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取組事例紹介 - hataraku.metro.tokyo.lg.jp¥½事例集(WEB).pdf新たな採用活動に対しての行動を取ることができた。 具体的な効果 ・アドバイスを受けてから一気に採用につながった。

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取組事例紹介

特集Ⅰ

特集Ⅱ

○平成 27年度中小企業の緊急人材確保支援事業の概要 ………………………… 2

特別寄稿 人財採用力を高めるために企業が取るべき打ち手 ………………… 4

ハローワーク最前線 職業指導官に訊く …………………………… 6

国土管理株式会社 ……………………………………………………………… 8

環境保全株式会社 …………………………………………………………… 10

太洋モータース株式会社 …………………………………………………… 12

東進産業株式会社 …………………………………………………………… 14

ジール株式会社 ……………………………………………………………… 16

コンピュータシステム株式会社 ………………………………………………… 18

株式会社モノリス …………………………………………………………… 20

大立工業株式会社 …………………………………………………………… 22

丸喜株式会社齋藤組 ………………………………………………………… 24

シービーエス株式会社 ……………………………………………………… 26

明治自動車株式会社 ………………………………………………………… 28

株式会社ACROSEED ……………………………………………………… 30

採用支援のプロが語る「中小企業における効果的な採用のあり方」 … 32

○採用・人材育成等に関する支援機関 ……………………………………………… 34

○東京都からのお知らせ………………………………………………………………… 36

は じ め に

 景気回復や建設需要などを背景に、都内有効求人倍率は、平成28年2月現在

で1.90倍と高い水準で推移し、企業の激しい人材獲得競争が続いています。

中小企業にとっては人材確保は喫緊の課題であり、大企業に比べて知名度の

低さや企業の魅力発信が十分でないなど、自ら人材確保に取り組むことが困

難な企業も少なくありません。

 そこで、東京都は、平成27年度から新たに、従業員の採用に悩みを抱える

中小企業に対して専門家を派遣し、採用実務や人材活用等のコンサルティン

グを行うとともに、ハローワークと連携し、企業の人材ニーズに合った採用

を支援する「中小企業の緊急人材確保支援事業」を開始いたしました。

 本冊子は、この事業を活用し、採用方法の見直しや自社の魅力発信に取り

組まれた企業の中から、他の企業でも実践いただける事例を取りまとめると

ともに、有識者・採用支援のプロからのアドバイスやハローワークの有効な

活用方法なども紹介することで、広く都内の中小企業の皆様の人材確保に係

る課題解決の一助としていただくために作成いたしました。

 中小企業の皆様にとりまして、今後、より効果的に人材を確保していくた

めに、この冊子を活用していただければ幸いです。

 最後に、お忙しい中、本事例集の作成にご協力いただきました皆様に、厚

くお礼を申し上げます。

 平成28年3月

東京都産業労働局雇用就業部就業推進課

目  次

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取組事例紹介

特集Ⅰ

特集Ⅱ

○平成 27年度中小企業の緊急人材確保支援事業の概要 ………………………… 2

特別寄稿 人財採用力を高めるために企業が取るべき打ち手 ………………… 4

ハローワーク最前線 職業指導官に訊く …………………………… 6

国土管理株式会社 ……………………………………………………………… 8

環境保全株式会社 …………………………………………………………… 10

太洋モータース株式会社 …………………………………………………… 12

東進産業株式会社 …………………………………………………………… 14

ジール株式会社 ……………………………………………………………… 16

コンピュータシステム株式会社 ………………………………………………… 18

株式会社モノリス …………………………………………………………… 20

大立工業株式会社 …………………………………………………………… 22

丸喜株式会社齋藤組 ………………………………………………………… 24

シービーエス株式会社 ……………………………………………………… 26

明治自動車株式会社 ………………………………………………………… 28

株式会社ACROSEED ……………………………………………………… 30

採用支援のプロが語る「中小企業における効果的な採用のあり方」 … 32

○採用・人材育成等に関する支援機関 ……………………………………………… 34

○東京都からのお知らせ………………………………………………………………… 36

は じ め に

 景気回復や建設需要などを背景に、都内有効求人倍率は、平成28年2月現在

で1.90倍と高い水準で推移し、企業の激しい人材獲得競争が続いています。

中小企業にとっては人材確保は喫緊の課題であり、大企業に比べて知名度の

低さや企業の魅力発信が十分でないなど、自ら人材確保に取り組むことが困

難な企業も少なくありません。

 そこで、東京都は、平成27年度から新たに、従業員の採用に悩みを抱える

中小企業に対して専門家を派遣し、採用実務や人材活用等のコンサルティン

グを行うとともに、ハローワークと連携し、企業の人材ニーズに合った採用

を支援する「中小企業の緊急人材確保支援事業」を開始いたしました。

 本冊子は、この事業を活用し、採用方法の見直しや自社の魅力発信に取り

組まれた企業の中から、他の企業でも実践いただける事例を取りまとめると

ともに、有識者・採用支援のプロからのアドバイスやハローワークの有効な

活用方法なども紹介することで、広く都内の中小企業の皆様の人材確保に係

る課題解決の一助としていただくために作成いたしました。

 中小企業の皆様にとりまして、今後、より効果的に人材を確保していくた

めに、この冊子を活用していただければ幸いです。

 最後に、お忙しい中、本事例集の作成にご協力いただきました皆様に、厚

くお礼を申し上げます。

 平成28年3月

東京都産業労働局雇用就業部就業推進課

目  次

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業事援支保確材人急緊業企小中都京東

集例事好

目 的

支援対象

応募・支援状況

支援企業選定方法

支援内容

支援の流れ

 中小企業の人材不足が深刻となる中、存続・生き残りや成長を図るために不可欠な即戦力人材の確保を目的に、企業に専門家を派遣し、採用や人材活用等に関するコンサルティングを無料で実施するとともに、ハローワークと連携して、各企業のニーズに応じた人材の確保を支援します。

 都内に本社又は主たる事業所が存在し、常時雇用する従業員が 300人以下で、即戦力人材の確保に課題を抱えている企業が対象です。

応募企業数 190社   支援企業数 100社

 申請書類と事前ヒアリングで確認した内容をもとに、東京都、東京労働局、民間の有識者で構成する「中小企業緊急人材支援事業企業選定委員会」において、総合的な審査を行い、支援の対象となる中小企業を選定しました。

◦専門家による課題の分析・改善計画の作成、人事制度構築等の改善策の提案◦ハローワークと連携して、企業の人材ニーズに応じたマッチング等の実施◦採用活動中における必要な助言等

人材ニーズに応じた採用ノウハウ・人材育成方法・人事制度構築等について専門家によるコンサルティング等を実施※各社5回程度 1回当たり 2~3時間

採用活動中のサポート

(必要な助言等)

ハローワークによる、マッチングをはじめとした様々なサービス

課題を洗い出し、改善の方向性、支 援 の 必要 性 等を、書面とヒアリングで確 認 後、委員会で支援企業を決定

支援企業の 中 から、成 功事例を集めた冊子を作成

即戦力人材の確保に悩みを抱えている企業を募集

連携

企業募集 事前ヒアリング コンサルティング等の支援(3ヵ月程度)

アフターフォロー(3ヵ月程度) 好事例集作成

平成27年度 中小企業の緊急人材確保支援事業の概要 支援企業の内訳

支援した企業の声(企業アンケートより(2月 22日〜 29日実施))

従業員規模 業 種

募集職種 支援企業が抱える課題

5人以下4社

6~20人36社

21~50人20社

51~100人19社

101人

300人21社

応募者がいない

採用の知識が無い

応募はあるが採り

たい人がいない

選考、内定辞退

される

採用後辞めて

しまう

その他

80社67社

32社 32社19社

27社

0102030405060708090

SE・プログラマー等

営業職

建築技術職

事務職

その他技術職

介護

その他

0510152025303540 38社 35社

16社 15社 12社

2社8社

情報通信業39社

建設業19社卸売業、小売業

11社

サービス業10社

製造業7社

不動産業5社

運輸業5社

医療、福祉3社 金融業、保険業

1社

○どのような点が役立ちましたか ?(複数回答)

○コンサルティングにより、具体的にどのような効果がありましたか。(複数回答)

○コンサルティング開始後の内定者数平成28年2月末現在 内定実績 335人(67社)

具体的に役立ったこと・求人広告記載方法の修正を行い、明確に求める人材を表示することができるようになった。・ハローワークへの求人票の内容の見直しにより応募が増えた。・市場動向から具体的手法まで、さまざまな視点で気付きをいただけた。・自社運営のみでは気づかなかった点を指摘してもらうことで、新たな採用活動に対しての行動を取ることができた。

具体的な効果・アドバイスを受けてから一気に採用につながった。・求人票の記載方法や求職者の気持ちの部分も理解できた。・無料で利用できる採用手段を知ることができた。・ES(エントリーシート)という考え方を教えていただいたので、採用に非常に活用できた。・応募者は増えていないが、有効求人倍率が上がったことを考慮すると、効果は出ていると思う。

69

5448

3529

18 17

01020304050607080

応募者に対する自社の

魅力や理念等の伝え方

応募者の母数を増やす工夫

(採用条件の見直し等)

自社の採用計画の考え方

    や具体的な手順

費用をかけなくてもできる

   求人手法のノウハウ

求職者にアピールすべき

 自社の強みの洗い出し

ハローワークの活用方法

求人票の書き方の改善

65

3223

010203040506070

応募者が増えた

採用できた

採用の知識や情報

  が蓄積できた

2 3

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業事援支保確材人急緊業企小中都京東

集例事好

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業事援支保確材人急緊業企小中都京東

集例事好

“業績軸”から“幸せ軸”へ意識の転換が重要法政大学大学院政策創造研究科教授人を大切にする経営学会会長

坂本 光司KOJI SAKAMOTO

1947年、静岡県生まれ。法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長。法政大学大学院政策創造研究科教授及び法政大学専門職大学院イノベーションマネジメント研究科兼担教授。国、県、市町や商工会議所等団体の審議会や委員会の委員を多数兼務。専門は、中小企業経営論・地域経済論・福祉産業論。『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズ(あさ出版)ほか、著書多数。

人財採用力を高めるために企業が取るべき打ち手徹底した現場主義で、これまで訪問調査をした会社は7,000社を超えるという坂本氏。採用を行う企業が、本当の意味で新たな戦力を獲得するために必要な、経営者や管理職の取組について伺った。

「人を大切にする、温もりのある 経営こそが今、求められている」「人を大切にする、温もりのある 経営こそが今、求められている」採用において会社が発信すべき事柄とは私はこれまで数多くの会社に訪問して、経営者とも話をしてきました。会社が人材の採用情報として発信する事柄は、日頃の活動そのものだと思います。いざ人材の確保の時になって慌ててリクルート機関に殺到するのでは、私はうまくいかないと思います。

日頃の活動というのは、毎日毎日多くの人々が一定以上の評価をしてくれるような誠実な経営をし続けるってことしかない、と思うのです。真面目に誠実に。それが結果として、人材の確保に繋がることになると考えます。せっかくご縁があって我が社に入社してくれた社員やその家族の方々を大切にすること。多くの友達・先輩・後輩や、あるいは近隣の方々に、『私が勤めている会社はいい会社ですよ』等という、口コミのチカラは大きい。

「人材確保、確保」なんて言わなくても、むしろ社員の満足度が高ければ、社員の彼ら・彼女らが連れて来ると思います。私は、本当にいい会社っていうのは、ひとつには家族というか親族というかその方々が大勢いらっしゃる会社がいい会社ではないか、と考えています。

何故かというと、私たちは皆幸せになってほしいけど、なんといっても目の前にいる家族、親友が幸せになってもらいたいという想いが、人間ならば誰だって強いわけです。今いる社員の方々の満足度が高いような経営をすれば、結果として会社PRになるし、その方が一生懸命伝えてくれますよ。誠実な経営をして、人を大切にするということが大事です。それには時間が掛かりますが、経営とはそういうものです。明日のために、明後日のために皆頑張っているわけですから。

離職率が高い企業の課題とは離職には、定年退職・家族の介護・転居・結婚等、様々ありますが、経営学

でいうところの離職というのはもう少し狭く考えて、転職的離職です。転職的離職率が、5%以上ある会社というのは問題が大きく、理想はやはり3%以内です。

転職理由に関して、退職者が本当のことを言っている場合は少ない。本当の理由は、そこにいると幸せになれないから辞めていくわけです。給料が低くて生活できないとか、親の面倒をみなくてはいけない等、様々な理由はあれども、多くの場合はそうじゃない。希望や幸せの可能性が未来の彼方に見えるかどうかです。そのことが見えなくなったとき、自分が材料のように扱われたとき、自分がコストのように見られたときに、人々はやる気を失うし、辞めていくのだと思います。

つまり人を大切にしていないから離職が増えるのです。昨日もある会社に行ってきたのですが、残業はどのくらいですかって聞いたら、時々 60時間以上の方がいらっしゃるという。そのような会社が山ほどあります。その会社の社長には縁もゆかりもないのですが、開口一番で、『社長さん、いけません』と伝えました。

また、サービス残業のある会社は離職率が高い。あたりまえです。別の会社

の例では、就業時間が朝8時から夕方5時までなのに、全社員、7時半に来るように言われているのだそうです。理由は、朝礼と掃除をやるためだと言います。強制ですかって尋ねると、いや強制ではありませんが一応朝礼があるので皆に出てもらっていますって言うから、会社の業務命令としてやるのだったら、勤務時間は7時半から4時半までにするか、或いは、残業手当を払ってあげなさいと言いました。大企業みたいな真似はできないって言うけれど、そうじゃない。企業規模は関係ないです。離職問題はそういう課題ですね。

社員の満足度を高めるためには経済的な欲求に応えればモチベーションが高くなるというのは限界があります。心理的欲求、私はいつも利他の心と伝えていますが、他人の利益です。他人の幸せです。今、そういったことに満足を感じる人々がものすごい勢いで増えています。3.11。辛い出来事でしたが、あれ以降日本人は明らかに変わりました。助け合いの中で日本が改めて世界に評価されたことは、世界中の人々が求めているのではないかと感じ

ます。日本だけの価値観ではありません。人間の命と生活ほど、大切なものは無いからです。人材の確保に成功したいと思ったら、職場定着率を高めようと思ったら、温もりのある経営をやることです。その組織に所属する喜びを、噛みしめられるような経営です。組織に所属することで、幸せを実感できるような、心の満足をもっと高めるということです

もうひとつは脳の満足。人間はやはり人々から認められたい。尊敬されたい。感謝されたい。そうなりたいから頑張っているわけです。それが人間の特長ですし、特性です。

つまり、成長したいという欲求があるわけです。単に知識を得ることじゃなく、得た知識を誰かに提供して、その人に、ありがとうと感謝されることです。経営者や管理職の方は、会社にいる限り成長のチャンスをつくってあげることです。何も教育を熱心にするという話だけじゃないです。この会社にいることによって、自分も成長しているということが実感できる環境づくりが大事です。

「人財」が集まる企業に変わるために経営者や管理職の使命は、人を幸せにすることです。業績拡大ではないです。自分の使命は業績を高めるっていったら、部下を鞭打つでしょう。そうじゃないですよね。どうしたら部下やメンバー、その彼らを支えている家族が幸せになるか。業績は結果としての現象にすぎないというところに気が付き、且つ、それを実践する会社は、間違いなく業績が高い。

社員の幸せを念じ、社員も私たちは大切にされている、という高い意識醸成がなされている会社には、「人財」が集まっています。

▲誠実な経営をし続けることが人材確保 に繋がると語る坂本氏

▲この会社にいることによって、自分も成長しているということが実感できる会社に「人財」は集まる

特別寄稿

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ハローワークの一番の強みは豊富な求人・求職データと実績に裏打ちされたマッチン  グのノウハウです。全国ネットワークで企業向けに様々なサービスを実施しています。ここでは、求職者の関心を引く求人票の書き方や、あまり知られていないが実は採用 に効果的なサービスを紹介します。

ハローワークのおすすめサービス5

特集Ⅰ

より具体的に!より詳細に!

誰にでもわかりやすい求人票を求人票で伝えられる情報はたくさんあるが、求職者は、まず具体的にどんな仕事をするのか「仕事の内容」欄に注目している。記載の鉄則は、誰が見てもわかりやすいこと。例えば「未経験者でも可」としながら、専門用語を並べただけでは、結局仕事内容がよくわからず、求職者は関心を持たない。当たり前のことだが、この基本を徹底すれば、応募者は増えていく。わかりやすく伝えるポイントは、主要となる業務から順に箇条書きで書くこと。その時、例えば「営業」とだけ記載するのではなく、取り扱う商品はどういうものか、固定客へのルート営業なのか、新規開拓営業であるのか、もし両方ならば、その割合はどのくらいかなど。他にも、部署の人数や、その業務の担当は何人なのかなども求職者が気にする事柄だ。

特記事項欄・備考欄を空欄にしない!

福利厚生や社風をアピール「特記事項」欄、「備考」欄で伝えられることはたくさんある。実は、求職者が気にする条件面は、賃金以外に就労時間や休日だ。「残業が無い」「何曜日にノー残業デーを実施しているか」などはとても目を惹く情報だ。加えて、会社独自の福利厚生をアピールしてほしい。社員の有休取得状況や社員食堂、あるいは「こんなレクリエーションで従業員の親睦を図っています」という紹介等、日常的なことで構わない。大企業と比較したとき、中小企業らしい温かさや、小回りがきく、風通しが良いなど強みを打ち出して伝えると効果的だ。例えば、類似の求人募集が複数あった場合、このような情報がきちんと書かれている企業への応募の可能性は高まる。

人材を逃さない!

選考期間を短く設定求人募集開始から、書類選考、面接後の最終結果までの期間があまりにも長いと、採用したい応募者と出会えても、応募者から辞退されることがある。選考期間をできる限り短く設定することで、欲しい人材を逃すことなく採用できる可能性が高まるだろう。

画像情報の掲載求人票ができたら、更に採用効果を高める画像情報の掲載サービスを活用しよう。会社の風景や取扱商品などの画像情報をハローワークに提供することで、求職者が求人検索機で検索・閲覧する際に、求人票と一緒に画像も閲覧できるようになる。仕事の様子や職場の雰囲気など、活字だけでは伝わらない企業の魅力を伝えることができる。画像選びのポイントは、会社の雰囲気等が感じられるインパクトのある写真などを選ぶことだ。なお、画像についての簡単な説明文や、採用担当者からのひとことメッセージなどを添えていただくとより効果的となる。

面接会・説明会ハローワークの会議室などで開催されるミニ面接会から、東京都や自治体と連携した大規模な合同面接会まで、ハローワークではその企業に有効な各種面接会を提案している。また、会社見学会・説明会など、求職者に各企業の魅力を事前に伝えたうえで面接に臨んでもらうというイベントも開催している。スケジュールを問い合わせて、ぜひ活用していただきたい。

ハローワークインターネットサービス         ハローワークインターネットサービスの一番の強みは、日々約 60 万人の求職者が見る「国内トップクラスの求人サイト」ということである。この強みを活かすには、求人票で仕事の内容や企業理念、教育訓練など企業の魅力を十分にアピールし、採用したいと考えている人物像を正確にわかりやすく示すなど、求職者の関心を引く工夫が必要である。ハローワークでは、より良い採用が出来るよう求人票の書き方等のアドバイスを行っていますので、ぜひご相談いただきたい。 ハローワークインターネットサービス URL https://www.hellowork.go.jp/L

  助成金制度の活用ハローワークでは、企業の経営方針や雇用管理などを勘案したうえで、正社員求人での募集について、きめ細かな相談に応じている。また、正社員の雇い入れ、非正規雇用の正社員転換などに際しては、「トライアル雇用奨励金」、「キャリアアップ助成金」などの助成金制度を活用できる場合があるので、併せて相談していただきたい。

将来像をお伝えすることは大切…ただし!

「今」求めるもの と 「将来」求めるもの を混同しない入社後にスムーズに仕事へ入っていけるか、またキャリアアップしていけるかなど、求職者の不安に寄り添って、具体的に入社後のイメージが湧くような求人票を書くことは大切だ。例えば、研修体制や今後のキャリアステップの事例等、将来像を伝えていくことが有効だ。だが、ここで注意すべきは、「今、担ってほしい仕事」と「将来的に期待する仕事」を混同して書かないことだ。これは求人票の作成時に陥りがちなポイントであり、今の仕事に必要なものと、3 年後、5 年後のキャリアパスにおいて取って欲しい資格や担って欲しい業務を、明確に分けて記載することが重要だ。「将来的にはこういうスキルを習得し、○年頑張ればこのくらいの給与になります」というように、具体的なモデル賃金も示すことが採用力の向上にも効果的である。

求職者のニーズに合わせる!

雇用形態を広げる雇用の安定という観点から考えると正社員雇用が理想的であるが、仕事の内容によっては、パート社員雇用という選択肢を検討してほしい。求職者の中には、空いている時間をうまく活用したいと考える方もいる。多様な雇用形態をとることで人員の充足を図ることもできる。もし経験や資格が不問なポジションであるならば、特にお奨めしたい。

求めるものは必要最小限に!

応募者が躊躇してしまう文言は控える「経験不問」としているが、賃金に幅があり「経験者優遇」と書いてあるような求人票は、多くの求職者が応募に躊躇する。企業がどのような人材を募集しているのかが伝わらないためだ。まず、欲しい人材は経験者なのか、未経験者を育てていける受入環境があるのかなど、明確にはっきり書くことが重要だ。「資格あれば尚可」や「資格があれば優遇します」等の記載も同様だ。曖昧な表現は、結果的に優秀な人材を確保するチャンスを逃すことになりかねない。「必要な経験」「必要な免許・資格」欄については、できる限り具体化し、必要最小限の記載にとどめることが、採用の成功に繋がっていく。

ハローワーク飯田橋事業所第二部門統括職業指導官

難波 敏彦

ハローワーク府中事業所部門統括職業指導官

宮嶋 修

ハローワーク新宿事業所第二部門統括職業指導官

松本 征之

画像掲載の手順

1. 掲載する画像を選ぶ2. A4用紙サイズで画像を印刷する3. 画像についての説明文を用意する4. ハローワークに提出するなお、適切な画像がない場合は、ハローワークスタッフが撮影することも可能である。また、画像は、PRシートとしてハローワーク内で掲出される場合もある。

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業事援支保確材人急緊業企小中都京東

集例事好

欲しい人材をイメージし訴求ポイントを絞ることで応募者のミスマッチを解消

国土管理株式会社

▷▷本当に欲しい人材となかなか出会えない

 採用活動において、求人内容と応募者のミスマッチに悩む会社は多い。国土管理株式会社も、その中の一社だった。同社は東京を拠点に、マンションやビルなどの不動産・建物管理サービスを提供している企業である。 「ちょうど昨年、人事を担当する社員を採用したいと考えていたのですが、弊社の場合、人事だけではなく経理や総務などの業務を少なからず担当してもらいます。ただ求人票にそれを書いてしまうと、経理経験者ばかりが集中してしまい、なかなかこちらの意向とマッチする人に出会えませんでした」。 そう話してくれたのは、同社の総務部長である大西弘之さんだ。同社はこれまで、ハローワークに提出する求人票には業務の内容を幅広く掲載して採用条件をあまり限定せず、できるだけ幅広い層の人を対象に考えていた。 しかし採用活動を続けるものの、なかなか成果に結びつかない。実際に求めていた人材は、主に人事の経験を有する方だったが、応募者は経理経験者で経理業務のみをやりたい方が数名と、採用したいと思える人材に3ヶ月ほど出会えなかった。 大西さんは、次第に「本当にこれで大丈夫なのか?」という疑問を抱きはじめたという。「このままのやり方で、本当に望む人材が採用できるのか。改善できるところがないか。一度、そうした自分たちの課題を洗い出したい」と考え、今回の事業に参加を決めた。

▷▷採用活動に必要な心構えを学んだ

 同社は求人票の改善だけではなく、他の工程でもどうしたらミスマッチを減らすことができるかを考え実践した。面接の質問内容を見直し、求職者がリラックスして“自分”を出せるように、趣味などに触れたり、求職者の経験を中心に質問をして仕事の考え方や進め方を聞くなど、様々な試行錯誤を重ねた。 また、外交的や内向的、事務職向きや対外業務向き等の、職種への適性を見極める指標にするために、一次面接と同時に適性検査を導入し、客観的面接での印象と適性試験での客観的な指標を比較して判断の参考とした。採用の大きな枠組みは変わっていないものの、その内容は着実に改善されていったのである。 こうして採用したい人を細部までイメージして採用活動を見直した結果、ハローワークを通じて人事経験者1名の採用が確定。ターゲットを絞ったが、最終的にはエントリー数も2倍程度増加したのだという。 「条件面だけではなく、まずは、相手が「どんな視点で企業を探しているのか」「どんな情報が知りたいのか」と、求職者の立場に立って求人情報を伝えるという採用の基本姿勢を学ぶことができました。そうした視点の持ち方に気づいて以来、求人票の書き方が変わっただけではなく、緊張感を持って面接などに取り組むようになりましたね。採用は、こうして人と向き合う仕事なのだという意識を新たにしました」(荒井さん)

▷▷採用したい人物像を具体的に細かくイメージ

 現在、同社の採用活動の軸となっているのは即戦力の中途採用である。他の職種の募集では、ウェブ媒体も積極的に利用しているが、今回はハローワークに絞って求人情報を出していた。 そこで、大西さんと同じ人事担当の荒井隆司さん、ハローワークの事業所部門担当者、コンサルタントの三者が集まり、まずは求人票の見直し・精査を行った。「例えば、入社してからのキャリアアプラン、持っているスキルや人柄などまで、私たちが理想とする人物像を思い描き、その人物に対して求人票を出すことでイメージしました。」(大西さん) また、コンサルタントは、求人票改善の基本の考え方として、「自社の特長を丁寧に記載すること」「求職者の不安要素を取り除くこと」で魅力を感じてもらい、安心してもらうことが何より重要であることを伝えた。具体的には、求人票の中で、これまではほとんど記載していなかった備考や特記事項欄をフル活用して、仕事内容以外でも「社員同士のコミュニケーション」を大事にする社内の雰囲気を PR するため、毎年海外で行われるという

前向きな意識が結果を引き寄せた 単に募集要件を書いただけの求人票を掲載して、応募が来なければ「人気が無い求人」だからと結論づけている企業も多いと思います。 しかし、求人票は言わば「入社して欲しい人材」に宛てたラブレターのようなものです。限られたスペースだからこそ、「わが社はこんな会社で、こんな環境で、あなたを待ってます」という想いを、欲しい人材をイメージしながら効果的に簡潔に伝える事が大事です。 そのためには、まずは自分たちの会社の良さや、相手が知りたいことは何かを会社の皆さんで話し合ってもらいたいと思います。自社の良さを知る事、相手が就職する時に注目する事を絞り込んでメッセージとしてまとめる→応募者が増える→応募者の中から採用したい人材が増えるなど、時間と手間を掛けただけ効果を得た会社も多いです。是非実践してみてください。

所 在 地 東京都新宿区西新宿3-9-12 西新宿ダイヤモンドビル事業内容 不動産管理・販売事業資 本 金 10,000万円代 表 者 代表取締役 佐藤 陽一創 業 年 1987年11月従業員数 215 名U R L http://www.kokudo-kanri.co.jp/

社員旅行の情報などを掲載することにした。 また、「幅広く誰でもどうぞ」と読める書き方は、かえって求職者には「この求人は自分に合っているのか」がわかりにくく不安を感じさせるので、本当に欲しい人材のターゲットをぐっと絞り、その対象者が注目するポイントを踏まえて仕事内容や雇用条件を書き直した。 「今までは求人を出すのに、採用の条件以外の部分にあまり目を向けたことがありませんでした。求職者の方が一番見るのは条件だと思い込んでいたのですが、条件以外にも会社の特徴や備考欄での PRコメント、業務の具体的な内容、資格の有無などを注目されていることを指摘され、大幅に掲載情報を変更することにしました」(大西さん)

求人票改善の基本を図を使って端的に指導

担当コンサルタント(左)、総務部長の大西さん(中央)、荒井さん(右)

会社のアピールの重要性を知ったと荒井さん

求職者の関心が高い「仕事の内容」及び「特記事項」を具体的に記載

1.人事一般事務 2.総務一般事務

3.経理一般事務 4.損害保険代理店業務

約200名前後の社員、パートタイマーのOBC給与奉行を使用しての給与計算業務

社会保険手続等の人事労務事務

備品管理、郵便物仕訳他 総務一般事務

電話・来客対応

改善前

改善後

求人票の記載の見直し

求職者の関心が高い「仕事の内容」

及び「特記事項」を具体的に記載

1.人事一般事務 2.総務一般事務

3.経理一般事務 4.損害保険代理店業務

仕事の内容

必要な免許・資格をお持ちでない方も相談可

特記事項の内容

仕事の内容

必要な免許・資格をお持ちでない方も相談可

※海外社員旅行有(15年:グアム 14年:ベトナ

ム 13年:台湾)

特記事項の内容

求人票の記載の見直し

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業事援支保確材人急緊業企小中都京東

集例事好

環境保全株式会社所 在 地 東京都八王子市大和田町 2-4-14事業内容 地質・環境分析資 本 金 3,500 万円代 表 者 代表取締役 奥山 弘史創 業 年 1992 年従業員数 39名U R L http://www.kankyouhozen.co.jp/

▷▷募集対象は“何となく”慣習化されていた 環境保全株式会社は、地質や水質など環境に関する様々な物質の調査・測量を行っている。現地調査から様々な機器を使用した分析まで、すべて自社の社員が一貫して行い調査結果のクオリティの高さには定評がある。クライアントは、大手ゼネコンや地元の中小建設会社や解体事業者のほか、公共事業の請負も多い。 同社の採用は、近年では新卒採用を中心にしており、中でも地質や水質の分析業務には「環境計量士」や「作業環境測定士」の資格が必要なため、“何となく”理系の学部が良いだろうという理由で理系の学部生を採用してきた。 しかし、同社で3年前から採用を担当する取締役の奥山芳德さんには、ずっと気になることがあった。新入社員の中に「やりたかった業務ではない」「こんな業務だとは思わなかった」と、後ろ向きな理由で離職する社員が約2年間で5名いたのだ。特に現場のフィールドワークに従事する社員からそんな声が聞こえてきていた。多くの人が行きかう建設・解体現場などの調査業務では、うまく立ち回れないと弱音を吐く社員もいるという。 そこで、「事前に業務内容をもっと丁寧に説明するべき」「理系学生にこだわらず、文系学生も積極的に採用しよう」と、2016年卒採用からは、文系学生向けに大学内での説明会なども行った。しかし、これまで理系学生向けに行っていた会社説明では、文系学生にはうまく会社の魅力が伝わらず、エントリー数も期待したほど伸びなかった。 そんな悩みを抱えているときに、ベテラン職員数名の退職が重なってしまった。「さすがに人員が足りない」という状況になり中途採用もすることになった。しかし、応募が約3か月間ほとんどこない。どうすればいいか悩んでいたときに、今回の支援事業を知ったという。

▷▷実態以上に大きく見せるより、ありのままの魅力を伝える 支援事業に申し込んだとき、奥山さんが解決したかった課題は2点。1つは、現在苦戦中の中途採用における「より魅力的な会社 PR 方法」。もう1つは「社員の定着率向上」だ。 そこで担当コンサルタントが、現在の採用フローや社員の退職理由を確認したところ、「どんな人物に、どの仕事をしてもらうために採用するか」という考えが、社内の部署や担当者ごとに異なっていることが判明した。そこでコンサルタントは「どんな人材を採用するか、採用の基準をどうするかなど、社内ですり合わせを行ったほうがいい」とアドバイスした。特に、人事と現場で細かくすり合わせをしておかないと、現場での社員育成が上手くいかず、社員も成長できない。そもそも、本人が希望する業務と現場で任せたい業務が違い、その結果、早期離職につながるからだ。 そして、「魅力的な会社 PR」に関しては、「実態よりも大きく見せる必要はない。ありのままの良さをそのまま伝えることが重要」「仕事内容のイメージは具体的であるほどいい。実態を伝えて、そこに魅力を感じてくれる人に入ってもらうのが一番。むやみに応募数だけ増やしても意味はない」とアドバイス。これは、入社後に「こんなはずじゃなかった」と退職する社員が出てこないようにするためでもある。

▷▷その資格は本当に必要か? ハローワークに提出した求人票をチェックしたところ、「仕事内容」の欄にはずらりと、「PCB」(ポリ塩化ビフェニル)・「VOC」(有機溶剤)などの化学系の言葉がただ箇条書きされていた。これを仕事の内容を詳細に記載するとともに、社内で活躍する社員の年齢層も記載することで、よりイメージが付きやすいように改善した。 また、「必要な免許・資格」欄には、「作業環境測定士」「放射線取扱主任者」「土壌汚染調査技術管理者」など、見慣れない資格名がずらりと並んでいた。しかも、「あれば尚可」の文言もなく、これらの資格がすべて必要なようにも見えてしまう。しかし、実際は、これらの資格は必須ではないことから、すべて削除し、本当に必須な「自動車免許」のみに変更。そして、より簡便に応募してもらうために、「応募書類は郵送」としていた記載を、「応募は当社HPからもできます」と変更した。 さらに、コンサルタントから「環境分析の技術職であれば、職業訓練校でも求人を受付けている」とアドバイス、「環境分析」の科目を有する東京都立城東職業能力開発センター江戸川校に早速求人を提出した。これらの活動の結果、これまでゼロだった中途採用の応募が、わずか2週間で4 名、最終的には10 名のエントリーがあり、現在はその選考の真っ最中だ。 新卒採用においても、新たに多摩地域にキャンパスがある大学のキャリアセンターを訪問し、大学から学生への紹介を促すための自社 PRに取り組んだ。また、八王子ハローワークにも相談したところ、八王子市主催の「業界研究セミナー」(学生を対象に、市内企業 4社が事業内容や現場の様子を紹介するイベント)への参加を勧められ、直接学生と接する機会を得られた。これらの取組の結果、文系学生も含め7名が内定し、現在インターンシップとして会社に入っている。 もうひとつの定着率向上については、コンサルタントから、「まずは、社内で課題を抽出し、定着率を上げるために何が必要かについて社員の考えを広く吸収すること」を提案、同社では、ブレインストーミング方式で社員の率直な意見を集めることから始めている。 「私はまだまだ人事経験が浅いので、こういう手法はどうだろうと思いついても、それが正しいのか判断が付きません。他の会社ではうまくいくケースでも、環境保全には合わないやり方もあるはず。それを個々にコンサルタントに確認できたことが大きかったです。働きがいのある企業として定着率を向上するために、できることがないかこれからも頑張りたいです」と奥山さんは意欲を語る。

人事と現場のコミュニケーションが大切 採用においては、まずは人事と現場の希望を丁寧にすり合わせること。これができていない企業が、意外とあります。求人票に記載されている業務内容と実際の業務内容が違っていたり、社員の将来の希望と会社(現場)の方向性が違っていたりすれば、せっかく採用した社員の能力が発揮できなかったり、離職してしまう可能性が高まります。 奥山さんは、人事担当として既存社員からの声を聞き、風通しの良い会社にしようとの思いで動かれています。これは今後も採用活動に活きてくるかと思います。 社員の募集、そして入社前から定着率向上の第一歩は始まるわけですから、人事と現場のコミュニケーションを密にして、本当に必要な人材を採用し、会社の将来を担う人材として育てて欲しいです。

採用のミスマッチを防ぐカギは人事と現場のコミュニケーション

社内には様々な分析装置が並ぶ

採用担当の取締役 奥山さん

仕事の内容がわかるように、求人票の記載を変更

「特記事項」欄を活用して自社の特色をPR

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業事援支保確材人急緊業企小中都京東

集例事好

採用難打開の一策。会社初!地域密着型・女性ドライバー採用

太洋モータース株式会社所 在 地 東京都大田区田園調布南12-14事業内容 旅客自動車運送事業資 本 金 2,000万円代 表 者 武山 裕志創 業 年 1956年11月従業員数 113名U R L http://www.taiyomotors-taxi.co.jp/

▷▷「稼げるモデル」も人材不足の時代に 「業界平均より30%高い売上」「最高で 179%の給与増」など、株式会社太洋モータースのホームページには、タクシードライバーとして働く従業員が、バリバリ「稼ぐ」モデルが多数掲載されている。昭和 35 年に都内で会社を立ち上げて以来、同社は東京都心エリアを中心に営業を続けてきた。10 年以上前は給与保障や社員寮の整備などに力を入れていたが、ここ 5 年ほどは「稼げるドライバーを育てる」という方針を掲げて、体系立てた教育体制を強みとして打ち出し、多くの求職者を集めてきた。しかし、それだけでは必要な人員を確保できない時代になり、近年は人材不足に悩まされている。 「タクシー業界は、どの会社も人が足りなくて厳しい状況ですね。この状況下で営業を続けていくためには、採用活動もこれまでと同じ手法では生き残っていけないと感じていました」 そう話してくれたのは、同社の武山裕志代表である。そうした停滞する状況を打開するために、今回の緊急人材確保支援事業に応募した。

えること、もう1つは、女性が活躍するうえで必要な条件や会社としての活用方針を整理してきちんと求職者に伝えることである。女性でも安心して働ける受入環境を整えることで、応募者を増やすだけでなく、入社辞退を防止できることも伝えた。 そこで、同社は検討の結果、ドライバー以外に経理職も募集する事、勤務時間は、高齢者が買い物や通院などで利用が多く女性が勤務しやすい平日のみ 8 時〜17 時頃までとすることを決めた。また、地域に密着した生活シーンでの利用をコンセプトとした営業方針、社内の整理整頓、女性専用のトイレの新設、職場の雰囲気改善に向け、社員に対し笑顔の意識付けにも取り組んだ。 そして、タイミング良く過去に掲載したことのある募集媒体会社から女性限定の転職フェアイベントの情報提供があり、コンサルタントに相談をしたところ、ぜひ参加するべきだとの助言を受け参加を決めた。 「イベントの主催者からは難色を示されましたね。経理は応募が来るだろうけど、おそらく女性ドライバーは難しいだろう、と」(武山代表) しかし、イベント当日、「何とか自分たちの話を聞いて欲しい」という武山代表の熱意に社員も感化され、参加者に声掛けを行い、女性が勤務しやすい勤務体制であることや、「地域の生活シーンに密着」というコンセプトを伝える事で 1人の女性がドライバー職に興味を示してくれた。 「タクシードライバーは完全に男性の職業で、夜間勤務のイメージもありました。でも、地域のお客様をメインにした昼間の仕事もあると聞いて、興味がわいてきたんです」そう話してくれた彼女こそが、2015 年 12 月太洋モータースの女性ドライバー第一号となった山口翔子さんである。

▷▷「地域」と「女性」をコンセプトに採用の活路を見出す 武山代表は当事業に応募した当初、今まで通り「稼げるドライバー」としてバリバリ働ける従業員の募集を希望していた。応募者は圧倒的に男性が多いため、今回も漠然と男性の採用をイメージしていたという。 採用が難しいのは何故かを検証していくと、ドライバー希望者の減少、競合の激化、夜勤などの不規則な勤務形態やインセンティブ制による不安定な給与体系など、求職者から敬遠される雇用条件といった一企業の課題というよりも、業界全体が抱える課題と考えられた。 しかし、コンサルタントが武山代表と話をするうちに、思わぬ方向に解決策が見えてくることになった。それが「地域密着型」と「女性ドライバー」である。同社は大田区田園調布に本社があるが、営業の中心は渋谷区、千代田区など都心のため、地元の方から「なかなか車が掴まらない」という声が寄せられているという。また、武山代表は、以前から女性ドライバーの採用に興味を持っていたが、実現できる機会がなかったそうだ。それが、今回図らずも、人手不足と地域ニーズへの対応という2 つの課題を打開する一策として、前向きに検討することになった。「例えば高齢者の方の外出やお子様連れの女性の送迎など、地域のニーズは増えてきています。より生活に近いシーンで細やかな配慮が求められるため、女性ドライバーにも活躍してもらえると思いました。そこで、今まで通りの営業方針や勤務体系での採用が難しいならば、新しい方向性として、女性ドライバーと地元地域という2 つの要素を合わせてみようと思ったのです」(武山代表)

▷▷女性でも働きやすい勤務体系を整備 山口さんを採用するに当たり、コンサルタントは、安心で安定した給与体系を求める方も多いのではないかと固定月給制を導入することをアドバイス。タクシー業界では歩合給制の賃金が常識となっているが、同社は一部固定月給制を導入、また、休日を業界内では異例の土日に設定する等、勤務体系も大幅に見直した。 「女性ドライバーにも活躍してもらうためには、これまでと同じ条件で考えるのではなく、女性でも働きやすい制度や環境を整える必要があると思っています。今回の支援を通じてその辺りもアドバイスいただいたので、勉強になりましたね」(武山代表) 山口さんの入社を皮切りに、現在もう1名の地域密着型ドライバーを採用すべく、引き続き力をいれていくそうだ。現在のホームページにも、男性ドライバーの画像ばかりでなく女性ドライバーの画像を追加するなど、イメージアップしていく予定だという。また、ハローワークとの連携を強化するために、コンサルタントに同行し、ハローワーク大森に女性も働きやすい職場づくりに取り組んでいくことを説明し、積極的な紹介や面接会の開催等のお願いをした。 「これから仕事をしてもらう中で、彼女もいろいろ大変なこともあるとは思います。でも一緒に、従業員全員が働きやすい環境づくりに取り組んでいきたいですね」と武山代表は語る。 同社はこの事業を通して、採用できる人材が求める条件と顧客のニーズにあった経営方針を検討し実施した事により、画一的な採用条件を見直し、新たな人材の採用を実現した。一朝一夕に採用難が解決できる訳ではないが、男性ドライバー採用が難しい状況から、性別にとらわれない柔軟な採用と活用に活路を見出すことができた。今後も画一的な採用ではなく、経営戦略とそれに必要な人材確保を検討していく事をコンサルタントから進言した。

思い込みを捨てることで道が開ける タクシー業界でも、「男性従業員の採用しかできない」というのは、思い込みに過ぎません。他にもこれまでの慣習にとらわれて、「採用したことがないから」「求人を出してもどうせ来ないから」と思い込んでいる企業があれば、一度その思い込みを捨てて、「どうしたら新たな人材が採用できるか」という視点で考えてみましょう。ゼロから制度を見直せば、新たな人材が採用できるだけでなく、従業員全体が働きやすい環境に変わることにもつながると思います。

▷▷参加した転職イベントで出会った「自社女性ドライバー第1号」 当時、同社の従業員は 100%が男性だった。過去にも女性採用経験はゼロである。男性のみの職場環境から、女性でも働ける職場環境に転換していかなければならない。 そこで、コンサルタントは 2 つの提案をした。1つは、女性を複数名採用することで、働く場としての安心感を与

武山社長(左)とコンサルタント(右)

同社の拠点は田園調布の住宅街にある

言葉ではなく、絵で事業イメージを表現した

女性ドライバー第一号となった山口さん

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若手採用に必須! 自社ホームページ制作で情報発信活発化

東進産業株式会社所 在 地 東京都国分寺市東恋ヶ窪4-26-9事業内容 高圧ガス・溶材関連商品の販売、運輸資 本 金 2,000 万円代 表 者 永山 宗春創 業 年 1968 年 5月従業員数 45名U R L http://tohshin-gas-wel.co.jp/

▷▷ 従来の採用活動では成果が見込めなくなる

 「当社では過去 10 数年のあいだ、新卒採用はほぼ実施していませんでした。基本的に中途採用のみで、しかも欠員が出たタイミングでの募集でした」と話してくれたのは、管理・業務部 部長の豊田信太郎さんだ。豊田さんは中途で入社した 6 年前から、同社の人事や採用、総務や管理業務などを一手に担っている。 東進産業株式会社は、創業から70 年を迎える老舗の高圧ガス・溶材の販売会社である。主な取引先は、長年かけて信頼関係を築いてきた企業がほとんど。そのためこれまでは、積極的に新規営業の取組や広報活動を行わずとも、事業が円滑に回ってきた。 採用活動も同様で、地元紙の折り込みチラシとハローワークからの求人募集のみで十分に成果が出ていたが、ここ数年で採用市場の競争が激化し、初めて大きな壁に突き当たった。しかし、いざ採用に力を入れようにも、自社ホームページすら未整備の状態だった。 「会社の将来を見据え、若年層を採用したい。そう考えてハローワークで募集をかけても、1 件も応募がこない日が続くようになりました。この状況に対し、社内で打開策を練るには限界があると考え、思いきって今回の事業に応募することにしたのです」(豊田さん)

▷▷自社ホームページを採用活動にどう活かす?

 この「緊急人材確保支援事業」で採用活動を強化するのと同時進行で、同社は豊田さんを中心とし、自社ホームページの整備を進めていた。今や企業活動において、積極的な情報発信は欠かせない。また、若年層の就職活動はネット中心というのが現実である。社内で営業部署と協力しながら制作を進めていくうちに、これまで、「ホームページは不要」とみなされてきた社内の認識も少しずつ変わっていったという。 しかし、「できあがったホームページをどのようにして採用活動に活かせばいいのか」それがなかなか具体的にイメージできなかった。 「私たちが最も採用したい人材は若年層です。新卒も含め、若手を採用するためには、インターネットでの情報発信が大切なことは重々わかります。しかし実際にどんなことをしていけばいいのかがわからなかったのです」

(豊田さん)

▷▷採用活動に対する会社の意識が変わった

 豊田さんいわく、今回の事業に参加したことで、採用活動そのものの改善以外にも得られた成果があったという。 「従来の採用方法では、我々が望む若年層の採用は難しい。その事実を、役員含め全社員が共有できたことが一番大きかったですね」。知名度の高い大手企業が、採用活動を必死に行っている姿を目の当たりにし、現在の採用市場を取り巻くシビアな状況を、役員をはじめ参加社員全員の共通認識にすることができた。 「私自身も採用活動をほぼ一人で担当しているので、今回のコンサルティングによって、客観的に自社の現状と課題を振り返ることができたのがよかったです」と豊田さんは話す。昨年完成した自社ホームページを起点とし、今後はさらにインターネットを活用した採用活動に力を入れていきたいと、意気込みも高い。 今回の事業を通じて行った様々な取組に対し、早速、反響があった。今まで応募者が無かったのに、6 名の応募があった。まだ採用までは至ってはいないが、同社にとって、将来的な成果につながる大きな一歩になったのは間違いないだろう。

情報発信の軸ができ採用活動が活発化 ちょうど、今回の事業とは別進行で自社のホームページを作成されていました。若者の就職活動のスタイルに合わせ、ネットでの情報発信の重要性を理解し、ホームページを更に活用するための無料求人サイトへのリンクや、多摩地区は地元での就職意識が高いことを考慮した、地元大学のキャリアセンターとのパイプづくり等、採用チャネルを増やし若者の母集団を形成するため、豊田さんが素早く対応し動いたことで、採用活動の幅が一気に広がりました。情報を発信するためのベースも整い、求職者の受け皿ができたと思います。

▷▷これまでにはなかった採用活動のチャネルを開拓

 こうした同社の悩みを受けて、担当コンサルタントは、まず、制作中の自社ホームページと採用活動をリンクさせることから取り組んだ。ひとまず無料の求人サイトに求人情報を掲載し、自社ホームページとリンクさせることで、若年求職者がインターネットで求人情報を探した時に、同社の情報も目にする環境を整えた。 次に新卒採用を行うため、今まで行っていなかった大学のキャリアセンターとのパイプ作りの必要性についてもアドバイスした。多摩地区の学生は地元での就職意識も高いためだ。早速同社のつてをたどり、地元の大学が主催する企業説明会に参加。ハローワークと地元紙以外に、直接若手求職者と接する機会はこれが初めてのことだった。 「実際に大学で行った説明会では、たまたま来ていた地元出身の学生が当社に興味を示してくれました。大手企業ではなく、地元に根差した企業で働きたいという人もいるので、そういう学生にアプローチすればいいことがわかりましたね」

(豊田さん) 同社は、さらに今後は大学だけではなく、ハローワーク主催の合同面接会への参加なども検討している。 満を持して公開された同社のホームページは、事業内容が分かりやすい等、社内外からの評判も上々だ。求職者との接点が増えれば増えるほど、制作したページも活きてくる。

出来上がった東進産業ホームページ

職場の様子

コンサルタント(右)と相談しながら採用のチャネルを拡大する豊田さん(左)

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「事前準備・人脈・知名度」全てゼロのスタートアップ企業が5ヶ月で5名採用。内定受諾率を100%に変えた面接術

ジール株式会社所 在 地 東京都千代田区神田和泉町 1-1-14 パシフィックビル7F事業内容 IT 教育事業資 本 金 非公開代 表 者 遠藤美弥子創 業 年 2015 年従業員数 6名U R L http://mendo8.wix.com/zeal

▷▷急な会社立ち上げに参画 設立したてのスタートアップ企業が人を採用したい。事前準備はゼロ。人脈もゼロ。知名度ももちろんゼロ。そんな状況にいきなり直面したのは、ジール株式会社の代表、遠藤美弥子さんだ。 「普通に転職したつもりが、転職先で急きょ子会社を立ち上げることに。慌てて採用方法についても独自に調べました」と、朗らかな笑顔で話す遠藤さん。そんな彼女が代表を務めるジールは、2015 年 3 月に立ち上げたばかりの会社だ。システムエンジニアに向けたIT教育研修を行う傍らシステム開発の仕事を請負う。以前、遠藤さんがフリーランサーとして講師をしている際の仕事のやり方だった。久しぶりの会社勤めの際に、そんな「講師 + 開発」の仕事に対する需要が高いと上司へ話したところ、あれよあれよという間に会社を立ち上げることになり、その代表を任された。心の準備はゼロでも、「面白そう」というワクワク感が遠藤さんを突き動かしていた。 「講師がいなければ、仕事が受けられない」と、まずは即戦力の経験者の採用業務に着手。1 期目 10 名の採用を目指し、与えられた予算の大半を求人広告費用に充てた。40 名以上のエントリーはあったが、実際に面接に来たのは開発や講師等の経験者が 10 名強。手探りながら 8 名に内定を出したが、設立したばかりの会社だからか全員から断られた。 「採用に使える予算は、これで一気になくなりました。社員はまだゼロ。わらにもすがる思いで、今回の採用支援に申し込みました」。

▷▷“選ばれる面接”では、相手の良さをとことん引き出す

 コンサルタントからのアドバイスは、「脳天を突き抜けるほどのショックでした」と、遠藤さんは語る。しかし、改善に着手するのは早かった。会社理念は、まだぼんやりとしているものの「会社を社員みんなで一緒に成長させたい」という思いは強かった。「創業したばかりで人手が足りない」と記載していたハローワークや無料求人サイトの求人票の表記を「一緒に会社を成長させてくれる人」へとすぐに変更。すると、その成果か翌日には、問い合わせが入った。 次に、「相手の良さを引き出す」ための面接方法は、コンサルタントと一から作り上げた。「事前の応募書類を読み込んで、その人に聞きたいことをいくつか想定しておく」「本人が話しやすそうな事柄から聞いていく」「良いところを見つけたら、そこを重点的に聞いていく」など、面接の基本から始まり、人柄や長所を引き出す質問の仕方をアドバイスした。遠藤さんは、面接のときには今でもそのメモを時折見ながら進めている。 また、これまで 30 分程度で終わらせていた面接も、1 時間以上かけてじっくり話を引き出している。 更に、以前は内定を出す時も、漠然とオファーしていたが、今では「この人と働きたい」と強く思った方には、一次面接の終了時に「あなたのこういうところが素晴らしい。ぜひ一緒に働きたい。」「次回の面接では、入社時の条件を提示するのでぜひ考えておいてください」と伝えている。これも、コンサルタントのアドバイスに従ったものだ。欲しい人材を逃さないためには、採用決定までのスピードは早い方がいい。中小企業は大企業に比べて決断を早く出せることを活かし、求職者に対し熱意を伝えることが大事だ。 有料の求人広告に頼っていた時と比べ、約 10 名の応募に対して、面接で内定オファーを出したのが 5 名。驚くことに、その全員が内定を受諾した。 「コンサルタントさんに出会えなければ、いまでも社員数はゼロだったかもしれません。それが、採用に悩んでいるグループ会社の社員からも『どんな面接をしているの?』と聞かれるほどになりました。今回の出会いには、本当に感謝しています」(遠藤さん)

▷▷代表者としても、採用担当者としてもゼロからのスタート 担当コンサルタントは、現状を細かくヒアリングしたあと、即座に二つの大きなアドバイスを行った。一つは、「どんな会社にしていきたいか」という会社理念を明確にすること。スタートアップやベンチャー企業の採用では、「この会社理念に共感できるか」かが非常に重要なのだ。 そして、二つ目は、「選ぶ立場ではなく、“選ばれる”立場であることを認識せよ」ということだった。設立から1年にも満たない、何の実績もない会社に興味を持って面接に来てくれること自体がすごいことなのだ、と採用のノウハウ以前の根本的な考え方を伝えた。 また、面接手法を一から変える必要があると、コンサルタントは強調した。それまでは、「志望動機は?」「自己 PR は?」「退職理由は?」と紋切り型の質問を行っていた。これは採用経験が一切なかった遠藤さんが、書店で買いあさった本から得た面接手法だった。 「ネガティブなことを見つける、“落とすため”の面接では、求職者も好印象を持たない。候補者のポジティブで魅力的な点はどこかを見つける面接手法を身につけることが必要」とアドバイスした。

社員が語る「入社の決め手!」 プログラム開発経験 20年の40 代男性社員 給与面で言えば、もっと条件がいい企業はありました。それでも、「面接でこれほど『自分』に興味を持ち、しっかり話を聞いてくれた企業はありませんでした。この企業でなら自分のモチベーションを高く頑張れる。そう思って入社を決めました。

「この人のために働きたい」と思わせる 社員のことを一生懸命に理解しようとしてくれる経営者に対し、社員が悪い印象を持つはずはありません。自分の趣味や好きなことに対して本気で興味をもって話を聞いてくれる経営者が目の前にいたら、求職者ではなくても好感を持つと思いますし、この人と一緒に会社を成長させたいと思います。 遠藤さんは、私と話す時、一言一句聞き漏らすまいとしっかりメモを取っていました。そして、それを素直にすべて実行してくださる。そんな、ひたむきで前向きに努力する姿勢が、応募者にも、しっかり伝わり、入社の決め手になっているのだと思います。

真新しいジール株式会社のエントランス

終始穏やかな笑顔で話す代表の遠藤さん

代表の遠藤さん(左)と担当コンサルタント(右)

遠藤さんと真剣に打合せする新入社員

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独自の給与形態が採用の壁! 伝え方の工夫で打開策を見出す

コンピュータシステム株式会社所 在 地 東京都新宿区高田馬場 1-28-10 三慶ビル6F事業内容 ソフトウェア開発、技術者教育、 システム運用・保守・構築・整備資 本 金 1,600 万円代 表 者 代表取締役 田村 圭一創 業 年 平成 2年 3月従業員数 46名U R L https://www.computer-system.jp/

▷▷思うようにいかない IT エンジニアの採用 慢性的なエンジニア不足に悩む近年の IT システム業界。コンピュータシステム株式会社も、そのひとつだった。以前は 20 名ほどの少数精鋭のチーム体制だったが、「一人ひとりにスキルがあっても、人数が増えない限り売上は頭打ちになってしまう」と、5 年前に未経験者採用と人材教育に注力する方針へと転換を図った。 しかし、採用担当の技術営業部・部長の川崎智明さんによると、「採用の裾野を一気に広げるため、未経験者採用を始めたが、まったくの業務未経験者だと、『自分にはこの仕事は合わない』と一定数の離職者が出てしまう。結局社員数がなかなか増えない」という状況だった。業務未経験者とはいえ知識習得の意欲や向上心がある人を採用し、社内体制を強化しようと考え、各ネット媒体への掲載、ハローワークでの求人、紹介予定派遣など様々な媒体を使ってみたが、どれも十分な成果が出ずに、採用活動に苦戦していた。

▷▷伝わりにくい情報をいかに発信していくか こうした状況を踏まえて、まずは「成果報酬」「ボーナスや退職金が無い」ということに対する求職者の不安感やわかりにくさを払拭することからコンサルティングに取り組んだ。ハローワークの事業所担当も交えて三者で戦略を練り直したが、独自の給与形態を求人票の限られた枠の中で伝えるのは至難の業だった。しかし、成果報酬のイメージが掴めるように年代別モデル報酬例を記載、また、PR 欄を十分に活用し、教育体制や社内イベントなど自社の“売り”をしっかり書くことで、給与面だけではなく、会社の全体像が伝わるように改善した。 さらに同社からの「求人票以外で直接求職者に情報発信する機会はないか」という相談に対し、ハローワークの担当からハローワークでも面接会や相談会の相談ができるとの助言により、求人票を出して数日の内に、新宿、渋谷

▷▷他社と大きく異なる報酬体系が採用の“壁”に 同社は IT システムの受託業務を中心に、自社での開発や保守・運用の他、他企業の現場へ社員が出向いて業務を行う、システムエンジニアサービス(SES)などを手がけている。  業務内容は一般的であるが、ユニークなのが報酬に対する考え方としくみの部分だ。 同社は、昇給やボーナス、退職金などの制度は無く、「基本給+成果報酬」という形で給与が計算される。これは、できる限り合理的かつシンプルに、個人の成果をそれぞれの給与に反映させるという考え方で、いわば会社でありながら、社員一人ひとりが個人事業主のように仕事の成果が直接給与に反映される。しかし、こうした独自の考え方が、結果的に採用活動の障壁として立ちはだかることになってしまった。 川崎さんは、「この仕組みのメリット・デメリットを丁寧に説明すればわかってもらえるのですが、求人票を読んだだけでは伝わりにくいのです。他の会社に勤めた経験のある人は特にそうです。『ボーナスが無い? じゃあ受けない』と、選択肢にも入らないのが現状でした」と語る。

▷▷第三者視点の助言で応募数が劇的に変化 これらの取組の結果、同社では応募数が大幅に増加した。コンサルタント開始前は 2 〜3 ヶ月に1人程度だった応募数が、現在では月に10 人ほどまで増えているという。会社独自の給与の仕組み、一見、他の IT 企業と比べてどこが魅力なのかなどわかりにくかったものが伝え方ひとつでこれだけ成果が変わるのである。  「正直なところ、そこまでの結果を期待していなかったので驚いています」と、川崎さん。 「求人の仕方には正解がありませんよね。でも今回、プロの方から、最近の若者が持つ傾向や、求職者が求めていること、説明会の開催方法など、「いろいろとアドバイスをもらえたのがよかったと思っています。やはり自分たちだけだと、どうしても偏った考え方になってしまいますから」 しかし選考が進んでも、まだまだ人手が足りない状況は変わらない。そのため今後も継続して採用活動を行っていくほか、新卒採用にも力を入れていきたいと、今後も採用に向けた意欲は高い。

アドバイスを柔軟に取り入れた成果 採用担当者の川崎様が、第三者視点からのアドバイスを柔軟に取り入れ、ハローワークの活用、求職者視点での求人票の修正、求職者に対する説明会の実施など、積極的に取り組まれたことが、応募者の増加につながった大きな要因だと思います。

などを含めた数ヵ所のハローワークで単独の説明会を実施できた。 同社ではインターンシップで来た方には、毎週対面で会社の説明を行っていたそうだが、直接自分たちから求職者にアプローチするのは初めての取組だった。そこで、アプローチにあたっては、求職者の関心が高い事項をまとめ、わかりやすく伝えることに重点を置いた。例えば、最近の若者の傾向として、安心・安定を重視していることから、残業時間の実態、職場環境、福利厚生、待遇、キャリアプラン等関心は高いが、自分からは聞きづらい事項を説明に盛り込み、説明会で応募に対する不安を取り除く様にした。 川崎さんは、「これまでもハローワークに求人を出していましたが、説明会のセッティングをお願いできることまでは知りませんでした」と話す。ハローワークでは、求人票の書き方や企業説明会の開催など、採用の機会を広げる様々な支援を行っている。ひと言相談することで、採用のチャンスはぐっと広がるかもしれないのである。 今回、同社は、第三者視点からのアドバイスを取り入れ、情報の伝え方を大きく見直すなど新たなことに次々取り組んだ。数多の同業他社の中から“自社を選んでもらう”ためには、企業側も今、何が出来るかを考え、出来ることは即行動する努力の積み重ねが結果につながっていくのである。

採用を担当している技術営業部部長の川崎さん(中央)

明るいオフィス内

若手が多く、上下関係もフラットな環境

「PR欄」を活用して自社の“売り”を記載

年代別モデル報酬例を記載

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業事援支保確材人急緊業企小中都京東

集例事好

人事担当者の意識改革“待ちの採用”から“攻めの採用”へ

株式会社モノリス所 在 地 東京都調布市深大寺東町 8-31-6事業内容 動物臨床検査の受託 医薬品開発過程での分析、試験の受託資 本 金 1,200 万円代 表 者 代表取締役 矢島 行雄創 業 年 平成 7年 1月従業員数 200 名U R L http://www.monolis.com/

▷▷課題を感じながらも対応策がわからなかった 同社は、犬や猫を中心とした動物の臨床検査などを請け負う専門機関だ。全国の11か所の営業所では、営業職と臨床検査の職員を常時募集しており、その採用活動を 5 年にわたって、管理部長の嘉代知子さんが総務の業務も兼務しつつ一人で担当していた。 同社は、業界内では知名度もあり、これまでは求人サイトの媒体等で募集すれば、年間 50 人程度の募集をしても人員の確保はできていた。しかし、人手不足の波は同社でも例外ではなく、ここ 2 〜3 年程は人材の確保に苦慮するようになっていた。これまでは月15 件ほどあった応募も、最近は毎月10 人前後の応募しかなく、今年は、50人程度の採用枠に対して、10 月時点で半分しか採用できていない。 この大きな課題への対策に向けて、嘉代さんは、採用担当としての新人の石毛さんを抜擢した。 しかし、採用に至るまでのプランニングや、その業務フローなど、現在の労働市場の状況を踏まえ、新たに取り組まなければならない課題に対して、有効な解決策が見いだせないままでいた。そんな時、この事業を知り応募することとした。

▷▷応募者の母数を増やし接触機会を生み出す コンサルティングでは、同社の課題に対して大きく 2 つの提案を行った。「採用プランの構築」と「面接までのプロセス」だ。

▷▷新人の人事担当者を育成するために 石毛さんは、2015 年 3 月に入社し、人事担当として配属された。石毛さんは、自分が自社の魅力を伝えることで、その魅力に惹かれて入社した社員がやがて成長して、会社を支えていくことが人事のやりがいと感じ、部長の嘉代さんと共に新卒・中途採用を含めた人事全般を専任で担当している。 しかし、石毛さんは、人事担当としてのキャリア以前に、入社してからまだ 1 年にも満たない。 同社が今回の「緊急人材確保支援事業」に申込んだもう一つの理由は、石毛さんを一人前の人事担当者として育成するということだった。実は、直属の上司である嘉代さんは、専門的なことが何もわからないまま、自分のやり方で人事採用の仕事をしてきた。しかし、現在の採用難の時代には、どのような採用手法を用いれば、効果的に必要な人材を確保できるのか、そのノウハウを身に付けておらず、どこから何をやったら良いのかがわからない。 嘉代さんは、石毛さんにきちんとした専門知識を身につけてもらったうえで、どういった方をターゲットとし、どうPRをすれば効果的か、さらに、内定後の離脱防止の工夫まで、独自の採用戦略をつくれるようになって欲しいという思いがあった。 そこで、優秀な人材を低コストで迅速に採用できる人事担当者の育成をもう一つの目的として、本事業へ参加することとした

▷▷支援事業を通じて担当者の意識が変化 コンサルティングを通して、採用プロセスにおける自社の課題や改善のポイントが明確となり、その対応策を考え実施するにつれて担当する2 人にも大きな意識の変化があった。 今までは求人を出して、応募を待つだけというやり方だったが、自分たちで変えられることがこんなにあると知って、

“攻めの採用”ができるようになった。 今では、採用プロセスの改善以外にも、同社から積極的にハローワークに働きかけ、単独の企業説明会の開催、その説明会の参加者など接点ができた求職者に対し、同社側から個別にアプローチをして同社への関心度を確認したり、自社業務をより深く理解してもらうために、面接の待ち時間に見てもらう説明スライドづくりを石毛さんが自ら発案したりと、自分たちだからできる工夫を一つひとつ見つけ即実行に移すことで、コンサルティングを開始してから、わずか 4 か月で応募者は月平均 26 名、採用も月 7 名と成果が表れてきている。 石毛さんは、「今回の事業で色々なことを教えていただくうちに人事担当としての責任を強く自覚し、今は求職者の目線に立ち、自分なりにできることを考えています」と話してくれ、日 、々成長していることを自分自信で実感していることが見えた。 嘉代さんからも、「具体的な成果が出るのはまだこれからですが、採用した若手社員が経験を積み、会社を支える存在になってもらうため、この意識の変化を大事にし、これからも継続して“攻めの採用”を続けていきたい」と語ってくれて、戦略的に採用活動ができる基礎が築かれていることを感じているようであった。

 採用条件に合った応募者を増やすためのターゲットの明確化(母集団形成)から、採りたい人材を確実に入社につなげるまでの一連の採用プランを独自に作れるよう、石毛さんに採用に関する基本的な考え方と具体的な改善策を習得してもらうことにした。 まず、母集団形成のための求人票は、「企業名と給与しか見られていない」という考え方は間違いであり、求職者が知りたい情報を求職者の目線で伝えることの重要性を説明した。例えば、臨床検査分析の仕事に対し、「難しそう」というイメージだけで求職者に敬遠されないためには、仕事内容をわかりやすく記載することだ。具体的には、臨床検査分析で取り扱う検査機器の名称を記載したり、営業職であれば実際に担当する営業先のエリアや使用する社用車の情報等まで詳細に示すことで、求職者は業務内容を具体的にイメージできるようになり、応募してみようという気になる。また、賃金についても、求職者目線を意識し、経験年数やスキルを例示した「モデル年収」を追記することで、応募者が入社後の自身の処遇をイメージできるよう、明確に記載することが大事だとアドバイスをした。 次に、選考のプロセスも大胆に変えることも実行した。これまでは、「履歴書の送付→書類選考→面接」と一般的な段階を踏んでいたが、思い切って書類選考をカットした。これは、近年の就職市場を考えると、応募者を他社にとられないためには、応募から採用までスピード感が重要であること、書類では経歴やスキルで選びがちで、人柄や熱意はわかりにくいことからである。求職者からの応募書類を待つ姿勢から、採用側から積極的に攻める姿勢になってもらうため、求職者と直接接触する機会を増やして、書類ではわからない魅力を面接の中で引き出し、採用に繋げる狙いだった。 嘉代さんも、石毛さんも、思いも寄らない提案に最初は戸惑ったが、提案どおりに採用フローを変更した。しかし、これが、同社には合っていたようで、面接で本人と履歴書を見ながら、直接コミュニケーションをとれることで、書類選考では良い印象でも、面接では違ったというギャップがなく、逆に、書類選考では経歴で不採用としたであろう人材でも、直接話すことですばらしい側面を発見できたそうだ。

課題をクリアするためには実行力が大きな武器となる 採用難に苦戦している中小企業においては、優秀な人材を低コストで迅速に採用するためには、自社のことを一番知っている社員が、求職者に対し自社の魅力を伝えるための工夫を考え、それを実行に移すことが実は近道なのです。 今回、コンサルタントの提案を素直に受け入れ、小さなことでもすぐに行動に移し、更に独自に工夫をされるお二人の実行力により、着々と独自の採用戦略を構築されています。その積極的な行動力はこの先大きな武器となり、必ずしっかりとした成果に結びついていくはずです。

同社は動物専門の臨床検査が専門だ

新人の石毛さん、採用責任者の嘉代さん

石毛さん(中央)の成長ぶりに、嘉代さん(右)、コンサルタント(左)も感動

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業事援支保確材人急緊業企小中都京東

集例事好

会社ホームページがなくても成功する人材採用方法

大立工業株式会社所 在 地 東京都世田谷区北沢 4-16-13事業内容 空調・給排水・衛生設備工資 本 金 2,000 万円代 表 者 代表取締役 土橋 昇一創 業 年 1957 年従業員数 11名

▷▷「会社HP」がない隠れた小規模企業 「情報はインターネットで検索」が当たり前の時代、就職活動でも気になる企業があれば、まずはホームページで調べるというのが一般的ではないだろうか。 しかし、長い歴史を持つ中小企業の中には、会社のホームページを持たない企業も存在する。大立工業もまさにそのような企業で、会社のホームページはなくとも、営業上も人材採用上も、何の問題もなかったそうである。 同社は、創業が昭和32年であり、空調設備の設置工事や給排水の配管工事を行う社員数11名の会社である。40年以上にわたり公共事業を多く手掛けている。 これまで人材採用は、ハローワークからの採用で十分にまかなえていた。一度入社した社員の定着率が高く、2〜3年ごとの採用しか行ってこなかった。 しかし、最近になって久しぶりに採用活動をしてみると、ハローワークからの応募者が無い状況が続き、独自に調べた有料媒体での募集も結果は同じであった。考えられる原因は、求人難だからという以外に思いつかなかった。 また、専務取締役の川澄有さんは、「社員の高齢化」という現実にも危機感を持っていた。社員の定着率が高いがゆえに、定期的な若手の採用は行っていなかった。川澄さん自身も現在66歳。社員の平均年齢は50歳を超えている。  これまで、採用業務は川澄さんと代表の土橋昇一さんの2人で行っていた。しかし、2人で担当するがゆえに採用情報が共有できず、応募者が来ない状況への原因の把握も含め、有効な対策ができていなかった。 そこで、川澄さんが主導となり、新たな採用手法を模索しているときに知ったのが、今回の事業だった。

▷▷採用2名の成果へ また、川澄さんが持っているネットワークをフルに活用した人づてによる紹介に力を入れ、仕事の関係者が集まる会合や知人と会う際にも、常に「こういう人材を探している。良い人を知らないか?」と声をかけ続けた。 これらの「自ら動く」という意識改革による積極的な活動により、ハローワークから経験者の応募が短期間に続けて2名あり両名とも採用した。そのうちの 1名は、業界内で川澄さんを知っており、「川澄さんがいる会社だから応募した」という待望の若手社員だ。更に、その後知人からCADの経験者の紹介もあった。 「若い人であれば、インターネット検索で色々な情報にすぐにたどり着けるかもしれませんが、我々アナログ世代は、ネットから採用情報を収集できません。だから、人と会うことやつながりを大事にします。コンサルタントは、いつも具体例を交えながら何をどうすれば良いか、分かりやすく丁寧に説明してくれました。それを理解していくことによって採用活動に対する意識が変わりましたね。そして、実際に採用することもできました。実は、最初のころはそれほど期待はしていなかったのですが、専門職の方からのアドバイスは本当に有用ですね」(川澄さん)。

▷▷自社を見つめ直す 「ハローワークを利用することはあっても、それ以外の外部媒体を活用したことがほとんどない。今後は有料の求人広告や人材紹介には費用がかけられない」という同社。 まず、コンサルタントは同社の採用に関する過去の採用フローや採用実績を把握することから始めた。コンサルティングでは、課題解決ばかりではなく、その企業の特徴でもある強みを活かしていくことも必要だからだ。同社の強みとしては、採用担当者である川澄さんの広いネットワークである。とにかく業界内外問わず広い人脈がある。コンサルタントは、その人脈を活かした母集団形成の可能性を指摘した。 次に、採用チャネルを増やすこととハローワークとの連携である。過去の採用実績もあることから、求人票の見直しも含め、ハローワークとの連携を強化し、更に採用チャネルを増やすため、無料の求人サイトや採用に関する助成金

具体的な求人内容と迅速な行動 求人票を作る際には、まず、ターゲットとなる人材を想定してください。それから、そのターゲット層の求職者が見てわかりやすい求人内容を作ります。モデル年収を記載する以外にも、残業は月平均何時間か、研修期間は何日間かなど求職者にわかりやすい記載を心掛けてください。 また、「自社の採用において何が一番効果的なのか」が掴めず悩んでいる採用担当者も多いと思いますが、やり方さえわかれば、積極的に動けるはずです。 今回、川澄さんは、採用チャネルや求人内容の提案などコンサルティングの内容を真摯に受け止められ、また、人柄や幅広い人的ネットワークを活かし、迅速に行動されたことが、知人からの紹介等につながったと思います。

事業の活用を提案し、より応募数を増やすことを目指した。 そこでコンサルタントは、まず求人票作成の基本となる「どのポジションに、どんな人材が、どういう理由で欲しいか」の確認を行った。同社が採用しようとするポジションは2つの職種だ。空調・給排水設備の「配管工事」と、その「現場監督」だ。建設現場や工事の未経験者でも意欲さえあればスキルは一切問わない。ただし、平均年齢が高いため、できるだけ若年層を採用し後進育成に努めたいという希望があった。 次に、そのターゲットゾーンに対して、求人内容をより魅力的に見せるにはどうすればよいか。若年層にはインターネットで情報発信することが有効ではあるが、ホームページは、制作コストやその後の保守管理の経費を考えると今すぐは難しい。 それならば自社ホームページが無い分、会社の特徴や魅力をすべて求人内容に盛り込む必要がある。コンサルタントは、既に提出済みのハローワークの求人票の記載項目を一つひとつ確認し、求人票の変更を指摘した。 例えば、給与条件が174,000 円〜340,000 円と幅があったため、年齢や経験に応じたモデル年収を記載することを提案。「未経験者25歳:〇〇円からスタート」「30歳(5年目):〇〇円」など、具体的な金額があった方がイメージは付きやすい。 そして、「長い歴史があり、非常に安定した会社経営をしている」「技術力の高い社員ばかり」「丁寧な人材育成に努め、1級・2級管工事施工管理技士などの資格取得の費用を支援する」など、情報を事細かに盛り込む予定だ。

技術力が高い大立工業株式会社

担当コンサルタント(左)、土橋代表取締役(中央)、川澄専務(右)

求人票の記載の改善例(一部)

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業事援支保確材人急緊業企小中都京東

集例事好

施工管理者をわずか1ヶ月で採用「求職者目線」を徹底的に意識しアドバイスはすべて迅速に実行

丸喜株式会社齋藤組所 在 地 本  社 青森県青森市中央2-2-12 東京支店 東京都江戸川区東瑞江1-1-3      丸喜ビル2F事業内容 建築業資 本 金 3,000万円代 表 者 代表取締役社長 齋藤 義則創 業 年 1988年(創業1945年)従業員数 47名(2015年4月1日現在)U R L http://www.marukisaito.com/

▷▷仕事があっても、人が足りない3年間、応募ゼロの危機感

 「ここ数年は施工管理者の求人を出しても、まったく応募がありません。それが、わずか1ヶ月の間に 2 名の採用に結びつき非常に驚いています」。こう話すのは、丸喜齋藤組の東京支店支店長・佐藤一成さんだ。 青森県に本社を持つ同社は、公共・福祉施設から個人住宅まで、幅広い物件の建築やリフォームを手掛けている。建設業界では珍しく、自社で大工も雇用し、技術水準の高さを継承している。特に青森県産の針葉樹「ヒバ」の“香り高い”“劣化しにくい”といった特性を生かした木造住宅は、顧客からの人気も高い。 実績と技術力の高さから安定的に注文依頼が入る同社だが、ここ数年は、建設現場の進捗や物販搬入の管理・監督を行う「施工管理者」が採用できず、泣く泣く受注案件を断らざるを得ない状況が発生していた。 そこに東日本大震災による復興事業や 2020 年の東京オリンピックに向けた開発事業といった建築需要が重なり、業界全体が慢性的な人手不足状態に陥っている。 「2010 年頃まではハローワークに求人票を出しさえすれば、ちらほらとは応募がありました。それがここ 3 年以上、まったくのゼロだったんですよ」。東京支店の採用責任者である佐藤さんは危機感を募らせていた。 人材採用のフローを見直すべく、有料の求人広告企業や人材紹介会社などへも問い合わせたが、その高額な料金がネックとなった。「完全に行き詰まったタイミングで、今回の支援事業を知り、『これだ!』と思い、すぐに申し込みました」。

▷▷求める人材により書き分けた求人票

 そこで、それぞれのターゲットにアピールできるように求人票を書き分けた。経験者用は、より技術を高められる環境であることが伝わる様に、実例として働きながら資格取得をしていることを追記。未経験者用は、会社の雰囲気や業務内容を詳細に分かりやすくするため、ほとんど一から書き直した。 未経験者には、具体的な業務内容がイメージしづらい「施工管理」の表記は、「建築現場管理のアシスタント業務」に変更。出勤時間から退社時間までの1日の業務の流れも分かりやすく記載。先輩社員が丁寧に指導をするなど育てていく風土があることも追加した。 同時に「求職者が必ずチェックする」とコンサルタントからアドバイスを受けた会社ホームページの採用情報ページにも、同様の情報を細かく入力した。「上司の顔が見えたほうが安心感が増すだろう」と、東京支店責任者の顔写真も掲載した。 すると、求人票を変更した直後に、ハローワークから立て続けに2件の応募が来た。しかも、一人は、地方在住だが東京での仕事を探していた長年待ち望んでいた施工管理の実務経験者、もう一人は、未経験者だった。 「選考結果はできるだけ早く伝えたほうがいい」というアドバイスのもと、応募があった際はその日のうちに連絡を行った。うち一人は、応募のためにわざわざ遠方から新幹線で東京に来ていることが分かり、その日のうちに面談を実施。他の求人にも応募しているとの事で、その場で金額面も含めた内定オファーを提示したところ、応募者もその場で入社を快諾するスピード採用につながった。もう一人の未経験の求職者も同様に、面接の場で内定オファーを伝えるスピード採用だった。 「『企業は人なり』と言いますが、改めて人材採用の重要性を再認識しました。今年は夏にまた大きな案件がスタートするので、そのためにもあと1、2 名は採用できるように頑張りたいです」(佐藤さん)。 経験者の採用が困難な状況の中、企業の将来を見据えて、適性のある未経験者を採用し育成することも必要である。そのためには、計画的な教育体制や日常の仕事において先輩社員がフォローするなど、未経験者でも安心して働ける環境づくりに取り組むことが大事である。

▷▷欠けていた「求職者目線」

 コンサルティング開始直後に、佐藤さんはこれまでの求人票がいかに“不親切”だったかを思い知らされたと話す。「記入が必要な箇所に、とりあえず一言ずつ記入していただけの求人票でした。『求職者目線』を意識したことすらなかったんですよ」。 募集していたのは、建設業界で引く手あまたの施工管理の経験者だった。しかも、「一級建築士」の資格を必須としていた。コンサルタントは、「まずは最新の求職者の動向を研究しに行きましょう」と、佐藤さんと共に地元のハローワークを訪問した。佐藤さんはハローワークに行くのも初めてで、そこで、東京支店が「事業所登録」をしていないことを知った。 そのままでも、青森本社は「事業所登録」しており全国どこからでも求人検索にはヒットするが、「より地元ハローワークとの連携を強化したい」との思い

「採用決定権者」の迅速な行動がカギ 採用決定権を持つ佐藤さんが、求人票の書き方や人材要件の緩和など、様々なアドバイスをそのまますべて取りいれて実践してくれました。その柔軟で迅速な行動力が、わずか 1 ヶ月で 2 名採用という実績につながったのだと思います。

から、「東京支店でも採用決定できる」と求職者にわかるように事業所登録もすぐに行った。 そして、コンサルタントからのアドバイスに従い、求人票を1 職種で「経験者」「未経験者」2 種類作成することにした。募集職種は同じでも、違う内容の求人票を登録できることも、今回の事業で初めて知った。また今まで資格がある人に固執していた事が採用できないひとつの原因であることから、未経験者の採用と育成をコンサルタントから提案。同社も「建築士の資格を持つ経験者にももちろん来てほしいのですが、建設業界と会社の未来を考えると、未経験者を一から育てていく必要性を感じました」。同社では未経験者育成を含めた教育体制に見直す方向で検討に入った。

『ヒバ』は香り高く劣化しづらい

大工も自社で雇用し、技術を維持

採用責任者の佐藤さん(左)と担当コンサルタント(右)

社員寮もある東京支店のオフィスビル

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集例事好

「未経験者募集」が経験者の応募も増やすベテランエンジニアの採用につながった戦略的求人

シービーエス株式会社

▷▷途絶えてしまった新卒採用 シービーエスは、コンピューターがまだ一部の大手企業にしか導入されていなかった1974 年に設立。IT 業界の老舗企業だ。クライアントは、銀行、証券会社、保険会社など、金融業界を中心とした大手優良企業で、長く安定的な取引を続けている。得意とするのは、基幹システムとなるホストコンピューターの開発保守だ。携わる案件は大規模案件が多く、業界トップクラスの SIer(システム開発会社)とタッグを組み、エンジニアはクライアント常駐で開発を行っているケースが多い。 すさまじい勢いで技術が進化する IT 業界では、習得した技術がすぐに陳腐化してしまうこともある。それに対して、「シービーエスのお客様は、年単位の月日と数十億、数百億円の費用をかけて基幹システムを構築します。新しい技術を導入する際も、すべて基幹システムに紐づけながら開発するので、ノウハウはどんどん蓄積されます」と胸を張るのは、人事課の大久保直哉さんだ。大久保さんは、新卒でシービーエスに入社をした後、エンジニア、営業職を経て、現在は人事担当者として、新卒・中途採用を一手に引き受けている。人事経験はすでに15 年を超えるベテランだ。 同社のシステムエンジニアは、これまで、主に新卒採用で募集を行い、「エンジニアの卵」として長い取引があるパートナー企業に常駐させることで育成していた。 ところが、2008 年のリーマンショックを機に、「エンジニアの卵」を受け入れてくれるクライアントは激減。ベテランのエンジニアさえ、仕事の確保が危うい状況に陥り、新卒採用はその後数年間ストップさせた。 代わりに、即戦力となる経験者の中途採用にシフトしたが、以前は有料の求人広告やハローワークに応募を出せば、その都度 10 〜20 名の応募があった。しかし、2015 年は採用目標 20 名に対して、応募者もひとケタに落ち込み、5月にようやく1名を採用して以降は、全く採用が出来ない状態であった。その原因を模索している状況で応募したのが、今回の採用支援事業だった。

▷▷未経験者に絞った採用は経験者もエントリーしやすい そこで、今回は募集ターゲットを経験者の採用から「エンジニア未経験者」へと変更。 まず、コンサルタントによる求人票のチェックでは、「人物要件」欄にプログラム言語名が並んでおり、これは経験者募集であれば有効だが、未経験者には敬遠されてしまうと指摘し、「パソコン入力が可能な方」「WORD・EXCEL などのソフトが使える方は尚可」と記載した。 また、面接時の求職者への対応についてもアドバイスをし、第一印象だけにとらわれず、コミュニケーションに多少の不安があっても他に良いところを探し、採用を前提にした面接を心掛けるようになった。 その後、応募者は 20 名まで増え、本人の成長意欲の高さなど、明らかにこれまでとは違う手ごたえがあった。そして、1 名の採用に結びついたのは、意外なことに高いスキルを持つエンジニアだった。 「未経験者に対象を絞った求人には、経験の浅いエンジニアも安心して応募できるため、経験者からの応募も多く来ました。募集枠はまだまだあるので、引き続き未経験の人材も採用していきたいです」。「これまで、取り組んできた細目な内定者フォローや、フレンドリーな雰囲気を作り、求職者の本音を引き出すような面接手法などの良い点や、第一印象で判断していたかもしれない悪い点を、第三者の視点でアドバイスいただき、本当に勉強になりました」(大久保さん)。

▷▷第一印象が悪い人材も働く中で成長する 求人票を見て、担当コンサルタントがまず気が付いたことは、「応募条件のハードルの高さ」と「面接通過率」の低さだった。例えば、エンジニア経験の目安については、「25 歳 経験 2 年以上」「35 歳 経験 10 年以上」との記載があった。これは、求職者にとって就職難な状況が続いていた頃の厳しい条件をそのまま掲載していたのだ。 更に、「入社したからには長く続けてほしい」と内定者を厳選していた。必然的に「どの会社でも欲しいと思う人材」にしか内定を出していなかったため、入社に結びつくケースが低かったのだ。 一方、「ここ数年ストップさせていた若手を中心とする未経験者の採用を復活させたい」との思いもあった。

活かしたのは、もとからあるポテンシャル もともと大久保さんが持つ採用ノウハウは豊富で、「会社のすべてをざっくばらんに見せる」という面接スタイルで、不安なまま入社を決意してもらうのではなく、不安をできるだけ減らして入社してもらうという考えから、過去の退職理由も隠すことなく応募者に伝えている。 そんな、「未経験者や若手もしっかり育てたい」という大久保さんの思いは、未経験者だけでなく、ベテランエンジニアの応募者にも伝わり、採用にうまく結びついたのだと思います。 未経験者の若者は、求人に応募することも面接も不安ですし、もちろん入社することも不安です。しかし、同社には若手を育てているという実績がありますから、未経験採用については未経験者の若者にとって最大の魅力になると思います。

そのきっかけは、今から約 2 年前、東京都の「若年者緊急就職サポート事業」に参加したときのことだ。就職に苦戦している 29 歳以下の若年層を約 3 ヶ月間派遣社員として受け入れ、その後正社員として採用できる事業だ。大久保さんいわく、「正直、通常の応募で来ていたら、確実にお断りしていた」という若者を約 10 名受け入れ、うち 5 名を正社員採用した。第一印象が悪くても、働きぶりを見ると、しっかりと仕事を覚えて成長する人材が多いことに驚き、同時に、ゼロから社員を育てていく自信もこのときに取り戻した。

所 在 地 東京都千代田区神田小川町1-8-3 小川町北ビル5F事業内容 ソフトウェア開発保守資 本 金 5,000 万円代 表 者 代表取締役社長 内田 茂創 業 年 1971 年従業員数 50名U R L http://www.cbs.co.jp/

「金融業の基幹システムに携わる会社です」と採用担当の大久保さん

新人教育はベテラン勢が丁寧に行う

コンサルタント(左)と大久保さん

未経験者でも不安なく応募できるように改善

・未経験者可(パソコン入力可能な方、コンピュー

タに関する資格・知識・経験は不問です)

・WORD、EXCELなどのソフトが使える方は尚可

・人とのコミュニケーション能力(お客様にITサー

ビスを提供している会社ですので、人と関わる

仕事です)

・社会人としての常識、仕事に臨む姿勢(挨拶、

言葉遣い、身だしなみ、等)

改善前

改善後

・COBOL、またはJavaの知識がある方

・金融系での開発経験がある方

【実務経験の目安】25歳経験2年以上

35歳経験10年以上

人物要件

人物要件

求人票の記載の見直し

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「稼げる」だけでは確保できないタクシードライバーの採用術

明治自動車株式会社所 在 地 東京都足立区入谷7-17-17事業内容 タクシー事業資 本 金 1,425 万円代 表 者 椿 貴喜創 業 年 1956 年従業員数 185 名U R L http://meiji-jidousha.co.jp

▷▷求職者に敬遠されるタクシードライバー タクシードライバーが「稼げる仕事」の代名詞だった時代はもはや遠い昔、今は人材確保が難しい職種のひとつではないだろうか。 明治自動車は昭和 31 年設立で、「認可を受けたのは日本で 6 番目」という古い歴史を持っており、現在同社は車両数 72 台、ドライバー 160 名を有している。 車両数から計算すると、同社の理想的なドライバー数は 187 名だが、近年は 30 名以上の欠員状態が続いている。その状況を打開すべく、2 年前から採用業務に携わっているのは、経営企画室室長の黒澤嘉宣さんである。黒澤さんは、採用業務以外にも、労務管理や法務管理、労使交渉、新規事業の立ち上げなど、多岐にわたる業務を精力的にこなしている。  採用活動としては、ハローワークをはじめとする公的機関、各種の募集媒体を活用し実施しており毎年 13名程度の採用であった。今回、外部から客観的に見た同社の採用活動の改善点の指摘や改善提案を受け、より効果的な採用活動をしていきたいと事業に参加した。

▷▷ハローワークと連携を強化 コンサルタントから見て黒澤さんは、「ありとあらゆる手段を勉強したい」と、非常に意欲的であった。また元々業界内では高かった定着率も、「更に上げていきたい」と、 情熱が感じられた。ただし、年間の採用コストの上限があるため、これまでも無料、もしくは費用対効果が高い求人媒体の活用や、都や区が実施する若年層の就業者支援などに積極的に参加していた。しかし、ヒアリングを進めるうちに、意外なことにハローワークは、それほど活用していないことがわかった。 これまで管轄のハローワークに求人を依頼し、その都度更新をしているが応募がほとんど無い状況だった。 そこで、コンサルタントとともに、ハローワークへ改めて相談に行くことにした。  ハローワークでは、求人票の記載内容に関する相談をし、モデル給与を記載すると、求職者にはわかりやすいことや、求人掲載のタイミングなどのアドバイスを受けた。

▷▷ミニ面接会でこれまでと違う手ごたえ 今回、黒澤さんが一番手ごたえを感じたのは、ハローワークからの情報で知ったハローワーク内で実施している「ミニ就職面接会」であった。実は、これまでも細々と継続的に、自社独自に同様のミニ面接会を実施はしているが、応募者がゼロのときもあれば、来ても「とりあえず見に来ただけ」という状況だった。そこで、「やるからには求職者に来てほしい」と、黒澤さんは新しく作ったタペストリー(「のぼり」のような制作物)を持参し、ブースを目立つように作った。それとともに求人情報、画像情報だけでは求職者に伝わらない会社の雰囲気や特徴、仕事内容の情報をハローワークの職員から求職者へ伝えてもらうため、直接求人担当、紹介担当者に説明した。 これらの取組の結果、面接会当日は 4 名と面接できた。ハローワークの担当者によると「タクシードライバーの面接会に、これほど人が集まったのを見たことがない」という数であった。「応募者たちはみな、やる気のある、非常に良い人材ばかり。これまでとは明らかに違う手ごたえです。ぜひ、入社してほしいですね」と黒澤さんは、ハローワークやコンサルタントを活用した成果を実感した。 結局、応募頂いた方は、採用に至らなかったが、同様の面接会をハローワーク足立と連携を図り実施する予定である。

受入環境を整えることが定着率向上にもつながる タクシー業界では 1 年で 40%といわれる定着率が、同社では 66.9%もの方が 3 年以上勤務しており、高い定着率を保てている。同社では今後は 85%に上げる事を目標にしている。 昨今タクシー業界は「採用困難」「人手不足」の悩みを抱えている。そうした中で高齢者、女性などの受入を行い従来の採用に幅を持たせる対策を行う企業もある。ハローワークなどの就職支援機関の活用と情報収集、行動し検証を積み重ねていく事で、採用機会を広げていく事ができる。 また、社内での明るい雰囲気作り、労務環境の見直しなどの取組も、求職者に良い印象を与え採用に少なからず効果を与える。その取組は定着率向上へも繋がるはずで、同社では、コンサルタントからアドバイスした従業員満足度調査等も実施していくことで、業界随一の定着率を目指していくとしている。 採用に特効薬はない。今回の黒沢さんのように、過去の常識にとらわれない行動力、小さな努力を積み重ねる取組みが選ばれる会社の一歩である。

▷▷「自社の魅力は何か」を掘り下げて考える 同社求人の最大の魅力は、「7 割以上のドライバーが月間 30 万円以上を稼いでいる」という実績と、「ドライバー同士の情報交換が活発であること」「完全個室・朝食付きの寮」など、就労環境が抜群に良いことだ。 反面、同業他社の求人条件に比べ、大手タクシー会社では導入が進んでいる「入社一時金」が無い、「給与保証期間が短い」など、一見すると見劣りしてしまう部分もある。しかし、これらは、「本気で稼ごうという心構えのあるドライバーに来てほしい」という同社の狙いからである。

 多くのタクシードライバーは、「稼げるノウハウ」を同業者とは共有したがらない。自分だけが知っておきたいためだ。しかし、同社のドライバーたちには「情報交換は積極的に行った方が、結果として、全体的な給与が上がる」という考えが根付いている。同社の社員教育でもそう指導しており、この組織風土は、代々脈々と受け継がれている。 こういった自社の強みをできるだけ丁寧に求人票に落とし込み、モデル年収や各種手当などの細かい情報も新たに盛り込んだ。 また、「タクシードライバー」という言葉では、求職者はどうしても大手会社に目が行って、そもそも見てくれないかもしれない。そこで「夜勤無し」という同社の勤務体系の特徴を求職者に伝えるためにも、職種名は「デイシフトドライバー」に改めた。同業他社と比較して求職者の関心を高めるための小さな積み重ねのひとつである。 また、文字だけの求人票との差別化を図り、会社の雰囲気などを画像で求職者に伝えるために、ハローワークの求人端末に、画像情報を最大 10 ページまで取り込めることを提案したところ、早速実施することとなった。

【参考】 デイシフトドライバーとは、日勤常務(1 日 8 時間、別途休憩時間 1 時間) で働くドライバーのこと これに対し、一般的なタクシードライバーは隔日勤務(一回の乗務を2日分の 労働と計算し所定乗務時間数は 14 時間 15 分、別途 3 時間の休憩。)

採用担当の黒澤さん(左)とコンサルタント(右)

面接会では目を引くタペストリーを作成した

採用パンフレットも刷新

社員同士で積極的に情報交換

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業事援支保確材人急緊業企小中都京東

集例事好

会社の魅力を掘り下げて考え、PR方法を改善過去の成功体験にとらわれず、採用条件を柔軟に対応

株式会社ACROSEED所 在 地 東京都千代田区平河町 2-6-1 平河町ビル8F事業内容 法務コンサルタント資 本 金 3,000 万円代 表 者 代表取締役 佐野 誠創 業 年 1991 年従業員数 10名U R L http://www.acroseed.co.jp

▷▷「応募が来ない…!?」これまでにない危機感 「昔は、ハローワークと自社ホームページだけで十分に応募が来たのに、最近はぱったり来なくなった」。近年、好況期ゆえの人手不足に悩む企業から、そういった声をよく聞く。 まさにこのような悩みを抱えているのが、株式会社 ACROSEED の代表・佐野誠さんだ。同社では、外国人のビザ申請や、外国人雇用に関するコンサルティング、外資系企業の日本進出支援などを行っている。顧客からの要望に応えるうちに、社会保険労務士、税理士、行政書士を抱える、外国人・外資系企業を専門とする法務コンサルティング会社として成長してきた。 これまで、欠員時に社会保険労務士や行政書士をその都度採用していたが、ハローワークと自社ホームページへ求人掲載するだけで 60 〜 80 名の応募があり、採用に困ったことはほとんどなかった。 ところが、今年度は、業務増加と休職者の発生が重なり、急きょ 2 名の社会保険労務士有資格者と事務職のアシスタントの募集をすることになった。募集をかけたところ、社会保険労務士の応募は有資格者で実務経験の無い5 名のみ。応募者の中からコミュニケーションもとりやすくモチベーションの高かった転職活動中の 1 名に内定を出したが、退職する予定だった前の会社から引きとめられ、辞退となった。また、事務職に関しては、エントリーすらほとんどない状態で、2015 年の 4 月に採用活動を開始以来、未だ 1人も採用できていなかった。そこで、現在の労働市場をふまえた採用手法を取り入れるため、本事業に応募することとなった。

▷▷軸となる「会社の魅力」は何か そんな状況を細かくヒアリングしたコンサルタントは、「ある程度の応募者が集まっていた企業ならば、求職者を惹きつける魅力を十分に持つ可能性は高い。求人を出す際に、会社 PR や仕事内容の見せ方を変えるだけでも高い効果が見込めるかもしれない」と考え、まず、会社の PR 方法の改善を提案した。 社会保険労務士の有資格者は、社会保険労務士事務所で資格の専門性を生かす、いわゆる「士業務」に従事するか、もしくは大手企業の人事部で給与計算などの労務管理に従事するケースが多い。 前者の「士業務」を希望する人には、同社の賃金条件は高い方だが、後者の大手企業の賃金条件にはどうしても見劣りしてしまう。「それでも、社労士としてのやりがいの大きさは、社労士事務所の中ではピカイチのはず」。佐野さんには、そんな自信がある。 何より、佐野さん自身がこの仕事に大きな意義とやりがいを見出している。元は小さな行政書士法人としてスタートした。そこで外国人労働者のビザ発給や、雇用について相談を受けるうちに、想像以上に深刻な問題があることを知っ

▷▷過去の成功に甘んじてはいけない 通常、社会保険労務士事務所が行う募集は、社会保険労務士の資格に加えて、数年の実務経験が求められるが、同社の募集では、「経験不問」とし、その分未経験者に対し、教育制度が整っている点を追記し、また、外国人雇用について、何冊も書籍を執筆している佐野さんの専門性の高さもアピールした。 このように会社や仕事の魅力を前面に打ち出した求人広告を求人サイトにも掲載したところ、約 20 名の応募があった。 また、応募者が内定をもらった中からどの企業に入社するかの判断では、面接者の印象が非常に大きな影響を与えることを伝えた。面接は、採用する人材を見極める場であるが、同時に、応募者が入社する会社を選ぶ場でもある。そこで、面接時には、佐野さんの真面目で誠実な人柄と同社の社会貢献性を、応募者に率直に伝えることで、「佐野さんのもとで仕事をしたい」「この会社で社会に貢献したい」という意欲を高めてもらうことを心がけるようアドバイスした。 その桧山さんは、入社を決意した理由を、「佐野さんの真面目で面倒見の良さそうな人柄と、同社の社会貢献度の高さです。」と、力強く答えてくれた。今は、その一翼を担うために、同社でのやりがいを感じながら日々成長している。 そして、もう1つの事務職に関しては、まず条件面から見直しを図った。同社が採りたい人材は、「英語が話せてクライアントとの対応ができる人」だったが、求人票を見ると、「事務経験不問、多少の英語力を要する」と記載されており、給与も時給制だった。それでも、以前は採用できていたことから、求人内容の見直しをせず、漠然としたイメージで出していた。しかし、求職者には必要な英語力のレベルがわかりづらく、時給制に対する不安感もあり、応募者が集まらなかった。 そこで、人物像や諸条件を再確認したところ、必要なスキルは、「英語・日本語の読み書き、事務経験 1 年以上」と変更し、職務内容も具体的に記載した。また、雇用条件も月給制に改め、英語力のある事務職の一般的な給与水準なども考慮した給与額とした。 人材採用の状況は数年で変わる。過去の成功にこだわらず、その都度採用方法や雇用条件等を見直すことが、自社が求める人材を確保するためには不可欠である。

もともと持つ魅力をうまく引き出す 中小企業では、経営者の方が採用も兼務されているケースも多いかと思います。採用したいターゲットを見極めて、欲張り過ぎずに実際に必要なスキルと、世間の給与条件等の相場観を考慮し、適正な人材での母集団を形成することが重要です。 また、求人情報については、コンサルタントなどの専門機関でなくとも、第三者に、「ターゲットとなる人材が関心を持つ内容か」という視点で確認してもらうことをオススメします。

た。「犯罪に巻き込まれ、たまたま日本に行きついたという人たちが、日本で一生懸命幸せになろうともがいている」。そんな人たちの手助けをしたい。それが、外国人向けのサービスを専門に始めたきっかけである。 複雑な事情を抱える外国人のビザ発給には、数年がかりの月日を要することもあり、実のところほとんどはコストに見合わない。それでも無事にビザが発行されたときには、時には涙で、時には歓喜の叫びで感謝される。そんな実績を真摯に積み上げ、業務を拡大してきた。 「こういったやりがいの高さや社会的意義が高いことを前面にアピールするべきです」とコンサルタントは指摘した。求人票を見直すと、「社労士アシスタント募集」とだけしか記入をしていなかった。確かにそれではやりがいも伝わりようがない。

佐野代表取締役(右)とコンサルタント(左)

社内は英語と日本語が飛び交う

入社間もない桧山さん(左)と佐野代表(右)

佐野代表は書籍も多数執筆

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▲経営者は常にビジョンを語るべき、と吉岡氏

▲自社の魅力を発信することが大事、と青木氏

▲求職者と接する社員の姿勢は大切、と角谷氏

▲必要な人材をつき詰めるべき、と市川氏

▲採用と育成は一体化が重要、と柳氏

特集Ⅱ

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石松:本日は人材採用支援のプロの視点で、中小企業における採用のあり方に関して、ご意見を賜りたいと思っています。どうぞ宜しくお願いします。

柳:こういう人が欲しい、ではなぜその人材が欲しいのか、会社としてどういう方向に行きたいからその人を採用したいのか、という点を、採用担当者が把握して欲しいですね。こういった問いに「現場から言われたから」ではダメです。中小企業であってもその意識はあった方が良いです。採用戦略を考えると、経営戦略に繋がっていくので、一緒に考えていく必要があります。実際コンサルを担当されているところで、そもそも採用戦略を立てている企業はありますか?

市川:残念ながらとても少ないです。どこでも通用する「良い人」はどこでも欲しいものです。その企業にとって本当に欲しい人はどういう人か、という所をつき詰め

青木:人に伝えられる魅力を発信していくことが大切です。だから無ければ創り出す・掘り起こすっていうことが絶対に必要です。例えば、離職する人がいないとか、70 歳でも働いてる人がいるなど、定着率が高いとか、資格取得の費用を会社が出すとか、年1回で社員旅行に行くとか。実はそこが強みだと教えると、初めてそこで「自社の魅力」に気づきます。求職者も、親御さんに限らず友人・恋人・奥さん・旦那さんにそうやって伝えたいはずです。柳:やはり大企業と比べた時に、いかにして戦っていくか、中小企業の弱みを強みに変えていくということですね。例えば今の若者たちって転勤したくない。引越したくない、実家から通いたいという方が非常に多いです。大企業の総合職で入ると、転勤する可能性は大きい。でも中小企業は、多くの場合転勤がないですよね。そういった所は親御さんも安心できます。一つのアピール材料として使われているところは成功事例があがってますね。

吉岡:常にビジョンを語ってもらいたいですね。採用戦略・経営戦略がありますけども、社長がこういう風になりたいというのがあれば、皆はそれに向かって頑張っていきますし、そういう時にどのように自分たちがなればいいのか、どういう人が仲間に入ればいいとかって考えられてくるんですけどね。経営者に聞くと、常に「言ってる」と言うんですが、社員に聞くと「いや聞いた事ない」なんてことも結構あります。

角谷:人事や採用担当者等、求職者と一番接する社員は、会社が大好きじゃないといけないんでしょうね。「自分の会社は世界一だ」って思い込むぐらいの、決意をしなきゃならないと思いますね。そうすると求職者側からするとその会社に決めやすいのかもしれない。少なくとも、他の人からはそう見えるっていう姿勢や意識を持って取り組まなきゃいけない。

石松:昨今の採用マーケット状況において、採用の多様性や採用ターゲットを見直すことが重要となっていますが、如何でしょうか?

吉岡:経営戦略というか、事業計画はあるので、事業も部署ごとに分けているので、どの位の人が必要か積み上げていくとやりやすいのではないでしょうか。それも、難しければ、「じゃあ、どういう人は採用したくないですか?」ってお聞きすると、具体的な採用ポイントの言葉が出てきたりしますね。

柳:究極のところから聞くと、採用・経営戦略が無い企業も「やるしかない」って思ってくれるのかなと。小分けにしてもいいので、そのあたりは明確にしていかないといけない。どこの企業も、「今、欲しい!」と言いますが受入部署の受入体制、教育体制等、準備しておかなければ、事業を継続するにあたって必要な人材を、新規採用することは難しいですね。

石松:なるほど、そうすると中小企業としての強みを活かす具体策としては、何があげられるでしょうか?

青木:絞り込みと広げる要素の判断が重要。その枠が決まった中で採用活動していくと、ミスマッチと可能性と両方のバランスをどう取るかっていう考えに持っていける。我々のアドバイスで「一つの求人に対してこんなに真剣に考えたのは初めてだ」と仰るケースもあります。絞りすぎるのではなく、その会社にとって本当に必要なターゲットを見極める。

市川:多様性については、受入課題ですよね。例えば障がい者雇用に関してやる気がある企業は増えましたが、業務のやり方を変え、受入環境・受入体制を整えるというところから始めていかないといけない。

吉岡:女性の積極的な採用や男性の育児休暇取得等も、大手企業で良い事例が沢山あるので、最近はそれを中小企業にお話すると「それはイイネ」という話に必ずなりますね。

角谷:やはり環境を整備した上での採用っていうのは重要ですね。

ていくことが、きっと中小企業の採用戦略の第一歩なのだと思います。

吉岡:でも現実は、どうしても先に仕事がありきで、忙しいから後で考える…ということになりがちですよね。そうであれば、採用の要件として、“ここだけは外せない”というのを決めていただき、あとは採用後に会社の中でどうやったら育成していけるのかというのを一緒に考えていくとよろしいと思いますね。

柳:採用と育成は一体化していないと、定着はなかなか難しいですよね。

角谷:中途採用というのが業績に直接影響する“IT エンジニア”の世界では、採用と育成計画がしっかり立てられている傾向にあると思います。増員が叶えば受注できるプロジェクトも増えて、今期の決算に影響してくるからです。数字の目標は凄く明確です。

柳:そうですね。採用計画で重要なのは、毎年採用活動している訳ではない企業が、いきなり即戦力の人材を採用することはかなり難しいため、それを分かった上で、「いつ、どういう人材を、何人採用するか」「採用した人の教育はどうするか」など、事前準備をしっかりと行うことが必要です。毎年の退職者数は分かるのですから、計画をきちんと立てることで、必要な時に欲しい人材が採れるのではないでしょうか。定期的に人を採用しない中小企業でも重要になってくると思います。

中小企業の強みとは

採用戦略は経営戦略

採用ターゲットを見直す

採用支援のプロが語る

東京都中小企業振興公社人材ナビゲータ青木 勝一

採用コンサルタント柳 修一

採用コンサルタント角谷 壮一

東京都中小企業振興公社人材ナビゲータ吉岡 早苗

採用コンサルタント市川 純太

座談会ファシリテーター石松 明彦

青木/ ズバリ、我社の魅力 BEST3を作ろうということ。そして共通認識にしていきましょう。

吉岡/ 社内を見渡し、自社らしさを見極めてもらいたい。社員や社外の方に聞いてみることから始めてはどうか。

角谷/ 求職者視点で求人活動してほしい。まずは給与を明確に示し、伝えるべき情報を整えましょう。

市川/ 今は、待っているだけでは人は来ない時代。だから企業から求職者に積極的に歩み寄ってほしい。

柳/ 全ての応募者に関心を持ち、相手を知ろうとする想いが大事。出会いを大切にしてほしい。

特集Ⅱ 採用支援のプロが語る特別座談会

中小企業における

効果的な採用のあり方都内中小企業の人材課題に対して人材ナビゲータを派遣し、人材に関する採用や労務管理上の支援等を行っている東京都中小企業振興公社。そして、今回、「緊急人材確保支援事業」において、中小企業の採用支援を担当したコンサルタントたち。採用支援のプロ達が集まり、座談会を開催した。

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業事援支保確材人急緊業企小中都京東

集例事好

公共職業安定所(ハローワーク)

東京しごとセンター

東京都立職業能力開発センター

東京都労働相談情報センター

求人検索サイト「しごと検索システム」へ求人情報を掲載することができます。詳しくは、東京しごとセンターHPをご覧ください。http://www.tokyoshigoto.jp電話 03-5211-2804

○求人の相談・受付    求人についてのご相談、求人のお申込をお受けします。

○総合相談窓口人材育成や人材確保に関するご相談は総合相談窓口にお問合せください。詳細は、各職業能力開発センター(右記★印)へお問合せください。

○人材育成・人材確保に関する支援従業員のスキルアップを支援するとともに、地域の企業や団体との連携により、マッチング会などを実施しています。• 現場訓練支援事業(講師を紹介し企業内で訓練)•オーダーメイド講習(各企業の要望に応じた講習)•キャリアアップ講習(仕事に役立つ各種短期講習)•施設設備の貸出  •マッチング会の開催• 講演会等の開催  • 求人とセットの職場実習訓練

○労働相談労働条件や労使関係など労働問題全般にわたり、電話や来所でのご相談をお受けしています。 ☆東京ろうどう110番 0570-00-6110

○賃金等の調査資料の提供都内中小企業における賃金・一時金等の調査を行い、調査結果を提供します。

○普及啓発雇用に関する法律知識等の普及啓発を図り、職場トラブルを未然に防ぐために、各種セミナーの開催やウェブコンテンツを公開しています。• 労働セミナー •Webラーニング など

○公共職業訓練の実施訓練生の求人も受け付けています。

★中央・城北職業能力開発センター 03-5800-2611 ◦ 同 セ ン タ ー 高年齢者校 03-5211-2340 ◦     〃     板 橋 校 03-3966-4131 ◦     〃     赤 羽 校 03-3909-8333★城南職業能力開発センター 03-3472-3411 ◦ 同 セ ン タ ー 大 田 校 03-3744-1013★城東職業能力開発センター 03-3605-6140 ◦ 同 セ ン タ ー 江 戸 川 校 03-5607-3681 ◦     〃     台 東 分 校 03-3843-5911★多摩職業能力開発センター 042-500-8700 ◦ 同 セ ン タ ー 八 王 子 校 042-622-8201 ◦     〃     府 中 校 042-367-8201

○企業支援中小企業の雇用環境整備の支援のため、専門家の企業への派遣、奨励金の支給などを行っています。•パートアドバイザー制度•とうきょう次世代育成サポート事業•専門家派遣によるアドバイス•雇用環境整備等の奨励金の支給 など

★東京都労働相談情報センター 03-5211-2248 ◦ 同センター 大 崎 事 務 所 03-3495-4872 ◦ 同センター 池 袋 事 務 所 03-5954-6501 ◦ 同センター 亀 戸 事 務 所 03-3682-6321 ◦ 同センター 国分寺事務所 042-323-8511 ◦ 同センター 八王子事務所 042-643-0278

ハローワークでは、オンラインシステムにより、求人情報の提供を行っています。従業員の募集をお考えのときは、ハローワークをご利用ください。求人申込みは、管轄のハローワークへお越しください。(原則として雇用保険適用事業所の届け出をされている管轄のハローワークです。)都内ハローワークの連絡先・管轄はこちらです。

雇用関係助成金のご案内雇用の安定、職場環境の改善、仕事と家庭の両立支援、従業員の能力向上などに、ご活用ください。詳しくは、「雇用関係助成金」で検索してください。 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/

所   名 所 在 地 連 絡 先 管 轄 区 域飯田橋 〒112-8577

文京区後楽1-9-20 03-3812-8609 千代田区・中央区・文京区・島しょ※小笠原村については、小笠原総合事務所(父島字東町152)

上 野 〒110-8609台東区東上野4-1-2 03-3847-8609 台東区

品 川 〒105-0012港区芝大門1-3-4    03-3433-8609 港区・品川区

大 森 〒143-8588大田区大森北4-16-7 03-5493-8609 大田区

渋 谷 〒150-0041渋谷区神南1-3-5 03-3476-8609 渋谷区・世田谷区・目黒区

新 宿[歌舞伎町庁舎]〒160-8489新宿区歌舞伎町2-42-10

[西新宿庁舎]〒163-1523新宿区西新宿1-6-1

[歌舞伎町庁舎]03-3200-8609[西新宿庁舎]03-5325-9593

新宿区・中野区・杉並区

池 袋[池袋庁舎]〒170-8409豊島区東池袋3-5-13

[サンシャイン庁舎]〒170-6003豊島区東池袋3-1-1

[池袋庁舎]03-3987-8609

[サンシャイン庁舎]03-5911-8609

豊島区・板橋区・練馬区

王 子 〒114-0002北区王子6-1-17 03-5390-8609 北区

足 立 〒120-8530足立区千住1-4-1 03-3870-8609 足立区・荒川区

墨 田 〒130-8609墨田区江東橋2-19-12 03-5669-8609 墨田区・葛飾区

木 場 〒135-8609江東区木場2-13-19 03-3643-8609 江東区・江戸川区

八王子 〒192-0904八王子市子安町1-13-1 042-648-8609 八王子市・日野市

立 川 〒190-8609立川市緑町4-2 042-525-8609 立川市・国立市・小金井市・昭島市・小平市・東村山市・

国分寺市・東大和市・武蔵村山市青 梅 〒198-0042

青梅市東青梅3-12-16 0428-24-8609 青梅市・福生市・あきる野市・羽村市・西多摩郡

三 鷹 〒181-8517三鷹市下連雀4-15-18 0422-47-8609 三鷹市・武蔵野市・西東京市・東久留米市・清瀬市

町 田 〒194-0022町田市森野2-28-14 042-732-8609 町田市

府 中 〒183-0045府中市美好町1-3-1 042-336-8609 府中市・稲城市・多摩市・調布市・狛江市

※ハローワーク品川は、7月19日(火)から右記へ移転します。  移転先:〒108-0014 港区芝5-35-3

若年者に特化したハローワーク施設名 所 在 地 連 絡 先 支 援 内 容

東京新卒応援ハローワーク

〒163-0721新宿区西新宿2-7-1 03-5339-8609 大学(院)・短大・高専・専修学校等を卒業される方及び概

ね卒業後3年以内の既卒者の就職支援八王子新卒応援ハローワーク

〒192-0083八王子市旭町10-2 042-631-9505 〃

東京わかものハローワーク

〒150-0002渋谷区渋谷2-15-1 03-3409-0328 若年求職者の就職に関する職業相談、紹介、求人情報提供

新宿わかものハローワーク

〒160-0023新宿区西新宿1-7-1 03-5909-8609 〃

日暮里わかものハローワーク

〒116-0013荒川区西日暮里2-29-3 03-5850-8609 〃

多摩地域の「求人の相談・受付」はコチラへ東京しごとセンター多摩HP

http://www.tokyoshigoto.jp/tama/電話 042-329-2410

採用・人材育成等に関する支援機関東京都の支援機関

国の支援機関

従業員の採用、雇用環境の整備・改善、人材育成、及び雇用に関する東京都の助成金については、「TOKYOはたらくネット」をご覧ください。

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業事援支保確材人急緊業企小中都京東

集例事好

東京都からのお知らせ

採用選考を行う企業の皆さまへ 東京都では、就職の機会均等を確保するために、応募者の基本的人権を尊重した公正な採用選考を実施するよう事業主の皆様方に御協力と御努力をお願いしています。事業主の皆様方におかれましては、公正な採用選考の考え方について御理解いただきまして、差別のない公正な採用選考の実施に向けて積極的な取組をお願いします。

求職者等の個人情報の収集についての規定

公正な採用選考に向けて

 職業安定法では、労働者の募集業務等の目的の達成に必要な範囲内で、募集に応じて労働者になろうとする者等の個人情報を収集、保管、使用しなければならない旨規定しています。 また、併せて、法に基づく指針が公表され、原則として収集してはならない個人情報等を規定しています。

1 採用選考の基本的な考え方 ◦応募者の基本的人権を尊重すること ◦応募者の適性・能力のみを基準として行うこと2 公正な採用選考を行う基本とは ▪応募者に広く門戸を開くこと  就職の機会均等のため、求人条件に合致する全ての人が応募できるようにすることが大切です ▪適性・能力のみを採用基準とすること  応募者が、職務を遂行するために必要な適性・能力をもっているかという採用基準での選考が必要です3 採用選考時に配慮すべき事項 【重要】左頁をご参照ください。4 採用基準 ◦あらかじめ採用基準を明確にしておく  • 適性・能力のみを採用基準とする ◦特定の人を排除しない5 選考方法 ◦求人条件に合致する全ての人が応募できるようにする ◦採用基準に適合した選考方法をとる ◦適性・能力のみを客観的に評価する選考方法をとる ◦応募者を客観的に評価する公平な選考方法をとる6 求人の提示・応募の受付 ◦職務を遂行するために必要な適性・能力以外の要素を応募条件としない ◦就職差別につながるおそれがあるため、次の点に留意する ▪応募者から提出を求めないもの ◦戸籍謄(抄)本、現住所の略図等  • 合理的、客観的に必要性の認められない健康診断書 ▪項目設定に留意が必要なもの ◦社用紙、エントリーシート7 学力試験・作文 ◦採用のための学力試験は、職務との関係を重視して実施してください ◦採用のための作文は、テーマへの理解や自分の考え方を整理して文章で他人に伝える能力など、求める職種  の職務遂行上必要な適性・能力(知識)を判断するために実施してください8 適性検査・面接 ◦採用のための適性検査は、応募者の適性のある一面を把握するものに過ぎないため、適性検査の結果を  絶対視したりうのみにしないようにしてください ◦採用のための面接は、公正採用選考の基本的な考え方を十分理解した上で、質問事項はあらかじめ決めて  おき、「職務遂行のために必要な適性・能力」を評価するために必要な事項としてください ▪面接の目的 ◦応募者の志望動機や要望、企業の採用条件、労働条件など、お互いの意思疎通を図る情報交換の場として  ください ◦会話の中から、理解力、判断力、表現力など、応募書類や学力試験などでは分からない適性・能力を判定  する場としてください9 採否の決定 ◦あらかじめ定められた基準に従って総合的に評価してください ◦採否の決定は速やかに本人に通知するとともに、特に不採用とした場合は、応募者の立場に十分配慮をして  通知してください

 労働者の募集を行う者は募集形態の如何(直接募集、文書募集、委託募集)を問わず、法及び指針を遵守して行わなければいけません。 採用選考時には、以下の事項について配慮するようお願いいたします。

 公共職業安定所等*は、それぞれ、その業務に関し、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(以下この条において「求職者等の個人情報」という。)を収集し、保管し、又は使用するにあたつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。(以下略)*公共職業安定所等は、「公共職業安定所」及び「職業紹介事業者」、「労働者の募集を行う者」及び「募集受託者」 並びに「労働者供給事業者」を指します。

原則として、次に掲げる個人情報を収集してはならない。①人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項②思想及び信条   ③労働組合への加入状況

◦違反行為をした場合には、職業安定法に基づく改善命令を出される場合があります。◦改善命令に違反した場合は、罰則(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)が科せられる場合もあります。

「採用選考時に配慮すべき事項」〜就職差別につながるおそれがある14事項〜 次の①〜⑪を応募用紙(エントリーシートを含む)に記載させる、面接時において尋ねる、作文を課すなどによって把握することや、⑫〜⑭を実施することは、就職差別につながるおそれがあります。◦本人に責任のない事項の把握①「本籍・出生地」に関すること②「家族」に関すること(職業・続柄・健康・地位・学歴・収入・資産など)③「住宅状況」に関すること(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設など)④「生活環境・家庭環境など」に関すること

◦本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握⑤「宗教」に関すること ⑥「支持政党」に関すること⑦「人生観・生活信条など」に関すること⑧「尊敬する人物」に関すること⑨「思想」に関すること ⑩「労働組合、学生運動など社会運動」に関すること⑪「購読新聞・雑誌・愛読書など」に関すること

◦採用選考の方法⑫「身元調査など」の実施⑬「全国高等学校統一応募用紙・JIS 規格の履歴書(様式例)に基づかない事項を含んだ応募書類(社用紙)」  の使用⑭「合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断」の実施

職業安定法(抄)第5条の4 ―求職者等の個人情報の取扱い―

労働大臣指針(抄)平成11年労働省告示第141号より

違反したときは    ※公正な採用選考に向けての詳細は次のホームページをご確認ください。 http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/equal/etc/kosei.html

〈問い合わせ先〉東京都産業労働局雇用就業部労働環境課 03(5320)4649

Page 22: 取組事例紹介 - hataraku.metro.tokyo.lg.jp¥½事例集(WEB).pdf新たな採用活動に対しての行動を取ることができた。 具体的な効果 ・アドバイスを受けてから一気に採用につながった。