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2020/4/21 1 中枢神経系の疾患 中枢神経系の疾患 II ・非化膿性脳炎の病理学的特徴 ・ウイルス感染症 ・中枢神経系の腫瘍 非化膿性脳炎 単核細胞(リンパ球、形質細胞、単球)を中心とする 囲管性(血管周囲性)炎症細胞浸潤 Perivascular cuffing 神経細胞の壊死とこれを貪食する小膠細胞の集簇(神 経食現象)Neuronophagy 小膠細胞・星状膠細胞からなる小結節形成 Glial nodule 星状膠細胞のびまん性増殖(星状膠細胞増殖) Astrogliosis

中枢神経系の疾患 - 東京大学NMEの発生が特定の小型犬種に限定されていることより、その病理 発生には免疫系に関わる遺伝的異常が関与する可能性が考えられる。パグ犬では特定のMHC型(白血球抗原class

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1

中枢神経系の疾患

中枢神経系の疾患 II

・非化膿性脳炎の病理学的特徴

・ウイルス感染症

・中枢神経系の腫瘍

非化膿性脳炎

✓ 単核細胞(リンパ球、形質細胞、単球)を中心とする囲管性(血管周囲性)炎症細胞浸潤 Perivascular cuffing

✓ 神経細胞の壊死とこれを貪食する小膠細胞の集簇(神経食現象)Neuronophagy

✓ 小膠細胞・星状膠細胞からなる小結節形成 Glial nodule

✓ 星状膠細胞のびまん性増殖(星状膠細胞増殖)Astrogliosis

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2

各動物種のウイルス性脳炎

・ウシ:ウシ伝染性鼻気管炎(IBR)、悪性カタル熱、アカバネ病

・ウマ:日本脳炎、アメリカウマ脳脊髄炎(WEE, EEE)、ウマ伝染性貧血、

ボルナ病(多種動物に感染?)、ウマヘルペス1・4型脳脊髄症

・ブタ:オーエスキー病、テッシェン病、血球凝集性脳脊髄炎ウイルス感 染症、

豚熱(豚コレラ)

・ヒツジ:羊跳躍病(ダニ媒介性脳炎)、ビスナ病

・ヤギ:ヤギ関節炎脳脊髄炎症候群(CAE)

・イヌ:イヌジステンパー、ヘルペス脳炎、狂犬病

・ネコ:伝染性腹膜炎(FIP)、胎生期のパルボウイルス感染、ボルナ病?

・トリ:鶏脳脊髄炎(AE)、ニューカスル病、鶏インフルエンザ、マレック病

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ウイルス性中枢疾患

①ウシ

牛の大脳皮質

非化膿性壊死性皮質脳炎(IBR)

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IBR感染牛の神経細胞核内封入体

悪性カタル熱

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悪性カタル熱(心臓の血管炎)

ウイルス性中枢疾患

②ウマ

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ウマヘルペス1型脳脊髄症

ウマヘルペス1型脳脊髄症における血管炎

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アメリカ馬脳炎(EEE)

馬の中脳

好中球による神経食現象

アメリカ馬脳炎(EEE)

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ウイルス性中枢疾患

③ブタ

Porcine: Hog chlorella , moderate gliosis, Case in Philippine

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Porcine: Hog chlorella, Vascular change with mononuclear cell accumulation,

Case in Philippine

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ウイルス性中枢疾患

④ヤギ・ヒツジ

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ヤギのCAE(ヒツジのビスナ)

ウイルス性中枢疾患

⑥イヌ

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イヌジステンパー

イヌジステンパー白質脳炎

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イヌジステンパー白質脳炎

イヌジステンパー皮質脳炎

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CDV-NP IHC

ウイルス性中枢疾患

⑥ネコ

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MRI 田村先生(たむら動物病院・広島県)原図

動物:ネコ、ベンガル猫、第3脳室HE像

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化膿性肉芽腫性髄膜脳炎(ネコ)

FIP(ネコ)

ウイルス性中枢疾患

⑦ トリ

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Avian: Avian encephalitis (AE), non-suppurative inflammatory changes with

central chromatolysis, Broiler chicken

Avian: Avian encephalitis (AE), central chromatolysis of neuronal cells,

Broiler chicken

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ウイルス性中枢疾患

⑤動物共通の疾患

狂犬病

ウシのRabies 中脳

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ウシのRabies 海馬錐体細胞層

大脳皮質

小脳プルキンエ細胞層

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犬の非感染性脳脊髄炎

イヌ:壊死性髄膜脳脊髄炎(NME皮質型、白質型、その他)

イヌ:肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)

T1 T2

パグ犬の壊死性脳炎(亜急性経過例)のMRI像

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イヌの壊死性髄膜脳炎の固定後の大脳割面

イヌの壊死性髄膜脳炎の髄膜から大脳表層部における層状の炎症反応

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White matter

Gray matter

イヌの壊死性髄膜脳炎の大脳皮質・白質境界部の炎症反応

イヌの壊死性髄膜脳炎(慢性経過例)の固定後の大脳割面

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イヌの壊死性髄膜脳炎(慢性経過例)の大脳皮質の広範な壊死巣

C: Confocal imaging analysis of double-labeling FA assay Yellow:common

sites Red: GFAP specific Green: auto-antibody specific

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自己免疫応答が生じる根本的な原因については未解明であるが、NMEの発生が特定の小型犬種に限定されていることより、その病理発生には免疫系に関わる遺伝的異常が関与する可能性が考えられる。

パグ犬では特定のMHC型(白血球抗原class II)が存在することが近年明らかにされた。

MRIで左右大脳白質と視床に比較的辺縁明瞭な広範囲のT2高信号病変。

イヌ、ヨークシャーテリア

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イヌ、ヨークシャーテリア、固定後の肉眼所見

大脳の病理組織所見LFB-HE染色。大脳白質の広範な壊死巣形成

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動物神経系腫瘍の大分類

1.神経上皮組織由来腫瘍

(星状膠細胞、希突起膠細胞、上衣細胞、脈絡膜上皮、神経細胞、松果体実質細胞)

2.髄膜腫瘍

(髄膜上皮細胞、非髄膜上皮・間葉系細胞)

3.リンパ腫及び造血器系腫瘍

(リンパ球、組織球、小膠細胞、その他造血細胞)

4.トルコ鞍部に発生する腫瘍

5.その他の原発腫瘍および嚢胞

6.転移性腫瘍

7.特定部位腫瘍の神経系への局所伸展

8.末梢神経系腫瘍

http://www.okano-lab.com/okanolab

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神経上皮組織由来腫瘍の中分類

1.神経上皮組織由来腫瘍

1.1 星状膠細胞性腫瘍 Astrocytic tumors

1.2 希突起膠細胞性腫瘍 Oligodendroglial tumors

1.3 その他の膠細胞腫 Other gliomas

1.4 上衣細胞性腫瘍 Ependymal tumors

1.5 脈絡膜上皮腫瘍 Choroid plexus tumors

1.6 神経細胞性/神経-膠細胞混合腫瘍 Neuronal/Neuronal-glial tumors

1.7 胚細胞性腫瘍 Embryonal tumors

1.8 松果体実質腫瘍 Pineal parenchymal tumors

1.1 星状膠細胞性腫瘍 Astrocytic tumors

発生場所、形態、生物学的動向は様々。比較的イヌで発生し、ネコ、ウシでも認められる。

腫瘍細胞の分化度や悪性度に応じて3分類

1.1.1 Low grade (高分化型)星状膠細胞腫

1.1.2. Medium grade(退形成・異型)星状膠細胞腫

1.1.3. High grade 星状膠細胞腫(膠芽腫)

1.神経上皮組織由来腫瘍

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1.1.1 Low grade(高分化型)星状膠細胞腫

高度に分化した星状膠細胞から構成されるび漫性浸潤を示す膠細胞腫。

細胞形態は様々。核分裂像、壊死巣、血管増殖は乏しい。

形態的亜型を3分類

1.1.1.1. Fibrillary astrocytoma

1.1.1.2. Protoplasmic astrocytoma

1.1.1.3. Gemistocytic astrocytoma

*ヒトの亜型のうち、Pilocytic*, pleomorphic

xanthoastrocytoma, subependymal giant cell

astrocytomaは動物では確認されていないので分類していない(*近年イヌの報告例あり)。

1.1.1.1. Fibrillary astrocytoma

疎に配列した線維性腫瘍細胞。細胞密度は低い。腫瘍細胞・突起は大量のGFAPを含む。

1.1.1.2. Protoplasmic astrocytoma

細胞境界が不明瞭な小型円形細胞の腫瘍。微小のう胞形成(変性)を認める。GFAP量は少ない。

1.1.1.3. Gemistocytic astrocytoma

大型、不整形で豊富な好酸性細胞質を有する細胞。短く腫大した細胞質突起を有し、GFAPを含む。

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1.1.2. Medium grade(退形成・異型)星状膠細胞腫

細胞密度の増加、多形(矢印)、核異型、および核分裂増加(矢頭)などの退形成(異型)を有する膠細胞腫。

部分的には、膠芽腫との区別が困難であるが、壊死巣や血管増殖等の所見に乏しい。

1.1.3 High grade星状膠細胞腫(膠芽腫)

星状膠細胞腫における最も悪性型の腫瘍であり、。 Midium-grade星状膠細胞腫で認められる異型(退形成)所見に加え、血管増殖あるいは壊死巣形成を伴う。一般的なものはGlioblastoma multiformeなどであるが、ヒト腫瘍で見られる亜型は特に設けていない。

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膠芽腫glioblastoma

膠芽腫の腫瘍細胞は多形性で、核分裂像が多く、偽柵状配列を伴う壊死巣形成や血管新生像が豊富である。免疫組織化学法により、GFA陽性像が観察されるがその程度は症例により様々で、極めて陽性細胞が少ない場合もある。

1.2 希突起膠細胞性腫瘍 oligodendroglial tumors

比較的均一な形態の腫瘍性希突起膠細胞の増殖から構成。

腫瘍細胞の分化度や悪性度に応じて2分類

1.2.1 希突起膠細胞腫 oligodendroglioma

1.2.2 退形成(悪性)希突起膠細胞腫Anaplastic/malignant

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1.2.1 希突起膠細胞腫 oligodendroglioma

特徴的な蜂巣状構造を形成する腫瘍(希突起膠細胞腫の細胞形態は人工産物と考えられる)。

1.2.1 退形成性(悪性)希突起膠細胞腫

Anaplastic (Malignant) oligodendroglioma

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1.2.1 退形成性(悪性)希突起膠細胞腫

Anaplastic (Malignant) oligodendroglioma

異型細胞、核分裂像、及び新生血管が増加し、髄膜播種などの進展病巣を形成する。

1.3 その他の膠細胞腫瘍Other gliomas

1.3.1 混合膠腫Mixed glioma (Oligo-astrocytoma)

腫瘍性の希突起膠細胞と星状膠細胞が混在する膠腫。

1.3.2 膠肉腫 Gliosarcoma

線維肉腫や血管肉腫に類似する肉腫成分を有する高度異形型の膠腫。

1.3.3 大脳膠腫症 Gliomatosis cerebri

大脳や脊髄の各所で広範囲に広がるび漫性膠腫。後述のMicrogliomatosis と重複する症例あり。

1.3.4 海綿芽腫 Spongioblastoma

単極性ないし双極性の小型グリア細胞からなる稀な腫瘍で、腫瘍細胞は柵状配列を示す。PNETsとの鑑別が困難。

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1.4 上衣細胞性腫瘍 Ependymal tumors

1.4.1 上衣腫 Ependymoma

1.4.2 退形成(悪性)上衣腫Anaplastic (malignant) ependymoma

1.5 脈絡膜腫瘍 Choroid plexus tumors

1.5.1 脈絡膜乳頭腫 Choroid plexus papilloma

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1.5.2 脈絡膜癌 Choroid plexus carcinoma

脈絡膜癌の脳実質への浸潤と組織反応

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1.6 神経細胞及び神経・膠細胞性腫瘍

Neuronal and Mixed Neuronal-glial tumors

1.6.1 神経節細胞腫 Gangliocytoma

分化した神経細胞から構成される腫瘍。

1.6.2 神経節膠腫 Ganglioglioma

腫瘍性神経細胞と神経膠細胞から構成される良性腫瘍。

1.6.3 嗅神経芽腫 Olfactory neuroblastoma

鼻粘膜に発生する神経芽細胞か構成される腫瘍で、

鼻腔神経上皮の前駆細胞に由来する腫瘍。

1.6.1 神経節細胞腫 Gangliocytoma

1.6.2 神経節膠腫 Ganglioglioma

視床に発生した場合、Hypothalamic hamartomasとの区別?

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1.6.3 嗅神経芽腫 Olfactory neuroblastoma

1.7 胚細胞性腫瘍 Embryonal tumors

1.7.1 未分化神経外胚葉性腫瘍 Primitive Neuroectodermal tumor(PNETs)

神経細胞、膠細胞、上衣細胞、及び間葉細胞等の多方向性分化能を有す幹細胞に由来する小型細胞からなる腫瘍。

1.7.2 神経芽細胞腫瘍 Neuroblastoma

神経系への分化を示す胚細胞性腫瘍。

1.7.3 上衣芽細胞腫瘍 Ependymoblastoma

未分化な上衣細胞への分化を示す胚細胞性腫瘍。

1.7.4 若齢犬の胸腰部脊髄腫瘍 Thoracolumbar spinal cord tumor of young dog

若齢大型犬のT10~L2硬膜内髄外脊髄に発生する由来不明の腫瘍。 異所性の腎芽腫と考えられる。

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1.7.1 原始神経外胚葉性腫瘍 Primitive Neuroectodermal tumor(PNETs)

髄芽腫と同様の組織形態を示す腫瘍に限定してPNETの分類を使用する。

1.7.1.1 髄芽腫(小脳PNET) Medulloblastoma (Cerebellar PNET)

小脳外側胚芽層より発生すると考えられる悪性胚細胞性腫瘍。組織学的にはHomer-Wright及びFlexner-Wintersteiner様のロゼット形成が見られる。

細胞形態は多様で、神経細胞へ分化する細胞以外は細胞質に乏しく、核小体不明瞭な核を有する。

免疫組織化学では、1ないしそれ以上の神経細胞・膠細胞マーカー陽性。

1.7.1.2 PNETs小脳外 PNETs, excluding cerebellar origin

小脳以外の場所に発生した髄芽腫と同様の形態的特徴を有する未分化な神経外胚葉性腫瘍。

1.7.1.1 髄芽腫(小脳PNET) Medulloblastoma (Cerebellar PNET)

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1.7.1.2 PNETs小脳外 PNETs, excluding cerebellar origin

1.7.2 神経芽細胞腫瘍 Neuroblastoma

神経系への単一分化を示す胚細胞性腫瘍。

抗NSE免疫染色 抗NF免疫染色

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1.7.3 上衣芽細胞腫瘍 Ependymoblastoma

未分化な上衣細胞への分化を示す胚細胞性腫瘍。

第42回病理研修会 標本No.828 ウシの小脳 鹿児島大提出症例

1.7.4 若齢犬の胸腰部脊髄腫瘍 Thoracolumbar spinal cord tumor of young dog

若齢大型犬のT10~L2硬膜内髄外脊髄に発生する由来不明の腫瘍。 異所性の腎芽腫と考えられる。

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1.8 松果体実質腫瘍 Pineal parenchymal tumors

比較的ラットで報告例があるが、その他の動物種における発生は極めて稀。ヒトの松果体腫瘍は、大型多形細胞と小型リンパ球様の二層性細胞増殖Two cell patternを示す。ラット

の松果体腫瘍では、小型リンパ球様細胞を欠く場合が多いとされる。診断には発生部位の特定が重要。

ラットの松果体実質腫瘍 日産化学 古川賢先生より

ラットの松果体実質腫瘍

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2.髄膜腫瘍2.1 髄膜上皮細胞の腫瘍 Tumors of meningothelial cells

2.1.1 髄膜腫Meningioma

2.1.1 髄膜腫Meningioma

組織形態により以下の亜型を設ける

2.1.1.1 髄膜上皮型髄膜腫Meningothelial meningioma

2.1.1.2 線維性(線維芽細胞様)髄膜腫 Fibrous (fibroblastic) meningioma

2.1.1.3 移行型(混合型)髄膜腫 Transitional (mixed) meningioma

2.1.1.4 砂粒体型髄膜腫 Psammomatous meningioma

2.1.1.5 血管腫状髄膜腫Angiomatous meningioma

2.1.1.6 乳頭状髄膜腫 Papillary meningioma

2.1.1.7 顆粒細胞髄膜腫 Granular cell meningioma

2.1.1.8 粘液状髄膜腫Myxoid meningioma

形態及び悪性度より

2.1.1.9 退形成性(悪性)髄膜腫Anaplastic (malignant) meningioma

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2.1.1.1 髄膜上皮型髄膜腫(a)

イヌ、脳底部

2.1.1.2 線維性(線維芽細胞様)髄膜腫(b)

イヌ、中脳底部

2.1.1.3 移行型(混合型)髄膜腫(c)

イヌ、嗅球~大脳前頭葉

a

b c

2.1.1.4 砂粒体型髄膜腫 (a)

ネコ、第3脳室内

2.1.1.5 血管腫状髄膜腫 (b)

イヌ、嗅球~大脳前頭葉

2.1.1.6 乳頭状髄膜腫 (c)

イヌ、嗅球~大脳前頭葉

a

b c

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2.1.1.7 顆粒細胞髄膜腫(a)

イヌ、大脳側頭葉

2.1.1.8 粘液腫状髄膜腫 (b)

イヌ、脊髄

2.1.1.9 退形成性(悪性)髄膜腫 (c)

イヌ、視床底部a

b c

2.1.1.7 顆粒細胞(髄膜)腫 Granular cell (meningioma) tumors

ラット顆粒細胞(髄膜)腫 (a) (b)

イヌ髄膜上皮型髄膜腫内に認められた顆粒細胞様変化 (c)

*これまで顆粒細胞腫瘍として独立して扱われていたが、今回のWHO分類では、髄膜腫の亜型として分類された。

ジアスターゼ処理後もPAS陽性の細胞質顆粒を有し、免疫組織学的にS100陽性a

b c

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3.3 小膠細胞腫症Microgliomatosis

4.トルコ鞍部に発生する腫瘍

4.1 トルコ鞍部胚細胞腫 Suprasellar Germ cell tumor

異所性の胚上皮細胞に由来する腫瘍で、精上皮腫様の組織に肝細胞、消化管、あるいは気管上皮に類似する細胞増殖が見られる。

4.2 下垂体腺腫Pituitary adenoma

イヌ、ネコ、ウマに好発するが、他種では稀。症例により腫瘍細胞にはACTH、LH、β-エンドルフィン及びβ-リポプロテインが確認される。

4.3 下垂体腺癌 Pituitary carcinoma

形態的には腺腫と類似するが、著明な実質・脈管内浸潤性を示す。腺腫と比較して極めて稀。

4.4 咽喉頭管腫瘍 Craniopharyngioma

発生的には通常消失する咽喉頭管組織から発生すると考えられる。脳底部で膨張性かつ浸潤性の増殖を示し、のう胞や管腔形成を伴い多角形から円柱状の腫瘍細胞の充実性増殖をしめす。

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6.転移性腫瘍

転移性腫瘍は中枢神経原発腫瘍にくらべ比較的稀。

脳転移が比較的認められる腫瘍

血管肉腫、乳腺癌、悪性黒色腫、全身性リンパ腫など