16
消費税の税率を 5%に 01 100万人分の 労働需要を追加創出 02 同一労働同一賃金を 実現 03 最低賃金を 1500円に 04 雇用・賃金の 男女格差を是正 05 違法な不払い残業を 根絶 06 望む人が働いて 活躍できる保障を 07 「労働ダンピング」は 許しません! 08 すべての所得に 累進課税を 09 資産課税を強化 10 金融機関の野放図な 融資を抑制 11 社会保険料も 累進制に 12 環境税・トービン税を 導入 13 「デフレ脱却設備投資 ・雇用補助金」創設 14 健全財政の 新たな基準を 15 政府紙幣で政府債務 を清算 16 日銀法を改正 17 「すべてのひと」の ため公金支出 18 経済特区制度は廃止 19 ベーシックインカム を導入 20 「デフレ脱却手当」で 月3万円配布 21 社会保障制度を 組み換え 22 地方でも常に仕事が 持続するインフラ事業 23 必要な施設は建設を 24 奨学金債務を 軽減・解消 25 教育・保育を無償化 26 介護、保育、看護など の賃金大幅引き上げ 27 待機児童ゼロ、介護離 職ゼロを実現します 28 ひとびとの経済政策研究会 反緊縮経済政策マニフェスト 2017(案) 2017/10/20

反緊縮経済政策マニフェスト - People's Economic Policy · 2018. 10. 29. · す。 その後、やっと長かった不況時代を抜け出たかに見えた 2014年春、消費税が5%から8%に引き上げられました。そ

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Page 1: 反緊縮経済政策マニフェスト - People's Economic Policy · 2018. 10. 29. · す。 その後、やっと長かった不況時代を抜け出たかに見えた 2014年春、消費税が5%から8%に引き上げられました。そ

消費税の税率を5%に01 100万人分の

労働需要を追加創出02 同一労働同一賃金を実現03 最低賃金を

1500円に04 雇用・賃金の男女格差を是正05 違法な不払い残業を

根絶06

望む人が働いて活躍できる保障を07 「労働ダンピング」は

許しません!08 すべての所得に累進課税を09 資産課税を強化10 金融機関の野放図な

融資を抑制11 社会保険料も累進制に12

環境税・トービン税を導入13 「デフレ脱却設備投資

・雇用補助金」創設14 健全財政の新たな基準を15 政府紙幣で政府債務

を清算16 日銀法を改正17 「すべてのひと」のため公金支出18

経済特区制度は廃止19 ベーシックインカムを導入20 「デフレ脱却手当」で

月3万円配布21 社会保障制度を組み換え22 地方でも常に仕事が

持続するインフラ事業23 必要な施設は建設を24

奨学金債務を軽減・解消25 教育・保育を無償化26 介護、保育、看護など

の賃金大幅引き上げ27 待機児童ゼロ、介護離職ゼロを実現します28

ひとびとの経済政策研究会

反緊縮経済政策マニフェスト2017(案)

2017/10/20

Page 2: 反緊縮経済政策マニフェスト - People's Economic Policy · 2018. 10. 29. · す。 その後、やっと長かった不況時代を抜け出たかに見えた 2014年春、消費税が5%から8%に引き上げられました。そ

反緊縮経済政策マニフェスト2017(案)

2017/10/20

今回衆議院の解散がわかったあと、私たち「ひとびとの経済政策研究会」は某政治家から所属党に提

案する経済政策マニフェスト私案の作成依頼を受け、粗作りのものを急ごしらえして提案しました。ところが

その途端、情勢が急展開して、せっかくつくったマニフェスト案が宙に浮いてしまいました。

せっかくですから、もっとちゃんとしたものに完成させ、左派・リベラル派の政治勢力に選挙マニフェストと

して採用してもらおうと、作成の途中段階のものをあちこちツテを尽くして送り、参考にしてもらえるように働

きかけました。結局どこからも反応がないまま、選挙も終盤になって、ここにようやく完成版ができあがりました。

もう間に合わないかもしれませんが、あと一日でも二日でも、目にとめていただけた人に、ほんの一部でも参

考にしていただけたらと、公表することにします。

今回の選挙では、日本の左派・リベラル派が、安倍自民党や小池新党などの改憲・復古主義勢力の前

に消滅同然に陥るか、それとも、暮らしの苦しみや不安を抱く多くの普通のひとびとのエネルギーを集めて

大きく躍進するかの岐路に立っていると思います。それはひとえに、これらのひとびとの望みに答える経済

政策を打ち出せるかどうかにかかっています。

今年のイギリス総選挙では、保守党圧勝の前評判だったのが、労働党が大躍進して保守党を過半数割

れに追い込みました。それは、労働党の掲げた反緊縮のマニフェストが人々に支持されたからです。特に

若い世代からは圧倒的な支持を受けました。この条件は世界中で同じです。新自由主義の緊縮政策とそ

のもたらした経済停滞で暮らしを苦しめられた多くの人々が、世界中で反緊縮政策を渇望しているのです。

この条件は日本でも同じでした。でも残念なことに、日本の多くの人々、特に若者は、安倍首相がもたら

したわずかな経済状況の好転に光明をみいだし、それにしがみついてきました。それは、日本の左派・リ

ベラル派の勢力がこれまで、イギリス労働党をはじめとする欧米の反緊縮勢力のような、雇用の拡大と社会

サービスの大盤振る舞いを約束する明確な反緊縮政策を提示してこなかったからです。

しかし、このマニフェストに沿った政策を打ち出して、「私たちなら安倍政権よりももっとうまくやれる!」と

すれば、必ず勝機が訪れます。一部の項目については、財務省幹部の意向を受けたマスコミやエコノミス

トから批判があるかもしれませんが、間違っているのは彼らの方ですので、意に介する必要はありません。

以下の各項目は、各政党の方々がなるべくそのまま活用できるよう、有権者に対するご説明とお約束の

形で書かれております。ご活用いただければ幸いです。

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Page 3: 反緊縮経済政策マニフェスト - People's Economic Policy · 2018. 10. 29. · す。 その後、やっと長かった不況時代を抜け出たかに見えた 2014年春、消費税が5%から8%に引き上げられました。そ

バブル崩壊の傷がようやく癒えて、景気が順調に拡大していた 1997 年、消費税が 3%から 5%に引き上げられました。そのとたん、景気拡大はストップし、翌 1998 年から日本経済は本格的なデフレ不況に突入しました。中高年層にはリストラの嵐が吹き荒れ、若者にとっては就職難の時代が始まりました。失業率は 5%へと上昇し、失業者数は 300 万人を突破し、横浜市の人口並みの水準まで急増しました。そしてその結果、毎年 3 万人台の自殺者が出る時代が到来しました。

しかも、1997 年の消費税増税後の税収は、実のところ、それ以前より減ってしまったのです。もし、消費税引き上げ前の成長が続いていたならば、その後の税収の低迷はなく、今ほど財政赤字問題が取りざたされることはなかったはずです。

その後、やっと長かった不況時代を抜け出たかに見えた2014 年春、消費税が 5%から 8%に引き上げられました。そのとたん、また景気拡大がストップしたことは記憶に新しいところです。消費は低迷し、正社員の賃上げは頭打ちになりました。

2017 年 4-6 月期に、実質消費は、ようやく消費税引き上げ前の正常なレベル(つまり、駆け込み需要が見られた時期より、さらに前の時期の水準)を、ちょっとだけ超えるところにまで回復しました。消費税引き上げの傷が癒えるのに、実にまる三年もかかったことになります。しかし、平均的な実質賃金は、まだまだ消費税引き上げ前のレベルに戻ってはいません。そして今度も、消費税を 3% 増税すれば 6 兆円以上は税収が増えるはずだったのが、所得税・法人税の収入が減少して、実際には税収総額はあまり増えていません。

ところが安倍首相は、2019 年 10 月に予定されている、8%から 10%への消費税引き上げを、予定通り実施するとしています。「二度あることは三度ある」という言葉が頭をよぎります。このままでは、景気回復の恩恵が庶民にまで及ぶことのないまま、また景気が挫折しかねません。中国はバブル崩壊しないか、トランプ政権の通商政策は大丈夫か、世界経済が不安だらけの中で、またまた大きな打撃を経済に与えて大丈夫なのでしょうか。消費税再引き上げのせいで不況になったら、またも税収は低迷し、オリンピックや高齢化で物入りのときに税収が足らなくなり、何のために税率を上げたのかわからない事態になるでしょう。

いったいいつになったら私たちは、失業や就職難におびえずに安心して暮らせる日がくるのでしょうか。このかん私たちは、いま痛みに耐えれば、その日が来るのはもうすぐだという約束を聞かされ、我慢を強いられてきました。そして我慢の末にやっと、不足と不安に追い立てられない暮らしに手が届

きそうだと思った途端、叩き落される経験を何度も続けてきました。もうたくさんです!

民主党政権時代以来、企業向けの減税が何度かなされ、安倍政権もそれに熱心に取り組んできました。この減税額を合わせてみたら、何のことはない、8%への引き上げにともなう消費税増税額の 9 割は企業の減税に使われたことになります。企業の減税のために、毎日の生活を切り詰めた上、失業や就職難におびえることになるなんて、庶民にとっては踏んだり蹴ったりの話です。

安倍首相は、今度の増税分は教育無償化に使うと言っています。しかし、消費税引き上げで景気が挫折したら、せっかく低下傾向にある子どもの貧困率も改めて増加に転じるでしょう。結婚や出産をあきらめる人も増え、家計を支えるために進学をあきらめる青少年も増え、何のための教育無償化かわからなくなるでしょう。

まだ日本経済は消費税のさらなる引き上げに耐えられるほど回復しきってはいません。たった 2%の物価安定目標が達成できないことが、その証拠です。私たちは、今はむしろ、景気回復を確実にするために、消費税は引き下げるべきだと考えます。具体的には税率を 5%に戻すことを約束します。2014 年に消費税を3%引き上げたときには、実質消費額もちょうど 3%減少しました。いま、これとは逆に消費税を 3%引き下げれば、実質消費が 3%増えて景気が回復し、雇用・賃金・税収の増加が起こると考えられます。

なお、消費税の 1.7%分は地方消費税として地方自治体の重要な財源となっていますので、手をつけないこととします。

私たちは、増税が必要ならば、まずは、いま空前の利益を手にしている大企業や富裕層に負担を求めるべきだと考えます。やがてデフレを脱却し、十分な好景気が定着した段階で、他の方法を尽くしてそれでも財源が足りなければ、消費税に頼ることは否定しませんが、その場合には改めて民意を問うことをお約束します。

1 消費税を上げて不況が戻ってもいいのですか ? 消費税を5%に戻して、景気を確かなものに。

Manifesto

消費税の税率を5%に01 消費税の税率を5%に

消費税の税率を5%に戻します。(地方消費税 1.7%は据え置きます。)

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Page 4: 反緊縮経済政策マニフェスト - People's Economic Policy · 2018. 10. 29. · す。 その後、やっと長かった不況時代を抜け出たかに見えた 2014年春、消費税が5%から8%に引き上げられました。そ

2 働きたい人が誰でもまっとうな職で働ける世の中に! 雇用創出・最低賃金引き上げ・労働基準強化

【非自発的失業ゼロ】私たちは、働くことができない人々の人生についても、働

かないことを選んだ人々の暮らしについても、そのかけがえのない価値を尊重します。他方で、勤労が日本国憲法でも国際人権規約でも掲げられる基本的人権であり、多くの人にとっての根源的欲求であることも、また事実として強く尊重します。失業や就職難は、人から暮らしの手段を奪うだけではなくて、尊厳を奪い、社会にとって最も大事な生産能力を損なっていきます。

長期不況時代は毎年たくさんの人々が、失業などが原因で自ら命を絶ちました。これは社会による理不尽な殺人です。小泉改革による就職氷河期に就職できなかった多くの若者が、フリーターとして不安定な職に就かざるを得ませんでした。彼らはまとまった学習・訓練時間をとれずに資格もとれず、長引くフリーター歴がますますハンデになって、下の世代が景気回復で就職していくのを尻目に、正社員就職できずに齢を重ねています。彼らは社会保険料を十分に納めることができません。このまま彼らが、正社員として就職できる年齢の限界を超えてゆくことが心配です。健康を害したり、引退する年齢に達したときに、本人にとっても、財政にとっても、大きな負担になることが懸念されます。これは早急に政治の責任で対処する必要があります。

長期不況を悪化させたのは緊縮政策です。政府の政策によって、たくさんの生命が奪われ、たくさんの若者の人生が狂わされたのは、先の大戦以来のことだと言えます。このようなことは、二度と繰り返されてはなりません。

私たちは声を大にして言います。質の高い完全雇用は実現可能です!

安倍政権下でも歳出が抑制されていた間は見事に景気拡大がストップしました。歳出削減で景気がよくなることは絶対にありません。「ユリノミクス」のように歳出削減を主張する政党の意見が通ると、また失業や就職難が戻ってきます。

私たちは、財政・金融・分配政策を総動員して、失業や就職難のない時代を確実にします。万一景気が後退しても、直ちに大規模な景気対策を打ち、あの長期不況時代が再現されることは絶対にないようにします。

【不本意非正社員ゼロ・同一労働賃金格差ゼロ】しかし、雇用が増えても、賃金が低くて過酷でいつでも

クビにされかねないような雇用ばかりでは意味がありません。1995 年に日経連が号令を出して以来、労働者派遣業の規制緩和など、小泉改革で典型的に見られるような雇用の流動化政策が進められてきました。それ以来、雇用の非正規比率は上昇を続けました。同じ仕事を、もっと安い賃金でさ

せることができるならば、企業が正社員を雇わなくなるのは当然です。

こうして、小泉改革後の景気回復でも、安倍政権期の景気回復でも、企業が空前の利益を上げて、株の配当はどんどんと高まった一方で、平均賃金は上がらず、労働分配率は下落し続けました。そのため、消費は低迷し、庶民にとって実感のない脆弱な景気回復になったのです。

長期不況時代に職を得ることができず、安倍政権になってようやく職を得た人は、どんなにひどい労働条件でもそれだけで「ありがたい」と思ったことでしょう。そして、どんなに安倍首相の政治に反対でも、景気を良くする方法を知らない野党が選挙に勝ってまた不況になって職を失うことを恐れて、安倍自民党に投票し続けた人が多かったことと思います。

しかしもうそんな心配は要りません。私たちは、もう不況で職を失うことなく、もっと安心できる、もっとまっとうな働き方の仕事で働くことができることをお約束します。差別的待遇にもひどい労働条件にも雀の涙の賃金にも、もう我慢することはありません!

正社員と同じ仕事をしている非正社員は、賃金もいろいろな保障も正社員と同じになるようにします。そのことは正社員のみなさんにとっても、自分たちの雇用を守ることになります。さらに、偽装請負を根絶し、事実上の雇用関係はきっちり雇用関係として扱うことにして、工場やオフィスで働く人についても、芸能人や AV 女優やプロスポーツ選手に対しても、学習塾や音楽教室の教師に関しても、企業の雇用責任を全うさせます。

このようにすれば、企業にとって正社員ではなく非正社員で働かせるメリットはなくなります。さらに、既存の非正社員が職を失わないように慎重に工夫しつつ、非正社員の雇用に対する再規制を進め、積極的な景気政策で雇用を拡大することと合わせて、非正社員のうち望む者の正社員への転換を推進する法制度を整えます。

もちろん、正社員と非正社員の格差だけでなく、男女の賃金格差もなくし、同一労働同一賃金を全うします。

【最低賃金大幅引き上げ】そして、最低賃金を大幅に引き上げます。これは、単にま

ともに暮らしていける賃金を実現するにとどまりません。企業にとって、正社員をやめて非正社員を雇うメリットが少なくなりますので、正社員の雇用を増やす効果があります。それは正社員にとっても賃金上昇の圧力になります。

そして、すべての産業にとっての共通のコストであり、消費需要のもとでもある賃金が上がる予想が確実になれば、デフレ予想は解消され、借金の目減りを期待して、設備投資だ

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けでなくて、住宅投資も耐久消費財投資も学資ローンを借りた進学も興ってきて、景気を押し上げるでしょう。

今とられているインフレ目標政策では、たとえ人々がインフレ予想を抱いたとしても、賃金の上昇の方は誰も予想していません。これでは、多くの人々はかえって将来の生活が苦しくなることを見越して、貯金を増やすために消費を抑えてしまいます。景気拡大にとって逆効果です。

【過労死ゼロ・違法残業ゼロ】ところで、電通社員自殺事件が問題になったように、過酷

な労働で心身を壊す人は増え続けています。今後、人手不足の進行とともに、長時間労働問題は深刻化していくものと見込まれます。過重労働の解消は、人間らしい暮らしのためばかりでなく、景気回復にとっても少子化の緩和にとっても重要な課題です。ところが、2014 年に過労死防止法が施行されたのに、その後 2 年間で過労死・過労自殺は増加しています。それに追い打ちをかけるように、安倍政権は「働き方改革」と称して、過労死ラインを超える長さの労働時間を「上限」に定めて公認しようとしています。労働時間規制をはずしてしまう職種を増やしたり、営業職の一定時間以上の労働を、労働と認めずに残業代も払わないようにしたりすることも盛り込んでいます。

こんなことを許してはなりません。2010 年施行の改正労働基準法 37 条は、月60 時間を超える時間外労働の割り増し賃金を 25% から 50% に引き上げましたが、中小企業については適用猶予になっています。この適用猶予を廃止し、さらに大企業については割増率を引き上げることが必要です。

また、法定労働時間も短縮します。労働基準法違反に対しては罰則を大幅に強化します(人間を死に追いやって罰金たったの 50 万円はあり得ません)。これらの措置の実効性を高めるために、労働基準監督署には、十分な予算をかけて、人員も装備も充実させます。こうして労働時間が短縮されれば、その分、雇用の拡大が進むことになります。

【不本意離職ゼロ】また、働きたい人が働けるようにすることは、ただ景気対

策だけで可能なものではありません。働くことへの困難にあうことは誰にでも起こり得ることです。障がいを負ったり、子どもができたり、親族に介護が必要になったりしても、働きたい人がハンデなく働き続けられることを保障する職場側の制度は拡充されなければなりません。同じことは、ガンなどの難病の治療を続けなければならなくなった人にも言えます。特に末期のガンなどで余命を限られた人にとっては、生きることの意味が重大になります。残された時間で温泉旅行などを楽し

む人生を選ぶことも最大限尊重するべきですが、働き続ける人生を選んだ場合には、それを同じくらい尊重するべきです。こうした制度を整えることは、長い目で見て企業にとっても有益であるだけでなく、社会の生産力の拡大にとっても有益ですから、公的な支援策を充実させることが求められます。

もちろん、男女の賃金格差、雇用格差はなくします。産休・育休は男性も取得するよう義務づけます。

【労働ダンピングは許さない】そして、この項目の最後に、国際貿易におけるいわゆる「労

働ダンピング」を許さないという立場を明瞭にしておきます。今、世界の労働者が競争に追い立てられ、賃金やその他の労働条件をお互いに切り下げていることで、大企業側が大もうけしている現実があります。私たちはこの現実に終止符を打ちます。

まともな労働条件は公正な貿易がなされる大前提です。ある国の企業や政府が労働運動を押さえつけ、低賃金のひどい労働条件でひとびとを働かせて作った格安の製品を輸出して、労働運動が比較的しっかりした、賃金もその他の労働条件も高い国の産業を破壊して雇用を奪ったら、どちらの国の労働者にとっても不幸になります。だから貿易交渉で、労働者の権利の保証やまっとうな賃金や労働基準を求めることは、全く公正なことです。私たちは自由貿易の利益を深く理解しますが、このような前提が満たされない国からの輸入品に関税をかけることは、否定されるべきことではないと考えます。TPP は白紙に戻し、労働者の権利保障と高い労働基準

(および高い環境保護基準)を共通化して、それを国際的にしっかりと守らせる仕組みを備えた協定として、再交渉するべきです。

外国人労働者の問題についても同じです。日本国内の外国人技能実習生制度は、そのあまりにも人権を無視した奴隷的な労働実態から、国連人権理事会では廃止するよう調査報告されています。このような奴隷制度が公然と存在していることは、世界に対する日本の恥です。私たちはすみやかにこれを廃止し、日本人と同じ賃金と労働基準を厳格に適用し、低コストのために日本に元からいる労働者の雇用が奪われないようにします。そして、「安価な労働力」という下心で外国人労働力を導入しようというあらゆる試みに反対します。

これは、いささかも排外主義に与するものではありません。同一労働同一賃金の原則をあらゆる民族・国籍の労働者に広げ、積極的な雇用拡大政策とも合わせて、雇用をめぐるダンピング争いをなくし、多様な民族・国籍の労働者の間に団結を作るものです。

同様のことは、企業の海外進出についても言えます。労

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働運動が抑えられ、低賃金もひどい労働条件もまかり通る国に工場が移転し、国内の工場がたたまれてしまうことを許してはなりません。このようなことが起こったら、進出先の現地企業からの利潤送金に、巨額の税金をかけるべきです。

【不況期には円高にしません】また、国際的な賃金格差は為替レートによってもたらされて

いる側面があります。かつて日本の政府は、景気後退期や不況期に円高を放置し、不況を激化させてきました。円高により、日本の賃金も製品価格も割高になり、価格競争力が著しく弱まりました。このために、優れた技術を持ち、地域で雇用を作ってきたたくさんの中小企業が、賃下げしてもコストカットしても間に合わず、倒産したり海外移転を余儀なくされたりしました。

私たちはこの愚は決して繰り返しません。景気後退期や

不況期に急な円高になったら、躊躇なく為替介入して円高を抑えます。これは外国から批判される筋合いのものではありません。困ると言うなら、その国も為替介入すればいいのです。互いに自国通貨を出して外貨を買う競争の結果は決して

「ゼロサムゲーム」ではありません。相対的な為替レートは変わらなくても、世界中でマネーが増えて景気がよくなります。インフレのために自国通貨を安くできない国は、そもそも景気が加熱しているのですから、通貨が上がって景気を抑制する方向の力が働く方がよいのです。こうした国々からの「不当な為替介入だ」といった批判にとりあう必要はありません。

この項目 2 で述べた政策は、どれも働く庶民にとって切実な利益ですが、財界の利益に反する項目も多く含まれています。だから、財界から多額の政治献金をもらっている政党には実現することはできません。財界から一銭も受け取っていない私たちが政権についてこそ実現できることです。

Manifesto100万人分の労働需要を追加創出02 100 万人分の労働需要を追加創出

このマニフェストで掲げる、ひとびとのための財政出動で、100 万人分の労働需要を追加創出し、リストラも就職難もない時代を確実にします。

同一労働同一賃金を実現03 同一労働同一賃金を実現

同一労働同一賃金を実現します。労働規制緩和をストップして、望む人はみな正社員に転換できるようにしていきます。

最低賃金を1500円に04 最低賃金を1500 円に:最低賃金を1500 円に上げ、その後 5年分の引き上げスケジュール(物価

安定目標の物価上昇率プラス推定労働生産性上昇率)を定めます。最低賃金引き上げによる人件費上昇に耐えられない中小企業に対しては、デフレ脱却が確実になるまでの間、政策金融公庫債を日銀が引き受けることによる資金を、同公庫を通じて賃上げ資金として超低金利で融資することにします。

雇用・賃金の男女格差を是正05 雇用・賃金の男女格差を是正

雇用と賃金の男女格差をなくします。

違法な不払い残業を根絶06 違法な不払い残業を根絶:残業の賃金割増率を大幅に引き上げて、労働時間の短縮を促し、雇用の一層

の拡大につなげます。労働基準監督所の予算と人員を拡充して、違法な不払い残業を根絶します。法定労働時間も短縮します。

望む人が働いて活躍できる保障を07 望む人が働いて活躍できる保障を

障がいを負っても、子育てをしながらも、介護をしながらも、ガンをはじめとする重い病気と闘いながらも、働きたいと望む人が存分に働いて活躍できる保障を拡充します。

「労働ダンピング」は許しません!08 「労働ダンピング」は許しません!

貿易相手国におけるまっとうな賃金と労働条件は貿易交渉の議題とします。国内で行われている「研修」名目の外国人奴隷制度は廃止します。労働者の権利を抑圧する国に工場移転した企業の利潤送金には特別の課税をします。不況時には、決して円高にしないよう、為替介入をためらいません。

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3 暮らしの苦しい庶民からこれ以上税金とるな! 政治が作った莫大なもうけからとれ!デフレ脱却のために日銀が作るお金は、銀行に無駄にまわさず有効に使おう。財政均衡にこだわるのは本末転倒。ひとびとの暮らしに奉仕してこそ真の健全財政!大企業や富裕層への課税強化・デフレ脱却設備投資補助金・物価安定目標

【史上空前にもうけている層を優遇して庶民につけまわし】消費税を減税するのはいいけど、これから高齢化が進ん

でどうしても国の支出は増えていくのに、いったい財源はあるのかと不安に思われるかたも多いことと思います。財務省やマスコミがさんざん財政危機をあおっていますので、心配されるのも当然です。でもご安心下さい。あるところにはあるのです。私たちは、暮らしが豊かでない普通の庶民から取り立てるのではなく、まずはたくさんもうけている大企業や富裕層に負担してもらうべきだと思います。

今、大企業や富裕層がどれくらいもうかっていると思いますか。大企業はあのバブル期をしのぐ空前の利益を上げています。昨年時点で、企業の内部留保は、安倍政権発足前年と比べて、四年間で 33.5%も増加しています。経常利益は四年間で 54.7%の増大です。同じ間に、賃金全体(雇用者所得)の増加は四年間で 5.8%、それも雇用者一人当たりにすると1.4%しか増えていませんので、どれだけ偏った分配がされているかがわかります。また、株の配当所得も増え続けています。安倍政権発足前の年と比べて、四年間で43.9%の増加です。年々 1.5 兆円ずつ増えている計算です。家計や個人企業の金融資産は、この四年間で 200 兆円増えています。その所有者も主に富裕層です。にもかかわらず、大企業にも富裕層にも一方的に有利になる税制改革が続いてきました。

1990 年代には法人税の実効税率は約 5 割でした。それが、90 年代末と民主党政権期に引き下げられました。さらに安倍政権になってからは、「世界で一番企業が活躍しやすい国」とのスローガンのもと、特に熱心に引き下げが続き、2016 年にはついに 3 割を切りました。さらに 2018 年には 29.74% に下げる見通しです。それだけでなく、経団連は 2025 年までに、法人税を 25%にまで下げるよう提言しています。小池百合子さんも、特定業種での法人税実効税率20%までの引き下げを公約しています。特定業種と言っていますが、実現すれば、やがて対象は拡大していくでしょう。

2016 年の法人税減税に際しては、抱き合わせで、利益が出ていなくても課税される外形標準課税を拡大して、赤字法人は負担増で淘汰される設計がなされました。すなわち、多くの中小企業には負担増で、主に大企業ばかりがもうかる仕組みです。この法人税減税により、2017 年度は国税で2390 億円、地方税で 3940 億円の減収が見込まれています。所得税においても、大富裕層に対する税金の優遇がなされてきました。1970 年代には 75%だった国の最高所得税率は、80 年代、90 年代を通じて引き下げられ、現在 45%になっています。住民税も含めると、93%だったのが 50%になってい

ます。税率の刻みの数も大きく減らされています。また、小泉政権以降、証券税制優遇策や、個人投資家

の投資利益に対する軽減措置など、資産課税の軽減策が進められてきました。しかも、株の配当や株を売ったときのもうけは、普通の所得とは切り離して課税され、どれだけもうかっても一律 20%余しか税金がかかりません。大富裕層の人たちは、働いて稼ぐ所得よりも、労せずに株から入ってくる所得の方がはるかに多いですから、所得 1 億円を超えると、所得が高くなればなるほど所得全体に占める税率が低くなっているという現実があります。

このかん、財政赤字の拡大が問題にされてきましたが、その原因の第一は企業や富裕層に対して行われた減税です。消費増税や雇用流動化でみなさんの購買力を抑制して緊縮政策を続けたために、長期不況が深刻化したことも一因ですが、法人税減税や累進軽減で税収が減ったことが最大の要因です。このつけを庶民にまわすような政治をこれ以上続けてはなりません。

【大企業や富裕層の負担を増やして庶民の負担を軽減します】私たちは、法人税と所得税の累進性を 1990 年代初頭の

レベルに戻し、時間をかけてさらに引き上げていきます。外形標準課税は縮小します。そうすれば、景気が過熱した時には自動的に増税になって景気を冷やし、不況になった時には自動的に減税になって景気を支える、経済安定化機能が働きます。株からの利益など、財産所得はすべて他の所得といっしょに総合課税して、超高額所得者にも所得に応じた税金をきっちり支払わせる仕組みにします。

そのほかにも現在富裕層優遇の税制がたくさんありますが、すべて見直し、公平な制度に改めます。相続税はスタートラインを平等にするために重要ですが、法定相続人 3 人の場合で 4800 万円の基礎控除は庶民水準からすると高すぎます。他方で、貧困な子どもなどへの他人からの援助が課税で阻害されることは不合理です。受け取る側の、受け取ったあとの総資産額に、庶民にとって常識的な上限を設け、そこに至るまでは、血縁のあるなしにかかわらず、遺贈・譲渡を非課税として、それを超える分の相続税率は引き上げます。また、景気が過熱したときのバブルの進行を防ぐため、資産価格の上昇がある一定率を超えた時には、たとえ売却益を得ていなくても、資産価格の上昇分に課税します。さらに、タックスヘイブンへの課税逃れを捕捉して適正な課税をします。また、退職金は、多くの庶民は控除だけで全額非課税になるので、巨額の退職金を守るためだけにある分離課税制度は廃止します。

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金融資産の一定以上の保有額に対する低率の課税も導入します。再びデフレ不況に陥ることがあったならば、この税率を引き上げて支出を促します。その際、現金による巨額のタンス預金を防ぐため、現金は新札に切り替えて、旧札を無効にして交換手数料をとります。

民間金融機関の野放図な融資をおさえ、土地バブル発生を防ぐため、現在停止中の地価税を復活し、地価上昇の進行とともにさらにこれを引き上げます。また、土地やその他の資産バブルを抑えるための策として、銀行の法定預金準備率の引き上げを行います。

社会保険料も、保険料がかかる所得の上限制を撤廃して累進制にし、富裕層優遇をなくす一方で、保険料率を下げて庶民の負担を軽減します。企業の負担も増やします。

あらゆる税金の経験則は、税金をかけられたものは減る、ということです。世の中にとって、「減らした方がいいもの」にかけるべきです。そう考えると、環境税の導入が理にかなっています。そこで二酸化炭素の削減効果があるとされるトンあたり1 万円の炭素税を導入します。日本の温室効果ガス排出量は、2012 年の実績で、およそ、二酸化炭素換算13.4 億トンでした。仮に、この炭素税によって排出量が 4 分の 1 減少するとすれば、残り4 分の 3 への課税によって約 10 兆円の税収が入ります(そこまで排出削減効果がなければ、税収はもっと増えます)。また、投機目的の短期的な取引を抑制するため、国際通貨取引に課税する「トービン税」を導入します。

【緩和マネーで「デフレ脱却設備投資・雇用補助金」】こんなふうに企業に対する負担を増やしたら、企業が海外

に逃げてしまうでしょうか。心配には及びません。海外進出企業に対する経済産業省の調査によれば、法人税が今よりずっと高かった昔から、海外進出を決める要因は、現地の市場要因などが大半で、税制を要因にあげる企業は常に少数派です。企業を海外に逃がしたくなかったら、無理な円高にしないことが一番です。

もちろん、政府間の税金ダンピング競争は許しませんし、大企業の税金逃れも防ぎます。世界中で抜け駆けなく企業への応分の課税負担を高め、タックスヘイブン規制や環境税、トービン税の導入を世界中に広めるために、私たちは国際的な交渉に力をつくします。たとえ私たちが政権につくことができなかったとしても、世界中のひとびとと連帯し、これらのことを要求する国際的運動を進めていきます。

私たちが計画している、ひとびとのための潤沢な支出をまかなうだけの、十分な財源の負担を企業や富裕層に課した

なら、設備投資などの支出が減って総需要が抑えられるという心配があるかもしれません。実のところ、いずれ景気が過熱してインフレが進行しているときには、インフレを抑制するために、こうした増税はむしろ、必要不可欠なものとなります。しかし、不況時や、景気拡大が不十分なときには、課税が総需要を抑制する効果は、問題になるかもしれません。そこで私たちは、まだ十分にデフレ脱却できていない間は、「デフレ脱却設備投資・雇用補助金」を導入します。これは、景気を押し上げるために、企業に対して設備投資や新規雇用の補助金を与えるものです。その財源は、日銀が市場から国債を買い上げて量的緩和資金を創出する中で、政府が国債を発行して調達します。これにより、ゼロ%に近い低金利で政府は資金を調達できます。企業にとっては、利益をため込んで税金を余計に納めるよりも、事業のために支出した方が有利になりますから、設備投資や新規雇用を拡大させ、景気回復に寄与することになります。この際、複雑怪奇な大企業優遇の租税特別措置をすべて廃止し、この補助金に一本化します。

この補助金は、景気が拡大するとともに縮小し、物価上昇率が物価安定目標の基準値を超えたら停止します。すると企業の正味の税負担が重くなり、総需要が減って物価上昇が抑制される仕組みです。

【財政危機はまやかし。国債の 4割は無いのと同じ】このような提案をすると、国の借金が膨らんでいるのにこ

れ以上借金を増やすのかと心配されるかたも多いことでしょう。ご心配には及びません。日本が財政危機にあるというのは新自由主義者たちによるまやかしの議論です。「財政規律が乱れる」などの財務省やマスコミ、大資本による「財政破綻注意報」の声に惑わされる必要はありません。プライマリーバランス目標は無意味です。

今、この国の国債の四割以上(400 兆円分以上)は日銀が持っています。統合政府の考え方、つまり日本銀行は政府の子会社だとする考え方にそって考えれば、連結決算された政府の、民間からの借金はすでに 4 割はなくなっていることになります。というのは、日銀の金庫の中の国債は、返す期限がきたら借り換えをして延 と々返済期限を引き延ばすのが常識であり、政府は事実上おカネを返さなくていいのです。政府が日銀に払う国債の利子も、日銀の利益として、「国庫納付金」として国に返す決まりになっていますので、結局払わないことといっしょです。つまりこの間の事実として、日銀が数百兆円ものおカネを作って、政府が民間から借りたお金を返してしまったのだと言えるわけです。だから政府が返さな

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ければならないのは、いまだに民間にある国債だけです。たしかに、将来、物価上昇が進んだときには、それを抑え

る金融引き締め策の一環として、日銀が手持ちの国債を売って民間から貨幣を吸収する(つまり「国債売りオペ」をする)可能性があります。そうするとまた、その国債は民間に対する借金になります。あるいは、インフレ抑制のために、日銀の金庫の中の国債の一部について、期限がきても借り換えせず、政府がおカネを返してそのまま日銀に貨幣を吸収してしまうということもありえます。そのために、多くの人々が、いま日銀の金庫に入っている国債もやはり国の借金なのだと信じ、国の借金が 1000 兆円を超えているなどと心配しているのです。

しかし、金融引き締めには国債売りオペ以外の方法もたくさんありますし、売りオペが行われるとしても、それは日銀の持っている膨大な国債の一部でしかありません。国債の大部分は、永遠に返されることなく、日銀の金庫の中に存続しつづけるのです。日本銀行の会計上、完全雇用の正常な経済をまわしていくために必要な貨幣が世の中に出されているためには、日本銀行はそれに対応する国債を資産として保有していなければならず、むやみにこれを減らすわけにはいかないのです。

だから、デフレ不況から完全雇用経済に達するための財政出動を国債でまかない、その分の国債を日銀が買って、拡大した経済に必要な貨幣を世の中に供給したならば、その国債は返さなくていいことになります。つまり、デフレ不況期には「無借金」での政府支出を行うことが可能なのです。経済の規模が名目的にしろ成長するならば、それに対応した貨幣量も成長するので、日銀の金庫の中の返さなくていい国債の量も成長していくことになります。

【物価安定目標を健全財政の新基準に】日本はプライマリーバランスを財政健全化目標としています

が、これは世界的に見ても特異なことです。G7 のサンクトペテルブルク首脳宣言でも、各国の財政健全化目標は債務対名目GDP 比率を、持続可能なものにする、ということになっています。

そもそもなぜ財政規律を守る必要があるのでしょうか。それは、財政赤字があまりに膨らみすぎると、究極的には、物価上昇がひどくなって経済が混乱し、人々の暮らしが苦しくなるからです。それは逆に言えば、物価上昇がひどくならないように財政を管理できればよいということです。プライマリーバランス目標など、財政の収支尻を合わせることはそのための、目先の手段の一つに過ぎません。このような手段を間違ったタイミングで使い、無理な消費税増税を行うと、かえって景気を悪化させて名目 GDP を減らし、結果的に所得税・法人税などの税収も減らして、財政をさらに悪化させる可能性もあります。

昔のまだ統計技術が発達していないときは、物価を正確に測定することが難しく、物価上昇を予防するためにも、財政収支を厳しく見ることが合理的だったかもしれません。しかし今は、お店のレジの情報を直接集めて物価の動きをリアルタイムで把握することまでできるようになっています。したがって、直接に物価上昇そのものを財政支出の歯止めの基準にすればよいのです。

私たちの政策によれば、政府は「物価安定目標」を立て、日銀がその目標を守るための金融政策をとります。物価上昇率が目標の基準率よりも低い間は、日銀が国債を買い上げて量的緩和を行いますので、それを背景に、国債発行による財政支出を進めることにします。そして物価上昇率が物価

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安定目標を超えたなら、日銀は金融引き締めに転じ、政府は税収の範囲で政府支出することにします。日銀の独立性は何ら損なわれません。

現行のインフレ目標政策は、人々に将来の物価上昇による借金の目減りを予想させ、設備投資や住宅投資などを起こさせて景気を好くしようという政策ですが、日銀が意図的に物価上昇を実現しようとしても、おカネを増やすだけでは、なかなか人々に物価上昇の予想を醸成することはできませんでした。それに対して、私たちの物価安定目標は、「歯止め」として設定するものです。そして、そこまでは、事実上は無借金で政府支出ができるならば、政府は歯止めギリギリまでそんな支出を必ず続けるだろうと、誰でも合理的に予想できます。すると、将来は物価安定目標通りの物価上昇率に落ち着くことをみんなが無理なく確信するので、資金の借り手は実質債務負担が増えないことが予想でき、設備投資や住宅投資の増加効果が確実になります。

物価安定目標の数値としては、当面は日銀が掲げる現行のインフレ目標 2%を引き継ぎます。そして、この物価安定目標の率を変更するときには、民意を問うこととします。

【硬貨発行で日銀保有国債消滅】なお、日銀の金庫の中の国債の多くは現実には世の中に

出ることはないのですが、あたかも国が膨大な借金を抱えているような印象を人々に与え、そのせいでひとびとの暮らしのために必要な財政支出の妨げになっているのは困ったことです。そこで、必要な法改正をとった上、政府が発行する貨幣、例えば、50 兆円分の硬貨ないし政府紙幣を発行し、その分の日銀保有国債を買い取り、一気に借金を消滅させます。この分は、日銀の帳簿上、決して減価しない資産となり、日銀のバランスシート上の問題も生じません。物価安定目標を守る約束がある限り、このせいで財政規律が野放図に緩む心配はありません。また、物価安定目標を高々数パーセント超えた段階で、目標値までインフレを押さえ込むために、日銀が持つ 400 兆円分の国債のうち 350 兆円分を費やし、残り50 兆円分に手をつける事態は 100%ありえません。現実経済に何の悪影響も出ない方策なのです。

悪影響が何事も起こらないことが確信されたなら、インフレの動向を見ながら、インフレ抑制に必要な国債が不足しない範囲内で、同様の措置を進めていきます。

【ひとびとのための貨幣供給システム】なお、この項目で掲げた諸政策を進めるために、日銀は

選挙で示される民意のもとに、民主的にコントロールされる機

関とし、その政策目標に、「物価の安定」に加えて「完全雇用」を掲げることにします。そのための日銀法の改正を行います。

デフレ脱却が課題となっているときに、日銀の緩和マネーを使って政府支出するには、直接に日銀が政府から国債を買う方が、余計なひずみの余地がなく、すっきりしています。したがって、日銀が政府から直接国債を買い入れることを禁止した財政法第 5 条は廃止し、新たに、物価安定目標を守る歯止めを法で定めた方がいいでしょう。しかし、その廃止が困難ならば、現状のまま日銀が民間から国債を買い上げて金融緩和政策をとっているという背景のもと、政府が国債を民間に発行して資金を借り入れるという形で、国債市場を間に挟んで事実上同じことをする方法でも差し支えありません。

いずれにせよこの方策は、物価変動の度合いに応じて、機敏に政府支出を増やしたり減らしたりできなければなりません。だとすると、制度的に決まった経常的な支出では都合が悪いことになります。一旦始まったら物価上昇が進行しても事業規模を縮小できない公共事業でも困ります。私たちがこのマニフェストに掲げる「デフレ脱却設備投資・雇用補助金」や「デフレ脱却手当」のような、簡単に規模を増減できる給付金が望ましいことになります。

よって、国債の発行目的を公共事業のみに認める財政法第 4 条の規定は廃止します。

※ここで私たちが目指しているのは、欧米の多くの経済学者が提唱している貨幣システム改革です。日本で流通している貨幣(マネー、M2)の金額は約 1000 兆円ですが、そのおよそ 9 割は民間銀行が創り出した預金通貨であり、日本銀行券は 100 兆円にすぎません。つまり、民間の銀行が私的利益のための恣意的な判断で信用貨幣の供給を増減させ、中央銀行がそれをサポートするだけの貨幣システムになっています。これは、銀行に過大な「貨幣発行益」をもたらすとともに、バブル景気とデフレ不況との振幅を大きくしています。実際のところ、日本銀行の「独立性」は幻想であり、それは民間銀行の動きに従属しているのです。これに代えて、中央銀行が調節可能なもの(マネタリーベース)がマネーの大部分を占め、民主的に選ばれた政府が景気の動向に合わせて、恣意性なく公平にそれを人々に直接的に供給するシステムを実現します。景気過熱期には、物価上昇を抑制する金融引き締め政策をとる上で、日銀による国債売りオペは財政負担を重くしないレベルにとどめ、主に銀行の預金準備率を引き上げることで対処します。他方で、景気が悪化したときには主に日銀の緩和マネーで、ひとびとへの貨幣配当などに財政支出することで対処してゆけば、景気循環を何度も経るごとに、長期的には銀行の預金準備率が高まっていき、民間銀行ではなく政府と中央銀行がマネー供給の大部分を占める制度へと、システム改革が実現されていきます。

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Manifestoすべての所得に累進課税を09 すべての所得に累進課税を

法人税が減税される中で、大企業は史上空前の利益を毎年更新し続けており、貧富の格差も拡大しています。法人税と、所得税の累進性を、まず 90年代はじめのレベルにまで引き上げ、さらに数年がかりで引き上げていきます。法人税の優遇措置をなくし、節税・脱税を困難にします。金融資産からの所得は、すべて他の所得といっしょにして累進課税することにします。

資産課税を強化10 資産課税を強化相続税、キャピタルゲインへの課税(一定率以上の値上がりは、現金化しなくても課税)、タックスヘイブンへの逃避への課税、分離課税で守られている巨額の退職金への課税などを強化して、富裕層への課税を拡大する一方、庶民の負担を減らします。

金融機関の野放図な融資を抑制11 金融機関の野放図な融資を抑制

民間金融機関の野放図な融資をおさえ、土地などの資産バブル発生を防ぐため、地価税の復活、キャピタルゲイン課税の強化のほか、銀行の法定預金準備率を引き上げます。

社会保険料も累進制に12 社会保険料も累進制に

社会保険料も累進制にし、企業と富裕層の負担を増やし、庶民の負担を減らします。

環境税・トービン税を導入13 環境税・トービン税を導入

二酸化炭素排出などに対する環境税を導入します。国際資金移動に課税するトービン税を導入し、世界に広げるように交渉します。

「デフレ脱却設備投資・雇用補助金」創設14 「デフレ脱却設備投資・雇用補助金」創設

大企業優遇の租税特別措置をすべて廃止し、全企業を対象とした、「デフレ脱却設備投資・雇用補助金」に一本化することにします。これは、デフレ脱却が確実になるまでの間、日銀の量的緩和マネーをゼロ金利で借りることで資金をまかなうもので、景気拡大効果が十分に出る規模のものとし、物価が上昇するとともに縮小して、物価安定目標の率に達するとやめる仕組みです。

健全財政の新たな基準を15 健全財政の新たな基準を

健全財政の目的は収支の帳尻合わせにあるのではなくて、物価変動の管理にあります。私たちはプライマリーバランスや国債の総額量などではなく、対民間債務の名目GDP比と、物価安定目標を守ることを、健全財政の新たな基準とします。物価安定目標を変更するときには民意を問うことにします。当面は、現日銀がかかげるインフレ目標 2%を、物価安定目標の基準として引き継ぎます。

政府紙幣で政府債務を清算16 政府紙幣で政府債務を清算

日銀保有の国債のうちの、50兆円分を、政府が政府紙幣または硬貨を発行して買い取り、政府の債務を清算します。これを手始めにして、物価の動向を見ながら、同様の措置を進めていきます。

日銀法を改正17 日銀法を改正日銀法を改正して日銀は民主的コントロールのもとにおくこととし、その政策目標に「完全雇用」を加えます。

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【新自由主義がもたらした隷属社会】以前、細川首相や小泉首相が、「小さな政府」「規制緩

和」「民営化」と言った時、期待をよせたみなさんも多かったと思います。そんなみなさんは、そのときいったい何を期待されたでしょうか。今日、周知のように、日本の財政や規制は、安倍首相のオトモダチ連中の食い物にされています。経済特区、規制緩和、民営化、東京五輪は、一部の関係者に利権を発生させています。こんなことを期待されたでしょうか。

みなさんが期待されたのは、古い自民党政治の悪い面を壊すことだったに違いありません。それは、権力者や官僚が、現場の事情も知らずに意のままの判断で民間人に指図し、その結果ひとびとがしばしば理不尽な目にあっても、指図した本人は責任をとらない仕組みでした。こんな仕組みがあると、権力者や官僚の「恩寵」にあずかろうとして、一部の取り巻き既得権集団が形成されるのです。

これを正したいというみなさんの気持ちは間違っていませんでした。リスクのあることは、民間人の判断にまかせてほしい。なぜなら民間人の方が現場の情報に通じ、決めたことに自腹で責任がとれるから。政治家や官僚は、あれこれ恣意的な政策や事業をせずに、みんなに公平かつ明確にあてはまるルールを司る役割だけを果たしてほしい。みなさんが、「小さな政府」「規制緩和」「民営化」という言葉で期待したことは、理屈にするとこういうことだっただろうと思います。

ところが小泉改革以来、「小さな政府」「規制緩和」「民営化」と言ってなされてきたことは、この願いとは正反対ではありませんか。「役所が民間企業みたいになるべきだ」というような勘違いの解釈がまかりとおり、自腹で責任をとれないくせに、ブラック企業のワンマン経営者のように、リスクの高い政府事業を意のままに決めるモンスターリーダーが次 と々現れました。そのもとにはそんなリーダーを目指すモンスター議員が集まっています。経済特区制度に典型的に見られるように、

「規制緩和」自体が、みんなに公平・明瞭に適用されるものではなく、権力者の意のままで適用されるようになっています。

「小さな政府」「規制緩和」「民営化」と言ってきた新自由主義の政治家は、「自由」「自由」と言っていましたが、その実、彼らの「カイカク」のもたらしたものは、たくさんの普通のひとびとが、いろいろなレベルで、権力を持つ人やおカネを持つ人の顔色をうかがい、彼らの好き勝手な判断にふりまわされて、かろうじて生活している隷属社会です。「民間活力」を唱える「ユリノミクス」の歳出削減で、失業が増え社会保障が削減されたならば、ますますこの隷属が蔓延します。もう「カイカク」にはうんざりです !!

【えこひいきを許さない公平クリアな基準を】私たちは、権力者や官僚の意のままになされる規制には

反対ですが、権力者や官僚の意のままになされる規制緩和にも反対です。権力者のえこひいきが幅を利かす経済特区制度は廃止します。ましてやデフレ脱却が十分でないときに、規制緩和で競争を煽って倒産や失業を増やして財やサービスの価格をさげたならば、人々は値下がりで浮いたおカネを消費に向けたりしませんので、デフレは悪化します。このようなことは、今やるべきことではありません。逆に、みんなに公平かつ明瞭にあてはまる規制ならば、もっと強化するべきものがたくさんあります。それは、環境や食品の安全、労働条件などの基準です。同様に私たちは、権力者や官僚が意のままに食い物にする「大きな政府」には反対ですが、権力者や官僚が意のままに食い物にする「小さな政府」にも反対です。そうではなくて、みんなに公平かつ明瞭にあてはまる基準に基づき、豊かな財政支出がなされる「大きな基準政府」を実現します。

また私たちは、自腹で責任を負わず、現場の事情も知らない政治家が采配する公営企業には反対ですが、それが、現場の事情を知らない経営者の采配する巨大民間企業に置き換わったからと言って、事態が改善されたとは思いません。むしろ、現場の利用者や従業者が責任を負ってリスクをとるための情報をもっているような場合には、彼らに事業上の意思決定権が与えられるべきでしょう。

そこで私たちは、利用者や従業者に実質的に決定権がある協同組合の発展を支援するために、現在法制化されていない労働者協同組合の法制化を実現するとともに、分野ごとに細分化されている協同組合法規を、基本法のもとに一体化することを目指します。

【ベーシックインカム導入】さらに私たちは、ベーシックインカムの導入によって貧困を

根絶します。ベーシックインカムとは、個人 1 人あたり数万円の基礎所得を、全てのひとびとに、無条件に給付するものです。今の日本では、企業をクビになったり事業が失敗したりすれば、どん底の生活が待っています。しかし、ベーシックインカムがあれば、誰もが自分の道に「何度でも」チャレンジできるようになります。これがあれば、労働者は気ままで強権的な経営者や上司に職場で苦しめられたとしても、これまでよりも退職するという判断ができやすくなります。そのため、企業もよい人材を十分に確保しようとすれば、労働者を心身ともに酷使することはできなくなります。私たちのゼロ失業政策や時短政策と合わせると、ブラック企業は根絶されます。

4 力ある者の意のままで人の明暗が分かれない公平な世の中を! 特区制度廃止・ベーシックインカム・長期計画の公共インフラ建設

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日本の現実では、生活保護は正しく機能していません。行政担当者の意のままのさじ加減で、多くの貧困な人々が不当に排除され、受給者の人々はプライバシーや人権を侵害されています。それに対して、ベーシックインカムは、お役人の恣意的な判断の余地はありません。みんなに公平かつ明瞭に与えられる社会保障の典型です。

ベーシックインカムによってひとびとが働かなくなる、というのは本当でしょうか。実は、カナダやアメリカ、アフリカ等で実施された、無条件のベーシックインカムやフリーマネーの実験の結果によれば、人々は自分の能力に投資し、事業を行い、経済的な成功を収めるようになっているとのことです。

まず手始めに、私たちは政権についてすぐに、「デフレ脱却手当」をすべての日本在住者に、老若男女に一切関わらず、毎月3 万円ずつ配ります。これは、デフレ脱却が確実になるまでの間、日銀の量的緩和マネーをゼロ金利で政府が借り入れることで資金をまかなうものです。物価上昇率が高まるとともに縮小して、物価安定目標が達成されると停止します。さらに、生活保護や子ども手当、年金の基礎的部分など、特定の人々に与えられるベーシックインカムに類似した給付制度、所得税の基礎控除などを、ベーシックインカムに統合し、発展的に解消してゆきます。これがベーシックインカムの一階部分になり、この上に、上述の「デフレ脱却手当」が景気の状態で変動する二階部分として乗る構造になります。一階部分のベーシックインカムは、現実の景気によって変動するのではなく、最低賃金同様、物価安定目標の物価上昇率プラス一定率の定率で引き上げます。

この前段階として、高齢者などの年金の一律の基礎的部分は、一般会計で支出するものに改め、社会保険制度を組み替えます。そしてこの基礎的年金部分をベーシックインカムに統合していきます。

【インフラ公共事業は必要なものだけしっかりと】ところで、古い自民党の悪いところの象徴みたいに言われ

てきたのが、インフラ建設の公共事業でした。たしかに、力の強い政治家が胸三寸で予算をつけて、そこに利権が群がり、どれだけ公費を垂れ流しても無駄に終わっても、責任は問われません。これで膨らんだ財政赤字のつけを庶民にまわされてはたまりません。安倍内閣は基本的には緊縮財政でしたが、たまに景気対策の財政拡大を打つと、やはりハコモノ公共事業が中心でした。

これから少子高齢化が進むと、長い目で見るとやがて人手不足の時代になり、介護などの人手をどう確保するのかが課題になります。必要性の低いハコモノ公共事業に労働を割いている余裕はなくなります。それゆえ私たちは、大阪万博やカジノ建設などの計画は中止します。とりわけカジノは、その事業自体、必要性が疑わしいもののために貴重な労働を割くことになります。

しかし私たちは、小泉政権以降、長年にわたってあらゆる公共事業を削減し続けたのは行き過ぎだったと思います。

このために、業者の廃業が続き、建設業に就職する若者が少なくなっています。今後、高度成長期に作ったインフラが、耐用年数がすぎて更新が必要になってくるのに、同じものを作る技術が継承されていない問題が指摘されています。

そこで私たちは、インフラ建設公共事業は、環境や景観への配慮を要件としつつ、更新投資を中心に必要なものを厳選し、どんな地方でも常に仕事が持続するように長期計画を策定します。そして若者が安心してこうした仕事に就職して、しっかりと技術が伝承されるようにします。さらに、保育所、介護施設、医療機関など、ひとびとの命と暮らしに直結するインフラに政府支出を振り向けます。また、地方における防災等の公共事業を充実させます。若者が安心して住める、格安の家賃の公営住宅の建設も進めます。

誰もが貧困のリスクなく

かけがえのない自分の人生を

自分で自由に選択することに

何度でもチャレンジできるのが

真に自由な世の中です。

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Manifesto「すべてのひと」のため公金支出18 「すべてのひと」のため公金支出

安倍首相をはじめとする権力者の「オトモダチ」のための「成長戦略」(経済特区、民営化、東京五輪、大阪万博、カジノ、法人税のさらなる引き下げ)ではなく、「すべてのひと」のために公金と政治権力を使います。

経済特区制度は廃止19 経済特区制度は廃止政治家や官僚のえこひいきが幅を利かす経済特区制度はやめにします。

ベーシックインカムを導入20 ベーシックインカムを導入

貧困に苦しむ人の生殺与奪の権限を行政が握る生活保護制度はやめにして、誰もが公平に受けられて、安心して生活できる、ベーシックインカム制度を導入します。

「デフレ脱却手当」で月3万円配布21 「デフレ脱却手当」で月 3万円配布

まず手始めに、「デフレ脱却手当」をすべての日本在住者(一定期間以上居住する人々)に月 3万円ずつ配ります。これは、デフレ脱却が確実になるまでの間、日銀の量的緩和マネーをゼロ金利で借りることで資金をまかなうもので、物価が上昇するとともに縮小して、物価上昇率が物価安定目標率に達するとやめるものとします。

社会保障制度を組み換え22 社会保障制度を組み換え

次に、高齢者などの年金の一律の基礎的部分を一般会計で支出するものに改め、社会保険制度を組み替えます。やがてこれとともに、所得税の基礎控除や各種控除、子ども手当、その他各種の給付制度など、事実上の「特定の人々へのベーシックインカム」になっているものを組み替え、全てのひとびとへのベーシックインカムとして統合していきます。障がい者、罹患者等の追加的助けを必要とするひとびとへの給付金を削ることはありません。これらも、物価安定目標の物価上昇率プラス一定率で上昇する仕組みにします。

地方でも常に仕事が持続するインフラ事業23 地方でも常に仕事が持続するインフラ事業

インフラ建設のための公共事業は、更新投資を中心に必要なものを厳選し、どんな地方でも常に仕事が持続するように長期計画を策定して、若者が安心してこうした仕事に就職して、しっかりと技術が伝承されるようにします。

必要な施設は建設を24 必要な施設は建設を次のような事業は、更新投資にかぎらず、新たな建設を行います。若者が安心して住める、格安の家賃の公営住宅、地方防災系公共事業、保育所、介護施設、医療機関などです。

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Page 15: 反緊縮経済政策マニフェスト - People's Economic Policy · 2018. 10. 29. · す。 その後、やっと長かった不況時代を抜け出たかに見えた 2014年春、消費税が5%から8%に引き上げられました。そ

日本では多くの大学生が「奨学金」と名付けられた多額の借金をかかえて卒業してゆきます。政府はゼロ金利で資金調達できるのに、元奨学生から金利をとるべきではありません。

私たちは政権について一ヶ月以内に、有利子奨学金の原資の借り換えを行い、金利をゼロにします。次いで、新規の奨学金をすべて給付型にするとともに、既存の就学金債務を軽減・解消していきます。

さらに、日本ではこどもたちの教育費が家計の大きな負担になっており、教育の機会不平等が経済的な格差にもつな

がっています。私たちは乳幼児の保育料だけでなく、小学校・中学校・高等学校・大学を無料化します。

ひとびとや子どもたちの命を守る医療制度・介護制度・保育制度を拡充する上で、人員の不足が課題となっていますが、その最大の原因は賃金の低さや労働条件の悪さです。私たちは、介護、保育、看護に携わる人々の賃金を大幅に引き上げます。介護士・保育士の賃金は少なくとも警察官・消防士なみにします。彼らの労働条件を大幅に改善し、人員を倍増します。こうして私たちは、待機児童ゼロ、介護離職ゼロを実現します。

Manifesto奨学金債務を軽減・解消25 奨学金債務を軽減・解消

政府はゼロ金利で資金調達できるのに、元奨学生から金利をとるべきではありません。私たちは政権について一ヶ月以内に、有利子奨学金の原資の借り換えを行い、金利をゼロにします。次いで、新規の奨学金をすべて給付型にするとともに、既存の奨学金債務を軽減・解消していきます。

教育・保育を無償化26 教育・保育を無償化保育料、授業料を無料化し、保育園から大学まで無料で通えるようにします。

介護、保育、看護などの賃金大幅引き上げ27 介護、保育、看護などの賃金大幅引き上げ

介護、保育、看護などの賃金の大幅引き上げを実施します。介護士・保育士の賃金は少なくとも警察官・消防士なみにします。彼らの労働条件を大幅に改善し、人員を倍増します。

待機児童ゼロ、介護離職ゼロを実現します28 待機児童ゼロ、介護離職ゼロ

待機児童ゼロ、介護離職ゼロを実現します。

5 教育・保育の無償化、介護、医療の充実など(この項目は、社会保障、教育政策などのマニフェストのなかに取り入れてください。)

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ひとびとの経済政策研究会