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2010年3月28日 日本地理学会 日本地理学会 2010年春季大会 社会における公的統計 意義役割 社会における公的統計意義役割 国勢調査地理情報関係中心として 国勢調査地理情報関係中心として 総務省統計局 川崎 この報告中 意見にわたる部分筆者個人的 この報告中意見にわたる部分筆者個人的 見解を述べたものであり、必ずしも総務省統計局の 公式見解ではありません。

社会における公的統計の意義と役割 - Stat...4-3 地域統計を用いた教育・啓発 5 まとめ 1 はじめに 問題意識 ・地理と統計にはどのような関連性があるか?・公的統計の作成・活用にはどのような課題があるか?・地理と統計とは今後どのような連携が必要か?

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2010年3月28日日 本 地 理 学 会日 本 地 理 学 会2010年春季大会

社会における公的統計 意義と役割社会における公的統計の意義と役割

- 国勢調査と地理情報の関係を中心として -国勢調査と地理情報の関係を中心として

総務省統計局総務省統計局

川崎 茂

※ この報告中 意見にわたる部分は 筆者の個人的※ この報告中、意見にわたる部分は、筆者の個人的見解を述べたものであり、必ずしも総務省統計局の公式見解ではありません。

目 次目 次

1 はじめに・・・問題意識

2 「地理」と「統計」の関連性2-1 情報としての関連性2 2 地理情報としてみた公的統計2-2 地理情報としてみた公的統計2-3 国勢調査と地理情報

3 公的統計の意義・役割と課題3 公的統計の意義 役割と課題3-1 統計法に基づく公的統計の制度3-2 公的統計をめぐる課題3-3 平成22年国勢調査について3 3 平成22年国勢調査について

4 公的統計と地理学の連携に向けて4-1 公的統計の社会的役割の再認識4-2 事実に基づく政策立案への貢献4-3 地域統計を用いた教育・啓発

5 まとめ5 まとめ

1 はじめに1 はじめに

問題意識問題意識

・地理と統計にはどのような関連性があるか?地理と統計にはどのような関連性があるか?

・公的統計の作成・活用にはどのような課題があるか?公的統計の作成 活用にはどのような課題があるか?

・地理と統計とは今後どのような連携が必要か?地理と統計とは今後どのような連携が必要か?

※本報告では、「統計」を公的統計(国、地方公共団体等が作成する統計)

の意味で用います。

大学入試センター試験問題平成21年 地理B

問5 都市は その立地や機能により異なる特徴を有する 次の1は問5 都市は、その立地や機能により異なる特徴を有する。次の1は、日本のいくつかの都市について銀行本・支店数、第2次産業就業者の割合、昼夜間人口指数を示したものであり、カ~クは仙台市、千葉市、浜松市のいずれかである 表1中のカ クと都市名との正しい組合せ浜松市のいずれかである。表1中のカ~クと都市名との正しい組合せを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

表1 カ キ ク

回答肢

銀行本支店数(店)

第二次産業就業者の割合(%)

昼夜間人口指数

カ 208 15.3 107.7

① 仙台市 千葉市 浜松市

② 仙台市 浜松市 千葉市

キ 104 19.2 97.2ク 76 37.0 100.7

③ 千葉市 仙台市 浜松市

④ 千葉市 浜松市 仙台市

⑤ 浜松市 仙台市 千葉市⑤ 浜松市 仙台市 千葉市

⑥ 浜松市 千葉市 仙台市統計年次は、銀行本支店数が2008年、第二次産業就業者の割合と昼夜間人口指数が2005年。国勢調査などにより作成。

2 1 情報 学問 行政としての関連性

2 「地理」と「統計」の関連性

地理(Geography) 統計(Statistics)

起源 土地(G )を記述(G hi ) 国(St t )の情勢を記述

2-1 情報、学問、行政としての関連性

起源 土地(Geo)を記述(Graphia)→【地理学】地球の表面と住民ならびにその総合関係を研究する学問(広辞苑より 右も同じ )

国(State)の情勢を記述→【統計学】数量的比較を基礎として、多くの事実を統計的に観察し処理する方法を研究する学問

学会行政

学問(広辞苑より。右も同じ。)日本地理学会国土地理院測量法

処理する方法を研究する学問日本統計学会総務省総務省統計局、同 政策統括官(統計基準担当)測量法

地理空間情報活用推進基本法→地図・測量の基準の設定、基盤地図情報の整備・提供

同 政策統括官(統計基準担当)統計法→統計基準の設定国の基本統計の作成・提供基盤地図情報の整備 提供 国の基本統計の作成 提供

地理情報システムにより、地理情報と統計情報を融合して活用例「地図でみる統計(統計GIS)」(政府統計共同利用システム)

// /SG / / C ?http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/toukeiChiri.do?method=init

2 2 地理情報としてみた公的統計

2 「地理」と「統計」の関連性

2-2 地理情報としてみた公的統計

★ 情報源の種類別の特徴★ 情報源の種類別の特徴・全数調査(例:国勢調査、工業統計、商業統計)

国、都道府県別から市区町村、町丁字別まで、あらゆる地域区分の統計が作成可能区分の統計が作成可能。

小地域統計に適するが、詳細な事項は調査しにくい。

標本調査(例 労働力調査 家計調査)・標本調査(例:労働力調査、家計調査)多くの場合、市区町村以下の結果表章は精度上困難。国間や

地方間のマクロ比較は可能。応 た詳細な事 も 査 能テーマに応じた詳細な事項も調査可能。

・業務統計(例:住民基本台帳人口、都道府県別決算状況報告)詳細な地域区分まで表章可能だが、行政事務に支障ない範囲

で作成・公表。統計の概念、定義、分類等は行政制度に依存。統計の概念、定義、分類等は行政制度に依存。

2 2 地理情報としてみた公的統計

2 「地理」と「統計」の関連性

2-2 地理情報としてみた公的統計

★ 地理情報に関する標準の例★ 地理情報に関する標準の例・地方公共団体コード

情報処理の効率化・円滑化のために総務省が設定した統一の地域コード 一般の事務処理のほか統計など様々な分野で利用地域コード。 般の事務処理のほか統計など様々な分野で利用される。

・人口集中地区毎回の国勢調査の結果に基づき画定された都市的地域 人口毎回の国勢調査の結果に基づき画定された都市的地域。人口

密度4,000人/km2 以上の連接した調査区で構成され、合計人口5,000人以上の地域。昭和35年国勢調査以来設定されている。標準 域 ド・標準地域メッシュコード緯度経度で区画された地域単位。3次メッシュは、ほぼ1㎞

四方の区画。昭和40年国勢調査で初めて集計。昭和48年に統計基準に設定。昭和62年には日本工業規格としても制定。

2 3 国勢調査と地理情報

2 「地理」と「統計」の関連性

2-3 国勢調査と地理情報

国勢調査の設計・実施に地理情報を活用調査区の設定・・・調査員の担当区域日本の国土を漏れ・重複なく調査区に区画--->調査員に調査区の範囲を明確に伝達

外国では、Cartographic Unitが置かれている場合もある。

国勢調査の結果は地理情報として提供国勢調査の結果は地理情報として提供地域メッシュ統計、町丁字等別集計結果、人口地図、DID、町丁字等の位置情報 など

国勢調査では地理情報システムを全面的に活用アメリカのセンサス局は1960年代から独自の地理情報システム

の標準を考案。1990年センサスからはTiger Systemを導入。日本でも、総務庁統計局は平成7年(1990年)国勢調査からセ

ンサス・マッピング・システムを導入。ンサス マッピング システムを導入。

国勢調査調査区地図(原図はA2版)

©2009 ZENRIN CO., LTD.(Z10LC第68号)総務省統計局統計調査部地理情報室

©2009 ZENRIN CO., LTD.(Z10LC第68号)総務省統計局統計調査部地理情報室

©2009 ZENRIN CO., LTD.(Z10LC第68号)総務省統計局統計調査部地理情報室

3 1 統計法に基づく公的統計の制度

3 公的統計の意義・役割と課題

3-1 統計法に基づく公的統計の制度「統計法」の制定・改正の経緯1902年 明治35年 国勢調査ニ関スル法律の制定1902年 明治35年 国勢調査ニ関スル法律の制定1920年 大正9年 第1回国勢調査の実施1947年 昭和22年 (旧)統計法の制定2007年 平成19年 統計法の全面改正((新)統計法)2007年 平成19年 統計法の全面改正((新)統計法)2009年 平成21年 (新)統計法の全面施行

--->公共財としての「公的統計」の理念の確立

「統計法」の目的(第1条)公的統計 = 国民の合理的な意思決定の基盤となる重要な情報

-->公的統計の体系的・効率的な整備、有用性を確保し>公的統計の体系的 効率的な整備、有用性を確保しーー>国民経済の健全な発展、国民生活の向上に寄与する

「公的統計」の基本理念(第3条)・行政機関の協力・分担の下、体系的に整備・合理的な方法により作成し、中立性・信頼性を確保・国民が容易に入手し、効率的に利用できるよう提供・個人・団体の秘密は保護されなければならない

3 1 統計法に基づく公的統計の制度

3 公的統計の意義・役割と課題

3-1 統計法に基づく公的統計の制度

(新)統計法の主な規定<旧法から継承><旧法から継承>・国勢調査の統計(国勢統計)は基幹統計と位置付け

(旧法でも、総務大臣が指定し、その旨を公示すると規定。)基幹統計調査への総務大臣承認手続き・基幹統計調査への総務大臣承認手続き(基幹統計調査は、おおむね従前の指定統計調査に相当。)

・基幹統計調査の対象者には「報告義務」が課されること統計調査 従事者 は守秘義務が課される と・統計調査の従事者には守秘義務が課されること

<新たな規定>・公的統計の定義(調査統計のほか、業務統計、加工統計も対象)・国民経済計算は基幹統計と位置付け(従前は統計法の対象外)・統計委員会の設置(従前の統計審議会を発展的に解消)・公的統計の整備に関する基本計画の策定公的統計の整備に関する基本計画の策定・委託による統計の作成(オーダーメード集計)、匿名データの

作成・提供(学術研究、高等教育等の目的)

3 2 公的統計をめぐる課題

3 公的統計の意義・役割と課題

3-2 公的統計をめぐる課題

<統計を取り巻く環境>統計調査の困難性の増大・個人情報保護意識、防犯意識などの高まり・不在がちな世帯の増加(単身、共働きなど)不在がちな世帯の増加(単身、共働きなど)

統計に関する予算・人員の削減・厳しい財政事情、国・地方の予算・定員の削減

<課題><課題>このような環境下で、いかにして有用で信頼できる統計を作成・提供しつづけるか?作成 提供しつづけるか?

<対応の方向>・国民意識やライフスタイルの変化への対応・業務の効率化、優先度に応じた統計整備・統計情報のより積極的な発信による統計への理解増進

3 3 平成22年国勢調査について

3 公的統計の意義・役割と課題

3-3 平成22年国勢調査について

国勢調査の基本的な意義・役割公正な政治 行政運営の基礎をなす情報基盤・公正な政治・行政運営の基礎をなす情報基盤衆議院選挙の選挙区画定、地方交付税の算定基準など

・国民や企業の活動を支える情報基盤国民や企業の活動を支える情報基盤経営計画(店舗立地、市場規模推計)、学術研究など

・他の統計の作成・推計の基礎となる情報将来人口推計 標本調査設計 推計のベンチ クなど将来人口推計、標本調査設計、推計のベンチマークなど

平成22年国勢調査の主な特徴

本格的な人口減少に対応した統計の整備・本格的な人口減少に対応した統計の整備

・調査票の封入提出、郵送提出等の導入

調査事項の見直し より使いやすい統計表の提供・調査事項の見直し、より使いやすい統計表の提供

・国連2010年ラウンド世界人口センサス計画の一環

・企業 学界など各方面への支援・協力の要請・企業、学界など各方面への支援・協力の要請

4 1 公的統計の社会的役割に対する再認識

4 公的統計と地理学の連携に向けて

4-1 公的統計の社会的役割に対する再認識

公的統計制度は、情報を社会で有効活用する仕組み公的統計制度は、情報を社会で有効活用する仕組み---> 公的統計は国民の共有財産

統計情報の社会的役割統計情報の社会的役割① 統計機関は、統計調査等を通じて国民の情報を収集② 収集した情報は、統計に取りまとめられ国民に還元② 収集した情報は、統計に取りまとめられ国民に還元③ 統計の専門的ユーザーには、積極的に情報提供④ 専門的ユーザーの成果は、行政、商品、サ-ビス、

学術的知見 ニ スなどを通じて国民生活に還元学術的知見、ニュースなどを通じて国民生活に還元

◎ 統計を社会に積極的に還元することにより、◎ 統計を社会に積極的に還元することにより、統計の必要性について国民の理解を得る必要。

「国勢調査は みんなで描く 日本の自画像」「国勢調査は みんなで描く 日本の自画像」(平成22年国勢調査の標語)

4 1 公的統計の社会的役割に対する再認識

4 公的統計と地理学の連携に向けて

4-1 公的統計の社会的役割に対する再認識

統計

国 民

個人 世帯 企業 など

調査へ

統計の

………… 知識知識 情報情報 行政施策行政施策サービスサービス 商品商品 … …… …

の回答

の提供 国・地方(政治・行政)学界 企業

統 計 利 用 者

メディア 海外…… ……答

統 計 デ ー タ

統計作成機関

総務省統計局、A省、B省、・・・

地方公共団体、日本銀行、・・・地方公共団体、日本銀行、

4 2 事実に基づく政策立案への貢献

4 公的統計と地理学の連携に向けて

4-2 事実に基づく政策立案への貢献

公的統計は、国民の合理的な意思決定の基盤となる公的統計は、国民の合理的な意思決定の基盤となる重要な情報 (統計法 第1条)

-->経済の健全な発展、国民生活の向上には、国や地域の政治 行政の立案や評価が客観的なデ タ地域の政治・行政の立案や評価が客観的なデータに基づいて行われることが必要。

(Evidence Based Policy Making)(Evidence Based Policy Making)統計を社会に役立てるには、統計機関だけでは限界。

-->統計利用者からの情報発信は国民の理解に重要新たな知見を提供し 国民を啓発する必要新たな知見を提供し、国民を啓発する必要

◎ 統計を利用した研究成果を社会に積極的に還元し、◎ 統計を利用した研究成果を社会に積極的に還元し、統計の必要性について国民の理解を得ることが必要。

4 3 地域統計を用いた教育・啓発

4 公的統計と地理学の連携に向けて

4-3 地域統計を用いた教育・啓発

Evidence Based Policy Makingは、健全な民主社会y gは、健全な民主社会において重要な考え方

-->若い世代への教育により、その意義を周知することが必要ことが必要。若い人が興味を持つ事実や分析を積極的に発信。社会人の常識として、大人への啓発も重要。社会人 常識 し 、大人 啓発も重要。

◎ 統計局では統計学習・教育サイトの改良などを通じて教育 啓発に努めているところ教育・啓発に努めているところ。統計教育は、ややもすると数学教育の一環と位置付け

られがちだが、社会科教育、地理教育に位置付けることも必要。具体的な地域の話題を用いて、関心をより高めることも可能。

統計学習 教育統計学習・教育サイト: http://www.stat.go.jp/edu/index.htm

総務省統計局 統計学習・教育サイト トップページ

4月下旬にオープン予定。詳しくは統計局HPをご覧ください。

5 まとめ5 まとめ

・今日、社会課題が複雑・多様化する中では、実情の正確な把握・分析、問題解決のためには分野横断的なアプローチが必要

> 地理学と統計学・公的統計の連携---> 地理学と統計学・公的統計の連携

・分析・問題解決能力の向上には、情報基盤の整備とともに、情報を理解し分析する能力の向上が必要---> 統計と地理の情報基盤の整備

・理解・分析能力の向上には、統計情報や各種の分析結果を広く発信して、国民各層に対し啓発することがが必要---> 調査や分析の結果の積極的な社会還元