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550 山本拓矢(YAMAMOTO, Takuya)東京工業大学大学院理工学研 究科有機・高分子物質専攻(152 8552 東京都目黒区大岡山 2 12 1, S8 41) 平成 11 5 University of Utah, Department of Chemistry 卒業,平成 16 12 University of Utah, Department of Chemistry, Graduate Program 修了,Ph.D.,平成 16 11 月~平成 17 3 University of Utah, Postdoctoral Fellow平成 17 4 月~平成 17 9 月科学技術振興機構 ERATO 研究員,平成 17 10 月~平成 20 6 月科学技術振興機構 ERATO-SORST 研究員,平成 20 7 月より東京工業大学大 学院理工学研究科有機・高分子物質専攻助教,現在に至る. 550 高分子論文集 (Kobunshi Ronbunshu), Vol. 68, No. 8, pp. 550561 (Aug., 2011) 〔総 合 論 文〕 高分子の『かたち』に基づく機能発現 山本 拓矢 (受付 2011 4 5 日・審査終了 2011 4 26 日) 環状高分子は,主鎖末端が存在しないため,同一の組成・分子量であっても『かたち』(トポ ロジー)の違いから直鎖状高分子とは異なった特性を示す.筆者らは高分子の『かたち』に根ざした機能 (トポロジー効果)の発現を狙って,環状高分子合成法の開発と機能化されたさまざまな環状高分子の新奇 物性探究を行ってきた.新規合成法として,筆者が所属する研究室で過去に開発された ESA-CF と呼ば れる手法とクリックケミストリーを組合せることで,複数の環の結合様式に基づき bridged 型および spiro 型と呼ばれる多環状高分子の選択的合成に成功した.また,水素結合性のユニットを環に導入する ことで,高分子カテナンを効率的に構築した.一方,トポロジー効果の発現として,分子内メタセシス反 応によって合成した両親媒性環状ブロック共重合体の自己組織化を行い,ミセルを構築したところ,直鎖 状の前駆体が形成するミセルよりも熱安定性がおよそ 50° C も向上するという現象が見られた.さらに, ペリレンジイミド部位を含む環状および対応する直鎖状の高分子を合成し,単一分子蛍光分光によってそ れらの拡散挙動を観察したところ,『かたち』に基づいて拡散の様式が異なることが示された. 1 巨視的世界において,多くの場合,物質の『かたち』 はその機能や特性を決定する.微視的な世界においても 同様に『かたち』に由来する機能性を追求して,ナノメー トルスケールの物質の構築が非常に精密に行われ,ナノ サイエンスやナノテクノロジーと呼ばれる学術分野を開 拓している 1),2) .この点において,高分子化学では,長 い間その分子形状は直鎖かランダムに分岐したものに 限られていた.しかし,近年リビング重合や自己組織化 を駆使した精巧な合成法が開発され,精密に制御された 分岐状 3)~5) や環状ポリマー 6)~13) の選択的合成が可能と なった.とりわけ,多様な化学構造や官能基をもつ単環 や多環状高分子の自在な合成が,物性測定や応用化でき る純度およびスケールで実行可能となったことが注目す べき点である.これら環状高分子の合成・精製・測定手 法の発展は,最先端の高分子化学や高分子物理への寄与 および高分子材料の開発につながると考えられる. 興味深いことに,環状高分子は『かたち』に基づいた 特異な性質(トポロジー効果)を発現することが知られて おり 6)~9) ,理論・実験の両面から研究が行われている. たとえば,同一の組成・分子量を有する直鎖状高分子と 比較して,高いガラス転移点,低い粘度,小さな流体力 学的体積などを示すことが古くから知られていたが 6) 最近になって,光異性化反応 14) や生分解性 15),16) ,低温 水溶性高分子の相転移挙動 17),18) にも高分子トポロジー の効果が認められた.また Szoka らは,ドラッグデリ バリーシステム(DDS)のキャリアとして環状高分子に 着目し,分子鎖末端が存在しないコンフォメーションの 自由度制限によって腎臓からの排出が抑制され,血中で の薬剤濃度維持効果を示すという興味深い報告を行っ 19),20) .このように,高分子トポロジー効果の探究 は,近年加速的に進展している. 本報では,まず筆者らが開発した多環状高分子の選択 的・効率的合成法ついて述べ,さらにさまざまな環状高 分子のトポロジー効果を利用した新規機能の発現や応用 を紹介する. 2 環状高分子の合成 トポロジー効果を探究するに当たって,まず環状高分 子の合成が必須である.最も古典的な単環状高分子の

〔総合論文〕 高分子の『かたち』に基づく機能発現的・効率的合成法ついて述べ,さらにさまざまな環状高 分子のトポロジー効果を利用した新規機能の発現や応用

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Page 1: 〔総合論文〕 高分子の『かたち』に基づく機能発現的・効率的合成法ついて述べ,さらにさまざまな環状高 分子のトポロジー効果を利用した新規機能の発現や応用

550

山本拓矢(YAMAMOTO, Takuya)東京工業大学大学院理工学研

究科有機・高分子物質専攻(1528552 東京都目黒区大岡山

2121, S841)平成 11 年 5 月 University of Utah, Department of Chemistry卒業,平成 16 年 12 月 University of Utah, Department ofChemistry, Graduate Program 修了,Ph.D.,平成 16 年 11月~平成 17 年 3 月 University of Utah, Postdoctoral Fellow,

平成 17 年 4 月~平成 17 年 9 月科学技術振興機構 ERATO研究員,平成 17 年 10 月~平成 20 年 6 月科学技術振興機構

ERATO-SORST 研究員,平成 20 年 7 月より東京工業大学大

学院理工学研究科有機・高分子物質専攻助教,現在に至る.

550

高分子論文集 (Kobunshi Ronbunshu), Vol. 68, No. 8, pp. 550―561 (Aug., 2011)

〔総 合 論 文〕

高分子の『かたち』に基づく機能発現

山本 拓矢

(受付 2011 年 4 月 5 日・審査終了 2011 年 4 月 26 日)

要 旨 環状高分子は,主鎖末端が存在しないため,同一の組成・分子量であっても『かたち』(トポ

ロジー)の違いから直鎖状高分子とは異なった特性を示す.筆者らは高分子の『かたち』に根ざした機能

(トポロジー効果)の発現を狙って,環状高分子合成法の開発と機能化されたさまざまな環状高分子の新奇

物性探究を行ってきた.新規合成法として,筆者が所属する研究室で過去に開発された ESA-CF と呼ば

れる手法とクリックケミストリーを組合せることで,複数の環の結合様式に基づき bridged 型および

spiro 型と呼ばれる多環状高分子の選択的合成に成功した.また,水素結合性のユニットを環に導入する

ことで,高分子カテナンを効率的に構築した.一方,トポロジー効果の発現として,分子内メタセシス反

応によって合成した両親媒性環状ブロック共重合体の自己組織化を行い,ミセルを構築したところ,直鎖

状の前駆体が形成するミセルよりも熱安定性がおよそ 50°C も向上するという現象が見られた.さらに,

ペリレンジイミド部位を含む環状および対応する直鎖状の高分子を合成し,単一分子蛍光分光によってそ

れらの拡散挙動を観察したところ,『かたち』に基づいて拡散の様式が異なることが示された.

1 緒 言

巨視的世界において,多くの場合,物質の『かたち』

はその機能や特性を決定する.微視的な世界においても

同様に『かたち』に由来する機能性を追求して,ナノメー

トルスケールの物質の構築が非常に精密に行われ,ナノ

サイエンスやナノテクノロジーと呼ばれる学術分野を開

拓している1),2).この点において,高分子化学では,長

い間その分子形状は直鎖かランダムに分岐したものに

限られていた.しかし,近年リビング重合や自己組織化

を駆使した精巧な合成法が開発され,精密に制御された

分岐状3)~5)や環状ポリマー6)~13)の選択的合成が可能と

なった.とりわけ,多様な化学構造や官能基をもつ単環

や多環状高分子の自在な合成が,物性測定や応用化でき

る純度およびスケールで実行可能となったことが注目す

べき点である.これら環状高分子の合成・精製・測定手

法の発展は,最先端の高分子化学や高分子物理への寄与

および高分子材料の開発につながると考えられる.

興味深いことに,環状高分子は『かたち』に基づいた

特異な性質(トポロジー効果)を発現することが知られて

おり6)~9),理論・実験の両面から研究が行われている.

たとえば,同一の組成・分子量を有する直鎖状高分子と

比較して,高いガラス転移点,低い粘度,小さな流体力

学的体積などを示すことが古くから知られていたが6),

最近になって,光異性化反応14)や生分解性15),16),低温

水溶性高分子の相転移挙動17),18)にも高分子トポロジー

の効果が認められた.また Szoka らは,ドラッグデリ

バリーシステム(DDS)のキャリアとして環状高分子に

着目し,分子鎖末端が存在しないコンフォメーションの

自由度制限によって腎臓からの排出が抑制され,血中で

の薬剤濃度維持効果を示すという興味深い報告を行っ

た19),20).このように,高分子トポロジー効果の探究

は,近年加速的に進展している.

本報では,まず筆者らが開発した多環状高分子の選択

的・効率的合成法ついて述べ,さらにさまざまな環状高

分子のトポロジー効果を利用した新規機能の発現や応用

を紹介する.

2 環状高分子の合成

トポロジー効果を探究するに当たって,まず環状高分

子の合成が必須である.最も古典的な単環状高分子の

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Scheme 1. Schematic representation of the electrostatic self-assembly and covalent fixation (ESA-CF)process using a N-phenyl pyrrolidinium telechelics and dicarboxylate counterion.

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高分子の『かたち』に基づく機能発現

高分子論文集, Vol. 68, No. 8 (2011)

合成手法は,直鎖状の高分子の両末端を等モル量の二官

能性カップリング剤によって連結する二分子環化であ

る21)~23).後に,この手法を改良した一分子環化法が開

発された24),25).最近では希釈条件を必要としない環拡

大重合が報告されている26),27).これに対し,筆者の所

属する研究グループでは独自に開発した Electrostatic

Self-Assembly and Covalent Fixation(ESA-CF)と呼ばれ

る合成法を展開してきた28),29).本章では ESA-CF 法を

応用した多環状高分子の合成について説明する.

2.1 ESA-CF 法

ESA-CF 法は,直鎖やスター型の高分子鎖末端に環構

造を含むアンモニウム基を導入した末端反応性高分子

(telechelics)と多官能性のカルボキシラートとのイオン

性集合体を形成し,カルボキシラートの攻撃による求核

置換反応によって両者を共有結合で連結するという手法

である(Scheme 1).この合成法に用いる telechelics は,

リビング重合および環状アミンを用いた停止反応,また

は末端の変換によって調製する.また,本手法はカチオ

ンとアニオンが常に互いの電荷を相殺するように塩を形

成する性質を利用し,希釈条件下において最小単位であ

る互いの電荷数の telechelics と多官能性アニオンを自己

集合させる.たとえば,直鎖状 telechelics と二価または

四価のカルボキシラートを希釈条件下で自己集合化およ

び共有結合化されると,それぞれ単環または 8 の字型の

高分子となる30).さらに,ESA-CF 法の動的特性である

平衡状態におけるコンポーネントの交換を活かして,多

環状や環鎖構造の構築も報告されている31).さらに,

ESA-CF 法の応用として,ヒドロキシ,アルケニル,ア

ルキニル,アジ基などをもつ開始剤または多価カルボキ

シレートを使用することで,官能基化された環状高分子

(kyklo-telechelics)が合成された32),33).

そこで,筆者らはこれらの知見を活かして,ESA-CF

法(Figure 1, Scheme 2)とカップリング反応を組合せる

ことで,多環構造や環鎖構造をもつ高分子トポロジー

の構築に挑戦した.次に示すように,さまざまな kyklo-

telechelics に対し,選択的かつ高効率な反応として知ら

れるクリックケミストリーを使用した手法は,bridged

構造(Scheme 3)や spiro 構造(Scheme 4)などの複雑な多

環状構造の構築に非常に有効であった34).また,水素結

合性ユニットを含む環状高分子に ESA-CF 法を適用す

ることで効率的なカテナンの合成(Scheme 5)や35),オ

レフィンメタセシスを用いた 8 の字構造から単環構造へ

のトポロジー変換も達成された(Scheme 6)36).

2.2 ESA-CF 法とクリックケミストリーによる多環

状高分子の構築

2.2.1 bridged 構造

複数の環ユニットが直鎖ユニットで連結した bridged

型の高分子は,ESA-CF 法により環状の kyklo-telechel-

ics 3a, 3b を合成し,直鎖状の telechelics 4a, 4b とのク

リックケミストリーによって構築した(Scheme 3)34).

まず,triflic anhydride を開始剤とし,窒素雰囲気下で

THF のリビングカチオン重合を行い,停止剤として N-

phenylpyrrolidine を用いて両末端に N-phenylpyrrolidi-

nium を有するジカチオン性 poly(THF)1a/CF3SO-3

(Figure 1)を準備した.次に,1a/CF3SO-3 の対アニオン

を,エチニル基を有するジカルボキシラート 2a(Figure

1)と交換した後,得られたイオン性集合体 1a/2a を希釈

条件下(0.1~0.2 g L-1)で還流することにより 3a を合成

した(Scheme 2).同様にエチニル基を有する直鎖状

poly(THF) 1b/CF3SO-3 (Figure 1)と 2a を用いて 2 か所

にエチニル基を有する単環状 poly(THF) 3b の合成を

行った(Scheme 2).一方,アジ基を各末端に導入した

直鎖型 telechelics 4a(Scheme 3)および三本鎖スター型

telechelics 4b(Scheme 3)は,それぞれ二官能性および三

官能性の THF リビングカチオン重合を tetrabutylam-

monium azide で停止することで合成した.続いて,3a

と 4a,および 3a と 4b のクリックケミストリーを,Cu

(I)を触媒とし THF/H2O=4/1 の混合溶媒中,室温で

行った(Scheme 3).生成物の SEC を測定したところ,

原料の分子量から計算される二環および三環 bridged 型

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Figure 1. Chemical structures of telechelics and counteran-ions used in the ESA-CF process for the construction ofmulticyclic polymers.

Scheme 2. Synthesis of functionalized cyclic polymers(kyklo-telechelics) via the ESA-CF process.

Scheme 3. Construction of bridged-type topological poly-mers by click chemistry.

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山本

高分子論文集, Vol. 68, No. 8 (2011)

高分子の予測値([3a×2+4a]2500×2+2100=7100;

[3a×3+4b]: 2400×3+4600=11800)が,実測分子量

(5a: 6700; 5b: 11100)とよい一致を示した.次に,分取

用 SEC による精製で未反応のプレポリマー 3a に由来す

るショルダーピークを取り除き,目的物の単離を行っ

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Scheme 4. Construction of spiro-type topological polymersby click chemistry.

Scheme 5. (a) Schematic representation of the formation of a polymerhetero[2]catenane via the ESA-CF process. (b) Chemical structure of a catenatedionic complex [6a1c/2e].

Scheme 6. (a) Schematic representation of the formation of 8-shaped polymers (7a and7b) and the subsequent metathesis to produce corresponding monocyclic polymers of twodifferent sizes (8a and 8b).

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高分子の『かたち』に基づく機能発現

高分子論文集, Vol. 68, No. 8 (2011)

た.精製後の 1H NMR 測定ではエチニル基のシグナル

が消失し,トリアゾール環由来のものの出現が確認され

た.また,すべてのシグナルは帰属された.加えて,

IR スペクトル中のアジ基に由来する吸収の消失は,ク

リックケミストリーの完了を支持するものであった.さ

らに,MALDI-TOF MS による質量分析では,ピーク

間隔が poly(THF)の繰返し単位である m/z=72 を示

し,それぞれのピークが目的物の理論分子量と非常によ

く一致した.これらの結果から二環および三環 bridged

型 poly(THF) 5a および 5b の選択的構築が示された.

一方,3b と 4a,および 3b と 4b をマクロモノマーとし,

クリックケミストリーによる逐次重合を CuBr, 2,2′-

bipyridyl を用い,THF 溶媒中で行った(Scheme 3).

SEC における分子量の増大と 1H NMR におけるエチニ

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山本

高分子論文集, Vol. 68, No. 8 (2011)

ル基の消失,およびトリアゾール部位の生成が確認さ

れ,それぞれ多環 bridged 型高分子 5c および 5d の合成

が示唆された.

2.2.2 spiro 構造

環状高分子が 1 点で結合し直列に並んだ形状の spiro

型高分子は,その複雑な連結様式のため合成が非常に困

難であり,三環以上の spiro 型高分子の選択的合成はこ

れまで報告されていなかった.そこで,筆者らは上述の

bridged 型と同様の方略によって,アジ基およびエチニ

ル基を有する環状プレポリマー 3b3e を ESA-CF 法に

より合成し(Scheme 2),これらをクリックケミストリー

により連結させることで三環,四環および多環の spiro

型高分子 5e, 5f および 5g の構築を行った(Scheme 4)34).

まず,1a/CF3SO-3 とアジ基を有するジカルボキシレー

ト 2b(Figure 1)のイオン性集合体を作製し,希釈条件

下で還流,共有結合化することでアジ基を有する環状

poly (THF ) 3c を合成した( Scheme 2 ).同様に 1b /

CF3SO-3 と 2a,またはテトラカルボキシラート 2c

(Figure 1)を用いて,2 か所にエチニル基を有する単環

状 poly(THF) 3b および 8 の字型 poly(THF) 3d の合成

を行った(Scheme 2).次に,3c と 3b,ならびに 3c と

3d を THF/水混合溶媒中銅触媒存在下でのクリックケ

ミストリーにより,それぞれ三環および四環 spiro 型

poly(THF) 5e および 5f の合成を行った(Scheme 4).

生成物を分析したところ,IR スペクトル中のアジ基に

帰属される吸収が消失し,1H NMR ではエチニル基の

消失に加えトリアゾール環の形成が示された.さらに,

SEC による分子量分析から,三環および四環 spiro 型高

分子の分子量予測値([3c×2+3b]: 2100×2+3100=

7300; [3c×2+3d]: 2400×2+5900=10700)が,実測値

(5e: 7400; 5f: 9200)とよい一致を示した.MALDI-TOF

MS からも 5e および 5f に相当する絶対分子量が確認

された.これらの結果により,三環 spiro 型 5e および

四環 spiro 型 5f のトポロジーを有する新規高分子の選

択的合成が示された.さらに,3e 単独の逐次重合を

CuBr, 2,2′-bipyridyl 存在下,THF 中で行った(Scheme

4).SEC における分子量の増大と 1H NMR によるエチ

ニル基の消失およびトリアゾール環の生成が確認され,

多環 spiro 型高分子 5g の構築が示唆された.

2.3 水素結合と静電相互作用による自己組織化を利

用した高分子カテナンの構築

二つの環が絡まり合ったカテナン構造の構築は,低分

子間の水素結合,配位結合,p-p 相互作用などによる効

率的な合成が多数報告されている37)~40).しかし,高分

子カテナンの構築例はまれであり,それらの単離収率は

非常に低い(<1)41),42).この理由として,環状高分子

を形成する際には高希釈条件が必須であるが,カテナン

構造の構築には分子鎖の絡まり合いを発生させるために

比較的高濃度が求められ,これら二つの一見相反する条

件を両立する方略が必要となるためである.これに対し

筆者らは,水素結合性の部位を含む環状高分子を ESA-

CF 法により構築することで,高分子カテナンの効率的

な構築を達成した35).つまり,あらかじめ水素結合性ユ

ニットをもつ環状高分子 6a を ESA-CF 法によって合成

し,6a の存在下において,両末端に N-phenylpyrrolidi-

nium およびセグメント中央に水素結合性アミド基を有

する poly(THF) 1c(Figure 1)と biphenyl dicarboxylate

2e(Figure 1)の自己組織化および共有結合化を行うこと

で,高分子カテナンの構築を行った(Scheme 5).

まず,窒素雰囲気下において水素結合性の isophtha-

lamide 部位をもつ dicarboxylic acid H+/2d に対し,

thionyl chloride を加え還流し diacid chloride とした.

過剰の thionyl chloride を減圧留去後,THF および sil-

ver triflate を加えリビングカチオン重合を行った後,停

止剤として N-phenylpyrrolidine を使用し 1c /CF3SO-3

(Figure 1)を合成した.次に,1c/CF3SO-3 を少量のアセ

トンに溶解し,Na+/2e 水溶液へ滴下し,対アニオンを

交換してイオン性集合体 1c/2e を得た.続いて,1c/2e

を別途に合成した 6a と混合し,CHCl3(1.0 g L-1)中,3

時間還流することによって共有結合化生成物を得た.生

成した複数の構造の単離を試みたところ,興味深いこと

に,単環構造の poly(THF)はアセトンに可溶であった

が,反応生成物中にアセトン不溶部が認められた.

MALDI-TOF MS を用いてアセトン不溶部の絶対分子

量を測定したところ,6a と 6b の和に相当する計算分子

量(m/z=3323.39, DPn=20)と一致するピーク(m/z=

3323.08)が観測され,非対称 2-カテナン [6a6b] の形成

が示唆された(収率 7).さらに,1H NMR および

SEC を用いてこの高分子カテナンの構造を詳細に確

認した.

2.4 8 の字から単環へのトポロジー変換

上述のように水素結合と静電相互作用による自己組織

化を同時に用いることで,高分子カテナン収率を,従来

法と比較して著しく向上することに成功した.これを受

けて,カテナンを作製する際,2 本の高分子鎖を近づけ

るアプローチとして水素結合に代えて切断可能な共有結

合の使用を試みた36).

まず,1,6-dibromo-trans-3-hexene と dimethyl 5-hydro-

xyisophthalate の Williamson エーテル化反応後エステル

の加水分解を行い,2f(Figure 1)を合成した.次に,1a/

CF3SO-3 と 2f のイオン交換を行い,得られたイオン性

集合体 1a/2f を CHCl3 中希釈下(1.0 g L-1)で 3 時間還

流することによって共有結合化生成物 7a および 7b を

得た(Scheme 6).MALDI-TOF MS 測定の結果から,

7a および 7b に相当する計算分子量(m/z=5490.89, DPn

=60)と一致するピーク(m/z=5490.4)が観測され,8 の

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高分子の『かたち』に基づく機能発現

高分子論文集, Vol. 68, No. 8 (2011)

字型高分子の形成が示唆された.また,SEC で求めた

分子量(4900)は同一鎖長の直鎖状高分子(3900×2)の

約 0.63 倍となり,8 の字型高分子の構造を支持してい

る6).次に,メタセシスによるオレフィンの切断反応を

10 等量の第 2 世代 Grubbs 触媒と大過剰の ethyl vinyl

ether 存在下,CH2Cl2 中で 24 時間還流することによっ

て行い,8a および 8b を得た(Scheme 6).MALDI-TOF

MS を用いて絶対分子量を測定したところ,それぞれ 8a

の計算分子量(m/z=2847.06, DPn=30)と一致するピー

ク(m/z=2847.5)および 8b の計算分子量(m/z=5671.14,

DPn=60)と一致するピーク(m/z=5671.6)が観測され,

8 の字型高分子のオレフィン切断反応の進行が示唆され

た.これらの結果から,2 本の telechelics と四官能性カ

ルボキシレートの結合パターンによって 2 種類の 8 の字

型高分子が構築され,メタセシスによってトポロジー変

換されることで,二つのサイズの単環状高分子が生成し

たと結論づけられた.

ここで,8 の字型高分子を形成する 2 本の高分子セグ

メントは空間的に近接していることから両者の絡み合い

に基づく高分子カテナンの生成について検討した.メタ

セシス反応後の生成物を SEC によって分画し,MALDI-

TOF MS による詳細な分析を行ったところ,カテナン

に相当するピークは確認されなかった.これは,切断可

能な共有結合を用いた場合,2 本の高分子鎖の絡み合い

の確率は空間的に近接した状態でも低い事を示唆してい

る.また,絡み合いは分子量が大きくなれば起こりやす

いと予想されるが,今後実験から証明したい.

3 環状高分子の『トポロジー効果』

ホモポリマーが形成する単環状高分子のトポロジー効

果は,溶液中や固体状態,静的なものから動的なものま

で幅広く研究されてきた6)~9).近年では,多環状高分子

の合成報告が相次いでいることから,理論やシミュレー

ションから予想されたユニークな特性の実験による検証

が可能なりつつあり,計算化学の研究対象として注目を

集めている43)~45).さらに,環状高分子の特性計算は,

ポリエチレンに代表される工業的に非常に重要な高分

子46),セミフレキシブルや剛直な主鎖をもつ高分子47)や

ブロック共重合体48)へ展開されている.また,実際に行

われたシミュレーションと実験のコラボレーションによ

る多環状高分子の液体クロマトグラフィーに関する研究

は,これまで困難とされていた複雑なトポロジーの同定

や精製法の確立に大きく寄与すると考えられる49).

ここで,環状高分子が発現する『トポロジー効果』の

二つの要因について説明する.たとえば,最もよく知ら

れたトポロジー効果のひとつとして,ガラス転移点(Tg)

の変化が挙げられる.この現象は,運動性の高い分子鎖

末端が存在しないため環状高分子は同一分子量の直鎖状

のものと比較したとき高い Tg を示すが,分子量が大き

くなるに従い末端部位が占める割合の減少からその差異

は小さくなる6).これに対し流体力学的体積や溶融粘度

は,分子量に依存しないことが知られている6).つま

り,これらの現象は環状高分子の構造に由来する 2 種類

のまったく違った要因によるものである.前者は分子鎖

末端の消失効果であり,後者は環状構造が本質的にもつ

特性である.どちらの場合も,環状高分子が示すこれら

の特異な物性は『トポロジー効果』として近年注目を集

め,溶液状態だけではなく,バルクや表面において,機

械的や熱的または光学的や電子的,さらには生物学的な

応用が報告されている.

3.1 さまざまな機能性環状高分子によるトポロジー

効果

近年,環状高分子合成法の発展により,多様な主鎖に

よって環状構造の構築が可能となり,主鎖の化学的特

性を活かしたトポロジー効果の開拓が進んでいる.本セ

クションでは,新規環状高分子が発現した光反応性14),

生分解性15),16),温度応答性17),18),および薬理学的機

能19),20)における非常に興味深いトポロジー効果を報告

した最新研究を紹介する.

Zhu らは,主鎖にアゾベンゼンをもつ環状高分子

の光異性化反応に対するトポロジー効果の調査を行っ

た14).環状(Mn(SEC)=3310, PDI=1.40)およびその前

駆体である直鎖状(Mn(SEC)=6000, PDI=1.40)のアゾ

ベンゼン高分子に対し 365 nm の UV 光を照射し,トラ

ンス体からシス体への異性化を行ったところ,環状高分

子が直鎖状のものに比べて僅かに大きい速度定数を示

した(環状ke=9.5×10-3 s-1,直鎖状ke=8.3×10-3

s-1).また,437 nm の可視光照射によるシス体からトラ

ンス体への逆異性化についても,同様であった(環状

kH=1.55×10-4 s-1,直鎖状kH=1.39×10-4 s-1).こ

の現象は,環構造が分子間のからみ合いを抑制するため

物理的な制限が少なく,直鎖状の高分子より異性化が迅

速に行われたためと報告されている.

自然界には環状 DNA,環状ペプチドや環状多糖類に

加えて cyclotides50)と呼ばれる環状のポリペプチドなど

が存在し,これらは生分解に対して高い耐性を示すこ

とが知られている.この現象に関連し,脂肪族ポリエ

ステルの加水分解に対するトポロジー効果が報告され

た15),16).Grayson らは,環状 poly(e-caprolactone)(PCL)

(Mn(MALDI)=6180)の酸加水分解を行い,分子量減少

の時間経過を直鎖状 PCL(Mn(MALDI)=6220)と比較

した.すると,MALDI-TOF MS から求めた平均分子

量では,直鎖状 PCL は 3 時間でおよそ 3000 に減少し

たのに対し,環状 PCL は同様の分子量になるまで 12

時間を要した.一方,SEC 測定により平均分子量の遷

移を観察すると,直鎖状 PCL が単純減少を示したのに

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山本

高分子論文集, Vol. 68, No. 8 (2011)

対し,環状 PCL の平均分子量は一度増加した後,減少

するという結果が得られた.これは,環構造に対し最初

の加水分解反応が起こり直鎖状となった際に流体力学的

体積が増加し,その後直鎖状高分子として分解が進行し

たためであると考えられる.

poly(N-isopropylacrylamide)(PNIPAM)は,その生体

適合性や温度応答性から最も重要な機能性高分子のひと

つである.とくに,PNIPAM の low critical solution tem-

perature(LCST)は 32°C であり51),この生体温度範囲で

起こる相転移を利用して細胞シートなど最新の技術を含

めてさまざまな領域に応用されている52)~54).これに関

連して,環状 PNIPAM のトポロジー効果が曇点(Tc)と

エンタルピー変化(DH)が与える影響ついて,ほぼ同時

期に Winnik ら17)と Liu ら18)によって報告された.Win-

nik らは水溶液透過度の温度依存性を検討したところ,

環状 PNIPAM が対応する分子量の直鎖状 PNIPAM と

比較し数度高い Tc を示すと報告した17).加えて,透過

度の変化速度は環状のものが著しく遅かった.一方,

Liu らは相転移の濃度依存性を報告している18).同様の

透過度の温度依存性測定を行ったところ,直鎖状および

環状 PNIPAM 水溶液の Tc は,0.2 g L-1 の濃度におい

てそれぞれ 44°C と 46°C であり Winnik の報告と同じ傾

向を示したが,2.0 g L-1 の場合は,それぞれ 37°C と 35

°C となり,濃度に依存して Tc が逆転することが示され

た.さらに,相転移における DH が両グループから報

告されている.熱容量の温度依存性を DSC によって分

析したところ,環状 PNIAPAM は直鎖状のものと比較

し,幅の広い吸熱曲線を示し,吸熱の最高点が高温側に

移動していた.加えて Winnik らは,同一分子量の環状

と直鎖状 PNIPAM の DH を比較した際は,環状のもの

が小さな値を示しているが,この理由として環構造は空

間的やコンフォメーションの制約からポリマーと水分子

間の水素結合数が制限されるためであると考えている.

さらに,環状 PNIPAM の DH は分子量の減少に応じて

小さくなるが,直鎖状 PNIPAM の DH は測定領域では

常に一定であったと報告している.これは,環の縮小に

応じて水素結合数の制限がより顕著になるためであると

している.

さらに環状高分子は,腎臓の透析メカニズムを利用

したドラッグデリバリーシステム(DDS)開発にも応用

されている.体内の老廃物は,腎臓にあるナノサイズの

細孔によって選別され排出される.そこで,Fr áechet,

Szoka らは,環状高分子が細孔を通過するにはフォール

ディングが必要なため,直鎖状のものと比較した際,腎

機能によって排出されにくいと考え,高分子の『かたち』

に依存した体内保持性の実験を行った19),20).まず,官能

基化された環状 PCL 共重合体(Mn=9300, PDI=1.38)

を J áerome らの手法55)によって構築し,クリックケミス

トリーを用いて分子量の異なる poly(ethylene oxide)グ

ラフト鎖を導入することで,腎臓透析の閾値近辺の分子

量をもつ環状高分子(Mn~32000, 50000, 90000)を合成

した.また,一分子あたり平均 1 か所にフェノール基を

導入することで 125I による放射性標識化を行った.これ

らの環状および対応する直鎖状高分子をマウスに注入

し,各臓器の蓄積量および排出量を調査した.すると,

分子量 50000 の環状高分子を使用した場合,対応する直

鎖状高分子より 12少なく尿中に排出され,逆に各臓

器に高蓄積が認められるという顕著なトポロジー効果が

現れた.また,分子量 90000 の高分子では,環と直鎖の

差異は減少した.一方,分子量 32000 の場合,興味深い

ことに直鎖状高分子の方が体内に保持されやすいという

結果になった.この理由として,腎臓のナノ細孔の透析

閾値は分子量 30000~40000 であり,この値以下の場合

は小さな形状の環状高分子の方が透析されやすいためで

あると考察されている.これらの発見は,高分子の『か

たち』に基づいた血液循環時間の制御により,DDS の

薬剤担体や造影剤の開発につながる可能性がある.

3.2 高分子ミセルの熱安定性向上自己組織化によ

るトポロジー効果の増幅

個々の分子のトポロジー効果は微少なものが多いが,

自己組織化を利用し分子集合体とすることで,その差異

も増幅すると考えられる.そこで筆者らは,環状両親媒

性ブロック共重合体の自己組織化によりミセルを構築し

たところ,対応する直鎖状の前駆体が形成したものと比

較して,およそ 50°C も高い耐熱性を示すことを報告し

た56).本研究は,一部の好熱菌と呼ばれる単細胞性の古

細菌が,その細胞膜に環状の脂質分子を有することで海

底火山や温泉など熱水環境で生息できることに着想を得

て行ったものである57)~60).

まず,直鎖状前駆体として両末端にオレフィンをもつ

poly(butyl acrylate) -block-poly(ethylene oxide) -block-

poly(butyl acrylate)(分子量800-2600-800 または 700-

2800-700)を,分子内メタセシスを用いて環状両親媒性

ブロック共重合体(分子量1600-2600 または 1400-2800)

とした61).これら直鎖状および環状高分子の自己組織化

を水中で行ったところ(Scheme 7),CMC はそれぞれ

0.13 mg mL-1 および 0.14 mg mL-1, DLS によるミセル

の流体力学的直径はともに 20 nm と求められ(Figure 2),

有意な差は認められなかった.また,TEM・AFM を用

いた直接観察からも同様のサイズ・形状が確認された

(Figure 3).しかし,これらのミセル溶液(1.0, 0.50,

0.25 mg mL-1)の Tc を測定したところ,直鎖状高分子

ミセルはそれぞれ 24, 24, 27°C で構造の崩壊し,溶液が

懸濁したのに対し(Figure 4(a)),驚くべきことに環状高

分子ミセルはそれぞれ 74, 73, 71°C の高温まで安定で

あった(Figure 4(b)).これら透過率(T)対温度のプ

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Scheme 7. Chemical structures of (left) linear and (right)cyclic amphiphilic block copolymers and micelles formedtherefrom.

Figure 2. (a) Viscosity vs. concentration plot and (b)hydrodynamic diameter distribution of micelles. Square: linearcopolymer. Circle: cyclic copolymer.

Figure 3. AFM images of micelles formed from (a) linearand (b) cyclic copolymers. TEM images of micelles formedfrom (c) linear and (d) cyclic copolymers.

Figure 4. Temperature-dependent turbidity of micellar solutions formed from (a) linear and (b) cyclic copolymers (1.0, 0.50,0.25 mg mL-1). (c) Turbidity of homoassemblies (L: linear, C: cyclic) and coassemblies (L/C=75/25, 50/50, and 25/

75). The total concentration of the copolymers in a solution was 0.50 mg mL-1.

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高分子の『かたち』に基づく機能発現

高分子論文集, Vol. 68, No. 8 (2011)

ロットにおいて,Tc を境に低温側ではナノサイズのミ

セルが溶液中に均一に分散しているためT は高いまま

維持されるが,高温側ではミセルの構造崩壊によって凝

集し,溶液が濁ることからT が減少している.つま

り,直鎖から環へのトポロジー変換によって,高分子の

組成・化学構造や分子量およびミセルの形状やサイズに

一切影響を与えることなく熱安定性のみを大幅に改善す

ることに成功した.この結果は,ミセル形成エンタル

ピーは一定であるにもかかわらず,分子トポロジーに由

来するエントロピー差が自己組織化構造体の特性に影響

を与えたためであると考えられる.さらに,直鎖状高分

子と環状高分子を混合し,ミセルを構築することによ

り,濃度 0.50 mg mL-1 においてそれぞれの Tc である

24°C から 73°C という広範囲で Tc の制御も達成された

(Figure 4(c)).すなわち,直鎖と環の混合比率(75/

25, 50/50, 25/75)に依存し,Tc が 37, 47, 62

°Cとほぼ線形的な関係で変化していることがわかる.

このトポロジー効果に依存した崩壊温度制御機能をもつ

ミセルは,薬剤を内包することで DDS に応用できると

考えられる.また,このような高分子トポロジーに基づ

いた機能材料開発戦略は,化学的には同じ物質であるた

め既存のポリマー材料にも適応可能であり,化学的毒性

や環境汚染性などを憂慮する必要が少ないことも特筆す

るべき点である.

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Scheme 8. Formation of cyclic and linear poly(THF)s hav-ing a perylene functionality through the ESA-CF process.Cyclic polymers formed from (a) N-phenyl pyrrolidinium and(b) N-phenyl piperidinium telechelics via ring-opening andring-eliminating reactions, respectively. (c) The linear counter-part prepared from a telechelics with a N-phenyl piperidiniumend group.

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山本

高分子論文集, Vol. 68, No. 8 (2011)

3.3 環状高分子の拡散挙動

直鎖状や分岐状高分子の拡散挙動は,レプテーション

と呼ばれる頭が胴体と尾を引きずるヘビの様な動きに従

うことが知られている62),63).これに対し,分子鎖末端

をもたない環状高分子はどのような挙動を示すのか,そ

の拡散メカニズムにおけるトポロジー効果は非常に興味

深く,理論と実験の両面から検討が行われている64),65).

この課題に最近著しい進歩を遂げている単一分子分光66)

を適用すれば,従来は系の多数の平均値として得られた

拡散係数を直接観測によって個々の高分子について決定

することが可能となり,高分子ダイナミクスに対するト

ポロジー効果の実験的検証となる.そこで筆者らは,発

色団を導入した環状および直鎖状高分子を ESA-CF 法

により合成し,単一分子蛍光分光によって単独の高分子

の拡散挙動観察に挑戦した67).当初,ESA-CF 法が最も

効果的に適用できる五員環構造のアンモニウム末端を

もつ 1a を用いたところ,五員環の開環・共有結合化に

よって N-phenylamine 部位が高分子セグメント中に導

入され(3f, Scheme 8(a)),蛍光測定において発色団の

消光が認められた.そこで,環状アミンの脱離が優先的

に起こり,N-phenylamine を含まない環状および直鎖状

高分子を与える六員環アンモニウム型の telechelics 1d

および 1e68) を使用して目的物を得た(Schemes 8(b) ,

8(c)).それらを用いた結果,高分子一分子が発する蛍

光から拡散挙動を観察すること成功し,直鎖状高分子が

単一様式の拡散プロセスを示すのに対し,環状高分子で

は複数のプロセスが存在することを見いだした67).

まず上述の N-phenylpyrrolidine を用いた合成法と同

様に, triflic anhydride または methyl triflate を開始剤

とし,窒素雰囲気下で THF のリビングカチオン重合を

行い,停止剤に N-phenylpiperidine を用いて両末端また

は片末端に N-phenylpiperidinium を有するカチオン性

poly(THF) 1d/CF3SO-3 および 1e/CF3SO-

3 を調製した.

次に,これらの対アニオンを,perylene diimide のジカ

ルボキシラート 2g と交換した後,得られたイオン性集

合体 1d/2g および 1e/2g を希釈条件下で加熱することに

より発色団を有する環状高分子 3g(Mn=3800, PDI=

1.19)および直鎖状高分子 3h(Mn=4200, PDI=1.12)を

合成した(Schemes 8(b), 8(c)).

そして,これら蛍光標識された環状および直鎖状高分

子を無標識の直鎖状ポリテトラヒドロフラン(Mn=3000)

のマトリックスに分散させ,単一高分子の拡散プロセス

の蛍光観察を行い(Figures 5(a), 5(b)), 2D Gaussian fit-

ting により平面上の拡散軌道を求めた(Figures 5(c),

5(d)).観察された蛍光点の中で十分に長い時間連続的

に軌道を示した多数(直鎖n=67,環n=99)を統計

的手法で解析したところ,直鎖状高分子の拡散係数分布

は単峰性(最多値1.66±0.12 mm2 s-1)を示し,計算よ

り求めた均一な環境下における分布の理論曲線と合致し

た(Figure 5(e)).それに対し,環状高分子の拡散係数

は理論曲線から有意に相違し,直鎖状のものより約 4 割

小さな最多値(1.04±0.12 mm2 s-1)を示したが,拡散係

数の大きな領域にもショルダーピークをもつ二峰性と

なった(Figure 5(f)).これは,直鎖状高分子は単一様式

の拡散プロセスに従うのに対し,環状高分子はマトリッ

クス分子のスレッディングがなければ,その小さなコン

フォメーションのため直鎖状高分子より速い拡散を示す

が,スレッディングが起こると拡散が制限されるという

二つのプロセスが存在するためと結論された.この結果

は,初めて単一分子分光を用いて合成環状高分子の拡散

挙動観察に成功した例であり,トポロジー効果が高分子

レオロジーに与える影響について新たな知見を示すもの

である.

4 今後の展望

本報では,多環状高分子の新規合成法と,それらの高

分子が発現する『かたち』に依存した特異な物性や独自

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Figure 5. Single-molecule fluorescence images of the diffu-sion of (a) 3h and (b) 3g. Scale bars=2 mm. Two-dimensionaltrajectories of (c) 3h and (d) 3g. Frequency histograms ofdiffusion coefficients determined for (e) 3h and (f) 3g. Thelines on the histograms show calculated theoretical statisticaldistributions corresponding to the diffusion of single moleculesin a homogeneous environment.

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高分子の『かたち』に基づく機能発現

高分子論文集, Vol. 68, No. 8 (2011)

の機能ついて論評した.今後,これらのトポロジー効果

は,従来にはないユニークな機能をもつ新規高分子材料

に応用されると期待される.さらに,トポロジー効果を

巧みに利用することで,既存の高分子材料の簡便な高機

能化が可能であると考えられる.たとえば,環状高分子

が形成するミセルが直鎖状のものより高い熱安定性を示

したように,既存の直鎖状や分岐状高分子で形成される

機能材料を環状ポリマーで作製すると,化学的性質を

保ったままマテリアルとしての機能の向上が期待でき

る.また,上述の多環状高分子の選択的合成を利用し物

性研究へと展開することで,単環よりも顕著かつ多様な

トポロジー効果の発現が予想される.このようにして高

分子化学・超分子化学や材料科学の分野に,トポロジー

というコンセプトに基づいた新たな融合領域の開拓を期

待したい.

謝 辞 本報における研究成果は,東京工業大学大学院理工

学研究科有機・高分子物質専攻の手塚育志教授のご指導のもと

得られたものです.研究に携わった石川和孝博士,太田賢吾

氏,佐藤記央氏,本多 智氏,菅井直人氏,平郡寛之氏をはじ

めとする研究室の皆様に深く感謝の意を表します.また,単一

分子分光に関する研究は,同専攻の Martin Vacha 准教授,羽

渕聡史准教授との共同研究として実施されました.

本研究を遂行するあたり,科学研究費補助金 若手研究 A(23685022),科学研究費補助金 新学術領域研究「ソフトイン

ターフェースの分子科学」(23106709),徳山科学技術振興財

団,カシオ科学振興財団,日本証券奨学財団,倉田記念日立科

学技術財団,矢崎科学技術振興記念財団より助成をいただきま

した.関係各位に厚く御礼申し上げます.

文 献

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高分子論文集, Vol. 68, No. 8 (2011)

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高分子の『かたち』に基づく機能発現

高分子論文集, Vol. 68, No. 8 (2011)

[Comprehensive Papers]Emergence of Functionalities Originating from the Topology of PolymersTakuya YAMAMOTO1

1Department of Organic and Polymeric Materials, Tokyo Institute of Technology (2121, S841 O-okayama, Meguro-ku, Tokyo 1528552, Japan)

Cyclic polymers, possessing no chain ends, exhibit chemical and physical properties that can be distinguished from the linear counter-parts. The synthesis of cyclic polymers has been pursued, and their functionalities arising from the unique shapes, namely topology effects,have been investigated. The ESA-CF process in conjunction with click chemistry selectively constructed a variety of unprecedented multicy-clic topologies of polymers such as bridged- and spiro-types. It was demonstrated that cooperative electrostatic and hydrogen-bonding self-assembly followed by covalent conversion is an effective means for the synthesis of polymeric catenanes. The self-assembly of a cyclicamphiphilic block copolymer, prepared by intramolecular metathesis, gave a micelle with an approximately 50°C increase in the thermalstability in comparison with one formed from the linear precursor. Furthermore, linear and cyclic polymers containing a perylene diimideunit were synthesized, and single-molecule spectroscopy revealed the different diffusion modes of the polymers on the basis of theirtopology.KEY WORDS Cyclic Polymers / Topology Effects / Self-Assembly / Functional Materials / ESA-CF Process /(Received April 5, 2011: Accepted April 26, 2011) [Kobunshi Ronbunshu, 68, 550―561 (2011)]2011, The Society of Polymer Science, Japan