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551.586 疾病・死亡率の季節変化に関する研究φ 藤原賞受賞記念講演 子** はじめに このたび日本気象学会から藤原賞を賜りまして,私に とりましてはこの上ない光栄と存じております.これは 一一重に長い年月にわたって私に自由な研究の場を与えて 下さった気象研究所並びに気象庁の皆様方,また研究成 果の発表の場を提供して下さった日本気象学会の御好意 のおかげと,心から御礼申し上げる次第でございます. ,と同時に,この名誉をこれで終らせることのないよう, これまでにもまして努力して参るつもりでございます. 私は日本気象学会の一会員であるとはいっても,もと もと地理学の出身でありますため,オーソドックスな気 象学はほとんど理解できず,この点大変に心苦しく思っ ております.しかし私の研究は地理学,気象学,医学など さまざまな分野にまたがる学際的色彩の強いものですの で,これもやむを得ないのではないかと,自らをなぐさ めることもございます.簡単に説明致しますと,人類の 疾病や死亡がどのような季節変化を示すか,しかもそれ が年代により,地域によりどう変ってきたかという研究 で,生気象(気候)学とか医学地理学とか呼ばれる分野 に入ります.研究の立場としては自然科学,社会科学両 方の立場が必要となってまいります.このように変った 研究でございますため,真の意味での指導者もなく,また 討論相手をつとめて下さる人もほとんどなかったといえ ましょう.しかしこのために多いわばr我が道を行く」 酌に研究の展開ができまして,今にして思えば,人にい えない苦労もありましたが却ってよかったと考えており ます.少し大げさに申しますと,r人類の死亡と季節」 との関係を通してみた1つの文明論的展開ともいえると ころまで到達致しました. こういった研究をはじめて30年近くになりますので, *Studics on the seasonality in Human Mortality. **Masako Momiyama,医学地理研究所(元気象研 究所応用気象研究部) いろいろな成果もでてまいりましたが,ここでは紙面の 関係上,ごく大すじを書かせて頂きます.もし関心をお 示し下さる方があればと思いまして,これまで書きまし た原著論文と単行本を,英文で書いたもののみまとめて 最後に付記しておきました. 1981年12月 ↑.季節病カレンダー 人類の疾病や死亡と季節との関係を種々な角度から調 べてみると案外興味ある事実がみつかる.昔は気候環境 の影響をそのまま反映していたといっても過言ではない が,社会の発展とともにその様相は大きく変化してき た.このことは私の考案した“季節病カレソダー”に見 事にあらわれている.これから主として季節病カレンダ ーを中心にしながら話を進めて行きたい.まず,東京都 の季節病カレソダーから説明してみよラ. 1・1・東京都の季節病カレンダー 東京都における1930~34年のカレンダーは第1図のよ うに流行性感冒,肺炎・気管支炎などの呼吸器系の疾患 と,心臓病,脳卒中,腎臓炎,老衰などの老人性疾患が 冬に多発期を示す.しかしこれとは逆に百日咳,腸チフ ス,赤痢,胃腸炎,脚気などは夏に多発期を示す.また 癌だけは9月にみられる.このようにカレソダーは我々 の常識で考えて,冬に多くみられる疾病は冬に,夏にみ られる疾病は夏に死亡の多発期があるといったごく当た り前の姿を示していた.しかしながら,まったく同じ東 京都のカレンダーを戦後の1952~56年についてみると, その姿は一変している.その著しい点は,戦後のカレン ダーは夏の多発期はほとんど消失して,冬に多発期が移 行していることである.つまり戦前,夏季に多かった消 化器の疾患,一部の呼吸器の疾患,それに結核,脚気な どはほとんどが冬季に多発期が現れている.一方,癌を 除く老人性疾患は戦前,戦後を通じていずれも冬季に多 発期を示している.,以上のようなカレソダーの動きのな かで最も私が興味を覚えたのは,胃腸炎の動きであっ 25

疾病・死亡率の季節変化に関する研究φ · 東京都の季節病カレンダr,戦前と戦後の比較. (1912・16) (1930・34) 、 (1957。61) 事Whooplng

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551.586

疾病・死亡率の季節変化に関する研究φ

藤原賞受賞記念講演

籾 山 政 子**

 はじめに

 このたび日本気象学会から藤原賞を賜りまして,私に                  ずとりましてはこの上ない光栄と存じております.これは

一一重に長い年月にわたって私に自由な研究の場を与えて

下さった気象研究所並びに気象庁の皆様方,また研究成

果の発表の場を提供して下さった日本気象学会の御好意

のおかげと,心から御礼申し上げる次第でございます.

,と同時に,この名誉をこれで終らせることのないよう,

これまでにもまして努力して参るつもりでございます.

 私は日本気象学会の一会員であるとはいっても,もと

もと地理学の出身でありますため,オーソドックスな気

象学はほとんど理解できず,この点大変に心苦しく思っ

ております.しかし私の研究は地理学,気象学,医学など

さまざまな分野にまたがる学際的色彩の強いものですの

で,これもやむを得ないのではないかと,自らをなぐさ

めることもございます.簡単に説明致しますと,人類の

疾病や死亡がどのような季節変化を示すか,しかもそれ

が年代により,地域によりどう変ってきたかという研究

で,生気象(気候)学とか医学地理学とか呼ばれる分野

に入ります.研究の立場としては自然科学,社会科学両

方の立場が必要となってまいります.このように変った

研究でございますため,真の意味での指導者もなく,また

討論相手をつとめて下さる人もほとんどなかったといえ

ましょう.しかしこのために多いわばr我が道を行く」

酌に研究の展開ができまして,今にして思えば,人にい

えない苦労もありましたが却ってよかったと考えており

ます.少し大げさに申しますと,r人類の死亡と季節」

との関係を通してみた1つの文明論的展開ともいえると

ころまで到達致しました.

 こういった研究をはじめて30年近くになりますので,

*Studics on the seasonality in Human Mortality.

**Masako Momiyama,医学地理研究所(元気象研

 究所応用気象研究部)

いろいろな成果もでてまいりましたが,ここでは紙面の

関係上,ごく大すじを書かせて頂きます.もし関心をお

示し下さる方があればと思いまして,これまで書きまし

た原著論文と単行本を,英文で書いたもののみまとめて

最後に付記しておきました.

1981年12月

 ↑.季節病カレンダー

 人類の疾病や死亡と季節との関係を種々な角度から調

べてみると案外興味ある事実がみつかる.昔は気候環境

の影響をそのまま反映していたといっても過言ではない

が,社会の発展とともにその様相は大きく変化してき

た.このことは私の考案した“季節病カレソダー”に見

事にあらわれている.これから主として季節病カレンダ

ーを中心にしながら話を進めて行きたい.まず,東京都

の季節病カレソダーから説明してみよラ.

 1・1・東京都の季節病カレンダー

 東京都における1930~34年のカレンダーは第1図のよ

うに流行性感冒,肺炎・気管支炎などの呼吸器系の疾患

と,心臓病,脳卒中,腎臓炎,老衰などの老人性疾患が

冬に多発期を示す.しかしこれとは逆に百日咳,腸チフ

ス,赤痢,胃腸炎,脚気などは夏に多発期を示す.また

癌だけは9月にみられる.このようにカレソダーは我々

の常識で考えて,冬に多くみられる疾病は冬に,夏にみ

られる疾病は夏に死亡の多発期があるといったごく当た

り前の姿を示していた.しかしながら,まったく同じ東

京都のカレンダーを戦後の1952~56年についてみると,

その姿は一変している.その著しい点は,戦後のカレン

ダーは夏の多発期はほとんど消失して,冬に多発期が移

行していることである.つまり戦前,夏季に多かった消

化器の疾患,一部の呼吸器の疾患,それに結核,脚気な

どはほとんどが冬季に多発期が現れている.一方,癌を

除く老人性疾患は戦前,戦後を通じていずれも冬季に多

発期を示している.,以上のようなカレソダーの動きのな

かで最も私が興味を覚えたのは,胃腸炎の動きであっ

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824

        疾病・死亡率の季節変化に関する研究

I Pre-wor period (1930-1934》      H Fbs↑一wor period(1952-1956》

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東京都の季節病カレンダr,戦前と戦後の比較.

     (1912・16)        (1930・34)   、

(1957。61)

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第2図 日本の季節病カレンダーの年代的変遷.

た.戦後のカレンダーのなかでほとんどが冬季に変わっ

たとはいえ,胃腸炎だけは12月から3月にかけての多発

期の他に,9月の中旬にごく短い多発期がある.これは

多発期が夏から冬に移行してゆく名残りのようなもので

 24

あり,ちかい将来,必ずこの夏山は消失すると見通しを

たてた.

 はたせるかなこの夏山は,数年にして完全に消えて冬

季集中型に変形した.ついで私は上記の戦前,戦後の2

                 、天気”28.12.

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疾病・死亡率の季節変化に関する研究

時期の比較のみでなく,さらに日本全体について明治,

大正の過去にさかのぼり,あるいは近年の1970年代にま

で立ち返って,季節病カレンダーを長期にわたって考察

する事とした.

 1.2.日本の季節病カレソダーの変遷

 日本の季節病カレソダー(第2図)を明治時代から現

代に至る5時期に分けて,その歴史的変遷を簡単にたど

ってみると,明治,大正時代のカレソダーは多くの疾病

死亡が夏季に多発して“夏季集中”の姿を呈し,成人病

すら冬の他に夏にも多発期があった.しかし昭和の初期

にはだいぶその姿は変わり,成人病の夏の多発期は消失

する.戦後はまったく一変して,それまで夏季に多発を

示したものは赤痢と胃腸炎だけを残して,あとはぜんぶ

冬季に移動してしまった.・さらに,1960年代の姿は赤痢

だけが非常に低い死亡率で夏に残り,胃腸炎すら冬に移

って,50年代に出現したいわゆる“冬季集中”現象がい

っそう明確化したのである.

 一方,外国をみると,1950年代の西欧諸国のカレソダ

ーは,イギリスに代表されるようにぜんぶの疾病死亡が

冬季に集中し,夏は完全に空白で,胃腸炎すらその姿を

見出せない.アメリカでは,冬季集中型ではあっても西

欧ほど明白ではないし,・多発期の幅がかなり広い(これ

はアメリカは国土が広大でジさまざまな性格の地域が含。

まれているためであろうか,と1疑問のままにしておいた

のだが).さらにエジプトは夏にか奉りの死亡多発期が

あり,日本の1930年代の姿と類傷する.このようにみて

くると,日本の季節病カレンダーの年代的発展に現れる

傾向と,同’じ年代の世界を地理的に眺めたとき,発展途

上にある社会と進んだ社会とが同時に存在し,それらに

みられるカレンダーの傾向と一気候の相違など自然環

境のちがいを考慮してもなお一ある程度対応している

ことがわかる.1950年代に完全な冬季集中型のイギリス

を先進国型とすると,同時代に赤痢と胃腸炎の夏山のあ

る日本は中間型,夏季にさまざまな死亡の山のあるエジ

プトは新興国型とみなすことがでぎよう.

 ここで私は,文明の進歩一生活水準め向上,医療技

術の進歩,新薬の発見,十分ではないが医療制度の改善

といったことなど一とともに死亡の山は夏から冬に移

動する一カレンダーの姿の夏季集中型から冬季集中型

への変遷一という大胆な仮説をたててみた.

 1・3・仮説の再検討

 だが,その後1965~66年にかけて1年あまリニューヨ

ーク市に滞在し,コロンビア大学でアメリカのデータを

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一4  0  4 81216:~024喝C第3図 乳児死亡率(出生1,000につき)と月平均気

   温との関係.上:東京,下:ニューヨーク.

詳細に分析した結果,アメリカでは50年代にはすでに冬

季集中の段階はすぎて,死亡のパターソが緩慢化,“脱

季節化”してきてい胤このことは私の作成した1960年

代前半の月別乳児死亡率と気温との相関図(第3図)に

はっきり現れた.東京では気温の低い冬に極めて高い死

亡率を示す一方,ニューヨークでは1年を通じてほとん

ど気温に左右されず,帯状に分布するのである.冬山の

部分はすでに消滅したのか,ニューヨークでは見当たら

ない.冬山のことのみ念頭にあった私には,これ以上の

驚きはなかった.

 結論から先にいってしまえば,死亡の冬山を低下させ

た原因は,なんといっても強力な集中暖房である.二」

一ヨークの総死亡,乳児死亡の月別統計を年齢別に・あ

るいは年代的に詳しく分析し,その原因は何かと考え

た.そして高層アパートで冬を迎え,“ああこれだ”と

直観したのである.

 以前から私の研究に多大の関心を持ち,私をイリノイ

大学に呼んでくださった初代の国際生気象学会長,故フ

25

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麗6 疾病・死亡率の季節変化に関する研究

レデリック・サージェント〈F.Sargent皿)博士に私の

暖房説をお話ししたら,“そういわれればそうかもしれ

ない”とちょっと驚きの表情で答えられた.またNIH

(国立衛生研究所)のシュナイダーマン(Schneider』

man)博士も“それはおもしろい,気づかなかった”と

いわれた.一方,東ドイッのライドライター(脚.Lei-

dreiter)博士が,“Zeitschri庇f伽珂eteo雌ogie”誌に載

った論文一W.Leidreiter,Raumklirnatische Be(践n-

gtmgen wahrend der Heizperiode一の中で“暖房期

間中の室内気候の条件と,それの人間に及ぼす影響を我

々け観察したがジそり結果乳籾申4〉説一室内陵房設備

の勤巣により,特に1歳未満の乳児の死亡率と70歳以上

の死亡率は寒い季節の異常な山を示さない一の高い価

値を認めた”と記してある事を付記したい.

 これらのことから私は,最初たてた仮説にとらわれる

ことなく,あらたな観点からの再出発を試みたのであ

る.以下,それらについて説明を試みる.

 確かに季節病カレンダーは死亡の季節性,地域性,そ

の変遷のプ・セスを総合的にとらえるにはよいが,もっ

と綿密に季節パターソを追い,その原因の解明というこ

とになると必ずしも適当ではない.そこでしばらくカレ

シダーを離れて,1つ1つの死亡のパタ壷ンを追うとい

った方法をとった.しかし,まず最初に,総死亡と乳児

死亡から手をつけた.

 2.世界の死亡の季節パターン

 2.1.1960年代のパター・ン

 まず世界的規模で総死亡の季節バターンの地域的分布

をみるに,1960年代の前半でぱ,一高緯度に位置し極めて

寒冷な気候帯にある北欧や,寒暑の開きの大きいアメリ

カ,カナダに死亡の緩慢型がみられた(第4図).一

方,比較的温暖な地域としての日本(北海道は例外〉や

西欧,南欧の諸国に冬山の高い冬季集中型がみられた.

またドイツや東欧諸国,・ソ連邦などは両者の中間型を呈

している.季節変動の1つの目安となる変動係数(σ/m)

は北欧諸国は0・044↑》0・062,アメリカ,カナダはそれぞ

れ0.055,0.036といずれも小さい値であるが,冬季集中

型の諸国は0.15前後の高い値である.

 1920年代前半にも大部分の国は60年代前半と類似した

パターンを示すが,変動係数は一般にやや大きい.しか

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第4図 世界の.総死亡の季節パターンの地域的分布(1960隼代).

26 、天気”28.12.

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疾病・死亡率の季節変化に関する研究

し日本は冬山のほかに明白な夏山のある二峰型を示した

し,スペイソとイタリアも低い夏山がみられた.

 以上のように,冬季集中型は20年代より60年代と時の

進展につれて形成されたし,緩慢型もやはり60年代にな

って脱季節化が進んだことがわかる.60年代に脱季節化

の目立つ地域はいずれも冬季著しく低温となり,大規模

な暖房なしでは生活できないところである.かかる地域

では,強力な集中暖房や地域暖房の力によって本来の死

亡の冬山を低下させ,かなり早い時代から緩慢型が形成

されていたと考えられる.一方,冬季集中型の日本,イ

ギリス,イタリアなどは冬季も比較的温暖で集中暖房も

あまり行なわれていないため,冬季室内はかえって低温

に経過し,それが死亡の冬山低下をはばむ大きな原因と

なっている.

 日本,イギリス,アメリカの3国を比較した場合,ア

メリカは緩慢型を示すのに対し,日本とイギリスは類似

した冬季集中型である.しかし,両国の1960年代の型が

形成されるまでのプロセスは同じではない.死亡の季節

パターソを年代的にみてくると,北欧やアメリカの死亡

の緩慢型は冬季集中型からより進化していった形態と考

えられる.それゆえ低死亡率を伴う緩慢型が,いわば死

亡の理想的な形態とでもいえそうである.この意味では

北欧,ことにスウェーデソの形態が理想的である.この

形態の出現の背後には,大規模な暖房様式の効果があっ

た.しかし,それと同時に高度の医療技術はもちろんの

こと,医療,社会保障を確立した社会の制度が大きく関

与しよう.

 アメリカは,緩慢化は著明でも,死亡率自体はスウェ

ーデソの4.4に比して5.8とかなり開きがある.これに

はアメリガは複雑な人種問題なども存在し,白人に比し

て黒人の生活水準の低さが間接的に死亡現象にも反映さ

れたとみられる.

 2.2.アメリカの乳児の季節パターン,脱季節化現象

 死亡の緩慢化の著しいアメリカを気候区や地理区に分

けて死亡の季節パターソをみると著しい地域差が存在す

る.概して都市化の進んだ地域一北部・北東部・太平

洋岸など一では緩慢化が進み,南部のごとき後進的地

域では遅延している.また人種的には,ことに黒人の乳

児では死亡の冬山が目立ち,高死亡率を伴う冬季集中型

を呈する.これとは対象的に,寒冷な北部地域の乳児は

冬でも温暖な室内気候に保護されているためか,明白な

緩慢型がみられる.

 ついでアメリカとしては異色ともいうべき南部の乳児

1981年12月

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アメリカ南部諸州の乳児死亡の季節パ

ターン.

死亡率について詳細に述べてみよう.1960年代の乳児死

亡率の州別分布(第5図)をみるに,ケソタッキー,テ

ネシーのほかは25.0以下で比較的低いが,非白人は全体

に高く,特にミシシッピー,ノースカロライナ両州は出

生1,000人につき50.0以上である.季節パター一ンも白人

はかなりの緩慢型,非白人は著明な冬季集中型と,差が

みられる.そのうえ,州によっては小さな夏山’を示して

いる.変動係数も白人,非白人の差が大きく,一例とし

てミシシッピーは白人0.045に対して非白人は0.148,

アラバマは0.045に対して0・144,ノースカロライナは

0.069に対し0.192と,驚異的な開きがある.このよう

に,非白人の死亡に十分な後進的性格がうかがわれる.

 これらの原因について2,3考えてみよう.当地域,

なかでも農村部は教育程度も低く,衛生状態も極めて悪

い.すなわち,下水道の設備は乏しく,良質の飲料水も

容易には得られない現状だし,医療の諸施設も貧弱であ

る」こういった衛生状態の悪さが,貧困に起因する粗悪

な食事内容(低栄養)などとも呼応して,死亡率,特に

非白人の死亡率を高める大ぎな原因となっている.また

死亡の冬山一主としてインフルエンザ,肺炎・気管支

炎一一が高いのは,上記のような要因が強く響くが,そ

れと同時に,木造家屋で不十分な暖房下での冬季の生活

が大きく作用していると思われる.これらがアメリカの

他の地域に比して,死亡の緩慢化の形成を著しく遅延さ

せる.また,この傾向が非白人でも総死亡より乳児死亡

により顕著にでているのは,乳児は悪い環境を敏感に反

映するためと考えられる.一

27

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828 疾病・死亡率の季節変化に関する研究

 もっとも,冬山低下を遅延させ,緩慢化をはばむもの

は,根源的には当地域の社会・経済的条件に求めるべき

であろう.

 2,3・ニューヨークの季節パターン

 アメリカの代表的都市としてのニューヨーク市におけ

る乳児死亡の緩慢化の過程をみるに,1930年代から60年

代にかけて変動は次第に縮小していく.また総死亡にも

その関係が示される.

 ここでニューヨーク市の死亡パターンにみられる緩慢

化の原因を2,3考えてみたい.同市では,1900~10年

代には冬山のほかに緩やかな夏山も存在した.それが,

食品衛生の改善一乳児の場合は特にパスッール氏滅菌

法によるミルクの出現一電気冷蔵庫の普及などによっ

て急速に低下したといわれる.この夏山低下のあと1930

年代の,相対的に冬山が目立つ時期があるが,これも50

年代,60年代と緩慢化してきた.その原因は,抗生物質

などの化学療法の出現もあるが,冬季の強力な集中暖

房の影響は無視できない.同市ではすでに,1920年代に

は集中暖房が普及し始めていた.現在では,住宅に関す

るニューヨーク市条例で“毎年10月1日から3月までの

間,日中外気温が130C以下のときは室温を最低20。Cに

保つこと,夜間外気温50C以下のときは室温13。C以上

に保つこと,年間朝6時から真夜中まで温水給水を行う

こと”が決められている.

 ところで,集中暖房が死亡の冬山を低下させた1つの

証拠として,外出の必要のない乳児に特に緩慢化が著し

いという事実がみられる.ニューヨーク市はもちろんだ

が,アメリカの中で最も寒冷な地域の1つとしての大

平原北部地区一ビスマルクでは1月の月平均気温

一13。C一は乳児のパターンはほとんど1直線を示す

のに,脳卒中,心臓病はまだ冬季集中を脱しぎれない.

冬季,老人が雪かき(スノー・シャベリング)作業など

で,心臓発作を起こして死に至るケースも少なくないと

いう報告にも接した.いずれにしろ,人工気候環境の重

要さを痛感する.

 3。日本の1970年代の季節パターン

 3.1.夏山の出現

 最近まで典型的な冬季集中型を呈した日本の死亡の季

節パターンは,1970年代に近づいて著しく変形し,こと

に乳児死亡は死亡率低下とともに冬山も消え出し,脱季

節化傾向を帯びてきた.総死亡でみても,高年齢層の脳

卒中でみても,ごくわずかではあるが脱季節化のきざし

28

第6図

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日本における肺炎・気管支炎(1歳未満)死亡率の年次変化.

を呈してきた.1歳未満の乳児死亡パターソは30~40年

前には死亡率が極めて高く,そのうえ,夏冬2つの山の

ある2峰型を呈していた.1950年代,60年代は著明な冬

季集中型を示したが・死亡率の激減した60年代後半から

冬山は急激に下がり,一方夏山が相対的に目立ち出し,

70年代になると夏山,冬山は〃まぼ等しくなり,現象形態

としては再び2峰型に立ち戻った.しかし,以前のそれ

と比較して死亡率自体は約1/5に低下しているし,また

2峰型の質的内容もまったく異なったものとなった.こ

のように70年代になって著しい緩慢化を呈してきたが,.』

それはかつて冬季集中の形成にあずかった諸要因,すな

わち一口にいって医療技術の進歩,新薬の発見,食生活

の向上といったものだけではとうてい説明できない.私

はその原因を近年急速にたかまった石油ストーブなどの

強力な暖房の普及,その結果としての温暖な人工気候環

境の効果と考える.高年齢層の死亡より乳児死亡に,よ

、天気”28.12.一

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疾病・死亡率の季節変化に関する研究               829

り緩慢化傾向の強いのは,アメリカの例のように乳児は

外出の必要もなく,暖かい環境下で生活でぎるためであ

ろう.                      一

 ついで乳児死亡にみられる夏山出現という新しい現象

をより明白に把握するため,肺炎・気管支炎死亡に例を

とって考えてみたい.同疾患は長期にわたり顕著な冬山

を呈したが,1968年頃より冬山は急速に低下し,72~73

年には夏山と等しくなった.つまり第6図の「ように,低

死亡率の冬山が同じ高さの夏山と共存する形態となっ

た.これは,いわば人力で征服可能な部分は大部分征服

し尽くし,それでもなお残存するもののようである.た

とえば,先天的な虚弱体質者といったものかもしれな

い.これらが夏の暑さ,冬の寒さといった本来のきびし

い気候環境の影響をそのまま反映しているとも考えられ

る.この姿は高度の医療技術,あるいは衣食住を含む改

善された生活条件をもってしても,容易には征服しえな

い人間の本来的な疾病死亡像かもしれない.なお本形態

は,都市化の進んだ地域により早く出現しているのは興

味深い事実である.

 3.2.1970年代の季節病カレソダーと未来像

記号表(各図共通)

 W:百日咳

 1:流行性感冒

PB:肺炎,気管支炎 M:麻 疹

TY:腸チフス D:赤 痢

 G:胃腸炎

T:結 核B:脚 気H:心臓病A:脳卒中N:腎臓炎C:ガ ンS:老 衰

*死亡数の少ないため多発期確認できず**季節変化なし   ***死亡報告なし

 ついで,上記のように死亡の季節パターγに著レい変

形の出現した1970年代り季節病カレソダーを作成し,以

前のカレソダーと比較検討してみる・第 7屠の1969~73

年のカレンダーには心疾患,脳血管疾患,癌などの成人

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第7図1970年代の日本の季節病カレンダr一.

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第8図 季節病カレンダーの年代的変遷(モデル)(東京).

1981年12月 29

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第9図 疾病死亡の時系列モデル.

    一 冬季示数    …… 夏季示数   A:抗生物質導入期

   B:石油暖房導入期

病は死亡率が増大してきたが,他の疾患は著しく低下し

てきたことが示される.また,カレンダーの形態は一応

冬季集中型(癌を除く)であるが,死亡率低下に加え季

節変動自体が一体に緩慢化してきたので,冬季集中も

1950年代,60年代程著明でない.さらに胃腸炎が極めて

低い死亡率で,冬のほか夏(8月)にもごく短い多発期

を示しているのは注目する必要がある.胃腸炎は50年代

前半において,東京で夏冬2つの多発期があり(この時

点の夏山は夏より冬に移りゆく名残りと判断した),そ

の後夏山が消えて冬山型になるが,70年代になって再び

2峰型となったのである.この2峰型も地域別にみれ

ば,都市化の進んだ地域によ’り明白である.

 第8図は,わが国(東京都)の1900年代から年次別の

モデル化したカレンダーである.1900~10年代の夏季集

中型から50~60年代の冬季集中型(赤痢は夏,癌は、秋)

に移り,さらに70年代は冬季集中型ではあっても,その

内容はだいぶ変わってきたことがうかがわれる.すなわ

ち,死亡数が減少して統計処理のできないものが増えた

50

し,そのうえ胃腸炎は再び冬のほか夏の多発期を示し,

癌は死亡率はたかまっても季節性が減少しているので,

カレソダーには夏から初秋にかけての長い多発期として

示される.一方,ややだいたんな未来像としては,胃腸

炎のみでなく肺炎・気管支炎,結核がごく低い死亡率で

夏冬2つの多発期を示すようになろう.2つの多発期の

ある疾患が増え,現象形態としては初期のそれとやや似

てくるが,成人病を除いて死亡率は低下するし,その質

的内容もまったく異なったものとなろう.

 ついで季節病カレンダーの変形を明白に総合的にとら

えることを目的として,疾病死亡ごとの季節パターンの

モデル化を試みてみた.その1つとしての死亡の夏季示

数,冬季示数の動きを示す時系列的モデルーαモデ

ル,βモデルーをみてみよう(第9図).αモデルに

は胃腸炎,結核などが,βモデルには脳血管疾患,心疾

患,肺炎などが含まれる.αモデルの夏冬両示数のク・

スする1952~55年は抗生物質の導入期に,また両モデル

で両示数の接近する時点は石油ストーブなど強力な暖房

の普及,温暖な人工気候環境が形成され始めた1967~68

年の時期に相当する.この頃,ことに肺炎,胃腸炎,結

核などの死亡率の激減が目立つ.

 4.アメリカ・イギリスのカレンダーと日本のカレン

  ダーの比較

 ついで日本のカレンダーと比較するために,アメリカ

およびイギリスの季節病カレンダーをみてみよう.アメ

リカの1950年代(1953~57年)のカレンダーは,すべて

の死亡の多発期の幅が広く,そのため冬季集中傾向があ

まりはっきりと出ない.それはいいかえれば,死亡の

季節変動が極めて緩慢なことを意味しているのである.

死亡率の高いのは心臓病,脳卒中,癌の成人病である.

1970年代(1967~71年)は一体に死亡率は低下している

といえるが,しかし50年代と比較した場合,日本のよう

な急激な変化は認めることができない.これはいいかえ

れば,すでに早い時期に死亡の季節変動が安定してしま

っていることを意味する.

 イギリスのカレンダーは,1928~29年は腸チフスと胃

腸炎だけが夏にあるが,そのほかは一体に高い死亡率で

冬季集中を示している.この形態は,約20年経った日本

の1950年代のカレソダーの姿とよく似ているところから

して,日本のカレンダーより20年以上は先行していると

考えることもできよう.また,1950年代(1952~56年)

と70年代(1969~73年)のカレンダーにはほとんど変化

臓天気μ28.12.

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疾病・死亡率の季節変化に関する研究 831

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アメリカ(上)及びイギリス(下)の季節病カレンダーの年代的変遷.

がみられない.成人病はやや低下したようにみえるが,

肺炎・気管支炎は依然として低下せず冬季集中も著し

く,日本,アメリカの低死亡率とは対照的である.

 このように,日本,イギリス,アメリカ3国の季節病

1981年12月

カレソダーを比較してみても,また総死亡の季節パター

ンの比較からみても,日本の死亡の季節パターソの年代

的移り変わりというものはまったく劇的であった.特に

1970年代にちかづいてからは,アメリカより25~30年は

31

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832 疾病・死亡率の季節変化に関する研究

遅れをとったとはいえ,死亡の季節パターソに一特に

乳児の一緩慢化のきざしが出てきた事実は特筆すべき

ことである.それは日本のいわゆる“高度成長”につれ

ての急激な都市化,工業化に伴うさまざまな要因が作用

したものと考えられる.それにはまず,すでにふれたよ

うに石油ストーブなどの強力暖房の普及が考えられる.

その結果,冬でも温暖な人工気候環境が作り出され,そ

れが容易に低下しなかった死亡の冬山を下げ,全体とし

ての季節パターンを緩慢化の方向にもっていったのであ

る.これは,アメリカや北欧のパターンに接近したとい

っても差し支えない.それは極端にいえば,石油文明の

産物と考えられないこともない.もちろん,死亡を低下

させ緩慢化を招来した要因は,医薬の進歩,食生活の改

善なども大きいことは確かである.しかし,強力暖房の

効果がなくては緩慢型の出現はむずかしいということ

は,私のこれまでの研究から疑う余地はないと思う.な

お1950年代のカレソダーの変形は抗生物質の出現の効果

を見事に反映していると考えられる.

 試みに,日本,イギリス,アメリカの3国の1961年か

ら1971年に至る10年間のエネルギー消費量(エネルギー

庁の資料より筆者の計算した示数)をみると極めて興味

深い事実が読み取れる.すなわち,イギリスは1961年を

100とすると各年次ともほとんど増加はみられず,71年

もわずか110にとどまる.アメリカはイギリスよりやや

増加傾向にあるが,それにしても71年はわずか150であ

る.一方,日本は66,67年頃より著しい増加傾向をみ

せ,71年は61年の3倍ちかい280という高い値を示す.

日本のこの増加傾向は,乳児死亡率の低下傾向と極めて

よく一致している.

 一一方,死亡の脱季節化が進行する背後には,日本の高

度の工業化と都市化の進行という事実が確かにあった.

しかし,そのマイナス面として日本の随所に環境汚染や

公害病が増加する結果となった.こうなると,日本の死

亡の季節パターンが短期に改善に向かったことは喜ばし

いが,広い視野で社会の疾病死亡像のあり方を考えてみ

るとき,決して楽観はできない.こういった2つの矛盾

をいかに総合的立場で解決させるかが,今後に残された

課題であろう.

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