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第8章 凍結防止剤散布車

第8章 凍結防止剤散布車...-8・1- 第8章 凍結防止剤散布車 <8.1 性 能> 1.散布性能 規 格 乾式3t級 湿式3t級 乾式4t級 湿式4t級 湿潤式

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  • 第8章 凍結防止剤散布車

  • -8・1-

    第8章 凍結防止剤散布車

    <8.1 性 能>

    1.散布性能

    規 格 乾式3t級 湿式3t級 乾式4t級 湿式4t級 湿潤式

    4t級

    湿潤式

    5t級

    散布幅(m) 最小3.0以下~最大7.0以上(切換5段階以上)

    散 布 量 (g /㎡ ) 最小15以下~最大50以上(切換5段階以上)

    散布速度

    (km/h) 最小5以下~最大40以上

    ホッパ容量

    (㎥)

    2.5以上

    [2.2]

    2.5 以上

    [1.7] 3.4以上 3.4以上 3.4以上 4.2以上

    最大積載量

    (kg) 3,000以上 3,000以上 4,000以上 4,000以上 4,000以上 5,000以上

    [2,640

    以下]

    [2,040

    以下]

    溶液タンク容量

    (L)

    700以上

    [300

    以下]

    700以上 500以上 800以上

    溶液混合比(%) 10~30 10~30

    給水率(%) 標準10 標準10

    注)駆動方式はすべて総輪駆動車 [ ]は普通免許仕様(※)

    2.走行性能

    規 格 乾式3t級 湿式3t級 乾式4t級 湿式4t級 湿潤式

    4t級

    湿潤式

    5t級

    回送時最高速度

    (km/h) 80 以上

    登坂能力(tanθ) 0.30以上

    最小回転半径(m)

    (最外輪中心) 7.0以下 7.5 以下 10.5以下

    (解説)

    1.凍結防止剤散布車の規格

    (1) 乾式凍結防止剤散布車とは、凍結防止剤(塩化ナトリウム、塩化カルシウム)を乾燥した状態

    で散布する方式の散布車である。

    湿式凍結防止剤散布車とは、事前散布での乾燥路面への定着性をよくするため、凍結防止剤

    ※道路交通法の一部を改正する法律の施行(平成19年度)以前の普通免許。

    法律の施行後に免許取得した者は中型自動車免許が必要となる。

  • -8・2-

    の搬送過程終端で、塩化カルシウム溶液等を添加して散布する方式の散布車である。別途、除雪

    基地等に溶液タンクの設置を要する。

    湿潤式凍結防止剤散布車とは、湿式の一種であるが、凍結防止剤の搬送過程後半(スクリュ

    ーコンベア)で、塩水を添加して散布する方式の散布車である。なお溶液は散布車に搭載した塩

    水生成機構により、水道水を使用して生成するので基地等の貯蔵設備を必要としない。

    凍結防止剤散布車は、事前散布、事後散布(凍結路面、圧雪路面、積雪路面等、水分が路面

    にある場合)に使用される。

    事前の予防散布において湿式散布、湿潤式散布では、乾式散布に比べ即効性、路面定着性に

    優れており、凍結防止剤の路外への飛散を抑制できることから、散布量の縮減にも寄与できる

    ものである。

    乾式の凍結防止剤散布車には、普通免許(※)で運転できる型式もある。

    表-8.1.1 に散布方式と散布車の分類、表-8.1.2 に散布車形式の比較を示す。

    表-8.1.1 散布方式と散布車の分類

    項 目 乾式散布 薬液散布 湿式散布

    持続性 良い やや劣る 良い

    即効性 やや劣る 良い 良い

    路面定着性 乾燥路面では劣る 良い 良い

    横断勾配の影響 それほど影響がない 流れやすい 影響されない

    風・交通による影響 路肩に飛散しやすい 影響されない 影響されない

    作業性

    凍結防止剤が湿ると、

    散布機のシュートが

    詰まりやすい

    濃い溶液を長時間散布車に

    貯蔵するとノズルを詰まら

    せやすい

    原塩と溶液を別々に積む

    ことから、積み込みに時間

    がかかる

    貯蔵

    塩化カルシウム、塩化

    マグネシウムは潮解

    性があるので防湿が

    必要

    清掃用・防水用の貯水槽を溶

    液槽として兼用することが

    できる。

    固形剤倉庫および溶液槽

    の貯蔵設備が必要。なお、

    湿潤式は溶液槽を必要と

    しない。

    散布車の形式 ・乾式散布車 ・薬液散布車

    ・湿式散布車

    ・湿式散布車

    ・湿潤式散布車

    ※道路交通法の一部を改正する法律の施行(平成19年度)以前の普通免許。

    法律の施行後に免許取得した者は中型自動車免許が必要となる。

  • -8・3-

    表-8.1.2 散布車形式による比較(原塩散布の場合)

    乾式散布車 湿式散布車 湿潤式散布車

    ①原塩 ①原塩

    ②塩化カルシウム溶液 ②原塩+塩水 散布剤種類 ①原塩

    ③原塩+塩化カルシウム溶液 ③原塩+塩化カルシウム溶液

    (極寒地)

    ①原塩搭載用ホッパ ①原塩搭載用ホッパ 積載構造 ①原塩搭載用ホッパ

    ②塩化カルシウム溶液タンク ②水タンク

    散布方式 ・ホッパ内から送られてくる

    原塩を散布する。

    ホッパ内の原塩と、薬液タンクから送

    られてくる薬液を、散布円盤上で混

    合し、散布する。

    また、原塩のみの散布、薬液のみの

    散布も可能である。

    薬剤を投入する際に水タンク内

    に一部の塩が投入されることによ

    り、塩水を生成し、溶液タンク、

    配管の内の氷結を防止。塩水を

    原塩搬送のスクリューコンベア端

    部に噴射し、十分に撹拌された

    散布剤(混合比約 10%)を散布

    する。

    原塩のみでの散布も可能。

    ○状況に合わせた散布剤を選択でき

    る。

    ○状況に合わせた散布剤を選

    択できる。

    ○路面に定着しやすいため、飛散防

    止効果に富むと同時に、横断勾配等

    の影響を受けない。

    ○路面に定着しやすいため、飛

    散防止効果に富むと同時に、横

    断勾配等の影響を受けない。

    ○均一な散布が可能 ○均一な散布が可能

    ○原塩散布に比べ、即効性に優

    れる。

    特長 ・構造がシンプルであり、メ

    ンテナンスが容易。 ○原塩散布に比べ、即効性に優れ

    る。

    ○湿式に比べ、必要な薬液貯蔵

    設備を設置する必要がなく、設

    備費・薬液費のコスト削減が可

    能。

  • -8・4-

    乾式散布車 湿式散布車 湿潤式散布車

    (2) 除雪工区内の散布延長に対し所定の散布量で散布した場合に、作業1サイクルに必要な凍結

    防止剤を積載できることが望ましく、凍結防止剤散布車の規格としては、散布方式の他に積載

    量により規定した。

    凍結防止剤の積載単位としてはトンパック(1tの凍結防止剤が入った袋)が一般的となっ

    てきており規格をトン(t)表示としている。

    (3) 1サイクル当たりの散布薬剤量は除雪工区の地域条件、気象状況、道路状況等によって千差

    万別で一概に決定することは困難であり、車両の大きさは凍結防止剤の積み込み体制、格納庫

    のスペース、散布の作業性などの条件も大きく関わってくるため、規格のラインナップとして

    は過去の実績から3t級、4t級、5t級としている。

    (4) 乾式 3t 級と湿式 3t 級は、普通免許(※)仕様もあるが、平成 19 年度から中型免許制度が導

    入される予定であり、ベース車両のラインナップによっては変更となる可能性がある。

    (5) 散布作業にあっては、凍結防止剤散布車自体が走行する路面が凍結している場合があるため、

    安全性の観点から総輪駆動が必要である。

    2.散布幅

    散布作業としては、効率的に作業するためには極力広幅で散布すべきであるが、対向車、沿道状

    況、歩行者への影響等を考慮する必要があり、散布条件によって散布幅が調整可能なものとしてい

    る。

    散布幅は、道路構造令の冬期交通確保幅を考慮して規定すべきであり、冬期交通確保幅に示す冬

    期車道幅を対象に 3m(1 車線分)~7m(2 車線分)で規定した。(表-8.1.3 参照)

    湿式機構概念図 湿潤式機構概念図

    水タンク

    乾燥塩

    塩水

    湿潤塩

    油圧モータ

    スクリュー

    コンベア

    ホッパ

    凍結防止剤

    (乾燥塩)

    散布円盤

    塩水供給

    ポンプ

    参考図

    ※道路交通法の一部を改正する法律の施行(平成19年度)以前の普通免許。

    法律の施行後に免許取得した者は中型自動車免許が必要となる。

  • -8・5-

    7m(2 車線分)以上の幅を対象とする場合は、制御装置の変更が必要となるが、散布される薬

    剤(塩等)は、空気抵抗を受けるため、散布可能な幅には限界がある。

    表-8.1.3 冬期交通確保幅(片側車線の幅員)

    道路区分 1種(地方部) 3種(地方部)

    幅員(m) 1級 2級 3級 4級 1級 2級 3級 4 級

    冬期車道幅員 W1 3.5 3.25 3.5 3.25 3 2.75

    冬期側帯 W2 0.75 0.5 0.25

    冬期路肩 W3 1.75 1.25 0.75 0.5

    2車線道路幅員

    〔片側=W1+W3〕 5.25 5.25 4.75 4.5 4.25 3.75 3.5 3.25

    4車線道路幅員

    〔片側=2×W1+W2+W3〕 9.5 9.5 8.75 8.25 8.0 7.25 6.75 6.25

    冬期交通確保幅 片側車線幅 max=9.5m min=3.25

    注)除雪対象を規定するにあたって、都市部(2 種、4 種)は省略

    3.散布量

    散布量は、1 平方メートル(㎡)当りの凍結防止剤の量(g)で表される。乾式及び湿潤式の場

    合は、剤の量(g)であるが、湿式では、1 平方メートル(㎡)当りの(凍結防止剤+溶液の量)

    (g)で表す。散布量(g/㎡)は、路面の雪氷の厚さや温度条件により左右されるが、一般的に路面に

    発生する氷の厚さは 0.2mm 程度であり、理論的には-5℃で 20g/㎡の散布量でよいとされている

    (下図参照)。しかし実際には温度状態や飛散等を考慮して、散布量としては一般に 15~30g/㎡が

    採用されている。

    図-8.1.1 散布量と氷の厚さの関係

    〔出典:凍結防止に関する調査試験報告書 S49 北陸地方建設局〕

    また、散布作業は単に路面の凍結防止だけでなく、除雪グレーダ等による圧雪除去のように除雪

    作業の支援のために行われる場合もあり、さらに散布箇所の状況によっては、散布量を増加する必

    要が生じる場合もあり、散布量は 15~50g/㎡に調整できるものとし、操作性を考慮して5段階以上

  • -8・6-

    の切換式とした。なお、凍結防止剤に水溶液(塩化ナトリウム水溶液または塩化カルシウム水溶

    液)を混合して散布できる湿式及び湿潤式の散布車は、凍結防止剤の路面への付着性を向上させ、

    風や通過交通による飛散を抑えことにより、効果の持続、散布量(g/㎡)の削減をできるもので

    あるため、この効果を考慮し、散布量(g/㎡)を設定しなければならない。

    (1) 融氷量と融氷時間との関係は次表に示されるが、この表から次のことが言える。

    (イ) -12℃以下の温度(氷温、気温、地表温度等)では、融氷剤の効果が小さくなる。 (ロ) -3℃~-7℃では、散布後 1 時間くらいまでは塩化カルシウムの方が融氷効果が大きい

    が、それ以降は塩化ナトリウムの方が融氷効果が大きい。

    表-8.1.4 剤の違いによる融氷量と融氷時間の関係

    1kg の凍結防止剤散布で融解した氷の量(kg)

    温 度 -3℃ -7℃ -12℃ -18℃

    凍 結 防 止 剤 CaCl2 NaCl CaCl2 NaCl CaCl2 NaCl CaCl2 NaCl

    15 分 2.6 1.8 2.5 1.6 1.7 0.5 1.3 0.1

    30 分 3.4 2.9 3.1 2.6 2.0 0.9 1.7 0.1

    1 時間 4.4 4.3 3.8 4.1 2.4 1.6 2.0 0.3

    間 6 時間 7.1 9.5 5.3 7.5 2.8 3.8 2.3 1.9

    〔出典:除雪・防雪ハンドブック(除雪編)〕

    (2) 次図は室内実験の試験結果である。これによると 3 種類の凍結防止剤ともに、散布後 15~30

    分で融氷量はほぼ飽和点に達し、同時に氷温が周囲の温度に近づいていくことがわかる。

    図-8.1.2 1kg の凍結防止剤散布で融解できる氷の量の時間変化

    〔出典:除雪・防雪ハンドブック(除雪編)〕

    (温度-3℃) (温度-12℃)

  • -8・7-

    4.散布速度

    凍結防止剤散布車は、走行しながら所定の散布量を所定の幅で散布する必要があることから、

    車速同調機能を有していることを標準としている。走行速度が 40km/h を超えると、走行風や慣性

    の影響により著しく精度が低下する。また、凍結路面上での散布作業の安全性を確保する観点から

    も最高作業速度を 40km/h と規定している。

    ただし、自動車専用道路などで 50 km/h 以上の高速対応を行う場合は、油圧ポンプ、油圧モー

    タの容量や制御装置の変更など特別な仕様を検討する必要がある。

    5.ホッパ容量

    ホッパ容量は、散布作業の 1 サイクル分に対応した散布量を積載できる容量が望ましいが、1 回

    当りの散布延長が長い場合や散布量が多い場合は、散布台数を増やして分担するか、途中で凍結防

    止剤を積みたす必要がある。

    なお、ホッパ容量は次式で計算した必要総散布量に基づいて、実用上の運営管理面を考慮して選

    定する必要がある。

    ホッパ容量 (㎥) ≓ 必要総散布量(㎥)

    B×L×q

    ρ×106

    ここに

    Q:ホッパ容量(㎥)

    B:散布幅(m)

    L:出動 1 回あたりの散布延長(m)

    散布延長(m)=除雪工区延長(m)×散布延長率(%)

    q:単位面積あたりの散布量(g/㎡)

    ρ:凍結防止剤の密度(t/㎥)

    塩化ナトリウムの場合 1.2、

    塩化カルシウムの場合 0.72(フレーク)、1.0(粒)

    除雪工区における 1 サイクルあたりの散布量は、除雪工区の管理延長、散布条件(坂道、交差点、

    トンネル、橋梁等の数)、気象条件等によって異なってくるため、画一的に決定できないが、工区延

    長を 35km、散布延長率を 40%(ホッパ容量 2.5 ㎥)、散布幅を 7m、散布量 30g/㎡と仮定して、凍結防

    止剤を塩化ナトリウム(比重 1.2)にした場合の計算例を次に示す。

    〔計算例〕

    2.5 ㎥の場合

    Q=7×(35,000×0.4)×30/1.2×106=2.45 ≓ 2.5 ㎥

    上記の計算式に基づき計算したホッパ容量が 2.5 ㎥以上になる場合は、3.4 ㎥か 4.2 ㎥の中か

    Q≧

  • -8・8-

    ら選ぶ。さらに大きな容量が必要な場合は別途仕様を検討する必要がある。

    ホッパ容量は図上、次式で求める。

    Vh=Ah×Lh

    ここで

    Ah:計算上代表される横断面積(㎡)

    Lh:計算上代表される長さ(m)

    ただし 上式の Vh は

    Vh=vh /(1-ψ)

    ここで

    Vh:ホッパ容量(㎥)(計算容量)

    vh:実積載容量(㎥)(公称容量)

    ψ:空隙率(通常 0~0.10) ψ=(Vh-vh)/Vh

    であるので、計算ホッパ容量は実積載容量に1/(1-空隙率)を乗じた分だけ大きくなる。

    ホッパの設計にあたっては、車両制限令によって制限を受ける幅、高さを考慮しながら、容量計

    算上、代表される横断面を決める。横断面の形状は凍結防止剤の流動性が良いようにおおむね逆三

    角形に近似したものとする。横断面積は横断面を 3~4 個の単純な図形に区分して求める。

    (1) 2.5 ㎥級ホッパの容量計算例を次に示す。(次図参照) 代表される横断面積 Ah(㎥)

    図-8.1.3 2.5 ㎥級ホッパ断面図

    空隙率ψの確認

    空隙率ψ=(2.712-2.5)/2.712

    =0.0782 (通常 0 ~0.10)

    Ah=Aa+Ab+Ac

    Aa=1/2(0.8+1.55)×0.08

    =0.094

    Ab=0.2×1.55

    =0.31

    Ac=1/2(0.335+1.55)×0.77

    =0.726

    Ah=0.094+0.31+0.726=1.13

    代表される長さ Lh(m)

    =2.4m

    Vh=Ah×Lh より

    Vh=1.13×2.4

    =2.712 ㎥

  • -8・9-

    6.最大積載量

    最大積載量は、ホッパに積載可能な質量である。前述の最大積載量の値は、比重 1.2(塩化ナト

    リウム:塩)の場合である。塩化カルシウムなど他の凍結防止剤の場合は、このホッパ容量では、

    最大積載量は前述の値より少なくなることに注意する必要がある(塩化カルシウム比重:フレー

    ク 0.72、粒 1.0)。

    7.溶液タンク、溶液混合比(給水率)

    (1) 溶液タンク(水タンク)

    溶液タンクは、湿式の場合は塩化カルシウム溶液を入れるタンクである。湿潤式では塩水(水

    道水+塩)を入れ水タンクと呼んでいる。溶液タンクは、ホッパの左右両側に搭載されている。

    湿潤式では水道水を使用するため、水道水が凍結しないように、凍結防止剤のポッパ積込時に

    水タンクに剤(塩)が投入され、水タンク内で塩水を生成するしくみとなっている。水タンクは、

    ホッパの左右両側又はホッパの前方に設置される。

    溶液タンク(水タンク)の容量は、通常混合比 10~20%の範囲で散布するので、余裕を見込ん

    で十分な容量で規定した。ただし、常時最大混合比で使用すると不足する場合があるので留意す

    る必要がある。

    (2) 溶液混合比

    湿式で溶液混合比とは、散布量(凍結防止剤+溶液)に対する溶液の割合(%)を示す。例え

    ば、散布量 30g/㎡で溶液混合比 30%の場合、凍結防止剤 21g+溶液 9g で合計散布量 30g とな

    る。溶液混合比は、10~30%に可変できる。溶液は溶液タンクから溶液ポンプにより供給し、

    電磁バルブにより溶液混合比を調節するしくみとなっている。

    (3) 給水率

    湿潤式における給水率とは、凍結防止剤に対する塩水の割合(%)を示す。給水率は、10%に

    固定されている。例えば、散布量 30g/m2で給水率 10%の場合、凍結防止剤 30g+塩水 3g とな

    る。この場合、塩水は散布量には含めない設計となっている。湿潤式ではスクリューと溶液ポ

    ンプの動きを連動させ、塩水付加量が 10%で固定されている。

  • -8・10-

    8.凍結防止剤の特性

    (1) 塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)の特性を比較すると、おおむね次表の通りで

    ある。

    表-8.1.5 凍結防止剤の特性比較

    注)平衡状態に達するまでの時間

    (2) 次図は、塩化ナトリウム、塩化カルシウムの状態図である。

    図-8.1.4 塩化ナトリウム(NaCl)及び

    塩化カルシウム(CaCl2)溶液の状態図

    〔出典:除雪・防雪ハンドブック(除雪編)〕

    性 質 塩化カルシウム(CaCl2) 塩化ナトリウム(NaCl)

    共 融 点

    (氷が融ける最低温度) 約-51℃ 約-21℃

    融 解 速 度

    (氷が融ける速さ) 早 い 遅 い

    融 解 力

    (無限時間で)注) 塩化ナトリウムに比べて低い -15℃以上で高い

    潮 解 性 あ り な し

    融 解 熱 発 熱 吸 熱

    塩 溶 液 再結晶せず、溶液のまま残る 再結晶する

    価 格 NaClの2~3倍 安 価

  • -8・11-

    (3) 各種凍結防止剤の長所・短所は次表のとおりである。

    表-8.1.6 凍結防止剤・防滑剤の特性比較

    物 質 主 目 的 適 用 範 囲 長 所 短 所

    塩化ナトリウム

    (原塩)

    NaCl

    気温-3.8℃以上:非常に効

    果的

    -3.8~-9.5℃:効果的

    -9.5~-12.3℃:適用限界

    -12.3℃以下:効果なし

    けん引力を増加させ

    る路面と氷盤間の結

    合を断ち切る氷盤表

    面は溶けない安価で

    ある

    融解温度が遅い

    低温下では効果な

    塩化カルシウム

    CaCl2

    雪氷の融解 通常は-12.3℃以下で使わ

    れる。

    -29.1℃以上:効果的

    -29.1~-34.7℃適用限界そ

    れ以下では効果的ではない

    融解速度が早い

    融解時は発熱反応で

    ある

    低温時でも効果的で

    ある

    高価である

    氷盤上面から融解

    する

    路面はいつまでも

    濡れている

    物 質 主 目 的 適 用 範 囲 長 所 短 所

    NaClとCaCl2の

    混合物

    雪氷の融解

    気温-17.9℃以下で雪や氷

    の短時間融解が必要な時

    融解速度が早い

    低温時でも効果的で

    ある

    高価である

    CaCl2の場合よりも

    路面の濡れがひど

    砂と塩の混合物 すべり摩擦

    の早急な増

    非常に寒く塩類が効果的に

    使用できない時、または早

    期対策の必要性があるが完

    全な融雪が不可能な箇所

    可流動性物質である

    貯蔵時に固結しにく

    効果の持続性が高い

    春期に道路清掃が

    必要となる

    路面雪氷を除去し

    ない

    塩で処理された

    路面に固着しやすい

    横滑り抵抗をただち

    に増加させる

    車体にキズをつけ

    やすい

    砂など 横すべり抵抗をただ

    ちに増加させる

    春期に道路清掃が

    必要となる

    路面雪氷を除去し

    ない

    車体にキズをつけ

    やすい

    車の走行により路

    面から飛ばされや

    すい

  • -8・12-

    9.走行性能

    (1) 回送時最高速度

    回送時における最高速度は非積雪期のメンテナンス時など回送性を考慮して 80km/h 以上と

    した。

    (2) 登坂能力

    登坂能力は、総輪駆動車において雪氷路面とタイヤ間のすべり抵抗に依存し、tanθ=μ の関

    係式で表される。従って、車両にこれ以上の能力があっても雪氷路面においてスリップし、登

    坂することはできない。

    次図において、X方向の力のつり合いから

    Mgsinθ=μMg cosθ

    sinθ/cosθ=tanθ=μ=0.3

    但し、M:車輌総質量(kg)M=MF+MR

    MF:前輪質量(kg)(4×2 駆動の場合は前輪に駆動力がないので考慮しない)

    MR:後輪質量(kg)

    g:重力加速度(9.8m/s2)

    θ:登坂角度(deg)

    μ:雪氷路面とタイヤのすべり摩擦係数(積雪路面 0.3)

    図―8.1.5 登坂能力概念

    坂路を総輪駆動車が登るためには、次の条件を満足することが必要である。

    Mg sinθ≺μ(MF+MR)g cosθ≺車両が発揮できるけん引力

    設計上、MF/M≧20~30%、MR/M≧70~80%にとる。従って 4×4 駆動は 4×2 駆動と比較し

    て約 1.30~1.40 倍 ((MF+MR)/MR)けん引力が大きい。

  • -8・13-

    (3) 最小回転半径

    最小回転半径は、車両の遠心力が無視できるような極低速度で旋回させたとき、車両最外輪の

    中心線が描いた軌跡円の半径をいう。

    凍結防止剤散布車自体は、通常のトラックベースの車体を使用しており、その車両のホイール

    ベースにより決定される最小回転半径は道路構造令、保安基準を考慮した上で極力小さい値で

    規定した。

    <8.2 寸法・質量・定員>

    1.機械寸法

    規 格 乾式3t級 湿式3t級 乾式4t級 湿式4t級 湿潤式

    4t級

    湿潤式

    5t級

    全 長(mm) 7,000以下 8,000以下

    全 幅(mm) 2,500以下

    全 高(mm) 3,400以下 3,800以下

    (黄色灯火含)

    2.質量

    規 格 乾式3t級 湿式3t級 乾式4t級 湿式4t級 湿潤式

    4t級

    湿潤式

    5t級

    車 両総 質 量

    (kg)

    10,000

    以下

    10,000

    以下

    11,000

    以下

    13,000

    以下

    11,000

    以下

    17,000以

    [8,000

    以下]

    [8,000

    以下]

    注)駆動方式はすべて総輪駆動車 [ ]は普通免許仕様(※)。

    3.乗車定員

    乗車定員は各規格とも 2 名とする。

    (解説)

    1.機械寸法

    凍結防止剤散布車は、一般公道を走行しながら作業するので、道路運送車両法の保安基準による

    制約を受ける。従って基本的には、車両の大きさ(寸法及び質量)は長さ≦12m、幅≦2.5m、高さ≦

    3.8m、車両総質量≦20t、1 軸≦10tでなければならない。この制限を超過するときは緩和申請

    が必要になる。

    ※道路交通法の一部を改正する法律の施行(平成19年度)以前の普通免許。

    法律の施行後に免許取得した者は中型自動車免許が必要となる。

  • -8・14-

    2.質 量

    (1) 車両総質量

    凍結防止剤(塩)の必要量及び湿式、湿潤式においては溶液タンクを搭載するため、車両総

    質量はこれら必要装備の搭載を考慮して規定している。ただし、乾式 3t 級、湿式 3t 級の「普

    通免許仕様(※)」については、ホッパ容量をそれぞれ 2.2 ㎥、1.7 ㎥とし、車両総質量 8,000kg

    以下とした。

    (2) 荷重分布

    荷重分布は、保安基準によって次の条件を満たさなければならない。

    車両総質量の 20%≦前軸荷重≦前軸のタイヤ許容荷重(積荷運転状態にて)

    3.乗車定員

    凍結防止剤散布車は、散布作業のほかに道路巡回で使用する場合もあり、運転員と巡視員が乗

    車できる必要があることから、2名と規定している。

    <8.3 原動機(エンジン)>

    1.形式

    主原動機は、水冷4サイクルディーゼル機関とする。

    2.性能

    規 格 乾式3t級 湿式3t級 乾式4t級 湿式4t級 湿潤式

    4t級

    湿潤式

    5t級

    最大出力(kW) 140以上 220以上

    最大トルク(Nm) 500以上 1,200以上

    3.補機類等

    規 格 乾式3t級 湿式3t級 乾式4t級 湿式4t級 湿潤式

    4t級

    湿潤式

    5t級

    燃料タンク

    容量(L) 100 200

    始動電動機 24V-4.5KW以上 24V-6.5KW

    以上

    充電発電機 充電容量1.4KW以上

    充電容量

    1.9KW以上

    蓄電池容量 12V-96Ah(5時間率)×2 12V-140Ah

    (5時間率)×2

    ※道路交通法の一部を改正する法律の施行(平成19年度)以前の普通免許。

    法律の施行後に免許取得した者は中型自動車免許が必要となる。

  • -8・15-

    (解説)

    1.原動機形式

    原動機(以下「エンジン」という)の形式は、性能特性、信頼性、耐久性、経済性を考慮して、水

    冷 4 サイクルディーゼルエンジンとした。

    2.原動機性能

    (1) 最大出力

    凍結防止剤散布車は他の除雪機械に比べて、大きな駆動力を必要とせず、走行動力と散布作業

    用動力を出力できればよい。

    従ってエンジン出力は、次式で求められる。

    P = W V/3,600 η

    ここに P:エンジン出力(kW)

    V:走行速度(km/h)

    W:全走行抵抗(N)

    (W=ころがり抵抗(N)±加速抵抗(N)±こう配抵抗(N)+空気抵抗(N))

    η:動力伝達効率

    上式において、W は

    ① ころがり抵抗 rr(N) rr = μr×G×g

    ② 加速抵抗 rr(N) rr = a/ (1+ζ)×G

    (減速は負号をとる)

    ③ こう配抵抗 rs(N) rs =μr sinα×G×g

    (下りこう配は負号をとる)

    ④ 空気抵抗 rk(N) rk = μL×A×V2×g

    であって、ここで

    μr:ころがり抵抗係数(良い舗装路面で≒0.01)

    G:車両総質量(kg)

    a:走行時の加速度(m/s2)

    ζ:回転部分相当質量(kg)/車両総質量(kg)

    g:重力加速度(m/s2)

    α:登坂角度(度)

    μL:抵抗係数(普通トラックで≒0.005)

    A:前面投影面積(㎡)

    V:車両の走行速度(km/h)

    である。

    よって乾式 3t 級、湿式 3t 級、 乾式 4t 級、湿式 4t 級、湿潤式 4t 級の凍結防止剤散布車で

  • -8・16-

    は、走行状態が定常走行(走行速度 50km/h)の場合

    (ⅰ)ころがり抵抗 rr(N) rr = 0.01×9,730×9.8 = 953.5

    (ⅱ)加速抵抗 ra(N) ra = 0.05/ (1+0.1)×9,730 = 535.1

    (ⅲ)こう配抵抗 rs(N) rs = 0.052×9,730×9.8 = 4,958.4

    (ⅳ)空気抵抗 rk(N) rk = 0.005×1.785×2.72×502×9.8 = 594.8

    W = 953.5+535.1+4,958.4+594.8 = 7,041.8

    従ってエンジン出力 P (kW)は

    P = 7,041.8×50/3,600×0.93 = 104.8 (kW)

    となる。

    作業動力はほぼ 7~11kW であり、凍結防止剤散布車の散布作業動力は

    散布作業時動力≒104.8+11 (kW) ≒115.8 (kW)

    となる。

    ただし、現状使用されているトラックではこれに相当する出力のエンジンはないため、140kW

    以上とした。

    同様に、湿潤式 5t 級では作業動力は 193.9 kW となり、使用できるトラックの出力から 220

    kW 以上とした。

    エンジンの定格出力と散布作業時動力との差は、余裕動力である。余裕動力は走行時、あるい

    は、作業時の変動負荷に対応する動力となる。たとえば加速抵抗が増えたり、こう配抵抗が増え

    たりする時、この余裕動力が消費される。

    (2) 最大トルク

    エンジンの最大トルクと変速機及びタイヤとの関係は次式により算出される。

    T = WR/ηi

    但し、T:エンジントルク (N・m)

    W:全走行抵抗 (N)

    (W = ころがり抵抗(N)±加速抵抗(N)±こう配抵抗(N)+空気抵抗(N))

    R:タイヤの有効半径 (m)

    η:動力伝達装置の伝達効率

    i:総減速比

    エンジンのトルクは、除雪に要する駆動力を発生できる性能を有していなければならないが、

    総減速比に影響される。

    よって、本書では通常考えられるギヤ比になることなどから、ギヤ比を 1:7.3 と想定して次

    式のように算出した。

    乾式 3t 級、湿式 3t 級、 乾式 4t 級、湿式 4t 級、湿潤式 4t 級の場合

    T= 8,000×0.407 =479.6N・m

    0.93×7.3

  • -8・17-

    となる。そこで規定値は、数値を丸め 500N・m とした。

    同様に、湿潤式 5t 級の場合、

    T= 13,500×0.523 =843.5N・m

    0.93×9.0

    となる。現行の車両の最大トルクを考慮して規定値は 1,200N・m 以上とした。

    3.補機類等

    付属装置、電装品については、散布作業が夜間に実施されるケースが多いこと、気温が氷点下の

    ような寒冷な条件での作業であること、黄色灯火・標識装置などの電力負荷を考慮すると電力消費

    量がかなり大きくなるため、充電、蓄電容量が不足しないよう、標準車両のものより容量の大きな

    仕様としている。

    <8.4 車 体>

    1.走行動力伝達・駆動装置・変速装置

    (1)形式

    ① 走行の動力伝達形式は、機械式とする。

    ② 走行の駆動形式は、タイヤ駆動の総輪駆動式とする。

    (2)変速装置

    ① 変速装置は、マニュアル変速またはオートマチック変速とする。

    ② 変速段は、前進5段以上、後進1段以上の変速が可能なものとする。

    (3)タイヤ

    タイヤは、スノータイヤまたはスタッドレスタイヤとする。タイヤサイズは、保安基準に

    適合したものを使用する。

    2.制動装置

    ① 主ブレーキは、総輪制動とする。

    ② 制動方式は、内部拡張式またはディスクブレーキ式とする。

    ③ 駐車ブレーキは、車輪制動式スプリングブレーキまたは推進軸制動式とする。

    3.操向装置(かじ取り装置)

    ① 操向形式は、前輪操向式とする。

    ② 操向装置は、ボールナット式とし倍力装置付とする。

    (解説)

    1.走行動力伝達・駆動装置・変速装置

    (1) 形式

    ① 凍結防止剤散布車は凍結路での作業を考慮し、他の除雪機械と同様に走行装置は総輪駆動

    (4×4)が望ましい。総輪駆動は2輪駆動(4×2)と比べて牽引力が大きいので、凍結路で1軸が

  • -8・18-

    スリップしても他軸が駆動力を発揮するので、走行不能に陥る危険性が少ない。

    (2) 変速装置

    変速装置は操作性の観点から、マニュアル変速またはオートマチック変速とし、変速段数は作

    業速度の制御から前進で 5 段以上、後進で最低 1 段が必要としている。

    (3) タイヤ

    寒冷地用タイヤは大別してスノータイヤとスタッドレスタイヤの 2 種があり、スノータイヤ

    は積雪路の走行に適し、スタッドレスタイヤは凍結・圧雪路の走行に適している。スノータイヤ

    は積雪の剪断抵抗を利用したものであり、スタッドレスタイヤは摩擦熱により生ずる雪氷面の

    水膜除去と、タイヤ踏面の微小変形によるグリップ効果を利用したものである。

    氷雪混在の道路が多い場合は、氷盤もしくは氷盤発生の危険性のある湿潤路面の走行頻度が

    高いと推定されるので、スタッドレスタイヤが望ましい。

    2.制動装置

    主ブレーキ装置は「総輪制動」とし、総輪駆動の場合はエンジンブレーキの効果が作用するので

    有利である。雪氷路上でのブレーキ操作は熟練を要するが、総輪制動でないと制動力にアンバラン

    スが生じ、制動車輪がスピンを起こす危険性がある。

    3.操向装置

    操向装置は操作性やオペレータの疲労度及び安全性を考慮して「倍力装置」付とした。

    <8.5 作業装置>

    1.動力形式

    作業装置は油圧作動式とし、動力の取り出しはフライホイールPTO式とする。

    2.ホッパ

    ① ホッパ構造は鋼板製、逆三角形状とする。

    ② ホッパ上部は、ホッパマンホール式(開口寸法1,400×700mm以上)、または幌掛け式と

    し、開閉は手動、電動もしくは油圧駆動とする。

    ③ ホッパ内面には防蝕塗装を施すものとする。

    ④ ホッパには凍結防止剤の残量が確認できる装置(確認窓)を設けるものとする。

    3.凍結防止剤引出装置

    ① 凍結防止剤引出装置はベルトコンベア式もしくはスクリュー式とする。

    ② 凍結防止剤の吐出が確認できる装置を設ける。

    ③ 凍結防止剤引出装置は車速同調とする。

    ④ 凍結防止剤引出し量制御のため計量装置を設ける。計量は連続容積計量とし、凍結防止

    剤の比重を乗じて質量に換算する。計量精度は±20%以内とする。 ⑤ 凍結防止剤引出装置は散布量を段階的、もしくは無段階に可変できるものとする。

    4.散布装置

    ① 散布装置は散布円盤式(ステンレス製)とする。

    ② 散布装置は散布幅を段階的、もしくは無段階に可変できるものとする。

  • -8・19-

    5.溶液混合方式(湿式または湿潤式のみ)

    湿式は、散布円盤上混合方式またはシュート内混合方式とする。湿潤式は、スクリュートラフ

    内混合方式とする

    (解説)

    1.動力装置

    動力形式は操作性、信頼性の観点から油圧式とした。動力取り出し装置はミッション PTO とフラ

    イホイール PTO があるが、クラッチを切った状態でも散布装置の油圧を作動させる必要があるた

    め、フライホイール PTO としている。

    油圧装置圧力は、小型軽量化と汎用性を考慮し、140kg/cm2を標準としている。

    2.ホッパ

    (1) ホッパ側壁部のこう配は、凍結防止剤の安息角を基準に、壁面と凍結防止剤間のすべり摩擦を

    勘案して検討する。塩化ナトリウムの安息角は約 70°であり、側壁部こう配は実用上 50~60°

    程度とする。また凍結防止剤は乾燥状態であることを前提としているので、積載する凍結防止剤

    の吸湿、圧密、固化などについて注意する必要がある。

    (2) 積込部の開口寸法は、広ければ広いほど剤の投入がしやすい。そのためホッパ上部を開放式に

    したもの(幌掛け式)があるが、このホッパでは積込後直ちに散布作業にかかり、吸湿、固化が

    進行しないうちに撒き切るようにしなければならない。いっぽう上部密閉のマンホール式では

    車検登録時に積載物の比重によって積載量に制約を受ける場合がある。マンホール式の積込開

    口部の寸法は、1 トンパックの場合を考慮した値としている。

    (3) ホッパ内面は防蝕塗装を施すものとする。ホッパはステンレス製が望ましいが、材料費、溶接

    加工費が高価となる。

    (4) 散布作業にあたって、ホッパ内の残量を確認し、凍結防止剤補給の必要性を判断するため、ホ

    ッパには凍結防止剤の残量が確認できる形式としている。ホッパに透明プラスチック製の窓を

    設け、運転員等が視覚的に確認できるものでもよいこととしている。

    (5) ホッパの塗装仕様については、第 3 章一般技術事項3.5塗装仕様を参照のこと。

    3.凍結防止剤引出装置

    (1) 凍結防止剤引出装置は、ベルトコンベア式もしくはスクリュー式とし、その特長は次のとお

    り。

  • -8・20-

    表-8.5.1 送り出し機構(ベルトコンベヤ、スクリューコンベア)の比較

    種類

    項目 ベルトコンベア スクリューコンベア

    駆動精度 ゲート開度一定の場合ベルト速度

    に比例する吐出量が得られる

    回転数に比例した精度のよい吐出

    が得られる

    種類

    項目 ベルトコンベア スクリューコンベア

    安全性 安定した吐出が得られる 1回転に1ピッチの脈動が起こる

    凍結防止剤への

    影響 な し

    ケースとスクリューのクリアラン

    スによる凍結防止剤の破壊が起こ

    り、一部粉状となって飛散する

    密閉性 完全密閉は装置が複雑になる 良 い

    所要動力 少ない 多 い

    自動制御への適性 ベルト速度、ゲート開閉度の両方で

    制御が可能 スクリュー回転数のみの制御

    持続適性

    ベルト伸びの調整、凍結防止剤のベ

    ルト付着による凍結防止剤の清掃

    が必要

    簡 易

    図-8.5.1 ベルトコンベア式

  • -8・21-

    図-8.5.2 スクリューコンベア式

    (2) 車両後部で散布される凍結防止剤は、運転席から吐出状態が確認しにくいため、凍結防止剤

    引出装置には凍結防止剤の吐出が確認できる装置を設けるものとしている。接触式センサーに

    よるものを標準とし、センサー位置は必ずしも凍結防止剤引出装置でなくても、回転円盤のと

    ころにあってもよい。なおモニターカメラを設けている例もある。

    (3) 凍結防止剤引出装置は、凍結防止剤散布車の速度が変化しても散布量を一定に保つことがで

    きる車速同調方式とし、凍結防止剤引出装置には計量装置を設けるものとしている。

    ベルトコンベア式の計量は、凍結防止剤引出し口の面積(ゲート開度)にベルトコンベアの搬

    送速度を乗じて求められ、またスクリュー式ではスクリューまたはメータリングロータの1回

    転あたりの容積に回転数を乗じて求められる。メータリングロータは、回転数を測定して凍結

    防止剤を計量し、散布円盤上へ送り出す装置である。いずれも容積を連続計量するので、これに

    比重を乗じて質量に換算し、計量する構造としている。

    計量精度は高いほうがよいが、ベルトコンベア搬送速度やスクリューまたはメータリングロ

    ータの容積充満率が散布剤の搬送速度・搬送量によって影響を受けるため、ここでは計量精度を

    ±20%以内としている。

    なおホッパからの引き出し量は次式で求める。

    (ベルトコンベヤ式)

    Q = Aq × Vv ×ρ× 60 × Kd

    ここに Q:引出量(t/h)

    Aq:ゲート開口部面積(㎡)

    Vv:ベルトコンベヤ速度(m/min)

    ρ:凍結防止剤の密度(t/㎥)

    Kd:補正係数(実験的に求められる係数)

    (スクリュー式)

    Q = π(D2-d2)/4×S×N×ρ×60×Ks

    ここに Q:引出量(t/h)

  • -8・22-

    D:スクリュー外径(m)

    d:スクリュー軸径(m)

    S:スクリューピッチ(m)

    N:スクリュー回転数(rpm)

    Ks:補正係数(実験的に求められる係数)

    ρ:凍結防止剤の密度(t/㎥)

    4.散布装置

    (1) 散布装置形式

    散布装置は構造が簡単で故障が少ない散布円盤式とした。散布円盤の形式には、V 字形円盤、

    可傾式円盤などがあるがここでは規定しない。また円盤の個数、円盤羽根の形状や枚数などに

    ついてもここでは規定しないこととしている。

    散布円盤式は最もシンプルでトラブル発生の要因が殆どなく、かつ、円盤周速度と凍結防止

    剤の飛距離がほぼ比例するという特長を持っている。ただし空気抵抗により散布粒剤の速度エ

    ネルギーが消失するので、散布幅には限界がある。

    空気抵抗の影響を無視すると、散布幅は次式で求められる。

    S = 0.048×(√H)×R×N

    ここに S:散布幅(m)

    H:円盤高さ(m)

    R:円盤直径(m)

    N:円盤回転数(rpm)

    例えば H = 0.5m R = 0.45m N = 500rpm とすると、上式から

    S = 0.048×(√0.5)×0.45×500 = 7.6(m)

    が得られる。

    (2) 散布特性

    散布円盤の羽根の位置で、半径方向に直角に切った断面が左右対象であれば、散布円盤の回

    転方向は左右いずれでも、散布特性は変わらない。

    5.湿式・湿潤式の溶液混合方式

    湿式または湿潤式の散布車は凍結防止剤に溶液(塩水又は塩化カルシウム溶液)を添加するが、

    溶液は車載の溶液タンクから配管及び電動または油圧式のポンプにより圧送され、散布部におい

    て凍結防止剤と混合され散布される。

    溶液の混合方式としては、湿式では散布円盤上混合方式またはシュート内混合方式、湿潤式で

    は、スクリュートラフ内混合方式がある。

  • -8・23-

    (1) 湿式

    散布円盤上混合方式は、溶液を散布円盤上の凍結防止剤に散布し、凍結防止剤と溶液を混合

    するものである。シュート内混合方式は、凍結防止剤が引出装置から散布円盤上に向かって落

    下しながらシュート内を通過するところに溶液を散布して混合するものである。

    (2) 湿潤式

    スクリュートラフ内混合方式は、スクリュートラフの後半部においてスクリューコンベアで

    スクリュートラフ内を搬送されている凍結防止剤に溶液を散布して混合するものである。

    <8.6 操作装置>

    1.走行操作装置

    加速・制動各装置、及びクラッチはペダル式とし、変速装置、駐車ブレーキはレバー式

    とする。

    2.操向操作装置

    ハンドル式とし、右側に設置する。

    3.作業操作装置

    散布制御装置は、少なくとも以下の項目が制御できるものとする。

    ① 凍結防止剤種別の選定

    ② 散布幅(段階的もしくは無段階で可変できること)

    ③ 散布量(段階的もしくは無段階で可変できること)

    ④ 散布方向(散布円盤の回転方向可変方式またはスイング方式)

    ⑤ 散布装置の自動・手動の選定

    ⑥ 散布開始・散布停止

    (解説)

    1.走行操作装置及び操向操作装置

    走行操作装置及び操向操作装置は、一般の自動車と同様の操作要素とレイアウトを適用するこ

    ととした。確実な操作性及び走行性向上のためには、オートマチックトランスミッションも有効

    であるが、ここでは最低限の操作要素として規定している。

    2.制御装置

    制御装置は運転室内に設け、見やすく、操作容易で、コンパクトにまとめられたものとする。

    また視覚的にも色調などにより誤操作防止の配慮をされたものが望ましい。

    散布作業に支障をきたさないよう、少なくともこれらの項目が運転室内で、任意に制御できる

    こととした。いずれの項目も手動で設定することとし、①~⑤は作業開始前に、⑥は散布作業開始、

    停止の都度操作する。

    運転室内における制御装置の配置については、運転席、助手席いずれの側からでも、操作しや

    すい中間位置とする。操作方法としては、操作順序が自由であること、作業中でも設定値を自由に

    変更できるものとする。

  • -8・24-

    散布作業時の制御フローは以下のとおりとする。

    図-8.6.1 散布制御フロー

    (1) 凍結防止剤種別は散布剤を比重別に区分した種別をいう。もしこの区分以外の凍結防止剤を

    使用しようとするときは、搬送量を任意に入力できるようにする。

    (2) 散布幅は 3~7m を、段階的もしくは無断階で調整できるようにし、段階的調整の場合は現場

    での実態と道路に応じた使いやすさを考慮して、m 単位で 5 段階以上とする。

    (3) 散布量調整は、段階的調整の場合は 5~10g/㎡単位で、現場の実態と道路に応じた使いやす

    さを考慮して 5 段階以上とする。

    (4) 散布方向を左右に切り替える方式として散布円盤の回転方向可変による方式と散布円盤を左

    右にスイングする方式がある。

    (イ)回転方向可変方式

    回転方向可変では、散布円盤の回転方向を左右いずれの方向でも、切替え可能なものとす

    る。片側 2 車線区間で、走行車線を走りながら走行・追い越しの両車線を同時に散布するとき

    は左回転、追越車線を走りながら走行・追越の両車線を同時に散布するときは右回転で散布す

    るなどの方法となる。

    (ロ)スイング方式

    スイング方式では片側 2 車線区間で、走行車線を走りながら走行・追い越しの両車線を同時

    に散布するときは右側にスイング、追越車線を走りながら走行・追越の両車線を同時に散布す

    るときは左側にスイングして散布する。1車線散布の場合は原則として、車体中心位置で散

    布し、風などの影響による散布方向の補正としてスイング角度の調整を行うなどの方法とな

    る。また、これらの操作の必要性から、回転方向あるいはスイング方向を任意に設定できる

    こととした。

    (5) 散布装置操作の自動・手動の切替えは、主に自動制御の不具合時やメンテナンスのときに必

    要となる。

    (6) 散布開始及び停止は、その都度手動で操作する ON-OFF スイッチで、ランプ点灯などにより作

    動確認できるようにしておくものとする。

  • -8・25-

    <8.7 運転室>

    1.運転室構造

    (1) 運転室は、全鋼製密閉形とし、その取付部は防振構造とする。

    (2) 助手席は、運転室の左側に設けるものとする。

    2.運転室装備

    ① 運転席 :座席ベルト付

    ② 助手席 :座席ベルト付

    ③ 窓 :冬用ワイパーブレード付(前)

    (解説)

    1.運転室

    運転室は、密閉、防音、防振構造とし、オペレータの安全性、視認性、居住性、保守性を十分

    考慮した装備であるものとする。

    2.運転室装備

    (1) 運転席は、振動を吸収すると共に、オペレータの体格にあった姿勢が得られるように調整が

    可能であることが望ましい。

    (2) 除雪機械は、一般交通車両の中で作業を行うため、前後左右の視界を確保することが重要で

    ある。特に前面ガラスの視界は重要であるが、降雪等に阻害されやすいので、冬用ワイパーブ

    レードや熱線入りガラスの採用は有効である。

    <8.8 計器類>

    1.計器類

    ① 運行記録計(120 ㎞/h、機関回転数記録、7日計)

    ② 機関回転計(運行記録計組込型も可)

    ③ 燃料計

    ④ 水温計 ⑤ 充電警告灯

    ⑥ 機関油圧計又は機関油圧警告灯

    ⑦ 空気圧計又は警告灯

    (解説)

    1.計器類

    (1) 計器類は、運転中、必要な機械の状態を正確に把握し、操作判断が適切になされるよう、計

    器の大きさ、表示方法が適切なものでなければならない。

    (2) 施工管理システムや各種の作業支援装置(状態確認装置、自動制御装置等)を取り付ける場合は、走行関連計器と誤認することのないよう表示方法、取付位置、配列を十分考慮する必要

    がある。また、特に日中の直射光や夜間での視認性には注意を要する。

  • -8・26-

    <8.9 照明装置類>

    1.照明装置類

    ① 前部霧灯 ② 黄色灯火(散光式)

    (解説)

    1.照明装置類

    (1) 除雪は一般交通車両等が走っている道路上での作業であり、作業中の安全と他の交通車両等

    が作業状況を確認し、安全な交通ができるよう規定の灯火を有していることが必要である。

    (2) 灯火器類の性能、取付要件などは道路運送車両法の保安基準で規定されている。作業灯の要

    件は保安基準での規定はないが、作業の安全性により十分な明るさを有していることが望まし

    い。

    (3) 黄色灯火の規定は「道路維持作業用自動車」として届出されたものに限り取り付けられるも

    の(道交法施行令第 14 条の2)で構造要件として 150m以上の距離から点灯が確認できるもの

    (保安基準第 49 条の2)とされている。

    このため、機械の構造等から黄色灯火の数量や大きさを選定する必要がある。

    <8.10 付属装置、付属品>

    1.付属装置、付属品

    ① バックブザー(音圧 80dB(A)以上、1mにて)

    ② カーヒータ

    ③ 標識板(300×570 ㎜以上、車体後部取付) ④ スペアタイヤ取付台

    ⑤ 標準付属工具

    (解説)

    1.付属装置、付属品

    (1) バックブザーは、エンジン騒音の中でも後退時に、後方に対する注意喚起が可能な能力を有

    することが必要である。

    (2) 追突事故防止のため作業中の除雪車であることがわかるよう、標識板を車体後面に装着する。

    (3) 車載する標準工具は日常点検に必要な最低限の工具とする。以下に例を示す。

    ・スパナセット ・ドライバー ・プライヤ ・モンキレンチ

    ・タイヤゲージ ・グリスポンプ等

    (4) 取扱説明書、部品表、履歴簿に使用する言語は日本語とする。