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人と動物の関係研究プロジェクト(HARRP)
第2回研究会
「家族の中のペット」
報告書
2015年 8月 30日(日) 13:30-16:30
於 大阪商業大学 U-メディアセンター(図書館)4F
ネットワーク・レクチャールーム
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序文
人と動物の関係研究プロジェクト(HARRP)は、これまで「伴侶動物の安楽死」や「獣医療コ
ミュニケーション」を研究テーマに取り上げ、獣医師と飼い主を対象にした調査研究を行っ
てきた。この研究の一環として、第1回研究会では、「獣医療コミュニケーションを考える-
飼い主からの提言-」というテーマで、臨床獣医療コミュニケーションにおける理想的な獣
医師・動物病院のあり方や問題点について、飼い主の視点から話し合う場を設けた。これに
対して、第2回となる今回の研究会では、下記の理由から、家庭における飼い主とペットの
関係性に焦点をあて、テーマを「家族の中のペット」にした。
「人の行動にはその人の文化規範や価値観が影響している。よって、対人コミュニケーシ
ョンにおいては、自分の文化規範や価値観を基準に相手の行動を解釈しようとしても、それ
が難しい場合がある。相手がなぜそのような行動をとるのかを理解し、コミュニケーション
をより円滑にするためには、その背景にある文化規範や価値観を理解する必要がある。これ
は獣医師と飼い主のコミュニケーションにもあてはまる。」このような考えに基づき、今回は
臨床獣医療コミュニケーションの当事者の一方である飼い主に焦点を置き、「飼い主にとって
ペットはどのような存在か」という点、つまり飼い主の行動の背景にあるペットに対する考
えや思いを再確認し、今後の研究に役立たせたいと考えた。
今回の研究会では、飼い主とペットの関係性に関する研究報告や飼い主による体験談発表
を行ったことに加えて、米国獣医行動学専門医である入交眞巳氏を講師に招き、犬や猫の行
動的特性に関する講演に続き、参加者からの質問に回答していただく時間を設けた(講演・
報告・発表の要旨や資料は本報告書に収録)。準備や進行など、改善すべき点は多々あるもの
の、学内だけでなく、学外からの参加者も前回より増え、盛況のうちに研究会を終了するこ
とができた。
今回は上記のような形態で研究会を行ったが、前回は基調講演と体験談発表、そして参加
者による座談会という構成であった。今後も試行錯誤しながら、様々な形態での研究会を試
みたいと考えている。前回の報告書でも述べたが、HARRPでは、これまでの、そしてこれから
の研究会の成果を基に、よりよい臨床獣医療コミュニケーションの実現に向けて働きかけて
いきたいと考えている。
HARRP代表(大阪商業大学 経済学部 准教授) 杉田陽出
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プログラム
12:30 開場
13:00-13:05 開会・挨拶
13:05-13:20 演題1「飼い主の属性に見るペットの存在感評価」
杉田陽出(大阪商業大学 経済学部 准教授)
13:20-13:35 演題2「我が家のアイドル~保護犬を迎えて~」
檜垣冬子(大阪商業大学 教務課)
檜垣幸萌(大阪信愛女学院高校 1年生)
13:35-13:50 演題3「My Dearest Brothers~フェレット ワンパク日記~」
安藤祥嗣(大阪商業大学 総合経営学部 1回生)
14:50-14:05 演題4「愛犬トトロ君の思い出」
林妙音(大阪商業大学 総合経営学部 准教授)
14:05-14:10 休憩
14:10-14:30 お茶会(懇親会)
14:30-15:30 招待講演「犬猫のよくある問題行動とその解決策について」
入交眞巳(日本獣医生命科学大学 獣医学部 講師)
15:30-16:30 入交先生への質問と回答
16:30 閉会
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講演「犬猫のよくある問題行動とその解決法について」
日本獣医生命科学大学 講師 入交眞巳
犬や猫と暮らしていると、心がほっとしたり、思わず微笑んでしまったりするようなしぐ
さをたくさん見ることができます。また、私たちが落ち込んだり悲しんだりしている時に、
寄り添って慰めてくれたり、何も言わずに話を聞いてくれたりします。そんな彼らは、まさ
に愛すべき家族の一員です。
しかし、毎日一緒に生活していると、そんなに良いことばかりではない場合もあるでしょ
う。たとえば犬の場合ですと、郵便屋さんが来ると吠えて鳴き止まなかったり、たくさんの
愛情をかけているにもかかわらず咬みついたりするかもしれません。猫の場合ですと、トイ
レではない処におしっこをかけたり、家の中のあちこちを引っ掻いたりするかもしれません。
こんなことならもう一緒に生活したくない、とまで思わせるようないたずらを沢山するかも
しれません。
そんな困った行動やいたずらには、どう対処したら良いのでしょうか?自分と同じ人間に
対してなら、なんとなくわかるような気もするのですが、犬猫となると、たとえ本や雑誌に
その対処法が色々載っていても、頭を悩ますことも多いのではないでしょうか?
今回の講演では、「犬の困った行動や攻撃性は飼い主と犬の主従関係ができていないからだ」
という定説がいかに間違った考えであるか、「猫は社会性のない動物だ」といわれているけれ
ど、本当は人と一緒にいるのが好きな、非常に愛らしい動物である、などの情報を交えなが
ら、犬や猫の困った行動の解決法についてお話ししていきたいと思います。
<参考配布資料>
入交眞巳. (2015). 獣医療の中の動物行動学とは何か? 動物行動学とアニマルウェルフェ
アについて. MPアグロジャーナル, 21, 32-34.
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演題1「飼い主の属性に見るペットの存在感評価」
大阪商業大学 経済学部 准教授 杉田陽出
「人間にとってペットとはどういう存在か?」この問いに対する答えについては、人によ
って様々な見解があるでしょう。
一般社団法人ペットフード協会が 2014 年に行った全国犬猫飼育実態調査 1)によりますと、
生活に喜びを与えるものとして「ペット」の選択率(複数回答)が、犬飼育者では「家族」
(83.0%)に続いて2位(80.9%)となっており、猫飼育舎では「家族」(78.3%)を抑え
て1位(81.2%)となっています。また、ペット総研が 2015年に行った調査 2)によりますと、
昨年度の平均年間飼育費は犬で 22万 1255円、猫で 13万 3,098円であり、両者ともに前年度
に比べてワクチンや健康診断などの医療費、ならびにペット保険代の支出に増加が見られま
す。少なくともこれらの調査結果からは、喜びを与えてくれるという点で、多くの犬や猫の
飼い主にとってペットは人間の家族に並ぶ存在であり、さらには人間の家族に対するのと同
じく、その健康管理に関心を払う飼い主が増加しているといえるでしょう。
「ペットは家族の一員」という表現は、もはや耳新しいものではありません。今回の研究
報告では、「婚姻状況」「子どもの有無」「同居末子の年齢」を基に分類した、飼い主のライ
フステージとペットの存在感評価の関係性に関するデータを提示しながら、ペットは家族の
中でも、特に「子ども」や「孫」の代替的役割を担う可能性について述べていきたいと思い
ます。
<引用文献> 1) http://www.petfood.or.jp/data/chart2014/index.html 2) http://www.pet-soken.jp/result/blog.cgi/permalink/20150706000000
http://www.pet-soken.jp/result/blog.cgi/permalink/20150803000000
<パワーポイント資料>
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演題2「我が家のアイドル ~保護犬を迎えて~」
大阪商業大学 教務課 檜垣冬子・大阪信愛女学院高校 1年生 檜垣幸萌
今や大人より子どものほうが忙しいと思われる日々です。そんな中、「家族をつなぐもの、
みんなで大事にするもの」が必要と考え、我が家で犬を飼うことを思いつきました。インタ
ーネットで情報収集する過程で犬の里親制度を知り、我が家では犬種にこだわりがなかった
こともあり、里親になることを選びました。そして、1匹のシーズー犬を家族に迎えて 10カ
月が経ちました。
その犬は5歳でおとなしく、愛想の良い、しつけの行き届いた女の子です。保護活動ボラ
ンティアの方が連れてきてくださった日、彼女は自分からケージに入り、周囲の様子をうか
がいながら寝たふりをしていました。そんな彼女が徐々に活動的になっていき、半年後の遠
出を境に自分を見せてくれるようになりました。車に乗るときやトイレの失敗など、ちょっ
とした行動に変化が出てきて、表情も少しずつ豊かになってきました。
私たち家族は、それぞれが仕事、学校、部活、塾と忙しい毎日を送り、全員がそろうこと
の少ない家族でした。平日はお父さんが忙しく、休日は子どもたちが忙しい。そんな時間の
合わない家族が、彼女が来てから会話が増えました。食事や散歩、シャンプーなど、毎日の
世話はもちろん、彼女が留守番を嫌がるので、誰かが家にいるよう話し合うようになりまし
た。彼女は今では、ストレスを抱えがちのお父さんとお母さんを癒してくれたり、落ち込ん
だ娘をそっとなぐさめてくれたり、少しシャイな息子の妹分をしてくれたりと大活躍してい
ます。彼女を飼うことで家族関係が良好になり、明るくなりました。
里親というと人間が犬を助けたようなイメージがありますが、実は犬を飼うことで人間の
ほうが助けられることが多いのではないでしょうか。「我が家のアイドル」。これは息子がふ
と洩らした言葉です。私たち家族にとっての彼女の存在感を表現した、まさにぴったりの言
葉です。
今回の発表では、母親と娘の違う目線で、犬への気持ちを併せてお話したいと思います。
<パワーポイント資料>
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演題3「My Dearest Bothers ~フェレット ワンパク日記~」
大阪商業大学 公共経営学部 1回生 安藤祥嗣
私には動物を飼う時にいつも気にすることがある。それは躾や、病気にさせないためには
どうしたらよいかなどであるが、一番気にするのは、その動物とのコミュニケーションであ
る。人の言葉がわからない動物に、私の意思や感情をどう伝えたらよいのか。反対に、動物
の言葉が分からない私に、どうしたら動物の言っていることが理解できるのかなど、とても
不安になる。
私は以前犬を飼っていた。その時に私が苦労したのは、犬の言葉がわからなかったことだ。
だが、そのうちに、人の言葉を話せない代わりに、犬は顔の表情や鳴き声などを組み合わせ
て、その時々の自分の気持ちを伝えていることに気付くようになってきた。そして、依然と
して犬の言葉はわからないのに、その気持ちが分かるようになってきた。
動物と接していると、ふとこんなことを考える。動物の言葉が理解できていたなら、ここ
まで動物を好きになることはなかったのではないか、と。彼らの言葉が理解できないからこ
そ、それを少しでも理解しようと私たちは努力する。動物も私たちの言葉を理解しようと聴
いてくれる。お互いの言葉が理解できていては、こうはいかないのではないかと思う。
今回の発表では、私が現在飼っているフェレットについて紹介する。フェレットは犬など
に比べると、とても小柄で口数が少ない動物だ。そんな彼らのコミュニケーションスタイル
や生態について紹介できればと思う。
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演題4「愛犬トトロ君の思い出」
大阪商業大学 公共経営学部 准教授 林妙音
一人暮らしで言葉にも不自由する生活の中にペットがいたら、楽しみが増えるかな?そ
う思い、15年前にシーズー犬のトトロ君を迎え、一緒に暮らすことになりました。
大学の授業のない日の朝や昼に、トトロ君を連れて鴨川の河辺を散歩したことは、草の匂
いと共に清々しい思い出として残っています。車に乗れたら生活の行動範囲が広がると聞き、
35歳になって初めて車の免許を取得しました。夏休みには、小さな日産マーチの助手席にト
トロ君を乗せて、京都の近郊、北山、琵琶湖までドライブに出かけました。これも遠い昔の
幸せな思い出です。
トトロ君が5~6歳になった頃、心臓に病気のあることが分かり、それから動物病院に毎
月通いました。皮膚やら腎臓やらヘルニア関節やら、心配な病気が次々と出てきて、動物病
院との付合いがますます多くなりました。動物病院の先生やスタッフの皆さんには本当にお
世話様になりました。
時間的、金銭的負担が大きくなるにつれ、心の中にストレスが次第に溜まっていき、トト
ロ君に怒ることが頻繁になりました。反面、トトロ君の世話が生き甲斐になりました。大学
の仕事がうまく行かない時や論文が書けない時に、トトロ君がそばにいるだけで安らぎを感
じました。しかし、2年前に、私はとうとう安楽死の問題に直面することになりました。生
活のリズムや心身の調子が乱れ、つらい日々が2~3ヶ月も続きました。
トトロ君と一緒にいた 13年余りの時間を振り返って改めて思うのは、ペットは家族のよう
なもので、その存在は時間を超えるものです。
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人と動物の関係研究プロジェクト(HARRP)
第2回研究会
「家族の中のペット」
報告書
2015年 9月 8日発行