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第3章 授業評価 35

第3章 授業評価 - edu-c.pref.miyagi.jp · 評価シートを活用するのが,最も評価しやすく集計しやすい でしょう。 (1) これからの授業評価はどのようにすればよいですか

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第 3章

授業評価

35

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§1 授業評価

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授業評価は,「わかる授業」を目指し,学校組織として多面

的・多角的に授業を評価することで,学校全体の授業改善に

つなげていくものです。 これからの授業評価は,どのような視点で授業を改善して

いけばよいのか,どんな手だてで改善していけばよいのかに

ついて,学校全体で共有し,互いに評価し合いながら,学校

全体の授業改善を進めていかなければなりません。他の教育

活動と同じように,これからは授業についても,学校として

の重点目標や改善の手だてを,マイスクールプランを通して

内外に明らかにしていきます。 そして,その重点目標に向かった実践を積み重ね,評価を

行い,その評価結果や問題点,改善の方向性を内外に明らか

にすることで,授業改善が行われ,信頼される学校づくりが

進んでいくのです。 これまで,学校評価の中での授業の評価は,学校全体とし

ての授業評価であり,個々の授業に関しての評価ではありま

せんでした。しかし,授業改善を進めるためには,むしろ,

個々の授業を直接評価することで,その教員の特長や改善す

べき点が明らかになり,評価から授業改善に向かうようにな

ります。 今までも教員は「わかる授業」を行うために,児童生徒が

学習を理解したかどうか,様々な方法で評価してきました。

しかし,授業が児童生徒にとって分かるものであったかどう

かは,学習の主体者である児童生徒が実際に授業をどう受け

止めたのかを把握することなしに検証することはできません。

そこで,児童生徒による授業評価を取り入れる必要がありま

す。さらに,授業を多面的・多角的に評価するために,学校

内の教員だけでなく,外部講師や保護者や地域の人々,学校

評議員といった人々も評価者としていくことが考えられます。 授業評価を行う方法としては,いろいろな方法があります。

これからの授業評価を,様々な評価者からそれぞれの観点で

評価を得ることで授業の改善につなげていくと考えると,評

価や集約がより速やかに行われる方法が適切です。それには,

評価シートを活用するのが,最も評価しやすく集計しやすい

でしょう。

(1) これからの授業評価はどのようにすればよいですか

授業評価の意義

学校全体で取り組

む組織的な授業評

個々の教員に対す

る授業評価

多様な評価者によ

る授業評価

授業評価の方法

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マイスクールプランには,授業改善に向けての具体的な重

点目標やその手だてが示されるので,それについて学校全体

として評価する必要があります。さらに,授業を多面的・多

角的に評価する必要性から考えると,重点目標だけでなく,

授業を全般的に評価する必要もあります。 したがって,総括的な授業評価では,その年度の重点目標

及び授業全般を評価するために重点目標以外でも評価するも

のとします。

重点目標を達成するために授業改善の視点で立てられた手

だてが,実際の授業の中でどのように実践されるのか,さら

にそれが授業改善に結びついているのかどうかを検証できる

のは,普段行われている授業の中だけです。これが,日常的

な授業評価です。

○児童生徒による授業評価

日常的な授業評価の中では,その1時間または単元の中で

実践された手だてについて,それがどのように実現されてい

くのか,また,児童生徒にとって有効であったのかどうかを

具体的に評価していきます。また,個人の課題から立てた手

だてを意識して普段の授業を行い,さらに評価を受けていく

ことで,その教員の指導力の向上につながります。

○教員相互による授業評価

重点目標を達成するために授業改善の視点で立てた手だて

は,学校全体で設定したものですから,それを学校全体で共

有し,評価していくことも必要です。研究授業や公開授業な

どを設定し,お互いに専門的な立場から評価することで授業

改善を進めます。また,外部講師を招いての授業評価なども

考えられます。

○保護者や地域の人々,学校評議員による授業評価 これからは,保護者や地域の人々,学校評議員などにも積

極的に授業を公開し,評価を受け,その声に耳を傾けながら

授業改善に取り組んでいくことが必要です。そのことが学校

への理解を深め,学校への協力へとつながっていくのです。

学校公開や授業参観日などにおいて参観授業を設定し,評価

を受けます。

(2) 授業評価にはどのようなものがあるのですか

総括的な授業評価

+ 総括的な授業

評価

その年の重点

目標及び手だ

ての評価

授業全般の

評価 =

日常的な授業評価

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授業の観点は様々なものが考えられますが,授業をつくる

要素から,次のような領域,観点の例を挙げました。(資料(5)

「授業評価項目一覧表」参照)

まず,授業者が指導内容そのものを理解していなければな

りません。これを「教材の研究」の領域としました。 さらに,使用する教材・教具の検討や発問の内容の検討な

ど教材の研究をもとにした授業の組み立てが必要です。これ

を「授業の展開」の領域としました。 また,「授業の展開」と区別して,「指導の技術」という領

域を設けました。これは,例えば説明や発問をするときの言

葉遣いや板書の字の大きさなど,あらかじめ授業前に検討し

ておくというよりは,どちらかといえば普段から心がけて行

うべき内容です。 最後に学級の雰囲気や授業規律・学習訓練など「学習の環

境」についても一つの領域として挙げました。

〈教員用評価項目一覧表より項目例〉

領域

観 点 項 目(内 容)

指導計画 ・授業の進度は指導計画に照らして適切であった。 ・1時間の進度は適切であった。 ・単元構成は適切であった。

目標とその内容・この児童生徒が理解できる難易度であった。 ・この授業のレベルは,児童生徒にとって適切であった。 ・授業は,その時間の目標まで進んだ。

教材の内容

・使用している教材は生徒の実態に照らして適切なものが選択されていた。

・使用している教材は,生徒の学習に役立つものが選択されていた。

・1時間の内容として,授業の内容は適切であった。 ・児童生徒が興味や関心のもてる授業の内容だった。 ・授業で取り上げるテーマ(題材)は適切であった。

教材観 ・教材の解釈は適切であった。

教材の研究

評価

・評価の観点や手段を示した。 ・評価の方法・手段について詳しく説明をした。 ・評価規準を設定していた。 ・評価の観点や方法,手段は適切であった。 ・努力したことを適切に評価した。 ・公平に評価した。 ・児童生徒が納得できる評価をした。

領 域 観 点 教材の研究 年間指導計画(年間,単元,1時間)目標とその内容

教材の内容 教材観 教具や道具 評価 授業の展開 実態の把握 ねらいの明確化 時間の配分 安全の

確保 説明,発問,指示,板書等の内容(分かりやすさ,言葉の吟味,計画性,量,実態への配慮,児童生徒の思考の広がり) 発表の場面や活動の場面の工夫児童生徒への対応(個に応じた対応)学習の場所 ノート指導 宿題(内容,量)

指導の技術 説明,発問,指示の仕方(速さ,声量,話し方の工夫,言葉遣い) 板書の仕方(字形・筆順,大きさ,書く速さ) 児童への対応(対応の仕方,児童生徒理解,掌握力,公平さ) 教員の態度(時間の遵守,服装,熱意)

学習の環境 学級の雰囲気 学習訓練・授業規律(児童生徒の態度,教員の態度) 教室経営 学習環境

(3) 授業評価はどのような観点で評価するのですか

授業評価の領域と

観点

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4つの領域は密接にかかわっているものですから,授業の

すべてをこの4つにきっちりと分けられるというものではあ

りません。例えば,板書については多くの場合,「授業の展開」

と「指導の技術」の両方にかかわることです。評価者や評価

内容によって,分けて評価した方がよい場合,分けずに一緒

に評価した方がよい場合のどちらも考えられます。評価者や

その内容によって,評価シートを作成する際にそれを決定し

ていきます。 授業は教師が中心となって組み立てていくものです。当然,

授業の内容に責任をもつのは,教員です。しかし,学習の主

体者は児童生徒であり,そういった意味では,授業は教員と

児童生徒が共につくるものです。いくら教員が「わかる授業」

を目指して努力しても,児童生徒が参加しようとしなければ,

「わかる授業」にはなり得ません。 児童生徒も積極的に授業に取り組み,自分自身も授業をつ

くる一人であるという意識を育むことが大切です。 そこで,児童生徒が授業を評価するだけでなく,自分を振

り返る機会をもたせることも大切だと考え,児童生徒の自己

評価についても,次のような領域,観点の例を挙げました。

〈児童生徒自己評価用評価項目一覧表より項目例〉

領域 観 点 項 目(内 容) 充実感 ・今日の授業は満足できた。

・今日の勉強はおもしろかった。 ・今日の学習は楽しかった。 ・やる気が起こる授業だった。 ・授業の内容が自分の学びたいことと一致していると感じた。 ・新しい知識や技能を修得して,自分が成長したと感じた。 ・教科の力がついたと思った。 ・授業時間が長いと感じることはあまりない。 ・授業を受けておもしろいと感じることが多い。

達成感 ・今日の勉強は分かった。 ・今日の勉強で分かったことやできるようになったことがあった。 ・学習内容が理解できた。 ・教わった技能,技術を活用できる。 ・この授業を通じて,新しい知識を得たり,ものの見方や考え方が学んだりできた。

学習 の成果

興味関心の深化

・もっと勉強したいと思った。 ・明日の勉強が楽しみである。 ・この授業の内容について,さらに関心を深めたいと思った。 ・興味関心がわき,もっと学びたいと思うような授業だった。 ・視野が広がったり,人生や進路に影響を与えるような意義を感じたりした。

・将来,この授業は自分自身の役に立つと思った。 ・この授業を受けたことにより,この分野についての学習意欲がわき,より深く学習したくなった。

・この授業は後輩に勧められる。

領 域 観 点 学習の成果 充実感 達成感 興味関心の深化 意欲や態度 学習に取り組む姿勢(全般的な取組,思考,発表や

質問,話の聞き方,ノートのとり方,時間の配分,学級の雰囲気づくり,安全の保持,家庭学習) 授業規律(学習の準備,時間の遵守,学習態度)

児童生徒の自己評

価の観点の必要性

評価シートを作成

する際の留意点

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§2 総括的な授業評価の実施

総括的な授業評価は,半期にわたる授業について総括的に

評価するものです。評価者は,教員と児童生徒です。保護者

や地域の人々,学校評議員等については,特定の参観日にお

いてしか授業を参観できないので,総括的な授業評価を客観

的に行うことは難しいと考えます。 総括的な授業評価の結果を報告した上でマイスクールプラ

ン評価が行われるので,評価の時期としては,マイスクール

プランが行われる1か月程度前が望ましいでしょう。 総括的な授業評価から授業改善までの流れは次のようにな

ります。学校評価委員会が中心となって行います。

(1) 総括的な授業評価はどのようにすればよいですか

総括的な授業の評

価者

評価の時期

総括的な授業評価

の流れ

授業に関する重点目標及びその手だての決定

(本年度のマイスクールプランへの記載)

40

(総

授業評価シートの作成

教員による評価 童生徒による評価

取りまとめと集計

価結果の処理と分析

改善策の検討

的な

結果の公表 授業評価の報告書)

マイスクールプラン評価 よび結果と改善策の報告

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授業評価は,「わかる授業」を目指し,授業改善につなげて

いくものです。ただ,ここで大切なことは,授業が改善され

た結果,それによって児童生徒が授業に満足できたのかとい

うことです。そこで,児童生徒が満足できたかどうかを表す

数値を児童生徒の「授業満足度」とし,これは重点目標の一

つになると考えられます。また,学力の向上や授業態度の向

上など,児童生徒の変容を表すもので,さらに,到達目標と

なるものも重点目標として考えられます。 重点目標や手だてについては,学校評価の結果や授業評価

の結果,学校や児童の実態など考慮して,担当分掌部が検討

し,学校評価委員会を経て決定されます(第 2章§1参照)。

〈小学校の重点目標及び手だての例〉

〈高等学校の重点目標及び手だての例〉

(2) 授業満足度とは何ですか

授業満足度と重点

目標

重点目標及び手だ

重点目標1:授業が楽しいと思う子ども 80% 手だて:①ていねいにかつ適切な大きさの字で板書する。

②板書の内容を工夫する。 ③発表するときや人の話を聞くときのマナーを身に付けさせる。

重点目標2:国語と算数のCRT検査の結果を5ポイント以上アップする。

手だて:①国語と算数の授業時数を各学年10時間以上増やす。 ②算数で習熟度別指導を取り入れ,さらに充実したTT指導,少人数指導を行う。

③夏休みに国語と算数の補習授業を実施し,個別指導を行う。

重点目標3:英語活動が楽しいと思う子ども 85% 手だて:①英語活動の時間を10時間増やす。

②ALTによる授業を各学年5時間確保する。 ③教員の英語の研修会を実施し,英語活動の研修を深める。

重点目標1:授業満足度点 80点以上 手だて:①チャイムと同時に授業を始め,チャイムと同時に授業を

終える。 ②毎時間の予習を指示し,そのチェックを行う。 ③分かりやすい板書を工夫する。 ④分かりやすい発問を工夫する。

⑤熱い授業を行う。 重点目標2:小論文評定B以上を80%以上

手だて:①国語科と連携して,授業に小論文を組み入れる。 ②小論文実践ノートを活用し,全員に小論文指導を行う。

③誤字を防ぐため,漢字書き取り検査を定期的に実施する。

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小学校においては,どの教科も同じ教員が授業を行うこと

が多いでしょう。本来ならば,各教科について評価すること

が望ましいのですが,児童の発達段階を考えると,一人の教

員について半期の授業を振り返り,教科ごとに別々に授業を

評価するということは,やや難しいと思われます。そこで,

小学校においては,教科ごとではなく,すべての教科を総合

して評価することとしています。 なお,教科担任制やTT指導,少人数指導など,一つのク

ラスに複数の教員がかかわっている場合は,その担当教員ご

とに行うことも考えられます。 中学校・高等学校においては教科担任制であり,発達段階

から見ても教科ごとに授業評価を行うことができるので,原

則として,全生徒が全教科担任について授業評価を行うもの

とします。 学校規模や実態により,全教科担任が評価されるよう配慮

しながら,クラスごとに分担する方法も考えられます。 児童生徒の記名については,客観的な評価を得るためにも

無記名が望ましいと考えますが,集計することを考えて,学

年やクラス名,教員名などを記入する欄を設けます。 無記名であるために無責任な評価にならないよう,児童生

徒には授業をよりよいものにするための授業評価であること

を,あらかじめ説明して,理解を得ることが大切です。 総括的な授業評価の授業評価シートについては,次のよう

な内容が考えられます。 必要な内容 項目設定の留意点

①本年度の重点目標およ

び手だてに関する項目 その内容に該当する領域,観点から適切

なものを設定する。 ②児童生徒の自己評価 児童生徒の発達段階や実態,授業改善の

視点から,その内容に該当する領域,観

点から設定する。 ③授業全般に対する項目 重点目標や手だての内容に該当する領

域以外の各領域,観点から,学校や児童

生徒の実態,授業改善への取組の状況を

考慮して設定する。十分に精選し,項目

数が多くなりすぎないようにする。

(3) 授業評価シートはどのように作成すればよいですか

小学校における児

童による総括的な

授業評価

中学校・高等学校に

おける生徒による

総括的な授業評価

記名について

授業評価シートの

内容

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重点目標や手だての評価項目については,児童生徒に対し

てこのまま評価できるものと表現を変えることで評価できる

もの,児童生徒が評価することは難しいものがあります。

下記のように小学校の例でいえば,手だて1については,

めあてが分かったか否かということより,教員がめあてを意

識して授業したことで,児童が何を勉強したのかはっきりと

分かることが大切です。そこで,「何を勉強したのか,よく分

かる授業が多かった」と児童から見た表現に変えました。

また,手だて3の①については,「先生はたくさんの人が発

表できるように工夫していた」とすることもできますし,児

童自身のことについて評価できるよう,「授業中進んで発表す

ることができた」とすることもできます。また,その両方に

ついて評価し,比較してもよいでしょう。

評価の段階については,中間の回答が出ない2段階,ある

いは4段階が適切と考えます。

〈小学校における重点目標及び手だての例と評価シートの例〉

☆おしえてアンケート

これは,これからの授業をもっとよくするために,みなさんの考えを聞くアンケートです。

次の1~20までの内容について,あなたが今までの授業を受けて感じたこと,あなたの考えにもっとも近いものを

1~4の中から1つ選んで,○をつけてください。

学年・組( 年 組 先生)

教科名 ( ) 教科担当者名( 先生)

番号 聞きたいこと はい どちらかというとはい どちらかというといいえ いいえ

4 - 3 - 2 - 1

1 何を勉強したのか,よく分かる授業が多かった。 4 - 3 - 2 - 1

2 先生の説明はていねいで分かりやすかった。 4 - 3 - 2 - 1

3 先生が勉強のために用意したものは,学習内容を理解するのに役立った。 4 - 3 - 2 - 1

4 先生はたくさんの人が発表できるように工夫していた。 4 - 3 - 2 - 1

5 自分の意見や考えを発表しやすい雰囲気だった。 4 - 3 - 2 - 1

6 先生の話し方ははっきりしていて聞きやすかった。 4 - 3 - 2 - 1

7 先生が黒板に書いたことは見やすかった。 4 - 3 - 2 - 1

8 先生が黒板に書いたことは,学習内容を理解するのに役立った。 4 - 3 - 2 - 1

9 考えたり活動したりする時間がきちんとあった。 4 - 3 - 2 - 1

10 先生は私たちの考えや意見をよく聞いてくれた。 4 - 3 - 2 - 1

11 先生は分からないところやむずかしいところをきちんと説明してくれた。 4 - 3 - 2 - 1

12 みんなの様子を見まわりながら,教えてくれた。 4 - 3 - 2 - 1

13 先生は勉強の始まる時間や終わる時間を守っていた。 4 - 3 - 2 - 1

14 先生はいっしょうけんめい勉強を教えてくれた。 4 - 3 - 2 - 1

15 宿題はちょうどよかった。 4 - 3 - 2 - 1

16 教室内は整理整とんされ,勉強しやすかった。 4 - 3 - 2 - 1

17 授業はおもしろかった 4 - 3 - 2 - 1

18 学校の勉強は分かった。 4 - 3 - 2 - 1

19 授業中進んで発表することができた。 4 - 3 - 2 - 1

20 私は,勉強にいっしょうけんめい取り組んだ。 4 - 3 - 2 - 1

☆先生のこれからの授業がもっとよくなるように,みなさんの感想や意見,お願いなどを自由に書いてください。

児童生徒用授業評

価シートの具体的

な作成の仕方

重点目標1:児童の授業満足度 80%以上

手だて1:学習のめあてが分かるような授業を工夫する。

手だて2:①分かりやすい言葉で説明する。

②学習内容が理解できるような教材や教具を工夫する。

手だて3:①たくさんの児童が発表できるよう工夫する。

②発表のときのマナー指導を徹底し,発表しやすい雰囲気

づくりに努める。

1~5,17 重点目標や手だての評価

6~16 授業全般の評価

18~20 児童生徒の自己評価

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教員用の授業評価シートは,細かい表現は違っても,児童

生徒用の授業評価シートと同じ領域,観点,項目になるよう

にし,教員と児童生徒の評価結果が比べられるようにします。 両者の結果を比べることで,新たな問題点や授業改善の視

点がはっきりします。 〈小学校における教員用シート例〉

☆授業評価アンケート

これまでの授業をふり返り,自己評価をしてみましょう。

学年・組( 年 組)

教科名 ( ) 氏名( )

授業全般を評価するための項目については,多くの領域,

多くの観点について評価したいと考えがちですが,細部にわ

たって多くの評価項目を設けることは,評価者の負担が大き

くなります。また,集計や分析をするのにも負担が大きくな

り,継続的な取組に支障をきたします。児童生徒の発達段階

なども考慮して,十分精選することが大切です。 (資料(6)「授業評価各シート等」参照)

番号 聞きたいこと はい どちらかというとはい どちらかというといいえ いいえ

4 - 3 - 2 - 1

1 授業のねらいを明確にして授業を行った。 4 - 3 - 2 - 1

2 分かりやすく説明することができた.。 4 - 3 - 2 - 1

3 教材や教具は,児童が学習内容を理解するのに役立った。 4 - 3 - 2 - 1

4 たくさんの児童が発表できるよう工夫した。 4 - 3 - 2 - 1

5 児童が意見や考えを発表しやすい雰囲気であった。 4 - 3 - 2 - 1

6 声量は適切であり,話し方も明瞭であった。 4 - 3 - 2 - 1

7 板書の字の大きさは適切であり,丁寧に書いた。 4 - 3 - 2 - 1

8 学習内容を理解できるような板書を工夫した。 4 - 3 - 2 - 1

9 思考したり,活動したりする時間を十分確保した。 4 - 3 - 2 - 1

10 児童の意見を認めながら授業を進めた。 4 - 3 - 2 - 1

11 遅れがちな児童に支援した。 4 - 3 - 2 - 1

12 机間指導をしながら,授業を進めた。 4 - 3 - 2 - 1

13 始業時刻や終了時刻を守った。 4 - 3 - 2 - 1

14 熱意や意欲をもって授業に取り組んだ。 4 - 3 - 2 - 1

15 家庭学習の指示やその処理は適切であった。 4 - 3 - 2 - 1

16 教室内は整理整とんされ,学習しやすい雰囲気である。 4 - 3 - 2 - 1

17 児童は,授業が楽しいと感じていた。 4 - 3 - 2 - 1

18 児童は,授業の内容を理解していた。 4 - 3 - 2 - 1

19 児童は,授業中進んで発表した。 4 - 3 - 2 - 1

20 児童は,学習に集中して取り組んだ。 4 - 3 - 2 - 1

☆感想等

教員用授業評価シ

ートの具体的な作

成の仕方

1~5,17 重点目標や手だての自己評価

6~16 授業全般の自己評価

18~20 児童生徒に対しての評価

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小学校においては,ある特定の時間を設けて評価する方法

と,ある一定の期間に朝の会や帰りの会の時間等を活用して

クラスごとに行う方法があります。 中学校・高等学校においては,ある特定の時間を設けて一

度に全教科担当分評価する方法と,ある一定の期間を設けて,

その間に教科担任が授業時間を利用して行う方法があります。 特定の時間を設ける場合は,年間計画の中で設定する必要

があるので,学校評価委員会で検討し,あらかじめ設定して

おく必要があります。 集計については,学級,学年ごとあるいは教科担任ごとに

行ってから,その結果と授業評価シートを学校評価委員会で

取りまとめる方法と学校評価委員会で一括して集計する方法

があります。マイスクールプラン評価と同じように,学校評

価支援システムを活用して集計する方法もあります。校種や

学校規模で方法は異なると考えられますが,ある個人やある

分掌部だけに負担がかからないよう配慮しましょう。

(4) 評価の期間と集計はどのようにすればよいですか

評価の期間

集計者

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集計結果については,実数をそのまま出す方法や分かりや

すい結果にするために割合にして表す方法があります。また,

いくつかの観点について評価された結果から総合的に判断す

る場合は,その数字を算出する必要があります。 ◎集計結果の処理の例 ○児童生徒の評価結果の例 ①児童生徒の集計結果をもとに,被評価者ごとの評価項目 の割合を算出する。 ②評価項目ごとに,「はい」「どちらかといえばはい」「どち らかといえばいいえ」「いいえ」割合の平均を出す。

〈集計例 1〉

※ A「はい」 B「どちらかといえばはい」 C「どちらかといえばいいえ」 D「いいえ」

この評価結果から,例えば,次のように分析することで,

改善すべき点を見つけることができます。

①評価項目1については,「はい」が 40%,「どちらかとい

えばはい」が 40%であるのに対し,「どちらかといえばい

いえ」が 15%,「いいえ」が 5%

→全体としてはほぼ良いと判断できます。

②評価項目2については,「はい」が 15%,「どちらかとい

えばはい」が 20%であるのに対し,「どちらかといえばい

いえ」が 35%,「いいえ」が 30%

→全体としてはここが問題点であると判断できます。

③評価項目3については,「はい」が 25%,「どちらかとい

えばはい」も 25%,「どちらかといえばいいえ」も 25%,

「いいえ」も 25%

このような結果については,一概に良い,悪いとは判

断できません。原因としては,

・同じ評価項目について,児童生徒がいろいろな評価

をしている場合

・教員によって評価結果が極端に違う場合

などが考えられます。元のデータを見直し,このよう

な評価結果になった原因を探り,学校全体の問題点とな るのかどうか判断する必要があります。

学校全体の結果※(%) S先生(%) T先生(%) U先生(%) ・・・・

A B C D

1 60-30-10-0 20-40-30-10 40-40-10-0 ・・・・ 40 40 15 5

2 30-40-20-10 0-0-50-50 10-20-40-30 ・・・・ 15 20 35 30

3 50-40-10-0 0-10-40-50 20-30-30-20 ・・・・ 25 25 25 25

4 ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ … … … …

(5) 集計結果の処理と分析はどのようにすればよいですか

集計結果の数値

児童生徒の評価結

果と分析

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○教員の自己評価の評価結果の例 教員の自己評価の

結果と分析 教員の自己評価結果については,項目ごとにその人数の

平均の割合を出す。 〈集計例2〉

学校全体の結果(%)

A B C D

1 20 65 10 5

2 10 20 50 20

3 15 30 35 20

4 … … … …

※ A「はい」 B「どちらかといえばは

い」 C「どちらかといえばいいえ」

D「いいえ」

教員の評価結果については,児童の評価結果と比べてみる

ことで分析します。 児童生徒による評価結果

高い 低い

高い

ほぼ良いと判断できる

教員は良いと判断しているが,児童生徒は良いと判断していない →その原因の検討

教員の評価結果

低い

児童生徒は良いと判断しているが教員は良いと判断していない →その原因の検討

問題点である →その原因の検討と改善策の検討

○教員個人の評価結果の例 教員個人に対しては,上記のデータの中から,その教員の

児童の評価結果と自己評価について知らせることができます。 〈集計例3〉

※ A「はい」 B「どちらかといえば

はい」 C「どちらかといえばいいえ」

D「いいえ」

個々の評価結果のデータについては,各自が分析すること

になります。児童生徒の評価の高いところは,自分の長所で

あり,自信をもって取り組むところです。 評価の低いところは改善すべき点です。また,自分の評価

結果と児童生徒の評価結果が違うところがあれば,その原因

についても検討する必要があります。 評価結果のデータについては,セキュリティーの問題もあ

るので,学校評価委員会は,データ管理についても十分検討

し,責任をもって管理する必要があります。

U先生

児童の評価(%)自己評価

1 40-40-10-0 B

2 10-20-40-30 A

3 20-30-30-20 B

4 ・・・・ …

教員個人の評価結

果と分析

データの管理

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48

改善すべき項目とは,重点目標が達成されなかったもの,

評価結果が低いものです。また,児童生徒と教員の結果が著

しく違うものなども対象となります。 学校評価委員会では,総括的な授業評価の結果の分析を受

けて,改善すべき項目について改善策を検討しなければなり

ません。分析の結果により,どの担当分掌部で改善策を検討

するのが適切なのか決定し,依頼します。

学校評価委員会及び担当分掌部では,次のような流れで改

善策を決定します。

分析の結果 改善策の検討 同じ項目において多数の教員が低い評価

を受けた場合 学校全体として,担当分掌部

がその原因と改善策を検討 同じ項目において特定の学年,特定の教

科の教員が低い評価を受けた場合 その学年や教科ごとに,改善

策を検討 学校全体,あるいは学年や

教科で低い評価を受けた項

目と同じ場合

学校全体,あるいは学年や教

科で立てられた改善策を実

同 じ 項 目

において,

教 員 に よ

っ て 評 価

結 果 が 異

なる場合

学校全体,あるいは学年や

教科で低い評価を受けた項

目と違う場合

個人で改善策を検討

(6) 改善策はどのように検討すればよいですか

分析の結果と改善

策の検討

改善策の決定まで

の流れ

評価結果の分析,担当分掌部に改善策の検討を依頼

担当分掌部で,問題点の原因とその改善策を検討,学校評価委員会に報告

立案された改善策について検討

具体的で実現可能な改善策である

改善策が不

十分である

改善策の決定

担当分掌部で

再検討

検討・修正

学校評価委員会 担当分掌部

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改善策を検討する視点として,次のようなことが考えられ

ます。 ①重点目標の評価結果から改善策を検討 ○「授業満足度」が目標値を超えなかった場合 重点目標や手だての項目を中心に評価の低い原因,改善に

向けての検討内容及び検討の場について,学校評価委員会

で検討 ○「授業満足度」が目標値を超えた場合 重点目標や手だての継続となるが,さらに必要な手だてが

あるかどうか検討 ②授業全般に対する評価結果の中に改善の必要な項目がある

場合 評価の低い項目を中心に,新しい重点目標や手だてとして

取り上げるかを検討 「授業満足度」が目標値を超えなかった場合

目標値を超えなかった原因

手だてが実践されていない

手だてが実践されているが,評価結果が低い

今年度の重点目標達成のための手だてとは違う領域,観点に問題点がある

評価が低い原因の検討

・手だてが実践できない原因を授業の様子等から検討

・評価が低い原因を自由記述欄や授業の様子から検討

・評価結果と自由記述欄,授業の様子等から検討

改善に向けての検討内容

・手だてが実践されるための方法を検討

・手だてそのものの変更を検討

→変更する場合は,別の手だてを立案

・手だてそのものの変更を検討

→変更する場合は,別の手だてを立案

・新たな重点目標やその手だてを追加するかどうかの検討

→追加する場合は具体的な内容を検討

「授業満足度」が目標値を超えた場合 検討内容

・同じ手だてを継続していってよいかどうかの確認 ・さらに新たな手だてが必要かどうか検討 →必要な場合は,新たな手だての立案

授業全般に対する評価結果の中に改善すべき項目がある場合 検討内容

・本年度の新たな重点目標または手だてとして取り上げるかどうか,あるいは次年度に取り上げるかどうか検討

→取り上げる場合は,具体的な内容まで含めて立案

児童生徒と教員の評価結果によって,次のように考えられ

ます。 児童生徒の評価も教員の評価も低い場合

評価が低い原因について,自由記述欄や授業の様子から探り,改善策を検討

児童生徒の評価は高いが,教員の評価は低い場合

教員が低い評価をつけた理由から,改善策を検討(ただし,特に手だてを変えずに継続することも考えられる。)

児童生徒の評価は低いが,教員の評価が高い場合

児童生徒の評価が低い原因について,自由記述欄や授業の様子から探り,改善策を検討

重点目標の評価結

果から改善策を検

授業全般に対する

評価結果から改善

策を検討

児童生徒の評価結

果と教員の評価結

果から

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1 授業満足度の結果の例

質問項目 17「授業はおもしろかったですか」の児童の評価結果

A「はい」35% B「どちらかというとはい」40% C「どちらかというといいえ」20% D「いいえ」5%

2「おしえてアンケート」結果の例

3 結果のグラフの例(A「はい」35% B「どちらかというとはい」40%を足した数値をグラフに表したもの)

50

児童生徒の結果(%) 教員の結果(%) 評 価 項 目

A B C D A B C D 1 何を勉強したのか,よく分かる授業が多かった。 40 40 15 5 20 65 10 5

2 先生の説明はていねいで分かりやすかった。 15 20 35 30 10 20 50 20

3 先生が勉強のために用意したものは,学習内容を理解するのに役立った。 25 25 25 25 15 30 35 20

4 先生はたくさんの人が発表できるように工夫していた。 40 40 15 5 30 20 40 10

5 自分の意見や考えを発表しやすい雰囲気だった。 15 25 40 20 20 30 40 10

6 先生の話し方ははっきりしていて聞きやすかった。 10 25 45 30 20 10 60 10

7 先生が黒板に書いたことは見やすかった。 25 45 20 10 20 40 30 10

8 先生が黒板に書いたことは,学習内容を理解するのに役立った。 35 35 25 5 30 45 10 5

9 考えたり活動したりする時間がきちんとあった。 20 40 30 10 20 40 30 10

10 先生は私たちの考えや意見をよく聞いてくれた。 30 30 30 10 15 50 30 5

11 先生は分からないところやむずかしいところをきちんと説明してくれた。 30 50 15 5 10 40 40 10

12 みんなの様子を見まわりながら,教えてくれた。 40 50 10 0 50 30 15 5

13 先生は勉強の始まる時間や終わる時間を守っていた。 10 30 30 20 10 70 10 10

14 先生はいっしょうけんめい勉強を教えてくれた。 35 50 10 5 40 40 20 0

15 宿題はちょうどよかった。 20 45 10 15 40 30 20 10

16 教室内は整理整とんされ,勉強しやすかった。 10 20 50 20 5 25 30 40

17 授業はおもしろかった 35 40 20 5 30 40 20 10

18 学校の勉強は分かった。 30 45 15 10 30 40 25 5

19 授業中進んで発表することができた。 15 25 50 10 20 20 40 20

20 私は,勉強にいっしょうけんめい取り組んだ。 45 35 15 5 30 40 15 15

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

質問1

質問2

質問3

質問4

質問5

質問6

質問7

質問8

質問9

質問10

質問11

質問12

質問13

質問14

質問15

質問16

質問17

質問18

質問19

質問20

児童

教員

(7) 改善策の具体例(小学校)

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4 結果の分析と改善策検討に向けて

(1)重点目標の評価結果から

目標値 80%に対して評価結果 75%だったので,目標は達成されなかったことになる。そこで,ま

ず,目標値を超えられなかった原因について,今年度の重点目標や手だてに関する項目を中心に評

価の低い原因,改善に向けての検討内容及び検討の場について,学校評価委員会で検討する。

○分析の例

①評価項目2「先生の説明はていねいで分かりやすかった」の評価が児童,教員ともに低い。算

数の授業を中心に,説明の計画書を作成したり,説明用の資料を用意したりして,分かりやす

い説明ができるような手だては実施されていると思われる。ただ,評価項目の6「先生の話し

方ははっきりしていて聞きやすかった」の評価結果が低いことから,話し方や声の大きさなど

授業の技術的なことに問題点があると考えられる。これについて,研究部で検討することとす

る。

②評価項目4「先生はたくさんの人が発表できるように工夫していた」については,児童の評価

は高いものの,教員の評価が低い。また,評価項目5「自分の意見や考えを発表しやすい雰囲

気だった」,評価項目 19「授業中進んで発表することができた」については,児童,教員とも評

価が低い。特に,評価項目5においては,高学年になるにつれ,評価結果が低くなる傾向が見

られた。また,自由記述欄にも,友達の目が気になって発表しにくいという意見が見られた。

これについて,研究部で検討することとする。

(2)授業全般に関する評価結果から

○分析の例

①評価項目 11「先生は分からないところやむずかしいところをきちんと説明してくれた」につい

ては,児童の評価は高いが,教員の評価がやや低い。教員の自由記述欄には,「分かりやすいよ

うにと心がけているが,まだまだ工夫の余地がある」という記述がみられた。教員の努力につ

いて児童は認めているので,さらに分かりやすい授業が展開できるよう今後も努力するという

ことで,この項目については,このまま同じ手だてを継続していくこととする。

②評価項目 13「先生は勉強の始まる時間や終わる時間を守っていた」については,教員の評価に

比べて児童の評価が低い。これは,教員は時間を守ろうと努力していたつもりであったが,児

童から見ると不十分ということである。これについて,研究部で検討することとする。

③評価項目 16「教室内は整理整とんされ,勉強しやすかった」については,児童,教員共に低い結

果であった。これについて,研究部で検討することとする。

5 具体的な改善策

○改善策の例

(1)手だて2に,「話す声の大きさに気をつけ,はっきりとした話し方で話す」という項目を加え

る。さらに,日常的な授業評価の中にこの項目を加えることで,教員の意識を高めていく。

(2)手だて3の②のマナーに指導については,話し方のマナーに重点が置かれていたので,聞き方

に重点を置いた指導をする。学年に応じた友達の話を聞くときの約束をきちんと決め,指導す

ることとする。ただし,高学年においては,発達段階によるしゅう恥心もあるので,発表を強

制することにならないよう配慮する。さらに,日常的な授業評価の評価項目に,話の聞き方に

ついての自己評価の項目加え,児童の意識を高めていく。

(3)「時間の遵守」と「教室の整理整とん」については,新たな手だてとしては取り上げず,今後

心がける課題と押さえる。ただし,次回の総括的な授業評価においても,低い評価であった場

合は,次年度の授業改善のための手だての一つとすることも考えられる。

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学校評価委員会は,総括的な授業評価について結果を報告

しなければなりません。そのために,総括的な授業評価結果

報告書を作成します。 総括的な授業評価結果の報告書の内容は,評価の結果,結

果を分析しての成果や問題点,問題点に対しての具体的な改

善策になります。 結果については,そのまま実数で出す方法,割合で出す方

法,点数化する方法,グラフ化する方法等,いろいろありま

すが,校種や学校規模,評価項目数等により,分かりやすい

方法を検討します。 結果の分析や具体的な改善策については,分かりにくい教

育用語はできるだけ避け,具体的に表現します。 なお,自由記述欄に書かれたことについても掲載できます

が,何もかも載せると情報量が多すぎて,読みきれないこと

もあります。 できるだけ,簡潔で分かりやすい報告書を心がけましょう。

(資料(6)授業評価各シート例等参照)

公表先は,教職員,児童生徒,保護者,学校評議員等が考

えられます。また,方法としては,総括的な授業評価結果報

告書を配布する,回覧する,ウェブサイトに載せる等が考え

られます。 マイスクールプランの公表先や公表方法に準じ,学校の実

態に合わせて決定します。 重点目標の評価結果や新しく決定した改善策など,重要な

ものについては一部,マイスクールプラン評価の目標達成報

告書に掲載されます。また,次年度のマイスクールプランに

も同様に掲載されます。

(8) 評価結果はどのように公表すればよいですか

総括的な授業評価

結果報告書の作成

とその内容

結果の表し方

公表先とその方法

マイスクールプラ

ンへの掲載

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(9) 次年度の重点目標と手だてはどう決めればよいですか

次年度の重点目標や手だてについては,次年度の学校教育

目標や学校ビジョン等を受け,学校評価の結果や授業評価の

結果からも検討され,決定されます。総括的な授業評価の結

果も,その材料の一つとなります。

総括的な授業評価

と次年度の重点目

また,「学校評価の結果から,生徒指導に力を入れることに

なったので,授業についてもその視点からの重点目標を入れ

たい」「研究指定校になったので,研究テーマに沿った重点目

標が欲しい」など,学校や児童生徒の実態から,新しい視点

で重点目標が検討されることもあります(第2章§1(3),§

5(1)参照)。

授業満足度については,本年度の目標値とその評価結果を

比べ,そこから適切な数値を決定します。 授業満足度の目標

値の設定

本年度に目標値を達成している場合は,同じ数値かそれ以

上の数値が目標値となるでしょう。達成しなかった場合は,

同じ数値かそれ以下の数値を設定することになります。いろ

いろな視点から検討しなければなりませんが,実態とかけ離

れた数値にならないように気をつけましょう(第1章§2(4)

参照)。

総括的な授業評価から検討する場合,まず,本年度の重点

目標の中で評価が低かったもの,次に,授業全般を評価した

項目の中で評価が低かったものが対象となります。

総括的な授業評価

の結果から重点目

標を検討する場合

本年度の評価は低かったものの,必要性,重要性,緊急性

の視点から考え,その項目を重点目標として取り上げること

ができないということも考えられます。 担当分掌部が中心となって検討し,学校評価委員会に提出

します。学校評価委員会では,その内容について,再度検討

し,マイスクールプランに掲載される重点目標が決定します

(第1章§2(2),第2章§5(1)参照)。 校

長が、次年度の学校ビジョン

を提示

学校評価委員会において、重点

目標および手だての決定

担当分掌部において、重点目標

および手だての立案

学校評価委員会において、来年

度の学校改善努力点の決定

学校評価委員会において、マイ

スクールプラン評価結果の分析

学校評価委員会において、総括

的な授業評価結果の分析

総括的な授業評価結果の報告

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§3 日常的な授業評価の実施

§3.1 児童生徒による授業評価の実施

54

児童生徒による授業評価においては,総括的な授業評価の

結果を受け学校,学年,教科等で具体化され,設定された授

業改善の手だてが有効に働いているかどうかについて,評価

していきます。 授業改善の手だてが有効であったかどうかは,その時間に

授業を受けた児童生徒からの評価より検証することが一番で

す。同時に授業者の自己評価も行い,児童生徒の評価の結果

と比較することから,手だての有効性と共に,新たな問題点

も発見されることになります。 新しい単元や題材に取り組む前に,授業改善に向けての手

だてを重点的に行う時間を設定し,この時間に絞って授業評

価を行います。児童生徒はもちろん,授業者にとっても負担

にならないようにします。授業終了後すぐに,さらに単元終

了後にも行います。

(1) 児童生徒による授業評価はどのようにすればよいですか

評価の内容

評価者

評価の時期と場

授業改善に向けての具体的な手だての設定 児童生徒による授

業評価の主な流れ

授業評価計画の作成

指導計画の見直し

評価シートの作成

授業評価の実施

授業評価の集計と分析

授業評価結果の公表

改善策の検討

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マイスクールプラン評価では,授業にかかわる評価が行わ

れます。その結果から,学校全体の授業の課題を把握します。 総括的な授業評価では,授業について多面的・多角的に評

価を行うので,授業の問題点が明確に出てきます。全校とし

て取り組んでいかなければならない問題点から,学校評価委

員会を中心にその問題点をどのように解決していくのか,改

善策を検討します。 授業改善の手だてを担当する教科や学年において,さらに

具体的に改善策を検討します。指導を行う児童生徒の実態や

教科の特性を考慮しながら,学年部,教科部ごとの具体的な

手だてを立てます。また,十分に共通理解を図ります。 授業者は,学年部または教科部で立てられた具体的な授業

改善の手だてとともに,総括的な授業評価の個人結果を受け,

自らの授業において改善を図らなくてはならない点がないか

どうか検討します。それが,学校全体としての課題とは違う

場合には,その改善点を自己目標にして取り組んでいかなけ

ればなりません。学年部,教科部で立てた具体的な手だて同

様,個人の課題を解決する具体的な手だてを立てます。 手だて設定の例(小学校,中学年部)

<マイスクールプラン評価から> ・授業満足度75%で目標80%達成できず <総括的な授業評価から> ・学習のめあてがよく分からなかった。 ・先生の説明がよく分からなかった。 ・発表の場が十分に与えられなかった。

学校として取り組む授業の課題

解決するための具体的な手だての設定

<学年部・中学年部> ①授業の導入時に,ノート,学習プリントに必ずめあてを記

入する。 ②授業者は,本時の学習のまとめの説明をする際,あらかじ

め説明予定プリントを準備する。 ③全員の発表が無理な場合には,同じ考えのものにネームカ

ードをはりつける活動をする。 ④座席表を利用し,発表の機会を均等に与える。

(2) 具体的な手だての設定はどのようにすればよいですか

マイスクールプラ

ン評価の結果から

総括的な授業評価

の結果から

学年・教科部での改

善策の検討

授業者個人の改善

策と手だての設定

手だて設定の例

(小学校・中学年部)

55

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(顔文字を利用した小学校 1年生の例)

授業終了後に授業評価シートに記入するので,児童生徒に

とって負担にならないような項目数にします。その時間に実

施した手だてを中心とした最低限の内容とします。 授業評価シートには記名,無記名の両方が考えられますが,

評価結果を見て,個別に対応できることや評価結果を継続し

て分析することによって,個に対応した授業展開ができるこ

とから考えると,記名式のほうが授業改善に生かされていく

と考えます。児童生徒の実態,学校の実態等により判断しま

す。 小学校 1 年生と高校 3 年生ではその発達段階に大きな開き

があり,評価能力も大きく違います。それぞれの実態に合っ

た表現方法を工夫し,できるだけ児童生徒の生の声が伝わる

ように工夫していきます。

(評価規準を載せた例) ①授業中の先生の説明について答えてください 4・・全体に分かりやすく,理解に役立った 3・・大体内容がつかめる説明であった 2・・説明が分かりにくいところがあった 1・・分かりにくく困った 時間的に限りはあるものの,自由記述欄を設けて,評定尺

度法では十分に回答できない内容を補っていきます。ただし,

全員に書かせるのではなく,自由意志での記述とすることが

必要です。

(3) 授業評価シートはどのように作成すればよいですか

評価項目数

記名,無記名につい

児童生徒の実態に

合った表現方法

きょうのさんすうのべんきょうについて,ききます。 ①先生のおはなしのしかたは わかりやすかったですか

(^o^) (^_^) (-_-) (>_<) とてもよい まあまあ あまりわからない わからなかった

自由記述欄の活用

56

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単元(題材)ごとに,指導計画を見直します。まず,単元

(題材)ごとの目標を確認し,授業改善の具体的な手だてを

とるために,指導計画を変更する必要がないかどうか検討し

ます。

・指導時数はよいか ・学習の評価方法はどうなっているか

・学習形態はこれでよいのか 指導計画の中で,授業改善の具体的な手だてをどこで行う

かを検討します。手だての内容によっては,すべての授業に

おいて実施されるもの,1 単位時間のみで実施されるものなどがありますが,どこでどの手だてを行うことがより効果的

なのか考えて,できるだけ重点を絞って設定することが必要

です。 手だてを行う場を決めたあと,授業評価を行うことが効果

的と考えられる場を設定し,指導計画の中に,授業評価計画

を組み入れていきます。その場合には,授業評価を行うこと

が児童生徒や授業者の負担にならないように,回数を考えな

がら,単元全体でバランスよく実施される工夫が必要です。

学 習 活 動 評 価 規 準 授業評価の視点 ○問題文を読み,立式する。 ○既習の除法との違いを話し合う。 ○何十÷何十(あまりなし)の計算の仕方を考える。

○考えを発表し合い、検討する。 ○わる数が何十のわり算も10のまとまりで考える

とこれまでのわり算と同じ方法でできることをま

とめる。 ○適用問題をする。

[考①]10を単位として,何十でわる計算(あまりなし)の仕方を考えている。 [表①]何十でわる計算(あまりなし)ができる。

<授業評価1> 手だて① 手だて② 授業評価シート1

○何十÷何十(あまりあり)の計算の仕方を考える。 ○商,積の用語について知る。

[知①]何十でわる計算(あまりあり)の仕方を理解している。 [表②]何十でわる計算(あまりあり)ができる。

○問題文を読み,題意をとらえて立式する。 ○87÷21の計算の仕方を考える。 ○自分が考えた計算の仕方を説明する。 ○2位数÷2位数の筆算の仕方をまとめる。 ○検算の仕方をまとめる ○自分の考えた計算の仕方を説明する。

[関①]2位数÷2位数の計算の仕方を考えようとしている。 [考②]除数が何十の場合の計算をもとにして,2位数÷2位数(仮商修正なし)の筆

算の仕方を考えている。

<授業評価2> 手だて① 手だて② 手だて③ 手だて④ 授業評価シート2

(4) 授業評価計画はどのように作成すればよいですか

指導計画の見直し

と改善

単元(題材)の中で

具体的な手だてを

行う場を設定する

授業評価計画の作

指導過程の中のどの部分で手だ

てをとるのか表記します 授業改善のどの手だてをこの時間

に評価するのか明記します

57

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58

授業評価については,授業終了後すぐに実施します。 その単位時間にとられた手だてや授業改善の意図を分かり

やすく説明することが必要です。あるいは,授業評価シート

に記載しておくことも考えられます。 集計は基本的に授業者が行います。できるだけ授業から時

間をおかずに,集計を行うことが大切です。自由記述欄に書

かれてあることで,できるものについては分類を行うと効果

的です。 授業者は,その時間にとられた具体的な手だてを自分の授

業者の自己評価と児童生徒の評価結果を合わせて分析します。

手だてが有効に働いたのか,そうでなかったのかを綿密に考

察することが授業改善につながっていきます。

児童生徒による授業評価結果 高い 低い

改善に有効に働い

ている手だて 授業者は有効と感じて

いるが,児童生徒が有効

と感じていない手だて

有効性について授

業者が実感できて

いない手だて

授業者も児童生徒も有

効ではないと感じた手

だて

児童生徒による授業評価の結果についても,できるだけ児

童生徒に公表していきます。公表の方法としては,学年・学

級だよりに掲載する方法や,学級の掲示板に結果をはり出す

方法,次回の授業において,結果を口頭で発表する方法など

があるので,実情に合わせて方法を選択していきます。

(5) 集計と分析,公表はどのようにすればよいですか

授業評価実施上の

留意点

集計の方法

分析

公表

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59

児童生徒も授業者も有効だと感じている手だてであるので,

授業改善の一定の成果をあげたことになります。しかし,1回の評価だけでは信頼性に欠ける面もあるので,単元(題材)

の中でそのまま継続して取り組み,成果を確実なものとする

とよいでしょう。 児童生徒は有効であると感じていますが,授業者はその有

効性に疑問をもっている手だてです。この手だてについては,

さらに単元(題材)の中で継続して取り組むこと,また,学

年部や教科部の他の教員にアドバイスをもらうことも必要で

す。 授業者は有効性に満足していますが,児童生徒はそれを感

じていない手だてです。この手だてをこのまま続けていくこ

とは,児童生徒との意識のずれを広げていくことになりかね

ません。したがって,今後の取組としては, ①児童生徒に具体的にどこが悪かったのか再調査を行う。 ②特に評価の低かった児童生徒に面談を行い,直接話を

聞く。 ③学年部,教科部の教員と話合いをもつ。 ④授業評価シートの設問の問題がなかったか検討する。 等の方策をとり,手だてを速やかに見直す必要があります。 授業者も児童生徒も手だての有効性を感じることができな

かったので,その手だて自体に問題があると考えられます。

今後の取組としては, ①授業者は授業の流れ全体を振り返り,授業展開に問題はな

かったか検討する。 ②授業評価計画に入っていなくても,同じ手だてをとる場面

で再度授業評価を実施し再度分析する。 ③学年部,教科部会を開き,手だてについて有効性が低かっ

たことを報告し,改善策を立てる。 等の方策をとり,手だてを速やかに見直します。 授業評価シートの自由記述欄や授業における観察等により,

授業の新たな問題点が明らかになってくることもあります。

できるものについては授業者自身ですぐに改善に取り組みま

す。組織として検討しなくてはならないものについては,記

録を保存し,学年部会,教科部会,さらには学校評価委員会

に報告します。

(6) 改善策はどのように検討すればよいですか

改善に有効に働い

ている手だて

有効性について授

業者が実感できて

いない手だて

授業者は有効であ

ると感じているが,

児童生徒は有効性

を感じていない手

だて

授業者も児童生徒

も有効ではないと

感じた手だて

新たな課題の発見

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60

単元(題材)の指導終了後,指導の反省をもとに指導計画

の見直しを行い,朱書きをします。同学年,同じ教科でも同

様の授業改善に取り組んだ結果をしっかりとまとめ、次年度

の指導計画に生かしていかなくてはなりません。 授業の内容と合わせ,授業評価計画が適切であったかどう

か検討します。評価項目は適切であったか,評価項目数はど

うであったか,授業評価シートの形式はどうであったかなど

次の指導に生かすことのできる検討を行います。 単元(題材)で使用した授業評価シート,反省(リフレク

ション)シート,評価結果,学習プリントなどを教師のポー

トフォリオとして作成しておきます。このポートフォリオは、

他の教員との情報交換や次年度の指導計画作成に生かすとと

もに,授業評価の記録からは児童生徒の変容を見ることも可

能です。 児童生徒による授業評価は,授業者個人で行うことも可能

です。しかし,できるだけ同学年,教科内で協力し合い,と

もに高め合いながら「わかる授業」を創りあげていかなくて

はなりません。教員の協働の意識こそ,授業改善を進めるの

です。

(7) さらなる授業改善を目指すにはどうすればよいですか

指導計画の見直し

授業評価計画の明

確化

授業評価記録の累

積(ポートフォリオ

の作成)

教員の協働意識

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単元名 「わり算のひっ算を考えよう」 目標 筆算形式による2~3位数を2位数でわる除法計算の仕方について理解し,それを適切に用いる能力を伸ばす <評価規準>

[関心・意欲・態度] [数学的な考え方] [表 現・処 理] [知 識・理 解]

除数が2位数の除法計算の仕方を,既習の除法計算の仕方をもとに進んで考えようとしている。 見積もりをもとに,仮商の立て方や修正の仕方について考える。 除数が2位数の除法計算を筆算で正確にできる。 除数が何十の除法計算の仕方を理解している。 除数が2位数の除法の筆算の仕方を理解している。

<授業改善の視点と内容> 前回の総括的な授業評価から,①「授業の中で教員が学習のめあてを明確に打ち出していない」②「教

員の説明が分かりにくい」③「児童の自力解決の時間が十分でない」④「児童が発表したいのに発表でき

ないことがあり,不満を感じている」⑤「児童がよく分からないまま授業が終わった時があった」という

視点から改善が必要があることが分かった。 そこで,本単元では,教員の分かりやすい説明や児童の意見や発表の取り上げ方に焦点を当てて指導し

ていくことにする。計算方法をまとめる際に,児童の発表に用いたもののほかに,あらかじめ計算方法を

分かりやすく図式化したものを活用する。さらに,説明の予定シートを準備してそれをもとに説明を行っ

ていく。意見や発表の取り上げ方の改善については,発表の時間の確保をすることと発表ができなかった

児童について,ネームプレートを同じ考えのところにはる活動を取り入れ,改善を図っていく。 番 号 内 容

手だて① 授業のめあてを授業の最初に必ず確認する。(ワークシートへの記入)

手だて② 分かりやすく説明ができるように,説明シートと説明用掲示物を用意する。

手だて③ 自力解決の時間を十分に確保する。(15分以上)

手だて④ 発表の時間の確保とネームプレートの活用

手だて⑤ 一番つまずきが予想される学習活動の時数を増やす。

小単元名 時 ねらい 学 習 活 動 評 価 規 準 授業評価の視点 1 ○何十でわる計算(あ

まりなし)の仕方を理

解し,その計算ができ

る。

○問題文を読み,立式する。 ○既習の除法との違いを話し合う。 ○何十÷何十(あまりなし)の計算の仕方を考える。

○考えを発表し合い,検討する。 ○わる数が何十のわり算も10のまとまりで考える

とこれまでのわり算と同じ方法でできることに気づ

きまとめる。 ○適用問題をする。

[考①]10を単位として,何十でわる計算(あまりなし)の仕方を

考えている。 [表①]何十でわる計算(あまりなし)ができる。

授業評価シート1

<授業評価1> 手だて①

何十でわ

る計算

2 ○何十でわる計算(あ

まりあり)の仕方を理

解し,その計算ができ

る。

○何十÷何十(あまりあり)の計算の仕方を考える。

○商,積の用語について知る。 [知①]何十でわる計算(あまりあり)の仕方を理解している。 [表②]何十でわる計算(あまりあり)ができる。

・ 2

○2位数÷2位数(仮

商修正なし)の筆算の

仕方を理解し,その計

算ができる。 ○わる数×商+あまり

=わられる数の関係を

理解し,除法の検算が

できる。

○問題文を読み,題意を捉えて立式する。 ○87÷21の計算の仕方を考える。 ○自分が考えた計算の仕方を説明する。 ○2位数÷2位数の筆算の仕方をまとめる。 ○検算の仕方をまとめる。 ○適用問題をする

[関①]2位数÷2位数の計算の仕方を考えようとしている。 [考②]除数が何十の場合の計算をもとにして,2位数÷2位数(仮

商修正なし)の筆算の仕方を考え

ている。

<授業評価2> 手だて① 手だて② 手だて③ 手だて④ 授業評価シート2

2けたの

数でわる

筆算

3 ○2位数÷2位数の筆

算で,過大商を立てた

ときの仮商修正の意味

とその仕方を理解す

○86÷23の筆算の仕方を考える。 ○見当をつけた商が大きすぎたときの計算の仕方を

考える。 ○過大商を立てた時の仮商修正の仕方をまとめる。

[表③]過大商を立てた時の仮商修正ができる。

(8) 授業改善例(小学校4年・算数「わり算のひっ算を考えよう」)

61

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授業評価シート例(4-3-2-1の4段階評価を行う)○の中の数字は手だての番号

授業評価シート1

る。 4 ○2位数÷2位数の筆

算で過小商を立てた時

の仮商修正の仕方を理

解する。

○78÷19の筆算の仕方を考える。 ○見当をつけた商が大きすぎたときの計算の仕方を

考える。 ○仮小商を立てた時の仮小修正の仕方をまとめる。

[表④]過小商を立てたときの仮商修正ができる。

5 ○除数を切り捨て切り

上げ両方による仮商修

正の仕方を比較し,自

分が考えやすい除数の

処理の仕方を考える。

○87÷25の筆算の仕方を考える。 ○考え(過大商と過小商のそれぞれの仮商修正の仕

方)を発表しあう。 ○自分が仮商を立てやすい除数の処理の仕方で,運

用問題をする。

[考③]過大商と過小商のそれぞれの仮商修正の仕方を比べている。

6 ○学習内容の理解を深

める。 ○自分が仮商を立てやすい除数の処理の仕方で,運

用問題をする。 [表⑤]過大商と過小商それぞれの場合の仮商修正ができる。

<授業評価3> 手だて①⑤ 授業評価シート3

7 ○3位数÷2位数=1

位数の筆算の仮商の立

て方を理解し,その計

算ができる。

○317÷32の筆算の仕方を考える。 ○考えを発表し合い,検討する。 ○3位数÷2位数=1位数の筆算の仮商の立て方

をまとめる。

[表⑥]3位数÷2位数=1位数の筆算ができる。

8 ○学習内容に習熟す

る。 ○2~3位数÷2位数=1位数の筆算をし,検算を

する。 ○文章題を読み,立式し,筆算する。

[表⑦]2~3位数÷2位数=1位数の筆算ができる。

・ 2

○3位数÷2位数=2

位数の筆算の仕方を理

解し,計算ができる。

○問題文を読み,立式する。 ○既習の除法との違いを話し合う。 ○345÷21の筆算の仕方を考える。 ○考えを発表しあい,検討する。 ○3位数÷2位数=2位数の筆算の仕方をまとめ

る。

[考④]既習の計算の仕方をもとに,筆算の仕方を考えている。 [知②]3 位数÷2位数=2位数の筆算の仕方を理解している。

<授業評価4> 手だて①③④ 授業評価シート4

2けたの

数でわる

筆算(2)

3 ○商に0が立つ場合

(商が何十)の簡便な

筆算の仕方を理解す

る。

○941÷23の筆算の仕方を考える。 ○考えを発表し合い,より簡単な筆算の仕方を検討

する。 ○商に0が立つ場合の簡単な筆算の仕方をまとめ

る。

[知③]商に0が立つ場合(商が何十)の簡便な筆算の仕方を理解し

ている。

1 ○除法について成り立

つ性質を理解する。 ○150÷50の考え方を出し合う。 ○10をもとにする考えと,5をもとにする考えについて理解する。 ○被除数,除数と商の関係についてまとめる。

[知④]除数や被乗除数に同じ数をかけてもわっても商は変わらない

ことを理解している。

<授業評価5> 手だて①② 授業評価シート5

わり算の

きまり

2 ○末尾に0のある数の

除法の簡便な計算の仕

方とあまりの求め方を

理解する。

○2700÷400の筆算の仕方を考える。 ○考えを発表し合い,あまりの正しい出し方につい

て検討する。 ○2700÷400の筆算の仕方をまとめる。

[表⑧]末尾に0のある数の除法の簡便な計算の仕方とあまりの求め

方を理解している。

1 ○学習内容の理解を確

認する。 ○学習内容の理解を深

め,

○様々なタイプの既習の筆算の問題を解いて,各自

の理解を確かめる。 ○様々な国の筆算について調べる。

[関②]外国のわり算の筆算との違いを見つけようとしている。

まとめ

2 ○学習内容の理解を深

める。 ○自分のめあてを決めて,これまで学習してきたわ

り算の筆算の問題に取り組む。 ○確かめのテストをする。

[関③]これまで学習したことをもとに自分から進んでわり算の筆算

の問題を解決しようとする。 [表⑨]2,3位数÷2位数の筆算の問題を解くことができる。

<授業評価6> 単元終了時 手だて①~⑤ 授業評価シート6

○今日の学習のねらいをわかってから学習を進めることができましたか。 ① ○みなさんの考えをまとめる時の先生の説明はわかりやすかったですか。 ② ○何十÷何十の計算は10のまとまりで考えるとできることがわかりましたか。 [自由記述欄]

62

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授業評価シート2

○今日の学習のねらいをわかってから学習を進めることができましたか。 ① ○みなさんの考えをまとめるときの先生の説明はわかりやすかったですか。 ②

○87÷21の計算方法を考える時間は十分にありましたか。 ③ ○先生はみんなに発表してもらおうと工夫していましたか。 ④ ○87÷21の計算方法を考えることができましたか。 [自由記述欄]

授業評価シート3

○今日の学習のねらいをわかってから学習を進めることができましたか。 ① ○この時間は前の時間の学習をさらにしっかりと覚えるための時間です。 この時間で78÷19や78÷15などの計算の仕方がわかり,計算方法になれ ることができましたか。 ⑤

[自由記述欄]

授業評価シート4

○今日の学習のねらいをわかってから学習を進めることができましたか。 ① ○345÷21のひっ算のやり方を時間内に考えることができましたか。 ③ ○先生はみんなに発表してもらおうと工夫していましたか。 ④

○345÷21のひっ算方法がわかりましたか。

[自由記述欄]

授業評価シート5

○今日の学習のねらいをわかってから学習を進めることができましたか。 ① ○わり算を10をもとにしたり,5をもとにしたりするという先生の説明はよく分 かりましたか。 ②

○わる数,わられる数に同じ数をかけてもわっても答えは変わらないことが分かりま したか。

[自由記述欄]

授業評価シート6 単元終了時の授業評価

○学習のねらいをわかってから学習を進めることができましたか。 ① ○先生の説明はわかりやすかったですか。 ② ○自分で問題を考えるときの時間は十分にありましたか。 ③

○発表をしたり,ネームプレートをはったりすることで,自分の考えを伝えること ができましたか。 ④

○わり算の筆算の方法を理解するために,学習時間を1時間ふやしましたが,それ により,じっくりと考えたり,計算したりできましたか。 ⑤ [自由記述欄]

63

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<授業評価の結果>(40人学級) ●手だて①の結果 (単位は人)

シート 評価 4 3 2 1 授業評価シート1 17 15 6 2

〃 2 19 19 2 0 〃 3 21 18 1 0 〃 4 23 16 1 0 〃 5 26 14 0 0 〃 6 31 9 0 0

手だて①については,6回の評価を重ねるにしたがって,4の評価が次第に上がってきており児童に定着しつ

つあることが分かる。 ●手だて②の結果 (単位は人)

シート 評価 4 3 2 1 授業評価シート1 5 19 14 2

〃 2 7 15 17 1 〃 6 14 15 11 0

手だて②については,最終的には,4の評価が上がっているものの,2の評価をしている児童の数にあまり変

動がなかった。 ●手だて③の結果 (単位は人)

シート 評価 4 3 2 1 授業評価シート2 10 15 6 9

〃 4 9 19 7 5 〃 6 13 18 5 4

手だて③については,満足している児童もいるものの,十分でないと感じている児童もまだ多い。また,授業

の中で先に問題を解決し終わった児童が何もすることがなく,何をしたらよいのか質問をする場面もあった。 ●手だて④の結果 (単位は人)

シート 評価 4 3 2 1 授業評価シート2 19 12 7 2

〃 4 23 15 2 0 〃 6 31 8 1 0

手だて④については,ネームプレートの活用により,発表までは行かないものの,自分の考えを黒板に表示す

ることができ,満足できる結果に至った。 ●手だて⑤の結果 (単位は人)

シート 評価 4 3 2 1 授業評価シート3 28 8 4 0

〃 6 31 6 3 0 手だて⑤については,ほとんどの児童にとって有効に働いたと考えられる。 <考察> 手だて②については,説明カードを活用したが,その内容がまだ不十分であったことが分かった。したがっ

て,今後もこの説明シートを改善していく必要がある。その方策として,説明シートができあがった時点で,

同学年の教員に点検をしてもらうこと,実際の説明をテープに記録して,説明シートと実際の話の内容を比較

することにした。さらに,説明カードの改善だけではなく,具体物,半具体物を活用した説明の仕方を工夫す

ることや,十分に理解できなかった児童に,さらに説明を行う場を設けることを行いたい。 また,同学年の教員同士で授業参観をしてアドバイスを行うなどの手だてを講じていかなくてはならない。

他の手だてについては,有効性が確認できているが,さらに次の単元で手だてを実施して,有効性の検証を行

っていく。

64

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§3.2 教員相互による授業評価の実施

65

基本的に校内の教員と専門的な立場の外部講師によって行

われます。校内の教員で行われるものの中には,全教員が参

加するもの,学年部で行うもの,教科部で行うもの,研究テ

ーマや目的に応じたものなど様々な形態が考えられるので,

学校の実態によって実施します。 外部講師としては,指導主事,大学の研究者,先進校の教

員等が考えられます。 児童生徒による授業評価同様,総括的な授業評価を受け,

学校全体で設定した改善の手だて,また,学年,教科でさら

に具体化された手だてが有効であったかどうかを中心に評価

を行います。 全教員,外部講師による授業評価の場合には,研究部や教

務部が中心となり,研究授業や公開授業を設定します。その

場合,できるだけ多くの教員が参加できるような日程を工夫

します。年度初めに,あらかじめ日程を組んでおき,計画的

に実施することが必要です。 学年部,教科部で行う場合には,空き時間を活用し,お互

いの授業を見合うことが可能です。 小学校においては,研究主任を中心とした研究推進委員会

や学校評価委員会,中学校・高等学校においては,教務部が

核となり計画を推進することが考えられます。 教員には様々な研修の機会がありますが,同じ学校の児童

生徒の実態や課題を共有し,一人一人の教員の経験や専門性

を生かし,協働の精神で児童生徒のさらなる成長を図れる機

会は校内研修です。この校内研修の中で,研究授業,教員相

互による授業評価,指導法の研究などが計画的,有機的に行

われることで,授業の改善が進んでいきます。

(1) 教員相互による授業評価はどのようにすればよいですか

評価者

評価の内容

評価の時期と場

中心となる組織

校内研修の活性化

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教員相互による授業評価の効果を高めるためにも,教員が

お互いに授業評価の目的をしっかりと共通理解しておくこと

が大切です。「評価」を受けるのではなく授業改善の手だての

有効性の検証を図ること,授業についてのアドバイスをもら

い授業技術にさらに磨きをかける機会であることを確認しま

す。 <小学校,および同じ教科の教員からの授業評価の効果> ・指導技術の向上 ・教科の専門性に応じた授業の在り方の検討など <違う教科の教員からの授業評価の効果> ・児童生徒の課題の共有化 ・他教科との関連性の深化 ・教科の枠を越えた指導技術の向上など

研究授業の年間実施計画を立案します。研究授業は本来全

教員が実施することが望ましいのですが,校種や学校規模に

より実施できる回数に限りがあります。その実態を考慮して

計画を立てる必要があります。しかし,全員が授業をするこ

とが難しくても,研究授業の前に模擬授業を行ったり,教科

ごと,学年部ごとに授業を見合ったりして,年に数回,他の

教員に自分の授業を参観してもらう機会を積極的に設ける姿

勢が必要です。 さらに,外部講師を招いた研究授業を年度当初に計画に入

れ,その準備を進めることも忘れてはなりません。

(2) 具体的にどのように進めればよいですか

教員相互による授

業評価の主な流れ

教員相互による授業評価の目的と方法の共通理解

研究授業の実施計画立案

学習指導案作成

事前検討会

研究授業

事後検討会(合評会)

評価シートの作成

改善策検討

目的と方法の共通

理解

研究授業の実施計

画案の立案

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授業を参観し評価する視点を明確にする,授業評価シート

を作成します。基本的には,本時の授業において設定された

手だてが児童生徒にとって有効に働いたかどうかを中心とし

ますが,総括的な授業評価の項目から数項目取り入れる,授

業者自身の改善項目を取り入れる,授業の重点項目を取り入

れるなど多様な方法がありますので,研究推進委員会等中心

になる組織と授業者で項目を十分に精選することが大切です。 授業者と同じ教科の教員用授業評価シートと,他の教科の

教員用授業評価シートを変え,評価項目を一部区別すること

も可能です。ただ,集計と分析が煩雑にならないよう注意し

ます。 教員用と同じ授業評価シートを使用することが一般的です

が,特に指導していただきたい点を詳しく評価する項目を設

けることも考えられます。 学校の実態に応じて決めますが,事後検討会(合評会)で

の話合いを深めるためには,記名式がよいと考えます。 授業評価シートは,学習指導案と同時に参観を予定してい

る教員に配布をします。参観者はその評価の視点をもとに,

学習指導案をあらかじめ検討します。

(3) 授業評価シートはどのように作成すればよいですか

授業評価シートの

項目

中学校・高等学校

外部講師

記名式

授業評価シートの

配布

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参観者は,学習指導案をもとに,あらかじめ渡された授業

評価シートを用いて評価をします。評価することだけに観点

を置くのではなく,これまでの研究授業同様,児童生徒の学

習の様子を十分に分析しながら評価を行うことが大切です。 参観者で役割を分担し,授業記録をとることが,事後検討

会を充実させることになります。授業記録としては,発問や

児童生徒の発言,反応等の記録,VTR,板書記録などがあ

ります。児童生徒を抽出し,授業での様子を記録することも

効果的です。 研究授業においても児童生徒による授業評価を行うことに

よって,教員による授業評価と比較することができます。ま

た,授業者による自己評価は必ず行い,他の評価と比較しま

す。 評価結果については,研究授業後に行われる事後検討会ま

でに集計しなくてはなりません。事後検討会まで時間が少な

い場合も多いですが,速やかに集計を行います。 公表は,基本的に事後検討会において,参加者を対象に行

います。その結果の扱いには十分注意するように共通理解を

します。 事後検討会の中で成果と課題の分析を行います。研究授業

の様子,授業評価の結果をもとに,授業改善の手だてが有効

であるかどうか,指導技術はどうであったか等について検討

を行います。評価者による違いがあれば,その部分を中心に

話合いを行います。参加者は,授業者の授業の改善を図るた

めに,討議することが,自身の授業改善につながることを強

く意識しながら話し合う姿勢が大切です。

(4) 研究授業や結果の集計や分析の留意点は何ですか

研究授業で行うこ

授業記録をとる

児童生徒の授業評

速やかな集計

公表

分析

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研究授業の事後検討会後,授業者ならびに他の教員は,そ

の話合いの結果を受け,授業改善の手だてを新しく設定しま

す。内容によっては,学校評価委員会,研究推進委員会,学

年部,教科部で話合いをもち,これからの授業改善への生か

し方を検討します。他の教員たちも,研究授業の成果を自ら

のものとしてとらえなくてはいけません。その手だてを,児

童生徒による授業評価の中で,さらに検証していきます。ま

た,研究授業を繰り返すことで,さらなる授業改善を進めて

いきます。

学校評価委員会 研究推進委員会

学年部 教科部

教員個人の授業改善 授業改善を学校全体の取組として充実させていくために,

より「わかる授業」の在り方や授業評価の在り方についての

研修会,専門家による研修会を企画し,研修をより深めてい

くことが必要です。 なお,平成 15 年度長期研修員A「児童生徒の学力の向上を

目指した校内研修の在り方-教員の実践的指導力を高めるた

めの「校内研修ガイドブック」の作成を通して-」を参照す

るとよいでしょう。

(5) 授業の改善はどのようにすればよいですか

手だての改善

研究授業の成果

研修の充実

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§3.3保護者,地域の人々,学校評議員による授業評価の実施

70

児童生徒の保護者,地域の人々,学校評議員です。「地域の

人々」をどのようにとらえるかについては,学校の実態によ

り決めます。(マイスクールプラン公表§2(2)参照)

保護者や地域の人々,学校評議員には,直接授業参観をし

て授業を評価してもらいます。授業参観,公開授業等の授業

評価をする場の設定を行います。学校公開週間やフリー参観

週間等がある場合には,授業評価を実施する授業を絞ること

が必要です。 直接授業を参観することで評価できることに観点を絞りま

す。その授業でとられている授業改善の手だてや学級全体の

雰囲気,学習環境,指導技術などを評価項目にします。総括

的な授業評価の評価項目の中から選択することも可能です。 保護者,地域の人々,学校評議員による授業評価の目的と

活用の共通理解(教職員)

評価計画立案(学校評価委員会)

計画の共通理解(教職員) 保護者等による授業評価の目的,内容,計画の周知

(学校評価委員会)

評価シートの作成 授業の資料の準備

授業評価実施 回 収 集計・分析(学校評価委員会) 公 表

保護者等による授業評価を実施する組織としては,学校評

価委員会が考えられますが,その他の既存の組織を活用する

ことも可能です。

(1) 保護者等による授業評価はどのようにすればよいですか

評価者

評価の時期と場

評価内容

保護者等による授

業評価の流れ

中心となる組織

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71

教職員は,保護者,地域の人々,学校評議員による授業評

価の趣旨を全員で正しく理解して,積極的に取り組んでいく

姿勢をもたなければなりません。校長はじめ学校評価委員会

は目的とその活用の仕方を十分に説明し,共通理解を図りま

す。 学校評価委員会は,保護者等による授業評価の実施計画を

作成します。直接授業を参観して評価を受けるので,参観授

業を設定します。できるだけ多くの人々に評価を受けること

ができる時期を設定することが望ましいです。 今までは保護者等が授業を参観する機会はあっても,それ

に対して評価を行うことはほとんどありませんでした。した

がって,評価者となる保護者等も,戸惑うことが多々あると

予想されます。学校がなぜ授業評価を行おうとしているのか

を丁寧に説明しなければなりません。学校が多くの人々の視

点で授業改善に取り組もうとしている姿勢を伝えることは,

学校への信頼を深めることになります。 また,授業改善へのアドバイスを出してもらい,より「わ

かる授業」へ改善していくということも伝えることが必要で

す。 <説明の場と方法>

保護者 地域の人々 学校評議員

学校だより 学年・学級だより 学校ホームページ PTA総会 地区懇談会 学校評議員会

PTA役員会 各学校行事等

(2) 具体的な評価計画はどのように立てればよいですか

趣旨とその活用の

仕方についての共

通理解

保護者等への趣旨

の説明

実施計画作成

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72

評価項目は,授業の重点目標にかかわる項目,児童生徒に

よる授業評価の項目と同じ内容の項目などがよいでしょう。

もちろん,参観した授業を見て評価できるものを選択します。

項目数は,1時間の中で評価が可能で,評価者に負担のかか

らない程度に抑えます。 また,学年や教科の枠を越え,全校共通の項目にして,全

校の授業の傾向を見るようにします。 授業評価シートは原則的に無記名としますが,記入者が保

護者なのか地域の人なのか学校評議員なのかを区別するため

に,チェックする項目を入れたり,記入者によりシートの色

を変えたりすることなどが必要です。さらに年代や性別など

記入者をチェックする項目を設け,傾向を見ることもよい方

法です。 さらに,評価をした授業の学級,教科名,時間などを記入

できる欄を設けます。 評価の文章は,専門用語を避け,平易な文章表現になるよ

うに心がけるとともに,親しみやすい印象を与えるような授

業評価シートになるよう工夫します。 また,自由記述欄を設け,低い評価を受けた評価項目につ

いての具体的な内容や,評価項目以外で気がついたことなど

を記入できるようにします。 ○○小学校 授業アンケート 第1回 ○月○日実施

《保護者用シート》 本日は,ご多用な中授業を参観していただきありがとうございま

す。私たち○○小学校教員一同は,より分かる授業を目指して,日々努

力しています。さらにもっとよい授業ができるよう,皆様方の率直なご

意見をいただきたいと思います。授業を実際ご覧いただき,下のアン

ケートにご記入ください。どうぞよろしくお願いいたします。 参観した授業 年 組 校時 教科名 4・満足,そう思う 3・やや満足,だいたいそう思う 2・やや不満,あまりそう思わない 1・不満,そうは思わない ① 説明の仕方や板書が分かりやすかった 4-3-2-1

② 子どもたちは学習に集中していた 4-3-2-1

③ 先生は熱意をもって,丁寧に教えていた 4-3-2-1

<自由記述>上の項目について,またはそれ以外でお気づきの

点がありましたらお書きください。

(3) 授業評価シートはどのように作成すればよいですか

評価項目を決める

評価シートの内容

授業評価シート例

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保護者等による授業評価の趣旨が徹底するまで,授業評価

を実施する前に保護者等に集まっていただき,趣旨と方法を

確認することが大切です。短時間で要領よく行うことが必要

です。 授業評価シートは,学校内で一番確実に保護者等に配布で

きる場所を検討し,設置します。さらに,筆記用具やバイン

ダー等も必要に応じて置きます。複数の授業を参観する人も

いますので,配布する授業評価シートは一人 1枚とは限りません。 また,回収場所も,配布場所同様確実に回収できる場所を

選択します。 授業者は参観授業で行われる授業の指導教科,題材等を示

し,学習過程や学習における授業改善の手だてなど,指導の

ポイントが分かるような資料を準備し,教室や廊下に置きま

す。保護者等は,それを見ることで,より効果的に授業評価

を行うことができます。 集計作業は,学校評価委員会で行います。総括的な授業評

価同様の手順をとります。(第2章§2(5)参照)

(4) 授業評価の実施時の留意点は何ですか

授業評価の趣旨と

方法の再確認

授業評価シートの

配布と回収

授業の資料の準備

○年○組 ○○科の授業 「(単元,題材名)」 指導者 ○○ ○○

児童の活動予定と授業の工夫について (略案でもよい) ・簡潔に ・図などを利用して ・どのような授業改善の手だてをとるの

か。 ・板書計画など ・学習形態など

授業者のその時間の授業改善の意図が伝わるように 分かりやすい文章で表現する。

授業の資料例

集計

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集計結果の処理の方法は,総括的な授業評価の方法に準じ

ます。学校全体の評価結果として出す方法,授業一つ一つに

ついて結果を出す方法があります。学校評価委員会で,どの

ような処理の仕方にするのか検討します。 総括的な授業評価と同じく,評価結果を分析します。学校

全体として評価が低い点について,原因は何なのか分析しな

くてはいけません。 授業ごとの評価結果の分析も行いますが,その授業の評価

を行った評価者の人数(母体数)により,差が出てくること

が考えられますので,その点を考慮していく必要があります。 自由記述の意見から参考になるもの,今後検討していかな

くてはならないもの,または全校にかかわるもの,教科にか

かわること,授業者個人にかかわることに類別を行います。 評価結果を受け,学校評価委員会を中心に改善策の検討を

行います。学校評価委員会で検討された改善策を,さらに学

年部,教科部ごとに検討を行います。さらに,個人の課題と

なったものについては,その改善に向けて真摯に取り組んで

いかなくてはなりません。授業評価を受けた結果について,

学校評議委員会やPTAの役員会などに報告したり,提案し

たりすることも大切です。 評価結果については,できるだけ速やかに公表します。結

果報告書の中では,評価結果を受けた学校側の改善策を述べ

ます。また,自由記述欄に書かれてあったことについて,回

答できることについても積極的に回答することも必要です。 公表の方法としては,結果報告書,ウェブサイト等が考え

られますが,さらに,PTA懇談会,地区懇談会,学校評議

員との話合いなどにおいて,直接結果やその改善策について

説明を行います。

(5) 集計,分析,改善策の検討はどのようにすればよいですか

集計結果の処理

評価結果の分析

自由記述欄の記述

から

改善策の検討

結果の公表