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知財戦略におけるデザイン活用と価値創出 - …内容としては、損害額の算定は、Design Patentに関して製品全体でなく部品に基づいてもよいと判断され、Samsungの支払う5億4,800万ドルの損害賠償額のうち、Design

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デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社

知財戦略におけるデザイン活用と価値創出

産業競争力とデザインを考える研究会

シニアヴァイスプレジデント 小林 誠2017年11月2日

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Appleの事例

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本日のスライドに記載された事項は講演者の私見であり、講演者の所属する会社等の公式見解ではないことをお断りしておきます。

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デザイン

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語源

Design(英語)の語源は、Dessin(仏語)と共通の、Designare(ラテン語)にある

「計画する」「設計する」「描く」の意

問題解決へ導くために 「計画(設計)」し「表現」すること

故Steve Jobs氏によるデザインの定義

Design is not just what it looks like and feels like. Design is how it works.

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Appleのデザイン保護戦略

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Appleのデザイン保護に関する知財ポートフォリオ(例)

デバイスやアイコン、インターフェースだけでなく、製品パッケージ、周辺機器、アクセサリー、さらには店舗外観やPCの起動音に至るまで、あらゆる角度からAppleの製品・サービスをデザインし、権利化することで、Apple全体の企業イメージや企業ブランドの保護を実現している

知的財産を複合的に権利化することにより、重層的な保護を実現している=「知財ミックス」

出所:USPTOのHPから、Appleの保有するDesign PatentsとTrademarksを抽出し、公報の図面を引用して筆者作成

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Appleのデザイン保護戦術(1/2)

5

Appleのアイコンに関する二重の権利保護(例)

同じ図形 (デザイン) の表現に対して、Design PatentsとTrademarksの両方で権利化している点が特徴的である

例えば、iPhoneやiPad等に使用されるアイコンは、Design PatentsとTrademarksの両方で保護している権利が多数存在する

デバイスやインターフェース等のソフトウェアにかかるデザインも同様である

出所:USPTOのHPから、Appleの保有するDesign PatentsとTrademarksを抽出し、公報の図面を引用して筆者作成

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Appleのデザイン保護戦術(2/2)

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Appleの米国商標登録(例)

件数 % 件数 % 件数 %(0) UNKNOWN 0 0.0% 0 0.0% 285 0.0%(1) TYPED DRAWING 95 12.5% 6,430 16.0% 363,017 12.8%(2) DESIGN ONLY 190 25.0% 3,260 8.1% 109,189 3.8%(3) DESIGN PLUS WORDS, LETTERS, AND/OR NUMBERS 103 13.6% 7,325 18.3% 559,863 19.7%(4) STANDARD CHARACTER MARK 346 45.6% 16,655 41.6% 1,649,427 58.1%(5) WORDS, LETTERS, AND/OR NUMBERS IN STYLIZED 20 2.6% 6,385 15.9% 155,647 5.5%(6) FOR SITUATIONS FOR WHICH NO DRAWING IS POSSIBLE, SUCH AS SOUND 5 0.7% 8 0.0% 278 0.0%

合計 759 100.0% 40,063 100.0% 2,837,706 100.00%

Apple 日系企業 全体商標分類(Mark Drawing Code)

Appleが保有する商標権のうち、(2)Design Only に属する商標は25%を占め、全体と比較して6.5倍、日系企業と比較しても約3倍の高い割合となっている

Appleは、商標を図形(絵)のみ(立体的形状、およびこれらと色彩との結合を含む)で表現することが多く、(3)のように文字/記号/数字を組み合わせて表現する割合は低いことが特徴的である

(2)Design Onlyは、文字/記号/数字などを含まない正にデザインのみで構成される商標(3)Design plus Words、Letters、and/or Numbersは、(2)のデザインに文字/記号/数字を組み合わせた商標

出所:USPTO Trademark Electronic Search System (TESS)より権利が有効な商標を抽出し、筆者作成

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知的財産権 登録状況登録番号/

出願番号

判決での

侵害の有無備考

Utility Patents 登録 7,812,828 -6,493,002 -7,469,381 侵害 Bounce Scroll特許7,844,915 侵害 Pinch and Zoom 特許7,853,891 -7,663,607 -7,864,163 侵害 Tap to Zoom特許7,920,129 -

Design Patents 登録 D627,790 -D617,334 -D604,305 侵害 インターフェース関連

D593,087 侵害 デバイス関連

D618,677 侵害 デバイス関連

D622,270 -D504,889 -

Trade Dress 登録 3,470,983 侵害(希釈)3,457,218 -3,475,327 -

審査中 77/921,838 -77/921,829 -77/921,869 -85/299,118 - iPhone関連

Trademarks 登録 3,886,196 -3,889,642 -3,886,200 -3,889,685 -3,886,169 -3,886,197 -

iPhone関連

iPad関連

Apple vs. Samsungの知財訴訟事例(1/2)

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Appleの侵害主張権利リスト(2012.8.24: Case No.: 11-CV-01846-LHK) 2012年8月24日、米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所サンノゼの陪審は、Appleの損害を約10.5億ドルと認定し、Samsungへ賠償金額の支払を命じた

必ずしも技術的側面だけが取り上げられたわけではなく、Design Patents(意匠権)やTrade Dress、Trademarks(商標権)も含む知的財産権の複合的な訴訟内容である

Appleの保有特許は、Appleが目指すユーザー・エクスペリエンスを実現するためにデザインされたものであり、必ずしも技術的な利便性や有用性を追い求めたものではない

※ 2013年3月1日、同地裁のLucy H. Koh判事が、2012年8月の評決で陪審員がSamsungに命じた10.5億ドルの賠償金額のうち40%以上(4億5,051万4,650ドル)を見直し、損害賠償についての新たな審理を行うことを命じたため、損害賠償額は確定していない。なお、残りの賠償額5億9,890万8,892ドルについては、本判例においては有効とされている。

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Apple vs. Samsungの知財訴訟事例(2/2)

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侵害パターンによる賠償金額の違い(2012.8.24: Case No.: 11-CV-01846-LHK)

約10.5億ドルの損害賠償額のうち、Appleの「デザイン」の価値が高く評価された• 技術侵害のみの場合:賠償金額は、8製品で、全体の6.5%(約849万ドル/ 製品)• デザイン侵害がある場合:損害賠償額は、18製品で、全体の93.5%(約5,453万ドル/ 製品)

評決後、Apple株価は過去最高(当時)を更新、Samsung株価は7.5%急落 (韓国市場)

※ 当該裁判は連邦巡回控訴裁判所(CAFC:Court of Appeals for the Federal Circuit)に控訴されたが決着がつかず、最高裁判所まで上告され、2016年12月6日にCAFCへの差し戻し判決がなされている。米国最高裁で意匠事案が扱われたのは約120年ぶりとのことで、多くの耳目を集めた。結論としては、Samsungの主張が認められ、CAFCへ差し戻しとなっている。内容としては、損害額の算定は、Design Patentに関して製品全体でなく部品に基づいてもよいと判断され、Samsungの支払う5億4,800万ドルの損害賠償額のうち、Design Patent分の3億9,900万ドルの賠償額が見直されることになる。

侵害パターンUtility

PatentsDesignPatents

TradeDress

侵害製品

の機種数

賠償金額(US$)

% 賠償金額の計算根拠

1製品当たりの賠償金額

(US$)

Utility Patents侵害のみ ○ × × 8 67,880,583 6.5% アップルのロイヤルティの50% 8,485,073

Design PatentsまたはTrade Dress侵害 × ○ ○ 3 154,602,692 14.7% サムスンの利益の40% 51,534,231

Utility Patents +Design Patents侵害 ○ ○ × 10 467,258,851 44.5% サムスンの利益の40% 46,725,885

Utility Patents +Trade Dress侵害 ○ × ○ 0 0 0.0% - 0

Utility Patents +Design Patents +Trade Dress侵害

○ ○ ○ 5 359,681,416 34.3% アップルの逸失利益の100% +

サムスンの利益の40% 71,936,283

侵害無し × × × 2 0 0.0% - 0

合計 28 1,049,423,542 100.0%

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【ご参考】Apple vs. Samsungの特許訴訟事例

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(US$)

Accused Samsung Product ′647 PatentClaim9

′959 PatentClaim25

′414 PatentClaim20

′721 PatentClaim8

′172 PatentClaim18 Total

Admire 7,599,178 - - 1,372,696 2,655,675 11,627,549 Galaxy Nexus 3,158,100 - - 867,281 1,579,050 5,604,431 Galaxy Note 1,677,740 - - 1,166,343 2,844,083 Galaxy Note Ⅱ 8,684,775 - - 8,684,775 Galaxy S Ⅱ 8,625,560 - - - 4,019,400 12,644,960 Galaxy S ⅡEpic 4G Touch 10,165,134 - - - 5,849,662 16,014,796 Galaxy S ⅡEpic Skyrocket 2,467,265 - - - 1,178,904 3,646,169 Galaxy S Ⅲ 52,404,721 - - 52,404,721 Galaxy Tab2 - - - Stratosphere 3,908,152 - - 750,648 1,494,716 6,153,516 Total 98,690,625 - - 2,990,625 17,943,750 119,625,000

(US$)

Accused Apple Product ′449 PatentClaim27

′239 PatentClaim15 Total

IPhone4 20,591 - 20,591 IPhone4S 28,474 - 28,474 IPhone5 41,514 - 41,514 iPod Touch,4th gen. 40,597 40,597 iPod Touch,5th gen. 27,224 27,224 Total 158,400 - 158,400

【Samsung Patents】

U.S. Patent No 6,226,449: “Apparatus for recording and reproducing digital image and speech”

U.S. Patent No 5,579,239: “Remote video transmission system”

米国における製品-特許毎の賠償金額(2014.5.2: Case No.: 12-CV-00630-LHK)【Apple Patents】

U.S. Patent No. 5,946,647: “system and method for performing an action on a structure in computer-generated data” .

U.S. Patent No 6,847,959: “Universal interface for retrieval of information in a computer system”

U.S. Patent No 7,761,414: “Asynchronous data synchronization amongst devices”

U.S. Patent No. 8,046,721: “unlocking a device by performing gestures on an unlock image”

U.S. Patent No. 8,074,172: “method, system, and graphical user interface for providing word recommendations”

相互に特許侵害が認められSamsungは約1.2億ドル、Appleは約16万ドルの支払いが命じられた 製品機能の一部しか構成しない特許のみの損害賠償金額は、限定的となる可能性がある

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提案(私案)

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企業経営にデザインを導入するとともに、経済的価値の見える化、知財の複合的活用による価値向上、市場に対する啓発活動を実行する

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産業競争力を向上させるためのデザイン活用のあり方

企業経営におけるデザインの重要性の理解と、一貫したデザインコンセプトの共有・継続 製品・サービスの保護のためではなく、企業イメージ・企業ブランド※の総体としてのデザイン保護が必要である

一貫性のあるデザインコンセプトの継続的使用がブランディングに繋がり、企業価値を向上させる

デザインやブランドの効果や経済的価値の見える化 経営者が、デザインは競争優位の源泉となる重要な経営資産のひとつであることを認識する必要がある

デザイン価値評価モデル(会計上の企業結合の際の資産計上等)の構築、ブランドマネジメントメソッドの開発をする

デザインは製品・サービス全体にかかり、大きな価値を実現できる可能性がある

知的財産権の複合的活用(知財ミックス) 特許権(技術)もGUI等の機能やデザインに関係することがある 意匠権、商標権、著作権、営業秘密、データ等も含めた総合的な知財戦略が必要である

事業戦略対応まとめ審査の推進(2016年実績:36件、特許360件、意匠2件、商標8件)

デザイン保護に対する啓発活動 商慣習も含め、マーケットにおけるデザイン尊重・デザイン保護意識を浸透させる

デザイン人材への知的財産教育により、権利意識を向上させる

※ブランドの定義(American Marketing Associationによる定義) Name, term, design, symbol, or any other feature that identifies one seller's good or service as

distinct from those of other sellers.

意匠Design

商標 Brand

特許 Technology

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デザインを保護するための法制度として、意匠法の存在意義と、その他の知財法による保護との重なりと関係性を改めて整理する

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デザイン保護制度のあり方

特許権

画面ユーザーインタフェース(画面UI、画面デザイン)は、「見やすさ」や「操作のしやすさ」のような技術的な効果と直結させれば、特許権として登録できる

商標法

デザインが商標法による保護を受けるためには、使用による識別力、使用による特別顕著性(3条2項)が要求されるため、実質的なハードルが高く利用しにくい

著作権法

「応用美術」も2条1項1号の要件を充たせば「美術の著作物」として保護(TRIPP TRAPP事件)される可能性がある(判例・学説上)

「無料」でかつ「無効にならない」

著作権法と意匠法の重複適用の可否

不正競争防止法

形態模倣行為(2条1項3号)により保護される 「無料」でかつ「無効にならない」

意匠法の「補完」から「代替」になっている

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産業競争力にデザインの力を反映させるために、国際調和した、使い勝手が良く、適切にデザインが保護される法制度を整備する

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意匠法のあり方

登録要件の拡大

「工業上の利用可能性(意匠法3条1項柱書)」、新規性、創作非容易性

米国:新規性、非自明性、実施可能性

欧州:新規性、独自性→「産業上の利用可能性」へ

物品性の拡大

「有体物としての物品を前提として物品と意匠の一体性を要求」

米国:解釈・運用は弾力的

欧州:物品性を前提とせず製品であれば足りる→国際意匠分類(ロカルノ分類)32類に合わせて「グラフィック・シンボル及びロゴ、表面のパターン、装飾」を保護対象へ

権利範囲の拡大

「同一または類似の意匠」

米国:全体的に見て通常の観察者が誤認して購入する程度に類似する意匠

欧州:異なった全体的印象を与えない意匠→「類似の範囲を拡大」へ

出願手続き

「一意匠一出願」

米国:一意匠一出願が原則だが、単一の意匠概念に含まれれば複数の実施例を一出願に包含可能

欧州:同一ロカルノ分類内の複数意匠一出願→「多意匠一出願」へ

新規性喪失の例外(グレースピリオド)

出願日前6ヵ月 米国:出願日前12ヵ月 欧州:出願日または優先日前12ヵ月→「出願日前12ヵ月」へ

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デザインに関する優遇税制を創設し、企業によるデザイン開発および保護・活用のインセンティブとする

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デザインに関する優遇税制のあり方

デザイン開発を推進するための税制

e.g., 研究開発税制• 目的:民間企業の研究開発投資を維持・拡大による、イノベーションの加速を通じた我が国の成長力・国際競争力を強化

• 対象:「製品の製造」又は「技術の改良、考案若しくは発明」に係る試験研究のために要する費用(単なる製品のデザイン考案にかかる費用は含まれない)

→デザイン開発税制の導入→イノベーション※税制の導入(デザイン含)• 対象:「デザインの研究開発」に係る費用

デザインを活用した商業活動を促進するための税制

e.g., パテントボックス税制(イノベーションボックス税制)

• 目的:外国企業の研究開発拠点の誘致、国内企業の研究開発拠点の流出防止

• 対象:特許権によるライセンス収入や、特許権関連する製品等の販売による利益

→デザインボックス税制の導入→イノベーション*ボックス税制の導入(デザイン含)

• 対象:デザインによるライセンス収入、意匠権に関連する製品等の販売による利益

※イノベーションの定義

研究開発活動にとどまらず、(1)社会・顧客の課題解決に繋がる革新的な手法(技術・アイデア・デザイン)で新たな価値(製品・サービス)を創造し、(2)社会・顧客への普及・浸透を通じて、(3)ビジネス上の対価(キャッシュ)を獲得する一連の活動

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【ご参考】近年、意匠五庁で意匠登録出願が減少傾向にあるのは日本のみであり、他の四庁においては増加傾向にある

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意匠五庁(ID5)の意匠登録出願件数の推移

出所:特許庁ステータスレポート2017

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【ご参考】日本では内国人による出願が減少する中、外国人による出願は増加しており、国際意匠登録出願を活用している割合が高い

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日本における意匠登録出願構造

出所:特許行政年次報告書2017年版

意匠登録出願と国際意匠登録出願の割合

日本(内国人)

日本以外(外国人)

件数 割合 件数 割合

国際意匠登録出願 74 0.3% 2,009 31.7%

国際意匠登録出願を除く意匠登録出願

24,469 99.7% 4,327 68.3%

総意匠登録出願 24,543 - 6,336 -

出所:特許庁ステータスレポート2017よりDTFA作成

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Appendix知的財産の定義と位置付け

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知的財産基本法

法務的観点からの知的財産の定義

知的財産とは、「事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」 知的財産権とは、「法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利」

出所:知的財産基本法 第2条

第2条この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。

2 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。

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会計的観点における無形資産の定義

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国際財務報告基準(IFRS)における無形資産の識別基準

米国会計基準や日本会計基準においても、企業結合を行った場合、投資対価と純資産の差額について、識別可能な無形資産をのれんと分離して評価する

出所:国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)第3号

企業結合の際に取得され得る無形資産の例

物理的実体のない(IAS38.4) 非貨幣資産のうち(IAS38.8) 識別可能なもの(IAS38.12)• 契約・法的要件:契約または法律上の権利によって生じる資産

• または、• 分離可能性要件:分離・分割可能で、売却、譲渡、ライセンスの付与、貸与または交換が可能な資産

条文 認識可能要件IFRS3.29, B35-B36 *1IFRS3.IE18-IE22

●商標、商号、サービスマーク、団体マーク及び認証マーク *1●トレードドレス(独特な色彩、形又はパッケージ・デザイン) *1●新聞マストヘッド *1●インターネットのドメイン名 *1●非競合契約 *1

IFRS3.IE23-IE31●顧客リスト *2●注文又は製品受注残高 *1●顧客契約及び関連する顧客関係 *1●契約に基づかない顧客関係 *2

IFRS3.IE32-33●演劇、オペラ及びバレエ *1●書籍、雑誌、新聞及びその他の文学作品 *1●作曲、作詞及びCMソングなどの音楽作品 *1●絵画及び写真 *1●映画又はフィルム、音楽テープ及びテレビ番組を含むビデオ及び視聴覚データ *1

IFRS3.IE34-38●使用許諾、ロイヤルティ及び使用禁止契約 *1●広告、建設、マネジメント、サービス又は供給契約 *1●リース契約(被取得企業が借手又は貸手かを問わない) *1●建設許可 *1●フランチャイズ契約 *1●営業及び放送権 *1●住宅ローン貸付管理契約などのサービス契約 *1●雇用契約 *1●採掘、水道、空調、材木伐採及び通行券などの使用権 *1

IFRS3.IE39-IE44●特許技術 *1●コンピューター・ソフトウェア及びマスク・ワーク *1●特許化されていない技術 *2●タイトル・プラントを含むデータベース *2●秘密製法、プロセス及びレシピなどの取引上の機密 *1

技術に基づく無形資産

取得企業が被取得企業に付与していたライセンス権等(「再取得した権利」)

マーケティング関連の無形資産

識別可能な無形資産(例)

顧客関連の無形資産

芸術関連の無形資産

契約に基づく無形資産

*1: Contractual(契約・法的要件を満たす)*2: Non-contractual(分離可能要件を満たす)

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税務的観点における無形資産の定義

出所:国税庁 別冊「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」

(旧)

※ 左記の比較表は、無形資産の定義項目等を分かりやすく羅列したものであり、各規程の内容をそのまま引用したものではない

BEPS行動計画 行動8「有形資産または金融資産でないもので、商業活動における使用目的で所有または管理することができ、比較可能な独立当事者間の取引ではその使用または移転に際して対価が支払われるような資産」

出所:税源浸食と利益移転(BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)行動計画 行動8

BEPSにおける移転価格上の無形資産の定義の明確化

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知的財産権、知的財産、知的資産、無形資産の分類イメージ

経営的観点における知的資産の定義

無形資産ex.) 借地権、電話加入権等

知的資産ex.) 人的資産、組織力、経営理念、顧客とのネットワーク、技能等

知的財産ex.) ブランド、営業秘密、ノウハウ等

知的財産権ex.) 特許権、実用新案権、著作権等

知的資産

「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権等の総称 「知的資産」とは、特許権等の「知的財産権」やブランド・ノウハウなどの「知的財産」だけではなく、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク等の目に見えない資産の総称で、企業の競争力の源泉

※ 上記の無形資産は、貸借対照表上に計上される無形固定資産と同義ではなく、企業が保有する形の無い経営資源全てと捉えている出所:経済産業省 知的資産経営ポータルHP

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