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― 55 ― 社会福祉援助技術現場実習は,社会福祉士国家試験の受験資格取得に必要な指定科目のひとつであ り,社会福祉の現場を知るためにも貴重な機会である。所定の科目を履修した学生は,各種社会福祉 施設・機関における180時間以上の社会福祉援助技術現場実習を通して,当該施設・機関の概要の理解 やサービス利用者の支援に必要な社会福祉の理念(価値と倫理),専門知識と技術の習得を行い,社会 福祉専門職(ソーシャルワーカー)としての資質の習得などのため体系的に学習する。 本学では,社会福祉援助技術現場実習を3年次(社会福祉援助技術現場実習Ⅰ)と,4年次(社会福 祉援助技術現場実習Ⅱ)の2段階に分けて,それぞれ90時間以上の実習を実施している。平成18年度 の福祉総合学部(福祉文化学科・福祉経営学科)の3年次,4年次,科目等履修生の実習実施状況は, 以下のとおりである。 社会福祉援助技術現場実習レポート ●実習生数 科目等履修生 福祉経営学科 福祉文化学科 現場実習Ⅱ 現場実習Ⅰ 現場実習Ⅱ 現場実習Ⅰ 1名 72名 75名 138名 127名 147名 265名 413名 ●行政機関・事務所 科目等履修生 現場実習Ⅱ 現場実習Ⅰ 0 8 0 児童相談所 1 10 0 社会福祉協議会 0 2 0 福祉事務所 1 20 0 合  計

社会福祉援助技術現場実習レポートwebtv.jiu.ac.jp/academy/fukushi2007_3.pdf · 2008-04-23 · ― 55 ― 社会福祉援助技術現場実習は,社会福祉士国家試験の受験資格取得に必要な指定科目のひとつであ

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Page 1: 社会福祉援助技術現場実習レポートwebtv.jiu.ac.jp/academy/fukushi2007_3.pdf · 2008-04-23 · ― 55 ― 社会福祉援助技術現場実習は,社会福祉士国家試験の受験資格取得に必要な指定科目のひとつであ

― 55 ―

 社会福祉援助技術現場実習は,社会福祉士国家試験の受験資格取得に必要な指定科目のひとつであ

り,社会福祉の現場を知るためにも貴重な機会である。所定の科目を履修した学生は,各種社会福祉

施設・機関における180時間以上の社会福祉援助技術現場実習を通して,当該施設・機関の概要の理解

やサービス利用者の支援に必要な社会福祉の理念(価値と倫理),専門知識と技術の習得を行い,社会

福祉専門職(ソーシャルワーカー)としての資質の習得などのため体系的に学習する。

 本学では,社会福祉援助技術現場実習を3年次(社会福祉援助技術現場実習Ⅰ)と,4年次(社会福

祉援助技術現場実習Ⅱ)の2段階に分けて,それぞれ90時間以上の実習を実施している。平成18年度

の福祉総合学部(福祉文化学科・福祉経営学科)の3年次,4年次,科目等履修生の実習実施状況は,

以下のとおりである。

社会福祉援助技術現場実習レポート

●実習生数

科目等履修生福祉経営学科福祉文化学科

現場実習Ⅱ現場実習Ⅰ現場実習Ⅱ現場実習Ⅰ

1名72名75名138名127名

147名265名

413名

●行政機関・事務所

科目等履修生現場実習Ⅱ現場実習Ⅰ

080児童相談所

1100社会福祉協議会

020福祉事務所

1200合  計

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●児童福祉施設

現場実習Ⅱ現場実習Ⅰ

72児童養護施設

24重症心身障害児施設

61児童デイサービス

73知的障害児施設

30児童自立支援施設

2510合  計

●生活保護施設

現場実習Ⅱ現場実習Ⅰ

82救護施設

●婦人保護施設

現場実習Ⅱ現場実習Ⅰ

20婦人保護施設

●身体障害者福祉施設

現場実習Ⅱ現場実習Ⅰ

1320身体障害者療護施設

717身体障害者授産施設

10身体障害者更正施設

2137合  計

●知的障害者福祉施設

現場実習Ⅱ現場実習Ⅰ

1952知的障害者更正施設

94知的障害者授産施設

2856合  計

●老人福祉施設

現場実習Ⅱ現場実習Ⅰ

6884特別養護老人ホーム

148養護老人ホーム

31老人保健施設

164デイサービスセンター

20在宅介護支援センター

10397合  計

●病院

現場実習Ⅱ現場実習Ⅰ

30病院

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【福祉文化学科】

FS2004-093 平島 浩司

社会福祉法人 柚子の会 リブ丸山

実習期間:10月22日~11月4日

1.実習で取り組んだ実践の概要

 一日の業務内容は,午前中に朝の食事介助につき,利用者の方のサポートに入りました。次に入浴

介助を行い,要介護4~5の利用者の方々を特別浴室で入浴していただき,そのサポートに入りまし

た。特浴での介助が終わると,昼食の準備として利用者の方々の飲み薬を準備したり,居室での経管

栄養の方々の食事介助を見学しました。次に午後の入浴準備としてバイタルサイン(血圧,脈拍,体

温)業務を行いました。

 午後には,要支援1~2又は要介護1~3の利用者の方々に一般浴室で入浴していただき,そのサ

ポートに入りました。利用者の方の入浴が済んだ後,浴槽の掃除をしました。入浴介助のサポートに

入らない時は,おむつ交換を行ったり,シーツ交換や水分補給,レクリエーション等を行いました。

2.実習の目標と達成状況

 12日間の実習の中で,課題を毎日立て,その日その日の課題に取り組みました。達成できた点もあ

れば,反省すべき点もあったように思います。 実習初期の頃は,何をどのようにしたら利用者の方の

気持ちを把握でき,生活のニーズを掴めるのかまったく理解出来ていなかったように思います。しか

し,実習の日々を重ねていくうちに,少しずつですが,実習生としての役割を理解し始め,利用者の

方の個々の生活ニーズを掴み,援助技術の質の向上にも繋がっていったのではないかと思います。

3.実習で学んだこと

 実習の重ねていくうちに,様々な経験をしました。その中で,特に印象に残った経験として食事介

助,入浴介助,排泄介助について説明したいと思います。

 食事介助については,実習初めの頃,担当職員の方から指摘を受け,自分自身を見つめ直すきっか

けにもなりました。私は,ただ単に利用者の方により多く食べてもらい,元気になってもらいたいと

だけ考えていました。しかし,そうではなくて利用者の方(個人)の食事量を知り,一度の食事での

摂取量はどの位なのだろうか,熱発の際,水分をいつもより多く提供しなければならない事などを教

わり,本当の意味での食事介助とはこういった業務内容なのだと知りました。

 入浴介助については,事故につながる危険性がとても高い業務ではあるが,介助者と入浴者がゆっ

くりコミュニケーションをはかり親睦が深められる場でもあるというメリットとデメリットを持ち合

わせた業務だという事がわかりました。また,介助者が入浴者の生活のニーズを掴みやすくなる場で

もあるのではないだろうかとも思いました。例えば,入浴後に一番着たい服の色は何色かだとか,入

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浴者が介助者に対して気を遣わないでいられる空間を作るという事(背中を洗ったりするのを遠慮な

く言っていただいたり,自分が温まるまで浴槽に浸かっていたいと意思表示していただいたりなど)

が大切だと教わりました。入浴後,利用者の方の疲れにも気を配り,脱水症状を防ぐために髪の毛を

乾かしたり,私達にとっては当たり前の事でも,利用者の方には特に注意を向けなければならない事

を教わりました。また,本人のプライバシーを守るという事を忘れてはいけない事を改めて感じまし

た。

 最後に排泄介助(おむつ交換)については,最初はとても緊張しました。しかし,回数をこなすに

つれて徐々にですが慣れていきました。まだ,一人ではおむつ交換をこなす事は出来ませんが,これ

から先(将来)介護老人福祉施設等で就職した場合,とても価値ある経験をさせていただいたように

思います。また,2人対応でのおむつ交換は特に集中して取り組みました。

 おむつ交換の実習の中で別の視点にも目を向けました。それは,おむつ交換は時間帯によってパッ

トを吸収力の少ないパットから,吸収力の多いパットに変えているということでした。他にも必ずと

言っていいほど,おむつ交換の時に褥瘡の予防にもなるジェルマットを利用したり,拘縮の原因を少

しでも防ぐために足と足の間にクッションを挟んだりするといったところに特に目が止まりました。

4.実習の成果と今後の学習課題の目標

 この実習を通して,特別養護老人ホームは肉体的にも精神的にも大変な現場だということがわかり

ました。しかし,こういった現場だからこそ,やりがいを強く感じるのだと思います。また,実習を

していく中で日に日に達成感が生まれてくるのを感じました。

 学生生活最後の実習として4年生らしく実習し,将来につながる価値ある実習だったように思いま

す。介護職としての貴重な経験,利用者の方々との信頼関係を築くこと,援助技術だけではなく別の

視点にも目を向けること,常に向上心をもち続けることなど,将来に向けてこれらの経験を生かし,

福祉人として頑張っていきたいと思います。

5.実習施設・機関の課題

 実習施設での課題は多くの施設と同様に“介護職員の人材不足”といった点が課題なのではないだ

ろうかと感じました。社会の高齢化が進む中で介護をする人間が追いついていない,という現状を目

のあたりにしたからです。ただでさえ福祉の世界は低賃金かつ肉体労働であるため,ストレスもたま

り,デメリットのほうが際立って目立ちます。しかし,高齢者の自立支援へのサポートという初心の

気持ちを常に忘れることなく,利用者の方の個々の生活をする上でのニーズを掴み,介護のプロとし

て仕事を行っている職員の方々の姿を見た時,尊敬の気持ちが湧き上がりました。

 4月からいよいよ社会人(福祉人)として社会に出ていくわけですが,働いていく上で,常に向上

心をもち,どんな壁にぶち当たったとしても,同じ職場で働く先輩方や同期の方達と助け合い,乗り

越えていきたいと考えています。

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FS2004-171 金丸 恵子

山武市社会福祉協議会

平成19年10月11日~26日

1,実習で取り組んだ実践の概要

 この二週間の実習では毎日異なった内容を学習させていただきました。具体的な実習内容としては,

山武市社会福祉協議会を始めとする四つの支所で職員の方から事業の講義を受けました。教科書では

知ることのできない事業の裏話なども聞くことができ,より自分の身近なものとして捉えることがで

きました。その他にも,山武市ゴールドクラブによる芸能大会で手伝いをさせていただいたり,成東

小学校の学童クラブに行って子どもたちと接したり,山武市にある青松苑で特別養護老人ホーム,デ

イサービスセンターで一日ずつ介護実習をさせていただいたり,福祉作業所ではEMボカシのチラシ

やチョコレートの箱を製作したりするなど数多くのことを学ぶことができました。

2,実習の目標と達成状況

 ①社会福祉協議会で行っている事業を理解すると共に山武市独自で行っている事業についても学ぶ,

②施設で働く職員の役割の理解,③利用する人の理解という三つの目標を設定しました。①では,職

員による講義と実際の体験を通して理解することができました。そして,なぜ地域によってサービス

に違いが出てくるのかということには地形やその土地の住民の性質やサービスを利用することが当た

り前と考えられているかどうかなども関わっていることがわかりました。

 ②では地域住民の福祉増進をはかるための連絡調整を行い,地域にどのようなニーズがあるのかを

見つけ皆が暮らしやすい環境を作っていけるように縁の下の力持ち的な役割も持っているのだと日々

の地道な作業から見て取ることができました。また,祭りなどのイベントを計画する時も主体は住民

であるので住民が積極的に参加・発言できるような場作りもしていることが理解できました。

 ③では,社会福祉協議会の事業は地域住民の参加によって成り立っていると言うことができ,山武

市に暮らす全ての人が利用者であると思いました。活動に意欲的でない方や障害などを持っているた

めに参加したくてもできない方への支援もよりきめ細かく行っていくことが重要だと障害者団体の方

からも伺うことができ,お互いの話し合いが大切になってくることが理解できました。

3,実習での反省点

 福祉作業所での実習は,二回行わせていただきましたが今までボランティアの経験もあまりなく私

にとっては慣れない雰囲気の中での実習でした。言語でのコミュニケーションがほとんどできない重

度の利用者の方とは傍にいて笑顔などしかできず,職員の方の接し方にも怖さを感じてしまい「私は

この場でどのようにしたらいいのか」と考えながら作業をしていました。障害者の方とは,今まで関

わることが多くなかったので挙動不審な感じが出てしまったことや,利用者に何かしら私の不自然な

空気が伝わってしまったのではないかと思い,今までにもっとボランティアや学習をして雰囲気に慣

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れておく必要があったのではないかと感じました。

 また,マザーズホームの実習では子供たちと遊ぶ時間が多くありましたが,障害のない子供であれ

ば結果を予想してある程度行動できますが,この施設に通う子供は障害があるために危険に対する認

知が未発達で危ないことを何回もしたり,注意されても同じことをしたりするという行動が目立ちま

した。その時にある程度の危険を予想して行動するように心掛けましたが子供たちの行動が速すぎて

ついていけず,気持ちの高ぶりの度合も把握できていなかったので冷静に観察するべきだったと反省

しました。

4,実習の成果と今後の学習課題

 今回は4年次の実習ということもあり,今まで大学生活で学んだ全てのことを活用して取り組むこ

とができました。取り組む中で3年次と変化していた点は,社会に出ることが迫っていることもあり

自分の希望する医療ソーシャルワーカーという職業に就いた時,この実習をどのように活かしていく

かということも視野に入れながら実習を進めたことです。

 地域にはさまざまな社会資源がありますが自分のところだけではなく,他機関でどのようなことを

行っているのかということまで把握しておかなければいい支援をしているとは言えないと感じました。

今後は,常に耳は大きく,目は360度に,心は柔軟にいようと心掛けるとともに,向上心を持って誠実

に取り組んでいけるよう日々精進したいと思います。

5,施設・機関の現状と課題

 社協の発足は,GHQの指示による政府主導のものでした。はじめから主体性の無い民間団体とし

て,民間性の限界を抱えていたとも言えます。また,地域によって大きな地域格差が出ているのが現

状です。社協が今後,その存在価値を示して行くにはどうしたらいいか。社協はその発足の理念から,

福祉の「なんでも屋」的なイメージがあるかもしれません。しかしそれが逆に,住民には何をやって

いるのかが具体的に見えないという側面があるのではないでしょうか。社協活動の住民への可視性を

強め,さらに福祉のニードを実感するためにも,活動の目玉となるような直接サービスを行うことが

必要になると思われます。その為に福祉を担う地域活動促進の起爆剤としての自覚を持つ必要がある

のではないでしょうか。

FS2005-065 花見 佐和子

坂田苑

平成19年11月12日~11月25日

1,実習で取り組んだ実践の概要

 坂田苑では,養護老人ホームとデイ・サービスセンターが隣接していた。私は養護老人ホームで実

習をした。施設は3階建の建物で,上の階になるほど身体的に自立した方が入所していた。身体介助

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(清拭,着替えの手伝い),排泄介助(ポータブルトイレ・尿器の洗浄,おむつ交換),家事援助(部

屋掃除,洗濯,布団干し)をした。食事のときには,食事の配膳,見守り,食器の片付けをした。入

浴は週に男女別で2回ずつ計4回あり,浴場への誘導や見守り,背中や足の指の間など洗えないとこ

ろを洗う援助,衣類の着脱の援助をした。空き時間に入所者とコミュニケーションをとった。坂田苑

には9つのクラブ活動があり,2週間に1度,先生を招いて行っていた。詩吟と太鼓クラブに参加した。

2,実習の目標とその達成状況

 実習目標は,入所者によってニーズや性格が異なるので入所者に合わせたコミュニケーションを学

ぶ,また,職員がどのようにその人に合わせたコミュニケーションをとっているのか学ぶことだった。

初めは緊張してうまく話が出来ず,慣れるまでに時間がかかった。職員に「挨拶やちょっとしたこと

から話しかけたらどうか」,「家族とまではいかないけれど家族に接するときのように接してみたらど

うか」とアドバイスを受け,まずは笑顔で挨拶や声かけをするようにした。すると,最初は無表情だっ

た入所者が笑顔で挨拶を返してくれるようになった。信頼関係はすぐに出来るものではなく,日々の

積み重ねの大切さを知った。また,職員のアドバイスから入所者と歌や綾取り,折り紙をしてみた。

すると,会話のときよりも入所者の笑顔を見ることができ,コミュニケーションの多様性を知った。

私がおむつ交換をしようと声をかけたとき嫌そうな顔をした入所者が職員の「坂田苑の見本だから出

来るよね」という声かけで急にやる気になった。「うまくおだて,冗談を言うと入所者もやってくれ

る」と職員に教えてもらった。しかし,それを実践しようとしても言葉の使い方などがうまくいかず,

職員のように入所者を誘導することは出来なかった。言葉の使い方だけでなく,入所者の性格を考え

て接していることや,入所者との信頼関係が強いからこそ出来ることだと思った。ただ,職員の慣れ

が逆に入所者を不安にさせてしまうことを知った。「『あとでやる』ではいつやるのかわからない」と

言う入所者がいて,言葉の与える影響を知り,自分も入所者がわかりやすいように言葉を選ばなけれ

ばならないと知った。職員が入所者とコミュニケーションをとるときに気をつけていることをもっと

質問出来ればよかった。

 実習全体で見るとコミュニケーションをとることでいっぱいになってしまい,入所者の表情の変化

やしぐさなどの情報を見逃し,言動と本心が一致しているのかわからず,利用者の性格に合わせたコ

ミュニケーションまではとれなかった。社交的な入所者に話しかけてもらいコミュニケーションをと

ることが多く,自分の積極性が足りないと反省することが多かった。

3,実習での反省点

 最初はおむつ交換に不慣れでスムーズな介助ができず,入所者の体に負担をかけ,不快感を与えて

しまった。入所者の身体状況を把握し,その人のペースにあわせた介助が大切だと学んだ。介助技術

が未熟だった分,介助者が落ち着いていること,次に何をするのか声かけすることで入所者が安心す

るのではないかと思い,実行した。結果,不快感をあまり与えない介助ができるようになったのでは

ないかと思う。

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 入所者Aさんが私にメモのような紙を渡して「ペン」と言い,他にも何かを言っていた。Aさんは

知的障害者だった。以前Aさんが職員にメモしてもらっていたことを思い出し,メモをしてほしいの

だと思った。Aさんは「ナムル食べたい」と言っていたのでそれを私は紙に書いたが,まだ何かして

ほしそうにしていた。職員に聞くと「Aさんはその紙をいろんな人に見せびらかしてコミュニケー

ションをとるのだ」と教えてもらった。Aさんが求めていたのはそれに対しての私の反応だった。ど

こか機械的な接し方をしていた自分を反省するとともに入所者のコミュニケーションのとり方も言葉

だけに限らないと学んだ。耳が不自由な方への挨拶も他の入所者との挨拶と変えなかったのでジェス

チャーなどをして他の挨拶の仕方ができればよかった。言葉でのコミュニケーションにこだわらず,

もっといろいろなやり方ができればよかった。

4,実習の成果と今後の課題

 環境に慣れるまでに時間がかかったこと,積極性が足りなかったことが今回の一番の反省点だ。

もっと早く環境に慣れ,入所者にあわせたコミュニケーションがとれるようにしたい。また,今回あ

まり聞くことの出来なかった入所者が施設に入所するようになった背景や理由が聞けるようにしたい。

療養型病院の縮小や特別養護老人ホーム自体の高齢化により自立が前提の施設で介護や医療を提供し

なければならない現状を知った。職員に「養護老人ホームと特別養護老人ホームの違いがあまりなく

なってきている」という話を聞いたが,自分が特別養護老人ホームにあまり行ったことがなく,ほと

んど比較することが出来なかった。職員に「制度面からも考えられるといい」という指摘も受けたの

で,次回の実習までにもっと制度面での知識を蓄え,その側面からも考えられるようにしたい。

FS2004-162 今井 一徳

上越総合病院

平成19年10月22日~11月6日

1.実習で取り組んだ実践の概要

 私が実習を行った上越総合病院は新潟県南西部の上越市に位置する病床308床の中規模病院である。

平成18年に新築移転したばかりで,施設の外見や医療機器が整っている。この病院は,(1)人にやさ

しい病院(2)地域に開かれた病院(3)地域に貢献する病院の3つを理念にかかげ,上越地区の地

域医療の基幹病院として大きな期待をよせられている。

 私は医療ソーシャルワーカーの実習を12日間行った。普段は実習担当であった男性のワーカーと女

性のワーカーの二人で相談業務を行っている。相談内容の過半数は退院後の生活に向けての情報提供

や専門職・関係機関との連携などの退院援助であり,介護保険や医療費助成などの制度活用援助と患

者が引き続き必要な医療を受けられるようにする受療援助を合わせると全体の7割を超える。相談方

法は面接が全体の7割を占め,そのほかには電話,連絡調整,訪問などがある。

 実習中は,実習担当のワーカーと共に行動し,医療費助成や身体障害者手帳の申請手続きの説明,

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介護保険の申請手順やサービス内容に関する相談などの面接に同席した。整形外科と神経内科のケー

スカンファレンスや透析患者のインフォームドコンセントにも参加させてもらい,リハビリテーショ

ンの見学なども行った。

2.実習の目標と達成状況

 私は今回の実習のテーマを「依頼を受けたワーカーが,どのようにクライエントのニーズを把握し,

どうやって問題を解決していくかを重点的に学習する」と設定したが,2週間という実習期間では患者

1人のインテークから退院までといった援助過程に携わることができなかった。そのため実習中は,

それぞれの患者のケースワーク記録を基に援助過程を想像し部分的な援助に関わった。

 私は患者や家族のニーズを把握するため,インテークを行う前に患者の病室を訪問し入院前の生活

や現在の状況について簡単な会話を行ったり,実際に患者のリハビリテーションを見学しADLを確

認したり専門職からの意見をもらうことを心がけた。

 そうすることで,事前に必要な情報の準備ができ,インテーク時に具体的な説明を行なうことがで

きる。また,患者側と家族側の考えが一致していないこともあるので,事前にそれぞれ面接機会を設

けておくことで,より深い援助を展開できることもわかった。

3.実習で学んだこと

 私は実習中に,介護保険の全般的な説明を1回と,小児慢性特定疾患治療研究事業制度の説明を2

回行なった。実習5日目に初めて面接を任され,在宅復帰する70歳の女性とその家族に介護保険導入

についての全般的な説明をするという難易度の低いものだった。

 インテーク前日に患者のリハビリテーションを見学し,本人の希望や理学療法士からの助言を考慮

し,面接では介護予防事業と住宅改修について具体的に説明しようと考え準備した。しかし,本番の

面接では面接室独特の雰囲気に緊張してしまい,言葉が淡白になり十分な説明を行なうことができな

かった。また,自分自身の不安がクライエントにも伝染してしまい,相手のペースを考えない自分勝

手な面接になってしまった。

 この経験から,ワーカーは医療や福祉の制度について広く細かな知識をもっていなければいけない

ことと,患者の生活に注目して問題解決を進めていかなければならないことを学んだ。

4.実習の成果と今後の学習の目標

 私が今年の実習で最も痛感したことは,医療ソーシャルワーカーが知っておかなければならない知

識や情報の多さだった。8月の事前訪問で,実習担当のワーカーから医療費,障害認定,介護保険の

3つを勉強してこいと言われ準備していったつもりだったが,現場ではさらに具体的な数字や地域の

特色など深い知識が必要だった。また,患者のADLやニーズを把握するために患者自身の生活に関

心をもち,積極的にコミュニケーションをとらなければならないという課題も残った。

 今回の実習で,ワーカーは日常の援助やケースカンファレンスなどで医師や看護師,理学療法士な

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どの他の専門職と連携し,1人の患者に対し同じ情報を共有し,共通の援助目的をもつことの重要性を

学ぶことができた。

 私が今年の実習テーマを設定した理由は,将来希望する医療ソーシャルワーカーという職業に自分

が適しているか試すためでもあった。病院は乳児から高齢者まで幅広い年齢層を相手にするうえに,

短期間で相手のニーズを把握し,必要な情報を調べ,さまざまな手段で問題解決を行わなければならな

い。援助過程で患者が亡くなることも珍しくなく,実習中に私が直接関わった患者も数人亡くなった。

 そんな環境のなかで自分自身を保つことができるか考えると不安な部分も多いが,それ以上にこの

2週間で医療ソーシャルワーカーという職業にやりがいを感じた。短い実習ではあったが,自分の将

来と真剣に向き合い,これから身につけなければならない知識や技術を知ることのできた本当に貴重

な時間となった。

FS2005-163 齋藤 慶太

のさか学園

平成19年10月15日~10月28日

1・実習で取り組んだ実践の概要

 主な実習内容は,個々の能力によって分かれているグループを支援することでした。自立支援のグ

ループは農園芸班・軽作業班・手工班などに分かれていました。支援内容は,食事介助,排泄介助,

歯磨介助,入浴介助,自立支援,生活支援等をさせていただきました。介助を行う際には,声かけを

行い利用者の方が自分で出来る事は最小限のサポートをしました。時間がある土曜,日曜はコミュニ

ケーションを取ることに時間を費やし一緒に時間を共有しました。

2・実習の目標とその達成状況

 今回の実習での目標は,利用者の方々一人ひとりが,「その人らしく」暮らしていけるよう利用者の

方と同じ目線に立って考えて支援すること。また,約2週間という短い実習期間でしたが,利用者の

方々から好かれる存在になるよう努力し,好かれる存在になってから初めて生まれる,安心感・信頼

感の構築,向上を目標に実習を行いました。

 私が実習を行った施設では,利用者と職員との安定した人間関係・信頼関係が築かれており,利用

者が素直に自分を表現して快適な生活を送られていました。そんなこともあり,毎年来る実習生に利

用者の方々が慣れてきていたのと,利用者と職員との普段からの関係性から,普段見慣れない実習生

が毎日の生活の中に入ってきても,ひどく警戒される方があまりいませんでした。私の方から積極的

にコミュニケーションをとらなくてはと考えていましたが,利用者の方々の方から話しかけに来てく

れたりと,すぐに利用者の方々の傍でコミュニケーションをとることができ,お互いがとても安心し

て過ごすことができました。安心感を持ってもらえたとは思いましたが,信頼感の構築・向上という

のはとても大変なことで,お互いを知って理解し合える時間が少なく,実習期間内では利用者の方と

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私からは信頼感というものをよく感じられず,信頼感の構築・向上は上手く達成できなかったと考え

ます。

 「その人らしく」暮らしていける支援をするということは大変で,考えさせられる面が多くありまし

た。支援をするに当たって,一人ひとりの利用者の方のどこまで入り込んだ支援が必要なのかを考え

なければいけず,その人の「できること」「できそうなこと」を奪わないように発見しながら支援を考

えて行うことが必要でした。また,知的障害を持った方の精神状態を知ることは難しく,急に気分が

高揚したり逆に落ちたりと精神状態の変化が激しい方もいて,探り探り考えながらの対応というのは

困難でした。全ての利用者の方に上手な支援をすることはできませんでしたが,実習の1日を1人の

利用者に付きっきりでその人を探りながら行動してみると,次の日にはその人を少しは理解できたの

か様々な対応ができるようになっていて,「その人らしく」暮らしていける支援という目標の達成に繋

がる自信となりました。私が行った支援を利用者の方がどのように感じたかを知ることも難しく自己

満足で終わっているかもしれません。この目標の達成の難しさを考えさせられました。

3・実習での反省点

 今回の実習での反省点は,とても沢山の利用者の方々とコミュ二ケーションをとれたのですが,気

持の浮き沈みの激しい方や,ちょっとした事があると周りの人に暴力を振るってしまう利用者の方,

精神状態が上手く探れない方などに対してどうコミュニケーションをとっていいのか戸惑ってしまっ

たのと,私が接している時に暴れだしてしまったらという不安からそのような利用者の方々に対して

少し敬遠がちになってしまったり,不安な気持ちのまま接してしまった事です。

4・実習の成果と今後の学習課題

 実習の成果としては,私が実習前にイメージしていた施設内の暗いイメージというのが私の実習し

た施設にはありませんでした。施設,利用者の方や職員の方と接してとても明るいイメージへと変わ

りました。

 沢山の利用者の方とのコミュニケーションをとる事ができ,様々な症状を持った方とのコミュニ

ケーションの取り方を学ぶことができました。また,利用者の方の様々な意思表示の方法も体験でき

ました。知的障害をもった利用者の方の精神状態を知ることは難しく,自分の要求を上手く伝えるこ

とのできない人もいます。そのような利用者の方との実習での毎日のコミュニケーションが今後の事

にいかせる成果となりました。

 今後の学習課題として,知的障害を持った方に対して私たち支援する側の意思をどのように上手く

伝えられるか,利用者の存在意義を消さないようにどこまで利用者の方の生活に入っていった支援が

必要かを考え行っていく必要があると思いました。

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【福祉経営学科】

FM2005-010 菊池 文秀

コート・エミナース

平成19年11月7日~11月20日

1.実習の内容

 今回の実習では,特別養護老人ホームにおいて利用者との関わりなどを,あくまで社会福祉士を目

指すという視点から学ぶ機会を与えられた。そういった点から今回の実習では,デイサービス,居宅

介護支援センター,特別養護老人ホームで行った。

 デイサービスでは,利用者の送迎,バイタルチェック,入浴介助,レクレーションなどが実習内容

であり,利用者ができることは,できるだけ本人が行うようにすすめたり,利用者への言葉遣いを注

意しながら進めた。

 居宅介護支援センターでは,介護保険について理解を深めたり,サービス利用票確認,サービス担

当者会議に同行させて頂き,ケアマネの役割・業務内容を十分に理解,体験することができた。更に

は,事例を用いて実際にアセスメント,ケアプランの作成も行った。

 特別養護老人ホームの相談員業務では,これから入所する利用者の家族へ契約の内容などを説明す

る席に同席させて頂いたり,委任業務として,利用者の預金をおろす,転居手続き,介護保険負担限

度額の変更手続きなどに同行させて頂いた。

 医務室業務では,一日間しかなかったが利用者の病院受診に同行,更には利用者の体に対するケア

が多く,入浴後の利用者へ塗り薬の塗布などを見学することができた。

 以上を踏まえ今回の実習では直接的な介護はせず,どちらかと言うと施設,または利用者と社会と

の関わりなどを多く学んだと感じる。

2.実習テーマと取り組み

 今回の実習テーマは,「特別養護老人ホーム内での利用者と職員との関わりや,さまざまな状況での

対応の仕方を学ぶ。また合わせて地域,社会,福祉などという面から見た特別養護老人ホームの役割

を学ぶ。」という事だった。

 施設内での利用者と職員の関わりに関しては,職員が個人的な仕事をしている時でも,利用者が一

人で立ち上がったときにはすぐに気付き駆け寄るなど,職員が利用者(福祉)に対してとても熱い気

持ちを持って毎日業務を行っているととても強く感じた。その中で実習できたことで,自分も熱い気

持ちで利用者と関わり,福祉について考えることができた。

 また,地域,社会,福祉などという面から見た特別養護老人ホームの役割については,利用者の家

族と施設の密接な信頼関係を築き上げることや,家族の方に安心感を与えることの重要性を,特に相

談員業務を通して学ぶことができた。

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3.考察

 この実習で学んだことは数多くあるが,その中でも重要なのが利用者への自立支援と福祉サービス

(今回の場合デイサービス)の在り方であった。

 まず,利用者への自立支援についてである。実習当初,自分は利用者の症状や状態の理解もまだ浅

く,歩行や着脱がどこまで出来るのかという事が分からなかった。また,当初自分は利用者に対して

は,たくさんサービスを提供するという考えも少なからず持っていたせいか,本当は歩行が自立して

いたり,着脱を自分で出来る利用者に対しても介助をしてしまっていた。その時職員の方から,「○○

さんはそれ一人で出来るから手伝わなくていいよ。」「利用者に対して介助することも業務であり重要

だけど,出来ることは出来るだけ自分でして頂き,職員は見守り介護をすることもとても重要だ。」と

指導を受けた。この時自分の知識のなさを痛感したと同時に,その重要性をとても良く納得した。そ

してそれ以降,各々の利用者を深く理解しようとし,出来ることは見守って,利用者自身にして頂く

という姿勢を身につけることが出来たと感じる。

 そしてもう一つ学んだことで印象に残ったのが,福祉サービスのあり方である。実習のテーマでも

あったこの事柄については,職員に積極的に話を伺いその中で,「実際に利用者自身に今の生活の中で

デイサービスはどのような存在であるのかを聞いてみて下さい。」と言われ,利用者に直接,「今の生

活の中でここ(デイサービス)に来ることは楽しいですか?」と伺った。「とても楽しい。毎週ここに

来ることが今の生活の生きがいだ。」と語る利用者もいれば,「何でここに来ているかは分からないよ。

ただ,朝,迎えに来るから来ているだけだ。特に楽しくもないよ。」と語る利用者もいた。その事につ

いて職員の方からは,「実際には利用者の家族の方への貢献のほうが大きいのかもしれない。介護負

担の軽減や昼間,自宅で一人になってしまうといったような理由などから。しかし,その中で,施設

(サービス,職員)は,どうやって利用者に満足できるようなサービスを提供するか,また,いかに

来て楽しい,また来たいといった気持ちを持たせられるかが重要なんだ。」と伺った。その時自分はと

ても深く考えさせられるものがあり,「福祉に携わる者は日々そういったことを考え,努力しなければ

いけない」と強く感じた。この二つの事柄はこの実習から学んだものとしてとても印象深く,これか

らも忘れることはないと感じた。

4.実習の評価と今後の課題

 今回の実習では,職員が持つ福祉に対する気持ちの強さや自立支援の在り方,職員が日々考えなく

てはいけないことを特に理解した。その環境を与えてくれたコート・エミナースには本当に感謝の思

いで一杯である。そしてこれらの事は,これから4年の実習,社会に出たときに役に立つことだと感

じる。

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FM2005-093 今井 隆太

大利根旭出福祉園

平成19年11月5日~11月18日

1.実習内容

 私が実習をさせていただいた大利根旭出福祉園では,入所部,通所部,短期入所,ケアホームといっ

た事業を行っている。主に入所している利用者の方々の見守り(利用者把握)の時間を多くもらうこ

とができ,利用者の方一人ひとりの性格やこだわり行動などを把握しつつその他に,入浴介助,食事

介助,農作業なども経験させていただいた。

 そして施設長の講義を受け,施設の重要性,施設のあるべき姿,法改正により生じる問題などを学

ぶことができた。その中で,福祉について考えることも多くなり,私なりに福祉に対するある程度の

考え方の基盤を見出した気がする。

2.実習テーマと取り組み

 今回の実習テーマは「利用者の方達の特徴を知ることと,障害者自立支援法による施設が抱える問

題を知る」ことである。

 実習中には,通所部の利用者の方々と2日間行動を共にさせてもらうことができた。その利用者の

方々は,ケアホームや地域から毎日通っていて,比較的自立しているように見える人達が多かった。

常に注意することが必要な方もいたが,彼らはお互いに注意し合い助け合っていた。通所部ではおも

に農作業を行ない,職員の方は,彼らをよく褒めていた。利用者の方々は褒められることによって,

更に向上心を持ち,物事を頼まれれば嫌な顔ひとつせず,率先して動いていた。何よりも職員と利用

者の間には,強い信頼関係があることを実感できた。

 また,実習中には,職員の方,施設長から,自立支援法について多くの話しを聞く機会をいただい

た。私は,自立支援法すなわち脱施設化と捉えていたが,この法改正により,様々な問題が生じ,施

設,利用者,家族の方々は,大変不安に思っているということを知った。

3.考察

 ある職員の方との反省会の中で,次の内容について学ぶことができた。法改正により地域社会に出

て働く障害者の方は増えた。しかしその裏では,利用者負担が多くなりやむを得ず施設を退所してい

く方も中にはいるのである。この施設では60%の方が,障害度数で表すところの重度と判定されてい

る。日々の生活に携わっていても,この中の何人の方が地域で暮らし,社会に出て働くことができる

かと聞かれたら,60人以上いる中でもほんの一握りの方達だけだと思う。仮に障害が軽度といわれて

いる人々でも,自立は難しいのである。そのような方達をどのようにして社会に出せるのか。どのよ

うな地域社会がそうした方々を温かい目で見守り続けることができるのか。さらに大利根旭出福祉園

は,利用者の方の高齢化が進んでおり,両親が亡くなられている方も少なくない。そういった方々の

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行き場はどうなるのだろうか。こうした新しい体制を国は見直さなければならないのではないだろう

か。

 実習2日目にこのようなことがあった。利用者のFさんは自閉症の方である。その日の昼食前に他

の利用者の方が声を荒げていた。その場にいたFさんはその声におびえていた。そして私のほうに駆

け寄り,私の手を掴むなりよほど怖かったのかFさんも大声を張り上げた。爪が私の手に強く食い込

み,その手を振り払うことができないほどだった。私もどうすればよいのかわからず,慌てて近くに

いた職員の方に助けを求め,やっとその場は落ち着いた。その後私は,Fさんはあの時何を訴えてい

たのかと考えた。しかし答えは出なかった。私は関わりについて自分で決めていたことがあった。そ

れは,どんなに利用者の方に突き放されても,自分から関わることを止めないということである。

 その日の午後の散歩の時に,私はその方と一緒に歩かせてもらった。歩いているうちに徐々にFさ

んが興奮し始めた。急に走り出したり,大声をあげたりといった風に。そして先ほどと同じように私

の手を掴んだ。私はFさんやりたいようにさせてみて,それで何か変わればと思っていた。するとF

さんは私の腕を自分の両脇から背中に回し,私に抱きついてきた。私も自然に抱きついた。徐々にF

さんは落ち着き,また歩き出した。散歩が終わるまで何度もその行動を繰り返し,無事に散歩を終え

ることができた。その後,気付くとFさんが私の後ろにいることが多くなり,しきりに「抱っこ」を

求めるようになった。

 この方は自分の世界を強く持っている。その世界を乱されることを一番に嫌うのだと思う。私たち

にも各々の世界や,価値観があり,それを乱されたり,否定されたりしたら良い思いをする人はいな

いはずである。人それぞれ個性や,こだわりがあり,それらの表現方法がある。その方はその表現方

法がほんの少しだけ苦手なだけなのである。そのような人を私たちは敬遠するのではなく,一歩踏み

込み,理解しようとする姿勢を見せることで,私たちはお互いが歩み寄れるのかもしれない。

4.実習の評価と今後の学習課題

 今回の実習では,今までに学んだ自分の知識を活かそうと意気込んで臨んだが,経験が少なすぎ,

自分の知識の無さ,経験不足を痛感させられることばかりだった。しかしその悩みも,利用者の方達

のおかげでマイナスに考えるのではなく,私に向上心を与えてくれた。そしてある職員の方の言葉が

非常に印象に残っている。「このような職に就くには資格は大事であるし,絶対に取得したほうがい

い。ただその後に大事なのは資格ではなく人間性である。」その通りだと私も思う。そして,だからこ

そ社会福祉士の資格を取得しなければと思った。4年次の実習では,大利根旭出福祉園での自分の良

い点,悪い点を踏まえ,今より更に人間性を磨き,知識を蓄えていきたいと強く思った。

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FM2004-109 中村 篤人

つくも幼児教室

平成19年10月10日~10月27日

1.実習内容

 今回のつくも幼児教室では,子どもたちと一緒にあそびを中心とした実習を行った。通園の子ども

たちは,単独通園の子と母子通園の子のグループに別れて,午前中は「体を動かすあそび」,午後は

「課題あそび」を中心にして行った。職員は1グループ2~3人体制で,限られた時間の中で子ども

たちに多くのことを学んでもらうため,子どもたちやグループに合った療育保育の内容を考え,支援

の仕方や職員の連携がスムーズだった。私は,保育内容を順調に進めるためには,職員同士の意思が

共通してなければならない事,職員の連携がもっとも重要なものだということを学べた。親御さんに

関しては,自分の子の障害を受け止めている方や,逆にまだ受け止め切れてない方がいるので発言や

接し方にとても気をつけなければならない事,いろいろな悩みを抱えているので少しでも取り除ける

ように支援や,ケアが必要なことも実感できた。

 また,つくも幼児教室では月に一度「相談保育」があり参加した。まだあそび方や子どもとの関わ

り方など迷っている方や,集団生活に慣れていない子どもたち,また月に1回という少ない回数なの

で普段の保育と共に貴重な機会だと教わった。

2.実習テーマと取り組み

 今回の実習テーマは,「子どもの発達や能力をどのように引き出しているのか理解する」「親のニー

ズに職員はどう協力し,支援しているのか学ぶ」というテーマであった。まず初めに,子どもたちに

は自分から関わってくる子とこちらの様子を見ている子,まったく興味がなく自分の好きな事をやっ

ている子がいたので,緊張や警戒心,私に興味を持ってもらおうと考え,「声掛け」や「追いかけっ

こ」,「くすぐり」や「抱っこしてグルグル回す」など行い積極的に関わりに行った。また「名前で呼

ぶことできっかけ作りになるのではないか」と考え,上履きに書いてある名前を見て確認したり,職

員が呼んだ時など観察し覚えていった。

 つくも幼児教室ではあそびや褒めることによって子どもたちの能力や発達を引き出していた。

ちょっとしたことでも「すごいね~よくできたね~」「次はこれやってみようか」など気分をのらして,

向上心を出したり,どんどん次の遊びもやってもらうように子どもたちを上手くやる気を引き出して

いた。また,あそびから人と関わる楽しさや人と合わせることなどを教えたり,その子が今どこまで

できるのか判断・理解し支援の仕方を考える大切さを学ぶことができた。子どもたちは大人にとって

自分の気持ちを分りやすく表現できない子や他の子を叩いたり,床に寝そべってしまったりなど自分

なりの表現でしか訴えられない子がいるので,大人が間に入って取り持つことや,その子たちの気持

ちを受け止めて理解してあげることで,自分の気持ちを言う適切な表現へつなげていく大切なことで

もあり,子どもたちにとって安心できる場所になってあげることが大切だと職員から教わった。

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 親御さんのニーズについては連絡帳で連絡を取り合い,また子どもを迎えに来た時に職員と話をし

ている場面をよく目にした。長くなるようだったら,他の職員が子どもを見て,別室で職員と面談で

きるようにし,不安や悩み,相談などを言いやすい環境づくりや情報提供などをしていた。

3.考察

 今回の実習は一日一日がとても早く,子どもたちと一緒にいる時間もあっという間であった。毎日

が勉強と発見でとても充実した実習であったと感じる。その中でも一番考えさせられた場面は,「子

どもたちをどう楽しく遊ばせてどう能力を向上させるのか」であった。

 施設には約15人から20人の子どもたちが通ってくるのだか,一人ひとり個性もあり,能力もそれぞ

れ違ってくるので,この子はどこまでできるのかわからなくなってしまうことがあった。Kくんはお

もちゃの乗り物や自転車で遊んでいる時にトコトコ歩いて進んで遊んでいた。その後,職員から「K

くんは次の段階で,ちゃんと地面を蹴って遊ぶやり方を動作しながら教えてください」と教わり,K

くんが乗り物に乗った時,トコトコ歩いて遊んでいたので,「Kくんこうやってみたら?」と足を握っ

て蹴るという動作やペダルを漕ぐという動作を教えてみた。しかし,Kくんは「ヤー」といいながら

別のあそびをしてしまった。その後も「乗り物であそぼうよ」と誘ってみたが,気分を悪くしてしまっ

たらしく乗ろうとはしなかった。その後の実習で気付いたのだが,職員は,やり方を教える時にまず

子どもたちに目の前で見本を見せて「やってみよ」と勧めており,子どもが少しでも挑戦すると褒め

て気分をのらせ,やる気を出していた。私は子どもの気持ちを無視してやらせている場面があったの

で,子どもと一緒に楽しみながら教えていく大切さ,遊びながら能力向上をさせることが大切である

と学んだ。

4.実習の評価と課題

 実習を振り返ってみると,怒らないといけない時は別だが,子どもをただ怒って行わせるのではな

く,褒めて子どもたちの気分を盛り上げながら自分でやらせるようにしつつ,子どもたちのやる気を

引きだすということが理解できた。また,いかに職員同士の連携や子どもたちの能力段階の理解,保

育内容の理解が必要なのか実感でき,考えさせられる実習であった。実習の反省点は,「保育内容の理

解不足」「子どもたちの発達段階が理解できてなかった」である。実習が始まってからすぐ職員に聞い

ていたらより充実した実習になったのではないかと感じる。この2週間で手遊びを覚えたり,子ども

たちの前で紙芝居を読んだりする機会があったのでたくさんの経験や知識が増え,今後の社会人とし

ての生活に活かしてゆきたい。