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Kobe University Repository : Kernel タイトル Title 中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行 : 司法 協力政策としての国際私法の可能性についての一考察(Mutual Recognition and Enforcement of Arbitral Awards between Mainland China and the Hong Kong SAR : An Analysis from a viewpoint of the Potentiality of Private International Law as a tool for Promoting Judical Cooperation between Incompatible Jurisdictio) 著者 Author(s) , 掲載誌・巻号・ページ Citation 神戸法學雜誌 / Kobe law journal,54(2):177-205 刊行日 Issue date 2004-09 資源タイプ Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 版区分 Resource Version publisher 権利 Rights DOI JaLCDOI 10.24546/81004980 URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81004980 PDF issue: 2021-04-09

司法協力政策としての国際私法の可能性についての一考察ーー · 年代から改革開放政策を実施してきたため、経済的に大きな発展を遂げ、グロパ

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Kobe University Repository : Kernel

タイトルTit le

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行 : 司法協力政策としての国際私法の可能性についての一考察(MutualRecognit ion and Enforcement of Arbit ral Awards between MainlandChina and the Hong Kong SAR : An Analysis from a viewpoint of thePotent iality of Private Internat ional Law as a tool for Promot ing JudicalCooperat ion between Incompat ible Jurisdict io)

著者Author(s) 王, 莉

掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸法學雜誌 / Kobe law journal,54(2):177-205

刊行日Issue date 2004-09

資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文

版区分Resource Version publisher

権利Rights

DOI

JaLCDOI 10.24546/81004980

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81004980

PDF issue: 2021-04-09

神戸法学雑誌

第五四巻第二号

二OO四年九月

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行

中国における本土と香港特別行政区間の

仲裁判断の承認・執行

1

1

1

司法協力政策としての国際私法の可能性についての一考察ーー

手リ

はじめに

第一節返還前、両地域間の仲裁判断の承認・執行

1

中国における仲裁判断の承認・執行の法規則

2

香港における仲裁判断の承認・執行の法規則

3

返還前の中国と香港問における仲裁判断の承認・執行の実務状況

第二節返還後、両地域間の仲裁判断の承認・執行の空白時期

ー両地域間仲裁判断の性質上の変化

2

空白時期における事件の処理情況

問題の解決l

一九九九年「仲裁判断執行の処理」の公布・実施

177

第三節

178

処理の内容

2

処理の形式

第四節

「仲裁判断執行の処理」の意義及び作用

おわりに

54巻2号

はじめに

士心

32日

八0年代から改革開放政策を実施してきたため、経済的に大きな発展を遂げ、グロパ

1ル化する貿易市

場においてますます重要な役割を担うようになった。これに伴い、ビジネスを有力に支援するための中国社会にお

中国は、

ける法環境、殊に渉外的な紛争処理に関する法環境が注目を集めてきている

3

その中でも、判決及び仲裁判断の執

行ができるかどうかは、紛争解決の最終的な鍵となる。中国のおかれた独特の経済及び社会事情との関係のため、

.=. 寸L

+十一

商取引において、仲裁の利用はとりわけ重視され、頻繁に用いられてきた。また、中国と香港の聞の仲裁の執行も、

長期に渡り順調にされてきた。そして、

一九九七年に香港は連合王国から返還され、中国の一行政区となった。し

かし、香港は政治経済的に特別な地位を返還後も維持したため、返還に伴う香港と中国との関係の国際法的な位置

付けの変化は、ニューヨーク条約を基盤とした中国と香港問仲裁判断の承認執行に思わぬ重大な影響を与えること

になるc

香港は、自由港として、

アジアにおける経済貿易の中心である一方で、地理上には中国本土と郡接し民族も同一

であるため、中国との繋がりは緊密であり、中国の南の玄関として大きな役割をずっと担ってきた。約一五

O年前

に香港は連合王国の植民地となったため、

コモン・ロ

iの伝統を継受したことで完備した法制度を有しており、国

際的な商取引にとって独自の魅力をもっ。

一九九七年に返還されて以降も、香港のこうした法システムは基本的に

維持されるが、それは中国本土の法システムとはまったく異なるものである。それが原因となり、今や一国となっ

た両地域間において様々な法の抵触が顕在化し、それは時として法の安定性や予見性を害し、両地の社会経済的な

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行

発展の妨げとさえなる。そうした中で、最初に深刻化し、そして両地の法システムの協調にむけた望ましい解決が

なされた具体例として、両地域間の仲裁判断の承認・執行の問題があるむその解決は具体的には、

一九九九年「本

土及び香港特別行政区における仲裁判断の相互執行に関する処理」(〉

52mO502内

8225m玄zEω一開E28Egご)『

〉『

EE一〉者向丘∞回

252吾。玄巳『d-sag己【

Fozoコ何宍

gm∞可。立。一〉牛ヨ亘書mZ5-umF02)(以下「仲裁判断執行の

処理」と略称する)が公布されたことによって達成される。これは中国で初めての異なった法域間の法融合規範と

して、立法面、形式面、そして実務面において重大な意義を持つ。本稿ではこの問題を取り上げ、中国における本

土と香港特別行政区(以下、香港特区)間相互の仲裁判断承認・執行の動態的な全体像を提示する。

まず、問題発生の背景を概観することにしようc

ほぼ一五

O年前、不平等条約の結果として、香港は連合王国の

植民地となった。一九八四年に中国と連合王国両政府は、交渉を通じ「中英両国政府の香港問題に関する連合声明」

において香港の返還を発表した。そして香港の返還に向け、中国政府は「一国二制度」の基本国策を構築し、それ

を憲法の形で保障した。その結果、返還に伴い、本土と香港特区は、それぞれの地域において現存する、社会、経

済、法律等の制度や生活文化はそのまま維持されることになった。

法制度面において、香港は約一五

0年間に渡りイングランド法の深い影響を受けてきた。現地の事情に応じた修

正は加えられたが、イングランド法の基本な特徴を承継する地域的な法制度が形成された。そして一九九七年以降

179

も、植民地色の強い要素が排除されたことを除けば、従来からの法制度は基本的に維持されている。これに対し、

本土の法システムは、大陸法系の法典形式の成文法主義を承継し、それに社会主義の特色が加味されたものである。

180

また、ポルトガルから返還されたマカオは、ポルトガル法の影響を強く受けた法システムを有するc

したがって、

現在の中国においては三つの法域が併存し、法域間の法抵触問題が必然的に発生する。

香港返還前において、両地域間の商取引紛争のほとんどは、仲裁を利用して解決されてきた。中国はニューヨー

ク条約の締約国である。また連合王国もニューヨーク条約の締約国であり、その適用を香港へも拡張したので、

両地域聞における仲裁判断の承認・執行は、ニューヨーク条約を基盤として、円滑に行われてきたc

しかし一九九

54巻2号

七年以降、香港が中国の一つの法域となった。このため、

一国内において国際条約を適用することは基本的に不可

能であり、このために両地域間仲裁判断の承認・執行を支える法的基盤が欠落し、法制度の空白期を向かえること

d.t

となる。そして、この問題をどのように迅速に解決するかが、焦眉の課題として顕在化することとなった。

本稿では、返還前における両地域相互間の仲裁判断の承認・執行の法制度との状況を述べた後、返還後における

承認・執行の性質の変化と空白期における事件の処理について分析を試みる。そして最後に、正式の解決として採

択された「仲裁判断執行の処理」を紹介し、この処理の意義、役割及び影響を、法抵触の調和に向けた立法政策と

~

ナ法

しての国際私法研究の立場から、評価することにしたい口

戸神

第一節

返還前、両地域聞の仲裁判断の承認・執行

返還以前の両地域相互間の仲裁判断は、それぞれ相互にとっての外国仲裁判断として、承認・執行されてきた。

具体的に言えば、一九八九年に香港高等法院が、中国国際経済貿易仲裁委員会(内田↓〉内)の仲裁判断を承認・執

行したことを皮切りに、両地域間の仲裁判断の承認・執行が行われてきたc

連合王国は一九七五年にニューヨーク

条約に加入し、一九七七年に香港においてもこれを適用することとした。他方、中国はニューヨーク条約に加入し、

一九八七年四月から、当該条約の適用が始まった。このように、中国と連合王国は共にニューヨーク条約の締約国

であるため、中国と香港問の仲裁判断は、主にニューヨーク条約によって、承認・執行されてきた。そのアプロ!

チ及び適用規則等は、次の通りである。

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行

中国における仲裁判断の承認・執行の法規則

中国における外国仲裁判断は、ニューヨーク条約、

年仲裁法及び関連する司法解釈、二国間条約、多国間条約等により、承認・執行される

D

一九九一年民事訴訟法(以下、民訟法を略称する)、

一九九五

民訴法二六九条は、次のように定める。

「外国の仲裁機関の判断は、中華人民共和国人民法院の承認と執行を必要とするときは、当事者は直接に被執行

者の住所地又は財産所在地の中級人民法院に申立でなければならず、人民法院は、中華人民共和国が締結若しくは

加盟した国際条約に従い、又は相互保証の原則により処理しなければならない」

つまり、外国仲裁判断の承認・執行は、

二つの型に分類される。第一は、相手国も同じ国際条約の締約国の場合

であり、条約によって承認・執行がされる。第二は、相互間の保証があることを要件として承認・執行がなされる

場合である。

中国、香港の仲裁判断は第一の条約型に属し、ニューヨーク条約の規定に従い、承認・執行がなされる。ここに

おいて、まず説明しなければならないのは、ニューヨーク条約に関する中国の二つの留保である。

一つは、相互の

保証に関する留保であるの

つまり、中国は同条約の締約国に下された仲裁判断のみに、ニューヨーク条約を適用す

る3

もう一つは、仲裁判断の商事性に関する留保である。すなわち、仲裁判断が中国の法律により、契約関係また

181

はそれ以外の商事関係から生じた紛争に関するものであれば、ニューヨーク条約を適用することができる。ここに

182

いう紛争とは、契約、不法行為及び法規則によって生ずる経済上の権利義務関係等についての紛争を指す。

香港の仲裁判断について、中国における承認・執行を申請する場合、具体的には次の手続きに従って行われる。

仲裁判断の執行申請者は、以下地区の中級人民法院に申立てる。

①被執行者が自然人の場合、被執行者の住所或は居所所在地の中級人民法院

②被執行者が法人の場合、被執行者の主たる事務機関所在地の中級人民法院

③被執行者が中国に住所、居所或は主たる事務機関がないが財産がある場合、その財産所在地の中級人民

法院

54巻2号

2

法院は、申請を受け取った後、ニューヨーク条約の第五条(第一款、第二款)をめぐり、審査を行い、承

認・執行判断或は拒絶判断を下す。効力が認められる場合、民訴法の手続きにしたがって執行される。

同志雑

また、申請期限に関して、民訴法一二九条は、当事者によって異なる規定を設ける。当事者の双方或は一方は自

p--ナ

然人の場合、申請期限は一年であり、双方が法人或は他の組織の場合、期限は六ヶ月である。

法戸

2

香港における仲裁判断の承認・執行の法規則

香港における外国仲裁判断の承認・執行は、法制度もその実務的運用も、イングランド法の深い影響を受けてい

る。「仲裁条例」(〉『

ZszsCE528)及びニューヨーク条約が、その主たる法源であり、外国仲裁判断は大ま

かに見れば三種類の手続きを通じて、承認・執行される。

コモン・ロ

i上の訴訟手続き、すなわち、高等法院で訴訟を提起する方法である。これは、英米法の債

務理論

25♀

0215え与一荷主

g)によって基礎づけられる。仲裁契約がある以上、両当事者は仲裁判断の執行に

第一は、

ついて合意していると見なされ、

一方が仲裁判断に従わなければ契約違反となり、相手側は、仲裁判断への違反を

訴訟原因として、法院に提訴できる。この場合に、執行請求する当事者は、仲裁契約の有効性、紛争が仲裁契約の

範囲内に属すること、仲裁人への委任の有効性等を、証明しなければならない。法院は、仲裁判断からなる新たな

契約について、形式上有効かどうか、契約執行が現地法律、公序に違反するかどうかを審査し、問題がなければ原

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行

仲裁判断と同一内容の判決を下す。ただし、この手続きにはかなり時間がかかるので、実際上使用されるのは少な

BV

第二は、登録手続による方法である。

一九三三年連合王国「外国判決相互(執行)法」及び香港「外国判決(相

互執行)条例」

[25mロ』

EmESZ(河onf

『。g}開ミ22Eg円)。丘588〕の成文法によるもので、かつて英連邦を

構成していた国家及び地域と香港との聞の双方協定(連合王国の締結した両国間協定を含む)のある国又は地域の

判決は、簡単な審査・登録の手続を経て承認・執行される。仲裁判断の承認・執行の場合も同様に、これと類似し

た手続によって、香港において簡単な登記及び審査がなされ、香港法院判決と同様に、司法機関を通じて執行する

ことができる。

そして第三一に、もっとも便利かつ確実な方法として、

ニューヨーク条約による承認・執行がある

γ

連合王国が本

条約を香港に拡張した後、香港は条約の内容を現地の「仲裁条例」にそのまま取り入れ、それを条例の第四編に規

ptぞmH『

ι)として、条約の規定にしたがって承認

定している。同条約加盟国の仲裁判断は、「公約裁決」

(2コ〈gzg

・執行されるc

法院は形式上の審査のみを行い、特に仲裁合意及び仲裁手続きに重点をおくよ芙務において、ニュー

ヨーク条約による承認・執行は標準的な手続きとなり、数多く利用されてきたc

このように、香港において中国本

土の仲裁判断は「公約裁決」として、ニューヨーク条約により能率的に承認・執行されるようになった

D

その具体的な手続の詳細は、次のとおりである

ν

当事者は香港法院への申立に先立ち、単方の呼出令状、関連す

183

る契約、及び仲裁判断の原文を提出する。法院は審査を経て仲裁判断の存在を認めた後、承認・執行の命令を出すc

184

ただし、法院の命令が被執行人に届

いてから一四日以内に、被執行人は

異議を述べることができる。この場

合、法院は審議を行う。

に、被執行人が異議を述べない場合

一四日以内

54巻2号

には、二

1三ヶ月程度で執行命令が

出される。しかし、被執行人が異議

を申し立てた場合は、事例により所

三士四ι、

要時間は様々となる。

雑学

3

返還前の中国と香港問における

j去

仲裁判断の承認・執行の実務状況

返還前から、中国と香港とのどち

らにおいても、紛争解決手段としてぉ

(表l

仲裁が頻繁に利用されてきた

参照)

C

特に中国では、国際的な商取引紛

争の解決は、裁判より仲裁に大きく

依存している。一九九二年、

Q開↓〉内

1985年,.....2002年 CIETAC、HKIAC(14)の処理したケース数

年 CIETAC HKIAC

1985年 37 9

1986年 78 20

1987年 143 43

1988年 174 24

1989年 189 45

1990年 238 54

1991年 274 94

1992年 267 185

1993年 486 139

1994年 829 150

1995年 902 184

1996年 778 197

1997年 723 218

1998年 645 240

1999年 609 257

2000年 543 298

2001年 731 078件囲内事件込み) 307

2002年 684 (216件囲内事件込み) 320

表 1

の扱った国際民事紛争のケ

lス数は、「口〉(↓

zo「。足。ロ門。ロコ丘一口【

ggtoE}〉『

zsz。ロ)、〉〉〉(〉E2-23〉『σナ

55ロ〉叩問。己主。ロ)、〉司

σFEES-口問ZE円。。『【20

∞言。rz。-5与ωヨσq。『門。ョヨ22を超え、世界一となった。その要

因を分析すると、次の要素が含まれると考えられる。第一に、効率性、非公開性、終局性等の仲裁手続自体のメリッ

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認-執行

トが指摘できる。第二に、中国における法制度の整備状況との関係である。中国の仲裁は公正かつ効率的な基本原

則に基づき、相対的に合理的で効率的な制度・規則にしたがって運営される一方で、国際的な動向や事情を参考に

一九九六年に国務院が「『中華人民共和国仲裁法」実施における明

しながら、制度の修正を継続して行ってきた。

確すべき問題の通知」を公布し、これによって国内仲裁機関は、当事者間の仲裁契約に基づき、渉外仲裁事件をも

処理できるようになった。また、内田↓〉内は仲裁規則を修正し、受理事件範囲を拡大し、仲裁契約において

Q開↓〉内

での仲裁を合意する国内事件をも扱った。このように、仲裁利用の可能性・選択性を高めて、利用可能な領域を広

げてきた。同時に、仲裁判断の承認・執行においても、強力な保証が確保され、ニューヨーク条約の締約国として、

中国仲裁判断の外国での執行、及び外国仲裁判断の中国における執行が容易かつ確実なものとなった。更に一九九

五年八月二八日から、法院における国際仲裁判断の執行の拒絶についての報告制度が実施された。これは、中国渉

外仲裁機関の仲裁判断及び外国仲裁機関の仲裁判断について、法院が執行しないと決定した場合、当事者はまず、

その法院の所属する高級人民法院の審査を受けることができる。そして更に、高級人民法院は審査意見を最高人民

法院に提出し、最高人民法院は最終の裁定を下すことができる。したがって、中国は、法原則、事件の受理、承認

-執行の保証等をネット化することで、外国仲裁判断の承認・執行に関し比較的に良好な法環境を提供してきた。

そして第三に、仲裁機関の役割がある。法院と比較した場合、この点についての仲裁の優越性は明らかである。

中国の裁判制度には、本質的な不備と様々な問題が存在する。例えば、地方法院の権利濫用、強すぎる地方保護主

義、裁判官の資質の低さ、司法の独立性の欠乏等である。司法改革は中国にとって緊喫の課題である。こうした傾

185

186

向が、紛争の仲裁への依存を強めていることは疑いない。中国の仲裁機関は相対的な独立性と公正性を有しており、

特に内関叶〉内は、かなり多数の事件を処理してきた。経験も豊富であり、世界的な信頼を勝ち得てきている。中

国のいくつかの地区に事務所を設け、当事者への諮問サービスを提供しながら、受理した仲裁申請書及び添付資料

は三日以内に仲裁委員会へと確実に転送される。当事者にこうした便宜を提供する一方で、仲裁の宣伝と普及を積

極的に推進している。さらに

Q開↓〉内の中国国籍の仲裁人の多くは弁護士、専門家、学者等からなり、全体的な

54巻2号

資質は高く評価されている。また、優秀な外国仲裁人の数も少なくない。こうした特徴が、国際性や信頼性に加え、

技術性、専門性、そしてサービスの質を高めている。

以上に指摘した、仲裁が重視される第二及び第三の理由の背後には、中国社会における司法サービスへの強い需

要と、政府による政策指導の方向性が見えるように思われる。改革開放後、中国と諸外国との交流が急激に増加し

てきており、特に取引に関し世界市場への本格的な参入に向け、その前提として地球標準ル

lルの遵守が強く要求

されることとなる。紛争処理の国際化は、経済発展にとって極めて大きな影響力を有する。しかし他方で、中国の

伝統的司法制度は、システムが膨張し過ぎており、様々な老朽化と弊害とを有している。迅速に制度を合理化して、

地球標準へとレベルアップできる可能性は、残念ながら低い。こうした状況において、仲裁制度の整備は、適切で

優れた選択肢として浮上することになる。国家は、恐らくこうした状況判断に基づいて、仲裁制度を完備させるた

めの努力を各方面から傾注してきたといえよう。したがって、これからも仲裁は国際取引の紛争処理において益々

雑学法戸神

利用され、重要性を増すことが見込まれる。

香港における状況を考えても、仲裁の利点と魅力は否定し得ないものと思われる。その中における最大の利点は、

仲裁判断の執行の容易きであろう。英連邦系の国家以外との関係でも、香港はいくつか(一九九八年まで、七カ国)

の国と相互民事判決執行の協定を締結しているが、その中には、香港にとって最も重要な三つの貿易対象国である

日本、中国が含まれていない。国際的な外国判

決承認執行制度の立ち後れた状況に鑑みれば、国際取引に

アメリカ、

おける紛争解決の最も現実的で有効な対処方法は、仲裁以

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行

外に存在しない。

返還後、香港は中国の一部となり、これとともに両地域

の仲裁は、ある意味で、分割できないネット内に取り込ま

れた。実務的に見れば、

一九八九年、香港高等法院が初め

て、

QEd〉内の仲裁判断を承認・執行して以来、(表

2、表

3

のように)

ケース数の増加が続いている。中国でなされた

国際民事紛争についての仲裁判断のかなりのものは、執行

のために香港に持ち込まれたと推定される。また、一九八九

年から返還まで、香港法院は一五

O件の中国仲裁判断の承

認・執行を行ってきており、その中でただ二件の執行のみ

が拒絶されたという情報もある。他方、中国においては、

香港でなされた仲裁判断の承認・執行の申請数は少なく、

返還前、北京、山東省、広東省等の法院は全部で二十件程

度の申請を受けたに過ぎない。

187

香港において認められた本土仲裁判断の承認・執行の比例表2

1993年1992年

50%

1989年~1991年

60% 80%

1990年,.....1996年香港における条約上執行の申請数

年度 執行の申請数 その中の中国仲裁判断の数

1990年 17 9

1991年 25 18

1992年 31 15

1993年 23 21

1994年 17 N/A

1995年 31 N/A

1996年 12 N/A

(N/A:統計数なし)

表 3

188

府県二時即

返還後、両地域間の仲裁判断の承認・執行の空白時期

54巻 2号

返還後、香港は特別行政区として、中国の一部分となっている。これとともに、両地域にとって、相互の仲裁判

断の法律的な位置付けが変わり、外国仲裁判断の承認・執行に関するニューヨーク条約の適用が不可能となった。

それに加えて、この変化に対応する法規範が存在しなかったため、両地域間の仲裁判断の承認・執行が一時的に停

止し、承認・執行制度の空白時期を迎えた。本節では、こうした仲裁判断の性質変化と、空白の発生原因を理論的

に分析し、空白時期内における事件処理の情況を簡単に紹介することにする。

三土日し、

仲裁判断の性質上の変化

返還前、中英政府はそれぞれ、返還後の香港におけるニューヨーク条約の適用問題について、国連で立場を表明

戸4ザー

一九九七年六月六日、中国政府は、次のとおり国連秘書長に通知した。相互保証の留保のもとで、

一九九七

した。

年七月一日から、香港にニューヨーク条約を適用し、同時に適用に際して生じる国際的な権利義務について、中国

政府は責任を負うとするものである。連合王国政府も、これに関連する通知を国連秘書長に送ったっそれによれば、

一九九七年七月一日から、香港を中国に返還することにより、香港でのニューヨーク条約の適用から生じる国際的

な権利義務について、連合王国は一切の責任を負わないとした。したがって返還後、香港は、変わらずニュ

lヨ

!

ク条約締約国の仲裁判断を同条約によって承認・執行することとなった。その法的根拠は、中国政府の声明である。

しかし、これに反して、香港と中国本土の両地域における仲裁判断は、相互にとって外国仲裁判断ではなくなる。

ニューヨーク条約第一条第一款は、本条約は、執行国で下された仲裁判断については適用されないと規定するため、

両地域間においてニューヨーク条約による承認・執行は不可能となる。しかし、「一国二制度」の国策、香港特区

の特別地位、そして現地の現行法制度等から考えれば、香港特区の仲裁判断は、国内の他の地区の仲裁判断と同一

ではない。法域の視角から見れば、本土と香港特区は、それぞれ独立で平等な法域であることに変化はなく、両地

域間の仲裁判断は、単なる外国仲裁判断及び圏内仲裁判断と異なり、第三の種類の仲裁判断であるといえる。もち

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行

ろん、中国の仲裁判断について、香港のコモン・ロ

l上の訴訟を通じて、承認・執行を求めることは可能である。

しかし、この方法は、前述のように理想的とは言えない。当事者は、ニューヨーク条約による執行と比較して、よ

り多くの時間と費用とを費やさねばならないため、

マイナス要素が多い。さらに中国本土には、これに相当する適

当な対応方法がなく、法域間の仲裁判断の承認・執行に対処する法規定は全く存在しない。

つまり、本土側から見

れば、どのようにこの問題を解決するかについて、法は空白状態となるので、この期間は相互仲裁判断の承認・執

行の空白時期と呼ばれることとなる。

2

(忽)

空白時期における事件の処理情況

空白時期において、仲裁判断の承認・執行は中止された。すなわち、仲裁判断が下されても、両地間では執行が

不能な状態となり、極端な法的不安定や救済不能等のマイナスの影響が生じた。

一九九七年七月一日以降、香港特区の法院は、本土仲裁判断の執行手続きを中止した。河北省の会社とぎ-三井

Em-53ac-「↓ロ・との問の内田〉↓内による仲裁判断の執行について、香港特区高等法院上訴廷は、返還後の香

港は中国の特別行政区であるため、ニューヨーク条約による本土仲裁判断の執行はできないという判決(一九九七

年第一一六号判決)を下した。また、同年一月二八日、

Z凸

E認「丘・〈-〉回(リの仲裁判断の執行について、香港高

(辺)

等法院原訴廷は、仲裁地が香港にある事件だけに、香港「仲裁条例」のN

白白条が適用されると判断した。つまり、

「仲裁条例」により、仲裁判断書を簡単判決書の形に転化して執行することができるのは、香港現地の仲裁に限定

189

190

され、本土における仲裁判断の執行には適用されないこととされた。

また、本土においても香港特区仲裁判断の執行は、中止される状態となったoFP〉∞ご『♀

2E5055〈・∞F自己

一九九八年七月三一日、山西

∞おと宮内。。

-0522q内。ョ宮ミ「E・における

ZE〉内の仲裁判断の執行に対して、

省太原市中級人民法院は、両地域聞における仲裁判断の承認・執行の問題は未解決状態にあり、法律根拠が欠落し

54巻2号

ているとの理由で、執行中止の判断を下した。

ここに挙げた判例の数は少ないが、空白期間において、両地域間の仲裁判断の承認・執行は中止されていたこと

になる。この情況は、緊密な関連性を持つ両地域の経済や貿易等に莫大な影響を与え、問題解決の必要は緊迫性し

たものとなった。そのため、政府、法律界、学界、商業貿易業界等から重要問題として注目を集め、その結果積極

~t

的に問題解決への取り組みが推進された。そして一年近くの研究と協力の時期を経て、

一九九九年に、最終的な正

式の解決案が作成された。第四節においては、この法案の作成、内容、形式等について考察する。

~

ナ法

伊再開三時即

問題の解決

l一九九九年「仲裁判断執行の処理」の公布・実施

戸神

一九九七年六月内田4〉内は、正式に、中華人民共和国全国人民代表大会常務委員会(全国人大常委会と略称す

る)に文書を提出し、全国人大常委会が、本問題について、具体的に解決をするための独立した法規を設ける必要

があるとの助言を行った。第二節に紹介した

Z加

22m「E・〈-〉∞内の判決が下された以降、

Q開↓〉内は一九九八年

に、全国人大常委会、最高人民法院及び国務院港漢事務室に、文書による提案を行った。当該ケ

lスを重視すべき

であり、仲裁判断執行問題の解決を優先的に考慮すべきであると示唆した。これに基づいて、最高人民法院は、基

(幻)

本解決案を提出した。同時に、香港特区律政司(吾oU名主ヨg円。『』己主B)は、この問題を巡り、積極的に最高人

民法院、

Q開↓〉内、全国人大常務委会法律事務委員会との交流及び協議を展開した。これらを背景として、

一九九

七年から、

一九九九年六月二一日に「仲裁判断執行の処理」が最高人民法院と香港特

一年あまりの協議を通じて、

区政府とで合意され、これによって空白時期は終了し、法域間の仲裁判断の承認・執行の問題は解決された。

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行

処理の内容

仲裁

香判港断特執区行法の院処は理内」地は仲裁 全機部

関きで

カ次 Lオミ

からなり

以下五つの内nヤ

廿

を含む

(一

O

O程度の具体的な仲裁機関が規定される)が中国仲裁法に基づいて

下した仲裁判断を承認・執行する。本土の人民法院は、香港特区において「仲裁条例」により下された仲裁

判断を承認・執行する。

2

当事者の一方が仲裁判断に任意に従わなかった場合、相手方は当該者の住所地あるいは財産所在地の法院

に執行を申し立てることができる。この場合の法院とは、本土においては中級人民法院、香港特区において

は高等法院を指す。住所地あるいは財産所在地が両地域にある場合、申請人はその中の一つを選択できる。

同時に両地域の法院に申し立てることは禁じられるが、しかし、執行地の財産が足りなければ、不足の部分

について他方の地域の法院に申立ができる。

3

申立てをする際、申立書、仲裁判断書、仲裁合意書(中国語で作成されたもの、あるいは中国語に翻訳し

たものが添付されたもの)が提出されなければならない。申立期間及びプロセス等は、執行地の法律に従う。

申立期間は、本土において、法人の場合六ヶ月であり、自然人の場合一年である。香港特区においては六年

である。

191

4

執行拒否の要件について、「仲裁判断執行の処理」は、ニューヨーク条約を参考にして作成されたため、

192

要件内容がほぼ当該条約と同じである。仲裁判断が執行される側の当事者が二疋の事実を証明した場合に(被

申立て人は挙証責任がある)、執行が拒否される。あるいは、法院が現地法律によって、仲裁可能性に問題

(お)

があることや公序に反すること等を認め、執行を拒否する。

(5」一九九七年七月一日以降の仲裁判断の承認・執行は、「仲裁判断執行の処理」によって行われる。空白期

の仲裁判断については「仲裁判断執行の処理」の遡及的適用が一定の場合に認められる。空白期間に、当事

者側の原因で申立がなされなかった場合でも、法人その他の機関の場合は発効後六ヶ月以内、自然人の場合

は発効後一年以内であれば、申立をなしうる。空白期間に、申立の受理或は執行が法院によって拒否された

場合、当事者には再申立が許される。

「仲裁判断執行の処理」は、長年に渡り両地域間の仲裁判断の承認・執行を支配してきたニューヨーク条約を参

照し、承認・執行の安定性と連続性とを維持する。これは国際条約を、内国事情との連携において、柔軟に引用し

54巻2号善+・日じ戸雑

主主ιナ

するものであり、独自の特色を有する。

法戸

2

処理の形式

(お)

本土と香港特区との間の司法共助問題に関して、香港特区基本法九五条には総括的な規定しか設けられていな

いため、かなりの自由度が残る一方、具体的な解決策やそのアプローチを現状との対応において探し出さなければ

ならない

D

したがって本処理の作成には、次のような独自のアプローチが用いられた。まず、一国二制度の国策を

土台として、本土最高人民法院がモデル案を提出し、基本法九五条の規定に従って、双方の代表がこの案に基づい

て協議を展開し、合意を達成した。そして、本土において、最高人民法院審判委員会は一九九九年六月一八日の第

一O六九回会議において、本処理を可決した。二000年一月二四日、最高人民法院はこれを司法解釈の形式で公

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行

布し、二

000年二月一日から実施した。他方、香港特区においては、合意が達成された後に、従来の仲裁条例を

修正し、処理を第EA「本土裁決の強制執行」の部分に加えた。また、条例二(ご条を修正し、「外国判断」の

定義を改正し、「本土判断」に書き加えた。こうして、香港特区の仲裁条例中、仲裁判断は、条約仲裁判断(ニュー

ヨーク条約による執行)、本土仲裁判断(第皿

A部分による執行)、現地仲裁判断その他(「〉M

。。による執行)か

らなる。

(幻)

ここにおいて特に説明する必要があるのは、中国本土における「司法解釈」と呼ばれるものについてである。

司法解釈というのは、法源の一種として、最高人民法院と最高人民検察院が制定・公布する文書である。裁判にお

いて法律・法規が具体的にどのように適用されるかについて、最高人民法院は法律で認められた解釈権を有する。

主に下級の法院、検察院からの問い合わせや照会に対する回答にあたる「批復」・「答復」・「復函」・「通知」

と、条文形式で制定法の細則を体系的に表示する「意見」という形式が存在する。しかし現実には、司法解釈とい

う文書は単なる解釈を示すのみでなく、法律を具体化させ、その空白を補い、特別の問題に対し、直接に法原則を

宣告する役割をも果たす。先に述べた処理の作成過程と形式から見れば、処理は、基本国策及び基本法九五条の規

定に従い、双方の充分な協議を保障しながら、両地域それぞれの法規定の形式に適切に転換し、法制度全体との対

応性を維持する役割を果たすことで、社会や時代の事情に柔軟に応じる可能性を示している。

第四節

「仲裁判断執行の処理」の意義及び作用

193

香港返還以降、中国は一国内における多法域間の司法共助問題に直面している。本土の通説によれば、本土と香

港特区の司法共助は書類送達、証拠調べ、判決及び仲裁判断の承認・執行の、四つの問題を含むとされる。一九九九

194

年三月三O日及び六月二一日において最高人民法院は、「本土及び香港特別行政区における相互間司法送達に関す

る処理」(「司法送達の処理」と略称する)、「仲裁判断執行の処理」を公布し、司法共助の二つの問題を解決するこ

とで、両地域間の活発な民商事活動の発展に重大な貢献を行った。以下では「仲裁判断執行の処理」の意義及び作

用等について考察する。同時期公布された「司法送達の処理」の重要な意義及び作用は否定できないが、その詳述

は別の機会に譲る。

54巻 2号

本処理の達成は、両地域それぞれ仲裁制度の中に出現した新たな空白を補い、完備した仲裁法の体系を形成する

ためのものである。仲裁の発展を推進しながら、両地域聞における仲裁業務の連携を強めるものといえる。返還前、

法安定性への憂慮から、数多くの仲裁事件がシンガポールへと逃避した。しかし一九九八年以降、局面は一転し、

ZE〉内の扱うケlスが増加してきている。さらに一九九九年に「仲裁判断執行の処理」が作成され、執行問題が

順調に解決された。仲裁の安定性が強められることで、中国全体において仲裁の発展が促進されることとなる。そ

品主雑旦'-ナ

して二

OO一年一二月には、

Z-Q〉内と

Q問、『〉内とが連携して、アジアドメインネ!ム争議解決センターが設立さ

(沼)

アジアにおける初めてのドメインネ

Iム紛争処理業務を扱う機関である。センターは、

ZE〉内及

れた。これは、

び内田↓〉内にそれぞれ事務局を設けて、当事者間の紛争の処理に当たる。二

O

O二年二月にはセンターによる紛

争処理が開始され、同時に、センターに制定された「統一ドメインネlム規則」の補充規則が発効した。また、本

土とマカオ聞における仲裁判断の承認・執行の問題に関し、本処理が参考にされ、ほぼ同一内容の法規則が作成さ

れた。本

土と香港特区間の仲裁判断の承認・執行問題の解決は、両地域間の判決承認・執行にも啓示を与えている。判

決の承認・執行は、司法共助の中でも最も困難であると同時に、重要な問題でもある。返還前の香港においては、

外国判決の承認・執行に関して二種類の制度があった。一つはコモン・ローにより、勝訴した人が債権者として、

当該判決に基づき、香港法院に新しい債務訴訟(号宮

己巳ヨ)を提起する方法である。香港法院は審理を行い、

定の要件に合致すると判断すれば、外国法院と向内容の判決を下すことになり、その判決が執行されることとなる。

もう一つの方法は、

一九三三年連合王国「外国判決相互

(執行)法」及び香港「外国判決(相互執行)条例」

[3?

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行

巴関口』

EmESZ(問023

『。s-EFROEg円)。丘一口告のの]の制定法によるものであり、旧英連邦の国家及び地域と香港

との間の双方協定(連合王国の締結した両国間協定を含む)のある国の判決は、簡単な審査・登録を経て承認・執

(却)

行される。しかし、返還後は基本法に基づいて、この二つの法律は効力を失った。そのため現在では、ほとんどの

判決について、

コモン・ロ

lの複雑な手続を通じて、承認・執行を求めるしかない。中国本土においても、判決承

認・執行に関する法規定は完備されておらず、主に民訴法(二六八条)と二国間条約によって規律されている。こ

れらの関連規定から見れば、中国の法院は、判決の既判力、双方間の互恵関係、公序違反の有無(また、中仏、中

伊等の二国間条約の中に、判決が管轄権を有する裁判所によって下され、被告に送達され、訴訟競合がないことな

どを要件とする規定がある)に基づき、判断される。このように、両地域間の判決の承認・執行は手続が複雑であ

り、費用が嵩み、結果の予測も困難となる。しかしこれからは、処理の作成の経験を踏まえて、両地域が充分な協

議に基づいて合意を形成し、柔軟な手段・方法を採用することで、処理の形式において、相互の判決を簡単に承認

(羽)

・執行する制度を模索することも可能となるであろう。

理念面から見れば、「仲裁判断執行の処理」は、平等な法域意識を体現している。

一九九七年以前において、中

国はずっと単一法国であったため「法域」というものへの認識は薄かった。返還された後、香港は社会制度の異な

る特別行政区としての地位を与えられたが、実質上は、中国国内の他の「省」と同じように、中央政権もとにある

195

一つの行政単位に過ぎない。しかし、香港特区は独自の法制度を持ち、その点においては本土と平等な別個独立の

法域を形成している。したがって、行政単位と法域の概念を区別する必要を中国は迫られている。特に司法共助の

196

問題に関しては、香港特区は単なる附属の行政単位ではなく、本土と平等な法域であることが明確となった。仲裁

判断執行問題の解決過程中、これを認識し、念頭に置き、一国二制度のもとで、協議を通じて合意の達成ができた。

つまりこの場面において、最高人民法院は全国の最高司法機関ではなく、ただ本土法域の最高司法機関として、協

議を行った。その結果として合意が達成された後、本土と香港特区は、各自の法域でそれぞれ別個の形式で、その

(羽)

合意を公布・施行した。したがって、本処理と「司法送達の処理」の公布は、初めて、公式に本土と香港特区が平

54巻 2号

等な法域であることを認めるもとであると評価できる。同時に、処理の作成は、実用的、能率的な法域間の司法協

~t

調の形式を提供し、将来両地域間法抵触問題解決のモデルを提供するものとなろう。

本処理の作成において、国際条約を参照することで、適切な国内法規定を設定できることが証明された。もとも

と、仲裁判断の承認・執行は、両地域間ではニューヨーク条約の枠組みを用いて行われてきた。返還後の問題への

対処として、同条約を手本にし、内容が類似する法規定を作成した。このように、圏内の問題に対して、成功した

旦字

国際条約を適切に参照しながら、国内立法を行うことは、柔軟且つ有効な手段として評価できる。これから、両地

域間の他の法抵触問題についても、この方法は有効なものとなろう。

法戸神

おわりに

以上において論述したように、中国は、香港返還後、自国の事情に基づき、国際条約や各不統一法国の経験を比

較・参考し、独自の解決策を制定した。言い換えれば、本土と香港特区両地域が相角の法域の立場で交渉を行うこ

とによって、合意を形成し、そして、この合意をぞれぞれの法環境に合わせた形で法システムに取り入れた。

、ー・

うした展開は、法文化や法制度の差異を維持したまま、両地域間により安定的な法環境をもらすことができる。こ

うした法抵触調和のための様々な技術についての経験デlタの蓄積として、国際私法を見直し再構成することで、

そこから多くの教訓を引き出すことが可能となるように思われる。一九九九年「仲裁判断執行の処理」が施行され、

もう四年近くが経過した。現在、両地域間の仲裁判断は、これによって承認・執行されている。それに伴い仲裁が

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行

中国全体において推進されることで、両地域間の仲裁制度の連携はますます緊密となってきている。しかし、連合

王国の仲裁制度は歴史が長く、その水準も高い。香港特区はこの思恵を受け、現地の仲裁制度は本土のそれよりも、

よく整備されている。両地域の関係が強まるにつれて、細かな作業が積み上げられることで、仲裁制度が様々な面

から整備改善され、両地域の水準の差を縮小する努力が続けられるであろう。そして両地域がより整合性の取れた

仲裁制度を持つことで、仲裁判断のスムーズな承認執行がより確実なものとなっていくことが期待される。そして

やや大袈裟にいえば、香港特区という異法域を取り込んだことが、中国全体の法制度の改善にとって、むしろ幸運

として作用する可能性は十分にあるように思われる。

参考文献

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「内地与香港民商事判決的相互承認与執行・・現状与前槍」国際法学(二OO一年第一期)

(1) 第一次、第二次中英アヘン戦争の結果として、一八六O年に中国清王朝政府と連合王国は「南

京条約」、「北京条約」を締結し、その後、中国で列強が権利争奪していた機に乗じ、一八九四年には更に「中

英両国香港地域拡張に関する条約」が締結された。これらによって、連合王国に香港島、九龍が割譲され、

新界が賃貸された(但し九九年の期限付き)。

一八四二年、

(2)「一国」は国家の統一を意味する。「二制度」は統一中国のもとで、本土、香港特区等それぞれの地域におい

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行199

て、現存する社会、経済、法律等の制度及び生活様式が変更されないことを意味する。

一九八二年、憲法に

補充規定さ二条)が設けられた。つまり「国家は、必要のある場合、特別行政区を設置することができる。

特別行政区において実施される制度は、具体的状況に照らして、全国人民代表大会が法律でこれを定める」

とされたのである。

(3)

五0年代、各国の仲裁判断の承認・執行の法規範の相違が大きく、そのため世界範囲の承認・執行にマイ

ナス影響、不便を与えていた。

一九五八年、国際商業会議所は、国連に「国際仲裁判断執行公約」(ニュー

ヨーク条約)草案を提出した。草案が修正・審議された後、同年六月にニューヨーク条約(一六条からなる)

一九五九年から、発効が始まった。それから数十年間、百三十以上の国家、地区がニュ

lヨl

が公布され、

ク条約に加入した。当該条約は、国際商事仲裁の発展を推進し、国際私法分野において、もっとも成功した

国際条約であると認められる。

(4)

中華人民共和国成立前、中国では、国際商事紛争を独立に処理する仲裁機関が存在していなかった。共和

国成立後、一九五四年に「中国国際貿易促進委員会内部に渉外貿易仲裁委員会を設立する中央人民政府政務

院の決定」によって、中国渉外貿易仲裁委員会

(25宮司色。〉号

FEESCBEFEED-24〉内)が成立され

一九八O年、国務院は、当該委員会の名称を渉外経済貿易仲裁委員会

(FE官界

?

一九八八年、ま

た。仲裁の発展に従い、

gSFの自己叶『白色。〉円

ES円

ESSE-包芦田叶〉内)に変更し、事件の処理範囲を拡大した。

た渉外経済貿易仲裁委員会の名称を中国国際経済貿易仲裁委員会

(25mE席自主

g巳開85ERωE45号

円。

5552・2開↓〉内)に変更した。中国国際貿易促進委員会は、

となり、中国国際商会に改名した。これとともに、二

000年一

O月一日から、中国国際経済貿易仲裁委員

〉『豆円

EE。ロ

一九九四年に国際商会の成員

会が、

Q開叶〉内の・名称を使用すると同時に、中国国際商会仲裁院(↓

Fonsコえ〉号可色。ロ。町内ES内EEE

200 54巻2号さ+Il>じ戸雑

).>4

ナ法戸神

σ0『え

EBB包。

E]内。EBOBoe《川内《)円を略称する)という名称を使っている。

。開44〉内は、独自の仲裁規則を持ち、秘書局、専門家諮問委員会、判例編纂委員会、資格審査委員会がある。

また、仲裁委員会は、一人の主任、数人の副主任及び委員からなる。秘書局は、日常の事務を処理する。委

員会会議二年一回)及び主任会議(委員会会議の閉会期間に、三ヶ月一回)制度、秘書長会議(期日の指

定なし)及び三地域間秘書会議(一年一回の総会及び深州、上海分会問の会議)制度等が設けられている。

一九九九年に、業務の発展・促進のために、大連、福州、長沙、成都、重慶において、連絡・

そのほかに、

宣伝機関としての事務所が設立された。

5

一九七五年、連合王国は、ニューヨーク条約に加入し、同年、仲裁法において、本条約の効力を認めた。

その後、条約の適用をユロニ!と非独立地域に拡張すると宣言した。また香港への拡張に関する宣言が

一九七七年一月一一一日になされた。問。σ02

玄。『明白口、金祥沫(訳)「香港における中国への統治権返還

と仲裁体制

(2)|問題とその対処」(』内〉ジャーナル・第四四巻七号、

一九九七年)

一五頁。

二頁、

6

「加盟したニューヨーク条約の執行に関する最高人民法院の通知」、「渉外仲裁及び外国仲裁事項と関連す

る問題への処理の最高人民法院の通知」、「人民法院の渉外仲裁判断承認・執行の拒絶に関する最高人民法院

の通知」等は、関連する司法解釈である。

(7

返還前のマカオと中国本土間の仲裁判断の承認・執行は、第二の型に属する。ポルトガルは一九九五年に

ニューヨーク条約に加入したが、本条約の適用をマカオに拡張しなかった。それに、マカオにおいて、ほか

の仲裁判断の承認・執行に関する条約が存在しなかった。したがって、返還前、理論的に言えば、中国とマ

カオ間の仲裁判断の承認・執行は、相互保証の原則に照らして取り扱われた。実際、仲裁判断の承認・執行

の事例はまだ現れていない。

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行201

8

中国の司法解釈により、これは、貨物売買、財産リlシング、工事請負、加工受注、技術移転、合資経営、

合作経営、天然資源の探査開発、保険、融資、労務提供、代理、

コンサルティングサービス、海上・航空及

び複合運送、製造物責任、環境汚染、海上事故、所有権をめぐる争議を指す。ただし、外国投資者と投資受

9

入国政府間の紛争は含まれない。程信和「卑港漢法律関係」(中山大学出版社、二

OO一年)二三八頁。

当該学説は一九世紀から、英米等の国々で流行っていた。管轄権の持つ裁判所或は仲裁廷が、当事者の一

方が、相手にお金を支払われなければならないという判決又は仲裁判断を下した場合、この支払いは法律上

の義務となり、当事者は契約債務訴訟を通じて執行を要求できる。劉暁紅「論中国内地与香港仲裁裁決的相

互承認和執行」法律適用(二

OO一年/三総第一八O期)

一九頁。

∞58円Z05ElEロO円OOZznoロEミ号。吾。。『〕『色。-u百円】

σ可円ZO開口開}宮古。。ロ『仲間円00とuZ百円FOF司『。。。関口一江【)ロ

mg♀

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ι2E5丘小。z-m色。ロJ

↓F25gg岳山広

ω」EmEOロ円『g号『邑

σ山『岱問。『OF関口。。ロ『円。『

85志向。三宮『UE25DFE目吉田g

c唱。コ円FO号{10ロ品川百円

ωazq。円。z-m町民一。ロ言。σミ昨日丘

門出∞わ}dRmoxωロ乱。。コ『O『∞

ω。。司『o-巳言。ュmF円。ロ吾o

Z巳ロ巴『『円。。ロ『。RO吾巳。ZFm巳FOD吾『。ロmF号。開口m-uz

gc『門的・↓E2ggゎ

-ORqoロロロ巳巳azPEgs〈・者222。冒

SERWZE』・』・0・n。一口。ァ(U822。『

Z54

-v

ニMt-u二一Y(Nzop@

UmwEZEmo巴口言。『∞一門司可『oge]唱。hF)・

(叩)韓健、宋連斌「試論一九九七年後内地国際商事仲裁裁決在香港的執行」『司法共助研究』(法律出版社、一九九六

年)コ一六八頁。

11

蘇元華『中国区際法律沖突概論」(人民日報出版社、二

000年)

O五頁。

(ロ)

程信和・前掲注

(8

二三九1二四O頁。

13

一九九六年から二

000年までの問、。開↓〉内の受理ケ!ス数が減少した。中国

宮古一¥〉ぞ当者

-FER-。吋mo

202 54巻 2号さ+・同じ〉雑~ι

ナ法戸神

国内経済貿易の不況及び東南アジアの金融危機がマイナスの影響を持ち込んだことと、また、中国国内の各

地の仲裁機関に渉外事件の受理が認められ、さらに、国外の各仲裁機関が仲裁規則を修正し、仲裁業務を広

めていたためである。その結果、ケlスが分流された。しかし、二

000年、内田叶〉内の仲裁規則が修正さ

れた後、扱ったケlス数がまた増えた。王長生「二O

O二年工作報告和二O

O三年工作計刻」

ZS込者三戸巳?

i 国間宗門は、香港仲裁センター

(zgm問。ロmEEE色。

s-〉号

-SES内25)の略称であるoZE〉内は民

間機関として、一九八五年に香港会社法によって設立された。香港政府、関連機関、企業の支持、経営協力

のもとで、仕事が行われているoZE〉内は理事会と秘書局等がある。理事会は管理機関として、様々な国

籍を持つ法曹達、工商界の専門家からなる。秘書局は、日常の行政事務を処理する。一九九三年「香港仲裁

規則」が作成された。また、一九九一年に、

Z百〉内と内田↓〉内は、連携で両地域間争議を仲裁によって解

決するという協議を達成した。

(日)

越秀文二000年「中国国際経済貿易仲裁委員会仲裁規則」『国際商事仲裁及其適用法律研究』(北京大学

出版社、二O

O二年)二五九頁。

(日)

蘇元華・前掲注(日)四O五頁。

(げ)

問。宮司こ玄玄2mg、金祥沫(訳)

黄進『中国的区際法律問題研究」(法律出版社、二O

O一年)

-前掲注

(5)

一五頁。

(時)

二八八頁

D

(問)

黄進・前掲注(時)二九一頁。

(却)

黄進・前掲注(国)二九二頁。

(幻)

劉暁紅・前掲注

(9)二O頁、曾華群「香港行政区高度自治権力ヨ議」比較法研究(二O

O二年第一期)J¥

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行203

七頁、余先予「中国区際司法協助的一個重要模式」(『中国国際私法与比較法年刊」、法律出版社、二

000

年)四O九頁、言。一¥言525R・。活・2を参照。

22

N

。。||仲裁廷判断の強制執行一

(1)仲裁手続中、仲裁廷の下した判決、命令、指示、または仲裁手

続について仲裁廷の下した判決、命令、指示は、法院判決、命令、指示と同一の効力があり、同一の方式で

強制執行ができる。ただし、法院或は裁判官の許可を得らなければならない。許可された後、裁決、命令、

指示のように、判決が下される。

(2)本条例はほかの規定があるが、香港或は香港以外の地方で下された

裁決、命令及び指示は、本条例による。

(お)

(M)

香港法律草案を起草する部円である。

この本土仲裁機関とは、中国国際経済貿易仲裁委員会及び所属上海分会、深淵分会、中国海事仲裁委員会、

仲裁法によって設立された直轄市、省等の仲裁機関等の約百の機関のことである。国務院法制事務室が国務

院港漢事務室に委託し、その名簿を提供している。香港特区において、仲裁機関は香港仲裁センターを指す。

当事者が次のことを-証明すれば、執行は拒否される。①適用される法律によって、当事者が行為無能力者

であること、あるいは合意された準拠法によって、仲裁合意が無効となること、あるいは準拠法が指定され

なかった場合、仲裁地法によって当該仲裁合意が無効となること。②仲裁人選定についての通知が届けられ

ていなかったり、あるいは他の原因で意見を陳述することができなかったこと。③紛争が仲裁付託の範囲を

25

超え、あるいは仲裁協議条項に含まれておらず、または条項で考慮されていないこと。但し、付託された事

項が付託されなかった事項から分離し得るならば、付託された事項に関する仲裁判断は執行され得る。④仲

裁機関の構成あるいは仲裁手続きが当事者間の合意と合致せず、または合意がない場合に仲裁地の法律と矛

盾すること。⑤当事者にとって、仲裁判断の拘束力がまだ発生せず、あるいは、仲裁地法院が仲裁地の法律

204 54巻2号誌雑~

ナ法戸神

によって、その判断を無効にしたかまたは延期したこと。

(お)基本法九五条一香港特別行政区は全国の他の地区司法機関との協議を通じ、法によって司法分野の連絡及び

相互協力を行うことができる。

「ウt

/

木間正道・鈴木賢・高見津磨『当代中国法入門』(有斐閣、

国の法変動」(日本評論社、二

OO一年)六九頁。

一九九八年)九

01九一頁、季衛東『現代中

(お)

当該センターは、アメリカドメインネ

lム及びデジタル配分会社

zg一¥〉そをさ・ゎFFDmWIRE円EE。ロ・ゎ。ョo

(-n〉ZZ)

アジア地区に一番目、世界に四番目の国際通用ドメインネlム紛争

の授権によって設立され、

処理機関である。ほかの三つのドメインネiム紛争処理機関は、↓}doZ色。

s-〉『

ZEES(アメリカ)、

Q4N

FEE-g(カナダ)(経済の原因で紛争の受理を停止した)である。程徳鈎『国際

-ロ急百円。(アメリカ)、。

(却)

貿易争議与仲裁」(対外経済貿易大学出版社、二

OO二年)二七三1二七四頁。

この二つの法により、特定管轄区域の高級法院の下した判決が、簡単な登録を経て、承認・執行された。

特定管轄区域は、現英連邦国家・地域(オーストラリア、パミュ

lダ、

スリランカ、インド、

マレーシア、

ニュージーランド、パキスタン、シンガポール)及び香港と判決相互執行協定を締結した国(ベルギー、

ランス、ドイツ、イタリア、オーストリア、オランダ、イスラエル)を指す。しかし、返還後、香港と連合

王国、或は香港と現英連邦国家・地区間の各特殊関係を規制する法律が廃止された。したがって、現英連邦

国家・地区の判決は、この二つの法律による執行が不可能となった。

一方、香港が連合王国を通じて締結し

一九九七年前、中英の双方が協

た判決相互執行協定は、特別の処理を経て、ほぼ残されている。すなわち、

一致を達成した後、香港政府は連合王国政府の授権のもとで、これらの協

定を自らの名義であらかじめ締結した。このように、連合王国の国際権利・義務が地方性の権利・義務に転

定事項、締約国範囲等について、

中国における本土と香港特別行政区間の仲裁判断の承認・執行205

化した。最後に、

一九九七年返還の際、中国政府に確認された後、これら協定の効力の継続が認められた。

徐宏「簡論香港特別行政区与外国的司法協助」法学評論(一九九六年第三期)、五四1五六頁、陳力「内地

与香港民商事判決的相互承認与執行・・現状与前槍」国際法学(二

O

O一年第一期)

四四頁。

30

一定の要件を満たせば、簡

31

香港の「判決(相互執行)条例」により、連合王国等の判決は香港において、

単な登録をした後、執行される。したがって、「十分な信任」の原則のもとで、両地判決の承認・執行問題

についても、これを参照できるように思われる。蘇元華・前掲注(日)四O三頁。

ある意味では、「処理」は基本法九五条の両地域においての実施細別であるとも言える。香港特区におい

ては、基本法は憲法としての性格を有し、その条文の具体的な実施について、特区立法機構が関連法律を制

定する。本土においては、基本法は法律であり、このような制定法の実施細則は、最高人民法院によって司

法解釈の形で公布される。董立坤『国際私法」(法律出版社、二000年)

五一二頁。