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●PHARMACIST VIEW vol. 24
同院では不適切なポリファーマシーの抽出を、それまで行っていた入院時持参薬鑑別での①重複投薬②相互作用③副作用④不適切な長期投与の4点のチェック項目に、算定要件に該当する“4週間以上かつ6種類以上の内服薬”を追加することからスタートしました。しかし開始2ヵ月間の入院時データでは、65歳以上で算定要件に該当する患者さん37.6%のうち、副作用などの薬物有害事象を自覚しているのはわずか6.3%でした。ヒアリングだけでは抽出が不十分であると考えた同院では、一つ一つの薬剤を確認するため、日本老年医学会の『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(以下、「GL」)』の「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」にある薬剤の有無をスクリーニングに取り入れます。その後の調査では、65歳以上で算定要件に該当する入院患者さんのうち、同リストの薬剤を服用しているのは58%と、半数以上が介入すべき患者さんであったことから、このリストを活用する有効性を認識したそうです。 GLを活用した背景には、医師への減薬提案には説得のエビデンスが必要だという考えもありました。しかし、「医師は他院の処方の変更を躊躇する。GLにあるとはいえ、専門外の減薬提案を受け入れる医師は少なかった」と、川井由貴先生は当初の状況を振り返ります。たとえば、リストに該当する抗精神病薬については、精神科のない同院では減薬後のアセスメントができる専門医がいないため、主治医の処方変更はもちろん、薬剤師も積極的な提案はできませんでした。しかも
薬局長は考えています。 同院の加算の算定状況をみると、初年度は整形外科と内科のみだったものが、今では全診療科で算定されています。「算定件数は月に5件程度だが、積極的に減薬提案をしてほしいと声がけをしてくれる医師もいる。ポリファーマシーへの問題意識は確実に浸透している」と、佐藤薬局長は取り組みの成果として捉えています。 今後は、ふらつきや転倒などの有害事象と薬剤との関連性を分析して医師への説得材料にするとともに、病院の医療安全への活用も視野に入れています。また、川井先生、佐藤先生、宮先生は、「より的確な提案ができるよう専門性を高め、医師との信頼関係を構築していきたい」と異口同音に意欲を語ります。「高齢化が進展し、ポリファーマシーに関する診療報酬点数の見直しもよりスピードアップするだろう」と見込む佐藤薬局長。同院のポリファーマシー対策も薬剤師が一丸となって、今後も大きく前進するに違いありません。
評価対象薬として6種類をピックアップ焦点を絞り介入を徹底することで堅実なファーストステップを目指す
師”。この規模の病院だからこそ可能な体制だが、入院から退院までの経過を把握することができるので、介入後のモニタリングやアドヒアランスのサポートを行うには最適な環境だ」と、佐藤薬局長はこの体制を大きな利点と捉え、質の高い病棟業務に活かされていると話します。
評価薬剤選定の導入から1年、ポリファーマシーへの介入は徐々に実績をあげています。たとえば、整形外科に入院した80歳台の患者さんは、入院時、2つの病院から計11種類の内服薬を処方されていました(図3)。まず痒みを抑える薬剤が2剤処方されている点に着目しましたが、掻痒感が取れず中止は困難と判断。そこで主治医に外用薬の追加を提案して経過観察を行ったところ、掻痒感が治まり2剤を中止することができました。また、評価薬剤の一つである酸化マグネシウムについては、本人が必要に応じて服用していたので頓服へと変更しました。提案に携わった整形外科の病棟薬剤師の宮彩子先生は、「長く服用している薬を止めることに不安を感じる方も多いので、患者さんの様子に合わせて提案しているが、結局元に戻した例もあった。患者さんの意識も変えていかないと、減薬は進まない」と、難しさも実感しているそうです。 もちろん、剤数が6剤未満であったり服用期間が4週間に満たないなど、算定には結びつかない場合でも介入を遂行しています。持参薬一つ一つの安全性をGLに沿って必ず確認することで、より質の高い処方の適正化が行われるようになりました。「加算だけを成果としない」という考えは、全業務を通して徹底されています。 このようなポリファーマシーへの介入は、「本来は地域全体で行わなければ意味はなく、情報共有は不可欠だ」と佐藤薬局長は強調します。現在、保険薬局へはお薬手帳で、開業医には診療情報提供書で処方変更と経過を報告していますが、2017年10月から岩手中部地域で医療情報ネットワークシステム「いわて中部ネット」がスタートし、今後は地域での医療・介護に関わる情報共有が進むことが期待されています。医療機関と保険薬局、さらには行政や介護も加わることが予定されており、「治療や薬歴の共有によって、地域と病院、双方の薬剤師の協働でポリファーマシー対策が進む」と佐藤
介入状況の見直しを行ったところ、薬剤に関する自身の知識やアセスメントのタイミングなどによって、介入にムラがあることが判明します。「リストとの照合に時間をかけているにも関わらず、リスク回避になっていない。確実にできることから始めるべきではないか」─このような話し合いの結果、介入する薬剤の“絞り込み”を決定。2017年4月、同リストから6種類の評価薬剤を選定します(図1)。選定基準は、薬剤師が積極的に介入でき医師の納得を得やすいことと、介入後のモニタリングが行いやすいことでした。 絞り込み後に、65歳以上で算定要件に該当する入院患者さんのうち、リストの全薬剤のいずれかを服用している58%の入院患者さんについて再度精査したところ、選定した6種類はそのうちの約85.2%とほとんどをカバーしていました。佐藤薬局長は、「この6種類については、薬剤師が100%介入している。また、剤数に関わらずリストにある全薬剤は必ず病棟でモニタリングを行っていることを含めると、当院のファーストステップとしては適切な手法だと評価している」ということです。
同院では、若手の薬剤師も病棟業務など現場での経験を重ねながら活躍しています。佐藤薬局長は、「薬剤師は現在7名。すべての薬剤師が戦力であり各々の自主性を尊重する一方で、ボトムアップと質の統一は不可欠だ」と運営のポイントを説明します。 ポリファーマシーへの介入についても入院時業務の均一化を目指し、いつ何を行うのかを整理してプロトコールを作成しました(図2-①)。それまで各病棟で工夫をしながら行っていた鑑別のチェック項目についても改めて洗い直し、ルールとして共有したそうです。
病棟薬剤業務支援システム上の入院時業務をまとめるテンプレートも、話し合いによって作成されたオリジナルツールです(図2-②)。佐藤由美先生は、「急性期医療を担う当院では、在院日数が短く経過観察期間も充分に確保できない。入院早期に介入して的確にアセスメントするためには、手間が少なく、記載漏れがない共有ツールが必要だと意見が一致した」と作成の経緯を説明します。そこで、プロトコールのステップごとに最低限の項目に記載内容を絞った上でチェックボックス形式を採用し、調剤システムに連携している病棟端末で入力を行うことにしました。 また、同院では、患者さん一人に対して一人の担当薬剤師が決まっています。「いわば院内の“かかりつけ薬剤
佐藤 由美 先生
川井 由貴 先生
宮 彩子 先生
公益財団法人 総合花巻病院 薬局長 佐藤 裕司 先生
総合花巻病院の薬剤部門では、入院時の使用薬剤の把握を病棟でのモニタリングと同様に薬剤師の重要な責務と位置づけ、すべての入院患者さんの持参薬鑑別を徹底して行ってきました。産科や小児科を持たない同院では高齢者が大半を占め、入院患者さんの平均年齢は約73歳。複数の疾患を持つ患者さんが多く、入院時に平均で内服薬8剤、外用薬を入れると10剤が処方されています。佐藤裕司薬局長は、「多剤併用を目の当たりにしていた当院の現場では、すでにポリファーマシーへの問題意識があった。しかし、複数の医療機関の処方が関わることもあるため、医師一人ひとりの知識だけでは処方の適正化は難しい」と説明します。 また、高齢者では多剤投与がアドヒアランスの低下につながり、十分な治療効果が見込めなくなるだけではなく、残薬による医療費の増大をもたらすことも大きな問題です。佐藤薬局長はかねてより、「薬剤師が服薬状況をトータルに把握して処方の適正化を促すことが、ポリファーマシー対策には不可欠となる」と考えてきました。 このような状況の中、2016年度診療報酬改定における「薬剤総合
評価調整加算・管理料」の新設は、多くの病院の薬剤部門にとってポリファーマシー介入への契機となりました。同院でもすぐに取り組みを開始しましたが、佐藤薬局長は「算定できたか否かだけを成果と取り違えないように肝に命じている」と話します。たとえば、ポリファーマシーによって起こる
有害事象は、算定要件である“6剤以上”の服薬時に限りません。「介入の目的は起こり得るリスクの回避であり、処方の適正化。2剤でも3剤でも、禁忌薬剤であればそれは当然是正すべき多剤併用。従来から行ってきた業務が評価され、より幅広く介入するチャンスが得られたと受けとめている」と話します。 開始から2年、同院のポリファーマシーへの取り組みは、課題を解決しながら独自に進化しています。しかしそれと同時に、介入の難しさも見えてきました。「減薬はその薬物療法を止めることなので、医師にとっては特に提案の受け入れは難しい。だからこそ信頼関係の構築が重要だ」と話す佐藤薬局長。同院の薬剤師には、必要な知識の習得はもとより、高いコミュニケーション力を持った薬剤師を目指すよう日々指導を行っているということです。
頓服
剤数に関わらず処方の適正化を徹底今後は地域での取り組みも視野に
プロトコールで入院時業務を整理テンプレートの活用で個人差をなくし薬剤師の介入を均一化
公益財団法人 総合花巻病院所在地/〒025-0075 岩手県花巻市花城町4-28病床数/284床薬剤師/7名
ファーマシストビュー
近年、高齢者のポリ
ファーマシー(多剤併用)
が課題となっています。
6剤を超えると薬物有害
事象が増えるという研究報告もある
ことから、2016年度診療報酬改定では「薬剤
総合評価調整加算・管理料」が新設され、注目度は
さらに高まりました。そこで今回は総合花巻病院
(岩手県花巻市)をお訪ねし、ポリファーマシーへの
取り組みについてお話を伺いました。
実状に沿った介入方法を模索堅実なポリファーマシー対策でリスク回避と薬物療法の最適化に貢献
ポリファーマシー対策への取り組み
図1 ■ 日本老年医学会『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』の 「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」と総合花巻病院が選定した6種類
BA-XKS-395A-2018年2月作成審J1802191
赤文字の薬剤が、同院が選定した6種類。これ以外は代替や中止の提案が難しいと考え、最終的に6種類に落ち着いた。
図3 ■ 算定へとつながった減薬の症例酸化マグネシウムは250mg 2錠→500mg 1錠に変更。また、入院による環境変化から不眠傾向にあったため睡眠薬を追加処方したが、改善とともに頓服→中止となった。結果的に退院時には2剤の減薬となり加算の算定となった。
・抗精神病薬・睡眠薬(BZ系・非BZ系)・抗うつ薬・ステロイド・ジギタリス ・利尿薬・β遮断薬・α遮断薬・インスリン・制吐薬(ドパミン受容体遮断)・糖尿病薬・緩下薬(酸化マグネシウム製剤)・スルピリド・抗パーキンソン病薬・抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬)・第一世代H1受容体拮抗薬・H2受容体拮抗薬 ・過活動膀胱治療薬・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
推奨される使用法
可能な限り使用を控える。
可能な限り使用を控える。
血清Mg値をモニター。他の作用機序の緩下薬へ変更。
可能な限り使用を控える。
可能な限り使用を控える。
使用をなるべく短期間にとどめる。
〈病棟〉整形外科 〈主病名〉右足関節脱臼骨折 ◎入院中の経過入院前 入院中 退院時
算定へ
〈A病院より〉・オロパタジン塩酸塩錠5mg・当帰飲子エキス顆粒
〈B病院より〉・ナフトピジルOD錠25mg ・ミラベグロン錠50mg・アスピリン腸溶錠100mg・ランソプラゾールOD錠30mg・トリクロルメチアジド錠2mg・ニフェジピンL錠10mg・カンデサルタン錠4mg・アンブロキソール塩酸塩徐放OD錠45mg・酸化マグネシウム錠250mg
持参薬
皮膚掻痒感
便秘
不眠
オロパタジン 塩酸塩錠5mg当帰飲子エキス顆粒
尿素ローション10%
オロパタジン 塩酸塩錠5mg当帰飲子エキス顆粒
ゾルピデム酒石酸塩錠5mg
酸化マグネシウム錠500mg 1錠
酸化 マグネシウム錠250mg 2錠
継続
図2 ■ 入院時業務のプロトコールとテンプレート
プロトコール(図2-①)のⅠ~Ⅳの各項目について、テンプレートでは“□なし、□あり”など、簡単なチェックで記載できる。ポリファーマシーへの介入部分では、算定要件に関わる部分と、同院が定めた評価薬剤6種類の有無と薬剤名が記載され(図2-②)引き続いて各該当薬剤の詳細もチェック式で記入できるよう工夫されている。
病棟薬剤業務へ
持参薬の有無 病棟薬剤業務へなし
あり
Ⅰ. コンプライアンス の確認・副作用の確認 ・理解度の確認 (自己管理の可否)・残薬の確認
Ⅲ. ポリファーマシーへの介入・服用期間確認 ・剤数確認
Ⅳ. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 薬剤師が積極的に介入できる薬剤の確認・睡眠薬 ・第一世代H1受容体拮抗薬・制吐薬 ・H2受容体拮抗薬・緩下薬 ・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
Ⅱ. 詳細な処方内容の確認・お薬手帳の確認 ・診療情報提供書の確認 ・持参した薬の確認
Ⅱ-1. 採用薬の確認・医薬品集 ・院内医薬品 データベースの活用・持参薬鑑別結果入力
Ⅱ-2. 重複投与確認Ⅱ-3. 相互作用の確認・病棟薬剤業務支援 システムの活用
【Ⅲ. ポリファーマシーへの介入(期間・剤数)】服用期間:■4週間以上 □4週間未満 □不明服薬剤数:■6種類以上 □6種類未満
【Ⅳ. GLによる薬剤師が積極的に介入できる薬剤の確認】■眠剤(ゾルピデム酒石酸塩OD錠5mg) □NSAIDs( ) □制吐剤 □酸化マグネシウム □H1ブロッカー( ) □H2ブロッカー( )
初回面談による情報収集
中止
継続
継続
中止頓服
中止
追加
追加
● 図2-① プロトコール
● 図2-② テンプレート記入例(抜粋)
●PHARMACIST VIEW vol. 24
同院では不適切なポリファーマシーの抽出を、それまで行っていた入院時持参薬鑑別での①重複投薬②相互作用③副作用④不適切な長期投与の4点のチェック項目に、算定要件に該当する“4週間以上かつ6種類以上の内服薬”を追加することからスタートしました。しかし開始2ヵ月間の入院時データでは、65歳以上で算定要件に該当する患者さん37.6%のうち、副作用などの薬物有害事象を自覚しているのはわずか6.3%でした。ヒアリングだけでは抽出が不十分であると考えた同院では、一つ一つの薬剤を確認するため、日本老年医学会の『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(以下、「GL」)』の「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」にある薬剤の有無をスクリーニングに取り入れます。その後の調査では、65歳以上で算定要件に該当する入院患者さんのうち、同リストの薬剤を服用しているのは58%と、半数以上が介入すべき患者さんであったことから、このリストを活用する有効性を認識したそうです。 GLを活用した背景には、医師への減薬提案には説得のエビデンスが必要だという考えもありました。しかし、「医師は他院の処方の変更を躊躇する。GLにあるとはいえ、専門外の減薬提案を受け入れる医師は少なかった」と、川井由貴先生は当初の状況を振り返ります。たとえば、リストに該当する抗精神病薬については、精神科のない同院では減薬後のアセスメントができる専門医がいないため、主治医の処方変更はもちろん、薬剤師も積極的な提案はできませんでした。しかも
薬局長は考えています。 同院の加算の算定状況をみると、初年度は整形外科と内科のみだったものが、今では全診療科で算定されています。「算定件数は月に5件程度だが、積極的に減薬提案をしてほしいと声がけをしてくれる医師もいる。ポリファーマシーへの問題意識は確実に浸透している」と、佐藤薬局長は取り組みの成果として捉えています。 今後は、ふらつきや転倒などの有害事象と薬剤との関連性を分析して医師への説得材料にするとともに、病院の医療安全への活用も視野に入れています。また、川井先生、佐藤先生、宮先生は、「より的確な提案ができるよう専門性を高め、医師との信頼関係を構築していきたい」と異口同音に意欲を語ります。「高齢化が進展し、ポリファーマシーに関する診療報酬点数の見直しもよりスピードアップするだろう」と見込む佐藤薬局長。同院のポリファーマシー対策も薬剤師が一丸となって、今後も大きく前進するに違いありません。
評価対象薬として6種類をピックアップ焦点を絞り介入を徹底することで堅実なファーストステップを目指す
師”。この規模の病院だからこそ可能な体制だが、入院から退院までの経過を把握することができるので、介入後のモニタリングやアドヒアランスのサポートを行うには最適な環境だ」と、佐藤薬局長はこの体制を大きな利点と捉え、質の高い病棟業務に活かされていると話します。
評価薬剤選定の導入から1年、ポリファーマシーへの介入は徐々に実績をあげています。たとえば、整形外科に入院した80歳台の患者さんは、入院時、2つの病院から計11種類の内服薬を処方されていました(図3)。まず痒みを抑える薬剤が2剤処方されている点に着目しましたが、掻痒感が取れず中止は困難と判断。そこで主治医に外用薬の追加を提案して経過観察を行ったところ、掻痒感が治まり2剤を中止することができました。また、評価薬剤の一つである酸化マグネシウムについては、本人が必要に応じて服用していたので頓服へと変更しました。提案に携わった整形外科の病棟薬剤師の宮彩子先生は、「長く服用している薬を止めることに不安を感じる方も多いので、患者さんの様子に合わせて提案しているが、結局元に戻した例もあった。患者さんの意識も変えていかないと、減薬は進まない」と、難しさも実感しているそうです。 もちろん、剤数が6剤未満であったり服用期間が4週間に満たないなど、算定には結びつかない場合でも介入を遂行しています。持参薬一つ一つの安全性をGLに沿って必ず確認することで、より質の高い処方の適正化が行われるようになりました。「加算だけを成果としない」という考えは、全業務を通して徹底されています。 このようなポリファーマシーへの介入は、「本来は地域全体で行わなければ意味はなく、情報共有は不可欠だ」と佐藤薬局長は強調します。現在、保険薬局へはお薬手帳で、開業医には診療情報提供書で処方変更と経過を報告していますが、2017年10月から岩手中部地域で医療情報ネットワークシステム「いわて中部ネット」がスタートし、今後は地域での医療・介護に関わる情報共有が進むことが期待されています。医療機関と保険薬局、さらには行政や介護も加わることが予定されており、「治療や薬歴の共有によって、地域と病院、双方の薬剤師の協働でポリファーマシー対策が進む」と佐藤
介入状況の見直しを行ったところ、薬剤に関する自身の知識やアセスメントのタイミングなどによって、介入にムラがあることが判明します。「リストとの照合に時間をかけているにも関わらず、リスク回避になっていない。確実にできることから始めるべきではないか」─このような話し合いの結果、介入する薬剤の“絞り込み”を決定。2017年4月、同リストから6種類の評価薬剤を選定します(図1)。選定基準は、薬剤師が積極的に介入でき医師の納得を得やすいことと、介入後のモニタリングが行いやすいことでした。 絞り込み後に、65歳以上で算定要件に該当する入院患者さんのうち、リストの全薬剤のいずれかを服用している58%の入院患者さんについて再度精査したところ、選定した6種類はそのうちの約85.2%とほとんどをカバーしていました。佐藤薬局長は、「この6種類については、薬剤師が100%介入している。また、剤数に関わらずリストにある全薬剤は必ず病棟でモニタリングを行っていることを含めると、当院のファーストステップとしては適切な手法だと評価している」ということです。
同院では、若手の薬剤師も病棟業務など現場での経験を重ねながら活躍しています。佐藤薬局長は、「薬剤師は現在7名。すべての薬剤師が戦力であり各々の自主性を尊重する一方で、ボトムアップと質の統一は不可欠だ」と運営のポイントを説明します。 ポリファーマシーへの介入についても入院時業務の均一化を目指し、いつ何を行うのかを整理してプロトコールを作成しました(図2-①)。それまで各病棟で工夫をしながら行っていた鑑別のチェック項目についても改めて洗い直し、ルールとして共有したそうです。
病棟薬剤業務支援システム上の入院時業務をまとめるテンプレートも、話し合いによって作成されたオリジナルツールです(図2-②)。佐藤由美先生は、「急性期医療を担う当院では、在院日数が短く経過観察期間も充分に確保できない。入院早期に介入して的確にアセスメントするためには、手間が少なく、記載漏れがない共有ツールが必要だと意見が一致した」と作成の経緯を説明します。そこで、プロトコールのステップごとに最低限の項目に記載内容を絞った上でチェックボックス形式を採用し、調剤システムに連携している病棟端末で入力を行うことにしました。 また、同院では、患者さん一人に対して一人の担当薬剤師が決まっています。「いわば院内の“かかりつけ薬剤
佐藤 由美 先生
川井 由貴 先生
宮 彩子 先生
公益財団法人 総合花巻病院 薬局長 佐藤 裕司 先生
総合花巻病院の薬剤部門では、入院時の使用薬剤の把握を病棟でのモニタリングと同様に薬剤師の重要な責務と位置づけ、すべての入院患者さんの持参薬鑑別を徹底して行ってきました。産科や小児科を持たない同院では高齢者が大半を占め、入院患者さんの平均年齢は約73歳。複数の疾患を持つ患者さんが多く、入院時に平均で内服薬8剤、外用薬を入れると10剤が処方されています。佐藤裕司薬局長は、「多剤併用を目の当たりにしていた当院の現場では、すでにポリファーマシーへの問題意識があった。しかし、複数の医療機関の処方が関わることもあるため、医師一人ひとりの知識だけでは処方の適正化は難しい」と説明します。 また、高齢者では多剤投与がアドヒアランスの低下につながり、十分な治療効果が見込めなくなるだけではなく、残薬による医療費の増大をもたらすことも大きな問題です。佐藤薬局長はかねてより、「薬剤師が服薬状況をトータルに把握して処方の適正化を促すことが、ポリファーマシー対策には不可欠となる」と考えてきました。 このような状況の中、2016年度診療報酬改定における「薬剤総合
評価調整加算・管理料」の新設は、多くの病院の薬剤部門にとってポリファーマシー介入への契機となりました。同院でもすぐに取り組みを開始しましたが、佐藤薬局長は「算定できたか否かだけを成果と取り違えないように肝に命じている」と話します。たとえば、ポリファーマシーによって起こる
有害事象は、算定要件である“6剤以上”の服薬時に限りません。「介入の目的は起こり得るリスクの回避であり、処方の適正化。2剤でも3剤でも、禁忌薬剤であればそれは当然是正すべき多剤併用。従来から行ってきた業務が評価され、より幅広く介入するチャンスが得られたと受けとめている」と話します。 開始から2年、同院のポリファーマシーへの取り組みは、課題を解決しながら独自に進化しています。しかしそれと同時に、介入の難しさも見えてきました。「減薬はその薬物療法を止めることなので、医師にとっては特に提案の受け入れは難しい。だからこそ信頼関係の構築が重要だ」と話す佐藤薬局長。同院の薬剤師には、必要な知識の習得はもとより、高いコミュニケーション力を持った薬剤師を目指すよう日々指導を行っているということです。
頓服
剤数に関わらず処方の適正化を徹底今後は地域での取り組みも視野に
プロトコールで入院時業務を整理テンプレートの活用で個人差をなくし薬剤師の介入を均一化
公益財団法人 総合花巻病院所在地/〒025-0075 岩手県花巻市花城町4-28病床数/284床薬剤師/7名
ファーマシストビュー
近年、高齢者のポリ
ファーマシー(多剤併用)
が課題となっています。
6剤を超えると薬物有害
事象が増えるという研究報告もある
ことから、2016年度診療報酬改定では「薬剤
総合評価調整加算・管理料」が新設され、注目度は
さらに高まりました。そこで今回は総合花巻病院
(岩手県花巻市)をお訪ねし、ポリファーマシーへの
取り組みについてお話を伺いました。
実状に沿った介入方法を模索堅実なポリファーマシー対策でリスク回避と薬物療法の最適化に貢献
ポリファーマシー対策への取り組み
図1 ■ 日本老年医学会『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』の 「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」と総合花巻病院が選定した6種類
BA-XKS-395A-2018年2月作成審J1802191
赤文字の薬剤が、同院が選定した6種類。これ以外は代替や中止の提案が難しいと考え、最終的に6種類に落ち着いた。
図3 ■ 算定へとつながった減薬の症例酸化マグネシウムは250mg 2錠→500mg 1錠に変更。また、入院による環境変化から不眠傾向にあったため睡眠薬を追加処方したが、改善とともに頓服→中止となった。結果的に退院時には2剤の減薬となり加算の算定となった。
・抗精神病薬・睡眠薬(BZ系・非BZ系)・抗うつ薬・ステロイド・ジギタリス ・利尿薬・β遮断薬・α遮断薬・インスリン・制吐薬(ドパミン受容体遮断)・糖尿病薬・緩下薬(酸化マグネシウム製剤)・スルピリド・抗パーキンソン病薬・抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬)・第一世代H1受容体拮抗薬・H2受容体拮抗薬 ・過活動膀胱治療薬・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
推奨される使用法
可能な限り使用を控える。
可能な限り使用を控える。
血清Mg値をモニター。他の作用機序の緩下薬へ変更。
可能な限り使用を控える。
可能な限り使用を控える。
使用をなるべく短期間にとどめる。
〈病棟〉整形外科 〈主病名〉右足関節脱臼骨折 ◎入院中の経過入院前 入院中 退院時
算定へ
〈A病院より〉・オロパタジン塩酸塩錠5mg・当帰飲子エキス顆粒
〈B病院より〉・ナフトピジルOD錠25mg ・ミラベグロン錠50mg・アスピリン腸溶錠100mg・ランソプラゾールOD錠30mg・トリクロルメチアジド錠2mg・ニフェジピンL錠10mg・カンデサルタン錠4mg・アンブロキソール塩酸塩徐放OD錠45mg・酸化マグネシウム錠250mg
持参薬
皮膚掻痒感
便秘
不眠
オロパタジン 塩酸塩錠5mg当帰飲子エキス顆粒
尿素ローション10%
オロパタジン 塩酸塩錠5mg当帰飲子エキス顆粒
ゾルピデム酒石酸塩錠5mg
酸化マグネシウム錠500mg 1錠
酸化 マグネシウム錠250mg 2錠
継続
図2 ■ 入院時業務のプロトコールとテンプレート
プロトコール(図2-①)のⅠ~Ⅳの各項目について、テンプレートでは“□なし、□あり”など、簡単なチェックで記載できる。ポリファーマシーへの介入部分では、算定要件に関わる部分と、同院が定めた評価薬剤6種類の有無と薬剤名が記載され(図2-②)引き続いて各該当薬剤の詳細もチェック式で記入できるよう工夫されている。
病棟薬剤業務へ
持参薬の有無 病棟薬剤業務へなし
あり
Ⅰ. コンプライアンス の確認・副作用の確認 ・理解度の確認 (自己管理の可否)・残薬の確認
Ⅲ. ポリファーマシーへの介入・服用期間確認 ・剤数確認
Ⅳ. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 薬剤師が積極的に介入できる薬剤の確認・睡眠薬 ・第一世代H1受容体拮抗薬・制吐薬 ・H2受容体拮抗薬・緩下薬 ・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
Ⅱ. 詳細な処方内容の確認・お薬手帳の確認 ・診療情報提供書の確認 ・持参した薬の確認
Ⅱ-1. 採用薬の確認・医薬品集 ・院内医薬品 データベースの活用・持参薬鑑別結果入力
Ⅱ-2. 重複投与確認Ⅱ-3. 相互作用の確認・病棟薬剤業務支援 システムの活用
【Ⅲ. ポリファーマシーへの介入(期間・剤数)】服用期間:■4週間以上 □4週間未満 □不明服薬剤数:■6種類以上 □6種類未満
【Ⅳ. GLによる薬剤師が積極的に介入できる薬剤の確認】■眠剤(ゾルピデム酒石酸塩OD錠5mg) □NSAIDs( ) □制吐剤 □酸化マグネシウム □H1ブロッカー( ) □H2ブロッカー( )
初回面談による情報収集
中止
継続
継続
中止頓服
中止
追加
追加
● 図2-① プロトコール
● 図2-② テンプレート記入例(抜粋)
●PHARMACIST VIEW vol. 24
同院では不適切なポリファーマシーの抽出を、それまで行っていた入院時持参薬鑑別での①重複投薬②相互作用③副作用④不適切な長期投与の4点のチェック項目に、算定要件に該当する“4週間以上かつ6種類以上の内服薬”を追加することからスタートしました。しかし開始2ヵ月間の入院時データでは、65歳以上で算定要件に該当する患者さん37.6%のうち、副作用などの薬物有害事象を自覚しているのはわずか6.3%でした。ヒアリングだけでは抽出が不十分であると考えた同院では、一つ一つの薬剤を確認するため、日本老年医学会の『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(以下、「GL」)』の「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」にある薬剤の有無をスクリーニングに取り入れます。その後の調査では、65歳以上で算定要件に該当する入院患者さんのうち、同リストの薬剤を服用しているのは58%と、半数以上が介入すべき患者さんであったことから、このリストを活用する有効性を認識したそうです。 GLを活用した背景には、医師への減薬提案には説得のエビデンスが必要だという考えもありました。しかし、「医師は他院の処方の変更を躊躇する。GLにあるとはいえ、専門外の減薬提案を受け入れる医師は少なかった」と、川井由貴先生は当初の状況を振り返ります。たとえば、リストに該当する抗精神病薬については、精神科のない同院では減薬後のアセスメントができる専門医がいないため、主治医の処方変更はもちろん、薬剤師も積極的な提案はできませんでした。しかも
薬局長は考えています。 同院の加算の算定状況をみると、初年度は整形外科と内科のみだったものが、今では全診療科で算定されています。「算定件数は月に5件程度だが、積極的に減薬提案をしてほしいと声がけをしてくれる医師もいる。ポリファーマシーへの問題意識は確実に浸透している」と、佐藤薬局長は取り組みの成果として捉えています。 今後は、ふらつきや転倒などの有害事象と薬剤との関連性を分析して医師への説得材料にするとともに、病院の医療安全への活用も視野に入れています。また、川井先生、佐藤先生、宮先生は、「より的確な提案ができるよう専門性を高め、医師との信頼関係を構築していきたい」と異口同音に意欲を語ります。「高齢化が進展し、ポリファーマシーに関する診療報酬点数の見直しもよりスピードアップするだろう」と見込む佐藤薬局長。同院のポリファーマシー対策も薬剤師が一丸となって、今後も大きく前進するに違いありません。
評価対象薬として6種類をピックアップ焦点を絞り介入を徹底することで堅実なファーストステップを目指す
師”。この規模の病院だからこそ可能な体制だが、入院から退院までの経過を把握することができるので、介入後のモニタリングやアドヒアランスのサポートを行うには最適な環境だ」と、佐藤薬局長はこの体制を大きな利点と捉え、質の高い病棟業務に活かされていると話します。
評価薬剤選定の導入から1年、ポリファーマシーへの介入は徐々に実績をあげています。たとえば、整形外科に入院した80歳台の患者さんは、入院時、2つの病院から計11種類の内服薬を処方されていました(図3)。まず痒みを抑える薬剤が2剤処方されている点に着目しましたが、掻痒感が取れず中止は困難と判断。そこで主治医に外用薬の追加を提案して経過観察を行ったところ、掻痒感が治まり2剤を中止することができました。また、評価薬剤の一つである酸化マグネシウムについては、本人が必要に応じて服用していたので頓服へと変更しました。提案に携わった整形外科の病棟薬剤師の宮彩子先生は、「長く服用している薬を止めることに不安を感じる方も多いので、患者さんの様子に合わせて提案しているが、結局元に戻した例もあった。患者さんの意識も変えていかないと、減薬は進まない」と、難しさも実感しているそうです。 もちろん、剤数が6剤未満であったり服用期間が4週間に満たないなど、算定には結びつかない場合でも介入を遂行しています。持参薬一つ一つの安全性をGLに沿って必ず確認することで、より質の高い処方の適正化が行われるようになりました。「加算だけを成果としない」という考えは、全業務を通して徹底されています。 このようなポリファーマシーへの介入は、「本来は地域全体で行わなければ意味はなく、情報共有は不可欠だ」と佐藤薬局長は強調します。現在、保険薬局へはお薬手帳で、開業医には診療情報提供書で処方変更と経過を報告していますが、2017年10月から岩手中部地域で医療情報ネットワークシステム「いわて中部ネット」がスタートし、今後は地域での医療・介護に関わる情報共有が進むことが期待されています。医療機関と保険薬局、さらには行政や介護も加わることが予定されており、「治療や薬歴の共有によって、地域と病院、双方の薬剤師の協働でポリファーマシー対策が進む」と佐藤
介入状況の見直しを行ったところ、薬剤に関する自身の知識やアセスメントのタイミングなどによって、介入にムラがあることが判明します。「リストとの照合に時間をかけているにも関わらず、リスク回避になっていない。確実にできることから始めるべきではないか」─このような話し合いの結果、介入する薬剤の“絞り込み”を決定。2017年4月、同リストから6種類の評価薬剤を選定します(図1)。選定基準は、薬剤師が積極的に介入でき医師の納得を得やすいことと、介入後のモニタリングが行いやすいことでした。 絞り込み後に、65歳以上で算定要件に該当する入院患者さんのうち、リストの全薬剤のいずれかを服用している58%の入院患者さんについて再度精査したところ、選定した6種類はそのうちの約85.2%とほとんどをカバーしていました。佐藤薬局長は、「この6種類については、薬剤師が100%介入している。また、剤数に関わらずリストにある全薬剤は必ず病棟でモニタリングを行っていることを含めると、当院のファーストステップとしては適切な手法だと評価している」ということです。
同院では、若手の薬剤師も病棟業務など現場での経験を重ねながら活躍しています。佐藤薬局長は、「薬剤師は現在7名。すべての薬剤師が戦力であり各々の自主性を尊重する一方で、ボトムアップと質の統一は不可欠だ」と運営のポイントを説明します。 ポリファーマシーへの介入についても入院時業務の均一化を目指し、いつ何を行うのかを整理してプロトコールを作成しました(図2-①)。それまで各病棟で工夫をしながら行っていた鑑別のチェック項目についても改めて洗い直し、ルールとして共有したそうです。
病棟薬剤業務支援システム上の入院時業務をまとめるテンプレートも、話し合いによって作成されたオリジナルツールです(図2-②)。佐藤由美先生は、「急性期医療を担う当院では、在院日数が短く経過観察期間も充分に確保できない。入院早期に介入して的確にアセスメントするためには、手間が少なく、記載漏れがない共有ツールが必要だと意見が一致した」と作成の経緯を説明します。そこで、プロトコールのステップごとに最低限の項目に記載内容を絞った上でチェックボックス形式を採用し、調剤システムに連携している病棟端末で入力を行うことにしました。 また、同院では、患者さん一人に対して一人の担当薬剤師が決まっています。「いわば院内の“かかりつけ薬剤
佐藤 由美 先生
川井 由貴 先生
宮 彩子 先生
公益財団法人 総合花巻病院 薬局長 佐藤 裕司 先生
総合花巻病院の薬剤部門では、入院時の使用薬剤の把握を病棟でのモニタリングと同様に薬剤師の重要な責務と位置づけ、すべての入院患者さんの持参薬鑑別を徹底して行ってきました。産科や小児科を持たない同院では高齢者が大半を占め、入院患者さんの平均年齢は約73歳。複数の疾患を持つ患者さんが多く、入院時に平均で内服薬8剤、外用薬を入れると10剤が処方されています。佐藤裕司薬局長は、「多剤併用を目の当たりにしていた当院の現場では、すでにポリファーマシーへの問題意識があった。しかし、複数の医療機関の処方が関わることもあるため、医師一人ひとりの知識だけでは処方の適正化は難しい」と説明します。 また、高齢者では多剤投与がアドヒアランスの低下につながり、十分な治療効果が見込めなくなるだけではなく、残薬による医療費の増大をもたらすことも大きな問題です。佐藤薬局長はかねてより、「薬剤師が服薬状況をトータルに把握して処方の適正化を促すことが、ポリファーマシー対策には不可欠となる」と考えてきました。 このような状況の中、2016年度診療報酬改定における「薬剤総合
評価調整加算・管理料」の新設は、多くの病院の薬剤部門にとってポリファーマシー介入への契機となりました。同院でもすぐに取り組みを開始しましたが、佐藤薬局長は「算定できたか否かだけを成果と取り違えないように肝に命じている」と話します。たとえば、ポリファーマシーによって起こる
有害事象は、算定要件である“6剤以上”の服薬時に限りません。「介入の目的は起こり得るリスクの回避であり、処方の適正化。2剤でも3剤でも、禁忌薬剤であればそれは当然是正すべき多剤併用。従来から行ってきた業務が評価され、より幅広く介入するチャンスが得られたと受けとめている」と話します。 開始から2年、同院のポリファーマシーへの取り組みは、課題を解決しながら独自に進化しています。しかしそれと同時に、介入の難しさも見えてきました。「減薬はその薬物療法を止めることなので、医師にとっては特に提案の受け入れは難しい。だからこそ信頼関係の構築が重要だ」と話す佐藤薬局長。同院の薬剤師には、必要な知識の習得はもとより、高いコミュニケーション力を持った薬剤師を目指すよう日々指導を行っているということです。
頓服
剤数に関わらず処方の適正化を徹底今後は地域での取り組みも視野に
プロトコールで入院時業務を整理テンプレートの活用で個人差をなくし薬剤師の介入を均一化
公益財団法人 総合花巻病院所在地/〒025-0075 岩手県花巻市花城町4-28病床数/284床薬剤師/7名
ファーマシストビュー
近年、高齢者のポリ
ファーマシー(多剤併用)
が課題となっています。
6剤を超えると薬物有害
事象が増えるという研究報告もある
ことから、2016年度診療報酬改定では「薬剤
総合評価調整加算・管理料」が新設され、注目度は
さらに高まりました。そこで今回は総合花巻病院
(岩手県花巻市)をお訪ねし、ポリファーマシーへの
取り組みについてお話を伺いました。
実状に沿った介入方法を模索堅実なポリファーマシー対策でリスク回避と薬物療法の最適化に貢献
ポリファーマシー対策への取り組み
図1 ■ 日本老年医学会『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』の 「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」と総合花巻病院が選定した6種類
BA-XKS-395A-2018年2月作成審J1802191
赤文字の薬剤が、同院が選定した6種類。これ以外は代替や中止の提案が難しいと考え、最終的に6種類に落ち着いた。
図3 ■ 算定へとつながった減薬の症例酸化マグネシウムは250mg 2錠→500mg 1錠に変更。また、入院による環境変化から不眠傾向にあったため睡眠薬を追加処方したが、改善とともに頓服→中止となった。結果的に退院時には2剤の減薬となり加算の算定となった。
・抗精神病薬・睡眠薬(BZ系・非BZ系)・抗うつ薬・ステロイド・ジギタリス ・利尿薬・β遮断薬・α遮断薬・インスリン・制吐薬(ドパミン受容体遮断)・糖尿病薬・緩下薬(酸化マグネシウム製剤)・スルピリド・抗パーキンソン病薬・抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬)・第一世代H1受容体拮抗薬・H2受容体拮抗薬 ・過活動膀胱治療薬・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
推奨される使用法
可能な限り使用を控える。
可能な限り使用を控える。
血清Mg値をモニター。他の作用機序の緩下薬へ変更。
可能な限り使用を控える。
可能な限り使用を控える。
使用をなるべく短期間にとどめる。
〈病棟〉整形外科 〈主病名〉右足関節脱臼骨折 ◎入院中の経過入院前 入院中 退院時
算定へ
〈A病院より〉・オロパタジン塩酸塩錠5mg・当帰飲子エキス顆粒
〈B病院より〉・ナフトピジルOD錠25mg ・ミラベグロン錠50mg・アスピリン腸溶錠100mg・ランソプラゾールOD錠30mg・トリクロルメチアジド錠2mg・ニフェジピンL錠10mg・カンデサルタン錠4mg・アンブロキソール塩酸塩徐放OD錠45mg・酸化マグネシウム錠250mg
持参薬
皮膚掻痒感
便秘
不眠
オロパタジン 塩酸塩錠5mg当帰飲子エキス顆粒
尿素ローション10%
オロパタジン 塩酸塩錠5mg当帰飲子エキス顆粒
ゾルピデム酒石酸塩錠5mg
酸化マグネシウム錠500mg 1錠
酸化 マグネシウム錠250mg 2錠
継続
図2 ■ 入院時業務のプロトコールとテンプレート
プロトコール(図2-①)のⅠ~Ⅳの各項目について、テンプレートでは“□なし、□あり”など、簡単なチェックで記載できる。ポリファーマシーへの介入部分では、算定要件に関わる部分と、同院が定めた評価薬剤6種類の有無と薬剤名が記載され(図2-②)引き続いて各該当薬剤の詳細もチェック式で記入できるよう工夫されている。
病棟薬剤業務へ
持参薬の有無 病棟薬剤業務へなし
あり
Ⅰ. コンプライアンス の確認・副作用の確認 ・理解度の確認 (自己管理の可否)・残薬の確認
Ⅲ. ポリファーマシーへの介入・服用期間確認 ・剤数確認
Ⅳ. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 薬剤師が積極的に介入できる薬剤の確認・睡眠薬 ・第一世代H1受容体拮抗薬・制吐薬 ・H2受容体拮抗薬・緩下薬 ・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
Ⅱ. 詳細な処方内容の確認・お薬手帳の確認 ・診療情報提供書の確認 ・持参した薬の確認
Ⅱ-1. 採用薬の確認・医薬品集 ・院内医薬品 データベースの活用・持参薬鑑別結果入力
Ⅱ-2. 重複投与確認Ⅱ-3. 相互作用の確認・病棟薬剤業務支援 システムの活用
【Ⅲ. ポリファーマシーへの介入(期間・剤数)】服用期間:■4週間以上 □4週間未満 □不明服薬剤数:■6種類以上 □6種類未満
【Ⅳ. GLによる薬剤師が積極的に介入できる薬剤の確認】■眠剤(ゾルピデム酒石酸塩OD錠5mg) □NSAIDs( ) □制吐剤 □酸化マグネシウム □H1ブロッカー( ) □H2ブロッカー( )
初回面談による情報収集
中止
継続
継続
中止頓服
中止
追加
追加
● 図2-① プロトコール
● 図2-② テンプレート記入例(抜粋)
●PHARMACIST VIEW vol. 24
同院では不適切なポリファーマシーの抽出を、それまで行っていた入院時持参薬鑑別での①重複投薬②相互作用③副作用④不適切な長期投与の4点のチェック項目に、算定要件に該当する“4週間以上かつ6種類以上の内服薬”を追加することからスタートしました。しかし開始2ヵ月間の入院時データでは、65歳以上で算定要件に該当する患者さん37.6%のうち、副作用などの薬物有害事象を自覚しているのはわずか6.3%でした。ヒアリングだけでは抽出が不十分であると考えた同院では、一つ一つの薬剤を確認するため、日本老年医学会の『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(以下、「GL」)』の「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」にある薬剤の有無をスクリーニングに取り入れます。その後の調査では、65歳以上で算定要件に該当する入院患者さんのうち、同リストの薬剤を服用しているのは58%と、半数以上が介入すべき患者さんであったことから、このリストを活用する有効性を認識したそうです。 GLを活用した背景には、医師への減薬提案には説得のエビデンスが必要だという考えもありました。しかし、「医師は他院の処方の変更を躊躇する。GLにあるとはいえ、専門外の減薬提案を受け入れる医師は少なかった」と、川井由貴先生は当初の状況を振り返ります。たとえば、リストに該当する抗精神病薬については、精神科のない同院では減薬後のアセスメントができる専門医がいないため、主治医の処方変更はもちろん、薬剤師も積極的な提案はできませんでした。しかも
薬局長は考えています。 同院の加算の算定状況をみると、初年度は整形外科と内科のみだったものが、今では全診療科で算定されています。「算定件数は月に5件程度だが、積極的に減薬提案をしてほしいと声がけをしてくれる医師もいる。ポリファーマシーへの問題意識は確実に浸透している」と、佐藤薬局長は取り組みの成果として捉えています。 今後は、ふらつきや転倒などの有害事象と薬剤との関連性を分析して医師への説得材料にするとともに、病院の医療安全への活用も視野に入れています。また、川井先生、佐藤先生、宮先生は、「より的確な提案ができるよう専門性を高め、医師との信頼関係を構築していきたい」と異口同音に意欲を語ります。「高齢化が進展し、ポリファーマシーに関する診療報酬点数の見直しもよりスピードアップするだろう」と見込む佐藤薬局長。同院のポリファーマシー対策も薬剤師が一丸となって、今後も大きく前進するに違いありません。
評価対象薬として6種類をピックアップ焦点を絞り介入を徹底することで堅実なファーストステップを目指す
師”。この規模の病院だからこそ可能な体制だが、入院から退院までの経過を把握することができるので、介入後のモニタリングやアドヒアランスのサポートを行うには最適な環境だ」と、佐藤薬局長はこの体制を大きな利点と捉え、質の高い病棟業務に活かされていると話します。
評価薬剤選定の導入から1年、ポリファーマシーへの介入は徐々に実績をあげています。たとえば、整形外科に入院した80歳台の患者さんは、入院時、2つの病院から計11種類の内服薬を処方されていました(図3)。まず痒みを抑える薬剤が2剤処方されている点に着目しましたが、掻痒感が取れず中止は困難と判断。そこで主治医に外用薬の追加を提案して経過観察を行ったところ、掻痒感が治まり2剤を中止することができました。また、評価薬剤の一つである酸化マグネシウムについては、本人が必要に応じて服用していたので頓服へと変更しました。提案に携わった整形外科の病棟薬剤師の宮彩子先生は、「長く服用している薬を止めることに不安を感じる方も多いので、患者さんの様子に合わせて提案しているが、結局元に戻した例もあった。患者さんの意識も変えていかないと、減薬は進まない」と、難しさも実感しているそうです。 もちろん、剤数が6剤未満であったり服用期間が4週間に満たないなど、算定には結びつかない場合でも介入を遂行しています。持参薬一つ一つの安全性をGLに沿って必ず確認することで、より質の高い処方の適正化が行われるようになりました。「加算だけを成果としない」という考えは、全業務を通して徹底されています。 このようなポリファーマシーへの介入は、「本来は地域全体で行わなければ意味はなく、情報共有は不可欠だ」と佐藤薬局長は強調します。現在、保険薬局へはお薬手帳で、開業医には診療情報提供書で処方変更と経過を報告していますが、2017年10月から岩手中部地域で医療情報ネットワークシステム「いわて中部ネット」がスタートし、今後は地域での医療・介護に関わる情報共有が進むことが期待されています。医療機関と保険薬局、さらには行政や介護も加わることが予定されており、「治療や薬歴の共有によって、地域と病院、双方の薬剤師の協働でポリファーマシー対策が進む」と佐藤
介入状況の見直しを行ったところ、薬剤に関する自身の知識やアセスメントのタイミングなどによって、介入にムラがあることが判明します。「リストとの照合に時間をかけているにも関わらず、リスク回避になっていない。確実にできることから始めるべきではないか」─このような話し合いの結果、介入する薬剤の“絞り込み”を決定。2017年4月、同リストから6種類の評価薬剤を選定します(図1)。選定基準は、薬剤師が積極的に介入でき医師の納得を得やすいことと、介入後のモニタリングが行いやすいことでした。 絞り込み後に、65歳以上で算定要件に該当する入院患者さんのうち、リストの全薬剤のいずれかを服用している58%の入院患者さんについて再度精査したところ、選定した6種類はそのうちの約85.2%とほとんどをカバーしていました。佐藤薬局長は、「この6種類については、薬剤師が100%介入している。また、剤数に関わらずリストにある全薬剤は必ず病棟でモニタリングを行っていることを含めると、当院のファーストステップとしては適切な手法だと評価している」ということです。
同院では、若手の薬剤師も病棟業務など現場での経験を重ねながら活躍しています。佐藤薬局長は、「薬剤師は現在7名。すべての薬剤師が戦力であり各々の自主性を尊重する一方で、ボトムアップと質の統一は不可欠だ」と運営のポイントを説明します。 ポリファーマシーへの介入についても入院時業務の均一化を目指し、いつ何を行うのかを整理してプロトコールを作成しました(図2-①)。それまで各病棟で工夫をしながら行っていた鑑別のチェック項目についても改めて洗い直し、ルールとして共有したそうです。
病棟薬剤業務支援システム上の入院時業務をまとめるテンプレートも、話し合いによって作成されたオリジナルツールです(図2-②)。佐藤由美先生は、「急性期医療を担う当院では、在院日数が短く経過観察期間も充分に確保できない。入院早期に介入して的確にアセスメントするためには、手間が少なく、記載漏れがない共有ツールが必要だと意見が一致した」と作成の経緯を説明します。そこで、プロトコールのステップごとに最低限の項目に記載内容を絞った上でチェックボックス形式を採用し、調剤システムに連携している病棟端末で入力を行うことにしました。 また、同院では、患者さん一人に対して一人の担当薬剤師が決まっています。「いわば院内の“かかりつけ薬剤
佐藤 由美 先生
川井 由貴 先生
宮 彩子 先生
公益財団法人 総合花巻病院 薬局長 佐藤 裕司 先生
総合花巻病院の薬剤部門では、入院時の使用薬剤の把握を病棟でのモニタリングと同様に薬剤師の重要な責務と位置づけ、すべての入院患者さんの持参薬鑑別を徹底して行ってきました。産科や小児科を持たない同院では高齢者が大半を占め、入院患者さんの平均年齢は約73歳。複数の疾患を持つ患者さんが多く、入院時に平均で内服薬8剤、外用薬を入れると10剤が処方されています。佐藤裕司薬局長は、「多剤併用を目の当たりにしていた当院の現場では、すでにポリファーマシーへの問題意識があった。しかし、複数の医療機関の処方が関わることもあるため、医師一人ひとりの知識だけでは処方の適正化は難しい」と説明します。 また、高齢者では多剤投与がアドヒアランスの低下につながり、十分な治療効果が見込めなくなるだけではなく、残薬による医療費の増大をもたらすことも大きな問題です。佐藤薬局長はかねてより、「薬剤師が服薬状況をトータルに把握して処方の適正化を促すことが、ポリファーマシー対策には不可欠となる」と考えてきました。 このような状況の中、2016年度診療報酬改定における「薬剤総合
評価調整加算・管理料」の新設は、多くの病院の薬剤部門にとってポリファーマシー介入への契機となりました。同院でもすぐに取り組みを開始しましたが、佐藤薬局長は「算定できたか否かだけを成果と取り違えないように肝に命じている」と話します。たとえば、ポリファーマシーによって起こる
有害事象は、算定要件である“6剤以上”の服薬時に限りません。「介入の目的は起こり得るリスクの回避であり、処方の適正化。2剤でも3剤でも、禁忌薬剤であればそれは当然是正すべき多剤併用。従来から行ってきた業務が評価され、より幅広く介入するチャンスが得られたと受けとめている」と話します。 開始から2年、同院のポリファーマシーへの取り組みは、課題を解決しながら独自に進化しています。しかしそれと同時に、介入の難しさも見えてきました。「減薬はその薬物療法を止めることなので、医師にとっては特に提案の受け入れは難しい。だからこそ信頼関係の構築が重要だ」と話す佐藤薬局長。同院の薬剤師には、必要な知識の習得はもとより、高いコミュニケーション力を持った薬剤師を目指すよう日々指導を行っているということです。
頓服
剤数に関わらず処方の適正化を徹底今後は地域での取り組みも視野に
プロトコールで入院時業務を整理テンプレートの活用で個人差をなくし薬剤師の介入を均一化
公益財団法人 総合花巻病院所在地/〒025-0075 岩手県花巻市花城町4-28病床数/284床薬剤師/7名
ファーマシストビュー
近年、高齢者のポリ
ファーマシー(多剤併用)
が課題となっています。
6剤を超えると薬物有害
事象が増えるという研究報告もある
ことから、2016年度診療報酬改定では「薬剤
総合評価調整加算・管理料」が新設され、注目度は
さらに高まりました。そこで今回は総合花巻病院
(岩手県花巻市)をお訪ねし、ポリファーマシーへの
取り組みについてお話を伺いました。
実状に沿った介入方法を模索堅実なポリファーマシー対策でリスク回避と薬物療法の最適化に貢献
ポリファーマシー対策への取り組み
図1 ■ 日本老年医学会『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』の 「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」と総合花巻病院が選定した6種類
BA-XKS-395A-2018年2月作成審J1802191
赤文字の薬剤が、同院が選定した6種類。これ以外は代替や中止の提案が難しいと考え、最終的に6種類に落ち着いた。
図3 ■ 算定へとつながった減薬の症例酸化マグネシウムは250mg 2錠→500mg 1錠に変更。また、入院による環境変化から不眠傾向にあったため睡眠薬を追加処方したが、改善とともに頓服→中止となった。結果的に退院時には2剤の減薬となり加算の算定となった。
・抗精神病薬・睡眠薬(BZ系・非BZ系)・抗うつ薬・ステロイド・ジギタリス ・利尿薬・β遮断薬・α遮断薬・インスリン・制吐薬(ドパミン受容体遮断)・糖尿病薬・緩下薬(酸化マグネシウム製剤)・スルピリド・抗パーキンソン病薬・抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬)・第一世代H1受容体拮抗薬・H2受容体拮抗薬 ・過活動膀胱治療薬・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
推奨される使用法
可能な限り使用を控える。
可能な限り使用を控える。
血清Mg値をモニター。他の作用機序の緩下薬へ変更。
可能な限り使用を控える。
可能な限り使用を控える。
使用をなるべく短期間にとどめる。
〈病棟〉整形外科 〈主病名〉右足関節脱臼骨折 ◎入院中の経過入院前 入院中 退院時
算定へ
〈A病院より〉・オロパタジン塩酸塩錠5mg・当帰飲子エキス顆粒
〈B病院より〉・ナフトピジルOD錠25mg ・ミラベグロン錠50mg・アスピリン腸溶錠100mg・ランソプラゾールOD錠30mg・トリクロルメチアジド錠2mg・ニフェジピンL錠10mg・カンデサルタン錠4mg・アンブロキソール塩酸塩徐放OD錠45mg・酸化マグネシウム錠250mg
持参薬
皮膚掻痒感
便秘
不眠
オロパタジン 塩酸塩錠5mg当帰飲子エキス顆粒
尿素ローション10%
オロパタジン 塩酸塩錠5mg当帰飲子エキス顆粒
ゾルピデム酒石酸塩錠5mg
酸化マグネシウム錠500mg 1錠
酸化 マグネシウム錠250mg 2錠
継続
図2 ■ 入院時業務のプロトコールとテンプレート
プロトコール(図2-①)のⅠ~Ⅳの各項目について、テンプレートでは“□なし、□あり”など、簡単なチェックで記載できる。ポリファーマシーへの介入部分では、算定要件に関わる部分と、同院が定めた評価薬剤6種類の有無と薬剤名が記載され(図2-②)引き続いて各該当薬剤の詳細もチェック式で記入できるよう工夫されている。
病棟薬剤業務へ
持参薬の有無 病棟薬剤業務へなし
あり
Ⅰ. コンプライアンス の確認・副作用の確認 ・理解度の確認 (自己管理の可否)・残薬の確認
Ⅲ. ポリファーマシーへの介入・服用期間確認 ・剤数確認
Ⅳ. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 薬剤師が積極的に介入できる薬剤の確認・睡眠薬 ・第一世代H1受容体拮抗薬・制吐薬 ・H2受容体拮抗薬・緩下薬 ・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
Ⅱ. 詳細な処方内容の確認・お薬手帳の確認 ・診療情報提供書の確認 ・持参した薬の確認
Ⅱ-1. 採用薬の確認・医薬品集 ・院内医薬品 データベースの活用・持参薬鑑別結果入力
Ⅱ-2. 重複投与確認Ⅱ-3. 相互作用の確認・病棟薬剤業務支援 システムの活用
【Ⅲ. ポリファーマシーへの介入(期間・剤数)】服用期間:■4週間以上 □4週間未満 □不明服薬剤数:■6種類以上 □6種類未満
【Ⅳ. GLによる薬剤師が積極的に介入できる薬剤の確認】■眠剤(ゾルピデム酒石酸塩OD錠5mg) □NSAIDs( ) □制吐剤 □酸化マグネシウム □H1ブロッカー( ) □H2ブロッカー( )
初回面談による情報収集
中止
継続
継続
中止頓服
中止
追加
追加
● 図2-① プロトコール
● 図2-② テンプレート記入例(抜粋)