30
1 5社会的厚生関数と 不平等測度 パレート最適配分の順序づけ 社会的厚生関数 不平等測度

第5章社会的厚生関数と 不平等測度 - Waseda UniversityW(y f, y f,...,y f)=W(y) W(y) に対する仮定 個人所得の増加関数 y の対称的な準凹関数 セン測度s(y)=1-(y

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1

第5章 社会的厚生関数と不平等測度

パレート最適配分の順序づけ

社会的厚生関数

不平等測度

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2

1.社会的厚生関数

計画当局:資源配分を評価するための社会的厚生関数をもっている

社会:n人の個人,l個の財

j財の初期賦存量:ωj

個人iの消費量:xji

配分:x=(x1, x2,…, xn)

l

n

i

i

l

n

i

in

i

i xxx 1

2

1

21

1

1 ,..., ,

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3

効用関数 ui(x)

社会的厚生関数

W(x)≧W(y) ⇔ xはyより望ましいか

両者は無差別

効用関数を集計した社会的厚生関数

W(x)=W(u1(x),u2(x),…,un(x))

利己主義的効用関数

ui(x) =ui(xi)

パレート最適 比較不能な領域

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4

B

C

A

E

D

パレート最適性に基づく比較

u2

0 u1

u

u

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5

基数的な社会的厚生関数

仮定:個人間比較可能性

ベンサム型社会的厚生関数(古典的功利主義)

ロールズ型社会的厚生関数(マキシミン型)

ニーチェ型社会的厚生関数(マキシマックス型)

)()()()(11

yuuyWWn

i

in

i

iBB

xx

)}({min)}({min)()( yuuyWW i

i

i

i

RR xx

)}({max)}({max)()( yuuyWW i

i

i

i

NN xx

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6

C

E

ベンサム型社会的厚生関数に基づく比較

u2

0 u1

u

u

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7

E

ロールズ型社会的厚生関数に基づく比較

u2

0 u1

u

u

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8

A

E

ニーチェ型社会的厚生関数に基づく比較

u2

0 u1

u

u

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9

序数的な社会的厚生関数

バーグソン=サムエルソン型社会的厚生関数

W BS(x)≧W BS(y) ⇔ xはyより望ましいか

両者は無差別

パレート最適性内包的

W u x u x W u y u yBS n BS n( ( ),..., ( )) ( ( ),..., ( ))1 1

i u x u y W x W yi i BS BS: ( ) ( ) ( ) ( )

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10

E

バーグソン=サミュエルソン型社会的厚生関数に基づく比較

u2

0 u1

u

u

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11

2.所得分布の記述的不平等測度

範囲

所得の最高値と最低値との差

完備性をもった測度

間の領域にある所得状況を完全に無視

相対平均偏差

平均所得と各人の所得との差をとり,その絶対値の集計が総所得に占める比率

平均を上回る人々の間で所得移転があっても反応しない

E y yi i ( ) /Max Min

Mn

yi

i

n

1

1| |

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12

所得分布 y=(y1,y2,…,yn): 小さい順

平均μ= (y1+y2+…+yn)/n

ジニ係数 G(y)

|yi-yj|= (yi+yj)2 Min(yi,yj) より

Gn

y y

nn y y

ny y

i

j

n

i

n

j

i j

j

n

i

n

i j

j

n

i

n

( ) | |

( , )

( , )

y

RST

UVW

1

2

1

22 2

11

211

2

2

11

211

Min

Min

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13

Gn

y y

nn y y

ny y

nn y n y y y

nny y y y

n nny n y y

i

j

n

i

n

j

i j

j

n

i

n

i j

j

n

i

n

n n

n n

n

RST

UVW

1

2

1

22 2

11

11

2 1 2 3 3

11

2 2

11 2

1 2

211

2

2

11

211

2 1 2 1

2 1 1

2 1 2

| |

( , )

( , )

{( ) ( ) }

{ ( )}

{ ( )

Min

Min

1 yn}

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14

y1 y2 y3 … yn-1 yn

y1 y1 y1 y1 y1 y1

y2 y1 y2 y2 y2 y2

y3 y1 y2 y3 y3 y3

… … … … … …

yn-1 y1 y2 y3 yn-1 yn-1

yn y1 y2 y3 yn-1 yn

Min(yi,yj)

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15

ローレンツ曲線とジニ係数の関係

S: 絶対平等線とローレンツ曲線に囲まれた部分の面積

S=直角二等辺三角形の面積

ローレンツ曲線より下の部分の面積

k人が占める人口割合 k/n によって保有される所得割合は だから

y

n

i

i

k

1

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16

絶対均等線

1

01人口の%

所得の%

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17

Sn n

y y y

n ny y y y y y y y y

y y y y y

ny n y n y y y

i

i

k

i

i

k

k

n

n n n

n n

FHG

IKJ

RSTUVW

1

2

1

2

1 1

1

2

1

2

1 1

1

2

1

22 2 2 3 3

1

2

1

1 1

1

1

1

1 1 1 2 1 2 1 2 3

1 1 1 1

2 1 1 2 1

[ { ( )} {( ) ( )}

{( ) ( )}]

( ) ( )

l q

LNM

OQP

1

22 2

1

21

1 21 2

1

2

2 1

2 1 2 1

nny y y y

n nny n y y y

G

n n n

n n

{ ( )}

{ ( ) }

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18

ローレンツ部分順序

ローレンツ曲線 もっとも貧困な人からもっとも裕福な人に向かっての人口の%を横軸,所得の%を縦軸

完全平等は対角線

二項関係 l :厳密に内部に位置する x l z, y l z

x, yは比較不能(交差しているから)

ローレンツ弱優越関係 L x L y ⇔ x=y ∨ x l y

準順序(不完備)

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x

y

z

絶対均等線

1

01人口の%

所得の%

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20

L の役割

ジニ係数(完備)

g(x)= 絶対均等線と xのローレンツ曲線の囲む面積が,絶対均等線より下の三角形の面積に占める割合

x l y⇒ g(x)<g(y)

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21

3. 社会的厚生関数アプローチ

より不平等=社会的厚生が低い

個人主義的な社会的厚生関数

人々が所得から得る効用→社会的厚生

所得分布y=(y1,y2,…,yn)に対して

W(y)=F(u1(y1),u2(y2),…,un(yn))

ベンサム型社会的厚生関数

WB(y)=u1(y1)+u2(y2)+…+un(yn)

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22

ドールトン不平等測度d

d(y)=1-WB(y)/nu(μ)

μ:均等分配所得(平均所得)

均等分配等価所得ye

nu(ye)=WB(y)

アトキンソン不平等測度a

a(y)=1-(ye/μ)

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WB(y)=w

ye

y1

y2

ye

45°

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24

批判的注釈

ベンサム型社会的厚生関数の最大化

→均等分配

but,功利主義は平等主義的原理ではない

すべての個人が同一の効用関数(厳密な凹)をもつという仮定に依拠

どの所得水準でもAはBの2倍の効用を享受

→AにBより多くの所得を与える

ハンディキャップに無関心

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25

衡平性の弱公理

どの所得水準でも個人 iの効用は j の効用を下回るとする.総所得を n 人で分配するとき,最適所得分配は j より i に多くの所得を与えなければならない.

功利主義は衡平性の弱公理を満たさない

公平性に関わる社会的厚生判断の原理としては失格

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26

アトキンソン測度の問題点

ui(yi): 厳密な凹性→凹性

たとえば,線形の効用関数をとる

そのとき,(0,10),(5,5),(10,0)は同じ不平等度

→通常の感覚とは異なる

加法的分離性の仮説

→相対的窮乏の考え方を排除

=個人の効用が他の個人の効用や所得の関数となることを排除

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27

センの不平等測度

一般化された均等分配等価所得 yf

W(yf, yf,...,yf)=W(y)

W(y) に対する仮定

個人所得の増加関数

yの対称的な準凹関数

セン測度 s(y)=1-(yf/μ)

μ≧yf

WB(y)=W(y) ⇒ a(y)=s(y)

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28

セン測度のメリット

価値判断の明示化

社会的厚生関数の選択に関して大きな自由度を与えている(その選択に依存)

価値判断形成プロセスは? アローの定理(独裁者の決定)

パレート拡張ルール(準推移性)

情報的基礎の拡張 序数的効用←→基数的効用

個人間比較可能性

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29

規範的不平等測度の特徴づけ

アトキンソンの定理

xのローレンツ曲線は yのローレンツ曲線の厳密に内側に位置し,総所得は等しいとき,効用関数が厳密な凹関数である限り,WB(x) > WB(y)

効用関数が厳密な凹関数である限り,WB(x) > WB(y)

ならば,x l y

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30

アトキンソン定理の頑強性

加法的分離可能性が欠如する場合

総所得・平均所得・人口が異なる場合

→一般化

ダスグプタ=セン=スターレットの定理

社会的厚生関数 W(y) は y の対称,厳密な準凹関数のとき,総所得が等しい x,yに対して

x l yならば,W(x) > W(y)

¬ x l yならば,∃W(・):W (x) ≦ W(y)