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米国 DM 調査団報告書 平成 19 年 7 月 日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 統計・DM 部会

米国DM調査団報告書 - JPMA...平成18 年米国DM 調査団報告書 4 2. 各訪問先のまとめ 2.1. CDISC (Clinical Data Interchange Standards Consortium) 2.1.1. アジェンダ

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米国 DM 調査団報告書

平成 19 年 7 月

日本製薬工業協会

医薬品評価委員会 統計・DM 部会

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平成 18 年米国 DM 調査団報告書

1

1. 緒言 ................................................................................................................................. 2 2. 各訪問先のまとめ............................................................................................................ 4

2.1. CDISC (Clinical Data Interchange Standards Consortium)............................... 4 2.1.1. アジェンダ ........................................................................................................ 4 2.1.2. エグゼクティブ・サマリー .............................................................................. 4 2.1.3. 詳細................................................................................................................... 6

2.2. FDA ......................................................................................................................... 9 2.2.1. アジェンダ ........................................................................................................ 9 2.2.2. エグゼクティブ・サマリー .............................................................................. 9 2.2.3. 詳細................................................................................................................. 10

2.3. PhRMA Biostatistics & Data Management Technical Group ........................... 17 2.3.1. アジェンダ ...................................................................................................... 17 2.3.2. エグゼクティブ・サマリー ............................................................................ 18 2.3.3. 詳細................................................................................................................. 19

2.4. Pfizer Inc. PhaseⅠ Unit (New Haven) .............................................................. 27 2.4.1. アジェンダ ...................................................................................................... 27 2.4.2. エグゼクティブ・サマリー ............................................................................ 27 2.4.3. 詳細................................................................................................................. 28

2.5. Eli Lilly & Company............................................................................................. 41 2.5.1. アジェンダ ...................................................................................................... 41 2.5.2. エグゼクティブ・サマリー ............................................................................ 42 2.5.3. 詳細................................................................................................................. 44

2.6. Covance ................................................................................................................. 49 2.6.1. アジェンダ ...................................................................................................... 49 2.6.2. エグゼクティブ・サマリー ............................................................................ 50 2.6.3. 詳細................................................................................................................. 50

2.7. 治験専門医療機関(Physicians Research Group)............................................. 57 2.7.1. アジェンダ ...................................................................................................... 57 2.7.2. エグゼクティブ・サマリー ............................................................................ 57 2.7.3. 詳細................................................................................................................. 58

3. 結びにかえて................................................................................................................. 64

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平成 18 年米国 DM 調査団報告書

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1. 緒言

データ・マネジメントという業務が日本に初めて紹介されたのは 1988 年*である。それ以

降、徐々にデータ・マネジメントの重要性が認識され、日本の各社においてもデータ・マネ

ジメントを担うグループが組織され、日本のデータ・マネージャたちの成長とともに会社組

織の中でも力をつけてきた。しかしながら、日本のデータ・マネジメント業務プロセスが形

作られていった 1990 年代前半は、紙の症例報告書(CRF; Case Report Form)全盛の時代

であり、また ICH-E5 施行前の、基本的に日本国内の試験だけを見ていればよい時代であ

った。そのような時代にあって、日本のデータ・マネジメントは、欧米との密接な情報交換

も乏しいままに、独自のスタイルが形成されていき、その状態が、世界同時開発が声高に

言われる時代となった現在においても尾を引いていると言ってよいかもしれない。21 世紀

に入り、欧米が先行する形で EDC(Electronic Data Capture)の導入が進み、今日では外

国製の EDC システムが成熟期を迎え、日本でもいくつかの企業が EDC を経験し、まさに

IT テクノロジーが業務プロセスを変える時代に突入しようとしている。一方、ICH-E5 を

始め各種規制のハーモナイゼーションが進んだことや、日本の当局が積極的に海外データ

の受け入れを進めたことも手伝って、ブリッジング戦略に基づく承認申請が盛んに行われ

るようになり、欧米や諸外国のデータを見る機会、業務プロセスを知る機会も増えて、一

部の企業では世界同時開発の薬剤プロジェクトにおいて日本と欧米のデータ・マネージャ

が実際に共同作業するという経験も蓄積している。そのような状況下で、臨床試験データ

の標準化、データ取り扱いプロセスの標準化、それらを支える考え方や組織体制について、

日本と欧米のさまざまな相違点が認識されるに至った。今後、確実に進展していくであろ

う国際化、EDC 普及など新しいパラダイムの中で、日本のデータ・マネジメントが向かう

べき方向を模索すべき時に来ている。 そこで、統計・DM 部会では、米国におけるデータ・マネジメントの現状やこれを取り巻

く環境、EDC やデータ標準の現状を調査すべく、平成 18 年(2006 年)10 月、米国に調査

団を派遣することにした。2 週間の滞在期間中に訪問したのは、Pfizer PhaseⅠ Unit、FDA、

CDISC、PhRMA、Eli Lilly、Covance、治験専門の医療機関(Freely Standing Research Facilities)である。いずれの訪問先も周到に準備し、日本の業界にメッセージを送ろうと

熱意に満ちていた。 米国 DM 調査団が持ち帰ったメッセージが平成 19 年度の統計・DM 部会事業計画に大き

な影響を与えている。日本のデータ・プロセッシング(データ収集から報告まで)を欧米

に比肩するレベルに導くために、業界団体である製薬協として取り組むべき問題は何なの

かを見極め、業界全体が過去を引きずることなく将来を見据えた変革を行っていけるよう

* 医学研究の情報システム(小特集:1990 年代の医療情報の動向とあり方),大橋 靖雄、医学

のあゆみ 146 (1) p.1-3 (1988)

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コンセンサス作りや啓発を行っていく必要がある。そのような活動を通じて各社にとって

も有益な成果物を作り、日本の業界に浸透して初めて今回の見聞が実を結んだと言えるだ

ろう。

米国 DM 調査団 参加者

ファイザー株式会社

ディベロップメント・オペレーション統括部

統計・解析部統計コンサルティンググループ

シニアマネジャー

小宮山 靖

(調査団団長)

アステラス製薬株式会社 開発本部 データサイエンス部 川崎 健吾

エーザイ株式会社 臨床研究センター データ・マネジメント部

DM 室 室長 小川 利明

大塚製薬株式会社 新薬開発本部 開発部

データ・マネジメント室長 福岡 益実

塩野義製薬株式会社 解析センター 町田 光陽

第一製薬株式会社 開発支援センター課長代理 薄井 勲

三菱ウェルファーマ株式会社 開発本部 開発業務部 データ・マネジメント

グループ グループマネジャー 東 浩

ワイス株式会社 研究開発本部 クリニカルオペレーション部

データ・マネジメント室長 野村 和外

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2. 各訪問先のまとめ

2.1. CDISC (Clinical Data Interchange Standards Consortium)

2.1.1. アジェンダ

【日 時】2006 年 10 月 11 日(水) 12:00-17:00 【場 所】SAS Institute 社(Washington, DC) 【出席者】

Rebecca Kush President of CDISC Frank Newby Vice President, CDISC Education and Member Relations Ed Helton CDISC Board of Directors, SAS Institute Julie Evans Manager, CDISC Technical Services Mary Lenzen Octagon Research Solutions

【アジェンダ】

JPMA presentation CDISC in 2005 and 2006 eClinical Trial, current status

2.1.2. エグゼクティブ・サマリー

CDISC update

2010 年頃を目標に、SDTM (Study Data Tabulation Model)、LAB (Clinical Laboratory Model)、ODM (Operational Data Model)などの CDISC の各モデルを 1 つにまとめた標準

"The Standard"を作成する予定である。 ベンダーから発売されている CDISC に関連した各種ツールを CDISC の技術委員会がレ

ビューし、2006 年 11 月からは各製品に認定を与える予定である。 Terminology については NCI の EVS(Enterprise Vocabulary Services)を利用して作

成している。 現状の各モデルのバージョンアップは頻繁には行わない方針であり(1~1.5 年は変更し

ない)、バージョンアップしても旧バージョンも使用できるよう工夫している。 FDA、EMEA、NIH など様々な組織で有害事象データベースのモデルを作成しているが、

ICSR(FDA/HL7(ICH-E2B))、SUSAR(EMEA)、SDTM(CDISC)、ICR (NIH)、CaAERS(NCI)を一つにすることを目標に、各機関と協調していく。 患者データを収集するシステムと臨床試験用システムでデータを相互利用できるよう、医

療情報全体の標準化を目的に、FDA や HL7 などの機関と協力して BRIDG(Biomedical

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Research Integrated Domain Group)Model を作成中である。

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eClinical Trial について

標準メタデータ作成システムを開発するため、CDISC と ACRO(Association of Clinical Research Organizations )が中心となり、CDASH(Clinical Data Standards Harmonization)を組織した。 代表的な4つのドメイン(有害事象:AE、患者背景:DM および SC、併用療法:CM)

の Annotated CRF を 2007 年末には確定する予定である。

EU、日本での現状について

EU 各国の規制当局は FDA のように電子データの提出を求めていない。 製薬企業としては当局提出用の SDTM でのデータ作成は必要ないが、監査証跡をとる意

味で ODM に関心をもっている。 CDISC 利用で各国での申請がスムーズに行くとのアナウンスはされている。 日本ではこれまでに 2 回の CDISC Interchange とトレーニングが開催され、規制当局は

Interchange へ参加しており、関心はあるようである。 日本の製薬企業が CDISC を申請へ利用した経験はまだ無いようであり、医師主導試験に

おける CRF やデータ管理への利用など病院側の利用に留まっている。

2.1.3. 詳細

1. CDISC update

2010 年頃を目標に、SDTM(Study Data Tabulation Model)、LAB(Laboratory Data Model)、ODM(Operational Data Model)などの各 CDISC モデルを 1 つにまとめた標準を

作成する予定である。 CDISC に関連した各種ツールが発売されているが、CDISC として特定のベンダーを推奨

することはしない。各種ツールを CDISC の技術委員会がレビューし、その結果を Web に

掲載している。2006 年 11 月初めに CDISC 認定プログラムを開始し、2006 年 11 月からは

各製品に認定を与える予定である。 Terminology については FDA、HL7(Health Level-7)とも協調して NCI(National Cancer

Institute)の EVS(Enterprise Vocabulary Services)を利用して作成している。 現状のモデルのメンテナンスはプロダクションチームが行っている(Review Group* ⇒

Production Standard Board ⇒ Review Board ⇒ Publish)。承認プロセスを経てバージ

ョンアップするが、頻繁にバージョンアップを行わない方針であり(1~1.5 年は変更しな

* SDTM の場合、5 名で構成されるレビューグループが事前チェックをしている。

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い)、バージョンアップしても旧バージョンも使用できるよう工夫している。 FDA、EMEA、NIH など様々な組織で有害事象データベースのモデルを作成しているが、

CDISC と重複している部分もあるのでこれらと協調していく。PMS の AE(ICSR)は今

のところ未検討であるが、ICSR(FDA/HL7(ICH-E2B))、SUSAR(EMEA)、SDTM(CDISC)、

ICR(NIH)、CaAERS(NCI)を一つにすることがゴールである。 EHR(Electronic Health Records)などの患者データを収集するシステムと EDC や

eSource システムなどの臨床試験用システムでデータを相互利用できるよう、医療情報全体

の標準化を目的に、FDA や HL7 などの機関と協力して BRIDG(Biomedical Research Integrated Domain Group)Model を作成中である。製薬企業以外の臨床試験での CDISCの利用状況は、機関によって差異がある。NIH(National Institutes of Health)は関心が大

きく、BRIDG を推奨しているし、幾つかの大学も CDISC に参加している。 全世界の治験データ(20 エレメント)をデータベース化する目的で、ODM で標準化を進

めている。2006 年 11 月に神戸で会合が開催される(WHO Clinical Trial Protocol Registry Platform)。

2. eClinical Trial について

eClinical Trial*を CDISC では次のように定義している。 "An e-clinical trial is defined as a clinical trial in which primarily electronic processes are used to plan, collect, access, exchange and archive data required for the conduct, management, analysis and reporting of the trial." (試験の実施、管理、解析・報告に必要な、計画、データ収集、データ閲覧、データ

交換、データ保存において、第一義的に電子的なプロセスを用いる臨床試験) つまり、解析・報告に必要なデータのみならず、管理上必要なデータなども含め、臨床試

験にかかわるあらゆる業務を原則ペーパーレスでコンピュター化するという将来像である。 従来の紙をベースとしたプロセスでは、原資料から CRF への転記、CRF からデータベー

スへの入力を行うことになり、それぞれの過程で整合性確認が必要である。EDC を利用す

ることで CRF からデータベースへの入力が不要になる。EDC=eClinical Trial でなはく、

EDC は eClinical Trial の一部の部品にすぎないという認識である。 原データが電子化されることで、原データからデータベースへの転送が可能となり、その

データを電子申請に使用することも可能となる。

* eClinical Trials は CDISC だけが提唱しているものではない。実際、PhRMA の eClinical

Forum & EDC/eSource Taskforce ではポジションペーパー「The Future Vision of Electronic

Health Records as eSource for Clinical Research」をまとめ、医療機関側の原データを電子化

した先の eClinical Trial に関する中長期的なビジョンを業界団体として示している。

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標準(エレメント名、定義、メタデータ)を開発するため、CDISC と ACRO(Association of Clinical Research Organizations)が中心となり、FDA、NIH など 14 の機関で CDASH(Clinical Data Standards Harmonization)を組織した。ACRO が作成した標準 CRF と

CDISC の SDTM を合わせた Annotated CRF を作成し、これに ODM を合わせ標準メタデ

ータ(XML)を作成し、 終的にメタデータ作成システムとする予定である。Annotated CRF は代表的な 4 つのドメイン(有害事象:AE、患者背景:DM および SC、併用療法:

CM)を 2007 年初めに公表し、2~3 回コメントを募集し(2007 年中頃に 3rd comment)、2007 年末には確定したい。

CDISC が中心となって、Annotated CRF が公表されることの恩恵は非常に大きい。

PhRMA 訪問時にも話題になったが、CRF の標準化は米国においても各社苦労していると

ころであり、CRF 標準が出来上がっていない企業も多いとのことである。CDASH から

Annotated CRF が出てくることも注目点である。データベース構造やそこから抽出される

解析データセット、図表類の仕様など、データの流れの中で CRF の下流にあたる要素から

CRF を考えるという発想ではなく、上流にあたる医療機関側の医療情報全体(原データは

その一部)を標準化することも視野に入れた上で、CRF の標準を考えるというスケールの

大きな発想である。

3. EU の現状について

EU の各国で独自に審査をしているが、各国の規制当局は FDA のように電子データの提

出を求めていない。製薬企業としては当局提出用の SDTM でのデータ作成は必要ないが、

監査証跡をとる意味で ODM に関心をもっている。また、EMEA が推奨しているプロトコ

ール標準は CDISC のデータ要素と似ており、協調できるか現在調査中である。また、EUにおいて AE 報告が円滑に運用されていないようであるが、解決策として CDISC の利用が

あげられている。SDTM 以外のところで関心を示しているようであるが、CDISC 利用で各

国での申請がスムーズに行くとのアナウンスはされている。

4. 日本の現状について

2006 年に2回目の CDISC Interchange とトレーニングが日本で開催された。日本の規制

当局は上記 Interchange へ参加しており、関心はあるようである。製薬企業が CDISC を申

請に利用した経験はまだ無いようである。大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)研究セ

ンター長の木内先生が、医師主導試験における CRF やデータ管理への CDISC の利用を推

奨しているものの、病院側の利用に留まっている。

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2.2. FDA

2.2.1. アジェンダ 【日 時】2006 年 10 月 12 日(木)09:45~16:00 【場 所】FDA White Oak, Building 22, Room 4201 【出席者】 Shirley Murphy, Robert O’Neill, George Rochester, Sue-Jane Wang, Justina Molzon, Armando Oliva, Sue Bell, Bobbie Witczak, Gary Gennsinger, Norm Stockbridge, Judy Racoosin, Chris Holland

【アジェンダ】

Adaptive/flexible clinical trial designs Communication among regulatory agencies (FDA, MHLW/PWDA, EU, TPD) etc. FDA efforts to facilitate data standardization(CDISC) Risk communication& FDA initiatives for safety Safety initiatives continued

2.2.2. エグゼクティブ・サマリー

アダプティブデザインの臨床試験への適用についての議論は、探索段階の早期試験か

ら検証試験にシフトしてきている。特に 近では第Ⅱ相と第Ⅲ相を併合する ASD (Adaptive Seamless phase Ⅱ/Ⅲ Design)に注目が集まっている。ASD を採用した試

験結果を用いて承認された事例はないが、現在までに ASD を採用した申請が 2 件あり、

他に 1 試験が実施されている。 FDA と EMEA の間で毎月電話会議が実施されており、グローバル開発を実施する上

では規制当局間のコミュニケーションは重要であると考えられている。 FDA は申請データが標準化されることに非常に好意的である。2004 年には FDA ホー

ムページ上で CDISC/SDTM 形式に準じるデータを受理することが公示されており、 2007 年末までには SDTM への推奨を強めたいとしている。現在、FDA における申請

データの標準化に関する検討は初期の段階で、次のステップとして臨床試験データの

標準化に関する規制作りおよび前臨床試験データの提出が計画されている。将来、

SDTM で申請された全てのデータを JANUS というデータウェアハウスに格納してい

き、レビュー能力のさらなる向上およびレビュー機能の増強についての構想を抱いて

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いる。 安全性解析では計画が非常に大切である。安全性評価の基盤構築のためには良いデー

タが必要で、CRF の標準化および Data capture 技術の導入によりデータの正確性を向

上させることができる。今後は解析用データモデルとしてのCDISCのADaM(Analysis Data Model)の開発に関与し、計画された解析を決まった手順で実施できるデータセッ

トの作成を考えている。安全性解析についての次のステップは、定量的手法のガイダ

ンスを作成することである。

2.2.3. 詳細

1. アダプティブデザインを用いた臨床試験について

2002 年 9 月までに FDA に提出されたアダプティブデザインを用いた臨床試験は 46 試験

で、アダプテーションの種類、およびそのアダプテーションが利用されている試験の割合

は表 2.1 の通りであった。

表 2.1 2002 年 9 月までに FDA に提出された アダプティブデザインを用いた 46 試験の内訳

アダプテーションの種類 46 試験の中での内訳 症例数の再推定 43% 1 つ以上の割付群の削除 22% 試験目的の変更 20% 主要エンドポイントの変更 9% 主要解析の変更 4% 多重性調整法の変更 2%

アダプティブな臨床試験デザインは Critical Path*のひとつとしても取り上げられており、

試験の成功可能性を向上させるためのデザインの検討が進められている。 近年、新たなアダプティブデザインとして ASD(Adaptive Seamless phaseⅡ/Ⅲ Design)

の検討が進められている。ASD 試験は、two-stage からなり、試験開始前の情報とその試

験の stage1 データから、試験全体のデザインおよび統計解析計画書を完成させるデザイン

である。試験終了時の解析では、有効性の推定に stage1 と stage2 の併合データが用いら

れる。中間解析におけるアダプテーションのデザイン要素としては、例数、用量、エンド

* http://www.fda.gov/oc/initiatives/criticalpath/ 和訳も入手可能;www.pmda.go.jp/operations/shonin/info/report/file/FDAOppReport.pdf

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ポイント、試験目的、患者集団、治療期間およびそれらいくつかまたは全ての併合が考え

られている。“Seamless”とは stage1 と stage2 の間にブランクの期間がないことを示し、

第Ⅱ相と第Ⅲ相の併合では通常の End-of-PhaseⅡ/pre-PhaseⅢの企業会議の削減が期待さ

れる。Stage1 に含まれるある用量群を stage2 でも継続するかどうかの意思決定についての

事例として、プラセボ群と 3 実用量(低、中、高)群の 4 群からなる試験を想定した場合

の手順を示す。まず、低用量群とプラセボ群との間の 2 群比較を行う。低用量群のプラセ

ボ群に対する有意差が認められた場合、3 実用量群は全て試験を継続することとする。低用

量群とプラセボ群とに有意差が認められない場合は、低用量群を中止し次に中用量群とプ

ラセボ群との 2 群比較を行う。同様に、中用量群のプラセボ群に対する有意差が認められ

た場合には中用量群、高用量群は試験を継続し、中用量群でプラセボ群との間に有意差が

認められない場合には中用量群も中止し高用量群とプラセボ群との 2 群比較を行う。さら

に、高用量群でもプラセボ群との間に有意差が認められない場合は、全ての実用量群が中

止され、すなわち試験が中止される。これらの手順を要約したものを図 2.1 に示す。

図 2.1 プラセボ群と 3 実用量(低、中、高)群からなる ASD を利用したアダプティブ試験の事例

後半の臨床試験の成功確率を上げるような計画のフレキシビリティは、得られた効果を不

明確にさせることに注意を払う必要がある。また、複雑なアダプティブデザインに対して

は、第 1 種の過誤の制御のためシミュレーション研究が必要となる。このため、試験の規

準を維持するための SOP は試験結果の解釈の際にきわめて重要となる。 また、ASD 試験以外のアダプティブデザインとしては、盲検化試験で影響を受けやすい

部分集団の同定、またはランダム化比較試験で事前に規定された部分集団に関する Ge- nomics Drug Trial、臨床試験シミュレーションを用いた仮想のアダプテーションについて

L 群 vs. P 群

M 群 vs. P 群

H 群 vs. P 群

L 群:継続

M 群:継続

H 群:継続

L 群:中止

M 群:継続

H 群:継続

L 群:中止

M 群:中止

H 群:継続

L 群:中止

M 群:中止

H 群:中止

有意差あり 有意差なし

有意差あり有意差なし

有意差あり有意差なし

P 群:プラセボ群,L 群:低用量群,M 群:中用量群,H 群:高用量群

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の検討が進められている。 <議論>

現在 FDA では 2 件の ASD を用いた申請を受けており、別に 1 試験で ASD を用いた

治験が実施されている。ASD 試験は、IRB が 1 回でよいなどのメリットがあるため、

統計担当以外の治験依頼者に興味がもたれているが、第Ⅱ相と第Ⅲ相を同時に計画す

る難易度の高い試験のため、統計専門家の立場としては慎重に検討する必要がある。

また、アダプティブデザインであるからといって盲検性が崩れることは許されず、盲

検性については十分に配慮する必要がある。 これまで第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相を区別して段階的な開発戦略を推奨してきた主な理

由は、第Ⅰ相で POC(proof of concept)試験により用量の目処をつけ、第Ⅱ相で適切と

思われるエンドポイントを設定して有効性を調べ、そして第Ⅲ相で安全性と有効性を

確認する、という手順を踏むためであった。アダプティブデザインを適用して第Ⅱ相

と第Ⅲ相を 1 つの試験として実施する場合、果たして第Ⅱ相試験と第Ⅲ相試験を別々

に実施した場合の情報が全て得られるかどうか懸念される。 アダプティブデザインを適用した試験結果によると、アダプテーションを実施する前

後でいろいろと相違点が見つかる場合がある。それらの原因は審査側としても解明し

ていくつもりである。 抗癌剤の開発でアダプテーションはよく利用される。割付群を減らすことで盲検性が

保たれない場合、無意識でも毒性が出てくる傾向が否めなく問題になりうる。これに

ついてはデータを解析し検討を進めている。 治験参加募集の広告は、広告の前後でプラセボ効果が異なるなどバイアスの原因とな

りうる。これに対する根本的な解決策はなく、データをよく見ることでそのようなバ

イアスがないか調べることが重要である。

2. 当局間のコミュニケーションについて

当局間のコミュニケーションは大切である。国際試験による新薬の開発においては EU 側

で 初に申請されることもあり、EMEA と FDA の間においては毎月電話会議が開催され

ている。各当局の事情によって申請に対する 終的な結論が異なることもあるが、結論に

至った経緯を把握しておくことは大切と考えられている。このような EMEA との会議の実

施はスポンサー側にも伝えられており、医薬品の企業秘密については守秘義務とされてい

る。 当局側のトレーニングについては日本とも実施しており、FDA でプロジェクトの管理方

法や電子データについて研修したことがある。日本にも FDA 関係者が日本語の勉強をして

PMDA と交流を図れる研修プログラムがあるため、双方のベネフィットが保たれていると

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考えられている。FDA での研修期間については、FDA 側のタスクおよび研修生側の日常業

務の事情などを勘案して 大で 6 ヶ月としている。FDA 関係者が参加できる研修プログラ

ムが用意されていない国に対しては、FDA への研修生としては受け入れていない。しかし

ながら、公開のワークショップには誰でも出席することができるので、情報を入手するこ

とは可能である。DIA による CDER フォーラムはこれまでに 3 回開催されている。 CDER が情報をシェアする国際関係先として挙げているのは、オーストラリア、カナダ、

EMEA、ヨーロッパの委員会(Enterprise Directorate)、フランス、ドイツ、アイルラン

ド、イスラエル、日本、メキシコ、シンガポール、スェーデン、スイス、南アフリカ、イ

ギリス、WHO である。さらに、ベルギー、オランダ、ニュージーランドとは交渉中である。

また、極秘の市販情報、調査情報、法律施行情報、個人のプライバシー情報、事前決定の

FDA 通信または文書(ドラフト規制、ドラフトガイダンス文書)、企業秘密情報などは、米

国の法律で保護されている非公開情報に含まれている。

3. 申請データの標準化について

従来 FDA は申請者からデータセットを受け取った後、統計担当官がデータ構造や変数の

意味、変数間の関係を理解し、統計担当官が意図した解析を行うために適したデータセッ

トの形に作り変える作業(Learning process)に全体の 70~80%の時間を費やし、残りの

20~30%の時間で解析を行ってきた。少なくとも、この時間配分を逆転させたい、できる

ことならば Learning process をゼロに近づけたいという強い動機付けがあって、近年 FDA は申請データの標準化に非常に興味を持っている。申請データの標準化は、FDA レビュー

アによるデータ・マネジメント業務の時間を短縮させ、試験成績に対するレビュー能力を

向上させる。FDA では申請データの標準化について CDISC/SDTM を評価し、2004 年 7月に FDA ホームページ上で SDTM での申請データを受理することが公示された*。これ

までの SDTM での提出実績は、承認申請として 7 つ、Pilot プログラムとして 6 つであ

る。2007 年末までに SDTM への推奨を強めたい。そのときに SDTM で申請する場合、

CRF Listings および Patient Profiles を提出する必要がないという、申請者側への動機付

けも用意している。現在 CDER でサポートしている STDM の Version は 3.1 である。 FDA レビューアによる従来のレビューツールは SAS、JMP および、NONMEM、Excel、

Access などであるが、SDTM で申請された場合の主なレビューツールは WebSDM(Web-based Submission Data Manager)、iReview、Patient Profile Viewer となる†。

そのため、FDA ではこれらのツールのトレーニングが重要になっている。各ツールの特徴

* http://www.fda.gov/bbs/topics/news/2004/NEW01095.html † これらのツールは、ベンダーが開発したものであり、FDA のみならずスポンサー側でももち

ろん利用可能である。

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平成 18 年米国 DM 調査団報告書

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を以下に示す。 WebSDM http://www.lincolntechnologies.com

Web ベースの submission Data Manager である。 データを参照できる。 SDTM と一致かどうか入手ファイルを点検できる。 データの標準解析を与える(カスタマイズ可能)。 各種ファイル(csv、xpt、sas、xls)へのデータ出力が可能である。 レビューアにより作成された変換 / 報告の監査証跡を与える。 時間軸(例えば訪問毎または試験毎)でのデータの出力が可能である。

iReview http://www.ireview.com

フレキシブルな解析能力を備えている。 フレキシブルなデータ選択オプションがある。 フレキシブルなアウトプットオプションがある。

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平成 18 年米国 DM 調査団報告書

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Patient Profile Viewer

http://www.ppdi.com/products/product_development/css_informatics/home.htms

投与状況、有害事象の発現状況、臨床検査値異常の発現状況などを時系列で、症例ご

とに一望できるようグラフィカルに表示することができる。

なお、2005 年 4 月より ERSR (Electronic Regulatory Submissions and Review)

website の利用が可能になっており、FDA への電子申請についての情報を入手できる。現

在、申請データについての検討は初期段階である。次のステップとして、提出する臨床試

験データの標準化に関する規制作りと前臨床試験データの提出を計画している。さらに、

今後 SDTM で申請された全てのデータを JANUS というデータウェアハウスに格納して

いき、レビュー能力のさらなる向上およびレビュー機能の増強についての構想を抱いてい

る。

<議論> SDTM を利用した申請に関して、レビュー側からのフィードバックを示す実例が必要で

ある。もうすぐ Web Site に載せる予定である。 FDA への治験のデータの提出の規制については、今のところ初期の案の状態でプロセス

を始めたばかりで規制を作るための 初のステップは数年かかると予想される。 SDTM に準じたデータを提出する場合の項目については、プロトコールを提出するとき

に事前に相談し、出願時にどのようなデータを入力しておく必要があるか検討しておくこ

とが望ましい。 国際的な立場では ICH の以前の M2 グループがデータセットについて検討されたものが

あるが、正式には公表されていない。 JANUS データウェアハウスにおけるデータ品質問題への取り組みとして、SDTM データ

ロードとバリデーション基準の検討、SDTM の詳細や制御された専門用語の条件付規制の

展開、SDTM 提出の経験の蓄積などを行っている。

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平成 18 年米国 DM 調査団報告書

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4. 定量的な安全性評価について

Critical Path で取り上げられている重要な課題のひとつとして、薬剤が潜在的に有害で

あるかどうかをどのように予測するかについての検討が取り上げられている。不十分な計

画は不適切なデータを発生させるため、安全性解析においては計画が非常に大切である。

データの構造が不十分な場合、適切な安全性解析が困難になり、FDA の統計専門家はデー

タ・マネジメントに多くの時間を費やすことになる。統計家の時間の 70%はデータの解析

とデータ・マネジメントに費やされると予測されており、十分なレビューが困難になって

いる。すなわち、よいデータはよい安全性評価の基盤になる。そのために CRF は標準化さ

れる必要がある。さらに、EDC 技術は適切に構造化されたデータの利用を促し、データの

正確性を向上させる。 2004 年に CDISC/SDTM が FDA メンバーにより評価されている。

この取り組みの目的はデータ・マネジメントに費やす時間を 20%未満まで減少させること

である。さらに解析用データモデルとしての ADaM の開発に関与し、解析計画の要件を定

型の手順で実施できるデータセットの作成を目指している。また、辞書(MedDRA および

WHO Drug)の利用も推奨している。次のステップは、次の安全性についての定量的手法

のガイダンスの作成することである。 リスク要因の評価 :Logistic モデル、CART (Classification and Regression Tree) イベントまでの時間の解析 :Cox の比例ハザードモデルとその拡張、AE Burden and

Discontinuation、再発事象モデル Episodic Disease Models:有害事象と一時的な病気に対する治療の利用 ベイズ法 –RiskMAP; 疫学に対する統計学的手法

<議論>

CDISC 標準はデータを短時間で正確にレビューすることを可能にする。 MedDRA の使用は重要である。 臨床検査機関でもデータスタンダードの問題が起きている。 データマイニングは作業が煩雑である。データクリーニングに時間がかかっていた。 一般診療の際の患者データ利用も考えられる。英国における GPRD(General Practice

Research Database)の利用が現実的である。 全ての有害事象データを1つのデータベースに格納することを現在検討中である。 一般的には、データの約 20%が有効性データである。米国の場合、CRF データとデータ

ベースの一致性については有効性では 100%チェックして、安全性ではサンプリングでチェ

ックしているのではないかと思う。 ガイダンスは 2007 年末に公表することを目標に作成する。

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2.3. PhRMA Biostatistics & Data Management Technical Group

2.3.1. アジェンダ

【日 時】2006 年 10 月 13 日(金) 13:00~16:00 【場 所】PhRMA Head Office (Washington D.C.) 【出席者】 C. Frank Shen, Ph.D Chairman, Biostatistics & Data Management Technical Group, PhRMA Executive Director, Exploratory Development,

Global Biostatistics & Programming, Pharmaceutical Research Institute, Bristol-Myers Squibb Company

Theresa Martino, MS Director, Clinical Data Management, Johnson & Johnson Pharmaceutical Research& Development.L.L.C.

John D. Mestler Head of Global, Clinical Data Management Clinical Applied Technologies, P&G Pharmaceuticals, Inc.

Catherine Celingant Director, Clinical Data Management, Millennium Pharmaceuticals, Inc.

【アジェンダ】 Welcome remarks Introductions Overview of data management role within BDMTG JPMA presentation Perspective by 3 US companies(Johnson & Johnson、Millennium、P&G) Closing remarks

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平成 18 年米国 DM 調査団報告書

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2.3.2. エグゼクティブ・サマリー

標準化について

EDC を導入するためには、DM 業務のみではなくプロトコール作成から帳票作成までの

試験全体の業務を標準化して効率的に行う必要がある。そのためにはプロセス変更を含め

た問題も多く発生するため、上長の理解およびサポートが非常に重要である。

EDC 関連

EDC 導入による影響

EDC 導入により LPO(Last Patient Out)からデータロックまでの期間が短縮される。

また、クエリー発行による Site への確認も減少し、品質の高いデータがより早く入手でき

る。 紙 CRF の場合は試験終盤に多くのリソースが必要となるが、EDC の場合は試験開始前に多く

のリソースが必要である。そのためのプロセス変更などの対応が必要である。そのプロセ

スが EDC 対応に変更されることにより、日本のオーバー・クオリティの問題は改善される

と思われる。

EDC 導入の状況

米国では現時点で全臨床試験の約 30%の試験が EDC で実施されており、数年後には大部

分の試験が EDC で実施されることになる。EDC 導入初期段階では数多くの問題があった

が、現在では解決されてきているために日本に EDC を導入するには非常に良いタイミング

である。 EDC 普及に伴う展望

紙 CRF が EDC になるのはデータ収集の一手段であり、臨床試験に関連するデータは、

CRF 上のデータや臨床検査値データなど総括報告書のための解析・集計に必要なデータだ

けでなく、管理上必要なデータを含めると非常に多岐に渡る。今後は同じような情報を規

制当局側とスポンサー側で重複して持つのではなく、一元管理されたデータから用途に応

じて抽出することが期待される。そのためには、データウェアハウスの導入が必要になる

と思われる。

日本のオーバー・クオリティについて

データの品質確保は 後にまとめて行うのではなく、常に高い品質を保っていくようなプ

ロセスを検討すべきである。規制当局も結果にエラーがあることを重視するのではなく、

プロセスやメトリクスが正しく実施されていることを重視していくべきである。

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規制当局への対応について

EDC 導入について PhRMA がイニシアチブをとってガイダンス*を作成し、FDA をプッ

シュしている。企業(業界)と規制当局の目的は同じであり、より良い手順へ改善が必要

な場合などは協力して検討している。日本でも目的意識を統一して、もっと両者のコミュ

ニケーションをはかるべきである。

2.3.3. 詳細

1. Overview of data management role within BDMTG

PhRMA ではデータマネジメントに関して Clinical Leadership Committee(CLC)という

組織の中の BDMTG(Biostatistics Data Management Technical Group)で活動している。 CLC 内のグループを以下に示す。

BDMTG は QT Statistics ET、Multiple Endpoints ET(MEET) 、Pharmacogenomics

(PGx)SET、Guidance Review Team(GRT、SAS Validation Survey Group、Electronic Data Capture TG、FDA Staff College、Clinical Data Management(CDM) Leaders Forum、

Lab Normals Expert Team、SDTM Expert Team に分かれて、統計・DM 関連の活動を行

っている。 Knowledge Transfer の具体的な活動として統計/DM 部門への Forum、FDA 若手への

トレーニングを実施している。

* Electronic Clinical Data Capture, Position Paper Revision 1, May 1, 2005

Clinical Leadership Committee (CLC)

BDMTG (Biostatistics Data

Management Technical Group)

Drug Metabolism

Health Outcomes Pharmacovigilance &

Epidemiology

Clinical Pharmacology

Clinical Research

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Forum

今年で 13 回目になる Forum を毎年実施している。Forum 案内は各社の統計/DM 部門

のリーダー宛に行っているが、参加者はリーダー限定ではなく、リーダーから推薦された

統計・DM メンバーの参加も可能である。なお、Biotechnology 領域の「Bio」という組織

は BDMTG とは別途活動している。

FDA へのトレーニング

FDA 配属2~3年という経験の浅いスタッフを対象にしたトレーニングを実施している。

FDA のスタッフは、データ入力やデータクリーニングなどの実務的な DM 業務を経験した

ことがないため、実際の業務を理解してもらうために定期的に行っている。

2. Perspective by 3 US companies (Johnson & Johnson、Millennium、P&G)

PhRMA の3名が各企業における EDC および標準化の普及について報告した。

①Johnson & Johnson

6 つの企業に対して1つの Global Clinical Operations(GCO)を設定しているが、各社で

意見も異なるためにその調整が特に大変である。

標準化

DM 業務を CRO に外注するときの効率を考え、CDISC/SDTM をベースとした標準化を

確立している。標準化は DM 業務のほとんど(Data Specifications、電子 CRFs、Data Management Plan、クエリー Specifications、Metric Reports 等)で可能である。GCO で

6 つの企業をサポートするには標準化は必須である。

EDC

これまでは、EDC として InForm や PDS を使用してきた。2006 年から Medidata 社の Rave

を GCO のツールとして以下の理由により選択した。2007 年からは全て Rave に統一する。 Cost が他と比較して安価であった カスタマーサービスが手厚い Data セット単位でコントロールされている EDC と Clinical Data Management System (CDMS) が一体型で使いやすい DB が Oracle でも対応可能で、データ移行が容易 Security が確保されている ユーザーフレンドリーで使いやすい

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eSource

eSource システムを利用する PhaseⅠunit をベルギーに設立した(PhaseⅠunit は他にも

存在するが eSource システムを利用できるのはここだけ)。全ての患者データが eSource シ

ステムに直接入り、コーディングなどの Backend 業務のために DM グループへ Transferされる。

②Millennium

Millennium 社は社員 1300 人ほどの比較的小さい企業で、DM は 1 グループしかない。2年前は何もない状態であり、抜本的な改革に着手した。

Clinical Technology Platform

大きく以下の 3 つで構成される。 標準化 EDC Data Warehouse

標準化

標準化を行う目的は Study セットアップや報告までの時間を減らすこと、データの質を

促進することである。15 の主な Module(AE、CMED、MH、PE、LAB、ECG など)を

CDISC をベースに標準化していく。Completion ガイドライン*、Edit チェックなども標準

化していく。癌領域の標準化にも取り込んでいく予定。

EDC

EDC システムは Phase Forward の InForm を以下の理由で選択している。 Web-based である カスタマーサービスは今ひとつであるが、ローカルでコンサルティングサービスがあ

る Site での経験者が多い InForm の次の version の CRF 作成機能やコーディング機能に期待している。可能な限

り EDC を利用していく方針である(PhaseⅠや優先度の低い試験は除く)。社内リソース

の問題より、PhaseⅠは全て外注している。

* CRF 記入のルールを定めたドキュメント。「CRF 記入の手引き」。

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EDC を利用した場合の効果について

紙 CRF(当社) EDC 業界平均 EDC(当社)

LPO から DBL*までの期間 153 日 30 日 41 日

クエリーの発行比率 52.5% 12% 14%

Protocol 承認から DB setup 227 日 89 日 81 日

これは EDC で初めて行った試験(抗炎症剤、110 症例)の結果であり、投与期間が短か

ったために短時間で成果をアピールできた。

Data Warehouse

Operational、Repository、Browsing/Reporting の 3 つで構成される。Operational には、

EDC、eDM、PRO†、LabData、CTMS(Clinical Trial Management System) Data な

どが含まれる。Repository は、ETL(Extract、Transform、Loading)、CDW(Clinical Data Warehouse)、Business Intelligence-Reporting で構成される。Browsing/Reporting には、

Metrics、Tracking、Data Review、Data Validation、SAS などが含まれる。

③ P&G

Global の臨床試験関連業務を行なう組織は、Statistics、Data Management、Scientific Writing、Clinical Operations で構成されている。医薬品のみではなく、Consumer Products、Oral Care なども含まれている。

標準化

自社の標準化は 1990 年代半ばから始まっており、Legacy 試験は自社の標準化で行われ

ている。現在は全ての試験で CDISC/SDTM を使用している。FDA 申請には SDTM で対応

するので、Legacy 試験は SDTM を migrate する。

EDC

経緯 1999 年:ASP(Application Service Provider)モデルの EDC を InForm で開始

* Database Lock † Patient Reported Outcomes;患者が直接入力するもの。たとえば、患者日誌や患者に対する

質問票などがこの対象となり、さまざまなベンダーが入力機器(PDA など)の開発に参画して

いる。

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2000 年:EDC と紙 CRF のハイブリッド試験を実施 2001 年:InForm のライセンスを取得 2004 年:全試験 EDC で実施 2006 年:EDC から SAS へデータ移行する仕組みを構築 InForm は技術移管してもらっており、Rave はコストが高かった。全ての施設が EDC 環

境になっているわけではないので、EDC と紙 CRF とのハイブリッドで実施している。OTC領域のアンケート調査で、受領した FAX をイメージ化して、EDC に取り込もうとしたが、

非常に手間が掛かったので、ハイブリッドも許容している。

eSource

現在、eSource は利用しておらず、患者日誌もまだ紙である。規制の問題などもあるが、

将来は電子化していく流れである。

Quality Review/SDV

現在、SDV は 100%実施している。将来は重要なものだけチェックする方向に移行してい

きたい。

3. Q&A

Q : PhRMA「JPMA が推し進めようとしている標準化のベースは CDISC か独自のもの

か?また、言語は日本語が主流と感じているがどうか?」 A : CDISC がベースになると思うが、MedDRA のように国によって調整が必要な部分は

残ると思う。言語は英語のみで実施している外資系企業はあるが、大部分はまだ日本語で

ある。英語が基本となるのは時間がかかることだと思う。

Q : JPMA「紙 CRF の原本に相当するものは電子 CRF では何か?」 A : PhRMA においても問題認識は同じであり、現状は紙をオリジナルとしている。White

Paper や Position Paper を GCP や CFR Part11 を考慮して書いているが、いずれも紙ソー

スをベースにしており、eSource を前提としていない。EDC が紙ベースの GCP のどこに

当てはまるかを検討したもので、FDA へデータ提出の場合に基本的な質問(誰が文書を所

有しているかなど)には答えられるようにしている。今後、FDA に対して電子データに監

査証跡があれば電子 CRF の PDF ファイルをオリジナルとして受け入れてもらえるように

主張していく。

Q : PhRMA「EDC を導入することにより日本のオーバー・クオリティは改善されると思

うか?」 A : EDC 導入には標準化およびプロセス変更が伴うため、オーバー・クオリティのかなり

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の部分は改善されると思う。

Q : JPMA「日本で EDC 導入していくには良い時期であるか?」 A : ここ数年、EDC システムの問題点は改善されており、その成果を受け継ぐことがで

きるので、EDC 導入のタイミングとしては非常に良いと思う。 Q : JPMA「日本で EDC が普及していない現状の要因は何だと思うか?」 A : PMDA が EDC を積極的に推進していないことが考えられる。米国でも 2002 年の

PhRMA の e-clinical study おいて、EDC 導入に企業が踏み込めないのは FDA の姿勢が大

きな理由であった。その後、FDA が EDC 導入に積極的になり、全米で EDC 導入が増加し

ている。日米の文化の違いも考えられる。米国では、製薬業界がイニシアチブをとり、FDAをプッシュしてガイダンスを作成し、共同してより良いものに改善していく風土である。

日本でも必要なことは積極的に当局へプッシュしていくべきである。

Q : JPMA「Book 型 CRF についてどう思うか?」 A : 以前、米国でも Book 型 CRF が使用されていたが、Visit 型 CRF へ移行している。

Book 型 CRF はデータクリーニング作業が CRF 回収時に集中し、試験終盤のタスクが増え

る。サンプルサイズが大きい場合は対応困難になり、日本が従来行なってきた試験の規模

が小さいことも原因でなはいか。

Q : JPMA「日本では、いまだ全件読み合わせが多く行われていることをどう思うか?ま

た、米国で実施されたデータを日本に提出する場合、PMDA チェックは全件行っている

か?」 A : 米国で実施されたデータを日本に提出する場合、PMDA は全件確認を行っていないと

思う。FDA によるデータ監査は全ての症例に対して行っているわけでなく、サンプリング

で実施している。結果を重視するのではなく、プロセスやメトリックスが正しく実施され

たかの確認を重視している。日本ではエラーが見つかった場合に全責任を企業に追及され

るために全件チェックを廃止できない環境にあるのが原因かもしれない。PMDA による監

査はデータを個々にチェックするのではなくプロセスやメトリックスに焦点をあてること

が重要である。

Q : JPMA「入力データの質は EDC 導入により改善されるか?」 A : 初期入力のデータを変更する割合が高いとクエリーが多くなり手順も煩雑になるが、

EDC 導入により入力時の論理チェックが可能になる。そのため、EDC 導入により入力デー

タの質は明らかに改善される。

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Q : JPMA「日本では臨床検査の異常変動の判定を医師に依存していることをどう思う

か?」 A : 理由のひとつは、日本の Investigator が米国よりも権威があると思われているからだ

と思う。日本では、前後の推移や他の関連するパラメータの推移なども含めて判断してい

るので、クリアな基準を設定できない。 米国でも癌領域など領域によっては、クリアな基準を設定できない場合もあり、医師に依

存している場合もある。また、企業(P&G など)によっても医師に依存している場合もあ

る。企業内の Pharmacovigilance 担当が判断している場合もある。 Q : PhRMA「日本では Investigator とデータレビュー会議(症例検討会)を実施してい

るため、LPO(Last Patient Out)から DB 固定までに時間が非常にかかる。米国ではデー

タの責任はスポンサーなので、このような慣習はない。何のために、どのようなことを実

施しているのか?」 A : 全症例まとめて統一的な見解で採否を決定するために伝統的に行われていたが、 近

は社内のみで実施することが多い。当局から何らかの判断を行った(行わなかった)経緯

を求められた場合の対処としても実施されており、オーバー・クオリティ問題の1つであ

る。社内に Medical Doctor がいないことも理由の1つと思われる。

Q : JPMA「EDC 導入により、LPO からデータベース・ロックまでの期間が短縮となっ

た要因は何だと思うか?また、EDC を実施した 初の試験から改善がみられるか?」 A : データのクリーニングが大きく改善された。CRF 回収を待たずにデータクリーニング

が開始され、Site へもリアルタイムに対応ができ、クエリーへの対応も迅速にされるため、

時間が経過してから考え直すので混乱するということが少なくなった。 初の EDC 試験に

おいても改善はみられるが、EDC の経験を積むことでデータプロセスが改善された。DMの Knowledge も同様だが、CRF が紙から電子に変更されることにより、データクリーニン

グの手順などに変更が生じる。紙 CRF では試験終盤にリソースが大きくかかるが、EDCでは試験開始前にリソースが大きくかかるので、プロセス変化に対応する必要がある。関

係者が EDC 自体の操作およびプロセスに慣れて学習効果が現れる。プロセス変化に対応し

ていくためには、企業(部門)トップが EDC を理解しサポートしていくことが非常に重要

である。 Q : JPMA「EDC を 初にスタートするには、小規模試験が望ましいか?」 A : 大規模試験では問題発生時などで対応できなくなる場合もあるため、まずは小規模試

験から開始した方が良い。また、EDC のメリットを評価するためにも治験期間が短い試験

で実施し、早く評価を行い、EDC を促進させることが望ましい。

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Q : JPMA「米国では DM 業務を外注している企業が多いが、P&G は社内で実施してい

る理由は?」 A : 成果や利益に対してオーナーシップを持つという考え方が基本であり、Customer

Products を含めて R&D の能力を社内で持っておく方が良いと考えている。DM の一部業

務を外注していることもあるが、コストが安いだけで外注することはなく、EDC で同じシ

ステムを使用しているか、トレーニングもできているかなどの条件(契約)も複雑である。

社内の事情も踏まえて総合的に判断している。

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2.4. Pfizer Inc. PhaseⅠ Unit (New Haven)

2.4.1. アジェンダ 【日 時】2006 年 10 月 10 日(火)6:30~14:00

【場 所】Pfizer Inc. New Haven Clinical Research Unit

【出席者】

Deborah A. Herbst Director, Statistical Analysis & reporting, Development Operations

Robert R. Goodwin Executive director, Global Clinical Data Services, Development

Operations

Thomas A. Verish Senior director, Clinical Programming & Writing Site Head,

Development Operations

Joyce A. Van Winkle Director of Clinical Operations, New Haven Clinical Research Unit

Mika Ogasawara Manager, data management, Development Operations, Japan

【アジェンダ】

Laboratory tour(朝 6:30 開始!) JPMA presentation PIMS(PhaseⅠManagement System) GCDS(Global Clinical Data Services) CPW(Clinical Programming & Writing) Data warehousing, data browser EDC Data standards

2.4.2. エグゼクティブ・サマリー

第Ⅰ相試験

データ取得後 24 時間以内に全世界のスタッフが 終テーブルを閲覧できるよう展開中。

アウトソーシング戦略

社内のオフショアセンター(ムンバイと上海)の完全活用を前提としており、US との文

化の違いを認識。

標準化

品質を標準類(CRF やデータベースの標準化、標準の辞書など)に組み込むことで、開

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発期間の短縮と全世界の全開発段階のデータ統合を推進。

開発オペレーションの品質管理

標準は変わるものであり、SOP や各種ツール、インプリなどへの影響が大きいことから

日々のメンテナンスが非常に重要。

CDISC

CDISC フォーマットは FDA 申請時にのみ使用し、他は社内標準を使用。

EDC 試験

大規模試験や多国間試験では紙 CRF とのハイブリッドが避けられないのが実情。

EDC システム

自社構築システムから Oracle Clinical RDC へ移行予定。

EHR(Electronic Health Records)

US では政府が普及をサポートしており、現在政府が全国統一システム構築を目指して予

算化中。

ディスクレパンシー管理

ディスクレパンシー管理の主体は医療機関側へシフトする方向へ。SDV もサンプリング

で実施。

データウエアハウス・データブラウザー

2007 年中に Pfizer 保有の全データを統合させ、Investigator も閲覧可能な環境を提供す

る予定。

2.4.3. 詳細

1. ラボツアー

PhaseⅠ unit 概要

Pfizer Clinical Research Unit(PCRU)は 4 ヶ所(New Haven/Connecticut 州、Ann Arbor/Michigan 州、Singapore、Brussels)の PhaseⅠunits で構成され、同じ標準類を使

用している。これらの PhaseⅠ unit は全て、改築でなく新たに設計しており、調剤や保管

機能を充実させるため薬局のスペースを広く取っている。 New Haven の PhaseⅠunit は 2005 年夏に開設された。ラボを有しているのは New

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Haven のみで、他は病院や近くの施設のラボを使用している。New Haven では 2005 年 6-7月より試験がスタートし、これまでに採血 20 万件、ラボ 30 万件、ECG 6 万件、60 試験ほ

どが実施された。現在、13-14 試験が同時に動いており、そのうち 2 本が Pfizer Japan の

試験である。この試験は 24hr 通訳付きで、NY オフィスがリクルートエージェンシーを通

じて被験者を募集している。2 本の試験のうち 1 本は、米国在住の日系米人第一世代が対象

である(後刻、実際の投与場面を見学)。

Facility

被験薬製造には、打錠装置の他に“Xcelodose”を使用している(活性成分をカプセル化

する機器で、世界で 23 台。トップ 10 の製薬企業は全て所有しており、約 3000 万円。Pfizerでは製造 unit も所有)。懸濁液からのカプセル化が可能であり、苦くても飲めるのが利点。

また、被験薬製造を工場に依頼すると 6 ヶ月くらい要するが、ここではバルクから直接調

剤でき、且つフレキシビリティーがある(微量調整可能であり、特にヒトに 初に投与す

る試験では重要)。カプセルは金型を利用し、タッピング法でカプセル化している。被験薬

は、分析グループが 24 時間(微生物検査)~72 時間(冷蔵安定性)の安定性を確認した後、

投与している。 MRI や PET はエール大学で実施し、薬剤が脳のどの部分に到達したかがリアルタイムで

転送されており、投与量の再調整に関する意思決定が短時間で可能である。

情報管理(バーコード他)

薬剤や血液・尿などのサンプル管理は中央集中化しており、一箇所の昇降機を利用し搬送

している。 サンプル、機器、被験者の写真入り ID カード(FDA は被験者の実在確認を好むので写真

をデータベース化している)などの情報は、全てバーコード管理しており、人間の手入力

は極力減らしている。サンプルを何時、誰が、どの保冷庫に保管したかも全て管理できる。

また、薬剤ボトルにもバーコードがあり、何時投与したかの時間管理も可能。 被験者はバーコードだけでなく、試験毎に色で区別されており、色の異なる T シャツを着

用している。 ラボなどの部屋の時計や PC の時刻はサーバー管理されており、全て同一時刻を表示。

被験者募集

被験者の募集はラジオ、新聞、WEB*で実施し(テレビは利用していない)、電話でスク

リーニングしている。募集に当っては、“1 ボランティアが 37.7million の人々を救う”と

訴えている。なお、30 日以内に登録を繰り返してはいけないとの制限を設けている。

* http://www.newhavencru.com/

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平成 18 年米国 DM 調査団報告書

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被験者は New England 地区の住民が殆どだが、Philadelphia や Baltimore から 3-4 時間

かけて来る方もいる。 被験者は来院後の身体検査で水、食べ物、OTC などの持込をチェックされる。入院期間

は 短 24 時間、 長 23 日間で、外来のみの試験もある。リクリエーションルームにビリ

ヤード、ゲーム、インターネットなどの設備を整えており、被験者の居心地を重要視して

いる。

ECG

ECG の解析には Trace Master、Pharma view など 3 つのソフトウエアを利用しており、

開示時間は 96 時間、ホルターとテレメトリーの 2 つの機能を有している。QT/QTc は自動

計算で、全 4 units のデータが閲覧可能。集積データから QT などの測定幅を変更し、再計

算・再表示させることが可能。過去のチャートの並列表示やベースラインからの動き(デ

ルタ)の表示も可能。10 のデータポイントが PIMS(PhaseⅠ Management System;後

述)に自動転送される。 評価はMDが実施し、Normal /Otherwise normal(多少異常認めるが臨床的にはNormal)

/ Abnormal の 3 カテゴリーで評価している。コンピューター診断の上書き修正や、コメン

トリストからのコメント追加も行っている。

日本人を対象とした治験の事例紹介(投与の見学)

被験薬の投与は通常 4 分毎に行われている。ボトルにプロトコール番号やプロトコール色

が表示されている。 初に被験薬に関する諸注意を伝え、「ミニカップの水を飲用」 → 「カ

プセル服用」 → 「カップの水を飲用」 → 「口を開けさせ服用確認」 → 「ミニカップ

の水を飲用」の順番で投与されている。

2. PIMS (PhaseⅠ Management System)

PIMS は 4 units で実施される第Ⅰ相試験を電子的に管理するシステムで、単なる EDCツールではない。被験者募集、試験のセットアップ、サンプルラベル、被験者の写真・ID、

サンプル管理、図表管理、報告書・リスティング作成、被験者への支払い、利用者と役割、

処方などをモジュール化しており、LIMS(Laboratory Information Management System)

と繋がっている。 PK パラメータや薬物濃度、外部で解析後に転送が必要なデータ(臨検は含まれない)、

ランダマイゼーションは PIMS でなく OC(Oracle Clinical)で管理される。 PIMS への入力は Part 11 対応で、個人 ID/PW によりアクセス可能なシステムを制限し

ている。検査等の実施時刻が入力されるとプロジェクトチームも閲覧可能となる。 PIMS は市販のツールで Greg Norman というベンダーが開発した。ベンダーの規模が小

さく、且つ高額のため、小さい企業では導入が難しいと思われるとのこと。

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平成 18 年米国 DM 調査団報告書

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PIMS は被験者データ管理用だが、スタッフ管理用には「Dashboard」というシステムが

ある。プロトコールのスケジュールをリスト化した様なもので、例えば ECG に関しては、

Mrs. Van Winkle が毎朝 ECG 測定機器毎に担当者を配置しており(採血のトレーニングを

受けている者を張り付ける)、管理者としての人員配置に便利なシステムである。

Dashboard では、資格更新時期や ECG などの機器の較正時期も管理している。 Q : 新規プロトコールに関して PIMS に登録するのに要する時間は? A : 慣れている者が担当すれば 1-2 時間で登録完了する。 Q : ラボや PK 以外の一部のデータに関し、OC を使用しているとのことだが、PIMS と

OC の関係は? A : 以前はラボデータも OC でチェックを掛けていた。現在、幾つかの units では PIMS

でなくOCを使用している。PIMSで出来ないデータタイプや無作為化はOCで行っている。

毎晩、看護師が帰宅前に PIMS を見てチェックしているので、毎晩データレビューが行わ

れているようなもの。また、PIMS はバーコード管理中心で、手入力が少ない。データの照

合はプログラマーによっても行われている。PK パラメータや血中濃度の測定は外部委託し

ており、eNCA というシステムを使用し、OC へ転送している。

3. CPW (Clinical Programming & Writing)

CPW の目的

きちんとした品質のデータをタイムリーに提供するために、標準類と委託パートナーを利

用し、データセット、提示資料、解析結果、総括報告書を作成することを目的としている。

アウトソーシング戦略策定上の方針

ムンバイと上海(Pfizer のオフショアセンター)の完全活用を前提とし、ムンバイ・上海

が技術的あるいは業務量負荷により業務を受け入れられない場合には、特定の FSPs(Full Service Providers)に委託している。FSPs も余裕がない場合には、CRO あるいは個別の

受託業者を利用しているが、現在の委託パートナーがカバーできない専門業務に限定して

委託している。なお、上海については 2007 年中に機能を強化する予定で、現在はトレーニ

ング段階である。

FSP の要件

各 FSP には以下を求めている。 Generalists でなく specialists の CRO(一連の臨床研究プロジェクトにおいてモニタ

リング、DM、解析・レポーティング、中央検査サービス等の専門的機能を担う) 要求に応じた要員提供

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自立性(管理、職能開発、教育、コンピューター設備、オフィススペース)

FSP との契約モデル

委託形態は以下の通り。

まず、MSA(基本契約)において Pfizer と CRO の関係に関連する法律用語と条件を規

定する(CRO あたり 1 MSA)。次いで、Scope of Services(業務範囲)において、価格、

提供可能なサービス、IT 環境概略、必要な設備、メトリクス、標準サービスを規定する(複

数の機能に関係する場合、複数の締結もあり得る)。個々の Work Order(作業指示書)に

おいては、限定された業務単位に対する特定期間内のリソース、費用総額、タイムライン、

支払期限を明確にする。 現在、業務内容、所要期間などから、3-4 のプライマリープロバイダー(FSPs)を選んで

いる。プロトコール毎に都度契約を締結すると交渉に数ヶ月要するが、Pfizer は各社と基本

契約を締結しているので、時間は要さない。 基本的にはデータレビュー等の DM 業務は 1 試験を 1 社に委託するが、1 試験を 2 社に

委託することもある。 なお、モニターはその殆どが FSP のモニターである。

アウトソースの鍵

Pfizer が考えるアウトソースの鍵は以下のとおり。 Standardize(標準化すること) Minimize project team impacts(薬剤プロジェクトチームへのインパクトを 小限に) Suggestions for success(成功するための示唆を与えること) Patience(耐えること) Detail(詳細に規定すること) Give permission – Give autonomy(自主性を尊重すること)

“24 hour challenge”

PIMS のセットアップやプログラミングの標準化により、リソースを掛けたり、提供デー

タに優先順位を付けることなく、全ての第Ⅰ相試験においてデータ取得後 24 時間以内に全

Work Order

Scope of services

Work Order Work Order Work Order Work Order Work Order

Master Services Agreement(MSA)

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世界のスタッフが PIMS 内データから作成された final table を閲覧できるよう、“24 hour challenge”を展開している(2006 年第 4 四半期中の完全実施を予定)。

Final table が再作成されることがあれば、データに起因することなのか、作表に起因す

ることなのか、今後評価していく予定。メトリックスは、LSLV(Last Subject Last Visit)からデータ固定までの期間(PCRU が評価)とデータ固定から作表までの期間(CPW が評

価)を予定している。

“24 hour challenge”を展開する上で学んだこと

標準類の標準化:Global Clinical Operations の標準化(既往歴・スクリーニング検査・

アルコール摂取状況・喫煙歴等の原データ、既往歴、併用薬、有害事象、検査、ECG、

バイタルサイン、PK 等のデータベースや CRF の標準化) プロセスの標準化:コミュニケーションルールの構築、SGT(System Governance

Team)の設置(システムやビジネスプロセス変更の提案、機能・優先順位・設定・標

準化の指示、種々の判断、部署間の調整等に関して上位責任を負う) プログラミングの標準化(解析 Group、Reporting Group との共同作業):PIMS デー

タの抽出、データセット作成、作表等 報告書作成プロセスの標準化:DORP(Development Operation Reporting Plans)の

導入(臨床試験にかかわる全員の約束事を定めたもので、タイムラインが規定されて

いる。解析計画書、プログラミング計画書、表のリスト、図表の構造、トップライン

報告計画、データ品質規定等からなり、1 症例目の投与開始前に 終化される) グローバル標準の作成:表のリスト・様式やタイムライン(標準解析計画書は現在作

成中)

“24 hour challenge”を展開する上での限界

技術的制限(治療内容や投与量へのアクセス) データベース間のリコンシリエーション(無作為化、治療、薬剤処方、予定された処

置内容) 4 ヶ所(4 units)で 1 CRU の構成(PIMS のバージョン管理、臨床検査や ECG の測

定管理、閲覧環境) 試験終了後の開鍵に関する SOP や技術上の制限

“24 hour challenge”を展開する上での前提条件

Facility のプログラミングに支障ないタイミングで解析報告書が 終化されること データ抽出時(データベースリリース時)にデータが 100%クリーンであること プロトコール逸脱リストはスタディーチームが常にタイムリーに確認すること(症例

除外に影響を及ぼす)

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4. GCDS (Global Clinical Data Service)

GCDS の組織図

*1; IND の安全性に関わる業務

*2; FDA への Annual report

*3; User acceptance test

アウトソーシング戦略

開発オペレーションと臨床研究組織(CROs:Clinical Research Organizations)のコア

部分との関係を戦略的に構築し、Pfizer の開発業務委託の生産性を向上させることを目的と

している。また、Pfizer と FSPs(Full Service Providers)の境界線をなくし、Pfizer 所有

技術の使用を認め、機能サービス提供者(FSPs)のビジネス拡張を許容している。

FSPs に対する DM 関連委託業務(最近の契約内容より)

CRF スキャニング/インデックス作成 データ入力 電子的データ転送 CRF デザイン データベース構築 バリデーション工程のプログラミング ディスクレパンシー管理

Group Leads (4units)

Technical Lead

Data Standards & Dictionaries

Sourcing Manager

Business Support, Testing &

Deployment

Data Systems Lead

CRF, DB, Programming,

Randomization,e-Data,

e-Diaries, EDC

Submission Assembly,

e-CRF/Scanning Processing, Safety

Reconciliation, Safety Tables,

sIND*1, AR*2/IBs

Clinical Data Coordinators

WW Head Global Clinical Data Services

Meta Data Mgt, Change Mgt,

Standards Analyst,

Dictionary Analyst

Patient Data Management, Clinical Trials Management, Scanning and

Indexing, EDC,

Registry, Testing/UAT*3

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データレビュー コーディング

FSP モデルの利点

基本委託契約の締結、FSPs との事前の価格交渉により、委託に関連する要員数が削減

した 試験毎に新たに期間、条件、価格を交渉する必要がなくなり、FSPs が試験業務に積極

的に携わることができるグローバルな枠組みを提供している FSP のリソースは必要に応じてプロジェクト間で共有でき、現行のリソースを現在動

いている作業活動に提供可能である

現在の課題

オフショアリソースの大幅な増員 異なる時間帯を数多く管理する必要性 リソースを眠らせているプロジェクトチームへの新モデル導入 低コスト地域における実績管理 需要と供給への理解

サマリー

DM は製造工程における作業のような管理が可能である 厳しいコントロール、ビジネス監視のためのメトリクスが必要である FSPs は DM サービスを提供する意味でコスト改善効果がある 文書化されたプロセスや標準類と同様に、十分確立された QC の実践が必要である

Q : FSP を利用する場合、トレーニングが重要と思われるが、どの様な工夫をしているの

か? A : 各 FSP(CRO)が行っているプロセスとは別のプロセスを要求している(Optimizing

Project Description)。皆が Pfizer の詳細計画(blue print)に従い、Pfizer のプロセス、

SOP および Pfizer のシステムを使用する。一貫性とプロセスを保つために契約で定めてい

る。なお、契約で定めた以外のプロセスは各 FSP の SOP、プロセスに従うこととなる。

5. Data Standards

Pfizer では、治療領域毎に安全性/有効性に関する標準類を使用することを決めている。

堅固な標準類は以下の利点を生むと考えている。 品質が標準類に組み込まれる 再実行や医療機関との過剰なやり取りが減る

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薬剤開発プロセスの効率が上がる 終報告書までの期間が短縮 社内外の問合せに対し、迅速かつ効果的に Pfizer が解消 全世界の全開発段階のデータ統合を促進 結果として、申請、マーケティング材料、当局承認が早くなる 現在の Pfizer は、幾つかの会社が合併して誕生した組織であり、それぞれの会社の標準

類が混在していたため、共通の標準類を作るところからスタートした。有効性データの標

準化に関しては、3 年前に試みたが断念した。現在、安全性に関して 1 つの標準、有効性に

関しては治療領域毎に標準化している。MedDRA、LOINC(ラボ)、CTC(癌領域)など

は 5 年前から標準化を開始した。CDISC フォーマットは FDA 申請時にのみ使用している。

データ標準の中には必須の項目と選択項目がある。データ標準には、CRF イメージ、記入

ガイド、データチェック仕様、テーブルイメージなどが総合的に管理されている(報告書

作成上のアルゴリズムも)。これらは、UIMS(Unified Issue Management System;標準

類のメンテナンスシステム)を介して行なわれる。標準は変わっていくものであるが、SOP、各種ツール、インプリなどへの影響が大きいことから、標準類のメンテナンスに 162 名の

スタッフが関与している。標準類が出来上がった後のメンテナンスに関しては、世界中か

ら提案が出されている(累積 30,000 件)。 Pfizer ではデータベース固定後 3 日間でのレポートアップを基本としているが、現在、デ

ータベース固定後 2.5 ヶ月で FDA へ NDA 申請することにチャレンジしようとしている。 Q : グローバル標準ではタイムラインも規定しているか? A : 何日以内に実施する等、プロセス毎のタイミングを PIMS では規定している。 Q : 標準解析計画書の数は? A : Bio-availability、ADME、First in man など、4-6 つはあると思う(現在検討中のも

のもある)。 Q : 解析計画書は治療領域毎ではないのか? A : 生物統計家は領域毎に別れているが、他に臨床薬理を担当している生物統計家もおり、

後者が標準化を担当しているのでこの様な分類になっている。 Q : SAE リコンシリエーションの方法は? A : ARIS/g という SAE 等の安全性データを管理するデータベースと治験データベースで

管理されるクリニカルデータについて、13 項目に限定して確認している。 Q : QC プロセス、データ品質基準は?

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A : エラー率は定めていると思うが、検出されたエラーは必ず修正している。Pfizer は会

社の方針からエラーは必ず修正する。ただ、Warner Lambert を買収した際、彼らは 25%のエラー率でも OK としていた(データ固定を早くすることを優先させていた)。我々は

clean & perfect を目指している。

6. EDC / Data Standards

何故 EDC なのか?

US では 50%以上の Investigator が web-based を希望しており、2/3 の Investigator が“スポンサーはweb-basedのEDCに変えていくべきだ”と考えている(Forrester Research社の 近の調査結果)。また、PricewaterhouseCoopers 社(註:米大手会計事務所)は、

EDC や周辺技術の進歩により、臨床試験のコストは 20%削減可能であるとの評価結果を公

表した。 価格、大規模なプロセス変化や標準類の必要性、医療機関の幾らかは紙を好むという経験、

マーケットリーダーの不在、規制当局の保守的主義などの障壁はあるが、Pfizer は今後も積

極的に EDC を利用していく。

今後の方向性

EDC を利用した臨床試験は今後も増加すると考えている。EDC を利用した臨床試験の割

合は、CDISC の発表では、2003 年の 27%が 2004 年には 30%に増加しており、Pfizer の経験でも 2005 年の 70%が 2006 年には 82%に増加している。 また、2004 年当時、製薬企業は EDC かつ/また IVRS(Interactive Voice Response

systems)を第Ⅰ相-第Ⅳ相の臨床試験の 44%に使用していたが、これは 2000 年当時の

e-solutions を用いた試験の割合の 4 倍に相当する。さらに、近年、“Adaptive clinical trial design”の考え方が出現し、データをリアルタイムでアクセスする必要性が高まっている

ことを踏まえると、この傾向はまだ続くと考えている。 一方、ベンダーツール市場に関しては、市場のさらなる整理統合や、統合データの提示

(Clinical Data Management System、Clinical Trial Management System、Customer Relationship Management、Safety Reporting)が更に進んでいくと考えている。技術面

においては、専用ラップトップから web への流れ、タブレット型 PC*の導入が進むと予想

される。

EHR(Electronic Health Records)

US では、法律、助成金および National Health Information Network の設立により政府

が EHR の普及をサポートしている。エール大学では市販の EHR システムでなく独自に構

* 液晶ディスプレイを持ち運び可能にしたような薄型のペン入力式携帯コンピュータ

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築したシステムを使用しており、Indiana 州、Michigan 州などでは特定の 1 市販システム

を使用するよう定められている。現在、政府が全国統一システム構築を目指して予算化中

である。 EHR 領域におけるベンダーとしては、General Electric Healthcare、Cerner、Epic

Systems が挙げられる。 EHR の利点としては、コスト削減や潜在的な研究者や患者群の拡大、ポピュレーション

ターゲッティングの促進が、製薬企業へのインパクトとしては、恒常的な第Ⅳ相情報(保

険会社&プロバイダー)、処方箋に基づく治療効果、マーケティング手法の変化が考えられ

る。 現在、EHR と EDC 融合への試みが色々となされている。EHR は通常臨床試験に必要な

データを全ては含んではおらず(Pfizer 予想で 30-40%)、また、多くの EHR システムは

規制要件に完全には適合しないため、データ標準化が進められている。

Pfizer の EDC 臨床適用戦略

1990 年代後半に EDC を導入するに当たり、自社内構築か購入かを検討した。その結果、

EDC ベンダー市場が不安定であったこと、多くのベンダーは要員と R&D 資金が不足して

いたこと、ベンダーによっては第Ⅲ相試験期間よりも短期間内に市場から消えたこと、当

時のEDCベンダーは製品ではなくサービスによって利益を得ておりシステム統合やデータ

標準に興味を抱かなかったこと、ベンダーにとって APIs(Application Programming Interface)を開発するのは費用が掛かりすぎたこと等から、自社内構築を選択し、I*Net(Investigator*Net)を構築した。

I*Net 構築時の方針は、医療機関やプロジェクトチームにとっての使用し易さ(紙と同様

に感じられ、申請用の 終フォーマットにデータが集められ、空港で CRA が接続できる

28.8K の制限がクリアされることなど)、紙および電子のデータ収集に対する単一デザイン

サイクル(Oracle Clinical のメタデータを CRF デザインに統合する)、簡単なバックアッ

プモデル(PDF 印刷)を条件とした。 I*Net を使用した臨床試験は 1998 年 10 月に開始され、2000 年 1 月に大規模試験に、2002

年に多国間試験に初適用した。現在までに、約 4000 医療機関で 250 試験以上に使用され、

全ての Phase、11 の治療領域での使用経験がある。なお、2006 年第 4 四半期には 500 件

目の EDC 試験(PIMS を利用した第Ⅰ相試験を除く)を実施する予定である。 次の展望として、I*Net は 2007 年末にリタイアさせ、Oracle Clinical(OC)RDC(web

ベースの EDC システムで CDMS 機能を有する)へ移行する計画である。移行に当っては、

Oracle 社、Adobe 社とパートナーシップを結び、I*Net と Oracle RDC をマージさせると

ともに、Adobe 様式(CBER に認可された EDC 用 PDF)と OC データベース統合の先例

を作り、高品質ユーザーインターフェイスや紙と EDC に共通した CRF デザインプロセス

が市場をリードする可能性を示すことを考えている。また、OC に関する試験セットアップ

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の完全自動化と再作業削減を目指し、紙/電子を問わずデータベースデザインツールにより

CRF イメージを作り出すこと(市場競争上のアドバンテージに繋がる)、EDC から OC へ

の電送ツールを不要とすること(統合デザインによりマッピング不要とすること)、既存の

OC データ品質論理チェックを全面的に利用することを計画している。 近、自社内システムからベンダーシステムへシフトした企業としては、Pfizer の他に、

Bayer、Novartis が挙げられる。 なお、Pfizer の方針として、全ての被験者の原資料は医療機関側で作成・保管されるべき

で、EDC システムに直接入力すべきではないと考えている。

I*Net と OC RDC の比較

I*Net OC RDC

社内での開発 Oracle 社による開発

Web-based Web-based

Teleform で CRF 作成後 OC database 構築 Teleform の CRF は作成しない

PDF 画面のみ 入力画面と PDF 画面が利用可能

固定データを OC へ転送 OC へ直接入力

Up-front エディットは 小限 Up-front 論理チェック

ビジット固定前にマニュアルで矛盾点抽

出;固定後に紙クエリ発行

試験を通じていつでも自動/マニュアルで

矛盾点抽出

作業プロセスは OPD maps で規定 作業プロセスは OPD maps で規定

OC RDC トレーニング戦略

医療機関へは現在、web 上でトレーニングを行っており、モニターを含むプロジェクトチ

ームに対しては、試験開始前に教育している。トレーニング用のマニュアルは全てのユー

ザーが利用可能であり、他国語で作成された Quick Reference Guides を使用している。現

在、能力の目安を設定した双方向の web-based の教育ツールを開発中である。

Q : 電子 CRF の PDF 化は見読性があれば Paper-CRF like である必要はないと思うが、

Pfizer が PDF フォーマットを紙 CRF like に決めたのは当局の意向を反映してのことか? A : 医療機関に受入れ可能なデータセットを提示する目的。次世代 EDC では PDF→XML

形式になるので、PDF ではなくなる。 Q : 紙の CRF を使用する場合と EDC では、論理チェックは異なるのか? A : 同じだがチェックの掛かるタイミングが異なる。 Q : 電子 CRF と紙 CRF のハイブリッドは実施しているか?

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A : 質問票等が多い試験では、ハイブリッドで実施せざるを得ない状況。ただし、同じデ

ータを施設によって異なる媒体で収集することは避けている。現在計画している 800 施設

の試験では、紙 CRF に切り替えざるを得ない施設が出ることを想定して、その対応は考え

ている(OC RDC の PDF の方が対応しやすい)。 Q : データ入力から 1 週間でデータベース固定とのことだが、これには SDV やデータレ

ビューも含まれるのか? A : Pfizer では 100% SDV は実施していない。紙 CRF を使用していた頃も同様。EDC

では 1 週間以内にデータレビューをすることになっている。OC RDC でチェックを回して

からモニターに結果を提示する方が、SDV を待つよりもよりクリーンなデータが得られる。 Q : 入力時の論理チェックと入力後の論理チェックはどう切り分けているのか? A : 例えば、実行時の負荷が大きく実行に時間がかかるチェックは、入力時のチェックか

らは外すことがある。特に、辞書クエリは、明らかにスペルミスである場合、社内で自明

な修正により解決することが可能で、効率が良いので、論理チェックから外している。 Q : 論理チェックとその後のチェックの比率は? A : 90%程度がデータ入力時に掛かり、深夜にバッチで実行するチェック(コーディング、

頁間チェックなど)が 10%程度。OC-RDC 導入の狙いはリソース削減。OC-RDC にするこ

とで I*Net システムでは必要であったデータ転送が不要になるので、チェック結果発出が

更に早くなる。解析プログラマーの立場から見ると、データを早く解析プログラムで使用

し、確認できることが OC RDC 導入の利点。

7. Data Warehousing、Data Browser

データ標準があるので、これからデータウェアハウスを作り込もうとしている。毎晩デー

タウェアハウスが更新される予定。4 units のデータはここに入る。PIMS とは少し異なる

のでデータ移行に時間を要しているが、2007 年に Oracle Clinical のデータも移行させる予

定。2007 年中に Pfizer の有する全データを統合させ、Investigator も見られるようにする。

Pfizer になって 10 年、SOP は 3 種類あるが、この間のデータのレポジトリーを作る。 また、PCV(Patient Centric View)を構築し、過去試験を含む全試験における有害事象

のデモグラフィーを層別できるように進めている。有害事象の評価(自殺傾向のある有害

事象、薬剤の肝障害に関するプロファイル、剤形によるプラセボの副作用発現率など)に

優れるため、今後活用していく。

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2.5. Eli Lilly & Company

2.5.1. アジェンダ

【日 時】2006 年 10 月 17 日(火) 8:30-16:00 【場 所】Eli Lilly & Company(Indianapolis, Indiana) 【出席者】

Kathy Vandebelt Director, Global Clinical Data Management Paul Colvin Director, Corporate Clinical Operations & Global

Enrollment Optimization Donald Harder Manager, Global Statistical Operations, Global Statistical Sciences Shaw Lamberson Director, Medical Product Phase Mike Luker Principal Research Scientist, Global Clinical Data

Management Anita Pascarella-Hallett Manager, Clinical Diagnostic Services Yoko Tanaka Senior Statistician, Micro Neuroscience Product Team

【アジェンダ】

Introductions Japanese presentation

Focus of the Delegation,Overview of the 2 week trip,Desired outcome of the report,Challenges of EDC,Challenges of electronic medical records,Status of standards in JPMA

Clinical data standards – adoption and implementation Data flow and implementation points for standards Role of CDISC and HL7 Expectations of regulatory authorities – e.g. FDA Support of industry forums – e.g. PhRMA

Protocol simplification “all inclusive” vs. collecting data to be used to answer scientific question

Electronic Data Capture (EDC) and Electronic Health Records (EHR) Adoption and benefit of EDC at Lilly Adoption of EDC within the industry Next wave of automation - EHR Support of industry forums – e.g. PhRMA

Laboratory data

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Subjective vs. objective criteria Link between laboratory abnormality and AE

Data quality review Database review – 100% check vs. sampling

2.5.2. エグゼクティブ・サマリー

1. Clinical Data Standards – adoption and implementation

Lilly の standard は以下の 3 つで構成されている(①Data Definition Standards、②

Standard Collection Panels、③Analysis Data Set(ADS) Standards)。作成には会社

全体としての強い意志が必要である。これらの Standards を用いることで人員を削減

できる。Data Definition Standards は CDISC の SDTM と類似しているため、FDAや CRO など外部機関とのデータ変換が容易である。

2. Protocol Simplification

Lilly の第Ⅲ相プロトコールは複雑であり、業界平均と比較して1患者あたりの費用も

高い。このため、コスト削減を図るため、過去の第Ⅲ相試験のプロトコールの調査項目

を洗い直しプロトコールの簡素化を検討した。新たな Study Development Process と

して、プロトコール作成の段階で戦略に基づく各調査項目や手順のコスト、目的(主要

評価項目、安全性など)別のコストと比率を算出し、それぞれの必要性を検討すること

とした。

3. EDC(Electronic Data Capture)and EHR(Electronic Health Records)

これまでに第Ⅰ相を中心に 20 カ国以上、400 施設以上で 105 試験を EDC で行った。

紙 CRF から EDC にしたメリットの実績は、マニュアルクエリの 67%減少、visit から

validation 開始までの日数の 90%減少である。

4. Laboratory Data

臨床検査に関し、Lilly 社の状況も踏まえ日本での対応について提案があり、セントラ

ルラボでの必要項目のみの集中測定、スタンダードプロセスによる異常判定等の対応の

必要性が示された。

5. Data Quality Review

“Review”と”Validation”の概念は、異なるものである。Lilly 社では Validation も含め

DMが担当しているが、EDCの実施によりValidationの必要がなくなると考えられる。

DM 担当者は、疾患領域の専門知識をもとに Review を実施することになる。EDC に

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より、DM function の変化をもたらすものと考えられる。

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6. Eli Lilly の DM 組織体制

Lilly 社全体で 40000 人、このうち DM は global で 400 人の体制で、業務内容によっ

て組織が分かれている。

2.5.3. 詳細

1. Clinical Data Standards – adoption and implementation

Lilly の standard は以下の 3 つで構成されている。これらは社内の各部署と協働して各々

5~8 人が Full-Time で約 2 年間かけて作成した。現在は 4~5 人が fulltime でメンテナン

スしている。①と②は DM 担当、③は統計担当が中心で行っているが各部署の協力は必要

であり、会社全体としての強い意志がなければ Standards 作成は困難である。Data Definition と ADS Standard を用いることで従来より 40%の人員削減ができる。また、

Library の再利用により 50%の人員を削減できる。 ①Data Definition Standards (2001 年より適用) ②Standard Collection Panels(2004 年より適用) ③Analysis Data Set(ADS) Standards(2005 年より適用) データは Source Data →Extracted Observed Data(SAS)→Analysis Data(SAS)の

順で作成される。Extracted Observed Data は Lab データや割付データなどの外部データ

を 1 つに統合したものであり、Analysis Data には Derivation 項目が含まれる。 Data Definition Standards は CDISC の SDTM と類似しているため、SDTM へのデー

タ変換が容易である(有効性データを含む)。SDTM がバージョンアップした際には Data Definition Standards は変更せず、SDTM への変換プログラムを変更する。CDISC の

Standard は FDA や CRO など外部機関とのデータ交換に使用する。 今後の予定として、SDTM 形式での申請は 2007 年後半の予定である。 なお、Source Data については、CT で クエリー対応しているが、Lab データのデータク

リーニングは、別ツール(Clintrial、iReview)を利用してクエリーを Site へ送付する対応

としている。

2. Protocol Simplification

2003 年後半以降のデータによると、Lilly の第Ⅲ相プロトコールは、より複雑であり、業

界平均と比較して患者あたり費用も高い(1.4 倍)。このため、Investigator に支払うコス

トを削減するために、過去 36 本の第Ⅲ相試験のプロトコールの調査項目を洗い直し、プロ

トコールの簡素化を検討した。項目として、戦略と合致していないものや、他のプロトコ

ールを引用したため、不必要な項目が含まれるケースもあった。

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上記検討結果を踏まえ、新しい Study Development Process として、各調査項目や手順

は目的や戦略に基づくはずであるから、プロトコール作成の段階で各調査項目や手順のコ

スト、目的(主要評価項目、安全性など)別のコストと比率を算出し、各調査項目や手順

の必要性を検討するプロセスを追加した。コスト算出にあたっては、社外大規模データベ

ースの値を引用している。 なお、科学的信憑性を得るために必要であれば、コストが高くても評価項目や手順を変更

することはない。また、戦略が変わらないことが前提だが、コストがかかり過ぎる場合は

副次評価項目を変更することもあり得る。全例評価ではなく、一部症例での評価に調整す

るなども考慮する。 以上の新たな検討をすることで、モニタリングにかかるコスト・手順の効率化にも繋がる。

なお、EDC でも紙 CRF を使用しても手順の削減・効率化のため両者に cost 面の違いはな

い。

3. EDC(Electronic Data Capture)and EHR(Electronic Health Records)

EDC は 1989 年に使用され始め、長年小規模であったが、ここ 3 年で倍以上のスピード

で成長している。コンピュータ(IT)のスピードアップとインフラの整備が整ったことも

その背景にある。Investigator の約 70%が EDC を許容し、再度 EDC を利用することを望

んでいる。業界全体では、2006 年に約 30%の新規試験で EDC が使用されることが予想さ

れる。 <Lilly 社の現状と今後の計画> Lilly 社ではこれまでに第Ⅰ相を中心に 20 カ国以上、400 施設以上で 105 試験を EDC で

行った(EDC システムは InForm、Clinical Data Management System は Clintrial)。第

Ⅱ相~第Ⅳ相の EDC の実績は、2003-2005 年で 15 試験、2006 年で 39 試験(全試験の約

60%)であり、2007 年には 50 試験(全試験の約 80%強)を行う予定である。 Lilly 社の紙 CRF から EDC にしたメリットの実績は、マニュアルクエリの 67%減少(0.73

→0.24 マニュアルクエリ/visit)、visit から validation 開始までの日数の 90%減少(43 日→

4 日;visit 後 4 日で入力)である。Eli Lilly としては visit から EDC 入力までの期限を契

約に盛り込んでいないが、平均 4 日であった(0 日の場合が多いが 40 日以上ということも

あった)。 また、EDC 導入により DM スタッフの削減が可能であるばかりではなく、SDV の効率が

上がることから施設モニターの作業効率を上げることができた。新システム導入当初はコ

ストが割高になることから EDC 導入の効果はすぐに現れるものではなく、Eli Lilly では

近効果が見え始めたところである。 なお、Lilly 社では、他の数社とは異なり、ハイブリッド EDC は行わない方針(手順の簡

素化、EDC のメリットを下げないためなどの理由)を決定したが、そのことで参加施設が

減ることはなかった。全施設で EDC を行うために施設のインフラ整備に協力した(10 施

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設程度)。 2007 年度で 20%程度は紙 CRF を使用する予測であるが、その理由は設計を行うタイミ

ングのためである。設計に数ヶ月はかかるため、年度初めのスタートが無理な試験もある

ためである。ただし、今後も Site 数や症例数及び期間によって紙 CRF を使用する場合も有

り得る。 EDC セットアップの期間は、プロトコール承認から EDC 完成まで約 20 週、EDC の要

件確定から EDC 完成まで約 12 週である。プロトコール承認から FPI(First Patient In)までの期間は疾患領域や地域の規制によっても異なるが 122 日から 180 日である(癌領域で

はより時間を要する。またアジア、特に中国やインドではより時間が必要)。なお、新しい

ツールの活用で、たとえば Phase Forward の「Designer」などで、期間短縮ができること

を期待している。 Lilly 社では①プロトコール承認から FPI の期間、②プロトコール承認から 75%の症例登

録される期間(75% visit)の 2 つのメトリクスを用いており、②を非常に重視している。 標準(エレメント名、定義、メタデータ)を開発するため、CDISC と ACRO(Association

of Clinical Research Organizations )が中心となり、FDA、NIH など 14 の機関で CDASH(Clinical Data Standards Harmonization)が組織された。今後、CRF→RDC→CDMSの自動化(Panel標準化)を自社単独で行うより効率的であることから、Lilly社ではCDASHのために 3 人を配置した。完成に 5~7 年かかる見込みであるが、CDASH が上手く機能す

れば、Standard の Panel は不要になると思われる。 現在 EDC が先進的であるが、将来は電子的なソースデータを直接収集することで転記や

SDV が不要となり、即時的なデータ利用が可能となるかもしれない(Electronic Health Records (EHR)と EDC の収斂)。ただし、EHR と EDC の収斂は試みられているが、以下

のような課題がある。 ・国家的な医療インフラの不足 ・スタンダードの不足(ヘルスケアデータと臨床試験データはシステムが異なる) ・ヘルスケアと臨床試験の規制を満足する安全で管理されたプロセスの必要性

4. Laboratory Data

臨床検査に関して、Lilly 社の状況も踏まえ日本での対応について、以下のように変更す

ることを奨める。 DNA Banking:教育、データ収集プロセスの標準化と中央集中管理 Lab Data:Local lab から Central lab での対応にする。すべてを収集するのではなく、

必要な項目のみの収集とする。 臨床検査値異常:Investigator の判定でなく、スタンダードプロセスに従い、スポンサ

ーまたは日本の基準による判定とする。なお、プロトコール毎(領域毎)に異常の基

準は違う。

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ECG:紙ベースから電子的データ対応とする。グローバル試験では、セントラルリー

ディングを行う。

5. Data Quality Review

“Review”と”Validation”の概念は、異なるものである。企業によっては Review を解

析担当者が行っているが、数年前のことを Investigator は答えられないし、問合せに

時間がかかるので、DM 担当が早めに行う方が良い。早めに Review を行うことでデー

タが分からないことで解析できないことを防ぐことができる。Lilly 社では Validationも含め DM が担当している。EDC 対応で、残ったクエリーの殆どは Review 結果に基

づくものである。なお、EDC の実施により、Validation の必要がなくなると考えられ

る。EDC は、時間削減、質の向上、コストの低下のみならず、DM function の変化を

もたらすものと考えられる。

疾患領域の専門知識が必要 Compound レベル

Review Study レベル

CDMS のツールを利用

Patient レベル Visit レベル

Validation Data レベル

EDC で解決可能 (論理的なもの)

疾患領域の専門知識は不要 (ロジックがわかればよい)

なお、Data Quality Review は以下の 3 つに分類できる。

① Data validation:FPI から DB 固定までの間に全試験で症例毎、Visit 毎にタ

イムリーに Logical な確認を行う。 ② Data review:症例を跨いで試験レベル、品目レベルでデータを確認する。 ③ DB quality review:CRF データと DB を比較する。

6. Eli Lilly の DM 組織体制

Lilly 社全体で 40000 人のうち、DM は global で 400 人の体制で、主な組織は以下のとお

りである。 Study setup (Infom、Clintrial などのシステム) CRF design(ほぼ社内) Standard development(100%社内、Panel や電子 CRF、data-elements) Coding(MedDRA、WHO、SNOMED など;自動化のため少数)

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Clinical Data Management Coordination(一番大きな組織、50%が社内) Study Design Data Review Plan Data Validation Plan Data Review

Quality Training & development(75%が社内;世界に拠点あり) Data Validation(社外で 100 人、少人数の社員) Data Entry(ビジネスオーナー;社員 4 人、ベンダー側で 60~70 名) Alliance Management(Discussion partner、 Outsource partner;100%社内) Data Movement(社内少数名) Data Document Clinical Informatics(各資料のサイクルタイム、プロセスの測定)

DM 業務は本来かなり複雑で多種に及ぶものであり、専門知識も必要である。しかし、大

部分の人は「データ入力」と「整合性チェック」のみと思っており、EDC によってこれら

は不要になるので DM も不要だと誤解されている。DM 業務内容の説明が不十分であった

ことも原因であるため、社内位置付け(認識)を整理する努力を行っている。

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2.6. Covance

2.6.1. アジェンダ 【日 時】2006 年 10 月 16 日(月)8:30~16:00

【場 所】Covance in Indianapolis

【出席者】 Gordon Kapke, Senior Director of Biometrics Services, CCLS*

Lynn Kippenhan, Vice-President of Global Sales & Marketing, CCLS

Reed Lyon, Executive Account Manager, CCLS

John Raker, Director of Global Clinical Data Management, CCLS

Ron Whitaker, Senior Project Manager, Clinical Trials Management Services, CCLS

Sharon Frost, Senior Manager, Global QA Software and Laboratory Validation Program, CCLS

Cathy Garvey, Senior Compliance Auditor, Quality Assurance, CCLS

Elaine Job, Executive Director, Data Management, Late Stage Development Services, Covance Inc.

Daniel B. Goodman, M.D., Director Medical Affairs, CCSS†

Eddie Montoya, Director, IVRS, Covance Inc.

Chris Walters, Team Supervisor of Resolution Center, CCLS

Andrew Shepple, Administrator, Pre-Analytical Services, CCLS

Von Osche, Supervising Technologist, Automated Chemistry, CCLS

Alissa Kerry, Team Manager, Clinical Trials Management Services, CCLS

Cheryl Helton, Global Director Project Management, Clinical Trials Management Services, CCLS

【AGENDA】

Introductions Covance overview Covance central laboratory services overview/preparation for tour Tour Laboratory pre-analytical services – Overview and demonstration of kit receipt

Process, including scanning of requisitions Automated chemistry – Overview of process, including demonstration of sample

flow and audit trails * Covance Central Laboratory Services Inc. † Covance Cardiac Safety Services Inc.

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Covance central laboratory services Covance cardiac safety services Covance clinical (EDC, clinical database, including CRF, & IVRS) Reference/Delta Limit Covance central laboratory services and cardiac safety services

2.6.2. エグゼクティブ・サマリー Covance は、臨床検査のセントラルラボラトリーとしての機能のみならず、ECG

(Electrocardiogram)の集中管理および非臨床から臨床試験、更には市販後まで CRO(Contract Research Organization)としても幅広いサービスを提供している。 臨床検査のセントラルラボラトリーは、Indianapolis の他、世界に3箇所大きな拠点があ

り、そのいずれの測定施設においても検体の取り扱いや測定に関しては標準化された同じ

手順、方法で行っている。また、その測定結果は、ひとつのグローバルデータベースに保

存され、世界各国の医療機関、製薬企業などのスポンサーに報告される。 ECG の管理は今でも各医療機関で行われていることが多く、集中管理の普及は遅れてい

るのが現状である。多くの医療機関で ECG を行うと ECG 測定機器の違いや測定機器の設

定条件の違い、ECG に対する専門的知識の欠如や複数の評価者による解釈のばらつきなど、

いくつかの技術的、方法論的な課題が発生する。ECG 管理を標準化し、集中管理化により

これら課題を解消することが可能になる。 Clinical Data Management (CDM)では、多くの業務を受託し、運用、管理を適切に行

うために標準化したシステムとプロセスを採用している。また、CDM のパフォーマンスを

計るために Standard CDM Performance Metrics を設定している。その中でも特に重要な

のは、Performance against Plan on Key Study Milestones(CRF承認~Database 利用可、

LPLV(Last Patient Last Visit)~Database ロック)である。

2.6.3. 詳細

Covance Overview

1987 年に Covance として創立。Covance の前身は様々なビジネスユニットを持つ企業で

あった。 CRO としては世界で 大級の規模であり、2005 年に売上が 13 億ドル、資本金が 30 億ド

ルとファイナスは非常に安定している。 世界各地でサービス展開をしており、North Americaで16拠点、Europeで14拠点、South

Africa で 2 拠点、Asia/Pacific Rim で 4 拠点(日本、東京含む)ある。 サービス展開の内容は、Antibody Production & Services、 Nonclinical Development

Services、 Clinical Pharmacology Services、 Central Laboratory Services、 Cardiac

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Safety Services、 Clinical Development Services および Commercialization Services で

ある。

Covance central laboratory services Overview/Preparation for Tour

サンプルが採取されて検体が測定されるまでのプロセスを説明する。 測定施設は、インディアナ、ジュネーブ、シドニー、シンガポールにあり、施設がどこに

あっても、その検体取り扱い手順や測定方法に関しては同じやり方で行っている。 検体の管理はバーコードを使って行い、ヒューマンエラーを防ぐ配慮がなされている。 もし、足りない検体があった場合や背景情報に不整合があった場合は、医療機関に連絡さ

れるが、特に不足検体に関しては、コールセンター(人)を介さずシステムから自動的に

Fax が施設に送信される。

Tour

検体配送会社は FedEx、DHL を利用し、朝 5 時、6 時、7 時、8 時にトラックが検体を

搬入してくる。さらにもっと早い時間の搬入でも対応可能である。検体の 1 日の処理量は

1800 ボックスである。 検体送付書にある内容は、システム上で 2 重に検証を行う。その際に見つかった不整合や

判読不能な記載がある場合は、検証をスキップすることでコールセンターに直接連絡が行

き、問いあわせが施設に対して行われる。 上記処理後の検体送付書はスキャンされ、全作業員で情報を共有できる仕組みになってい

る。スキャンされたあとの紙の検体送付書は、3 ヶ月間は Covance で保有される。その後

は社外の保管スペースで永久保存される。 バーコードの中に Chemistry 関係のオーダーがすべて入っており、検体をラックに並べ

て、そのシーケンス番号とラック番号で監査証跡を記録している。 測定機は自動で検体を装置の中に取り込み、装置の中ではバーコードがスキャンされ、ど

の検体がどの測定機で処理されたのかなどの情報がシステムに送られ管理されている。

Covance central laboratory services について

世界各地でセントラルラボのサービスを提供しており、これらのデータはグローバルデー

タ・レポジトリに集まるように設計されている。 世界のどこの測定施設でも標準化されたプロセスで測定はおこなわれ、結果はリアルタイ

ムにデータベースに格納され、どこからでもアクセスできるようになっている。例えば、

ジュネーブで検体が測定されて 1 時間後にはデータ閲覧が可能である。 データの品質を確保するために重要なプロセスが Database Setup と Investigator Setup

である。DB Setup ではプロトコールにあわせてデータベースのセットアップを行う。また、

その手順は SOP(Covance では SOW:Statement of work という)に従うことになる。

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DB Setup が終了後に Investigator Setup を行う。Covance キット(臨床検査用)の準備

や医療機関関係者へのトレーニングを行う。トレーニング用の CD も準備されている また、検体によっては、搬送時間が重要なことがあるため、搬送の手配の準備もこのタイ

ミングで行う。これらの作業は、運用を開始する前に終了させなくてはならない。 上記の準備が終わると、検体の受け入れ作業が開始される。世界各地で同じ手順で事業展

開がされている。 検体を受け入れる際には、2 重に検証を行って受け入れ情報を管理している。一方でバー

コードでも検体情報を管理しているので、ラボシステムからも不整合情報(検体未受領な

ど)の問い合わせがあり、作業者に注意を促している。 問題があった場合は、そこから先の手順に進まないようなシステムになっており、そのよ

うな場合は、自動的にコールセンターに連絡が行き、施設へ連絡するなど対応が行われる。

なお、Covance と医療機関間で問題が解決されない場合は、依頼者が対応を行う。 問題がすべて解消され、測定が終了すると報告書が発送される。 報告の形式は 4 つある。 Alert Reporting:もっとも重要な報告書である。被験者の安全性確保を目的にあるレ

ンジにデータが入っている場合、発行されるようになっている。報告書は必ずハード

コピーが FAX される。この基準はプロトコールごとに設定を行う LabLink:Web 経由でデータの閲覧を可能にしている。おもに依頼者に対しての情報

提供としてサービスを展開している Hard Copy Reporting:プロトコールごとにフォーマットを作成した検査結果報告書で

ある Electronic Data Transfer:プロトコールごとに依頼者のデータ仕様に合わせたフォー

マットを定めて電子データを提供する 報告書を発送した後のフローでは、報告書を見た医師が問題点に気づいたら、医師より連

絡を受けることになるが、そのデータを変更するかを Covance が検討し、修正する場合、

データ修正センターでデータ修正が行われる。 変更があった場合は、医師にデータ修正報告書で変更点を連絡する。場合によっては再度、

報告書を出すこともある。

Covance Cardiac Safety Services

ECG の管理施設は、アメリカのネバダ州とイギリスにある。ECG の管理は今でも各医療

機関で行われていることが多く、集中管理の普及は遅れているのが現状である。多くの医

療機関で ECG を行うと ECG 測定機器の違いや測定機器の設定条件の違い、ECG に対する

専門的知識の欠如や複数の評価者による解釈のばらつきなど、いくつかの技術的、方法論

的な課題が発生する。ECG 管理を標準化し、集中管理化するによりこれら課題を解消する

ことが可能になる。ECG のデータ・マネジメントでは、ECG が複雑なため、多くのリソー

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スを必要とする。そのため、Clinical Data Manager、Clinical Data Manager Associate、Clinical Data Coordinator という担当者を置き、プロトコールまたはスポンサー単位にチ

ームを形成し対応している。また、データ管理・報告プロセスでは、様々な ECG 機器より

DegitographyTM というアプリケーションを介し、ECG をデータベースに取り込み、データ

の管理・クリーニングを実施し、ECG の解析結果は様々な様式で報告することが可能であ

る。Covance の標準報告フォーマットも用意されており、スポンサーの 90%以上がこの標

準フォーマットを利用している。また、FDA に提供する XML 形式での報告も可能である。

このサービスは、世界で 24 時間のうちで稼動していない時間は 6 時間だけである。1 回の

データ転送で 30000 から 80000 本の ECG を送ることがある。

Covance Clinical-EDC、Clinical Database、including CRF & IVRS

23 年間にわたり CDM のサービスを提供し、500 以上の Phase2 から 4 までのプロトコー

ルを実施している。 これだけの業務を進めるためには、標準化されたシステムとプロセスが必要である。CDM

では、多くの業務を受託し、運用、管理を適切に行うために標準化したシステムとプロセ

スを採用している。システム面では、データベースは Oracle Clinical、CRF イメージング

管理ツールは CRF Workflow Manager、データレビューツールは iReview、EDC は

Datalabs を用いている。クライアントから受注する試験の多く(約 80%)は、紙の CRFを用いている。クライアントが紙を使う理由として、規制当局への説明のしやすさがあげ

られる。他には、コストやセットアップ時間の増加、プロトコールの修正に関して細やか

な対応が出来ないなど懸念があるため、紙の CRF を使っているようである。紙ベースの

CRF はグローバルで業務を実施しており、24 時間体制をとっている。 運用、管理面では、CDM のパフォーマンスを計るために Standard CDM Performance

Metrics を設定している。その中でも特に重要なのは、Performance against Plan on Key Study Milestones である。

Cycle Time: CRF 受領~DCF 作成

DCF 作成~不整合解消 被験者観察完了~クリーニング終了

Performance against Plan on Key Study Milestones:

CRF 承認~Database 利用可 LPLV(Last Patient Last Visit)~Database ロック

Workload/Resource Management:

来院スケジュールに基づく予測 CRF ページ数 遅延業務のトラッキング

Progress: 無作為化された症例、Database に入力された症例などの数とパーセンテージ

Data Quality: CRF モジュールごとの DCF のタイプと数 Database 変更に伴い作成された DCF の数 エラー率

DM Manager には理科系の出身者を採用し、SCDM に記載されているプロセスを参考に

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トレーニングを実施し、その人の能力レベルに合ったタスクを渡すようにしている。SCDM*

プロセスを取っている。 EDC の経験は、業務完了が 49 試験、実施中が 11 試験であり、8 つの異なった EDC シス

テムを利用したことがある。CovanceとしてはDatalabsというEDCを選択した。Microsoft社製で 2 年前に市販されたものである。Hybrid 型に capability がある。

EDC をうまく進めるためには、トレーニングとサポートが重要であるが、一番コストが

かかるのも、トレーニングとサポートである。患者日誌を使う場合などもこのトレーニン

グとサポートプロセスが活用できる。院内 LAN をスキップしてラップトップで EDC を行

うことが主流になってきている。このうち、20%ではラップトップを提供している。 EDC は DB ロックが早くなると言われるが、そうとも限らないこともある。そこに期待

するより、プロセスの管理に効果が現れる。 タイプするより実際に手で書いた方が正確なこともある。 サイト側でのエラー率(原資料に対する入力間違い)は紙より高いが、CDM にデータを

受領するタイミングでのエラー率はかなり低い。 患者の教育ツール(血圧管理)、医師の患者管理の教材、医師の励まし(登録促進)、ある

いはマーケティングツールとしても EDC は効果的である。 EDC になると治験の初期段階に業務が集中するが、プロトコールができてから、FPI ま

での期間は 短で 10 週間である。プログラミングには 6 週間必要である。システム完成後

にトレーニングを行うため、典型的な場合、開発期間は 3 ヶ月である。CRF デザインなど

の意思決定が律速となり、PhaseⅠ試験ではセットアップが間に合わないので紙 CRF での

運用が多いが、出来合い型(“クッキーカラー”)の PhaseⅠでは EDC が利用される。 EDC のリスクとして気にしなくてはならないことは、プロトコール変更に伴うシステム

変更、IRB の承認が降りるまでの期間のギャップ、治験期間が長い、施設の抵抗、抗癌剤

などのような複雑な試験がリスクとしてあげられる。EDC が使えない場合を想定して紙の

CRF に移行できるようにしておく必要もある。 また、IVRS(Interactive Voice Response System)の開発では 17 年の経験があり、56

カ国、42 言語で運用実績がある。IVRS はプログラムを変更することで、無作為化、服薬

記録、患者日誌、資材管理など様々な用途に活用でき、EDC や CTMS(Clinical Trial Management Systems)にデータを送ることも可能である。

IVRS の利用状況については、非公開なので正確な情報は持っていないが、US で行われ

ているプロトコールの 25%ほど(殆どの IVRS プロバイダーは上場しておらず情報が入ら

ないので、依頼者から入った情報に基づく)で使われているであろう。ある依頼者では 100%使用している。また、自社の IVRS を使用しているところもある。

21CFR part11 に関する Audit を FDA から 2 回、スポンサーから 105 回受け、バリデー

* Society For Clinical Data Management (http://www.scdm.org/)

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ション、SOP、プロセスなど数多くの改革を求められた。その結果、何か問題があった場

合に、その問題に対応する組織の必要性が判った。 仕様作成からシステムバリデーション終了までの期間は、平均で 6 週間かかり、 短で 2

週間、 長で 12 週間かかる。この期間は、プロトコールの複雑さに依存する。 システムの変更は、治験をとめることなく変更可能である。 上記のプロセスを円滑に動かすためにはチームが必要である。この中にはヘルプデスクが

含まれる。ヘルプデスクへの問い合わせに対して 95%は依頼者に確認することなく、ヘルプ

デスクだけで処理可能である。ヘルプデスクスタッフに求められる言語スキルは、

multi-lingual が求められ、2 言語では 低レベルである。 IVRS はデータベースなので、様々な報告書を出すことが可能である。アラートを出した

り、登録状況などを定期的に報告したりすることも可能である。Web 経由で情報の閲覧

(Web Report)や エクセル出力も可能で情報はリアルタイムで表示される。

Reference/Delta Limit

違った場所にある測定施設で異なった時間に測定した測定値を同じ基準値を用いて評価

するためには、同じキャリブレーションを実施する必要がある。しかし、キャリブレーシ

ョンが異なると、測定結果の平均値にばらつきが生じるので、キャリブレーションの点検

をしっかりやることが重要である。P. Hyltoft Petersen らの論文*に共通の基準域を定める

前提がかかれている。また、日本における臨床検査値の評価方法では、本来、異常とすべ

きものが見逃され、上市された後にそれが検出される可能性があったが、Safety Signal Detection で重要視される Z value を用いると、このような問題点を解消できる可能性があ

る。

Covance central laboratory services and cardiac safety services-Regulatory

Discussion

過去 10 年に薬剤がリコールされた理由のひとつとして Cardiovascular Safety が問題に

なっている。 規制当局では US、EU での検討が先行しているが、日本でも検討が進められている。前

臨床では S7b で検討され、臨床では ICH E14 が出されている。ICH E14 ガイダンスは、

QT 延長に関してすべての新規化合物に対して実施することを求めている。 本来であるならば、エビデンスがない以上、徹底的に QT 延長に関して調査すべきと考え

るが、Active Control をおくことを要求されていること、ECG はセントラル管理をしなく

てはならないことなど問題点があげられている。

* P. hyltoft Petersen, Prerequisites for establishing common reference intervals, Scand J Clin Lab Invest (2004); 64: 285‐292

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Thorough QT 試験を受託した経験は 20 試験あり、プロトコールデザインを作成するサ

ービスも行っている。これは統計専門家を含め、単なる ECG セントラルサービスだけでな

く、E14 に関するコンサルテーションを行うような形で実施している。また、このデータ

を利用して申請を行ったプロジェクトは 2、3 ある。

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2.7. 治験専門医療機関(Physicians Research Group)

2.7.1. アジェンダ 【日 時】2006 年 10 月 18 日(水)9:30~12:00

【場 所】Physicians Research Group (Indianapolis)

【出席者】

From Physicians Research Group

Joy Coglin Site Director

From Eli Lilly

Paul Colvin Director, Corporate Clinical Operation&Global Enrollment Optimization

Laura Gooding Team Leader, Clinical Operations US Medical Division

Yoko Tanaka Senior Statistician, Micro Neuroscience Product Team

Katherine Vandebelt Director, Global Clinical Data Management

【アジェンダ】

Facility tour Discussion with site director of Physicians Research Group

2.7.2. エグゼクティブ・サマリー Eli Lilly の紹介で Indianapolis にある Physicians Research Group を訪問した。ここは

治験専門の医療機関であり、一般診療は行っていない。大学病院やクリニックの医師と契

約し、医師は治験のときだけこの医療機関に来る。患者はすべて治験に参加している被験

者である。疾患領域毎に医師のパネル(リスト)があり、治験を行いたい企業に提供して

いる。企業側から特定の医師を参加させたいという依頼に応じて、新たな医師との契約も

している。Freely Standing Research Facilities と呼ばれるこのビジネスモデルは、米国で

もっとも普及しており(欧州はごく一部、日本にはない)現在では競争が激しくなってい

る。データ発生から 48 時間以内にデータ入力を完了させるというポリシーや、品質を高め

るというモチベーションも、その背景には競争があり、よい形で臨床試験に影響を与えて

いる。 医療機関見学では、診療スペース、CRC(Clinical Research Coordinator)のデスク、原

資料の保管室、CRA(Clinical Research Associate)の資料閲覧室など見学した。日本の医

療機関と変わらない印象を受けた。見学の後、この医療機関の Director である Joy Coglin

氏との情報交換会をもった。この医療機関で EDC が好んで使用される理由は、クエリが少

ないこと、CRF の保管場所が不要なこと、スポンサーからの支払いが短期間で行われるこ

となどがあげられた。しかし、まだ 30%は紙 CRF が使用されていた。原資料の1つである

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治験カルテは、各試験にあわせて Physicians Research Group が改変することもあり、こ

の点が臨床試験専門の医療機関の特徴として強い印象を受けた。

2.7.3. 詳細

1. 施設のツアー

受付スペース

20 畳ほどのスペースにカウンターとその対面に患者用ソファーが置かれていた。せいぜ

い 15 人でいっぱいとなるようなスペースである。患者は、あらかじめ電話スクリーニング

で登録条件を確認しており、IRB で決められた選択基準・除外基準をクリアした患者のみ

が来院してくる。まずこの場所で患者に同意説明文書を渡し、一人でゆっくり読む時間が

与えられる。患者によっては持ち帰り家で読みたいという人もいるので、その場合は持ち

帰ってもよいことになっている。

診療スペース

受付の奥のドアを開けると廊下の左に診察室が2つ、右に採血等の処置を行う場所がある。

診察室は1室が 10 畳ぐらいのスペースである。患者にインフォームドコンセントを行なっ

たり、患者のフォローアップ検査の結果を記載したりする場所として使用されている。

CRC デスクブース

診察室を通りさらに奥に廊下を進むと左手にブースで区切られた2畳ほど3つの空間があ

り、それぞれのブースには書棚付きの大きめのL字型デスクとその上にパソコンが1台ず

つ置かれている。この医療機関では CRC が 3 人常駐している。各 CRC に1つのブースが

割り当てられており、そこで CRF への記載や EDC への入力が行われている。

治験薬等の管理室

CRC デスクブースの向かいに廊下を挟んで 6 畳ほどの細長い部屋があって、その中に治

験薬や患者用の電子ダイアリ(30 個ほど)を保管する部屋がある。

ダイレクター室と医師室

廊下をさらに奥に進んだ突き当たりにダイレクター室と医師室が並んで位置する。ダイレ

クター室は CRC の責任者の部屋であり、見た感じでは医師室よりダイレクター室の方がや

や大きい印象を受けた。当日、この医療機関には患者が来院していたが、医師はいなかっ

た。医師は必要なときに来院してくるだけで常駐はしていない。

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CRA の資料閲覧室

受付カウンターの裏側に大きな丸テーブルが置かれた 3 畳ほどのスペースがあり、モニタ

エリアとして提供されていた。この場所では電話とインターネットが使用できるようにな

っていて、部屋のすぐ隣にあるコピー機と FAX も利用できる。このモニタエリアは一度に

1社しか使用しないように日程が調整されており、どうしても日程が重なる場合は医師室

がモニターに開放されている。

原資料の保管室

細長い 10 畳ほどのスペースに、進行中のいろいろな試験の CRF が1症例1file 毎に保管

されていた。

2. Physicians Research Group のサイト・ダイレクタとの議論

Personnel in-place at Site

この医療機関は臨床試験専用の医療機関で一般診療は行っていない。現在の人員構成は、

CRC が 3 名、被験者のリクルータが 1 名および医療機関の Director 1 名、Principal Investigator(治験責任医師)が 4 名、Sub Investigator が 3 名(MD の資格をもっていな

いと言っていたので、治験協力者の位置づけか?)であった。 Principal Investigator は試験単位で外部の医師と契約しており、患者を診る必要がある

ときのみ医療機関にやってくる。Sub Investigator は看護師または Physicians Research Group のアシスタントで普段の治療観察は彼らが行っているが、全ての記録は Investigatorがレビューすることになっている。

How has it affected the business side of the practice, overall?

紙 CRF の場合は、スポンサーからのクエリは何ヶ月も先でないとこなかったが、EDC で

は、患者の来院後 48 時間以内に必要なクエリが届くようになり、クエリの数も非常に減っ

た。 また、医師への支払いは紙 CRF の場合はスポンサーが CRF を回収した後に支払われて

いたので、CRA の訪問が 8 から 12 週間隔だったため支払いも同間隔であったが、EDC で

は、データが早く入るので支払い時期も早くなり、毎月支払われている。医師に支払う費

用も少なくなった。

How does EDC work at the Site?

14 年前に初めて Eli Lilly と Remote Data Capture を使った。ここ 4、5 年で本格的に

EDC を使用するようになった。 被験者が来院してから 48 時間以内にデータ入力を終了するというポリシーで業務を行っ

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ており、スポンサーとの契約にも盛り込まれている。医療機関としてこの契約を守ること

は難しいことではない。(紙の CRF では、7 日以内にデータを記入するように医療機関の目

標を設定してやっていた。少なくとも、CRA が訪問する前には記入を終えていた。) EDC への入力はすべて CRC が行っていた。入力はシステムがガイドしてくれるし、仮に

入力ミスがあってもコンピュータ上でチェックがかかるので、容易に入力できる。初回来

院時は入力に一番時間がかかるが、それでも 10~15 分程度であり、以後の来院ではもっと

短時間で入力が完了する。日本では有害事象の因果関係に対するコメントなどを医師が入

力するケースがあるが、こちらではカルテまたは Worksheet 上にすべて医師が記録を残す

ため、CRC がそれを見て EDC に入力を行っていた。医師には、CRC が行った入力データ

を確認し、医師が承認する形をとっているので、責任はすべて医師にあるとのこと。

What changes are seen in the practice when transitioning from paper to EDC?

EDC ユーザーの ID/パスワード管理が少し大変である。誰に権限を与えるかを決定する

のが難しい。EDC の操作方法を覚えなくてはならないので、CRC が入れ替わったときや休

暇を取った際に困る。誰でもすぐに EDC を操作できるわけではないので、スポンサーまた

は試験ごとに主担当以外に副担当を決め、担当者が不在にならないようにしている。現在

は 3 人の CRC が ID を取得して対応している。 紙 CRF のプロセスから EDC に変更になって、基本的にはよいことばかりで悪いことは

ほとんどない。

Are paper source documents used or electronic?

原資料には治験カルテと Worksheet(EDC への入力補助用)がある。すべて紙を使用し

ており、まだ eSource にはなっていない。 治験カルテには、治験情報とプラスアルファーの情報を記載する。患者の来院データはま

ずカルテに記載する。このカルテには治験で必要とされない情報、たとえば、投与前の有

害事象などの詳細情報も含まれている。特に患者の病歴・治療歴などは徹底的に情報を収

集している。書式はスポンサーの CRF と非常に類似している。原資料は医療機関内で作成

可能なので、スポンサーCRF と違うため扱いにくい場合は、各社の CRF デザインにあわせ

て治験カルテの変更を行うこともある。 Worksheet はスポンサー側から渡されるが、EDC への入力が容易に行えるように、デザ

インについてスポンサーと相談し修正してもらう場合もある。 また、治験を受ける前には必ず、スポンサーに EDC の画面をみせてもらい、必要なデー

タがきちんと入力できるかの点検を行っている。

What is the cost of EDC vs. paper?

EDC では、CRF の保管場所の確保が不要になった。データは CD に保管できるので、必

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要となるのはパソコン1台のスペースの確保だけでよい。運用費として医療機関側では特

に何も発生していない。 紙 CRF では、試験が終わっても 15 年間は CRF の保管が義務づけられているので、医療

機関外で 14 年間、CRF を保管する必要があり、そのために毎月、数百ドルの保管費を支払

っていた。 現在でも紙 CRF の試験も実施している。試験の割合でいうと 30%ぐらいが紙 CRF であ

る。70%が EDC の試験(電子 CRF を使用)である。EDC は非常に使いやすい紙 CRF の

保管費用を考えても非常にコストが安い。どの治験を受けるかは、コストで決まる。試験

の複雑さが同じなら、EDC の試験を選ぶ。

Monitoring EDC vs. paper and how it affects our CRAs

CRA が医療機関で Internet に接続できるか、医療機関側に PC を設置するスペースがあ

るか等、現場で実際にデータにアクセスできるかの確認が必要となった。 SDV に始めのうちは時間を要するが、慣れれば問題はない。たとえば、治験カルテで5

ランク評価しているものを、EDC への入力では3ランク評価になっている場合、たとえば、

いつも・ときどき・なし、のような3ランクに集約する必要がある場合、そのデータの読

み替え作業に CRA が慣れる必要がある。 原資料には、治験カルテと worksheet が存在するが、たとえば、治験カルテには体重を

ポンドで記入するが、EDC へはキログラムで入力するので、worksheet にはキログラムで

記入しておく。この場合、SDV は、治験カルテから worksheet に正しく数値変換(ポンド

→キログラム)が行われているか、worksheet から EDC に正確に入力されているかの両方

を確認している。 CRA は Web を通して、医療機関がきちんとデータを入力していることを自宅からでも確

認できるようになった。

他の Q&A

Q : EDC のトレーニング方法について A : 医療機関のトレーニング Investigators Meeting(全体会議)や医療機関の初回訪問時に EDC のトレーニングを実

施している。医療機関では CRA が CRC と1対1で説明を行う。CD-ROM を使用したトレ

ーニングを実施することも多い。Eli Lilly では特に CD-ROM によるトレーニングに力を入

れている。Eli Lilly のシステムは使いやすいので、医療機関側では EDC のトレーニングに

対して全く負荷を感じていない。医療機関側でも EDC に慣れてくるのでトレ-ニングが不

要になってきている。現段階では、EDC のトレーニングの必要性はほとんどなく、それよ

り新しい領域の新しい治験に対する疾患、治療メカニズムなど理解に対するトレーニング

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の必要性が高まってきている。 CRA のトレーニング CDA(Clinical Development Associate)*チームがプロトコールを作成するが、アフェリ

ート CDA が CRA のトレーニングを行う。このトレーニングの中に EDC のトレーニング

も含まれている。 CRA は主に Web コンファレンスによりトレーニングをしている。CRA からの質問があ

れば、月1回電話を入れる。CRA 同士の情報共有もある。 Q : 医療機関のキャパシティーについて A : 現在、この医療機関で実施中の試験は、セットアップ中、患者登録中、進行中、終わ

りがけのもの含めて 15~21 試験ぐらいある。 試験によっては、患者数が 5 人でも毎週来院し1回の来院あたりに 2~3 時間の処置が必

要な場合もあれば、患者数が 50 人いても来院が1ヶ月に1回で、処置が 30 分で済む場合

もあるので、医療機関におけるキャパシティーを試験数で図ることはできない。試験の難

易度と CRC の負荷量で決定する必要がある。年間通して 70 人しか実施しない場合もあれ

ば、300 人実施することもある。 Q : 治験医師について A : 医療機関との契約 契約はスポンサーと医師、医療機関の三者間で行っている。医療機関が特定の医師と独占

契約するということはない。スポンサーが選定した医師の勤務先は治験スタッフがいない

ので Physicians Research Group の医療機関で実施したいというケースが7割である。し

かし特殊な場合は、医療機関独自で有能な医師を募集する場合もある。 医師を選定 過去、医療機関内で実施経験のある治験医の情報をデータベース化しており、その情報を

スポンサーに提供している。スポンサーはその情報を利用し医師を選定している。医師の

選定はスポンサーが行っている。 治験医が経験豊かであることは重要であるが、それ以上に治験スタッフの経験が重要であ

る。 医療機関の選定 Eli Lilly では、全米の各拠点にいる CRA が医療機関の選定を行っている。医療機関の選

定はプロジェクトの承認までのスケジュールを成功させるための大きな要因となる。州ご

* 臨床開発医師(一般に、開発計画や試験計画書の作成の責任を有する)を補佐する役割。

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とにパフォーマンスが異なるため、それを充分理解した各拠点の CRA に医療機関の選定が

まかされている。 このようなビジネスモデルは、ヨーロッパでは顕著でない。どちらかというと、疾患分野

で何人かの医師が協力しあっているケースが多い。 Q : 医療機関における治験の広告について A : IRB およびスポンサーの許可を得て、治験毎に広告を出している。過去に医療機関で

実施した治験に登録した患者情報を利用して、医療機関のフルタイムリクルーターが電話

で患者のリクルートを行う場合もある。電話のリクルートは患者が IRB で承認を受けた選

択・除外基準に合致しているかの確認をおこなっている。 Q : 第Ⅱ相、第Ⅲ相の臨床試験専門の医療機関は米国に多く存在するのか A : たくさんある。Indiana において医療機関に支払われる治験費の予算枠は決まってい

る。他の医療機関との差別化はどれだけ治験を経験しているか、どれだけクリーンなデー

タを提供できるかにかかっている。治験中に何か問題が発生した場合の対応、入力の速さ、

患者登録の早さなども重要な評価項目となる。 Q : 治験における臨床試験専門の医療機関の使用割合について A : Eli Lilly の経験では、治験の 40%が臨床試験専門の医療機関で実施している。残りの

60%は一般治療をしている医療機関である。臨床試験専門の医療機関は研究のみで一般治

療はしていないが、そこで働く医師は医療現場を別に持っていて、そこでは一般医療を行

っている。 医師の割合でみると、Eli Lilly のあくまで推測であるが、臨床試験にかかわっている医師

は 30%で、70%の医師は臨床試験に全くかかわっていないと思う。

訪問を終えて

1997 年に臨床評価部会・統計分科会(現在の統計・DM 部会の前身)が米国調査団を派

遣したとき、このような治験専門のクリニックはすでに存在していた。10 年を経ても同じ

形態で存在しているということは、米国の社会では受け入れられ、その価値が認められて

いるということだろう。そのようなビジネスモデルがますます広がりをみせ、競争を生み、

製薬企業とも give & take のよい関係が構築されている。一部の大規模な医療機関でのみ治

験外来が設けられているのみの日本の目から見て、非常に羨ましい環境であると感じた。

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3. 結びにかえて

今日、多くの企業では、仕事の細分化が進んできており、そのことがしばしばひずみをも

たらしている。情報の全体の流れの中の極一部を任された担当者は、与えられた職責の中

で特定のゴールに対して自分の仕事の価値を 大化しようとする傾向があるからである*。

CRA しかり、データ・マネージャしかり、解析担当者しかり、メディカル・ライターしか

り、監査担当者しかりである。それぞれの担当者(担当部署)が自分の領分を中心に、も

ちろん良かれと思いながらプロセス改善に精を出す。今回の米国調査団において、米国で

どの訪問先に行っても、同様に感銘を受けたのは、その視点の大きさ、視野の広さであっ

た。Google Earth という Web 上のツールをご存知だろうか。衛星写真を地球全体に張り合

わせ、倍率も移動も実にシームレスに行なえる Web 上のツールで、「自分の家の屋根がはっ

きりとわかるような視野」から、「地球の姿を球として表現する視野」までシームレスにブ

ラウジングできる。日本では、管理職レベル以上でさえも「自分の家の屋根がはっきりと

わかるような視野」でしか物事を捉えていない人々が相変わらず多い。今回の訪問先で会

った人たちが錚々たる面々だったので、そのような感想をもったのかもしれないが、皆「地

球の姿を球として表現する視野」で見ているようだった。どの訪問先に行っても(実際、

そうはっきりと言われたのではないが)「君たち pinpoint solution をツギハギにしても根本

的な解決にはならないんだよ。もっと大きな視点から、全体を考えて、グランド・デザイ

ンを考え直さないと!」と言われ続けたような 2 週間だった。 EDC は今回の興味の一つであった。日本では、紙のプロセスから電子 CRF を用いたプロ

セスに移行するにあたって、文書やプロセスや担当者の役割をどうマッピングしたらいい

のかという議論が多い。「なぜ EDC なのか?」という問に明確な回答を持ち合わせている

開発担当者も業界全体で見ればそう多くない。我々が米国で会った人々は違った。日本で

は実現が程遠いと思われている医療機関側の原データの電子化(eSource)、データ標準の

策定も考えた上で、臨床試験全体をペーパーレスにする eClinical Trial を現実的な近未来

像と捉えて、EDC は情報収集の単なる一部の手段に過ぎないと捉えていた。 データ標準については、CDISC が圧巻であった。我々を迎えてくれたメンバーは CDISC

の創設者であり会長である Rebecca Kush を始め、CDISC のコアメンバーだった。「社内標

準を書き上げることは、天才的な人材が一人いればできる。しかし、視野の狭い担当者が

何人集まってもできない。」といわれるデータ標準の分野にあって、コアメンバーのどの一

人がどこの組織に行っても標準をゼロから築き上げ、すべてをマネージできる技量を持っ

ているし、データ標準を知り尽くしているスーパー・エキスパートの集団であることがわ

* David Salsburg, Deming Principles Applied To Processing Data From Case Report Forms,

Drug Information Journal, Vol.36, 135-141 (2002)

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かり、凄味すら感じた。医療情報全体の標準化まで視野に入れて、臨床試験データのデー

タ標準を考えているのは素晴らしい。医療情報全体の世界的な標準化は到底成功しないと

考える人々もいるが、ぜひとも成功させてほしい。ISO 化も是非実現してほしい。スポン

サーもベンダーも規制当局も医療機関も、一つの方向に収束して行くためのより所となる。

今回の訪問がきっかけとなり、製薬協統計・DM 部会は平成 19 年度から CDISC の推進を

明示的に謳い、事業計画の中に反映させた。日本の業界全体を欧米と比肩するレベルに持

っていくために、CDISC がカバーしない、各社が作りこまなければならない部分、業界と

してコンセンサスを得る必要がある部分を炙り出し、それらに取り組んでいく必要がある。 臨床試験データの品質管理モデルも見直すべきときに来ている。 終段階での検査的な意

味合いが強かった「データ品質の確認」という姿勢を改め、プロセス管理を重視する 21 世

紀型の臨床試験データの品質管理モデルを考えることが急務である。Lean*、SixSigma、抜取試験(Sampling Procedures for Inspection by Attributes†)といった哲学や方法論を

臨床試験のデータ・プロセッシングの分野にいかに応用していくかという議論が欧米の学

会、シンポジウムのテーマとして盛んに取り上げられるようになってきている。製薬業界

への応用の分野では、まだ“Golden Standard”はできあがっていない。今こそ、日本の製

薬業界も世界の議論のテーブルにつかなければならない。 今回の調査団を組織するにあたり、データ・マネジメントにかかわる人たちを集めた。我々

が渡米するのと同じ時期に Applied Clinical Trials 誌に、まさに我々が見聞したことを端的

に著したような記事が掲載された。「Data management:R.I.P. or Brave New World」(Oct 1, 2006、Timothy Pratt、Applied Clinical Trials)という記事である。R.I.P.とは墓石に刻

まれる"Rest In Peace"あるいは"Requiescat In Pace [ラテン語]"(安らかに眠れ)という決

まり文句であり、Brave New World の文字通りの意味は、「新しい世界に勇気をもって臨め」

という意味である‡。「自分の家の屋根がはっきりとわかるような視野」で「今を守るか」、

それとも勇気を振り絞り、新しい世界でどう振舞っていくかを「前向きに考えるか」。デー

タ・マネージャだけではない。データ・プロセッシングにかかわるあらゆる担当者が同様な

選択に直面している。 データ標準が浸透し、世界中で共通の原理原則に基づきデータが収集・解析・解釈され、

EDC が臨床試験データ収集のごく普通の手段となり、eClinical Trials が現実的な近未来像

* リーン;トヨタの品質管理を MIT の教授ジェームス・ウォマックらが体系的に整理・紹介し、

世界的に理解が進んだ。詳細は次の書籍を参照。1)リーン生産方式が世界の自動車産業をこう変

える。The Machine That Changed The World、ジェームス・ウォマックら、沢田博訳(1990)、

2)リーン・シンキング、ジェームス・ウォマックら、稲垣公夫訳(2003) † ISO 2859-1 (British Standard 6001 と等価) ‡ 同名の Aldous Huxley 作の小説がある。機械文明の発達の末、人間が自らの尊厳を見失うと

いう逆ユートピアの姿を、諧謔と皮肉の文体でリアルに描いた文明論的 SF 小説。

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として見えてきて、企業も規制当局も Data Warehouse を整備する時代になったとき、そ

こにかかわる担当者は、今の職務の「くくり」とは違った「くくり」の職責を担っている

ことだろう。当然、プロセスの組み換え、仕事の組み換え、その一部を任される担当者の

職責の組み換えが起こっていく。欧米の後姿を追いかけ続け、後塵を拝するばかりではな

く、彼らが今考えている将来も理解した上で、彼らと将来を対等に議論していけたらと切

に願う。本報告書が、日本の製薬業界にかかわる多くの方々(特にデータプロセッシング

にかかわる方々)の目にとまり、大きな視点から将来像を考えるきっかけになったとした

ら 高の喜びである。