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第4回数学演習1
2 逆関数と逆三角関数
2.1 単調関数
教科書に従って単調関数の定義を与える。1
• 単調関数:
⋆ f(x):単調増加関数 ⇔ x1 < x2 ⇒ f(x1) ≦ f(x2)
⋆ f(x):単調減少関数 ⇔ x1 < x2 ⇒ f(x1) ≧ f(x2)
• 狭義単調関数:
⋆ f(x):狭義単調増加関数 ⇔ x1 < x2 ⇒ f(x1) < f(x2)
⋆ f(x)を狭義単調減少関数 ⇔ x1 < x2 ⇒ f(x1) > f(x2)
グラフでみると分りやすいだろう.以下の図 1は狭義単調増加関数の例,図 2は狭義単調減少関数の例.
6
-
f(x1) < f(x2)
x1
f(x1)
x2
f(x2)
O x
y
図 1
6
-
f(x1) > f(x2)
x2
f(x2)
x1
f(x1)
O x
y
図 2
2.2 逆関数
• f(x)が 1対 1:x1 ̸= x2 ⇒ f(x1) ̸= f(x2)である時をいう。すなわち,a に対し b = f(a) がただ 1 つ定まる。
• 逆関数:f(x) が狭義単調関数であるとき,f(x)は 1対 1である。したがって,b = f(a)のとき,逆に,bに対してaを決めることができる。この対応を,a = f−1(b) で表す。この対応を表す関数を f−1(·)と表し,f−1(·)の ·に独立変数の xをとり,値を従属変数の y を取って定めた関数 y = f−1(x) を f(x)
の逆関数という。(左図を参照) I
J
xa
b
y (元の x軸)y
b
aI
J
x (元の y軸)
y = f(x) y = f−1(x)
O O
1数列の項でも示したように,単調性の定義は定まっていない。この教科書で使用している「狭義単調増加(減少)」を,「単調増加(減少)」といい,「単調増加(減少)」を「広義単調増加(減少)」または「単調非減少(非増加)」という。
1
• 定義域と値域:
⋆ 定義域:f(x) を定義する区間 I
⋆ 値域:定義域の f(x)による値の集合 J
図 3 から分かるように,f(x)の定義域 I,値域 J は,逆関数 f−1(x)の定義域 J,値域 I となる。
定理 1. 次が成り立つ。
f−1(f(x)) = x x ∈ I かつ f(f−1(x)) = x x ∈ J
例 1. (1) f(x) = x2の定義域を [0,∞)とすると,値域は [0,∞)であり,逆関数は f−1(x) =√x
である。そして,定義域を [0,∞)で,値域は [0,∞)である。
(2) y = exの定義域は (−∞,∞)で値域は (0,∞)である。この逆関数は y = log xで (0,∞)が定義域で,は (−∞,∞)が値域である。
注意:上の例 1(1)において,f(x) = x2の定義域を (−∞,∞)とすると,狭義単調関数になっていないので,逆関数は取れない。
例題 1. y =x− 1
x+ 2の逆関数をもとめよ。また,逆関数の定義域および値域を求めよ。
(解)与えられた関数の定義域は (−∞,−2) ∪ (−2,∞),値域は (−∞, 1) ∪ (1,∞)である。また
y′ =
(x− 1
x+ 2
)′=
(1− 3
x+ 2
)′=
3
(x+ 2)2> 0 (x ̸= −2)
であるから,狭義単調増加関数である。したがって,x ∈ (−∞,−2) ∪ (−2,∞)で逆関数を持つ。
y =x− 1
x+ 2を xについて解くと,
y = 1− 3
x+ 2⇒ 3
x+ 2= 1− y ⇒ x+ 2
3=
1
1− y∴ x = −2 + 3
1− y
したがって,求める逆関数は,変数 xと yの役割を変えて
y = −2 + 3
1− x
(=
1 + 2x
1− x←ここまで出さなくても○
)で,その定義域は (−∞, 1) ∪ (1,∞)で値域は (−∞,−2) ∪ (−2,∞)である。
−21
O 1
y =x− 1
x+ 2
2
2.2.1 逆三角関数
• sin x の逆関数:sinxの定義域を [−π/2, π/2]に制限すると,狭義単調増加関数になり,この区間で,逆関数を定義することができる。その逆関数を y = sin−1 xで表し,アークサイン xという。y = sin−1 xの定義域は [−1, 1]で,値域は [−π/2, π/2]である。また,値域 [−π/2, π/2]を,sin−1 x
の主値という。
• cos x の逆関数:cosxの定義域を [0, π]に制限すると,狭義単調増加関数になり,この区間で,逆関数を定義することができる。その逆関数を y = cos−1 xで表し,アークコサイン xという。y = cos−1 xの定義域は [−1, 1]で,値域は [0, π] である。また,値域 [0, π]を,cos−1 xの主値という。
• tan x の逆関数:tanxの定義域を (−π/2, π/2)に制限すると,狭義単調増加関数になり,この区間で,逆関数を定義することができる。その逆関数を y = tan−1 xで表し,アークタンジェントxという。y = tan−1 x の定義域は (−∞,∞)で,値域は (−π/2, π/2) である。また,値域 (−π/2, π/2)を,tan−1 xの主値という。
3
例題 2. 次の値を求めよ。
(1) sin−1(−1
2
)(2) cos−1
(12
)(3) tan−1
(− 1√
3
)(解)(1) −π
6(2)
π
3(3) −π
6
注意 1:sin−1 x,cos−1 x,tan−1 x は値域は
−π
2≦ sin−1 x ≦ π
2, 0 ≦ cos−1 x ≦ π, −π
2< tan−1 x <
π
2
である。したがって
注意 2:sin−1(−1/2)の値と sinx = −1/2を満たす xとは似ているが違う。sinx = −1/2を満たす xは
−π/6 + 2nπ, − 5π/6 + 2nπ (n = 0,±1, ± 2, · · · )
である。
例題 3. 次の方程式を満たす xを求めよ.ただし,αは (0 < α < 1)なる定数である.
(1) cos−1 x = sin−1 α (2) sin−1 x = cos−1 3
5
(3) cos−1 x = tan−1√2 (4) cos−1 x = sin−1 1
3+ sin−1 4
5
(解)(1) 0 < α < 1より 0 < sin−1 α <π
2である.cos−1 x = sin−1 αより x > 0.したがって,
x = cos(sin−1 α) =
√1− {sin(sin−1 α)}2 =
√1− α2
(2) 0 < cos−1 3
5<
π
2より,0 < sin−1 x <
π
2∴ x > 0.したがって,
x = sin
(cos−1 3
5
)=
√1−
{cos
{cos−1
3
5
)}2
=
√1− 9
25=
4
5
(3) 0 < tan−1√2 <
π
2より cos(tan−1
√2) > 0である.
tan2 θ + 1 =1
cos2 θ
より
x = cos(tan−1√2) =
1√1 + {tan(tan−1
√2)}2
=1√3
(4) 右辺は正であるから,cos−1 x > 0 ∴ 0 < x < 1である.
x = cos
(sin−1 1
3+ sin−1 4
5
)
= cos
(sin−1 1
3
)cos
(sin−1 4
5
)− sin
(sin−1 1
3
)sin
(sin−1 4
5
)(1) より=
√1−
(1
3
)2√
1−(4
5
)2
− 1
3· 45=
6√2− 4
15
4
例題 4. 次の等式を示せ。sin−1 x+ cos−1 x =
π
2
(解)sin−1 x = α,cos−1 x = β と置くと,
sinα = x (−π/2 ≦ α ≦ π/2) (1)
cosβ = x (0 ≦ β ≦ π) (2)
である。一方 sin(π/2− β) = cosβ と (1)(2)より
sin(π/2− β) = sinα (3)
である。−π/2 ≦ α ≦ π/2 かつ − π/2 ≦ π/2− β ≦ π/2
より,α+ β =
π
2
2.3 逆三角関数の微分(次回の予告)
v = f(u) が f ′(u) > 0 (f ′(u) < 0) ならば,狭義単調増加(狭義減少)関数である。したがって,点 P(u, v)の近傍で逆関数を持ち,u = f−1(v)である。今,u = y,v = xと置くと,
f(y) = x ⇐⇒ y = f−1(x)
f(y) = x の両辺を x で微分すると,合成関数の微分法よりdy
dx
dx
dy= 1となる。したがって
定理 2 (逆関数の微分). f ′(x) ̸= 0 のときその逆関数 y = f−1(x) が存在して
dy
dx=
1
dx
dy
定理 3 (逆三角関数の微分公式).
(sin−1 x)′ =1√
1− x2(−1 < x < 1) (4)
(cos−1 x)′ = − 1√1− x2
(−1 < x < 1) (5)
(tan−1 x)′ =1
1 + x2(−∞ < x <∞) (6)
(証明)y = sin−1 xとおく。このとき, x = sin y であり,−π
2< y <
π
2である。逆関数の微分の
公式より
d
dx(sin−1 x) =
1ddy sin y
=1
cos y=
1√1− sin2 y
=1√
1− x2(∵ − π
2< y <
π
2)
y = cos−1 x とおく。このとき x = cos y であり,0 < y < π である。逆関数の微分の公式より
d
dx(cos−1 x) =
1ddy cos y
=1
− sin y= − 1√
1− cos2 y= − 1√
1− x2(∵ 0 < y < π)
5
2.4 前回演習問題について
問 3について:A(0, 1, 1), B(−1,−1, 2), C(2, 3, 1)で作られた三角形 ABC の面積は√3である.次
の 3通りの方法の計算式を示せ.
(1) ∥−→AB∥ · ∥−→AC∥| sin θ| (2)
√∥−→AB2∥−→AC∥2 − (
−→AB,−→AC)2 (3)
−→AB,
−→ACの外積
問題の意図は:(1)は sin θの計算が必要,(2)は内積と各ベクトルの長さの計算,
(3)は−→AB×
−→AC = −2e1 + 2e2 + 2e3より,1
2∥−→AB×
−→AC∥ = 1
2
√(−2)2 + 22 + 22 =
√3
三角形の面積の計算はこの 3種類が考えられるが,「(3)の方法が最も計算が楽である」ことを実感して欲しかった.
問 5 a,b,cは 3次元数ベクトルとする.
(a× b)× c = (a, c)b− (b, c)a (7)
が成り立つことを示せ.
(解)(7)の左辺を成分であらわすと,
(a× b)× c =
a2b3 − a3b2
a3b1 − a1b3
a1b2 − a2b1
× c1
c2
c3
=
(a3b1 − a1b3)c3 − (a1b2 − a2b1)c2
(a1b2 − a2b1)c1 − (a2b3 − a3b2)c3
(a2b3 − a3b2)c2 − (a3b1 − a1b3)c1
=
(a2c2 + a3c3)b1 − (b2c2 + b3c3)a1
(a1c1 + a3c3)b2 − (b1c1 + b3c3)a2
(a1c1 + a1c1)b3 − (b1c1 + b2c2)a3
一方,(7)の右辺を成分であらわすと,
(a, c)b− (b, c)a =
(a1c1 + a2c2 + a3c3)b1 − (b1c1 + b2c2 + b3c3)a1
(a1c1 + a2c2 + a3c3)b2 − (b1c1 + b2c2 + b3c3)a2
(a1c1 + a2c2 + a3c3)b3 − (b1c1 + b2c2 + b3c3)a3
=
(a2c2 + a3c3)b1 − (b2c2 + b3c3)a1
(a1c1 + a3c3)b2 − (b1c1 + b3c3)a2
(a1c1 + a1c1)b3 − (b1c1 + b2c2)a3
よって等しい.
6
演習問題
ここで用いられる逆三角関数 sin−1 x,cos−1 x,tan−1 x は主値を表す.
問 1. 次の関数の逆関数および逆関数の定義域と値域を求めよ.
(i) y =x+ 2
x+ 1(ii) y = xn + 2 (x ≧ 0,n は正の整数)
問 2. 次の値を求めよ.
(1) sin−1(12
)(2) cos−1
(−1
2
)(3) tan−1(−1)
問 3. 次の方程式を解け.
(1) cos−1 x = sin−1 3
5(2) cos−1 x = tan−1
√5
(ヒント:(1)例題 3(2)の類似問題.(2) 例題 3(3)の類似問題)
問 4. sin(cos−1 x) =√1− x2を示せ.
問 5. (研究課題)問 3の (1)と cos−1 x = sin−1 2
3を解いて次の方程式を解け.
cos−1 x = sin−1 3
5+ sin−1 2
3
(例題 3(4)の類似問題:cos(α+ β) = cosα cosβ − sinα sinβを利用)
7