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1 静電相互作用・ ファンデルワールス力 静電相互作用・ 静電相互作用・ ファンデルワールス力 ファンデルワールス力 物理化学Ⅰ 62018/07/06 医薬保健研究域薬学系 医薬保健研究域薬学系 活性相関物理化学 活性相関物理化学 髙橋 髙橋 広夫 広夫

物理化学Ⅰ 第06回 2018P - Takahashi Lab...物理化学Ⅰ第6回2018/07/06 医薬保健研究域薬学系 活性相関物理化学 髙橋広夫 2 講義スケジュール 6/22(金)

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  • 1

    静電相互作用・ファンデルワールス力

    静電相互作用・静電相互作用・ファンデルワールス力ファンデルワールス力

    物理化学Ⅰ 第6回 2018/07/06

    医薬保健研究域薬学系医薬保健研究域薬学系

    活性相関物理化学活性相関物理化学

    髙橋髙橋 広夫広夫

  • 2

    講義スケジュール

    6/22(6/22(金金) 08:45) 08:45--10:15 10:15 原子価結合法と原子価結合法と混成軌道混成軌道

    6/15(6/15(金金) 08:45) 08:45--10:15 10:15 シュレーディンガー方程式シュレーディンガー方程式とと量子数量子数

    7/05(7/05(木木)) 08:4508:45--10:15 10:15 分子軌道法分子軌道法

    6/14(6/14(木木) 08:45) 08:45--10:15 10:15 波と粒子の二重性波と粒子の二重性・・前期量子論前期量子論

    6/21(6/21(木木)) 08:4508:45--10:15 10:15 シュレーディンガー方程式と化学結合シュレーディンガー方程式と化学結合

    7/06(7/06(金金)) 08:4508:45--10:15 10:15 静電相互作用・ファンデルワールス力静電相互作用・ファンデルワールス力 7/14(7/14(土土)) 10:3010:30--12:0012:00 疎水性効果疎水性効果・電磁波・電磁波 7/14(7/14(土土)) 113:003:00--14:30 14:30 講義講義((前半前半))++試験試験((後半後半))

    6/286/28--29 29 は休講は休講

    7/06(7/06(金金)) 08:4508:45--10:15 10:15 静電相互作用・ファンデルワールス力静電相互作用・ファンデルワールス力

  • 3

    本日のお題

    • 分子間相互作用イオン化エネルギー

    電子親和力

    極性(双極子)

    電気陰性度

    ファンデルワールス力

    水素結合

    電荷移動相互作用

    • 分子軌道法 (復習)

  • 4

    電気的な相互作用は全て静電相互作用だが、イオン間相互作用を狭い意味で静電相互作用 と呼ぶことがある

    分子間相互作用-イオン間相互作用

    221

    rqq

    kF

    rqq

    kU 21

    R

    O

    O-

    +H3N R

    相互作用の力は距離の2乗に反比例し、

    エネルギーは距離に反比例する

  • 5

    第一イオン化エネルギー

    イオン間相互作用-イオン化エネルギー

    ・・・ 原子から電子を1個取り除く反応A → A+ + e− に必要なエネルギー。

    すなわち、第一イオン化エネルギーが大きい原子ほど電子を1個取り除くのにエネルギーを必要とする (=陽イオンになりにくい)

    取り除かれるのは典型元素では最外殻の電子

    → この電子を取り除くのに必要なエネルギーは、 有効核電荷 によって決まる

    例)

    3+

    --

    Li

    9+

    ---

    --

    F

    同一周期なら、内殻(この場合K殻)の電子数は同じ= LiとFで 遮蔽効果はほぼ同じ

    一方、原子核の電荷は原子番号が大きいほど大きい

    遮蔽効果がほぼ同じ ・ 原子核の電荷は大きい

    →同一周期であれば 原子番号が大きいほど有効核電荷が大きい

    = 最外殻電子が強く引きつけられている = イオン化エネルギーが大きい

    ∴ 同一周期では、周期表で右に行くほどイオン化エネルギーが大きい (例外あり)

  • 6

    イオン間相互作用-イオン化エネルギー

    また、主量子数nが大きいほど軌道のエネルギーが高い

    → nが大きい軌道の電子は不安定

    1s

    2s

    1s

    2s

    3s

    2p 2p 2p

    Na Li

    ナトリウムでは3sから電子をとればよい

    =同族元素であれば、電子が多い(原子番号が大きい)ほど

    ∴ 同族元素では周期表で下に行くほどイオン化エネルギーが小さい (例外あり)

    イオン化エネルギーが小さくてすむ

    リチウムでは2sから電子をとらなければならない

  • 7

    第一イオン化エネルギー

    N

    O

    イオン間相互作用-イオン化エネルギー

    同一の軌道に電子が入ることによる反発

    →その分電子が外れやすくなっている

  • 8

    イオン間相互作用-電子親和力

    ・・ 原子に電子を1個付加して陰イオンにするときに放出されるエネルギー

    A + e− → A−

    「放出するエネルギー」なので、

    大きいほどエネルギーが減る(=陰イオンになりやすい)。

    イオン化エネルギーと定義の仕方が異なるので注意が必要。

    電子親和力は、 原子核が電子を引きつける力に依存する

    周期表で右に行くほど電子親和力が大きい(例外あり、希ガスは除く)

    希ガスの電子親和力が小さい理由:

    電子が入るのは、

    ・ 電子が1つも入っていない軌道のうち、最もエネルギーが低い 軌道・ 電子が1つしか入っていない 軌道

    のどちらかである。 次のスライドへつづく

  • 9

    イオン間相互作用

    1s2s

    2p 2p2p

    フッ素

    9+

    ---

    ---

    1s2s

    3s

    2p 2p2p

    ネオン

    10+

    ---

    --

    --

    → 電子を引きつける力が著しく低下する

    - 希ガスの電子親和力が小さい理由

    希ガスが陰イオンになるには、

    陰イオンになるには

    最外殻の外側のs軌道に電子が入らなければならない→ フッ素では遮蔽に寄与していなかったL殻の電子が、ネオンでは遮蔽に働く

    ( 遮蔽電子が一気に8個増える )

  • 10

    原子Aと原子Bが分子A2、B2、ABを作るとき

    分子中の原子が電子を引き付ける傾向

    A-Aの結合エネルギー:DAA

    B-Bの結合エネルギー:DBB

    A-Bの結合エネルギー:DAB

    とする

    A-Bが完全な共有結合だとすると、

    となるはず

    実際のエネルギーとの差をΔEとすると

    電気陰性度

    いくつか定義があるが、よく使われるのはポーリングの定義

    それぞれ実験的に算出

    BBAAAB DDD 21Ideal

    BBAAAB DDDE 21Real

    Δ

    エネルギーはDAA、DBBと表せて

  • 11

    元素A、Bの持っている「 電子を偏らせる性質の差 」によって

    となるようにχA、χBを求める

    このχA、χBを 電気陰性度(Electronegativity) という

    つまり が成り立つ

    基準値:炭素の電気陰性度を2.5とする(次スライド参照)

    E = a(A − B)2

    電気陰性度

    221

    BABBAAAB aDDD

    補足: ポーリングの定義では、希ガスのうち分子をほとんど作らないヘリウム・ネオン・アルゴンについては電気陰性度を算出できない。

    周期表の右上ほど高い(希ガスは除く)

    結合エネルギーにズレが生じることから

  • 12

    電気陰性度

  • 13

    電気陰性度の異なる原子同士が結合すると

    電気陰性度: H < O

    酸素の方が電子を引き付ける傾向が強い

    分子内の電気的な偏り を 極性(polar) という

    極性

    OH H

    δ+ δ+

    δ-

    分子内の

    これを 分極(polarization) と呼ぶ

    電子の分布に偏り(正負の電荷が分離) を生じる

  • 14

    正と負の電荷が対となって存在する状態を 双極子 (Dipole) とよぶ

    H2Oのように常に双極子である続ける場合を 永久双極子 という

    (単位: Cm クーロン・メートル)

    分子では

    電荷:陽子や電子(1.60 x 10-19 C)

    距離:Å単位(1 x 10-10 m)

    これを単純にかけても1.6 × 10−29 Cm

    このμを 双極子モーメント(Dipole moment ) という

    μ = Qr+Q −Q

    r

    双極子

  • 15

    双極子

    注 炭素の電気陰性度:2.5 水素の電気陰性度:2.1

    ∴δ+ δ−

    ただし、電気陰性度はほとんど差がない

    → C-H結合の極性はあまり考えない(慣例)

    単位として D(デバイ) を使用することが多い

    1D = 3.34 x 10-30 Cm厳密には

    (1/299792458) × 10−21 CmCGS静電単位系が定義の基

    1センチの間隔に置かれた等しい電荷間に働く力が1dynのとき、

    1dyn: 質量1グラム (g) の物体に働くとき、その方向に1センチメートル毎秒毎秒(cm/s2)の加速度を与える力 という定義。

    電荷の大きさをスタットクーロン(statcoulomb)とする、 という定義。

  • 16

    電荷を持たない粒子間に働く力の総称を

    ・ 双極子間相互作用(Dipole-dipole interactions) :

    ・ 分散力(dispersion force) :

    ・ 双極子ー誘起双極子間相互作用 :

    双極子ー双極子間で働く力

    双極子と 双極子によって誘起された双極子 間で働く力

    無極性分子でも働く力

    ファンデルワールス力

    ファンデルワールス力(van der Waals force) とよぶ

    (dipole-induced-dipole interactions)

  • 17

    双極子同士が引きあったり反発しあったり する

    双極子間の距離 rとすると

    電気陰性度の異なる原子が結合 → 極性 → 双極子

    双極子間相互作用

    δ+ δ − δ + δ −

    溶液中の双極子相互作用によるエネルギーは、

    (結晶中では rが固定されるので 1/r3に反比例 する)

    δ+ δ−アセトンの例 δ+ δ−

    1/r6に反比例

    双極子が生まれるのはどういうときか?

    する

    アセトン分子間には引力が働く

  • 18

    中性無極性分子であっても、引力が生じる

    1/r6に反比例

    → 少し離れると急激に減少

    分散力

    水素2分子の例

    + + ––

    H2

    + + ––

    H2

    ある一瞬

    + +

    ––

    + + ––

    + +

    ––

    + +–

    δ+ δ−負電荷が引き寄せ

    られる(誘起双極子)(静電誘導)

    + +

    ––

    + +–

    引力

    δ+ δ− δ+ δ−

    分散力によるエネルギーは、 する

  • 19

    電気陰性度の大きいN、O、Fに結合した水素原子と、他のN、O、Fとの間に働く相互作用

    古典的定義:

    水素より電気陰性度の高い原子Xと結合した水素と、他の原子との引力的な相互作用

    現在:

    水素結合 (hydrogen bond)

    OH

    OH

    引力

    引力

    δ+

    δ−

    δ+ δ−

    δ−

    δ+

  • 20

    → 水素結合は、共有結合性をもっている

    ・ 単なる双極子相互作用より強い ・ 方向性がある

    ・ 静電相互作用

    距離のみに依存

    ・ 共有結合角度も決まっている → 方向性がある

    水素結合

    O

    H

    O

    H

    O

    H

    O

    H

    F = k q1 q2

    r2+ -

    なぜ方向性があるのか?

  • 21

    分子間を電子が移動することによって生じる相互作用

    A: 電子供与体

    電子供与体のHOMO から

    HOMOーLUMOのエネルギー差が小さい方が良い

    電子供与体

    HOMO LUMO

    電気電導性が生じたり、吸収帯の移動が起こったりする

    電荷移動相互作用

    A + B → A+ – B A + B → A+ + B− B: 電子受容体

    電荷移動相互作用 (Charge-transfer interaction) とよぶ

    電子受容体のLUMO へ

    と電子が移動する事が多い

    電子受容体