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特別 企画 に,外部委員を入れた医療事故調査委員会が 開かれ,委員会から「若い医師や看護師が患 者の状態に不安を感じた時や,不明なことが あった時に,速やかに上級医や先輩看護師に 報告・相談し情報を共有できるような体制が 整っていない」という指摘を受けました。 そこで,同じような事例がないか調べてみ ると,2013年から2015年の2年半の間に 重大事故についての検討会議で取り上げられ た94事例中,何らかの前兆を早期に認識し, 適切に対応していれば急変・重症化を防げた 可能性があると判断された事例が10例もあ りました。いずれの事例においても,現場医 療者のコミュニケーションがうまくいかず, 情報の遮断によるチームワークの機能不全が 起こっていることが分かりました。 ■  EARRTH(アース) プロジェクトの発足 これらの事例のような,情報の遮断やチー ムワークの機能不全のために発生する急変を 「防ぎ得た急変」と定義し,これを撲滅して 重症化を減らすことを目的にEARRTHプロ ジェクトを発足しました。 EARRTHとは,Early Awareness & Rapid Response Training in Hospitalsの 頭 文 字 を取った略で,当院でつくった造語です。日 皆さんの施設では,職員は医療安全研修を きちんと受講してくれていますか? 内容を 理解してくれていますか? 当院ではさまざ まな形式の医療安全研修を行っていますが, 職員からは「忙しいのに」や「参加しろと言 われているから」などの消極的な声が聞かれ ます。さまざまな職種が働く病院で,参加者 みんなが満足し,主催者の意図が伝わる研修 とはどのような研修でしょうか。 今回,当院では効果的な研修の一つとし て,アニメーションを用いた研修を試みまし た。本稿では,この研修について,アニメー ションの制作から研修の実際,今後の展望な どを報告します。 ■ 本研修開発の背景 本研修開発のきっかけは,ある医療事故で す。2014年,当院で中心静脈カテーテルが 縦隔内へ誤挿入され,その発見が遅れたこと により患者が急変,心肺停止に陥ってしまっ たという事故が起こりました。この事故の後 「防ぎ得た急変」を撲滅する EARRTHプロジェクト ~アニメを使ったチーム力トレーニング~ 北村孝一 大阪市立大学医学部附属病院 医療安全管理部 3学会合同呼吸療法認定士 透析技術認定士/臨床工学技士/体外循環技術認定士 2007年4月湘南鎌倉総合病院ME室入職。2008年11月大阪 市立大学医学部附属病院臨床工学部入職。2017年4月同院 医療安全管理部異動。 本稿で紹介している 「研修用アニメ動画」「EARRTHマニュアル」が 本誌読者専用サイトからダウンロードできます。 ダウンロド資料 大阪市阿倍野区にある大学病院で,病床数972床(2018年4 月現在)の急性期医療を担う特定機能病院である。診療科数 37,病棟数22(救命救急センター,ICU・CCU・HCUを併 設),職員数(常勤)1,961人(2018年4月1日現在)である。 2017年度の病床利用率は79.1%,平均外来患者数2,009人, 年間手術件数12,611件である。 施設概要大阪市立大学医学部附属病院 82

特別 「防ぎ得た急変」を撲滅する 企画 EARRTHプロジェクト › jyohoshi › ps › tool › library...ための,理論的かつ実践的なスキルの習得を目標としたトレーニング・コース。

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Page 1: 特別 「防ぎ得た急変」を撲滅する 企画 EARRTHプロジェクト › jyohoshi › ps › tool › library...ための,理論的かつ実践的なスキルの習得を目標としたトレーニング・コース。

特別企画

に,外部委員を入れた医療事故調査委員会が開かれ,委員会から「若い医師や看護師が患者の状態に不安を感じた時や,不明なことがあった時に,速やかに上級医や先輩看護師に報告・相談し情報を共有できるような体制が整っていない」という指摘を受けました。 そこで,同じような事例がないか調べてみると,2013年から2015年の2年半の間に重大事故についての検討会議で取り上げられた94事例中,何らかの前兆を早期に認識し,適切に対応していれば急変・重症化を防げた可能性があると判断された事例が10例もありました。いずれの事例においても,現場医療者のコミュニケーションがうまくいかず,情報の遮断によるチームワークの機能不全が起こっていることが分かりました。

■ EARRTH(アース) プロジェクトの発足

 これらの事例のような,情報の遮断やチームワークの機能不全のために発生する急変を

「防ぎ得た急変」と定義し,これを撲滅して重症化を減らすことを目的にEARRTHプロジェクトを発足しました。 EARRTHとは,Early Awareness & Rapid Response Training in Hospitalsの頭文字を取った略で,当院でつくった造語です。日

 皆さんの施設では,職員は医療安全研修をきちんと受講してくれていますか? 内容を理解してくれていますか? 当院ではさまざまな形式の医療安全研修を行っていますが,職員からは「忙しいのに」や「参加しろと言われているから」などの消極的な声が聞かれます。さまざまな職種が働く病院で,参加者みんなが満足し,主催者の意図が伝わる研修とはどのような研修でしょうか。 今回,当院では効果的な研修の一つとして,アニメーションを用いた研修を試みました。本稿では,この研修について,アニメーションの制作から研修の実際,今後の展望などを報告します。

■ 本研修開発の背景 本研修開発のきっかけは,ある医療事故です。2014年,当院で中心静脈カテーテルが縦隔内へ誤挿入され,その発見が遅れたことにより患者が急変,心肺停止に陥ってしまったという事故が起こりました。この事故の後

「防ぎ得た急変」を撲滅する EARRTHプロジェクト~アニメを使ったチーム力トレーニング~

北村孝一 大阪市立大学医学部附属病院医療安全管理部 3学会合同呼吸療法認定士透析技術認定士/臨床工学技士/体外循環技術認定士2007年4月湘南鎌倉総合病院ME室入職。2008年11月大阪市立大学医学部附属病院臨床工学部入職。2017年4月同院医療安全管理部異動。

本稿で紹介している「研修用アニメ動画」「EARRTHマニュアル」が本誌読者専用サイトからダウンロードできます。

ダウンロード資料

大阪市阿倍野区にある大学病院で,病床数972床(2018年4月現在)の急性期医療を担う特定機能病院である。診療科数37,病棟数22(救命救急センター,ICU・CCU・HCUを併設),職員数(常勤)1,961人(2018年4月1日現在)である。2017年度の病床利用率は79.1%,平均外来患者数2,009人,年間手術件数12,611件である。

施設概要●大阪市立大学医学部附属病院

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本語にすると「早い気づきと迅速な対応のためのトレーニング」となります。スローガンは、「高めよう! 気づき力。極めよう! チーム力」です。コード・ブルー注1)やRapid Re­sponse System(RRS)注2)といった「点」だけではなく,それらをつなぐ「線」を含む一貫した体制づくりを目指して,2016年度から実施しました。 このEARRTHプロジェクトには,次の4つの目標があります。①急変の前兆に気づく力を高める

②基準に沿って,状況判断できる

③報告・連絡・相談ができる

④チームの一員として,主体的に行動できる

■ EARRTHのマニュアル作成 これら4つの目標を達成するために,マニュアルの作成と研修プログラムの開発を計画しました。まずEARRTHの土台となるマニュアルは,医師,看護師だけではなく,全医療スタッフが異変に早く気づいて適切な評価・対応を行い,必要に応じて速やかに応援を要請し,医療チームとして効果的に診療するための基本的な思考・態度・知識・パフォーマンスの向上を病院全体として目指して作成しました。その中で取り入れた教育プログラムは主に3つあります。1つ目はイギリスのRoyal College of Surgeonsが主催している「Care of the Critically Ill Surgical Patient (CCrISP)」注3),2つ目は航空業界で発展した「Crew Resource Management

(CRM)」注4),3つ目はチームトレーニングの手法として有名なTeamSTEPPS1)です。 マニュアルでは,医師,看護師,その他の

全職員が個々で行うべきセルフマネジメントと,それに続くチームマネジメントに分けました。 セルフマネジメントでは,予期しない,あるいは新たな症状や所見が出現した場合や,気道・呼吸・循環・意識・その他(ABCDE)に不安を感じる時に,まず患者のところに行き,診察をして,適切な初期対応を行い,医師・看護師で現状の評価と今後の計画を共有し,実施します。そして,セルフマネジメントで問題が解決しなかった場合(患者の状態が安定しない,症状が持続している),あるいは患者の病態に関する不安が解消されない場合に,チームマネジメントに移行します。 チームマネジメントの段階では,自分で解決しようとするのではなく,ともかく自分より知識や経験のある上級医師や先輩の看護師へ積極的に助けを求め,複数のスタッフで対応を協議し実施することを推奨しています。何かが分かってから行動を起こすのではなく,分からないからこそほかのスタッフに協力を求める行動を起こすことが重要です。スタッフが心理的負担なくそれらを実行できるよう,EARRTHマニュアルはつくられています。

■ アニメーション教材の利点 次に,研修プログラムの開発に当たって,その教材をアニメーションにしました。「なぜアニメーションなの?」と思う方もいると思います。実は,当院では以前に,転倒転落防止のアニメーションを制作した経験があります。アニメーションは重要な項目を実写映像より効果的に強調でき,視覚で情報を伝えることができるため,口頭での説明以上の効

注1)コード・ブルー:院内で緊急の救命処置の助けが必要な場合で,心肺蘇生などを行うため,医療者を集めるための一斉放送によるコールサイン。

注2)Rapid Response System(RRS):ある一定の「起動基準」を定め,その基準に該当した場合,専門的なトレーニングを受けた医療チームが介入し,医療行為を実施するシステム。

注3)Care of the Critically Ill Surgical Patient(CCrISP):主に外科医を対象とし,外科系患者の重症化に対処するための,理論的かつ実践的なスキルの習得を目標としたトレーニング・コース。

注4)Crew Resource Management(CRM):安全かつ効率的な航空機運航業務を達成するために情報,機器,人員を含めた利用可能なすべての資源を活用する手法。

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果を期待できます。また,強調や修正が容易です2~4)。そこで,今回も教材としてアニメーションが最適であると考えました。

■ アニメーションの制作 さて,アニメーションを研修に用いることにしましたが,当院の事例に沿ったアニメーションがあらかじめ用意されているわけではありません。YouTubeにも当然ありません。職員へ効果的に伝えるためには,「絵心」と

「編集技術」が必要でした。そこで,京都造形芸術大学芸術学部キャラクターデザイン学科と共同で制作することにしました注5)。 アニメーションは,2015年5月~2016年3月に作成しました。原案および脚本・キャラクター・背景・作品全体の監修はEARRTH作業部会メンバーが担当し,京都造形芸術大学芸術学部キャラクターデザイン学科の学生が指導教官の下で製作しました(図1~3)。脚本は,2014年の医療事故を基に登場人物や展開に脚色を加え,「問題編」「解説編」「お手本編」を作成しました。「問題編」は報告・連絡・相談がうまくいかずに患者が急変した内容とし,「お手本編」では気づく基準と共有先,気づいた後の報告経路や行動のフローを示しました。また,コミュニケーションを円滑に行うスキルとして,TeamSTEPPSのSBAR,チェックバック,2回チャレンジルール,CUSもアニメーションに取り入れました。

■ アニメーション研修の実施 アニメーションを用いたEARRTH研修は,事務職員も含め,病院で働く約2,000人すべての職員を対象に,1年間で30回行いました。一般職員を対象とした全体研修では,アニメーションの視聴とミニレクチャー,個人ワークを行いました。また,部課長やリスク

注5)アニメーションは,科学研究費基盤研究(C)「芸術を応用した患者安全教育プログラムの開発―学習と改善の安全文化育成を目指して―」(課題番号26460609)の助成を受けて制作。

図1 A storyboard(絵コンテ)

図2 キャラクターデザイン

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マネジャーを対象とした研修では,アニメーションの視聴とグループワークを行いました。 これらの研修の講師は,医療安全管理部の医師,看護師,薬剤師が交代で行いました。理念や内容を理解していれば研修の講師を選ばないことも,アニメーションを用いた研修の利点の一つだと思います。部課長も一般職員も同じアニメーションを視聴しますので,それぞれ立場が違っても目的に沿った研修ができる点も強みです(写真)。研修に参加できない職員に対しては,アニメーションと解説を組み合わせた映像教材をつくり,DVD研修やWeb研修として受講してもらいました。

■ アニメーション研修の アンケート結果

 アニメーション研修を実施する前後で行った,アンケートの結果を示します5)(図4,5)。アンケートの回答者は2,088人(医師589人

〈28%〉,看護師901人〈43%〉,コメディカルスタッフ227人〈11%〉,その他の職員371人〈18%〉)でした。

 アニメーションを見る前のアンケートでは,「患者に関して不安を感じたり,不明な点があったりした際に,速やかに医師・看護師,先輩や上長に報告し相談できているか」との質問に97%の職員が「相談できる」と回答していました。しかし,相談したい人が忙しい時には,90%の職員が「相談にためらいを感じる」と回答し,相談したい人が怖い場合には68%の職員が,相手の経験年数が長く職位が高い場合には38%の職員が「相談にためらいを感じる」と回答しました。これらの意見からも,相手の状況や立場,キャラクターにより相談しにくいと多くの職員が感

図3 各アニメーションシーン

写真 アニメーション研修の様子

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じていることが分かりました。 アニメーションを見た後のアンケートでは,

「患者の状態で疑問を感じたり,迷ったり,悩んだりした時に『ある程度,まとまった結果が出てから報告を…』と抱え込むよりも,先輩や医師・上級医に相談する方が先だ」との質問に,94%の職員が「そう思う」と回答していました。また,「相談した相手に受け入れられなくても,勇気を出して再度,相談してみることが大事だ」との質問に97%の職員が,「休日夜間は特に,主治医や指導医,先輩や専門の診療科に積極的に相談し,患者の安全を確保することが大事だ」との質問に98%の職員が「そう思う」と回答していま

した。これらの意見からも,アニメーション研修後には,患者のために報告・連絡・相談を積極的に行うことが大事であると,多くの職員が理解できたことが分かります。 さらに,フリー記載欄に寄せられた意見・コメントの多くが,アニメーション研修に対して肯定的な意見でした(表)。しかし,キャラクターの口調,イメージなどに対する否定的な意見もあり,医療という命の現場での緊迫感をアニメーションにするということの難しさも痛感しました。おわりに 当初は全職員に向けてアニメーション研修を行いましたが,現在でも新入職員に対して

報告・相談がしにくいと感じたり,ためらいを感じたりするのはどのような場合か

0 20 40 60 80 100 (%)

自分が忙しい時

報告・相談したい人(先輩や医師など)が忙しい時

報告・相談したい人がその場にいない時(手術中・外来中,休憩・仮眠中など)

報告・相談したい人が怖い場合

報告・相談したい人が自分よりも経験年数が長い,職位が高い場合

報告・相談したい人が他職種である場合

66

55

212 599 46867 331

277 679 45908 168

266 665 80831 226

240 448 168729 487

222 495 832 458

224 631 676 283

■とても思う  ■よく思う  ■少し思う  ■あまり思わない  ■全く思わない

図4 研修前アンケート

岡村尚枝他:医療安全教育体制の構築と運営~EARRTH教育プログラム(教育用アニメーション)の作成,第11回医療の質・安全学会学術集会,2016.

患者の状態で疑問を感じたり,迷ったり,悩んだりした時に「ある程度,まとまった結果が出てから報告を・・・」と抱え込むよりも,

先輩や医師・上級医に相談するほうが先だ

相談した相手に受け入れられなくても,勇気を出して再度,相談してみることが大事だ

相手に相談する時は,現在の状況とその背景,自分の考え,相手への依頼を伝えることが大事だ

休日夜間は特に,主治医や指導医,先輩や専門の診療科に積極的に相談し,患者の安全を確保することが大事だ

相手から指示を受けた時は,自分の言葉で言い直して相手に再確認するのが大事だ

人から相談を受けた時は,作業の手を止める,うなずきながら聞く,「ありがとう」と言うなど,相手を受け入れている態度を示して

話しやすい雰囲気をつくることが大事だ

0 20 40 60 80 100 (%)

■とても思う  ■よく思う  ■少し思う  ■あまり思わない  ■全く思わない

121

48

12

28

19

11

397 5669 949

247 8862 913

11201934 902

181 4907 966

157 41,059 834

457 6612 873

図5 研修後アンケート

岡村尚枝他:医療安全教育体制の構築と運営~EARRTH教育プログラム(教育用アニメーション)の作成,第11回医療の質・安全学会学術集会,2016.

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アニメーションを含めた研修を継続しています。アニメーションは,他院での医療安全研修にも使っていただき,好評を得ています。また,経験の浅い3年目医師,ラダーⅡの看護師に対し,実際に起こった事例を題材にした実践研修も行っています。今後はゲームを取り入れた研修も計画しており,現在シナリオ作成,プログラミングなどの作業を行っています。 当院での医療事故から4年が経過し,事故後に入職した職員が増えてきました。当時の事故を知る職員も減ってきていますが,我々は過去の事故を教訓とし,風化させてはいけません。今は,当時を知る職員が事故を伝え,同じような事故を起こさないように取り組ん

でいますが,10年,20年後には,事故を経験していない職員が教育を担っていきます。私たちは「高めよう! 気づき力。極めよう! チーム力」を浸透させ,コミュニケーション能力の高い職員を育てていかなければなりません。そのためには,アニメーションを用いた医療安全研修のみならず,幅広い視点で教育を継続していく必要があります。それが医療安全に携わる我々の役目であり,安全,安心な病院をつくることがすべての職員の使命であると考えます。

 本稿の執筆に際し,大阪市立大学大学院医学研究科救急医学羽川直宏先生,また,ご指導・ご意見をくださった医療安全管理部の山口悦子先生,中村和徳氏,藤長久美子氏,清水由紀氏,仲谷薫氏,医療安全管理学小松友氏に多大なご協力を賜りました。心から感謝申し上げます。

引用・参考文献1)種田憲一郎:なぜチームトレーニングが必要か

―チームSTEPPSの開発と普及,Medical forum CHUGAI,Vol.16,No.1,P.2~13,2012.

2)Etsuko Nakagami-Yamaguchi:The effect of an animation movie for inpatient fall prevention:a pilot study in an acute hospital 2016

3)Michael Wi klund and Jonathan Kendler:Animated Videos Guide User Interactions with Complex Medical Devices August 1, 2008

4)Patient safety education using an arts and health approach in Japanese university hospitals:a pilot study: Arts & Health January 6, 2018

5)岡村尚枝他:医療安全教育体制の構築と運営~EARRTH教育プログラム(教育用アニメーション)の作成,第11回医療の質・安全学会学術集会,2016.

•当院の臨場感あふれるアニメーションがとても分かりやすく,興味深かった(医師)

•アニメーションにすることでとても印象に残るものであった(医師)

•日常ありがちな光景をアニメーションにしていて分かりやすかった。言いにくい先輩がいたとしても,威圧的な医師がいたとしてもそれが患者さんのためになり,患者さんの安全が確保されると思ってしっかり声に出していかないといけないと改めて感じた(看護師)

•アニメを見ることで状況をイメージすることができ,分かりやすかった(看護師)

•文章でなくアニメーションであったためとても分かりやすかった。このような研修があれば不安なことなどを先輩や医師に相談しやすい(看護師)

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