM総研 取締役所長

特集 マーケティングの 未来を探る。

消費者の嗜好がますます多様化する一方で、ITの発達によって情報が氾濫するなか、

従来のマーケティング手法では消費者の動向は掴みにくくなっています。

「消費者が見えない時代」とされる今日、マーケティング手法はどのように進化していかなければならないのでしょうか。

博報堂生活総合研究所 エグゼクティブフェローで東京経済大学教授の関沢英彦氏と

MM総研 取締役所長の中島洋氏にマーケティングの現在のトレンド、そして将来像を探っていただきました。

Special Issue

04Club Unisys + PLUS VOL.05

Page 2: ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と …ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と情報の氾濫。 「消費者が見えない時代」の

SEKIZAWA Hidehiko

携帯電話が実現した

シチュエーション

マーケティング

博報堂生活総合研究所 エグゼクティブフェロー/東京経済大学教授

「一人十色」と

「瞬間大衆」の共存が

消費者の方向性を

見えづらくしている

中島 最近は消費者市場の飽和やテク

ノロジーの発達による情報過多などの

要因によって、以前にも増して消費者の

動向が掴みづらくなっています。そして、

マーケティングも以前の方法論が通じに

くくなっていると思いますが、関沢さん

はどうご覧になっていますか。

関沢 私たちは消費者が広告などの刺

激に反応し、商品やサービスに興味をもっ

たり購買したりする行為を、医学用語

の「レセプター」(受容体:

外界からの刺

激を受け取る器官)を引き合いに出し

て整理しています。

1970年代までは「十人一色」の時

代であり、消費者の嗜好の幅は限られ

ていました。いわば、皆同じレセプターを

もった状態です。多くの人が同じ刺激

に反応するため、年齢層や所得などで

セグメントし、テレビCMなどを活用し

たマスマーケティングが大変有効でした。

中島 オイルショック後から1980

年代までは「十人十色」になり、バブル

崩壊後から現在にかけては「一人十色」

となっていますよね。

関沢 はい。十人十色の時代になり、得

られる情報が増え、商品やサービスの選

択肢が広がるにつれ、消費者一人ひとり

が異なるレセプターをもつようになりま

した。

さらに一人十色になると、消費者一人

が何種類ものレセプターをもつようになっ

たということですから、本人ですら、次

はどの刺激に反応するかわからなくなっ

ているのです。

中島 情報量が増え、多様化が進んだ

結果、消費者にとって選択肢が増えたこ

とで、逆に消費者像が見えにくくなった

のでしょうか。もっとも、最近でもデフレ

のもとでは皆が安価なものを選んだた

め、十人一色の状態が生じましたが、景

気が上向き、暮らしにゆとりが出てく

ると、また十人十色、さらに一人十色の

状態に戻っていきますね。

関沢 消費者一人ひとりが何種類もの

レセプターをもつ一人十色の状況は、見

方を変えると、適切な刺激を与えれば

全員が同じ反応を示す可能性もある

といえます。多様化が進んだ今の時代

でもメガヒットが生まれるのは、そのため

です。

私たちは多くの消費者が、ある瞬間、

ある刺激に一斉に反応する現象を「瞬

間大衆」と定義しています。このように

個人の嗜好が多様化して日々変化する

一方、瞬間大衆によってメガヒットも生ま

れます。この2パターンが共存するため、

消費者の方向性が見えにくくなってい

るのです。

中島 近年は消費者一人ひとりの嗜好

を分析し対応するマーケティングの方法

論「O

ne to O

ne

マーケティング」が主流

を占めていました。しかし、一人十色の傾

向が強まるにつれ、限界を迎えつつある

ともいわれています。

加えて個人情報保護法の施行後、顧

客データの収集はかつてのように簡単で

なくなり、消費者一人ひとりの嗜好はま

すます捉えづらくなっています。

関沢 しかし、今でも基本はO

ne to One

マーケティングであり、業種によってはそ

れで成功をおさめています。

典型的な例は書籍です。ごく限られ

た人にしかニーズのない本の場合、スペー

スが限られている書店では採算が合わ

ないため扱われませんでした。それがイ

ンターネットの発達によって安価に提供

05 Club Unisys + PLUS VOL.05

Page 3: ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と …ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と情報の氾濫。 「消費者が見えない時代」の

経済ジャーナリスト。国際大学(グローコム)教授。日経BP社編集委員。MM総研取締役所長。日本経済新聞社の記者としてハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを24年間担当。慶應義塾大学教授などを経て現職に至る。2005年10月からは、首都圏ソフトウェア協同組合の代表理事を兼任。個人事業主を中心とするソフトウェア事業者の共同受注や法的手続代行などを担うプラットフォームづくりに取り組んでいる。

中島 洋 なかじま・ひろし

携帯電話を活用し

消費者一人ひとりの

状況情報を収集する

※ロングテール 

ネット販売では、従来ならあまり売れない商品の販

売額総計が、売れ筋商品に匹敵あるいは上回るこ

とを象徴する言い方。米国の雑誌「ワイヤード」の

編集長、クリス・アンダーソン氏が提唱。書籍などあ

るジャンルの商品をアイテムごとの販売額でランキ

ング順に並べると恐竜のようなグラフ曲線となる。

売れ筋が恐竜の高い首(ヘッド)、あまり売れないニッ

チ商品が長いしっぽ(テール)。

することが可能となり、売上増に大き

く貢献しています。

中島 いわゆる「ロングテール(※)」のしっ

ぽの部分にあたる本へのニーズですよね。

関沢 それでもO

ne to O

ne

マーケティ

ングだけでは実情にそぐわなくなってき

た大きな理由は、消費者の欲するものや

購買意欲は場所や時間など状況によっ

て変化するからです。

たとえば、同じ一人の消費者でも、自

宅でくつろいでテレビを見ている時より、

何か用事があって街中に出かけている時

の方が購買意欲が高いといえるでしょう。

消費者のその時々のレセプターに反応

させるためには、消費者の状況に応じて

いかに適切に情報を発信できるかが大切

です。つまり一人十色の場合は、人ではな

く場所で捉えるほうが効果的なのです。

中島 そのような発想がこれからのマー

ケティングには重要になるのですね。

関沢 はい。このように消費者の状況に

着目するマーケティングの方法論を、私

たちは2002年ごろから「シチュエーショ

ンマーケティング」と呼んでいます。

シチュエーションマーケティングはテクノ

ロジーの発達によって実現しました。その

テクノロジーの代表格が携帯電話です。

中島 携帯電話にはまず、消費者にとっ

ては情報の窓口としての機能がありま

す。そして、マーケティングの視点から

は、たとえば消費者一人ひとりの現在

位置が分かるといった情報収集機能が

あります。もちろん持ち主の許可が必

要なのですが。

関沢 シチュエーションマーケティングに

とっては後者の機能が大きいです。

「今、渋谷駅前にいるあなたは、このお

店に行って携帯電話でこの画面を見せ

ると何パーセント割引で商品を購入で

きます。ぜひお越しください」といったベ

ストタイミングでのマーケティングができ

ます。

外出先にいる

消費者は、自宅

にいる時よりも

購買意欲が高い

状態にあるので、

その情報は消費

者をより刺激で

06Club Unisys + PLUS VOL.05

Page 4: ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と …ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と情報の氾濫。 「消費者が見えない時代」の

特集 マーケティングの未来を探る。

Special Issue

関沢 英彦

博報堂生活総合研究所 エグゼクティブフェロー。東京経済大学教授。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、博報堂入社。博報堂を代表するコピーライターとして活躍する。その後、博報堂生活総合研究所へ移り、1996年に所長就任。2003年からは東京経済大学の教授も兼任。生活コミュニケーションを研究分野に、人と組織の広告的行為や生活と消費のホーリスティックな解析などの研究に従事する。近著に『ひらがな思考術』(ポプラ社)など。

せきざわ・ひでひこ

※スマートモブ 

携帯電話のようなモバイル機器を持つ個人の集団。

物理的に離れていたり、互いに知らなくても、ある

社会集団を形成し、大きな影響力を発揮する。

きるでしょう。

中島 消費者の

現在位置を取得

し、その時点で周

囲にあるものと

関係づけ、効果的

な情報を発信す

るのですね。

関沢 ですから、携帯電話やインターネッ

トなどの通信技術が発展すればするほ

ど、街中でのイベントなどリアルなものの

マーケティング効果が高まります。一見関

係ないように思えますが、ITで得た情

報を実体験できる「場」となることで、イ

ベントの価値がより向上するわけです。

中島 確かに、ショッピングをはじめイン

ターネットで何でもできる時代になっても、

街中に出向く人の数は減っていません。

関沢 シチュエーションマーケティングの

視点からすれば、街中で情報発信でき

ることの重みが増しますが、なかでも注

目はコンビニです。店頭に大型ディスプレ

イを設置して情報を発信すれば、街中

にある巨大な情報端末という位置づけ

になります。今後コンビニはテレビなど

と並ぶ一つのメディアとして捉え、活用し

ていくべきだと考えています。

さらには、人口減少で東京に人口集

約が進むと、今度は東京という都市を一

つのメディア空間として捉え、マーケティ

ングしていくこともポイントになると思

います。

中島 そのように多くの消費者が携帯

電話やコンビニなどの手段によって、いつで

もどこでもさまざまな情報が得られ、個々

の活動が一つのマーケットを形成していく

――まさに「スマートモブ(※)」ですね。

関沢 また、情報が消費者の間で口コミ

として伝播する速度は、携帯電話の普

及で大幅に速くなりました。従来は街

中で情報を得た消費者は自宅に戻った

後に固定電話で友人に伝えていたため、

情報が広がるのに少なくとも一晩は要

していました。

現在はその場で携帯電話を手に取り、

通話やメールで友人に伝えるので、ほん

の数時間足らずで情報が広がるのです。

中島 日本は携帯電話社会が進んでい

ますから。とくにアメリカやヨーロッパ、

中国・韓国などほかのアジア諸国に比べ

て、メールが発達しています。

関沢 それは日本の文化ですよね。相

手に自分の意志を伝える際、面と向かっ

て声に出して伝えるのではなく、文字を

通じて伝えます。ある意味、千年昔の平

安時代に戻ったようなもので、メールでや

り取りする内容は、今も昔も「今日こん

な楽しいことがあった」や「恋人が最近

冷たい」など、他愛もないことばかりです。

携帯電話のメールを使うか、歌を手紙に

したためるかの違いだけです。しかし、そ

の他愛もない会話のなかにマーケティン

グ情報が潜んでいるともいえます。

07 Club Unisys + PLUS VOL.05

Page 5: ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と …ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と情報の氾濫。 「消費者が見えない時代」の

関沢 英彦氏×中島 洋氏

対談からの5つの提言

消費者の嗜好や購買意欲は状況に応じて変化することを意識すべし

携帯電話は情報提供の窓口としてだけでなく、位置情報の把握にも有効活用できる

ブログはマーケットデータの有益なリソースとして有効活用しよう

情報は表面だけでなく、その裏に秘められている意味を読み解くべし

情報の意味を読み解くセンスやクリエイティビティの醸成には、文化の理解が不可欠

ブログには

消費者の

嗜好が詰まっている

行間や裏の意味を

読み解いてこそ

新しいヒットが生まれる

中島 最近は携帯電話と並び、ブログが

広がっています。ブログはマーケティングに

どのようなインパクトや発展をもたらす

とお考えでしょうか?

関沢 ブログはマーケットデータのリソー

スになり得ると考えています。

現在のブログは「今日はこのお店に行っ

て、このメニューが美味しかった」「今日こ

のアーティストの新譜を聴いたけど、とて

もよかった」など、個人の日記がほとんど

です。

そのようなブログの中には消費者の嗜

好が詰まっています。ですから、ブログの

本文に登場する形容詞と名詞の登場頻

度や結びつきを集計して図式化するなど、

コンテキスト(文脈)を分析してまとめれ

ば、マーケティングに活用できるでしょう。

中島 なるほど。

関沢 さらにブログは通常のWebサイト

で情報発信する形式よりもユーザー数が

多く、しかもほぼ日単位で頻繁に更新さ

れていきます。そのため、通常のWebサイ

トを分析するよりも、リアルタイム性が

高いマーケットデータが得られます。たと

えば、日々スイーツについて言及している

複数のブログの文脈を分析した結果を受

け、その翌日コンビニの棚にて商品の並び

方を変える、といった活用が考えられます。

中島 ブログは本文の文脈だけでなく、

読者からのコメントの件数や文脈、さらに

はトラックバックの数なども分析の対象に

なりそうです。これだけ個人の嗜好を表

す情報を内包しているなら、マーケティン

グに利用しない手はないですよね。

関沢 これは日本独自の展開といえます。

中島 そうですね、アメリカやヨーロッパ、韓

国などでは、どちらかといえばジャーナリズ

ムとしてのブログが発達していますから。

関沢 政治的な内容を分析してもマーケ

ティングには利用できません。これも文化

の違いと見なせるのではないでしょうか。

もともと日本は平安時代から『枕草子』

をはじめ、個人の詠嘆などを綴った日記文

学が盛んでした。その流れがインターネッ

ト時代になった今も受け継がれています。

もし清少納言が今生きていたら、きっと人

気ブロガーになっていたでしょうね(笑)。

中島 現在は携帯電話やブログだけで

なく、SNS(※)などのインターネットサー

ビス、そして、RFID(無線ICタグ)や

ワンセグ(携帯電話で視聴する地上波デ

ジタルテレビ)といった新しいテクノロジー

の普及が進んでいます。

関沢 SNSにしても、昔でいえば、身分

を越えたジャンルの人が集まって情報を

交換し合う場となっていた連歌の会に相

当します。

SNSではたとえば、ある地域に住み、

ある商品が好きな人たちが集まるフォー

ラムに、該当する店舗の広告を出すといっ

たマーケティングがすでに行われていま

経営に役立つこの1冊

『シチュエーションマーケティング ケータイ時代の消費を捉える新発想』 関沢 英彦/鷲田 祐一/ミカエル・ビョルン 著 かんき出版

シチュエーションマーケティングのすべてが分かる一冊。携帯電話をはじめとするIT化によって多様化した消費者のライフスタイルを受け、「人」ではなく「生活の瞬間」を捉えるという新しい発想法を詳しく解説する。そして、シチュエーションマーケティングの3つの基本モデルや実用事例を紹介。さらにはケータイ時代の消費者像やグローバルな視点で見たシチュエーションマーケティングへと話は発展していく。従来のマーケティングの限界を打破する新しいマーケティングの姿を見い出せる。2002年の発刊だが、今もその鮮度は変わらない。

08Club Unisys + PLUS VOL.05

Page 6: ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と …ますます多様化する消費者ニーズ、 加速するIT化と情報の氾濫。 「消費者が見えない時代」の

特集 マーケティングの未来を探る。

Special Issue

マーケットの理解には

文化の理解が

欠かせない

※SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)

会員制のWebサイト・サービス。紹介者がいないと

参加できないので、匿名性による不安を回避できる

といわれる。最近、利用者が急増。

すよね。

中島 RFIDにしても、あと10年ほど

すればタグの単価が下がり、すべての商

品に付けられるようになると考えていま

す。そうなると、流通構造が劇的に変化

するでしょう。

関沢 情報のユビキタス化がますます進

みますね。RFIDは今後、マーケットデー

タのリソースとして期待できます。

そのような流れが加速すると、消費者

の情報はいわゆる「川下」に集まるように

なります。すると、川下に近いところに位

置するマーケティングのプロが、それらの情

報をどう読み解くかが重要になります。

中島 「読み解く」とは、ただデータを集

計・分析した結果を把握するだけでなく、

データの行間や裏に隠れている意味を読

む、発見していくということですか。

関沢 ええ。ITを活用してデータを

分析すれば、ある程度の傾向は把握でき

ますが、データの行間や裏に隠れている

意味が読み解けないと、ヒットに”追随“は

できても、新しいヒットは生み出せません。

たとえば、今、渋谷ではこんな飲料が流

行っていて、一方、銀座ではこんな映画が

流行っているというデータが得られたと

します。次はどんなものがヒットするか、

それら複数の要因を結びつけて考える

ことになります。

では何と何を結びつけて考えればよい

か、これはコンピュータには分かりません。

近いものを結びつけても、誰もが容易に

発想できてしまうため、オリジナリティ

は生み出しづらい。一見、誰もが結びつか

ないと思う、遠いもの同士をうまく結び

つけることが、新しいヒットを生み出すこ

とへとつながります。その判断は、人にし

かできないのです。

中島 それは、なかなか難しいことです

よね。

関沢 結局行き着くのは、情報を読み解

く人のセンスやクリエイティビティになるん

ですよ。携帯電話やユビキタスなどのIT

によって、いくら情報が素早く大量に得ら

れるとしても、最後は人。だからマーケティ

ングは難しくもあり、面白くもあるのです。

島 今回、関沢さんのお話を伺ってい

ると、携帯といいブログといい、テクノロジー

の使われ方や普及の仕方が日本の文化

と密接な関係にあり、そこにヒントが隠

されていると思いますが。

関沢 そうですね、土壌として

もともとある文化が最新のI

Tと結びつくことで、消費者の

ライフスタイルが形成されてい

きます。たとえば今の女子高

生が友達に携帯電話からメー

ルを送る際、この文章で相手の

気を害しないか、送信前にほか

の友達に見せて確認するんです

よ。これは日本に昔からある気

遣いの文化です。こんなことか

らも、個人の嗜好や消費の方向

性のヒントは得られるかもしれ

ません。

なので、マーティングに携わる

人は今後、流通データを解析し

たりITの活用方法を考えた

りするだけでなく、文化を知る

ことが重要になると思います。

中島 ”文化を知る“ことで、次

の流れを読み解く力が醸成さ

れるわけですね。

関沢 とくに社会が成熟するにつれ、マー

ケットデータのなかに隠れている文脈を

読み取るには、文化的な視点や発想が欠

かせなくなります。文化的なバックボー

ンが薄いと、次なるヒットは生み出せない

でしょう。

ですから、マーケティング担当者はもち

ろん、経営者もシステム担当者もたまに

は映画を観に行こう、ということです。

中島 まさに仰る通りです(笑)。本日

はありがとうございました。

09 Club Unisys + PLUS VOL.05