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日本言語文化研究会論集 2014 年第 10 【特定課題研究報告】 成人学習者の話す自信を高める試み -授業にグループワークを取り入れて- クルシュレーシタ,ディヴィヤ 要旨 本研究は、インドの民間学校での、教師主導的で試験対策中心の勉強に慣れている成人学 習者が、グループワークを経験することによって、自信を持って、日本語でやり取りし、話 せるようになるかについて調査した。調査結果から、グループワークを通して学習者は、ク ラスメートとの不安の共有、話す時の文法の間違いや語彙不足に関する心配の軽減、少人数 の前での発表の練習などにより安心感が得られることがわかった。また、その安心感により 学習者の日本語で話すことに対する不安の低下、自信の度合いの上昇が見られた。そして、 グループワークは、日本語で話せるようになったという達成感や満足感を与え、学習者が話 すことを肯定的に捉えられるという効果をもたらした。さらに、本研究で取り組んだグルー プワークは、インドの民間学校の日本語教育においても実施可能であるということが示唆さ れた。 〔キーワード〕インドの民間学校、成人学習者、グループワーク、話す自信、不安 1. はじめに 2012 年度日本語教育機関調査(国際交流基金 2013)によると、インド全体の日本語学習 者は 20,115 人であり、その内学校教育以外で学ぶ学習者は 9,242 人、つまり、全体の 45.9% と多くを占めている。「学校教育以外」の機関としては、民間学校で学ぶ学習者の割合が大き いと考えられる。従って、民間学校の学習者を対象とした研究が必要である。筆者の経験お よび知り合いの教師 12 名から得た情報によると、民間学校の学習者には、2040 歳代の成 人が多く、その学習目的は将来の就職(日系企業に就職、日本語の教師、翻訳者、通訳者な ど)につなげることが中心である。また、女性学習者が多く、特に既婚女性にとって、フリ ーランサーとしてできる仕事は、魅力的だと考えられている。インドには日本人が少ないた め、日本人と接触する可能性がほとんどなく、日本に関連のある会社で働く人にしか、定期 的に日本語を使う機会がない。また、日本語能力試験(以下、JLPT)合格が主な学習目的と なり、民間学校での日本語教育は JLPT 受験対策向けの授業、つまり、文法学習が中心になり がちである。授業では、ある話題について学習者が意見を述べたり、学習者同士が交流した りすること自体あまりなく、日本語で話す機会はほとんどない。その結果、学習者は日本語 学習を上級まで終えても、自分の考えや気持ちを自由に、なめらかに述べることができない。

成人学習者の話す自信を高める試み -授業にグループワークを …jlc/jlc/ronshu/2014/4divya.pdf · 語の会話をもっと練習すること」(25名)という答えがあった。

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日本言語文化研究会論集 2014 年第 10号 【特定課題研究報告】

成人学習者の話す自信を高める試み -授業にグループワークを取り入れて-

クルシュレーシタディヴィヤ

要旨

本研究はインドの民間学校での教師主導的で試験対策中心の勉強に慣れている成人学

習者がグループワークを経験することによって自信を持って日本語でやり取りし話

せるようになるかについて調査した調査結果からグループワークを通して学習者はク

ラスメートとの不安の共有話す時の文法の間違いや語彙不足に関する心配の軽減少人数

の前での発表の練習などにより安心感が得られることがわかったまたその安心感により

学習者の日本語で話すことに対する不安の低下自信の度合いの上昇が見られたそして

グループワークは日本語で話せるようになったという達成感や満足感を与え学習者が話

すことを肯定的に捉えられるという効果をもたらしたさらに本研究で取り組んだグルー

プワークはインドの民間学校の日本語教育においても実施可能であるということが示唆さ

れた

〔キーワード〕インドの民間学校成人学習者グループワーク話す自信不安

1 はじめに

2012年度日本語教育機関調査(国際交流基金 2013)によるとインド全体の日本語学習

者は 20115人でありその内学校教育以外で学ぶ学習者は 9242人つまり全体の 459

と多くを占めている「学校教育以外」の機関としては民間学校で学ぶ学習者の割合が大き

いと考えられる従って民間学校の学習者を対象とした研究が必要である筆者の経験お

よび知り合いの教師 12 名から得た情報によると民間学校の学習者には20~40 歳代の成

人が多くその学習目的は将来の就職(日系企業に就職日本語の教師翻訳者通訳者な

ど)につなげることが中心であるまた女性学習者が多く特に既婚女性にとってフリ

ーランサーとしてできる仕事は魅力的だと考えられているインドには日本人が少ないた

め日本人と接触する可能性がほとんどなく日本に関連のある会社で働く人にしか定期

的に日本語を使う機会がないまた日本語能力試験(以下JLPT)合格が主な学習目的と

なり民間学校での日本語教育は JLPT受験対策向けの授業つまり文法学習が中心になり

がちである授業ではある話題について学習者が意見を述べたり学習者同士が交流した

りすること自体あまりなく日本語で話す機会はほとんどないその結果学習者は日本語

学習を上級まで終えても自分の考えや気持ちを自由になめらかに述べることができない

また 筆者の経験上民間学校の学習者は日本に短期滞在した経験をクラスで共有する

機会や日本語学習に関するイベントとして行われるスピーチ大会に参加する機会があるもの

の積極的に参加しないまた日本人のゲストが民間学校を訪問し自分の日本語学習経

験や相互の文化について意見交換する機会も時々あるが学習者の多くは日本語を使って

話すことに慣れておらず自信が持てないためせっかく勉強したことを活かせていない

従って企業に入る学習者は就職してから内で日本語研修を受け人前で発表したり日本

人と意見交換したりするなど日本語が活用できるように学習する場合も多いマナシ(2003

226)は「企業の求める日本語能力試験の合格だけを目指す学習者が多い実際に日本人と

話す機会があって初めて自分は話せないことに気が付くのである」と述べている

2013年 8月に学習者(42名)に対して行った事前調査 1では日本語学習上の問題点とし

て「話そうとする時ことばが出てこない」(26 名)が最も多くその解決方法として「日本

語の会話をもっと練習すること」(25名)という答えがあった

本研究では学習者が自信を持ちお互い日本語で話せるようになることを期待し授業

にグループワークを取り入れることで学習者にどのような変化が見られるかを観察したい

2 先行研究

第二言語学習に対する学習者の不安について研究している元田(2005 8)は第二言語不

安を「第二言語の学習や使用習得に特定的に関わる不安や心配とそれによって引き起こ

される緊張や焦り」と定義している

また学習者が持つさまざまな不安について元田(2005 111)は「第二言語学習を続け

るうちに他の学習者と比較して自分はなかなか上達しないと感じたりまわりの学習者よ

りも自分は劣っていると感じたりする可能性がある」と述べている従って身近なクラス

メートと比較し自分の日本語力をどう捉えるかということも学習者の不安感に深く関連

するそして学習者は不安になると自分の気持ちを上手く伝えることや相手の考えを聞

くことに集中することが難しくなるとしている

元田(2005 168-174)は学習者が持つ不安感を軽減するための方法の 1つとして学習

者の仲間づくりをあげている学習者は協同作業で他者から支援を得ることや他者の経験

を聞き不安になっているのは自分だけではないと感じることによって仲間意識が作られ

安心感が得られるようであるまたことばの正確さや流暢さのような言語の形態だけでは

なくコミュニケーションに焦点を当てることや「伝える」「聞く」ことを重視した活動が必

要であるという

上記から学習者は安心した雰囲気の中で仲間の前で話すことができるようになりや

がて緊張感や不安感を軽減させ徐々に他の人の前で話すことに慣れていき次第に日本

語で話す自信が高まると考えられる

Brown(2001 177)はグループワークをldquoit is a generic term covering a multiplicity

of techniques in which two or more students are assigned a task that involves

collaboration and self-initiated languagerdquo(以下筆者訳グループワークという用語は

「2 人以上の学生による協同作業と自発的な言語使用」を必要とするタスクを達成するため

に用いるテクニックの総称である)と定義している本研究ではグループワークを学習者

同士で行う協同作業とする

また英語教育の文脈で Long amp Porter(1985)は教育的観点から語学の教室において

グループワークを用いる 5つの利点をあげているそれは(1)言語の練習機会を増やす

(2)学生の対話の質を改善する(3)個別指導を促進する(4)活動的で情緒的に安心で

きる雰囲気を作り出す(5)学習者の動機を高めるという 5点である(訳は小柳 2004よ

り)上記の利点は全て重要であるが本研究では段階的に取り入れることを検討し自

国の教育場面で実施しやすいと思われる点を重視しLong amp Porterが述べた利点の中の「日

本語の練習機会を増やす」「活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す」「学習者の動

機を高める」という 3つの利点を取り入れたグループワークを行いそれが学習者の日本語

で話すことに対する不安感を軽減し自信の度合いを高めることにつながるかを確認したい

と考える

3 研究課題

研究背景で述べたようにインドの民間学校の学習者は授業で話す練習がないこと話

す時文法を間違える心配恥ずかしさなどさまざまな要因で話す自信が持てず話そうと

しない可能性がある授業の中にグループワークを取り入れることで学習者が「話したい」

という気持ちを持てれば多少間違いがあったとしても話し始めるかもしれないそして

言いたいことを相手に理解してもらうことができればその満足感が自信の高まりにつなが

り同時に不安感を減らすことができるかもしれないと仮説を立て本研究ではグルー

プワークにおける自信に着目し次の研究課題を設定した

課題 1 授業にグループワークを取り入れることによってどのように学習者の不安感が減

り自信の度合いが高まるか

課題 2 インドの民間学校のカリキュラムにグループワークを取り入れるためにどのような

留意点が考えられるか

4 コースの概要

41 コースの目標と内容

2014年 4月帰国実習の機会を利用してインドのムンバイ市にある民間学校で 1コース

全 8回の授業をデザインした本コースでは従来の授業にはなかったグループワークを取

り入れることによって学習者が自信を持って日本語でやり取りや発表ができるようになる

ことを目標とした本コース期間中に学習者の日本語を話すことに関する問題点や不安の

度合いの変化を知るためにアンケート調査とディスカッションを行ったその他に学習者

からのフィードバックシート自己評価紙の記入学習者の事前事後発表の教師評価ム

ンバイプネ市の日本語教師へのインタビュー調査を行ったなお筆者は教師として 8回

すべての授業を担当した

42 授業の設計

421 対象者

民間学校で学習している 27~45歳の学習者(全員女性)5名を調査の対象者とした対象

者の使用言語はヒンディー語英語であり全員 JLPT N3に合格しているJF日本語教育ス

タンダードの観点から評価すると「話す聞く書く」技能は A2 レベル「読む」技能は

B1レベル程度である

5名の対象者のプロフィールは次の通りであるS1は民間学校と企業で日本語の非常勤

教師をしている企業にいる他の日本語母語話者の教師(以下NT)や日本語教師会に出席

する NTまたは専門の日本語教師の訪問の際に日本人と接触する機会が時々あるS2

は専業主婦であり日本人と接したことは一度もないS3も専業主婦であるが3年半日

本に滞在したことがありその間日常生活で日本人と接触した経験が豊かであるS4はフリ

ーランサーの翻訳者かつ日本語の非常勤教師をしているS4も日本人と接する機会が一度も

ないS5は現在専業主婦であるが大学で日本語を学習中にNTに教えられたり日本人留

学生を自宅にホームステイさせたりしたことで日本人との接触経験がある

表 1 学習者のプロフィール

S1 S2 S3 S4 S5

年代 30代 40代 30代 20代 30代

仕事の有無 times times times

日本人との接触経験 times times

日本滞在歴 times times times times

422 学習目標とレベル設定

「みんなの Can-doサイト」を利用しCEFRの Can-do Statementを参考に対象者のレベ

ルや目標を設定した研究背景で述べたように学習者は自分の考え気持ち経験等を自

由に述べる練習をしたことがほとんどないことからCEFRの産出「経験や物語を語る」カテ

ゴリーの Can-doの内「自分の感情や反応を記述しながら経験を詳細に述べることができ

る」という Can-do 項目に注目し目標とした選んだカテゴリーでA22 レベルに当ては

まる行動は「要点を短く述べることができる」「事柄を例挙して簡単に述べることができる」

「好きか嫌いかを述べることができる」でありB12 は「集めた事実情報をもとに総括し

報告できるある程度自信を持って自分の意見を提示できる」であった筆者の教授経験か

ら自国の学習者の学習レベルを考えるとA22レベルはJLPT N2の学習をしている対象者

には易しすぎB12レベルは会話の練習経験があまりない対象者にとって少し難しいと考

えたそこでその間である B11の「事実を述べ理由を説明することができる」「自分の

感情や反応を描写することができる」「自分の考えを述べることができる」という Can-do項

目を選び学習目標を決めた

423 授業の概要

授業は全部で8回あり1回90分であった第1回の授業でオリエンテーションを行った

第 2~7回授業で学習者の経験上身近で簡単に話せると考えられるトピックを 3つ設定し

1トピックに 2種類のグループワークを取り入れた授業を行った第 8回はまとめの授業で

あった(コース全体の内容は表 2を参照)

次に授業に取り入れたグループワークについて述べるグループワークでは学習者同

士が交流できる機会を作ったり安心した雰囲気を作ることや話す練習の機会を増やした

そしてグループワークの活動中学習者は自由に話し合う時間が持てそれによって仲

間意識を持ち安心感を得られると同時に日本語で話す不安が減り話す自信も高まると考え

たまた教師のコントロールのもと2名または 3名に分けて 2グループにしグループ

メンバーの前で発表を練習することで仲間意識も持てクラス全員の前での発表がしやす

くなると想定したまた学習者のグループワークへの反応を見るためにさまざまな形態

のグループワークを授業に取り入れた(グループワークを取り入れた授業の内容は表 3を参

照)

表 2 コース全体の内容

活動の内容

オリエンテーション

第1回

教師(筆者)の自己紹介研究目的について説明(ヒンディー語)

学習者の自己紹介日本語で話す上の問題点不満感想などについてディスカッ

ションⅠ(ヒンディー語英語日本語)

15分の準備後学習者による2分程度の事前発表

(テーマ「日本語の勉強を始めたきっかけ」)

教師から発表のし方評価の観点について説明(日本語英語)

学習者による日本語を話す能力についてのアンケート調査Ⅰ(前)の記入

教師から第2~7回の授業の流れフィードバックシート自己評価紙の説明

グループ

ワークを

取り入れ

た授業

第2回 トピック1「私の一ばん大切なもの」

第3回

第4回 トピック2「忘れられない旅行」

第5回

第6回 トピック3「恋愛結婚かお見合い結婚か」

第7回

まとめ 第8回

15分の準備後学習者による2分程度の事後発表(テーマ「日本語と将来の夢」)

学習者によるアンケート調査Ⅰ(後)アンケート調査Ⅱの記入

教師から授業のまとめ学習者の感想意見や提案などについてのディスカッショ

ンⅡ(ヒンディー語英語日本語)

表 3 グループワークを取り入れた授業の内容(第 2~7回)

順 第2~7回の授業の活動とその目的 内容

1 導入(5分)

背景知識の活性化

教師が会話でトピックを導入した

2

ブレインストーミング(10分)

トピックに必要な語彙や表現を確認し自信

を高める

学習者がワークシート①でトピックに関連する表現や

キーワードを整理した(添付資料①ワークシート①-A)

教師から語彙表現のリストを配付した

3

グループワークⅠ(60分)

日本語で話す機会を増やし持っている知識

を互いに共有することによって学習者は新し

い単語や表現を知り日本語力への自信を高め

グループでクラスに報告し緊張感や不安感

を減らす

ワークシートを用いてグループで活動をする(添付

資料②③)

トピックはトピック1「私の一ばん大切なもの」ト

ピック2「忘れられない旅行」トピック3「恋愛結婚か

お見合い結婚か」の3つ

グループワークⅠの結果をクラス全員の前で報告する

4 個人作業(10分)

学習者が自分の考えや話を整理する

教師が発表例を示した後学習者は各自トピックに

ついて話すことを考えワークシート①-B(添付資料①)

に書いた

5 グループワークⅡ(30分)

まずグループメンバーの前で発表の練習を

し不安感を減らす

グループメンバーからのフィードバックによ

り発表内容を修正することでクラス全員の前

での発表に自信を高める

学習者は練習後グループ内で発表した

ワークシート④(添付資料④)を使ってグループメ

ンバーからフィードバックをもらった

学習者は自分の発表をふり返り改善した

6 個人発表(30分) 学習者はクラスメート全員の前で発表した

7 コメントのやり取り(10分) 発表を聞き好意的なコメントと建設的なコメントを

日本語発表の改善のポイントがわかる

日本語学習への動機になる

ピンクと黄色の付箋に無記名で書いた(日本語英語)

コメントを発表者に渡した

8 自己評価紙の記入(5分)

学習者が自分の日本語力に変化があったかを

ふり返る

発表の観点に注意できるようになる

学習者は自分の発表を評価の観点を使って自己評価し

9 授業へのフィードバックシート(5分)

授業に対する学習者の気持ちがわかる

授業改善への提案を得る

学習者は自分の発表グループワークについてフィー

ドバックシートの質問に答えた(添付資料⑤を参照)

グループワークⅠグループワークⅠはトピックによって活動の形態に違いはあるが課

題が明確に理解されるように筆者が作成したワークシートを使って与えられたタスクを進

めていく活動であったトピック 1「私の一ばん大切なもの」の活動ではトピックに関連

するビデオを見その内容について話し合うトピック 2「忘れられない旅行」の活動では

出来事の流れが描写できるように1人 1コマの絵を与えて協力してストーリーを完成さ

せる(添付資料②を参照)トピック 3「恋愛結婚かお見合い結婚か」の活動ではトピッ

クについての利点と欠点を意見交換し合うというものであった学習者はグループ内で

やり取りし助け合いながら各トピックのワークシートにあるタスクを行ったその結果

をグループごとにクラス全員の前で報告した

グループワークⅡ学習者はグループワークⅠで確認共有した表現やアイディアを基に

自分の考えを整理しなおしまずグループメンバーの前で自分の発表の練習をしたそし

て自分の発表を振り返った後クラス全員の前で発表した

グループワークⅠⅡの計画時第 2章の先行研究に述べたポイントを踏まえ教師は下

記の点に注意した

(1)学習者の不安感を減らすために注意した点<安心できる雰囲気を作る>

学習者は文法の間違い語彙の乏しさや正確さなどのような細かいことに気を取られ

不安になり話す努力をしなくなる恐れがあったそこで安心して話せる雰囲気が作れる

ように教師は学習者にグループワークでは文法上の間違いや細かいことは気にせずに

日本語を使って話すように指示したまた日本語で自分の考えを表せない時には単語単

位での母語使用も認めた

(2)学習者の自信を高めるために注意した点<グループの組み方>

グループ内のメンバー間の能力差が大きいと能力の低い学習者が話す自信を失う恐れ

があるため学習者の日本語力に注意する必要もあると考えたしかし本コース受講者は

全員N3に合格しており似たような日本語レベルだとわかっていたためトピック1の際は

日本人と接触した経験の有無を基にグループを組むことにしたトピック23は他の学習者

とも仲間意識ができるように異なった相手と組むことにした

(3)グループワークⅠで注意した点<トピックに必要な語彙表現の補足>

学習者は話す時にことばが出てこないつまり語彙や表現が足りずに話せなくなる

ことが事前調査でわかった(第 1章を参照)そこで学習者がトピックについて話すための

手助けとなるようにグループワークⅠの前にはトピックの語彙に関するブレインストー

ミングを行いワークシート上の難しい語彙や表現の翻訳リストを配付しグループワーク

Ⅰの最後の報告の際には教師から語彙表現の確認を行ったこれによって学習者が自

分の頭の中で話す準備ができるように課題や発表に必要な語彙や表現の補足をした

(4)グループワークⅡで注意した点<聞き手への配慮>

学習者が「伝える」「聞く」ことに集中でき自分の考えを上手く「伝えられる」相手の

話を上手く「理解できる」ように発表を聞いた後に聞き手がコメントする活動と話し手

自身による発表のふり返りの活動(添付資料④を参照)を設定した学習者はこのワークシ

ートを利用し自分の話を話し手の立場から説明したり相手の話を聞き手の立場から確認

したりしたこれによって学習者は聞き手のことも意識することになり「話す」ことだけ

ではなく「わかってもらう」ことの大切さにも注目できるようになると考えた

5 調査概要

51 データの種類と収集方法

調査で収集したデータを主データと補足データに分けて述べる 511 主データ

(1)アンケート調査Ⅰ元田(2005 215-218221-222241-242)の調査票(質問紙)は

日本に留学し直説法で学ぶ学習者を対象にしているが本コースではインドで学ぶ

成人学習者を対象にしているため調査対象者の特徴を考慮し項目を選んで作成し

た 2第 1回の授業時学習者の日本語を話すことに対する自信の度合いを知るために

アンケート調査Ⅰ(以下アⅠ)(前)を行った同じ調査をアⅠ(後)として第 8回

の授業時学習者の自信の度合いの変化を見るために行った

(2)アンケート調査Ⅱグループワークの効果について筆者が項目を考えた調査であるア

ンケート調査Ⅱ(以下アⅡ)はグループワークを取り入れた授業に対する学習者の

反応を見るために第 8回の授業で行った

(3)ディスカッションⅠⅡの音声データ第 1回の授業で日本語で話すことに対する学

習者の問題点や不満点期待についてディスカッションⅠ(以下デⅠ)を行った(20

分程度)第 8回の授業で本コースに関する学習者からの意見や感想を聞くためにデ

ィスカッションⅡ(以下デⅡ)を行った(30分程度)

512 補足データ

(1)フィードバックシート学習者がトピック終了時に自分の発表についてふり返り授

業全体やグループワーク活動について記入した(添付資料⑤を参照)

(2)自己評価紙学習者が発表の評価の観点 3を基に自分の発表を評価し記入した

(3)コメント学習者が互いの発表に対して相互評価をし好意的建設的なコメントを

色の異なる付箋に書き発表者に渡した

(4)事前事後発表の教師評価紙教授歴 10年以上の非母語話者教師(以下NNT)3人が

コース終了後学習者の事前事後発表を評価した

(5)教師インタビューの音声データ筆者がコース修了後実践した授業の有効性や問題

点を知るためにプネムンバイ市の教授歴 5年以上の NNT 7人(上記の(4)の教師を

含む)に授業に関する意見や感想提案を聞いた

52 データ分析方法

アE

AⅠと AアE

AⅡの全体の回答傾向を探るために結果の表(表 45)を作成し変化がわかる

ように示した結果全体を見その中で変化があった学習者について個別に詳しく見たAアE

Ⅱには自由記述欄として感想や意見を書くスペースを設けており本稿では< >で示す

またデⅠⅡはやり取りを文字化し分析に必要な部分を日本語に訳したデの発話は

『 』で示す学習者のフィードバックシートや自己評価紙の回答そしてクラスメートか

らのコメントをまとめ主データをサポートするものがあるかどうかを調べた事前事後

発表の教師評価の結果からグループワークの取り入れが学習者の運用力の伸びにつながった

かどうかを調べた

53 クラス全体の結果の傾向と考察

アE

AⅠは学習者の自信や不安の変化を見る調査であるがクラス全体の分析結果(表 4を参照)

を見るとその回答は多様であり全体に共通する傾向は見られなかった不安を測る項目

は9項目(問 12457891112)であり自信に関する項目は4項目(問 3

61013)であったAアE

AⅠの結果では不安感に関する 9項目の内 7項目に不安感の低下が

見られたその中で問48は話す時に間違える心配に関するものであり問 1275

12は自分の日本語能力に関する不安についての項目であったそして自信の度合いに関す

る 4項目の内 3項目(問 3613)には上昇が見られた(531を参照)変化が見られな

かった項目は問 91011の 3項目であったまた自信の度合いに少し低下が見られた項

目もありそれらは学習者によって異なるものであった2名が低下を示した項目は問 68

の日本語の間違いや日本語力に関するものであった問 6891011 については 532

で述べる

AアE

AⅡはグループワークに対する学習者の反応を見る調査である(表 5を参照)回答を大き

く分けると回答 34は「あてはまる」回答 12は「あてはまらない」に分けられる学習

者は全員すべての項目に対して3か 4(あてはまる)という肯定的な回答を選びグループ

ワークを授業に定期的に(regularly)取り入れることに対して肯定的に捉えていることがわ

かった

表 4 学習者の話す不安自信の度合いの結果(授業前と後)(アンケート調査Ⅰ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

番号 質問項目 S1 S2 S3 S4 S5

前 後 前 後 前 後 前 後 前 後

1 授業のときで日本語を話すときたいてい

緊張します 3 3 4E A3E 2 2 4 4 3 3

2 日本語を話すとき笑われないかと心配し

ます A2E A1E 1 1 1 1 A3E A2E A2E A3E

4 他の学生の前で日本語をまちがえたとき

恥ずかしいと思います 3 3 2 2 1 1 A4E A3E A2E A3E

5 私には日本語の会話能力がないのだろう

かと心配になります 2 2 A4E A3E A1E A2E 2 2 A3E A2E

7 授業のとき日本語を使ってディスカッシ

ョンするとき緊張します A3E A2E A3E A2E 2 2 4 4 2 2

8 授業のとき日本語をまちがえないかと心

配します A3E A1E 3 3 1 1 A1E A3E A2E A3E

9 授業のとき日本語を使って発表すると

き緊張します 3 3 4 4 1 1 4 4 3 3

11 日本語の授業のときもっと自分に自信を

もてたらいいのにと思います 4 4 4 4 3 3 3 3 4 4

12 日本語での会話がなかなか上手にならな

くて心配です A3E A1E A4E A1E A1E A2E A3E A2E 2 2

3 私は他の学生と同じぐらい日本語がうま

くできます A3E A4E 3 3 3 3 A1E A2E 3 3

6 自分の日本語にはいい面がたくさんある

と思います A4E A3E A3E A2E 3 3 A2E A3E 2 2

10 私は自分の日本語を前向きに考えていま

す 4 4 4 4 4 4 3 3 4 4

13 みんなの前で自分の経験(例えば来日の経

験日本語学習の経験)について積極的に

話したいと思います

4 4 A4E A3E 4 4 3 3 A2E A3E

問12457891112は不安の度合いを示す項目であり高い数値は不安が高いことを示す問3

61013は自信の度合いを示す項目であり高い数値は自信が高いことを示すの項目は不安の減少自信

の上昇を表し網かけの項目はマイナスイメージからプラスイメージへの変化を表すの項目は自信の低下を

表す

表 5 グループワークに対する学習者の反応(アンケート調査Ⅱ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

質問内容 S1 S2 S3 S4 S5

1授業でペアグループワークを定期的にすれば多くの人の前で話す際に緊張し

ないだろう 4 4 3 4 3

2授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を話す時間違える心配は

しないだろう 4 4 3 3 4

3授業でペアグループワークを定期的にすればスピーチ大会のようなイベント

に参加したくなるだろう 4 4 3 3 4

4授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話したくなる

だろう 4 4 4 3 4

5授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を使って話す動機になる

だろう 4 4 3 3 3

意欲に関する問 4「授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話

したくなるだろう」に対して回答 4を 4名が選択しまた自信の度合いを表す項目問 1「多

くの人の前で話す際に緊張しないだろう」問 2「日本語を話す時間違える心配はしないだ

ろう」問 3「スピーチ大会のようなイベントに参加したくなるだろう」に対しては回答 4

が 3名で3が 2名であったまた問 5「授業でペアグループワークを定期的にすれば

日本語を使って話す動機になるだろう」に対しても回答 4が 2名3が 3名で全員肯定

的な回答であったこのことから話すことに対して前向きになり意欲の高まりが見られた

と考えられるこれは下記のアⅡデⅡの自由記述で発言された学習者の感想からもわか

アE

AⅡS2<このようなグループ活動を取り入れた授業を楽しみにしている>S3<このようなグループ活動を将

来も楽しみにしている>S4<この8日間の授業はとても豊かな経験だった>S5<このような授業はとても楽

しかったのでこれからも参加したい>

AデE

AⅡS2『他の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』S4『前はあまり話せなかったがテレビ

広告などのグループ活動をやっているうちに自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告また「グ

プタさんの話」によって授業がとても面白くなった』

531 学習者の自信の度合いが上昇した項目について

AアE

AⅠの結果については項目ごとの違いが明らかにできなかった部分があるためAデE

AⅠⅡ

の発言を引用し分析を進めるグループワークを取り入れた授業に参加する前に学習者

は自分の日本語の会話力話す時に間違えること間違えた時の周りの人からの反応など

について心配や不安な気持ちになり自信の度合いが低いことが AアE

AⅠ(前)と AデE

AⅠから見

られたAデE

AⅠで学習者は下記のように言っていた

しかしグループワークの際学習者同士が話し合うことによって安心でき緊張感が

減りそして自信を持って日本語で話せるようになったようであるそのことで得られた達

成感や満足感がデⅡで見られたその例と理由を 3つにまとめる

(1)安心感の醸成授業でグループワークを行うことで学習者の気持ちが落ち着き安心

感が得られた要因は下記のように考えられる

①共通の問題点や不安の共有デⅡでの下記の発言から学習者はグループワークを通して

互いに交流し日本語を話すことに関する共通の問題点や不安感を共有したことがわかる

S1『相手が同じレベルなので自分が言いたいことを気楽に表すことができた』S2『日本語が上手じゃないと

か緊張するのは自分1人だけじゃなくみんな同じ気持ちだそれが大事だった』『みんなレベルが同じなの

で相手と話す時に後で(日本語のことで)笑われるかもしれないなどの感じがしなかった』S3『活動をや

っているうちにお互いに慣れて緊張感が減った』

上記から他の学習者も日本語を話すことに対する問題を抱えていることや話す時に間

違えたり緊張したりするのは自分 1人ではなく他の学習者も同じだということを実感

し学習者は安心感を得ることができたと思われる

②教師の指示グループワークを始める前に文法や語彙の間違いの心配を気にせずに話す

単語単位なら母語を使ってもいいという教師からの指示があったため学習者が安心でき

緊張せずに日本語で話せたと考えられる

S2『間違いを指摘されなかったので話す時緊張しなかった』『母語使用が許されたことによってお互い楽な気持

ちになれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』S4『文法をあまり気にしないでまず話したい

ことを思いきって話す文法の間違いを直すのは後でもできる』S5『間違いに注意しなくてもよかったので

もっと自信を持って話せた』

S1『言いたいことがはっきり説明できない』S2『文法の知識はあるが適切に使えない』『日本語でたくさん話

したいけれどできない』『文型をたくさん知っていても話す時思い出せない』『読むことができる書くことが

できるでも会話はちょっと苦手』『話す時いいことばが見つからない』S3『話す練習が足りない』S4『教

科書の文法の勉強より運用できるようになる学習方法が必要』

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

また 筆者の経験上民間学校の学習者は日本に短期滞在した経験をクラスで共有する

機会や日本語学習に関するイベントとして行われるスピーチ大会に参加する機会があるもの

の積極的に参加しないまた日本人のゲストが民間学校を訪問し自分の日本語学習経

験や相互の文化について意見交換する機会も時々あるが学習者の多くは日本語を使って

話すことに慣れておらず自信が持てないためせっかく勉強したことを活かせていない

従って企業に入る学習者は就職してから内で日本語研修を受け人前で発表したり日本

人と意見交換したりするなど日本語が活用できるように学習する場合も多いマナシ(2003

226)は「企業の求める日本語能力試験の合格だけを目指す学習者が多い実際に日本人と

話す機会があって初めて自分は話せないことに気が付くのである」と述べている

2013年 8月に学習者(42名)に対して行った事前調査 1では日本語学習上の問題点とし

て「話そうとする時ことばが出てこない」(26 名)が最も多くその解決方法として「日本

語の会話をもっと練習すること」(25名)という答えがあった

本研究では学習者が自信を持ちお互い日本語で話せるようになることを期待し授業

にグループワークを取り入れることで学習者にどのような変化が見られるかを観察したい

2 先行研究

第二言語学習に対する学習者の不安について研究している元田(2005 8)は第二言語不

安を「第二言語の学習や使用習得に特定的に関わる不安や心配とそれによって引き起こ

される緊張や焦り」と定義している

また学習者が持つさまざまな不安について元田(2005 111)は「第二言語学習を続け

るうちに他の学習者と比較して自分はなかなか上達しないと感じたりまわりの学習者よ

りも自分は劣っていると感じたりする可能性がある」と述べている従って身近なクラス

メートと比較し自分の日本語力をどう捉えるかということも学習者の不安感に深く関連

するそして学習者は不安になると自分の気持ちを上手く伝えることや相手の考えを聞

くことに集中することが難しくなるとしている

元田(2005 168-174)は学習者が持つ不安感を軽減するための方法の 1つとして学習

者の仲間づくりをあげている学習者は協同作業で他者から支援を得ることや他者の経験

を聞き不安になっているのは自分だけではないと感じることによって仲間意識が作られ

安心感が得られるようであるまたことばの正確さや流暢さのような言語の形態だけでは

なくコミュニケーションに焦点を当てることや「伝える」「聞く」ことを重視した活動が必

要であるという

上記から学習者は安心した雰囲気の中で仲間の前で話すことができるようになりや

がて緊張感や不安感を軽減させ徐々に他の人の前で話すことに慣れていき次第に日本

語で話す自信が高まると考えられる

Brown(2001 177)はグループワークをldquoit is a generic term covering a multiplicity

of techniques in which two or more students are assigned a task that involves

collaboration and self-initiated languagerdquo(以下筆者訳グループワークという用語は

「2 人以上の学生による協同作業と自発的な言語使用」を必要とするタスクを達成するため

に用いるテクニックの総称である)と定義している本研究ではグループワークを学習者

同士で行う協同作業とする

また英語教育の文脈で Long amp Porter(1985)は教育的観点から語学の教室において

グループワークを用いる 5つの利点をあげているそれは(1)言語の練習機会を増やす

(2)学生の対話の質を改善する(3)個別指導を促進する(4)活動的で情緒的に安心で

きる雰囲気を作り出す(5)学習者の動機を高めるという 5点である(訳は小柳 2004よ

り)上記の利点は全て重要であるが本研究では段階的に取り入れることを検討し自

国の教育場面で実施しやすいと思われる点を重視しLong amp Porterが述べた利点の中の「日

本語の練習機会を増やす」「活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す」「学習者の動

機を高める」という 3つの利点を取り入れたグループワークを行いそれが学習者の日本語

で話すことに対する不安感を軽減し自信の度合いを高めることにつながるかを確認したい

と考える

3 研究課題

研究背景で述べたようにインドの民間学校の学習者は授業で話す練習がないこと話

す時文法を間違える心配恥ずかしさなどさまざまな要因で話す自信が持てず話そうと

しない可能性がある授業の中にグループワークを取り入れることで学習者が「話したい」

という気持ちを持てれば多少間違いがあったとしても話し始めるかもしれないそして

言いたいことを相手に理解してもらうことができればその満足感が自信の高まりにつなが

り同時に不安感を減らすことができるかもしれないと仮説を立て本研究ではグルー

プワークにおける自信に着目し次の研究課題を設定した

課題 1 授業にグループワークを取り入れることによってどのように学習者の不安感が減

り自信の度合いが高まるか

課題 2 インドの民間学校のカリキュラムにグループワークを取り入れるためにどのような

留意点が考えられるか

4 コースの概要

41 コースの目標と内容

2014年 4月帰国実習の機会を利用してインドのムンバイ市にある民間学校で 1コース

全 8回の授業をデザインした本コースでは従来の授業にはなかったグループワークを取

り入れることによって学習者が自信を持って日本語でやり取りや発表ができるようになる

ことを目標とした本コース期間中に学習者の日本語を話すことに関する問題点や不安の

度合いの変化を知るためにアンケート調査とディスカッションを行ったその他に学習者

からのフィードバックシート自己評価紙の記入学習者の事前事後発表の教師評価ム

ンバイプネ市の日本語教師へのインタビュー調査を行ったなお筆者は教師として 8回

すべての授業を担当した

42 授業の設計

421 対象者

民間学校で学習している 27~45歳の学習者(全員女性)5名を調査の対象者とした対象

者の使用言語はヒンディー語英語であり全員 JLPT N3に合格しているJF日本語教育ス

タンダードの観点から評価すると「話す聞く書く」技能は A2 レベル「読む」技能は

B1レベル程度である

5名の対象者のプロフィールは次の通りであるS1は民間学校と企業で日本語の非常勤

教師をしている企業にいる他の日本語母語話者の教師(以下NT)や日本語教師会に出席

する NTまたは専門の日本語教師の訪問の際に日本人と接触する機会が時々あるS2

は専業主婦であり日本人と接したことは一度もないS3も専業主婦であるが3年半日

本に滞在したことがありその間日常生活で日本人と接触した経験が豊かであるS4はフリ

ーランサーの翻訳者かつ日本語の非常勤教師をしているS4も日本人と接する機会が一度も

ないS5は現在専業主婦であるが大学で日本語を学習中にNTに教えられたり日本人留

学生を自宅にホームステイさせたりしたことで日本人との接触経験がある

表 1 学習者のプロフィール

S1 S2 S3 S4 S5

年代 30代 40代 30代 20代 30代

仕事の有無 times times times

日本人との接触経験 times times

日本滞在歴 times times times times

422 学習目標とレベル設定

「みんなの Can-doサイト」を利用しCEFRの Can-do Statementを参考に対象者のレベ

ルや目標を設定した研究背景で述べたように学習者は自分の考え気持ち経験等を自

由に述べる練習をしたことがほとんどないことからCEFRの産出「経験や物語を語る」カテ

ゴリーの Can-doの内「自分の感情や反応を記述しながら経験を詳細に述べることができ

る」という Can-do 項目に注目し目標とした選んだカテゴリーでA22 レベルに当ては

まる行動は「要点を短く述べることができる」「事柄を例挙して簡単に述べることができる」

「好きか嫌いかを述べることができる」でありB12 は「集めた事実情報をもとに総括し

報告できるある程度自信を持って自分の意見を提示できる」であった筆者の教授経験か

ら自国の学習者の学習レベルを考えるとA22レベルはJLPT N2の学習をしている対象者

には易しすぎB12レベルは会話の練習経験があまりない対象者にとって少し難しいと考

えたそこでその間である B11の「事実を述べ理由を説明することができる」「自分の

感情や反応を描写することができる」「自分の考えを述べることができる」という Can-do項

目を選び学習目標を決めた

423 授業の概要

授業は全部で8回あり1回90分であった第1回の授業でオリエンテーションを行った

第 2~7回授業で学習者の経験上身近で簡単に話せると考えられるトピックを 3つ設定し

1トピックに 2種類のグループワークを取り入れた授業を行った第 8回はまとめの授業で

あった(コース全体の内容は表 2を参照)

次に授業に取り入れたグループワークについて述べるグループワークでは学習者同

士が交流できる機会を作ったり安心した雰囲気を作ることや話す練習の機会を増やした

そしてグループワークの活動中学習者は自由に話し合う時間が持てそれによって仲

間意識を持ち安心感を得られると同時に日本語で話す不安が減り話す自信も高まると考え

たまた教師のコントロールのもと2名または 3名に分けて 2グループにしグループ

メンバーの前で発表を練習することで仲間意識も持てクラス全員の前での発表がしやす

くなると想定したまた学習者のグループワークへの反応を見るためにさまざまな形態

のグループワークを授業に取り入れた(グループワークを取り入れた授業の内容は表 3を参

照)

表 2 コース全体の内容

活動の内容

オリエンテーション

第1回

教師(筆者)の自己紹介研究目的について説明(ヒンディー語)

学習者の自己紹介日本語で話す上の問題点不満感想などについてディスカッ

ションⅠ(ヒンディー語英語日本語)

15分の準備後学習者による2分程度の事前発表

(テーマ「日本語の勉強を始めたきっかけ」)

教師から発表のし方評価の観点について説明(日本語英語)

学習者による日本語を話す能力についてのアンケート調査Ⅰ(前)の記入

教師から第2~7回の授業の流れフィードバックシート自己評価紙の説明

グループ

ワークを

取り入れ

た授業

第2回 トピック1「私の一ばん大切なもの」

第3回

第4回 トピック2「忘れられない旅行」

第5回

第6回 トピック3「恋愛結婚かお見合い結婚か」

第7回

まとめ 第8回

15分の準備後学習者による2分程度の事後発表(テーマ「日本語と将来の夢」)

学習者によるアンケート調査Ⅰ(後)アンケート調査Ⅱの記入

教師から授業のまとめ学習者の感想意見や提案などについてのディスカッショ

ンⅡ(ヒンディー語英語日本語)

表 3 グループワークを取り入れた授業の内容(第 2~7回)

順 第2~7回の授業の活動とその目的 内容

1 導入(5分)

背景知識の活性化

教師が会話でトピックを導入した

2

ブレインストーミング(10分)

トピックに必要な語彙や表現を確認し自信

を高める

学習者がワークシート①でトピックに関連する表現や

キーワードを整理した(添付資料①ワークシート①-A)

教師から語彙表現のリストを配付した

3

グループワークⅠ(60分)

日本語で話す機会を増やし持っている知識

を互いに共有することによって学習者は新し

い単語や表現を知り日本語力への自信を高め

グループでクラスに報告し緊張感や不安感

を減らす

ワークシートを用いてグループで活動をする(添付

資料②③)

トピックはトピック1「私の一ばん大切なもの」ト

ピック2「忘れられない旅行」トピック3「恋愛結婚か

お見合い結婚か」の3つ

グループワークⅠの結果をクラス全員の前で報告する

4 個人作業(10分)

学習者が自分の考えや話を整理する

教師が発表例を示した後学習者は各自トピックに

ついて話すことを考えワークシート①-B(添付資料①)

に書いた

5 グループワークⅡ(30分)

まずグループメンバーの前で発表の練習を

し不安感を減らす

グループメンバーからのフィードバックによ

り発表内容を修正することでクラス全員の前

での発表に自信を高める

学習者は練習後グループ内で発表した

ワークシート④(添付資料④)を使ってグループメ

ンバーからフィードバックをもらった

学習者は自分の発表をふり返り改善した

6 個人発表(30分) 学習者はクラスメート全員の前で発表した

7 コメントのやり取り(10分) 発表を聞き好意的なコメントと建設的なコメントを

日本語発表の改善のポイントがわかる

日本語学習への動機になる

ピンクと黄色の付箋に無記名で書いた(日本語英語)

コメントを発表者に渡した

8 自己評価紙の記入(5分)

学習者が自分の日本語力に変化があったかを

ふり返る

発表の観点に注意できるようになる

学習者は自分の発表を評価の観点を使って自己評価し

9 授業へのフィードバックシート(5分)

授業に対する学習者の気持ちがわかる

授業改善への提案を得る

学習者は自分の発表グループワークについてフィー

ドバックシートの質問に答えた(添付資料⑤を参照)

グループワークⅠグループワークⅠはトピックによって活動の形態に違いはあるが課

題が明確に理解されるように筆者が作成したワークシートを使って与えられたタスクを進

めていく活動であったトピック 1「私の一ばん大切なもの」の活動ではトピックに関連

するビデオを見その内容について話し合うトピック 2「忘れられない旅行」の活動では

出来事の流れが描写できるように1人 1コマの絵を与えて協力してストーリーを完成さ

せる(添付資料②を参照)トピック 3「恋愛結婚かお見合い結婚か」の活動ではトピッ

クについての利点と欠点を意見交換し合うというものであった学習者はグループ内で

やり取りし助け合いながら各トピックのワークシートにあるタスクを行ったその結果

をグループごとにクラス全員の前で報告した

グループワークⅡ学習者はグループワークⅠで確認共有した表現やアイディアを基に

自分の考えを整理しなおしまずグループメンバーの前で自分の発表の練習をしたそし

て自分の発表を振り返った後クラス全員の前で発表した

グループワークⅠⅡの計画時第 2章の先行研究に述べたポイントを踏まえ教師は下

記の点に注意した

(1)学習者の不安感を減らすために注意した点<安心できる雰囲気を作る>

学習者は文法の間違い語彙の乏しさや正確さなどのような細かいことに気を取られ

不安になり話す努力をしなくなる恐れがあったそこで安心して話せる雰囲気が作れる

ように教師は学習者にグループワークでは文法上の間違いや細かいことは気にせずに

日本語を使って話すように指示したまた日本語で自分の考えを表せない時には単語単

位での母語使用も認めた

(2)学習者の自信を高めるために注意した点<グループの組み方>

グループ内のメンバー間の能力差が大きいと能力の低い学習者が話す自信を失う恐れ

があるため学習者の日本語力に注意する必要もあると考えたしかし本コース受講者は

全員N3に合格しており似たような日本語レベルだとわかっていたためトピック1の際は

日本人と接触した経験の有無を基にグループを組むことにしたトピック23は他の学習者

とも仲間意識ができるように異なった相手と組むことにした

(3)グループワークⅠで注意した点<トピックに必要な語彙表現の補足>

学習者は話す時にことばが出てこないつまり語彙や表現が足りずに話せなくなる

ことが事前調査でわかった(第 1章を参照)そこで学習者がトピックについて話すための

手助けとなるようにグループワークⅠの前にはトピックの語彙に関するブレインストー

ミングを行いワークシート上の難しい語彙や表現の翻訳リストを配付しグループワーク

Ⅰの最後の報告の際には教師から語彙表現の確認を行ったこれによって学習者が自

分の頭の中で話す準備ができるように課題や発表に必要な語彙や表現の補足をした

(4)グループワークⅡで注意した点<聞き手への配慮>

学習者が「伝える」「聞く」ことに集中でき自分の考えを上手く「伝えられる」相手の

話を上手く「理解できる」ように発表を聞いた後に聞き手がコメントする活動と話し手

自身による発表のふり返りの活動(添付資料④を参照)を設定した学習者はこのワークシ

ートを利用し自分の話を話し手の立場から説明したり相手の話を聞き手の立場から確認

したりしたこれによって学習者は聞き手のことも意識することになり「話す」ことだけ

ではなく「わかってもらう」ことの大切さにも注目できるようになると考えた

5 調査概要

51 データの種類と収集方法

調査で収集したデータを主データと補足データに分けて述べる 511 主データ

(1)アンケート調査Ⅰ元田(2005 215-218221-222241-242)の調査票(質問紙)は

日本に留学し直説法で学ぶ学習者を対象にしているが本コースではインドで学ぶ

成人学習者を対象にしているため調査対象者の特徴を考慮し項目を選んで作成し

た 2第 1回の授業時学習者の日本語を話すことに対する自信の度合いを知るために

アンケート調査Ⅰ(以下アⅠ)(前)を行った同じ調査をアⅠ(後)として第 8回

の授業時学習者の自信の度合いの変化を見るために行った

(2)アンケート調査Ⅱグループワークの効果について筆者が項目を考えた調査であるア

ンケート調査Ⅱ(以下アⅡ)はグループワークを取り入れた授業に対する学習者の

反応を見るために第 8回の授業で行った

(3)ディスカッションⅠⅡの音声データ第 1回の授業で日本語で話すことに対する学

習者の問題点や不満点期待についてディスカッションⅠ(以下デⅠ)を行った(20

分程度)第 8回の授業で本コースに関する学習者からの意見や感想を聞くためにデ

ィスカッションⅡ(以下デⅡ)を行った(30分程度)

512 補足データ

(1)フィードバックシート学習者がトピック終了時に自分の発表についてふり返り授

業全体やグループワーク活動について記入した(添付資料⑤を参照)

(2)自己評価紙学習者が発表の評価の観点 3を基に自分の発表を評価し記入した

(3)コメント学習者が互いの発表に対して相互評価をし好意的建設的なコメントを

色の異なる付箋に書き発表者に渡した

(4)事前事後発表の教師評価紙教授歴 10年以上の非母語話者教師(以下NNT)3人が

コース終了後学習者の事前事後発表を評価した

(5)教師インタビューの音声データ筆者がコース修了後実践した授業の有効性や問題

点を知るためにプネムンバイ市の教授歴 5年以上の NNT 7人(上記の(4)の教師を

含む)に授業に関する意見や感想提案を聞いた

52 データ分析方法

アE

AⅠと AアE

AⅡの全体の回答傾向を探るために結果の表(表 45)を作成し変化がわかる

ように示した結果全体を見その中で変化があった学習者について個別に詳しく見たAアE

Ⅱには自由記述欄として感想や意見を書くスペースを設けており本稿では< >で示す

またデⅠⅡはやり取りを文字化し分析に必要な部分を日本語に訳したデの発話は

『 』で示す学習者のフィードバックシートや自己評価紙の回答そしてクラスメートか

らのコメントをまとめ主データをサポートするものがあるかどうかを調べた事前事後

発表の教師評価の結果からグループワークの取り入れが学習者の運用力の伸びにつながった

かどうかを調べた

53 クラス全体の結果の傾向と考察

アE

AⅠは学習者の自信や不安の変化を見る調査であるがクラス全体の分析結果(表 4を参照)

を見るとその回答は多様であり全体に共通する傾向は見られなかった不安を測る項目

は9項目(問 12457891112)であり自信に関する項目は4項目(問 3

61013)であったAアE

AⅠの結果では不安感に関する 9項目の内 7項目に不安感の低下が

見られたその中で問48は話す時に間違える心配に関するものであり問 1275

12は自分の日本語能力に関する不安についての項目であったそして自信の度合いに関す

る 4項目の内 3項目(問 3613)には上昇が見られた(531を参照)変化が見られな

かった項目は問 91011の 3項目であったまた自信の度合いに少し低下が見られた項

目もありそれらは学習者によって異なるものであった2名が低下を示した項目は問 68

の日本語の間違いや日本語力に関するものであった問 6891011 については 532

で述べる

AアE

AⅡはグループワークに対する学習者の反応を見る調査である(表 5を参照)回答を大き

く分けると回答 34は「あてはまる」回答 12は「あてはまらない」に分けられる学習

者は全員すべての項目に対して3か 4(あてはまる)という肯定的な回答を選びグループ

ワークを授業に定期的に(regularly)取り入れることに対して肯定的に捉えていることがわ

かった

表 4 学習者の話す不安自信の度合いの結果(授業前と後)(アンケート調査Ⅰ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

番号 質問項目 S1 S2 S3 S4 S5

前 後 前 後 前 後 前 後 前 後

1 授業のときで日本語を話すときたいてい

緊張します 3 3 4E A3E 2 2 4 4 3 3

2 日本語を話すとき笑われないかと心配し

ます A2E A1E 1 1 1 1 A3E A2E A2E A3E

4 他の学生の前で日本語をまちがえたとき

恥ずかしいと思います 3 3 2 2 1 1 A4E A3E A2E A3E

5 私には日本語の会話能力がないのだろう

かと心配になります 2 2 A4E A3E A1E A2E 2 2 A3E A2E

7 授業のとき日本語を使ってディスカッシ

ョンするとき緊張します A3E A2E A3E A2E 2 2 4 4 2 2

8 授業のとき日本語をまちがえないかと心

配します A3E A1E 3 3 1 1 A1E A3E A2E A3E

9 授業のとき日本語を使って発表すると

き緊張します 3 3 4 4 1 1 4 4 3 3

11 日本語の授業のときもっと自分に自信を

もてたらいいのにと思います 4 4 4 4 3 3 3 3 4 4

12 日本語での会話がなかなか上手にならな

くて心配です A3E A1E A4E A1E A1E A2E A3E A2E 2 2

3 私は他の学生と同じぐらい日本語がうま

くできます A3E A4E 3 3 3 3 A1E A2E 3 3

6 自分の日本語にはいい面がたくさんある

と思います A4E A3E A3E A2E 3 3 A2E A3E 2 2

10 私は自分の日本語を前向きに考えていま

す 4 4 4 4 4 4 3 3 4 4

13 みんなの前で自分の経験(例えば来日の経

験日本語学習の経験)について積極的に

話したいと思います

4 4 A4E A3E 4 4 3 3 A2E A3E

問12457891112は不安の度合いを示す項目であり高い数値は不安が高いことを示す問3

61013は自信の度合いを示す項目であり高い数値は自信が高いことを示すの項目は不安の減少自信

の上昇を表し網かけの項目はマイナスイメージからプラスイメージへの変化を表すの項目は自信の低下を

表す

表 5 グループワークに対する学習者の反応(アンケート調査Ⅱ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

質問内容 S1 S2 S3 S4 S5

1授業でペアグループワークを定期的にすれば多くの人の前で話す際に緊張し

ないだろう 4 4 3 4 3

2授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を話す時間違える心配は

しないだろう 4 4 3 3 4

3授業でペアグループワークを定期的にすればスピーチ大会のようなイベント

に参加したくなるだろう 4 4 3 3 4

4授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話したくなる

だろう 4 4 4 3 4

5授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を使って話す動機になる

だろう 4 4 3 3 3

意欲に関する問 4「授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話

したくなるだろう」に対して回答 4を 4名が選択しまた自信の度合いを表す項目問 1「多

くの人の前で話す際に緊張しないだろう」問 2「日本語を話す時間違える心配はしないだ

ろう」問 3「スピーチ大会のようなイベントに参加したくなるだろう」に対しては回答 4

が 3名で3が 2名であったまた問 5「授業でペアグループワークを定期的にすれば

日本語を使って話す動機になるだろう」に対しても回答 4が 2名3が 3名で全員肯定

的な回答であったこのことから話すことに対して前向きになり意欲の高まりが見られた

と考えられるこれは下記のアⅡデⅡの自由記述で発言された学習者の感想からもわか

アE

AⅡS2<このようなグループ活動を取り入れた授業を楽しみにしている>S3<このようなグループ活動を将

来も楽しみにしている>S4<この8日間の授業はとても豊かな経験だった>S5<このような授業はとても楽

しかったのでこれからも参加したい>

AデE

AⅡS2『他の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』S4『前はあまり話せなかったがテレビ

広告などのグループ活動をやっているうちに自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告また「グ

プタさんの話」によって授業がとても面白くなった』

531 学習者の自信の度合いが上昇した項目について

AアE

AⅠの結果については項目ごとの違いが明らかにできなかった部分があるためAデE

AⅠⅡ

の発言を引用し分析を進めるグループワークを取り入れた授業に参加する前に学習者

は自分の日本語の会話力話す時に間違えること間違えた時の周りの人からの反応など

について心配や不安な気持ちになり自信の度合いが低いことが AアE

AⅠ(前)と AデE

AⅠから見

られたAデE

AⅠで学習者は下記のように言っていた

しかしグループワークの際学習者同士が話し合うことによって安心でき緊張感が

減りそして自信を持って日本語で話せるようになったようであるそのことで得られた達

成感や満足感がデⅡで見られたその例と理由を 3つにまとめる

(1)安心感の醸成授業でグループワークを行うことで学習者の気持ちが落ち着き安心

感が得られた要因は下記のように考えられる

①共通の問題点や不安の共有デⅡでの下記の発言から学習者はグループワークを通して

互いに交流し日本語を話すことに関する共通の問題点や不安感を共有したことがわかる

S1『相手が同じレベルなので自分が言いたいことを気楽に表すことができた』S2『日本語が上手じゃないと

か緊張するのは自分1人だけじゃなくみんな同じ気持ちだそれが大事だった』『みんなレベルが同じなの

で相手と話す時に後で(日本語のことで)笑われるかもしれないなどの感じがしなかった』S3『活動をや

っているうちにお互いに慣れて緊張感が減った』

上記から他の学習者も日本語を話すことに対する問題を抱えていることや話す時に間

違えたり緊張したりするのは自分 1人ではなく他の学習者も同じだということを実感

し学習者は安心感を得ることができたと思われる

②教師の指示グループワークを始める前に文法や語彙の間違いの心配を気にせずに話す

単語単位なら母語を使ってもいいという教師からの指示があったため学習者が安心でき

緊張せずに日本語で話せたと考えられる

S2『間違いを指摘されなかったので話す時緊張しなかった』『母語使用が許されたことによってお互い楽な気持

ちになれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』S4『文法をあまり気にしないでまず話したい

ことを思いきって話す文法の間違いを直すのは後でもできる』S5『間違いに注意しなくてもよかったので

もっと自信を持って話せた』

S1『言いたいことがはっきり説明できない』S2『文法の知識はあるが適切に使えない』『日本語でたくさん話

したいけれどできない』『文型をたくさん知っていても話す時思い出せない』『読むことができる書くことが

できるでも会話はちょっと苦手』『話す時いいことばが見つからない』S3『話す練習が足りない』S4『教

科書の文法の勉強より運用できるようになる学習方法が必要』

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

Brown(2001 177)はグループワークをldquoit is a generic term covering a multiplicity

of techniques in which two or more students are assigned a task that involves

collaboration and self-initiated languagerdquo(以下筆者訳グループワークという用語は

「2 人以上の学生による協同作業と自発的な言語使用」を必要とするタスクを達成するため

に用いるテクニックの総称である)と定義している本研究ではグループワークを学習者

同士で行う協同作業とする

また英語教育の文脈で Long amp Porter(1985)は教育的観点から語学の教室において

グループワークを用いる 5つの利点をあげているそれは(1)言語の練習機会を増やす

(2)学生の対話の質を改善する(3)個別指導を促進する(4)活動的で情緒的に安心で

きる雰囲気を作り出す(5)学習者の動機を高めるという 5点である(訳は小柳 2004よ

り)上記の利点は全て重要であるが本研究では段階的に取り入れることを検討し自

国の教育場面で実施しやすいと思われる点を重視しLong amp Porterが述べた利点の中の「日

本語の練習機会を増やす」「活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す」「学習者の動

機を高める」という 3つの利点を取り入れたグループワークを行いそれが学習者の日本語

で話すことに対する不安感を軽減し自信の度合いを高めることにつながるかを確認したい

と考える

3 研究課題

研究背景で述べたようにインドの民間学校の学習者は授業で話す練習がないこと話

す時文法を間違える心配恥ずかしさなどさまざまな要因で話す自信が持てず話そうと

しない可能性がある授業の中にグループワークを取り入れることで学習者が「話したい」

という気持ちを持てれば多少間違いがあったとしても話し始めるかもしれないそして

言いたいことを相手に理解してもらうことができればその満足感が自信の高まりにつなが

り同時に不安感を減らすことができるかもしれないと仮説を立て本研究ではグルー

プワークにおける自信に着目し次の研究課題を設定した

課題 1 授業にグループワークを取り入れることによってどのように学習者の不安感が減

り自信の度合いが高まるか

課題 2 インドの民間学校のカリキュラムにグループワークを取り入れるためにどのような

留意点が考えられるか

4 コースの概要

41 コースの目標と内容

2014年 4月帰国実習の機会を利用してインドのムンバイ市にある民間学校で 1コース

全 8回の授業をデザインした本コースでは従来の授業にはなかったグループワークを取

り入れることによって学習者が自信を持って日本語でやり取りや発表ができるようになる

ことを目標とした本コース期間中に学習者の日本語を話すことに関する問題点や不安の

度合いの変化を知るためにアンケート調査とディスカッションを行ったその他に学習者

からのフィードバックシート自己評価紙の記入学習者の事前事後発表の教師評価ム

ンバイプネ市の日本語教師へのインタビュー調査を行ったなお筆者は教師として 8回

すべての授業を担当した

42 授業の設計

421 対象者

民間学校で学習している 27~45歳の学習者(全員女性)5名を調査の対象者とした対象

者の使用言語はヒンディー語英語であり全員 JLPT N3に合格しているJF日本語教育ス

タンダードの観点から評価すると「話す聞く書く」技能は A2 レベル「読む」技能は

B1レベル程度である

5名の対象者のプロフィールは次の通りであるS1は民間学校と企業で日本語の非常勤

教師をしている企業にいる他の日本語母語話者の教師(以下NT)や日本語教師会に出席

する NTまたは専門の日本語教師の訪問の際に日本人と接触する機会が時々あるS2

は専業主婦であり日本人と接したことは一度もないS3も専業主婦であるが3年半日

本に滞在したことがありその間日常生活で日本人と接触した経験が豊かであるS4はフリ

ーランサーの翻訳者かつ日本語の非常勤教師をしているS4も日本人と接する機会が一度も

ないS5は現在専業主婦であるが大学で日本語を学習中にNTに教えられたり日本人留

学生を自宅にホームステイさせたりしたことで日本人との接触経験がある

表 1 学習者のプロフィール

S1 S2 S3 S4 S5

年代 30代 40代 30代 20代 30代

仕事の有無 times times times

日本人との接触経験 times times

日本滞在歴 times times times times

422 学習目標とレベル設定

「みんなの Can-doサイト」を利用しCEFRの Can-do Statementを参考に対象者のレベ

ルや目標を設定した研究背景で述べたように学習者は自分の考え気持ち経験等を自

由に述べる練習をしたことがほとんどないことからCEFRの産出「経験や物語を語る」カテ

ゴリーの Can-doの内「自分の感情や反応を記述しながら経験を詳細に述べることができ

る」という Can-do 項目に注目し目標とした選んだカテゴリーでA22 レベルに当ては

まる行動は「要点を短く述べることができる」「事柄を例挙して簡単に述べることができる」

「好きか嫌いかを述べることができる」でありB12 は「集めた事実情報をもとに総括し

報告できるある程度自信を持って自分の意見を提示できる」であった筆者の教授経験か

ら自国の学習者の学習レベルを考えるとA22レベルはJLPT N2の学習をしている対象者

には易しすぎB12レベルは会話の練習経験があまりない対象者にとって少し難しいと考

えたそこでその間である B11の「事実を述べ理由を説明することができる」「自分の

感情や反応を描写することができる」「自分の考えを述べることができる」という Can-do項

目を選び学習目標を決めた

423 授業の概要

授業は全部で8回あり1回90分であった第1回の授業でオリエンテーションを行った

第 2~7回授業で学習者の経験上身近で簡単に話せると考えられるトピックを 3つ設定し

1トピックに 2種類のグループワークを取り入れた授業を行った第 8回はまとめの授業で

あった(コース全体の内容は表 2を参照)

次に授業に取り入れたグループワークについて述べるグループワークでは学習者同

士が交流できる機会を作ったり安心した雰囲気を作ることや話す練習の機会を増やした

そしてグループワークの活動中学習者は自由に話し合う時間が持てそれによって仲

間意識を持ち安心感を得られると同時に日本語で話す不安が減り話す自信も高まると考え

たまた教師のコントロールのもと2名または 3名に分けて 2グループにしグループ

メンバーの前で発表を練習することで仲間意識も持てクラス全員の前での発表がしやす

くなると想定したまた学習者のグループワークへの反応を見るためにさまざまな形態

のグループワークを授業に取り入れた(グループワークを取り入れた授業の内容は表 3を参

照)

表 2 コース全体の内容

活動の内容

オリエンテーション

第1回

教師(筆者)の自己紹介研究目的について説明(ヒンディー語)

学習者の自己紹介日本語で話す上の問題点不満感想などについてディスカッ

ションⅠ(ヒンディー語英語日本語)

15分の準備後学習者による2分程度の事前発表

(テーマ「日本語の勉強を始めたきっかけ」)

教師から発表のし方評価の観点について説明(日本語英語)

学習者による日本語を話す能力についてのアンケート調査Ⅰ(前)の記入

教師から第2~7回の授業の流れフィードバックシート自己評価紙の説明

グループ

ワークを

取り入れ

た授業

第2回 トピック1「私の一ばん大切なもの」

第3回

第4回 トピック2「忘れられない旅行」

第5回

第6回 トピック3「恋愛結婚かお見合い結婚か」

第7回

まとめ 第8回

15分の準備後学習者による2分程度の事後発表(テーマ「日本語と将来の夢」)

学習者によるアンケート調査Ⅰ(後)アンケート調査Ⅱの記入

教師から授業のまとめ学習者の感想意見や提案などについてのディスカッショ

ンⅡ(ヒンディー語英語日本語)

表 3 グループワークを取り入れた授業の内容(第 2~7回)

順 第2~7回の授業の活動とその目的 内容

1 導入(5分)

背景知識の活性化

教師が会話でトピックを導入した

2

ブレインストーミング(10分)

トピックに必要な語彙や表現を確認し自信

を高める

学習者がワークシート①でトピックに関連する表現や

キーワードを整理した(添付資料①ワークシート①-A)

教師から語彙表現のリストを配付した

3

グループワークⅠ(60分)

日本語で話す機会を増やし持っている知識

を互いに共有することによって学習者は新し

い単語や表現を知り日本語力への自信を高め

グループでクラスに報告し緊張感や不安感

を減らす

ワークシートを用いてグループで活動をする(添付

資料②③)

トピックはトピック1「私の一ばん大切なもの」ト

ピック2「忘れられない旅行」トピック3「恋愛結婚か

お見合い結婚か」の3つ

グループワークⅠの結果をクラス全員の前で報告する

4 個人作業(10分)

学習者が自分の考えや話を整理する

教師が発表例を示した後学習者は各自トピックに

ついて話すことを考えワークシート①-B(添付資料①)

に書いた

5 グループワークⅡ(30分)

まずグループメンバーの前で発表の練習を

し不安感を減らす

グループメンバーからのフィードバックによ

り発表内容を修正することでクラス全員の前

での発表に自信を高める

学習者は練習後グループ内で発表した

ワークシート④(添付資料④)を使ってグループメ

ンバーからフィードバックをもらった

学習者は自分の発表をふり返り改善した

6 個人発表(30分) 学習者はクラスメート全員の前で発表した

7 コメントのやり取り(10分) 発表を聞き好意的なコメントと建設的なコメントを

日本語発表の改善のポイントがわかる

日本語学習への動機になる

ピンクと黄色の付箋に無記名で書いた(日本語英語)

コメントを発表者に渡した

8 自己評価紙の記入(5分)

学習者が自分の日本語力に変化があったかを

ふり返る

発表の観点に注意できるようになる

学習者は自分の発表を評価の観点を使って自己評価し

9 授業へのフィードバックシート(5分)

授業に対する学習者の気持ちがわかる

授業改善への提案を得る

学習者は自分の発表グループワークについてフィー

ドバックシートの質問に答えた(添付資料⑤を参照)

グループワークⅠグループワークⅠはトピックによって活動の形態に違いはあるが課

題が明確に理解されるように筆者が作成したワークシートを使って与えられたタスクを進

めていく活動であったトピック 1「私の一ばん大切なもの」の活動ではトピックに関連

するビデオを見その内容について話し合うトピック 2「忘れられない旅行」の活動では

出来事の流れが描写できるように1人 1コマの絵を与えて協力してストーリーを完成さ

せる(添付資料②を参照)トピック 3「恋愛結婚かお見合い結婚か」の活動ではトピッ

クについての利点と欠点を意見交換し合うというものであった学習者はグループ内で

やり取りし助け合いながら各トピックのワークシートにあるタスクを行ったその結果

をグループごとにクラス全員の前で報告した

グループワークⅡ学習者はグループワークⅠで確認共有した表現やアイディアを基に

自分の考えを整理しなおしまずグループメンバーの前で自分の発表の練習をしたそし

て自分の発表を振り返った後クラス全員の前で発表した

グループワークⅠⅡの計画時第 2章の先行研究に述べたポイントを踏まえ教師は下

記の点に注意した

(1)学習者の不安感を減らすために注意した点<安心できる雰囲気を作る>

学習者は文法の間違い語彙の乏しさや正確さなどのような細かいことに気を取られ

不安になり話す努力をしなくなる恐れがあったそこで安心して話せる雰囲気が作れる

ように教師は学習者にグループワークでは文法上の間違いや細かいことは気にせずに

日本語を使って話すように指示したまた日本語で自分の考えを表せない時には単語単

位での母語使用も認めた

(2)学習者の自信を高めるために注意した点<グループの組み方>

グループ内のメンバー間の能力差が大きいと能力の低い学習者が話す自信を失う恐れ

があるため学習者の日本語力に注意する必要もあると考えたしかし本コース受講者は

全員N3に合格しており似たような日本語レベルだとわかっていたためトピック1の際は

日本人と接触した経験の有無を基にグループを組むことにしたトピック23は他の学習者

とも仲間意識ができるように異なった相手と組むことにした

(3)グループワークⅠで注意した点<トピックに必要な語彙表現の補足>

学習者は話す時にことばが出てこないつまり語彙や表現が足りずに話せなくなる

ことが事前調査でわかった(第 1章を参照)そこで学習者がトピックについて話すための

手助けとなるようにグループワークⅠの前にはトピックの語彙に関するブレインストー

ミングを行いワークシート上の難しい語彙や表現の翻訳リストを配付しグループワーク

Ⅰの最後の報告の際には教師から語彙表現の確認を行ったこれによって学習者が自

分の頭の中で話す準備ができるように課題や発表に必要な語彙や表現の補足をした

(4)グループワークⅡで注意した点<聞き手への配慮>

学習者が「伝える」「聞く」ことに集中でき自分の考えを上手く「伝えられる」相手の

話を上手く「理解できる」ように発表を聞いた後に聞き手がコメントする活動と話し手

自身による発表のふり返りの活動(添付資料④を参照)を設定した学習者はこのワークシ

ートを利用し自分の話を話し手の立場から説明したり相手の話を聞き手の立場から確認

したりしたこれによって学習者は聞き手のことも意識することになり「話す」ことだけ

ではなく「わかってもらう」ことの大切さにも注目できるようになると考えた

5 調査概要

51 データの種類と収集方法

調査で収集したデータを主データと補足データに分けて述べる 511 主データ

(1)アンケート調査Ⅰ元田(2005 215-218221-222241-242)の調査票(質問紙)は

日本に留学し直説法で学ぶ学習者を対象にしているが本コースではインドで学ぶ

成人学習者を対象にしているため調査対象者の特徴を考慮し項目を選んで作成し

た 2第 1回の授業時学習者の日本語を話すことに対する自信の度合いを知るために

アンケート調査Ⅰ(以下アⅠ)(前)を行った同じ調査をアⅠ(後)として第 8回

の授業時学習者の自信の度合いの変化を見るために行った

(2)アンケート調査Ⅱグループワークの効果について筆者が項目を考えた調査であるア

ンケート調査Ⅱ(以下アⅡ)はグループワークを取り入れた授業に対する学習者の

反応を見るために第 8回の授業で行った

(3)ディスカッションⅠⅡの音声データ第 1回の授業で日本語で話すことに対する学

習者の問題点や不満点期待についてディスカッションⅠ(以下デⅠ)を行った(20

分程度)第 8回の授業で本コースに関する学習者からの意見や感想を聞くためにデ

ィスカッションⅡ(以下デⅡ)を行った(30分程度)

512 補足データ

(1)フィードバックシート学習者がトピック終了時に自分の発表についてふり返り授

業全体やグループワーク活動について記入した(添付資料⑤を参照)

(2)自己評価紙学習者が発表の評価の観点 3を基に自分の発表を評価し記入した

(3)コメント学習者が互いの発表に対して相互評価をし好意的建設的なコメントを

色の異なる付箋に書き発表者に渡した

(4)事前事後発表の教師評価紙教授歴 10年以上の非母語話者教師(以下NNT)3人が

コース終了後学習者の事前事後発表を評価した

(5)教師インタビューの音声データ筆者がコース修了後実践した授業の有効性や問題

点を知るためにプネムンバイ市の教授歴 5年以上の NNT 7人(上記の(4)の教師を

含む)に授業に関する意見や感想提案を聞いた

52 データ分析方法

アE

AⅠと AアE

AⅡの全体の回答傾向を探るために結果の表(表 45)を作成し変化がわかる

ように示した結果全体を見その中で変化があった学習者について個別に詳しく見たAアE

Ⅱには自由記述欄として感想や意見を書くスペースを設けており本稿では< >で示す

またデⅠⅡはやり取りを文字化し分析に必要な部分を日本語に訳したデの発話は

『 』で示す学習者のフィードバックシートや自己評価紙の回答そしてクラスメートか

らのコメントをまとめ主データをサポートするものがあるかどうかを調べた事前事後

発表の教師評価の結果からグループワークの取り入れが学習者の運用力の伸びにつながった

かどうかを調べた

53 クラス全体の結果の傾向と考察

アE

AⅠは学習者の自信や不安の変化を見る調査であるがクラス全体の分析結果(表 4を参照)

を見るとその回答は多様であり全体に共通する傾向は見られなかった不安を測る項目

は9項目(問 12457891112)であり自信に関する項目は4項目(問 3

61013)であったAアE

AⅠの結果では不安感に関する 9項目の内 7項目に不安感の低下が

見られたその中で問48は話す時に間違える心配に関するものであり問 1275

12は自分の日本語能力に関する不安についての項目であったそして自信の度合いに関す

る 4項目の内 3項目(問 3613)には上昇が見られた(531を参照)変化が見られな

かった項目は問 91011の 3項目であったまた自信の度合いに少し低下が見られた項

目もありそれらは学習者によって異なるものであった2名が低下を示した項目は問 68

の日本語の間違いや日本語力に関するものであった問 6891011 については 532

で述べる

AアE

AⅡはグループワークに対する学習者の反応を見る調査である(表 5を参照)回答を大き

く分けると回答 34は「あてはまる」回答 12は「あてはまらない」に分けられる学習

者は全員すべての項目に対して3か 4(あてはまる)という肯定的な回答を選びグループ

ワークを授業に定期的に(regularly)取り入れることに対して肯定的に捉えていることがわ

かった

表 4 学習者の話す不安自信の度合いの結果(授業前と後)(アンケート調査Ⅰ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

番号 質問項目 S1 S2 S3 S4 S5

前 後 前 後 前 後 前 後 前 後

1 授業のときで日本語を話すときたいてい

緊張します 3 3 4E A3E 2 2 4 4 3 3

2 日本語を話すとき笑われないかと心配し

ます A2E A1E 1 1 1 1 A3E A2E A2E A3E

4 他の学生の前で日本語をまちがえたとき

恥ずかしいと思います 3 3 2 2 1 1 A4E A3E A2E A3E

5 私には日本語の会話能力がないのだろう

かと心配になります 2 2 A4E A3E A1E A2E 2 2 A3E A2E

7 授業のとき日本語を使ってディスカッシ

ョンするとき緊張します A3E A2E A3E A2E 2 2 4 4 2 2

8 授業のとき日本語をまちがえないかと心

配します A3E A1E 3 3 1 1 A1E A3E A2E A3E

9 授業のとき日本語を使って発表すると

き緊張します 3 3 4 4 1 1 4 4 3 3

11 日本語の授業のときもっと自分に自信を

もてたらいいのにと思います 4 4 4 4 3 3 3 3 4 4

12 日本語での会話がなかなか上手にならな

くて心配です A3E A1E A4E A1E A1E A2E A3E A2E 2 2

3 私は他の学生と同じぐらい日本語がうま

くできます A3E A4E 3 3 3 3 A1E A2E 3 3

6 自分の日本語にはいい面がたくさんある

と思います A4E A3E A3E A2E 3 3 A2E A3E 2 2

10 私は自分の日本語を前向きに考えていま

す 4 4 4 4 4 4 3 3 4 4

13 みんなの前で自分の経験(例えば来日の経

験日本語学習の経験)について積極的に

話したいと思います

4 4 A4E A3E 4 4 3 3 A2E A3E

問12457891112は不安の度合いを示す項目であり高い数値は不安が高いことを示す問3

61013は自信の度合いを示す項目であり高い数値は自信が高いことを示すの項目は不安の減少自信

の上昇を表し網かけの項目はマイナスイメージからプラスイメージへの変化を表すの項目は自信の低下を

表す

表 5 グループワークに対する学習者の反応(アンケート調査Ⅱ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

質問内容 S1 S2 S3 S4 S5

1授業でペアグループワークを定期的にすれば多くの人の前で話す際に緊張し

ないだろう 4 4 3 4 3

2授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を話す時間違える心配は

しないだろう 4 4 3 3 4

3授業でペアグループワークを定期的にすればスピーチ大会のようなイベント

に参加したくなるだろう 4 4 3 3 4

4授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話したくなる

だろう 4 4 4 3 4

5授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を使って話す動機になる

だろう 4 4 3 3 3

意欲に関する問 4「授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話

したくなるだろう」に対して回答 4を 4名が選択しまた自信の度合いを表す項目問 1「多

くの人の前で話す際に緊張しないだろう」問 2「日本語を話す時間違える心配はしないだ

ろう」問 3「スピーチ大会のようなイベントに参加したくなるだろう」に対しては回答 4

が 3名で3が 2名であったまた問 5「授業でペアグループワークを定期的にすれば

日本語を使って話す動機になるだろう」に対しても回答 4が 2名3が 3名で全員肯定

的な回答であったこのことから話すことに対して前向きになり意欲の高まりが見られた

と考えられるこれは下記のアⅡデⅡの自由記述で発言された学習者の感想からもわか

アE

AⅡS2<このようなグループ活動を取り入れた授業を楽しみにしている>S3<このようなグループ活動を将

来も楽しみにしている>S4<この8日間の授業はとても豊かな経験だった>S5<このような授業はとても楽

しかったのでこれからも参加したい>

AデE

AⅡS2『他の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』S4『前はあまり話せなかったがテレビ

広告などのグループ活動をやっているうちに自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告また「グ

プタさんの話」によって授業がとても面白くなった』

531 学習者の自信の度合いが上昇した項目について

AアE

AⅠの結果については項目ごとの違いが明らかにできなかった部分があるためAデE

AⅠⅡ

の発言を引用し分析を進めるグループワークを取り入れた授業に参加する前に学習者

は自分の日本語の会話力話す時に間違えること間違えた時の周りの人からの反応など

について心配や不安な気持ちになり自信の度合いが低いことが AアE

AⅠ(前)と AデE

AⅠから見

られたAデE

AⅠで学習者は下記のように言っていた

しかしグループワークの際学習者同士が話し合うことによって安心でき緊張感が

減りそして自信を持って日本語で話せるようになったようであるそのことで得られた達

成感や満足感がデⅡで見られたその例と理由を 3つにまとめる

(1)安心感の醸成授業でグループワークを行うことで学習者の気持ちが落ち着き安心

感が得られた要因は下記のように考えられる

①共通の問題点や不安の共有デⅡでの下記の発言から学習者はグループワークを通して

互いに交流し日本語を話すことに関する共通の問題点や不安感を共有したことがわかる

S1『相手が同じレベルなので自分が言いたいことを気楽に表すことができた』S2『日本語が上手じゃないと

か緊張するのは自分1人だけじゃなくみんな同じ気持ちだそれが大事だった』『みんなレベルが同じなの

で相手と話す時に後で(日本語のことで)笑われるかもしれないなどの感じがしなかった』S3『活動をや

っているうちにお互いに慣れて緊張感が減った』

上記から他の学習者も日本語を話すことに対する問題を抱えていることや話す時に間

違えたり緊張したりするのは自分 1人ではなく他の学習者も同じだということを実感

し学習者は安心感を得ることができたと思われる

②教師の指示グループワークを始める前に文法や語彙の間違いの心配を気にせずに話す

単語単位なら母語を使ってもいいという教師からの指示があったため学習者が安心でき

緊張せずに日本語で話せたと考えられる

S2『間違いを指摘されなかったので話す時緊張しなかった』『母語使用が許されたことによってお互い楽な気持

ちになれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』S4『文法をあまり気にしないでまず話したい

ことを思いきって話す文法の間違いを直すのは後でもできる』S5『間違いに注意しなくてもよかったので

もっと自信を持って話せた』

S1『言いたいことがはっきり説明できない』S2『文法の知識はあるが適切に使えない』『日本語でたくさん話

したいけれどできない』『文型をたくさん知っていても話す時思い出せない』『読むことができる書くことが

できるでも会話はちょっと苦手』『話す時いいことばが見つからない』S3『話す練習が足りない』S4『教

科書の文法の勉強より運用できるようになる学習方法が必要』

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

り入れることによって学習者が自信を持って日本語でやり取りや発表ができるようになる

ことを目標とした本コース期間中に学習者の日本語を話すことに関する問題点や不安の

度合いの変化を知るためにアンケート調査とディスカッションを行ったその他に学習者

からのフィードバックシート自己評価紙の記入学習者の事前事後発表の教師評価ム

ンバイプネ市の日本語教師へのインタビュー調査を行ったなお筆者は教師として 8回

すべての授業を担当した

42 授業の設計

421 対象者

民間学校で学習している 27~45歳の学習者(全員女性)5名を調査の対象者とした対象

者の使用言語はヒンディー語英語であり全員 JLPT N3に合格しているJF日本語教育ス

タンダードの観点から評価すると「話す聞く書く」技能は A2 レベル「読む」技能は

B1レベル程度である

5名の対象者のプロフィールは次の通りであるS1は民間学校と企業で日本語の非常勤

教師をしている企業にいる他の日本語母語話者の教師(以下NT)や日本語教師会に出席

する NTまたは専門の日本語教師の訪問の際に日本人と接触する機会が時々あるS2

は専業主婦であり日本人と接したことは一度もないS3も専業主婦であるが3年半日

本に滞在したことがありその間日常生活で日本人と接触した経験が豊かであるS4はフリ

ーランサーの翻訳者かつ日本語の非常勤教師をしているS4も日本人と接する機会が一度も

ないS5は現在専業主婦であるが大学で日本語を学習中にNTに教えられたり日本人留

学生を自宅にホームステイさせたりしたことで日本人との接触経験がある

表 1 学習者のプロフィール

S1 S2 S3 S4 S5

年代 30代 40代 30代 20代 30代

仕事の有無 times times times

日本人との接触経験 times times

日本滞在歴 times times times times

422 学習目標とレベル設定

「みんなの Can-doサイト」を利用しCEFRの Can-do Statementを参考に対象者のレベ

ルや目標を設定した研究背景で述べたように学習者は自分の考え気持ち経験等を自

由に述べる練習をしたことがほとんどないことからCEFRの産出「経験や物語を語る」カテ

ゴリーの Can-doの内「自分の感情や反応を記述しながら経験を詳細に述べることができ

る」という Can-do 項目に注目し目標とした選んだカテゴリーでA22 レベルに当ては

まる行動は「要点を短く述べることができる」「事柄を例挙して簡単に述べることができる」

「好きか嫌いかを述べることができる」でありB12 は「集めた事実情報をもとに総括し

報告できるある程度自信を持って自分の意見を提示できる」であった筆者の教授経験か

ら自国の学習者の学習レベルを考えるとA22レベルはJLPT N2の学習をしている対象者

には易しすぎB12レベルは会話の練習経験があまりない対象者にとって少し難しいと考

えたそこでその間である B11の「事実を述べ理由を説明することができる」「自分の

感情や反応を描写することができる」「自分の考えを述べることができる」という Can-do項

目を選び学習目標を決めた

423 授業の概要

授業は全部で8回あり1回90分であった第1回の授業でオリエンテーションを行った

第 2~7回授業で学習者の経験上身近で簡単に話せると考えられるトピックを 3つ設定し

1トピックに 2種類のグループワークを取り入れた授業を行った第 8回はまとめの授業で

あった(コース全体の内容は表 2を参照)

次に授業に取り入れたグループワークについて述べるグループワークでは学習者同

士が交流できる機会を作ったり安心した雰囲気を作ることや話す練習の機会を増やした

そしてグループワークの活動中学習者は自由に話し合う時間が持てそれによって仲

間意識を持ち安心感を得られると同時に日本語で話す不安が減り話す自信も高まると考え

たまた教師のコントロールのもと2名または 3名に分けて 2グループにしグループ

メンバーの前で発表を練習することで仲間意識も持てクラス全員の前での発表がしやす

くなると想定したまた学習者のグループワークへの反応を見るためにさまざまな形態

のグループワークを授業に取り入れた(グループワークを取り入れた授業の内容は表 3を参

照)

表 2 コース全体の内容

活動の内容

オリエンテーション

第1回

教師(筆者)の自己紹介研究目的について説明(ヒンディー語)

学習者の自己紹介日本語で話す上の問題点不満感想などについてディスカッ

ションⅠ(ヒンディー語英語日本語)

15分の準備後学習者による2分程度の事前発表

(テーマ「日本語の勉強を始めたきっかけ」)

教師から発表のし方評価の観点について説明(日本語英語)

学習者による日本語を話す能力についてのアンケート調査Ⅰ(前)の記入

教師から第2~7回の授業の流れフィードバックシート自己評価紙の説明

グループ

ワークを

取り入れ

た授業

第2回 トピック1「私の一ばん大切なもの」

第3回

第4回 トピック2「忘れられない旅行」

第5回

第6回 トピック3「恋愛結婚かお見合い結婚か」

第7回

まとめ 第8回

15分の準備後学習者による2分程度の事後発表(テーマ「日本語と将来の夢」)

学習者によるアンケート調査Ⅰ(後)アンケート調査Ⅱの記入

教師から授業のまとめ学習者の感想意見や提案などについてのディスカッショ

ンⅡ(ヒンディー語英語日本語)

表 3 グループワークを取り入れた授業の内容(第 2~7回)

順 第2~7回の授業の活動とその目的 内容

1 導入(5分)

背景知識の活性化

教師が会話でトピックを導入した

2

ブレインストーミング(10分)

トピックに必要な語彙や表現を確認し自信

を高める

学習者がワークシート①でトピックに関連する表現や

キーワードを整理した(添付資料①ワークシート①-A)

教師から語彙表現のリストを配付した

3

グループワークⅠ(60分)

日本語で話す機会を増やし持っている知識

を互いに共有することによって学習者は新し

い単語や表現を知り日本語力への自信を高め

グループでクラスに報告し緊張感や不安感

を減らす

ワークシートを用いてグループで活動をする(添付

資料②③)

トピックはトピック1「私の一ばん大切なもの」ト

ピック2「忘れられない旅行」トピック3「恋愛結婚か

お見合い結婚か」の3つ

グループワークⅠの結果をクラス全員の前で報告する

4 個人作業(10分)

学習者が自分の考えや話を整理する

教師が発表例を示した後学習者は各自トピックに

ついて話すことを考えワークシート①-B(添付資料①)

に書いた

5 グループワークⅡ(30分)

まずグループメンバーの前で発表の練習を

し不安感を減らす

グループメンバーからのフィードバックによ

り発表内容を修正することでクラス全員の前

での発表に自信を高める

学習者は練習後グループ内で発表した

ワークシート④(添付資料④)を使ってグループメ

ンバーからフィードバックをもらった

学習者は自分の発表をふり返り改善した

6 個人発表(30分) 学習者はクラスメート全員の前で発表した

7 コメントのやり取り(10分) 発表を聞き好意的なコメントと建設的なコメントを

日本語発表の改善のポイントがわかる

日本語学習への動機になる

ピンクと黄色の付箋に無記名で書いた(日本語英語)

コメントを発表者に渡した

8 自己評価紙の記入(5分)

学習者が自分の日本語力に変化があったかを

ふり返る

発表の観点に注意できるようになる

学習者は自分の発表を評価の観点を使って自己評価し

9 授業へのフィードバックシート(5分)

授業に対する学習者の気持ちがわかる

授業改善への提案を得る

学習者は自分の発表グループワークについてフィー

ドバックシートの質問に答えた(添付資料⑤を参照)

グループワークⅠグループワークⅠはトピックによって活動の形態に違いはあるが課

題が明確に理解されるように筆者が作成したワークシートを使って与えられたタスクを進

めていく活動であったトピック 1「私の一ばん大切なもの」の活動ではトピックに関連

するビデオを見その内容について話し合うトピック 2「忘れられない旅行」の活動では

出来事の流れが描写できるように1人 1コマの絵を与えて協力してストーリーを完成さ

せる(添付資料②を参照)トピック 3「恋愛結婚かお見合い結婚か」の活動ではトピッ

クについての利点と欠点を意見交換し合うというものであった学習者はグループ内で

やり取りし助け合いながら各トピックのワークシートにあるタスクを行ったその結果

をグループごとにクラス全員の前で報告した

グループワークⅡ学習者はグループワークⅠで確認共有した表現やアイディアを基に

自分の考えを整理しなおしまずグループメンバーの前で自分の発表の練習をしたそし

て自分の発表を振り返った後クラス全員の前で発表した

グループワークⅠⅡの計画時第 2章の先行研究に述べたポイントを踏まえ教師は下

記の点に注意した

(1)学習者の不安感を減らすために注意した点<安心できる雰囲気を作る>

学習者は文法の間違い語彙の乏しさや正確さなどのような細かいことに気を取られ

不安になり話す努力をしなくなる恐れがあったそこで安心して話せる雰囲気が作れる

ように教師は学習者にグループワークでは文法上の間違いや細かいことは気にせずに

日本語を使って話すように指示したまた日本語で自分の考えを表せない時には単語単

位での母語使用も認めた

(2)学習者の自信を高めるために注意した点<グループの組み方>

グループ内のメンバー間の能力差が大きいと能力の低い学習者が話す自信を失う恐れ

があるため学習者の日本語力に注意する必要もあると考えたしかし本コース受講者は

全員N3に合格しており似たような日本語レベルだとわかっていたためトピック1の際は

日本人と接触した経験の有無を基にグループを組むことにしたトピック23は他の学習者

とも仲間意識ができるように異なった相手と組むことにした

(3)グループワークⅠで注意した点<トピックに必要な語彙表現の補足>

学習者は話す時にことばが出てこないつまり語彙や表現が足りずに話せなくなる

ことが事前調査でわかった(第 1章を参照)そこで学習者がトピックについて話すための

手助けとなるようにグループワークⅠの前にはトピックの語彙に関するブレインストー

ミングを行いワークシート上の難しい語彙や表現の翻訳リストを配付しグループワーク

Ⅰの最後の報告の際には教師から語彙表現の確認を行ったこれによって学習者が自

分の頭の中で話す準備ができるように課題や発表に必要な語彙や表現の補足をした

(4)グループワークⅡで注意した点<聞き手への配慮>

学習者が「伝える」「聞く」ことに集中でき自分の考えを上手く「伝えられる」相手の

話を上手く「理解できる」ように発表を聞いた後に聞き手がコメントする活動と話し手

自身による発表のふり返りの活動(添付資料④を参照)を設定した学習者はこのワークシ

ートを利用し自分の話を話し手の立場から説明したり相手の話を聞き手の立場から確認

したりしたこれによって学習者は聞き手のことも意識することになり「話す」ことだけ

ではなく「わかってもらう」ことの大切さにも注目できるようになると考えた

5 調査概要

51 データの種類と収集方法

調査で収集したデータを主データと補足データに分けて述べる 511 主データ

(1)アンケート調査Ⅰ元田(2005 215-218221-222241-242)の調査票(質問紙)は

日本に留学し直説法で学ぶ学習者を対象にしているが本コースではインドで学ぶ

成人学習者を対象にしているため調査対象者の特徴を考慮し項目を選んで作成し

た 2第 1回の授業時学習者の日本語を話すことに対する自信の度合いを知るために

アンケート調査Ⅰ(以下アⅠ)(前)を行った同じ調査をアⅠ(後)として第 8回

の授業時学習者の自信の度合いの変化を見るために行った

(2)アンケート調査Ⅱグループワークの効果について筆者が項目を考えた調査であるア

ンケート調査Ⅱ(以下アⅡ)はグループワークを取り入れた授業に対する学習者の

反応を見るために第 8回の授業で行った

(3)ディスカッションⅠⅡの音声データ第 1回の授業で日本語で話すことに対する学

習者の問題点や不満点期待についてディスカッションⅠ(以下デⅠ)を行った(20

分程度)第 8回の授業で本コースに関する学習者からの意見や感想を聞くためにデ

ィスカッションⅡ(以下デⅡ)を行った(30分程度)

512 補足データ

(1)フィードバックシート学習者がトピック終了時に自分の発表についてふり返り授

業全体やグループワーク活動について記入した(添付資料⑤を参照)

(2)自己評価紙学習者が発表の評価の観点 3を基に自分の発表を評価し記入した

(3)コメント学習者が互いの発表に対して相互評価をし好意的建設的なコメントを

色の異なる付箋に書き発表者に渡した

(4)事前事後発表の教師評価紙教授歴 10年以上の非母語話者教師(以下NNT)3人が

コース終了後学習者の事前事後発表を評価した

(5)教師インタビューの音声データ筆者がコース修了後実践した授業の有効性や問題

点を知るためにプネムンバイ市の教授歴 5年以上の NNT 7人(上記の(4)の教師を

含む)に授業に関する意見や感想提案を聞いた

52 データ分析方法

アE

AⅠと AアE

AⅡの全体の回答傾向を探るために結果の表(表 45)を作成し変化がわかる

ように示した結果全体を見その中で変化があった学習者について個別に詳しく見たAアE

Ⅱには自由記述欄として感想や意見を書くスペースを設けており本稿では< >で示す

またデⅠⅡはやり取りを文字化し分析に必要な部分を日本語に訳したデの発話は

『 』で示す学習者のフィードバックシートや自己評価紙の回答そしてクラスメートか

らのコメントをまとめ主データをサポートするものがあるかどうかを調べた事前事後

発表の教師評価の結果からグループワークの取り入れが学習者の運用力の伸びにつながった

かどうかを調べた

53 クラス全体の結果の傾向と考察

アE

AⅠは学習者の自信や不安の変化を見る調査であるがクラス全体の分析結果(表 4を参照)

を見るとその回答は多様であり全体に共通する傾向は見られなかった不安を測る項目

は9項目(問 12457891112)であり自信に関する項目は4項目(問 3

61013)であったAアE

AⅠの結果では不安感に関する 9項目の内 7項目に不安感の低下が

見られたその中で問48は話す時に間違える心配に関するものであり問 1275

12は自分の日本語能力に関する不安についての項目であったそして自信の度合いに関す

る 4項目の内 3項目(問 3613)には上昇が見られた(531を参照)変化が見られな

かった項目は問 91011の 3項目であったまた自信の度合いに少し低下が見られた項

目もありそれらは学習者によって異なるものであった2名が低下を示した項目は問 68

の日本語の間違いや日本語力に関するものであった問 6891011 については 532

で述べる

AアE

AⅡはグループワークに対する学習者の反応を見る調査である(表 5を参照)回答を大き

く分けると回答 34は「あてはまる」回答 12は「あてはまらない」に分けられる学習

者は全員すべての項目に対して3か 4(あてはまる)という肯定的な回答を選びグループ

ワークを授業に定期的に(regularly)取り入れることに対して肯定的に捉えていることがわ

かった

表 4 学習者の話す不安自信の度合いの結果(授業前と後)(アンケート調査Ⅰ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

番号 質問項目 S1 S2 S3 S4 S5

前 後 前 後 前 後 前 後 前 後

1 授業のときで日本語を話すときたいてい

緊張します 3 3 4E A3E 2 2 4 4 3 3

2 日本語を話すとき笑われないかと心配し

ます A2E A1E 1 1 1 1 A3E A2E A2E A3E

4 他の学生の前で日本語をまちがえたとき

恥ずかしいと思います 3 3 2 2 1 1 A4E A3E A2E A3E

5 私には日本語の会話能力がないのだろう

かと心配になります 2 2 A4E A3E A1E A2E 2 2 A3E A2E

7 授業のとき日本語を使ってディスカッシ

ョンするとき緊張します A3E A2E A3E A2E 2 2 4 4 2 2

8 授業のとき日本語をまちがえないかと心

配します A3E A1E 3 3 1 1 A1E A3E A2E A3E

9 授業のとき日本語を使って発表すると

き緊張します 3 3 4 4 1 1 4 4 3 3

11 日本語の授業のときもっと自分に自信を

もてたらいいのにと思います 4 4 4 4 3 3 3 3 4 4

12 日本語での会話がなかなか上手にならな

くて心配です A3E A1E A4E A1E A1E A2E A3E A2E 2 2

3 私は他の学生と同じぐらい日本語がうま

くできます A3E A4E 3 3 3 3 A1E A2E 3 3

6 自分の日本語にはいい面がたくさんある

と思います A4E A3E A3E A2E 3 3 A2E A3E 2 2

10 私は自分の日本語を前向きに考えていま

す 4 4 4 4 4 4 3 3 4 4

13 みんなの前で自分の経験(例えば来日の経

験日本語学習の経験)について積極的に

話したいと思います

4 4 A4E A3E 4 4 3 3 A2E A3E

問12457891112は不安の度合いを示す項目であり高い数値は不安が高いことを示す問3

61013は自信の度合いを示す項目であり高い数値は自信が高いことを示すの項目は不安の減少自信

の上昇を表し網かけの項目はマイナスイメージからプラスイメージへの変化を表すの項目は自信の低下を

表す

表 5 グループワークに対する学習者の反応(アンケート調査Ⅱ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

質問内容 S1 S2 S3 S4 S5

1授業でペアグループワークを定期的にすれば多くの人の前で話す際に緊張し

ないだろう 4 4 3 4 3

2授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を話す時間違える心配は

しないだろう 4 4 3 3 4

3授業でペアグループワークを定期的にすればスピーチ大会のようなイベント

に参加したくなるだろう 4 4 3 3 4

4授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話したくなる

だろう 4 4 4 3 4

5授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を使って話す動機になる

だろう 4 4 3 3 3

意欲に関する問 4「授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話

したくなるだろう」に対して回答 4を 4名が選択しまた自信の度合いを表す項目問 1「多

くの人の前で話す際に緊張しないだろう」問 2「日本語を話す時間違える心配はしないだ

ろう」問 3「スピーチ大会のようなイベントに参加したくなるだろう」に対しては回答 4

が 3名で3が 2名であったまた問 5「授業でペアグループワークを定期的にすれば

日本語を使って話す動機になるだろう」に対しても回答 4が 2名3が 3名で全員肯定

的な回答であったこのことから話すことに対して前向きになり意欲の高まりが見られた

と考えられるこれは下記のアⅡデⅡの自由記述で発言された学習者の感想からもわか

アE

AⅡS2<このようなグループ活動を取り入れた授業を楽しみにしている>S3<このようなグループ活動を将

来も楽しみにしている>S4<この8日間の授業はとても豊かな経験だった>S5<このような授業はとても楽

しかったのでこれからも参加したい>

AデE

AⅡS2『他の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』S4『前はあまり話せなかったがテレビ

広告などのグループ活動をやっているうちに自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告また「グ

プタさんの話」によって授業がとても面白くなった』

531 学習者の自信の度合いが上昇した項目について

AアE

AⅠの結果については項目ごとの違いが明らかにできなかった部分があるためAデE

AⅠⅡ

の発言を引用し分析を進めるグループワークを取り入れた授業に参加する前に学習者

は自分の日本語の会話力話す時に間違えること間違えた時の周りの人からの反応など

について心配や不安な気持ちになり自信の度合いが低いことが AアE

AⅠ(前)と AデE

AⅠから見

られたAデE

AⅠで学習者は下記のように言っていた

しかしグループワークの際学習者同士が話し合うことによって安心でき緊張感が

減りそして自信を持って日本語で話せるようになったようであるそのことで得られた達

成感や満足感がデⅡで見られたその例と理由を 3つにまとめる

(1)安心感の醸成授業でグループワークを行うことで学習者の気持ちが落ち着き安心

感が得られた要因は下記のように考えられる

①共通の問題点や不安の共有デⅡでの下記の発言から学習者はグループワークを通して

互いに交流し日本語を話すことに関する共通の問題点や不安感を共有したことがわかる

S1『相手が同じレベルなので自分が言いたいことを気楽に表すことができた』S2『日本語が上手じゃないと

か緊張するのは自分1人だけじゃなくみんな同じ気持ちだそれが大事だった』『みんなレベルが同じなの

で相手と話す時に後で(日本語のことで)笑われるかもしれないなどの感じがしなかった』S3『活動をや

っているうちにお互いに慣れて緊張感が減った』

上記から他の学習者も日本語を話すことに対する問題を抱えていることや話す時に間

違えたり緊張したりするのは自分 1人ではなく他の学習者も同じだということを実感

し学習者は安心感を得ることができたと思われる

②教師の指示グループワークを始める前に文法や語彙の間違いの心配を気にせずに話す

単語単位なら母語を使ってもいいという教師からの指示があったため学習者が安心でき

緊張せずに日本語で話せたと考えられる

S2『間違いを指摘されなかったので話す時緊張しなかった』『母語使用が許されたことによってお互い楽な気持

ちになれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』S4『文法をあまり気にしないでまず話したい

ことを思いきって話す文法の間違いを直すのは後でもできる』S5『間違いに注意しなくてもよかったので

もっと自信を持って話せた』

S1『言いたいことがはっきり説明できない』S2『文法の知識はあるが適切に使えない』『日本語でたくさん話

したいけれどできない』『文型をたくさん知っていても話す時思い出せない』『読むことができる書くことが

できるでも会話はちょっと苦手』『話す時いいことばが見つからない』S3『話す練習が足りない』S4『教

科書の文法の勉強より運用できるようになる学習方法が必要』

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

報告できるある程度自信を持って自分の意見を提示できる」であった筆者の教授経験か

ら自国の学習者の学習レベルを考えるとA22レベルはJLPT N2の学習をしている対象者

には易しすぎB12レベルは会話の練習経験があまりない対象者にとって少し難しいと考

えたそこでその間である B11の「事実を述べ理由を説明することができる」「自分の

感情や反応を描写することができる」「自分の考えを述べることができる」という Can-do項

目を選び学習目標を決めた

423 授業の概要

授業は全部で8回あり1回90分であった第1回の授業でオリエンテーションを行った

第 2~7回授業で学習者の経験上身近で簡単に話せると考えられるトピックを 3つ設定し

1トピックに 2種類のグループワークを取り入れた授業を行った第 8回はまとめの授業で

あった(コース全体の内容は表 2を参照)

次に授業に取り入れたグループワークについて述べるグループワークでは学習者同

士が交流できる機会を作ったり安心した雰囲気を作ることや話す練習の機会を増やした

そしてグループワークの活動中学習者は自由に話し合う時間が持てそれによって仲

間意識を持ち安心感を得られると同時に日本語で話す不安が減り話す自信も高まると考え

たまた教師のコントロールのもと2名または 3名に分けて 2グループにしグループ

メンバーの前で発表を練習することで仲間意識も持てクラス全員の前での発表がしやす

くなると想定したまた学習者のグループワークへの反応を見るためにさまざまな形態

のグループワークを授業に取り入れた(グループワークを取り入れた授業の内容は表 3を参

照)

表 2 コース全体の内容

活動の内容

オリエンテーション

第1回

教師(筆者)の自己紹介研究目的について説明(ヒンディー語)

学習者の自己紹介日本語で話す上の問題点不満感想などについてディスカッ

ションⅠ(ヒンディー語英語日本語)

15分の準備後学習者による2分程度の事前発表

(テーマ「日本語の勉強を始めたきっかけ」)

教師から発表のし方評価の観点について説明(日本語英語)

学習者による日本語を話す能力についてのアンケート調査Ⅰ(前)の記入

教師から第2~7回の授業の流れフィードバックシート自己評価紙の説明

グループ

ワークを

取り入れ

た授業

第2回 トピック1「私の一ばん大切なもの」

第3回

第4回 トピック2「忘れられない旅行」

第5回

第6回 トピック3「恋愛結婚かお見合い結婚か」

第7回

まとめ 第8回

15分の準備後学習者による2分程度の事後発表(テーマ「日本語と将来の夢」)

学習者によるアンケート調査Ⅰ(後)アンケート調査Ⅱの記入

教師から授業のまとめ学習者の感想意見や提案などについてのディスカッショ

ンⅡ(ヒンディー語英語日本語)

表 3 グループワークを取り入れた授業の内容(第 2~7回)

順 第2~7回の授業の活動とその目的 内容

1 導入(5分)

背景知識の活性化

教師が会話でトピックを導入した

2

ブレインストーミング(10分)

トピックに必要な語彙や表現を確認し自信

を高める

学習者がワークシート①でトピックに関連する表現や

キーワードを整理した(添付資料①ワークシート①-A)

教師から語彙表現のリストを配付した

3

グループワークⅠ(60分)

日本語で話す機会を増やし持っている知識

を互いに共有することによって学習者は新し

い単語や表現を知り日本語力への自信を高め

グループでクラスに報告し緊張感や不安感

を減らす

ワークシートを用いてグループで活動をする(添付

資料②③)

トピックはトピック1「私の一ばん大切なもの」ト

ピック2「忘れられない旅行」トピック3「恋愛結婚か

お見合い結婚か」の3つ

グループワークⅠの結果をクラス全員の前で報告する

4 個人作業(10分)

学習者が自分の考えや話を整理する

教師が発表例を示した後学習者は各自トピックに

ついて話すことを考えワークシート①-B(添付資料①)

に書いた

5 グループワークⅡ(30分)

まずグループメンバーの前で発表の練習を

し不安感を減らす

グループメンバーからのフィードバックによ

り発表内容を修正することでクラス全員の前

での発表に自信を高める

学習者は練習後グループ内で発表した

ワークシート④(添付資料④)を使ってグループメ

ンバーからフィードバックをもらった

学習者は自分の発表をふり返り改善した

6 個人発表(30分) 学習者はクラスメート全員の前で発表した

7 コメントのやり取り(10分) 発表を聞き好意的なコメントと建設的なコメントを

日本語発表の改善のポイントがわかる

日本語学習への動機になる

ピンクと黄色の付箋に無記名で書いた(日本語英語)

コメントを発表者に渡した

8 自己評価紙の記入(5分)

学習者が自分の日本語力に変化があったかを

ふり返る

発表の観点に注意できるようになる

学習者は自分の発表を評価の観点を使って自己評価し

9 授業へのフィードバックシート(5分)

授業に対する学習者の気持ちがわかる

授業改善への提案を得る

学習者は自分の発表グループワークについてフィー

ドバックシートの質問に答えた(添付資料⑤を参照)

グループワークⅠグループワークⅠはトピックによって活動の形態に違いはあるが課

題が明確に理解されるように筆者が作成したワークシートを使って与えられたタスクを進

めていく活動であったトピック 1「私の一ばん大切なもの」の活動ではトピックに関連

するビデオを見その内容について話し合うトピック 2「忘れられない旅行」の活動では

出来事の流れが描写できるように1人 1コマの絵を与えて協力してストーリーを完成さ

せる(添付資料②を参照)トピック 3「恋愛結婚かお見合い結婚か」の活動ではトピッ

クについての利点と欠点を意見交換し合うというものであった学習者はグループ内で

やり取りし助け合いながら各トピックのワークシートにあるタスクを行ったその結果

をグループごとにクラス全員の前で報告した

グループワークⅡ学習者はグループワークⅠで確認共有した表現やアイディアを基に

自分の考えを整理しなおしまずグループメンバーの前で自分の発表の練習をしたそし

て自分の発表を振り返った後クラス全員の前で発表した

グループワークⅠⅡの計画時第 2章の先行研究に述べたポイントを踏まえ教師は下

記の点に注意した

(1)学習者の不安感を減らすために注意した点<安心できる雰囲気を作る>

学習者は文法の間違い語彙の乏しさや正確さなどのような細かいことに気を取られ

不安になり話す努力をしなくなる恐れがあったそこで安心して話せる雰囲気が作れる

ように教師は学習者にグループワークでは文法上の間違いや細かいことは気にせずに

日本語を使って話すように指示したまた日本語で自分の考えを表せない時には単語単

位での母語使用も認めた

(2)学習者の自信を高めるために注意した点<グループの組み方>

グループ内のメンバー間の能力差が大きいと能力の低い学習者が話す自信を失う恐れ

があるため学習者の日本語力に注意する必要もあると考えたしかし本コース受講者は

全員N3に合格しており似たような日本語レベルだとわかっていたためトピック1の際は

日本人と接触した経験の有無を基にグループを組むことにしたトピック23は他の学習者

とも仲間意識ができるように異なった相手と組むことにした

(3)グループワークⅠで注意した点<トピックに必要な語彙表現の補足>

学習者は話す時にことばが出てこないつまり語彙や表現が足りずに話せなくなる

ことが事前調査でわかった(第 1章を参照)そこで学習者がトピックについて話すための

手助けとなるようにグループワークⅠの前にはトピックの語彙に関するブレインストー

ミングを行いワークシート上の難しい語彙や表現の翻訳リストを配付しグループワーク

Ⅰの最後の報告の際には教師から語彙表現の確認を行ったこれによって学習者が自

分の頭の中で話す準備ができるように課題や発表に必要な語彙や表現の補足をした

(4)グループワークⅡで注意した点<聞き手への配慮>

学習者が「伝える」「聞く」ことに集中でき自分の考えを上手く「伝えられる」相手の

話を上手く「理解できる」ように発表を聞いた後に聞き手がコメントする活動と話し手

自身による発表のふり返りの活動(添付資料④を参照)を設定した学習者はこのワークシ

ートを利用し自分の話を話し手の立場から説明したり相手の話を聞き手の立場から確認

したりしたこれによって学習者は聞き手のことも意識することになり「話す」ことだけ

ではなく「わかってもらう」ことの大切さにも注目できるようになると考えた

5 調査概要

51 データの種類と収集方法

調査で収集したデータを主データと補足データに分けて述べる 511 主データ

(1)アンケート調査Ⅰ元田(2005 215-218221-222241-242)の調査票(質問紙)は

日本に留学し直説法で学ぶ学習者を対象にしているが本コースではインドで学ぶ

成人学習者を対象にしているため調査対象者の特徴を考慮し項目を選んで作成し

た 2第 1回の授業時学習者の日本語を話すことに対する自信の度合いを知るために

アンケート調査Ⅰ(以下アⅠ)(前)を行った同じ調査をアⅠ(後)として第 8回

の授業時学習者の自信の度合いの変化を見るために行った

(2)アンケート調査Ⅱグループワークの効果について筆者が項目を考えた調査であるア

ンケート調査Ⅱ(以下アⅡ)はグループワークを取り入れた授業に対する学習者の

反応を見るために第 8回の授業で行った

(3)ディスカッションⅠⅡの音声データ第 1回の授業で日本語で話すことに対する学

習者の問題点や不満点期待についてディスカッションⅠ(以下デⅠ)を行った(20

分程度)第 8回の授業で本コースに関する学習者からの意見や感想を聞くためにデ

ィスカッションⅡ(以下デⅡ)を行った(30分程度)

512 補足データ

(1)フィードバックシート学習者がトピック終了時に自分の発表についてふり返り授

業全体やグループワーク活動について記入した(添付資料⑤を参照)

(2)自己評価紙学習者が発表の評価の観点 3を基に自分の発表を評価し記入した

(3)コメント学習者が互いの発表に対して相互評価をし好意的建設的なコメントを

色の異なる付箋に書き発表者に渡した

(4)事前事後発表の教師評価紙教授歴 10年以上の非母語話者教師(以下NNT)3人が

コース終了後学習者の事前事後発表を評価した

(5)教師インタビューの音声データ筆者がコース修了後実践した授業の有効性や問題

点を知るためにプネムンバイ市の教授歴 5年以上の NNT 7人(上記の(4)の教師を

含む)に授業に関する意見や感想提案を聞いた

52 データ分析方法

アE

AⅠと AアE

AⅡの全体の回答傾向を探るために結果の表(表 45)を作成し変化がわかる

ように示した結果全体を見その中で変化があった学習者について個別に詳しく見たAアE

Ⅱには自由記述欄として感想や意見を書くスペースを設けており本稿では< >で示す

またデⅠⅡはやり取りを文字化し分析に必要な部分を日本語に訳したデの発話は

『 』で示す学習者のフィードバックシートや自己評価紙の回答そしてクラスメートか

らのコメントをまとめ主データをサポートするものがあるかどうかを調べた事前事後

発表の教師評価の結果からグループワークの取り入れが学習者の運用力の伸びにつながった

かどうかを調べた

53 クラス全体の結果の傾向と考察

アE

AⅠは学習者の自信や不安の変化を見る調査であるがクラス全体の分析結果(表 4を参照)

を見るとその回答は多様であり全体に共通する傾向は見られなかった不安を測る項目

は9項目(問 12457891112)であり自信に関する項目は4項目(問 3

61013)であったAアE

AⅠの結果では不安感に関する 9項目の内 7項目に不安感の低下が

見られたその中で問48は話す時に間違える心配に関するものであり問 1275

12は自分の日本語能力に関する不安についての項目であったそして自信の度合いに関す

る 4項目の内 3項目(問 3613)には上昇が見られた(531を参照)変化が見られな

かった項目は問 91011の 3項目であったまた自信の度合いに少し低下が見られた項

目もありそれらは学習者によって異なるものであった2名が低下を示した項目は問 68

の日本語の間違いや日本語力に関するものであった問 6891011 については 532

で述べる

AアE

AⅡはグループワークに対する学習者の反応を見る調査である(表 5を参照)回答を大き

く分けると回答 34は「あてはまる」回答 12は「あてはまらない」に分けられる学習

者は全員すべての項目に対して3か 4(あてはまる)という肯定的な回答を選びグループ

ワークを授業に定期的に(regularly)取り入れることに対して肯定的に捉えていることがわ

かった

表 4 学習者の話す不安自信の度合いの結果(授業前と後)(アンケート調査Ⅰ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

番号 質問項目 S1 S2 S3 S4 S5

前 後 前 後 前 後 前 後 前 後

1 授業のときで日本語を話すときたいてい

緊張します 3 3 4E A3E 2 2 4 4 3 3

2 日本語を話すとき笑われないかと心配し

ます A2E A1E 1 1 1 1 A3E A2E A2E A3E

4 他の学生の前で日本語をまちがえたとき

恥ずかしいと思います 3 3 2 2 1 1 A4E A3E A2E A3E

5 私には日本語の会話能力がないのだろう

かと心配になります 2 2 A4E A3E A1E A2E 2 2 A3E A2E

7 授業のとき日本語を使ってディスカッシ

ョンするとき緊張します A3E A2E A3E A2E 2 2 4 4 2 2

8 授業のとき日本語をまちがえないかと心

配します A3E A1E 3 3 1 1 A1E A3E A2E A3E

9 授業のとき日本語を使って発表すると

き緊張します 3 3 4 4 1 1 4 4 3 3

11 日本語の授業のときもっと自分に自信を

もてたらいいのにと思います 4 4 4 4 3 3 3 3 4 4

12 日本語での会話がなかなか上手にならな

くて心配です A3E A1E A4E A1E A1E A2E A3E A2E 2 2

3 私は他の学生と同じぐらい日本語がうま

くできます A3E A4E 3 3 3 3 A1E A2E 3 3

6 自分の日本語にはいい面がたくさんある

と思います A4E A3E A3E A2E 3 3 A2E A3E 2 2

10 私は自分の日本語を前向きに考えていま

す 4 4 4 4 4 4 3 3 4 4

13 みんなの前で自分の経験(例えば来日の経

験日本語学習の経験)について積極的に

話したいと思います

4 4 A4E A3E 4 4 3 3 A2E A3E

問12457891112は不安の度合いを示す項目であり高い数値は不安が高いことを示す問3

61013は自信の度合いを示す項目であり高い数値は自信が高いことを示すの項目は不安の減少自信

の上昇を表し網かけの項目はマイナスイメージからプラスイメージへの変化を表すの項目は自信の低下を

表す

表 5 グループワークに対する学習者の反応(アンケート調査Ⅱ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

質問内容 S1 S2 S3 S4 S5

1授業でペアグループワークを定期的にすれば多くの人の前で話す際に緊張し

ないだろう 4 4 3 4 3

2授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を話す時間違える心配は

しないだろう 4 4 3 3 4

3授業でペアグループワークを定期的にすればスピーチ大会のようなイベント

に参加したくなるだろう 4 4 3 3 4

4授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話したくなる

だろう 4 4 4 3 4

5授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を使って話す動機になる

だろう 4 4 3 3 3

意欲に関する問 4「授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話

したくなるだろう」に対して回答 4を 4名が選択しまた自信の度合いを表す項目問 1「多

くの人の前で話す際に緊張しないだろう」問 2「日本語を話す時間違える心配はしないだ

ろう」問 3「スピーチ大会のようなイベントに参加したくなるだろう」に対しては回答 4

が 3名で3が 2名であったまた問 5「授業でペアグループワークを定期的にすれば

日本語を使って話す動機になるだろう」に対しても回答 4が 2名3が 3名で全員肯定

的な回答であったこのことから話すことに対して前向きになり意欲の高まりが見られた

と考えられるこれは下記のアⅡデⅡの自由記述で発言された学習者の感想からもわか

アE

AⅡS2<このようなグループ活動を取り入れた授業を楽しみにしている>S3<このようなグループ活動を将

来も楽しみにしている>S4<この8日間の授業はとても豊かな経験だった>S5<このような授業はとても楽

しかったのでこれからも参加したい>

AデE

AⅡS2『他の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』S4『前はあまり話せなかったがテレビ

広告などのグループ活動をやっているうちに自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告また「グ

プタさんの話」によって授業がとても面白くなった』

531 学習者の自信の度合いが上昇した項目について

AアE

AⅠの結果については項目ごとの違いが明らかにできなかった部分があるためAデE

AⅠⅡ

の発言を引用し分析を進めるグループワークを取り入れた授業に参加する前に学習者

は自分の日本語の会話力話す時に間違えること間違えた時の周りの人からの反応など

について心配や不安な気持ちになり自信の度合いが低いことが AアE

AⅠ(前)と AデE

AⅠから見

られたAデE

AⅠで学習者は下記のように言っていた

しかしグループワークの際学習者同士が話し合うことによって安心でき緊張感が

減りそして自信を持って日本語で話せるようになったようであるそのことで得られた達

成感や満足感がデⅡで見られたその例と理由を 3つにまとめる

(1)安心感の醸成授業でグループワークを行うことで学習者の気持ちが落ち着き安心

感が得られた要因は下記のように考えられる

①共通の問題点や不安の共有デⅡでの下記の発言から学習者はグループワークを通して

互いに交流し日本語を話すことに関する共通の問題点や不安感を共有したことがわかる

S1『相手が同じレベルなので自分が言いたいことを気楽に表すことができた』S2『日本語が上手じゃないと

か緊張するのは自分1人だけじゃなくみんな同じ気持ちだそれが大事だった』『みんなレベルが同じなの

で相手と話す時に後で(日本語のことで)笑われるかもしれないなどの感じがしなかった』S3『活動をや

っているうちにお互いに慣れて緊張感が減った』

上記から他の学習者も日本語を話すことに対する問題を抱えていることや話す時に間

違えたり緊張したりするのは自分 1人ではなく他の学習者も同じだということを実感

し学習者は安心感を得ることができたと思われる

②教師の指示グループワークを始める前に文法や語彙の間違いの心配を気にせずに話す

単語単位なら母語を使ってもいいという教師からの指示があったため学習者が安心でき

緊張せずに日本語で話せたと考えられる

S2『間違いを指摘されなかったので話す時緊張しなかった』『母語使用が許されたことによってお互い楽な気持

ちになれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』S4『文法をあまり気にしないでまず話したい

ことを思いきって話す文法の間違いを直すのは後でもできる』S5『間違いに注意しなくてもよかったので

もっと自信を持って話せた』

S1『言いたいことがはっきり説明できない』S2『文法の知識はあるが適切に使えない』『日本語でたくさん話

したいけれどできない』『文型をたくさん知っていても話す時思い出せない』『読むことができる書くことが

できるでも会話はちょっと苦手』『話す時いいことばが見つからない』S3『話す練習が足りない』S4『教

科書の文法の勉強より運用できるようになる学習方法が必要』

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

第6回 トピック3「恋愛結婚かお見合い結婚か」

第7回

まとめ 第8回

15分の準備後学習者による2分程度の事後発表(テーマ「日本語と将来の夢」)

学習者によるアンケート調査Ⅰ(後)アンケート調査Ⅱの記入

教師から授業のまとめ学習者の感想意見や提案などについてのディスカッショ

ンⅡ(ヒンディー語英語日本語)

表 3 グループワークを取り入れた授業の内容(第 2~7回)

順 第2~7回の授業の活動とその目的 内容

1 導入(5分)

背景知識の活性化

教師が会話でトピックを導入した

2

ブレインストーミング(10分)

トピックに必要な語彙や表現を確認し自信

を高める

学習者がワークシート①でトピックに関連する表現や

キーワードを整理した(添付資料①ワークシート①-A)

教師から語彙表現のリストを配付した

3

グループワークⅠ(60分)

日本語で話す機会を増やし持っている知識

を互いに共有することによって学習者は新し

い単語や表現を知り日本語力への自信を高め

グループでクラスに報告し緊張感や不安感

を減らす

ワークシートを用いてグループで活動をする(添付

資料②③)

トピックはトピック1「私の一ばん大切なもの」ト

ピック2「忘れられない旅行」トピック3「恋愛結婚か

お見合い結婚か」の3つ

グループワークⅠの結果をクラス全員の前で報告する

4 個人作業(10分)

学習者が自分の考えや話を整理する

教師が発表例を示した後学習者は各自トピックに

ついて話すことを考えワークシート①-B(添付資料①)

に書いた

5 グループワークⅡ(30分)

まずグループメンバーの前で発表の練習を

し不安感を減らす

グループメンバーからのフィードバックによ

り発表内容を修正することでクラス全員の前

での発表に自信を高める

学習者は練習後グループ内で発表した

ワークシート④(添付資料④)を使ってグループメ

ンバーからフィードバックをもらった

学習者は自分の発表をふり返り改善した

6 個人発表(30分) 学習者はクラスメート全員の前で発表した

7 コメントのやり取り(10分) 発表を聞き好意的なコメントと建設的なコメントを

日本語発表の改善のポイントがわかる

日本語学習への動機になる

ピンクと黄色の付箋に無記名で書いた(日本語英語)

コメントを発表者に渡した

8 自己評価紙の記入(5分)

学習者が自分の日本語力に変化があったかを

ふり返る

発表の観点に注意できるようになる

学習者は自分の発表を評価の観点を使って自己評価し

9 授業へのフィードバックシート(5分)

授業に対する学習者の気持ちがわかる

授業改善への提案を得る

学習者は自分の発表グループワークについてフィー

ドバックシートの質問に答えた(添付資料⑤を参照)

グループワークⅠグループワークⅠはトピックによって活動の形態に違いはあるが課

題が明確に理解されるように筆者が作成したワークシートを使って与えられたタスクを進

めていく活動であったトピック 1「私の一ばん大切なもの」の活動ではトピックに関連

するビデオを見その内容について話し合うトピック 2「忘れられない旅行」の活動では

出来事の流れが描写できるように1人 1コマの絵を与えて協力してストーリーを完成さ

せる(添付資料②を参照)トピック 3「恋愛結婚かお見合い結婚か」の活動ではトピッ

クについての利点と欠点を意見交換し合うというものであった学習者はグループ内で

やり取りし助け合いながら各トピックのワークシートにあるタスクを行ったその結果

をグループごとにクラス全員の前で報告した

グループワークⅡ学習者はグループワークⅠで確認共有した表現やアイディアを基に

自分の考えを整理しなおしまずグループメンバーの前で自分の発表の練習をしたそし

て自分の発表を振り返った後クラス全員の前で発表した

グループワークⅠⅡの計画時第 2章の先行研究に述べたポイントを踏まえ教師は下

記の点に注意した

(1)学習者の不安感を減らすために注意した点<安心できる雰囲気を作る>

学習者は文法の間違い語彙の乏しさや正確さなどのような細かいことに気を取られ

不安になり話す努力をしなくなる恐れがあったそこで安心して話せる雰囲気が作れる

ように教師は学習者にグループワークでは文法上の間違いや細かいことは気にせずに

日本語を使って話すように指示したまた日本語で自分の考えを表せない時には単語単

位での母語使用も認めた

(2)学習者の自信を高めるために注意した点<グループの組み方>

グループ内のメンバー間の能力差が大きいと能力の低い学習者が話す自信を失う恐れ

があるため学習者の日本語力に注意する必要もあると考えたしかし本コース受講者は

全員N3に合格しており似たような日本語レベルだとわかっていたためトピック1の際は

日本人と接触した経験の有無を基にグループを組むことにしたトピック23は他の学習者

とも仲間意識ができるように異なった相手と組むことにした

(3)グループワークⅠで注意した点<トピックに必要な語彙表現の補足>

学習者は話す時にことばが出てこないつまり語彙や表現が足りずに話せなくなる

ことが事前調査でわかった(第 1章を参照)そこで学習者がトピックについて話すための

手助けとなるようにグループワークⅠの前にはトピックの語彙に関するブレインストー

ミングを行いワークシート上の難しい語彙や表現の翻訳リストを配付しグループワーク

Ⅰの最後の報告の際には教師から語彙表現の確認を行ったこれによって学習者が自

分の頭の中で話す準備ができるように課題や発表に必要な語彙や表現の補足をした

(4)グループワークⅡで注意した点<聞き手への配慮>

学習者が「伝える」「聞く」ことに集中でき自分の考えを上手く「伝えられる」相手の

話を上手く「理解できる」ように発表を聞いた後に聞き手がコメントする活動と話し手

自身による発表のふり返りの活動(添付資料④を参照)を設定した学習者はこのワークシ

ートを利用し自分の話を話し手の立場から説明したり相手の話を聞き手の立場から確認

したりしたこれによって学習者は聞き手のことも意識することになり「話す」ことだけ

ではなく「わかってもらう」ことの大切さにも注目できるようになると考えた

5 調査概要

51 データの種類と収集方法

調査で収集したデータを主データと補足データに分けて述べる 511 主データ

(1)アンケート調査Ⅰ元田(2005 215-218221-222241-242)の調査票(質問紙)は

日本に留学し直説法で学ぶ学習者を対象にしているが本コースではインドで学ぶ

成人学習者を対象にしているため調査対象者の特徴を考慮し項目を選んで作成し

た 2第 1回の授業時学習者の日本語を話すことに対する自信の度合いを知るために

アンケート調査Ⅰ(以下アⅠ)(前)を行った同じ調査をアⅠ(後)として第 8回

の授業時学習者の自信の度合いの変化を見るために行った

(2)アンケート調査Ⅱグループワークの効果について筆者が項目を考えた調査であるア

ンケート調査Ⅱ(以下アⅡ)はグループワークを取り入れた授業に対する学習者の

反応を見るために第 8回の授業で行った

(3)ディスカッションⅠⅡの音声データ第 1回の授業で日本語で話すことに対する学

習者の問題点や不満点期待についてディスカッションⅠ(以下デⅠ)を行った(20

分程度)第 8回の授業で本コースに関する学習者からの意見や感想を聞くためにデ

ィスカッションⅡ(以下デⅡ)を行った(30分程度)

512 補足データ

(1)フィードバックシート学習者がトピック終了時に自分の発表についてふり返り授

業全体やグループワーク活動について記入した(添付資料⑤を参照)

(2)自己評価紙学習者が発表の評価の観点 3を基に自分の発表を評価し記入した

(3)コメント学習者が互いの発表に対して相互評価をし好意的建設的なコメントを

色の異なる付箋に書き発表者に渡した

(4)事前事後発表の教師評価紙教授歴 10年以上の非母語話者教師(以下NNT)3人が

コース終了後学習者の事前事後発表を評価した

(5)教師インタビューの音声データ筆者がコース修了後実践した授業の有効性や問題

点を知るためにプネムンバイ市の教授歴 5年以上の NNT 7人(上記の(4)の教師を

含む)に授業に関する意見や感想提案を聞いた

52 データ分析方法

アE

AⅠと AアE

AⅡの全体の回答傾向を探るために結果の表(表 45)を作成し変化がわかる

ように示した結果全体を見その中で変化があった学習者について個別に詳しく見たAアE

Ⅱには自由記述欄として感想や意見を書くスペースを設けており本稿では< >で示す

またデⅠⅡはやり取りを文字化し分析に必要な部分を日本語に訳したデの発話は

『 』で示す学習者のフィードバックシートや自己評価紙の回答そしてクラスメートか

らのコメントをまとめ主データをサポートするものがあるかどうかを調べた事前事後

発表の教師評価の結果からグループワークの取り入れが学習者の運用力の伸びにつながった

かどうかを調べた

53 クラス全体の結果の傾向と考察

アE

AⅠは学習者の自信や不安の変化を見る調査であるがクラス全体の分析結果(表 4を参照)

を見るとその回答は多様であり全体に共通する傾向は見られなかった不安を測る項目

は9項目(問 12457891112)であり自信に関する項目は4項目(問 3

61013)であったAアE

AⅠの結果では不安感に関する 9項目の内 7項目に不安感の低下が

見られたその中で問48は話す時に間違える心配に関するものであり問 1275

12は自分の日本語能力に関する不安についての項目であったそして自信の度合いに関す

る 4項目の内 3項目(問 3613)には上昇が見られた(531を参照)変化が見られな

かった項目は問 91011の 3項目であったまた自信の度合いに少し低下が見られた項

目もありそれらは学習者によって異なるものであった2名が低下を示した項目は問 68

の日本語の間違いや日本語力に関するものであった問 6891011 については 532

で述べる

AアE

AⅡはグループワークに対する学習者の反応を見る調査である(表 5を参照)回答を大き

く分けると回答 34は「あてはまる」回答 12は「あてはまらない」に分けられる学習

者は全員すべての項目に対して3か 4(あてはまる)という肯定的な回答を選びグループ

ワークを授業に定期的に(regularly)取り入れることに対して肯定的に捉えていることがわ

かった

表 4 学習者の話す不安自信の度合いの結果(授業前と後)(アンケート調査Ⅰ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

番号 質問項目 S1 S2 S3 S4 S5

前 後 前 後 前 後 前 後 前 後

1 授業のときで日本語を話すときたいてい

緊張します 3 3 4E A3E 2 2 4 4 3 3

2 日本語を話すとき笑われないかと心配し

ます A2E A1E 1 1 1 1 A3E A2E A2E A3E

4 他の学生の前で日本語をまちがえたとき

恥ずかしいと思います 3 3 2 2 1 1 A4E A3E A2E A3E

5 私には日本語の会話能力がないのだろう

かと心配になります 2 2 A4E A3E A1E A2E 2 2 A3E A2E

7 授業のとき日本語を使ってディスカッシ

ョンするとき緊張します A3E A2E A3E A2E 2 2 4 4 2 2

8 授業のとき日本語をまちがえないかと心

配します A3E A1E 3 3 1 1 A1E A3E A2E A3E

9 授業のとき日本語を使って発表すると

き緊張します 3 3 4 4 1 1 4 4 3 3

11 日本語の授業のときもっと自分に自信を

もてたらいいのにと思います 4 4 4 4 3 3 3 3 4 4

12 日本語での会話がなかなか上手にならな

くて心配です A3E A1E A4E A1E A1E A2E A3E A2E 2 2

3 私は他の学生と同じぐらい日本語がうま

くできます A3E A4E 3 3 3 3 A1E A2E 3 3

6 自分の日本語にはいい面がたくさんある

と思います A4E A3E A3E A2E 3 3 A2E A3E 2 2

10 私は自分の日本語を前向きに考えていま

す 4 4 4 4 4 4 3 3 4 4

13 みんなの前で自分の経験(例えば来日の経

験日本語学習の経験)について積極的に

話したいと思います

4 4 A4E A3E 4 4 3 3 A2E A3E

問12457891112は不安の度合いを示す項目であり高い数値は不安が高いことを示す問3

61013は自信の度合いを示す項目であり高い数値は自信が高いことを示すの項目は不安の減少自信

の上昇を表し網かけの項目はマイナスイメージからプラスイメージへの変化を表すの項目は自信の低下を

表す

表 5 グループワークに対する学習者の反応(アンケート調査Ⅱ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

質問内容 S1 S2 S3 S4 S5

1授業でペアグループワークを定期的にすれば多くの人の前で話す際に緊張し

ないだろう 4 4 3 4 3

2授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を話す時間違える心配は

しないだろう 4 4 3 3 4

3授業でペアグループワークを定期的にすればスピーチ大会のようなイベント

に参加したくなるだろう 4 4 3 3 4

4授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話したくなる

だろう 4 4 4 3 4

5授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を使って話す動機になる

だろう 4 4 3 3 3

意欲に関する問 4「授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話

したくなるだろう」に対して回答 4を 4名が選択しまた自信の度合いを表す項目問 1「多

くの人の前で話す際に緊張しないだろう」問 2「日本語を話す時間違える心配はしないだ

ろう」問 3「スピーチ大会のようなイベントに参加したくなるだろう」に対しては回答 4

が 3名で3が 2名であったまた問 5「授業でペアグループワークを定期的にすれば

日本語を使って話す動機になるだろう」に対しても回答 4が 2名3が 3名で全員肯定

的な回答であったこのことから話すことに対して前向きになり意欲の高まりが見られた

と考えられるこれは下記のアⅡデⅡの自由記述で発言された学習者の感想からもわか

アE

AⅡS2<このようなグループ活動を取り入れた授業を楽しみにしている>S3<このようなグループ活動を将

来も楽しみにしている>S4<この8日間の授業はとても豊かな経験だった>S5<このような授業はとても楽

しかったのでこれからも参加したい>

AデE

AⅡS2『他の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』S4『前はあまり話せなかったがテレビ

広告などのグループ活動をやっているうちに自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告また「グ

プタさんの話」によって授業がとても面白くなった』

531 学習者の自信の度合いが上昇した項目について

AアE

AⅠの結果については項目ごとの違いが明らかにできなかった部分があるためAデE

AⅠⅡ

の発言を引用し分析を進めるグループワークを取り入れた授業に参加する前に学習者

は自分の日本語の会話力話す時に間違えること間違えた時の周りの人からの反応など

について心配や不安な気持ちになり自信の度合いが低いことが AアE

AⅠ(前)と AデE

AⅠから見

られたAデE

AⅠで学習者は下記のように言っていた

しかしグループワークの際学習者同士が話し合うことによって安心でき緊張感が

減りそして自信を持って日本語で話せるようになったようであるそのことで得られた達

成感や満足感がデⅡで見られたその例と理由を 3つにまとめる

(1)安心感の醸成授業でグループワークを行うことで学習者の気持ちが落ち着き安心

感が得られた要因は下記のように考えられる

①共通の問題点や不安の共有デⅡでの下記の発言から学習者はグループワークを通して

互いに交流し日本語を話すことに関する共通の問題点や不安感を共有したことがわかる

S1『相手が同じレベルなので自分が言いたいことを気楽に表すことができた』S2『日本語が上手じゃないと

か緊張するのは自分1人だけじゃなくみんな同じ気持ちだそれが大事だった』『みんなレベルが同じなの

で相手と話す時に後で(日本語のことで)笑われるかもしれないなどの感じがしなかった』S3『活動をや

っているうちにお互いに慣れて緊張感が減った』

上記から他の学習者も日本語を話すことに対する問題を抱えていることや話す時に間

違えたり緊張したりするのは自分 1人ではなく他の学習者も同じだということを実感

し学習者は安心感を得ることができたと思われる

②教師の指示グループワークを始める前に文法や語彙の間違いの心配を気にせずに話す

単語単位なら母語を使ってもいいという教師からの指示があったため学習者が安心でき

緊張せずに日本語で話せたと考えられる

S2『間違いを指摘されなかったので話す時緊張しなかった』『母語使用が許されたことによってお互い楽な気持

ちになれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』S4『文法をあまり気にしないでまず話したい

ことを思いきって話す文法の間違いを直すのは後でもできる』S5『間違いに注意しなくてもよかったので

もっと自信を持って話せた』

S1『言いたいことがはっきり説明できない』S2『文法の知識はあるが適切に使えない』『日本語でたくさん話

したいけれどできない』『文型をたくさん知っていても話す時思い出せない』『読むことができる書くことが

できるでも会話はちょっと苦手』『話す時いいことばが見つからない』S3『話す練習が足りない』S4『教

科書の文法の勉強より運用できるようになる学習方法が必要』

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

日本語発表の改善のポイントがわかる

日本語学習への動機になる

ピンクと黄色の付箋に無記名で書いた(日本語英語)

コメントを発表者に渡した

8 自己評価紙の記入(5分)

学習者が自分の日本語力に変化があったかを

ふり返る

発表の観点に注意できるようになる

学習者は自分の発表を評価の観点を使って自己評価し

9 授業へのフィードバックシート(5分)

授業に対する学習者の気持ちがわかる

授業改善への提案を得る

学習者は自分の発表グループワークについてフィー

ドバックシートの質問に答えた(添付資料⑤を参照)

グループワークⅠグループワークⅠはトピックによって活動の形態に違いはあるが課

題が明確に理解されるように筆者が作成したワークシートを使って与えられたタスクを進

めていく活動であったトピック 1「私の一ばん大切なもの」の活動ではトピックに関連

するビデオを見その内容について話し合うトピック 2「忘れられない旅行」の活動では

出来事の流れが描写できるように1人 1コマの絵を与えて協力してストーリーを完成さ

せる(添付資料②を参照)トピック 3「恋愛結婚かお見合い結婚か」の活動ではトピッ

クについての利点と欠点を意見交換し合うというものであった学習者はグループ内で

やり取りし助け合いながら各トピックのワークシートにあるタスクを行ったその結果

をグループごとにクラス全員の前で報告した

グループワークⅡ学習者はグループワークⅠで確認共有した表現やアイディアを基に

自分の考えを整理しなおしまずグループメンバーの前で自分の発表の練習をしたそし

て自分の発表を振り返った後クラス全員の前で発表した

グループワークⅠⅡの計画時第 2章の先行研究に述べたポイントを踏まえ教師は下

記の点に注意した

(1)学習者の不安感を減らすために注意した点<安心できる雰囲気を作る>

学習者は文法の間違い語彙の乏しさや正確さなどのような細かいことに気を取られ

不安になり話す努力をしなくなる恐れがあったそこで安心して話せる雰囲気が作れる

ように教師は学習者にグループワークでは文法上の間違いや細かいことは気にせずに

日本語を使って話すように指示したまた日本語で自分の考えを表せない時には単語単

位での母語使用も認めた

(2)学習者の自信を高めるために注意した点<グループの組み方>

グループ内のメンバー間の能力差が大きいと能力の低い学習者が話す自信を失う恐れ

があるため学習者の日本語力に注意する必要もあると考えたしかし本コース受講者は

全員N3に合格しており似たような日本語レベルだとわかっていたためトピック1の際は

日本人と接触した経験の有無を基にグループを組むことにしたトピック23は他の学習者

とも仲間意識ができるように異なった相手と組むことにした

(3)グループワークⅠで注意した点<トピックに必要な語彙表現の補足>

学習者は話す時にことばが出てこないつまり語彙や表現が足りずに話せなくなる

ことが事前調査でわかった(第 1章を参照)そこで学習者がトピックについて話すための

手助けとなるようにグループワークⅠの前にはトピックの語彙に関するブレインストー

ミングを行いワークシート上の難しい語彙や表現の翻訳リストを配付しグループワーク

Ⅰの最後の報告の際には教師から語彙表現の確認を行ったこれによって学習者が自

分の頭の中で話す準備ができるように課題や発表に必要な語彙や表現の補足をした

(4)グループワークⅡで注意した点<聞き手への配慮>

学習者が「伝える」「聞く」ことに集中でき自分の考えを上手く「伝えられる」相手の

話を上手く「理解できる」ように発表を聞いた後に聞き手がコメントする活動と話し手

自身による発表のふり返りの活動(添付資料④を参照)を設定した学習者はこのワークシ

ートを利用し自分の話を話し手の立場から説明したり相手の話を聞き手の立場から確認

したりしたこれによって学習者は聞き手のことも意識することになり「話す」ことだけ

ではなく「わかってもらう」ことの大切さにも注目できるようになると考えた

5 調査概要

51 データの種類と収集方法

調査で収集したデータを主データと補足データに分けて述べる 511 主データ

(1)アンケート調査Ⅰ元田(2005 215-218221-222241-242)の調査票(質問紙)は

日本に留学し直説法で学ぶ学習者を対象にしているが本コースではインドで学ぶ

成人学習者を対象にしているため調査対象者の特徴を考慮し項目を選んで作成し

た 2第 1回の授業時学習者の日本語を話すことに対する自信の度合いを知るために

アンケート調査Ⅰ(以下アⅠ)(前)を行った同じ調査をアⅠ(後)として第 8回

の授業時学習者の自信の度合いの変化を見るために行った

(2)アンケート調査Ⅱグループワークの効果について筆者が項目を考えた調査であるア

ンケート調査Ⅱ(以下アⅡ)はグループワークを取り入れた授業に対する学習者の

反応を見るために第 8回の授業で行った

(3)ディスカッションⅠⅡの音声データ第 1回の授業で日本語で話すことに対する学

習者の問題点や不満点期待についてディスカッションⅠ(以下デⅠ)を行った(20

分程度)第 8回の授業で本コースに関する学習者からの意見や感想を聞くためにデ

ィスカッションⅡ(以下デⅡ)を行った(30分程度)

512 補足データ

(1)フィードバックシート学習者がトピック終了時に自分の発表についてふり返り授

業全体やグループワーク活動について記入した(添付資料⑤を参照)

(2)自己評価紙学習者が発表の評価の観点 3を基に自分の発表を評価し記入した

(3)コメント学習者が互いの発表に対して相互評価をし好意的建設的なコメントを

色の異なる付箋に書き発表者に渡した

(4)事前事後発表の教師評価紙教授歴 10年以上の非母語話者教師(以下NNT)3人が

コース終了後学習者の事前事後発表を評価した

(5)教師インタビューの音声データ筆者がコース修了後実践した授業の有効性や問題

点を知るためにプネムンバイ市の教授歴 5年以上の NNT 7人(上記の(4)の教師を

含む)に授業に関する意見や感想提案を聞いた

52 データ分析方法

アE

AⅠと AアE

AⅡの全体の回答傾向を探るために結果の表(表 45)を作成し変化がわかる

ように示した結果全体を見その中で変化があった学習者について個別に詳しく見たAアE

Ⅱには自由記述欄として感想や意見を書くスペースを設けており本稿では< >で示す

またデⅠⅡはやり取りを文字化し分析に必要な部分を日本語に訳したデの発話は

『 』で示す学習者のフィードバックシートや自己評価紙の回答そしてクラスメートか

らのコメントをまとめ主データをサポートするものがあるかどうかを調べた事前事後

発表の教師評価の結果からグループワークの取り入れが学習者の運用力の伸びにつながった

かどうかを調べた

53 クラス全体の結果の傾向と考察

アE

AⅠは学習者の自信や不安の変化を見る調査であるがクラス全体の分析結果(表 4を参照)

を見るとその回答は多様であり全体に共通する傾向は見られなかった不安を測る項目

は9項目(問 12457891112)であり自信に関する項目は4項目(問 3

61013)であったAアE

AⅠの結果では不安感に関する 9項目の内 7項目に不安感の低下が

見られたその中で問48は話す時に間違える心配に関するものであり問 1275

12は自分の日本語能力に関する不安についての項目であったそして自信の度合いに関す

る 4項目の内 3項目(問 3613)には上昇が見られた(531を参照)変化が見られな

かった項目は問 91011の 3項目であったまた自信の度合いに少し低下が見られた項

目もありそれらは学習者によって異なるものであった2名が低下を示した項目は問 68

の日本語の間違いや日本語力に関するものであった問 6891011 については 532

で述べる

AアE

AⅡはグループワークに対する学習者の反応を見る調査である(表 5を参照)回答を大き

く分けると回答 34は「あてはまる」回答 12は「あてはまらない」に分けられる学習

者は全員すべての項目に対して3か 4(あてはまる)という肯定的な回答を選びグループ

ワークを授業に定期的に(regularly)取り入れることに対して肯定的に捉えていることがわ

かった

表 4 学習者の話す不安自信の度合いの結果(授業前と後)(アンケート調査Ⅰ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

番号 質問項目 S1 S2 S3 S4 S5

前 後 前 後 前 後 前 後 前 後

1 授業のときで日本語を話すときたいてい

緊張します 3 3 4E A3E 2 2 4 4 3 3

2 日本語を話すとき笑われないかと心配し

ます A2E A1E 1 1 1 1 A3E A2E A2E A3E

4 他の学生の前で日本語をまちがえたとき

恥ずかしいと思います 3 3 2 2 1 1 A4E A3E A2E A3E

5 私には日本語の会話能力がないのだろう

かと心配になります 2 2 A4E A3E A1E A2E 2 2 A3E A2E

7 授業のとき日本語を使ってディスカッシ

ョンするとき緊張します A3E A2E A3E A2E 2 2 4 4 2 2

8 授業のとき日本語をまちがえないかと心

配します A3E A1E 3 3 1 1 A1E A3E A2E A3E

9 授業のとき日本語を使って発表すると

き緊張します 3 3 4 4 1 1 4 4 3 3

11 日本語の授業のときもっと自分に自信を

もてたらいいのにと思います 4 4 4 4 3 3 3 3 4 4

12 日本語での会話がなかなか上手にならな

くて心配です A3E A1E A4E A1E A1E A2E A3E A2E 2 2

3 私は他の学生と同じぐらい日本語がうま

くできます A3E A4E 3 3 3 3 A1E A2E 3 3

6 自分の日本語にはいい面がたくさんある

と思います A4E A3E A3E A2E 3 3 A2E A3E 2 2

10 私は自分の日本語を前向きに考えていま

す 4 4 4 4 4 4 3 3 4 4

13 みんなの前で自分の経験(例えば来日の経

験日本語学習の経験)について積極的に

話したいと思います

4 4 A4E A3E 4 4 3 3 A2E A3E

問12457891112は不安の度合いを示す項目であり高い数値は不安が高いことを示す問3

61013は自信の度合いを示す項目であり高い数値は自信が高いことを示すの項目は不安の減少自信

の上昇を表し網かけの項目はマイナスイメージからプラスイメージへの変化を表すの項目は自信の低下を

表す

表 5 グループワークに対する学習者の反応(アンケート調査Ⅱ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

質問内容 S1 S2 S3 S4 S5

1授業でペアグループワークを定期的にすれば多くの人の前で話す際に緊張し

ないだろう 4 4 3 4 3

2授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を話す時間違える心配は

しないだろう 4 4 3 3 4

3授業でペアグループワークを定期的にすればスピーチ大会のようなイベント

に参加したくなるだろう 4 4 3 3 4

4授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話したくなる

だろう 4 4 4 3 4

5授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を使って話す動機になる

だろう 4 4 3 3 3

意欲に関する問 4「授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話

したくなるだろう」に対して回答 4を 4名が選択しまた自信の度合いを表す項目問 1「多

くの人の前で話す際に緊張しないだろう」問 2「日本語を話す時間違える心配はしないだ

ろう」問 3「スピーチ大会のようなイベントに参加したくなるだろう」に対しては回答 4

が 3名で3が 2名であったまた問 5「授業でペアグループワークを定期的にすれば

日本語を使って話す動機になるだろう」に対しても回答 4が 2名3が 3名で全員肯定

的な回答であったこのことから話すことに対して前向きになり意欲の高まりが見られた

と考えられるこれは下記のアⅡデⅡの自由記述で発言された学習者の感想からもわか

アE

AⅡS2<このようなグループ活動を取り入れた授業を楽しみにしている>S3<このようなグループ活動を将

来も楽しみにしている>S4<この8日間の授業はとても豊かな経験だった>S5<このような授業はとても楽

しかったのでこれからも参加したい>

AデE

AⅡS2『他の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』S4『前はあまり話せなかったがテレビ

広告などのグループ活動をやっているうちに自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告また「グ

プタさんの話」によって授業がとても面白くなった』

531 学習者の自信の度合いが上昇した項目について

AアE

AⅠの結果については項目ごとの違いが明らかにできなかった部分があるためAデE

AⅠⅡ

の発言を引用し分析を進めるグループワークを取り入れた授業に参加する前に学習者

は自分の日本語の会話力話す時に間違えること間違えた時の周りの人からの反応など

について心配や不安な気持ちになり自信の度合いが低いことが AアE

AⅠ(前)と AデE

AⅠから見

られたAデE

AⅠで学習者は下記のように言っていた

しかしグループワークの際学習者同士が話し合うことによって安心でき緊張感が

減りそして自信を持って日本語で話せるようになったようであるそのことで得られた達

成感や満足感がデⅡで見られたその例と理由を 3つにまとめる

(1)安心感の醸成授業でグループワークを行うことで学習者の気持ちが落ち着き安心

感が得られた要因は下記のように考えられる

①共通の問題点や不安の共有デⅡでの下記の発言から学習者はグループワークを通して

互いに交流し日本語を話すことに関する共通の問題点や不安感を共有したことがわかる

S1『相手が同じレベルなので自分が言いたいことを気楽に表すことができた』S2『日本語が上手じゃないと

か緊張するのは自分1人だけじゃなくみんな同じ気持ちだそれが大事だった』『みんなレベルが同じなの

で相手と話す時に後で(日本語のことで)笑われるかもしれないなどの感じがしなかった』S3『活動をや

っているうちにお互いに慣れて緊張感が減った』

上記から他の学習者も日本語を話すことに対する問題を抱えていることや話す時に間

違えたり緊張したりするのは自分 1人ではなく他の学習者も同じだということを実感

し学習者は安心感を得ることができたと思われる

②教師の指示グループワークを始める前に文法や語彙の間違いの心配を気にせずに話す

単語単位なら母語を使ってもいいという教師からの指示があったため学習者が安心でき

緊張せずに日本語で話せたと考えられる

S2『間違いを指摘されなかったので話す時緊張しなかった』『母語使用が許されたことによってお互い楽な気持

ちになれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』S4『文法をあまり気にしないでまず話したい

ことを思いきって話す文法の間違いを直すのは後でもできる』S5『間違いに注意しなくてもよかったので

もっと自信を持って話せた』

S1『言いたいことがはっきり説明できない』S2『文法の知識はあるが適切に使えない』『日本語でたくさん話

したいけれどできない』『文型をたくさん知っていても話す時思い出せない』『読むことができる書くことが

できるでも会話はちょっと苦手』『話す時いいことばが見つからない』S3『話す練習が足りない』S4『教

科書の文法の勉強より運用できるようになる学習方法が必要』

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

とも仲間意識ができるように異なった相手と組むことにした

(3)グループワークⅠで注意した点<トピックに必要な語彙表現の補足>

学習者は話す時にことばが出てこないつまり語彙や表現が足りずに話せなくなる

ことが事前調査でわかった(第 1章を参照)そこで学習者がトピックについて話すための

手助けとなるようにグループワークⅠの前にはトピックの語彙に関するブレインストー

ミングを行いワークシート上の難しい語彙や表現の翻訳リストを配付しグループワーク

Ⅰの最後の報告の際には教師から語彙表現の確認を行ったこれによって学習者が自

分の頭の中で話す準備ができるように課題や発表に必要な語彙や表現の補足をした

(4)グループワークⅡで注意した点<聞き手への配慮>

学習者が「伝える」「聞く」ことに集中でき自分の考えを上手く「伝えられる」相手の

話を上手く「理解できる」ように発表を聞いた後に聞き手がコメントする活動と話し手

自身による発表のふり返りの活動(添付資料④を参照)を設定した学習者はこのワークシ

ートを利用し自分の話を話し手の立場から説明したり相手の話を聞き手の立場から確認

したりしたこれによって学習者は聞き手のことも意識することになり「話す」ことだけ

ではなく「わかってもらう」ことの大切さにも注目できるようになると考えた

5 調査概要

51 データの種類と収集方法

調査で収集したデータを主データと補足データに分けて述べる 511 主データ

(1)アンケート調査Ⅰ元田(2005 215-218221-222241-242)の調査票(質問紙)は

日本に留学し直説法で学ぶ学習者を対象にしているが本コースではインドで学ぶ

成人学習者を対象にしているため調査対象者の特徴を考慮し項目を選んで作成し

た 2第 1回の授業時学習者の日本語を話すことに対する自信の度合いを知るために

アンケート調査Ⅰ(以下アⅠ)(前)を行った同じ調査をアⅠ(後)として第 8回

の授業時学習者の自信の度合いの変化を見るために行った

(2)アンケート調査Ⅱグループワークの効果について筆者が項目を考えた調査であるア

ンケート調査Ⅱ(以下アⅡ)はグループワークを取り入れた授業に対する学習者の

反応を見るために第 8回の授業で行った

(3)ディスカッションⅠⅡの音声データ第 1回の授業で日本語で話すことに対する学

習者の問題点や不満点期待についてディスカッションⅠ(以下デⅠ)を行った(20

分程度)第 8回の授業で本コースに関する学習者からの意見や感想を聞くためにデ

ィスカッションⅡ(以下デⅡ)を行った(30分程度)

512 補足データ

(1)フィードバックシート学習者がトピック終了時に自分の発表についてふり返り授

業全体やグループワーク活動について記入した(添付資料⑤を参照)

(2)自己評価紙学習者が発表の評価の観点 3を基に自分の発表を評価し記入した

(3)コメント学習者が互いの発表に対して相互評価をし好意的建設的なコメントを

色の異なる付箋に書き発表者に渡した

(4)事前事後発表の教師評価紙教授歴 10年以上の非母語話者教師(以下NNT)3人が

コース終了後学習者の事前事後発表を評価した

(5)教師インタビューの音声データ筆者がコース修了後実践した授業の有効性や問題

点を知るためにプネムンバイ市の教授歴 5年以上の NNT 7人(上記の(4)の教師を

含む)に授業に関する意見や感想提案を聞いた

52 データ分析方法

アE

AⅠと AアE

AⅡの全体の回答傾向を探るために結果の表(表 45)を作成し変化がわかる

ように示した結果全体を見その中で変化があった学習者について個別に詳しく見たAアE

Ⅱには自由記述欄として感想や意見を書くスペースを設けており本稿では< >で示す

またデⅠⅡはやり取りを文字化し分析に必要な部分を日本語に訳したデの発話は

『 』で示す学習者のフィードバックシートや自己評価紙の回答そしてクラスメートか

らのコメントをまとめ主データをサポートするものがあるかどうかを調べた事前事後

発表の教師評価の結果からグループワークの取り入れが学習者の運用力の伸びにつながった

かどうかを調べた

53 クラス全体の結果の傾向と考察

アE

AⅠは学習者の自信や不安の変化を見る調査であるがクラス全体の分析結果(表 4を参照)

を見るとその回答は多様であり全体に共通する傾向は見られなかった不安を測る項目

は9項目(問 12457891112)であり自信に関する項目は4項目(問 3

61013)であったAアE

AⅠの結果では不安感に関する 9項目の内 7項目に不安感の低下が

見られたその中で問48は話す時に間違える心配に関するものであり問 1275

12は自分の日本語能力に関する不安についての項目であったそして自信の度合いに関す

る 4項目の内 3項目(問 3613)には上昇が見られた(531を参照)変化が見られな

かった項目は問 91011の 3項目であったまた自信の度合いに少し低下が見られた項

目もありそれらは学習者によって異なるものであった2名が低下を示した項目は問 68

の日本語の間違いや日本語力に関するものであった問 6891011 については 532

で述べる

AアE

AⅡはグループワークに対する学習者の反応を見る調査である(表 5を参照)回答を大き

く分けると回答 34は「あてはまる」回答 12は「あてはまらない」に分けられる学習

者は全員すべての項目に対して3か 4(あてはまる)という肯定的な回答を選びグループ

ワークを授業に定期的に(regularly)取り入れることに対して肯定的に捉えていることがわ

かった

表 4 学習者の話す不安自信の度合いの結果(授業前と後)(アンケート調査Ⅰ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

番号 質問項目 S1 S2 S3 S4 S5

前 後 前 後 前 後 前 後 前 後

1 授業のときで日本語を話すときたいてい

緊張します 3 3 4E A3E 2 2 4 4 3 3

2 日本語を話すとき笑われないかと心配し

ます A2E A1E 1 1 1 1 A3E A2E A2E A3E

4 他の学生の前で日本語をまちがえたとき

恥ずかしいと思います 3 3 2 2 1 1 A4E A3E A2E A3E

5 私には日本語の会話能力がないのだろう

かと心配になります 2 2 A4E A3E A1E A2E 2 2 A3E A2E

7 授業のとき日本語を使ってディスカッシ

ョンするとき緊張します A3E A2E A3E A2E 2 2 4 4 2 2

8 授業のとき日本語をまちがえないかと心

配します A3E A1E 3 3 1 1 A1E A3E A2E A3E

9 授業のとき日本語を使って発表すると

き緊張します 3 3 4 4 1 1 4 4 3 3

11 日本語の授業のときもっと自分に自信を

もてたらいいのにと思います 4 4 4 4 3 3 3 3 4 4

12 日本語での会話がなかなか上手にならな

くて心配です A3E A1E A4E A1E A1E A2E A3E A2E 2 2

3 私は他の学生と同じぐらい日本語がうま

くできます A3E A4E 3 3 3 3 A1E A2E 3 3

6 自分の日本語にはいい面がたくさんある

と思います A4E A3E A3E A2E 3 3 A2E A3E 2 2

10 私は自分の日本語を前向きに考えていま

す 4 4 4 4 4 4 3 3 4 4

13 みんなの前で自分の経験(例えば来日の経

験日本語学習の経験)について積極的に

話したいと思います

4 4 A4E A3E 4 4 3 3 A2E A3E

問12457891112は不安の度合いを示す項目であり高い数値は不安が高いことを示す問3

61013は自信の度合いを示す項目であり高い数値は自信が高いことを示すの項目は不安の減少自信

の上昇を表し網かけの項目はマイナスイメージからプラスイメージへの変化を表すの項目は自信の低下を

表す

表 5 グループワークに対する学習者の反応(アンケート調査Ⅱ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

質問内容 S1 S2 S3 S4 S5

1授業でペアグループワークを定期的にすれば多くの人の前で話す際に緊張し

ないだろう 4 4 3 4 3

2授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を話す時間違える心配は

しないだろう 4 4 3 3 4

3授業でペアグループワークを定期的にすればスピーチ大会のようなイベント

に参加したくなるだろう 4 4 3 3 4

4授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話したくなる

だろう 4 4 4 3 4

5授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を使って話す動機になる

だろう 4 4 3 3 3

意欲に関する問 4「授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話

したくなるだろう」に対して回答 4を 4名が選択しまた自信の度合いを表す項目問 1「多

くの人の前で話す際に緊張しないだろう」問 2「日本語を話す時間違える心配はしないだ

ろう」問 3「スピーチ大会のようなイベントに参加したくなるだろう」に対しては回答 4

が 3名で3が 2名であったまた問 5「授業でペアグループワークを定期的にすれば

日本語を使って話す動機になるだろう」に対しても回答 4が 2名3が 3名で全員肯定

的な回答であったこのことから話すことに対して前向きになり意欲の高まりが見られた

と考えられるこれは下記のアⅡデⅡの自由記述で発言された学習者の感想からもわか

アE

AⅡS2<このようなグループ活動を取り入れた授業を楽しみにしている>S3<このようなグループ活動を将

来も楽しみにしている>S4<この8日間の授業はとても豊かな経験だった>S5<このような授業はとても楽

しかったのでこれからも参加したい>

AデE

AⅡS2『他の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』S4『前はあまり話せなかったがテレビ

広告などのグループ活動をやっているうちに自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告また「グ

プタさんの話」によって授業がとても面白くなった』

531 学習者の自信の度合いが上昇した項目について

AアE

AⅠの結果については項目ごとの違いが明らかにできなかった部分があるためAデE

AⅠⅡ

の発言を引用し分析を進めるグループワークを取り入れた授業に参加する前に学習者

は自分の日本語の会話力話す時に間違えること間違えた時の周りの人からの反応など

について心配や不安な気持ちになり自信の度合いが低いことが AアE

AⅠ(前)と AデE

AⅠから見

られたAデE

AⅠで学習者は下記のように言っていた

しかしグループワークの際学習者同士が話し合うことによって安心でき緊張感が

減りそして自信を持って日本語で話せるようになったようであるそのことで得られた達

成感や満足感がデⅡで見られたその例と理由を 3つにまとめる

(1)安心感の醸成授業でグループワークを行うことで学習者の気持ちが落ち着き安心

感が得られた要因は下記のように考えられる

①共通の問題点や不安の共有デⅡでの下記の発言から学習者はグループワークを通して

互いに交流し日本語を話すことに関する共通の問題点や不安感を共有したことがわかる

S1『相手が同じレベルなので自分が言いたいことを気楽に表すことができた』S2『日本語が上手じゃないと

か緊張するのは自分1人だけじゃなくみんな同じ気持ちだそれが大事だった』『みんなレベルが同じなの

で相手と話す時に後で(日本語のことで)笑われるかもしれないなどの感じがしなかった』S3『活動をや

っているうちにお互いに慣れて緊張感が減った』

上記から他の学習者も日本語を話すことに対する問題を抱えていることや話す時に間

違えたり緊張したりするのは自分 1人ではなく他の学習者も同じだということを実感

し学習者は安心感を得ることができたと思われる

②教師の指示グループワークを始める前に文法や語彙の間違いの心配を気にせずに話す

単語単位なら母語を使ってもいいという教師からの指示があったため学習者が安心でき

緊張せずに日本語で話せたと考えられる

S2『間違いを指摘されなかったので話す時緊張しなかった』『母語使用が許されたことによってお互い楽な気持

ちになれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』S4『文法をあまり気にしないでまず話したい

ことを思いきって話す文法の間違いを直すのは後でもできる』S5『間違いに注意しなくてもよかったので

もっと自信を持って話せた』

S1『言いたいことがはっきり説明できない』S2『文法の知識はあるが適切に使えない』『日本語でたくさん話

したいけれどできない』『文型をたくさん知っていても話す時思い出せない』『読むことができる書くことが

できるでも会話はちょっと苦手』『話す時いいことばが見つからない』S3『話す練習が足りない』S4『教

科書の文法の勉強より運用できるようになる学習方法が必要』

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

(1)フィードバックシート学習者がトピック終了時に自分の発表についてふり返り授

業全体やグループワーク活動について記入した(添付資料⑤を参照)

(2)自己評価紙学習者が発表の評価の観点 3を基に自分の発表を評価し記入した

(3)コメント学習者が互いの発表に対して相互評価をし好意的建設的なコメントを

色の異なる付箋に書き発表者に渡した

(4)事前事後発表の教師評価紙教授歴 10年以上の非母語話者教師(以下NNT)3人が

コース終了後学習者の事前事後発表を評価した

(5)教師インタビューの音声データ筆者がコース修了後実践した授業の有効性や問題

点を知るためにプネムンバイ市の教授歴 5年以上の NNT 7人(上記の(4)の教師を

含む)に授業に関する意見や感想提案を聞いた

52 データ分析方法

アE

AⅠと AアE

AⅡの全体の回答傾向を探るために結果の表(表 45)を作成し変化がわかる

ように示した結果全体を見その中で変化があった学習者について個別に詳しく見たAアE

Ⅱには自由記述欄として感想や意見を書くスペースを設けており本稿では< >で示す

またデⅠⅡはやり取りを文字化し分析に必要な部分を日本語に訳したデの発話は

『 』で示す学習者のフィードバックシートや自己評価紙の回答そしてクラスメートか

らのコメントをまとめ主データをサポートするものがあるかどうかを調べた事前事後

発表の教師評価の結果からグループワークの取り入れが学習者の運用力の伸びにつながった

かどうかを調べた

53 クラス全体の結果の傾向と考察

アE

AⅠは学習者の自信や不安の変化を見る調査であるがクラス全体の分析結果(表 4を参照)

を見るとその回答は多様であり全体に共通する傾向は見られなかった不安を測る項目

は9項目(問 12457891112)であり自信に関する項目は4項目(問 3

61013)であったAアE

AⅠの結果では不安感に関する 9項目の内 7項目に不安感の低下が

見られたその中で問48は話す時に間違える心配に関するものであり問 1275

12は自分の日本語能力に関する不安についての項目であったそして自信の度合いに関す

る 4項目の内 3項目(問 3613)には上昇が見られた(531を参照)変化が見られな

かった項目は問 91011の 3項目であったまた自信の度合いに少し低下が見られた項

目もありそれらは学習者によって異なるものであった2名が低下を示した項目は問 68

の日本語の間違いや日本語力に関するものであった問 6891011 については 532

で述べる

AアE

AⅡはグループワークに対する学習者の反応を見る調査である(表 5を参照)回答を大き

く分けると回答 34は「あてはまる」回答 12は「あてはまらない」に分けられる学習

者は全員すべての項目に対して3か 4(あてはまる)という肯定的な回答を選びグループ

ワークを授業に定期的に(regularly)取り入れることに対して肯定的に捉えていることがわ

かった

表 4 学習者の話す不安自信の度合いの結果(授業前と後)(アンケート調査Ⅰ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

番号 質問項目 S1 S2 S3 S4 S5

前 後 前 後 前 後 前 後 前 後

1 授業のときで日本語を話すときたいてい

緊張します 3 3 4E A3E 2 2 4 4 3 3

2 日本語を話すとき笑われないかと心配し

ます A2E A1E 1 1 1 1 A3E A2E A2E A3E

4 他の学生の前で日本語をまちがえたとき

恥ずかしいと思います 3 3 2 2 1 1 A4E A3E A2E A3E

5 私には日本語の会話能力がないのだろう

かと心配になります 2 2 A4E A3E A1E A2E 2 2 A3E A2E

7 授業のとき日本語を使ってディスカッシ

ョンするとき緊張します A3E A2E A3E A2E 2 2 4 4 2 2

8 授業のとき日本語をまちがえないかと心

配します A3E A1E 3 3 1 1 A1E A3E A2E A3E

9 授業のとき日本語を使って発表すると

き緊張します 3 3 4 4 1 1 4 4 3 3

11 日本語の授業のときもっと自分に自信を

もてたらいいのにと思います 4 4 4 4 3 3 3 3 4 4

12 日本語での会話がなかなか上手にならな

くて心配です A3E A1E A4E A1E A1E A2E A3E A2E 2 2

3 私は他の学生と同じぐらい日本語がうま

くできます A3E A4E 3 3 3 3 A1E A2E 3 3

6 自分の日本語にはいい面がたくさんある

と思います A4E A3E A3E A2E 3 3 A2E A3E 2 2

10 私は自分の日本語を前向きに考えていま

す 4 4 4 4 4 4 3 3 4 4

13 みんなの前で自分の経験(例えば来日の経

験日本語学習の経験)について積極的に

話したいと思います

4 4 A4E A3E 4 4 3 3 A2E A3E

問12457891112は不安の度合いを示す項目であり高い数値は不安が高いことを示す問3

61013は自信の度合いを示す項目であり高い数値は自信が高いことを示すの項目は不安の減少自信

の上昇を表し網かけの項目はマイナスイメージからプラスイメージへの変化を表すの項目は自信の低下を

表す

表 5 グループワークに対する学習者の反応(アンケート調査Ⅱ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

質問内容 S1 S2 S3 S4 S5

1授業でペアグループワークを定期的にすれば多くの人の前で話す際に緊張し

ないだろう 4 4 3 4 3

2授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を話す時間違える心配は

しないだろう 4 4 3 3 4

3授業でペアグループワークを定期的にすればスピーチ大会のようなイベント

に参加したくなるだろう 4 4 3 3 4

4授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話したくなる

だろう 4 4 4 3 4

5授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を使って話す動機になる

だろう 4 4 3 3 3

意欲に関する問 4「授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話

したくなるだろう」に対して回答 4を 4名が選択しまた自信の度合いを表す項目問 1「多

くの人の前で話す際に緊張しないだろう」問 2「日本語を話す時間違える心配はしないだ

ろう」問 3「スピーチ大会のようなイベントに参加したくなるだろう」に対しては回答 4

が 3名で3が 2名であったまた問 5「授業でペアグループワークを定期的にすれば

日本語を使って話す動機になるだろう」に対しても回答 4が 2名3が 3名で全員肯定

的な回答であったこのことから話すことに対して前向きになり意欲の高まりが見られた

と考えられるこれは下記のアⅡデⅡの自由記述で発言された学習者の感想からもわか

アE

AⅡS2<このようなグループ活動を取り入れた授業を楽しみにしている>S3<このようなグループ活動を将

来も楽しみにしている>S4<この8日間の授業はとても豊かな経験だった>S5<このような授業はとても楽

しかったのでこれからも参加したい>

AデE

AⅡS2『他の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』S4『前はあまり話せなかったがテレビ

広告などのグループ活動をやっているうちに自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告また「グ

プタさんの話」によって授業がとても面白くなった』

531 学習者の自信の度合いが上昇した項目について

AアE

AⅠの結果については項目ごとの違いが明らかにできなかった部分があるためAデE

AⅠⅡ

の発言を引用し分析を進めるグループワークを取り入れた授業に参加する前に学習者

は自分の日本語の会話力話す時に間違えること間違えた時の周りの人からの反応など

について心配や不安な気持ちになり自信の度合いが低いことが AアE

AⅠ(前)と AデE

AⅠから見

られたAデE

AⅠで学習者は下記のように言っていた

しかしグループワークの際学習者同士が話し合うことによって安心でき緊張感が

減りそして自信を持って日本語で話せるようになったようであるそのことで得られた達

成感や満足感がデⅡで見られたその例と理由を 3つにまとめる

(1)安心感の醸成授業でグループワークを行うことで学習者の気持ちが落ち着き安心

感が得られた要因は下記のように考えられる

①共通の問題点や不安の共有デⅡでの下記の発言から学習者はグループワークを通して

互いに交流し日本語を話すことに関する共通の問題点や不安感を共有したことがわかる

S1『相手が同じレベルなので自分が言いたいことを気楽に表すことができた』S2『日本語が上手じゃないと

か緊張するのは自分1人だけじゃなくみんな同じ気持ちだそれが大事だった』『みんなレベルが同じなの

で相手と話す時に後で(日本語のことで)笑われるかもしれないなどの感じがしなかった』S3『活動をや

っているうちにお互いに慣れて緊張感が減った』

上記から他の学習者も日本語を話すことに対する問題を抱えていることや話す時に間

違えたり緊張したりするのは自分 1人ではなく他の学習者も同じだということを実感

し学習者は安心感を得ることができたと思われる

②教師の指示グループワークを始める前に文法や語彙の間違いの心配を気にせずに話す

単語単位なら母語を使ってもいいという教師からの指示があったため学習者が安心でき

緊張せずに日本語で話せたと考えられる

S2『間違いを指摘されなかったので話す時緊張しなかった』『母語使用が許されたことによってお互い楽な気持

ちになれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』S4『文法をあまり気にしないでまず話したい

ことを思いきって話す文法の間違いを直すのは後でもできる』S5『間違いに注意しなくてもよかったので

もっと自信を持って話せた』

S1『言いたいことがはっきり説明できない』S2『文法の知識はあるが適切に使えない』『日本語でたくさん話

したいけれどできない』『文型をたくさん知っていても話す時思い出せない』『読むことができる書くことが

できるでも会話はちょっと苦手』『話す時いいことばが見つからない』S3『話す練習が足りない』S4『教

科書の文法の勉強より運用できるようになる学習方法が必要』

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

ワークを授業に定期的に(regularly)取り入れることに対して肯定的に捉えていることがわ

かった

表 4 学習者の話す不安自信の度合いの結果(授業前と後)(アンケート調査Ⅰ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

番号 質問項目 S1 S2 S3 S4 S5

前 後 前 後 前 後 前 後 前 後

1 授業のときで日本語を話すときたいてい

緊張します 3 3 4E A3E 2 2 4 4 3 3

2 日本語を話すとき笑われないかと心配し

ます A2E A1E 1 1 1 1 A3E A2E A2E A3E

4 他の学生の前で日本語をまちがえたとき

恥ずかしいと思います 3 3 2 2 1 1 A4E A3E A2E A3E

5 私には日本語の会話能力がないのだろう

かと心配になります 2 2 A4E A3E A1E A2E 2 2 A3E A2E

7 授業のとき日本語を使ってディスカッシ

ョンするとき緊張します A3E A2E A3E A2E 2 2 4 4 2 2

8 授業のとき日本語をまちがえないかと心

配します A3E A1E 3 3 1 1 A1E A3E A2E A3E

9 授業のとき日本語を使って発表すると

き緊張します 3 3 4 4 1 1 4 4 3 3

11 日本語の授業のときもっと自分に自信を

もてたらいいのにと思います 4 4 4 4 3 3 3 3 4 4

12 日本語での会話がなかなか上手にならな

くて心配です A3E A1E A4E A1E A1E A2E A3E A2E 2 2

3 私は他の学生と同じぐらい日本語がうま

くできます A3E A4E 3 3 3 3 A1E A2E 3 3

6 自分の日本語にはいい面がたくさんある

と思います A4E A3E A3E A2E 3 3 A2E A3E 2 2

10 私は自分の日本語を前向きに考えていま

す 4 4 4 4 4 4 3 3 4 4

13 みんなの前で自分の経験(例えば来日の経

験日本語学習の経験)について積極的に

話したいと思います

4 4 A4E A3E 4 4 3 3 A2E A3E

問12457891112は不安の度合いを示す項目であり高い数値は不安が高いことを示す問3

61013は自信の度合いを示す項目であり高い数値は自信が高いことを示すの項目は不安の減少自信

の上昇を表し網かけの項目はマイナスイメージからプラスイメージへの変化を表すの項目は自信の低下を

表す

表 5 グループワークに対する学習者の反応(アンケート調査Ⅱ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

質問内容 S1 S2 S3 S4 S5

1授業でペアグループワークを定期的にすれば多くの人の前で話す際に緊張し

ないだろう 4 4 3 4 3

2授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を話す時間違える心配は

しないだろう 4 4 3 3 4

3授業でペアグループワークを定期的にすればスピーチ大会のようなイベント

に参加したくなるだろう 4 4 3 3 4

4授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話したくなる

だろう 4 4 4 3 4

5授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を使って話す動機になる

だろう 4 4 3 3 3

意欲に関する問 4「授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話

したくなるだろう」に対して回答 4を 4名が選択しまた自信の度合いを表す項目問 1「多

くの人の前で話す際に緊張しないだろう」問 2「日本語を話す時間違える心配はしないだ

ろう」問 3「スピーチ大会のようなイベントに参加したくなるだろう」に対しては回答 4

が 3名で3が 2名であったまた問 5「授業でペアグループワークを定期的にすれば

日本語を使って話す動機になるだろう」に対しても回答 4が 2名3が 3名で全員肯定

的な回答であったこのことから話すことに対して前向きになり意欲の高まりが見られた

と考えられるこれは下記のアⅡデⅡの自由記述で発言された学習者の感想からもわか

アE

AⅡS2<このようなグループ活動を取り入れた授業を楽しみにしている>S3<このようなグループ活動を将

来も楽しみにしている>S4<この8日間の授業はとても豊かな経験だった>S5<このような授業はとても楽

しかったのでこれからも参加したい>

AデE

AⅡS2『他の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』S4『前はあまり話せなかったがテレビ

広告などのグループ活動をやっているうちに自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告また「グ

プタさんの話」によって授業がとても面白くなった』

531 学習者の自信の度合いが上昇した項目について

AアE

AⅠの結果については項目ごとの違いが明らかにできなかった部分があるためAデE

AⅠⅡ

の発言を引用し分析を進めるグループワークを取り入れた授業に参加する前に学習者

は自分の日本語の会話力話す時に間違えること間違えた時の周りの人からの反応など

について心配や不安な気持ちになり自信の度合いが低いことが AアE

AⅠ(前)と AデE

AⅠから見

られたAデE

AⅠで学習者は下記のように言っていた

しかしグループワークの際学習者同士が話し合うことによって安心でき緊張感が

減りそして自信を持って日本語で話せるようになったようであるそのことで得られた達

成感や満足感がデⅡで見られたその例と理由を 3つにまとめる

(1)安心感の醸成授業でグループワークを行うことで学習者の気持ちが落ち着き安心

感が得られた要因は下記のように考えられる

①共通の問題点や不安の共有デⅡでの下記の発言から学習者はグループワークを通して

互いに交流し日本語を話すことに関する共通の問題点や不安感を共有したことがわかる

S1『相手が同じレベルなので自分が言いたいことを気楽に表すことができた』S2『日本語が上手じゃないと

か緊張するのは自分1人だけじゃなくみんな同じ気持ちだそれが大事だった』『みんなレベルが同じなの

で相手と話す時に後で(日本語のことで)笑われるかもしれないなどの感じがしなかった』S3『活動をや

っているうちにお互いに慣れて緊張感が減った』

上記から他の学習者も日本語を話すことに対する問題を抱えていることや話す時に間

違えたり緊張したりするのは自分 1人ではなく他の学習者も同じだということを実感

し学習者は安心感を得ることができたと思われる

②教師の指示グループワークを始める前に文法や語彙の間違いの心配を気にせずに話す

単語単位なら母語を使ってもいいという教師からの指示があったため学習者が安心でき

緊張せずに日本語で話せたと考えられる

S2『間違いを指摘されなかったので話す時緊張しなかった』『母語使用が許されたことによってお互い楽な気持

ちになれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』S4『文法をあまり気にしないでまず話したい

ことを思いきって話す文法の間違いを直すのは後でもできる』S5『間違いに注意しなくてもよかったので

もっと自信を持って話せた』

S1『言いたいことがはっきり説明できない』S2『文法の知識はあるが適切に使えない』『日本語でたくさん話

したいけれどできない』『文型をたくさん知っていても話す時思い出せない』『読むことができる書くことが

できるでも会話はちょっと苦手』『話す時いいことばが見つからない』S3『話す練習が足りない』S4『教

科書の文法の勉強より運用できるようになる学習方法が必要』

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

問12457891112は不安の度合いを示す項目であり高い数値は不安が高いことを示す問3

61013は自信の度合いを示す項目であり高い数値は自信が高いことを示すの項目は不安の減少自信

の上昇を表し網かけの項目はマイナスイメージからプラスイメージへの変化を表すの項目は自信の低下を

表す

表 5 グループワークに対する学習者の反応(アンケート調査Ⅱ)

1全くあてはまらない 2あまりあてはまらない 3少しあてはまる 4 非常にあてはまる

質問内容 S1 S2 S3 S4 S5

1授業でペアグループワークを定期的にすれば多くの人の前で話す際に緊張し

ないだろう 4 4 3 4 3

2授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を話す時間違える心配は

しないだろう 4 4 3 3 4

3授業でペアグループワークを定期的にすればスピーチ大会のようなイベント

に参加したくなるだろう 4 4 3 3 4

4授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話したくなる

だろう 4 4 4 3 4

5授業でペアグループワークを定期的にすれば日本語を使って話す動機になる

だろう 4 4 3 3 3

意欲に関する問 4「授業でペアグループワークを定期的にすれば日本人に会った時話

したくなるだろう」に対して回答 4を 4名が選択しまた自信の度合いを表す項目問 1「多

くの人の前で話す際に緊張しないだろう」問 2「日本語を話す時間違える心配はしないだ

ろう」問 3「スピーチ大会のようなイベントに参加したくなるだろう」に対しては回答 4

が 3名で3が 2名であったまた問 5「授業でペアグループワークを定期的にすれば

日本語を使って話す動機になるだろう」に対しても回答 4が 2名3が 3名で全員肯定

的な回答であったこのことから話すことに対して前向きになり意欲の高まりが見られた

と考えられるこれは下記のアⅡデⅡの自由記述で発言された学習者の感想からもわか

アE

AⅡS2<このようなグループ活動を取り入れた授業を楽しみにしている>S3<このようなグループ活動を将

来も楽しみにしている>S4<この8日間の授業はとても豊かな経験だった>S5<このような授業はとても楽

しかったのでこれからも参加したい>

AデE

AⅡS2『他の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』S4『前はあまり話せなかったがテレビ

広告などのグループ活動をやっているうちに自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告また「グ

プタさんの話」によって授業がとても面白くなった』

531 学習者の自信の度合いが上昇した項目について

AアE

AⅠの結果については項目ごとの違いが明らかにできなかった部分があるためAデE

AⅠⅡ

の発言を引用し分析を進めるグループワークを取り入れた授業に参加する前に学習者

は自分の日本語の会話力話す時に間違えること間違えた時の周りの人からの反応など

について心配や不安な気持ちになり自信の度合いが低いことが AアE

AⅠ(前)と AデE

AⅠから見

られたAデE

AⅠで学習者は下記のように言っていた

しかしグループワークの際学習者同士が話し合うことによって安心でき緊張感が

減りそして自信を持って日本語で話せるようになったようであるそのことで得られた達

成感や満足感がデⅡで見られたその例と理由を 3つにまとめる

(1)安心感の醸成授業でグループワークを行うことで学習者の気持ちが落ち着き安心

感が得られた要因は下記のように考えられる

①共通の問題点や不安の共有デⅡでの下記の発言から学習者はグループワークを通して

互いに交流し日本語を話すことに関する共通の問題点や不安感を共有したことがわかる

S1『相手が同じレベルなので自分が言いたいことを気楽に表すことができた』S2『日本語が上手じゃないと

か緊張するのは自分1人だけじゃなくみんな同じ気持ちだそれが大事だった』『みんなレベルが同じなの

で相手と話す時に後で(日本語のことで)笑われるかもしれないなどの感じがしなかった』S3『活動をや

っているうちにお互いに慣れて緊張感が減った』

上記から他の学習者も日本語を話すことに対する問題を抱えていることや話す時に間

違えたり緊張したりするのは自分 1人ではなく他の学習者も同じだということを実感

し学習者は安心感を得ることができたと思われる

②教師の指示グループワークを始める前に文法や語彙の間違いの心配を気にせずに話す

単語単位なら母語を使ってもいいという教師からの指示があったため学習者が安心でき

緊張せずに日本語で話せたと考えられる

S2『間違いを指摘されなかったので話す時緊張しなかった』『母語使用が許されたことによってお互い楽な気持

ちになれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』S4『文法をあまり気にしないでまず話したい

ことを思いきって話す文法の間違いを直すのは後でもできる』S5『間違いに注意しなくてもよかったので

もっと自信を持って話せた』

S1『言いたいことがはっきり説明できない』S2『文法の知識はあるが適切に使えない』『日本語でたくさん話

したいけれどできない』『文型をたくさん知っていても話す時思い出せない』『読むことができる書くことが

できるでも会話はちょっと苦手』『話す時いいことばが見つからない』S3『話す練習が足りない』S4『教

科書の文法の勉強より運用できるようになる学習方法が必要』

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

AアE

AⅠの結果については項目ごとの違いが明らかにできなかった部分があるためAデE

AⅠⅡ

の発言を引用し分析を進めるグループワークを取り入れた授業に参加する前に学習者

は自分の日本語の会話力話す時に間違えること間違えた時の周りの人からの反応など

について心配や不安な気持ちになり自信の度合いが低いことが AアE

AⅠ(前)と AデE

AⅠから見

られたAデE

AⅠで学習者は下記のように言っていた

しかしグループワークの際学習者同士が話し合うことによって安心でき緊張感が

減りそして自信を持って日本語で話せるようになったようであるそのことで得られた達

成感や満足感がデⅡで見られたその例と理由を 3つにまとめる

(1)安心感の醸成授業でグループワークを行うことで学習者の気持ちが落ち着き安心

感が得られた要因は下記のように考えられる

①共通の問題点や不安の共有デⅡでの下記の発言から学習者はグループワークを通して

互いに交流し日本語を話すことに関する共通の問題点や不安感を共有したことがわかる

S1『相手が同じレベルなので自分が言いたいことを気楽に表すことができた』S2『日本語が上手じゃないと

か緊張するのは自分1人だけじゃなくみんな同じ気持ちだそれが大事だった』『みんなレベルが同じなの

で相手と話す時に後で(日本語のことで)笑われるかもしれないなどの感じがしなかった』S3『活動をや

っているうちにお互いに慣れて緊張感が減った』

上記から他の学習者も日本語を話すことに対する問題を抱えていることや話す時に間

違えたり緊張したりするのは自分 1人ではなく他の学習者も同じだということを実感

し学習者は安心感を得ることができたと思われる

②教師の指示グループワークを始める前に文法や語彙の間違いの心配を気にせずに話す

単語単位なら母語を使ってもいいという教師からの指示があったため学習者が安心でき

緊張せずに日本語で話せたと考えられる

S2『間違いを指摘されなかったので話す時緊張しなかった』『母語使用が許されたことによってお互い楽な気持

ちになれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』S4『文法をあまり気にしないでまず話したい

ことを思いきって話す文法の間違いを直すのは後でもできる』S5『間違いに注意しなくてもよかったので

もっと自信を持って話せた』

S1『言いたいことがはっきり説明できない』S2『文法の知識はあるが適切に使えない』『日本語でたくさん話

したいけれどできない』『文型をたくさん知っていても話す時思い出せない』『読むことができる書くことが

できるでも会話はちょっと苦手』『話す時いいことばが見つからない』S3『話す練習が足りない』S4『教

科書の文法の勉強より運用できるようになる学習方法が必要』

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

③学習者同士の学び合い従来の教師主導的な授業と違ってグループワークをするために

クラスメート同士話し合ったり意見交換したりする機会があった授業の前のデⅠで学

習者は『日本人がいないから練習する機会がない』(S2)『ネイティブの教師と会話練習

をすることが大事だ』(S3)と述べていたが授業後はグループワークで自分より話すこ

とが得意に見える人と交流することによって自分の語彙や表現も上達したように感じた

という発言も見られた

S3『話し言葉を習うためにわざわざ日本人の教師のところに行かなくてもいいと思った』『グループ活動で語

彙や言葉遣いが得意な人と交流することによって自分も正しい語彙や文などが勉強になったそれはとても役

に立ったと思う』

④楽しい雰囲気づくりグループワークで新しい形態の活動を経験しまたその経験が面白

くてわかりやすかったことで授業が楽しくなり学習者の日本語で話すことに対する緊張

感が減ったことが次の記述(デⅡ)からわかる

S2『クラスがとても面白くてわかりやすかったこのようなクラスがあれば将来きっと日本語がもっと流暢に

話せると思う』S4『前はあまり話せなかったでも次第にテレビ広告などのグループ活動をやっているうちに

自分に変化を感じた』S5『活動でやったテレビ広告(見て内容を話す活動)また「グプタさんの話」(ス

トーリー完成の活動)によって授業がとても面白くなった』(は筆者注)

上記の①~④のことで学習者は緊張感が減り自信を持って日本語で話せるようになったと

考えられる(アⅠ(後)の問 1247)また日本語レベルが全員ほぼ同じであり自

分の日本語力は思ったほど悪くないと感じたようであるその結果気持ちが楽になり自

尊心の高まりによって自信が高まったと考えられる(アⅠ(後)問 36)

(2)会話練習機会の増加グループワークを授業に取り入れることによって日本語で話す

機会が従来の授業に比べて多かったこと活動によって学習者が緊張せずに自分の考えを日

本語で話せたことからの満足感が得られたということがデⅡの感想やフィードバックシー

ト(添付資料⑤の問 45)の回答からわかった

(3)学習者同士のお互いへのコメント下記に見られるような好意的なコメントが励まし

になり学習者の日本語で話す自信の高まりにも貢献したのではないかと考えられる以下

好意的コメントのうち類似したコメントを集約して記述する建設的なコメントについて

は 532で述べる

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

以上の点以外に次のことが考えられるグループワークは学習者の不安を減らし自

信を高めただけではなく学習者の学習動機や意欲の高まりにも影響を与えたことは下記

の学習者からの授業改善に関する積極的な提案(デⅡ)からもわかる

S1『グループワークを定期的にする時母語使用に対してもっと厳しくした方がいいと思う』S2『トピックに

関係する決まった文型の使用もあった方がもっと効果的になる』『インプットが聴解の形になって聞き取った

ことを説明したりそれについて話したりするようなことも考えられる』S4『トピックに関係する表現なども

使うようにさせる』S5『ある場面の動画を見せてそれを演技させる』

学習者がグループワークに興味を持ち将来このような授業に参加することを楽しみに

していることがうかがえこのことは学習動機にもつながると考えられる

上記考察を通じてLong amp Porter (1985) のグループワークを用いる利点(言語の練習機

会を増やす活動的で情緒的に安心できる雰囲気を作り出す学習者の動機を高める)元

田(2005)の学習者の第二言語不安の軽減(仲間づくりコミュニケーションに焦点を当て

た活動)と同様のことが本研究でも確認することができた

532 自信の度合いが変化しなかった項目低下した項目について

アE

AⅠ(前後)の結果には自信の度合いに変化が見られなかった項目や低下が見られた項目

もある変化が見られなかった項目は次の通りであるAアE

AⅠの問 10は自分の日本語を前向き

に考えているかどうかという態度に関するものであり元々高い度合いを示しており変化

のしようがなかったと考えられるAアE

AⅠの問 911は度合いが低いままにとどまったし

かし本コースの授業は 6回だったがインドの民間学校では1コース半年続くことが多

い発表という活動形態には緊張が伴うが実際のカリキュラムに組み込んだ場合は時間

をかけてその緊張を弱めることができ問 9の不安感について改善可能と考えられるまた

同様に総合的な日本語力が短期間で伸びるものではないがカリキュラムに組み込んだ場合

時間をかけて仲間意識を高め安心感を抱いたり自信を高めたりし問11の不安感を改善

することができると考えられるそれから表 4を見るとS3は 他の学習者に比べて変化

なしが目立つ日本の滞在歴が長いこと自然習得で日本語を身に付けたことなど他の学

習者と異なる学習背景を持つことが要因の1つだったのではないかと考えられる

発表を聞いて自分も語彙をたくさん勉強しようと思った説明がわかりやすかった内容が面白かった発音

がはっきりしていた手振りや顔の表情がよかった

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

また結果に低下が見られた項目は問 68でありその理由としてクラスメートからも

らったコメントによって学習者は自分の日本語を意識するようになり自分の発表をふり

返るきっかけが得られた可能性がある建設的なコメントは集約して次に記す

もう少し話した方がいいと思う文法の使い方に気を付けてください話の流れについて気を付けてください

もっと説明した方がいい簡単なことばを使った方がいいもう少しがんばったらもっと上手くできる話

す時文を途中でやめないで全部言ってください

54 学習者個別の分析の結果と考察

S2も S4も日本語を使って会話をすることに対する自信が低かったようである

S2『この授業の最初の日はとてもとても緊張していて実際に震えていた』S4『前はあまり話せなかった

授業で会話の機会があっても緊張のあまり舌がもつれてしまった』

ただし分析の結果2 人には自信の度合いに変化が見られたという共通の部分があるため

S2S4を個別に分析することにした

(1)S2の分析

この授業の前にS2が自分の会話力に不満を持っていたことは S2の感想からわかる(『読

むことができる書くことができるでも会話はちょっと苦手』『このクラスの前私は日

本語で話せるとは思いもしなかった』『文型は勉強したが話そうとする時出てこないこと

が大きな問題だ』)アⅠ(前)と(後)を比べるとS2の自信の高まりが見られた項目(問

14rarr3問 54rarr3問 73rarr2問 124rarr1)は全て話すことに関連し特に日本語で会

話をすることに関しては著しい上昇(問 124rarr1)が見られたS2の感想を見ると①ト

ピックで使われる語彙の準備ができたこと(『トピックが予めわかったことはとてもよかっ

たそのおかげで使いたい単語が考えられて話す時迷わなくて話の流れがよくなった』)

②話の途中で間違いを指摘されなかったこと(『話している途中で間違いを指摘されなかっ

たことはよかったと思うそうされた場合話す時緊張しただろう』)③母語使用がサポ

ートになったこと(『この授業は母語使用が許されたことによってお互い楽な気持ちに

なれて活動ができたこれからは日本語だけでも話せる』)④クラスメートと問題点や不安

が共通していたこと(『みんな問題や気持ちが同じなのでお互いの気持ちが分かりやすく

なった』)などがあげられ安心でき気楽に話せたことで話すことに自信が高まったと

考えられる(『この授業が終わった後今少し日本語ができるようになったと思う』『他

の人の前で日本語で話すことができて自信がついた』)以上の点は今回の授業設計

実施で留意した点(423に詳述)と呼応しておりこれらが S2の自信を高める上で重要な

要因となったと考えられる

(2)S4の分析

S4はアE

AⅠの問 23rarr2問 44rarr3問 123rarr2問 31rarr2問 62rarr3などの結果

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

から自信に関して全体的に肯定的な変化が見られたS4は教科書で学んだ文法上の知識が

運用できないことに不満を持っていた(『教科書で学んだことを会話で使おうとしたらで

きなくなる』『習ったことをもっと運用する必要がある』)しかしグループワークを取

り入れた授業に参加した後文法の正確さを気にせずに話せたこと(『文法のことをあまり気

にしないでまず話したいことを思い切って話す文法の間違いを直すのは後でもできる』)

昔覚えたことばを思い出して使えたこと(『5年前に覚えたことばをところどころ使うこと

ができたたくさんは使えなかったかもしれないが少なくとも学んだことが思い出せた』)

で達成感を感じ教科書で学んだ文法の知識を運用できたことに対する満足感が感想ではっ

きり表れた(『前は日本語で全く考えられなかったでもこの授業でわずか 4行だったが日

本語で話すことができた』)このことが S4の自信の度合いの上昇につながったと考えられる

S2と S4の分析の結果S2はクラスメートと日本語で会話ができたこと人前で日本語が

すらすら話せたことで自分の自信の高まりを表していることに対しS4は自分をふり返って

みて今回の授業で昔勉強した言葉や表現が使いこなせるようになってきたことを感じ

そこから生まれた満足感や達成感により自分の自信の高まりを表しているようであるこの

ように 2 人の表し方は違うが2 人とも日本語で話す自信が増したと考えられる以上のこ

とからそれぞれの学習者が違う観点で日本語学習を捉えている可能性がありグループワ

ークを取り入れた授業を実施する上で教師は個々の学びのあり方の違いにも配慮すること

が大切だと考えられる

6 グループワークの効果と留意点

61 グループワークの効果について

本研究でのグループワークの目的は学習者同士が交流できる機会を作り安心した雰囲

気を作ることや話す練習の機会を増やすことによって学習者の自信の度合いを高めること

であったグループワークを取り入れた授業に参加した後学習者の日本語で話すことに対

する不安が減り自信が高まったことがアⅠⅡの結果から明らかになったまたアⅡの

自由記述やデⅡでの学習者の感想からグループワークに対する学習者の反応が肯定的であ

りグループワークに積極的に参加していたこともわかったではなぜ学習者はグループ

ワークを通して話す不安が軽減しまた話す自信を高めただろうか以下それぞれの理

由について述べる

(1)グループワークが学習者の話す不安を軽減できた理由

学習者は従来の教師主導的な授業でお互いやり取りする機会はほとんどなく他者の日

本語で話す力に関する問題点や不安を知ることができず自分だけが問題を抱えており他

の学習者に比べ会話力が弱いのではないかと思っていたかもしれないまた他の人の前で

話す機会がなかったため間違ったら笑われるという心配や恥ずかしさを感じていた可能性

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

がある(531(1)①を参照)しかしグループワークの時学習者間のやり取りの中共

通の問題点や不安の共有によって仲間意識が作られたこと教師の指示によって間違える心

配を軽減させられたことグループワークの面白い活動を行っている内に作られた楽しい雰

囲気の中で学習者はより気楽になれたことなどが学習者を安心させ不安を軽減させたと

考えられる

(2)グループワークが学習者の話す自信を高められた理由

事前調査やデⅠから①語彙が足りないこと②文法や語彙を適切(正確)に使えないこと

などに不安を感じており学習者が自らの考えを表現する際に以前学んだ文法や語彙など

の知識から必要なことばを探し出すような練習の機会がなかったため話す自信が持てず

にいたのではないかと考えられるグループワークでグループごとにゴール達成に向けて

行ったやり取りは学習者が持っている知識を整理し使ってみるよい機会となっただろう

さらに文法の間違いの心配がなくなり「自分が適切な言葉遣いができないから話せない

相手に理解してもらえない」という足枷になるような心理的な制限が少なくなったまた

クラス全体の前でいきなり話すのではなく限られたグループメンバーの前で発表し問題

点を教えてもらった後学習者は間違いを直すことができ内容により自信を持ってクラ

ス全員の前で話せるようになったことも自信の高まりに貢献したと思われる

以上の理由でグループワークには学習者の話すことに関する不安を軽減させ自信を高

める効果があったと言えるだろう

62 グループワークを行う際の留意点について

上記のように今回行ったグループワークには効果が認められるがグループワークを効

果的に行うために教師が注意すべき 4つの点が確認できた

(1)指示の仕方学習者の不安感を減らし気楽に話させるために単語単位で母語使用を認

めたまた学習者にまず話してもらうそして文法の間違いなどの不安を減らす目的で

文法の正確さに気を取られずに話すよう指示したしかし教師が注意しないと母語使

用に頼りすぎたり文法使用上の間違いが多くなったりする恐れがある従って学習者

のレベルや自信の度合いを測りどの程度まで母語使用が適切か無視できない間違いの

修正はどうするかなど教師が適切に判断する必要がある

(2)グループの組み方学習者は他のクラスメートの日本語力を気にする傾向がある(531

(1)①)ためグループを組む時学習者のレベルにあまり差がないように注意する必要

がある

(3)インプット素材アウトプット方法の工夫グループ活動を定期的に行う場合同じ形式

の活動が重なると面白くなくなり効果が薄くなる可能性がある学習者からの提案

(531)にもあるようにインプット素材として視聴覚教材を活用することアウトプット

の方法として説明したり演技したりするなど様々な方法を組み合わせることが必要だ

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

ろう

(4)教師からのフィードバック学習者の日本語力の向上のために教師からのフィードバッ

クは欠かせないものであるただし学習者は話している途中で間違いを指摘されると緊

張してしまうことからグループワークの活動における教師からのフィードバックについ

てタイミングや内容を検討する必要がある

63 授業にグループワークを取り入れることの実現可能性について

学習者から『将来このような授業に必ず参加したい』(S2)などの声が聞かれグループワ

ークを取り入れた授業への期待を垣間見ることができた一方で教師を対象としたインタビ

ュー調査で授業にグループワークを取り入れることに対する共通の問題点として「時間」

があげられた

ldquoこのような活動をぜひやりたいと思うが限られた時間でこれができるかどうかは問題だrdquoldquo時間がないから

どれぐらいできるか疑問だrdquoldquo時間だけが問題点だシラバスを終えなければならないから会話練習の時間が

作りにくいrdquoldquo学習者は最低限の時間で最大限の学びがしたいrdquo

民間学校の日本語コースはJLPT 受験のためのカリキュラムが組まれていることが多く

限られた時間数で行われることが多いため授業にグループワークを取り入れることが難し

いという意見が出たが筆者の教師経験から推察するとそれはグループワークのやり方

効果がわからないため時間を理由に拒絶感を表したのではないかと思われるというのも

授業を見学していた民間学校の教師がその後自分の授業でグループワークを取り入れ始め

たということを耳にしたためである実際にグループワークを目にしたりやり方を学んだ

りすればインドの教師でも取り入れてみたいと思うのかもしれないまた本研究で 2種

類のグループワークを取り入れたが現在の民間学校でのシラバスに合わせつつ必要に応

じて活動の種類や数内容を変えたりグループワーク活動を入れた授業の頻度をカリキュ

ラムに合わせたりするなど様々な工夫が考えられる従って筆者はインドの民間学校

においてもグループワークが実施可能であると考える

7 まとめと今後の課題

話す自信の上昇についての研究課題 1においてはグループワークによって安心できる雰

囲気や日本語での会話練習の機会が作られたことで学習者は不安感が減り自信を持って

話せたことがわかった研究課題 2においてはグループワークをデザインする際に注意す

べき点として指示の仕方グループの組み方などが確認できた本研究を通しグループ

ワークはインドの民間学校の成人学習者に肯定的に捉えられ教師の理解さえ得られれば民

間学校でも実施可能であることがわかった

今回の授業では学習者の自信を高めることを重視してコースをデザインした民間学校

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

の日本語教育ではグループワークによって学習者が話す自信がついてきた段階で学習

者の全体的な運用力の伸びにつながる活動についても考える必要があるその際に教師は

グループワークが次第に学習者の話の構成内容説明のし方接続詞の使用話のまと

め方文法的な正確さ発音流暢さなどの向上にもつながるように注目する必要がある

また活動中のクラスメートからのフィードバックや活動後の教師からのフィードバックに

より学習者の日本語面についての対応にも時間をかける必要がある

今回の実践では54 の最後に述べたように個々の学びのあり方への配慮が足りていなか

ったまたグループワークの際グループ内でどのようなやり取りがなされていたか教

師による把握は十分だったとは言えない自国で実践する際にはLong Porterのグルー

プワークの利点「学生の対話の質を改善する」「個別指導を促進する」にも着目しグループ

ワークのあり方を考えてみたいと思う

謝辞

本研究に協力してくださった民間学校 Vzone Academyプネムンバイの先生方に感謝申

し上げます

注 1 調査は選択式の質問紙調査であり民間学校の成人学習者を対象に実施した 2 元田(2005)の「日本語不安(教室内教室外)尺度」「日本語での自尊感情(教室内)

尺度」を参考にした 3 事前事後発表のトピックは事前発表が「日本語の勉強を始めたきっかけ」事後発表

が「日本語と将来の夢」であり話の「構成」「内容」「進め方」「文法的な正確さ」「発音」

「流暢さ」という観点で学習者は自己評価したさらにインド人日本語教師 3人(プネ

の大学の日本語教師であり教授歴 10 年以上)に点数をつけてもらった項目によって異

なるものの総合的な平均点数としては伸びが見られなかった

参考文献

(1)国際交流基金(2012)『JF日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイドブック[第二版]』

(2)国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』く

ろしお出版58

(3)国際交流基金「みんなの Can-doサイト」<jfstandardjpcando>2014年 3月参照

(4)小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』スリーエーネットワー

ク102

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

(5)シルグルカルマナシマンダル(2003)「機能シラバスに基づいた中級会話授業の試

み」『日本言語文化研究会論集』創刊号国際交流基金日本語国際センター国立国語研

究所政策研究大学院大学226

(6)元田静(2005)『第二言語不安の理論と実態』溪水社8111168-174215-218221-222

241-242

(7)Brown H Douglas (2000) Teaching by Principles An Interactive Approach to

Language Pedagogy New York Addison Wesley Longman Inc 177

(8)Long Michael H amp Porter Patricia A (1985) Group work interlanguage talk and

second language acquisition TESOL QuarterlyVol19 (2) 207-228

参考教材

(1)鴻野豊子 (2013)『会話授業の作り方』アルク108-109

(2)嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(著)(2013)『できる 日本語

中級』アルク139

(3)西口光一(監修)澤田幸子武田みゆき福家枝里三輪香織(著)(2006)『日本語

おしゃべりのたね』スリーエーネットワーク32-35

(4)細川英雄蒲谷宏編 (2008)『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』スリーエ

ーネットワーク74-77

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

添付資料① トピック 2のワークシート①

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

ワークシート①-A

どんな思い出がありますか

例)タクシーにカメラを忘れてパニックになった

(A さん) (B さん)

おもしろかった よかった 困った びっくりした

うれしかった 楽しかった 大変だった つかれた

おいしかった 怖かった 失敗した

まず忘れられない旅行について教えてください

いつ行きましたか

どこへ行きましたか

だれと行きましたか

どんな思い出がありますか

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

ワークシート①-B

次に忘れられない旅行でどんな経験をしたか詳しく思い出してくださいそし

て自分のストーリーのキーワードキーセンテンスを書いてください

私の忘れられない旅行

私が経験したエピソード

① どんなことがありましたか

② それからあなたはどうしましたか ③ 最後はどうなりましたか

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

添付資料② トピック 2のワークシート②

西口光一(監修)澤田幸子他(2006)『日本語おしゃべりのたね』スリーエーネットワー

ク ユニット 5P32 より筆者が改作

絵を見て書いてください

1あなたは今どこにいますか

2あなたは今何をしていますか

3あなたと一緒に他にだれかがいますか

4それはどんな人ですかあなたとどんな関係でしょうか

5その人は何をしていますか

6あなたは今どんな気持ちですか

7あなたはこれから何をしますか

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

添付資料③ トピック 2のワークシート③

嶋田和子(監修)できる日本語教材開発プロジェクト(2013)『できる 日本語中級』第

10課(アルク)P139より筆者が改作

ワークシート③(A)

これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の______への旅行です旅行の数日前に

台風がきていたので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青空で

した松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です私

は_________________いつか松山にある温泉へ行ってみた

いと思っていました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました

温泉は有名な観光地だけあってたくさんの観光客でにぎわっていました建物もとて

も立派で古い雰囲気に_______しましたわくわくしながら中に入ると天井が

思ったより高くてびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出てくるお風呂かと思ってう

れしくなりました温泉に行ったついでに__________に教えてもらった料

理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行でした

1 この人が印象に残っているのはどこの旅行ですか

2 この人はどうしていつか松山にある温泉へ行ってみたいと思っていましたか

3 この人は建物を見てどんな気持ちになりましたか

4 料理屋さんのことはだれに教えてもらいましたか

5 この話に出てくる気持ちを表すことばを書いてください

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

ワークシート③(B) これはある人が書いた自分の印象に残った旅行の話ですそれを読んで下

にある質問に答えてください

私が印象に残っているのは四国の松山への旅行です旅行の数日前に____

_______ので天気が心配でしたが当日は幸運なことに雲一つない青

空でした松山は夏目漱石が書いた『坊っちゃん』という小説の舞台になった所です

私は『坊っちゃん』を読んでからいつか松山にある温泉へ行ってみたいと思ってい

ました松山駅に着いて早速温泉に行くために路面電車に乗りました温泉は__

______________________たくさんの観光客でにぎわって

いました建物もとても立派で古い雰囲気に感動しましたわくわくしながら中に入る

と_______________てびっくりしましたここが『坊っちゃん』に出て

くるお風呂かと思ってうれしくなりました温泉に行ったついでに地元の人に教えて

もらった料理屋さんにも行きましたおいしい物もたくさん食べられて大満足な旅行

でした

1 この人はどうして天気が心配でしたか

2 温泉はどうしてたくさんの観光客でにぎわっていましたか

3 この人は建物の中に入ってどうしてびっくりしましたか

4 この話に出てくる気持ちを表すことばをさがして書いてください

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

添付資料④ トピック 2のワークシート④

ワークシート④-1 ペアで話しましょう

聞き手(listener)の名前__________

話し手(speaker)の名前__________

話を聞いてあなたはどう思いましたか

内容は面白かったですか(経験エピソード思い出が入っていたか経験エピソー

ドがわかりやすく説明されたか自分の気持ち感想を話したか)

意味がわからないことば表現がありましたかそれは何ですか

話がつながっていて(well connected)わかりやすかったですか(「はじめrarr中心部

rarrまとめ」があったか話の要点流れがわかりやすかったか)

コメント(ことば使いジェスチャー発音表情自信などについてよかったと

思うこと話し手にアドバイスしたいことを書いてください)

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

ワークシート④-2 ペアで話しましょう

話し手(speaker)の名前__________

話し手が直したいと思ったこと

添付資料⑤ 各トピックの授業へのフィードバックシート

言いたかったが言えなかった語いや表現があったか

説明のしかたについてわかりやすくはっきり説明できたか

話の内容について自分の気持ち感想を話したか

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料

1今日のトピックはどうでしたか

a 難しかったです

b 少し難しかったです

c ちょうどよかったです

d やさしかったです

2 今日のトピックについて上手く話せましたか

a よく話せたと思います

b まあまあ話せたと思います

c あまりよく話せなかったと思います

d 全然よく話せなかったと思います

3 今日のトピックについて話した時どんな気持ちでしたか

a とても緊張しました

b 少し緊張しました

c あまり緊張しませんでした

d 全然緊張しませんでした

4 今までの授業とくらべてこの授業で話す機会が多かったと思いますか

a 話す機会が多かった

b 話す機会が少しありました

c 話す機会があまりありませんでした

d 話す機会が全然ありませんでした

5 ペアグループワークの活動のおかげで自分の考えを日本語で話せるようになったと

思いますか

a よく話せるようになったと思います

b だいたい話せるようになったと思います

c あまり話せるようにならなかったと思います

d 全然話せるようにならなかったと思います

  • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版
    • 成人学習者の話す自信を高める試み
    • -授業にグループワークを取り入れて-
      • 【修正後】20141112 ディヴィヤ特定課題研究報告最終版添付資料