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Buddhism All-Japan Network
目的の大切さ 仏教の生きる意味を現代へ 通信コース[初級]①
この通信コースは、2600 年前、仏教に解き明かされた本当の生きる意味を、半年で
体系的に理解するための講座です。このコースを終了した時、あなたは現代の誰より
も深い人生観が身についたことに気づくでしょう。
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著作権について 本教材は著作権法で保護されている著作物です。
本教材の著作権、その他あらゆる権利は、Buddhism All-Japan Network に属します。
著作権者の書面による事前許可なくして、本教材(テキスト、動画含)の一部または全部をあらゆるデータ
蓄積手段(印刷物、DVD、電子ファイル、CD、テープレコーダー、ビデオ、インターネットサーバー等)に
より、複製、流用、転載、翻訳、販売(オークション含む)することを禁止します。
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望者は以下のサイトで乙が正規に公開している本教材を入手することができます。
http://buddhism.ne.jp/
第3条 契約解除
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違反件数と基準額を乗じたものの10倍の金額を支払うものとします。またインターネット等で公開
した場合は一律、基準額に700を乗じた金額を支払うものとします。
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発生した損害に関して、乙は一切の責任を負わないものとします。
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はじめに
一体なぜ、どんなに科学が進歩して、物質的に恵ま
れても、心から満足できないのでしょうか。
この度は、尊いご縁を結ばせていただき、どうもありがとうございました。
このコースでは、2600年前、仏教によって解き明かされた本当の生きる意
味、真の生きる目的を半年で学ぶことができます。
20世紀は科学では幸せになれないことを証明した世紀といわれますが、み
んな幸福を求めて生きているのに、なぜ幸福になれないのでしょうか。一生
懸命努力しても、苦しみ悩みの波は次から次へとやってきます。
現代の日本では、もちろん全員があてはまるわけではありませんが、たいて
いは受験戦争を勝ち抜いて大学に入り、社会に出てからも、競争を続けな
ければなりません。
社会に出て訳も分からず、与えられた目標に向かってあっという間に過ぎ
て行く20代。
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30代になると、ある程度ものごとが分かり、自分の目標に向かって頑張りま
す。ところがすぐに40歳に達すると、自分の人生が見えてくるようになりま
す。
人生の半ばを過ぎ、体力が落ちてくるのに、もっと高い目標を掲げられ
「30代であれだけ頑張ったのに一体どこまで行けばいいんだろう」
とうんざりする人も多く、40代、50代と、自殺率が高まってきます。
やがて定年退職を迎えると、あれだけすべてを会社と家族のために捧げて
きたのに、あっさり裏切られ、子供も親もとを離れ、心にぽっかり穴が空いた
ようになります。
これからの人生、何をすれば心から満足ができるのか。
今まで色々やってきたけれど、心からの満足はなかった。
体力も落ちて物忘れもひどくなり、今までできたこともできなります。
友達も一人一人死んで行き、自分の体調もすぐれなくなり、
誰からも相手にされなくなっていきます。
結局、人生何もなかったと知らされるのです。
それなのに、一体何のために、頑張って生きねばならないのか。
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その時その時の目先の目標ではなく、本当の生きる意味がわからなければ、
苦労するだけで、意味のない人生になってしまいます。
真の生きる意味を知らなかったり、目先の目標や、趣味生き甲斐、生きる手
段を、生きる目的と勘違いしてしまえば、人生全体、苦労が報われません。
真の生きる意味が分かるかどうかが、あなたの人生を分けるのです。
現代は、高度成長のようにみんな同じ目標に向かっていた頃と違って、成
熟経済となり、価値が多様化して、物質的な豊かさが必ずしも幸福とはいえ
ないと気づき始めた人が増えています。
では一体何を求めれば、心から満足できるのか。
21世紀は心の世紀といわれますが、本当の生きる意味の重要性がますま
す高まっています。
しかし、あらゆる本や、テレビ、自己啓発セミナーなども、色々な生きる目的
を提示していますが、生きる手段の域を出ず、一般には何が正しいのか一
般には分からないのが現状ではないでしょうか。
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その為、人生をまじめに考える人でも、色々な情報に惑わされて、結局、こ
れといったものに出会えず、生きる目的はないと思い込み、人生を終わっ
てしまいます。
本当の生きる意味は何か、幸いにも、人類の到達した 高の思想といわれ
る仏教に解き明かされています。
どう生きるかという生きる手段はもちろん人それぞれですが、人生で重要な
一本の軸、本当の生きる意味。すべての人にとって、これほど大切なことは
ありません。
ところが、生きる意味を知りたいと思っても、仏教を知りたいと思っても、これ
まで分かりやすく、深く学ぶ方法はありませんでした。
分かりやすいと思うと内容が浅いですし、何か深いことが書かれているかと
思うと、初心者にとっては、難しすぎます。
私はここ10年以上、仏教に解き明かされた生きる意味を人にお話ししてき
ました。そして多くの人から、本当の生きる意味が分かったと喜びの声を頂
いています。
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その経験から、内容を体系的にまとめ、 短コースで理解できるようにまと
めました。
もちろん人生に関することは、根本的に深いですので、テクニックのような
表面的なものではありません。テクニックなら知識として知れば、ある程度
すぐに役立ちますが、仏教思想は、人類の到達した 高の思想といわれる
深いものです。繰り返し聞かなければ分からないでしょう。私自身、今まで
の自分の考えに比べ、言われていることがすごすぎ、何度も聞かないと分
からないことがよくありました。
ですがこのコースを半年間、やり通したならば、信じられないほど深い人生
観を身に付けることができるはずです。ですからこのコースは、一回だけで
なく、ぜひ何度も何度も真剣に復習して頂きたいと思います。必ず仏教の
深い内容を受けとめられると思います。
このコースの製作は、とても独力でできるようなものではありません。製作す
るにあたり、たくさんの方々からご協力を頂きました。心より感謝いたします。
また、私が本当の生きる意味を知らされたのは、ひとえに高森顕徹先生の
おかげであり、どんなに感謝しても、感謝しすぎることはありません。
高森先生は、浄土真宗において50年以上、親鸞聖人のお言葉を提示して
分かりやすく解説するという、他に例を見ない講演活動をされ、仏教に説か
れる生きる意味を明らかにしてこられました。
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ここで、このコースを製作するにあたり、多大なご恩を頂いた高森先生のご
著書を紹介したいと思います。
これらを全部購入せよと言うつもりはありません。しかし、それぞれ何度読ん
でも新たなことが知らされる類書のないずば抜けた内容であることは間違い
ありません。
このコースを製作するにあたり、何度も読ませて頂きました。これらは一生
の宝となることを保証いたします。
高森先生、本当にどうもありがとうございました。
・ なぜ生きる
・ (なぜ生きる 朗読版)
・ (朗読CD なぜ生きる)
・ なぜ生きる2
・歎異抄をひらく
・ (朗読DVD 歎異抄をひらく)
・ 親鸞聖人の花びら 桜の巻
・ 親鸞聖人の花びら 藤の巻
・(朗読CD 親鸞聖人の花びら)
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・光に向かって100の花束
・光に向かって123のこころのタネ
・光に向かって心地よい果実
他にも、英語版、中国語版などが出ています。
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通信コース① 目的の大切さ
それでは史上初の本格的な仏教通信コースの始まりです。
この教材は、1回分が、テキストと映像のセットです。どちらを先に見て頂い
ても構いません。このセットによって、テキストのみよりも、ずっと分かりやす
くなります。メルマガのバージョンアップ版ですので、はるかに深い内容に
なっています。しかも、一回一回、知らされたことなどをノートにとられますと、
より一層いいのではないかと思います。
ぜひ映像もテキストも繰り返しご覧下さい。
それでは始めます。
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ノーベル賞科学者は
なぜ他人に研究するなというのか
京都大学出身で、ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進と、東京
大学出身で、ロッキード事件で田中角栄退陣のきっかけを作ったとされる
立花隆が対談した本があります。
その本によれば、利根川進は学生に、
「研究するな」
と言っているそうです。
これは少しおかしいですよね。
自分はノーベル賞級の研究をしておきながら、他人には研究するなとは、
一体どういうことでしょうか。
それは、大半の学者は、何が本質的に大切なのか分からないから、科学の
発展にあまり貢献しない、つまらない研究のために、一生を棒にふってしま
う。一生の研究時間なんて限られている。だから、若い学生は、まず本当に
重要なものを重要と判断できる、ジャッジメント能力を身に付けることが大切
だということです。
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私たちも、人生でやりたいことは山ほどあります。しかし、その時、少しやり
たいと思っただけであれもこれもと抱え込んでしまうと、本当に重要なことを
する機会を失ってしまいかねないのではないでしょうか。
その、重要なことは何かを判断するためには、まず自分の本当の生きる
意味とは何か、真の生きる目的は何か、知らねば判断できません。
一生を棒にふらないためには、生きる目的を知ることが大切なのです。
大統領と囚人の分かれ道とは?
クリーブランドがアメリカの第22代大統領に当選した時、獄中で、ある男
がこう言ったそうです。
「やはり、あの方が当選されたか。立派だったものなぁ」
不審に思った看守が、
「お前は、クリーブランド氏を知っているのか」
と尋ねると、なんと中学校の同級生で、
しかも、学年で1、2位を争うライバル同士だったそうです。
なぜ、社会に出る前は、同じような才能を持っていた人が、こうも違う
運命になってしまったのでしょうか。
この男によれば、中学を卒業した時、お祝いに飲みに行こうと誘ったところ、
クリーブランドは
「味よきが故に断つ」
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と言って途中から帰ってしまった。
「俺は一度ぐらいなんだ、これが 後だ、これが 後だ、が度重なって、つ
いに今日のように雲泥の差が生じてしまったのだ」
と言ったそうです。
下等の人間は舌を愛して、身を愛さぬ。
中等の人間は身を愛して、心を愛さぬ。
上等の人間は心を愛するが故に、克己して勇猛精進する。
といわれますが、同じ才能を持ちながら、未来に雲泥の差が出てしまうの
は、「勇猛精進の克己心」が、あるかないかの違いではないでしょうか。
「偉業を成就せんと志す者は、すべからく衣食に心を奪われてはならない」
「頂上を極める者は弊衣粗食、よく初志を貫徹する者」
だと言われます。
一度くらい、これを 後、と思っているうちに、ずるずると欲に溺れてしま
う人ばかりですが、目先のあれがやりたい、これがやりたいというものに溺れ
て、重要なことを見失っていては、人生を棒にふりかねないということです。
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船が沈没する時、甲板の人が死に、
船室の人が助かる理由
瀬戸内海で、遊覧船が沈んで、多くの人が溺れ死んだことがあったそう
です。
ところがその時、特に甲板に出ていた人が溺れ死んで、逆に、船室奥深
くいた人が、助かったそうです。
一体なぜでしょうか?
甲板にいた人が助かって、船室奥深くにいた人が溺れるのなら分かりま
す。ところが逆だった。
一体なぜかというと、甲板にいた人たちは、船室においていたお金と宝
石とか、荷物を持ちだそうと、わざわざ船室までとりに行ったそうです。
逆に、船室にいた人は、荷物をもってそのまま出てきたんですよ。
それで、船室にいた人の方が早く逃げることができた。
災害の時大切なのは、金や物よりも、命ですよね。
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ここで問題なのは、その時一番大切なことが的確に分かるかという
ことです。
やはり、重要なことを見極めるジャッジメント能力が大切だと、ここでも分
かります。また、仮に重要なことが分かっていたとしても、何とかあのお金を
とってきたい、ちょっとだったら大丈夫と、金や物に引きずられてしまうと、溺
れ死んでしまいます。
自分の欲に殺されてしまったんですね。
まず、大事なものを判断する力と、己にうちかって、その時大事なものを
選び取る力が大事だということですね。
泣いて馬謖を斬るのはどんな時?
中国に「泣いて馬謖を斬る」という故事があります。
三國時代のこと、大変人徳が高かった劉備玄徳が、諸葛亮孔明という、
天才的な軍略家を召し抱えるべく3回も訪問しました。
孔明は、普通なら呼びつけられるところわざわざ自分の家まで会いに来
てもらった。しかも一回目、二回目は外出中。
三回目は、孔明は寝てた。
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書生が「起こします」というと、劉備玄徳は、
「いえいえ、先生に失礼があっては大変、私はここで待ちます。」
起きるのを待っていた。
諸葛亮孔明が起きた時、書生が、
「今お客さんが来られてます。」
「どなたですか。」
「劉備玄徳さまです」
「えー?何で起こしてくれないの?」
急いで着替えて、お迎えする。
劉備玄徳にあまりに謙虚に、誠心誠意仕えてくれないかとお願いされた
為に、ついに、天才・諸葛亮孔明が動いたのです。
そして国を持たなかった劉備玄徳が、快進撃を続け、孔明の天下三分
の計により、蜀という国を樹立し、世に有名な三国時代に入ります。
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ところが、やがて、劉備玄徳が亡くなり、諸葛亮孔明が、次の皇帝につい
てはどうかという話もあったんですが、
「いえいえ、私はとてもそんなことはできません
劉備玄徳様のお子さんに皇帝についてもらいましょう」
と、劉備玄徳の子、劉禅に跡を継いでもらった。
やがて、亡き劉備玄徳の遺志をついで、北の大国、魏を討伐に行きます。
その時に出したのが、有名な「出師の表」です。
命懸けで出陣する遺言状のようなものですから、自分のなきあとは、こう
いうふうに政治をしてください、と記され、読んだ人は涙せずにおれない名
文として、今日に伝わっています。
その時は、命がけで攻め入ったためか、快進撃をしていったんですが、
途中で、非常にかわいがっていた、馬謖という部下が、孔明の命令に背い
た為に、大敗を喫してしまった。これによって、今回の作戦すべてが台無し
になります。
軍律では死刑。
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しかし、馬謖は孔明がとてもかわいがり、将来を託そうと思っていた部下
だ。孔明は迷いました。
しかし孔明は、軍律のためには、どんなにかわいい部下でも斬らねばな
らないと決意。
そこで、「泣いて馬謖を斬る」という故事ができたんですね。
大事をなさんとする者は、時には「泣いて馬謖を斬る」識見と英断
が必要、ということです。
お釈迦様はどのように説かれたでしょう
か?
経典には
と説かれています。
「世人」とは、世の中の人ということで、私たちのことです。
「薄俗」とは、
世人薄俗にして、共に不急のことをあらそう
(大無量寿経)
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「薄」とは浅薄で浅はかということ。
「俗」とは俗っぽくて通俗的ということです。
世の中の人は、浅はかで、通俗的で、共にあらそってまで、不急のこと、
急がなくていいことをやっている。
なぜ生きるかという生きる目的を知らずに、
どう生きるかという生きる手段ばかりに一生懸命。
目先のことばかりに心を奪われて、人生の大事を知らない
とお釈迦様は説かれています。
ちょっとやりたいな、ということに翻弄され、人生の中で、必ずやらねばなら
ないことを後回しにしているのが、人間のお粗末な姿だということです。
人生でも、まず目的を知ることが大切。
生きる目的がハッキリすれば勉強も仕事も、健康管理もこのためだと、す
べての行為が意味を持ち、心から充実した人生になるでしょう。
ニーチェは、道徳の系譜の中に、なぜ生きるかがわかれば、「人間は苦悩
を欲し、苦悩を探し求めさえする」と書いています。
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たとえば、高校野球なら、練習はけっこう辛いと思いますが、甲子園へ行く
という目標があればがんばれます。
そこまで目標が高くなくても、野球の技術が向上するとか、野球が楽しい
とか、団結が生まれるとか、何かしら目標があります。
もし、高校野球やってても、甲子園は勿論、技術の向上どころか、怪我を
して、技術は低下する。けんかばかりして、友情は壊れて団結は乱れる。
面白くない、となれば、辛い練習したくありません。
受験勉強なら、好きな人はないと思いますが、なぜ受験勉強するかとい
うと、入りたい大学があるからです。
もし、絶対大学入れないとなったら、受験勉強する人いないですよね。
このように、目標があるからこそ、苦しいことでも頑張ることができる、とい
うことです。
ビジネスの世界でも、野口悠紀夫著「超」整理法・時間編という本の中に、
こうあります。
「時間管理法の本がほぼ例外なく忠告しているのは、人生の目的を
把握せよということである」
やっぱり、時間をどんなに効率的に使っても、何のためかという目的が分
からなかったら意味がありません。
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80年分の人生を40年で終わらせても、意味がわからないですよね、
だから、まず人生の目的を把握せよ、その上で時間を短縮してこそ意味が
あると言っています。
成功者が自然に習慣化している原則
ビジネス書では、史上 高のベストセラーの1つ、「七つの習慣」には、人
生の扉を開く七つの原則が書かれていると言われますが、その七つの原則
の二番目にこうあります。
目的を持って始める
世界中の成功者を見ると、目的を持って始めているということです。
サラリーマンなら目的を持っていなくてもいつの間にかなれると思うんで
すけど、野球選手ならどうでしょう。
相当才能があって、小さい頃から努力しないと厳しいので、
「あれ?おれ気がついたら、いつのまにか野球選手だった」
そんな人いないですよね。
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「あれ?おれっていつのまにか、億万長者だった」
「あれ?ノーベル賞?これいつのまにおれにくれるの?何で?」
そんな人いないですよね。
やはり世界中の成功者を調べたら、目的を持って始めているという共通の
習慣が発見されたんですね。
では、私たちの生きる目的は何でしょう。
この有名な言葉をヒントに。
お釈迦様の
というお言葉をヒントに考えて見ましょう。
これは、よく意味を誤解されて、バイクで爆走している人の服に書かれてい
たり、橋にスプレーで書かれていたりします。
天上天下 唯我独尊
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それというのも、おそらく「大宇宙で、おれ一人えらい」という意味だと思って
いるんだと思います。(もしかすると、正しく理解して、みんなにも教えてあ
げようという仏縁深い人かもしれません)
ですが、おれ一人尊いという意味ではありません。
天上天下唯我独尊と言われたお釈迦様は、世界の三大聖人にあげられる
ような方ということを考えてもふにおちません。
二十世紀 大の天才科学者といわれるアインシュタインは、
「現代科学に欠けているものを埋め合わせてくれるものがあるとすれ
ば、それは仏教です」
と言い、ドイツのノーベル賞作家、ヘルマン・ヘッセは、
仏陀を見たわけだ。そこには、何の求めるところも、欲するところも、
まねるところも努力するところも認められず、光と平和があるばかりで
あった。その手の指の一つ一つの関節が教えであり、真理を語り、呼
吸し、におわせ、輝かせている、と思われた。この人、この仏陀は、小
指の動きに至るまで真実だった。(ヘルマン・ヘッセ「シッダールタ」)
と言っています。
これほど世界中の偉人からほめたたえられる方が、
「おれが偉いんだー、お前ら虫けらどもー」
なんて言われる必要ないですよね。
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実るほど 頭をたれる 稲穂かな
日本の昔の言葉で、
実るほど 頭をたれる 稲穂かな
という言葉があります。
これは、まだ若くて青いうちはつーんと立っているイネも、だんだん秋にな
って、色づいてくると、頭をたれてくる。実れば実るほど、頭をたれてくるとい
うことです。
これは、単にイネだけのことを言っているのではなく、私たち人間でもそうで
はないでしょうか。
まだ若くて青いうちは、つーんと虚勢をはっている若者も、本当に円熟して
くると、虚勢をはる必要はありません。頭が低くなってきます。
こんな言葉もあります。
賢者は愚者からも学び、愚者は賢者からも学ばず
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賢者は、どんな人からであっても、何か自分よりすぐれた学ぶところがあると
思って学びとるんですけど愚か者は、うぬぼれて、自分よりも間違いなくす
ぐれた賢者からであっても何も学びません。
これは、賢者はどんどん学び、愚者は全然学ばないので、差は開く一方で
す。
他にも
下がるほど、人の見上げる藤の花
という歌があります。
藤棚からぶら下がっている紫の藤の花は、下がれば下がるほど、すばらし
い花だとみんなが見上げるということです。
私たち人間もそうです。
おれは偉いんだと言えば言うほど見下げられ、謙虚にすればするほど、立
派な人だと見上げられるということです。
本当にえらい人が、自分のことをえらいというわけがないんですね。むしろ
品格を損ないます。
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この程度のことは、ある程度の年齢になれば、日本人の誰もが分かってい
ることですから、ましてやお釈迦様が、自分が一番偉いんだといわれるはず
がありません。
では、どういう意味なのでしょうか。
「天上天下」を間違える人はありません。
「大宇宙広しといえども」ということです。
問題は「唯我独尊」の「我」です。
これは、おれ一人ということではありません。
我々、一人一人、私たち人間のことです。
お釈迦様のことであれは、次に続く
三界皆苦 吾当安此
という文章の中で、「吾」という漢字を使われています。
この文脈では、お釈迦様自身には「吾」を使われているのです。
ですから「我」は、ここでは我々一人一人という意味です。
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次に間違っているのは、「尊」を、えらいと思ってしまいますが、そうでは
ありません。
この「尊」は、尊い使命とか、目的ということです。
だから、この「唯我独尊」とは、
ただ、我々人間だけが、たった一つの尊い目的をもってこの世に生まれて
きたんだという意味なのです。
人命の尊厳はどこから?
人命の尊厳ということがいわれますが、パスカルというフランスの哲学者は
「人間は考える葦である」と言いました。
人間は、自然の中で も弱い、一本の葦にすぎない。しかしそれは
考える葦である。(パスカル「パンセ」)
人間は、少し風がふけばたおれてしまう、一本の、弱い葦にすぎない。しか
し、それは考える葦である。
人間は、自然界の中では、走る速さでは、犬や猫にかないませんし、空を
飛べる鳥より飛べないし、うまく泳げる魚より泳げません。
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動物に比べれば、弱いところだらけの人間です。しかし、人間は他の動
物にない特徴として、考える力を持っているんだ。何のために生きているの
か、考えることができる。
人命の尊厳とか、人命は地球より重いと言われますが、この点が他の動物
との違いなのです。
犬や猫や豚は、おそらく何のために生きているのか考えていません。ぶひ
ぶひ言いながら食べる。お腹が一杯になると寝る。食べられればOKです。
しかし、もし人間なのに生きる意味が分からないとしたら、こんな動物とあま
り変わらなくなってしまうのではないでしょうか。
そんな人の人生を一休は、
食て寝て起きて糞たれて 子は親となる 子は親となる
と歌いました。
食べては出し、寝ては起きるのくりかえし。そうして毎日同じことを繰り返し
ているうちに、子は親となり、その子がまた親となる。そうしているうちに、自
分は死んでしまいます。
本質的には、布団のあげおろしと、台所と便所の往復で人生は終わって行
くんだということを一休は歌っています。
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天上天下 唯我独尊も、
大宇宙広しといえども、私たち人間だけが、犬や猫には果たすことのでき
ない尊い使命、目的があるんだ、ということです。
ではそれは何か。
このコース全体で明らかにしていきたいと思います。
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まとめ
・利根川進 重要なことを重要と見極めるジャッジメント能力
・遊覧船 その時大事なことを判断する力がないと金や物に殺される。
・クリーブランド大統領 周りに流されていると将来大きな差になっていく。
・泣いて馬謖を斬る 時には識見と英断が必要
・世人薄俗にして共に不急のことをあらそう。(大無量寿経)
世の中の人は、急がなくていい目先のことに心を奪われて、人生の大事を
知らない。なぜ生きるかという生きる目的を知らず、どう生きるかばかり。
・天上天下 唯我独尊(釈尊)
大宇宙広しといえども、私たち人間だけに犬や猫には果たすことのできな
い尊い目的がある。
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覚えましょう
※後半は、「三界は皆苦なり」
人生には色々な苦が充満している。
「吾(釈尊)当ま さ
に此こ こ
に安んずべし」
私はその苦しみの世界にありながら安らかで楽しい。
一切の人々は、この無碍の世界に出る為に生まれてきたのだ、
ということです。
世人薄俗せ に ん は く ぞ く
にして、共と も
に不急ふ き ゅ う
のことを諍あらそ
う
(大無量寿経だいむりょうじゅきょう
)
天上天下て ん じ ょ う て ん が
唯我独尊ゆ い が ど く そ ん
三界皆苦さ ん が い か い く
吾当安此ご と う あ ん し