9
物理探査 第50巻第5号 497】505頁 497 BUTSURトTANSA Vol.50 No.5 (1997) pp. 497-505 物理探査法の地質工学への適用(その2) -地下水流動モニタリングへの適用例- 一* Application of Geophysical Prospecting to Geological Engineering ( ) -Application toMonitoring the Flow of Underground Water- Koichi SuzuKI 1. じめに 前回の講座第1回では,物理探査法の第四紀層下に 存在する活断層調査への適用についての事例を紹介した が,断層を挟む比較的規模の大きい地質構造を把握すれ は十分であった。一方,岩盤内の地下水の流れを可視化 するという目的になると,地下水の流れは透水性の高い 領域に集中すると考えられるので,活断層調査よりさら に規模の細かい地質構造を把握する必要があり高い探査 精度が要求される。 近年,岩盤中の地下水の流れを比抵抗トモグラフィ法 を含めた比抵抗法探査により可視化しようという試みが 行われるようになってきた。地表に設置したアレイ式の 電極系を用いた比抵抗法により,井上ほか(1988),竹 内ほか(1990),西ほか(1992),楠見ほか(1992),秤 田ほか(1995)は,比較的軟質な地盤において降雨が 地中に浸透する様子のモニタリングを実施している。ま た, White (1988)は平面的に配置した電極系を用いた 比抵抗法により岩盤内の地下水経路を画像化する試みを 行っている。さらに,高倉(1991)は揚水試験の現場 で観測された比抵抗変化と井戸で観測された地下水位変 化を検討している。 講座第2匝では,まず土槽内に作成したモデル地盤 における比抵抗トモグラフィ法による地下水流動のモニ タリングのための基礎的な実験結果について述べる。次 に,実際の軟質岩盤の斜面地点において比抵抗トモグラ フィ法を行い,降雨による浸透水のモニタリングへの適 用性について検討した事例について紹介する。 2.土槽を用いた地下水位測定の室内実験 2.1地盤の此抵抗 本節では,比抵抗トモグラフィ法による地下水位のモ ニタリング観測の適用性を検討するため,土槽に砂ある いはレンガを詰めたモデル地盤による室内実験を行なっ た結果について報告する。 地盤の比抵抗は,主としてその岩石を構成する鉱物粒 子間の孔隙率と孔隙の分布形態,孔隙に含まれる地下水 の含水率と比抵抗に依存すると考えられる。 Archie (1942)によれば,地層の比抵抗pRは,孔隙率¢,水飽 和率S,孔隙水の比抵抗pwとすると次式で表されるo pR=a・¢‾m・S‾n・pw (1) 1997年5月21日原稿受付: 1997年7月9日受理 第86回(平成3年度春季)学術講演会にて(一部)を 発表 *電力中央研究所 〒270-11千葉県我孫子市我孫子1646 ◎1997 SEGJ

物理探査法の地質工学への適用(その2) -地下水流動モニタリ …...物理探査 第50巻第5号 497】505頁 497 BUTSURトTANSA Vol.50 No.5 (1997) pp. 497-505 物理探査法の地質工学への適用(その2)-地下水流動モニタリングへの適用例-鈴

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物理探査

第50巻第5号

497】505頁

497

BUTSURトTANSA

Vol.50 No.5 (1997)

pp. 497-505

物理探査法の地質工学への適用(その2)

-地下水流動モニタリングへの適用例-

鈴 木 浩 一*

Application of Geophysical Prospecting to Geological Engineering (Ⅱ)

-Applicationto Monitoring the Flow of Underground Water-

Koichi SuzuKI

1. は じめに

前回の講座第1回では,物理探査法の第四紀層下に

存在する活断層調査への適用についての事例を紹介した

が,断層を挟む比較的規模の大きい地質構造を把握すれ

は十分であった。一方,岩盤内の地下水の流れを可視化

するという目的になると,地下水の流れは透水性の高い

領域に集中すると考えられるので,活断層調査よりさら

に規模の細かい地質構造を把握する必要があり高い探査

精度が要求される。

近年,岩盤中の地下水の流れを比抵抗トモグラフィ法

を含めた比抵抗法探査により可視化しようという試みが

行われるようになってきた。地表に設置したアレイ式の

電極系を用いた比抵抗法により,井上ほか(1988),竹

内ほか(1990),西ほか(1992),楠見ほか(1992),秤

田ほか(1995)は,比較的軟質な地盤において降雨が

地中に浸透する様子のモニタリングを実施している。ま

た, White (1988)は平面的に配置した電極系を用いた

比抵抗法により岩盤内の地下水経路を画像化する試みを

行っている。さらに,高倉(1991)は揚水試験の現場

で観測された比抵抗変化と井戸で観測された地下水位変

化を検討している。

講座第2匝では,まず土槽内に作成したモデル地盤

における比抵抗トモグラフィ法による地下水流動のモニ

タリングのための基礎的な実験結果について述べる。次

に,実際の軟質岩盤の斜面地点において比抵抗トモグラ

フィ法を行い,降雨による浸透水のモニタリングへの適

用性について検討した事例について紹介する。

2.土槽を用いた地下水位測定の室内実験

2.1地盤の此抵抗

本節では,比抵抗トモグラフィ法による地下水位のモ

ニタリング観測の適用性を検討するため,土槽に砂ある

いはレンガを詰めたモデル地盤による室内実験を行なっ

た結果について報告する。

地盤の比抵抗は,主としてその岩石を構成する鉱物粒

子間の孔隙率と孔隙の分布形態,孔隙に含まれる地下水

の含水率と比抵抗に依存すると考えられる。 Archie

(1942)によれば,地層の比抵抗pRは,孔隙率¢,水飽

和率S,孔隙水の比抵抗pwとすると次式で表されるo

pR=a・¢‾m・S‾n・pw (1)

1997年5月21日原稿受付: 1997年7月9日受理

第86回(平成3年度春季)学術講演会にて(一部)を

発表

*電力中央研究所

〒270-11千葉県我孫子市我孫子1646

◎1997 SEGJ

Page 2: 物理探査法の地質工学への適用(その2) -地下水流動モニタリ …...物理探査 第50巻第5号 497】505頁 497 BUTSURトTANSA Vol.50 No.5 (1997) pp. 497-505 物理探査法の地質工学への適用(その2)-地下水流動モニタリングへの適用例-鈴

498 物 空

ここで, a,m,nは岩石の種類に依存する定数で,ー

般的にa=0.5~2.5, m=1.3~2.5, n=2程度の値であ

る。

地下水位の変化が起きた場合は,地下の飽和度だけが

変化すると考えられるので,観測される比抵抗の変化は

この飽和度の変化を反映するものと考えられる。 (1)式

によれば地層の比抵抗は飽和度のほぼ2乗に逆比例す

ることより,地下水位が上昇すると地層の比抵抗は低下

し,地下水位が下降すると比抵抗は増大する。

2,2 測定・解析方法

Fig・ 1に示すように容積1.5mxl.2mxl.Omの土槽

内に砂(豊浦標準砂5号)または市販のレンガを詰め

てモデル地盤を作成した。なお,各レンガの寸法には若

干のバラツキ(1mm程度)があり, Fig.1(b)に示す

ように均等に積み上げていっても上面に起伏が生じてし

まうので,隙間には砂を詰めて調整した。砂によるモデ

ルは,間隙の大きい第四紀層などの未固結層や風化・変

質の強い軟質な岩盤を模擬し,レンガによるモデルは,

間隙が少なく水の移動が特定の割れ目に支配されるよう

な硬質な岩盤を模擬すると考える。

土槽内の水位を地表面に相当するレベルまで上げた

マ〃一卜55c1 40cA 5 5ct

(a)Concept of the soil cont&her

(b) Concept Of the Ⅱard Rock Model

Fig・ 1 Instruments for the Laboratory Experiment

探 査 第50巻 第 5 号

級,順次10cmごとに水位を下げていき(0~50cm),

各水位レベルで比抵抗トモグラフィ法測定を行っ〈た。な

お,実験には間隙水として比抵抗が絢30nmの水道水

を使用したo比抵抗トモグラフィ法の電極配置をFig.

2に示す。計測孔(A,B孔)として2cm間隔で20極の

電極を配置し孔間距離は40cmとした。また,計測孔間

の地表面には19極の電極を置き,総電極数は59極とし

た。測定はdipole-dipole法配置により行った。測定・

解析方法の詳細については引用文献(東・鈴木, 1992)

を参照されたい。

2.3 解析結果

(1)軟質岩盤モデル

Fig・ 3に軟質岩盤モデルの場合の各水位レベルでのイ

ソ/ミージョン結果を示す.水位が低下するにしたがい比

抵抗断面の高比抵抗層が徐々に下部に広がっていく状況

が明瞭に認められる。比抵抗分布はほぼ水平成層構造と

なっており,水で飽和した領域と不飽和の領域とでは比

抵抗が明らかに異なっている。飽和領域では比抵抗が

100Ehn以下であるが,不飽和領域では1,000f2m以上

になっており,地下水面を比抵抗境界面としてとらえて

いるoなお,マノメーターで確認した水位より土槽内の

砂は毛管現象により約10cmほど上まで湿潤状態になっ

ている。

(2)硬質岩盤モデル

Fig・ 4に岩盤モデルの場合の各水位における解析結果

を示す(ただし,凡例はFig.3と同じ)。水位が下がる

につれ比抵抗分布が高く変化していくことは認められる

が,軟質岩盤モデルのように比抵抗分布が水平成層構造

JA孔 B孔↓0 -

4 -

8

12

16

20-

24 -

28 -

32 -

36-

40

(cI)

Fig. 2

8

0

4

8

12

16

20

24

28

吋32

36

40

●モ凄位■ch)

The Position of Electrodes for Resistivity

Tomography

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物理探査法の地質工学への適用(その2)一地下水流動モニタリングへの適用例一 鈴木浩一

0

0

10 20

0

-10

′ヽ

EO

、-ノー20

也紙

-30

-40

(cm)

-10

A

GO

ヽ-′

120

也鵬

-30

(a)水位: -10cm

0 IO 20

-40

(cm

-10

′‾ヽ

6O

ヽ-′

-20

也鵬

38

ー40

(clⅦ)

0

0

10 20

(b)水位:-20cm

lO 20

・10

A

a_20

也咲

⊥:)〕

(d)水位: -40cm

-40

(cTn)

(e)水位: -50cm

0

-10

′ヽ

i

.3 _20

也雄

一3(】

-40

0 10 20

(cm)(c)水位: -30cm

凡例 比抵抗(Qm)

- 1383 - 2000

# 956-1383

脚 661- 956

潮櫛 457- 661

湖掛 316- 457

窓掛書彗219- 316

喜≡締董葉至15卜219

琴撃1051 151

72.3 - 105

⊂コ 50.0-72.3

Fig. 3 Resultsof

2D Analysis of Resistivity Tomography (Sand Model)

0 10 20

0

-10

′ヽ

B_20

也雄

一30

0

-10

育ヽー-20

也鍋

-38

10 20

0

・10

′■■■ヽ

i_20

也樵

13O

0 10 20

499

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500

ー5

-10

-15

′‾ヽ

3 120

世雄一25

ー30

-35

・40

見掛比抵抗(Om)

Fig. 5 Results of Electric togging (Sand)

5

-10

-15

′ヽ

3 -20

世味125

-30

-35

-40

)?

水位レベル

ーローOcm-○- 10cm

-A- 20Gm

-∇- 30cm

~◇- 40cm

10 100

見掛比抵抗(Elm)

Fig. 6 Results of Electric Logging (Rock)

1000

み重ねたことによりレソガ同士の隙間にバラツキがある

と考えられる。よって,レソガ自体に同程度の保水性が

あったとしても,水の移動がレンガ間の特定の割れ目に

-5

-10

-15

′ヽ

1≡

3 -20

世# -25

130

-35

-40

第50巻 第 5 号

10 100

見掛比抵抗(¢m)

1000

Fig. 7 Change of Resistivity by Electric Logging

(Rock Model, Water level;-40 cm)

支配された結果,岩盤モデルの透水性が不均質となり比

抵抗分布が複雑になったものと推定される。

Fig. 7は,硬質岩盤モデルにおいて水位を-40cmま

で順次下げていった場合のA孔における比抵抗の経時

変化である。 1日経過した時点でほとんどの部分が収束

し,以後数日経っても変化はほとんど見られない。いっ

たんレンガに浸透した水は,数週間あるいはそれ以上か

けてゆっくりと水が下方に移動していくものと考えられ

る。

3.軟質岩盤の斜面地点での適用

3.1調査目的

湛水池周辺に存在する斜面の地滑り地帯においては,

集中豪雨により地下水位の急激な変動が原因となり,也

滑りが発生する可能性がある。この地下水の変動をとら

えることができれば地滑りの予知へ大きく貢献すること

になる。本節では,軟質岩盤の斜面地点において降雨の

地盤への浸透による地下水の変動をとらえることを目的

に,比抵抗トモグラフィ法による連続観測を実施した事

例について紹介する。

3.2 地質拇要

当地点は山間部の斜面に位置し,中生代白亜紀の砂

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物理探査法の地質工学への適用(その2)一地下水流動モニタリングヘの適用例一 鈴木浩一

岩,砂岩頁岩互層を基盤としている。測線近傍のボーリ

ング孔の調査結果によると,深度50cmまでは表土,

3.1mまでは崖錐堆積物で, 22.5mまではコア全体が

褐色化しており割れ目も多い。なお,同孔の掘削中に

12.5mおよび25mで一時停滞水位が観測され,風化層

内に宙水的に存在する地下水をとらえたと考えられてい

る。なお,深度60mの掘削完了後も地下水位は観測さ

れていない。

3.3 測定・解析方法

Fig. 8(a)は,斜面の最大傾斜方向沿いに設置した測

線沿いの測点と測線中央部に掘削した計測孔(A-5孔,

深度15m)の測点位置,及び2次元インパージョソ時

の解析対象領域のセル分割図を示す。計測孔を*Jbとす

る斜面地表部の測線長50mにおいて比抵抗トモグラフ

ィ法測定を行った。地表面には1m間隔,A-5孔には

50cm間隔で計80点の電極を設置した。電極配置は2

極法配置で行った。なお,現地は山間部でAC電源がな

いので, Fig.8(b)に示すパソコン制御による14チャン

ネル同時計測が可能な自動測定装置(鈴木・城森,

1993)を基に無人計測システムを製作した。一日一回

の定時刻より自動的に計測を実施し, 1回当たり計

3,160通りの電位データを計測した。 1回当たりの計測

時間は紛1時間である。電源は10個並列に接続した

バッテリー(12V)を使用した。

計測期間は平成7年6月15日~平成7年7月26日の

1ヶ月半である。なお,自動計測システムはバッテリー

電源の容量不足もあり,実際の観測回数は6月に5回

(15,16,17,18,19日), 7月に6回(1,2,7,8,25,26日)

の計11回である。 2次元インパージョソは,ラブラシア

ンフィルターによる平滑化制約付き非線形最小二乗法

(佐々木, 1988)を使用した。

3.4 解析結果

(1)比抵抗断面図

Fig.9に平成7年6月15,16,17日と7月7,8,25,26

日における比抵抗断面図を示す。比抵抗は100~10,000

托mを対数スケールで色分けし,赤色系ほど低比抵抗を

示す。また赤丸印は電極の位置を示す。これらの比抵抗

断面図はほとんど同じ結果となっている(他の計測日の

解析結果も同様である)。深度約8mまでは1,000~

10,0000mの高比抵抗層となっているが,深度10m以

深は数100~800 nm程度の低比抵抗層となっている.

この高比抵抗層は,地表下数mまでの崖錘層およびそ

の下の亀裂を多く含む間隙率が相対的に大きい軟質岩盤

//

/∫

/

1 ∩

rlノノ/

50m

A15‡L

ノ/

/

/

/‾'′

測点位置

./l'

// (a) The Location of the EIectrodes and

the Division of Cells by 2Ⅰ) Inversion

電流遠t凄

送信橡

出力(max. 1A)

計測時のみ電頴ON

電橿自動

切替裳モ

電位遠t凄

受信機(14¢h)

タイマーパソコン

(A/D:16bit)

501

A-4孔

TmJ

AC/DCコンハ●-タ

AC篭意

バッテリー(12V ; 10省の並列接篤)

+

DC電源

(b) Concept of the Auto-measurement System

Fig. 8 The Method of the Measurement of Resistivity

Tomograpby

Table 1 Schedule of Resistivity Tomography and

Rainfall in Each Day

観測日 計測 降水量 水位 観測日 計測 降水量 水位

回数 (mm) (cn】) 回数 (nm) (cm)

6月15日 1回目 0.0 9.0 7月1日 6回目 5.5 ll.0

16日 2回目 0.0 9.0 2日 7回目 55.5 ll.0

17日 3回目 10.5 9.5 3日 438.5 10.5

18日 4回目 33.5 10.0 4日 256.5 18.5

19日 5回目 0.0 10.0 5日 66.0 32.5

20日 0.0 10.0 6日 ll.5 37.5

21日 42.0 9.5 7日 8回目 0.0 34.0

22日 15.0 9.5 8日 9回目 0.0 30.5

23日 8.5 9.5 9日 0.0 27.5

24日 0.0 9.0 7/10~20の総降水量:14mm

25日 86.5 9.0 21日 1.0 24.0

26日 0.0 9.0 22日 16.0 21.5

27日

28日

2.5 9.0 23日 138.0 20.0

0.0 9.5 24日 22.5 18.5

29日 0.0 10.0 25日 10回目 0.0 18.5

30日 62.5 10.5 26日 11回目 0.0 18.0

6月合計 503.0 7月合計 1,034.0

*ただし,水位はA-4孔の深度15mの間隙水圧系による計測データ

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物 理 探 査 第50巻 第 5 号

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Fig. 9 Resul[s of 2DAnalysis ot Resistivity Tomography (Resistivity Section)

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物理探査法の地頃工学への適用(その2) -一地下水流動モニタ1)ン〆への適用例-一 鎖木浩一

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Fig. 10 Resultsof

2D Analysis of Resistivity Tomography (Change Rate Section)

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504

Table 2 Measurement Daysof Resistivity Tomography, Rainfall, and Water

Level in Borehole (A4)

第50巻 第 5 号

計測日 6/16 6/17 6/18 6/19 7/1 7/2 7/7 7/8 7/25 7/26

計測日の降水量(tqAl) 0.0 10.5 33.5 0.0 5.5 55.5 0.0 0.0 0.0 0.0

計測前3日間の降水量(伽】) 22.5 8.5 19.0 44.0 62.5 68.0 334.0 77.5 176.5 160.5

孔内水位(cm) 9.0 9.0 10.0 10.0 ll.0 ll.0 34.0 31.0 9.0 8.0

*ただし,水位はA-4孔の深度151Ⅶの間隙水圧系による計測データ

で,なおかつ宙水的に存在する地下水面より上の不飽和

帯に対応していることが推定できる。

(2)比抵抗変化率断面図

Table lに観測期間中の降水量,間隙水圧(A-4孔下

部の計測器による計測データ)と比抵抗トモグラフィ法

観測日の対応表を示す。また, Fig.10に平成7年6月

15日の比抵抗断面を初期値として各観測日との変化率

断面を求めた結果を計灘日順に並べたものを示す.ただ

し, 7月7,8,25,26日は当日の降水量は零であるが,計

測日前3日間の降水量は各々334.0, 77.5, 176.5, 160.5

mmであり,集中豪雨の数日後に計測した結果である。

変化率は0~-5%の範囲をリニアスケールで表示し,

赤色系が比抵抗が低く変化した領域を示す。また,

Table2には各計測日と当日の降水量,計測前3日間の

総降水量, A4孔における孔内水位(計測器の深度を基

準)を示したものである。

3.5 考 察

(1)計測日の降水量と比抵抗変化について

観測を開始した6月16日の降水量は0.Omm, 17日は

10.5mm程度と少量で,比抵抗変化率断面ではほとん

ど変化した領域は見られない。また, 6月18日では降水

量が33.5 mmで,表層部の一部に紛3%低下した領域が

認められる。

7月1日の変化率断面では,当日の降水量は5.5mm

と小さいが,前日の6月30日に62.5mmの降水量があ

り, 2~3%程度低く変化した領域が深部に広がってい

る。また測点No. 10付近の表層部に5%程度まで低く

変化した領域が見られる。

7月2日の降水量は55.5mmで,変化率断面は7月

1日の結果とほぼ同様の分布を示している。

(2)集中豪雨時の比抵抗変化について

7月7日の降水量は零mmであるが, 7月3日, 4日

の2日間で紛700mmもの集中豪雨があり,変化率断面

は最も比抵抗が低く変化していることがわかる。すなわ

ち,比抵抗が3%以上低下した領域を見ると,測点No.

35付近では地表下15m程度であるが,谷部へ行くほど

徐々に浅くなっていき測点No・5付近で。は3m程度と

なっている.また, A-4孔で計測された地下水位が上が

っていることとも対応している。

7月8日の降水量も零mmであるが,前日の7月7

日の変化率断面より若干低く変化する割合が小さい傾向

にあることがわかる。

さらに, 7月25日における変化率断面では,当日の降

水量は零mmであるが,計測前2日間で計160mm程

度の降水があり,比抵抗が3%程度まで低下した領域が

地表下10m程度まで広がっている。

以上より,降水量が多いほど地盤の比抵抗分布が低く

変化する領域が広がる傾向が認められ,比抵抗の低く変

化した領域は降雨が浸透した領域を表しているものと推

定できる。ただし, 7月3,4日の集中豪雨の3日後(7

月7日)の変化率断面が最も低下したことより,集中

豪雨による上流側の浸透水が数日後にA-4孔近傍の地

盤に流れてきた状況をとらえたとも推定できる。

4. ま と め

比抵抗トモグラフィ法による地下水位のモニタリソグ

の適用性を検討するため,砂・レンガを使用した模型地

盤による室内実験と,実際の軟質岩盤の斜面地点での集

中豪雨時のモ‥タリング観測を行った。その結果,間隙

の大きい未囲結の第四紀層や風化の強い軟質岩盤では,

地下水位面を比抵抗境界として測定することができ,降

雨前後の初期値に対する比抵抗変化率断面を求めること

により地下水の流れを把握できる可能性があることがわ

かった。

一方,硬質岩盤の斜面地点でも同様のケーススタディ

を試みたが,ボー1)ソグ孔内で確認された地下水面に明

瞭な比抵抗境界は認められず,また有意な比抵抗変化も

計測されなかった。レンガによるモデル地盤の実験結果

と併せて考えると,地下水の流動が割れ目を主体とする

間隙の小さい実際の硬質岩盤は,レンガによるモデル地

盤よりさらに不均質で間隙が少ないので,岩盤中の地下

水位面が不明瞭であり,比抵抗境界としてとらえること

は困難であるものと考えられる。

Page 9: 物理探査法の地質工学への適用(その2) -地下水流動モニタリ …...物理探査 第50巻第5号 497】505頁 497 BUTSURトTANSA Vol.50 No.5 (1997) pp. 497-505 物理探査法の地質工学への適用(その2)-地下水流動モニタリングへの適用例-鈴

物理探査法の地質工学への適用(その2) -地下水流動モニタリングへの適用例一鈴木浩一 505

謝 辞

比抵抗法の2次元インパージョソには九州大学佐々

木裕助手の多大なるご教授を得た。地下水モニタリング

の室内水槽実験では電力中央研究所の東貞成氏の数多く

のご協力を得た。ここに厚く感謝の意を表します。ま

た,軟質岩盤の斜面地点での現地実験は,当所が通産省

資源エネルギー庁からの受託研究「水力発電環境保全技

術調査」の中で斜面部の安定性診断のケーススタディと

して平成6, 7年度に実施した。以上の関係各位に厚く

感謝の意を表します。

参 考 文 献

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レ/