林下曹洞宗における相伝史料研究序説（七）repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/33041/jbk071...林下曹洞宗における相伝史料研究序説（七）（飯塚・土屋）

駒澤大學佛敎學部硏究紀要第七十一號　

平成二十五年三月

六五

はじめに

　

前稿では、石川力山氏「中世曹洞宗切紙の分類試論」の中心的な研究対象であった永光寺所蔵切紙の全体像を概観す

ることを目的として、駒澤大学図書館蔵『佛佛祖祖相傳秘蜜正法眼藏』上冊（一八丁表～巻末）を翻刻紹介した。今回

は、前稿で参考資料としてあげた正法寺史料を取り上げてみたい。今回も駒澤大学大学院修士課程二年土屋圭子に図

（血脈等）作成及びそのレイアウトの協力を得た。

【翻刻凡例】

一、本史料翻刻に際しては、底本には、正法寺所蔵『切紙集』（仮題）、『天童如浄和尚智識弁点験大明目』、『月泉派秘

参』二種を用いる。

一、底本の翻刻の体裁は、史料の原形をできうる限り反映させることを原則としたが、掲載の都合で図と本文との関係

（前後左右）を変えた場合がある。文字の大きさも同様に、必ずしも統一できていない箇所がある。

一、翻刻に当たっては、異体字・略体字・別体字・俗字等は、原則としてその書体に近い形で翻字を行った。ただし一

部現行の書体にて翻字した場合がある。省文等も同様である。また、明らかに誤写と思われる部分については、また脱

字が明かな場合には、必要に応じて他のテキストを参考にし、傍注を付した。

一、踊り字について、片仮名は「ヽ」、「ヾ」、漢字は「々」、「々々」を用い、二字以上の「〳〵」「〴〵」も用いる。

一、合字の「ヿ」「

」「

」「

」「

」は、そのまま翻字する。

一、濁音・促音等の表記は、原文のままに翻刻し、敢えて統一ははからない。

一、句読点に関しては、読解を便ならしむるために適宜これを補う。

林下曹洞宗における相伝史料研究序説（七）

―正法寺関係史料篇（一）

―

飯　塚　大　展

土　屋　圭　子

林下曹洞宗における相伝史料研究序説（七）（飯塚・土屋）

六六

【参考資料（二）正法寺所蔵『切紙集』（仮題）】

正法寺02―0001

（１）「佛祖嫡秘訣［　

］嗣法問答

　　　　

佛祖嫡秘訣［　

］」

　　　　

嗣法問答」

〽如淨云、如何是一箇拄杖。道元答」云、人々具足。淨

云、汝直具足看。元云、無」心。淨云、言語盡時如何。元

便立［　

］叉手。」淨云、如是〻〻。」

〽淨云、如何是露柱ノ一句。元云、六根不具」真ノ具足。

淨云、既ニ是六根不具、為レ

什麼」有レ

問有レ

答速道。元便

喝。淨云、是什」麼。元、即拂袖［　

］是々々。」

淨云問、如何是［　

］。元云、鏡裏ノ像。」淨云、如何是明

鏡。元云、磨二

古鏡一

。淨云、磨」落二

在ス何一ニカ處。元云、

破鏡。淨云、彼落處甚麽ノ」處ソ」、道ヘ々。元云、火ノ裏

氷。淨云、與麼ノ時如何。」元便放身。淨［　

］是々々。」

〽淨云、如何是［　

］。元云、電光了知」劔。淨云、去テ

在二ル何ノ處一ニカ。元云、正知得。淨云、」會スル底作麼生。元

云、天地同根萬物一。淨」云、恁麼ノ時如何。元、呵々大

笑ス。淨云、是レ什」麼ノ章句ソ。元便禮拜。淨便下座。問

訊。辨拄杖。

〽淨云、如何是龜毛ノ拂子。元云、世界恁麽ニ」廣シ。淨

云、如何是拂子上ノ一句、元云、吾ニ有レ

」一言。淨云、一

言盡時如何。元無言。淨」便授二

白拂子一ヲ云ク、何カ有二

手

中一

弄スル耶。直ニ須」言二

一指頭一ヲ。元云、撑レ

天拄レ

地。淨

云、作麼」生カ是レ天地出頭ノ物ノ。元云、言語道断。」淨

云、如何是レ三尺ノ竹箆。元云、問話ノ者ノハ喫レ

」棒。淨

云、不恁麼ノ時如何。元云、三日前五日」後。淨云、前後

際断ノ時如何。元云、不會。淨云、淨云、為レ

什麼不會ナル。

元云、唯ト々シテ不レ

開レ

口。淨便」下坐、授レ

竹箆。元九拜

云珍重々々。」

正法寺02

―0002

「自家訓訣」

（２）自家訓訣　自家訓訣　

自家者、指洞家也。

　　　　　　　　　　　　

天童淨圓相之上也」

羅多禪問謂何三窮」

葉用師也者乎尺識」

則天因義示地許可」

必西元餘云勃餘授」

不倶拜無天陀何面」

可也問欠竺勃謂能」

有凖御無詞云乎唯」

梅表書處也問示事」

絹絶要大此也云等」

又断用同飜義如是」

六不梅圓顕重自如」


六七

祖令絹而到巻下也」

夜爲何坐佛可巻義」

半連故圓陀重収之」

傳風乎環佛百上終」

法古示中地総令無」

時梅曰祖義也崇始」

何黃継祖也心重無」

必云佛佛又轉無窮」

用示之梅云圓薩菩」

梅乎綾落陀横戒如」

絹謂也盡陀八血云」

乎何為品羅縦脈示」

作之令上飜七佛何」

崇書不用総上頂如」

重而断也是向上意」

之相絶梅佛佛圓臂」

志圓其落佛到圓翰」

而作古織列書相横」

打問風綾位御猶縦」

調也今品之如有脉」

時綾亦上義窟大朱」

用之用朝也窠圓字」

梅絹梅宋問中鏡文」

絹也其故佛頂上不」

正法寺02

―0003

「他家訓訣」

（３）他家訓訣

　　　　

他家訓訣　他家者、臨濟等四宗也。

　　　　　　　　　

淨和尚潔地淨曰去」

笑微示立主祖勃而」

只陀曰男人四陀禮」

是頭他潔公十勃作」

了也家曰書三地元」

其名亦元収絹梵午」

相異有何而分語是」

八訓如潔竪二也何」

箇横訣處地尺此如」

三頭曰立著七飜畢」

才指拈曰三曰覚畢」

和箇華淨世元智曰」

合十微公諸何釋淨」

妙妙笑人佛者尊當」

相即所主一潔已正」

異華謂曰體彼來日」

名拈久元全曰皆午」

也何遠乎無淨智當」


六八

抑者今何始地也正」

曇以時是終潔你半」

老所也地淨立胡夜」

有也拈勃曰男爲曰」

可圓出陀勃潔恁元」

承一久勃陀通麼人」

當般遠曰勃公道當」

分一事淨地人元何」

華始今収呈潔智曰」

乎時時書露心通淨」

是此微字元無變動」

拈之笑名曰人子字」

□主人公是中細陀」

住祖時今心曰元曰」

也四一遠淨元即淨」

尊十圓久曰生拈心」

者三相話立麼本指」

有此通之處作法即」

何云處微作中淨元」

承相始拈麼曰曰細」

當圓本案生淨地子」

分一等公元中字字」

微打妙少曰曰子勃」

笑即同多十元細曰」

乎元一有刧細元淨」

是看體雖坐子曰我」

笑露而來道猶十唯」

一呈無爾塲曰刧見」

住直二耳淨淨坐我」

也曰也心曰位道曰」

即滓淨傳猶竪塲前」

等祖老心子指淨目」

妙四後以細即曰投」

二十曰是元元發相」

覺三你如曰何惠圓」

妙有如也了如目一」

相中何人了度時打」

和之承一見滅如即」

合圓當唯明曰何元」

十一元合明淨元知」

方體曰而知位即徹」

具一此乀淨横指見」

足横丿竪曰如何徹」

　　私云、三十四祖圓書之事、借出正法眼

藏嗣書巻也。　　　　　　　　　　　

大宋寶慶元丁亥年九月十八日」

天童景徳寺堂頭和尚授道元」


六九

畢。爾来嫡々相承到于吾。吾今」

附良韶畢。旹日本康永元壬午六月」

十二日總持韶碩在判」

如今元禄十丁丑年二月十四日」

大梅拈華山大訥叟良辯」

　　　　　　

附笑丹侍者」

正法寺02

―0004

「迦文勒三記」

（４）迦文勒三記

　　　

迦文勒三記

法華序品曰、爾時世尊、四衆ニ圍遶シ、供養シ」

恭敬シ尊重シ讚歎セラレテ、為二諸ノ菩薩二ノ

説二

大乗經一

、名二ルヲ」

無量義教菩薩法佛所護念。佛説二

此ノ」

經二ヲ已テ、結跏趺坐シテ、入於無量義處三昧、身心」

不レ

動。是時天ヨリ雨二シテ曼陀羅華、摩訶曼」

陀羅華、曼殊沙華、摩訶曼殊沙華一ヲ、而散」

佛上及ヒ諸ノ大衆一ニ。普佛世界、六種ニ震動ス。爾」

時會中、比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷、天龍、」

夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦樓羅、緊那羅、」

摩睺羅伽、人ト非人ト、及ヒ諸ノ小王、轉輪聖王、是ノ諸ノ大」

衆、得二テ未曾有一ナルコトヲ、歡喜合掌、一心觀レ上ル佛ヲ。爾時佛」

放二

眉間白毫相光一ヲ、照二

東方萬八千佛土一ヲ、靡レ

不レ云コト」

周遍一

云云。爾時彌勒菩薩作二

是ノ念一

、今者世」

尊現二

神変ノ相一ヲ、以二何ノ因縁一ヲ而有二此ノ瑞一ニ云云。爾時彌勒」

菩薩、欲二

自ラ決一

疑レ

、又觀二

四衆ノ之心一ヲ、而問二

文殊師利一

」

言ク、以二カ何ノ因縁一ヲ而有二ルヤ此ノ瑞神通之相一

云云。爾時文」

殊師利語二

弥勒菩薩摩等一ニ、如二ンハ我カ惟忖一スルカ、今佛」

世尊欲レ

説二

大法一

、過去無量刧ニ、有レ

佛號二

」

日月燈明佛一

、演二

説正法一

、初善中善後善ナリ。乃」

至一切種智一ニ。次復有レ

佛亦名二

日月燈明一ト。次」

復有レ

佛號二

日月燈明、如レ

是二萬佛皆ナ同ク一字ニシテ」

號二

日月燈明一

、又同一ニ姓二

頗羅墮一ヲ。彌勒當レ

知初」

佛後佛皆ナ同ク一字ニシテ名二

日月燈明一

、十號具足ス。」

其ノ最後ノ佛未二

出家一

時キ、有二

八王子一

云云。是ノ諸ノ」

王子、聞三テ父ノ出家シテ得二ヲ阿耨多羅三藐三菩提一ヲ、」

悉ク捨二

王位一ヲ、亦隨テ出家ス云云。是ノ時日月燈明佛」

説三玉フ大乘經ノ名二ルヲ無量義教菩薩法佛所護」

念一ト云云。爾時如來、放二テ眉間白毫相ノ光一ヲ云云。時ニ有レ

」

菩薩一

、名ヲ曰二フ妙光一ト、有二

八百ノ弟子一

。是ノ時日月」

燈明佛從レ

三昧起テ、因二テ妙光菩薩一ニ、説三玉フ大乘」

經ノ名二ヲ妙法蓮華經一ト云云。如來於二テ今日中夜一ニ、當レニ」

入二ント涅槃ニ。時ニ有二

菩薩一

、名ヲ曰二フ德藏一ト、日月燈明」

佛即授二

其ノ記一ヲ。告二

諸ノ比丘一ニ、是ノ德藏菩薩、次ニ」


七〇

當レニ作佛ス、號シテ曰二

淨身多陀阿伽度阿羅訶三」

藐三佛陀一

。佛授記シ已テ、便チ於二

中夜二

、入二リ玉フ無餘涅」

槃一ニ。佛滅度ノ後、妙光菩薩持二

妙法蓮華」

經一

、滿二

八十小劫一ヲ為レメニ人演説シ玉フ。日月燈明佛ノ八子」

皆師レトス妙光一ヲ云云。其ノ最後ノ佛者、名ヲ曰二

燃燈一ト。八百ノ

弟」

子アリ、中ニ有レ一人號シテ曰レ求名ト、貪二

著シテ利養一ヲ、雖三トモ復」

讀二

誦二スト衆經一ヲ、而不二

通利一

、多レカリキ所二

忘失一ス、故ニ號二ス求」

名一ト云云。當レニ知ル、爾時ノ妙光菩薩ハ豈ニ異人ナランヤ乎。我」

身是也、求名菩薩、汝カ身是ナリ也。乃至當レニ説三

大」

乘經名二ヲ妙法蓮華教菩薩法、佛所」

護念一ト云云。」

同授記品、爾時ニ世尊告二

大衆一ニ言ク、我カ此ノ」

弟子摩訶迦葉ハ、於二

未来世一ニ、當レニ得レ

奉二

覲スルヿヲ」

三百萬億諸佛世尊一ニ、乃至於二

最後ノ身一ニ、得レテ成コトヲ為レ

」

佛、〈名ヲ曰光明如来應供云云。國ヲ名レク光德一ト、劫ヲ名二ク〉大莊

嚴一ト。佛壽十二小劫、云云。」

天童淨和尚示レ

道元ニ云、先佛ノ授記如レ

此ノ。同」

號同名勃陀勃地也。皆ナ是レ十號具足シテ唯佛」

與佛ノ通處、億刧不盡ナル者ノナリ也。汝能ク信受セヨ。若吾」

拜謝シテ退、如今書以付二

汝チ懐弉一

、非二ンバ其ノ人一ニ、不レ

可」

示二

此ノ妙要一ヲ也。」

右ハ於二

永平寺妙高臺一

以レ

正本寫レ

之。如今付二

」

正法良印監寺一ニ　　

総持紹碩判」

正法寺02

―0005

「佛祖嫡傳命脈口訣」

（５）佛祖嫡傳命脈口訣

　　　　

佛祖嫡傳命脈口訣」

△圓相ノ上三尺餘二ス空白ノ絹地一ヲ者ノハ、威音已前ノ表」

凖ニシテ而謂二フ之ヲ太白峯一ト。若シ強テ圖スル時ハ之則」

一圓一空ノ妙相也。七佛嗣二テ法ヲ於圓一々ニ而非レス

」

圓ニ。一圓一空、十々萬法、空々嗣キ畢テ則チ非レ

空ニ」

本來無ナリ也。圓々紹キ了テ非レス圓ニ。然ル時ハ則佛陀嗣レテカ」

什麼云二

佛地尊一ト、命脉喚レテカ什麼ヲ云レフヤ血脉一ト乎。」

是乃一心三星命ナリ、血脉ノ本分也。又是三世如」

来正脉也。命ハ者、是星ニシテ勃陀勃地也。脉ハ者、日月ノ」

血脈勃陀也。云二フ之ヲ陰陽和合一圓之種子」

佛孫ノ血脈一ト。血ハ囑レ

火ニ發二ス陽氣一ヲ。脉ハ囑レシテ水ニ發二ス」

陰氣一ヲ。命ハ中央ニシテ囑レス地ニ、千佛ノ道場ナリ。空圓ニシテ而」

衆生ノ本分ノ性躰也。雖レ

然水ハ嗣二テ法水一ニ而非二ス」

水相一ニ、火ハ嗣二テ法火一ニ非二

火相一ニ、無相ノ妙術ハ、佛祖不」

傳、歴劫不思議ノ法ナリ也。謂二

之ヲ不可得ノ性一ト。君」

不見乎、鷺ハ兮自白、烏ハ兮自黒シ。」

△佛頂上ノ重圓相者ハ、宛轉無窮ニシテ而縦横如二ナル」

輪臂一ノ者ノハ、無始無終ナリ也。」

△嗣書絹七尺二寸、戒法書如上〈或八尺二寸、明峯派下五尺


七一

二分、」

大源派下三寸五尺〉」

右永平道元傳如レ

斯、上足一人ニ面受シ来テ」

深密ナリ也。如今親。」

○同下段口授」

〽佛者根本ノ妙性本佛本體ナリ也。〽祖者トハ

、万法ノ心」

化佛化相也。〽命トハ者、無始不盡ノ一命根ナリ。〽脈トハ」

者血理ナリ。生々世々ニ不見無相ノ一物ヲ、今マ自由ニ」

動用ルヲ謂ナリ也。〽證契トハ、徹見徹知ナリ也。〽即通トハ」

者、直下承當、更ニ無二キヲ第二人一

謂ナリ也。師資一躰之義ナリ」

也。故ニ作二シテ圓相一ヲ、自二

初祖迦葉一

、至二テ新長老一ニ、書レ

一」

位ニ即通ナリ也。又戒書ノ血脉ハ者、等覚地ノ嫡傳故ニ」

菩薩戒ナリ也。佛頂上ニ為二ス一圓相一ヲ。兼中至之」

一位而格中ナリ也。嗣法血脉ハ者、妙覚地嫡傳ノ」

故書二ヲ圓外一ニ、所謂格外ノ之義ナリ也。佛頂上圖ケル」

圓相也。然ルニ無二シ定相、無始無終ニシテ神力飛行」

自在三昧之義ナリ也云云。師云、即今即通ノ時」

如何。云、身々相合、心々相通。〽師云、徹證」

時如何。云、〽唯佛與佛、乃能及盡。〽師云、究」

尽時如何。云、〽師便三拜。〽師云、汝チ能ク護持セヨ。」

是峩山・無底即通ノ機縁ナリ也。代々如レ

是口」

授シ、如レ

是傳問シ来ル。」

〽師云、證契ノ時如何ン。云、〽佛性平等。〽師云、」

即通ノ時如何ン。云、〽賢愚一致。〽師云、猶ヲ子細セヨ。

云」、

〽勃陀勃地。〽師云、如是々々、汝能護持セヨ〈資即三拜〉。」

△七佛寶藏經曰、爾ノ時ニ毘婆尸佛在二テ勃」

陀山一ニ、令諸ノ衆生ヲシテ盡二シテ身心識一ヲ得中佛ノ寶號一ヲ。」

會中ニ得二ル無上正覚一ヲ者ノ、尸棄一人ナリ。爾時」

毘婆尸如来喚二玉フト尸棄勃陀勃地一ト云云。」

勃陀勃地、此ニハ翻覚知也。地ハ漢語也。言ハ到正覚」

地之謂也。」

旹元禄十丁丑年二月廿四日」

現正法海盤判」

正法寺02

―0006

「三物合封之印」

（６）三物合封之印

　　

三物合封之印　

或曰合血之印

　　　

三物合封之印　或曰合血之印


七二

第二　　　　　

第一筆始　　　　

師資相拜形

如何是合封。云、直下更無第二人。

正法寺02

―0007

「考田之大事」

（７）考田之大事

　　

考田之大事」

釋迦牟尼佛久遠刧ニ為二シ雪山童子一

時キ、奉レ

」

逢二

然燈佛ノ出世一ニ、遂ニ以二テ五百金錢一ヲ買二五莖」

蓮華一ヲ、用テ奉二

獻ス之一ヲ。彼ノ佛即授二

之ニ記莂一ヲ、来」

世當三

應成二

釋迦牟尼佛一ト云云。」

因二

此ノ往縁一ニ、嗣法後、報恩錢七五三ナル者、喩二

五莖ノ」

蓮華一ニ。是ヲ為二

吾門考田之證一ト也。七五三之」

數、五七九之數而、含二

甚深妙義一ヲ、故ニ此ノ報」

恩ノ儀式、須二

盡未来際莫一

令レ

断二

絶。至囑至」

囑。　

〽私云、蓮華ハ有二

八葉五莖合シテ五八四十也。是則

田」

也。經曰、梵志蓮華田トハ、此ノ會大衆也云云。亦釈迦牟」

尼佛有下

以二

袈裟一

誓二

出世一

因縁上

。故三衣因縁ニ」

有二

三卍之傳一

。」

大宋寶慶元丁亥九月十八日天童景徳」

堂頭如淨和尚授道元畢。爾来嫡々傳来。」

前正法大訥叟良辯」

正法寺02

―0008

「震旦初祖達磨大師心印形」

（８）震旦初祖達磨大師心印形

　　　

震旦初祖達磨大師心印形」


七三

道元和尚入頭話頭」

正法寺02

―0009

「三脱落切紙」

（９）三脱落切紙（仮題）

懐弉云、永平門下有三脱落之話、蓋是」

開山和尚在天童時悟處也。」

如何カ是レ身心脱落ノ處」

如何是レ脱落身心ノ處」

如何是レ脱落々ノ々處」

〽此ノ三句ハ、只是一句也。一句モ亦無ト可レ

参、尚不レ

獲レ

」

已、註破了ン也。所謂脱ハ偏、曰凡身。〽落ハ正、黒、」

聖心。半白半黒。謂二

之ヲ

轉凡入聖一

ノ

一句一ト、無二ンバ

如レ

是

分一

、不レ

可二

」

大休大歇シ去上ル也。次ノ脱ハ聖身、外邊ノ白、落ハ本心、中間」

黒、外邊白、中間黒。謂二

之ヲ轉功就位一句一ト。無ンハ」

恁麼ノ會取一

、不レ

可二

深透深徹シ去一ル。上下内外」

全分黒底ノ處一

、脱落烏鴉、豈二

漆桶一

乎。離レ

」

四句絶二

百非一ヲ、直下無第二人。」

正法寺02―0010

「曹洞宗月兩箇話」

（10）曹洞宗月兩箇話


七四

　　

曹洞宗月兩箇話」

　　　

○上弦　　　　

江國春風吹不吹

淨和尚月ノ圓欠口授ニ云、晦朔和二

合日月一ヲ、亦從レ

二日」

月隨二

日ミギ

ノ右一リニ行テ去二ク日ノ光氣一ヲ、到レ

八日ニ月張二ル半明一ヲ故」

謂二

上弦一ト、其時月ノ左ハ黒、日ノ右ハ白、隨レ

日故如レ

是八日」

謂二

上弦一ト。到二テ二十五日一ニ月ハ離レレテ日圓滿白月ナリ也。日ハ圓」

黒ナリ也。全黒ノ處ヲ指レ日ト。到二

十六日一、月與レ日亦通レ

氣。」

從二

十七一

日隨二テ月ノ左一ニ行テ去二リ月ノ光氣一

、到二

二十三日一ニ、

月」

失二ス半明一ヲ、故曰二

下弦一ト。此時月ノ左ハ白、月ノ右ハ黒、猶二シ

八」

日ノ月一ノ。到二

晦朔一ニ、日與レ

月會合シテ一圓無二

差別一

。此ヲ」

曰二

極暗ノ處一ト也。曰二

無圓欠ノ處一ト也。月ノ圓欠日ノ晦朔」

分明。不二ンハ知得一

、非曹洞宗ノ善知識、曹洞宗派下偏」

正五位、君臣明暗ハ、潜行密用ノ大事也。到二

此ノ」

地一ニ脱二

得生死一

也。無始終ノ正ヲ為二

君臣一ト、有像ノ偏ヲ」

為二

臣位一ト。君顧レ

臣處正中偏、臣奉レ

君處偏中」

正、君臣慶會ノ處正中来也。君臣同位ノ處兼」

中至、君臣道合ノ一般不二ノ處兼中到也。又四節」

十二月、晝夜十二時、四土用、六八專、四象八卦、」

配分シテ可レ

窮ム。又陰陽、偏正、功位、寒暑、有無、」

向去却來、久遠今時、生死、隠顕、善悪、明」

江國春風吹不起十五夜白

無

上弦下弦

玉簾深垂全躰未露

鷓鴣啼在深花裏

聖

有中貴無

来中正

會月日

臣奉君

月半見

正中偏去レ住赴レ功

月漸消

徧中正離レ功歸レ位

無極兼中判


七五

暗、乾坤、父母、黒白、過去現在、自己目前、」

最初末後、出沒、始終、謂二フ之ヲ兩箇一ト、不レ

能レハ成二ルヿ」

洞上種草一

云云。」

正法寺02―0011「月泉派下三獅子話」

（11）月泉派下三獅子話

　　

○月泉派下三獅子話」

〽大陽玄和尚、因ニ僧問、如何是レ獅子頻呻。」

師云、終ニ無二

回顧意一

、爭肯テ落二ン平常一ニ。〽問、」

如何是レ

獅子返趯。〽師云、周旋往返全ク歸レ

父ニ。」

繁興大用體無レ

虧ルコト。〽問、如何是獅子踞」

地。師云、遙ニ絶二シテ去来ノ機一

、古今無レシ変異〈五灯會元十四

ニ出タリ〉。」

私云、嚬呻ハ、唇皮ト唇皮相合シテ居タヿナリ。」

程ニ、終ニ回顧ノ意無シ。平ニシテ語ラヌソ。爭」

肯ヿ平ラカト云道理モ知ラヌゾ。又返趯ト」

問ホトニ、周リ回リ旋リ、往ツ返ツシテ、師ノ座ニ」

ナヲツタゾ。爰ガ、吾ガ家ノ異苗繁茂タゾ。」

體欠ルヿナシ。盡ク隙明テ滿足シタゾ。又」

踞地ト問程ニ、トロリ〳〵ト涎流シテ、睡テ居」

タゾ。往来古今、変異ノ沙汰ガ無ゾ。言ハ、」

師資ノ差別ガ無ゾ。燃燈佛ト一躰マテ也。又」

去来

ー異云タハ、多年ノ辛苦艱難修行ヲ」

モ、爰テ亡却シタ也。如来ヨリ々嫡々」

相承而変異無キ也ト、舌血ヲ出シテ、互ニ飲」

却シテ、是カ大事ヲリヤルゾ。」

從開山無底二代月泉相承而面授来。如」

今我令汝海辯参透得者也。」

從上来ニ〽嗣法問答・五種聖財・三」

宝印悉傳附。又室内秘参露」

柱入頭・三脱落・月兩箇・三獅子」

話、一々許二

参窮一スルコトヲ、希異苗繁」

茂シテ、蔭二

凉ンコトヲ後昆一ヲ矣。」

旹元禄十年丁丑二月吉日」

大梅拈華山圓通正法二十二代」

海盤叟良北判」

前正法二十四代辯大訥」

【参考資料（三）正法寺所蔵『天童如浄和尚智識験弁点験大明目』】

初點験　

十二」

御内印法験　

三十」

無始無終　

三十」


七六

向上巻　

二十一」

（「第一」脱カ）

天童如浄和尚智識験弁点験大明目」

師点験云、開山徹底ノ話ヲ知賀。答云、諾。中々、」

露柱ノ話走。師問、一本ノ露柱ヲ弐本ニ云話。」

答云、中々、前露柱者、身心脱落。師印可。」

師問云、後露柱ヲ道会。答云、脱落ノ身心テ走。」

師器之。」

第二」

大悟ヲ道會。答云、話當テ走。師問、本参者、」

何仁呈走。答云、伝前百二十則走。〈小書目録別帋、在御

判〉。」

第三」

師問、百二十則ノ中両五則ヲ別則ニ云會。」

答云、中々、十則正法眼ノ㕝走。師印可之。」

添切帋、別紙在之。浄和尚請處者、別則ニ云會、在之。」

第四」

小悟ヲ道會。答云、句参ノ㕝テ走。」

浄和尚請處者、去羅婆一一ニ挙答来在之。」

第五」

師問、道元天童山而参得ノ数會㕝賀在郎

賀、知テ賀。答、中々、三智識之折角ノ㕝テ走。」

同、猶道會、三摩ノ折角テ走。猶道會。答云、」

羅漢ノ㕝走〈淨古佛ノ点験者、三七日ノ歸傳授之中、別帋切紙在

之。御判、但ニ明歴々也。〉」

是迄而者、問中仁生長者覚者茂知㕝走、呈元和尚従此来」

上足仁流傳来ル。智識三昧与云㕝在之。我一一而点験、你一

一」

挙唱仕。道元門下之猫足紹続、善識能達智識成去。我レ」

向你而展坐具。」

第六」

道元和尚大疑起本与謂㕝ヲ知天賀。答云、中々。」

師云、挙唱来。答云、法身法性ノ迷ノ㕝走。師点験云、」

直ニ道元徹底句挙来看、向二テ我你一ニ展二ン坐具一ヲ。答云、本」

智者愚、愚元智也。師印ニ印レ

賀之。」

第七」

浄和尚向二テ道元一ニ御違（遺カ）戒話道會。答云、道元。」

師猶ヲ器之。」

〈永平道元和尚、後年爲児孫之自疑問起而、」

道元二大字註破而爲二ス老婆心一ト。本智者」

大愚成故而元心智也。心智成故ニ元ノ道而入徹。以爰淨和」

尚深明祖師骨髄之器レ

禅ノ、印了玉。問訊還道元与々々。」

道者大道也。大道同大愚、初生之愚元不改、大智通達」

故ニ開山再来度不二

出世一玉。猶旧名以御一世成就玉也。」

第八」


七七

先達之當的挙来。答、道元和尚云、三世諸佛」

不知有、狸（

狸脱カ）

白狐智有。」

第九」

儀（義カ）介

和尚、知者不知、愚者親。」

第十」

蛍山和尚云、無明即明了、々々道無明裏入。」

第十一」

峩山和尚云、尽来遠元坐近。」

第十二」

明峰和尚云、尽不尽一合裏有千差。」

　　　

御内印法験段」

第一」

淨和尚問云、道元者我門長老也無否。道元答云、即」

明了。淨和尚、長老成羅波、先這極何㕝、長老与道」

麼。道元云、血脈極走。淨和尚問云、名這甚麼ヲ喚」

血脈一ト。道元答云、莫和尚道、本来無門、道与道畢、」

低頭叉手、合眼末向、血脈㕝走。淨和尚猶拶云、深明」

難得道、恁麼中無折角、速道々々。道元答云、」

道元般々業巧

明名

者、皆是一圓空、道畢、低頭叉手、」

合眼末向血テ走。仰面放手、開眼末向脉テ走。」

般々及妙皆之開放也。淨和尚印可玉。」

第二」

恁麼大地知麼。道元答云、地絹㕝是也麼。」

第三」

何而白圈地而在。道元答云、空大地而走。」

第三」

師拶云、白圏地成者誰。道元答云、誰々々。」

第四」

寸人一口知賀。道元答云、中々。淨和尚云、挙来你」

向展坐具。道答云、七尺二寸走。淨拶云、是甚」

表要。道元答云、七字圓成者、渠全躰也。淨拶云」、

渠全躰是甚物麼。道答、血成流目前機、脉」

成起空劫心走。師印之。」

第五」

淨問、恁麼大地甚白圏地成。答云、白智元来」

誰ノ全躰走。師印之。」

第六」

淨問云、上下ノ大㕝知麼。道元答云、頂上ノ一圓相ノ」

㕝走。拶云、恁麼大㕝踏透麼。元答云、突句踏走。」

師者是賊過後張弓。」

第七」

三杲上ノ虚席ヲ知天賀。道元答云、中々、三尺ノ地綿」

㕝走。淨拶、是向要心ニ賀虚席成。元答云、誰ノ」

本郷而走。」

第八」


七八

淨問云、左右祖師甚麼要心与麼。道元答云、久遠」

今時無差別、个々一圓走。」

第九去羅者、其而佛界ヲ道會。道元答云、長老二字」

走。淨印之。」

第十」

長老十二時ノ本尊ヲ道會。道元答云、羅漢三昧走。」

第十一

淨云、自身成佛知テ賀。道元答云、智識走。」

第十二」

淨云、邪正一如ノ大道知麼。道元答云、中々、左右ノ血筋

走。」

第十三」

淨云、黄金世界知麼。道元、中々、道塲莊厳ノ時、七條

之袈裟ヲ布走。」

第十四」

淨云、天ノ圓器ヲ踏麼。道元答云、中々、一枚ホグ走。」

第十五」

淨云、一佛三記知テ賀。道元答云、中々、迦文勒ノ三記走。」

第十六」

淨云、兩頭安合ヲ知麼。道元答云、中々、如淨永平合血ノ

切紙走。」

第十七」

七度九拜、三度ノ三拜ヲ合テ賀。道元答云、七條ノ袈」

裟ノ切紙ト、九條ノ袈ノ裟切帋ト、九品淨土ノ切帋走。」

第十八」

三身如来説十如幻ノ道塲知賀。道元答云、十」

三佛ノ切帋走。　

淨問、前佛ノ本尊指示来。」

道元答云、不動尊走。淨拶云、甚麼恁麼道。」

道元答云、業堅不動、佛心虚地而安故仁前佛」

与安走。淨亦問、後佛示来。道元答云、叉手」

胸躰而本師釈迦如来走。淨拶云、甚麼恁」

麼道。道元答云、如幻三昧走。」

第十九」

淨問云、三世一道圖知麼。道元答云、三悟」

道一位ノ切帋走。淨拶云、徹処作麼生。道元答云、我」

旨打米未爰賀、一道三世ヲ穿ツ大道走。」

第廿」

淨問、涅槃ノ根本知麼。答云、達磨知死期法」

要ノ切帋走。」

第廿一」

淨問、栄西記文録知麼。道元答云、栄西僧正」

之法語之偈㕝走。」

第廿二」

達磨参知賀、　

道元、中々、歌之㕝走。」

第廿三」

世尊誕生七歩之参知麼。道元答云、二時三形」


七九

順堂焼香義式㕝走。」

第廿四」

一点雨露佛形洗恁麼㕝知麼。道元答云、授」

形濃灑水ノ法要㕝走。」

第廿五」

二佛大㕝知麼。答云、唯佛与佛ノ切帋走。」

淨拶云、徹處作麼生。道元答云、空与真ノニツ走。」

亦尽与不尽一合中有千差。」

第廿六」

四字参知麼。道元答云、摩頂之圖走。」

第廿七」

禅之活筆与道㕝知麼。道元答云、三報書」

切帋㕝走。淨拶云、為甚恁麼道。道元答云、三隆筆」

頭上ニ極走。」

第廿八」

淨好个佛殿指示来。道元答云、山僧而走。淨拶云、」

入佛仕来看。道元答云、我社唯佛走。」

第廿九」

淨云、佛相見ヲ道會。道元答云、最初發明」

之大㕝走。淨拶云、徹處作麼生。道元答云、个黒甚麼。」

亦無言初通二

恁麼大㕝一ニ。」

第丗」

淨問、自己七佛空殿知麼。道元答云、馬祖七堂ノ圖之」

㕝走。淨和尚印可之。」

　　　

○無始無終段初」

第一」

淨和尚問云、嗣書傳授仕而賀。道元答云、中々。」

淨拶云、喚甚麼為二

嗣書与一ト。道元答云、虚無自然喚爲

調書与一ト走。淨拶云、虚無自然道作麼生。道元答云、我

師元来同無名。」

第二」

淨云、嗣書二字道會。元答云、師資一般即同如来走。」

淨拶云、這甚嗣這何書麼。道元答云、吾元大我仁書嗣」

有名無名書嗣走。　

第三、長短二道知麼。道云、」

七尺五寸走。淨拶云、這甚法要。道元答云、七尺者」

七世安樂、七字圓成之躰。五寸者、五佛成就、五」

行即明了走。　

第四、頂上三人二口之空錦知」

麼。道元答云、果（

過カ）現未三際而如幻法要白心頭躰」

走。　

第五、器文應身知麼。道元答云、七佛ノ本位之」

㕝走。淨印賀玉。　

第六、傳燈之大宗派知麼。道元答」

云、嗣書走。師拶云、恁麼有大㕝速道會々々。道元答云、」

勃陀勃地書嗣走。淨拶云、你速挙来、向我㕝展坐」

具一ヲ。道元答云、自救勃陀与道、他救勃地与道走。」

淨渡眼而、我宗到你太興廣而本坐下坐展坐具」

九拜玉。　

第七、維摩之丈室道會。道元答云、器文中之一

走」


八〇

乎。淨拶云、徹処作麼生。道答云、空刧已前、更以前走。

淨」

拶云、更以前作麼生。道元答云、十到不通毫一ヲ。淨云、空

刧」

作麼生。道元、作模自一圓仕玉。淨拶云、空刧㕝作麼生。」

道元答云、無始無終㕝走。　

第八、七佛之御大㕝道」

會。道元答云、無始無終一心㕝走。　

第九、其而宗門」

入院道會。道元答云、空刧已前而到而更以前粧厳」

刧之佛心而相見乎。吾宗之入院而走。　

第十、去羅婆」

開堂道會。道元答云、空刧已前地而到無始無終之一」

心而契當乎。吾宗開堂之修行走。淨拶云、開堂一句作」

麼生。元答云、元刧佛之出世時、一機暗裏不居。淨拶云、」

珎重不尽。　

第十一、山門主眼道會。道元答云、善知識走。」

第十二、善智識十二時之本尊道會、道元答云、阿羅」

漢走。第十三、善智識十二時之念提㕝作麼生。道」

元答云、大涅槃當頭受用走。第（

十脱カ）四、

善智識入院開堂、」

十二時中之焼香㕝作麼生。元云、山門頭ーー一香。淨印

之、魔界来麼。」

第十五、你十二時中床坐而、大小有折角、大麼是小麼便

是。」

道元答云、器文圖大而走。師拶云、器文圖実而大則寸」

人一口道會。道元答云、壹尺走。淨可印、爲日本開闢」

之上足玉云云。祖子派者九寸者参徹知麼。　

第十六、大眼形顔知麼。」

道元答云、山門主眼之切紙走。淨印之玉。　

第十七、海女

成」

佛之話知麼。道元答云、龍女成佛之切紙㕝走。　

第十八、」

不淨洗却知麼。道元答云、日杲罰狀之切紙走。　

第十九、」

明暗大㕝知麼。道元答云、鉢圓内外切紙走。　

第廿、」

十二時安楽大㕝知麼。道元答云、嗣書看經切紙走。」

第廿一、自他成佛四字知麼。道元答云、勃陀勃地切」

紙走。　

第二十二、一圓大㕝知麼。道元答云、嗣書合頭ノ

書」

走。第二十三、主之一機知麼。道元答云、頂門眼切紙走。」

第二十四、善智識之引導知麼。道元答云、非人引導」

切紙走。第二十五、釈尊印鎖知麼。道元答云、佛印印可切

紙走。」

第廿六、師資紹續不快心知麼。道元答云、鉄漢辜負切紙

走。」

第二十七、道塲恩書知麼。道元答云、孝田之切紙走。」

第廿八、雲水領数打給知麼。道元答云、僧

圖走。」

第廿九、十二時清淨参知麼。道元答云、加行切紙走。」

第三十、命脉書知麼。道元答云、血脉之参㕝走。」

第三十一、霊山回向二字知麼。道元答云、上来切紙走。」

　　

○向上巻段始」

第一、向上巻知麼。道元答云、御大㕝之段走。淨可印。」


八一

第二、五智之如来知麼。道元答云、御大㕝中、五形圓相㕝

走。淨可印。」

第三、混沌未分之前、白田地知麼。道元答云、向上之白」

錦地走。淨拶云、為甚麼白田地麼。道元答云、如幻元来」

如幻坐。淨可印之。」

第四、五形向上一中者、大是小是。道元答云、大滿」

走。淨可印為上足。〈亦小与道者、祖師可印、小者大字書

也。書搭在之。〉」

第五、大卍字這何要心麼。道元答云、右点者、混沌」

未分之根本走。」

第六、左点者、大極一点混沌ノ全躰走。淨云、猶」

速道會々々。道元答云、大極大易大物太始大」

索之一中走。淨可印。」

第七、過去七佛之血脉知麼。道元答云、三光之」

圖之㕝走。淨拶云、速道會。道元答云、前黒」

一色者、過去未分之田地走。中赤色者、現在安樂」

之田地走。外黒一色者未来走。猶拶云、為甚麽」

与血脉道麼。道元答云、一処能通達、三世通達、一心受

明、三」

身自在要心。」

第八、一心自在三身要心麼。道元答云、三段下之三」

星月弓守走。淨拶云、守心作麼生。道元答云、三」

界唯心、万法唯識、虚空一念、物急起天然自然」

下慮、従此中心一時起心走。」

第九、過去七佛血脉而合道會。道元答云、現在心起者」

未来而通達走。淨可印。　

第十、世尊明星一見」

悟道道會。道元答云、三星月弓守心而悟道走。」

淨拶云、血脉合道。道元答云、一見悟道、世尊現世、三」

世通達時、過去之本佛而傳授走。　

第十一、勃陀勃」

地本郷道會。道元答云、一圓中之空之字走。淨」

可印。猶拶云、本郷㕝速會来。道元答云、有為時」

無為、悟道明者、自己勃陀者、他心勃地悟道走。」

猶拶云、悟道㕝作麼生。道元答云、佛衆生同時而空」

身圓満走。　

第十二、空亦作麼生。道元答云、九品」

淨土世界走。淨猶拶云、一句道會。道元答云、本来面」

目者本地風光、本国者有本家、虚空者寂光」

淨土、唯心世界、久遠釈迦、自身弥陀走。拶云、即今徹処」

作麼生可道會。道元答云、有為者無為之空心、三世」

受要走。　

第十三、五智一智㕝作麼生。道元答云、百」

千㕝業者、一血貫通。淨可印。　

第十四、有為無」

為一時成佛之御大㕝知麼。道元答云、本田之圖之」

㕝走。淨拶云、猶速道。道元答云、有為悟九生成佛、」

無為悟九生心成佛走。　

第十五、大善智識道。道元」

答云、老者不老前。淨可印。　

第十六、大魔道會。」

道元答云、知不知無智前、禅道捨却還小児。淨可印。」

第十七、大阿羅漢道。道元答云、自在滅却大愚心。」


八二

第十八、再大涅槃道。道元答云、生死當脱時々不知生」

死。　

第十九、人人分上、一血脉道。道元答云、旨打本」

心走。　

第廿、袋道。道元答云、入道走。　

第廿一、凡夫

諷」

旨大善智識麼。道元答云、正眼大愚眼、具凡心社未分」

本来血脉走。　

右三佛大㕝、不残一毫付属你了、能護」

持、莫令断絶、云云。淨逼拶云、奥蔵一句道會。道元答

云、」

何有道㕝麼。猶拶、三佛満足之大善智識与成得、重上」

掃地一句道會。我向你展坐具、便九拜。道元答云、三」

佛本師擲酬云、無用要心自契了。淨和尚展坐具」

九拜畢。」

右曹洞宗末下上足不上足之折角者、个」

書巻参當、謹念検点得出可嫌者、話」

頭点検并切紙点検者、総目録可従者、」

這个巻書、日本上足儀（

義カ）尹

渡。雖然、永平」

二世和尚江末後付属玉畢者、如浄和尚筆書」

者法蔵道元□自筆、今日本之上足渡」

者也。末派流布者、三佛罪立地當迷」

者々々。」

亦異云、」

天童山景德寺如浄老比丘到七春暮天、」

吾宗旨之極上、今附与日本道元小僧」

畢。于時歸本朝、你及末後嗣法之上」

足、自一人外不乱續、濁法乱印者、吾」

這宗旨撥戸盡滅与道畢。而燒香」

三拜而献麗水道元首座渡玉了。」

永平開山御歸朝此来、義尹長老」

示附玉、而二世弉首座渡玉示指蛍山、」

々々峩山渡玉無底長老附畢之時、誓」

曰此巻三老者、　

永平室不殘渡玉也。」

増而洞谷総持無兩寺、是正法寺之」

曰本、曹洞嚢中納收而授蜜之者也。」

于時康安辛丑元年」

　　　　

十月十日総持比丘紹石在判」

大梅拈華山圓通正法禅寺秘密書」

【参考資料（四）正法寺所蔵『月泉派秘参』（その一）】

［箱表書］

「月泉派秘参／〈大梅拈華山／無畏圓通院〉正法寺什寶」

［帙題］

「月泉派秘參　

二巻」

「題箋」

「月泉派秘參」


八三

拈華山正法寺月泉一派之本参十一則之話頭謹記置也。」

正法寺04-0001

（１）

露柱裂破、昔人相見。師云、露柱ノ定ヲ。資代云、良久

ス。」心ハ、此ノ入道ガ露柱ダデハ無イ。此時唯心ガ、上ミ

宇頂天ーー迄デ」拄テ居タ時、一本ノ露柱ヨ。師云、恁麼

時如何。資云、不挙。師云、」露柱裂破シ羊ヲ。資云、一

喝放身。師、恁麼時如何。代、我モ亦」不知。心、裂破ノ

徑チ、入道ガ面ヲ出シテコソ、知バ回ルソ。師云、」昔人

ニ相見ヲ。代、幻虚空身、幻佛性相。心ハ、幻ト云ニ、躰

ハ無ゾ。」（１オ）虚空ガ身、虚空ガ佛性相タゾ。虚空ト云

テ、大虚ノ事デハ無ソ。本」空・心空ノヿダ。爰ヲバ、一

喝ノ徑チデ見タゾ。昔人ト云テ、微塵呈モ、躰ヲ」立シタ

ヿデハ無ゾ。師云、佛性相ヲ。代、虚而霊、空而妙。師

云、虚与霊」折角ヲ。代、虚ハ尽、霊ハ不尽デ走。師云、

不尽一処ヲ。代、天外出頭」見、誰是我般人。心ハ、我般

人ト云ハ、虚空人ノヿダト云テ、大虚ノーーデハ」無イ。

是ハ、智通禅師臨終ノ偈ダホドニ、カツクト踏放サカイ

ニ、天外ニ」出頭シタソ。天タゾ、地タゾト云ハ、生死迷

悟ヨ。爰ニ、有我般人タゾ。師云、」（１ウ）我般人ヲ。

代、心ノ在処デ走。師云、心ノ在処ヲ。資座シテ一面相ヲ」

作シテ、亦良久而對。心ハ、萬般ノ巧妙ハ、一圓空ニ歸シテ、

ト云心也。爰ヲ、」心ノ在処ト云。云ワシ事ナレドモ、天

竺ノ一枚紙ト云ガアル。以后可有合点。」一法不依、万法

ニ不通、ト云モ、爰ダ。又、然燈已前血脉ト云ヿガアル。

傳」受ノ時云。師云、夫ハ何トテ。代、出息ーー隠界、

則チ拜去。」

正法寺04-0002

（２）

萬機休罷ヲ。代、一喝放身。師云、恁麼時如何。代、万機

頓削縁思」断。心ハ、一喝下ハ、一塵不立、点凡入聖ノ端

的、万機ヲクツト削テ」（２オ）除タゾ。此直下ニ、縁思

ハアツテコソ。縁ト云ハ、タヨルヿ、思ト云ハ、思慮ノヿ

ダ。」其ハミナ万幾云タゾ。ト云ハ、自己ノ妄想ヨ。師

云、先聖不携ヲ。資云、」自己ノ光明ガ、驀一色ニ皈テ、

先聖ノ手ヲ入羊ズスキガ走ヌ。心ハ、休罷ノ」処デ、自己

ノ光明ガ、トツカトシタゾ。タンダ自己一反ダ。爰デ、先

聖ト云ワ、」唱ヘ得法、迷悟生死ヨ。爰ニ、其ノサタハア

ツテコソ。時キ、手ノ入ヌヿダ。」師云、不携ノ携ヲ。

代、不持拾不覺忘。師云、其ハ何トテ。」代、大口忘然ス。

心ハ、携ハ、タツサヘルダ。ト云ハ、物ヲ持タヿヨ。アル

ガ、忘然ノ」（２ウ）時、捨却忘却ダ。サテコソ、休罷シ

タデハ無カ。ト云テ、今捨タ羊ナ」事デハ無。タンダ一枚

ダ。師云、畢竟ヲ。代、只莫憎愛、洞然明白。」

則チ禮拝去。」

正法寺04-0003


八四

（３）

自己三関。休處・通處・不疑地。師云、休処ヲ。代、一喝

放身ス。」師云、拶、恁麼時如何。代、玉輪機轉笑呵々。

心ハ、眼玉ノクルリト回ル

」端的、一機回轉シテ、カ

ラ々々ト笑タゾ。是ヲ、快活ノ笑イト云タゾ。笑ト」云ヿ

モ、三処ニ可有。是ハ、自己ノ初関也。師云、通処ヲ。

代、良久ス。」（３オ）師云、恁麼時如何。代、絶言絶慮處

莫不通。心ハ、休処ノ驀」下ガ、軈而通処タゾ。良久ノ

時、阿鼻ーー迄デ通タゾ。通ハ、徹也ト」當徹

居タ。此

時言語思慮ヲバ絶シタ。時キ、通デ無クテハ。」師云、不

疑地ヲ。代、抽身ス。師云、其ハ何トテ。代、蘋沫風休」

夜正央。心ハ、不疑地ト云ハ、何トモ挙セバ、解會・疑

情ニナル。抽身ハ、當」人ノ眼ヨ。呈ニ、句モ、蘋ト云

ハ、自己ノ妄想、此岸ヨ。風休タ時キ、夜正央ダ、半。」

正當傾ヌ境ダ。近ク云ヘバ、出息入息ヨ。師云、其ハ、何

トテ。云、我亦」（３ウ）不知。心ハ、爰デ、我ト云ハ、

解會・識情ヨ。不知々々、我ガアツテコソ。師云、」不知

一ヲ。代、大口忘然。心ハ、爰ガ不疑ノ地、不知ノ一処

ヨ。此時キ、自己ヲ能ク点ジタ通処迄デヽハ、余氣ガ残ル

ゾ。禮拝去。」

正法寺04-0004

（４）

香厳樹上。師云、作麼生カ對セン〳〵ト接処下ヲ。代、踢

倒放」身。心ハ、此ノ話ハ、當行ガ肝要ダ。攀タゾ、踏ダ

ゾ。夫レコソ、喪身失」命ヨト、クツト押詰メテ於クベ

シ。挙処ワ、表帯ナレバ、如是ダ。師云、」恁麼時如何。

代、玉輪機轉笑呵々。心ハ、已前ト同ジダ。爰ニ、渕」

（４オ）底サシヤウトノ方便ダ。師云、ソレハ何トテ。

代、曽不知。心ハ、曽ト云ワ、」覚ヱノナイヿ

。処ヲ、

渕底ト唱ヱタ。師云、虎頭上坐ノ幾ヲ。代、」生下ノ端的

ヲ云ウトシタラバ、錯タヿデ走。心ハ、未上樹ト云ワ、生

下ノ徑チダ。」上坐モ、娘生ノ面目デ、如是酬

。サテ

亦、生下ト云テ、生レタ羊ナヿデ」ハ無イ。師云、厳呵々

大笑ヲ。代、躬身下拜笑眉開。心ハ、上坐ニ」酬レテ、

呵々大笑ワ、落合趣向ノ笑イダ。躬身ハ、曲身ト云テ、

卒」度身ヲ曲ゲタヿダ。笑ーー開ト云ワ、如何ニモア郎無

クヱンダ。爰ハ、生下産」（４ウ）出ノ樣子ダ。ト云テ、

何ト無イヿデハ無イ。當頭渕底ヨ。云ワヌヿ」ナレドモ、

ヱナ笑イト云ヿダ。畢竟未分ト心得テ、上ヲバアラク可レ

行

。」

正法寺04-0005

（５）

劔刃上話ヲ。代、空ヲ斫ル勢イヲナス。心ハ、斫ル勢イト

云テ、手ノヿ」デワ無イ、不可得ノ心ノ發処ヲ表ス。緑ニ

モ渡リ相イ、紅イニモ渡リ合」タ。蘂ニ透テモ跡ハ無イ。對

境觸縁用、吹毛如ク、ト云タ。師云、」恁麼時如何。代、


八五

水銀無レ瑕、阿槐無レ

真。心ハ、水銀ヲバ無相ノ」虚位空

ニ、阿槐ハ劔サキガ百モ二百モ有ル者ノダ。在ルガ、ドレ

モ本ノ」（５オ）心ダト云ヿハ無イ。本根ハ一ツヨ。如其

頭々物々觸レタ劒氣ダ。」本ハ一本ヨ。觸レ羊ニ依テ、手

ヲ切リ舌ヲ截ルゾ。師云、劔ノ伸」

ヲ。代、大口忘然ト

久シ。心ハ、此ノトキ、上有頂水際迄デ、」只一本ダ。

爰ヲ、遍地刀鎗トモ云ウ。爰ヲ、一本劔トモ滿相集」トモ

云、遲度モ解會ハ縮ヨ。獨則ナラバ、能々可當行。」

正法寺04-0006

（６）

彼此ノ話ヲ。代、一喝放身。師云、彼ヲ云ヘ。代、良久。

師云、」彼此一般ヲ云ヘ。代、彼此混然、無分般処。心

ハ、此ト云ワ、自己ノ離派ノ」（５ウ）ヿヨ。彼ト云ワ、向

上ヨ。諷テ又、彼此ニ不落一処ヲ心得羊カ為メ

。」亦彼

此一般ノ処ニ、身空境寂躰如々、ト唱テモゴザ在ル、同心

。」正法寺04-0007

（７）

牛窓櫺之話。師云、牛ノ窓櫺ノ過キ

ヲ。代、師ノ膝ヲケ

ナゾ」ツテ透ル也。師云、夫ワ何ントテ。代、牛馬ノ去来

デ走。師云、恁麼ノ」時如何。代、瞎驢不受霊山幾。心

ハ、心牛ニ陶バ、相ハ無イ。サテ、」襪子足デ踏ダラバ、

罸ガ當郎ズ。牛馬ト云テ、世間不浄ノ牛」馬デワ無イ。牛

ト云ワ、吾宗デワ、盧舎那仏ノヿダ。馬ト云ワ、意」（６

オ）馬ト云テ、世間受用ノ心、三十三身ノ化縁ンダ。窓ト

云ワ、自他有テ、」自他無イ、爰ニ繋留セヌトキ、過キタ

ヿダ。此ノ鼻巴ハ、緑紅イト」露レタガ、其ニ引出サレヌ

道理ガ在ル。甚麼為テカ、々々迄デヨ。」

正法寺04-0008

（８）

孤峯不白。師云、千山ニ覆イ羊ヲ。代、一喝放身ス。心

ハ、此ノ」雪ハ初雪ダ。余色ガ面ヲ出ダサヌ。余色ト云

ワ、識情ヨ。此ニ暖氣」一点モ無イヲ、雪ト云タ。師云、

恁麼ノ時如何。代、我モ亦不レ

知。心ハ、」我ト云ワ、識情

ヨ、暖キヨ。不知〳〵、雪ノ乾坤ヨ。師云、為甚麼不白」

（６ウ）ト云キヲ。代、手ヲ以て虚空ニ挙ス。師云、夫ワ

何ントテ。代、遍」界曽覆藏。心ハ、急度挙ス驀下デ、言

語ニ展ベラレヌ本」位ヲ見セシメダ。不白ト云ワ、爰ニ何

トモ分曉ワ有テコソ。師云、」異中異ヲ。代、初ノ異ハ、

自己一色中ハ、清白圓明ノ知不到、后」ノ異ワ、孤峯デ

走。心ハ、三段三位ノヿ

。師云、諸山色不レ

墮ヲ。」代、

白頭ノ子黒頭ノ父ニ就ク。心ハ、尽不尽ノヿ

。白頭ハ、

此ヘ出デタ」者ナニ依テ、功労デ、白髪シタ。父ハ本来ノ

父、不尽ノ主人ダ。付バ、」（７オ）差ハ無イ。爰ヲ、双對

ト云。師云、父ニ就一徑ヲ。代、不到亦不到。心ハ、」到

ハ外人ヨ。師云、孤峯ノ畢竟ヲ。代、行テ只皈ル。心ハ、


八六

道スジノ絶タ」一処ノ弄ジ羊

。爰ヲ極位向上ト云、亦就

父一徑無二シ標的一

、トモ云タ。」

正法寺04-0009

（９）

忘智寂之三関ヲ。師云、忘ノ休

ヲ。代、放身。師云、恁

麼時」如何。代、我亦不知。師云、智ノ現ジ

ヲ。代、良

久坐ス。師云、畢」竟ヲ、句ヲ。大地洞然ト

如二

大虚

空一

。師云、寂ノ生処ヲ。題、大口忘ー。」師云、句ヲ。莫

憎愛洞然明白。是ハ定リヿダ。呈ニ、子細ニ不及

。」（７

ウ）

正法寺04-0010

（10）

西来五字。師云、須弥ーー為シ

ヲ。代、拶眼色即是

空。心、」色相ヲ本分トミタ。師云、祖ーー五字ノ書シ

ヲ。代、空即是色。」師云、畢竟ヲ。代、良久。此ノトキ

五字ヲ能書シタ。」

正法寺04-0011

（11）

六外ノ一句。師云、六外ヲ、何トデモ對セバ、六ニ纏タヿ

ダ。代、抽身去。」心ハ、六外當人ダ。何ントデモ展ル間

ダワ、総是ーーダ。師云、其コヲモ」許サヌゾ。代、唾ヲ

吐イテ歸ル。師云、恁麼時如何。代、師ヲ丁ト」打テ、毒

海ニ莫二レ墮在一スルヿ。是迄十一則ノ轍不可許、可秘

。」（８オ）

正法寺04-0012

（12）

宏智八句。師云、一段ーー亘定ヲ。代云、拶眼ス。師云、

恁麼時如何。」代、的々無兼帶、古今不覆蔵。師云、照破

有ーー塵一ヲヲ。」代、放身ス。師云、恁麼時如何。代、万機

頓削縁思断。心ハ、爰ハ、」入頭ダ。始メハ、光明ノ定メ

、古今生死ヲ欠ヌ物ノミセ

ダ。在レトモ、」只ハ見ラレ

ヌ有無ヲ脱スル端的デ看タ。情塵ト云ワ、自己ノ忘想」

ダ。脱スレバ、余幾ワ無イ。當頭觸ーー罪ヲ。代、師ノ面

上ニ唾ヲ吐」キ掛ケテ歸ル

。師云、ソレハ何ントテ。

代、見二ヿ自己一ヲ如一ク冤家一ノ。爰ハ、万」（８ウ）機頓削タ処ヲ

バ、非ニ看タヿダ。爰ガ、自己真照渕源ノ保チ」羊ダ。師

云、退歩承當特地新

ヲ。代、驚身退歩ス。師云、」ソレ

バ何ントテ。代、情乾識尽功勲断、不覚全身入二ル帝郷一ニ。

爰ハ、」轉処ノ路頭

。特地新

、帝郷ニ入タ。特地ト云

ワ、総

出世西来」已前ノ地ヲミルヲ云ト在ル。此ヲ本意

トモ云タ。○紫極宮中ニ烏抱ーー」ヲ。代、深睡坐ス。

師云、夫ワ何ントテ。代、宗中的誰趣ムキヲ親シタシマン。」心ハ、

紫ーー中ト云ワ、混頓未分之田地、烏ト云ワ、極位也。印

ト云ワ、本位ニ」（９オ）有ツテモ、本位ニモ不レ

交物也。

是ヲ、主中主ト云、爰ヲ吾宗ノ的ト」シタ。何ントモ親レ

テコソ。師云、銀河ーー推スヲ。代、打睡

倦」足垂。師

云、恁麼ーー何。代、去時雪ーー迷功。心ハ、銀河ーー


八七

底ト云ワ、軈テ」紫極宮中ノヿダ。兎ト云ワ、主ヨ。推輪

ト云ワ、本意ヨリ一轉

出ヲシタ。」是ヲ屋裡ノ轉処ト云

テ、轉処ニマガイヿガ有ル処ダ。サテ亦、銀河」ト云ワ、

一色辺ノヿヨ。迷ト云ワ、渕底ヲ云タ。又タ倦足ト云テ、足

デハナシ、」波底ト云テ、波デワ無シ。是須妙ーー用ヲ。

代、手ヲ以テ空ヲ指ス。師云、」（９ウ）恁麼ーー何。代、

手指空時、点天地回途、石馬出二

紗篭一ヲ。心ハ、天」子ノ

行幸ノ時キ、石ヲ以テ石馬ヲ造テ、人形ヲ乗テ、無何事還

行」アル羊ニ、ト云テ、祈誓ノ為、紗篭之内ニ於テ侍ルト

云。日ノ午未ヘ」移ルサカイニ、チヤツト空ヲサス。其ノ

トキ、玉輦ヲ推ス。其ノヿダト云」ハ、紫極宮中ノ主ノ出

派ト云ヲウガ為メダ。直ニ出タヿデハ無イ。師云、」百億

分身ーー真ヲ。代云、顧二

視左右一ヲ云ク、誰々々。師云、

恁麼ーー何。」代、的々當陽句、明々箭后路。心ハ、

百ーー真ト云ワ、頭々上ニ現ジ、」（10オ）物々上ニ露レ

タ、ト云ワ、一段ノ光明ノ三昧ノシ

ダ。呈ニ、的々ーー

句、明々モセ」ン后ダ。早ヤヲノレヲ向ミルガ、為人ダ。

前八句之終リ、修行ノ上ゲ下シ、」此ノ八句ニ皈ス、可レ

秘

〳〵。」

正法寺04-0013

（13）

後八句。髑髏前有本来靈ヲ云ヘ。代、生ニモツレ死ニモツレ

テ」走。師云、其ハ何ントテ。代、一段ーー亘ル。師云、

毘盧ーー徹手ヲ。代、何ニモ交リ」物ワ走ヌ。師云、夫ハ

何ントテ。代、有無照破ーー脱。師云、玉馬過」関正半夜

ヲ云ヘ。代、借レテ功ヲ明レ

位シテ走。心ハ、玉馬功処ノ主

。師云、」（10ウ）夫ハ何ントテ。代、當頭ーー罪、木鷄喚

月恰三更ヲ云ヘ。借レ

位明レ

功シテ走ウ。云、其ーーテ。

代、退歩承ーー新

。師云、寥」々絶跡轉二

全功一ヲ云ヘ。

代、卒度モ分タレヌ処デ走。師云、恁麼ーー」何。代、

紫ーー卵ヲ。師云、歴々生死借レ

位明

。代、爰ヨリ卒

度」光ヲ徧シテ走ウ。師云、恁麼ノーー何。代、銀河ーー

推、師云、却ーー」垂二

化手一ヲ云ヘ。代、為メニ下テ走。

師云、夫ハ何ントテ。代、是須妙ーー用。」師云、今日船

子隨レテ流ニ下ヲ云ヘ。代、柳ハ緑花紅ト出テ走。師云、夫

ハ」（11オ）何ントテ。代、百憶ーー真。後八句ノ終。此

参話門中秘密

」。

正法寺04-0014

（14）

十則正法眼藏。　

第一拈華話。師云、世尊ノ拈処ヲ。先」

ス是ワ、拈処ガ干要ダ。悪クスレバ、枯色ニナルト云ワ、

四時ノ遷謝ト」看ルワ、枯レタヿダ。拈処ノ眼睛ヲ、刧外

ノ春ト云タゾ。代、兩手ヲ」握テ、一華開テ開五葉。心

ハ、兩手ヲ握タソ。十个指頭、八个ノ」阿ヲ見セシメタヿ

ダ。ト云ワ、本分ヨ。一花ト云ワ、心ヨ。本分ヨリ、五葉

ト」開ケタ。業性三昧ニ云バ、地水火風空ヨ。四方中央・


八八

五智・五佛トモ」（11ウ）云イ、今末代ニ五家ト開ケタ

モ。此ノ一華ダ。師云、迦葉ノ微笑」ヲ。代、兩手ヲ開

テ、元ト無根本。心ハ、無根本ト云テ、何モ無イ」デワ無

イ。拈処ガ無根本ト、領狀ノ笑ダ。ト云ワ、色相ノ上デ、

本」分ヲ看タ。師云、正法ーー藏。代、〈半目ニシテ〉至

テ、アツカトシテ坐ス。師云、夫」ワ何ントテ。代云、科

頭ニ

箕居ス長松下、白眼他見世上ノ人。心ハ、」此ノ正法ヲ本

位トモ云イ、末代ニワ正位トモ云タゾ。此ノ本位ニ叶ガ、我カ

眼」タゾ。眼ガ蔵ダ。一切ヲ爰ヨリ受用シタソ。挙処ニ心

ヲ付テミベシ。」（12オ）句モ科ーー人ト云ワ、癩士ノ句

面ダ。ト云ワ、アノ肌ニ取捨憎愛ワ有テ」コソ。白ーー

人、眼ニ筋ワ出テヽコソ、正法眼ヨ。ト云テ、アレガ夫レ

ダテワ」無イ。本分正法ヲ比

ミタ。亦女子ノ子ヲ産ム句

面ニモ云ウ。長松ト」云ワ、取リ付テ居ル縄ノヿダト云。

箕居スト云ワ、母ハ箕ノナリテ居ル。」白ーー人ニミラ

ル。只生タ赤子ノ眼ノヿダ。サテ、正法眼デハ無イカ。

師」云、涅槃妙心ヲ。代、トツクト坐

、牙歯ヲ三度鳴

ス。心ハ、トツクト」坐

タワ、涅槃ダ。三度鳴イタワ、

沈マヌ一機妙心ヨ。サテ亦、涅槃ト」（12ウ）云ハ、不生

不滅、々々々々ニ落ヌガ、妙心ダ。坐ト云イ、禅ト云モ、

此ノヿダ。」師云、實相無相ヲ。代、我ガ指ヲ以テ、口ヲ

サシテ、亦空ヲサス」

。心ハ、有為ノ法ヲ借ツテ、紅緑

リト出ハ、實相

。ソコデ、無形無」相ノ主ヲサシ、無相

ト云

。呈ニ、我ガ口ヲサシタワ、實相ヂヤ、空ヲ」サシ

タワ、無相ダ。空ト云ワ、佛性ノ空ヨ。我ハ、色相ヨ。師

云、夫何ンテ。」代、出息不依諸縁ニ、入息不居隠界ニ。

心ハ、出息ガ諸縁ニ」渉ラ子バ、目前ニモ留ラヌゾ。入息

ガ隠界ニ居セ子バ、自己モ収ラヌ」（13オ）ゾ。此ノト

キ、實相ガ、無相ヨ。体有ル物ハ、終ニ尽テ、無相トナ

ル。畢」竟自己目前一致ヨ。」

正法寺04-0015

（15）

第二、迦葉刹竿之話。師云、阿難應諾ノ機ヲ。代、世尊

モ」ヨツ、迦葉モヨツ、阿難モヨツ、某甲モヨツ。師云、

夫ハ何ントテ。代、」人呑水冷暖ノ自知如。師云、自知シ

ヲ。代、暖イゾ。中道」ゾ、ト云道理ワ、他ヨリワ受ケ

走ヌ。心ハ、師兄ーー傳ル外ニハ、」何ヲ傳テゴザ在ル

ゾ。ヨツ、他ヨリ受ケヌ道理ヲ傳ヘタゾ。句モ、人呑」

（13ウ）ーー自知。人ニ習ウ物ガ、サテ、刹竿ト云ワ、説法

度生ノ時キ立テ、」人ヲ集ル。サテ、修行デワ、會得・解

會ガ幢コダ。ヨツト云処デ、梵」行・修力ハ、タヲレタ

ワ。師云、刹竿倒却ヲ。代、瞎驢不受霊山ノ」機。心ハ、

瞎驢ト云テ、世間不浄ノ

驢馬ト計リ云テワスマヌ、修

力・」識惑ヲ分ツワ、我慢ノハタヨ。其ノ湿氣ノ無イ、平

常ノ心地ノ衲僧」ノヿヨ。此ノ人ノ取リ傳ル道理ワ、有ツ

テコソ。解會ハ、霊山ノ幾ダ。向ウ」正法ニ陶タヿダ。」


八九

正法寺04-0016

（16）

第三、武帝達磨。師云、聖諦第一義、廓然無聖問答ヲ。代

云、」（14オ）師胸ヲ丁ト打テ、莫レ計較スルヿ。師又打

テ、夫レモ計較ヨ。代、其レモ計」較デ走。師云、計較ダ

ゾ。師云、計較ダゾ。師云、着語ヲ。代、計較纔生、鷂子

過」新羅。心、帝ノ教意ヲ肝要ト持テゴザ在ル処ヲ、活法

ヲ持テ、」計較タゾ、ーータゾト、クツト追放シテゴザ在

ル。句モ、ワツカモ解會ガ生ズレバ、」活法真逸物ヲバ、

取遁シタヿヨ、トミル処デ、祖教不二ノ田地ニ至」ツタコ

トダ。」

正法寺04-0017

（17）

第四、聖諦亦不為。師云、不落階級ニ処ヲ。代、チヤツト

抽身ス。心ハ、」階級ト云ワ、功作修行ヨ。元嶺南人デ、

黄梅ノ一衣ヲ傳タホトニ、」（14ウ）其ノ間ダニワ立タヌ

ゾ。何ントモ挙セ、ミナ階級ヨ。挙処モ、何ントモ展」ベ

バ、階級ヲフム呈ニ、抽身ガ不階級當人ダ。師云、何ント

テ。」代、一トモ二トモ云ワレヌ処デ走ウ。心ハ、手ノツ

カヌ処也。手ヲ付バ、傍人ヨ。師云、」恁麼時如何。代、

向一色デ走。心ハ、スラス、ミガヽヌ、根本ノ白米也。

ト」云ワ、産出ノ侭ニジマヌゾ。々々々ト云モ、悟リヨ。

師云、着語ヲ。代、純一」無雑、具足清白。心ハ、一ト云

ハ、根本ヨ。乍カキノ侭デ、一ヲ専ラ」ニシテ、マジリ者

無イ境界ヨ。其ノ肌ヲ、清白ト云タ。悟リガ、面ヲ出ダサ

ヌ」悟ハ、玄関所務ヨ。師云、聖諦亦不為ヲ。代、トツク

ト閑坐ス。師云、」（15オ）恁麼時如何。代、入テ只皈ル。

ココロハ、聖諦ト云ワ、人ナラバ主、木ナラバ核子」ダ。

亦不為ト云ワ、聖諦ヲモ々々ト以タヌ呈ニ、挙著モ何トデ

モ、云イヿハ」無イゾ。只座シ、只皈ツタ迄デヨ。閑座ナ

ラバ、ナセリダ。」

正法寺04-0018

（18）

第五、洞山無情説法。師云、無情説法ノシ

ヲ。代、説カ

ヌガ、」無情ノ説法デ走。師云、夫ハ何ントテ。代、無言

無説真般若。師云、」般若ノ体ヲ云ヘ。代、良久。師云、

夫ハ何ントテ。代、理ハ走ヌ。心ハ、説ニ落」テ談論ニ落

バ、有情ダ。此ノ無情ノ説法ヲバ、無情ノ耳デ聞タゾ。呈

ニ社ソ、」無言無説真般若タゾ。般若ハ、空体也ト云タ

ゾ。良久ガ、空体ノミセシメ羊」（15ウ）ダ。八還ノ内

ニ、宗ハ虚空ニ歸ト云モ、向ダ。」

正法寺04-0019

（19）

第六、々外ヲ云ヘ。総是ーー是ト、クツト追詰テ於クベ

シ。其ノ驀下」デ、一句ヲ云ヘ。代、ホカト托開ス。師

云、恁麼ーー何。代、唾涕ヲ吐掛ル也。云、」夫ハ何ント


九〇

テ。代、機不離位、毒海堕在ス。師云、恁麼時如何。

代、」但皈ル。心ハ、自己ノ離派也。冤家ト看ル

。」

正法寺04-0020

（20）

第七、倩女離魂。師云、倩女離魂シ羊ヲ。代、一个ハ伊

レ、一个ハ従来」誰デ走。師云、一人ト成リ羊ヲ。代、師

ノ額ト、我額ヲ、ハツチト」打合ル

。師云、恁ーー何。

代、空合空ニ。ハツチト打合ワセタハ、物我相」（16オ）

應ノ時節也。兩女ト成タワ、法身自性ト、幻化ノ空身ト分

ツ也。」サテ、能ク見篭ダレバ、空ガ空ニ合シタ迄デヨ。

師云、真底ヲ。代云、」太極以前無此話。心ハ、真底ト云

ニ、沙汰ハ無イ、太極ヲサヘシラレヌニ、」況ヤ已前ト云

ニ、話ハ有ツテ社ソ、ト云テ、此ノ界ノ不始先キノコトデ

ワ無イ。」正法ノ陶リ派ノヿヨ。爰ヲ眼トシ、藏トシタ。」

正法寺04-0021

（21）

第八、托鉢下堂。師云、鐘ーー堂ヲ下タキヲ。代、兩手兩

脚打」垂テ、大口忘然トシテ居ス。師云、恁麼時如何。

代、理事渾然無内」外。心ハ、老倒シタト云テ、七俊八俊

ニ及ンデ、諸漏ノ尽タ羊ナヿデワ」（16ウ）無イ。鐘ヲ鳴

シ、皷ヲ打ト云ワ、威儀ヲ不乱、禅道・佛法ノ間ダヨ。」

其間ノ忘想ワ打尽、正法ニ渕底ノ肌ノコトヨ。爰ヲ、道体

ト云タ。ホトニ、」内外表裏ノ忘ジタ処ダ。爰ヲ、末后ノ

句トモ云。忘ノ尽キテ、二足踏」マヌワ。師云、雪峰ーー

去ト云、雪峯ノ幾ヲ。代、師ノ耳ニ物ヲ云

子」ヲシテ皈

ル。師云、ソレワ何ントテ。代、鉄橛蒺蔾確々。心ハ、徳

山」ーー下タモ、肌ノ知リ難イコトヨ。又雪峯ノ、此老ホ

イメワ、鐘モ鳴ラヌ」ニト云タモ、難計事ダ。爰ヲバ、

鉄ーー、トミ羊ズ。ト云テ、ヲソロシイヿデ」ハナイ。正

法眼渕底末后ノ肌ニ、路スヂノ看ヱヌヲ云タ。サテ、商量

ノ法ニハ、」（17オ）毒意ナゾ。難瞞ナドヽ弄ジテ可置。師

云、岩頭密ーー啓キヲ、」代、前ト同挙ス。恁麼ーー何。

代、道元無言。心ハ、共兩尊共ニ」此道体渕底ノ人達デコ

サ在ル、トミテ、密啓シテハ、爰ニ至ツテ、言ハ無」イ。

蛍山ノ一種ーー尽、著語被成タモ向ダ。」

正法寺04-0022

（22）

第九、枕子推出話。師云、法身ノ説法シ羊ヲ。代、放身

手脚ヲ」踏展テ、其ノ時ヲ作ス。師云、恁ーー何。代、佛

祖従来不通行。心ハ、」三寸ノ舌頭ノ回ヌ、此ノタヽチ

ガ、法身ノ説法ダ。悪クスレバ、四十九年ノ説」ニナルト

云ワ、解會纒ルゾ。此ノ時節、佛祖ノ消息ノ及バヌヿ

タ、」（17ウ）ト云ワ、自己ノ忘想ヲ佛祖ト云也。師云、夫

ハ、ーーテ。代、虚空々々會不」作、法身々々會不作、即

是虚空。心ハ、舌頭ノ回サレズ、クツト」牢関ニ追詰メラ

レタ処ガ、虚空ダ。ト云ワ、佛性ノコトヨ。此ノ空ニ至


九一

テ、至タト會」セヌ時キガ、法身虚空ダ。爰ニ立テミレ

バ、雨竹風松、ミナ説法度」生ヨ。會ヲナセバ、隔ルゾ。

師云、仰山枕子推出ノ幾ヲ。代、至テ、チヤツ」ト頭ヲ出

シテ皈ル。師云、恁麼ーー何。代、要頭斫持去ル。心ハ、

法身」ノ説法ニ至テハ、何ントモ展ベラレヌ。枕子ヲ推出

シタ心ハ、我ガ頭ノ要」ナラバ、斫テワ行カシ。説向生ズ

道理ハ走ヌ。ト云ワ、正法自性當人ダ。爰ニ、」（18オ）陶

ルガ、劍刃刀鋒ダ。ホコサキヲ露サズ、此ノ僧ノ只中ニ透

シタコトダハ。サテ、」能ク弄ジ得タコトデワ無イカ。」

正法寺04-0023

（23）

第十、夾山道不會。師云、大陽ノ定ヲ。代、兩手ヲ結ン

デ、圓相ヲ」作ス。師云、目ニ溢レ羊ヲ。代、拶眼ス、閑

カニ。」師云、其ハ何ントテ。代、法々自位住。師云、万

里ーー雲。代、師ヲ背ニ」シテ坐ス。師云、恁麼ーー何。

代、身空境寂体如々。代、清浄ノ水ヲ」云ヘ。師云、魚自

迷ヲ。師云、魚自迷ヲ。代驢見井々見驢ヲ。」先ズ是ワ、

宗門ノ大道ノコトダ。大陽ーー不掛処ヲ、学人不會

ダ。々々ガ、大」（18ウ）道ダ。不會ノ時キ、片雲ハ掛ラヌ

時キ、清浄ノ水デ、コミハ掛ラヌ。魚ト」云ワ、念、魚ト

云テ、一念ノ不動主ノ眼睛ヲ云タ。呈ニ、挙処モ、大道

一」圓空ヨ。サテ又、不會ノ道ガ、花紅ト住、烏ハ黒ト欠

道無イ、諷テ能ク溢」レタヿデハ無イカ。溢ハ、盈也、滿

也。何ニモ入ミチタ。背ニシタワ、師ニヨルワ、」片雲

ダ。ト云ワ、迷悟ノコトダ。如是無向背賓主ノ時キ、身空

共ニ如々ノ」体ヨ。処ガ、清浄ノ水ダワ。爰ヲ、少シモ引

違レバ、ニゴル。魚自迷、驢ノ井」ヲ看タニワ、未タ意ガ

在ル。井ガ驢ヲ看タト云ニ、何ンデモ會ワ出テヌ。」サテ

亦、清水ニ遊魚ノ浮ンダヲミデワ。目無開合。フラリトシ

テ、動」揺無イ、純一無雑チヤ。何ノ階級ニ落ズ、ーー真

トニ、正法眼ダ。爰」（19オ）爰ヲ、吾家ノ藏トシタ社

ソ、多イニ、十則正法眼藏ト唱ルモ、」爰ノ和合共

。可

秘〳〵。礼拜去。」正法寺月泉大和尚本参ノ唱イ、他派不

可有、秘極処也。」

月泉派獨則透」

正法寺04-0024

（24）

趙州地獄ヲ。代、三界ガ地獄デ走。師云、其ハ何トテ。

代、三界無安、」猶如火宅。師云、地獄ノ脱シ羊ヲ。代、

一心不生、万法無レ

咎。心、現成」ニ引ルヽガ、ニヱ皈タ

㕝タゾ。爰ヲ火宅トミタ。サテ無安ヨ。爰ニ妄心ヲ生ゼ」

ヌ時キ、獄ハ破テノケタゾ。咎ト云ハ、獄ヨ。ト云ハ、万

法ニ對對タ知ラズ。」閑㕝ヲ心頭ニ掛ヌ時、地獄天堂ワ有

ツテコソ。」（19ウ）

正法寺04-0025


九二

（25）

芭蕉拄杖。師云、有与、無バ奪ト云示衆ノ機ヲ。是ヲ先

ズ」當行ガ肝要ダ。有見無見、手ヲ出、口ヲ開キ、様ヲ

作、模ヲナシテ、」横走抽身、其ハミナ拄杖ニ取付テ、万

刧ノ繋驢橛ト云タゾ。ト云テ、」一向ニ觸ヌハ、未得語證

ト云テ、凡夫ヨ。如是行ラレテ、何ヤ郎呈セント」スル処

ヲ。師、学ヲホカト托開

云、恁麼時如何。代、諸天擎花

無」路、外道攅見無門。心ハ、終ニ向ゾト領掌サセヌゾ。

諸天タゾ、外道ダ」ゾト云ハ、自己ノ妄想ヲ云タゾ。クツ

ト接ツメラレテ蹈放ス當頭、六根」外道、天魔諸天、勝殊

ノ道ガアツテコソ。此ノ時時只拄杖横テ居タマデ」ヨ。向

ウ叶底ヲ芭蕉モ接シタゾ。一則成ル、此様ナ処ヲ能ク参セ

デワ。」（20オ）師云、扶過断橋水、伴皈無月村ト云、無門

ノ判語ヲ云ヘ。代、断橋デ」ワ橋トナリ、無月デ燈トナツ

テ走。心、断橋ト云イ、無月ト云ワ、境」界ヲ蹈放ス驀當

頭ノヨ。其コデ三界ニ掛渡シタハシ、大千ニ」輝タ霊光タ

ゾ。」

正法寺04-0026

（26）

啐啄同時。師云、啐啄同時幾（

機）ヲ

云ヘ。代、帀（師）ヲ

把住シテ噫

ト牙」歯ヲ咬ム。師、学ヲツキ倒

、サデ走ヌ。代、師ヲ

托開

サデ走ゾ。師云、句ヲ。」拳的相應、心眼相照。師

云、啐啄ー時ノ用ヲ。代、金鎚影動、宝剱」光寒。師云、

其ノ句ノ心ヲ。代、拳ヲ握ツテ、袖ノ内ウ

チ

ニ藏シテ、牙歯ヲ

ジツト」咬ム。又此僧不レ

契。雲門宗會裏ニ至テ、挙二

前話一

ヲ。有二

一僧一

云、南院」（20ウ）棒折那。其僧豁然有省。

其後風穴ケ

ツ

云、汝ジ當時作麼生會ン。」僧云、如有燈影裏行相

似タリト云タルキヲ。代、ヲボロ〳〵トシテ走。心ハ、」具

眼底ガ無クンバ、機ハ動テコソ。何ント羊ナガ同時ノキタ

ゾ。クツト接シ」ツメテ、其驀下デ大幾（

機）ヲ發スルガ、同時

ノ幾タゾ。用ト云ワ、最初ノ」當リ派ガツヽトツヨイニ依

テ、肚裏ガ白直ト作タゾ。悪クスレバ、最初ニ」繋留スル

ゾ。爰ヲ本分ノ作家ト云タゾ。」

正法寺04-0027

（27）

宝鏡三昧疂変参。師云、重離為甚麼一ト

宝鏡三昧ト云タ

ゾ。」代、三世不昧ノ鏡デ走。離ハ南方ノ卦、火

。心譬

ト、ナントシテ云タゾ。代、離ノ」卦ニ至ツテ、説法ハ

走ヌ。師云、離ノ卦ノ指処ヲ。代、這个其ノ㷔ニ不可觸」（21

オ）ト云テ、身ヲ引ク

。帀云、句ヲ。代、觸着両門燎

却。帀云、好手ナラバ、」一ツデア郎ズガ、何トテ好手々

中ニ呈好手トハ云タゾ。代、伏犠ノ疂ダ」好手ニ曹山ノ好

手ヲ呈

走。師云、句ヲ。代、獨掌謾リニ不レ

鳴。心ハ、兩

ヲ」推シ合テミデワ、聞ヱヌゾ。師云、紅心々裡中紅心一ニ

羊ヲ。代、以前伏犠ノ」疂ダ紅心ニ、曹山ノ紅心ガ當テ

走。帀云、何ントシテカ當中

タゾ。代、拶眼ス。」師云、何


九三

ントテ。代、以心傳心。キツト拶眼ノ時、此ノ心ニ中ツタ

ゾ。師云、何ントテ筭」木ヲ六爻トハ云タゾ。代、眼耳鼻

舌身意デ走。帀云、六爻ヲバ何トテ」重子タゾ。代、眼与

色ト合、鼻ヲバ香ト合、口ヲバ与味合デ走。師云、天地」

人各下麗羊ヲ。代、良久而直上ヨリ直下ヲ視下

云、天ノ

天外ヨリ」（21ウ）地ノ地下ニ至ル迄デ、下ツイテ更ニ窮源

ハ走ヌ。師云、天地二枚ニ破ル」処デ一句。代、巽トナリ

兌トナツテ走。師云、次ニ上ヲ重テ、其コデ筭」木ヲカヱ

ス羊ヲ云ヘ。代、眼耳鼻舌身意デ走。師云、其ハ已前ニ」

同ジイワ。代、地水火風空デ走。師云、其ハ一ツ余タワ。

代、心ヲ余テ走。師云、」何ントテ。代、天ト喚ビ、地ト

喚、火ト喚、水ト喚、風ト喚ダモ、心ノ作業ト」ミレバ、

一ツ余ツテ走。師云、天コデ何ト余ツタゾ。代、法々住自

位一ニ。心ハ、其ノ」位々々ニ住シタガ、ソコニ知ラレヌ者

ガ有ル時キ余ツタゾ。師云、天地人各上」麗羊ヨ。代、良

久

直下ヨリ直上ヲミテ云、地ノ地下ヨリ天ノ天外」迄デ、

上リツイテ更ラニ窮源ハ走ヌ。師云、上麗下麗テ、正回偏

互ニ」（22オ）スル処デ一句。代、丿竪窮三際、横亘十方一

ニ。師云、合テ離巽兌ノ」三ツヲ。代、天地人ノ三際デ

走。師云、天地人ノ三際ナラバ、中孚ノ卦ノ」中ハ切レマ

イガ、何トテ切レタゾ。代、人ト云ヿハ、昨日今日始テ

走。師云、何」トテ中ノ人ニ無変動ト云タゾ。代、天喚地ト

喚起ハ、人ノ作息トミレバ、」終ニ変ジ走ヌ。師云、巽兌

中孚ノ三卦ヲ。代、法報應ノ三人デ走ウ。」師云、何ト

テ。代、法身ニ有ル報身、々々ニ有ル化身デ走。師云、変

成レ」五ト羊ヲ。代、春生シ夏長ジ秋収冬藏ルヽ間ダワ、

変デ走。師云、大」過ノ上下ワ、何ントテ切レタゾ。代、

直下ヲミテ、トコヨリドコ迄切レ透タヤ郎、」更ラニ窮源

ハ走ヌ。師云、何トテ。代、離ノ卦デ走。師云、离ノ卦ノ体

ヲ。代、」（22ウ）法身無相。心ハ、心ガ無相ニ切レ透タ

ゾ。師云、离ノ宮中ヲ。代、作圓相ヲ。」師云、其デ回互宛

轉、環ノ如無端ト云ニ、何ニ回タゾ。代、夜ルト回リ昼ルト

回テ」走。師云、离ノ為三為五羊ヲ。代、法報應トモ、五

分法ノ香トモ成テ」走ウ。心ハ、五分法身香トワ、五蘊ノ

ヿ

。師云、蜜傳ヲ。代、千聖モ」亦不識。帀云、不識

ヲ。代、离ヨリ始テ离ニ収タソ。千聖モ不審々々。師云、

蜜傳ヲバ且置ト云タ幾ヲ。代、野老山老トナル処デ、蜜傳

底ハ自隱」レテ走。師云、好手トワ、誰ガ手タゾ。代、野

老山老ノ鋤黎钁頭ガ好」手デ走。心ハ、野老山老ガ夫ダデ

ワ無イ、其ノ上デミヤウズ。師云、一時ニ」卦盤掀却シタ

幾ヲ。代、天地崩裂。師云、其コデ良久ヲ。代、一」（23

オ）塵不立。心ハ、疂ム間ダワ、知見解會妄想ヨ。掀却一

塵モ不レ

」立ゾ。帀云、殿閣ヲ。代、指胸驀爰デ走。帀

云、生微凉ヲ。代、嘘一」声ス。師云、其コデ一句。代、

空合レズ空ニ礼拜去ル。」

正法寺04-0028


九四

（28）

生下未分之話　

師云、生下未分ヲ。代、元来云ウス事ハ走

ヌ。師云、」夫ハ何ントテ。代、道元無レ

語。心ハ、生ーー

分ト云テ、生テ東西南北ヲ分」タヌト計リ心得テワ悪イ。

匠師家ニ是不是背觸ヲ以テ、クツト」セメツメラレテ、生

下端的ニ今陶タヿダ。句モ爰ノ他ニ觸レヌ処ヲ道ト」云

タ。無レ

言ト云テ、物モ云ワヌ羊ナヿデワ無イゾ。言ハ、

迷悟生死ヨ。爰」ニ至テミレバ、其ノ沙汰ワ有テ社ソ、向

陶テミサシ。生ジタガ、未分タワ」（23ウ）大切ノ心得デ

走ゾ。證而去ル。」

正法寺04-0029

（29）

見明星悟道。師云、一見悟道ヲ。代、拶眼。師云、恁麼

時ーー何。代、」父母初生眼、悉見三千界。心ハ、只拶眼

シタ処ガ、悟道タデワ無イ。」六秊端坐ノ功ガ積呈ト、此

トガ驀一ツニ穿ル徑チ、胸ノ㕝タゾ。ホトニ社ソ、自」己

目前一致トミルヿデワ有レ。句モ父ーー眼ト云テ、何ニガ

生子ノ眼ノヿデハア」郎ズ。一見ノ直下、我ヲ生ダ。父母モ

無ク天地モ無イ。此ノトキ悉見デ居タ。」爰ヲ初生眼ト云

タ。三千界ト分テコソ。時キガ、同時ダゾ。踈カニ心得、

悟道」ノ肌ニツカレヌゾ。」

正法寺04-0030

（30）

撃竹悟道。師云、悟道端的ヲ。代、物ニ驚タル風情ニシテ

耳ヲ傾ル

。」（24オ）師云、恁麼時ーー何。代、通身無内

外。心ハ、通身ノ時キ、内外ワ無イゾ。内外」ト云ワ、自

己目前ヨ。悟道一致ヨ。サテ亦挙処大事ノ心ガ在ル。能ク

念労スベ」シ。師云、爰迄デワ、如来禅ノ契派ダ。祖師禅

ガ無クテワ。此ノ羊ナ折角ヲ」シラズンバ、師トワナラレ

ヌゾ。頌ニモ、已前ト

未明ーー幾ト云タゾ。代、睡リ覚ム

ル羊ニ」シテ、アツト云

。心ハ、悪クスレバ、空有ノ二

ツニナリ、悟リニナル、有無迷悟ニ不落」幾ヲミセシメ羊

タゾ。洞家デ沈マヌ一氣虚㚑（

霊）空ノ妙ノヿヨ。」

正法寺04-0031

（31）

見桃花悟道。師云、見ーー道ヲ。代、兩手ヲモ垂レ、兩足

ヲモ蹈ミ出シ」テ、アツ〳〵ト云。師云、恁麼ーー何。

代、聖人ニ無己。心ハ、三十秊葉ヲ摘ミ抽」枝ヲト云ワ、見

聞ノ横枝忘葉ヲ拂イ捨テ〳〵、ミデミキ計ニ」（24ウ）打

成テ、アノ桃花ト、爰ガ末一ツニナツテ居タゾ。句モ己ト

云ワ、識智忘相」ヲ云ウ。ソコニクミセヌヲ聖人ト云時コ

ソ一見デワアレ。少モ筋ガ出デ、解會」ガアラバ、悟リ眼

ヨ。帀云、玄沙敢保未徹ト被仰タキヲ。代、無為無」事底

人、猶有金鎖難。心ハ、マヅ此ノ句、内裏デ上々ノ人達チ

ノ衣ノ襟スソ

」ニ鎖ヲ下ヲ

スト云。是モ上々ノ人ニモズイヲサセ

マイ為メタゾ。爰デモ一見ノ処デ、」夏シヨクノ艱難ヲ知


九五

ラヌ上々ニ陶タヲモ、マダヲモ老兄ワ未徹ヨト、許サヌ

キ」タ。ナセーーバ、悟道ガ万刧ニモハズシ難イ金サノ難

ダ。サテ又徹ト云ワ、物ニ當テ」極リノ有ルヿ未徹ト云

ワ、虚空ヲ打タ如クテ、イタミノ無イヲ云呈ニ、玄沙ノ」

未徹ト云処デ、猶ヲモシマツタヿタゾ。」（25オ）

正法寺04-0032

（32）

胡子無鬚。帀云、西天ノ胡子、因甚麼無鬚ヲ云ヘ。代、竪

説横」説ガ、眉鬚堕落シタヿデ走。師云、夫ハナントテ。

代、口是禍門。心ハ、先ズ」鬚ト云ワ、見地ノヿダ。六宗

ヲ破テ、此土ニ至テ、兩魏ノ二帝ヲ接シ、隨」分ノ祖師ヲ

何ニトテヒゲ無イトハ云タゾト可レ

請。挙処ワ、本分本

祖」ニ至テ、自他ノ相モ無ク接シ羊ズ道里モ無イゾト云処

デ、サテヒゲ」ハ落チタワ、句モ是ハ佛ダ、屋裏ノ一佛本

祖ニ至テハ、向ゾトゾ述」レバ、失スルゾ。又古㕝ノトキ

モ、一木ボ

ク

ノ中ヲ含デ、舌ヲ動ズレバ、大水ノ」処ニ至郎ズ

ゾ。㕝ヲ説ントシタニ依テ、殻ヲ打破ツタゾ。サテ、亀ト

云」ハ、火

。心ノ譬デ、本心ヲ失スルゾト云ウ為メダ。

師云、或庵ノ

本」（25ウ）形ヲ云ヘ。代、某甲シ

有一双

眉一

。心ハ、一双ノ眉ト云ワ、出世ノ一佛ニマミ」ヱズ、

西来ノ達磨ニ相見セズ、娘生ノ眉デ居タト云テ、乍生居タ

デハ」無イ。爰ニ好ク陶ツテ達磨ヲ欺タ㕝ダ。」

正法寺04-0033

（33）

上来話。師云、生死迷悟ノ離レ羊ヲ。代、師ノ額ト我ガ額

ト、ハツチト」打合。師云、恁麼ーー何。代、墮。師云、

其ノ墮ヲ説破セヨ。代、代、ドコニモ」有ルガ、ドコニモ

走ヌ。師云、夫ワ何ントテ、代、迢々空刧収不得、豈為三

塵」機ノ作二

繋留一ヲ。心ハ、生ズ、是ワ上ト来トワ、久遠ト

今時ダ。向云イ立テ」ヽ、古今天地ニ落ヌ処ヲ、迷悟ノ離

派ト云タ挙処ワ。道叟和尚ノ鍜」治屋デ御覧ジタ。足シヲ

フミ流シテ鎚ヲ打ツ物者

ガ取リハズシテ、カ」（26オ）ラス

子ヲ、ハツチト打テ、アツト云ヲ見テ、此ノ話ニ叶テゴザ

在ル。帀ノ嗣法廿五」人、此ノ話、山僧徹セリト被仰タ。

此ノ端的釈迦ト額ヲハツチト打合タ」ト云テ、有相ノ釈迦

ノヿデワ無イ。此ノトキ、生死迷悟ヲ打离レタ。句モ、」

堕ワ落居ノ義ト註シタホトニ、一点ノ心ノヿダ。此レガ

物々ニ堕シタ。」有レトモ、取テ出ダサレヌ。花紅柳緑、

生死迷悟ニツレタガ、ソコニアラヌゾ。」句モ、迢々ハ高

兒、ハルカト誦ンダ。ト云ワ、空刧已前ト云ヲウガ為メ

ダ。ト云テ、」又遠イヿデワ無イ。サテ亦、此ノ一点ノ心

ワ、空刧ニモ留ラヌゾ。况ヤ今」時ノ塵キニワ、何ニガ繋

留生ズゾ。今ーー幾ト云ワ、生死迷悟ヨ。帀云、」畢竟

ヲ。代、佛祖未生空刧外、正偏不墮有無ノ機。心ハ、佛

祖」（26ウ）ト云ワ、出世邊ナホトニ、出派上来ニ將ダ。

未ーー外ト云ワ、佛祖モヨリツカ」ヌ、偏正有無、生


九六

死ーー悟ヨ。幾ニ不墮、其間ダヲバ、飛ノイタワ、サテ

又、」久遠今時一枚ト心得テ、諸回向ナドニモ讀可シ。」

正法寺04-0034

（34）

一卓之話。帀云、一卓下ヲ。代、驚身ス。帀云、恁麼時如

何。代、墮。帀云、」其ハ何ントテ。代、内外虚玄、徹底

空寂。心ハ、卓下ト云イ、拄杖ヲ卓」スナドヽ云モ、迷悟

ヲ云タ。离レハニ卓スル者ダ。呈ニ、是ワ前話ト一則ダ。

即今」ハ、拄杖ノヿダ。々々ト云ワ、一着子ト云テ、境界

ノヿダ。驚身ノ端的、迷悟」凡聖ツンヌケタゾ。ト云テ、

最初デワ無イ。此ノ端的一点ノ心ガ、何ニモ墮シタ。」向見

届ケタトキ、虚玄ノ大道ダ。何ニガ内外ハア郎ズ。踊躍自

然ニ全体」（27オ）露レタヿダ。畢竟生死迷悟ノ离レ派ト

心得タガ、ヨウ走ゾ。」

正法寺04-0035

（35）

兜卒三関。帀云、撥草参玄ワ、啚二見性一ヲ、即今上人ノ性

ヲ云ヘ。マヅ」是ワ撥草ーー玄ノ客ト云ワデ、見性ヲ圖

ルゾ。草ト云ワ、迷ヨ。撥ト云ワ、」悟リヨ。其ノ間ダヲ拂

ツタトキ、即今上人ノ性、直指見性ノ旨ム

子

ダホトニ、」即

今ーー性ヲ。代、兩手ヲ展開シテ拶眼

看。心ハ、兩ーー

ハ、迷悟ノ」体ダ。拶眼

看、直指見性ウヨ。師云、證拠

ヲ。代、説似一物即不中。」心ハ、爰ノ道里ワ説似スレ

バ、ハズルヽゾ。帀云、夫ノ一物ヲ昼寫シ来レ。代云、」

師ノ膝ヲ丁ト打テ、此ノ老賊。心ハ、勘弁

。帀云、識得

自性方ニ脱」生死一ヲ、眼光落地時如何。代、渠デ走。帀

云、證拠ヲ。代、渠ニ無二シ生死ノ相一ウ。」（27ウ）心ハ、畫来レ

ト云処ヲ。此ノ老僧ワ、又タ人ヲ賣老（弄）セラルヽナト云処

デ、自性ヲ」ーーシタゾ。ト云テ、眼ーー地ノ処デワ、何

ヲ体トワシ羨ズゾ。是ヲ二」関目ト云タゾ。其コデ渠ヲ看

タマデヨ。ホトニ、渠ニ生死ワ有ツテコソト、迷悟」ヲ離

レタゾ。帀云、生死脱得便去処ヲ知、四大分離向甚麼処一ニ

去。代云、是」何物ゾ々々々。心、四大分離ノ処デモ、卒

度モ失セヌ一物タゾ。爰ハ、千聖ヨリ」何物ゾ々々々、誰

〳〵デ置イタゾ。爰ガ三関タゾ。帀云、句ヲ。代、迢ーー

留一ヲ。」是ワ、已前ニ同ジイ、総

此ノ三則ヲバ、一ニ束テ

唱ル見性ノ話ト戴ル

。」

正法寺04-0036

（36）

雲門話墮。師云、光明ーー豈ーー処ヲ。此僧是有レバ、話

墮也ト被仰タ」機ヲ。是ワ先ズ挙処呈処ワ是タゾ。夫ハ、

長拙秀才ガ見解ダゾ。代、僧挙ン」（28オ）トスル処ヲ話墮

也ト、ホカトツキ倒

云、恁麼ーー何。代、古木逗二ズ圓孔一

ニ。」心ハ、雲門宗ワ、死句ヲ嫌ウ。門閫ノ當頭デ指シ透シ

タゾ。呈ニ、話墮也ト、」ホカト築倒ス驀下ニ、自己ノ光

明ガカツカトシタゾ。句モ、古木ーー孔、卒度モ」透ワ無


九七

イゾ。此ノ僧ノ一問ワチツトカトガ在ル。雲門ノ禅ニ逢

テ、其ノ角ヲ失タゾ。」亦當門戸ニ斬字ノ参ト云ヿガ在ル。

師云、光明ーー沙ヲ。代、代、光別明」別寂照別遍河沙別

ト挙ス。帀云、夫ハ何ントテ。代、一寸ノ金一寸ノ」泥

沙。心ハ、光ハ光、明ハ明、寂ハ寂、照ハ照、別々デツヽ

カヌゾ。遍河」沙ダゾ。此光明ナラザル処ハ無イ呈ニ、句

モ、金ハ金、泥沙ハ泥沙、別ノ々」時キ、他物ハ無イゾ。帀

云、雲門ノ話墮也ト被仰タ幾ヲ。代、我々々渠」（28

オ）々々、東西南北可

。心、我ト云ワ、大我ノヿ、本来

ノ我ヲ云呈ニ、我ハ我、渠」々々、此時東西ーー可

。乾

坤大地、我レ渠デ拄ヘタゾ。此ノ時」物々ニ堕シテ居タ

ゾ。スキガ有ツテ社ソ、是モ當到ト可心得

。」

正法寺04-0037

（37）

雲門六不収。師云、六不収ヲ。先ズ六不収境界在ルゾ。六

ト云ワ、南北東西ニ」天地ヲ合テモ取リツメテワ。六根ヲ

モ法身ノトキ、六不収ダ。六不収ヲ。代云、」目口ヲアツ

カト開キ、手脚ヲモトヽノヱズ、フミ展テ居ル。心ハ、法

身當的ノナ」リダゾ。帀云、恁麼時如何。代、清波不犯意

自異

。心ハ、當頭デ風」波ガクツト収テ、二度ト起ラヌ

ゾ。サテ又、収テミヌ家ダゾ。七顚八倒ガ法」身六不収ダ

ゾ。自異

。是ヲ新定ノ幾トモ云、亦他門デワ、夾山点頭

万法」（29オ）」不侶ヲ一則ニミル、挙処拶眼デ、句ハ、純

一無ーー白ト首尾スル竹林寺」石頭下デワ、二ツニ云タ。

橈下頓玄下デ、六不収ト落付イタ。爰ヲ不点一」色トモ云

ホトニコソ。サテ、葦ーー秋又一成秋トハ、頌ジタレ。」

正法寺04-0038

（38）

諸佛出身。帀云、諸ーー問ヱバ、東山ーー行、問答一般ニ

挙セ。代、鐘ガ鳴トモ、」犬ガ吠タトモ、目デ挙ス。帀

云、恁广ノ時如何。代、是ハ即没交渉。心ハ、雲門」御坐

有ツタ東ノ山ノ影ガ、面前ノ水ニ移ツタ時分ナ呈ドニ、回

サズ東ーー行ト」被レ

仰タ。向計リ云テモ、余リ听ヱヌ。

爰ヘ屋裏ノ一佛ガチヤツト現ジタゾ。ホトニ、」因デ當人

セヨダ。思量疑々ニ渡ラバ、化身佛ヨ。句モ、是ト思量セ

バ、」川ノ向イノジヤウ門デ、ヨツ（

テカ）

デモ付ヌヿヨ。○天寧

階ノ當則ヲ挙

、我即不然。」（29ウ）薫風自ーー凉ト被仰

タ幾ヲ。代、ヤラ凉シヤ。心ハ、夏日ノ苦シイ時分ン、」

ヒヤリト吹イタ。爰ノ殿ガ、其侭佛殿上トナツタゾ。サ

テ、諸佛ーー身ハ、聞ヘヌカ。」

正法寺04-0039

（39）

非思量之話。師云、問答一句ニ云ヘ。久ク可嫌々ガ當行タ

ゾ。何ント云モ、」思量タゾ。識情タゾ。代、時節ニ因デ

可レ

挙、如前。師云、恁麼ーー何。」代、無味談塞断人口一

ヲ。心、思量ニ渡ラヌ當頭ガ、無味ノ談タゾ。量」ルワ、人


九八

口ヨ。灯露ガサケビ、露柱ガ吐イタト云モ、爰ノヿダ。如

是計較按排」ニ度ラヌガ、活句タゾ。」

正法寺04-0040

（40）

南泉斬猫。師云、兩堂首座ノ猫児ヲ争ウ処ヲ斬却シ羊ヲ。

代、出ル」処ヲヅンド切ツテ走。師云、恁麼ーー何。代、

一心不生、万法無咎。心ハ、三毒ワ」（30オ）諸着ノ根本

トシタ呈ニ、諸ーー本ヲ切ツタゾ。句モ、争ウガ心ヲ生

ジタヿダ。」猫ノ取着ガ深イ者ダ。南泉ノ家デワ、知不知ノ

ヿヨ。其ノ心ヲ追放」スルガ、一刀タゾ。咎ト云ワ、著

ダ。帀云、趙州頭ニ戴草鞋一ヲ羊ヲ。代、元」来無根本。師

云、夫ワ何ントテ。代、上可貴無二ク諸佛一

、下ニ可レ

賤無

衆」生一

。心ハ、今時万法妄想ヲ切テ除レバ、平等ヨト戴

イタゾ。」

正法寺04-0041

（41）

智不是道。師云、心不是智不是道ヲ云ヘ。代、別々々。師

云、其レ」ハ何ントテ。代、心ハ心佛ハ佛、智ハ智、道ワ

道デ走。帀云、證拠ヲ。代、」一粒在二リ荒田一ニ、不耕苗自

秀。心ハ、忘心忘、或知解ニワアラズ、本心」本智ダ。是

ガ荒田ノ一粒ダ。佛祖ノ鋤ガ入ラズシテ自秀タ。何ト」

（30ウ）秀タゾ、ナレバ、智ニハ智、心ニハ心ト秀タマデ

ヨ。」

正法寺04-0042

（42）

倶胝一指。師云、諸問毎レニ有一指ヲ立テタ幾ヲ。代、指ヲ

フツテ、サデ」モ走ヌ〳〵。帀云、何ニカサタゾ。代、サ

テモ走ヌ。帀云、夫ワ何ントテ。代、甕餘」不尽酒一、膝

抱無声ノ琴。心ハ、當則ハ脱体ノ愁情ト心得ル。諸問ーー」

立テタワ、宗師本意ノ如何トモ難レ

述ヲ示シタゾ。サテ向

ゾトト説向シタ」ラバ、不尽ノ禅ハ地ニ落チタ。句モ、甕

ト云ワ、境界ヲサシタ。爰ニ不尽ノ名」酒ワアレドモ、ク

ンデ与ヘラレヌ。コラヱヌ秘曲ハアレドモ、弾ジテ聞セラ

レヌ。是ヲ宗」主大滿ノ愁、佛法中ノ罪人トモ云タゾ。」

正法寺04-0043

（43）

趙刕洗鉢盂。帀云、某甲乍ーー指示シ玉ヘ。刕云、喫粥了

也。僧喫ーー」（31オ）了ト云タ幾ヲ。代、胸ヲ開テ看

ヨ。蓋膽毛何ノ多少有。心ハ、喫ーー了也。」喫ーー了ト

云タワ、帀ノ指示ヲウケガワヌ。某僧有省トワ、コチヨリ

カブセタ」ゾ。サテ亦、爰ガ省ダ。句モ、平生モ胸ノ毛ワ

見難イ物タゾ。看ーート云ハ、和」尚ノ胸モ某甲ノガモ替

ルヿハ走マイト云幾ダ。キレイナ鉢盂ノ洗イ羊」ダヿコソ

多イニ、喫粥ト云ワ、惠命ノヿヲ問テゴザ在ル。師云、恁

麼ノ時ーー何。」代、元ヨリ迷悟渠ヲ無レシ可レキ閉トサス。心、元ヨリ佛

性ニ替ル義ハ走マイゾト云ガ、渠」當人ノ者ダ。是ワ何ン


九九

トモセキトメラレテ在ソ。趙州ノ処ニモ、此ノ僧ノ処ニ

モ、」元ヨリ迷悟ノ沙汰ワ有ツテコソ。」

正法寺04-0044

（44）

至道無難。師云、至道ヲ。何トモ云間ダワ、揀擇ト嫌ウ可

シ。代、師ノ耳」（31ウ）ヲカグ羊（

様）ヲ

シテ皈ル。師云、ソ

レハ何トテ。代、道元無言、以言顕レ

道。師云、」道ノ顕シ

羊ヲ。代、不觸㕝知、不レ

對レ

縁ニ照ス。師云、夫ノ句ヲ説

破セヨ。」代、㕝不觸音、縁ニ不レヌ對照デ走。心ハ、挙処モ

觸レヌ模

ダ。向ゾト述レバ、」揀択言語ニナル。句モ、道

ニ言語ハ無イゾ。サテ亦、言語ヲ以テ道ヲ顕シタ」㕝ト云

ワ、不知タゾ、知タゾ、揀択タゾ、説破モ觸レヌ本智、

不レ

對本照デ於イタゾ。」

正法寺04-0045

（45）

指頭築破。帀云、築破ノ端的ヲ。代、踢倒放身。師云、恁

麼時ーー何。」代、不レ

依二

一法、不レズ過レ

萬法。心ハ、師ヲ

ケ吾モ無イト云心デワ無イ。其ヲバ」空寂ト云。我身ニ非レズ

有ニ、痛自何来ト云ワ、吾ガ身ハ無イガ、痛ハ何ヨリ」来

ツタゾ。ト云ハ、有デモ無ク、無イデモ無イゾ。生デモ無

ク死デモ無イ、一法ニモ依」（32オ）ラズ、諸縁ニモ渡ラ

ヌゾ。爰ヲ三界都盧一点ノ心ト云タゾ。堕ト云モ、此」ノ

ヿヨ。呈ニ社ソ、達磨不来唐土、二祖不往西天デワ有レ。」

正法寺04-0046

（46）

心路絶却。師云、心路絶却ヲ云ヘ。代、踢倒放身。帀云、

恁麼ーー何。」代、痕垢尽光始現ズ。帀云、其ノ光ヲ。代、

拶眼云、我見燈明佛、本」光瑞如此。師云、智ノ現処

ヲ。心、自己真照ノ渕源デ走。帀云、其ハ何トテ。」代、古

今永超圓知体。帀云、其ノ圓知ノ体ヲ。代、大口忘然。心

ハ、永ク」超タト云ハ、始中後ノミヱヌヿダ。」

正法寺04-0047

（47）

勘破ノ話。師云、驀直去ト云タ婆子ノ幾ヲ。代、芭蕉葉上ニ

無秋雨、」従是離人聞断腸。帀云、趙州ノ勘破ノ幾ヲ。

代、犬ヱノ子ガ母ハメイヌデ走。婆子趙州ノ処ヲ一句ニ云

ヘ。代、大海遮」（32ウ）人無意、只時人不レ

得レ

過。心、

是等ワ上参ナホトニ、得道ガミヱヌ。趙州」城ニ路頭ト云

ヿガ在ルト云ワ、平常知兀ノ道ノヿヨ。知不知ハ、兎徑横

徑ヨ。」サテ、大虚廓然ノ道ニ横道ハ無イ。有ルヲ、別而

有ルゾト心得テ、」此ノ僧自愁タゾ。芭蕉ト雨ニ意ハ無

イ。趙刕ノ道ガ大海ダ。更ニ難レ

」窺イ。別ニカマヱル理

ワ無イ。時ノ人ガ過ルヿヲ得ヌ。時人ト云ワ、此ノ僧ノ

ヿ、客」心ヨ。勘破ノ破レト云モ、向ダ。知不知ニ属セ

ヌ、此ノ路道ガ、何ニモ破レテ」出デタゾ。迷タモ道理。」

正法寺04-0048


一〇〇

（48）

無字之話。師云、趙州ノ家ハ、平常ト云テ、一向ニ手ヲ付

ヌヿデハ無イ。古人モ、」無㕝甲裡ニ颺在スルヿ莫レト嫌ウ

タゾ。向云タトテ、悪イデワ無イ。俗訛」（33オ）折角ガ

大切ダ。只當人ニナツテ見デワ。當人ガ本無契當デア郎

ズ。」知是忘覚、不知是無記、凡ニ落スハ無㕝、聖ニ落ス

ワ智解、恁麼」不恁麼トモニクツトナクリ落、自然内外打

成一片デ無クテワ。當則」サヱ半心得タラバ、諸話頭ニ不

審ハ在ルマイ。帀云、有無ニ不レヌ落無ヲ云ヘ。」代、至テ驚

走ス。帀云、恁麼ー何。代、不覚思量暗ニ点頭。師云、」

サテ本無契當ハ、何ント聞ヱタゾ。代、玄功路絶処、安住

不死ノ人。心、」点頭ト云テ、今俄ニ驚タ羊ナヿデワ無

イ。十二時中無ヲ挟ンデ、」修行力ノ打盡テ、吾モ不覚當

着シタホトニ、着語モ不覚ーー頭ト、」打成一片デ、覚ノ

功モ尽テ、吾モ不知、本無ニ契當ダ。有ルガ、暗ト云ワ、

ワキ」（33ウ）マヱワ無イ。末之着モ玄㓛ト云ワ、修ノ功

。参ン為メニ、古人ノ頌（古カ）挙批」判、大老ノ下語ヲ以テ、

キツヽクラベツシテ、匠師家ニ出逢テ、クツトケズリ」落

サレテ、カラリツト成タトキ、路絶デ、修行ノ路スジハ断

タ処デ、天然」ト契當ダ。此ノ境界ガ安住不死ノ人ダ。此

ノ人ニ生死ノ沙汰ハ無イト云。畢」竟ハ當人シタヿデ走

ゾ。」

正法寺04-0049

（49）

観音三昧。師云、雲門ノ聞声ーー心作麼ーー心ト被仰タ幾

ヲ。代、耳デ」見、眼デ聞デ走。心ハ、声聞デ道ヲ悟見色

明心ト云ワ、教意ダ。聞」処見処ニ繋留セヌ時キ、耳デ

ミ、眼デ聞タ、作麼生〳〵デ於イタゾ。帀云、」觀音菩ーー

手放下ーー頭与被仰タキヲ。代、何ンデモ無イ物ガ、何

ン」トモ成テ走。師云、恁ーー何。代、滿目青山。心、

何ーー者ガ餬ーー頭トモ成」（34オ）ツタゾ。句、花紅柳

緑ガ、満目青山ダ。其侭本位ヲミタ。他物ハ有ツテコ」

ソ。見聞ヲ不拂時キ、観音三昧ダ。」

正法寺04-0050

（50）

乾坤一路。師云、十方ーー楚ヲ云ヘ。代、溧然ト立テ、手

打棄テ挙ス。」心ハ、此ノ時四方天地四角トモニ、ジツト

滿タゾ。師云、其ノ證拠ワ。代、卓」ト々

何ズ不

レ

依レラ物ニ、

㚑（霊）

ト々

何ゾ不渡縁。師云、一路涅槃門ヲ。代、不生不滅」

ガ、吾ガ家ノ路スヂデ走。師云、劃這ーー有ヲ云ヘ。

代、佛祖未生空」刧先、只亦今時日用不レ

墮。心ハ、此一

機ハ、佛祖モ未生ノ時ダ。」又今時日用ノ上ニモ有ルゾ。サ

テ亦タ其コニワ不堕物タゾ。雲門ノ拈」扇子云、扇子ーー

盆傾似タリ。會也〳〵ト被仰タキヲ。代、上有」（34ウ）

頂天、下金輪水際迄デ、本分デサヽヱテ走ウ。帀云、畢竟

ヲ。」代、千眼不レ

及レ

見ニ。」


一〇一

正法寺04-0051

（51）

百丈野狐。帀云、不落因果ヲ。代、大修行ナ呈ドニ、落マ

イト云見地」デ落テ走ウ。帀云、其ハ何ントテ。機不レ

離レ

位、堕二

在毒海一ニ。帀云、不」昧因果ヲ。代、正因正果デ

走。師云、其ノ心ヲ云ヘ。代、徹底因果」ノトキ、因果ノ

沙汰ワ走ヌ。師云、轉々不錯、合キ作个甚麼一ト云ヲ云ヘ。」

代、何トカナル可キ〳〵ト挙ス

。心ハ、爰ガ墮脱一収

也。」

正法寺04-0052

（52）

身夜

心参

脱落。師云、脱落ノ正當ヲ。代、一喝放身。帀云、其

コニ句ヲ。代、」万機頓削縁思断。帀云、縁思断ヲ。代、

休。師云、句ヲ。代云、針」（35オ）頭ニ削レ

鉄ヲ。帀云、

其上デ一句。代、罷休得且罷休。帀、其ノ句ヲ」説破セ

ヨ。代、休ヲ休ト持タバ、休デワ走ヌ。帀云、休ノ窮リ羊

ヲ云ヘ。代、一段ノ」風光畫不成。」

正法寺04-0053

（53）

案山点頭ヲ云ヘ。代、天崩レテ大海トナリ、海カレテ山ト

ナツテ走。師云、其ニ」一句。代、當頭ヲ申走トシタワ、

錯テ走。師云、畢竟ー何。代、痕垢尽」時光始現。師云、

自己ノ点処ヲ。代、十分清白清已忘。心ハ、爰ガ知」不到

。帀云、何ントテ視自己如寃家一

トハ云タゾ。代、曽不

知。師云、」夫ハ何ントテ。代、曽テ不知ヌガ知不到デ

走。帀云、過去久遠刧ヨリ不」知證拠ヲ。代、清波不犯意

自異

。帀云、時如何。代、智ニ至テ至」（35ウ）タル會

無イガ、智不到デ走。帀云、働キ羊ヲ。代、道著スレバ頭

角生也。」帀云、畢竟ヲ。代、眼看レ

眼。帀云、轉処ヲ。

代、知尽功忘。師云、木」人低頭皈ルヲ云ヘ。代、能ク至

テ〳〵タ會ノ無イガ、功尽テ走。帀云、何ト」テ皈タデワ

有ルゾ。代、好ク至タガ皈タデ走。帀云、何ントテ尽ルト

ワ云タゾ。」代、全ク知リ走ヌ。帀云、智不到ノ点処ヲ。

代、鶴出銀籠冲霄漢。」帀云、其ノ句ヲ説破セヨ。代、銀

籠ガ智不到、霄漢ガ那辺デ走。帀云、」那辺ヲ云ヘ。代、

混然ト

藏理㕝一ヲ、朕兆卒ニ難レ

明。心ハ、那辺ト理㕝」一般ニ

無弁處一位

。帀云、那辺ノ主ヲ。代、更ニ何トモ色目

ニ分チ」走ヌ。帀云、ソコデ主ヲ。代、正位ノ君ニ尊貴ノ

サタワ走ヌ。師云、主ノ」（36オ）所作ヲ。代云、蒼天〳

〵。師云、夫ワ何ントテ。代、深々密々人難レ

到。師云、」

何ゼ其ホトニワ哭シタゾ。代、難レ

到

。師云、恁麼ーー

如何。代云、」子時當正位。師云、畢竟如何。代、抽身。

帀云、落居ヲ。代、」君臣合同（

道カ）。

帀云、合同時如何。代、

人識二

得スルニ伊一ヲ無由。帀云、無レ

由」時如何。代、彼此混

然無二

分般処一

。帀云、無分般処ヲ。代、数ノ」初物ノ終デ

走。帀云、位裏ノ点側ヲ。代、乾坤初分半夜天、」觸曉ノ玉


一〇二

人夢始ニ破ル。帀云、夢ノ破リ羊ヲ。帀云、分ケ羊ヲ。」

代、百億分身処々真。帀云、処ヘ真ヲ。代、眼ニテハ」

（36ウ）眼ニテワ見、耳ニテワ聞キ、鼻ニ有テワカイデ走。

帀云、證拠ヲ。代云、」百性日用テ不レ

知。帀云、何ントテ

不知デワ有ルゾ。代、滿眼滿耳、全体全」身。師云、那邊

退得、這裏行履ヲ云ヘ。代、圓通大虚、無欠」無餘。帀

云、如何是無餘。代、一圓相ヲ作ス。師云、内ノ主ノ位

ヲ。代、尊嚴」就レ

位ニ曾カツテ

不レ

知。帀云、其ノ本位ヲ。学云、

無始無終デ走。○帀云、南山」歌北山吟スヲ。代、豈不二

伊声一ニ。帀云、何ントテ。帀云、何ントテ。代、スキ」ワ

走ヌ。帀云、句ヲ。代、乾坤大地無二

第二人一

。師云、何ン

トテ。代、只一人トミル」トキ、南山ハ喝シ北山ハ吟ジテ

走。心ハ、一人ノ音声

。帀云、何ントテ兼」（37オ）帯

デワ有ルゾ。代、自己・智不到・那時ノ主ト喚ビ出スモ本

一人デ走。」帀云、物外獨騎千里ノ象、万秊松下撃金鐘一ヲ。

帀云、物外ヲ。」代、一喝。師云、獨騎羊ヲ。代、無第二

人。帀云、千里ノ象ヲ。代、目前」ヲ尽セバ自己渕源デ

走。帀云、證拠ヲ。代、清白ハ普賢ノ」境界デ走。帀云、

金鐘ヲ。代、那辺デ走ウ。帀云、畢竟ヲ如何。代云、」江

村片兩外、野寺夕陽邊。師云、猶ヲモ。代、拶眼、頭上

漫々、」脚下漫々。」

正法寺04-0054

（54）

石霜七去ヲ。帀云、休去歇去ヲ。代、一喝放身。帀云、恁

麼時」（37ウ）如何。蛇脱皮龍蛻レ

骨ヲ。師云、冷湫々地去

ヲ。代、帀ノ前ニ」睡起ノ模樣在リ。帀云、句ヲ。代、鶴鷺

並頭蹈雪眠ル、月」明驚起兩遲疑。帀云、一念万念去ヲ。

代、座禅。帀云、怎麼」時如何。代、古今永超圓智体。帀

云、寒灰枯木去ヲ。代、師ノ」口ニ手ヲ當ル。帀云、恁

麼ーー何。代、折合皈炭裏坐。帀云、古廟」香炉去ヲ。

代、焼バ灰埋バ土ヲ成テ走。帀云、恁ーー如何。代、

深」徑苔生ズ。帀云、一條ノ百練去ヲ。代、久遠今時一致

デ走。師云、怎」ーー何。代、観彼久遠、猶如今日」（38

オ）

正法寺04-0055

（55）

臨済四喝。師云、金剛王寶剱之喝ヲ。代、釘斬

キ々レル鐵ヲ。

帀云、」徹底ヲ。代、山河大地徹デ走。帀云、踞地師子喝

ヲ。代、牙」如剱樹一

、口似二

血盆一ニ。帀云、探竿影草ノ喝

ヲ。代、為賊人心虚。」師云、虚ルト云字ノ上デ、機・賊ゾク

・

性ノ三関ヲ合セヨ看ン。代、賊トミル」ガ幾デ走ウ。帀

云、性ヲ云ヘ。代、森羅万像ヲ虚ト看ルガ、空性」デ走

ウ。帀云、不作用之喝ヲ。代、千喝万喝デ走ウ。帀云、」

句ヲ。代、天上ノ月キ明カニ溪辺ノ雲ハ昏シ。帀云、我ニ有

一喝々ヲ々。」代、大口忘念。帀云、那一喝ヲ。代、貴不

落賊不落喝乱」（38ウ）喝デ走。」


一〇三

正法寺04-0056

（56）

　

正中偏ヲ。代、順ニ居タ呈ニ、法々住自位一ニ走。師云、

巽之卦ヲ。」代、柳緑花紅イ。帀云、君視臣ヲ。代、看レ

空

看レ

此。帀、其コデ一句。代、」相見不レ

揚レ

眉ヲ。帀云、妙

容ーー偏ヲ。帀云、不動ヲ。代、三十二相八十種好」ヲ

具足シタ君デ走。心ハ、妙容ハ不レ

動

。帀云、伸レ

命行㕝

ヲ。代、」君子風吹、少人草偃。師云、直下ヲ看テ、左右

ヲ回顧ヲ。代、左」右是過レウ源ニ。心ハ、正ト云モ偏ト云

モ君デ走ゾ。」

　

偏中正ヲ。師云、何トテ逆ニワ置イタゾ。代、曹洞宗デ

走。帀、何ントテ」（39オ）代、正ヲ正ト云ヱバ、偏デ

走。帀云、夫ワ何ントテ。代、如ト云モ亦変了也。帀

云、」正ノ下ニ留ル処デ一句。代、君子居有二

何ノ鄙一

。帀

云、臣向君ヲ。代、看此」看レ

空。帀云、何ント向タゾ。

代、葵花向日、柳絮随レ

風ニ。帀云、不堕諸異」趣一ニヲ。

代、堕シタト知リ走ヌ。帀云、何ントテ。代、莫レレ作レ

會。帀、」順天應レ

人ヲ。代、看空看レ

此。帀云、天地同

根。帀云、直上ヲ視テ良」久シタルキヲ。代、此ヨリ始

テ、爰ニ皈

走。」

　

正中来ヲ。帀云、正ヲ。代、一幾未萌ノ法身デ走。帀

云、中ヲ。代、不欲」中莫犯莫一

。帀云、未萠ナラバ来ル

マイガ、何トテ来ルトワ云タゾ。代、正ヲ正ト云バ、早

ヤ」（39ウ）来テ走。帀云、君ノ体ヲ以レ

手托看ヨ。帀

云、妙德ヲ。代、妙在一漚ノ」前、豈レヤ容二ン千聖ノ

ヲ。帀

云、尊寧宇一ニヲ。代、問訊合掌云、高名」大虚ニ朗

。心

ハ、柳ハミトリ花ニハ紅イト朗カナゾ。帀、合天裡一ニ羊

ヲ。代、」天ハ地ト合イ、地ハ裡ト合イ、人ハ合レ

裡デ走。

帀云、當二リ人心一ニ羊ヲ。代、拶」眼云、アツ。帀云、以手

空中ニ一点シ羊ヲ。代、胸ヲ打テ一点。帀云、何ント

テ。」代、拄杖頭上ニ挑日月ヲ。心ハ、急度ミル処デ、月ニ

ハ白ク一点シタゾ。」　

兼中至。帀云、裡ガ何ントテ面トナ

ツタゾ。代、此ノ位無賓主一

。帀云、中」ヲ。代、中人ニ無

変動。帀云、至ヲ。代、ドコニモ至テ走。帀云、中ノ人ナ

ガ何ントテ」（40オ）中孚ハ切レタゾ。代、切レタモ中ノ

人テ走。灵（霊）

幾（機）

弘聖道一ヲ、真智利」群生一ヲ。代、看空靈機

弘ーー道ト云テ、此ヲミル

。帀云、豚魚マデ」モ吉

ヲ。代、豚魚マデモ、此ノ光氣デ走。帀云、何ントテ。

代、是ト持タル」カドワ、破レテ走。帀云、破ルヽワ、世

間ノ空ヨ。佛性ノ空ヲ。代、作二

圓相一ヲ。」　

兼中到。師云、

到ヲ。代、久遠之法身ヲ、今時ニ引出

弄ズルガ到」デ

走。帀云、中ヲ。代、中人ニ無変、動不可犯。帀云、君臣

合道ヲ。代云、」上和下睦、陰陽相随。師云、何ガ混然シ

タゾ。代、天ハ地ト混然シ、君」ハ臣ト混然シ、大ニ

無

外、小ニ

無内。帀云、大人ヲ。代、看直上一ヲ、直キ」下ヲ

看云、頭上漫々、脚下漫々。帀云、継レ

明照二

四方一ヲヲ。


一〇四

代、ドツコ」（40ウ）モ大人ノ胸中デ走。帀云、其コデ一

句。代、主人ハ睡熟客心驚ク。」帀云、好手誇リ羊ヲ。代、

全提ト持タラバ、説レ

食終不レ

能飽ヿ。帀」云、畢竟ヲ。

代、滿瓶傾不出、大地ニ無二シ飢人一

。」

正法寺04-0057

（57）

宏智四借。師云、借レテ功ヲ明位一ヲヲ。代、偏デ正ヲ兼、用ハ

在二

体処一ニデ」走。帀云、句ヲ。代、依二テ舟ヲ蘆花一ニ吟不眠、

不知身在二ヿヲ廣漢宮一ニ。師云、」借レ

位明レ

功ヲ。代、正デ偏

ヲ兼子、体ハ用ニ有ル処デ走。師云、句ヲ。」代、照体倶

在二リ位裏一ニ。帀云、借々不借々ヲ。代、偏正去来、不レ

堕二

偏」正一ニ。帀云、夫ノ證拠ヲ。代、中。師云、全超不借々

ヲ。代、異類更異」類デ走。帀云、句ヲ。代、全超無影

迹、古今不堕古今ノ機一ニ。」（41オ）

正法寺04-0058

（58）

那時三人。帀云、本来人ヲ。代、十二時中、出息入息。帀

云、幻人ヲ。代、頭」三尺知是誰。帀云、無位ノ真人ヲ。

代、妙体本来無二シ処一々

。」

正法寺04-0059

（59）

甘露巻。帀云、大悟十八ヲ。代、大口忘然。師云、其ハ何

ントテ。代、」表裏情忘。帀云、何ントテ十八デハ有ル

ゾ。代、六根・六識・六境界」ガ空ズル処デ走ウ。心ハ、

自己ノ九位、目前ノ九位、十八也。」

正法寺04-0060

（60）

小悟無数ヲ云ヘ。代、一喝放身。帀云、其ハ何ントテ。

代、心空境」寂躰如々。心ハ、八万四千無数ノ毛孔ハ、無

量ノ諸天諸」神聖衆也。八万四千ノ光リトモ云、迷則八万

四千ノ塵労妄想

。」悟則八万四千陀羅尼門

。呈ニ、一

喝放身、法界ノ性ニホツカト」（41ウ）モトツク処、小悟

無数

。八万四千ヲ明ル

。此ノトキ、身境空寂」躰如々

デ、隔テ無イゾ。目録之内如是記之、後代之」子孫之為

。」△其外曹洞三種君

正法寺04-0061

（61）

世尊拈華。師云、衆ニ示シ羊ヲ。代、勘破了也。心ハ、拈

華ノ誰ソ。」勘弁也。向上ノ勘弁也。帀云、微笑ノ幾ヲ。

代、何ンノ云イヿカ有ラン。」

正法寺04-0062

（62）

孤峯不白。帀云、雪ーー不白被仰タ幾ヲ。代、至テ挙ヲ握

テ握バ、」團開ケバ消

走。帀云、正當恁麼時如何。代、

偏正曽不離本」位一ヲ。心ハ、握レバ功一色雪キーー処、偏


一〇五

タゾ。開ケバ消、爰ガ孤峯黒処タゾ。」（42オ）主ノ在処

也。帀云、異中異、諸山ーー堕ヲ。代、生也不道、死也不

道。」

正法寺04-0063

（63）

六祖不階級。帀云、階級ニ不落底ノ一人ヲ。代、忘然

坐

ス。帀云、正當」恁麼ーー何。代、午日打三更。師云、亦

不爲ヲ。代、至テ極睡ス。師云、時」如何。代、午頭按尾

上一ニ、豈借大陽機一ヲ。」

正法寺04-0064

（64）

五祖演他是誰。帀云、誰ヲ。手脚ヲモ不調、帀ノ膝ニ打掛

テ臥ス。師」云、畢竟二句ヲ。代、児童日不到、都来不レ

解レ

愁一ヲ。又、頭枕二

衡山一ニ、」足蹈二

北岳一ヲ。私云、須弥ーー

硯トシタ人モ、児童ノ肌

。」

正法寺04-0065

（65）

栢樹子。帀云、来意ヲ直ニ呈シ来レ。代、何ンデモチヤツ

ト挙ス。師云、句」ヲ。代、常憶江南三月裡ーー香シ。」

（42ウ）

正法寺04-0066

（66）

南岳得力句。帀云、向人挙得麼。龐云、指自龐公ト云タ幾

ヲ。代、何ン」デモチヤツト挙ス。師云、其ハ何ントテ。

説似一物即不中。師云、笠子」ヲ戴キ去ツタ幾ヲ。代、只

行テ皈ル。師云、ソレハ何ントテ。汚染不可

。類句、」

星前人ーー無由。上六則ノ終

。」

正法寺04-0067

（67）

道吾智不到。師云、智不到ヲ。代、抽身ス。心ハ、道バ頭

角ヨ。帀云、夫ハ」何ントテ。代、夜半ヲ抽身

走ウ。帀

云、正當ーー何。代、祖佛凡夫ーー深シ。」帀、咬破指頭

出血タ幾ヲ。代、トツクト坐皈ル。帀、正ーー何。代、

夜半ニ」失却牛一ヲ。帀云、證拠ヲ。代、南無三宝。師承當ニ

句ヲ。代、従冥入」於冥、永不聞佛名。」（43オ）

正法寺04-0068

（68）

万法不侶。師云、不侶底ノ主ニ相見ヲ。代、兩手ヲ垂テ一

座ス。師云、何」ントテ、一人相見デワ在ルゾ。代、此ノ

時キ、上有ーー下ーー際迄デ、不侶底ノ一」人デ拄テ走。

師云、正當恁麼時如何。代、清波不ーー異。」

正法寺04-0069

（69）

船子夾山。師云、点頭三下ノ処ヲ。代、大口忘然。心、閻

清波破

。」師云、橈下ノ誰ヲ當人ニナツテ云ヘ。代、無

我相無人相。心ハ、瑞岩主」人公應諾下ノ誰、此ノ圖ニ合


一〇六

ス可シ。」

正法寺04-0070

（70）

外道問佛。師云、拠坐良久、開ーー入ヲ。代、アツカトシ

テ坐ス。師云、句ヲ。」

代云、始淨瑠璃中、内現真金像。」

正法寺04-0071

（71）

德山吸尽去也。帀云、三世諸佛ーー上ニト、吸尽去也ヲ。

代、一座ス。帀云、」（43ウ）正當恁麼時如何。代、申走ズ

言葉ハ走ヌ。師云、猶ーー笑ヲ。代云、」漁翁一棹百雜

砕、笑入二

芦花万里ノ秋一ニ。」

正法寺04-0072

（72）

曹洞機。師云、曹洞ノキト問ヱバ、以手覆却ヲ。代、前ニ

入テ其侭皈ヲ。」帀云、樓閣千家月ーー下ルト云、此ノ一頌

ヲ。代、昨夜三更月到窓。帀云、其」ノ句ヲ説破セヨ。

代、月モ窓前迄デコソ到タレ。帀云、句ヲ。代、登到」須

弥一ニ、猶天有在。」

正法寺04-0073

（73）

万機休罷。帀云、自己・目前・那時、三種ニ分タガ、主人

ハ一人タゾ。呈ニ、先ス」万機休罷シ羊ヲ。代、野邊ニサ

ラシタ白骨デ走。師云、正當ーー何。代、」松風連髑髏一

ヲ。師云、千聖不携ヲ。代、情乾ーー尽ーー入帝郷一ニ。」

（44オ）

正法寺04-0074

（74）

乾峰三種病。帀云、三種ノ病ヲ。代、忘智寂ノ三ツデ走。

師云、三種ノ光」ヲ。代、生ノ光リ死ノ光リデ走。師云、

照用同時ヲ。代、其デモ無イ者、是」デモ無イ者ノ。師

云、向上ノ一竅ヲ。代、一坐

皈ル。」

正法寺04-0075

（75）

香嚴樹上。帀云、樹上ヲ。代、膝ノ上ニ打掛テ、何ントシ

タゾ〳〵ト云テ、次第」〳〵ニ低頭ス。帀云、正當ーー

何。代、寒蟬抱枯木鳴ーー不レ

回レ

首。師云、」虎頭上坐ノ

幾ヲ。代、人ニ無二キハ遠盧（慮カ）、必有二リ近憂一イ。」

正法寺04-0076

（76）

瑞岩主人公。帀云、主人ヲ。代、喚底應ズル底ニ不落ガ、

主人デ走。」帀云、醒々底ヲ。代云、膝ニ打掛ツテ睡テ又

醒ル模羊有リ。帀云、」句ヲ。代、佳人ーー梳。師云、他

人ノーー底ヲ。代、寒蟬ーー回ズ。」（44ウ）

正法寺04-0077

（77）


一〇七

馬祖不安。帀云、不安〳〵ト被レ

仰タ幾ヲ。代唯音ヲ作

、次第〳ニ〵」低頭ス。帀云、句ヲ。代、此ノ道天真、本ト

無二シ名字一

。帀云、院主和尚ーー」如何ト云キヲ。代、師ノ

旨ヲナデヽ、和尚ノ病ワ、何ニ病デ走。○死ニコカレ」入

道カナ。師云、句ヲ。代、随レ

邪逐レ

悪ヲ。帀云、日面月面

佛ヲ。代、」通身無影像。」

正法寺04-0078

（78）

南泉牡丹花。帀云、召大夫一ト処ヲ。代、師ノヒザニ打掛テ

睡起スル模」羊有リ。帀云、夫ワ何ントテ。代、サメタカ

サメヌカ。師云、句ヲ。代、鴛鴦瓦」上ーー驚ク。此ノ十

八則ノ話頭、三叚階級差別心得干（干腰）要者也。君訣」始終之参

是也。

　　

正法住山比丘大休良通叟　

花押」（45オ）（終わり）

【参考資料（五）正法寺所蔵『月泉派秘参』（その二）】

　　

月泉派獨則透（表紙見返）

正法寺05-0001

（１）

趙州地獄ヲ。代、三界ガ地獄デ走。師云、其ハ何トテ。」

代、三界無安、猶如火宅。師云、地獄ノ脱シ羊ヲ。代、一

心不生、万法」無レ

咎。心、現成ニ引ルヽガ、ニヱ皈タ㕝

タゾ。爰ヲ火宅トミタ。サテ無安ヨ。」爰ニ妄心ヲ生ヌ時

キ、獄ハ破テノケタゾ。咎ト云ハ、獄ヨ。ト云ハ、万法ニ

對」對タ知ズ。閑㕝ヲ心頭ニ掛ヌ時、地獄天堂ワアツテ

コソ。」

正法寺05-0002

（２）

芭蕉拄杖。師云、有与、無バ奪ト云示衆ノ機ヲ。是ヲ先

ツ」當行ガ肝要ダ。有見無見、手ヲ出、口ヲ開キ、様ヲ

作、模ヲナシテ、」（１オ）横走抽身、其ハミナ拄杖ニ取付

テ、万刧ノ繋驢橛ト云タゾ。」ト云テ、一向ニ觸ヌハ、未

得語證ト云テ、凡夫ヨ。如是行ラレテ、何ヤ郎」呈セント

スル処ヲ。師、学ヲホカト托開

云、恁麼時如何。代、諸

天」擎花無路、外道攅見無門。心ハ、終ニ向ゾト領掌サセ

ヌゾ。」諸天タゾ、外道タゾト云ハ、自己ノ妄想ヲ云タ

ゾ。クツト接ツメラレテ、」蹈放ス當頭、六眼外道、天魔

諸天、勝殊ノ道ガアツテコソ。」此時只拄杖横テ居タマデ

ヨ。向ウ叶底ヲ芭蕉モ接シタゾ。」（１ウ）

一則ナリトモ、此様ナ処ヲ能ク参セデワ。師云、扶過断橋

水、」伴皈無月村ト云、無門ノ判語ヲ云ヘ。代、断橋デワ

橋トナリ、無」月デ燈トナツテ走。心、断橋ト云イ、無月

ト云ワ、境界ヲ蹈放ス」驀當頭ノヨ。其コデ三界ニ掛渡シ

タハシ、大千ニ輝タ霊光タゾ。」

正法寺05-0003


一〇八

（３）

啐啄同時。師云、啐啄同時幾（

機）ヲ

云ヘ。代、帀（師）ヲ

把住シテ噫

ト」牙歯ヲ咬ム。師、学ヲツキ倒

、サデ走ヌ。代、師ヲ

托開

、」サデ走ゾ。師云、句ヲ。拳的相應、心眼相照。

師云、啐啄ー時ノ」（２オ）用ヲ言ヘ。代、金鎚影動、宝

剱光寒。師云、其句ノ心ヲ。」代、拳ヲ握ツテ、袖ノ内ウチ

ニ

藏シテ、牙歯ヲジツト咬ム。又此僧不レ

契。」雲門會裏ニ至

テ、挙二

前話一ヲ。有二

一僧一

云、南院棒折那。」其僧豁然有

省。其後風穴ケ

ツ

云、汝ジ當時作麼生會ン。僧云、」如有燈影裏

行相似タリト云タルキヲ。代、ヲボロ々々々トシテ走。」心

ハ、具眼底ガ無クンバ、機ハ動テコソ。何ント羊ナガ同時

ノキタゾ。」クツト接シツメテ、其驀下デ大幾（

機）ヲ發スル

ガ、同時ノ幾タゾ。」（２ウ）用ト云ワ、最初ノ當リ派ガ

ツヽトツヨイニ依テ、肚裏ガ白直ト」作タゾ。悪クスレ

バ、最初ニ繋留スルゾ。爰ヲ本分ノ作家ト云タゾ。」

正法寺05-0004

（４）

宝鏡三昧疂変参。師云、重離為甚麼宝鏡三昧ト」云タゾ。

代、三世不昧ノ鏡デ走。師云、離ハ南方ノ卦、火

。心譬

トハ、」為甚麼云タゾ。代、離ノ卦ニ至ツテ、説法ハ走ヌ。

師云、離卦ノ」指処ヲ。代、這个其㷔ニ不可觸ト云テ、身ヲ

引ク也。師云、句ヲ。」代、觸著両門燎却ス。帀云、好手

ナラバ、一ツデア郎ズガ、」（３オ）何トテ好手手中ニ呈好

手トハ云タゾ。代、伏犠之疂ダ好手ニ」曹山ノ好手ヲ呈

走。師云、句ヲ。代、獨掌謾ニ不鳴。心、兩ラヲシ合テ」

ミデワ、聞ヱヌゾ。師云、紅心心裡中紅心羊ヲ。代、以前

伏犠ノ疂ダ」紅心ニ、曹山ノ紅心ガ當テ走。師云、何ント

シテカ中ツタゾ。代、拶眼ス。」師云、何トテ。代、以心

傳心。急度拶眼ノ時、此心ニ中タゾ。師云、何トテ」筭木

ヲ六爻トハ云タゾ。代、眼耳鼻舌身意デ走。師云、六爻ヲ

バ何トテ」重子タゾ。代、眼与色ト合、鼻ヲバ香ト合、口

ヲバ与味合デ走。師云、」（３ウ）天地人各下麗羊ヲ。代、

良久而直上ヨリ直下ヲ視下云、」天ノ天外ヨリ地ノ地下ニ

至ルマデ、下ツイテ更ニ窮源ハ走ヌ。師云、」天地二枚ニ

破ル処デ一句。代、巽トナリ兌トナツテ走。師云、次ニ上

ヲ重テ、」其コデ筭木ヲカヱス羊ヲ云ヘ。代、眼耳鼻舌身

意デ走。師云、」其ハ已前ニ同ジイワ。代、地水火風空デ

走。師云、其ハ一ツ余タワ。代、心ヲ」余シテ走。師云、

何ントテ。代、天ト喚、地ト喚、火ト喚、水ト喚、風ト喚ダ

モ、」心ノ作業トミレバ、一ツ余ツテ走。師云、其コデ何

ト余ツタゾ。代、法々住自位。」（４オ）心ハ、其ノ位々々

ニ住シタガ、ソコニ知ラレヌ者ガ有ル時キ余ツタゾ。師

云、天地人」各上麗羊ヨ。代、良久

直下ヨリ直上ヲミテ

云、地ノ地下ヨリ」天ノ天外迄デ、上リツイテ更ニ窮源ハ

走。師云、上麗下麗テ、」正回偏互ル処デ一句。代、〆竪

窮三際、横亘十方。師云、合テ」離選兌ノ三ツヲ。代、天


一〇九

地人ノ三際デ走。師云、天地人ノ三際ナラバ、」中孚ノ卦

ノ中ハ切レマイガ、何トテ切レタゾ。代、人ト云ヿハ、昨

日今日」始テ走。師云、何トテ中ノ人ニ無変動ト云タゾ。

代、天喚地ト」（４ウ）喚起ハ、人ノ作息トミレバ、終ニ変

ジ走ヌ。師云、巽兌中孚ノ三卦ヲ。」代、法報應ノ三人デ

走。師云、何トテ。代、法身ニアル報身、々ニ々アル」化身

デ走。師云、変成レ

五ト

羊ヲ。代、春生夏長秋収冬藏

ルヽ」間ハ、変デ走。師云、大過ノ上下ワ、何ントテ切レ

タゾ。代、直下ヲミテ、」ドコヨリドコマデ切透タヤ郎、

更窮源ハ走ヌ。師云、何トテ。代、離ノ」卦デ走。師云、

离ノ卦ノ体ヲ。代、法身無相。心ハ、心ガ無相ニ切透」タ

ゾ。師云、离ノ宮中ヲ。代、作二

圓相一ヲ。師云、其デ回互

宛轉、」（５オ）環如無端ト云ニ、何ガ回タゾ。代、夜ト回

昼ト回テ走。師云、離ノ」為三為五羊ヲ。代、法報應ト

モ、五分法ノ香トモ成テ走。」心ハ、五分法身香トハ、五

蘊ノヿ

。師云、蜜傳ヲ。代、千聖モ亦不」識。師云、不

識ヲ。代、离ヨリ始テ離ニ収タは、千聖モ不審々々。」師

云、蜜傳且置ト云タ機ヲ。代、野老山老トナル処デ、蜜傳

底ハ」自隱テ走。師云、好手トハ、誰ガ手タゾ。代、野老

山老ノ鋤黎」钁頭ガ好手デ走。心、野老ーー老ガ夫ダデ

ワ無イ、其上デミヤウズ。」（５ウ）師云、一時掀却卦盤シ

タ幾ヲ。代、天地崩裂。師云、其コデ」良久ヲ。代、一塵

不立。心、疂ム間ハ、知見解會妄想ヨ。掀却ハ」一塵不レ

立ヌゾ。帀云、殿閣ヲ。代、指胸驀爰デ走。師云、」生微

凉ヲ。代、嘘一声ス。師云、其コデ一句。代、空合空礼拜

去。」

正法寺05-0005

（５）

生下未分之話　

師云、生下未分ヲ云ヘ。代、元来云ヲウズ

㕝ハ」走ヌ。師云、夫ハ何トテ。代、道元無語。心ハ、

生ーー分ト云テ、生テ東西」南北ヲ分ヌト計リ心得テハ悪

イ。匠師家ニ是不是背觸ヲ」（６オ）以テ、クツトセメツメ

ラレテ、生下端的ニ今陶タヿダ。句モ爰ノ」他ニ觸レヌ処

ヲ道ト云タ。無レ

言ト云テ、物モ云ワヌ羊ナヿデワ無イ

ゾ。」言ハ、迷悟生死ヨ。爰ニ至テミレバ、其ノ沙汰ワ有

テ社ソ、向陶テミサシ。」生ジタガ、未分処ワ大切ノ心得

デ走ゾ。證而去ル。」

正法寺05-0006

（６）

見明星悟道。師云、一見悟道ヲ。代、拶眼。師云、恁麼

時ー何。代、」父母初生眼、悉見三千界。心ハ、只拶眼シ

タ処ガ、悟道ダデハ」無イ。六秊端坐ノ功ガ積呈ト、此ト

ガ驀一ツニ穿ル徑チ、胸ノ」（６ウ）㕝タゾ。ホトニ社

ソ、自己目前一致トミルヿデワ有レ。句モ父ーー眼ト云

テ、」何ニガ生子ノ眼ノ㕝デハア郎ズ。一見ノ直下、我ヲ生

ダ。父母モ無ク」天地モ無イ。此ノトキ悉見デ居タゾ。爰


一一〇

ヲ初生眼ト云タ。三千界」ト分テコソ。時キガ、同時ダ

ゾ。踈ニ心得、悟道ノ肌ニツカレヌゾ。」

正法寺05-0007

（７）

撃竹悟道。師云、悟道端的ヲ。代、物ニ驚タル風情ニシテ

耳ヲ」傾ル

。師、恁麼時如何。代、通身無内外。心、通

身ノ時キ、」内外ハ無イゾ。内外ト云ワ、自己目前ヨ。悟

道一致ヨ。サテ又挙処」（７オ）大事ノ心ガアル。能念労

スベシ。師云、爰迄デハ、如来禅ノ契派ダ。」祖師禅ガ無

クテハ。此ノ

ナ折角ヲ知ラズンバ、師トハナラレヌ

ゾ。」頌ニモ、已前未明ーー幾ト云タゾ。代、睡リ覚ムル

ニシテ、アツト云

。」心、悪スレバ、空有ノ二ツニナ

リ、悟リニナル、有無迷悟不落幾ノ」ミセシメ羊タゾ。洞

家デ沈ヌ一氣虚㚑（

霊）空

ノ妙ノヿヨ。」

正法寺05-0008

（８）

見桃花悟道。師、見ーー道ヲ。代、兩手ヲモ垂、兩脚ヲ

モ蹈ミ」出シテ、アツ〳〵ト云。師云、恁麼時如何。代、

聖人無己。心得ハ、」（７ウ）三十年摘葉抽枝ト云ハ、見聞

ノ横枝妄葉ヲ拂捨テ々々テ、」一真實ミデミキ斗ニ打成

テ、アノ桃花ト、爰ガマツ一ツニナツテ」居タソ。句モ己

ト云は、識智妄相ヲ云。其ニクミセヌヲ聖人ト云」時コソ

一見デワアレ。少モ筋ガデ、解會ガアラバ、悟リ眼ヨ。師

云、」玄沙敢保未徹ト被レ

仰タ幾ヲ。代、無為無事底人、猶

有」金鎖ノ難。心、マツ此句、内裡デ上々ノ人達チノ衣ノ

襟スソ

ニ鎖ヲ下ヲ

スト云。」是モ上上ノ人ニモズイヲサセマイ為

メタゾ。爰デモ一見ノ処デ、」（８オ）夏シヨク艱難ヲ知ラ

ヌ上々ニ陶タヲモ、マダヲモ老兄ハ未徹ヨト、」許サヌ幾

ダ。何ーーバ、悟道ガ万刧ニモハズシ難金鎖ノ難ヨ。サテ

又、」徹ト云ハ、物ニ當テ極リノ有㕝未徹ト云ハ、虚空ヲ

打タ如クデ、」イタミノ無イヲ云呈ニ、玄沙未徹ト云処

デ、猶モシマツタヿダ。」

正法寺05-0009

（９）

胡子無鬚。師云、、西天胡子、因甚麼無鬚ヲ云ヘ。代、竪

説横説ガ、眉鬚堕落シタ㕝デ走。師云、其ハ何トテ。」

代、口是禍門。心ハ、先ツ鬚ト云ハ、見地ノヿダ。六宗ヲ

破テ、此土ニ」（８ウ）到テハ、兩魏ノ二帝ヲ接シ、随分ノ

祖師ヲ何トテヒゲ無イトハ」云タゾト可レ

請。挙処ハ、本

分本祖ニ至テ、自他ノ相モ無ク、接シ羊ズ」道理モ無イゾ

ト云処デ、サテヒゲワ落タハ、句モ是ハ佛ダ、屋裡ノ」一

佛本祖ニ至テハ、向ゾト述レバ、失スルゾ。又古㕝ノ時

モ、一木ノ中ヲ含デ、」舌ヲ動ズンバ、大水ノ処ニ至郎ダ

ゾ。㕝ヲ説ントシタニ依テ、殻ヲ」打破ツタゾ。サテ、亀

ト云ハ、火

。心ノ喩デ、本心ヲ失スルゾト云ウ為ダ。」

師云、或庵ノ本形ヲ云ヘ。代、某甲有一双眉。心ハ、一双ノ


一一一

眉ト云ハ、」（９オ）出世ノ一佛ニ見ヱズ、西来ノ達磨ニ相

見セズ、娘生ノ眉デ」居タト云テ、乍レ

生居タデワ無イ。

爰ニ好ク陶テ達磨ヲ」欺タ㕝ダ。」

正法寺05-0010

（10）

上来之話。師云、生死迷悟ノ離レ羊ヲ。代、師ノ額ト我ガ

額ト、」ハツチト打合。師云、恁麼ー何。代、墮。師云、

其ノ墮ヲ説破セヨ。」代、ドモ（

コ）ニモアルガ、ドコニモ走

ヌ。師、其ハ何トテ、代、迢々空刧収不得、」豈三

為塵機ノ

作二

繋留一ヲ。心ハ、生ツ是ハ上ト来トハ、久遠ト」（９ウ）

今時ダ。向云立、古今天地ニ落ヌ処ヲ、迷悟ノ離派ト云タ

挙処ハ。」道叟和尚ノ鍜治屋デ御覧ジタ。足シヲフミ流

鎚ヲ打ツ者ガ取リ」ハズシテ、カラス子ヲ、ハツチト打

テ、アツト云ヲミテ、此ノ話叶テ、師ノ嗣法廿五」人、此

話、山僧徹セリト被仰タ。此端的釈迦額ト、ハツチト打合

セタ」ト云テ、有相ノ釈迦ノヿデワ無イ。此トキ、生死迷

悟ヲ打离タ。句モ、」堕ワ落居ノ義ト註シタ呈ニ、一点ノ

心ノ㕝ダ。此レガ物々ニ々」堕シタ。有レドモ、取テ出ダ

サレヌ。花紅柳緑、生死迷悟ニツレタガ、其」（10オ）其

ニアラヌゾ。句モ、迢々ハ高兒、ハルカト誦ンダ。ト云

ハ、空刧已前」ト云ウガ為メダゾ、ト云テ、又遠イヿデワ

無イ。サテ又タ、此一点ノ」心ワ、空刧ニモ留ラヌゾ。况

ヤ今時ノ塵機ニハ、何ガ繋留」生ズゾ。今ーー幾ト云ハ、

生死ーー悟ヨ。師云、畢竟ヲ。代、佛祖未」生空刧外、正

偏不墮有無機。心、佛祖ト云ハ、出世邊ナ呈ニ、」出派上

来ニ將タ。未生ーー外ト云ハ、佛祖モヨリツカヌ、偏正有

無、」生死ーー悟ヨ。幾ニ不墮、其間ダヲバ、飛ノイタ

ハ、サテ又、久遠」（10ウ）今時一枚ト心得テ、諸回向ナ

ドニモ可讀。」

正法寺05-0011

（11）

一卓之話。帀云、一卓下ヲ。代、驚身ス。云、恁ーー如

何。代、墮。」師云、其ハ何トテ。代、内外虚玄、徹底空

寂。心ハ、卓下ト云イ、」拄杖ヲ卓スナドヽ云モ、迷悟ヲ

云タ。离レハニ卓スル物ダ。呈ニ、」是ハ前話上則ダ。即

今ハ、拄杖ノヿダ。々々ト云ハ、一著子ト云テ、」境界ノヿ

ダ。驚身ノ端的、迷悟凡聖ツヽヌケタゾ。ト云テ、」最初

デハナシ。此端的一点ノ心ガ、何ニモ墮タ。向見届タ

時、」（11オ）虚玄ノ大道ダ。何ニガ内外ハア郎ズ。踊躍自

然ニ全体露タ」㕝ダ。畢竟生ーー悟ノ离派ト心得タガ、ヨ

ウ走ゾ。」

正法寺05-0012

（12）

兜卒三関。師云、撥草参玄ハ、啚見性、即今上人性ヲ云

ヘ。」マツ是ハ撥草ーー玄ノ客ト云デ、見性ヲハカルゾ。

草ト云ハ、迷ヨ。」撥ト云ハ、悟ヨ。其ノ間ヲ拂ツタ時


一一二

キ、即今上人ノ性、直指見性ノ旨ダ」ホトニ、即今ーー性

ヲ。代、兩手ヲ展開シテ拶眼

看。心ハ、兩ーーハ、」迷

悟ノ体ダ。拶眼

看、直指見性ヨ。師云、證拠ヲ。代、」

（11ウ）説似一物即不中。心ハ、爰ノ道理ハ説似スレバ、

ハズルヽゾ。」師云、其一物ヲ畫寫シ来レ。代、師ノ膝ヲ

丁ト打テ、此老賊。心ハ、」勘弁

。師云、識得自性方ニ

脱生死、眼光落地時如何。」代、渠デ走。師云、證拠ヲ。

代、渠無生死相。心、畫来レト云処ヲ。」此老僧ハ、又タ

人ヲ賣労セラヽナト云処デ、自性ヲーーシタゾ。ト云

テ、」眼ーー処デハ、何ヲ体トハ生ズゾ。是ヲ二関目ト云

タゾ。其デ渠ヲ」看タマデヨ。呈ニ、渠ニ生死ハアツテコ

ソト、迷悟ヲ離离レタゾ。師云、」（12オ）生死脱得便去処

ヲ知、四大分離向甚麼処一ニ去。代云、是何物ゾ」々々々。

心、四大分離ノ処デモ、卒度失セヌ一物タゾ。爰千聖ヨリ

何物ゾ」々々々、誰々デ置タゾ。爰ガ三関ダ。帀云、句

ヲ。代、迢ーー留一ヲ。」是ハ、已前ニ同ジイ、総

此ノ三則

ヲバ、一ニ束テ唱ル見性ノ話ト戴ル

。」

正法寺05-0013

（13）

雲門話墮。師云、光明ーー豈ーー処ヲ。此僧是有レバ、話

墮也ト被仰タ」幾ヲ。是ハマツ挙処呈処ハ是処タゾ。其

ハ、長拙秀才ガ見解ダゾ。」代、僧挙ントスル処ヲ話墮也

ト、ホカトツキ倒

云、恁麼ーー何。」（12ウ）代、古木逗

圓孔。心ハ、雲門宗は、死句ヲ嫌ウ。門閫ノ當頭デ指シ透

シタゾ。」呈ニ、話墮也ト、ホカトツキ倒ス驀下ニ、自己ノ

光明ガカツカトシタゾ。句モ、」古木ーー透ズト、卒度モ

透ワ無イゾ。此ノ僧ノ一問ワチツト角ドガアル。雲門ノ」

禅ニ逢テ、其カドワ失タゾ。○亦當門戸ニ斬字ノ参ト云㕝

ガアル。」師云、光明ーー沙ヲ。代、代、光別・明別・寂

照別・遍河沙別ト挙ス。師云、」其ハ何トテ。代、一寸ノ

金一寸ノ

泥沙。心、光ハ光、明ハ明、寂ハ

寂、照ハ

照、

別々」デツヽカヌ時キ、遍河沙ダゾ。此光明ナラザル処ワ

無イ呈ニ、句モ、金ハ金、泥沙ハ」（13オ）泥沙、別々ノ時

キ、他物ハ無ゾ。帀云、雲門ノ話墮也ト被仰タ幾ヲ。」

代、我々渠々々、東西南北可。心、我ト云ハ、大我ノ

㕝、本来ノ我レヲ云」呈ニ、我ハ我、渠ハ渠、此時キ東

西ーー可。乾坤大地、我レ渠デ拄ヘタゾ。」此ノ時物々ニ

堕シテ居タゾ。スキガ有ツテコソ、是モ當到ト可心得。」

正法寺05-0014

（14）

雲門六不収。師云、六不収ヲ。先ズ六不収境界ガ有ルゾ。

六ト云ハ、南北」東西ニ天地ヲ合テモ取リツメテハ。六根

ヲモ法身ノトキ、六不収ダ。六ーーヲ。」代云、目口ヲア

ツカト開キ、手脚ヲモトヽノヱズ、フミノベテ居ヨ

ル

。心ハ、

法身」（13ウ）當的ノナリダゾ。帀云、恁麼時如何。代、

清波不犯意自異。心ハ、」當頭デ風波ガクツト収テ、二度


一一三

ト起ヌゾ。サテ又、収テミヌ家ダゾ。」七顚八倒ガ法身六

不ーー收ダゾ。自異也。是ヲ新定ノ幾トモ」云、亦他門

デワ、夾山点頭万法不侶ヲ一ツニミル、挙処拶眼デ、」句

ハ、純一無雜、具足清白ト首尾スル、竹林寺石頭下デ

ハ、」二ツニミタ。橈下頓玄下デ、六不収ト落付タ。爰ヲ

不点」一色トモ云呈ニコソ。サテ、葦葉ーー秋。又一成秋

トハ、頌ジタレ。」（14オ）

正法寺05-0015

（15）

諸佛出身。帀云、諸ーー問ヱバ、東ーー行、問答一般ニ挙

セ。代、」鳴レ

鐘トモ、犬吠タトモ、目デ挙。帀云、恁广時

如何。代、是ハ即」没交渉。心、雲門ノゴザツタ東ノ山ノ

影ガ、面前ノ水ニ移タ時分」ナ呈ドニ、回ズ東ーー行ト

被仰タ。向斗云テモ、余リ听ヱヌ。爰ヘ」屋裏ノ一佛ガチ

ヤツト現ジタゾ。呈ニ、目デ當人セヨダ。思量疑ニ々」渡

バ、化身佛ヨ。句モ、是ト思量セバ、川ノ向ノジヤウ門

デ、ヨツテモ」付ヌヿヨ。○天寧階ノ當則ヲ挙

、我即不

然。薫ーー微凉」ト被仰タ幾ヲ。代、ヤラスズシヤ。心、

夏日苦シイ時分、ヒヤリト吹タ。」（14ウ）爰殿ガ、其佛殿

上トナツタゾ。サテ、諸佛ーー身ハ、聞ヘヌカ。」

正法寺05-0016

（16）

非思量之話。師云、問答一句ニ云ヘ。久シク可嫌々ガ當行

ダゾ。」何ト云モ、思量タゾ。識情タゾ。代、時節因デ可レ

挙如レ

前ニ。師云、」恁麼時如何。代、無味談塞二

断人口一ヲ。

心、思量ニ渡ヌ當頭ガ、無」味ノ談タゾ。量ルハ、人口

ヨ。灯籠ガサケビ、露柱ガ吐タト云モ、爰ノ」㕝ダ。如是

計較按排ニ度ラヌガ、活句タゾ。」

正法寺05-0017

（17）

南泉斬猫。師云、兩堂首座ノ猫児ヲ争処ヲ斬却シ羊ヲ。」

（14オ）代、出ル処ヲ一ズ

ント寸

ト切テ走。師云、恁麼ーー何。

代、一心不生、万法無咎。」心、三毒ハ諸著ノ根本也シタ

呈ニ、諸ーー本ヲ切ツタゾ。句モ、争ウガ心ヲ生タ」ヿ

ダ。猫ノ取著ガ深イ者ダゾ。南泉ノ家デハ、知不知ノヿ

ヨ。其心ヲ」追放スガ、一刀タゾ。咎ト云ハ、著ダ。師

云、趙州頭草鞋ヲ戴羊ヲ。」代、元来無根本。師云、夫ハ

何トテ。代、上可貴無諸佛、下ニ可レ

賤」無衆生。心ハ、

今時万法妄想ヲ切テ除レバ、平等ヨト戴タタゾ。」

正法寺05-0018

（18）

智不是道。師云、心不是佛、智不是道ヲ云。代、別別別。

師云、」其ハ何トテ。代、心ハ心、佛ハ佛、智ハ智、道ハ道

デ走。帀云、證拠ヲ。」（15ウ）代、一粒在荒田、不耕苗自

秀。心ハ、妄心忘、或知解ニハアラズ、」本心本智ダ。是

ガ荒田ノ一粒ダ。佛祖ノ鋤キ鍬ガ入ラズ

自秀タ。」何ト秀


一一四

タゾ、ナレバ、智ニ智、心ニハ心ト秀タマデヨ。」

正法寺05-0019

（19）

倶胝一指。師云、諸問毎有一指ヲ立タ幾ヲ。代、指ヲフツ

テ、サデモ走ヌ」サデーーヌ。師、、何ニカサタゾ。代、

サデモ走ヌ。帀云、其ハーートテ。代、甕餘不」尽酒、膝

抱無声琴。心ハ、當則ハ脱躰ノ愁情ト唱ユル。諸問」ーー毎

ニーー立タハ、宗師本意ノ如何トモ難述ヲ示シタゾ。サテ

向ゾト」（15ウ）ト説向シタラバ、不尽禅ハ地ニ落チタ。

句モ、甕ト云ワ、境界ヲサシタ。」爰ニ不尽ノ名酒ワアレ

ドモ、クンデ与ラレヌ。コラヱヌ秘曲ハアレドモ、」弾ジ

テ聞セラレヌ。是ヲ宗主大滿ノ愁、佛法中ノ罪人トモ云タ

ゾ。」

正法寺05-0020

（20）

趙刕洗鉢盂。師云、某甲ーー指示玉。刕云、喫ーー也。僧

喫ーー了ト云タ」幾ヲ。代、胸ヲ開テ看ヨ。蓋カイ

膽毛何ノ多

少有。心ハ、喫ーー也。」喫ーー了ト云タハ、師ノ指示ヲ

ウケガワヌ。其僧有省トハ、コチヨリカブセタゾ。」サテ

又、爰ガ省ダ。句モ、平生モ胸毛ハ見難物タゾ。看ーート

云、和尚ノ」胸モ某甲ノガニ替ルヿハ走マイ、ト云幾ダ。

キレイナ鉢盂ノ」（15ウ）洗羊ダ。ヿコソ多ニ、喫粥ト云

ハ、惠命ヿヲ問テゴザルゾ。師云、」恁麼ーー何。代、元

ヨリ迷悟渠ヲ無レシ可レキ閉トサス。

心、元ヨリ佛性ニ替ル儀ハ」走マイ

ゾト云ガ、渠當人ノ者ダ。是ハ何トモセギトメラレテコ

ソ。趙州ノ」処ニモ、此僧ノ処ニモ、元ヨリ迷悟ノサタハ

アツテコソ。」

正法寺05-0021

（21）

至道無難。師云、至リ道ヲ。何トモ云間ハ、揀擇ト嫌ウベ

シ。代、師ノ」耳ヲカグ羊（

様）ヲシテ皈。師云、其ーーテ。

代、道元無言、以言顕レ

道。」師云、道ノ顕シ羊ヲ。代、不

觸㕝知、不對縁照。師云、其句ヲ」説破セヨ。代、㕝

ヌ不レ

觸智チ

、縁ニ不レ

對照デ走。心、挙処モ觸ヌ」（16オ）模樣

ダ。向ゾト述レバ、揀著言語ニナル。句モ、道ニ言語ハ無

イゾ。」サテ又、言語ヲ以テ道ヲ顕シタ㕝ト云ハ、不知タ

ゾ、知タゾ、揀択タゾ、説破モ」觸ヌ本智、不對ヌ本照デ

於イタゾ。」

正法寺05-0022

（22）

指頭築破。師云、、築破ノ端的ヲ。代、踢倒放身。師云、」

恁麼ーー何。代、不依一法、不過萬法。心、師ヲケ吾モ無

イト云心デハ」無イ。其ヲバ空寂ト云。我身非有、痛自何

来ト云ハ、吾ガ身ハ」無イガ、痛ハ何ヨリ来ツタゾ。ト云

ハ、有デモ無ク、無イデモ無イゾ。生デモ」無ク死デモ無

イ、一法ニモヨラズ、諸縁ニモ渡ラヌゾ。爰ヲ三界」（16


一一五

ウ）都盧一点心ト云タゾ。堕ト云モ、此ノヿヨ。呈ニコ

ソ、達磨不来唐土、」二祖不往西天デワ有レ。」

正法寺05-0023

（23）

心路絶却。師云、心路絶却ヲ云ヘ。代、踢倒放身。師、恁

麼」時如何。代、痕垢尽光始現。師、其光ヲ。代、拶眼

云、」我見燈明佛、本光瑞如斯。師云、智ノ現処ヲ。心、

自己真照ノ」渕源デ走。師云、其ーーテ。代、古今永超圓

知体。帀云、其ノ」圓知躰ヲ。代、大口忘然ト。心、永ク

超タト云ハ、始中後ノミヱヌヿダ。」（17オ）

正法寺05-0024

（24）

勘破之話。師云、驀直去ト云タル婆子ノ幾ヲ。代、芭蕉葉

上ニ」無秋雨、従是離人聞断腸。師云、趙州ノ勘破ノシ羊

ヲ。〈末ニアリ〉」代、大海遮人無意、只時人不レ

得レ

過ヿ

ヲ。心ハ、是等ハ上参ナ呈ニ、」得道ガミヱヌ。趙州城ニ

路頭ト云ヿガアルト云ハ、平常知ルノ」道ノヿダ。知不知

ハ、兎徑横徑ヨ。サテ、大虚廓然ノ道ニ」横ミチワ無イ。

有ルヲ、別

アルゾト心得テ、此僧自愁タゾ。芭蕉ト」雨

ニ意ハ無イ。趙刕ノ道ガ大海ダ。更ニ難窺イ。別ニカマヱ

ル理ワ無。」時人ガ過ルヿヲ得ヌゾ。時人ト云、此ノ僧ノ

ヿ、客心ヨ。又勘破ノ破レト」（17ウ）云モ、向ダ。知不知

ニ属セヌ、此路道ガ、何ニモ破テ出デタゾ。迷タモ」道

理。○前ニ趙州ーー破ノ幾ヲ。代、犬ヱノ子母ハメイヌデ

走。師云、」婆子趙州ノ処ヲ一句ニ云ヘ。代、大海ーー

過。」

正法寺05-0025

（25）

無之字話。師云、趙州ノ家ハ、平常ト云テ、一向ニテヲツ

ケ」ヌヿデワ無イゾ。古人モ、無㕝甲裡ニ颺在スルヿ莫ト

嫌ウタゾ。」向云タトテ、悪デハ無。俗訛折角ガ大切ダ。

只當人ニナツテミデハ。」當人ガ本無契當デア郎ズ。知ハ

是忘覚、不知是無記、」（18オ）凡ニ落スハ無㕝、聖ニ落ス

ハ智解、恁麼不恁麼トモニ」クツトナグリ落、自然内外打

成一返デ無クテハ。當則サヱ半」心得タラバ、諸話頭ニ不

審ハ在ルマイゾ。師云、有無ニ落ヌ」無ヲ云ヘ。代、至テ

驚走ス。師、恁麼ーー何。代、不覚思量」暗ニ点頭。師

云、サテ本無契當ハ、何ト聞ヱタゾ。代、玄功」路絶処、

安住不死人。心、点頭スト云テ、今俄ニ驚タ羊ナヿデハ」

無。十二時中無字ヲ挾デ、修行ノ力打尽テ、吾モ不覚」

（18ウ）當著シタ呈ニ、著語モ不覚思量ーー頭ト、打成

一」片デ、覚ノ功モ尽テ、吾モ不知、本無ニ契當ダ。有

カ、暗ニト云ハ、」ワキマヱハ無イ。末ノ著モ玄功ト云

ハ、修ノ功

。参ン為ニ、古人ノ」頌（古カ）

挙批判、大老ノ下語

ヲ以テ、キツヽクラベツシテ、匠師家ニ出」逢テ、クツト

ケズリ落レテ、カラリトナツタ時、路絶デ、修行ノ路スジ


一一六

ハ」断タ処デ、天然ト契當ダ。此境界ガ安住不死人ダ。此

人ニ」生死サタハ無イト云。畢竟當人シタヿデ走ゾ。」（19

ウ）

正法寺05-0026

（26）

観音三昧。師云、雲門ノ聞声ーー心作麼ーー心ト被仰タ」

幾ヲ。代、耳デミ、眼デ聞テ走。心ハ、声聞デ道ヲ悟、見

色」明心ト云ハ、教意ダ。聞処見処ニ繋留セヌ時、耳デ

ミ、眼デ」聞タ、作麼生々々々デ於イタゾ。帀云、觀音

菩ーー手放下ーー頭ト」被仰タキ幾ヲ。代、何デモ無イ物

ガ、何共ナツテ走。師云、恁麼ーー何。」代、滿目青山。

心、何ーー者ガ餬ーー頭トモナツタゾ。句、花紅柳緑

ガ、」満目青山ダ。其侭本位ヲミタ。他物ハアツテコソ。

見聞ヲ不拂時キ、」（19ウ）観音三昧ダ。」

正法寺05-0027

（27）

乾峯一路。師云、十方ーー楚ヲ云ヱ。代、溧然ト立テ、手

打垂テ」挙。心ハ、此時四方天地四角トモニ、シツト滿タ

ゾ。師云、其證拠ハ。代、卓ト々

」不依物、㚑（霊）

ト々

何ゾ

不レ

渡縁。師云、一路涅槃門ヲ。代、不生不」滅ガ、我之

ノ路スジデ走。師云、劃

這ーー有ヲ云ヘ。代、佛祖未」

生空刧先、只亦今時日用不墮。心、此一機ハ、佛祖モ未生

ノ」時キダ。又今時日用ノ上ニモ有ゾ。サテ又其コニハ不

堕物タゾ。」（20オ）雲門ノ拈扇子云、扇子ーー盆傾似タ

リ。會也々々ト」被仰タキヲ。代、上有頂天、下金輪水際

迄デ、本分デ」サヽヱテ走。師云、畢竟ヲ。代、千眼不レ

及レ

見ニ。」

正法寺05-0028

（28）

百丈野狐。師云、、不落因果ヲ。代、大修行ナ呈ニ、落マ

イト云見」地デ落テ走。師云、其ーーテ。機不離位、堕二

在毒海一ニ。」師云、不昧因果ヲ。代、正因正果デ走。師

云、其心ヲ云ヘ。」代、徹底因果ノ時キ、因果ノ沙汰ワ走

ヌ。師云、轉々不」錯、合作个甚麼ト云ヲ云ヘ。代、何ト

カナルベキ々々々ト挙

。」（20ウ）心ハ、爰ガ墮脱一収

也。」

正法寺05-0029

（29）

身夜

心参

脱落。師云、脱落ノ正當ヲ。代、一喝放身。帀云、其

コニ句ヲ。」代、万機頓ニ削縁思断。師云、縁思断ヲ。代、

休。師云、句ヲ。代云、」針頭削レ

鉄。師云、其上デ一句。

代、罷休得ル時キ且カツ

罷ハ

休キウ

。師、其句ヲ」説破セヨ。代、休

ヲ々ト持タバ、休デワ走ヌ。帀云、休ノ窮リ羊ヲ云ヘ。」

代、一段ノ風光畫モ不レ

成。案山点頭ヲ云ヘ。代、天崩レ

テ」大海トナリ、海ノカレテ山トナツテ走。師云、其ニ一

句。代、當頭ヲ」（21オ）申走トシタワ、錯テ走。師云、


一一七

畢竟如何。代、痕垢尽ル時キ光リ始現ズ。」師云、自己ノ点処

ヲ。代、十分清白清已忘。心ハ、爰ガ不到

。師云、」何

トテ視二ヿ自己一

如寃家トハ云タゾ。代、曽不レ

知。師云、其

ハ何トテ。」代、曽不知ヌガ知不到デ走。師云、過去久遠

刧ヨリ不知證拠ヲ。」代、清波不犯意自異。師云、時如

何。代、智ニ至テ至タト會無イガ、智ー到デ走。師云、働

キ羊ヲ。代、道著スレバ頭角生也。」師云、畢竟ヲ。代、

眼看レ

眼。帀云、轉処ヲ。代、知尽功忘。師云、」木人低頭

皈ヲ云ヘ。代、能ク至テ〳〵タ會ノ無イガ、功尽テ走。帀

云、」（21ウ）何トテ皈タデワアルゾ。代、能ク至タガ皈タ

デ走。師云、何トテ尽ルトハ」云タゾ。代、全ク知リ走

ヌ。師云、智不到ノ点処ヲ。代、鶴出銀」籠冲霄漢。師

云、其ノ句ヲ説破セヨ。代、銀籠ガ知不到、」霄漢ガ那返

デ走。師云、那返ヲ云ヘ。代、混然藏二

理㕝一ヲ、」朕チン

兆チウ

卒ニ

難レ

明。心ハ、那返ト理㕝一般、弁處無一位

。師云、」那

返ノ主ヲ。代、更ニ何トモ色目ニ分チ走ヌ。帀云、其コデ

主ヲ。」代、正位ノ君ニ尊貴ノサタワ走ヌ。師云、主ノ所

作ヲ云。代云、蒼天々々。」（22オ）師云、其ハ何ントテ。

代、深々密々人難レ

到。師云、何ゼ其呈ハ哭タゾ。」代、難

到々々。師、恁麼時キ如何。代、子時當正位。師云、畢

竟」如何。代、抽身。師云、落居ヲ。代、君臣合（

道カ）同。

帀

云、合同」時如何。代、人識二

得スルニ伊一ヲ無レ

由。師云、無

由時如何。代、彼此混然」無二シ分般ノ処一

。帀云、無二キ分般

一処ヲ云。代、数ノ初物ノ終デ走。師云、」位裡轉則ヲ。

代、觸曉ノ玉人夢始ニ破ル。帀云、夢ノ破リ羊ヲ。乾坤始テ分

ツ半夜ノ天ン。師云、分チ羊ヲ。代、百」億分身処々真。帀

云、処々真ヲ。代、眼ニテハ眼ニテハ見、耳ニ在テハ聞キ、」

（22ウ）鼻ニ有テハカイデ走。師云、證拠ヲ。代、百性日

用不レ

知ラ。」帀云、何ントテ不レ

知デワ有ルゾ。代、滿眼

滿耳、全躰全身。師云、那邊」退得、這裏行履ヲ云ヘ。

代、圓通大虚、無欠無餘。師云、如何」是無欠無餘。代、

一圓相作。師云、内ノ主ノ位ヲ云ヘ。代、尊嚴」就レ

位ニ

曾不レ

知。師云、其本位ヲ云ヘ。学云、無始無終デ走。」師

云、南山歌北山吟ヲ。代、不豈伊声。師云、何トテ。代、

スキワ走ヌ。」帀云、句ヲ。代、乾坤大地、無第二人。師

云、何トテ。代、只一人トミル時、」（23オ）南山ハ喝シ北

山ハ吟ジテ走。心ハ、一人ノ音声也。師云、何トテ兼帯」

デワアルゾ。代、自己・智不到・那時ノ主ト喚ビ出スモ本

一人デ走。」師云、物外獨騎千里象、万秊松下撃金鐘。師

云、物外ヲ。」代、一喝。師云、獨騎羊ヲ。代、無第二

人。師云、千里象ヲ。代、目」前ヲ尽セバ自己渕源デ走。

師云、證拠ヲ。代、清白ハ普賢ノ」境界デ走。師云、金鐘

ヲ。代、那返デ走。師、畢竟如何。代」云、江村片雨外、

野寺夕陽邊。師云、猶モ。代、拶眼頭上漫、低頭」（23

ウ）脚下漫々。」

正法寺05-0030


一一八

（30）

石霜七去。帀云、休去歇去ヲ。代、一喝放身。師云、恁麼

時ーー何。代、」蛇脱皮龍蛻骨。師云、冷湫々地去ヲ。

代、師ノ前ニ睡起ノ」模

。帀云、句ヲ。代、鶴鷺並頭蹈

雪眠、月明驚起兩遲」疑。師云、一念万念去ヲ。代、座

禅。師云、恁麼ーー何。代、古今」永超圓智躰。師云、寒

灰枯木去ヲ。代、師ノ口ニ手ヲ當ル。」師云、恁麼ーー

何。代、折合皈炭裡坐。師云、古廟香炉去ヲ。」（24オ）

代、代（

衍カ）、

焼バ灰埋バ土ヲナツテ走。師云、恁麼ーー何。

代、深徑苔生。」師云、一條百練去ヲ。代、久遠今時一致

デ走。師云、恁ーー如何。」代、観彼久遠、猶如今日。」

正法寺05-0031

（31）

臨済四喝。師云、金剛王寶剱之喝ヲ。代、斬釘斬鐵。師

云、」徹底ヲ。代、山河大地徹デ走。師云、踞地師子喝

ヲ。代、牙如剱」樹、口似血盆。師云、探竿影草喝ヲ。

代、為賊人心虚。師云、」虚ト云字ノ上デ、機・賊・性ノ

三関ヲ合ヨ看ン。代、賊トミルガ機デ走。」（24ウ）性ヲ云

ヘ。代、森羅万像ヲ虚ト見ルガ、空性デ走ウ。師云、不」

作用之喝ヲ。代、千喝万喝デ走。帀云、句ヲ。代、天上ノ

月ハ明ニ溪辺」雲昏クラシ。師云、我有一喝々ヲ々。代、大口忘

然。師云、那一喝ヲ。」代、貴不落賊不落胡喝乱喝デ走。」

正法寺05-0032

（32）正

中偏ヲ。代、順ニ居タ呈ニ、法々住自位走。師云、巽

之卦ヲ。」代、柳緑花紅イ。師云、君視レ

臣ヲ。代、看空看

此。師、其デ一句。」代、相見不レ

揚レ

眉ヲ。師云、妙容ーー

偏ヲ。師云、不動ヲ。代、三十」（25オ）二相八十種好ヲ

具足シタ君デ走。心ハ、妙容ハ不レ

動ヌ也。師云、」伸レ

命

行㕝ヲ。代、君子風吹、少人草偃。師云、直下ヲ看テ、左

右ヲ」回顧ヲ。代、左右逢是源。心ハ、正ト云モ偏ト云モ

君デ走ゾ。」

偏中正。師云、何トテ逆ニハ置タゾ。代、曹洞ノ回互デ

走。師云、何トテ」代、正ヲ正ト云バ、偏デ走。師云、其

ハ何トテ。代、如ト云モ亦了也。師云、」正ノ下ニ留ル処

デ一句。代、君子居有二

何鄙一

。師云、臣向君ヲ。」代、看レ

此看レ

空。帀師云、何ト向タゾ。代、葵花向日、柳絮随

風。師云、」（25ウ）不堕諸異趣ヲ。代、堕シテ堕シタト知

リ走ヌ。師云、ントテ。代、」莫レ

作レ

會。帀、順天應レ

人

ヲ。代、看空看レ

此。師云、天地同根。師云、」直上視テ良

久シタル幾ヲ。代、此ヨリ始テ、爰ニ皈シテ走。」

⦿正中来。師云、正ヲ。代、一幾未萠ノ法身デ走。師云、

中ヲ。代、不欲」中犯莫。師云、未萠ナラバ来ルマイガ、

何トテ来ルトハ云タゾ。代、正ヲ正ト」云バ、早ヤ来デ

走。師云、君ノ躰ヲ。代、以レ

手托

看ヨ。帀云、妙德

ヲ。」代、妙在一漚前、豈容千聖

。師云、尊寧宇ヲ。


一一九

代、問訊」（26オ）合掌云、高名大虚朗。心ハ、柳ハミド

リ花ニハ紅イト朗ダゾ。師、合天」裡羊ヲ。代、天ハ地ト

合イ、地ハ裡ト合、人ハ合レ

裡テ走。師云、當二リ人心一ニ羊

ヲ。」代、拶眼

云、アツ。帀云、以手空中一点シ羊ヲ。

代、胸ヲ打テ一点。」帀云、何トテ。代、拄杖頭上ニ挑二

日

月一ヲ。心ハ、急度ミル処デ、月ニハ白ク一点」シタゾ。

○兼中至。帀云、裡ガ何トテ面トナツタゾ。代、此位無賓

主一

。師云、」中ヲ。代、中人無変動。師云、至ヲ。代、ド

コニモ至テ走。帀云、中ノ人」（26ウ）ナガ何トテ中孚ハ

切レタゾ。代、切レタモ中ノ人デ走。㚑（

霊）機」弘聖道、真智

利群生一ヲ。代、空ヲ看テ靈機弘聖道ト云テ、」此ヲミル

也。師云、豚魚マデモ吉

ヲ。代、豚魚マデモ、此ノ光氣

デ走。」師云、何トテ。代、是ト持タルカドワ、破レテ

走。帀云、破ルヽワ、世間ノ空ヨ。」佛性ノ空ヲ。代、作圓

相。」

●兼中到。師云、到ヲ。代、久遠之法身ヲ、今時ニ引出弄

ズルガ到デ走。」帀云、中ヲ。代、中人無変、動不可犯。

帀云、君臣合道ヲ。代、」（27オ）云、上和下睦、陰陽相

随。師云、何ガ混然シタゾ。代、天地ト混然シ、」君ハ臣ト

混然シ、大ニ

無外、小

無内。師云、、大人ヲ。代、看

直上一ヲ、」直下ヲ看云、頭上漫々、脚下漫々。帀云、継レ

明

照二

四方一ヲヲ。」代、ドツコモ大人ノ胸中デ走。帀云、其コ

デ一句。代、主人睡熟客心驚。」師云、好手誇リ羊ヲ。

代、全提ト持タラバ、説レ

食ヲ終ニ不レ

能飽。師云、」畢竟

ヲ。代、滿瓶傾不出、大地無飢人。」

正法寺05-0033

（33）

宏智四借。師云、借レテ功ヲ明位一ヲ。代、偏デ正ヲ兼、用ハ在レ

体ニ処デ走。」（27ウ）帀云、句ヲ。代、依舟蘆花吟不眠、

不知身在二ヿヲ廣漢宮一ニ。」師云、借位明功ヲ。代、正デ偏ヲ兼

子、体ハ用ニ有ル処デ走。師云、句ヲ。」代、昭体共在位

裡。師云、借々不借々ヲ。代、偏正去来、不堕偏正。」帀

云、夫證拠ヲ。代、中。師云、全超不借々ヲ。代、異類更

異」類デ走。帀云、句ヲ。代、全超無蹤跡、古今不堕機。」

正法寺05-0034

（34）

那時三人。師云、本来人ヲ。代、十二時中、出息入息。帀

云、幻人ヲ。代、頭長三」尺知是誰。師云、無位真人ヲ。

代、妙躰本来無二シ処一々ニ。」（28オ）

正法寺05-0035

（35）

甘露巻。師云、大悟十八ヲ云ヘ。代、大口忘然。師云、其

ハ何トテ。」代、表裡情忘。師云、何トテ十八デワアル

ゾ。代、六根・六識・六境界ガ」空ズル処デ走。心ハ、自

己ノ九位、目前九位、十八也。」

正法寺05-0036


一二〇

（36）

小悟無数ヲ云ヘ。代、一喝放身。帀云、其ハ何トテ。代、

心空」境寂躰如々。心、八万四千無數ノ毛孔ハ、無量ノ諸

天諸神」聖衆也。八万四千ノ光リトモ云、迷則ハ八万四千

ノ塵労妄想

。」（28ウ）悟則ハ八万四千陀羅尼門也。呈

ニ、一喝放身ハ、法界ノ性ニホツカト」モトツク処、小悟

無數也。八万四千ヲ明ムル也。此時、身境空寂躰」如々

デ、隔テ無イゾ。」

　　

目録之内如是記之、後代之子孫之為也。」

元和二年丙辰三月日」

　　

住山比丘成巖良圓花押」

　　　

△其外ニ曹洞三種君」（29オ）

正法寺05-0037

（37）

世尊拈華。師云、衆ニ示シ羊ヲ。代、勘破了也。心ハ、拈

華誰勘弁也。向上ノ」勘弁也。師云、微笑ノ幾ヲ。代、何

ノ云イヿカ有ラン。」

正法寺05-0038

（38）

孤峯不白。師云、雪千ーー不白被仰タ幾ヲ。代、至テ挙ヲ

握テ握バ、」團開ケバ消

走。師云、正當恁麼時如何。

代、偏正曾不離本」位。心ハ、ニキレバ功一色、雪千ーー

処、偏タゾ。開ケバ消、爰ガ孤峯黒処タゾ。」主ノ在処

也。師云、異中異、諸山ーー堕ヲ。代、生也不道、死也不

道。」

正法寺05-0039

（39）

六祖不階級。師云、階級不落底ノ一人ヲ。代、忘然

坐

ス。師云、正當ーー何。」代、午日打三更。師云、亦不爲

ヲ。代、至テ極睡ス。師云、時如何。代、午頭ーー機。」

（29ウ）

正法寺05-0040

（40）

五祖演他是阿誰。師云、誰ヲ。手脚ヲモ不調、帀師ノ膝ニ

打掛テ臥ス。」師云、畢竟句ヲ。代、児童日不到、都来不

解愁。又、頭枕衡山、足蹈二

」北岳一ヲ。私、須弥ーー硯シ

タ人モ、児童ノ肌也。」

正法寺05-0041

（41）

栢樹子。師云、来意ヲ直ニ呈シ来レ。代、何ンデモチヤツ

ト挙ス。師云、句ヲ。」代、常憶江南ーー裡ーー香。

正法寺05-0042

（42）

南岳得力句。師云、向人挙得麼。龐云、指自龐公ト云タ幾

ヲ。代、何デモ」チヤツト挙。師云、其ハ何トテ。代、説

似一物ー不中。師云、笠子ヲ戴去タ」機ヲ。代、只行キ


一二一

皈。師云、ソレハ何トテ。汚染不可

。類句、星前ーー無

由。」（30オ）上六則ノ終

。」

正法寺05-0043

（43）

道吾智不到。師云、智ー到ヲ。代、抽身。心ハ、道バ頭角

ヨ。師云、其ハ何トテ。」代、夜半ヲ抽身走。師云、正當

恁麼ーー何。代、祖佛凡夫ーー深。師咬指頭」ーー血幾

ヲ。代、トツクト坐

皈ル。師、正ーー何。代、夜半失却

牛。師云、」證拠ヲ。代、南無三寶。師承當句ヲ。代、従

冥入於冥、永不聞佛名。」

正法寺05-0044

（44）

万法不侶。師云、不侶底ノ主ニ相見ヲ。代、兩手ヲ垂テ一

座ス。師云、何トテ、一人」相見デハアルゾ。代、此時、

上有ーー下ーー際迄デ、不侶底ノ一人デ拄テ走。師云、」

正當ーー何。代、清波不ーー異。」

正法寺05-0045

（45）

船子夾山。師云、点頭三下ノ処ヲ。代、大口忘然。心云

而、清波觸破也。師云、橈」（30ウ）下ノ誰ヲ當人ニナツ

テ云ヘ。代、無我相無人相。心ハ、瑞岩主人公應諾下ノ」

誰、此ノ圖可合」。

正法寺05-0046

（46）

外道問佛。師云、拠坐良久、開ーー入ヲ。代、アツカト

坐ス。師云、句ヲ。代、」始淨瑠璃中、内現真金像。」

正法寺05-0047

（47）

德山吸尽去也。帀云、三世ーー上ト、吸尽去也ヲ。代、一

座ス。師、正當ーー何。代、」申走ズ言葉ハ走ヌ。師云、

猶一人ーー笑ヲ。代云、漁翁一（「

雜砕」脱カ）

棹百、笑入二

芦花万ーー。」

正法寺05-0048

（48）

曹洞機。師云、曹洞機ト問ヱバ、以手覆却ヲ。代、前ニ入

其侭皈。師云、樓」閣ーー下ト云、此ノ一頌ヲ。代、昨夜

三更月到窓。師云、句説破セヨ。代、」月モ窓前迄デコソ

到タレ。帀云、句。代、登到須弥、猶天有在。」（31オ）

　　　

中段之終」

正法寺05-0049

（49）

万機休罷。師云、自己・目前・那時、三種ニ分タガ、主人

ハ一人タゾ。呈ニ、先万機」休罷シ羊ヲ。代、野邊サラサ

レタ白骨デ走。師云、正當ーー何。代、松風連」髑髏。師

云、千聖不携ヲ。代、情乾ーー尽ーー入帝郷一ニ。」

正法寺05-0050

（50）


一二二

乾峯三種病。師云、三ーー病ヲ。忘智寂ノ三ツデ走。師

云、三種ノ光ヲ。」代、生ノ光リ死ノ光リデ走。師云、昭用

同時ヲ。代、其デモ無イ者、是デモ」無イ者。師云、向上

竅ヲ。代、一坐

皈。」

正法寺05-0051

（51）

香嚴樹上。師云、樹上ヲ。代、膝ノ上ニ打掛テ、何トシタ

ゾ〳〵ト云テ、次第〳〵ニ」（31ウ）低頭ス。帀云、正

當ーー何。代、寒蟬抱枯木ーー不回首。師云、虎」頭上坐

ノ幾ヲ。代、人無遠慮、必有二リ近憂一イ。」

正法寺05-0052

（52）

瑞岩主人公。師云、主人ヲ。代、喚底應底ニ不落ヌガ、主

人デ走。帀云、醒々」底ヲ。代、膝ニ打掛テ睡テ又醒模樣

有リ。師云、句ヲ。代、佳人睡起ーー梳。」師云、他

人ーー底ヲ。代、寒蟬ーー回ズ。」

正法寺05-0053

（53）

馬祖不安。帀云、不安々々ト被仰タ幾ヲ。代、唯音ヲ作

、次第〳〵ニ低頭ス。」師云、句ヲ。代、此道天真、本無二

名字一

。帀云、院主和尚ーー如何ト云幾ヲ。」代、師ノム子

ヲナデヽ、和尚ノ病ワ、何病デ走。○死コカレ入道哉。師

云、句ヲ。」（32オ）代、随邪逐悪ヲ。師云、日面佛月面佛

ヲ。代、通身無影像。」

正法寺05-0054

（54）

南泉牡丹花。師云、召大夫回首処ヲ。代、師ノヒザニ打掛

テ睡起スル」模樣有リ。師云、其ハ何トテ。代、サメタカ

サメヌカ。師云、句ヲ。代、鴛鴦ーー驚。」

　

此十八則之話頭、三叚階級差別心得肝要者也。」

　

君訣始終之参是也可秘々々。」

　　　　　　

成岩良圓　

花押。（32ウ）

〔追記〕

末筆乍ら、史料翻刻を許可戴きました正法寺様并びに関係各

位に深甚の感謝の意を申し上げます。

尚、本研究は、平成二十三年度駒澤大学特別研究助成（個

人）による助成を受けています。

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林下曹洞宗における相伝史料研究序説（七）repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/33041/jbk071...林下曹洞宗における相伝史料研究序説（七）（飯塚・土屋）