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福祉施設におけるキャリアパスおよび 人材育成に関する実態調査 調査結果 Ⅰ 調査実施のあらまし 1 目 東京都内の福祉施設および事業所におけるキャリアパス および人材育成における研修ニーズ等を把握することを 目的に実施する。 2 実施主体 東京都社会福祉協議会 3 実施時期 平成 22 年3月 19 日~4月5日 ※平成 22 年3月 31 日現在の状況を把握した。 4 調査対象 都内福祉施設・事業所 2,159 か所 ※組織内の職層や人員構成等が大きく異なるため、地域包括支援セン ターや訪問介護事業所等の訪問系サービスは調査対象から除いた。 ※法人ではなく施設単位に調査を行い、調査回答者は施設を代表す る立場の方とし、常勤の非正規職員を含む福祉サービスを主として 担う常勤職員およびその上司の状況を対象とした(看護師、事務職 員等は除く)。 5 回 433 か所/2,159 か所(回収率:20.1%) (内訳) 特別養護老人ホーム(123)、養護老人ホーム(14)、軽費老人ホーム (8)、高齢者在宅サービスセンター(56)、保育所(66)、児童養護施 設(16)、乳児院(4)、母子生活支援施設(11)、救護施設(4)、更生施 設(4)、婦人保護施設(1)、身体障害者施設・事業所(8)、知的障害 者施設・事業所(85)、その他(33) 6 調査項目 ①職員の人事管理上の等級、②職層ごとの役職、③職層ご との正規職員数、④各職層に到達するための直近下位の職 層における必要な経験年数、⑤各職層における最長の経験 年数、⑥給与段階、⑦職層ごとの担当業務、⑧役職登用の 基準、⑨役職登用の試験、⑩役職登用に関わる基準や規程、 ⑪職員育成のための研修制度(施設内・施設外)、⑫研修 (施設内・施設外)のねらいと課題、⑬研修受講歴の取扱 い、⑭指導職に求める資質と施設外研修への期待、⑮非役 職者の今度の役職への登用、⑯役職者を育てていく上での 課題

福祉施設におけるキャリアパスおよび 人材育成に関 …Ⅱ 調査結果 1 各職層の現況 施設ごとに職員数が異なるため、あくまでも分布状況になりますが、各職層の

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Page 1: 福祉施設におけるキャリアパスおよび 人材育成に関 …Ⅱ 調査結果 1 各職層の現況 施設ごとに職員数が異なるため、あくまでも分布状況になりますが、各職層の

福祉施設におけるキャリアパスおよび

人材育成に関する実態調査 調査結果

Ⅰ 調査実施のあらまし

1 目 的 東京都内の福祉施設および事業所におけるキャリアパス

および人材育成における研修ニーズ等を把握することを

目的に実施する。

2 実施主体 東京都社会福祉協議会

3 実施時期 平成 22年3月 19日~4月5日

※平成 22年3月 31日現在の状況を把握した。

4 調査対象 都内福祉施設・事業所 2,159 か所

※組織内の職層や人員構成等が大きく異なるため、地域包括支援セン

ターや訪問介護事業所等の訪問系サービスは調査対象から除いた。

※法人ではなく施設単位に調査を行い、調査回答者は施設を代表す

る立場の方とし、常勤の非正規職員を含む福祉サービスを主として

担う常勤職員およびその上司の状況を対象とした(看護師、事務職

員等は除く)。

5 回 収 433 か所/2,159 か所(回収率:20.1%)

(内訳)

特別養護老人ホーム(123)、養護老人ホーム(14)、軽費老人ホーム

(8)、高齢者在宅サービスセンター(56)、保育所(66)、児童養護施

設(16)、乳児院(4)、母子生活支援施設(11)、救護施設(4)、更生施

設(4)、婦人保護施設(1)、身体障害者施設・事業所(8)、知的障害

者施設・事業所(85)、その他(33)

6 調査項目 ①職員の人事管理上の等級、②職層ごとの役職、③職層ご

との正規職員数、④各職層に到達するための直近下位の職

層における必要な経験年数、⑤各職層における最長の経験

年数、⑥給与段階、⑦職層ごとの担当業務、⑧役職登用の

基準、⑨役職登用の試験、⑩役職登用に関わる基準や規程、

⑪職員育成のための研修制度(施設内・施設外)、⑫研修

(施設内・施設外)のねらいと課題、⑬研修受講歴の取扱

い、⑭指導職に求める資質と施設外研修への期待、⑮非役

職者の今度の役職への登用、⑯役職者を育てていく上での

課題

Page 2: 福祉施設におけるキャリアパスおよび 人材育成に関 …Ⅱ 調査結果 1 各職層の現況 施設ごとに職員数が異なるため、あくまでも分布状況になりますが、各職層の

Ⅱ 調査結果

1 各職層の現況

○施設ごとに職員数が異なるため、あくまでも分布状況になりますが、各職層の

常勤職員数の全体の職員数に占める割合は、管理職員が 9.1%、指導職員が

20.0%、中堅職員が 44.9%、新任職員が 25.3%となっています。

なお、この割合が施設種別ごとに異なるかをみてみると、下の参考表のとおり

大きな相違はみられませんでした。

○「上位の職層に上がるためにその下位の職層に何年間在職することを想定して

いるか」を尋ねてみると、

① 管理職層に上がるために指導層で平均 8.0 年を想定しているものの、指導

層の職員の最長年数は平均 10.0 年となっており、2.0 年の差があります。

② 指導職層に上がるために中堅層で平均 5.7 年を想定しているものの、中堅

層の職員の最長年数は平均 9.5 年となっており、3.8 年の差があります。

③ 中堅層になるまでに新任から平均 3.1 年を想定していますが、実際には中

堅層に上がる前の離職もあり、その年数を下回る平均 2.6 年が新任層の上

限年数となっています。

表 職層ごとの分布状況等

常勤職員数 (うち非正規職員数)

上位の職層に上がるための想定在位年数

最長の在位年数

管理職員 平均 2.4 名 (0.01 名) - - 指導職員 平均 5.5 名 (0.04 名) 平均 8.0 年 平均 10.0 年中堅職員 平均 11.9 名 (0.66 名) 平均 5.7 年 平均 9.5 年 新任職員 平均 6.7 名 (0.73 名) 平均 3.1 年 平均 2.6 年

参考表 主な施設種別による職層ごとの平均常勤職員数の割合

特別養護 老人ホーム

保育所 児童養護施設 知的障害者 入所施設

管理職員 3.1 名( 7.6%) 2.1 名( 9.9%) 2.0 名( 7.6%) 1.7 名( 4.6%)

指導職員 7.5 名(18.3%) 4.3 名(20.1%) 4.7 名(17.8%) 11.6 名(31.2%)

中堅職員 19.1 名(46.7%) 9.9 名(46.5%) 12.2 名(46.2%) 15.2 名(40.9%)

新任職員 11.2 名(27.4%) 5.0 名(23.5%) 7.5 名(28.4%) 8.7 名(23.4%)

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2 「中堅職員」と「指導職員」に到るまでの想定経験年数

○それぞれの施設・事業所が「中堅職員」と「指導職員」を何年目の職員として

捉えているかをみてみると、「中堅職員」は平均 3.1 年を経て以降、「指導職員」

は平均 8.8 年を経て以降と捉えています。

○平均は上記のとおりですが、捉え方は下図のように施設ごとに異なっています。

図1 中堅職員に到るまでの想定経験年数

32.3

13.2

24.0

6.0

0.0

15.0

2.4

1.8

4.8

0 10 20 30

2~3年

3~4年

4~5年

5~6年

6~7年

7~8年

8~9年

9~10年

10年以上

40

図2 指導職員に到るまでの想定経験年数

5.9

4.4

8.4

12.3

12.3

10.8

6.9

10.3

2.5

5.9

2.0

3.0

3.9

10.9

0 10 20 30

2~3年

3~4年

4~5年

5~6年

6~7年

7~8年

8~9年

9~10年

10~11年

11~12年

12~13年

13~14年

14~15年

15年以上

40

単位:%

単位:%

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3 職層を構成する役職

○今回のアンケートでは、福祉・介護サービスを担う常勤職員について「管理職

員」「指導職員」「中堅職員」の4つの職層に分けていただき、さまざまな役職

をどの職層に各施設が位置づけているかを把握しました。これによると、同じ

役職であっても、施設によっては位置づけている職層が異なる役職があること

がわかります。特に、施設によって「管理職」「指導職」の位置づけに分かれる

役職、「指導職」「中堅職」に分かれる役職があることがうかがえます。また、

「役職なし」に管理職員の一部、指導職員、中堅職員も一定程度みられます。

図3 職層別役職設定率(特別養護老人ホーム)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

施設長

副施設長

本部長・部長等(*1)

介護長・課長等(*2)

相談員

係長

主任

副主任

フロアリーダー

リーダー

サブリーダー

ユニット(グループ)リーダー

ケアマネージャー

役職なし

管理職員 指導職員 中堅職員 新任職員

本部長・部長等(*1):室長、次長、本部長、部長

介護長・課長等(*2):介護サービス等課長、 統括長、介護長、寮母長、管理介護職員、マネー

ジャー、スーパーバイザー

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※高齢者在宅サービスセンター、養護老人ホーム、軽費老人ホームも上記と

同様の傾向となっています。

図4 職層別役職設定率(保育所)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

施設長

副施設長等(*3)

主任

副主任

クラス主任(クラスリーダー)

リーダー等(*4)

役職なし

管理職員 指導職員 中堅職員 新任職員

副施設長等(*3):副施設長、園長代理(助手)

リーダー等(*4):総リーダー、フロアリーダー、リーダー、ユニット(グループ)リーダー、

チーフリーダー

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図5 職層別役職設定率(児童養護施設)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

施設長

副施設長

課長

ホーム長・グループホーム長

係長

主任

副主任

フロアリーダー

リーダー

サブリーダー

ユニット(グループ)リーダー

役職なし

管理職員 指導職員 中堅職員 新任職員

※母子生活支援施設、乳児院も同様の傾向です。救護施設や婦人保護施設でも、

主任を「指導職員」に位置づけていることを除き、同様の傾向です。

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図6 職層別役職設定率(障害児・者施設)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

施設長

副施設長等(*5)

部長等(*6)

課長等(*7)

課長補佐等(*8)

相談員・支援員

係長

主任

副主任

フロアリーダー

リーダー

サブリーダー

ユニット(グループ)リーダー

チーフリーダー

チーフ

役職なし

管理職員 指導職員 中堅職員 新任職員

副施設長等(*5):副施設長 施設長補佐

部長等(*6):次長、部長、統括サービスマネージャー

課長等(*7):寮長、ホーム長、マネージャー、課長、スーパーバイザー

課長補佐等(*8):寮長補佐、サブマネージャー、課長補佐

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4 人事管理上の等級

○「等級」は、単に給与段階としての区分だけでなく、キャリアパスを考える上

で、その「等級」ごとに求められる役割を定める「階段」「はしご」となりうる

ものです。人事管理上の等級は、平均すると 6.2 等級の区分が設けられており、

「5等級」による区分が最も多く 25.0%であり、次いで「7等級」が 20.7%、

「6等級」が 19.7%となっています。なお、施設種別ごとにみると、高齢者福

祉施設では「6等級」、保育所では「5等級」が最も多くなっています。人事管

理を行う上で、概ね5~7等級による区分が一般的となっています。

○等級の最大値を 1.0 等級に揃えて等級の職層ごとの境目をみると、下記のよう

に「管理職員」は平均 0.77 等級から、「指導職員」は 0.51 等級、「中堅職員」

は 0.32 等級からとなっています。

1 級 1 級

4

7

4

新任職員 級

0.32

中堅職員 級

0.51

指導職員

0.77

6 級

管理職員 級 1.00

この平均値を「5等級」の施設・事業所に当てはめてみると、「中堅職員」が

1.9 級から、「指導職員」が 2.7 級から、「管理職員」が 3.9 級からとなります。

実際に「5等級」を採用している施設・事業所では…、

「中堅職員」は、「1級から」が 56.3%と最も多く「2級から」が 42.3%、

「指導職員」は、「3級から」が 64.8%と最も多く「2級から」が 28.2%、

「管理職員」は、「4級から」が 52.1%と最も多く「5級から」が 32.4%と

なっています。

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平均値を「7等級」の施設・事業所に当てはめてみると、「中堅職員」が 2.7

級から、「指導職員」が 3.7 級から、「管理職員」が 5.4 級からとなっています。

実際に「7等級」を採用している施設・事業所では…、

「中堅職員」は、「2級から」が 56.9%と最も多く「1級から」が 33.3%、

「指導職員」は、「3級から」が 56.9%と最も多く「4級から」が 31.4%、

「管理職員」は、「5級から」が 37.3%と最も多く「4級から」と「5級から」

がそれぞれ 29.4%、となっています。

この結果からは、「5等級」であっても「7等級」であっても、「指導職員」の

始まりは「3級から」が最も多く、「指導職員」に到るまでの階段に差がみられ

ませんでした。なお、「9等級」を採用している施設・事業所では、「指導職員」

の階層が「4級から」が全体の8割となっています。

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5 職層ごとの担当業務

○利用者支援に加えてマネジメント的業務を中心に 18 項目を挙げて答えていた

だいた「管理職員」が担う担当業務の上位5つは、以下のようになっています。

① 事業計画の策定(98.3%)

② 職員採用時の面接(94.8%)

③ 予算の立案(92.9%)

④ 人員配置、異動(91.3%)

⑤ 行政の窓口(90.3%)

なお、半数以上の施設・事業所で取り組む項目は 11項目あり、かつ、ほとん

どが7割以上で取り組まれており、業務内容が比較的多くの施設で一致してお

り、かつ、18項目すべての項目において回答がみられました。

○同様に「指導職員」が担う担当業務の上位5つは、以下のとおりです。

① 利用者支援(90.7%)

② ケースカンファレンス(85.5%)

③ ボランティア・実習生の管理・指導(84.8%)

④ 非常勤職員の管理・指導(77.7%)

⑤ 勤務表の作成(73.5%)

半数以上の施設・事業所で取り組む項目は8項目で、こちらも多くの施設で

一致しています。

○「中堅職員」が担う担当業務の上位5つは、以下のとおりです。

① 利用者支援(95.3%)

② ボランティア・実習生の管理・指導(67.5%)

③ 夜勤・宿直(58.3%)

④ ケースカンファレンス(54.6%)

⑤ OJTリーダー(50.9%)

この5つに⑥「非常勤職員の管理・指導」(49.3%)が続きます。④~⑥の項

目は「中堅職員」の担当業務になっている施設・事業所とそうでない施設・事

業所が半々であり、施設による相違がみられます。

○「新任職員」が担う担当業務の上位5つは、以下のとおりです。

① 利用者支援(97.2%)

② 夜勤・宿直(60.2%)

③ ケースカンファレンス(28.6%)

④ ボランティア・実習生の管理・指導(19.0%)

⑤ 非常勤職員の管理・指導(11.8%)

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利用者支援が中心となっていますが、非常勤職員層の管理・指導を担う実態

も1割の施設でみられ、OJTの一環で人事関連以外のさまざまな業務に回答

がみられます。

図7 職層ごとの担当業務

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

事業計画の策定

予算の立案

人事考課の考課者

人員配置、異動

勤務表の作成

勤怠の管理

職員採用時の面接

年度の人材育成方針の作成

年度の研修計画の作成

ケアカンファレンス

OJTリーダー

非常勤職員の管理・指導

ボランティア・実習生の管理・指導

苦情対応窓口

行政の窓口

種別協議会の担当

夜勤、宿直

利用者支援

管理職員 指導職員 中堅職員 新任職員

単位:%

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単位:%

管理職員 指導職員 中堅職員 新任職員

事業計画の策定 98.3 46.3 14.7 5.6

予算の立案 92.9 23.5 6.6 2.5

人事考課の考課者 79.0 37.7 1.8 0.0

人員配置、異動 91.3 12.0 0.8 0.0

勤務表の作成 39.2 73.5 12.6 2.2

勤怠の管理 64.9 47.3 3.1 1.1

職員採用時の面接 94.8 31.1 1.0 0.0

年度の人材育成方針の作成 80.7 25.5 1.8 0.0

年度の研修計画の作成 74.8 45.8 6.6 1.4

ケースカンファレンス 39.2 85.5 54.6 28.6

OJTリーダー 26.4 68.9 50.9 4.2

非常勤職員の管理・指導 59.4 77.7 49.3 11.8

ボランティア・実習生の管理・指導 33.3 84.8 67.5 19.0

苦情対応窓口 81.8 53.9 12.3 2.8

行政の窓口 90.3 26.2 4.7 2.8

種別協議会の担当 39.6 35.8 19.7 7.8

夜勤、宿直 15.3 50.5 58.3 60.2

利用者支援 38.4 90.7 95.3 97.2

これらの業務をどの職層が中心に担っているかをグラフにしたものが下記です。

これによると、利用者サービス以外の組織運営のためのマネジメント的な業務は

指導職員が多くを担っていることがわかります。一方で、その一部は中堅職員も

担っています。中堅職員の頃から担い始めて指導職員でも担っていくマネジメン

ト業務と、中堅職員の頃には担ってなく指導職員になってから急に担い始めるマ

ネジメント業務があることがわかります。

また、次図にみられるように管理職員がかなりの業務の担い手になっているこ

ともわかります。

Page 13: 福祉施設におけるキャリアパスおよび 人材育成に関 …Ⅱ 調査結果 1 各職層の現況 施設ごとに職員数が異なるため、あくまでも分布状況になりますが、各職層の

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

事業計画の策定

予算の立案

人事考課の考課者

人員配置、異動

勤務表の作成

勤怠の管理

職員採用時の面接

年度の人材育成方針の作成

年度の研修計画の作成

ケースカンファレンス

OJTリーダー

非常勤職員の管理・指導

ボランティア・実習生の管理・指導

苦情対応窓口

行政の窓口

種別協議会の担当

夜勤、宿直

利用者支援

管理職員

指導職員

中堅職員

新任職員

6 昇進基準

(1)非役職者が初めて役職に就くとき

「業務の実績、成果」(57.6%)と「人事考課結果」(53.0%) が最も多く、

およそ半数の施設・事業所が「昇進基準」としています。これに「施設内部の

協議」(47.8%)、「具体的な業務経験、職務経験」(46.3%)、「勤続年数」(45.3%)

が続き、これらも半数近くの施設・事業所が基準としています。一方、「現等

級の在職年数」(31.0%)、「年齢」(25.1%)、「資格」(22.2%)「研修受講歴」

(3.9%)は低くなっています。

(2)初めて指導職の役職に就くとき

「業務の実績、成果」(66.6%)と「具体的な業務経験、職務経験」(60.4%)、

「人事考課結果」(58.5%)の順に多く、(1)の初めて役職に就くときよりも

「具体的な業務経験、職務経験」を基準にする割合が高くなります。これに「施

設内の協議結果」(54.8%)、「勤続年数」(43.2%)が続きます。

(3)初めて管理職の役職に就くとき

「理事会での協議結果」が 62.5%と最も多く、「業務の実績、成果」(61.1%)

と「具体的な業務経験、職務経験」(56.6%)、「人事考課結果」(53.2%)の順

になります。「理事会での協議結果」を除くと、(2)の指導職に就くときと似

た傾向になっています。

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図8 昇進基準(初めて役職に就くとき)

57.6

53.0

47.8

46.3

45.3

31.0

25.1

22.2

11.6

3.9

4.2

0 10 20 30 40 50 60 70

業務の実績・成果

人事考課結果

施設内部での協議結果

業務経験、職務経験

勤続年数

現等級の在職年数

年齢

国家資格など公的資格

理事会の協議結果

研修受講歴

基準はない、わからない

図9 昇進基準(初めて指導職に就くとき)

66.6

58.5

54.8

60.4

43.2

35.9

23.6

25.6

6.4

8.6

3.9

0 10 20 30 40 50 60 70

業務の実績・成果

人事考課結果

施設内部での協議結果

業務経験、職務経験

勤続年数

現等級の在職年数

年齢

国家資格など公的資格

理事会の協議結果

研修受講歴

基準はない、わからない

単位:%

単位:%

図10 昇進基準(初めて管理職に就くとき)

61.1

53.2

36.0

56.6

27.7

32.2

25.1

20.0

62.5

9.1

3.3

0 10 20 30 40 50 60 70

業務の実績・成果

人事考課結果

施設内部での協議結果

業務経験、職務経験

勤続年数

現等級の在職年数

年齢

国家資格など公的資格

理事会の協議結果

研修受講歴

基準はない、わからない

単位:%

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7 昇進試験

試験を実施している割合は、「非役職者が初めて役職に就くとき」で28.4%、「初

めて指導職の役職に就くとき」で 31.4%、「初めて管理職に就くとき」で 30.8%

とそれぞれ3割となっています。

図11 昇進試験の実施状況

28.4

31.4

30.8

71.6

68.6

69.2

0 20 40 60 8

初めて役職に就くとき

初めて指導職に就くとき

初めて管理職に就くとき

0

昇進試験を実施している 実施していない

8 昇進のための規程の運用状況

昇進にあたって規程どおり、あるいはほぼ規程どおりに運用できている割合は、

「非役職者が初めて役職に就くとき」で 64.9%、「初めて指導職の役職に就くと

き」で 58.2%、「初めて管理職に就くとき」で 58.4%と、それぞれ6割程度とな

っていますが、初めて指導職、管理職に就くときで、運用できていない割合が高

くなっています。

図12 昇進のための規程の運用状況

64.9

58.2

58.4

24.7

30.6

27

10.5

11.3

14.7

0 10 20 30 40 50 60 70

初めて役職に就くとき

初めて指導職に就くとき

初めて管理職に就くとき

規程どおり運用できている どちらともいえない 運用できていない

単位:%

単位:%

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9 昇進のための規程の運用ができていない理由

昇進にあたって規程どおり、あるいはほぼ規程どおりに運用できていない「理

由」を尋ねたところ、次のようなことがそれぞれの上位に挙げられています。ど

ちらかというと、人材の育成が困難であるという課題が上位に集まっています。

(1)~(3)いずれも順位は同じになっていますが、管理職について「上位

の役職が空かない」割合が他よりも高くなっています。

(1)非役職者が初めて役職に就くとき

① 上位の役職が空かず、新たに昇進できない(31.6%)

② 規程を満たす職員はいるが、登用できるほどに育っていない(28.9%)

③ 早期離職等で登用できる職員がいない(26.3%)

④ 役職登用基準があいまい(23.7%)

(下位)

⑤ 制度の存在自体の認識が薄い(7.9%)

⑥ 人件費財源の問題で昇進させられない(5.3%)

⑦ 規程どおりの試験や面接を実施できない(2.6%)

⑧ 規程どおりの研修が実施できない(2.6%)

(2)初めて指導職の役職に就くとき

① 上位の役職が空かず、新たに昇進できない(33.3%)

② 規程を満たす職員はいるが、登用できるほどに育っていない(30.2%)

③ 早期離職等で登用できる職員がいない(28.6%)

④ 役職登用基準があいまい(19.0%)

(下位)

⑤ 人件費財源の問題で昇進させられない(6.3%)

⑥ 規程どおりの試験や面接を実施できない(6.3%)

⑦ 規程どおりの研修が実施できない(4.8%)

⑧ 制度の存在自体の認識が薄い(4.8%)

(3)初めて管理職の役職に就くとき

① 上位の役職が空かず、新たに昇進できない(43.5%)

② 規程を満たす職員はいるが、登用できるほどに育っていない(25.9%)

③ 早期離職等で登用できる職員がいない(23.5%)

④ 役職登用基準があいまい(17.6%)

(下位)

⑤ 人件費財源の問題で昇進させられない(4.7%)

⑥ 規程どおりの試験や面接を実施できない(3.5%)

⑦ 制度の存在自体の認識が薄い(3.5%)

⑧ 規程どおりの研修が実施できない(2.4%)

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10 研修の実施状況

(1)職場内研修(意図的な配置転換や職務割当等を含む)の実施状況

「制度が存在している」割合は 42.7%と半数近くですが、「行っていない」

という回答が 13.5%でみられました。

図13 職場内研修の実施状況

制度は存在する

が、実際の運用

は少ない, 5.7%

制度は存在しない

が、上司の裁量で

行っている, 43.8%

行っていない,

13.5%

制度として定着

し、日常的に行わ

れている, 7.0%

(2)職場外研修の実施状況

こちらも「制度が存在している」割合は 40.0%と半数近くですが、12.6%

の施設で職場外研修への派遣が行われていない現状があります。

図14 職場外研修の実施状況

制度は存在するが、実際の運用

は少ない4.8%

制度は存在しないが、上司の裁量で行っている

47.4%

行っていない12.6%

制度として定着し、日常的に行

われている35.2%

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11 研修のねらい

施設内研修、施設外研修とも「介護技術などの専門性の向上」がそれぞれ最上

位に挙げられて 89.0%、75.3%と高い割合となっていますが、「マネジメントや

リーダーシップなどの組織運営上の技術や知識」は特に施設外研修への期待とし

て高く 73.2%であり、施設内研修における 43.1%と大きな開きがあります。

同様に、「制度の知識」「施設内・外の人間関係、ネットワーク」「折衝力や企画

力」が施設内研修と施設外研修において開きがあり、いずれも施設内研修では難

しいと考えて、施設外研修に期待している状況がうかがえます。

図15 研修のねらい(施設内研修と施設外研修による違い)

89.0

48.6

43.1

26.1

25.6

16.2

11.7

75.3

38.8

73.2

38.1

41.2

27.6

15.2

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

実務に必要な介護や支援、保育等の技術、知識

担当業務以外の知識や技術、実務経験

マネジメントやリーダーシップなど組織運営上の技術や知識

制度の知識

施設内・外の人間関係、ネットワーク

折衝力や企画力

資格試験のための知識

施設内研修 施設外研修

単位:%

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12 研修における課題

研修の課題は、施設内研修、施設外研修とも同様の傾向にあり、「研修等を受け

る職員が忙しい」がいずれも最も多くなっています。

研修を受けさせる必要性を否定する項目はいずれも割合が低く、「多忙さ」に加

えて、施設内研修の場合には「教える側の余裕」「適切なプログラム」「実施する

担当者、部門」、施設外研修の場合には「費用負担」「適切なプログラム」がそれ

ぞれ課題として指摘されています。

図16 研修の課題(施設内研修と施設外研修による違い)

59.8

48.1

31.8

28.8

17.4

12.0

8.2

3.8

71.8

22.6

28.7

18.4

21.5

12.5

24.2

5.6

0 20 40 60 80 100

研修等を受ける職員が忙しい

受入れ側、仕事を教える側に余裕がない

適切な研修プログラムや手法が少ない

研修制度を運用する部門、担当者がいない

成果が期待できない

身につけるべき「将来、求められるもの」が特定できない

費用負担が大きい

意欲の欠如、育成したい職員がいない

施設内研修 施設外研修

単位:%

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13 研修受講歴のキャリアとしての評価

「中途採用する際のそれまでの研修受講歴の取扱い」を尋ねてみると、それを

参考にしている割合は極めて低くなっています。その理由には、「研修の受講が本

人の能力を担保するものではない」(71.6%)、「統一的な尺度として捉える研修が

少ない」(43.5%)が指摘されており、研修の受講をキャリアの形成と結びつける

ためには何らかのしくみが必要なことがうかがえます。

このことからは、特に介護技術等の専門性は「資格」という一定の指標があり、

マネジメントの能力にはそれが見当たらないため、福祉職場で働く上でのキャリ

アの評価を介護技術等の専門性で判断しがちになることが考えられます。

図17 研修受講歴のキャリアとしての評価

採否と採用時の初任給決定の参

考にしている1.7%

採否を検討する際の参考にして

いる13.2%

わからない4.3%

確認するが、採否等には影響さ

せない13.7%

こちらから確認することはない

67.1%

図18 研修受講歴の課題

71.6

43.5

21.9

10.3

0 20 40 60 80

研修の受講が本人の能力を担保するものではない

統一的な尺度として捉えられる研修が少ない

研修の受講を証明するものがない

わからない

単位:%

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14 指導職に求める資質

「指導職」に求める資質を以下の8つの項目で順位付けを尋ねました。 専門性の高さ 専門知識・技術・技能、仕事の質・正確さ・速さなど

人間性 誠実、まじめ、優しい、柔軟性、ストレスに強い、粘り強い、向上心、チャレンジ

意欲、倫理観など

意欲・態度 規律性、責任性、協調性、積極性、自発性、主導性、計画性、自律性、自己管理な

人材育成力 指導力、指揮・統率力、コーチング技術、信頼関係、権限委譲、共感力・思いやり、

率先垂範、元気づけなど

創造的能力 企画力、情報収集・発信力、先見性、計画構築力、創意・工夫力、発想力、提案力、

論理的思考力、多面的思考力など

経営感覚 高業績志向、コスト意識、目標達成意欲、計数管理力、リスク管理力、計画遂行力、

戦略策定力、進捗管理力など

対人能力 コミュニケーション力、説明能力、表現力、傾聴力、調整力、交渉・折衝力、影響

力、理解力など

組織管理能力 業務改善力、人材の適材活用、課題形成力、状況判断・対応力、組織活性化力、問

題認識・解決力、意思決定力など

その結果、1位を8点、2位を7点・・・8位を1点で換算すると、次のよう

な順位となりました。指導職にさまざまな役割が期待されるため、ストレス耐性

を含めた「人間性」が最上位に来ています。また、「意欲・態度」が重視されてい

ることから、指導職を育成するためには、本人のモチベーションを高めていくこ

との必要性もうかがえます。

一方で、どのような資質が、部下を引っ張っていく要素になるかが主に重視さ

れており、その中で介護技術等に優れているなどの「専門性の高さ」よりも「対

人能力」や「人材育成力」が重要視されていることがわかりました。なお、保育

所や児童養護施設において、やや「専門性の高さ」のポイントが上がる傾向がみ

られました。

図19 指導職に求める資質

6.18

6.16

5.20

5.17

4.05

3.78

3.07

2.60

0 1 2 3 4 5 6 7

人間性

意欲・態度

対人能力

人材育成力

専門性の高さ

組織管理能力

創造的能力

経営感覚

単位:平均点

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15 指導職に求める資質を高めるために施設外研修に期待するもの

前出の 11にあるように、とくにマネジメントに関わる資質は施設内研修では

難しく、施設外研修に期待されている状況があります。

そうした中で、14の8項目について、その資質を高める機会として「施設外

研修」に期待するものが何かを尋ねました。その結果、「組織管理能力」(77.3%)

と「人材育成力」(74.2%)が特に施設外研修に期待されていることがわかりま

す。

下図は、14で重要視されていた順に並べています。したがって、14で上位に

あった3つは、施設外研修よりもむしろ、施設内での何らかの取組みにより高

めていくことが必要と考えられていることがうかがえます。

図20 指導職に求める資質を高めるために施設外研修に期待するもの

10.5

11.0

33.9

74.2

48.0

77.3

41.1

54.3

0 20 40 60 80 100

人間性

意欲・態度

対人能力

人材育成力

専門性の高さ

組織管理能力

創造的能力

経営感覚

単位:%

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16 現在、役職についていない職員の役職への登用の可能性

「現在、役職についていない職員」を①「すぐにでも役職につけることので

きる職員」、②「経験や教育により2~3年後に役職につけることができる職員」、

③「経験や教育に関わらず、役職につけると思えない職員」の3つに、全体を

100%にして分けてもらいました。

その結果、まず、下図のように、各施設・事業所の回答を平均すると、「すぐ

にでも役職につけることができる職員」(16.4%)と「経験や教育により2~3

年後には役職につけることができる職員」(50.4%)を合わせると 66.8%と適正

に人材がいることがわかります。

図21 業界全体でみた役職に登用可能な職員の割合

経験や教育により

2~3年後には役

職につけることの

できる職員

50.4%

すぐにでも役職に

つけることができ

る職員

16.4%

経験や教育に関

わらず、将来も役

職につくのが難し

いと思われる職員

33.2%

次に、それぞれが答えた割合の施設ごとの分布を調べてみたのが次ページの

図になります。これによると、半数以上の 53.7%の施設・事業所が、①の「す

ぐにでも役職につけることのできる職員」は「いない」あるいは「1割以下」

と答えています。一方で、②の「経験や教育により2~3年後に役職につける

ことができる職員」は施設・事業所によって傾向が分かれており、「1割以下」

と考える施設・事業所から「8割ほど」と考える施設・事業所までが幅広く分

布しています。

このことから、業界全体で考えれば適正な規模で人材がいても、個々の施設・

事業所ではその状況に大きく差異があることがわかります。

さらに、「すぐにでも役職につけることができる職員」をさらに細かくわけて

もらうと、①「本人にその気がある職員」が 49.5%、「本人にその気がない職

員」が 49.7%と、ほぼ半々の割合となることがわかりました。

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図22 すぐにでも役職に付けられる職員の割合

12.4

41.3

23.5

13.4

4.2

3.3

0.2

0.7

0.2

0.0

0.7

0 10 20 30 40 5

「0%」

「10%以下」

「10~20%」

「20~30%」

「30~40%」

「40~50%」

「50~60%」

「60~70%」

「70~80%」

「80~90%」

「90~100%」

0

図23 経験や教育によって2~3年後には役職につけられる職員の割合

1.2

4.9

10.6

11.5

8.9

16.0

14.3

16.0

11.3

2.3

3.1

0 5 10 15 20

「0%」

「10%以下」

「10~20%」

「20~30%」

「30~40%」

「40~50%」

「50~60%」

「60~70%」

「70~80%」

「80~90%」

「90~100%」

図24 経験や教育によっても役職につけることが難しい職員の割合

11.3

14.8

22.8

13.4

6.3

6.8

8.0

4.2

7.5

4.2

0.7

0 5 10 15 20 25

「0%」

「10%以下」

「10~20%」

「20~30%」

「30~40%」

「40~50%」

「50~60%」

「60~70%」

「70~80%」

「80~90%」

「90~100%」

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17 役職者を育てていく上での課題

「役職者を育てていく上での課題」について自由記述で挙げていただきました。

主に次のような課題が指摘されています。

(1) 職員体制がぎりぎりの状態でマネジメント業務を学ぶための職場外研修

に派遣することが難しい。また、研修費用が高い。

(2) 3年後ごとの報酬改定や指定管理者制度の年限があるため、長期的な展望

に立った役職者の育成が難しい。

(3) 離職などにより職員定着が困難で、未経験者の育成に追われ、役職者の育

成が難しい。

(4) 昇進を拒否する職員が少なくない。役職者の責任が重く、また、直接サー

ビスを担うことを希望する職員が多いため、役職者になりたがらない。

(5) 小規模な施設であるため、役職に就けたい職員がいてもポスト不足によっ

て役職登用の機会が少なく、モチベーションに影響が出る。

(6) 人件費財源が限られているため、若年層中心の経営になり、ポストを増や

すことが難しい。

(7) 勤続年数や経験以外の対人能力や人材育成力の見極めは難しく、登用の仕

方に悩む。

(8) 一法人一施設などにより閉塞感があり、慣習にとらわれず新しいことを創

造する意識が乏しくなっているため、役職に対する意欲が欠けている。

(9) 他の職場の経験がなく、小規模な集団なため、組織に対する意識が乏しく

役職やリーダーシップに対する理解が十分にない。

(10) 役職者の業務に見合った待遇が難しく、魅力を感じにくい。

上記以外にも、施設種別ごとに特有な回答内容がみられました。

<高齢者福祉施設>

○人材確保に時間がとられ、人材育成が困難になっている。

○キャリアパスに基づく人事管理制度及び研修制度は策定したが、その運用面が

課題であり、経営層の育成が課題となる。

○ローテーション勤務のため、職場内の集合研修の実施が難しい。

○介護保険の職員定数管理(運営基準)として、研修時間のカウントを認めてほ

しい。

○非常勤職員が大半となっており、役職者を育てる指針が明確になっていない。

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<児童福祉施設>

○キャリアパスに対する意識が保育所では少ない。

○13時間開所の職員勤務の体制上、研修参加が難しい。

○家庭と仕事の両立で多忙な職員が多い。

○職員集団が極めて小さく、組織を形成することが難しい。

<障害福祉施設>

○新体系に移行することで職員体制上、研修参加がますます難しくなる。

○報酬の中に人材育成費を担保する仕組みがないと厳しい。