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2010.4.27 第9回SPring-8ヘルスケア研究会
放射光を利用した毛髪の構造評価と特性
花王株式会社 梶浦嘉夫
・放射光を利用したくせ毛の構造解析と・放射光を利用したくせ毛の構造解析と商品開発への応用事例
1-1 くせ毛の構造解析研究髪 ジ グ 究1-2 毛髪のエージング研究
・放射光を利用したくせ毛の構造解析と・放射光を利用したくせ毛の構造解析と商品開発への応用事例
1-1 くせ毛の構造解析研究髪 ジ グ 究1-2 毛髪のエージング研究
くせ毛の構造解析研究
African Caucasian AsianAfrican Caucasian
High Curly StraightShape
目的:人種間にみられるマクロスコピックな毛髪形状の違いを毛髪内部のナノ構造の視点から理解する
毛髪繊維のナノ構造解析
中間径フィラメント(IF)
小角散乱像
毛髪軸
赤道方向の散乱ピーク(面間隔~90Å)
→IFの配列に関連→IFの配列に関連放射光X線マイクロビーム( 5 )
単繊維(直径:30-100m)(~5m)
アフリカン-アメリカンの毛髪の小角散乱像
(外側) (内側)
A B C D(キューティクル) (キューティクル)
InnerOuter午線子午線
(=毛髪繊維軸)
赤道軸
面間隔90Åの散乱ピークインターメディエイト(IF)配列に由来
コルテックス小角散乱像の解析
得られる情報散乱強度プロファイルの抽出
1 赤道方向 IF直径と平均IF間1. 赤道方向 IF直径と平均IF間距離
0
2 方位角方向 毛髪繊維軸に対する2. 方位角方向 毛髪繊維軸に対する平均のIF傾き角180
3. 子午線方向 IF内部構造の午線方繰り返し単位長さ
アフリカンーアメリカンのくせ毛における赤道方向の散乱強度プロファイルの変化赤道方向の散乱強度プロファイルの変化
赤道方向の散乱強度プロファイル
内側外側
赤道方向の散乱強度プロファイル
IF配列由来ピーク毛髪繊維軸方向
赤道方向
(a.u
.)
内側
内側外側
散乱強度IF配列由来ピーク
散
外側
0.01 0.02 0.03
散乱ベクトル (Å 1)
外側
散乱ベクトル s (Å-1)
測定位置によりIF由来ピークの位置、強度が変化
IFの配列構造モデルFatma Briki et al.,Biochim. Biophys. Acta, 1429(1998)Bertrand Busson and Jean Doucet, Acta Cryst., A56(2000)
散乱強度
I(S)∝〔F(S)〕2 Z(S) (S =2sinθ/λ : 散乱ベクトル)2θ
X線
羊毛繊維
小角散乱
<コルテックス細胞の断面>
IFの形状を直径D(= 2*r)の均一な円柱と仮定
<形状因子 F(S)>
r
<コルテックス細胞の断面>
IF直径
D
の均 な円柱と仮定
F(S)=2πρr2J1(2πrS)/ 2πrSρ: 電子密度r : 半径
IF半径
J1(x): 1次のベッセル関数IF
<干渉関数 Z(S)>IF 隣接するIFは六方細密格子の格子点上に存在し
ほぼ六方細密充填P. Kassenbeck, In ‘Hair Research’,Springer-Verlag, p62(1981) (一部改変)
分布関数 z(x)
IF
ガウス関数 G <d>,σ(x)
隣接するIFは六方細密格子の格子点上に存在し、ガウス分布に従う存在確率の揺らぎを持つと仮定
(パラ結晶近似)
分布関数 ( )
(*n : n回畳み込み)
z(x)=δ(0)
+Σ {G <d>,σ(x)}*n + ΣG <d>,σ(-x) *nn=1
∞
n=1
∞
干渉関数 Z(S) ( z(x)のフーリエ変換 )Z(S)=∫z(x)e-2πiS・xdxIF間隔
六方格子<d>
アフリカンーアメリカンのくせ毛のカ ル内側 外側でのIF配列の変化カール内側~外側でのIF配列の変化
100
内側外側 (N=5)
直径D
80
90
(a.u
.)
内側 <d>
(Å)
IF<d>
70
散乱強度
内側D
(Å),
< <d>IF-IF間距離
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.060
0.01 0.02 0.03
散
外側
P(外側) (内側)散乱ベクトル s (Å-1) P: 毛髪直径で規格化した相対位置
IF間のマトリックスタンパクの厚みは間の トリック タン クの厚みはカール外側よりも内側の方が厚い。
アフリカンーアメリカンのくせ毛における方位角方向の散乱強度プロファイルの変化
0 繊維軸(子午線) 方位角方向の散乱強度プロファイル
方位角方向の散乱強度プロファイルの変化
0方位角方向
繊維軸(子午線)
IF 傾き角
内側外側
180IF度
(a.u
.) 内側
IF
FWHMは毛髪繊維軸に
散乱強度
FWHM は毛髪繊維軸に対する平均のIF傾き角を反映外側
FWHM
Y. Kajiura et al., J. Appl. Cryst. 38, 420-425 (2005). 0 180
(度)
測定位置によりIF由来ピークの強度、半値幅(FWHM)が変化
アフリカンーアメリカンのくせ毛のカ ル内側~外側でのIF傾き角の変化カール内側~外側でのIF傾き角の変化
60
(N 5)
内側外側
40
50
(度)
(N=5)
度(a
.u.)
内側 20
30
FWH
M (
散乱強度
FWHM 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.00
10
カール内側のIFは平行に配列しているのに
散
外側
0 180 (度)
FWHM
P(外側) (内側)
対し、カール外側のIFは傾いている。 (度)
リカ メリカ
カール外側 カール内側
アフリカンーアメリカンのくせ毛のIF配列
アフリカンーアメリカンのくせ毛と日本人のほぼ直毛の比較
【ア リカン アメリカンのくせ毛 】
90
100
Å) 50
60
度)
【アフリカンーアメリカンのくせ毛 】
(N=5) (N=5)
70
80
Å),
<d>
(20
30
40
FW
HM
(度
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.060
70
D(Å
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.00
10
F
PP
100
50
60
Å)
)
(N=6) (N=6)
【 日本人のほぼ直毛 】
80
90
20
30
40
Å),
<d>
(Å
WH
M (度
)0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.060
70
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.00
10
20
P P
D(Å FW
P P
アフリカンーアメリカンのくせ毛 : カール内・外で不均一なIF配列構造日本人のほぼ直毛 : カール内・外で不均一性は見られない
IF傾き角の変化率の定量化
カール内側に対する外側のIF傾き角の比 50
60
カール外側の平均FWHM (0.2 < P < 0.4) カール内側の平均FWHM (0 6 < P < 0 8)
カ ル内側に対する外側のIF傾き角の比
10
20
30
40
FWH
M
カ ル内側の平均FWHM (0.6 < P < 0.8) 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
0
10
外側 内側
Df
毛髪繊維の直径で規格化
幅 幅
変化の度合い
/ Df
半値幅
半値幅 度合い
P P 毛髪横方向のIF傾き角の変化率
は同じ値
IF傾き角の変化率とマクロスコピックなくせとの関係マクロスコピックなくせとの関係
マクロスコピックな100
直毛
形状100
モンゴロイド
コーカソイド
径(c
m)
10
ネグロイド
ウール
カール半径
カ
1
くせ毛
0 2 4 6 8 100.1
0 2 4 6 8 10100η/ Df (m-1)
梶浦嘉夫ら, 放射光 19, 371-376(2006).
均一 不均一
くせ毛の構造解析研究まとめ
マイクロビームX線小角散乱法により、毛髪ナノ構造のミクロンスケールでの空間分布を定量評価可能
くせ毛において、カール内側から外側にかけて不均一なIF配列構造が見出された配列構造が見出された
マクロスコピックなくせの強さは、人種によらず、毛髪横方向のミクロスコピックな不均一性の度合いによって説明できるのミクロスコピックな不均一性の度合いによって説明できる
・放射光を利用したくせ毛の構造解析と・放射光を利用したくせ毛の構造解析と商品開発への応用事例
1-1 くせ毛の構造解析研究髪 ジ グ 究1-2 毛髪のエージング研究
美容科学的な髪質の加齢変化の実態調査
10-14
15-19
20-24
25-29
30-34
35-39 年齢35 39
40-44
45 49
年齢
45-49
50-54
955-59
60-70
年齢10~70才の日本人女性230名(6ヶ月以内にパーマ処理者は除く)→ 髪質評価、形状・物性測定、ミクロ構造解析 (白髪・薄毛以外)
毛髪の見え方(艶)の加齢変化
10-14
15-19
20-24
25-29
30-34
35-39 年齢35 39
40-44
45-49
年齢
45-49
50-54
55 59
N 230
55-59
60-70
毛髪研究者と美容師(N=3)による艶の官能評価艶あり 艶なし N=230
艶のある人は年齢と共に減少 一定条件で洗髪・乾燥後に評価
10代
加齢にともなう髪の見え方の変化20代 30代 40代 50代 60代10代 20代 30代 40代 50代 60代
ショートショート
セミロングセミロング
茶髪茶髪セミロング
年代によりツヤ感に変化、くっきりしたツヤから乱れたツヤへ
一本一本の毛髪の形状比較(代表例)
25才 40才 46才 57才
cm
0
cm
10
20
30
加齢によるツヤ低下は、うねり毛の発生が一因
加齢による毛髪形状の変化
うねり指数「うねり」 → カール半径で評価
6cm以上
うねり指数(カール半径)
直毛
100%
頻度
直毛減少
2 以下2~4cm4~6cm6cm以上
うねり毛
直毛
80%
の発生
直毛減少
カール半径
2cm以下 うねり毛
40%
60%
直毛の
カ ル半径
20%
40%
り毛/直
0%
うねり うねり毛増加
10代(N 42)
20代(N 41)
30代(N 42)
40代(N 42)
50代(N 42)
60代(N 21) N=230
加齢と共にうねりった毛髪が増加/直毛が減少
(N=42) (N=41) (N=42) (N=42) (N=42) (N=21) N=230
加齢と共にうねりった毛髪が増加/直毛が減少
SAXSにより、うねり毛の内部構造解析(IFの傾き)
加齢とともに増えるうねり毛の内部構造
10040代前半
30代後半 20代後半10代前半
m) 50代前半
40代後半40代前半
30代前半
20代前半
10
半径 (cm African
Asian
Caucasian50代後半
60代30代前半
10代後半
1
カール半 Caucasian
wool
エージング毛加齢毛
0.1
0 2 4 6 8 10
100* /D ( -1)均一 不均一100*η/Df (m )均 不均
(内部の不均一性の程度)加齢により、内部構造不均一性が増大→うねりの原因
うねり緩和剤の探索
PTS
SO3H処理液:PTS 5%, BA2.5%, リンゴ酸5%, エタノール15% (pH=3.7)処理条件:40℃ 1h浸漬
1.6
1.7N=5
PTS 処理条件:40℃,1h浸漬
1 4
1.5
1.6
Radius
reatment)
比 理前)
うね
1.3
1.4
atio of Curl
r/Before tr
カール径比
理後/処理ね
りが取
1.1
1.2Ra
(After
カ(処理
取れる
1
F13 G12 H09 I14 J08 K01 K15 Av.Age 36 43 45 54 58 63 70
PTSにうねり緩和効果あり(特にダメージした毛先)
Age 36 43 45 54 58 63 70
PTSのうねり緩和効果
PTS
SO3H処理液:PTS 5%, BA2.5%, リンゴ酸5%, エタノール15% (pH=3.7)処理条件 40℃ 1h浸漬
)1.5
N=5-7
PTS 処理条件:40℃,1h浸漬
うね
1.4
径比処理前) N 5 7
ねりが取 1.2
1.3
カール径
処理後/
取れる
1.1
(処
1.0毛髪1根元
毛髪1毛先
毛髪2(ブリーチ毛)
毛髪3(ブリーチ毛)
特にダメージした毛先でうねり緩和効果大
毛) 毛)
PTS配合シャンプー・コンディショナーの効果
2週間連用相当ハーフヘッド加速試験38才女性
PTS 配合処方 無添加処方PTS 配合処方
毛髪 うねりを緩和
無添加処方
毛髪のうねりを緩和ツヤ/まとまりの向上 うねりが残っている
ラインナップ
2007年4月27日 発売
スタンダードアイテム スペシャルケアアイテム
トリートメント
シャンプー コンディショナー トリートメント 地肌エステ
ヘアエステ
グロッシー・ヘア・ウォーター
グロッシー・ヘア・オイル
ヘアエマルジョン
毛髪のエージング研究まとめ
年齢とともにうねった毛が増加し、髪の艶が低下年齢とともにうねった毛が増加し、髪の艶が低下
うねりの原因は内部構造不均一性の増大うねりの原因は内部構造不均一性の増大 ((SPringSPring--88の成果)の成果)うねりの原因は内部構造不均 性の増大うねりの原因は内部構造不均 性の増大 ((SPringSPring--88の成果)の成果)
PSTPST配合シャンプー・コンディショナーで髪のうねりが緩和し、ツ配合シャンプー・コンディショナーで髪のうねりが緩和し、ツヤ/まとまりが向上ヤ/まとまりが向上ヤ/まとまりが向上ヤ/まとまりが向上
2007年4月2007年4月 SegretaSegreta (セグレタ)(セグレタ)発売発売