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磁気 II Simon Greaves 1 1 Research Institute of Electrical Communication Tohoku University, Japan 4/2019 1 / 39

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磁気 II

Simon Greaves1

1Research Institute of Electrical CommunicationTohoku University, Japan

4/2019

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磁気  II

反強磁性およびフェリ磁性

磁気の温度依存性

超高速磁化反転

スピントロニックス

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反強磁性およびフェリ

磁性

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反強磁性

反強磁性体におけるスピン構造

反強磁性体では、隣接するス

ピンは互いに反平行に整列し

ている。

FeMnと NiOは反強磁性体である。

反強磁性体の正味の磁化はゼロである。

反強磁性体が正しい向きで成長すると、表面に正味のモーメントが生

じる可能性がある。

磁化率は常磁性体に似ており、外部磁界は磁化にほとんど影響を与え

ない。

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フェリ磁性

フェリ磁性体のスピン構造

フェリ磁性体は、異なる原子

によって占められている2つ

の副格子を含む。

イットリウム鉄ガーネットは

フェリ磁性である。

2つの副格子の原子が異なる磁気モーメントを有する場合、正味の磁

化があるだろう。

磁化補償点として知られる、2つの副格子が同じ磁気モーメントを有

し、正味の磁気モーメントがゼロになる温度があり得る。

正味の角運動量が消滅する温度もあり得、高速磁化反転を可能にする。

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磁気の温度依存性

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磁気の温度依存性 I

T = 0 T > 0

低温では交換結合が強磁性体の磁気モーメントを同じ方向に整列さ

せる。

温度が上昇すると、熱エネルギーによって磁気モーメントが変動し、

飽和磁化が減少する。

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磁気の温度依存性 II

0 100 200 300 400 500 600Temperature, T (K)

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

Ms (

T)

/ M

s (0

)

Tc

強磁性体の飽和磁化対温度

温度が十分に高いとき、熱エネ

ルギーは交換および異方性エネ

ルギーを克服し、そして自発磁

化はゼロに達する。

これが起こる温度はキュリー温

度(Tc)と呼ばれる。

各原子は同じ磁気モーメントを

保持しますが、平均モーメント

はゼロである。

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磁気の温度依存性 III

Msの温度依存性は、次の様な Brillouin関数を使用して計算することができる。

B(α, J) =2J + 1

2Jcoth

((2J + 1)α

2J

)− 1

2Jcoth

( α

2J

)

Tc を見つけるには、次の点を探す:

x = B(

3JTcx(J + 1)T

, J)

ここで x = Ms(T )/Ms(0).

J → ∞として、Brillouin関数は Langevin関数に置き換えることができる。

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磁気の温度依存性 IV

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1T / T

c

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

Ms (

T)

/ M

s (0)

J = 0.5J = 1J = ∞

J の異なる値に対する飽和磁化の温度依存性

飽和磁化の温度依存性は、異なる値の J に対して計算できる。

Feや Coなどの材料では、Ms(T )の実験測定値から、J は 0.5から 1の間にあることがわかる。

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磁気の温度依存性 V

飽和磁化に加えて、他のほとんどの材料特性も温度に依存する。

一軸異方性エネルギーはしばしば次の関係式に従う:

Ku(T )

Ku(0)=

(Ms(T )

Ms(0)

)n

nは材料依存である。

実験では、FePtおよび FeNiPt合金では n = 2、CoCr合金では n = 3である。

交換結合と減衰定数の温度依存性も考慮する必要がある。

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超高速磁化反転

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超高速磁化反転

新しい用途、例えば 8Kビデオ等には、非常に高いデータ読み書き速度が必要である。

データを記録するために磁性材料が使用される場合、磁化が反転出来

る速度が重要になる。

高速磁化反転は、パルス磁場、熱エネルギー、光、電流などを使用し

てさまざまな方法で実現できる。

このセクションでは、磁性材料の超高速磁化反転の物理について探る。

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磁化ダイナミクス

−1

−0.5

0

0.5

1

−1

−0.5

0

0.5

1

−1

−0.8

−0.6

−0.4

−0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

Mx

My

Mz

歳差運動による磁化反転

室温では、粒子の磁化がある方

向から反対方向に変わる時、歳

差運動によって変化する。

この図は、磁場が z 軸に沿って印加されたときに磁化ベクトル

が上から下に切り替わる様子を

示している。

歳差運動による磁化反転は時間

がかかる (≈ ns)。

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超短磁場パルス I

0 100 200 300 400 500Applied field pulse duration, t

p (ps)

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

Sw

itch

ing p

robab

ilit

y

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1Time (ns)

-1

-0.5

0

0.5

1

Mz /

Ms

1 ns field pulse

H = 11.5 kOe

θ = 30°

α = 0.02

tmin

tmax

粒子の磁化反転確率対磁場パ

ルス幅。

挿入図:一定磁場における磁

化反転。

印加磁界角度 = 30◦。

容易軸に対してある角度で磁場を印加すると、磁化のトルクが増加し

(~M × ~H)、磁化反転速度が増加する。

ピコ秒磁場パルスも磁化を反転させることができる。

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超短磁場パルス II

2ps磁場パルス後の Co/Pt多層膜における磁化パターン

2 psという短い磁場パルスが、薄い磁性多層薄膜の磁化反転の

ために使用されてきた。

磁場は線形加速器で生成された

電子のパルスによって発生した。

正と負の磁化の領域は、異なる

半径で異なるトルク(~M × ~H)が適用されることによって発生

する。

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線形磁化反転

-1 -0.5 0 0.5 1M

z / M

s(0)

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

(Mx

2 +

My

2)½

/ M

s(0)

100 K300 K400 K470 K

Tc = 540 K

立方体粒子中での磁

化はMz/Ms = 1から-1までさまざまな温度で反転する。

磁性材料がキュリー温度近くで加熱されると、磁化モードは歳差運動

状態から線形に変化する。

これにより、磁化が方向を変えるのに必要な時間を短縮することがで

きる。

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超高速消磁

2.3 psレーザーパルス後の Ni膜磁化

超短レーザーパルスを用いた

実験は、格子温度の変化より

もずっと短い時間スケールで

磁化が応答することを示して

いる。

この挙動は、伝導電子、磁化

の原因となるスピン、および

格子(Ni原子)に別々の温度を割り当てることによって説

明することができる。

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三温度モデル I

Spins

Electrons Lattice

τel

τsl

τes

P(t)

三温度モデルにおける熱流

3温度モデルでは、伝導電子、

磁化を担うスピン、および格

子原子の間を熱が流れる。

3つの成分のそれぞれは異な

る比熱容量を有する。

系に入る熱は、最初は伝導電

子によって吸収される。

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三温度モデル II

電子、スピン、格子の温度がそれぞれ Te、Ts、Tl の場合:

dTe

dt=

−τel(Te − Tl)− τes(Te − Ts) + P(t)Ce(Te)

dTl

dt=

−τel(Tl − Te)− τsl(Tl − Ts)

Cl(Tl)

dTs

dt=

−τes(Ts − Te)− τsl(Ts − Tl)

Cs(Ts)

ここで、Cは比熱、τ はエネルギー伝達率、P(t)はシステムに入るエネルギー(レーザーパルスなどから)である。

Ceと Csは Cl よりはるかに小さいので、Teと Tsの変更はずっと早

くなる。

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三温度モデル III

Ni薄膜の実験(左)と計算(右)Te、Ts、

Tl。

注意深く測定してCと τ を当てはめると、3温度モデルで実験結果を再現できる。

これらは、Teと Tsの急激な増加を示しているが、Tl は遅れている。

薄膜はずっと長い時間をかけて室温まで冷却される。

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X線磁気円二色性 I

磁性材料に入射する異なるヘ

リシティを有する円偏光光子

は、異なる吸収係数および反

射係数を有する可能性が

ある。

光(光子)も磁化を反転させるために使用することができる。これに

対する1つのメカニズムは、X線磁気円二色性によるものである。

一方向に磁化されたドメインが反対方向のドメインよりも多くのエネ

ルギーを吸収する場合、温度差が生じる可能性がある。

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X線磁気円二色性 II

X線磁気円二色性による磁化反転のシミュレーション。

熱が多すぎると熱減磁が起

こる。

MCDによる磁化反転は、シミュレーションや実験で確認されている。

効果はおよそ 0.5 %のMCDを必要とするだけである。

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逆ファラデー効果 I

ファラデー効果 逆ファラデー効果

光誘起磁化反転の他の説明は逆ファラデー効果である。

角運動量は光子から磁化に伝達される。光子は磁化に有効磁場を及

ぼす。

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逆ファラデー効果 II

円偏光を用いた GdFeCoにおける磁化反転。

磁化反転は、加熱と逆ファラデー効果の組み合わせによるものである。

実験では、レーザーパルス幅は 40 fsであった。

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電流誘起反転

4psの電流パルス後の磁気媒体の減磁

サンプルを消磁するために電流を使用することもできる。

この電流は多くの電子を少量励起し、光パルスは比較的少数の電子を

大量に励起する。

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スピントロニックス

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スピントロニックス I

電子は電子と電子の電荷を利用する。様々な構成要素を有する電気回

路は、スイッチ、増幅器、メモリおよび他の多くの装置を製造するた

めに使用されている。

スピントロニクスは、電子のスピンが追加の特性として使用されるエ

レクトロニクスの拡張である。

電子が銅などの材料を通過するとき、スピンアップ電子とスピンダウ

ン電子の数は等しく、正味のスピンはゼロである。

電子が強磁性体を通過するとき、スピンは磁化方向と整列する傾向が

あり、電荷電流に加えてスピン電流が流れる。

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スピントロニックス II

電流 J が J↑スピンアップ電子と J↓スピンダウン電子を含む場合、スピン偏極 P は次式で与えられる。

P =J↑ − J↓J↑ + J↓

電気伝導体では、フェルミ準位の状態数がスピン分極を決定する。

強磁性体を利用するスピントロニクスデバイスは、約 P ≈ 0.5のスピン分極レベルを持つ可能性がある。

ホイスラー合金のようないくつかの材料では、フェルミ準位での少数

スピンのエネルギーバンドギャップは(理論的には)100%のスピン分極をもたらすはずである。

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スピン拡散長

スピン偏極電子が強磁性体を出るとき、正味のスピンはスピン拡散長

にわたって持続する。

温度および材料に応じて、スピン拡散の長さは数十ミクロンに達する

ことがある。

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スピン流

正味の充電電流なしでスピン流を得ることは可能である。

これは、非常に低い電力消費で情報を送信することを可能にし得る。

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ホール効果

導体におけるホール効果

導体に垂直に磁場が印加されると、伝導電子が偏向し、ホール電圧が

導体の端部に発生する。

ホール効果は磁場の強さを測定するために使用することができる。

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スピンホール効果 I

スピンホール効果の例。

反対のスピンを有する電子

は、それらが導体を通過する

ときに反対方向に偏向さ

れる。

電流がGaAs、Ptおよび Cuベースの合金などの特定の材料を通過するときにスピン電流が発生する。

スピン流は存在するが、充電電流はゼロである。

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スピンホール効果 II

GaAs中のスピン蓄積電流は左から右に流れる。

電子の偏向は、原子核からの電場との相互作用によるものである。

測定は磁気光学カー効果を用いて行った。

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逆スピンホール効果

スピン流は、逆スピンホール効果によって電荷電流に変換することが

できる。

逆スピンホール効果は、スピン流を検出する方法を提供する。

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スピンゼーベック効果

スピンゼーベック効果の

測定。

強磁性体の温度勾配はスピン

流を発生させる。

スピン流は、逆スピンホール

効果によって測定可能な電圧

に変換される。

LaY2Fe5O12のような強磁性絶縁体でもスピン流が流れる。

これはマグノンが伝導電子ではなくスピン流のキャリアであることを

示唆している。

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マグノン

マグノンは一連の強磁性原子

における低エネルギー励起で

ある。

マグノンは、スピン角運動量

を帯びた磁性材料を通って伝

播する量子化されたスピン波

である。

マグノンは強磁性体を通してスピン流を伝達することができる。強磁

性体は導電体である必要はない。

マグノンは毎秒数十キロメートルの速度で移動することができる。

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Sources

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Sources II

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