4
揚げ物調理により発生する油煙・油滴の住宅厨房内での挙動解析に関する研究 はじめに 調理汚染物の 1 つである油煙・油滴は、臭気や汚 れ、健康被害の原因となるため、その性質や挙動を 正確に把握する必要がある。そこで本研究では、油煙・ 油滴の厨房内での挙動を CFD 解析を用いて再現する ことを目的としている。そのため油煙・油滴の発生 性状の把握として、前報 1) では油煙・油滴の発生量 及び鍋周辺への油滴飛散量の測定を行った。本報で は、油煙の挙動の特性を示す指標となる油煙の粒径 分布をワイドレンジ・パーティクル・スペクトロメー タ(MSP 社、Model 1000XP、粒径測定範囲:0.01 ~ 100µm、以下 WPS)を用いて測定し、個数濃度と質量 濃度の両者から検討し、得られた結果を報告する。ま た、鍋周辺に飛散する油滴の粒径を写真撮影し目視 から確認した。 1. 実験概要 1.1 実験方法 前報 1) と同様に実験室の中央に鍋 ( φ 200mm、クッ クアローロ No.56620) がくるようにガスコンロ ( リン ナイ、110-R220 型)を設置する。ガスコンロは自動 温度調節が可能で、設定温度を 180℃としている。鍋 に食用油 900g( 日清サラダ油 ) を入れ、油温が 180℃ に達したところで食材 ( 冷凍フライドポテト )100g を 投入し、調理時間を 4 分間とする。 1.2 測定条件 油煙の粒径分布の測定点を Fig.1 に示す。鍋中心軸 において鍋上端より 0,50,150,300,320,580,900mm の 鉛直方向 7 条件で測定を行った。Fig.2 に示すように、 測定点にタイゴンチューブを設置し WPS の吸引口に 導いた。測定回数は各条件において 2,3 回行った。 Fig.3 に 1 調理 4 分間における火力の時間変動を示 す。180℃の油温に食材 100g を投入すると、火力は自 動調整されるため投入直後に強火となり、その後 60 ~ 90 秒後に弱火となる。粒径分布測定は 1 回の調理 において、Fig.3 に示す測定間隔で強火時と弱火時 3 回の計 4 回測定を行った。1 測定は 36 秒間とする。 発表者 :本 多 順 子 指導教員:甲 谷 寿 史 Fig.3 Time Change of Heating Power Fig.2 Measurement Situation of WPS Fig.1 Measurement Point WPS Tygon Tube +580 mm +300 mm +150 mm +900 mm 0 mm +320 mm +50 mm 200 mm 0 1 2 3 4 5 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 Heating Power[kW] time[s] High Heat 15~51[s] Low Heat 90~126[s] Low Heat 141~177[s] Low Heat 192~228[s] Aerosol Ionization Device Filter LPS Pomp DMA CPC 0.3 l/min 0.7 l/min Filter Filter Filter Filter Pomp Pomp Pomp Filter Fig.4 measurement system of WPS 2012 年度 修士論文概要 ■本論文の構成及び概要 本論文では、油煙・油滴の発生性状を把握し、数値流体解析 ( 以下、CFD 解析)を用いて厨房内での油煙・油滴の挙動を 再現することを目的としている。 第 1 章では、研究背景及び目的、既往研究を述べる。第 2 章では、CFD 解析を用いて鍋上方の熱上昇気流を再現するモ デル(鍋側面気流モデル)の提案を行う。ここでは、水沸騰時を対象とし、モデルの汎用性を高めるために鍋径の大きさ を変えて検討する。また第 3 章では、第 2 章の鍋側面気流モデルを用いて CFD 解析上でセンターフードのある室を再現し、 フードの捕集率予測を行う。第 4 章では、揚げ物調理時の油煙・油滴の発生性状の把握を行う。揚げ物調理時の油温、油煙・ 油滴の発生量及び粒径分布の把握を行う。第 5 章では、揚げ物調理時の鍋側面及び鍋上方の周辺気流の測定を行う。第 6 章では、第 5 章で測定した鍋側面気流を噴流の既存式に回帰し、それを CFD 解析の境界条件とし、揚げ物調理時の熱上昇 気流の再現を行う。第 7 章では、第 4 章の油煙・油滴の発生性状を境界条件とした、油煙・油滴の挙動解析を行う。 なお、本論文は平成 25 年度空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会に掲載予定の梗概を加筆修正したものであり、 本論文の第 4 章の実験概要と結果を一部まとめたものである。 大阪大学大学院工学研究科 地球総合工学専攻 建築環境 • 設備 Gr

揚げ物調理により発生する油煙・油滴の住宅厨房内での挙動解析 …labo4/www/thesis-top... · 2.0e+02 4.0e+02 6.0e+02 8.0e+02 1.0e+03 1.2e+03 1.4e+03 1.2e-02

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 揚げ物調理により発生する油煙・油滴の住宅厨房内での挙動解析 …labo4/www/thesis-top... · 2.0e+02 4.0e+02 6.0e+02 8.0e+02 1.0e+03 1.2e+03 1.4e+03 1.2e-02

揚げ物調理により発生する油煙・油滴の住宅厨房内での挙動解析に関する研究

 はじめに 

 調理汚染物の 1 つである油煙・油滴は、臭気や汚

れ、健康被害の原因となるため、その性質や挙動を

正確に把握する必要がある。そこで本研究では、油煙・

油滴の厨房内での挙動を CFD 解析を用いて再現する

ことを目的としている。そのため油煙・油滴の発生

性状の把握として、前報 1) では油煙・油滴の発生量

及び鍋周辺への油滴飛散量の測定を行った。本報で

は、油煙の挙動の特性を示す指標となる油煙の粒径

分布をワイドレンジ・パーティクル・スペクトロメー

タ(MSP 社、Model 1000XP、粒径測定範囲:0.01 ~

100µm、以下 WPS)を用いて測定し、個数濃度と質量

濃度の両者から検討し、得られた結果を報告する。ま

た、鍋周辺に飛散する油滴の粒径を写真撮影し目視

から確認した。

1. 実験概要

1.1 実験方法

 前報 1)と同様に実験室の中央に鍋 ( φ 200mm、クッ

クアローロ No.56620) がくるようにガスコンロ (リン

ナイ、110-R220 型)を設置する。ガスコンロは自動

温度調節が可能で、設定温度を 180℃としている。鍋

に食用油 900g( 日清サラダ油 ) を入れ、油温が 180℃

に達したところで食材 (冷凍フライドポテト )100g を

投入し、調理時間を 4分間とする。

1.2 測定条件

油煙の粒径分布の測定点を Fig.1 に示す。鍋中心軸

において鍋上端より 0,50,150,300,320,580,900mm の

鉛直方向7条件で測定を行った。Fig.2に示すように、

測定点にタイゴンチューブを設置し WPS の吸引口に

導いた。測定回数は各条件において 2,3 回行った。

 Fig.3 に 1 調理 4 分間における火力の時間変動を示

す。180℃の油温に食材 100g を投入すると、火力は自

動調整されるため投入直後に強火となり、その後 60

~ 90 秒後に弱火となる。粒径分布測定は 1 回の調理

において、Fig.3 に示す測定間隔で強火時と弱火時 3

回の計 4回測定を行った。1測定は 36 秒間とする。

発表者 :本 多 順 子

指導教員:甲 谷 寿 史

Fig.3 Time Change of Heating Power

Fig.2 Measurement Situation of WPSFig.1 Measurement Point

WPS

Tygon Tube

+580 mm

+300 mm

+150 mm

+900 mm

0 mm

+320 mm

+50 mm

200 mm

0

1

2

3

4

5

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240

Hea

ting

Pow

er[k

W]

time[s]

High Heat15~51[s]

Low Heat90~126[s]

Low Heat141~177[s]

Low Heat192~228[s]

Aerosol

Ionization Device

Filter

LPS

Pomp

DMA

CPC0.3 l/min

0.7 l/min

Filter

Filter

Filter Filter

Pomp

Pomp

Pomp

Filter

Fig.4 measurement system of WPS

2012 年度 修士論文概要

■本論文の構成及び概要

 本論文では、油煙・油滴の発生性状を把握し、数値流体解析 (以下、CFD 解析)を用いて厨房内での油煙・油滴の挙動を

再現することを目的としている。

 第 1章では、研究背景及び目的、既往研究を述べる。第 2 章では、CFD 解析を用いて鍋上方の熱上昇気流を再現するモ

デル(鍋側面気流モデル)の提案を行う。ここでは、水沸騰時を対象とし、モデルの汎用性を高めるために鍋径の大きさ

を変えて検討する。また第 3章では、第 2 章の鍋側面気流モデルを用いて CFD 解析上でセンターフードのある室を再現し、

フードの捕集率予測を行う。第 4 章では、揚げ物調理時の油煙・油滴の発生性状の把握を行う。揚げ物調理時の油温、油煙・

油滴の発生量及び粒径分布の把握を行う。第 5 章では、揚げ物調理時の鍋側面及び鍋上方の周辺気流の測定を行う。第 6

章では、第 5 章で測定した鍋側面気流を噴流の既存式に回帰し、それを CFD 解析の境界条件とし、揚げ物調理時の熱上昇

気流の再現を行う。第 7 章では、第 4 章の油煙・油滴の発生性状を境界条件とした、油煙・油滴の挙動解析を行う。

 なお、本論文は平成 25 年度空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会に掲載予定の梗概を加筆修正したものであり、

本論文の第 4章の実験概要と結果を一部まとめたものである。

大阪大学大学院工学研究科 地球総合工学専攻

建築環境 •設備 Gr

Page 2: 揚げ物調理により発生する油煙・油滴の住宅厨房内での挙動解析 …labo4/www/thesis-top... · 2.0e+02 4.0e+02 6.0e+02 8.0e+02 1.0e+03 1.2e+03 1.4e+03 1.2e-02

1.3 測定システム

 WPS はサンプリング流量 1.0L/min のうち 0.3L/min

を Differential Counter(微分型ビリティ分析器 

以下、DMA)に導き、0.01 ~ 0.5µm の粒度分布を測

定し、残りの 0.7L/min を Laser Particle counter(以

下、LPS)に導き、0.35 ~ 10µm の粒径分布を測定する。

Fig.4 に WPS の測定システムの概要を示す。

2 測定結果と考察

 Fig.5 にバックグラウンド濃度を示す。油煙が発生

している場合と比べ、極めて少ないことから油煙を

検討する上で問題ないと考えた。

2.1 個数濃度及び質量濃度における粒径分布

 鍋上 0mm、鍋中心おいての個数濃度の粒径分布の結

果を Fig.6、質量濃度の粒径分布の結果を Fig.7 に示

す。結果は 1 回調理 4 分間の間に 4 回測定したもの

を平均した結果で示している。縦軸は採取した空気

1cm3 中の油煙の粒径ごとの粒子個数あるいは質量で

ある。測定回数で絶対値は異なるが、分布形状は概

ね一致している。また、1µm 以上の粒径の個数濃度

は極めて少ない。個数濃度で表したエアロゾルの粒

径分布は対数正規分布となることが知られているが、

今回の測定結果も対数正規分布となることが分かる。

 また WPS では個数濃度を測定しているため、粒径

から算出した体積と密度 (920kg/m3) から質量を算出

した。粒径が大きいほど質量濃度は大きく、個数濃

度による粒径分布と異なり対数正規分布とならない。

測定回数による違いはほとんど見られないが、粒径

約0.1μ m 付近では測定により差が見られる。同じ食

材でも形状や食材中の水分量が異なるため、その影

響を受けて測定回数により結果に若干の違いが見ら

れると考えられる。

2.2 粒径分布の時間変化

 鍋上 0mm での 1回の調理中の各測定時における個数

濃度の例を Fig.8 に、質量濃度を Fig.9 に示す。個数

濃度は弱火1回目(Low Heat1)において最も高くなる。

油煙は油に食材を投下し、食材が温めると最も発生

すると考えられる。質量濃度は、0.5µm 以下の小さい

粒径において強火 (High Heat) 及び弱火 1 回目 (Low

Heat1) で高くなり、その後の弱火では小さい粒径の

粒子の質量濃度は低くなる。一方 1µm 以上の大きい

粒子においては時間変動はほぼ見られない。

 また Fig.10 に 1 回調理 4 分間における総個数濃度

Fig.5 Particle Size Distribution of Background

及び総質量濃度の時間変動を示す。結果は各測定時間

の中間値で示す。どの測定高さにおいても弱火になる

と個数濃度及び質量濃度が増加し、その後減少してい

く様子が見られる。火力が強火のとき食材は温まり、

食材内の水分の蒸発は多くなり、油煙が大量に発生

したと考えられる。

Fig.6 Particle Size Distribution of Number Concentration

0.0E+00

2.0E+02

4.0E+02

6.0E+02

8.0E+02

1.0E+03

1.2E+03

1.4E+03

1.2E

-02

2.0E

-02

3.7E

-02

6.8E

-02

1.3E

-01

2.7E

-01

5.2E

-01

6.5E

-01

8.9E

-01

1.3E

+00

1.9E

+00

2.7E

+00

3.7E

+00

5.5E

+00

7.5E

+00

9.5E

+00

n[cm

-3]

Dp[μm]

0

8E-12

1.6E-11

2.4E-11

3.2E-11

4E-11

4.8E-11

1.2E

-02

2.0E

-02

3.7E

-02

6.8E

-02

1.3E

-01

2.7E

-01

5.2E

-01

6.5E

-01

8.9E

-01

1.3E

+00

1.9E

+00

2.7E

+00

3.7E

+00

5.5E

+00

7.5E

+00

9.5E

+00

ρ[g/

cm3 ]

Dp[μm]

0.0E+00

3.0E+05

6.0E+05

9.0E+05

1.2E+06

1.5E+06

1.8E+06

2.1E+06

2.4E+06

2.7E+06

1.2E

-02

2.0E

-02

3.7E

-02

6.8E

-02

1.3E

-01

2.7E

-01

5.2E

-01

6.5E

-01

8.9E

-01

1.3E

+00

1.9E

+00

2.7E

+00

3.7E

+00

5.5E

+00

7.5E

+00

9.5E

+00

n[cm

-3]

Dp[μm]

1st

2nd

0.0E+00

3.0E-10

6.0E-10

9.0E-10

1.2E-09

1.5E-09

1.8E-09

2.1E-09

1.2E

-02

2.0E

-02

3.7E

-02

6.8E

-02

1.3E

-01

2.7E

-01

5.2E

-01

6.5E

-01

8.9E

-01

1.3E

+00

1.9E

+00

2.7E

+00

3.7E

+00

5.5E

+00

7.5E

+00

9.5E

+00

ρ[g/

cm3 ]

Dp[μm]

1st

2nd

Fig.7 Particle Size Distribution of Mass Concentration

0.0E+00

1.0E+06

2.0E+06

3.0E+06

4.0E+06

5.0E+06

6.0E+06

7.0E+06

8.0E+06

1.2E

-02

2.0E

-02

3.7E

-02

6.8E

-02

1.3E

-01

2.7E

-01

5.2E

-01

6.5E

-01

8.9E

-01

1.3E

+00

1.9E

+00

2.7E

+00

3.7E

+00

5.5E

+00

7.5E

+00

9.5E

+00

n[cm

-3]

Dp[μm]

High HeatLow Heat1Low Heat2Low Heat3

0.0E+00

3.0E-10

6.0E-10

9.0E-10

1.2E-09

1.5E-09

1.8E-09

2.1E-09

2.4E-09

2.7E-09

1.2E

-02

2.0E

-02

3.7E

-02

6.8E

-02

1.3E

-01

2.7E

-01

5.2E

-01

6.5E

-01

8.9E

-01

1.3E

+00

1.9E

+00

2.7E

+00

3.7E

+00

5.5E

+00

7.5E

+00

9.5E

+00

ρ[g/

cm3 ]

Dp[μm]

High HeatLow Heat1Low Heat2Low Heat3

Fig.8 Particle Size Distribution of Number Concentration(Time Change , +0mm above Pot)

Fig.9 Particle Size Distribution of Mass Concentration(Time Change, +0mm above Pot)

大阪大学大学院工学研究科 地球総合工学専攻

建築環境 •設備 Gr

Page 3: 揚げ物調理により発生する油煙・油滴の住宅厨房内での挙動解析 …labo4/www/thesis-top... · 2.0e+02 4.0e+02 6.0e+02 8.0e+02 1.0e+03 1.2e+03 1.4e+03 1.2e-02

2.3 粒径分布の鉛直分布

 各測定高さでの個数濃度の粒径分布を Fig.11 に、

質量濃度の粒径分布を Fig.12 に示す。結果は 1 回調

理 4分間の間に 4回測定したものを平均した結果で示

している。個数濃度は、鍋上方ほど増加することが分

かる。また、ピーク粒径も徐々に小さくなることが分

かる。これは鍋上方の上昇気流が周辺気流を巻き込ん

で発達するため、鍋中心の個数濃度が上昇するからだ

と考えられる。また、質量濃度は鍋直上付近の方が大

きいことが分かる。質量濃度は大きい粒径の数に影響

を受けるため、鍋直上付近の方が大きい粒径の個数が

多いためだと考えられる。大きい粒径の油煙は上昇気

流に乗らず、重力により沈降していく可能性がある。

 また各粒径における個数濃度及び質量濃度の鉛直

分布を Fig.12 及び Fig.13 に示す。横軸は鍋上 0mm

の濃度で規準化した値を表しており、鍋上 0mm に対

して各測定高さでの濃度変化を示している。個数濃

度では、粒径 0.025 μ m において、鍋上方ほど個数濃

度が増加する一方で、他の粒径では上方ほど減少す

る傾向にある。また、質量濃度でも同様の傾向があり、

粒径が 0.025µm においては上方ほど質量濃度は増加

するが、他の粒径では減少する傾向にある。

2.4 既往研究との比較

 これまでにも様々な文献で粒径分布測定が行われ

てきた。荻田ら 2) は 3 種類の食材を対象として業務

用フライヤで揚げる際に発生する油煙の粒径分布の

測定を行った。藤田ら 3) は 3 か所の測定高さにおけ

る粒径分布から凝集の有無の検討を行った。近藤ら4,5)

は 2 種類の測定機器(WPS と走査式モビリティーパー

ティクルサイザー ) による粒径分布の比較を行った。

伊藤ら 6) は家庭用 IH ヒーターにおいて 3 種類の食材

を対象として油煙の粒径分布の測定を行った。業務

用・家庭用厨房、電気式・ガス式、対象食材、調理

時間など測定条件が異なるので、単純には比較でき

ないが、冷凍ポテトを対象にした文献と今回の測定

結果の比較検討を行った。Table.1 にこれらの文献の

測定条件を示す。

 Fig.14 に既往研究との 1 調理における総個数濃度

及びピーク粒径、Fig.15 に 1 調理における総質量濃

度及びピーク粒径の比較を示す。

 個数濃度のピーク粒径は鍋上方 300mm の近藤ら 5)

と比較すると小さく、鍋上 0mm の荻田らと比較する

と大きくなる。冷凍ポテトフライの種類、食材量、

調理機器など様々な要因が考えられる。また 1 回の

調理における総個数濃度は約 100 ~ 1000 倍異なる。

近藤ら 5) は電気式の業務用フライヤーを用いており、

ガス式と電気式の大きな違いである熱上昇気流の影

響を大きく受けている可能性がある。さらに、質量

濃度に関しては、粒径ピーク及び 1 調理における総

質量濃度は伊藤ら 6) とほぼ近い値となった。伊藤ら6) は家庭用厨房を対象としており、調理機器が鍋 (φ

260mm、深さ 90mm) と似ているためだと考えられる。

Fig.12 Vertical Profi le of Number Concentration

0.0E+00

5.0E+06

1.0E+07

1.5E+07

2.0E+07

2.5E+07

3.0E+07

3.5E+07

0 40 80 120 160 200 240

N[c

m-3

]

time[s]

0.0E+00

5.0E-09

1.0E-08

1.5E-08

2.0E-08

2.5E-08

0 40 80 120 160 200 240

ρ[g/

cm3]

time[s]

1st

2nd

1st2nd

0

200

400

600

800

0 1 2 3 4 5

Dis

tanc

e fr

om P

ot[m

m]

0 1 2 3 4 5 0 1 2 3 4 5

0.025μm

0.055μm

0.085μm

0.25μm

0.55μm

0.85μm

2.5μm

5.5μm

8.5μm

n/n1[-] n/n1[-] n/n1[-]0 1 2 3

ρ/ρ1[-]0 1 2 3

ρ/ρ1[-]0 1 2 3 4

ρ/ρ1[-]

0.025μm

0.055μm

0.085μm

0.25μm

0.55μm

0.85μm

2.5μm

5.5μm

8.5μm0

200

400

600

800

Dis

tanc

e fr

om P

ot[m

m]

0.0E+00

1.0E+06

2.0E+06

3.0E+06

4.0E+06

5.0E+06

6.0E+06

7.0E+06

8.0E+06

9.0E+06

1.2E

-02

2.0E

-02

3.7E

-02

6.8E

-02

1.3E

-01

2.7E

-01

5.2E

-01

6.5E

-01

8.9E

-01

1.3E

+00

1.9E

+00

2.7E

+00

3.7E

+00

5.5E

+00

7.5E

+00

9.5E

+00

n[cm

-3]

Dp[μm]

0mm

150mm

300mm

580mm

900mm

0.0E+00

4.0E-10

8.0E-10

1.2E-09

1.6E-09

2.0E-09

2.4E-09

1.2E

-02

2.0E

-02

3.7E

-02

6.8E

-02

1.3E

-01

2.7E

-01

5.2E

-01

6.5E

-01

8.9E

-01

1.3E

+00

1.9E

+00

2.7E

+00

3.7E

+00

5.5E

+00

7.5E

+00

9.5E

+00

ρ[g/

cm3 ]

Dp[μm]

0mm

150mm

300mm

580mm

900mm

Fig.10 Time Change of Number/Mass Concentration(a)Number Concentration (b)Mass Concentration

Fig.10 Particle Size Distribution of Number Concentration Fig.11 Particle Size Distribution of Mass Concentration

Fig.13 Vertical Profi le of Mass Concentration大阪大学大学院工学研究科 地球総合工学専攻

建築環境 •設備 Gr

Page 4: 揚げ物調理により発生する油煙・油滴の住宅厨房内での挙動解析 …labo4/www/thesis-top... · 2.0e+02 4.0e+02 6.0e+02 8.0e+02 1.0e+03 1.2e+03 1.4e+03 1.2e-02

藤原理沙, 甲谷寿史, 相良和伸, 山中俊夫, 桃井良尚, 本多順子:揚げ物調理により発生する油煙・油滴の挙動解析に関する研究(その2)冷凍フライドポテト調理時の油煙・油滴の発生量, 空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会論文集,掲載予定, 2013年3月荻田俊輔, 近藤靖史, 吉野 一, 小山光彦, 藤田美和子:業務用電化厨房における油煙の移流・拡散性状に関する研究(その1)調理機器からの油煙の粒度分布と油煙発生方法の検討, 空気調和・衛生工学会学術講演会講演論文集、pp,627-630, 2006年9月藤田美和子、飯塚和夫、近藤靖史:業務用電化厨房における油煙の移流・拡散性状に関する研究(その2)調理機器鉛直方向の油煙の粒度分布と油煙発生方法の検討, 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集pp.1087-1090, 2009年9月近藤靖史、川口明伸、吉野一、荻田俊輔、藤田美和子:業務用電化厨房における油煙の移流・拡散性状に関する研究(その3)2種類の測定システムによる油煙の粒度分布測定結果の比較, 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集pp.1663-1666, 2010年9月近藤靖史、川口明伸、吉野一、荻田俊輔:業務用厨房内で発生する油煙の粒度分布とエアロゾルとしての特性, 日本建築学会環境系論文集pp.661-662, 2011年6月伊藤一哉、小峯祐己:揚げ物調理におけるオイルミスト等の発生状況把握と定常発生装置の開発, 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集pp.1037-1040, 2008年8月

Table.1 View of Reference

3. 油滴の粒径の算出

 鍋縁から 10mm までの位置にアルミ製のパネルを

Fig.16 に示すように配置し、油滴の飛散状況を把握

した。1 回の調理 4 分間においてアルミ製パネルに飛

散する油滴の飛散状況を写真撮影し、Fig.17 のよう

に画像から油滴の個数を数え、これを 3回行った。そ

の結果を Fig.18 に示す。この結果を用いて、前報 1)

より 1 回の調理による鍋縁から 10mm までの油滴の飛

散量を 3.4mg、油滴の密度は 920kg/m3、油滴が真球で

あるとみなし、飛散した粒子径を算出した。その結果、

平均の粒子個数は 297 個であり、油滴の粒子径は平

均約 0.28mm となった。実際はそれぞれの粒子径は測

定位置により異なっており、鍋付近ほど粒子径は大き

いが、概ねの鍋周辺に飛散する油滴の粒径のオーダー

を算出した。

 2 節の結果と比較すると、油煙は 1µm 以下の微粒

子が大半を占め、鍋周辺に飛散する油滴には 10 ~

100µm の粒子が多く含まれることが示唆される。

4. おわりに

 本報では、揚げ物調理時に発生する油煙・油滴の

発生性状の把握を目的として、油煙の挙動特性を示

す指標となる油煙の粒径分布の測定、及び鍋周辺に

飛散する油滴の粒径の測定を行った。今後は、油煙・

油滴の厨房内での挙動を CFD 解析を用いて再現し、油

煙・油滴の捕集率の検討や空間分布の把握を行う予

定である。

Fig.17 Number of Oil Droplet

0 0.03 0.06 0.09 0.12 0.15Dp[μm]

0.E+00 5.E+06 1.E+07 2.E+07 2.E+07n[cm-3]

SMPS/APS5)

WPS5)

Measurement(300mm)

0.11

0.14

0.024

8.63×104

1.20×105

1.56×107

SMPS/APS5)

WPS5)

Measurement(300mm)

0 2 4 6 8 10Dp[μm]

0 1E-08 2E-08 3E-08 4E-08ρ[g/cm3]

SMPS/APS6)

WPS5)

Measurement(320mm)

Measurement(300mm)

SMPS/APS6)

WPS5)

Measurement(320mm)

Measurement(300mm)

SMPS/APS5)

Reference Instrument Height Appliances Amount MeasurementTime

Cooking Time

2 WPS Above Flyer Flyer 300 17min 5

3 WPS 150mm/500mm/850mmfrom Appliances Flyer 300 15min 5

4

5

6 SMPS/APS - Pot(φ260mm,H=90mm) 100 3min 3

WPS orSMPS/APS

300mm fromAppliances

Flyer 300 5min 5

35

82

6038

39

27 80

106

10944

15

58 47

41

3732

14

25

10cm10cm

1)

2)

3)

4)

5)

【謝辞】本研究の一部は大阪ガス(株)との共同研究であり、研究を進めるにあたりご協力賜った関係各位に感謝の意を表します。【参考文献】

Fig.14 Compared to Reference (Number Concentration)

Fig.15 Compared to Reference (Mass Concentration)

Fig.16 Measurement Situation of Oil Droplet

Fig.18 Situation of Oil Droplet

(a)1st (c)3rd(b)2nd

(a)1st (c)3rd(b)2nd

大阪大学大学院工学研究科 地球総合工学専攻

建築環境 •設備 Gr