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2 松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題 -40- 2 松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題 2.1.1 洪水対策 松浦川では、未曾有の被害をもたらした昭和 28 6 月洪水以降、この洪水と同規模の洪 水に対して、安全を確保するために、資産が集中する唐津市街部をはじめ下流より治水対策 を進めてきました。この結果、平成 18 4 月時点の国管理区間における堤防整備状況は、 堤防が必要な区間のうち完成堤防の区間の割合は約 54%となっています。 しかしながら、松浦川の上流部、徳須恵川の上流部および厳木川の中上流部は依然として、 堤防未施工区間が多く、洪水を流すことのできる河道の断面積も不足しているのが現状です。 そのため、平成 2 7 月洪水の他、平成 14 9 月洪水、平成 18 9 月洪水等の中小洪水に よる浸水被害も度々発生しており、早期に治水対策を図る必要があります。また、流下能力 不足区間には、大黒井堰、馬ン頭伏せ越し、萩の尾堰(松浦川)および岩坂井堰(徳須恵川) など固定堰が存在します。固定堰は、洪水時に上流部への水位上昇を引き起こします。一方、 これら固定堰は、土木遺産的にも非常に価値が高く、また、地域住民からも保全を要望され ています。 表 2.1.1 松浦川水系の国管理区間における堤防整備状況 堤防延長 1 完成堤防 暫定堤防 2 未施工区間 小 計 不要区間 合 計 45.0km 54%6.1km 7%32.8 km 39%83.9 km 38.0 km 121.9 km (平成 18 4 月時点) 1 延長は国管理区間の左右岸の計です。 2 完成堤防に比べ、高さや幅が不足しているものをいいます。 写真 2.1.1 松浦川上流部の 無堤区間の状況 (伊万里市大川町:27/000 付近) 写真 2.1.2 徳須恵川上流部の 無堤区間の状況 (伊万里市南波多町:11/800 付近) 写真 2.1.3 厳木川中流部の 無堤区間の状況 (唐津市厳木町:6/000 付近)

松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題...2 松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題-42-2.1.2 堤防の安全性 松浦川は過去に度重なる洪水を受けており、堤防は、その経験に基づいて、築造・補修が

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  • 2 松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題

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    2 松浦川の現状と課題

    2.1 治水の現状と課題

    2.1.1 洪水対策

    松浦川では、未曾有の被害をもたらした昭和 28 年 6 月洪水以降、この洪水と同規模の洪水に対して、安全を確保するために、資産が集中する唐津市街部をはじめ下流より治水対策

    を進めてきました。この結果、平成 18 年 4 月時点の国管理区間における堤防整備状況は、堤防が必要な区間のうち完成堤防の区間の割合は約 54%となっています。

    しかしながら、松浦川の上流部、徳須恵川の上流部および厳木川の中上流部は依然として、

    堤防未施工区間が多く、洪水を流すことのできる河道の断面積も不足しているのが現状です。

    そのため、平成 2 年 7 月洪水の他、平成 14 年 9 月洪水、平成 18 年 9 月洪水等の中小洪水による浸水被害も度々発生しており、早期に治水対策を図る必要があります。また、流下能力

    不足区間には、大黒井堰、馬ン頭伏せ越し、萩の尾堰(松浦川)および岩坂井堰(徳須恵川)

    など固定堰が存在します。固定堰は、洪水時に上流部への水位上昇を引き起こします。一方、

    これら固定堰は、土木遺産的にも非常に価値が高く、また、地域住民からも保全を要望され

    ています。

    表 2.1.1 松浦川水系の国管理区間における堤防整備状況

    堤防延長※1 完成堤防 暫定堤防※2 未施工区間 小 計 不要区間 合 計

    45.0km (54%)

    6.1km (7%)

    32.8 km (39%) 83.9 km 38.0 km 121.9 km

    (平成 18 年 4 月時点) ※1 延長は国管理区間の左右岸の計です。 ※2 完成堤防に比べ、高さや幅が不足しているものをいいます。

    写真 2.1.1 松浦川上流部の無堤区間の状況

    (伊万里市大川町:27/000 付近)

    写真 2.1.2 徳須恵川上流部の無堤区間の状況

    (伊万里市南波多町:11/800 付近)

    写真 2.1.3 厳木川中流部の無堤区間の状況

    (唐津市厳木町:6/000 付近)

  • 2 松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題

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    図 2.1.1 松浦川の堤防整備状況 (国土地理院発行の2万5千分の1地形図(唐津・浜崎・徳須恵・相知・伊万里・多久)を使用)

    不要区間38.0km

    未施工区間32.8km(39%)

    暫定堤防6.1km(7%)

    完成堤防45.0km(54%)

    合計121.9km

    堤防整備率

    治水安全度

  • 2 松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題

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    2.1.2 堤防の安全性

    松浦川は過去に度重なる洪水を受けており、堤防は、その経験に基づいて、築造・補修が

    行われてきた歴史的構造物といえます。そのため、古い時代に築造された堤防は必ずしも工

    学的な設計に基づくものではなく、また、築造の履歴や材料構成なども明確にはわかってい

    ません。その一方で、堤防の背後地には人口や資産が集積している箇所もあり、堤防の安全

    性の確保がますます必要となっています。 このように、堤防や地盤の構造がさまざまな不確実性を有している部分もあることから、

    堤防の安全性の点検を行い、機能の維持や安全性の確保を図るため、必要に応じた堤防強化

    対策を実施していく必要があります。

    :非常に緩いシルト層

    図 2.1.2 不均質な堤体材料の事例

    ① ②③

    図 2.1.3 浸透による堤防決壊のイメージ図

    河川の水位が高い状態が長時間続くと、堤防内の水位も上昇し、

    堤防の中に水の通り道が形成①されます。この水の通り道が、徐々

    に拡大すると、水とともに堤防の土が流れ出し②、堤防が崩れる

    ③こととなります。

  • 2 松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題

    -43-

    2.1.3 内水対策

    松浦川では、過去に平成 2 年 7 月出水、平成 5 年 8 月出水、平成 9 年 6・7・8 月出水、平成 11 年 6 月出水、平成 14 年 9 月出水、平成 18 年 9 月出水時において内水が発生し、このう

    ち平成 2 年 7 月出水では家屋浸水が発生しており、和多田わ た だ

    救急排水機場や沖おき

    鶴つる

    排水機場等を

    設置しました。これにより、下流市街部については、近年内水による家屋浸水は発生してい

    ません。また、排水ポンプ車等災害対策用機械の派遣や被災箇所の応急復旧等を実施するこ

    とで洪水被害の拡大防止・軽減に努めています。

    表 2.1.2 松浦川水系排水機場

    排水機場名 設置位置 完成年度 計画排水量 吐出量 ポンプ形式

    ① 鏡救急排水機場 本川

    右岸 1k530 平成 7 年度 4.0m3/s

    1.0m3/s

    ×3 台 水中斜流ポンプ

    ② 和多田救急排水機場 本川

    左岸 1k800 平成 9 年度 6.0m3/s

    1.0m3/s

    ×5 台 水中斜流ポンプ

    ③ 沖鶴排水機場 本川

    右岸 4k580 平成 13 年度 2.0m3/s

    1.0m3/s

    ×2 台 ゲートポンプ

    ④ 大川野救急排水機場 本川

    右岸 23k885平成 10 年度 2.0m3/s

    1.0m3/s

    ×1 台 水中斜流ポンプ

    ※ 鏡、和多田、大川野の 3 ヶ所の排水機場においては、救急内水事業の一環として、内水被害を軽減することを目的として建設されました。

    ※ 救急内水対策事業では、本明川の仲沖地区、松浦川の鏡、和多田、大川野地区、嘉瀬川の池上地区の 3 ブロック 5 地区を対象としており、これらの内水被害の状況に応じて移動式ポンプを移動させ、効果的な運用を図るものとしています。

    ②和多田救急排水機場

    ①鏡救急排水機場

    ③沖鶴排水機場

    ④大川野救急排水機場

    図 2.1.4 松浦川水系排水機場位置図

  • 2 松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題

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    2.1.4 河川の維持管理

    (1) 河道の維持管理

    松浦川本川、徳須恵川および厳木川の河床高は、経年的に上昇、低下といった顕著な変動

    傾向は見られません。しかし、洪水時には、上流域で生産された土砂が洪水とともに流送さ

    れてくるほか、河道内の河床も同時に変動する可能性があります。 土砂堆積により河床高が上昇すると、流下能力の不足が生じる可能性があります。一方、

    河床高が低下すると、洗掘により堤防や護岸など河川構造物が不安定となり、崩壊する可能

    性があります。 さらに、河床高の上昇は、砂州を極端に発達させ、植生繁茂が著しくなり、河畔林の過剰

    な繁茂が懸念され、洪水流下の阻害となる恐れもあります。

    写真 2.1.4 河道内に繁茂する樹木群

    【厳木川 5k6~6k0 付近】 【徳須恵川 4k6~5k0 付近】

    松浦川 2k600横断図

    -4.0

    -2.0

    0.0

    2.0

    4.0

    6.0

    8.0

    -50 0 50 100 150 200 250 300 350横断距離(m)

    標高

    (T.P

    .(m

    ))

    S48

    S58

    H4

    H15HWL:2.909

    松浦川 2k600 横断図 徳須恵川 1k800横断図

    -2.0

    0.0

    2.0

    4.0

    6.0

    8.0

    10.0

    12.0

    -20 0 20 40 60 80 100横断距離(m)

    標高

    (T.P

    .(m

    ))S48

    S58

    H4

    H15HWL:5.913

    徳須恵川 1k800 横断図

    厳木川 8k000横断図

    32.0

    34.0

    36.0

    38.0

    40.0

    -20 -10 0 10 20 30 40 50横断距離(m)

    標高

    (T.P

    .(m

    ))

    S48

    S59

    H4

    H15

    HWL:35.785

    厳木川 8k000 横断図

    図 2.1.5 河床高の経年変化

  • 2 松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題

    -45-

    (2) 河川管理施設の維持管理 ① 堤防および護岸

    堤防や護岸は、経年的な老朽化や、降雨・浸透・洪水・地震等自然現象や車両乗り入れ

    等人為的な行為の影響を受けることにより、変形やクラック※等が発生し、放置すると出水

    時に変状の拡大や大規模な損傷に繋がります。また、堤防天端の不陸や護岸の老朽化は、

    水の浸透等外的影響により、クラックや堤体の土質のゆるみの進行に繋がり、堤防の弱体

    化をまねく恐れがあります。 松浦川では、護岸の老朽化とともに、堤防天端のクラックや小さな漏水等が確認されて

    おり、点検、変状原因の調査の継続とともに、補修対策を行う必要があります。

    ※ クラック:非常に幅の小さい亀裂やひび割れです。

    ② 水閘門等(樋門・樋管、水門、排水機場、堰、ダム)

    松浦川には、国が管理する施設として樋門・樋管、水門、排水機場、堰、ダム等、河川

    管理施設※1 が 256 箇所存在します。その多くは、昭和50年以前に築造されたもの(設置後 30 年以上経過)が約 7 割を占め、今後老朽化の進行等により施設更新や補修時期が集中することが考えられるため、施設の重要度や不具合の状況に応じた効率的、適切な維持管

    理を行う必要があります。 樋門・樋管、水門、排水機場、堰、ダム等の構造物については、ゲート等の機械設備や

    電気設備の機能保全とともに、コンクリート構造物の老朽化や出水、地震等によるコンク

    リートのクラックや構造物周辺の土質の空洞化の進行による漏水等の補修対策を行う必要

    があります。 また、近年、操作従事者の高齢化や局所的集中豪雨により、操作の負担が増加しており、

    操作環境の向上、遠隔操作、監視等による操作体制の高度化が必要となっています。 その他、松浦川には許可工作物※2 として、河川管理者以外が設置した橋梁、水門、樋門

    樋管、揚水機場等が多数設置されており、それらの施設の管理についても河川管理上支障

    がないかを確認し状況に応じた指導を行う必要があります。 ※1 河川管理施設:河川管理者(国)が河川の治水・利水・環境の目的で設置したダム、堰、堤防、護岸等の工作物です。 ※2 許可工作物:河川の土地内(河川区域内)に、河川管理者以外の者が、交通・農業・漁業・工業等の目的で設置した、

    橋、堰、樋管、桟橋などの工作物です。設置には河川管理者の許可が必要なため「許可工作物」と呼ばれています。

    写真 2.1.5 老朽化した護岸 (松浦川 15/850 右岸付近:唐津市佐里)

    写真 2.1.6 天端部の不陸の状況 (厳木川 0/400 左岸付近:唐津市厳木町)

  • 2 松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題

    -46-

    種別 樋門・樋管 水門 排水機場 堰 床止め ダム

    施設数 245 2 4 1 3 1

    表 2.1.3 河川管理施設一覧(国管理区間)

    写真 2.1.7 老朽化した樋管 (徳須恵川 0/045 右岸付近:唐津市石志)

    図 2.1.6 河川管理施設の設置年代と施設数 昭和 50 年以前に設置された河川管理施設は、松浦川水系(国管理区間)

    河川管理施設全体の約 7 割を占めます。

    ハンチが破損

    漏水、土砂流出

    178

    2311 14 8 5

    17

    020

    4060

    80100

    120140

    160180

    ~S50 S51~S55 S56~S60 S61~H2 H3~H7 H8~H13 H14~H17

  • 2 松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題

    -47-

    2.1.5 危機管理対策

    これまで河川管理者は、想定する計画規模の洪水を安全に流下させるために、堤防やダム

    等の整備を進めてきており、着実に治水安全度を向上させてきました。一方で、今後の堤防

    等の整備には長い年月を要することから、整備途上において計画規模の洪水が発生する可能

    性があります。また、近年、全国各地で計画規模を超える豪雨が発生し甚大な被害を及ぼし

    ており、平成 18 年 9 月の徳須恵川の出水においても畑川内観測所で時間雨量 110 ㎜を記録していることから、今後、計画規模を超える洪水の発生を想定する必要があります。

    このような状況を踏まえ、施設整備(ハード整備)のみで災害を防ぐという対策から、洪

    水が氾濫することを前提にいかに被害を軽減するかという危機管理対策を講じる必要があり

    ます。

    このため、ハード整備の推進とあいまって、避難や水防活動等のソフト対策を一体となっ

    て対処することが必要となっており、これまでも水防警報・洪水予報の発信、重要水防区域

    図の作成、IT 化に伴う光ファイバーなどの整備と活用等のソフト対策を実施しています。 しかし、現状では、まだまだ避難活動や水防活動に資するための洪水ハザードマップなど

    の事前情報や災害時に迅速でわかりやすいリアルタイムの情報提供が十分になされていると

    はいえない状況です。また、普段のまちづくりや地域のコミュニティにおいて,危機管理の

    観点が十分に備わっておらず、少子高齢化など社会構造の変化とあいまって災害に対して弱

    い地域が形成されています。 このようなことから、今後、ソフト対策の充実を図り、自助・共助・公助の連携をより一

    層推進することが重要であるとの考えに基づき、平成 16 年 12 月に「新たな危機管理対策プラン(平成 17 年 11 月改訂)」を提案しています。

    図 2.1.7 時間雨量 50mm、100mm 以上の降雨発生回数

    1.時間雨量 50mm 以上の降雨の発生回数

    2.時間雨量 100mm 以上の降雨の発生回数

    1 時間降雨量における年間延べ件数:国土交通省調べ(全

    国のアメダス地点 約1,300 箇所より)

  • 2 松浦川の現状と課題 2.1 治水の現状と課題

    -48-

    図 2.1.8 松浦川水系浸水想定区域図 (平成 14 年 11 月作成)

    この浸水想定区域図は、松浦川水系において概ね 100 年に 1 回程度起こる大雨が降ったことにより、松浦川・

    徳須恵川・厳木川が氾濫した場合に想定される浸水の状況を、シミュレーションにより求めたものです。

    ※市町村については合併前のものです。

  • 2 松浦川の現状と課題 2.2 利水の現状と課題

    -49-

    2.2 利水の現状と課題

    2.2.1 河川水の利用

    松浦川の水は、現在、流域外も含めて農業用水として約 8,700ha の農地でかんがいに利用

    され、水道用水としては、唐津市、多久た く

    市等で、工業用水としては唐津市内で利用されてい

    ます。また、水力発電としては、厳木川の厳木発電所、厳木第 2 発電所の他、厳木ダムを下ダムとする揚水式の天山発電所により、最大出力約 61 万 kW の電力提供が行われています。

    基準地点牟田部における過去 45 年(昭和 34 年~平成 15 年)の流況は平均低水流量※1 約3.5m3/s、平均渇水流量※2 約 2.1m3/s となっています。

    ※ 1:低水流量とは 1 年を通じて、275 日はこれより下らない流量 ※ 2:渇水流量とは 1 年を通じて、355 日はこれより下らない流量

    図 2.2.1 松浦川水系取水排水系統と主な利水施設

  • 2 松浦川の現状と課題 2.2 利水の現状と課題

    -50-

    図 2.2.2 松浦川水系の主な水利用の現況模式図

    原田頭首工,他5件(農水)

     Q=0.4721 m3/s

     A=49.00 ha

    ○ 44/100

    43/500 ○1 十二神頭首工(農水)

       Q=0.3701 m3/s

       A=40.00 ha ○ 40/900 堺頭首工,他8件(農水) Q=不明 A=88.90 ha

    ○ 35/600 皿頭首工,他3件(農水) Q=不明 A=51.10 ha

    ○ 31/400 萩の尾堰,他1件(農水)

     Q=0.2500 m3/s

     A=64.45 ha

    ○ 28/860 伊万里市(上水)

    Q=0.0035 m3/s

    ○ 26/200 大黒堰,川島揚水機(農水) Q=不明 A=84.50 ha

    26/020 ○1

      伊万里市(上水)

       Q=0.0070 m3/s

    22/560 ○1 白木鶴揚水機,他3件(農水)

       Q=0.3957 m3/s

       A=22.16 ha○ 17/060 郷ノ目木揚水機,他4件(農水)

     Q=0.2220 m3/s

     A=43.99 ha

    ○ 8/590

    ■ 牟田部

    東山揚水機,他1件(農水) Q=不明 A=63.00 ha

    11/450 ○1 上古川揚水機,他2件(農水)

       Q=0.2600 m3/s

       A=64.75 ha

    7/945 ○1 鏡久里揚水機(農水)

       Q=0.9840 m3/s

       A=344.10 ha

    ○ 5/680 養母田農業用水(農水)

     Q=0.0080 m3/s

     A=6.20 ha

    9/000 ○1 唐津市(上水) Q=0.5900 m3/s

     唐津市(工水) Q=0.0780 m3/s

    唐津市(し尿処理水)

     Q=0.0324 m3/s

    徳須恵川

    厳木川

    川古川

    鳥海川

    狩立川

    黒尾岳川

    唐津湾

    直轄管理区間

    萩ノ尾堰

    16/110 ○1 蒐ノ瀬揚水機(農水)

       Q=0.0417 m3/s

       A=5.00 ha

     長野かんがい用水,他3件(農水)

       Q=0.3527 m3/s

       A=31.50 ha

    22/850 ○1

    大黒堰

    松浦大堰

    ○ 31/400 渕の上揚水機,他2件(農水)

     Q=0.0740 m3/s

     A=14.50 ha

    ○ 4/900 国営上場土地改良事業(農水)

     Q=3.000 m3/s (※豊水水利権)

     A=5226.00 ha

     〔凡例〕 裸 書 き :農水 囲み書き:上水・工水・その他  (注) 下線つき:許可水利権       下線なし:慣行水利権

    3/480 ○1 唐津競艇場プール用水

      Q=2.2200 m3/s (※豊水水利権)

  • 2 松浦川の現状と課題 2.2 利水の現状と課題

    -51-

    農業用水 上水道用水 その他 工業用水

    農業用水(許可)

    25件(61.0%)

    その他※(許可)

    2件(4.9%)

    上水道用水

    13件(31.7%)

    工業用水

    1件(2.4%)

    ※その他:唐津市(競艇場プール用水、し尿処理用水)

    件数内訳

    農業用水 その他 水道用水 工業用水

    工業用水

    0.078m3/s(0.8%)

    水道用水

    1.3867m3/s(14.5%)

    その他※(許可)

    2.2524m3/s(23.5%)

    ※その他:唐津市(競艇場プール用水、し尿処理用水)

    農業用水(許可)

    5.8636m3/s(61.2%)

    水利権内訳

    牟田部地点から下流の水利権※としては、農業用水 4.2520m3/s、水道用水 0.5900m3/s、工業用水 0.0780m3/s、その他 2.2524m3/s の合計 7.1724m3/s の許可水利があり、このほかにかんがい面積 63ha の慣行水利があります。

    ※:水利権とは河川の水を使用(取水や貯留等)する権利のことです。

    水利権には河川管理者の許可を受けた許可水利権と旧河川法施行前(明治 29 年以前)から主に農業用水として 慣行的に占用している慣行水利権とがあります。

    図 2.2.3 松浦川水系における水利権(発電を除く)

    表 2.2.1 松浦川水系における水利権一覧表

    松浦川水系(国管理区間+県管理区間)

    松浦川水系(国管理区間)

    水利使用目的 件数 水利権量(m3/s) かんがい面積(ha) 備考許可 25 5.8636 5,895.03

    農業用水 慣行 34 1.8187 492.35

    計 59 7.6823 6,387.38

    上水道用水 8 0.7867 -唐津市(2)、伊万里市(2)、相知町※(1)、厳木町※(2)、

    北波多村※(1)

    工業用水 1 0.0780 - 唐津市

    発電用水 0 - -

    その他(許可) 2 2.2524 - 唐津市(競艇場プール用水、し尿処理用水)

    合計 70 10.7994 6,387.38

    ※相知町、厳木町、北波多村は合併(H17.1.1)により現在は唐津市、山内町は合併(H18.3.1)により現在は武雄市

    件数 水利権量(m3/s) かんがい面積(ha) 備考許可 25 5.8636 5,895.03慣行 756 30.1176 2,797.00計 781 35.9812 8,692.03

    13 1.3867 -唐津市(2)、伊万里市(2)、武雄市(2)、多久市(1)、

    相知町※(2)、厳木町※(2)、山内町※(1)、北波多村※(1)1 0.0780 - 唐津市3 145.8400 - 発電最大出力60万8千kw

    許可 2 2.2524 - 唐津市(競艇場プール用水、し尿処理用水)慣行 12 - - 雑用水計 14 2.2524 -

    812 185.5383 8,692.03

    発電用水

    合計

    その他

    農業用水

    水利使用目的

    上水道用水

    工業用水

  • 2 松浦川の現状と課題 2.2 利水の現状と課題

    -52-

    2.2.2 渇水の発生状況

    松浦川水系における渇水の状況をみると、昭和 30 年代、40 年代に多く発生しています。松浦川流域の大半は、低い丘陵地に囲まれ山が浅いため水枯れを起こしやすく、これらの

    渇水被害を背景として、治水と利水を目的としたダムが建設されてきました。 また、「佐賀県総合計画 平成 12 年 3 月」では、生活水準の向上等に伴う水需要の増加・

    多様化の傾向に対処するため、水資源開発施設の整備や水の循環利用と多目的利用、再生

    水及び雨水の利用促進等が必要とされています。 これに対して、昭和 49 年の松浦大堰の完成、昭和 62 年の厳木ダムの完成および流域内

    の県営ダム(伊い

    岐き

    佐さ

    ダム、平木場ひ ら こ ば

    ダム、本部も と べ

    ダム、狩かり

    立たて

    ダム、日ノ峯ひ の み ね

    ダム)によって、沿

    川の農業用水や水道用水・工業用水の安定的な補給に寄与しています。 その結果、戦後最大の少雨となった平成 6 年渇水においても、大きな渇水被害には至り

    ませんでした。 しかし、近年少雨と多雨の変動幅が増大しており、渇水が発生する可能性が懸念されて

    います。

    渇水被害の状況渇水年月

    ・本部ダムから農業用水として3万m3緊急放流 ・農業用水不足による水稲被害

    平成6年6月~8月

    ・農業用水不足による水稲被害: 黒乾( 281ha)、 白乾( 20ha)、 枯死( 1ha)昭和59年7月~8月

    ・唐津市において給水制限の実施昭和57年6月~7月

    ・佐賀県北部、西部で小雨、渇水、干ばつ被害昭和53年4月~8月

    ・佐賀県全般で干ばつによる被害昭和45年1月

    ・佐賀県北西部で干ばつによる被害昭和44年8月~9月

    ・伊万里市、多久市で農作物の被害昭和43年3月~6月

    ・農業用水不足による水稲被害、給水制限の実施昭和42年5月~10月 

     

    表 2.2.2 松浦川流域における主な渇水被害

    図 2.2.4 日本の年降水量の経年変化(データ出典:「日本の水資源」に加筆)

    図 2.2.5 佐賀の年降水量の経年変化(データ出典:佐賀地方気象台)

  • 2 松浦川の現状と課題 2.2 利水の現状と課題

    -53-

    【松浦川水系における渇水被害状況】 聞】昭和 年

    平成 6 年渇水時の状況 松浦川の様子(桃川橋上流)

    平成 6 年渇水時の状況 松浦川の様子(宮ノ瀬橋下流)

    【佐賀新聞】平成6年

    佐 新 年

    提供:佐賀新聞社

    昭和 53 年渇水時の状況 給水タンクから田圃へ給水する住民

    提供:佐賀新聞社

    平成 6 年渇水時の状況 水位低下により樋管からの取水が困難となったため、

    松浦川から取水ポンプにより直接取水する住民

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -54-

    2.3 河川環境の現状と課題

    2.3.1 河川環境

    (1) 松浦川の河川環境の特徴

    松浦川の河川環境は、「汽水域」、「瀬と淵」、「河畔林」、「蛇行河川」により特徴付

    けられています。 汽水域は、干潮時に広大な砂質干潟が出現し、ハクセンシオマネキやハママツナ等の希少

    な生物の生息・生育の場となっています。中上流域の河道は、蛇行に富み、瀬・淵が連続し、

    メダケやオオタチヤナギなどの河畔林が発達しており、多様な生物の生息環境を形成してい

    ます。特に、アユの産卵場となっている厳木川合流点下流の早瀬、コチドリやイカルチドリ

    の休息の場に利用される貴重な砂礫河原、ホタルの生息場である駒鳴地区の蛇行河川部、オ

    ニヤラミやアリアケギバチなどが生息し、瀬・淵が卓越した渓流環境を呈する厳木川上流部

    などには、良好な河川環境が存在します。

    図 2.3.1 松浦川における注目すべき環境

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -55-

    (2) 動植物の生息・生育状況

    ① 松浦川上流部【国管理区間上流端から中松浦鉄道橋までの区間】

    松浦川上流部は、人工林を主体とした低い丘陵地に囲まれたやや開けた平地となってお

    り、狭い田園地帯を蛇行しながら流下します。河床は主に砂礫で構成され、所々岩盤が露

    出する区間もあります。河床勾配は 1/500~1/1,300 程度と渓流的な河川と比べると緩やかです。

    河川周辺は、狭い農地の中に集落が点在する田園風景を形成しており、河川幅は下流に

    比べてさらに狭くなり、瀬・淵が連続しています。高水敷は狭く、河岸のほとんどで護岸

    が整備されていますが、メダケ、オオタチヤナギなどの河畔林が多く見られ、上流にいく

    にしたがって、河畔林に覆われている区間が多く存在します。また、水際には、オギやツ

    ルヨシ群落が存在します。 河床は岩盤で覆われ、所々に砂礫が堆積しており、イダ(ウグイ)、オイカワ、カワム

    ツ、メダカ、トウヨシノボリなどが生息しています。特に大黒井堰から中松なかまつ

    浦うら

    鉄道橋上流

    付近はイダの産卵場となる早瀬や平瀬が点在し、良好な河川環境が形成されています。ま

    た、魚食性のヤマセミやカワセミが多く確認され、砂礫河原にはコチドリやイカルチドリ

    が見られます。

    写真 2.3.1 上流部の状況(大黒井堰下流)(松浦川 22/000~24/000 付近:伊万里市)

    蛇行に富んだ上流部の河道は、瀬・淵が連続し、生物の良

    好な生息・生育空間となっています。

    図 2.3.2 松浦川上流部横断模式図

    写真 2.3.2 上流部の状況(大黒井堰上流)(松浦川 29/000~31/000 付近:伊万里市)

    大黒井堰の湛水区間を抜けると、再び蛇行に富んだ河道とな

    っています。

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -56-

    写真 2.3.4 河岸に繁茂するメダケ (松浦川 22/200 付近:伊万里市)

    メダケは、竹の一種で、常緑の笹をつけ、河岸に多く

    群生しています。イダやオイカワなどの集まる場を提

    供し、ヤマセミやカワセミなどの採餌場となっていま

    す。

    写真 2.3.5 イダ(ウグイ) 【コイ目コイ科】

    河川では、上流から河口域までの広い範囲に生息してい

    る。主として淵などにすみ、単独または群で動き回るもの

    が多い。季節的には、夏季は表層に、冬季は深みに移りま

    す。

    写真 2.3.6 カワセミ 【ブッポウソウ目カワセミ科】

    スズメより大きく(約 17cm)肉食性でウグイ、ドジ

    ョウ、ハゼなどの魚を食べます。平地の河川沿いに

    つがいの単位でなわばりをもち、河口部にいること

    もあります。

    写真 2.3.7 ヤマセミ 【ブッポウソウ目カワセミ科】

    カワセミより大きく(約 38cm)肉食性でヤマメ、ウグイ、

    フナなどの魚を食べ、カエルや昆虫も食べます。河川で

    は主に上流、中流部に見られます。

    ○佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種

    写真 2.3.3 河畔林に覆われる上流部 (松浦川 29/000 付近:伊万里市松浦町桃川)

    河畔林は、鳥類のねぐらとなったり、河川にせり出し

    た枝葉は水面に影を落とし、魚類の集まる場を提供し

    ます。

    出典:日本の野鳥、山と渓谷社 出典:日本の野鳥、山と渓谷社

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -57-

    一方、駒鳴地区の旧川部は、流れが緩く、水際はメダケ、ツルヨシ群落で覆われており、

    このメダケ林はツバメやサギ類の生息場となっているとともに、ヤマセミやカワセミが見

    られます。またメダカやゲンジボタル、ムスジトンボやハグロトンボ等が生息し、良好な

    河川環境を有しています。 また,桃川地区(親水公園)ではゲンジボタルが確認されており、良好な河川環境を有

    しています。

    写真 2.3.8 駒鳴旧川部の河道状況 (松浦川 20/000 付近:伊万里市大川町駒鳴)

    駒鳴地区旧川部は、湿生植物であるツルヨシ等が繁

    茂し、ゲンジボタルの餌となるカワニナも多く存在

    し、生物の良好な生息環境となっています。

    写真 2.3.10 ゲンジボタル 【コウチョウ目ホタル科】

    日本で「ホタル」といえばこの種類を指すことが多く、

    もっとも親しまれているホタルです。

    写真 2.3.9 桃川地区の河道状況 (松浦川 28/600 付近:伊万里市松浦町桃川)

    桃川親水公園は、せせらぎ水路やホタル水路などが整

    備され、初夏にはゲンジボタルが見られます。

    写真 2.3.11 メダカ 【ダツ目メダカ科】

    水田脇の小溝や浅瀬、水深のあるクリークでは岸辺の

    抽水植物帯に群れて生活する止水性の魚です。 ○環境省:絶滅危惧Ⅱ類

    ○佐賀県:準絶滅危惧種

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -58-

    ② 松浦川中流部【中松浦鉄道橋から松浦大堰湛水域上流端】

    松浦川中流部は、上流部同様、人工林を主体とした低い丘陵地に囲まれたやや開けた平

    地となっており、狭い田園地帯を蛇行しながら流下します。河床は主に砂礫で構成されて

    おり、砂礫が堆積しているところには河原が形成されています。河床勾配は、1/1,700 程度と上流に比べるとやや緩やかになります。

    河川周辺は、狭い農地の中に集落が点在する田園風景を形成しており、河川幅は下流に

    比べてやや狭くなり、瀬・淵が連続しています。高水敷は狭く、堤防法面には外来種であ

    るセイタカアワダチソウ等が優占し、河道内樹木はわずかに存在するのみです。河岸のほ

    とんどで護岸が整備されていますが、山付き部にはメダケやマダケ、オオタチヤナギ群落

    などの河畔林が存在します。河道内には、所々でツルヨシ群落が中洲や寄洲で発達しつつ

    あり、水際の緩やかな箇所にはメダカなどの魚類が生息しています。 瀬と淵が連続している河道は、アユ、オイカワ、カワムツ、ウグイ、トウヨシノボリな

    どの生息場となっており、厳木川合流部より下流区間は、松浦川水系で貴重なアユの産卵

    場があります。また、魚食性の、ササゴイ、ミサゴ、ヤマセミ、カワセミなどが確認され、

    伊岐佐川との合流点付近には、水系最大の砂礫河原が存在し、コチドリやイカルチドリの

    休息の場となっています。 なお、16km 付近に位置する「アザメの瀬」は、自然再生事業として整備され、「氾濫原

    的湿地の再生」と「人と生物のふれあいの再生」の先進的な事例となっており、コイ・フ

    ナ・ドジョウなどの魚類の産卵も確認されています。

    図 2.3.3 松浦川中流部横断模式図

    写真 2.3.12 アザメの瀬 (唐津市佐里:河口からの距離 16km 付近)

    写真 2.3.13 アザメの瀬近景 (唐津市佐里:河口からの距離 16km 付近)

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -59-

    写真 2.3.15 松浦川水系最大の砂礫河原(松浦川 12/000 付近:唐津市相知町)

    コチドリやイカルチドリの休息場となっています。

    写真 2.3.17 アユの産卵場となっている早瀬

    (松浦川 12/000 付近:唐津市相知町)

    松浦川水系でも貴重な産卵場となっています。

    写真 2.3.19 アユ 【サケ目アユ科】

    仔魚は海に降りた当初は沿岸域に広く分布し、昼は低

    層に、夜は表層に生息します。春になり遡上すると、

    中流から上流域の大石や岩盤のある瀬に縄張りを形

    成して定着します。縄張りは平瀬や早瀬および淵の一

    部に形成します。

    写真 2.3.18 イカルチドリ 【チドリ目チドリ科】

    コチドリより少し大きく白っぽく、またアイリングがは

    っきりしません。暖地では留鳥ですが、北日本のものは

    冬季は暖地に移動します。

    写真 2.3.14 松浦川中流部の状況 (松浦川 18/000 付近:唐津市相知町)

    狭い田園地帯を蛇行しながら流下しています。

    写真 2.3.16 中流部の河道状況 (松浦川 15/000 付近:唐津市相知町佐里)

    護岸が整備されていますが、ツルヨシ群落などが繁茂

    しています。

    出典:佐賀の淡水魚、佐賀新聞社出典:日本の野鳥、山と渓谷社

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -60-

    ③ 松浦川下流部【松浦大堰湛水区間】

    松浦川下流部は、本川 11km 付近から松浦大堰に至る湛水区間であり、途中徳須恵川を合わせます。河床は主に砂で構成され、河床勾配は 1/10,000 以上と非常に緩い勾配です。

    河川周辺は、低山に囲まれた中上流部を抜け、8km 付近から開けた平野部となり、住宅・農地等が存在します。河川幅は徳須恵川合流点付近までは広く、その上流では、やや狭く

    なっています。 高水敷は比較的狭く、堤防法面には外来種であるセイタカアワダチソウやクズ群落等が

    優占し、河道内樹木はわずかに存在するのみですが、水際にはメダケ、オギ、オオタチヤ

    ナギ群落やツルヨシ等の湿生植物群落やフサモなどの注水植物が存在し、モノアラガイ等

    の底生生物が生息しています。広大な湛水区間では、アユ、オイカワ、ウグイ、トウヨシ

    ノボリなど松浦川での典型的な魚種が生息していますが、止水域に見られるオオクチバス

    やブルーギルといった外来種も生息しています。鳥類では、カモ類・カモメ類の休息の場

    となっている他、ササゴイ、オオジシギなどが見られます。徳須恵川との合流点にある旧

    川部は、松浦大堰の湛水による緩やかな流れにより、ヨシやマコモ、メダケ等からなる止

    水性の湿地が広がっており、ゴイサギを中心としたサギ類の集団ねぐらが確認されていま

    す。また、コオニヤンマやコヤマトンボなどの昆虫類が生息しています。

    写真 2.3.20 湛水区間上流部の状況 (松浦川 10/000 付近:唐津市牟田部)

    低山に囲まれた中上流部を抜け、緩やかに流下します。

    写真 2.3.21 徳須恵川との合流点および旧川部の状況

    (松浦川 6/000 付近:唐津市山本・久里付近)

    徳須恵川を合わせ、川幅が広がり、平野部を流下します。

    図 2.3.4 松浦川下流部横断模式図

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -61-

    写真 2.3.23 旧川部の湿地環境 (松浦川 6/000 付近)

    止水性の湿地が広がり、さまざまな動植物が生息・生

    育しています。

    写真 2.3.27 コオニヤンマ 【トンボ目サナエトンボ科】

    赤褐色あるいは黒褐色の著しく扁平な広葉状の特異

    な体型をしたヤゴが特徴的です。流れの緩やかな川の

    砂底泥にいます。

    写真 2.3.22 松浦大堰湛水区間の状況(松浦川 6/000 付近:上久里橋下流)

    広大な湛水域では、アユ、オイカワの他、オオクチバ

    ス等の外来種も見られます。

    写真 2.3.26 ゴイサギ 【コウノトリ目サギ科】

    湖沼や池、河川などで一年中見られます。成鳥は全体

    が灰色で、頭と背中が紺色をしています。成鳥の頭に

    は冠羽(かんう)が2本あります。

    写真 2.3.24 モノアラガイ 【モノアラガイ科】

    浅くて流れが緩やかな淀みと、水生植物が一体となっ

    た環境を好みます。高水温は好まず、都市部の生活排

    水などに汚染された川には生息できません。

    ○環境省:準絶滅危惧

    写真 2.3.25 オイカワ 【コイ科】

    関東以西の河川や湖沼に広く分布しています。成魚はシリ

    ビレが大きく、産卵期の雄は、鮮やかな婚姻色が現れます。

    全長は 15cm ほどになります。水生昆虫や陸上昆虫が川に落

    ちたもの、石に着いたけい藻やらん藻などを食べます。

    出典:川の生物フィールド総合図鑑、山海堂

    出典:日本の野鳥、山と渓谷社

    成虫の出典:川の生物フィールド総合図鑑、山海堂

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -62-

    ④ 松浦川河口部【松浦大堰から河口までの感潮区間】

    松浦大堰から河口にかけての河口部は、松浦川流域で最も人口が集中する唐津市街部を

    緩やかに流下します。河床は主に砂で構成され、河床勾配は 1/10,000 以上の非常に緩い勾配となっており、川幅は広く、広大な水面を有する汽水域となっています。

    河川周辺は、人家が密集する平地であり、高水敷は狭く、河道内樹木はほとんど存在せ

    ず、スズメノヒエやセイタカアワダチソウ等が優占します。河口部は内湾状の閉鎖的な汽

    水域となっており、左岸側を中心に干潟が形成され、水際部では、ハママツナやシオクグ、

    ウラギク等の塩生植物群落がわずかながら存在しています。 干潮時に出現する広大な砂質干潟には、ハクセンシオマネキやマゴコロガイ、アリアケ

    モドキ等の希少な生物の他、カニ・エビ類など多くの底生生物が生息しており、魚類では、

    干潟に生息するハゼ科類やシラウオ等海水・汽水魚などが確認されています。また、干潟

    は鳥類の生息・採餌場であり、満潮時の広大な水面はカモ類、カモメ類等の休息の場とな

    っています。

    図 2.3.5 松浦川河口部横断模式図

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -63-

    写真 2.3.28 河口部の状況 河口部周辺には流域で最も人口が集中する唐津市街地が形成されています。また、河口付近が狭いため、河口部は内湾状の地形となっています。

    写真 2.3.29 河口砂質干潟 この広大な干潟は、松浦川及び玉島川などの河川の運

    ぶ土砂が、玄界灘の波により穏やかに堆積されて陸地

    となったと考えられています。砂質干潟には、干潟特

    有の底生生物が多く生息しています。

    写真 2.3.30 ウラギク 【キク科】

    海岸や河口などの潮の干満によってたえず塩水をか

    ぶるような湿地に群生する越年草です。高さ 30~

    60cm にもなります。葉は細く、やや厚くてつやがあ

    り、頭花は径 2cm ほどで、茎の上部で枝を分けて円錐

    状に多数つきます。

    ○環境省:絶滅危惧Ⅱ類

    写真 2.3.31 ハクセンシオマネキ 【十脚目スナガニ科】

    内湾の奥や河口域の泥質干潟に生息し、高潮線付近の大潮でな

    いと冠水しないような場所を好みます。雄の鉗脚は片方が大き

    く、雌は両方とも小さい、甲幅 35mm 前後の小型のカニです。

    ○環境省:絶滅危惧Ⅱ類

    ○佐賀県:情報不足種

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -64-

    ⑤ 徳須恵川【国管理区間上流端から本川合流点までの区間】

    徳須恵川は、河川形態などからみると、松浦川合流点から 5km 付近を境に下流部と上流部に区分されます。

    上流部は、低山に囲まれた田園地帯を蛇行しながら流下します。河床は、主に砂礫で構成

    され、所々岩盤が露出しています。河床勾配は、1/340~1/530 と急になりますが、12km 付近からは取水堰が多く設置され、湛水区間が連続しています。河川周辺は低山に囲まれ、

    10km 付近までは周囲に人家がなく、川幅は極端に狭くなり早瀬が卓越し、蛇行を繰り返しながら流下します。10km 付近から上流は、やや開けた平地に農地が拡がり、住家が点在しています。高水敷はほとんどなく、メダケ、オオタチヤナギを中心とした河畔林が繁茂し、

    水面を覆っています。河道内には所々砂州がつき、オギやツルヨシ等が繁茂し、多様な水際

    を形成しています。激しく蛇行した河道は、瀬・淵が連続し、瀬はアユ、オイカワ、カワム

    ツ、トウヨシノボリ等の生息場となり、淵や取水堰の湛水区間は、メダカ、モノアラガイ等

    の生息場となっています。また、合流点から 8km 付近の徳須恵川に流入する水路には、カスミサンショウウオが確認されています。河畔林は、ヤマセミ、カワセミの採餌場となって

    います。 下流部は、本川から続く松浦大堰の湛水区間であり、低平地を緩やかに蛇行しながら流下

    します。河床は主に砂で構成され、河床勾配は 1/2,000 程度の緩い勾配となっています。河川周辺は、低山に囲まれた上流部を抜け、開けた平野部となっており、住宅・農地等が存在

    します。高水敷は比較的狭く、堤防法面には外来種であるセイタカアワダチソウ等が優占し、

    河道内樹木はわずかに存在するのみですが、水際にはメダケ、オギ、ツルヨシ群落等が存在

    し、多様な水際空間になっており、モノアラガイ等の底生生物の他、メダカ等の魚類の生息

    の場となっています。湛水区間では、アユ、オイカワ、カワムツ、トウヨシノボリなど松浦

    川での典型的な魚種が生息していますが、止水域に見られるオオクチバスやタイリクバラタ

    ナゴといった外来種も生息しています。鳥類では、カモ類・カモメ類の休息の場となってい

    る他、ササゴイなどのサギ類が見られます。また、合流点から 3km 付近のオオタチヤナギ群落は、水系で唯一確認されているササゴイの集団繁殖地になっています。

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -65-

    図 2.3.6 徳須恵川横断模式図

    上流部

    下流部(湛水区間)

    写真 2.3.33 徳須恵川上流部の状況 (徳須恵川 10/000~13/000 付近:伊万里市南波多町)

    低山に囲まれた田園地帯を激しく蛇行しながら流下

    します。

    写真 2.3.32 徳須恵川下流部の状況 (徳須恵川 2/000~4/000 付近:唐津市千々賀・石志)

    低山に囲まれた上流部を抜け、緩やかに蛇行しながら

    流下します。

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -66-

    写真 2.3.35 徳須恵川上流の河畔林 (徳須恵川 12/600 付近<水留橋上流>:伊万里市南波多町)河岸に繁茂する河畔林については、メダケ、マダケ、オオタチヤナギがそのほとんどを占めています。

    写真 2.3.38 ササゴイ 【コウノトリ目サギ科】

    全長約 52cm、全体に青灰色で頭は青味がある黒で、水田

    や河川などの水辺で魚や甲殻類などを捕食します。

    ○佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種

    写真 2.3.36 オオタチヤナギ 【ヤナギ科】

    河川の下流部で湿った岸辺に生息し、しばしば群生し

    ヤナギ林を形成し、幹は直径 30cm、高さは 15m に達し

    ます。

    写真 2.3.34 徳須恵川下流の湛水区間(徳須恵川 1/000 付近:唐津市石志)

    松浦大堰の湛水区間となっている徳須恵川下流は、ツルヨシ群落などが水際空間を形成しています。

    写真 2.3.37 カスミサンショウウオ 【サンショウウオ目サンショウウオ科】

    全長7~12.5cm。西日本に分布する日本固有種のサンショ

    ウウオです。 体に小さな斑点があり、尾の背中側から腹.

    側にかけてオレンジ色の縁取りがあるのが特徴です。湧水

    や水田などが隣接した森林や草地を好み、人里の水田地帯

    にも生息します。

    ○環境省:絶滅危惧Ⅱ類

    ○佐賀県:準絶滅危惧種

    出典:川の生物フィールド総合図鑑、山海堂

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -67-

    ⑥ 厳木川【国管理区間から本川合流点までの区間】

    厳木川は、河川形態などからみると、松浦川合流点から 7km 付近を境として、下流部と上流部及び厳木ダム貯水池の 3 つに区分されます。

    厳木ダム貯水池は,オシドリなどの休息場となっています。また,水際部は,カジカガ

    エル等の両生類やグンバイトンボ、コオニヤンマなどのトンボ類が生息しています。また、

    貯水池周辺では、ハチクマ、ハヤブサ、ミサゴなどの貴重な鳥類の飛来が確認されていま

    す。 上流部は、比較的高い山に囲まれた中を、急勾配で流下する蛇行河川であり、河床は下

    流と同じ岩盤が露出しています。河床勾配は 1/40~1/200 とさらに急となり、早瀬が卓越する山地渓流型河川となっていますが、所々に取水堰が存在しています。河川周辺は、比較

    的高い山に囲まれた狭い平地となっており、農地の他、住家が点在しています。高水敷は

    存在せず、川幅も狭くなり、河岸にはオギ、ツルヨシを主体とした植生が多く繁茂してい

    ます。岩盤の上に砂礫が堆積している取水堰上流の河道では、オヤニラミやアリアケギバ

    チ、スナヤツメなどの希少種やカワムツ、オイカワ、オオヨシノボリなどが生息し、良好

    な渓流環境が形成されています。また、渓流域には、カジカガエル等の両生類やミヤマカ

    ワトンボ、ヤマサナエなどのトンボ類が生息しています。鳥類では、メダケを主体とした

    河畔林にカワセミやヤマセミがみられます。 下流部は、低山に囲まれた平地を緩やかに流下します。河床は主に砂礫で構成されてい

    ますが、5km 付近から上流は岩盤が露出しています。河床勾配は 1/300~1/400 と比較的急勾配ですが、所々に取水堰が存在し、上流は湛水区間となっています。河川周辺は農地が

    主体となっていますが、国道沿いや合流点付近には住家が密集しています。高水敷はほと

    んど存在しませんが、川幅は比較的広く、砂礫河原が発達しており、ツルヨシ群落を主体

    とした植生が存在し、多様な水際空間を形成しています。河道は瀬・淵が形成され、アユ

    やオイカワなどが生息し、浦うら

    の川かわ

    橋下流には砂礫床があり、アユの産卵場となっています。

    図 2.3.7 厳木川横断模式図

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -68-

    写真 2.3.43 厳木川下流部の渓流環境 (厳木川 6/600 付近<町切堰下流>:唐津市厳木町

    厳木川中流部では、河道内に岩が露出し、河岸には沢山の

    植生が繁茂しています。

    写真 2.3.42 厳木川下流部のアユ産卵場(厳木川 1/200 付近<浦の川橋下流>:唐津市相知町)

    河床は砂礫で構成されており、アユの産卵場となっていま

    す。河岸はツルヨシ群落等が形成されています。

    写真 2.3.40 厳木川上流部の状況 (厳木川 9/000~10/000 付近:唐津市厳木町)

    上流部は早瀬が卓越する山地渓流河川で、蛇行しながら

    流下します。

    写真 2.3.39 厳木川下流部の状況 (厳木川 2/000~3/000 付近:唐津市相知町)

    低山に囲まれた平地を緩やかに蛇行し、瀬と淵を形成しながら、流下します。砂礫で構成された河道はアユの産卵場となっています。

    写真 2.3.44 厳木川上流部の渓流環境 (厳木川 13/000 付近<天山橋付近>:唐津市厳木町

    比較的高い山に囲まれた中を、急勾配で流下します。早瀬

    が卓越し、河岸にはツルヨシ群落が繁茂しています。

    写真 2.3.41 厳木ダム

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -69-

    写真 2.3.48 アリアケギバチ 【ナマズ目ギギ科】

    全長 15~25cm で、九州西部および長崎県壱岐などの、清澄で自然の多く残されている河川に生息し、石垣の間などに潜ん

    でいます。 ○環境省:準絶滅危惧

    ○佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種

    写真 2.3.46 オヤニラミ 【スズキ目スズキ科】

    体は太短く、全長は 13cm 位です。水の比較的きれいな、や

    や流れのある水深 50cm 前後の岸近くで生息し、肉食性で小

    型の水生昆虫などを主に捕食します。 ○環境省:準絶滅危惧 ○佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種

    写真 2.3.47 カジカガエル 【カエル目アオガエル科】

    灰色がかった褐色が基本で不規則な暗色の模様を

    持ち、川幅の広い渓流や湖沼とその周辺の河原、

    樹林に生息しています。

    ○佐賀県:準絶滅危惧種

    写真 2.3.45 オシドリ 【ガンカモ目ガンカモ科】

    山間の渓流や山地の湖などに棲息し、開けた水面に出

    ることは好まず、木陰に隠れるようにしていることが

    多いです。

    ○環境省:情報不足

    ○佐賀県:準絶滅危惧種

    写真 2.3.49 グンバイトンボ 【モノサシトンボ科】

    オスの足が白いグンバイ様の形をしていることか

    らグンバイトンボと呼ばれます。山沿いの湧水地

    や緩やかな清流にしか生息できません。

    ○環境省:準絶滅危惧

    ○佐賀県:準絶滅危惧種

    出典:日本の野鳥、山と渓谷社

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -70-

    表 2.3.1(1) 松浦川水系で確認された特定種※

    ※特定種:下記の資料の掲載種及び、貴重または保護すべき種として指定されている種。平成 6 年度~平成 18 年度における調査結果から整理した。 ・国、県及び市町指定による天然記念物 ・絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(通称:種の保存法) ・環境省報道発表資料「鳥類、爬虫類、両生類及びその他無脊椎動物のレッドリストの見直しについて(平成 18 年 12 月)」 ・環境省報道発表資料「哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物Ⅰ及び植物Ⅱのレッドリストの見直しについて(平成 19 年 8 月)」 ・佐賀県「佐賀県レッドリスト 2003」 ・「WWF Japan サイエンスレポート第 3 巻」-日本における干潟海岸とそこに生息する底生生物の現状-」(財)世界自然保護基金日本委員会(1996)

    リス科 ムササビ 佐賀県:情報不足種スミスネズミ 佐賀県:情報不足種ハタネズミ 佐賀県:情報不足種カヤネズミ 佐賀県:準絶滅危惧種ミゾゴイ 環境省:絶滅危惧ⅠB類、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種ササゴイ 佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種チュウサギ 環境省:準絶滅危惧種オシドリ 環境省:情報不足、佐賀県:準絶滅危惧種トモエガモ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:準絶滅危惧種ミサゴ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種ハチクマ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種オオタカ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種ツミ 佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種ハイタカ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:準絶滅危惧種サシバ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種

    ハヤブサ科 ハヤブサ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種キジ科 ヤマドリ 佐賀県:情報不足種クイナ科 ヒクイナ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類

    ダイシャクシギ 佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種ホウロクシギ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種オオジシギ 環境省:準絶滅危惧アオバズク 佐賀県:準絶滅危惧種フクロウ 佐賀県:準絶滅危惧種

    ヨタカ科 ヨタカ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種ヤマセミ 佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種アカショウビン 佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種

    サンショウクイ科 サンショウクイ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種カスミサンショウウオ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:準絶滅危惧種ブチサンショウウオ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:準絶滅危惧種

    ヒキガエル科 ニホンヒキガエル 佐賀県:情報不足種タゴガエル 佐賀県:情報不足種トノサマガエル 佐賀県:情報不足種カジカガエル 佐賀県:準絶滅危惧種キシノウエトタテグモ 環境省:準絶滅危惧キノボリトタテグモ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:情報不足種

    マダラカゲロウ科 キマダラカゲロウ 佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種ムスジイトトンボ 佐賀県:準絶滅危惧種ベニイトトンボ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類

    モノサシトンボ科 グンバイトンボ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:準絶滅危惧種ヤンマ科 サラサヤンマ 佐賀県:準絶滅危惧種セミ科 ハルゼミ 佐賀県:準絶滅危惧種ヨコバイ科 コミミズク 佐賀県:準絶滅危惧種ハナカメムシ科 ズイムシハナカメムシ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:情報不足種ツチカメムシ科 ベニツチカメムシ 佐賀県:準絶滅危惧種キンカメムシ科 アカスジキンカメムシ 佐賀県:情報不足コオイムシ科 コオイムシ 環境省:準絶滅危惧セセリチョウ科 ミヤマチャバネセセリ 佐賀県:準絶滅危惧種ヤガ科 アオモンギンセダカモクメ 佐賀県:情報不足種ヤツメウナギ科 スナヤツメ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:準絶滅危惧種ウナギ科 ウナギ 環境省:情報不足

    ゲンゴロウブナ 環境省:絶滅危惧ⅠB類ヤリタナゴ 環境省:準絶滅危惧アブラボテ 環境省:準絶滅危惧カゼトゲタナゴ 環境省:絶滅危惧ⅠB類、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種ハス 環境省:絶滅危惧Ⅱ類カワヒガイ 環境省:準絶滅危惧

    ドジョウ科 ヤマトシマドジョウ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類ギギ科 アリアケギバチ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種サケ科 ヤマメ(サクラマス) 環境省:準絶滅危惧

    メダカ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:準絶滅危惧種スズキ 佐賀県:準絶滅危惧種

    スズキ科 オヤニラミ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種ヒモハゼ 環境省:準絶滅危惧マサゴハゼ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類

    科名

    鳥類

    魚類

    両生類

    陸上昆虫

    分類

    哺乳類

    特 定 種

    ネズミ科

    サギ科

    カモ科

    タカ科

    シギ科

    フクロウ科

    カワセミ科

    サンショウウオ科

    アカガエル科

    トタテグモ科

    イトトンボ科

    コイ科

    メダカ科

    ハゼ科

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -71-

    表 2.3.1(2) 松浦川水系で確認された特定種※

    ※特定種:下記の資料の掲載種及び、貴重または保護すべき種として指定されている種。平成 6 年度~平成 18 年度における調査結果から整理した。 ・国、県及び市町指定による天然記念物 ・絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(通称:種の保存法) ・環境省報道発表資料「鳥類、爬虫類、両生類及びその他無脊椎動物のレッドリストの見直しについて(平成 18 年 12 月)」 ・環境省報道発表資料「哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物Ⅰ及び植物Ⅱのレッドリストの見直しについて(平成 19 年 8 月)」 ・佐賀県「佐賀県レッドリスト 2003」 ・「WWF Japan サイエンスレポート第 3 巻」-日本における干潟海岸とそこに生息する底生生物の現状-」(財)世界自然保護基金日本委員会(1996)

    マルタニシ 環境省:準絶滅危惧オオタニシ 環境省:準絶滅危惧

    ミズゴマツボ科 ミズゴマツボ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:情報不足種、干潟:絶滅寸前モノアラガイ科 モノアラガイ 環境省:準絶滅危惧

    ヒラマキミズマイマイ 環境省:情報不足クルマヒラマキガイ(レンズヒラマキガイ)

    環境省:絶滅危惧Ⅱ類

    ヒラマキガイモドキ 環境省:準絶滅危惧ナガオカモノアラガイ 環境省:準絶滅危惧トンガリササノハガイ 環境省:準絶滅危惧

    チドリマスホウガイ(チドリマスオガイ)科

    クチバガイ 環境省:準絶滅危惧

    ニッコウガイ科 ユウシオガイ 干潟:危険ハザクラガイ 干潟:危険オチバガイ 干潟:危険

    マゴコロガイ科 マゴコロガイ 干潟:絶滅寸前フナガタガイ科 ウネナシトマヤガイ 環境省:準絶滅危惧、干潟:危険

    ヤマトシジミ 環境省:準絶滅危惧マシジミ 環境省:準絶滅危惧

    マルスダレガイ ハマグリ 干潟:危険ハナグモリガイ科 ハナグモリガイ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類ウミタケガイモドキ科 ソトオリガイ 干潟:危険オウギガニ科 マキトラノオガニ 干潟:稀少

    アリアケモドキ 干潟:稀少ハクセンシオマネキ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:情報不足種ホンサナエ 佐賀県:準絶滅危惧種アオサナエ 佐賀県:準絶滅危惧種

    トンボ科 マイコアカネ 佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種コオイムシ科 コオイムシ 環境省:準絶滅危惧ヒメドロムシ科 ヨコミゾドロムシ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:準絶滅危惧種イワヒバ科 シナミズニラ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種トクサ科 イヌドクサ 佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種スジヒトツバ科 スジヒトツバ 佐賀県:準絶滅危惧種

    マツナ 佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種ハママツナ 佐賀県:準絶滅危惧種

    キンポウゲ科 タンナトリカブト 佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種メギ科 バイカイカリソウ 佐賀県:準絶滅危惧種

    ツキヌキオトギリ 環境省:絶滅危惧ⅠB類、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種コイヌガラシ 環境省:準絶滅危惧

    バラ科 ワレモコウ 佐賀県:準絶滅危惧種ミズマツバ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類フサモ 佐賀県:準絶滅危惧種

    エゴノキ科 イヌセンブリ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種キョウチクトウ科 トキワカモメヅル 佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種ヒルガオ科 マメダオシ 環境省:絶滅危惧ⅠA類クマツヅラ科 コムラサキ 佐賀県:準絶滅危惧種

    ヒメキセワタ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類ミゾコウジュ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:準絶滅危惧種イガホオズキ 佐賀県:準絶滅危惧種ヤマホオズキ 環境省:絶滅危惧ⅠB類、佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種

    ゴマノハグサ科 カワヂシャ 環境省:準絶滅危惧タヌキモ科 イヌタヌキモ 環境省:準絶滅危惧

    ツルギキョウ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種イワヨモギ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類ウラギク 環境省:絶滅危惧Ⅱ類オナモミ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類

    オモダカ科 ミズオオバコ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:準絶滅危惧種センニンモ 佐賀県:準絶滅危惧種イトモ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種

    イバラモ サガミトリゲモ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種ヒオウギ 佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種アヤメ 佐賀県:絶滅種サヤヌカグサ 佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種イヌアワ 佐賀県:絶滅危惧Ⅰ類種コガマ 佐賀県:準絶滅危惧種イトスゲ 佐賀県:準絶滅危惧種

    カヤツリグサ科 ツクシテンツキ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類エビネ 環境省:準絶滅危惧、佐賀県:絶滅危惧Ⅱ類種キンラン 環境省:絶滅危惧Ⅱ類、佐賀県:準絶滅危惧種シュンラン 佐賀県:準絶滅危惧種

    シャジクモ科 シャジクモ 環境省:絶滅危惧Ⅱ類

    分類 科名 特 定 種

    植物

    底生動物

    ヒラマキガイ科(+インドヒラマキガイ科)

    タニシ科

    オカモノアラガイ科

    シオサザナミガイ科

    シジミ科

    スナガニ科

    サナエトンボ科

    アカザ科

    オトギリソウ科

    ミソハギ科

    シソ科

    ナス科

    ラン科

    キキョウ科

    ヒルムシロ科

    アヤメ科

    ガマ科

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -72-

    (3) 河川環境上の課題

    ① 河道改修による川の多様性の消失

    自然状態の川の地形は複雑であり、水深や流速といった物理的環境が多様性に富んでい

    ます。このような複雑な地形がもたらす多様な水の流れや周辺環境とのつながりが生物の

    生息・生育を支えています。しかし、河道の直線化や定規的な台形断面化、護岸の整備等

    によって、流路の蛇行、瀬・淵などの川の働きで形成される複雑な地形が失われ、河道の

    物理的構造の単純化、河川の連続性や自由度の低下が生じるといわれています。 松浦川においても、これまでの改修により、河道の直線化や護岸の整備が行われており、

    川の多様性が消失している箇所も見られます。このようなことから、近年においては、「多

    自然川づくり」による河川改修を実施しています。

    写真 2.3.50 固定化された水際部

    図 2.3.8 自然水際距離の変化 図 2.3.9 蛇行度の変化 蛇行度=直線距離/流心距離

    松浦川:佐里地区 徳須恵川:水留地区

    厳木川:田頭地区

    松浦川:大川野地区写真 2.3.51 多自然川づくりの事例

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    1960-1974年 1990-1995年 2001-2005年

    自然

    水際

    距離

    (km)

    松浦川

    徳須恵川

    厳木川

    1.00

    1.05

    1.10

    1.15

    1.20

    1.25

    1.30

    1960-1974年 1990-1995年 2001-2005年

    蛇行度

    松浦川

    徳須恵川

    厳木川

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -73-

    ② 魚類等の移動からみた河川の連続性の分断

    堰等の河川横断工作物や樋門等の一部は、河川及び河川と農業用施設(水路など)の連続

    性を分断し、魚類等の移動の妨げになる可能性があります。松浦川本川および支川徳須恵川、

    厳木川においては、魚類等の移動を阻害している堰や樋門等が多く存在し、漁業関係者から

    も魚道の設置について要望されています。

    写真 2.3.53 横断的連続性を分断した樋門写真 2.3.52 縦断的連続性を分断した固定堰(厳木川:立草下堰)

    こ こ に も 魚 道 を

    つ け て く れ れ ば

    産 卵 場 ま で 行 け

    るのに…

    ここだと産卵

    できないなぁ

    図 2.3.10 河川の連続性の分断模式図 (出典:魚がのぼりやすい川づくりの手引き)

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -74-

    ③ 氾濫原的湿地の消失

    堤防がない時代には、水田などの湿地は川とつながっており、生物にとっては良い産卵場

    や生息場でした。洪水時に川の水があふれてできるこのような湿地(氾濫原的湿地)は、か

    つて松浦川にも多く存在していました。

    しかし、これまでの水田開発や河川改修等による氾濫原的湿地の大幅な減少に伴い、湿地

    に依存する動植物や人と生物のふれあう機会が少なくなっています。

    図 2.3.11 河道の変遷模式図

    図 2.3.12 湿地と川との連続性模式図

    徳須恵川

    河川改修による 堤防整備 旧河道

    氾濫原(氾濫平野)

    旧河道

    松浦川

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -75-

    ④ 外来種生物の増加

    外来種は、人間が意図的・非意図的に持ち込んだことにより、在来種を減少させたり、在

    来種と交雑することによって、在来種の絶滅の可能性を高めるなどの問題を引き起こす恐れ

    があります。松浦川においても、オオクチバスやブルーギル、セイタカアワダチソウなどの

    外来種が多数確認されており、増加が懸念されています。 このうち、オオクチバスやブルーギルなどは、平成 17 年に施行された「特定外来生物によ

    る生態系等に係わる被害の防止に関する法律」(通称:外来生物法)により、「特定外来生

    物」に指定されており、飼育や運搬の制限や防除を進めることとしています。

    写真 2.3.54 オオクチバス 【スズキ目サンフィッシュ科】

    北アメリカ原産で,1925 年に日本へ移入されました。放流

    された水域の生態系を著しく改変することが明らかになっ

    ています。

    写真 2.3.56 セイタカアワダチソウ 【キク科】

    河川敷等でみられる大型の多年生草本で、絶滅危惧種を

    含む在来植物との競合や駆逐のおそれがあります。1897

    年頃に導入され 1940 年代より急増しています。

    写真 2.3.55 ブルーギル 【スズキ目サンフィッシュ科】

    北アメリカの中東部に分布し、1960 年に日本に移入されまし

    た。浮遊動物や水生昆虫、エビ、水生植物などを好み、季節

    によっては、魚の卵や小魚なども食べる雑食性の魚です。

    出典:佐賀の淡水魚,佐賀新聞社

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -76-

    ⑤ 河口部の環境変化

    松浦川河口部は、河口から松浦大堰にかけて内湾状の閉鎖的な汽水域となっており、干潮

    時には広大な砂質干潟が出現し、ハクセンシオマネキやマゴコロガイ等の希少な生物が生息

    しています。また、水際部にはハママツナやシオクグ等の塩生植物群落が存在します。 しかし、市街化の進展に伴う流入河川の水質の悪化や河川改修、砂利採取等により、河道

    形状や河床材料といった物理環境や生態環境が変化していることが懸念されています。また、

    河口部には、カキ礁が多く存在しており、景観や漁業、舟運等に影響を及ぼしているという

    声が聞かれますが、その一方で、カキは水質を浄化する働きや水産資源の増加に寄与してい

    るといわれています。

    写真 2.3.57 松浦川河口部の状況と カキ礁が発達している区域

    写真 2.3.58 カキ礁の状況

    松浦橋

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -77-

    ⑥ 水 質

    松浦川水系の水質は、河川の代表的な水質指標である BOD※1(75%値)※2 でみると、環境基準値※3 をほぼ満足しており、概ね良好な水質を維持しています。水質に関する顕著な問題

    は発生していませんが、松浦大堰湛水区間に位置する久里橋地点においては、一部水質が環

    境基準を満足しない場合があります。 基準を満足しない場合があります。 厳木ダム貯水池についても、水質指標である BOD(75%値)の値を満足しています。しか

    し、近年ダム貯水池流入河川の全窒素(T-N)濃度が上昇傾向にあり、これに伴いダム貯水池の全窒素(T-N)濃度についても上昇傾向にあるため、今後の富栄養化現象の発生が懸念されます。 松浦川では、昭和 48 年に水質環境基準が指定されたのを受け、昭和 56 年に「松浦川流域

    別下水道整備総合計画」が策定され、目標年次を平成 7 年として、下水道整備を進めてきました。その後、平成 7 年に目標年次を平成 17 年に変更して、継続して下水道整備を進めており、現在の流域内下水道普及率は 52%(平成 16 年 3 月現在)です。 このように現時点においては、松浦川の水質は環境基準値を概ね満足しているものの、下

    流の唐津市を中心とした臨海工業地域の工場進出やそれに伴う都市化等により家庭排水の増

    加、関連企業からの排水等により排出負荷が増加することも予想されます。

    表 2.3.2 環境基準類型指定の状況

    名称 水域 基準地点 類型※4 達成期間※5 指定年月日 摘要

    松浦川全域 久保橋(和田山橋) 河川A イ S48.6.1

    松浦川全域 荒瀬橋(牟田部) 河川A イ S48.6.1 松浦川水系

    の松浦川

    松浦川全域 潮止堰(久里橋) 河川A イ S48.6.1

    松浦川水系

    の徳須恵川 徳須恵川全域

    田中川合流

    (徳須恵橋) 河川A イ S48.6.1

    松浦川水系

    の厳木川 厳木川全域 山崎橋(浦の川橋) 河川A イ S48.6.1

    ※1 BOD:生物化学的酸素要求量。水中の汚れ(有機物)などを微生物が食べて,分解するときに必要とされる酸素量の

    ことです。この値が大きいほど川は汚れており,川のきれいさを判定する方法として一番使われています。 ※2 75%値:年間の日平均値が全データをその値の小さいものから順に並べ 0.75×n 番目(n は日間平均値のデータ数)のデータ値(データ数が 12 の場合は 9 番目の値)。当該値が基準値を満足することをもって,当該測定値において環境基準に適合しているとみなすこととされています。 ※3 環境基準値:人の健康を保護し,生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準で国が設定します。 ※4 類型:河川 AA BOD 濃度 1mg/L 以下,河川 A BOD 濃度 2mg/L 以下,河川 B BOD 濃度 3mg/L 以下 ※5 達成期間:イ 直ちに達成,ロ 5 年以内で可及的速やかに達成

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -78-

    図 2.3.13 松浦川における環境基準類型指定区分及び水質調査地点位置図

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -79-

    松浦川全域

    (A 類型)

    徳須恵川全域

    (A 類型)

    厳木川全域

    (A 類型)

    厳木ダム

    BOD75%値(mg/l)

    厳木ダム(K-1)

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    H 1 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 H 8 H 9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18

    BOD75%

    A類型環境基準値

    基準値 2mg/l

    BOD75%値(mg/l)

    BOD75%値(mg/l)

    BOD75%値(mg/l)

    BOD75%値(mg/l)

    BOD75%値(mg/l)

    BOD75%値(mg/l)

    年(平成)

    田中川合流(徳須恵橋)

    舞鶴橋

    山崎橋(浦の川橋)

    潮止堰(久里橋)

    荒瀬橋(牟田部)

    久保橋(和田山橋)

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    H 1 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 H 8 H 9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18

    75%値

    A類型環境基準値

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    H 1 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 H 8 H 9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18

    75%値

    A類型環境基準値

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    H 1 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 H 8 H 9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18

    75%値

    A類型環境基準値

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    H 1 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 H 8 H 9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18

    75%値

    A類型環境基準値

    環境基準値 2mg/l

    環境基準値 2mg/l

    環境基準値 2mg/l

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    H 1 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 H 8 H 9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18

    75%値

    A類型環境基準値

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    H 1 H 2 H 3 H 4 H 5 H 6 H 7 H 8 H 9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18

    75%値

    A類型環境基準値

    環境基準値 2mg/l

    環境基準値 2mg/l

    環境基準値 2mg/l

    図 2.3.14 各水質調査地点における水質経年変化

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -80-

    2.3.2 河川空間

    (1) 河川空間の利用 平成 18 年度に松浦川の国管理区間で実施した「河川水辺の国勢調査(河川空間利用実態

    調査)」による河川空間利用者数は年間約 31.6 万人で、散策、水遊び、釣りなど多岐にわたり、多くの人に利用されています。このことは、松浦川が環境学習や自然体験の場、憩

    いの場として、川や自然とふれ合える親しみやすい河川空間であることを示しています。 松浦川は、地域の住民団体等による河川愛護の啓発活動など、河川を軸とした様々な活

    動が展開されており、今後、水辺とのふれあいの場や河川空間を利用した自然体験や環境

    学習の場のさらなる確保が求められています。

    表 2.3.3 松浦川における年間の河川空間利用状況

    図 2.3.15 松浦川の河川空間利用状況(利用形態別と利用場所別)

    区分 項目年間利用人数

    (推定値)(人)割合(%)

    スポーツ 8,200 2.6

    釣り 34,100 10.8

    水遊び 39,200 12.4

    散策 234,900 74.2

    計 316,400 100.0

    堤防 143,100 45.2

    高水敷 100,000 31.6

    水際 43,900 13.9

    水面 29,400 9.3

    計 316,400 100.0

    利用形態別

    利用場所別

    (出典:平成 18 年度河川水辺の国勢調査<河川利用実態調査>)

    散策74.2%

    スポーツ2.6%

    釣り10.8%

    水遊び12.4%

    水際13.9%

    高水敷31.6%

    堤防45.2%

    水面9.3%

    【利用形態別の利用者割合】 【利用場所別の利用者割合】

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -81-

    ①上流部(源流から中松浦鉄道橋までの区間)

    源流から直轄上流端までの区間は、黒髪山自然公園をはじめ、川古の大楠(天然記念物)

    などが存在する自然豊かな地域であり、森林・水辺のいこいの場として、多くの観光客に利

    用されています。 直轄上流端から中松浦鉄道橋までの区間は、周辺の低山に囲まれたやや開けた平地であり、

    水辺の楽校として整備されている桃川親水公園や駒鳴地区などでは、子供達が川遊びや水遊

    びをする姿が見られ、釣りなどにも利用されています。

    ② 中流部(中松浦鉄道橋~松浦大堰湛水区間上流端)、厳木川、徳須恵川

    中流部では、自然体験、環境学習や各種イベ

    ントが行われ、市民のいこいの場となっていま

    す。特に、松浦川中流 16km 右岸では、「アザメの瀬自然再生事業」が実施されており、コイ、

    フナ、ドジョウなど昔あちこちに見られた生物

    の生息、生育する氾濫原的湿地の再生に取り組

    んでおり、環境学習や市民団体の交流の場とし

    て利活用が行われています。 徳須恵川においては、4k400 左岸付近の高水

    敷に水辺の楽校が整備され、堤防天端はジョギ

    ングや散策、また、湛水区間を利用したカヌー

    教室、夏祭り等のイベントに利用されています。

    写真 2.3.59 黒髪山 武雄市山内町と有田町、西有田町にまたがります。

    標高 516m。山の北部では、夫婦岩の雄岩と雌岩が谷

    を隔ててそそり立っています。

    写真 2.3.60 桃川親水公園 人と生物が共生する空間として、地域住民から親しま

    れています。

    写真 2.3.61 アザメの瀬での自然体験 人と生物がふれあえる場として、地域住民から親しまれ

    ています。

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -82-

    厳木川の下流部においては、桜つづみを利用した散策、中流部では地域団体による町切水

    車の保存と合わせた活動、上流部では「あゆまつり」といったイベント等が行われています。 また、厳木ダム湖周辺には、遊歩道が整備され、ダム湖上流のスポーツ公園では、毎年7

    月に少年野球大会が開催されており、厳木ダム周辺においても、さまざまな形で地域の方々

    に利用されています。

    写真 2.3.63 厳木川あゆまつり 厳木川では、アユやヤマメが生息しており、アユのつ

    かみどり大会などが催され、多くの家族連れで賑わい

    ます。

    写真 2.3.62 水辺の楽校を利用した カヌー教室

    (徳須恵川:唐津市北波多・水辺の楽校)

    写真 2.3.65 ダム湖畔の遊歩道 (厳木ダム)

    写真 2.3.64 スポーツ公園での 少年野球大会

    (厳木ダム)

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -83-

    ③ 下流部(松浦大堰湛水区間)

    支川徳須恵川から松浦大堰までの区間は、その大部分が松浦大堰の湛水区間となり、流

    域最大の人口を有する唐津市街地を緩やかに流れています。 広い河川空間は緑地公園や運動公園、サイクリングロードなどの日常的利用のほかに、

    花火大会や各種イベントにも利用されており、人々の憩いの場、集いの場として盛んに利用

    されています。また、松浦大堰の湛水部では、ボート利用が盛んに行われています。

    ④ 河口部(松浦大堰から河口までの区間) 観光都市唐津の中心部を貫流し、そこに広がる広大な水面は唐津城とあいまって唐津を

    代表する景勝空間となっており、唐津市民や観光客に広く愛されています。また、河口域は、

    広大な砂質干潟が形成され、貴重な生物の生息空間となっており、自然観察の場としても利

    用されています。

    写真 2.3.67 大堰湛水部でのボート練習 大堰湛水域では、ボート利用が盛んです。

    平成 19 年度には、全国高校総体が行われる予定です。

    写真 2.3.66 水面に映える唐津城と花火7 月に行われる唐津市民花火大会では、毎年約 17 万人

    の市民、観光客が訪れ、熱気と感動につつまれます。

    図 2.3.16 河口干潟部での自然観察会

    の新聞記事(H17.9.9:唐津新聞) 平成 17 年 5 月に地域住民による「松浦川を親しむ会」

    が発足され、河口部干潟での生物観察会等が行われるな

    ど、河川利用が盛んに行われています。 写真 2.3.68 生物観察会の様子

    出典:唐津百景、唐津市

  • 2 松浦川の現状と課題 2.3 河川環境の現状と課題

    -84-

    松浦川における地域活動

    団体名 活動拠点 活動概要

    厳木町飲む水を考える研究会

    厳木川

    ・厳木川松浦川の川上から流れてゆく飲み水30箇所の水質検査を2月と9月の水量の少ないとき,水質検査を会員70名で行う。・小学校の子供達と川の中の生物の研究を行う。・川を汚さないように子供達と話し合い,合成洗剤を使わない石けんづくりをする。・年2回マイクロバスで各地の川を回り研修する。

    自然と暮らしを考える研究会

    厳木川一帯

    水車復元に取り組んでいる。また用水路とほぼ並行に流れる河�