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- 1 - 第1節 世界の森林・林業・木材産業の動向 回復傾向に入った世界の林産物市場 2011 8 3 日に公表された UNECE UN Economic Commission for Europe :国連経済委 員会ヨーロッパ部会)及び FAO による年次報告書(「木材製品市場動向 20102011 Forest Product Annual Market Review)」)によれば、ヨーロッパ及び北米における林産物需 要が 2 年間のスランプを乗り越えて再び上昇軌道に乗ったという。需要全体が昨年に比べ 5.6%上昇し、産業界に明らかな回復の兆候がみられるという。 世界の林産物需要回復の兆しは、 2011 年上半期の動向にも継続的に表れており、地域差 を伴いながら緩やかながらも需要が増大し続けている。 一方、生産面でも上昇傾向が表れており、産業用丸太は 9 5,000 m 3 が生産され、 2009 年実績から 8%の増加を示した。ただし、ピークを記録した 2006 年に比べると 15%下回っ ている。 また、丸太生産の増加には地域差がある。すなわち、ヨーロッパは 10%増で、産業用丸 太は 3 8,000 m 3 (これ以外に薪炭材生産 1 m 3 )と 2007 年以降の最大値を記録した。 CISCommonwealth of Independent States:独立国家共同体)では 17%の増加を示し、特に ロシアの役割が大きく、一国で 1 4,800 m 3 (これ以外に薪炭材 5,400 m 3 )を記録し ている。これらとは対照的に、北米では過去 30 年間で最低だった 2009 年からわずかに回 復しただけで、4 3,000 m 3 (これ以外に薪炭材が 4,300 m 3 )にとどまっている。 ところで、林産物生産、特に針葉樹製材品や木製パネル生産・需要の主要な牽引役は、 住宅建設である。世界的に新設住宅着工戸数は 2006 年をピークに落ち込みを続けていた が、2010 年の実績はわずかであるが北米、ヨーロッパとも増加に転じており、底を打った との見方が大勢を占めるようになってきた。今後どうなるかは不透明な要素が多いが、少 なくとも 2011 年上半期の実績をみると引き続き堅調に住宅着工は増加しており、回復基調 が定着してきたことを裏づける結果になっている。 木材製品価格が上昇傾向 木材製品の国際的な価格動向を見ると、その上昇傾向は顕著である。産業用丸太需要の 中心である製材品について見ると、 2011 3 月までの 2 年間にわたって上昇し続け、過去 を含めても最高値を記録している。ただし、価格動向は地域的に異なる動きを見せている。 最も上昇が大きいのは西ヨーロッパと東ヨーロッパである。ここ数年の設備投資で製材能 力が上昇する一方で、原木供給が間に合わなくなっており、その結果、製材品価格の上昇 を招いている。一方、北米については二極化傾向がみられ、西部では中国の強い丸太需要 に引っ張られる格好で価格上昇が見られるが、南部については価格は下落傾向にある。南 部ではここ数年ハリケーンなどの嵐や洪水などで倒れる木が多くあり、サルベージ・ロギ ング(腐食する前に木材を出すこと)が行われているため、供給過多になっており、これ が価格下落の一因になっている。 第1章 県内外の森林・林業・木材産業の現状分析

第1章 県内外の森林・林業・木材産業の現状分析...3,145 13 7 クラウスナーグループ 独 4,100 5 8 アビティビボーウォーター 加 2,626 25 9 ハンプトンアフェリエーツ

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第1節 世界の森林・林業・木材産業の動向

1 回復傾向に入った世界の林産物市場

2011 年 8 月 3 日に公表された UNECE(UN Economic Commission for Europe:国連経済委

員会ヨーロッパ部会)及び FAO による年次報告書(「木材製品市場動向 2010~2011 年

(Forest Product Annual Market Review)」)によれば、ヨーロッパ及び北米における林産物需

要が 2 年間のスランプを乗り越えて再び上昇軌道に乗ったという。需要全体が昨年に比べ

5.6%上昇し、産業界に明らかな回復の兆候がみられるという。

世界の林産物需要回復の兆しは、2011 年上半期の動向にも継続的に表れており、地域差

を伴いながら緩やかながらも需要が増大し続けている。

一方、生産面でも上昇傾向が表れており、産業用丸太は 9 億 5,000 万 m3 が生産され、2009年実績から 8%の増加を示した。ただし、ピークを記録した 2006 年に比べると 15%下回っ

ている。

また、丸太生産の増加には地域差がある。すなわち、ヨーロッパは 10%増で、産業用丸

太は 3 億 8,000 万 m3(これ以外に薪炭材生産 1 億 m3)と 2007 年以降の最大値を記録した。

CIS(Commonwealth of Independent States:独立国家共同体)では 17%の増加を示し、特に

ロシアの役割が大きく、一国で 1 億 4,800 万 m3(これ以外に薪炭材 5,400 万 m3)を記録し

ている。これらとは対照的に、北米では過去 30 年間で最低だった 2009 年からわずかに回

復しただけで、4 億 3,000 万 m3(これ以外に薪炭材が 4,300 万 m3)にとどまっている。

ところで、林産物生産、特に針葉樹製材品や木製パネル生産・需要の主要な牽引役は、

住宅建設である。世界的に新設住宅着工戸数は 2006 年をピークに落ち込みを続けていた

が、2010 年の実績はわずかであるが北米、ヨーロッパとも増加に転じており、底を打った

との見方が大勢を占めるようになってきた。今後どうなるかは不透明な要素が多いが、少

なくとも 2011 年上半期の実績をみると引き続き堅調に住宅着工は増加しており、回復基調

が定着してきたことを裏づける結果になっている。

2 木材製品価格が上昇傾向

木材製品の国際的な価格動向を見ると、その上昇傾向は顕著である。産業用丸太需要の

中心である製材品について見ると、2011 年 3 月までの 2 年間にわたって上昇し続け、過去

を含めても最高値を記録している。ただし、価格動向は地域的に異なる動きを見せている。

最も上昇が大きいのは西ヨーロッパと東ヨーロッパである。ここ数年の設備投資で製材能

力が上昇する一方で、原木供給が間に合わなくなっており、その結果、製材品価格の上昇

を招いている。一方、北米については二極化傾向がみられ、西部では中国の強い丸太需要

に引っ張られる格好で価格上昇が見られるが、南部については価格は下落傾向にある。南

部ではここ数年ハリケーンなどの嵐や洪水などで倒れる木が多くあり、サルベージ・ロギ

ング(腐食する前に木材を出すこと)が行われているため、供給過多になっており、これ

が価格下落の一因になっている。

第1章 県内外の森林・林業・木材産業の現状分析

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さて、世界の木材需給とのかかわりで見逃せないのが中国市場の動向である。中国は過

去 10 年間、刮目に値するほどの拡大を示してきた。過去 5 年間で中国における木材生産額

は 2 倍になり、合計で 3,000 億ドルになった。生産量は、2009 年から 2010 年までの伸び

だけでも 30%増加している。

木材生産の内容を見ると、家具製造では 2005 年にはイタリアを抜いて世界第 1 位にな

り、木質パネル生産でも 4 年間で生産量を倍増させて世界第 1 位になった。また、紙・パ

ルプ、板紙生産も 10 年間で倍増し、世界の生産量の 25%を占めるに至った。これらは国

内消費向けもあるが、輸出を志向するものであり、中国からの木材関連製品が世界に与え

る影響が大きいことに加え、中国向けの原木や半製品の供給も大きくなり、世界の主要木

材生産国への影響には計り知れないものがある。

3 世界同時好況によって木材価格が高騰

2002 年頃から、世界経済は同時好況局面に入った。1970 年代から 30 年間にわたり、世

界経済はほぼ年 3%のペースで成長を続けてきたが、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、

中国)などの新興国の台頭によって、2002 年から 5%の成長に加速された。

これに伴って、木材需要も拡大した。特に 2006 年は世界的な木材需要の拡大と木材価格

が上昇した年であった。すなわち、「米加産木材に続き、06 年、ロシア材、欧州材、東南

アジア産合板、NZ、チリ産ラジアタパイン丸太、製材など日本が必要とするあらゆる海外

産木材建材産地価格が急上昇した」(『木材建材ウィクリー』No. 1613(2006 年 12 月 18 日)

日刊木材新聞社)のである。例えば、図1・1・1に示したように、ロシア産の丸太は 2006年後半から強気配に転じている。

2005 2006 2007 2008 2009

50

100

150

200

250

価格(USドル/m3)

アカマツ

エゾマツ

カラマツ

図1・1・1 ロシア産樹種別丸太価格の推移

資料:日刊木材新聞社『木材建材ウィクリー』 注:中目短材・定尺 アカマツ、カラマツはナオトカ積み、エゾマツはワニノ積み

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ところで、この強気配の商況は、日本国内の木材需要の増加によってもたらされたもの

ではない。新設住宅着工戸数(図1・1・2)、木材需要量(図1・1・3)のいずれもが、

大きな伸びを示していないからである。とすれば原因はなにか。それは輸入材、特に輸入

木材製品の減少である(図1・1・4)。そしてその背景には、世界各国、特に BRICs の

0

500

1,000

1,500

2,000

着工戸数(千戸)

図1・1・2 わが国における新設住宅着工数の推移

資料:国土交通省『住宅着工統計』

60,000

70,000

80,000

90,000

100,000

110,000

120,000

130,000

木材需要量(千m3)

1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2002

図1・1・3 日本における木材需要(供給)の推移

資料:林野庁『木材需給表』

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経済成長の結果、食は充足し、衣料も満ち足りるようになり、その結果として住宅投資を

大幅に増やしていることがあげられる。

実は、日本でもかつて同じような現象が見られた。すなわち、戦後 10 年経過したあと、

1955 年に木材が急騰し、次いで 1972 年に木材の大暴騰があった。このように経済成長が

進み、経済発展がある段階に到達すると、衣食足りて住宅の需要が大発生する。このパター

ンを世界各国がたどった結果が、2006 年以降の木材輸入減につながったのである。地球規

模での環境問題の発生によって、木材の伐採、搬出がさまざまな形で制限されてきたこと

も産地国の木材輸出に対してマイナスに作用したとが考えられる。つまり、世界的には木

材インフレの時代に入ったのである。

4 世界の針葉樹産地で製材規模拡大が進行

こうした木材需要拡大に対応する形で、世界の主立った針葉樹産地では前例をみないほ

どの製材業規模の拡大が続いており、世界の大手製材企業は表1・1・1のようなスケー

ルで事業を行っている。 特にカナダ西部内陸、米国北西部沿岸、セントラルヨーロッパ、チリなどの針葉樹産地

で製材規模の拡大が顕著に見られる。例えば、世界的な木材需要の拡大と木材価格が上昇

した 2006 年におけるアメリカ合衆国の製材工場の様子を示すと表1・1・2のようになる。

1 工場当たりの生産高が 100 万 m3 を超える製材工場が少なくない。これらに共通している

のはいずれも製材業界では新興勢力であり、既存の大手製材業に対抗する形で規模拡大を

実現している点に特徴がある。それを可能にしたのは製材・加工機械などのテクノロジー

の著しい進化である。

1990 1995 2000 2005 2006 2007 2008 2009

0

10,000

20,000

30,000

40,000

輸入量(千m3)

輸入製材用丸太輸入製材品

図1・1・4 わが国の木材輸入量の推移(丸太換算)

資料:財務省『貿易統計』

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表1・1・1 世界の大手製材企業(2008年の生産量)

順位 企業名 本社所在国 生産量

(実材積、千 m3) 保有工場数

1 ウエストフレーザー 加 7,960 27 2 ウェアーハウザー 米 7,143 27 3 キャンフォー 加 5,919 19 4 ストゥーラエンソー フィンランド 5,900 24 5 トルコインダストリー 加 3,370 10 6 シェラパシフィック 米 3,145 13 7 クラウスナーグループ 独 4,100 5 8 アビティビボーウォーター 加 2,626 25 9 ハンプトンアフェリエーツ 米 2,203 7 10 ジョージアパシフィック 米 2,046 22 11 アラウコ チリ 3,007 12

資料:日刊木材新聞社『日刊木材新聞』、ただし原資料は「2008 WOOD MARKET」(canada)

表1・1・2 アメリカ合衆国の針葉樹製材大手の生産量(2006年)

単位:百万 BM(1BM≒0.00236m3)

位 企 業 名 工場数 生産高

1工場

当たり

生産高

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

ウェアーハウザー

インターナショナルペーパー

ジョージアパシフィック

シェラパシフィック

ハンプトンアフェリーツ

スティムソンランバー

シンプソンティンバー

テンプルインランド

ポトラッチ

RSGフォレストプロダクツ

ギルマンビルディングプロダクツ

スワンソングループ

インターフォーパシフィック

ニューサウス

プラムクリークティンバー

ボイジーカスケード

ウェストフレーザー

ローズバーグ

ホッドインダストリーズ

リリークリーク

25 19 23 11 5

12 5 7 6 5 6 4 4 3 6 5 2 1 3 3

5,306 2,350 1,730 1,637 1,450 1,239 1,180

940 930 875 600 531 450 425 406 389 388 376 370 362

212 124

75 149 290 103 236 134 155 175 100 133 113 142

68 78

194 376 123 121

資料:日刊木材新聞社『木材建材ウィクリー』

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第2節 日本の森林・林業・木材産業の動向

1 国産材製材業も規模拡大が進行

2000 年代に入ると、日本でも国産材製材業の規模拡大が本格化した。ここ数年、国産材

製材、特にスギ製材業大手の規模拡大が著しい。特に、「平成 19 年の国産材は、大型工場

の新設ラッシュで、懸念されていた原木の供給が表面化した年」(『日刊木材新聞』2007 年

12 月 15 日付、日刊木材新聞社)であった。さらに、2006 年度から始まった林野庁の大型

プロジェクト「新生産システム」(2010 年度まで実施)が国産材製材業の規模拡大に拍車

をかけている。この結果、1990 年代前半まで国産材製材業で大規模なものといえばせいぜ

い丸太消費量 3 万 m3 クラスであったが、最近では 20 万 m3 に肉薄する製材工場が数社現

れている。

それをデータで確認しておく。表1・2・1~表1・2・3は、いずれも日刊木材新聞

社が調査したわが国の製材業ランキングである。

まず表1・2・1は 2004 年の外材製材、国産材製材のベスト 30 社であるが、国産材製

材工場が 6 社入っている(赤で表した工場が国産材専門工場。なお、同表には宮崎県の吉

田産業が入っていない。当時、既に 5 万 m3 以上の原木消費量であったので、実質的には 7社になる)。

すなわち、サトウ(北海道)の 14 万 6,400m3(丸太消費量)を筆頭に、以下、協和木材

(9 万 8,400m3)、木脇産業(8 万 1,600m3)、外山木材(6 万 3,600m3)、トーセン(6 万 2,400m3)、

瀬戸製材(5 万 4,000m3)と続いている。

次の表1・2・2は4年後の 2008 年の国産材製材のベスト 20 社である。サトウが原木

消費量を減らしたものの、トーセン(15 万 6,000m3)、協和木材(12 万 4,800m3)、木脇産

業(10 万 8,000m3)、外山木材(7 万 2,000m3)などは大幅に丸太消費量を増加させている。

一方、この表では、新たな製材企業の参入が見られる。すなわち、第 1 位の西九州木材

事業協同組合(19 万 2,000m3)、第 5 位の木村産業(10 万 5,000 m3)、第 7 位の玉名製材協

業組合(9 万 m3)、第 13 位の久万広域森林組合(6 万 6,000m3)、第 17 位の協同組合くまも

と製材などの登場であり、これらの新規参入組のうち、木村産業を除いた製材工場はいず

れも板挽き(構造用集成材のラミナあるいは間柱)を主体とした製材工場である。つまり、

この頃から大手の国産材製材は規模を拡大しながら、板挽き専門工場が 1 つの大きな流れ

として形成されてきたことがわかる。

最新の国産材製材業ベスト 30 が表1・2・3である。第 1 位のトーセンはグループ企業

として装いを新たにしながら 28 万 m3 と大幅に原木消費量を増加させているし、協和木材

(18 万 m3)、木脇産業(13 万 5,000m3)、外山木材(10 万 m3)も同様に増加させている。

さらにこの時点で、また新たな製材工場が上位に食い込んでいる。第 2 位の川井林業、

第 5 位の遠藤林業、第 9 位の佐伯広域森林組合、第 27 位の協同組合兵庫木材センターなど

がその代表格である。このうち川井林業は、ウッティかわい(スギ、カラマツの構造用集

成材工場)へラミナを供給する量産工場である。また、川井林業、玉名製材協組、久万広

域森林組合などがラミナの量産工場である。

以上の国産材製材業の規模拡大を統計数字で確認しておく。表1・2・4は国内の製材

工場数、1 工場当たりの素材入荷量の推移を示したものである。国内の製材工場数は 1990

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表1・2・1 わが国の製材業ベスト 30(2004 年)

単位:m3

順 位 会社名 所在地 樹 種 素 材

消 費 量

10

11

12

13

14

15

16

16

18

19

19

19

19

23

24

25

25

27

28

29

30

中国木材 オービス 東亜林業 マ ル ホ 鶴居産業 サ ト ウ 石 甚 ハイテクウッド 柴 木 材 アプトシンコー 田島木材 協和木材 黒川木材工業 木脇産業 ネクスト タチカワ 吉野木材 石灰木材 立川林産 山下木材工業 原野製材 下澤産業 外山木材 トーセン 中井産業 吉源木材 瀬戸製材 カ ネ 三 スナダヤ 南部木材

広島県 広島県 広島県 山口県 愛媛県 北海道 富山県 秋田県 富山県 富山県 富山県 福島県 愛媛県 宮崎県 大分県 広島県 福島県 富山県 広島県 広島県 富山県 富山県 宮崎県 栃木県 山口県 福島県 大分県 新潟県 愛媛県 青森県

米マツ ラジアータパイン 米マツ 米マツ 米マツ 道産カラマツ 北洋アカマツ 北洋アカマツ 北洋エゾ・アカマツ 北洋アカマツ 北洋アカマツ スギ 米マツ、米ツガ他 スギ 米マツ 米マツ 北洋アカマツ 北洋エゾ・アカマツ ラジアータパイン ラジアータパイン 北洋エゾマツ 北洋エゾ・アカマツ スギ スギ 米マツ 北洋アカマツ スギ 北洋アカマツ 米ヒバ、スギ他 米マツ

1,776,000 264,000 216,000 192,000 187,200 146,400 110,400 108,000 105,000 99,000 98,400 98,400 91,200 81,600 76,200 72,000 72,000 69,600 66,000 66,000 66,000 66,000 63,600 62,400 60,000 60,000 54,000 48,000 44,400 30,000

資料:日刊木材新聞社『木材建材ウィクリー』

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表1・2・2 国産材製材業ベスト 20(2008年)

位 企 業 名 所在地

原 木 消費量 (m2)

樹 種 比 率

(%) 主 な 生 産 品 目

11

12

13

13

15

15

17

17

17

20

西九州木材事業協組

(株)トーセン

協和木材(株)

木脇産業(株)

(株)木村産業

(株)サトウ

玉名製材協組

持永木材(株)

(株)徳永製材所

外山木材

オムニス林産協

(株)関木材工業

(有)庄司製材所

久万広域森林組合

院庄林業(株)

(株)湧別林産

(株)佐藤製材所

瀬戸製材所

(協)くまもと製材

横内林業(株)

佐 賀

栃 木

福 島

宮 崎

岩 手

北海道

熊 本

宮 崎

岡 山

宮 崎

北海道

北海道

山 形

愛 媛

岡 山

北海道

大 分

大 分

熊 本

北海道

192,000

156,000

124,800

108,000

105,000

96,000

90,000

84,000

72,000

72,000

70,800

67,200

66,000

66,000

60,000

60,000

54,000

54,000

54,000

52,800

主にスギ

スギ90、ヒノキ10

スギ85、マツ15

スギ100

スギ95、マツ5

カラマツ100

スギ100

スギ100

ヒノキ60、スギ40

スギ100

カラマツ85、トドマツ11

カラマツ58、トドマツ42

スギ100

スギ100

ヒノキ90、スギ10

カラマツ60、トドマツ40

ヒノキ100

スギ95、ヒノキ5

スギ100

カラマツ85、トドマツ15

主にラミナ

スギ=柱角40%、間柱30%、FJ間柱18%、小角類12%

スギ=柱角33%、小幅板20%、マツ=平角7%

角類35%、平角25%、板類20%、平割20%

スギ=母屋・桁角30%、間柱・羽柄材・板類65%

パレット材70%、梱包材20%、ラミナ・建築資材10%

ラミナ75%

柱角・平角・間柱70%、桁・小割・板類30%

建築材30~50%、ダンネージ・梱包材40~60%

柱角40%、間柱小割等20%、足場板40%

パレット仕組材77%、梱包材19%、建築材他4%

梱包材50%、パレット仕組材30%、ラミナ14~15%

間柱・羽柄材・板類60%、造作材20%、破風板20%

間柱85~90%

管柱60%、土台20%、通柱20%

梱包材・パレット仕組材80%、ラミナ20%

柱・土台60%、縁甲板・小割40%

柱・平角40%、板類40%、割物20%

間柱70%、ラミナ30%

梱包材54%、パレット仕組材36%、ラミナ他10%

資料:日刊木材新聞社『木材建材ウィクリー』

写真1・2・1 国内最大の製材メーカー中国木材(株)の鹿島工場

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表1・2・3 国産材製材業ベスト 30(2011年)

順 位 企 業 名 所在地

原 木 消費量 (㎥)

樹 種 比 率 (%)

10

11

12

13

14

15

15

17

18

19

20

21

21

21

21

25

26

27

27

27

30

トーセン 協和木材 川井林業 木脇産業 遠藤林業 横内林業 玉名製材協 外山木材 佐伯広域森組 サトウ (協)くまもと製材 持永木材 双日北海道吉本 佐藤製材所 東部産業 庄司製材所 湧別林産 西九州木材事業(協) 久万広域森組父野川 院庄林業 徳永製材所 ネクスト 瀬戸製材 木村産業 オムニス林産(協) 耳川広域森組 三津橋農産 西村木材店 兵庫木材センター 大林産業

栃 木 福 島 岩 手 宮 崎 福 島 北海道 熊 本 宮 崎 大 分 北海道 熊 本 宮 崎 北海道 大 分 福 岡 山 形 北海道 佐 賀 愛 媛 岡 山 岡 山 大 分 大 分 岩 手 北海道 宮 崎 北海道 三 重 兵 庫 山 口

280,000 180,000 180,000 135,000 125,000 100,000 100,000 100,000 96,000 90,091 89,468 80,000 79,228 78,000 70,000 70,000 67,000 64,735 63,000 60,847 60,000 60,000 60,000 60,000 59.800 58,800 55,000 55,000 55,000 51,755

スギ90、ヒノキ10 スギ80、ヒノキ10 スギ70、カラマツ10 スギ100 不明 カラマツ65 スギ100 スギ100 スギ100 カラマツ89 スギ100 スギ100 カラマツ95 ヒノキ100 スギ100 スギ100 カラマツ60、トドマツ40 スギ100 スギ100 ヒノキ100 ヒノキ80、スギ200 スギ100 スギ100 スギ100 カラマツ87、トドマツ13 スギ98 トドマツ80、カラマツ20 ヒノキ60、スギ40 スギ70、ヒノキ30 スギ80、ヒノキ20

資料:日刊木材新聞社『木材建材ウィクリー』

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年以降、毎年 500 工場が減少し、1990 年に 1 万 6,793 工場あったものが、2003 年に 1 万工

場を割り、2006 年には 8,433 工場と、この 16 年間で半減している。

しかし、製材規模(1 工場当たりの素材入荷量)は 2002 年を底に拡大傾向を示している。

それを出力数 300kW 以上の大規模工場で見たのが表1・2・5である。同表によれば、1990年以降、年々着実に増加しており、1990 年に 126 工場だったものが 2006 年には 263 工場

に増加している。1 工場当たりの素材入荷量も 1990 年の 1 万 2,214m3 から 1990 年代後半

には約 1 万 4,000m3 まで拡大した。それ以降、不況の影響もあって一時的に縮小を余儀な

くされたものの、2000 年代に入ると再び拡大しはじめ、2006 年には 1 万 7,490m3 にまで拡

大している。

一方、出力数 300kW 以上の外材専門工場の動向をみると(表1・2・6)、国産材大型

工場とは対照的に縮小傾向にあるが、1 工場当たりの素材入荷量ではまだまだ国産材製材

工場を上回っている。

国産材専門の大規模工場が外材との競争力をつけるためには、さらに規模拡大が必要で

あることを示唆している。

2 合板製造業の国産材利用が大幅に増加

2000 年代に入って、日本の木材産業界で大きな変化が見られたのは、合板業界がこぞっ

表1・2・4

わが国の製材工場数、素材入

荷量の推移

年 工場 数

入荷量 (千m3)

1工場当り (m3/工場)

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

16,793 16,260 15,781 15,360 14,967 14,554 13,978 13,427 12,744 12,240 11,633 10,956 10,395 9,850 9,387 8,955 8,433

43,526 41,515 40,390 39,064 38,691 36,670 35,545 33,164 28,070 27,449 26,526 23,879 22,321 21,857 21,705 20,540 20,342

2,592 2,553 2,559 2,543 2,585 2,520 2,543 2,470 2,203 2,243 2,280 2,180 2,147 2,219 2,312 2,294 2,412

資料:農林水産省『木材需給報告書』

表1・2・5

出力数 300kW 以上の国産材専

門工場数、素材入荷量の推移

年 工場 数

入荷量 (千m3)

1工場当り (m3/工場)

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

126 132 145 155 162 174 182 202 207 213 224 231 231 231 238 257 263

1,539 1,535 1,762 2,003 2,183 2,203 2,565 2,842 2,584 2,842 3,053 3,070 3,079 3,262 3,653 4,196 4,600

12,214 11,629 12,152 12,923 13,475 12,661 14,093 14,069 12,483 13,343 13,629 13,290 13,290 14,121 15,349 16,327 17,490

資料:農林水産省『木材需給報告書』

表1・2・6

出力数 300kW 以上の外材専門

工場数、素材入荷量の推移

年 工場 数

入荷量 (千m3)

1工場当り (m3/工場)

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

238 236 234 221 218 210 201 192 191 176 173 165 150 137 137 120 103

7,438 7,187 7,337 6,942 7,271 7,187 7,074 6,612 5,976 6,109 6,396 5,871 5,689 5,573 5,726 5,113 5,061

31,252 30,453 31,355 31,412 33,353 34,224 35,194 34,438 31,288 34,710 36,971 35,582 37,927 40,679 41,796 42,608 49,136

資料:農林水産省『木材需給報告書』

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て国産材利用に大きくシフトしたことである。

それまで日本の合板製造業は、型枠用合板は南洋材(特にラワン材)、針葉樹構造用合板

は北洋カラマツを原料にしていたが、後者を国産のスギ丸太、カラマツ丸太で代替し始め

た。その背景には、中国の経済成長に伴う木材需要の拡大によって北洋材丸太価格が上昇

したこと、関税問題(ロシア政府が現行の輸出関税 25%を 85%にアップすると公表)など

がある。この中で、日本の合板業界において急速な北洋材離れが進行した。

2000 年当時、13 万 8,000m3 にすぎなかった合板用国産材丸太消費量が、2006 年には 100万 m3 台に乗せ、2010 年は 249 万 m3 に達した(図1・2・1)。 2010 年のわが国における合板の需給状況は図1・2・2のとおりであり、単板製造用に

限れば国産材率は 65%に達している。 また、国産材の合板用材供給量について、樹種別内訳の推移を見ると図1・2・3のと

おりであり、スギの割合が高まっている。 表1・2・7は 2006 年時点の主要合板工場 10 社を示したものであるが、10 社で丸太消

費量は 70 万 m3/年に達している。また、合板生産量の企業別シェアは図1・2・4のよ

うになっている。

合板工場は東北、特に、秋田、岩手、宮城の 3 県に多く立地しているだけに、東北の合

板メーカーの動向は、青森県の森林・林業・木材産業に大きな影響を与えている。

図1・2・1 合板供給量の推移

資料:林野庁業務資料

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用材需要量7,025万m3

※丸太換算

合板供給量580万m3

※製品ベース丸太換算

資料:農林水産省『合板統計』、   外務省『貿易統計』

資料:林野庁『木材需給表』

資料:農林水産省『合板統計』

図1・2・2 合板の需給状況(2010年)

図1・2・3 国産材の合板用材供給量の推移

資料:農林水産省『木材需給報告書』、『木材統計』

注:供給量は丸太換算した材積

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表1・2・7 わが国の主要合板工場 10社(2006 年)

順 位

企 業 名 所在地 丸 太 消費量

(㎥/年)

10

秋田プライウッド(株) 丸玉産業 石巻合板工業 ホクヨープライウッド(株)宮古工場 新栄合板工業(株) 北日本プライウッド(株) 東京ボード工業(株)石巻工場 新秋本工業(株) 林ベニヤ産業(株)舞鶴工場 島根合板協組浜田針葉樹工場

秋田県 北海道 宮城県 岩手県 熊本県 岩手県 宮城県 秋田県 京都府 島根県

188,000 156,000 72,000 70,000 60,000 42,000 35,000 27,600 26,400 23,400

資料:日刊木材新聞社『木材建材ウィクリー』

図1・2・4 合板生産量シェア(2009年)

資料:林野庁木材産業課調べ

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第3節 東北の森林・林業・木材産業の動向

1 国産材製材業の動向

東北の国産材製材業界で現在、最大の注目を浴びているのは秋田県である。スギ王国・

秋田で、初めて年間原木消費量 10 万 m3 超の大型量産工場が建設中だからである。秋田製

材協同組合が秋田市河辺戸島の七曲臨空港工業団地に建設を開始した工場がそれである。

計画によれば同工場の製材品生産量は 7 万 9,000m3 というから、仮に歩留まり 50%で計算

すると原木消費量は約 16 万 m3 ということになる。前掲表1・2・3の協和木材、川井林

業クラスの国産材製材工場が新たに東北において稼働することになる。

製品の内訳は、構造用集成材のラミナが 4 万 m3、一般製材品が同 3 万 9,000m3 とほぼ半々

の構成である。年間 30 億円の売り上げを見込んでいる。事業費は約 23 億円で、国、県、

秋田・大仙両市からの補助金総額は 13 億円にのぼる。

原木については、秋田県森林組合連合会から年間 10 万 m3、素材生産業者と国有林から

10 万 m3、計 20 万 m3 が供給される予定になっている。

秋田県では、もう 1 つ注目すべき動きがある。(有)門脇木材(秋田県仙北市)が仙北市

に建設していた工場がそれである。工業団地の一角、敷地面積 6,600 坪に立地する工場に

は、秋田産地の老舗製材所・加賀谷木材のツインバンドソーを購入して設置した。工業団

地なので 24 時間操業も可能という好立地条件にある。門脇木材のこの新工場は 3 工場目で

あり、原木消費量は 5 万 m3 前後になる計画である。

秋田製材協同組合と門脇木材の新設 2 工場は、ともに秋田県内の集成材工場へラミナを

供給する。そして、この 2 つの製材工場からラミナの供給を受けることができなかった集

成材工場は自社独自のラミナ工場建設を計画しているという。

以上の秋田の新しい動きは、当然のことながら東北、特に北東北 3 県(青森、秋田、岩

手)のスギ需給に大きな影響を与えると見られる。

さらに、前掲表1・2・3で第2位に躍り出た川井林業は、年間原木消費量 18 万 m3 と

いう国産材製材単体工場では日本最大級の規模に達しており、なお規模拡大の様相を示し

ている(同表で第1位のトーセンは 22 工場によるグループ企業)。川井林業で生産された

ラミナは、全量ウッティかわい(岩手県宮古市)へ供給されている。

ウッティかわいは 1960 年に製函材の製造販売業として設立され、1981 年に現在地に工

場を移転し、広葉樹のチップを生産、さらに楽器・家具メーカーへ高品質の広葉樹部材を

販売していたが、需要減少によって、現在は構造用集成材メーカーに業種転換した。2008年には岩手県雫石(岩手県岩手郡)に、集成材ラミナ製材の専門工場を建設、操業を開始

した。雫石工場では、小・中径木用チッパーキャンターで 1 日 450m3、25 日稼働で月間 1万 1,250m3、年間 13 万 5,000m3 の原木を消費している。2 ライン合計での年間原木消費量

は 18 万 m3 となる。樹種比率はスギ 90%、国産カラマツが 10%で、自社とウッティかわ

いの人工乾燥機で全量 KD(人工乾燥)化している。なお、同社がスギ構造用集成材メー

カーとして順調に推移している理由の 1 つとして、かつて広葉樹製材品の人工乾燥を手が

けていただけに、KD 材の品質管理が行き届いていることが指摘できる。

一方、東北のスギ製材業が抱えている課題として、人工乾燥化への取り組みの遅れがあ

る。東北のスギ製材は秋田に典型的に見られるように、歴史的に羽柄材、板材の製材が主

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流を占めてきたことがその背景にある。表1・3・1は製材品出荷量に占める KD 化割合

20%以上の府県を示したものであるが、東北は1県も入っていない。

東北の人工乾燥材の比率は 2009 年から 2010 年に 14.2%から 15.7%へわずかながらも上

昇したとはいえ、全国平均の 27.0%(2010 年)と比較すると 10 ポイント以上低い。しか

し、秋田製材協同組合の量産工場のように構造用集成材のラミナ生産が本格化するとそれ

と併行して羽柄材や板類の人工乾燥に拍車がかかると考えられる。

人工乾燥に関連して、東北の JAS 認定工場の分布状況について概観しておく。福島を除

く東北 5 県の JAS 認定工場は 89 社(青森 16、岩手 31、宮城 14、秋田 21、山形 7)である

が、このうち人工乾燥構造用製材の認定を取得している工場は青森 5、岩手 6、宮城 1、秋

田 17 の 29 社と 3 分の 1 しかない(山形は 0)。しかも、機械等級区分構造用製材を取得し

ているのは 0 である(東北では福島県の協和木材 1 社)。

なお、青森県内の JAS 製材工場(年間原木消費量 1 万 m3 以上)は、上北森林組合と十

和田燐寸軸木の 2 社である。このうち JAS 認定で人工乾燥構造用を取得しているのは上北

森林組合である。このほか人工乾燥構造用を取得しているのは丸重木材工業(青森市)、斉

藤木材(青森市)、青森県森林組合連合会(青森市)、中西製材所(五所川原市)である。

2 合板製造業の動向

2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は、東北地域の国産材丸太流通に大きな影響

を与えた。スギを中心とした丸太供給先である三陸沿岸に立地する合板工場が地震や津波

で被災したためである。具体的には、ホクヨープライウッド(岩手県宮古市)、大船渡プラ

表1・3・1 製材品出荷量に占める KD材割合 20%以上の府県

順 位

府 県

製材品出荷量 KD材 割合

(%)

国産材率 (%)

外材率 (%)

300kW以上 製材工場の 割 合 (%)

素材生産 量の樹種 別割合 (%)

(千m3)

うちKD材出荷量

10

11

12

京 都 三 重 広 島 栃 木 和歌山 茨 城 富 山 福 島 岡 山 群 馬 宮 崎

奈 良

139 286 1,347 263 225 436 325 363 228 105 706 163

68 119 553 103 70 134 93 101 61 27 152 34

48.9 41.6 41.1 39.1 31.1 30.7 28.6 27.8 26.8 25.7 21.5 20.9

14.9 80.7 4.1 92.9 49.3 22.2 8.4 72.6 96.9 81.1 96.9 57.9

85.1 19.3 95.9 7.1 50.7 77.8 91.6 27.4 3.1 18.9 3.1 42.1

11.0 2.7 11.5 5.4 4.6 1.1 13.2 4.9 10.9 6.6 15.7 2.1

ヒノキ 50.3 スギ 68.9 スギ 57.5 ヒノキ 46.0 スギ 64.5 スギ 87.0

資料:農林水産省『平成 20 年木材統計』 注:国産材率、外材率は製材用素材需給量に対する割合

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イウッド(同大船渡市)、北日本プライウッド(同)、石巻合板工業(宮城県石巻市)、セイ

ホク(同)、西北プライウッド(同)の 6 工場が被災し操業中止を余儀なくされた(図1・

3・1)。

幸いなことに、徐々に復旧が進み、各社ともに一部生産再開までに漕ぎ着けている。

6 社の大震災直前までの生産量は月間 6 万 5,000m3 であったから、歩留り 50%で計算す

ると 13 万 m3/月の原木を消費していたことになる。農林水産省大臣官房統計部『平成 22年木材統計』によれば、岩手・宮城両県の合板用樹種別素材需要量の国産材比率は 76.2%であるから、被災 6 工場の国産材丸太の消費量は 9 万 9,000m3 ということになる。つまり、

1 ヵ月に約 10 万 m3 の合板用丸太が行き場を失っていることになる。

岩手県内の合板メーカーへの丸太供給の中心は、ノースジャパン素材流通協同組合(盛

岡市)である。同協組の 2010 年度の丸太供給実績は 26 万 7,000m3 にとどまった。もし大

震災が発生しなければ 28 万 m3 を超えていたのではないかという。

このノースジャパン素流協と並んで合板メーカーへの大手丸太供給源になっていたのが

青森県森林組合連合会である。青森県森連はここ数年急速に丸太取扱量を増加させ、年間

30 万 m3 まで伸ばしている。都道府県森連レベルでは宮崎県森連に次ぐ取扱量である。日

図1・3・1 合板工場の立地と東日本大震災による被災状況

資料:林野庁業務資料

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本海側の秋田プライウッド(秋田市)を中心にスギ丸太を供給していたが、一部宮城県の

合板メーカーへも供給していた。被災後は秋田のみになってしまった。そこで青森県森連

は日本海側への合板工場へも供給を開始した。

また、東北の合板業の動向で目を離せないのが、セイホクグループが山形県寒河江市に

新たな国産材合板工場を開設することを検討している点である。実現すれば、同グループ

が岐阜県中津川市に開設した(協)森の合板工場と同じように資源立地型・内陸外の工場

となる。同工場の稼働が、東北の国産材丸太需給(特にスギ)に大きな影響を与えること

は十分に予想できる。

3 東北の木材産業の特質

東北と九州は、国産材産地(素材)の双璧をなしているといえる。例えば、国産材素材

生産量(針葉樹+広葉樹)で見ると、東北が 407 万 2,000m3(対全国シェア 24.5%)、九州

が 379 万 4,000m3(22.8%)である。スギに限ってみても、東北が 240 万 1,000m3(対全国

シェア 29.1%)、九州が 287 万 6,000m3(対全国シェア 34.8%)と、北と南で全国シェアの

過半を抑えている。

ただし、両者には大きな違いが見られる。表1・3・2は『平成 22 年木材統計』によっ

て、製材用、合板用、木材チップ用の国産材素材需要量を示したものである。これによれ

ば、東北の国産材素材需要量は 449 万 3,000m3 で対全国シェアは 26.1%を、九州は 405 万

表1・3・2 用途別国産材素材需要量(全国・東北・九州)

単位:千 m3、%

区 分 総 数 製材用 合板用 木 材 チップ用

全 国 17,193 10,582 2,490 4,121

東 北

青 森 岩 手 宮 城 秋 田 山 形 福 島

393 1,218 801 1,124 260 697

163 507 177 391 165 465

x 311 466

x - -

x 400 158

x 95 232

計 4,493 (26.1)

1,868 (17.6)

777 (31.2)

885 (21.5)

九 州

福 岡 佐 賀 長 崎 熊 本 大 分 宮 崎 鹿児島

304 134 62 1,057 709 1,268 519

265 100 20 731 688 1,142 270

x - -

x - -

x

x 34 42

x 21 126

x

計 4,053 (23.6)

3,216 (30.4)

x (x)

223 (5.4)

資料:農林水産省『平成 22 年木材統計』 注:(1)( )は対全国シェア (2)「-」→事実のないもの 「x」→統計数値を公表しないもの

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3,000m3 で 23.6%をそれぞれ占めており、両者で日本全体の半分を占めている。しかし、

これを用途別にみると大きな違いがある。すなわち、東北の場合は合板用の対全国シェア

が 31.2%を占めるのに対して、九州はこの表で見るかぎり統計数値としては表れていない

(カウント不可能)。また、木材チップの対全国シェアも東北が 21.5%であるのに対して九

州は 5.4%にすぎない。一方、製材用で見ると、九州が 30.4%を占めているのに対して、

東北は 17.6%にとどまっている。

また、国産材産地の内実を見ても、東北と九州では大きな差がある。図1・3・2は「国

産材ラッシュ」といわれた 2007 年の日本の製材工場(国産材専門)、集成材工場、合板工

場の分布状況を示したものであり、次の点が指摘できる。

第 1 に大型国産材専門製材工場(年間国産材丸太消費量 5 万 m3 以上)は、北海道の北

見、十勝などの道東、北関東、九州に多い。第 2 に、集成材工場や合板工場は東北に多く

分布している。 つまり、東北と九州は国産材産地の双璧をなしているが、東北では集成材、合板工場が

多いのに対して、九州の場合は製材工場が多いのである。このことは素材需給の違いを見

ると明瞭に表れる。

図1・3・2 大規模製材工場、集成材工場、合板工場の国内分布(2007年)

資料:林野庁業務資料

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- 19 -

図1・3・3は、需要部門別(用途別)スギ素材生産量(割合)の推移を示したもので

あるが、全国的にみても合板の需要が増加している。これを東北と九州でみると、図1・

3・4(東北)、図1・3・5(九州)のようになる。東北の場合、合板用のウエイトが年々

増加しているのに対して、九州ではむしろ製材のウエイトが高い。さらにこれを秋田、宮

城両県でみると、図1・3・6、図1・3・7のようになる。製材業の地盤沈下を伴いな

がら合板のウエイトが急増している。

そしてこの傾向は、青森県でも現れている。図1・3・8は青森県の需要部門別スギ素

材生産量(割合)の推移を示したものであるが、2003 年時点では合板用のスギ素材生産量

はゼロ(カウント不能)であったが、2004 年以降は増加傾向を示している。このことは図

1・3・9でも明瞭に現れている。2003 年以降、青森県では合板用丸太の生産量が確実に

増加している。

2003

2004

2005

2006

2007

2008

割合(%)

製材用合板用チップ用

図1・3・3 需要部門別スギ素材生産量(割合)の推移

資料:農林水産省『木材需給報告書』

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- 20 -

2003

2004

2005

2006

2007

2008

割合(%)

製材用合板用チップ用

図1・3・4 需要部門別スギ素材生産量の推移(東北)

資料:農林水産省『木材需給報告書』

2003

2004

2005

2006

2007

2008

割合(%)

製材用合板用チップ用

図1・3・5 需要部門別スギ素材生産量(割合)の推移(九州)

資料:農林水産省『木材需給報告書』

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- 21 -

2003

2004

2005

2006

2007

2008

割合(%)

製材用合板用チップ用

図1・3・6 需要部門別スギ素材生産量(割合)の推移(秋田県)

資料:農林水産省『木材需給報告書』

2003

2004

2005

2006

2007

2008

割合(%)

製材用

合板用

チップ用

図1・3・7 需要部門別スギ素材生産量の推移(宮城県)

資料:農林水産省『木材需給報告書』

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- 22 -

2003

2004

2005

2006

2007

2008

割合(%)

製材用合板用チップ用

図1・3・8 需要部門別スギ素材生産量(割合)の推移(青森県)

資料:農林水産省『木材需給報告書』

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

生産量(m 3)

図1・3・9 青森県における合板用丸太生産量の推移

資料:農林水産省『木材需給報告書』

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第4節 青森県の森林・林業・木材産業の動向と問題点

1 青森県の森林・林業・木材産業の動向

青森県の森林資源は、総蓄積量 1 億 1,130 万㎥のうち、民有林が 42%、国有林が 58%と

なっており、民有林では 6~9 齢級の針葉樹人工林が多く、国有林では広葉樹天然林が多い。

また、総蓄積量に占めるスギの割合は、1975 年の 14%から 2010 年の 39%と増加している

(図1・4・1)。 素材生産量は、2010 年が 60 万㎥と全国第 8 位であるが、過去最大だった 1980 年の

120 万㎥の半分に落ち込んでいる。その中で、スギの割合は 1975 年が 27%であったが 2010年には 67%と増加している(図1・4・2)。

製材工場数の推移をみると(図1・4・3)、年々確実にその数を減らしている。これに

伴って、素材需要量及び製材品出荷量、製材品出荷額も減少している(図1・4・4~

図1・4・6)。 また、木材需要の過半を占める住宅建築については、着工数が減少していることから

(図1・4・7)、製材品の出荷先は(図1・4・8)、2004 年までは青森県以外の東北が

多かったが、2005 年以降は「県外」の割合が微増している(2005 年以降は「県内」、「県外」

の 2 区分)。 次に、青森県産素材(丸太)がどのように流通しているのかをみると(図1・4・4、

図1・4・9)、2002 年以降、県外への出荷の割合が増える傾向にある。これを製材用素

材で示すと図1・4・10のようになり、やはり 2002 年以降、県外への出荷の割合が増え

る傾向にある。

そこで、この素材生産・流通の動向をさらに詳しく見ると次のことが指摘できる。まず、

青森県は国有林地帯であるだけに(図1・4・11)、国有林を資源基盤とした素材生産量

の比重が大きい(図1・4・12)。その国有林の素材生産量(特にスギ)も増加の傾向を

示している(図1・4・13)。一方、国有林の立木公売量は 20 万 m3 前後で推移してい

る(図1・4・14)。

また、青森県の素材生産・流通で大きな存在である青森県森林整備事業協同組合の素材

生産量を示すと(図1・4・15)、立木購入、請負生産ともに増加傾向にある。ただ、そ

の素材(スギ)の県外(秋田、岩手両県)への販売量が増加している(図1・4・16)。

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図1・4・1 青森県における森林蓄積量の推移

資料:農林水産省『木材需給報告書』

図1・4・2 青森県における素材生産量の推移

資料:農林水産省『木材需給報告書』

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9091

9293

9495

9697

9899

20001

23

45

67

89

10

0

100

200

300

400

工場数(工場)

大規模中規模

小規模

図1・4・3 青森県における出力規模別製材工場数の推移

資料:農林水産省『木材需給報告書』

小→75kW未満、中→75~300kW 未満、大→300kW以上

図1・4・4 青森県の素材の県内需要量と県外移出量の推移

資料:農林水産省『木材需給報告書』

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1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

0

100

200

300

400

500

600

出荷量(千m 3)

図1・4・5 青森県の製材品出荷量の推移

資料:農林水産省『木材需給報告書』

図1・4・6 青森県の製材品出荷額の推移

資料:経済産業省『工業統計表』

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図1・4・7 青森県の新築住宅着工戸数の推移

資料:国土交通省『建築着工統計』

1990199119921993199419951996199719981999200020012002200320042005200620072008

割合(%)

青森青森以外の東北東京その他

図1・4・8 青森県の製材品出荷先別割合の推移

資料:農林水産省『木材需給報告書』

注:2005 年以降は「自県」と「他県」

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2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

割合(%)

県内秋田県岩手県その他

図1・4・9 青森県産素材(丸太)の出荷先別割合の推移

資料:農林水産省『木材需給報告書』

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

割合(%)

県内秋田県岩手県その他

図1・4・10 青森県産素材(製材用)の出荷先割合の推移

資料:農林水産省『木材需給報告書』

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図1・4・11 青森県における国有林の分布状況

資料:東北森林管理局資料

年度

0

100

200

300

400

500

600

700

素材生産量(千m3)

国有林民有林

図1・4・12 青森県の所有形態別素材生産量の推移

資料:東北森林管理局青森事務所調べ

注:国有林は推計値

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年度

0

50

100

150

200

素材生産量(千m3)

その他スギ

図1・4・13 国有林(青森県)の請負素材生産量の推移

資料:東北森林管理局青森事務所調べ

注:丸太ベース

その他スギ

年度

0

50

100

150

200

250

300

販売量(千m3)

図1・4・14 国有林(青森県)の立木販売(公売)量の推移

資料:東北森林管理局青森事務所調べ

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年度

2006 2007 2008 2009 2010

0

50

100

150

200

250

生産量(千m 3)

立木購入生産請負生産

図1・4・15 青森県森林整備事業協同組合の請負別・直営別素材生産量の推移

資料:青森県森林整備事業協同組合調べ

2006 2007 2008 2009 2010

年度

0

10

20

30

40

50

販売量(千m3)

岩手県秋田県

図1・4・16 青森県森林整備事業協同組合のスギ丸太の県外販売量の推移

資料:青森県森林整備事業協同組合調べ

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2 青森県の森林・林業・木材産業の問題点

ここまで見てきたように、問題は、全国に多くの木材加工施設が分布しているが、青森

県は中規模の製材工場が1箇所で、合板工場と集成材工場はないことから、青森県産素材

(丸太)が県内で十分に消費されずに、合板用材、製材用材として県外への出荷の割合が増

える傾向にあることである。このことは、青森県経済にとって次のようなデメリットをも

たらしている。

第 1 は丸太での県外移出であるため、付加価値部分が県内に残らないこと、第 2 は青森

県産丸太を利用消費する事業体がないため雇用創出の場がないことである。第 3 はそのた

め青森県内にスギを有効利用するノウハウが形成されないことである。したがって、現状

のまま推移すると、青森県に賦存する膨大なスギ人工林は、他県の合板メーカーや製材メー

カーの「草刈り場」になってしまう危険性があるといえる。

以上の問題を、A 材、B 材、C 材の利用という視点からさらに掘り下げると次のことが

いえる。なお、ここでいう A 材、B 材、C 材とは、農林水産省『木材需給報告書』の用途

別素材生産の製材用、合板用、木材チップ用に対応する。もっとも現実をみれば、A~C材では括りきれない林地残材など(D 材あるいは E 材)の利用も出てきているが、ここで

は青森県が抱えている問題を端的に示すために A 材、B 材、C 材で整理してみる。

伐採された林木の A 材、B 材、C 材までの消費の受け皿が充実していれば、素材生産の

歩留まりが上がり、販路の拡大と収入の増加が期待できることは明らかである。この意味

で、素材生産の拡大を図るなら B 材、C 材の需要拡大は不可欠の課題であり、例えば中国

木材やトーセンなどが集成材加工事業へ進出していることは時宜にかなった取り組みと考

えられる。

問題は、素材の販路の拡大が必ずしも山の収益につながらないことである。それは B 材、

C 材は需要家(主として集成材、合板メーカー)が幅広く素材を許容できるのに対し(例

えば、長級○m に対して矢高が○cm までなら全量引き受けるという集成材や合板メーカー

の丸太の受け入れ体制)、A 材需要家は A 材しか許容できないことにある。

日本の林業は「柱取り」が基調であるといわれてきた。1ha 当たり 2,500~3,000 本の植

林をし、植栽後 7~10 年まで下草刈りをし、その後、除・間伐をし、ビール瓶の太さに成

長したら枝打ちをするというのは、その内実はともかく、柱取りを目指した林業であった。

したがって、本来は A 材(直材≒柱取り用丸太)を中心に素材を生産する過程で、その副

産物として出てくるのが B 材、C 材で、価格は安くても全体の収支のなかで採算はとれる

需給構造(市場構造)になっていた。しかし、B 材、C 材が中心的な需要を形成してくる

と副産物という位置づけでは賄いきれず、主製品として生産されないと供給しきれなく

なってくる。このいびつな需給構造を形成しているのが東北であり、青森県もそれに近づ

いている。

以上から、青森県においては A 材(あるいは A 材に近い B 材)の消費構造を県内に創出

することが重要な課題であるといえる。