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糖尿病 Q & A
第9回 糖尿病 薬・薬連携セミナー
金沢医科大学 糖尿病・内分泌内科 北田宗弘
2011年4月10日
HbA1cの基準 :世界標準と日本の基準のずれについて知りたいです。
Q.
HbA1cの値は、赤血球が作られた時から現在までの血糖値に比例。
赤血球の寿命は120日→HbA1cは過去4ヶ月の血糖値の動きを表す。
HbA1c値の50%:過去1ヶ月間
HbA1c (ヘモグロビン・エー・ワン・シー)
約25%:過去2ヶ月
約25%:過去3、4ヶ月で作られる。
通常は過去1、2ヶ月の平均血糖値の動きを見るために使用。
成人のヘモグロビン(ヘモグロビンA)におけるβ鎖N末端のバリンとグルコースが非酵素的に結合したもの。
新しい糖尿病診断基準と国際標準化HbA1c運用に関する声明(抜粋)
① 糖尿病型の判定に新たにHbA1Cの基準を設けた。
② 血糖値と HbA1C 値の双方が糖尿病型であれば1回の検査で
糖尿病と診断可能にした。
③ 現行のHbA1C (JDS値)に0.4%を加えた、国際標準化された
新しいHbA1Cを運用規定に則り使用する。
HbA1c(国際標準値)=HbA1c(JDS値)+0.4%
新たな糖尿病の分類と診断基準を策定し、2010年7月1日からの施行を決定した。
糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告2010.6(日本糖尿病学会ホームページ)
空腹時血糖値・OGTT2時間値とHbA1C(JDS値)の関連
00
126 200 300
15
空腹時血糖値
10
5
100
6.1
HbA
1C(
JDS値
)
y = 1.869 + 0.0333xr = 0.854 (p<0.0001)
(%)
(mg/dL)
n=6,658
日本において60歳未満のOGTT受診者6,658例を対象に、空腹時血糖値及びOGTT2時間値とHbA1Cの関連を検討した。
糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告2010.6(日本糖尿病学会ホームページ)
00
400 600
15
OGTT2 時間値
10
5
100
6.0
y = 3.553 + 0.0122xr = 0.809 (p<0.0001)
500300200
n=6,658
HbA
1C(
JDS値
)
(%)
(mg/dL)
日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド 2010.より
① 早朝空腹時血糖値 126mg/dL以上
② 75gOGTT 2時間値 200mg/dL以上
③ 随時血糖値 200mg/dL以上
④ HbA1c(JDS値) 6.1%以上
(HbA1c(国際標準値) 6.5%以上)
① 早朝空腹時血糖値 110mg/dL未満
② 75gOGTT 2時間値 140mg/dL未満
糖尿病 ①~③のいずれか+④
正常型 ①および②
糖尿病診断基準
指 標 優 良可
不十分 不良不可
5.8未満
6.2未満
5.8-6.5未満
6.2-6.9未満
6.5-7.0未満
6.9-7.4未満
8.0以上
8.4以上
HbA1c(JDS値)(%)HbA1c(国際標準値)(%)
7.0-8.0未満
7.4-8.4未満
空腹時血糖値(mg/dL)
80-110未満
110-130未満
130-160未満 160以上
食後 2時間血糖値(mg/dL)
80-140未満
140-180未満
180-220未満 220以上
血糖コントロール指標と評価
JDS値と国際標準値が併記された
・糖尿病治療薬が多種類ある中、どれをどの様に選んで治療していますか?
Q.
・検査値と治療の選択との関係について知りたい。
・各種原因別の治療方法の選択について知りたい。
インスリン抵抗性増大
インスリン分泌能低下
空腹時高血糖
高血糖
インスリン作用不足
2型糖尿病の病態
食後高血糖
膵β細胞 肝臓・骨格筋・脂肪
環境因子
遺伝因子 遺伝因子
過食・運動不足ストレス・加齢
環境因子
糖毒性糖毒性
内因性インスリン分泌能の評価
+
プロインスリン
C-ペプチド
インスリン
PC2, PC3
C-ペプチドとインスリンは等モル比で生成、血中に分泌される。
インスリンは、肝臓などで分解されるが、C-ペプチドは、生体内で代謝されない。
血中に分泌されたC-ペプチドの約10%が尿中に排泄される。
プロインスリンは変換酵素(PC2,PC3)により、 C-ペプチドとインスリンに切断される。
膵β細胞
● 健常人:50-120μg/日
● インスリン分泌不全:20μg/日以下(インスリン依存状態)
● インスリン抵抗性状態では、異常高値になることあり
尿中C-ペプチド(CPR)値
グルカゴン1mg静注後(6分)の血中CPR<2.0ng/ml
or負荷前後の差<1.0ng/ml
グルカゴン1mg静注後(6分)の血中CPR<1.0ng/ml
or負荷前後の差<0.5ng/ml
インスリン治療が必要である可能性が高い
インスリン依存状態
グルカゴン負荷試験
HOMAβ=(空腹時 IRI 値(μU/mL)x360) ÷ (空腹時血糖(mg/dL)-63)
正常値40-63%
HOMAβ
Insulinogenic Index=△IRI/△BS(30分)0.4以下:追加インスリン分泌不足、または、分泌遅延
Insulinogenic Index
1型糖尿病 2型糖尿病
インスリン分泌
血中
イン
スリ
ン ブドウ糖 ブドウ糖欧米に多い2型糖尿病
健常者
日本人に多い2型糖尿病
インスリン抵抗性の評価
1.6未満:正常2.5以上:インスリン抵抗性あり
※空腹時血糖値140mg/dl未満の時に有用
●空腹時インスリン値: 15以上→インスリン抵抗性あり
(μU/ml) (mg/dl)
(μU/ml)
●HOMA-IR=空腹時インスリン値×空腹時血糖値÷405
日本糖尿病協会. 糖尿病治療ガイド2010日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド 2010.より、一部改変
肝臓での糖新生の抑制
骨格筋・肝臓でのインスリン感受性の改善
ビグアナイド薬
チアゾリジン薬
主な作用種 類
インスリン分泌の促進
より速やかなインスリン分泌の促進・食後高血糖の改善
炭水化物の吸収遅延・食後高血糖の改善
スルホニル尿素薬
速効型インスリン分泌促進薬
α-グルコシダーゼ阻害薬
血糖依存性のインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制
DPP-4阻害薬
経口糖尿病治療薬の種類と作用機序
インスリン抵抗性改善系
インスリン分泌促進系
食後血糖改善系
インスリン値
β-細胞機能
インクレチン効果
インスリン非依存状態 インスリン依存状態
2型糖尿病の自然経過と治療薬の選択
前糖尿病 (IGT) 糖尿病と診断
食後血糖
空腹時血糖
α-GIビグアナイド
チアゾリジン
SU 薬
DPP-IV 阻害薬
GLP-1 受容体作動薬
年
インスリン
インスリン抵抗性
グリニド薬
第一選択薬群
α-GI
追加
SU薬
DMIGT
ボグリボース
経口糖尿病薬の使い分け
門脇 孝;月刊糖尿病 2010;Vol.2 No7: 4-15.(一部改変)
STEP 1
低血糖を起こしにくい薬剤の単独処方
STEP 2
第一選択薬群同士の併用
低血糖を起こしにくい薬剤の併用処方
STEP 3第一選択薬群の薬剤は少なくとも1剤残し、少量の
分泌系薬から併用
血管合併症の発症・進展抑制や患者さんのQOL向上のために病態を改善する治療・低血糖を起こさない治療を行う
ビグアナイド薬
チアゾリジン薬
DPP-4阻害薬
ビグアナイド薬
DPP-4阻害薬
チアゾリジン薬
グリニド薬
新しい薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)の位置づけは?
今のところどんな風に使用されていますか?
Q.
血糖
値(m
g/d
L)
–10–5 60 120 180
時間(分)
90
0
180
270
Nauck et al. Diabetologia 1986;29:46–52,
Insu
lin (
mU
/L)
80
60
40
20
–10–5 60 120 1800
時間(分)
健康人 (n=8)グルコース経口摂取 (50 g/400 mL)グルコース静脈注射 (可変用量)
血糖値が同等であるにもかかわらず、
インスリン濃度はブドウ糖経口摂取群で高い。 = インクレチン効果
インクレチン効果
血糖値 インスリン濃度
「インクレチン効果」とは
GLP-1(glucagon-like peptide-1)GIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)
• 膵β細胞のインスリン分泌促進作用に関与する主要な消化管ホルモンの総称
• 栄養素の摂取に伴い消化管から分泌
• 代表的なインクレチンはGLP-1とGIPの2種類
グルコース
アミノ酸
脂肪酸
GIP受容体
GIP
K細胞
栄養素
消化管
L細胞
GLP-1受容体
GLP-1
膵β細胞
インスリン
インクレチンとは
GLP-1のさまざまな作用
Drucker DJ, Nauck MA. The incretin system: glucagon-like peptide-1 receptor agonists and dipeptidyl peptidase-4 inhibitors in type 2 diabetes. Lancet. 2006;368(9548):1696-705.
††
†
GLP-1受容体アゴニスト
GLP-1 受容体作動薬 DPP-4 阻害薬
インクレチンに基づく糖尿病治療薬
DPP-4
ヒトGLP-1
O
NH
N OHNC
F
F NH2 O
F
NN
NN
CF3
ビルダグリプチン シタグリプチン
アログリプチン
(例)エキセナチド(例)リラグルチド
ヒトGLP-1アナログ
インクレチン関連薬
36
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser AspVal
Ser
SerTyrLeuGluGlyGlnAlaAlaLysGlu
Phe
Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly
膵β細胞
DPP-4(分解酵素)
GLP-1受容体作動薬
DPP-4の働きを阻害
DPP-4阻害薬
糖尿病治療薬としての
GLP-1受容体作動薬とDPP-IV阻害薬
体内由来GLP-1
インスリン
GLP-1は血中に存在するDPP-4により分解され、速やかに活性を失う
2型糖尿病患者ではGLP-1に対するインスリン分泌反応が低下している
Toft-Nielsen et al. J Clin Endocrinol Metab 2001; 86: 3717–23 Nauck et al. Diabetologia 1986; 29: 46–52
血中
イン
スリ
ン(m
U/L
)
0
80
60
40
健康成人
20
*******
時間 (分)
01 02 60 120 180
2型糖尿病患者
* * *
0
80
60
40
20
時間 (分)
01 02 60 120 180
グルコース経口摂取 (50 g/400mL) グルコース静脈投与 (可変用量)
mean±SEmean±SE
インスリン値
β-細胞機能
インクレチン効果
インスリン非依存状態 インスリン依存状態
2型糖尿病の自然経過と治療薬の選択
前糖尿病 (IGT) 糖尿病と診断
食後血糖
空腹時血糖
α-GIビグアナイド
チアゾリジン
SU 薬
DPP-IV 阻害薬
GLP-1 受容体作動薬
年
インスリン
インスリン抵抗性
グリニド薬
GLP-1受容体作動薬とDPP-IV阻害薬の違い
Holst JJ et al, Trends Mol Med 14(4):161-8 (2008)Halimi S et al, Diabetes Metab. 34 Suppl 2:S91-5 (2008)http://www.glucagon.com/dpp4diabetes.html
血中
GL
P-1濃
度
GLP-1作用
↑インスリン分泌
↓グルカゴン分泌
↓食欲
↓食物摂取
DPP-IV阻害剤
GLP-1受容体作動薬
DPP-IV阻害薬とGLP-1受容体作動薬ではどちらが有効?
2型糖尿病患者 665人(平均HbA1c 8.5%、メトホルミン1500mg以上/3か月以上服用)
ビクトーザ 1.2mg ビクトーザ 1.8mg ジャヌビア100mg
HbA1c 1.24 %減少 1.5 %減少 0.9 %減少
空腹時血糖値 33.7mg/d低下 38.5mg/dl低下 15mg/dl低下
体重 2.86kg低下 3.38kg低下 0.96kg低下
吐き気 21% 27% 5%
The Lancet, Volume 375, Issue 9724, Pages 1447 - 1456, 24 April 2010
26 週間
インスリンインスリン
SUSU
グリニドグリニド
低血糖のリスク
HbA
1c へ
の効
果
-1%
低い
リスクなしリスクあり
BGBG
高い
α-GIα-GI
インスリンインスリン
SUSU
グリニドグリニド
TZDTZD
体重への影響
HbA
1c へ
の効
果
-1%
低い
減少する増加する
BGBG
高い
α-GIα-GI
TZDTZD
各薬剤の単独療法における有効性・安全性のマトリックス
GLP-1受容体作動薬
GLP-1受容体作動薬
GLP-1受容体作動薬
GLP-1受容体作動薬
DPP-4阻害薬DPP-4阻害薬
DPP-4阻害薬DPP-4阻害薬
低血糖のリスク・体重への影響からみたインクレチン関連薬の位置づけ
DPP-4阻害薬は、経口薬を使っても今ひとつ効果が出ない患者(SU薬二次無効)にインスリンを投与する前の過渡的な併用といった使い方と考えてよいか?
Q.
インスリン値
β-細胞機能
インクレチン効果
インスリン非依存状態 インスリン依存状態
2型糖尿病の自然経過と治療薬の選択
前糖尿病 (IGT) 糖尿病と診断
食後血糖
空腹時血糖
α-GIビグアナイド
チアゾリジン
SU 薬
DPP-IV 阻害薬
GLP-1 受容体作動薬
年
インスリン
インスリン抵抗性
グリニド薬
SU薬・インクレチンによるインスリン分泌機構
インスリン分泌
SU受容体
SU薬
cAMPCa2+
ATP
Ca2+
代謝
インクレチングルコース
グルコース or SU 薬による
インスリン分泌作用
インクレチンによる
インスリン分泌増強作用
PKA Epac2
SU薬の二次無効かと思われる症例でも、DPP-IV阻害薬を併用することにより
良好な血糖コントロールが得られ、SU薬を減量できる症例は存在する。
Kir6.2
Q. DPP-4阻害薬は3剤ありますがそのように使い分けてい
ますか?併用できる糖尿病薬がそれぞれ異なりますが、その他
の視点から何かあれば教えてほしい。
シダグリプチン(ジャヌビア)
ビルダグリプチン(エクア)
アログリプチン(ネシーナ)
1/2 量へ減量使用経験が少なく、安全性
が確立されていない
SU薬
ビグアナイド
チアゾリジン
α―GI
腎機能障害※(中等度)
慎重投与 慎重投与
※腎機能障害(中等度):30≦Ccr≦50ml/min, 男性:1.5<Cr≦2.5, 女性:1.3 <Cr≦2.0mg/dl※※ (高 度): Ccr 30未満, 男性:Cr 2.5 mg/dl以上, 女性: Cr 2.0 mg/dl以上
慎重投与
1/2 量へ減量
腎機能障害※※(高度-末期(透析中))
禁忌慎重投与
1/4 量へ減量慎重投与
肝機能障害 記載なし 記載なし慎重投与
ただし、重度は禁忌
心不全(NYHA III-IV) 記載なし 慎重投与 慎重投与
●●
●
● ●●
●
●
DPP-4阻害薬3剤の比較
糖尿病併用薬
ビクトーザの使用法について、SU剤だけではなくビグアナイドやα-GIなどとの併用は有効と考えておられますか?
Q.
メトホルミンが胆汁の再吸収を抑え、吸収されない胆汁が下部消管を刺激してGLP1濃度を上げる。
DPP-IV 阻害薬とメトホルミンの併用で、血中活性型GLP-1濃度が上昇するとの報告がある。
また、メトホルミンが、DPP-IV 活性を抑制するという報告もある。
DPP-IV 阻害薬とメトホルミンとの併用は有用であるが、GLP-1受容体作動薬と
の併用はDPP-IV 阻害薬とメトホルミン との併用のような相加・相乗的な効果はない。
メトホルミンとインクレチン関連薬
GIP分泌低下
GIP GLP-1 炭水化物吸収
小腸上部(K細胞)
小腸下部(L細胞)
α-GI未投与
α-GI投与
胃 大腸
GLP-1分泌増加
成田琢磨(秋田大学):Prog.Med 2008;28:1893-1897.
α-GIの投与によってGLP-1分泌は増加する
DPP-IV 阻害薬とα-GIとの併用は有用であるが、GLP-1受容体作動薬との併用は
DPP-IV 阻害薬とα-GI との併用のような相加・相乗的な効果はない。
α-GIとインクレチン関連薬
内服→インスリンの切り替え、 あるいは、内服とインスリンの併用 、逆にインスリン→内服への切り替えについて、どの様に決められるのですか?
Q.
インスリン治療を考えるHbA1c値
Iwamoto Y, et al. Diabetologia 2006;49(suppl 1):755DAWN Japan Study*:DAWN : Diabetes Attitudes, Wishes and Needs
もし自分が 2 型糖尿病
ならばインスリン治療
を開始するHbA1C値
(n=132 Drs)
2 型糖尿病患者に
インスリン治療を
考慮するHbA1C値
(n=132 Drs)
実際にインスリン治療
を勧めた患者の平均
HbA1C値
(n=87 Drs,230 Pts)
8.3
7.7
9.2
6.5
7.0
7.5
8.0
8.5
9.0
9.5
HbA1C
(%)
経口血糖降下薬+
基礎インスリン
混合型インスリン
基礎インスリン+追加インスリン(強化インスリン療法)
インスリン治療
インスリン導入
食事療法・運動療法
経口血糖降下薬(単剤)
2型糖尿病の治療
経口血糖降下薬(併用)
BOT:Basal-supportedOral Therapy
追加インスリン
空腹時血糖値150mg/dl以上
and/or HbA1c 7.5%以上のコントロール不良例
日本糖尿病学会編 糖尿病治療ガイド 2006-2007糖尿病専門医研修ガイドブック
インスリン処方患者数(2型)(n=144)
Basal-Bolus15.3%(n=22)
Bolus only9.7%
(n=14)
BOT&Basal only
51.4%(n=74)
Pre-Mix22.9%
(n=33)
Other0.7%
(n=1)
治療法と基礎インスリン製剤の内訳
(新規導入時)※
ランタス80.0%
NPH2.9%レベミル
17.1%
2型糖尿病患者に対するインスリン処方状況調査 EPOCA Marketing、2009年1月※製剤内訳は3ヶ月内で処方変更された症例を除き算出
●経口血糖降下薬のみで治療目標値が達成できない場合
●経口血糖降下薬とインスリン併用療法のメリット
–確実な血糖降下作用
–インスリン感受性の改善作用
–インスリン単独使用時と比較したインスリン投与量の節約
–末梢血の高インスリン血症を避けることができる
–患者の抵抗感が少なく、導入しやすい
–内因性のインスリン分泌があることで、血糖をコントロールしやすい
*:SU薬など
インスリンと経口血糖降下薬の併用療法
Riddle M. Endo Metab Clin NA 1997; 26: 659Riddle M. Am J Med 2004; 116: 35
Step1
Step2
Step4
経口血糖降下薬 (1剤)
経口血糖降下薬 (2-3剤)
Step3
ライフスタイルの改善
+基礎インスリン
基礎+追加インスリン
2型糖尿病の段階的治療
BOT:Basal-supportedOral Therapy
BOTにてインスリンを導入し、その後、追加インスリンを追加する段階的治療は、患者さんへの受け入れもよい。
自己インスリン分泌能が保たれており、内服薬のみで良好な
血糖コントロールが得られる場合。
インスリン→内服薬への切り替え
インスリンとDM内服薬の良い組み合わせと、その工夫は、どうされていますか?
Q.
メトホルミン
チアゾリジン
α-GI
グリニド薬
SU 薬
インスリン
+
インスリンと以下の内服薬を併用することにより、よりよい血糖コントロールが得られる場合があります。
持続型インスリン+メトホルミン・チアゾリジン・α-GI・SU薬/グリニド
強化インスリン+メトホルミン・チアゾリジン・α-GI
混合型インスリン+メトホルミン・チアゾリジン・α-GI・(SU薬/グリニド)
A.
インスリンの投与量を自己調節されている患者さんがおいでます。どのような基準でご指示をなさるのでしょうか?
Q.
A.BOTを導入した際に、空腹時血糖が下がるまで、2単位
ずつ自分で増量して頂くことはあります。1型糖尿病や、インスリン依存度が大きい2型糖尿病の
方で、血糖変動が非常に大きい場合に、1-2単位の調整を指示することはありますが、基本的には、固定単位数でのインスリン投与をしています。
Q.
・血糖値に関して低血糖の値ですが、危険な値のくわしい情報がわかりません。どの値でどの様な症状が出て、どの様な対処が必要なのか教えて下さい。
・低血糖の身体に及ぼす影響について教えて下さい。
低血糖とその症状
度々、低血糖を経験すると、警告症状が発現する血糖閾値(通常 60 mg/dl くらい)が 40 mg/dl くらいまで低下し、意識障害が起こる血糖レベル(50 mg/dl) を下回る。そのため、警告症状なく、意識障害をきたす。
頻脈・顔面蒼白・冷汗・手指振戦など
無気力・倦怠感・計算力減退・
異常行動・意識障害・消失など
中枢神経症状
交感神経症状
無自覚性低血糖
1)中枢神経の後遺症を生じる可能性。
2)全死亡率の増加に関係している可能性。
3)網膜症悪化との関連。
低血糖の身体への影響
1)中枢神経の後遺症→身体的に永続的な障害を生じる
低血糖遷延時間:第三者が、患者本人が健在であることを確認した 後の時間から、病院へ到着するまでの時間
(綿田ら)
糖尿病罹患歴が長く、体重の多い、HbA1c 8-9% 台の比較的コントロール不良の糖尿病患者に対して、低血糖や体重増加を誘発し、HbA1c 6.0%以下を目指すような強化療法は、心血管病変は減少傾向になるかもしれないが、総死亡も増やしてしまう可能性がある。
2)総死亡率の増加に関係している可能性
10251人 11140人 1791人
62歳 66歳 60歳
8.1 7.5 9.5<6.0% ≦6.5% <6.0%
10年 8年 11.5年
ACCORD ADVANCE VADT
人数
平均年齢
前HbA1c
目標HbA1c
観察期間
罹病期間
後HbA1c
心血管病変
細小血管症
死亡率
重篤低血糖
体重変化 +3.5kg +0.4kg -0.1kg -1.0kg +8.2kg +4.1kg
10%減少傾向 6%減少傾向 13%減少傾向
6.4% 7.5% 6.5% 7.3% 6.9% 8.4%
14%減少傾向 変化なし
22%増加 7%減少傾向 7%増加傾向
3.5年 5年 6.3年
7-7.9% 各国基準 8-9%
16.2% 5.1% 2.7% 1.5% 21.1% 9.7%
77.3% 55.4% 40.5% 24.1% 85% 70%インスリン
前体重 94kg 78kg 97kg
有意差なし
ACCORDのみ有意差あり
3)網膜症悪化との関連
● 糖尿病治療開始後半年~1年くらいの初期に一過性に網膜症が悪化する症例がある。
その危険因子
治療開始時のHbA1c高値
初の6カ月での急激なHbA1c改善
すでに網膜症を有する症例
高血圧合併例など
その機序
網膜血流量の減少 血管径の狭小化 血小板凝集能の亢進
低酸素など
● 低血糖により、網膜出血が発症・増悪する頻度は、10-20%。
血糖コントロールの悪い、網膜症症例には、低血糖を生じない、ゆっくりとした血糖コントロールを行う。目安は、HbA1cの低下: 0.5 % / 月
1) 経口ブドウ糖摂取
10gブドウ糖 (グルコレスキューなども有用)を経口投与する。
2) ブドウ糖液の静脈内投与
50%ブドウ糖液20ml以上を経静脈的に投与する。
3) グルカゴン注射
1バイアルを筋注(できない場合は皮下注)。
低血糖とその対処法
低血糖の頻度が多く、薬局でブドウ糖をお渡しすることが多い場合、血糖コントロールについてDrと相談されているか心配に思うことがあります。
Q.
A.低血糖を起こさないような血糖コントロールが重要です。
診察の際に、低血糖を生じていないか、また、低血糖の危険性などに関してお話をしていますが、十分でない可能性もあります。
低血糖の頻度が多いことを主治医に相談しているかを聞いていただければと思います。
過去にお薬をのんで、低血糖になったことがあり、自己判断で服薬調整される方がおいでになると思います。どのように対応しましょうか?
Q.
A.低血糖が頻繁に生じる場合は、薬剤の調整が必要
ですので、いつ、どのような症状が出現し、ブドウ糖摂取で回復したか、などを主治医に必ず報告してください。
HbA1cが9~10%と高い患者に、どの様に(例えば0.5%/月ずつ)下げればいいのかの基準はありますか?
Q.
A.網膜症(特に既に進行した)が存在する場合は、HbA1c
0.5%/月を目安に、また、低血糖を生じないように血糖コントロールすることが重要です。
Q. 血糖値に関して高血糖の値ですが、危険な値のくわし
い情報がわかりません。どの値でどの様な症状が出て、どの様な対処が必要なのか教えて下さい。
A. いくつの血糖値が、危険値であるという明確な数値は
ありません(低血糖のような)。ただし、血糖値の数値によらず、以下の場合は、速やかな治療が必要です。
・尿ケトン体が陽性の時・脱水症状が強い時・意識障害を伴う時・感染症などの他疾患を併発している時
(シック・デイ時)
原因検索と輸液・インスリン治療が必要です
シック・デイの時の内服薬服用について。
Q.
感染症
ストレス
疼痛
誘因 症状
発熱
下痢
嘔吐
食欲不振
水分喪失
Na+喪失
K+喪失
Cl-喪失
H+喪失
HCO3-喪失
補給不足 血漿浸透圧上昇
低ナトリウム血症
低カリウム血症
代謝性アルカローシス
代謝性アシドーシス
糖質摂取量の減少 脂肪分解の増加 ケトン体増加
インスリン抵抗性増悪 高血糖
低血糖インスリン注射経口血糖降下薬
シック・デイ時の病態
主治医に連絡すべき症状
① 嘔吐、または下痢がはげしく半日以上続くとき
② 食事摂取が不可能なとき
③ 高血糖と尿ケトン体陽性が1日以上持続するとき
④ 高熱が2日以上持続するとき
⑤ 短期間で著しい体重減少がみられるとき
⑥ 口渇、多飲、多尿などの症状、あるいは尿量の減少
シック・デイ時の内服薬の調整
食事量 薬の量
通常量 通常通り
半分程度 1/2 に減量
とれない 内服中止
通常通り
内服中止
内服中止
薬の量
SU薬・グリニドα-GI・ビグアナイドチアゾリジン
超持続型インスリン(基礎インスリン)
食事摂取状況によらず、通常通り(血糖値 80mg/dl以下では、30-50%の減量)
超速効型インスリン(追加インスリン)
食事量×インスリン基本量+
インスリン基本量の30%251-300
301-350
351以上
シック・デイ時のインスリン(例:強化療法時)
医療機関受診
血糖値 (mg/dl)
食事量×インスリン基本量+
インスリン基本量の50%
250以下 食事量×インスリン基本量
・「自覚症状がない」もしくは、「HbA1cが高値でも、血糖が正常だから」という理由で、服薬を拒否したがる人がいる。
Q.
・糖尿病の教育入院はどのような流れでおこなわれているのか?(必要な患者様はどのような感じの方か。検査データ的なもので必要と判断するのか。)
糖尿病の患者教育は、治療の一部ではなく、治療そのものである
糖尿病の患者教育は、治療の一部として重要であるE.P. Joslin
Joslin 糖尿病センター
患者教育
● 糖尿病合併症の発症予防
● すでに合併症のある場合は、その重症化阻止
● 糖尿病をもちながらも、健やかで幸せな生活を送れる
よう支援すること
目 標
●糖尿病と診断されたときに系統的に教育することが理想。
●しかし、2型糖尿病患者さんの場合、発病期は病識に乏しく、真剣味に欠けるため、それに応じないことが多い。
●合併症が発症する前、少なくとも合併症が早期のうちに教育を行うべきである。
教育の時期
教育の方法
● パンフレットなどの資料による情報提供
● 糖尿病教室への参加
● 糖尿病教育入院
・糖尿病とはどんな病気か?
・糖尿病合併症:網膜症・腎症・神経障害・動脈硬化性疾患
・治療:食事療法・運動療法・薬物療法 など
チーム医療の重要性
医師
看護師薬剤師
理学療法士栄養士
患者
糖尿病療養指導士
家族
臨床検査技師
Steno糖尿病センターでの専門医とコメディカルのチーム医療による強化療法(生活習慣の改善、血糖、血圧、脂質代謝異常を厳格にコントロール)で、4 年で細小血管合併症が50%に低下、7.8 年で心血管イベントが50%低下、その後すべての患者はステノ糖尿病センターで同じ治療をうけたにもかかわらず13.2年の段階で、全死亡が強化療法群で従来療法群に比べ50%低下した。
N Engl J Med/348巻,5号,383-93:2003年 N Engl J Med/358巻,6号,580-91:2008年
薬はきちんと服用できているが、運動療法、食事療法が全くできていない患者様の対応、指導について。必要性を説明しても本人の理解して頂けない場合はどうしたらいいでしょうか?
Q.
薬物療法を行う
継続して診察を受ける
自己測定を続ける
食事療法を行う
運動療法を行う
“完全に守っている”と答えた割合(%)
0 25 50 75 100 %
Dawn 2001 日本人 data
自己管理はできているのか?
1型糖尿病
2型糖尿病
A.薬がきちんと服用できていることは十分に評価し、
食事療法・運動療法が併用できれば、さらに血糖コントロールがよくなり、薬を減らせることがあります。患者さんの反応をみながら、繰り返し説明することが大切です。
・食事療法は重要な治療法の一つですが、患者さんはよくわかっていない方が多くいらっしゃいます。軽~重症の方までいますが、酒や間食といった他に、どのようなことを特に注意して指導されていますか?
・食事内容とライフスタイルの兼ね合い
Q.
A.●栄養士さんの栄養指導を繰り返し行っています。●腹7-8分目にするように。●野菜サラダを1日2回は食事にとり入れる。●炭水化物(米など)は、食事の 後に食べるようにする。●朝・昼・夕食をとり、夕食はできるだけ早めにとる。など
朝食を食べない事が多いので朝食前の薬は服用しなくていい?
Q.
A.朝食を食べない場合は、薬は内服しなくていいが、そもそも、朝食を抜かないこと。
・朝食なしでもアルギニンを静注し、FFAを抑えておくと、昼食後の血糖値上昇が抑えられた。Diabetes Care 2009; 32:1199-1201
Second meal phenomenon一般的に、朝食後に比べ、昼食後の血糖値が上がりにくい傾向があり
肥満のある2型糖尿病患者
朝食あり 朝食なし
昼食前後に、血糖値・FFA(遊離脂肪酸)を測定
・朝食ありに比べ、朝食なしで昼食をとった方が血糖上昇が著明。
・FFAは、朝食をとることにより昼食前は朝食前より低下していて、そのために昼食後の血糖値が上がりにくい。(FFAが高いとインスリン感受性が低下する)
昼に比べ朝の血糖は上がりやすいので、食事療法で厳格な血糖コントロールを目指すためには、朝食を少なめにとることが必要
薬には副作用があるので、民間療法のほうがいいと言われた。
Q.
A.何とか完治させたいと思う糖尿病患者の切なる心情
を十分に理解し共感したうえで、民間療法のほとんどは、科学的・医学的評価が確定しておらず、有害作用の報告もあることを説明する。
19 23 58
0 20 40 60 80 100 (%)
現在あり 過去あり なし
0 10 20 30 40 50 60 70 (%)
6219
1054
糖尿病に対する民間療法体験率 (n=5,221)
民間療法を行った動機 (n=2,205)
(坪井修平ら、肥満と糖尿病1(4):60-62、2002より)
家族・知人の勧め
新聞・雑誌・チラシ
テレビ・ラジオ
薬局・薬店
その他
・インスリン注射に抵抗がある人への対応はどうされていますか?
Q.
・「インスリンが効きすぎて、血糖が激しく変動するからあまり好かない」といわれました。
・他人に知られるのは嫌だ
・人前で打つのは恥ずかしい
・インスリンを打つことは今までやるべきことを
ちゃんとやっていなかったからだと思う
Iwamoto Y, et al. Diabetologia 2006;49(suppl 1):755
・生活が制限されて活動が狭まる
・ 低血糖が怖い
・自己注射は痛い
・自己注射は怖い
・自己注射は面倒
・一生打つのが嫌だ
自己注射に関して インスリン治療に関して
社会的対人的制約について
インスリン導入に対する心理的障害
4.8%7.9%
38.1%
20.6%
28.6%
0%
10%
20%
30%
40%
まだ早すぎた
やや早かった
ちょうどよかった
少し早い方がよかった
もっと早くすべきだった
インスリン導入後、どう思いました?
半数以上の方は、もう少し早くインスリンを開始したらよかったと感じている
DAWN Japan Study
・80代の男性の方で死んでもよい、お酒をやめられないと言われた。ただお話を聞くだけしか出来きません。お元気な方ですが、HbA1cも8~9%位ある様です。どの様に接してよいのか教えて下さい。
Q.
・HbA1c等をお聞きしても“言いたくない”と言われる患者さんへの服薬指導はどうしたらいいでしょうか?
インスリン注射手技をお聞きしても、“きちんとしている”と言われるだけで確認できない場合の指導をどうしたらいいでしょうか?
糖尿病治療における心理・行動介入
前熟考期
熟考期
準備期
行動期
維持期
考えや感情を聞く情報提供
利益・障害を知りバランスを変える
段階的目標設定行動強化
逸脱・再発予防と対策
QOL配慮ライフイベント対策
糖尿病教室
摂取エネルギー
摂取エネルギー
6か月
介入法
(石井均 糖尿病マスター7:587-595、2009)
① まず、患者さんと話やすい雰囲気を作る。
② セルフケア行動の促進が優先されるのか。心理的適応が優先されるのか。
③ 心理的適応を援助するには、患者さんの感情や考え方を傾聴することが も
重要。
この時期に知識や治療技術の伝達を急ぐことはよくない。
④ セルフケア行動の変化を目標とする場合は、まず目標を設定し、その行動に
ついての実行度と動機付けの状態を把握した上で、それに適合した援助を
行う。
糖尿病治療における心理・行動介入
使い捨てタイプかカートリッジタイプかの患者さんによる使い分けの基準等があれば教えて下さい。
Q.
A.特別な使い分けの基準はありませんが、 使い捨てタ
イプは、カートリッジの交換の手間が無く、その分使用法は簡単で高齢者にも向いています。便利な分、値段はカートリッジより少し高くなります。
高齢の糖尿病患者(インスリン療法が必要)で独り暮らしをしているが、インスリンのデバイスを使いこなせない場合、どのような対応が考えられるか?
Q.
A.
● 家族の協力を得られるように相談する。
● 低血糖を生じないように、また、低血糖を生じた時に適切に対処が困難な場合には、高齢者の方へのインスリン治療は難しい。
マイクロファインを1回に捨てずに2度使う患者さんに困っている。いくら言っても聞いて頂けない。
Q.
A.● 不潔である。● インスリン投与量が正確でなくなる可能性。● 情報の提供と繰り返しの声かけ。
・長年インスリン療法を行っている方も、定期的に手技の確認が出来ればよいと思うのですが、そのタイミングあるいは、間隔はどの程度がよいのでしょうか?
Q.
A.
●血糖が安定しない場合や、処方数と使用量があわない場合なども手技の確認を行います。
●特に高齢の方に対しては、半年~1年に1回くらいは、確認することが望ましいかもしれません。
●注射経験年数が長い程、手技的エラーが多くなるとの報告があります。
インスリンを打ったかどうかわからなくなって、2度打っ
た事がある高齢者の方ですが、本人も工夫している様ですが、何かよい方法はないでしょうか?
Q.
A.● 血糖測定の際にノートに数値とインスリンを打ったら、
チェックを入れるなど。● 御家族の協力を得る。
がん化学療法後の食欲低下時における血糖コントロールの対応はどうしたらいいですか?
インスリン以外には何を用いてコントロールするのが適切ですか?
Q.
A.●内服にてコントロールしている時は、シックデイの時の
ような対処をします。●食欲不振が明らかな場合には、血糖測定をしながらのイ
ンスリン投与の方が、内服薬よりも調整がし易いと思います。
●内服薬でコントロールする場合、低血糖を生じないような薬剤選択が必要です。また、肝機能、腎機能には十分配慮して。
●QOLを考慮して、内服薬でのコントロールに努めますが、やはり必要に応じて、インスリンを使用します。
Q. 近よく肝疾患による糖尿病発症患者に対して、薬物
療法の1st Line がシタグリプチンである、もしくは、シタグリプチンへ変更する症例が多いのですが、肝に効くエビデンスというようなエビデンスはあるのでしょうか?
A.● 肝疾患を合併する糖尿病の治療として、シダグリプチン
が第一選択として用いられることはないと思います。● 脂肪肝に対しては、肝細胞のGLP-1受容体を介して、
直接的な作用として、脂肪肝を改善することも可能性はあります。
1)英文論文や英文著書、国際学会の発表においては、新しい診断基準の施行日である2010年7月1日を以って、NGSP値に相当する国際標準化された新しいHbA1C値を使用する。
国際標準化された新しいHbA1C値に関する運用規定(抜粋)
2)和文論文(総説・抄録などを含む)や和文著書、国内学会の発表においては、当面、現行のJDS値と国際標準化されたHbA1C値を明確に区別し表記する。
3)上記以外の場合(日常臨床、検診・健康診断など)においては、当面の間がJDS値で表記されたHbA1C値を継続して使用する。十分な広報活動を行った上で、本学会が別途告示する日時を以って、国際標準化された新しいHbA1C値に全国一斉に変更する。
5)HbA1C値を用いた血糖コントロール指標と評価に関しては、当面本学会が発行する「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」・「糖尿病治療ガイド」等で示されている現行のJDS値で表記されたHbA1C(JDS値)を用いた血糖コントロールの指標と評価を用いる。現在検討中の国際標準化された新しいHbA1C値を用いた新しい血糖コントロールの指標と評価については、前記(3)の別途告示する日時を以て、使用を開始する。
4)2010年7月1日以降、新しい診断基準に従って糖尿病の診断を行うが、本学会が別途告示する日時までは、HbA1Cについては現行のJDS値で表記されたHbA1C(JDS)値を用いる。
糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告2010.6(日本糖尿病学会ホームページ)
糖尿病の臨床診断のフローチャート糖尿病型;血糖値(空腹時≧126mg/dL、OGTT2時間≧200mg/dL、随時≧ 200mg/dLのいずれか)
HbA1C(JDS値)≧6.1%【HbA1C(国際標準値)≧6.5%】※
3~6ヶ月以内に血糖値・HbA1Cを再検査
血糖値とHbA1C
ともに糖尿病型
糖尿病疑い
なるべく1ヵ月以内に
血糖値のみ糖尿病型
糖 尿 病
・糖尿病の典型的症状・確実な糖尿病網膜症のいずれか
血糖値とHbA1C
ともに糖尿病型血糖値のみ糖尿病型
HbA1Cのみ糖尿病型
いずれも糖尿病型でない
血糖値とHbA1C
ともに糖尿病型血糖値のみ糖尿病型
HbA1Cのみ糖尿病型
いずれも糖尿病型でない
糖 尿 病
糖尿病疑い
糖 尿 病
再検査有り 無し
HbA1Cのみ糖尿病型
再検査(血糖検査は必須)
糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告2010.6(日本糖尿病学会ホームページ)
※HbA1C(国際標準値) = HbA1C(JDS値)+0.4%
2型糖尿病の自然経過
前糖尿病 (IGT) 糖尿病と診断
食後血糖
空腹時血糖
インスリン抵抗性
インスリン値
β-細胞機能
インクレチン効果
糖尿病発症
年
インスリン非依存状態 インスリン依存状態
監修:清野裕(関西電力病院)
社内資料
健常人のインスリン分泌機構
惹起経路惹起経路増幅経路増幅経路
GLP-1受容体
インスリン分泌顆粒
インスリン分泌
GLP-1
DPP-4
GIP
cAMPcAMP
不活化 不活化
GIP受容体
細胞内Ca2+K+
ATP
電位依存性Caチャネル
グルコース
糖輸送担体(GLUT2)
ATP感受性Kチャネル
脱分極
膵β細胞
cAMP-GEFⅡ:cAMP-regulated nucleotide exchange factorⅡ
GLP-1のインスリン分泌機序(仮説)
稲垣暢也. プラクティス 2009; 26(4): 344-347
グルコースKATPチャネル
電位依存性カルシウムチャネル
脱分極
Ca2+
ATPTCA回路
ATP/ADP
SU薬
GLUT2
ミトコンドリア代謝
GLP‐1受容体
GLP-1 cAMP
cAMP‐GEFⅡ
PKA
アデニル酸シクラーゼ
インスリン
EASD/ADA が推奨する糖尿病治療アルゴリズム
ライフスタイル+
メトフォルミン
ライフスタイル + メトフォルミン+
基礎インスリン
ライフスタイル + メトフォルミン+
強化インスリン
ライフスタイル + メトフォルミン+
SU 薬
ライフスタイル + メトフォルミン+
ピオグリタゾン
ライフスタイル + メトフォルミン+
GLP-1 受容体作動薬DPP-IV 阻害薬
Step 1 Step 2 Step 3
ライフスタイル + メトフォルミン+ ピオグリタゾン
+ SU 薬
ライフスタイル + メトフォルミン+
基礎インスリン
①
②
糖尿病診断時
2)心血管イベント、死亡率の増加に関係している可能性
10251 11140 179162 66 6062 57 97
35 32 40
8.1 7.2 9.4
<6.0 ≦6.5 <6.0
94 78 97
10 8 11.5
6.4 7.5 6.4 7 6.9 8.4
-1.7 -0.6 -0.8 -0.2 -2.5 -1.0
3.5 0.4 0 -1.0 8.2 4.1
5 4 8.9 9.6 11.4 10.1
2.6 1.8 4.5 5.2 4.5 3.7
3.1 1 0.7 0.4 9 3
77 55 41 24 90 74
87 74 94 62
95 87 74 67 60 55
ACCORD ADVANCE VADT
N (人)
平均年齢(歳)
男性(%)
大血管障害既往(%)
治療前HbA1c(%)
目標HbA1c(%)
治療前平均体重(kg)
糖尿病既往歴(年)
到達HbA1c(%)
HbA1cの低下
体重増加(kg)
総死亡(%)
心血管死亡(%)
重症低血糖(%/年)
インスリン(%)
SU薬(%)
メトフォルミン(%)
標準 強化 標準 強化 標準 強化
2)心血管死亡、総死亡率の増加に関係している可能性
10251 11140 179162 66 6062 57 97
35 32 40
8.1 7.2 9.4
<6.0 ≦6.5 <6.0
94 78 97
10 8 11.5
6.4 7.5 6.4 7 6.9 8.4
3.5 0.4 0 -1.0 8.2 4.1
5 4 8.9 9.6 11.4 10.1
2.6 1.8 4.5 5.2 4.5 3.7
3.1 1 0.7 0.4 9 3
ACCORD ADVANCE VADT
n (人)
平均年齢(歳)
男性(%)
大血管障害既往(%)
治療前HbA1c(%)
目標HbA1c(%)
治療前平均体重(kg)
糖尿病既往歴(年)
到達HbA1c(%)
体重増加(kg)
総死亡(%)
心血管死亡(%)
重症低血糖(%/年)
標準強化
糖尿病罹患歴が長く、体重の多い、HbA1c 8-9% 台の比較的コントロール不良の糖尿病患者に対して、低血糖や体重増加を誘発し、HbA1c 6.0%以下を目指すような強化療法は、心血管死亡、総死亡も増やしてしまう可能性がある。
標準強化 標準強化
日本糖尿病協会. 糖尿病治療ガイド2010日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド 2010.より
インスリン抵抗性増大
インスリン分泌能低下
空腹時高血糖
糖毒性
高血糖
インスリン作用不足
2型糖尿病の病態
食後高血糖
肝臓での糖新生の抑制
骨格筋・肝臓でのインスリン感受性の改善
ビグアナイド薬
チアゾリジン薬
インスリン
抵抗性改善系
主な作用種 類
インスリン分泌の促進
より速やかなインスリン分泌の促進・食後高血糖の改善
炭水化物の吸収遅延・食後高血糖の改善
経口血糖降下薬
スルホニル尿素薬
インスリン
分泌促進系
速効型インスリン分泌促進薬
α-グルコシダーゼ阻害薬
血糖依存性のインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制
食後高血糖
改善系
DPP-4阻害薬
経口糖尿病治療薬の種類と作用機序