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第32回勉強会「英語の教え方教室」簡易報告 2014(平成26)年10月18日(土) 14:00~17:00
報告者:中井弘一
「私の授業実践̶̶英語を通じて世界を知ることをめざして」 滋賀県立米原高等学校 堀尾 美央 教諭
湖西地域にある滋賀県立高島高等学校から琵琶湖をまたいで対岸の湖東にある滋賀県立米原高等学校
に今年 4 月異動され教職 6 年目の気鋭の堀尾先生に前任校での取り組みについて実践報告していただい
た。滋賀県から応援として大勢の仲間も参加され、私を含め 30 人(本学学生 3 名含む)で話し合いを持つ
ことができ、賑わいの中、充実した勉強会となった。
さて、堀尾先生は、滋賀県の北西部に位置し、他の地域とは少し離れたところにある高島高等学校への
赴任当初、英語の授業は訳読中心、音読はろくにできない、ペアワークをしようにも隣の生徒同士が口を
きかない生徒を目の当たりにされ、どう打破すればいいのか大きな課題を抱えたと話された。
教育の一番の基本は、学ぶ意欲をかき立てることである。ここで、こうした意欲が見られない状況を打
破するにはどうすることが大切なのかをフロアーで話し合った。「パキスタンからなど欧米圏でない外国
の人を教室に招き、英語を通じて目の前で世界のことを話してもらう。」「音楽などを扱った教材を使い
生徒の関心を高める」などという意見が出た。こうした手法は、異質なもの、普段と異なるものと直に接
することで関心を高めるという手法である。いわば、ペリー艦隊の黒船来港型で直接的に意識を高揚させ
るやり方である。動機付けには、様々な要素・要因がある。「やる気」「意欲」をかき立てるには、教員
• 2 1 W 2 $• 1 IG OCG 1 OCI 3 $
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の指導という外から動機づけることと、個人の心の中に持つ「欲求」という動機づけの二面が上手く絡む
ことが必要であろう。意欲をかき立てるためには、外発的にも内発的にも動機付けをすることが大切であ
る。教室は集団であるので、その雰囲気がある。よって、集団やグループに親和的な関係があることが望
まれる。仲間同士の関係がよいと向上心をもたらす。良好な人間関係が教員と生徒や生徒同士の間にある
ことが基盤として必要なことである。そして何かやりがいのあることをやりたい思う達成動機も必要であ
ろう。やっていることに意味があると生徒に伝えるには、教員自身が研鑽に努め燃えるような情熱で、「こ
れはおもしろいんだよ」と伝えられること、やっていることに教員自身が熱い情熱を持つことが何より大
切になる。その姿に生徒は憧れるのである。動機付けには階層があると思われる。外発的な動機付けのレ
ベルから内発的な動機付けに移行させることであろう。学習性無力感(Learned Helplessness)という
言葉がある。電気ショックなど不快な刺激をどのような行動をとっても回避できない状況にしばらくいる
と、「何をやってもダメだ」と学習して、回避できる方法があったとしても反応しなくなる状況をいう。
高校生の中には、そういう学習性無力感(Learned Helplessness)の生徒も存在するであろう。それゆ
え、教員はこれまでの学習状況をよく理解しておかなければならない。
次に、堀尾先生から、具体的にそのような状況をどのように克服されたのか、実践例を伺った。他の教
員と横の連携がとれない状況であったので、自分独自に授業運営を考えてやっていこうとされた。昨今、
協調・協働など教員の同僚性の希薄さが問題になっている状況が多いと聞く。堀尾先生は、そうした状況
の中で独自のやり方を通すことにされた。この独自にやっていく姿勢に賛同する参加者は多かった。おそ
らく同じような状況におかれた経験があると思われる。独自性をもってやる方がおもしろいという意見も
あった。目の前の生徒に対して効果的と思われる教育活動を自分が行うべきという考えがあるのだろう。
ただ独自性は、独善になってもいけないし、それだけに責任がある。やみくもに実践してうまくいかなか
ったときの責任は極めて大きい。独自性を持って実践を行うには、その実践活動が効果的であると言うだ
けの根拠が必要である。そしてその根拠と成果を持って同僚を説得し仲間づくりをする気概が必要であろ
う。この魅力を保持しながらも協働で実践活動を行うことが学校という教育においては大切なことである。
堀尾先生がそこで、学習意欲に欠ける生徒に対して実践されたことは、「寝ないじゃなくて寝させない」
をモットーに、
• 訳読中心 → 音読中心へ
• 訳は 1文~2文 ポイントを絞って
• わからない生徒には理解を示す → 1 つ できることを増やす
• 言語活動はなかなか難しい = 「英語が使えて楽しい」は無理
• 英語の「授業」は面白い(fun・funny じゃなくて interesting)
を行っていくことであった。発音の指導、音読の指導を通して、mimicry マネをさせること重視した。つ
まり生徒はマネをすることは好きな活動であったということだ。「習うより慣れろ」でまねることができ
ることで達成感を得て、学習意欲の向上に繫がるという考えであった。また、シャドウイングを取り入れ
時間制限を設けて練習させる。それも何度もくり返させる反復を重視したとのことであった。また、学習
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している内容に意味があり、その内容を生徒に考えさせる活動が必要と、レッスンの内容に合わせて独自
の内容理解を深める補助シートを作成された。
content の理解を重視する。たとえば、 “Water and Living Things” →水の大切さについての簡単な読み物に加えて、上記のプリントを作成された。 2011 年に独立した南スーダン
Q.1 ) 何に使う?
Q.2 ) 汲みにいくまで片道何分?
Q.3 ) なぜわざわざ?
Q.4 ) 汲む人への影響は?
クイズ形式であり、内容は生徒にとっては驚くようなことである。事実内容が伝えるインパクトを生徒
の学習意欲につなげるということであった。回答の際にも、その理由を尋ねることとしたと話された。識
字率の低いこの国で選挙が行われたときの投票用紙も紹介された。
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これらは日本語による質問であり、日本語で考えるものである。英語で深い内容を理解することは難しい
と考えてのことである。知識を深くすることで学習が残るということだろう。こうした活動に、参加者も
感動を覚えたようであった。英語の運用能力を育成する一辺倒では、生徒の学習意欲は低下するとの思い
であろう。こうした活動は、学力の高い生徒の場合すべて英語で行えばいいのである。要は、こうしたト
ピックの素材を教員自身が見つけ出してくるということである。
サマリー活動は本文とは異なる文体で空所補充完成問題としたということである。
カナダの先住民(Aboriginal)を扱うレッスンでは、
の写真を見せ、どうして顔の輪郭など異なるのかを生徒に考えさせた上で、
Summary Lesson 8 Part 1
Canada is ( )( )( ) country in the world, but its
population is almost ( )( ) of Japan’s. It becomes ( ) cold in
winter ( ) most people live in the ( ) part of the land.
1 1 1 2 4
1 2 1
2 1 4
Class: No: Name:
The World’s Population Ranking 1.China 2.India 3.America 4.Indonesia 5.Brazil 10.Japan
13 4700 12 4100
3 1300 2 4200 1 9600
1 2600
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人類の進化の経路を示し、内容に関する関心を高めることに努めたということであった。
こうした活動の結果、2011 年度末の授業アンケートでは、
・とりあえず、5時間目に英語Ⅱがあると助かった(眠い時間に音読するから目が覚めた)
・訳もポイント絞るからテスト勉強しやすかった
・書いた英語に○もらえると嬉しかった
・教科書外の話が面白かった。なんか知識が増えて賢くなった気がする。
に集約されるコメントを得たとのことであった。
ここで休憩に入った。参加者の自己紹介のあと、後半を再開した。
後半は、翌年進学クラスの担任を持ち行った活動の紹介であった。Oral Communication→文法授業と
リンクさせてのOutput 活動として、
英検の問題を参考に、絵をターゲット文法を使って表現する活
動を行われたとのことである。
また、NEW EDITION UNICORN ENGLISH II “Free the
Children”では、児童労働根絶を目指して活動する少年の話を、
Lesson 終了後 World Research(児童労働の数が最も多いイ
ンドについて調べる)プロジェクトを情報教室で行われた。ご自
身の経験を英文にして、ダブル・リーディディング教材を配布
したりしたということであった。実体験に基づく考えさせる内
容である。堀尾先生自身が、若い頃から単身で外国をよく回っ
ておられ、そこでの体験などを整理して英文を作成されている
ようであった。リサーチというプロジェクト活動も生徒の知的
基盤を育成することに必要な活動である。またこうしたリサー
チ活動を通して、知識や情報が深くなる。思考力の育成には欠
かせないことと思われる。
◆未来形:(人)は~しようとしている(be going to) 【例文】A boy is going to study.
The girl is going to read a book.
◆理由 : なぜなら~ (because~) 【例文】The girl can’t read the book
because she doesn’t have glasses.
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また、ディベート活動を取り入れて授業を行っておられた。
他にも、様々な実践活動を紹介された。
①夏休み英語暗唱大会実施
World Research India Class: No. Name:
/ About the nation
/ Population / Official Name
/ Capital / Independence
/ Currency / About Culture
/ Food / Traditional clothes / World Heritage
( ) / About Education
/ Type of school and ages
/ How many children go to school?
/ How many children graduate from school?
( ) What do the children who don’t/can’t go to school do? / Why can’t they go to school?
/ About poverty / What is “poverty”?
/ The reasons of poverty in India
/ Living of people in poverty
/ About working children / Age
/ What do they do?
/ wage (income)
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����
A�Introduction
B:Body
1
C:Conclusion
Simple Communication Activity
(based on debating)�
) ( (How to speak)
Idioms I agree(disagree) with~ � ( ) as a result for these reasons
Affirmative ( )
I agree with the proposition that the Indian government should prohibit children under 18 from working.
( � ) (現状) In the present situation, children are forced to work and can’t go to school. (効果) After the proposition, because children can’t work, they can go to school. (結果) As a result, they can learn how to read and write letters.
( 1 ) For these reasons, I agree with the proposition that the Indian government should prohibit children under 18 from working.
Negative ( )
I disagree with the proposition that the Indian government should prohibit children under 18 from working.
( � ) (現状) In the present situation, children works for their family. (効果) After the proposition, because children can’t work, the family’s income will
decrease. (結果) As a result, they will be poorer.
( 1 ) For these reasons, I disagree with the proposition that the Indian government should prohibit children under 18 from working.
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• 1年生・2年生 B クラス夏休みの宿題で英語の暗唱 夏休み後半の補習で
グループ発表 → クラス発表 → 1・2年合同発表 1年生、2年生それぞれ優秀者は表彰
【実施後のアンケートより】
・ 最初は、できるか!と思ったけど、案外できて自分でも驚いた
・ 初めてやったけど合同発表まで残れて嬉しかったし、入賞はできひんかったけど、自分でもここまで
できて自信がついた
・ 普段はわからなかったけど、みんなの発音良くてすごかった
②滋賀県高校生 英語ディベート大会参加
学校サボり気味 生徒指導常連 部活動していない 英語好き
→修学旅行中でも集まって頑張る
→休みの日も学校来て練習
→入賞はできず全国にもいけずでも終了後の達成感 「ここまで頑張ったし、これからも何かしたい」
→ALT に頼んで英会話練習グループ
最後に今後の展望として、
・ 「私にしかできない」授業
・ 興味・・・「英語の文を読んでみよう」→ 新しい世界を知る
・ 言語活動を導入
・ 点数が取れるだけ、成績がいいだけ×
◆いろんなことに興味を持てる人
◆教科を通じて人間性を育てたい
と話されて、実践報告を終了された。参加者から大きな拍手が送られた。エネルギッシュな堀尾先生の発
表で私たちも元気を得た。
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