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第69回済生会学会・平成28年度済生会総会 済生会の伝統継承と未来への挑戦 −新しい医療と福祉の構築に向けて− 一般演題(ポスター) 会場:301-304 3F Nゾーン 時間:11:20~12:09 医師③ P37-6 Hamman症候群を合併した糖尿 病性ケトアシドーシスの一例 なみき 木百 合愛、佐々木浩人、高野 裕也、高嶺  光、 稲積 孝治、長田  潤 済生会横浜市南部病院 糖尿病内分泌内科 Hamman症候群を伴い発症した糖尿病性ケトアシドーシ スの一例を経験したので報告する。 【症例】40歳、女性 【主訴】意識障害、呼吸困難、嘔吐 【既往歴】糖尿病、バセドウ病(寛解) 【家族歴】特になし 【現病歴】患者は20歳時より糖尿病に対して強化インス リン療法を施行されていた。2007年時点では、C-peptide 2.06 ng/ml (血糖値211 mg/dl) とインスリン分泌は保た れていた。2016年8月13、14日に時効型インスリンの投 与を忘れ、翌日から激しい嘔吐が出現した。その後、意 識障害と呼吸困難をきたし、8月15日当院へ救急搬送さ れ た。 血 糖 値889 mg/dl、pH 6.956、pCO2 13.7 mHg、 HCO3 3.1 mmol/l、血中総ケトン体12284 μmol/l、尿中 ケトン体3+であり、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA) と診断し、入院の上、持続インスリン静注を施行した。 入院時のCTにて皮下気腫、縦隔気腫、右肺尖部の軽度 の気胸を認めた。その後施行した上部消化管内視鏡検査 と食道造影検査にて食道破裂を認めず、また外傷や肺気 腫、間質性肺炎、嚢胞性肺疾患など縦隔気腫を来たしう る器質的疾患を認めなかったことから、DKAにより縦 隔気腫をきたすHamman症候群と診断した。膵島関連抗 体は抗GAD抗体659.6 U/mlと高力価であり、内因性イン スリン分泌能はC-peptide検出感度以下とインスリン依 存状態であった。以上より、緩徐進行1型糖尿病と考え られた。アシドーシスの改善に伴い呼吸困難は消失し、 第8病日に施行した胸部CT検査にて縦隔気腫は縮小を認 めた。強化インスリン療法を継続のまま、2016年8月27 (第13病日) に退院とした。 【考察】DKAに合併する縦隔気腫は1937年にHamman症 候群として初めて報告されている。本症例は20年来の緩 徐進行1型糖尿病で、インスリン依存状態に至っていた と考えられる。インスリンスキップがDKAの直接的な 発症要因となったが、強いアシドーシスがHamman症候 群を引き起こしたと考えられた。 医師③ P37-5 肺癌が疑われたが経過観察により 縮小した症例の検討 みやざわ 沢 直 なおき 幹、室橋 光太、井上 美代、都丸 公二 済生会横浜市南部病院 呼吸器内科 【目的】CTで肺癌が疑われるが気管支鏡検査で診断でき なかった場合や気管支鏡検査自体が困難な場合、胸腔鏡 下肺生検などの侵襲的検査を行うか否かの判断に難渋す ることが多い。経過観察により縮小した症例を集積し、 その特徴を検討した。 【方法】2014年4月より2016年3月まで、胸部異常陰影の ため当科を受診し、孤立性肺病変があり肺癌が疑われた が、経過観察により消失または縮小した症例につき検討 した。 【結果】対象患者は12名(男7名、女5名)で平均年齢70.6 歳(48~88歳)、孤立性肺病変の平均長径は19.9mm(10 ~30mm)であった。そのうち3例で気管支鏡検査が、2 例でPETが行われていた。気管支鏡検査では全例悪性所 見は得られず、PETが行われた2例のSUVmaxは2.5未満 であった。陰影の特徴としては不整形であったり、孤立 性陰影以外にも陰影が認められる症例が多かった。 【結論】陰影が不整形、または他の肺野に炎症性病変が 認められる場合には、経過観察も考慮されると考えられ た。

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第69回済生会学会・平成28年度済生会総会済生会の伝統継承と未来への挑戦 −新しい医療と福祉の構築に向けて−

一般演題(ポスター)

会場:301-304 3F Nゾーン時間:11:20~12:09

医師③

P37-6 Hamman症候群を合併した糖尿病性ケトアシドーシスの一例

並なみき

木百ゆ り あ

合愛、佐々木浩人、高野 裕也、高嶺  光、稲積 孝治、長田  潤

済生会横浜市南部病院 糖尿病内分泌内科

Hamman症候群を伴い発症した糖尿病性ケトアシドーシスの一例を経験したので報告する。

【症例】40歳、女性【主訴】意識障害、呼吸困難、嘔吐【既往歴】糖尿病、バセドウ病(寛解)【家族歴】特になし【現病歴】患者は20歳時より糖尿病に対して強化インスリン療法を施行されていた。2007年時点では、C-peptide 2.06 ng/ml (血糖値211 mg/dl) とインスリン分泌は保たれていた。2016年8月13、14日に時効型インスリンの投与を忘れ、翌日から激しい嘔吐が出現した。その後、意識障害と呼吸困難をきたし、8月15日当院へ救急搬送され た。 血 糖 値889 mg/dl、pH 6.956、pCO2 13.7 mHg、HCO3 3.1 mmol/l、血中総ケトン体12284 μmol/l、尿中ケトン体3+であり、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と診断し、入院の上、持続インスリン静注を施行した。入院時のCTにて皮下気腫、縦隔気腫、右肺尖部の軽度の気胸を認めた。その後施行した上部消化管内視鏡検査と食道造影検査にて食道破裂を認めず、また外傷や肺気腫、間質性肺炎、嚢胞性肺疾患など縦隔気腫を来たしうる器質的疾患を認めなかったことから、DKAにより縦隔気腫をきたすHamman症候群と診断した。膵島関連抗体は抗GAD抗体659.6 U/mlと高力価であり、内因性インスリン分泌能はC-peptide検出感度以下とインスリン依存状態であった。以上より、緩徐進行1型糖尿病と考えられた。アシドーシスの改善に伴い呼吸困難は消失し、第8病日に施行した胸部CT検査にて縦隔気腫は縮小を認めた。強化インスリン療法を継続のまま、2016年8月27日 (第13病日) に退院とした。

【考察】DKAに合併する縦隔気腫は1937年にHamman症候群として初めて報告されている。本症例は20年来の緩徐進行1型糖尿病で、インスリン依存状態に至っていたと考えられる。インスリンスキップがDKAの直接的な発症要因となったが、強いアシドーシスがHamman症候群を引き起こしたと考えられた。

医師③

P37-5 肺癌が疑われたが経過観察により縮小した症例の検討

宮みやざわ

沢 直なおき

幹、室橋 光太、井上 美代、都丸 公二

済生会横浜市南部病院 呼吸器内科

【目的】CTで肺癌が疑われるが気管支鏡検査で診断できなかった場合や気管支鏡検査自体が困難な場合、胸腔鏡下肺生検などの侵襲的検査を行うか否かの判断に難渋することが多い。経過観察により縮小した症例を集積し、その特徴を検討した。

【方法】2014年4月より2016年3月まで、胸部異常陰影のため当科を受診し、孤立性肺病変があり肺癌が疑われたが、経過観察により消失または縮小した症例につき検討した。

【結果】対象患者は12名(男7名、女5名)で平均年齢70.6歳(48~88歳)、孤立性肺病変の平均長径は19.9mm(10~30mm)であった。そのうち3例で気管支鏡検査が、2例でPETが行われていた。気管支鏡検査では全例悪性所見は得られず、PETが行われた2例のSUVmaxは2.5未満であった。陰影の特徴としては不整形であったり、孤立性陰影以外にも陰影が認められる症例が多かった。

【結論】陰影が不整形、または他の肺野に炎症性病変が認められる場合には、経過観察も考慮されると考えられた。