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教育課程部会 総則・評価特別部会 PART 1 学習目標・方法・評価の一体的な 改善をめざす次期学習指導要領 天笠茂 主査 概 説 学習目標・指導の変化に伴う 評価の工夫 第10回 変わる高校教育 このコーナーでは高校教育の変化を、高校の取り組みや 工夫、国の政策や都道府県の取り組み、さらにそれらの背 景にある社会の変化などを含めて見ていく。今回のテーマは 「学習目標・指導の変化に伴う評価の工夫」だ。 次期学習指導要領の議論でも言われているように、これ からの社会では「何を知っているか」だけではなく、「知って いることを使って何ができるか」が重視される。そこで学習目 標も知識だけではなく、それらを使いこなすための思考力や 主体性などを総合的に育てる方向に変化してきた。それを受 けて各高校ではアクティブ・ラーニングや探究活動の導入な ど指導方法の改善が進んでいる。 しかしこれらの取り組みで、学習目標としている力が身につ いたか、どのようなプロセスで学びを深めたかの評価までは 十分できていない高校も多いのではないだろうか。従来型の 選択回答式の客観テストなどでは測ることが難しく、パフォー マンス評価の導入、ルーブリックで評価規準を定めるなど評 価方法に工夫が必要だからだ。しかし評価方法を改善しな ければ学習の成果は把握できず、授業改善も進まない。 そこでPART1では、概説で次期学習指導要領の議論を もとに、なぜ学習目標・学習方法・学習評 価を一体的に考 えなければならないかを解説するとともに、コラムで近年注目 されている評価方法について紹介する。また PART2 では、 学習目標・学習方法の改革に伴い、評価方法の改善に取り 組む高校の取り組みを紹介する。 CONTENTS PART 1 概説 学習目標・方法・評価の一体的な改善をめざす 次期学習指導要領 コラム:評価方法の変化 PART 2 高校の取り組み 広島県立庄原格致高等学校 聖学院中学校・高等学校 高松第一高等学校 ………………………………… p34 ………………………… p37 ……………………… p38 ………………………… p41 ………………………………… p44 高校の教育改革をターゲットとした 次期学習指導要領 現在、中央教育審議会では、昨年8月の教育課程企画 特別部会「論点整理」をもとに次期学習指導要領に向け て議論を進めています。この学習指導要領は今年度中に 策定され、小学校は 2020 年度(平成 32 年度)、中学校は 2021年度(平成33年度)から全面実施、高校は2022 年 度(平成 34 年度)から年次進行で実施の予定です。 高校の次期学習指導要領改訂の背景には、これからの パフォーマンス課題、ルーブリック、ポートフォリオ評価など新しい評価方法が紹介され始めているが、そ もそも、なぜこうした評価方法を取り入れる必要があるのだろうか。それは、育てたい資質・能力の変化や、 アクティブ・ラーニングの導入など、学習目標や学習方法が変わりつつあり、それらに付随して評価方法を再 考する必要が出てきたためだ。そこで概説では、学習目標・学習方法・学習評価の一体的な改革をめざす次期 学習指導要領に関する議論の概要と、高校でこうした改革に取り組む手立てについて、文部科学省教育課程部 会総則・評価特別部会主査を務める、千葉大学教育学部教授の天笠茂先生に話を伺った。 Kawaijuku Guideline 2016.7・8 34

第10回 学習目標・指導の変化に伴う 評価の工夫 · されている評価方法について紹介する。またpart2では、 学習目標・学習方法の改革に伴い、評価方法の改善に取り

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Page 1: 第10回 学習目標・指導の変化に伴う 評価の工夫 · されている評価方法について紹介する。またpart2では、 学習目標・学習方法の改革に伴い、評価方法の改善に取り

教育課程部会 総則・評価特別部会

PA RT 1学習目標・方法・評価の一体的な改善をめざす次期学習指導要領

天笠茂 主査

概 説

学習目標・指導の変化に伴う評価の工夫

第10回

変わる高校教育

 このコーナーでは高校教育の変化を、高校の取り組みや

工夫、国の政策や都道府県の取り組み、さらにそれらの背

景にある社会の変化などを含めて見ていく。今回のテーマは

「学習目標・指導の変化に伴う評価の工夫」だ。

 次期学習指導要領の議論でも言われているように、これ

からの社会では「何を知っているか」だけではなく、「知って

いることを使って何ができるか」が重視される。そこで学習目

標も知識だけではなく、それらを使いこなすための思考力や

主体性などを総合的に育てる方向に変化してきた。それを受

けて各高校ではアクティブ・ラーニングや探究活動の導入な

ど指導方法の改善が進んでいる。

 しかしこれらの取り組みで、学習目標としている力が身につ

いたか、どのようなプロセスで学びを深めたかの評価までは

十分できていない高校も多いのではないだろうか。従来型の

選択回答式の客観テストなどでは測ることが難しく、パフォー

マンス評価の導入、ルーブリックで評価規準を定めるなど評

価方法に工夫が必要だからだ。しかし評価方法を改善しな

ければ学習の成果は把握できず、授業改善も進まない。

 そこでPART1では、概説で次期学習指導要領の議論を

もとに、なぜ学習目標・学習方法・学習評価を一体的に考

えなければならないかを解説するとともに、コラムで近年注目

されている評価方法について紹介する。またPART2では、

学習目標・学習方法の改革に伴い、評価方法の改善に取り

組む高校の取り組みを紹介する。

CONTENTS PART 1 概説●学習目標・方法・評価の一体的な改善をめざす 次期学習指導要領●コラム:評価方法の変化

PART 2 高校の取り組み●広島県立庄原格致高等学校●聖学院中学校・高等学校●高松第一高等学校

………………………………… p34

………………………… p37

……………………… p38

………………………… p41

………………………………… p44

高校の教育改革をターゲットとした次期学習指導要領

 現在、中央教育審議会では、昨年8月の教育課程企画

特別部会「論点整理」をもとに次期学習指導要領に向け

て議論を進めています。この学習指導要領は今年度中に

策定され、小学校は2020年度(平成32年度)、中学校は

2021年度(平成33年度)から全面実施、高校は2022年

度(平成34年度)から年次進行で実施の予定です。

 高校の次期学習指導要領改訂の背景には、これからの

 パフォーマンス課題、ルーブリック、ポートフォリオ評価など新しい評価方法が紹介され始めているが、そもそも、なぜこうした評価方法を取り入れる必要があるのだろうか。それは、育てたい資質・能力の変化や、アクティブ・ラーニングの導入など、学習目標や学習方法が変わりつつあり、それらに付随して評価方法を再考する必要が出てきたためだ。そこで概説では、学習目標・学習方法・学習評価の一体的な改革をめざす次期学習指導要領に関する議論の概要と、高校でこうした改革に取り組む手立てについて、文部科学省教育課程部会総則・評価特別部会主査を務める、千葉大学教育学部教授の天笠茂先生に話を伺った。

Kawaijuku Guideline 2016.7・834

Page 2: 第10回 学習目標・指導の変化に伴う 評価の工夫 · されている評価方法について紹介する。またpart2では、 学習目標・学習方法の改革に伴い、評価方法の改善に取り

(注)科目名は以下すべて仮称

時代に求められる資質・能力の変化があります。「何を

知っているか」だけでなく「知っていることを使ってど

のように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」

が重視されるようになっていることから、「個別の知識や

技能」に偏らず、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに

向かう力、人間性等」を総合的に育むことが、より一層

求められているのです。

 こうした資質・能力を育てるために、高校の教科や科

目の見直しが議論されています。特に注目されているの

は科目の新設です。積極的に社会参加する意欲を育て、

現代社会の諸課題について考える「公共」(注)、持続可能

な社会づくりに必須となる地球規模の諸課題や地域課題

を解決する力を育む「地理総合」、自国のこと、グローバ

ルなことが影響し合ったりつながったりする歴史の諸相

を学ぶ「歴史総合」、数学と理科の知識や技能を総合的に

活用して生徒が主体的な探究活動を行う「理数探究」の

設置が検討されています。

 これらの科目が前提としているのは、課題の発見・解

決に向けた主体的・協同的な学び、いわゆるアクティブ・

ラーニングによる指導です。学力の3要素をバランスよ

く育てるためには、学びの深まりが大切です。そこで

「何を学ぶか」だけでなく、習得・活用・探究というプロ

セスの中で問題発見・解決を行うようにするなど、「どの

ように学ぶか」についても改革を進めようとしています。

 アクティブ・ラーニングは、小学校、中学校では導入

が進んでいますが、高校はまだ知識伝達型の一斉授業も

多いのが現状です。高校の授業改善が難しい理由として

よく挙げられるのが知識重視

の大学入試に対応できないと

いうものですが、大学入試は

既に大きく様変わりしていま

す。入試方法や入試問題を1

つ1つ見ると、単に知識を問

うだけでなく、次の時代に必

要な物の見方や考え方を問お

うとしている問題が増えてい

ることに気づきます。アク

ティブ・ラーニングで思考

力・判断力・表現力等を育成

すれば大学入試にも対応でき

るはずです。

 そして授業改善と表裏一体

で必要なことが評価方法の見直しです。知識伝達型の一

斉授業では主に「知識及び技能」が育成され、評価は知

識の定着度を問うテストで行うことができます。しかし

「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む

態度」を含む、学力の3要素をバランスよく育成するた

めに授業方法を変えれば、評価方法も変わるのは当然で

す。

 学力の3要素を評価するための手法としては、論文や

レポートの作成、発表、グループでの話し合い、作品の

制作など、知識やスキルを応用・統合して使いこなす課

題の出来栄えを評価するパフォーマンス課題の実施や、

その際の評価規準をまとめたルーブリック、生徒の学習

過程や成果をまとめたファイルをもとに評価するポート

フォリオ評価などが注目されています。ただし、これら

の評価については、教員の手間がかかることや、パフォー

マンス評価に当たってのルーブリックの作成など高度な

評価技術が求められることなどが課題に挙がっており、

中央教育審議会でも引き続き議論されています。

 これまでの学習指導要領は、「何を知っているか」を体

系的に整理したものでしたが、変化の激しい社会では知

識を身につけるだけではなく、知識を使いこなして主体

的に課題に取り組む資質・能力が求められます。そこで

次期学習指導要領では、新しい時代に必要な資質・能力

(「何ができるようになるか」)、「何を学ぶか」、「どのよう

に学ぶか」を一体的に整理し、さらに評価方法も、資質・

能力が身についたかという観点を意識したものになるよ

う見直そうとしているのです<図1>。

(文部科学省 教育課程企画特別部会「論点整理 補足資料(1)」(2015)より)

<図1>学習指導要領改訂の視点

変わる高校教育 第10回 学習目標・指導の変化に伴う評価の工夫

Kawaijuku Guideline 2016.7・8 35

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総合的な学習の時間から教科を横断しチームで取り組む授業へ

 こうして学校のカリキュラ

ム全体や、各教科で育てたい

資質・能力を整理すると教科

を横断した指導のよさにも気

がつくのではないでしょうか。

高校では小・中学校に比べる

と教科間の連携はあまりさか

んに行われていませんが、育

てたい資質・能力を身につけ

させるために有効であれば、

教科間で連携・横断して授業

をすることを考えるとよいのではないかと思います。

 高校で取り組む際の第一歩としては、総合的な学習の

時間の見直しをしてはいかがでしょうか。あまり熱心に

取り組んでいない高校もあるようですが、生徒がさまざ

まな教科の知識を活用しながら考えるような課題を行え

ば、教員にとっても他教科の教員と一緒に指導・評価の

方法を考えるよい機会になります。総合的な学習の時間

の実践で、先生方が教科間連携のノウハウを得て、それ

がいろいろな教科に広がっていくとよいと思います。

 現在の高校教育は、教科ごとの指導が独立しすぎてい

て、それが生徒に総合的・全体的に物事を考える力を育

てることを阻んでいるように思います。総合的な学習の

時間で行うような、複数の分野の知識を組み合わせなが

ら課題に取り組むといった経験をしていないと、大学で

の学修・研究にスムーズに適応できないことがあります。

さまざまな制約があるとは思いますが、高校でもこうし

た指導をしておくと、生徒は大学でもっと力を伸ばすこ

とができると思います。

 なお、今回お話しした内容はさらに審議を重ねた上で、

次期学習指導要領の総則にまとめる予定です。高校の先

生方も担当教科の部分だけでなく、総則を読んでいただ

ければと思います。そして学校教育全体の中に位置づけ

られた高校の教育課程や、高校の教育課程の中での担当

教科で、それぞれ何を教えなければならないかについて

ご理解いただいた上で、学習目標・学習方法・学習評価

の一体的な改革に取り組んでほしいと思います。

(文部科学省 教育課程企画特別部会「論点整理 補足資料(3)」(2015)より)

組織全体で取り組む構造化したカリキュラムに基づいた教育

 こうした一体的な改革は、組織全体で話し合って進め

る必要があります。 

 中央教育審議会では、次期学習指導要領を考えるに当

たって、教科学習、総合的な学習、特別活動、道徳教育

でそれぞれどのような力を育成するかについての整理を

行いました<図2>。まずカリキュラム全体で育てたい

資質・能力を整理し、それに基づいて、それぞれの教科

等で育てたい資質・能力を考え、指導・評価ができるよ

うにしようという発想です。

 学校でも同様に、学校全体で、生徒に育成したい資質・

能力は何か考え、それに基づいて構造化したカリキュラ

ムを構築することが大切です。しかし、高校は小・中学

校に比べて教科の専門性が高い分、学校全体のカリキュ

ラムを作ってその中に各教科を位置づけるのではなく、

教科がそれぞれで目標を考えて指導をして、それを単に

まとめたものをカリキュラムとしてしまいがちです。そ

れでは教科ごとにバラバラの学力観や授業論、評価論に

従って教育をすることになり、学校全体として、一貫性

のある教育をすることができません。生徒の学力の質保

証は先生個人ではなく、学校という組織が担保するもの

ですから、学校全体の目標を意識して、各教科が学力の

3要素をバランスよく育成するための指導・評価のあり

方を考えることが重要です。

<図2>学習指導要領等の構造化のイメージ(仮案・調整中)

Kawaijuku Guideline 2016.7・836

Page 4: 第10回 学習目標・指導の変化に伴う 評価の工夫 · されている評価方法について紹介する。またpart2では、 学習目標・学習方法の改革に伴い、評価方法の改善に取り

 概説で述べたように、近年は知識を身につけるだけでなく、知っている知識を使ったり他者と協同して課題について深く考える力や、考えた結果を表現する力、主体的に学習に取り組む態度などを育てることが重視されている。こうした力は、主に知識が身についたかを見る従来型の選択回答式のペーパーテストなどでは測ることが難しい。そこでパフォーマンス評価やポートフォリオ評価が注目されている<図>。

 パフォーマンス評価とは、記憶した知識をそのまま答えるなどではなく、複数の知識や技能を統合的に使いこなすことを求めるような課題(パフォーマンス課題)に取り組ませて評価するものだ。例えば論説文やレポート、展示物といった作品や、スピーチやプレゼンテーション、協同での問題解決、実験の実施などの実演を教員が見て、学んだ知識や技能を使って考え、

 概説では、育てたい資質・能力の変化や、アクティブ・ラーニングの導入など、学習目標や学習方法が変わりつつあること、それに付随して評価方法も変化しつつあることを紹介した。こうした動きに関連して、近年注目されている評価方法をいくつか紹介する。

表現することができたかなどの観点から、その出来栄えを評価する。 ポートフォリオとは生徒の学習の過程や成果を示す記録を蓄積したファイルのことだ。このファイルで教員が生徒の学習状況を把握するとともに、生徒や保護者等に対し、その成長の過程や到達点、今後の課題等を示す評価方法をポートフォリオ評価という。 パフォーマンス評価やポートフォリオ評価の際に多く用いられるのがルーブリックだ。ルーブリックとは学習者が何を学ぶかを文章で示した評価規準と、学習者が到達しているレベルを示す評価基準をマトリックス形式で示したものだ(P39,42,46参照)。評価規準を明確化することで、教員間の評価のばらつきをなくしたり、生徒が学習目標を意識して学ぶことができるなどのメリットがある。

<図>学力評価の方法

(文部科学省 教育課程部会 総則・評価特別部会(第 7 回(2016 年4月4日))配付資料より抜粋)

変わる高校教育 第10回 学習目標・指導の変化に伴う評価の工夫

評価方法の変化Column

Kawaijuku Guideline 2016.7・8 37

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生徒の力を分析して論理的思考力の育成に着手

 広島県立庄原格致高校は、2014年度に国立教育政策

研究所の教育課程研究指定校事業の指定校となったこと

を契機に、「論理的思考力及び表現力の育成を図るための

指導と評価の工夫改善に関する研究~パフォーマンス課

題の設定とルーブリックの作成を通して~」の研究に取

り組んでいる。

 推進役の小澤先生は「今回の指定を受ける前にも、新

しい指導方法に挑戦したことがあったのですが、定着し

ませんでした。生徒にどんな力を身につけさせたいのか

を話し合わず、単に形式をなぞるだけの取り組みになっ

ていたことが原因だったと思います。そこで今回はまず

生徒に不足している力やつけたい力、これまでの授業の

どこがよくなかったか、パフォーマンス課題を行う意義

などについて話し合うことにしました」と話す。

 その中で、生徒の課題として、「正答のみを求め、解答

に至るまでのプロセスを重要視しない」「解を導き出すた

めのツールとして、知識をうまく使うことができない」

「教員の発問に対して単語で答えることが多く、わかりや

すく構成して意見を言うことができない」などの課題が

挙がり、特に論理的思考力に課題があることが明らかに

なった。

 一方で、教員の指導や評価が、論理的思考力を伸ばし

たり測ったりするものになっているかについても振り返っ

た。すると授業中に生徒が自分で考えたり、表現をする

場面が少なく、それらの力の評価もしていないことが確

認できた。

 そこで、論理的思考力を育てる第一歩として、各教科

で「生徒につけたい論理的思考力」を整理したところ、

「①自分の意見を根拠とともに述べる力、②英文の中から

筆者の主張を根拠とともに読み取る力、③英文の中から

意見・主張・事実・分析・仮説を区別し、それらの関連

を読み取る力(英語科)」「①史料・資料・統計データを

分析し、その結果を元に事物の本質や因果関係を表現す

る力、②それを文章や言葉で客観的に表現する力(地歴

公民科)」「問題解決の過程で見いだした着想や相互関係、

方法、根拠などを、他者に説明し、意見を交流できる力

(数学科)」などに整理できた。

 さらに、この教科目標を持ち寄って、学校全体で育成

する論理的思考力を「筋道を立て、根拠を持って物事を

考察し、それを明確に、自分の言葉で、他者に伝えるこ

とができる力」と定義した。

 そして、論理的思考力を育てるために行っているのが

パフォーマンス課題だ。知識や技能を使いこなして解く

課題に取り組み、論理的に考えたり、発信する力が身に

ついたか評価する。

 本来パフォーマンス課題は、知識や技能を使いこなし

て行う複雑な課題全般を指し、実技や作品、文章、スピー

チ、ディスカッションなど多様な取り組みがある。しか

し同校では学校目標に合わせて「自分の言葉による説明

を求める課題」に限定して実施している。また生徒の成

果を蓄積して共有しやすいように、原則的に紙に書いて

残せる課題に限っている。

授業観察週間に全教員がパフォーマンス課題を取り入れた授業を実施

 パフォーマンス課題は年2回、7月と11月の授業観

察週間中に全教員が行うよう義務づけている<図表1>。

広島県立庄原格致高等学校

論理的思考力を育てるパフォーマンス課題を全教科で行い、生徒の自己評価を実施

 広島県立庄原格致高等学校では、「筋道を立て、根拠を持って物事を考察し、それを明確に、自分の言葉で、他者に伝えることができる力」を育成するため、全教科でパフォーマンス課題を導入している。さらにパフォーマンス課題を行った後は、ルーブリックを使って生徒の自己評価を行っている。これらの取り組みについて、教務部の小澤圭介先生に話を伺った。

PA RT 2 高校の取り組み

小澤圭介先生

Kawaijuku Guideline 2016.7・838

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 パフォーマンス課題を行う前には、習得・活用・態度

の3観点3段階の評価規準を示したルーブリックを作成

し、生徒に示す。生徒が到達目標を意識して、課題に取

り組むことができるようにするためだ。課題を終えた後

は、パフォーマンス評価として生徒がルーブリックで自

己評価を行い、課題と一緒に提出する。

 「授業の進め方は、ワークシートで必要な知識や視点を

獲得しながら最後に自分の言葉で意見をまとめる、グ

ループワークを通して多様な視点があることを知った上

で自分の意見をまとめる、など教員に任せています。教

科や単元の特性や生徒の力に合わせるためです」(小澤先

生)

 地理と数学のパフォーマンス課題の例を紹介しよう。

「地理B」の「現代世界の地誌的考察」の単元では、ま

ずアフリカの輸出品や、ガーナの経済について資料や

データをもとに講義をしたり、日本の輸出品目と比較さ

せたりする。その後、パフォーマンス課題として「なぜ

アフリカの国々がわずかな種類の産物の輸出に頼ってい

るのか」についてグループで議論し、意見を個別にワー

クシートにまとめる。自己評価は、「習得」の観点として

資源や農業、歴史の知識とつなげて考えることができた

か、「活用」として説明の論理構成が明確か、「態度」と

してグループでの議論を発展させた自分なりの考察がで

きているかを、ルーブリックで評価する。

 「数学Ⅰ」の「二次関数」では、まず関数の基本的な公

式について説明し、演習を行う。その後、パフォーマン

ス課題として、「y=3x2をx軸方向に2、y軸方向に5平

行移動するとy=3(x-2)2+5になるのはなぜか」につ

いて考える。数式だけでなく、図や言葉も使ってワーク

シートにまとめる。公式に当てはめて問題を解けるよう

<図表1>パフォーマンス課題のテーマ例(2015年度)

<図表2>「数学Ⅰ」のパフォーマンス課題とルーブリックの例(2015年度)

現代文 太宰治「猿が島」の「私」の心情の変化が伝わる4コマ漫画を作る

古典 「小国寡民」に描かれている老子の理想とする社会に対して、納得できる点、できない点を挙げて話し合い、老子の主張の特色を考える

日本史 地名の由来についての学習を踏まえて、庄原・三次の地名を探り、地域の地理・歴史を推し量って発表しあう

倫理 なめくじに意思はあるのか考える

数学 等差数列の一般項を求める公式を習ったが、なかなか覚えることのできない友達に、具体的なイメージを示しながら教える

物理 グループワークや実験を通して、エネルギーとは何かについて考える

化学 ホルムアルデヒド HCHO の電子式を書き、分子の形を電子対反発則を利用して予測する

生物 モスキート音が若者にしか聞こえない理由を、音が聞こえる仕組みを踏まえて説明する

体育 フットサルの攻撃フォーメーションを各自で考え、チームのメンバーで共有し、ゲームで使ってゴールする

音楽 筝の掻き爪、合わせ爪の奏法を使って「さくら」を演奏する時に、冒頭部分で力強い印象を聞き手に与えるにはどのような工夫をすればよいか考える

英語 自分のおすすめする観光スポットを選んで、友達が「行ってみたい」と思うように英語で伝える

家庭 天然繊維があれば糸を作ることができるのに、なぜ化学繊維が開発されたのか考える

習得 活用 態度理解する 伝える 創造する

基本的な知識・技能の習得

知識・技能を活用して、課題を解決するために必要な表現力

主体的に学習に取り組もうとする姿勢

3

課題解決に必要な、基本的な公式や定理を理解し、自在に使いこなすことができる

論理構成が明確であり、かつ自分なりに考えた独創性ある表現で、説明に工夫が見られる

得られた結果に満足せず更なる考察ができている

2課題解決に必要な、基本的な公式や定理をある程度理解している

論理的に筋の通った説明ができており、説明の表現も適切である

計算や質問・説明により課題解決に向けた考察をしている

1課題解決に必要な、基本的な公式や定理の理解が不足している

説明が不足、あるいは教科書等の文章をそのまま引用した説明が多い

勘やあいまいな判断に留まり、実際の計算・相談により深い考察をしない

〔ルーブリック〕

あるクラスメートの疑問

2次関数 y=3x2 のグラフをx軸方向に2、y軸方向に5並行移動したグラフの式は

となるけど・・

なぜ(x -2)2 で、x 軸方向に+2平行移動したことになるのか?そして、なぜ(x -2)2 +5で、y 軸方向に+5平行移動したことになるのか?

この質問にわかりやすく答えてあげよう。(教科書を活用してよい)

〔パフォーマンス課題〕

(<図表1><図表2>とも庄原格致高校提供資料より抜粋)

変わる高校教育 第10回 学習目標・指導の変化に伴う評価の工夫

Kawaijuku Guideline 2016.7・8 39

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広島県立庄原格致高等学校

◇所在地:広島県庄原市三日市町515

◇沿革:1897年 私立格致学院設立1938年 県移管により広島県立格致中学校と改称1948年 学制改革により広島県格致高等学校設置1949年 広島県格致高等学校、広島県庄原高等学校、広

島県西城高等学校を統合し、広島県比婆西高等学校設置。西城高等学校は西城分校となる。

1954年 広島県庄原高等学校と改称1961年 普通科が広島県庄原格致高等学校として分離独立1968年 広島県立庄原格致高等学校と改称

◇学級編成:【全日制】普通科1学年3クラス

◇生徒数:325名(男子150名、女子175名)2016年5月1日現在

◇特色:「四書」のひとつ「大学」にある「致知在格物(物事に真剣に向き合い、真理を見極める)」を校名の由来とし、教育理念に掲げる。学年を越えて形成したグループで庄原市の活性化案を提言する「格致『力』検定」など、新たな教育にも積極的に取り組んでいる。

◇卒業生の進路:2016年3月卒業生117名・進路:4年制大学75名、短期大学3名、専門学校35名、就職4名・合格者の内訳(現役生、延数): 国公立大学28名、私立大学159名

にするだけではなく、本質的な問いを考えることで理解

を深めることが狙いだ。自己評価は、「習得」として基本

的な公式や定理を考察に使えているか、「活用」として説

明の論理構成が明確か、「態度」として問いに答えるだけ

でなくさらなる考察ができているかを評価する<図表2>。

このように学んだ知識を使って多角的に考え、表現する

ことができたかを見る課題が多い。

 教員は、授業後にはパフォーマンス課題の内容や指導

について、授業者と授業に参加した教員2人の3人で事

後協議を行う。生徒の自己評価やワークシートなどを元

にして、パフォーマンス課題によって、クラス全体とし

て、生徒が成長できたかを振り返り、クラス全体の生徒

の論理的思考力がどの程度伸びたかについて、「読む力」

「分析力」「判断力」「協調性」「表現力」の5項目を5段

階で評価する。

 「まだ取り組み始めたばかりなので、個別の生徒の評価

は自己評価にとどまっています。ルーブリックの精度に

もまだ課題があります。教員が客観性を担保して生徒を

評価し、成長を確認したり、生徒にフィードバックでき

る手法を考えることが今後の課題だと考えています」(小

澤先生)

 なお、事後協議を行う3人グループは、教科が異なる

教員3人で構成している。専門が違う教員が生徒目線で

授業に参加して、改善点を見つけるためだ。また2人1

組だと年長の先生の意見を若い先生が聴くという構図に

なりがちだが、3人1組にすることで意見が言いやすい

ように工夫している。

普段の授業でも生徒に考えさせる指導が増加生徒自身も成長を実感

 パフォーマンス課題・評価導入後の変化についても

伺った。

 パフォーマンス課題の実施を義務づけているのは年2

回だが、その他の授業でも、解答を言わせるだけでなく

理由を聞く、ペアワークを増やして自分の意見を説明さ

せるなど、生徒に論理的な思考を促す工夫をする教員が

少しずつ増えているという。この結果、大学入試に向け

た面接指導で原稿を読むだけでなく自分の言葉で話せる

ようになった、生徒同士で意見を引き出し合ったり、構

成を考えて意見をまとめたりできるようになったなど、教

員は大きな手応えを感じているそうだ。

 「授業の変化を受けて生徒の論理的思考力は高まって

いると感じています。年2回の授業評価アンケートで、

『いろいろな資料や他者の意見を参考にしながら思考を進

めることができている』『与えられた課題について自分な

りにその課題解決の一番大切なことがわかる』などの項

目について聞くと、生徒自身がこうした力の伸びを実感

できていることがわかりました」(小澤先生)

 最後に、パフォーマンス課題・評価を始める先生への

メッセージをいただいた。

 「パフォーマンス課題を行うようになって、これまで測

りにくかった生徒の成長がわかったり、これまで気づか

なかった生徒の一面を見ることができるようになりまし

た。パフォーマンス課題を通じて深く考えさせる中で、

生徒は教員が思いもよらないことに気づいたり、テーマ

の本質につながる発言をしたりします。生徒が気づいた

ことを間違いを恐れず自由に発言できる雰囲気を作る力

や、生徒の発言を教員がしっかり受け止めて考えを深め

るようにクラスを導く力、生徒の伸びを見取る力が必要

だと感じています。しかし、パフォーマンス課題を行う、

パフォーマンス評価をするということを、全く新しいも

のとして考える必要はなく、これまでの授業の中に該当

する取り組みがあるはずです。それを生徒が自分で考え、

表現する力を伸ばす取り組みとして、教員が意識するこ

とが大事だと考えています」(小澤先生)

Kawaijuku Guideline 2016.7・840

Page 8: 第10回 学習目標・指導の変化に伴う 評価の工夫 · されている評価方法について紹介する。またpart2では、 学習目標・学習方法の改革に伴い、評価方法の改善に取り

聖学院中学校・高等学校

「21世紀型教育」の成果を測るためにルーブリックを利用

 聖学院中学校・高等学校では、これからの社会で必要

な力として、知識と知識を組み合わせて「学ぶ力」、課題

解決のために新たな知識を「学ぼうとする力」、他者と協

力して課題解決ができる「共に生きる力」を育てる「21

世紀型教育」に学校全体で取り組んでいる。例えば各教

科ではアクティブ・ラーニング型授業やプロジェクト型

学習を実施し、知識を活用して取り組む課題や他者との

対話を通して学びを深めている。また、さまざまな体験

学習・行事を行い、苦労や困難の中で人間関係を構築す

ることや、自然の営みや異文化体験を通して新たな価値

観の芽生えを促している。さらに入学希望者向けには思

考力ものづくり入試や思考力セミナーを実施して、未知

の問題について深く考える機会を設けている。

 これらの取り組みを通して育てた力はいずれも従来型

の知識量を問うテストでは測ることができない。そこで、

聖学院中学校・高等学校では、体験学習、各教科の授業、

中学校の入試など、さまざまな場面でルーブリックを導

入し、知識だけではなく「学ぶ力」「学ぼうとする力」「共

に生きる力」が身についているか確認している。ルーブ

リック導入の経緯や、活用事例を見ていこう。

文化祭、修学旅行での成長をルーブリックで自己評価

 初めてルーブリックを導入したのは、2012年度秋の中

高合同で行う文化祭「記念祭」の実行委員(約15人)の

活動の評価だった。文化祭を、生徒のリーダーシップや

主体性、協働力など「プロジェクトマネジメント」の力

を育成する場として位置づけ、実際にこうした力が伸び

ているのか確認しようと、試験的に行った。ルーブリッ

クは企業でプロジェクトマネージャー向けに作られたも

のを生徒向けに改定して利用した。評価は生徒の自己評

価とし、準備開始時と文化祭が終了した後の2回、同じ

ルーブリックで評価した。

 ルーブリックの作成を担当した伊藤先生は「ルーブ

リックは『工程表を作成して、活動と比較しながら進め

ることができる』『工程の目的を理解して工夫しながら進

めることができる』『メンバーに仕事を振り分けることが

できる』などの9項目6段階で構成しました。行事は生

徒にとって学習の一環という意識が薄く、分担やスケ

ジュールも曖昧なまま進めてしまい、プロジェクトを運

営する力がつかないことを課題に感じていました。2回

のルーブリック評価を見ると、評価は必ずしも上がって

はいなかったのですが、評価方法に対しては好意的に受

け止められたようです。生徒からはルーブリックを見る

ことで、どんなことを意識して取り組むべきか事前にわ

かったのがよかった、振り返りをして自分ができていな

かったことがわかったなどの声があり、行事で身につけ

るべき力を意識して取り組むことができたことがわかり

ました」と話す。

 何のために行事を行うのか、どんな力を身につけよう

としているのか、生徒の理解が曖昧なために学びが深ま

らないのは、他の行事についても共通の問題だった。そ

こで他の行事でも順次ルーブリックによる自己評価を導

入していった。

 例えば平和学習を目的とする沖縄への修学旅行(高2)

教科・行事・入試でルーブリック評価を導入して学習目標を生徒・教員で共有

 東京都北区に立地し、中高一貫教育を行う私立男子校の聖学院中学校・高等学校では、数年前から体験学習・行事や教科学習、入試とさまざまな場面でルーブリックを用い、指導や評価に活用している。その狙いと手法、効果について、高等部長で国語科教諭の伊藤豊先生、21教育企画部部長で数学科教諭の児浦良裕先生、技術科教諭の内田真哉先生に話を伺った。

PA RT 2 高校の取り組み

児浦良裕先生 内田真哉先生伊藤豊先生

変わる高校教育 第10回 学習目標・指導の変化に伴う評価の工夫

Kawaijuku Guideline 2016.7・8 41

Page 9: 第10回 学習目標・指導の変化に伴う 評価の工夫 · されている評価方法について紹介する。またpart2では、 学習目標・学習方法の改革に伴い、評価方法の改善に取り

<表>レポート課題のルーブリック(現代文「思考実験レポート」、2013年度)

(聖学院中学校・高等学校より提供)

では、旅行当日に資料館見学や、大学教員やひめゆり学

徒による講演を聴くほか、事前に調べ学習、課題図書を

読んでのプレゼンテーションなどを行っている。これら

の事前事後の活動を含め計8回程度、ルーブリックによ

る自己評価を行い、沖縄への理解が深まったかや、チー

ムで協力して準備できたかなどを確認させている。事前

学習から事後学習まで、同じルーブリックを使って何度

も自己評価をすることで、目標とする力がどれくらいつ

いたか意識しながら進められるようにしている。

 「ルーブリックの利用は教員にとってもメリットがあ

りました。ルーブリックは体験学習に関わる教員が共同

で作成していますから、作成を通して教員も、生徒にど

んな力を身につけさせるための行事なのか、全員に達成

してほしいことは何か、そのためにはどんな指導をする

べきなのかなどを考えることができました」(伊藤先生)

教科のレポートやプロジェクト学習でもルーブリックを活用

 教科学習でも、2013年度からルーブリック評価を用

いている。最初に取り組んだのは国語科の伊藤先生だ。

高1のクラスで夏休みの国語のレポートをルーブリック

で評価した。

 「レポートは、これまでは教員の主観や印象で評価して

しまいがちでしたが、ルーブリックを使えば、評価の観

点や、それぞれの観点の到達度を客観的に見ることがで

きると考えました。課題は、トロッコ問題(注)のような

哲学的なジレンマを含む文章をいくつか示し、1題選択

してレポートを書くものです。先人の思想を踏まえた上

で、論理的に考えて書く力をつけることが目的です」(伊

藤先生)

 事前学習として、「1章:選んだ文章の中では、どんな

意見が対立しているのかを書く」「2章:1章で挙げた意

見と先人の思想を関連づける」「3章:それぞれの意見の

正当性を説明する」「4章:文章と同じようなジレンマが

ある日常の場面の例を挙げる」「5章:結論」の構成で書

くように指導した。その上で、上記のような構成で書けた

か、添付資料の示し方などを評価するルーブリック<表>を渡して、生徒の自己評価と、教員による評価をした。

 「生徒はルーブリックの観点を意識することで構成の

しっかりしたレポートを書くことができました。教員も

ルーブリックでレポートを評価することで客観的な評価

ができたと思います。ただし、後日行った別の比較的易

しいテーマのレポート課題ではルーブリックに合わせて

書いた結果、点数はよいけれどオリジナリティがなく面

(注)トロッコ問題…倫理学の思考実験。線路を走るトロッコが制御不能になり、このままでは前方の作業員5人が死ぬ。別路線に進路を切り替えれば5人は助かるが、別路線の作業員1人は死ぬ。この場合にどのような行動をとるのが正しいかを考えるもの。

不満足 (1) 成長中 (2) 習得 (3) 熟練 (4) 模範的 (5)

原理・前提を抽出する

(第1章)

文章から原理・前提を引き出すことができていない。

対立する原理・前提を引き出そうとしたが、妥当性や説得力に欠ける。

対立する原理・前提を適切に引き出すことができる。

「習得」に加えて、コンパクトな表現にまとめ、明確な対立軸を設定することができる。

「熟練」に加え、観点を変えた対立軸を付け加え、思考を発展させることができる。

先人の思想と関連づける

(第2・3章)

先人の思想を引用することができていない。

先人の思想を引用する際に、出典(だれのどんな言葉か)を明らかに示すことができる。

「成長中」に加えて、自分の支持する原理・前提を適切に関連づけることができる。

「習得」に加えて、双方の原理・前提と適切に関連づけ、対立を明確に示すことができる。

「熟練」に加え、観点を変えた対立軸についても先人の思想と適切に関連づけることができる。

問いを立てる(第2章)

問いを立てることができていない。「論題」に示した論点もふまえることができない。

「論題」に示した論点に準じて述べることができる。

「成長中」に加えて、そこから問いを派生させることができる。

レポート全体を貫くような、大きな問いを立てることができる。

多くの人が考えてみたくなるような、刺激的な問いを立てることができる。

論題と同種のジレンマを含む関連事例を挙げる

(第4章)

関連事例を挙げることができない。

事例を挙げるが、論題との関連性が弱い。

適用範囲が限定的であるが、関連事例を挙げることができる。

適切な関連事例を挙げ、文章に説得力を与えることができる。

適切な関連事例を正確なデータを添えて挙げることができる。

資料を示す資料が添付されていないか、それと同様のレベルである。

資料が添付できたが、整理されておらず、レポート本文と参照しにくい。

資料編の1ページ目に添付資料のリストが書かれていて、レポート本文と参照しやすい。

「習得」に加えて、資料がきれいにまとめられ添付されている。

「熟練」に加えて、今後調査したいことがらのリストが掲載されている。

読みやすく書く・おもしろく書く

読みづらい文字で書かれていたり、用紙にしわがよったり、汚れたりしている。

ワープロで入力するか、ていねいな字で書かれており、用紙も清潔である。

第1章から第6章まで、章ごとに内容がまとめられている。

「習得」に加えて、思考を深めるときに生じるジレンマが真摯に表現されている。

「熟練」の内容を知的なユーモアをまじえて表現することができ、読み物としての魅力を備えている。

Kawaijuku Guideline 2016.7・842

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白みのない文章になった生徒もいました。ルーブリック

は、先述の哲学のレポートのような難しい課題に挑戦さ

せるときにはよいガイドになります。一方でルーブリッ

クの観点以外のことは評価されないことがわかっている

ので、生徒の自由な発想を阻害するデメリットもあるよ

うに思います。どんな課題で使うべきか工夫が必要だと

思いました」(伊藤先生)

 また、高2の理系選択者が課外で取り組む研究活動も、

研究を複数の観点から客観的に評価するため、ルーブ

リック評価を用いている。観点は「実験・観察記録とそ

の読み取り(正しく記録し、客観的な判断がされており、

探究すべき新たな課題を見出している)」「プレゼンテー

ション(堂々ときっぱりした姿勢で、表情があり声の強

弱を生かしている)」など6つからなる。生徒は研究前に

ルーブリックの最高レベルを見ることで、目標を高く

持って研究に取り組んでいる。教員にとっては、客観的

な評価ができるのはもちろん、研究の到達点を観点別に

具体的に記したルーブリックを生徒に渡すことで、研究

方法や実験記録をとる際の注意点を口頭で詳しく説明し

なくてもよくなったというメリットもあるという。

思考力を測る入試を実施教科横断型のルーブリック作成などもめざす

 さらに入試の採点にもルーブリックを活用している。

用いているのは、2013年度から中学校の入試区分に設け

た「思考力ものづくりテスト」だ。出題は「ある国に関

する資料から問題点を読み取り解決策を考えてそれをレ

ゴブロックで表現し、文章で説明する」など、知識の量

ではなく、自分を客観視して考えを言語化できるかを測

る内容だ。文章の構成や内容、作品の完成度など、複数

の観点から到達度を測るため、ルーブリックで評価する。

 「知識はあまりなくても潜在的な思考力を持ち、入学後

に伸びそうな生徒を選抜する試験として有効だと考えて

います。実際に入学してからもプロジェクト学習などに

積極的に参加するなど、他の生徒へもよい影響を及ぼし

ていると思います」(児浦先生)

 このように、聖学院中学校・高等学校では、多くの場

面でルーブリックを活用した指導・評価を行っているが、

そもそもルーブリック評価以前に、ルーブリックを作る

ことに難しさを感じている先生も多いだろう。そこで

ルーブリック作成の手順や工夫を伺った。

 「大事なのは目的を明確にすること」と伊藤先生は指摘

聖学院中学校・高等学校

◇所在地:東京都北区中里3-12-1

◇沿革:1903年 聖学院神学校設立1906年 聖学院中学校設立 1948年 聖学院高等学校設置。聖学院中学校・高等学校

と改称

◇学級編成(高等学校):【全日制】普通科1・2年生4クラス、3年生5クラス

◇生徒数(高等学校):387名(男子のみ)2015年5月1日現在

◇特色:米国の宣教師H・H・ガイ博士が設立した神学校を母体に、石川角次郎を初代校長とする中学校を開校。以来、一貫してキリスト教精神に根ざした「オンリーワン・フォー・アザーズ(他者のために生きる個人)」の教育を実践する。現在は、「学んだ力」以外に「学ぶ力」「学ぼうとする力」「共に生きる力」を育成するための「21世紀型教育」に取り組む。

◇卒業生の進路:2016年3月卒業生142名・進路:4年制大学90名、短期大学1名、専門学校3名、留学3名、

その他45名・合格者の内訳(現役生、延数): 国公立大学2名、私立大学272名

する。「最初に、その授業や行事で生徒にどうなってほし

いかを考えます。なってほしい姿がイメージできたら、

いくつかの観点に分けます。その後、観点別に到達度を

決めていきます。私は到達度を考える時は、まず生徒全

員に最低限達成してほしい内容を考え、それを中程の規

準にして、そこから上下の規準を考えるようにしていま

す。全員に届いてほしい内容を最高到達目標にしないの

は、より高い目標を示してそこをめざして課題に取り組

んでほしいからです」(伊藤先生)

 「ルーブリックを最初に作成する際は、この単元ではこ

れくらいまではできるようになってほしいなど、複数の

教員で到達度や、実際の生徒の様子について話し合いな

がら作るのがよいと思います。最初に作る時は大変です

が、何度か作れば、作り方や各ルーブリックで共通して

いることなどがわかってきますから、その後は既存のも

のを対象や目的に応じて変更して使っています。今はそ

れほど時間も手間もかかっていません」(内田先生)

 聖学院中学校・高等学校では、今後も「21世紀型教

育」で「学ぶ力」「学ぼうとする力」「共に生きる力」を

育てていく予定だ。「評価方法や振り返りによる学びも、

より改善していきます。例えば教科を横断して生徒の認

知レベルを測ることができるルーブリックの作成や、

ルーブリックやマッピングなど生徒が振り返りができる

仕組みの開発などにも取り組んでいきたいと考えていま

す」(児浦先生)

変わる高校教育 第10回 学習目標・指導の変化に伴う評価の工夫

Kawaijuku Guideline 2016.7・8 43

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SSHの活動として課題研究を実施

 高松市の名勝、栗林公園近くに立地する高松第一高校

は香川県唯一の市立高校であり、毎年国公立大学に多くの

合格者を出す県内有数の進学校である。普通科と音楽科

を設置し、普通科には国際文科コース、文理コース(注1)、

特別理科コースと多様なコースを設けている。このうち、

普通科の特別理科コース1クラスの生徒を主対象として、

SSHの事業に取り組んでいる。

 SSHの研究課題は「自ら考え行動できる創造的人材を

育成する持続可能なプログラム実践」だ。全校生徒対象

の取り組みとして、アクティブ・ラーニングを導入して

思考力を高める授業改善、自然科学講演会などを行う一

方、 特 別 理 科 コ ー ス では学 校 設 定 科 目 として

「Introductory Science(1年次2単位)」、「Advanced

ScienceⅠ(2年次2単位)」、「Advanced Science Ⅱ

(3年次1単位)」を設置して、課題研究を行っている。

 まず1年次の「Introductory Science」は、視野を広

げること、自分が興味のある分野を知ること、研究とは

どのようなものかを伝えることを目的とし、大学教員に

よる物理、化学、生物、地学、数学の講義を受けたり、

「ミニ課題研究」を行う。

 「『ミニ課題研究』は、実験方法によっては異なる実験

結果が予想される研究テーマを与え、グループごとに方

法を考えて実験・考察をさせるものです。例えば物理の

実験では、鉛筆で紙を塗り、テスターを使って電気抵抗

を調べます。すると、塗り方にムラがある班は測る場所

によって値が変わり、きれいに塗った班は安定した値が

出ます。なぜグループによって値が違うのかや、値を一

定にするにはどうするかなどを考えさせることで、答え

のない問いにどのようにアプローチすればよいのかを学

び、2、3年次の課題研究に備えます」(佐藤先生)

 2年次の「Advanced ScienceⅠ」からは、生徒が独

自に設定したテーマによる課題研究に取り組む。物理・

化学・生物・地学・数学から好きな分野を選んで、その

中で関心の近い生徒同士が2~4人のグループを作って

共同研究をする。テーマは「無回転サーブの軌道を調べ

る」(物理)、「身近なもので靴の消臭をするにはどうする

か」(化学)など、身近なテーマについて自分たちで考え

た手法と計画で実験する。

 3年次の「Advanced ScienceⅡ」では、夏まで2年

次の研究を引き続き行い、研究終了後は論文に仕上げる。

研究成果はSSH生徒研究発表会や香川県の高校生科学

研究発表会で発表したり、日本学生科学賞、高校生科学

技術チャレンジなどに論文を投稿したりする。

中間発表もルーブリックで評価生徒の成長を確認

 課題研究の評価は、最終の発表会や論文のみで行う高

校も多いが、高松第一高校では研究のプロセスの評価を

重視している。「研究者であれば結果がすべてですが、高

校生が学習の一環として行う研究のため、課題に対して

どんなアプローチをしたのか、失敗したらそれをどう次

のアクションに生かしたのか、積極的に取り組んだかな

ど、プロセスを評価することも大事だと考えています」

(佐藤先生)

 研究のプロセスは、中間研究発表と実験ノートで評価

している。

高松第一高等学校

課題研究を研究発表会と実験ノートで評価形成的評価で生徒の成長を促す

 高松第一高等学校は、2010年度から2期にわたってスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け、普通科の特別理科コースの生徒が課題研究に取り組んでいる。研究指導だけでなく評価方法も工夫しており、最終的な研究成果だけではなく、研究過程の工夫や積極性なども評価して、指導に生かしている点が特徴だ。評価の仕組みと工夫を中心に、SSH研究開発主任の佐藤哲也先生に話を伺った。

PA RT 2 高校の取り組み

佐藤哲也先生

(注1)文理コースは2年次に文系コース、美術専門コース、理系コースに分かれる。

Kawaijuku Guideline 2016.7・844

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<図表1>あるグループの項目別評価結果の変化(2014年度)

 研究発表は計4回行い、2年次7月、12月、3年次5

月の中間発表会を経て、3年次7月の課題研究成果発表

会を迎える。いずれも課題研究を担当する教員15 ~ 16

名全員が、全グループの発表をルーブリックで評価する。

ルーブリックは先行研究を調べたか、実験結果が適切に

分析されているかなど、9項目(注2)について、不十分

(1点)、もう少し(2点)、ほぼ十分(3点)、十分(4

点)の4段階で評価する形式だ。

 「元々課題研究については、評価項目を設けて評価して

いましたが、他のグループと比較した相対評価で行って

いたため個別のグループの成長を見ることはできません

でした。また、教員によって評価が異なることも課題で

した。しかし、ルーブリックに基づいた絶対評価を導入

してからは、指導の方向性が明確になるとともに、毎回

同じ指標を用いて評価することで、生徒の成長がわかる

ようになりました」(佐藤先生)

 <図表1>は教員の評価結果だ。あるグループの1回

目から4回目の評価結果をまとめたもので、バルーンの

大きさが各点数をつけた教員の数を示している。「どの項

目も1回目では1点や2点とした教員も多いですが、2、

3回目を経て序々に評価が上がり、4回目になると3点

が中心で4点も見られるなど、発表内容が向上している

ことがわかります。結果は教員が指導の参考にするほか、

生徒の振り返りにも役立っています」(佐藤先生)

実験ノートのルーブリック評価で研究の過程を評価

 実験ノートもルーブリック評価を行う。実験ノートと

は、いつ、どこで、誰が、何をテーマに実験を行ったの

かや、実験の内容、結果、グループでの議論や考察の内

容を記録するノートだ。研究においては、最終的な結果

だけではなく研究の経過や根拠を示すことや、実験の記

録を振り返りながら研究を進めることが重要であること

から、生徒に義務づけている。

 大切に使うために、ハードカバーのしっかりしたもの

を支給し、グループで1冊作成する。個人ではなくグ

ループで作成するのは、実験は放課後など授業時間外に

行うことも多く、部活動などの関係で常に全員が参加で

きるとは限らないためで、内容をグループ全員で共有す

るのが目的だ。

 「毎年研究を始める2年次の5月末頃に、京都教育大

学名誉教授で日本物理教育学会会長の村田隆紀氏を招い

て『実験ノートの書き方講座』を開いています。研究者

である村田先生の実際の実験ノートを見せていただいた

り、実験ノートを振り返ることでどんな発見があったか

などの体験談を聞いて、実験ノートの使い方や意義を理

解できるようにしています」(佐藤先生)

 評価は、<図表2>のルーブリックをもとに行う。

データがきちんと記録されているか、コメントや気づき

が書き込まれているかなど、7項目について、不十分(1

点)、ほぼ十分(2点)、十分(3点)の3段階で構成さ

れている。生徒が実験を休止している定期考査前に実験

ノートを回収して、1グループにつき教員4~5人で回

覧してルーブリック評価をする。 

 「実験ノートで評価をすると、常時研究の進捗を見てい

る担当教員だけでなく、複数教員での客観的な評価がで

きます。生徒には今のところ、評価結果を書面で返すこ

とはしていませんが、実験ノート返却時に担当教員が

ルーブリック評価をもとに、できていなかった点、気を

つけるべき点などについて生徒に話して改善を促すよう

にしています。実験ノートを使うことで、研究の過程で、

これまでの経過を概観しながら、生徒と教員が研究状況

(注2)ルーブリックの項目は、①研究目的・課題の科学的把握・理解、②先行研究の調査・これまでの研究結果の理解、③実験の設定、④データの信頼性、⑤表現方法と分析、⑥科学的思考・判断、⑦手順の評価、⑧証拠の信頼性、⑨結論の信頼性、の9項目。

(※横軸が評価の時期、縦軸が評価の段階。バルーンの大きさは各点数をつけた教員の数) (高松第一高校提供資料より抜粋)

研究目的・課題の科学的把握・理解 データの信頼性 表現方法と分析

4321

4321

4321

2年次 3年次7月 12月 5月 7月

2年次 3年次7月 12月 5月 7月

2年次 3年次7月 12月 5月 7月

変わる高校教育 第10回 学習目標・指導の変化に伴う評価の工夫

Kawaijuku Guideline 2016.7・8 45

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を確かめたり、困っていることについて話し合うことが

できるのでよいと思います」(佐藤先生)

 また実験ノートは個別の生徒の研究への関わりを確認

するという狙いもある。「研究発表も実験ノートもグルー

プ評価ですが、最終的には個人の評定をしなければなり

ません。実験ノートはグループで1冊作成しますが、記

述者を毎回記入しますし、議論で誰が何を言ったかも記

録するので、ノートを見れば個別の生徒がどのように研

究に関わったのか見ることができます。実験ノートの評

価は、グループ評価を個人の評価に落とし込む時の予備

調査としての役割も持っているのです」(佐藤先生)

 今後も、引き続き研究発表と実験ノートを評価するこ

とで、研究の過程を形成的に評価し、生徒の指導に生か

していく予定だ。現在は研究発表、実験ノートそれぞれ

のルーブリックの改善点を洗い出しているところだという。

 「研究発表のルーブリックに関しては、評価基準の分け

方を検討しています。生徒の発表を見ていると、ルーブ

リックの『ほぼ十分』と『十分』の間の評価をしたい場

合があります。評価の段階をより細かく分ければ、より

生徒の状況にぴったり合った評価ができますが、8分と

いう限られた発表時間内に、正確に評価をする必要があ

ることを考えると、細かく分けすぎると評価が難しくな

ります。そこでどの程度の基準に分けるのがよいか検討

しているところです。

 また、研究発表・実験ノート両方のルーブリックに関

わることとしては、1つの評価規準に複数の視点が入っ

ている部分があり、評価しにくいので修正する見込みで

す。また、元々課題研究は理科だけで行っていたため、

ルーブリックも『実験の操作ができる』など理科に合わ

<図表2>実験ノートのルーブリック(2015年度)

せた記述語になっている箇所があります。現在の課題研

究は数学も扱っているので、教科に関わらず評価できる

ように記述語の修正も行っていきたいと考えています」

(佐藤先生)

 なお、高松第一高校では2年生の理系コース2クラス

を対象に、今年度から「理科課題研究」を開講している。

物理・化学・生物・数学についてそれぞれ1カ月程度で

終わる研究を4つ体験する。特別理科コースのルーブ

リックを参考に、研究発表・実験ノートのルーブリック

の検討・試行を進めている。特別理科コースの取り組み

を通して得た知見を学校全体に広げていく考えだ。

不十分 (1) ほぼ十分 (2) 十分 (3)

①研究の 進行状況

操作の質

実験の操作における注意が不十分である。測定が正確に行えていない。

実験の操作が概ね注意を払ってできている。

実験の操作が十分注意を払ってできている。より高い質のデータを得るために必要に応じて操作に工夫を加えている。

データの取り方・記録

十分な実験回数を行っておらず、正確に記録できていない。

実験をある程度複数行い、信頼性を持たせようとしているが不十分である。しかし、正確に記録を残している。

実験回数を十分な回数設定し、データに信頼性を持たせている。信頼性のチェックを行い、正確に記録を残している。

②ノートの  書き方

必要事項の記録

実験再現のために必要な事柄(操作・手順・装置)が記載されていない。実験を行った日時や場所・人も不明確である。

実験再現のために必要な事柄(操作・手順・装置)や実験を行った日時や場所・人を明記している。

実験再現のために必要な事柄(操作・手順・装置)や実験を行った日時や場所・人を明記している。さらに実験図などを効果的に用いている。

ノートの見やすさ

自らの実験ノートとして形式が定まっておらず、まとまりのないノートになっている。

自らの実験ノートとして形式にのっとりわかりやすくまとめている。

自らの実験ノートとして形式にのっとりわかりやすくまとめている。さらに表やグラフを適宜効果的に示している。

高松第一高等学校

◇所在地:香川県高松市桜町2-5-10

◇沿革:1928年 高松第一中学校設立1948年 高松第一高等学校に改称2003年 スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイ

スクール(SELHi)に指定2010年 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定2015年 2期目のSSHに継続指定

◇学級編成:【全日制】普通科1学年7クラス、音楽科1学年1クラス

◇生徒数:909名(男子340名、女子569名)2016年5月1日現在

◇特色:「自主・自律」「文武両道」をめざす校風で、5割強が現役で国公立大学に進学する一方、全校生の9割が部活動に加入している。SSHの事業に取り組むほか、全教科でアクティブ・ラーニングを取り入れるなど授業改善にも積極的に取り組んでいる。

◇卒業生の進路:2016年3月卒業生305名・進路:4年制大学210名、短期大学5名、専門学校1名・合格者の内訳(現役生、延数): 国公立大学150名、私立大学

256名

(高松第一高校提供資料より抜粋)

Kawaijuku Guideline 2016.7・846