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平成26年度補正 経済産業省委託事業 先端課題に対応したベンチャー事業化支援等事業 (データ利活用促進支援事業:データ駆動型イノベー ションを実行するプラットフォーム・プロセス支援) 報告書 平成 28 年 3 月

先端課題に対応したベンチャー事業化支援等事業 (データ利活用 … · 平成26年度補正 先端課題に対応したベンチャー事業化支援等事業

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平成26年度補正 経済産業省委託事業

先端課題に対応したベンチャー事業化支援等事業

(データ利活用促進支援事業:データ駆動型イノベー

ションを実行するプラットフォーム・プロセス支援)

報告書

平成 28年 3 月

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平成26年度補正 先端課題に対応したベンチャー事業化支援等事業

(データ利活用促進支援事業:データ駆動型イノベーションを実行するプラットフォーム・プロセス支援) 報告書

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目次

1. 背景 .......................................................................................... 1

2. 本事業の概要 ............................................................................ 3

3. 本事業とこれまでの取組みの関係 ............................................ 4

3.1. 平成26年度データ駆動型イノベーション創出に関する調査事業の概要 ................................... 4

3.2. ビジネスアイデアの事業化実現に向けた課題と対応 .................................................................... 7

4. 事業化支援方針 ...................................................................... 10

4.1. 事業化支援の基本方針 ................................................................................................................. 10

4.2. 多様な支援事業の選出方針 .......................................................................................................... 11

5. 事業化支援の結果と考察 ........................................................ 15

5.1. 各事業の支援状況と進捗および考察............................................................................................ 15

5.2. 事業タイプ別に見た DDI 創出のポイント ................................................................................... 32

5.3. 支援手法に対する考察 ................................................................................................................. 36

5.4. DDI を促進するために必要な条件 .............................................................................................. 41

5.5. プラットフォーマが果たすべき役割............................................................................................ 44

6. まとめ .................................................................................... 46

6.1. 調査報告まとめ ............................................................................................................................ 46

6.2. DDI 創出促進に向けて ................................................................................................................. 48

7. 参考資料 ................................................................................. 49

7.1. 各支援事業のビジネス検討状況(詳細版) ................................................................................. 49

7.2. IMDJ の標準プロセスと 平成26年度調査事業で具体化されたビジネスシナリオ ................. 57

8. 参考文献 ................................................................................. 69

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図表一覧

図 3-1 DJの例 ......................................................................... 5

図 3-2 マップに可視化した DJの関係性の例 ............................................... 6

図 3-3 IMDJプロセスで目指すアイデア ................................................... 8

図 3-4 データ利活用によるビジネス創出プロセス .......................................... 9

図 5-1 分析シナリオの記入例 .......................................................... 33

図 5-2 様々な状況に対応した IMDJプロセス .............................................. 37

図 5-3 「DJの動詞化」例 .............................................................. 38

図 5-4 「要求の仮説化」例 ............................................................ 39

図 5-5 データあるいは変数への着目度を高めるトレーニングイメージ ....................... 40

図 5-6 プラットフォーマが果たすべき役割 ............................................... 44

図 7-1 提供を想定しているサービス内容................................................. 51

図 7-2 DJの関係性マップ .............................................................. 52

図 7-3 DJとステークホルダーの関係性マップ ............................................ 52

図 7-4 中野人間情報・健康プラットフォーム 構成概要 ................................... 54

図 7-5 関係性マップの例 .............................................................. 58

図 7-6 要求を考慮したデータ間のつながりの理解によるアイデア創出 ....................... 59

図 7-7 平成26年度調査事業 実施の様子............................................... 60

表 4-1 データ利活用事業のタイプ分け................................................... 12

表 5-1 データ利活用によるビジネス創出プロセスと各事業の状況 ........................... 43

表 7-1 平成26年度調査事業で具体化されたビジネスシナリオの概要 ....................... 61

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1. 背景

永年の間蓄積されてきた市場における取引データや、電力産業や製造業において蓄積されてきた膨大

なデータに加え、近年、スマートフォンを始めとするパーソナルな情報端末や各種センサーが日常生活

の様々な場面で用いられるようになり、大量かつ多様なデータが取得可能となっている。それにより、

企業を含む様々な組織においても、また組織に限定されない SNSのような社会環境においても、膨大か

つ様々な種類のデータが身近に取得・蓄積されるようになった。

これらを背景に、ビッグデータという言葉が、従来の分析対象としてのデータの位置づけを超えて、

新たな期待を担って普及するに至った。それは、データを利活用して新しい価値を発見し、イノベーシ

ョンを実現することへの期待である。

行政において、データの二次利用や商用利用を認めるオープンデータという形でのデータ提供が国際

的規模で進んでおり、これらを利活用した新規事業開発や既存サービスの付加価値向上の取組みも始ま

っているのは、このような期待が表出した事例と言えよう。その延長線上にある組織や分野の壁を超え

たデータ共有や利活用が進むことで、現在想定されていないような新たなビジネスが創出されると期待

されている。

期待が膨らむ一方で、データ共有や利活用の方法は、未だ確立されておらず、活発にデータを共有し

て利活用する段階に至っていない。実際、個々に利益を追求し互いに競争すべき企業にとって、独自に

収集したデータを他社や一般社会に提供することは、ともすると自社の利益を阻害する行為につながる

と考えるのは、全く自然なことであろう。このような文脈では、利益を追求する企業にとって組織や分

野の壁を超えたデータ利活用という考えは虚構に過ぎないとも言えよう。一企業内に限定してさえも部

署ごとに管理している個別データは他部署と共有されず、利活用する体制が整わないまま放置されてい

るケースが多い。データから付加価値を生み出してイノベーションを創出するプロセスを整備し普及さ

せることは、日本における経済活動の大局・局所にわたり切迫した要請となっている。

そのような環境の中、一組織内でのデータ利活用に留まるのではなく、複数の組織でデータを共有化

することで、利活用を推進しようとする動きがある。例えば、経済産業省の「消費データの戦略的活用

の促進に関する調査」1によると、すでに消費データの共有化や利活用の取組み例があり、それらを以下

のような6種類に分類している。

① グループ企業が保有する消費データを共通 ID によって一元管理し、分析によって得られる新たなイ

ンサイトを、グループ横断的に活用する方法(グループ型)

② 異なる企業間が保有するデータやインサイトを共有、組み合わせることで新たなインサイトを導出し

活用する方法(パートナー型)

③ アグリゲータによって集約された消費データからインサイトを導出し、各事業者等に提供する方法

(アグリゲーション型)

④ 公的機関の公開情報(オープンデータ)や、サードパーティが販売する消費データをビジネスに活用

する方法(オープンデータ活用型)

1 株式会社三菱総合研究所が委託を受けて作成[21]

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⑤ 利用価値の高い消費データやインサイトを、匿名化や統計情報への集約により公開あるいは外販する

方法(データ・パブリッシュ型)

⑥ 公開情報や販売されているデータ等を収集・整理して有償で提供する方法(データ・プロバイダー型)

近年では、そのようなデータ利活用を進めるためのデータ基盤が登場し活用されつつある。

・データマーケットプレイス(民間企業から提供されるデータや、公共機関・非営利団体等が公開して

いるオープンデータを集約、整理し売買あるいは無料提供などの取引の場を提供する事業モデル)

[1],[2],[4]

・データマネジメントプラットフォーム(自社保有データ、外部データなど分散した多様なデータの集

約・統合、一元的管理を行い、事業への活用を実現するためのプラットフォーム)[17]

・パーソナルデータストア(従来は企業主導で行われてきたパーソナルデータの管理を個人が行い、利

活用を円滑化する仕組み)[18]

しかし、仮にこのようなデータ共有モデルでデータが公開され普及するだけでは不十分で、そこに多

様なデータの結合案を発想しその具体化の道筋をダイナミックに構成し利用していくようなサポート機

能が存在しなければ、イノベーション創出に繋がるようなデータ結合が実現するとは限らない。国際デ

ータマイニング会議(ICDM2013, 2014)でも同種の問題意識の下、データ間の関連の可視化、コミュニ

ケーション、データ共有に至る人々の動機づけなどの多視点から議論が展開されている。今後、DDIを促

進していくためには、このようなダイナミックな動きをサポートする機能をも備えたプラットフォーム

やプロセスの整備が必要と考えられる。

こうした状況を踏まえ、経済産業省では既存の業態や常識にとらわれず、企業が組織や分野の壁を超

えてデータを共有・利活用してイノベーションを創出する動きをデータ駆動型(ドリブン)イノベーシ

ョン(以下、DDIと表記する2)と名付け、DDI創出に向けた施策を実施している。その一環として、平成

26 年に発足されたデータ駆動型(ドリブン)イノベーション創出戦略協議会(以下、DDI協議会と表記

する)を中心に DDI創出に向けた具体的な活動がなされてきた。今後も数多くの成功事例を創出するこ

とで、このような動きを更に活性化していくことが望まれている。

2 データ駆動型イノベーションの訳語 Data Driven Innovationを略記

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2. 本事業の概要

1章に示したような背景の下、平成26年度補正 先端課題に対応したベンチャー事業化支援等事業

(データ利活用促進支援事業:データ駆動型イノベーションを実行するプラットフォーム・プロセス支

援)が立ち上がった。

本事業の目的は、ビジネス実行意欲の高いベンチャー企業(大企業内の社内ベンチャー含む)の、組

織・分野を超えたデータ利活用による新事業展開をサポートすることで、データ利活用によるイノベー

ション創出を促進するために必要な条件や、データ保有者とデータ利活用者をマッチングするために必

要な環境等を抽出し、プラットフォームの自立的なビジネスモデルを実現するために必要な施策を整理

することにあり、具体的には下記に示す実施内容となっている。

(1) ベンチャーのデータ利活用支援環境の整備及び支援

社内ベンチャーや新規ビジネスに取り組む中小企業等を含むベンチャーが、データを利活用して

新規ビジネスを創出することを目標に、ベンチャーによるデータ利活用を支援するプラットフォ

ーム・プロセスを構築し、ベンチャーに対して以下を実施する。

① データ保有企業とのマッチング支援

② データ分析ツールの提供およびデータ分析のアドバイス・ノウハウ提供

(2) フォローアップ

事業の成果を把握するため、ヒアリング調査を実施し、成果等の検証を行う。

(3) データ利活用によるイノベーション創出を促進するために必要な条件の整理

本事業を通じて、データ利活用によるイノベーション創出を促進するために必要な条件やデータ

保有者とデータ利活用者をマッチングするために必要な環境等を抽出・整理し、プラットフォー

ムの自立的なビジネスモデルを実現するために必要な施策を取りまとめる。

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3. 本事業とこれまでの取組みの関係

3.1. 平成26年度データ駆動型イノベーション創出に関する調査事業の概要

1章で言及した DDI協議会の中間とりまとめでは、「データを保有する組織が、データを提供する意義

が分からず、データの共有や利活用が進まない」という DDIを促進する上での最大の課題が指摘されて

いた。これに対して、「平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(データ駆

動型イノベーション創出に関する調査事業)」3(以下、平成26年度調査事業と表記する)にて、Innovators

Marketplace® on Data Jackets(以下、IMDJと表記する)という東京大学・大澤幸生教授らにより提唱

されているイノベーションを促すゲーム形式の知識デザイン技術を用いれば、データ提供以前の段階で

データ概要情報(データジャケット)のみを共有することで、データの中身を公開せずとも組織や分野

を超えたデータ利活用による新しいビジネスアイデアの創出が可能であり、その後の具体的なデータ共

有やデータ利活用への道を拓くことができた。

具体的には、①小売・物流、②観光、③ヘルスケアという議論テーマを設定し、公募したところ、54

社、103名の参加者を得ることができた。また、参加者からは、全 85件のデータジャケットの提供(デ

ータジャケットを提供した企業は 54社中の 38社)があり、そこから 82のビジネスアイデアが生まれた。

平成26年度調査事業で生まれたビジネスアイデアの 65%は複数の組織のデータジャケットを組み合わ

せたアイデアであり、組織・分野を超えたビジネスアイデア創出プロセスの有効性が確認できた。また、

最終的には、12個のアイデアを具体的なビジネスシナリオに落とし込んでおり、高い評価を得ているも

のもあった。参加者からは、「他業種とのアイデア融合の場として有益だと思う」、「これだけのアイ

デアが出るので期待はできる」、「色々なデータの組合せで面白そうなビジネスができそう」、「(自

社ではデータジャケットを登録しなかったので)自分でデータを持っていると視点が変わるかも知れな

いと感じた」など、期待の声が寄せられた。

そこで、本事業においても IMDJプロセスを活用することで、ベンチャーが、データを利活用して新規

ビジネスを創出することを支援する。

ここで IMDJプロセスを簡単に説明しておく。IMDJプロセスは、①データジャケットの収集、②イノベ

ーションゲームの実施(データジャケット結合によるアイデア創出)、③実行動を促すためのアクショ

ン・プランニング(アイデアのシナリオ化)の3つのプロセスで構成されている。以下に IMDJプロセス

について説明する。

IMDJ プロセス①:データジャケットの収集

それぞれのデータについて概要を説明・要約したメタデータをデータジャケットと称する。データジ

ャケットの特徴は、既存のデータあるいは収集中のデータに含まれる概要や変数、データ形式、共有可

能な範囲、期待する利用価値(分析成果など)等の概要をデータの保有者あるいはデータについてよく

知る識者が記述することである。このようにすれば、データの中身を公開せずとも、データ駆動型イノ

ベーションのためのシナリオ立案に必要な最小限の情報を公開することが可能となる。一般のメタデー

3株式会社構造計画研究所が委託を受けて実施[18]

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タと実質的に同じ内容であるが、中身を隠しながら概要を必要なだけ公開するという意味で、DVDのジャ

ケットや人の着用する上着になぞらえてデータジャケット(以下、DJと表記する)と呼ぶ。

なお、変数とは、図 3-1に示した事例の通り、データセット中に含まれる各情報の項目名であり、そ

の情報の単位系なども分かるように表現されていることが望ましい。例えば、位置情報ではなく、緯度・

経度と記載されていると、変数を介して DJを結合しやすくなる。

図 3-1 DJの例

IMDJ プロセス②:イノベーションゲームの実施(DJ結合によるアイデア創出)

上記で収集された DJ間の関係性を、それぞれの DJに記載されている概要や変数等に基づきマップに

可視化する(図 3-2)。こうして可視化したマップの上で、DJと DJを結合して新たな利用価値を策定す

るイノベーションゲーム®(国際的名称 Innovators Marketplace®、以下 IMと表記する)を実施する。DJ

同士の関連性マップを見た参加者は、DJの意味ある組合せを考えながら、他の参加者と共にビジネスの

意思決定において重要な判断材料となる事象や状況を様々検討しながら、アイデアを創造していくこと

ができる。

このプロセスはゲーム形式となっており、参加者は、それぞれが持つ社会的な役割に応じて様々な角

度からアイデアを提案し、そのアイデアの実現可能性や有用性を架空の通貨によって評価する。

タイトル インフラ画像のモニタリング

概要 首都圏の主要道路の劣化診断のための撮影画像

データに含まれる変数 画像、撮影日時、緯度、経度、標高

データの種類 数値データ、自然言語データ

データの収集方法専用車に内蔵したGPS及び車下に装着したカメラで収集している

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図 3-2 マップに可視化した DJ の関係性の例

IMDJ プロセス③:実行動を促すためのアクション・プランニングの実施(アイデアのシナリオ化)

最後のプロセスは「アクション・プランニング(以下、APと表記する)」と呼ばれ、IMで創出された

データ利活用アイデアを実現するために、実行動を促す具体的なシナリオを策定する。

APは要求分析と分析シナリオプランニングおよび戦略シナリオプランニングから成る。要求分析では、

IM で出されたアイデアにつき、ターゲットやステークホルダーが抱える課題や潜在要求を深掘りするこ

とで、市場から真に求められるアイデアに昇華させる。分析シナリオプランニングでは、提示されてい

る DJ等からアイデア実現に必要となる情報や知見を得るための分析方法の検討を行う。戦略シナリオプ

ランニングでは、ステークホルダーや必要なリソースを明確にした上で、収益モデルや実現までのプロ

セス等を検討する。

新ビジネスを検討する際は、組織により多少の違いはあれ、戦略シナリオプランニングを立ててから、

実証に向けた検討を行うことが通常だと考えられる。AP の特徴は、組織や分野を超えたデータ利活用に

よるビジネス創出のため、一般的な戦略検討では軽視されがちな、分析シナリオプランニングの構築を

重視していることである。分析シナリオプランニングでは、期待する結果を得るために必要なデータや

分析方法を評価し選定するとともに、欠けている変数や新たなデータの存在を表出化させデータ同士の

整合性を検討することにより、組織や分野を超えたデータ利活用の実現可能性を高めることができる。

更に、要素の追加では解消できないような場合は、そのことによってアイデアを棄却し新アイデアの生

成動機が得られるというメリットがある。

以上のような活動を通じて、データの中身を共有せずとも、データを利活用したイノベーション創出

を促進させる知識デザイン技術が IMDJプロセスである。詳細は参考資料 7.2節を参照されたい。

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3.2. ビジネスアイデアの事業化実現に向けた課題と対応

平成26年度調査事業において、IMDJプロセスというプラットフォーム・プロセスの効果や期待は大

きいものであったことは既に示した通りである。一方で、実施に向けたフォローは当該公募の実施対象

外であったため、公募事業後の参加企業の動きは十分に把握できていないが、事業化に向け継続検討が

行われた事例は極少数に留まったようである。

事業化に向け具体的な動きを創出することが十分できなかった要因として、以下の点を挙げることが

できる。

(1) ビジネス創出に向けて議論するテーマを事務局が設定し、多種多様な参加者を公募する形式をと

ったため。

平成26年度調査事業では、参加者を広く募った結果、検討されたビジネスアイデアやシナリオを実

行に移す際の各社の立ち位置が明確ではなかった。ビジネス実行の主体が事後的に決定され実行に移さ

れることもあると考えられるが、事後調整はなかなか難しい面があり、ビジネス実行の確度をあげるた

めには、事前にビジネス実行主体や各社の立ち位置などが明確になっていた方が望ましいと言える。

(2) 業界や分野を限定せず、かなり広い範囲の議論ができるようなテーマを設定したため。

平成26年度調査事業では、「データ保有企業が、どのような文脈でどのようなデータを提供すると

自分にとってどのようなメリットがあるか分からず、データの共有や利活用が進まない」という課題を

解消できるかについて調査することが目的であった。このため、データ保有企業が属する業界や分野は

もちろんそれ以外の領域においても、自社が持つデータの利活用価値を見出しやすく、また過去に蓄積

された IMDJの経験から「データを提供するとメリットが得られると理解されやすいテーマ」を設定した。

このようなテーマ設定により、議論は多方面に及び様々なデータ利活用アイデアが出され、データ保

有企業がデータの利用価値に気づくことはできたものの、その後ビジネスシナリオとして具体化する対

象は、参加者からの評価の高かったもののみとなり、それ以外のビジネスシナリオを検討することは時

間の制約上難しかった。結果として、最終的に具体化したビジネスシナリオが、参加各社の意向や都合

に合致していなかった点があることも、ビジネス実行に結びつきにくい要因であったと考えられる。

(3) 参加者が集まり議論する機会や時間の制約などにより、検討事例によってはデータの分析シナリ

オを十分明確にできなかったため。

あるビジネスアイデアを実現していくためには、ビジネスモデル等を考える戦略的ビジネスシナリオ

の構築は重要であるが、組織や分野を超えたデータの利活用が前提であるビジネス実行に対しては、更

にデータの関係性や意味付けを明確にしておく分析シナリオの構築が特に重要と考える。データ保有企

業側が、提供したデータが想定外の使われ方をされるのではないかという不安や不信感を持った状態で

は、データ提供の交渉が難航することは間違いない。十分議論された分析シナリオによって、論理的か

つ具体的に「様々な組織・分野のデータから、何を知る必要があるのか、何を検証すべきなのか」「そ

のためにはどのようなデータが必要なのか」「どのような分析をすべきなのか」という点を明確にし、

それを実行に移していくことで、データ入手の交渉やそもそものビジネスの成功確率を上げることがで

き、例え失敗しても別の対策が考えやすくなるなどの効果があると考えられる。

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ビジネスアイデア創出に関するワークショップでは、斬新なアイデアを思いつくことへの期待が大き

くなりがちだが、各所で開催されているアイデアソンやハッカソンなどの取組みにも見られるようにジ

ャストアイデアは豊富に創出されている。データ利活用の観点からすると、新たなアイデアが出ないと

いうことよりも、それらのアイデアが事業化に向け具体的に進展しないことのほうが問題だと言える。

アイデアが実現可能であるためには、ゴールを明確にし、どのデータとどのデータを結合することで、

どのような知識を得ることができる可能性があるのかを論理的に考え、検証・実行へと進めていく動き

が重要であると言え、それは IMDJプロセスがそもそも目指しているものと一致する(図 3-3)。

図 3-3 IMDJプロセスで目指すアイデア

以上の考察より、組織や分野を超えたデータ利活用を実現させていくためには、平成26年度調査事

業でも効果が確認された IMDJプロセスを適用しながらも、以下の3点の改善対応が必要となると考えら

れる。

(1) ビジネス実行意欲がある企業を選出し、当該企業が参加して欲しいと考える企業を集め、議論を

行う。

(2) 新ビジネス実行に向けて議論するテーマ・内容は、実行意欲の高い企業の意向や状況に合わせて

設定する。

(3) 実現したい新ビジネスを実現していくための分析シナリオを明確化するための支援を強化する。

ゴールイメージ(ビジネス・データ等複合的な意味合い)

DJ群

・DJとゴールの関係が曖昧、期待が多い結びつき

・検証・実証に繋がりにくい

ジャストアイデア

IMDJで目指すアイデア

データ利活用上のゴール

DJ群

・分析シナリオを明確化(論理的な関係性を強化)・検証・実証しやすくなる

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これらを踏まえて、組織や分野を超えたデータ利活用をしたビジネス創出に望ましいと考えられるプ

ロセスを整理したものが以下である。

図 3-4 データ利活用によるビジネス創出プロセス

図 3-4のプロセスにおいて「P0:検討開始」段階は、データ利活用ビジネスに対する期待や方向性とし

てのビジネスイメージがあり、検討体制が構築されつつある状態である。

そこから「P1:ゴールの共有・明確化」に進むには2つのゴールを設定する必要がある。1つは「ビジ

ネス実行・成功上のゴール」であり、もう1つは「データ利活用上のゴール」である。「ビジネス実行・

成功上のゴール」は、新ビジネスを実現しようとする企業群にとって、当該のビジネスが十分魅力的で

あると合意できる共通の目標を設定する事である。「データ利活用上のゴール」は、新ビジネスを実現

するために、データからどのような事・知見の導出ができれば良いのか明確にすることである。アイデ

アをジャストアイデアで終わらせず DDI創出を促進するためには、この2つのゴールを区別し、ゴール

とデータの関係を明確にすることが望ましい。

「P2:シナリオの明確化」は、設定したゴールを実現する方法やそのためのステップを明確にすること

である。「P2:シナリオの明確化」でも P1で設定した2つの目標に対応してビジネスを実現するための

戦略シナリオと、データを利活用するための分析シナリオの2つが存在する。

こうしてゴールとその実現方法がシナリオとして明確化されると、「P3:検証・実証」へ進み、実際の

データを用いた検証や実証が進めやすくなる。

その他、現実的な事業化に向けては、データ利活用に関する社会的合意形成や規制制度に関して判断

しやすい環境の整備、データ提供交渉を円滑に進めるためのガイドライン等の整備などの課題も挙げる

ことができるが、これらは平成26年度調査事業[19]や IoT推進コンソーシアムのデータ流通促進ワー

キンググループ[20]等にて議論がなされているため、詳細はそちらを参照頂きたい。

検討開始ゴールの

共有・明確化

シナリオの

明確化検証・実証

P0 P1 P2 P3

n ビジネス実行・成功上のゴール

n データ利活用上のゴール

n 戦略シナリオ

n 分析シナリオ

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4. 事業化支援方針

4.1. 事業化支援の基本方針

3.2節で述べた通り、今回の事業支援の方針は、組織・分野を超えたデータ利活用による新ビジネスを

実行する意欲が高い企業(以下、コア企業と表記する)を主な対象とし、コア企業をデータの提供等の

側面から支援する企業(以下、サポート企業と表記する)を巻き込んだ形で、ワークショップ等を行う

こととした。

コア企業に実行意欲が高い企業を主な対象とする理由は、ビジネスアイデアの創出だけで満足せず、

その後のビジネスの実現に向けた検討が継続的に進むと期待できるためである。事業化に向けた進展の

ためには、事業化までの期間に応じた体制やリソース確保が必要であるが、実行意欲が高いチームなら

ば少なくとも一定期間のビジネス化検討ができる体制を構築するはずである。

コア企業を公募する具体的な方法としては、当社(以下、プラットフォーマと表記する)の Webサイ

ト内に専用のページを設け、組織や分野を超えたデータ利活用に関心が高い企業・団体を広く募った。

また、データ利活用に関心が高い企業・団体にアプローチする方法として、経済産業省を通じて、DDI協

議会の参加企業に対してメールにて案内を行った。加えて、プラットフォーマが直接コンタクト可能な

企業に対しては、メールマガジンで通知したりする等、できるだけ多くの企業・団体に知られるよう情

報発信を行った。

事業支援に応募をした企業・団体に対しては、対面や TV会議によるヒアリングを行い、どのようなテ

ーマで組織や分野を超えたデータ利活用を考えているのか、現在どのような状況にあるのか、体制やリ

ソースは確保できているか、ビジネス化に向けた高い実行意欲があるか等を確認した。そして、原則、

少なくとも4か月あるいはそれ以上の期間のビジネス化検討が見込める企業・団体を選出した。データ

利活用によるイノベーション創出を促進するために必要な条件や環境を抽出するために、様々な組織や

事業化テーマを支援してそれらを互いに比較するという方針のもと、9つの企業・団体を選出した。選

出の詳細は 4.2節に後述する。

コア企業の公募と同時に、ビジネス化検討の主体としては動くことができないもののデータ提供やデ

ータ分析等の側面からコア企業を支援できる企業をサポート企業として公募した。ただし、サポート企

業が確保すべきリソースは支援の内容によって変わってくる。また、コア企業ごとに求めるサポート企

業や支援内容も変わってくるため、サポート企業はコア企業のように一部の企業のみを選出するのでは

なく、まずは協力の意思表明がされたという事実を残すに留めてコア企業の要望に応じて紹介すること

とした。なお、コア企業が考えるビジネスアイデアによっては、公募を通じて協力の意思表明が確認で

きたサポート企業だけでは不十分である場合も考えられるため、実際の企業マッチングではサポートを

表明した企業を優先しつつも、DDI協議会の参加企業やプラットフォーマが直接コンタクトを取れる企業

の中からふさわしい企業を当社から紹介することを基本とし、その他の方法も駆使することで可能な限

りコア企業のニーズに応じたサポート企業を紹介することとした。

プラットフォーマによるコア企業への具体的な支援は、IMDJプロセスを使ったアイデアのブラッシュ

アップと企業マッチングの2つを柱に、各事業の状況に応じて必要なことを相談しながら進めた。2.1節

のとおり、IMDJプロセスは①DJの収集、②IMの実施、③APの実施という3つのプロセスから成るが、

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例えば最初の「DJの収集」の前にそもそもどのような企業や業界が持つデータを議論のテーブルに載せ

ておくべきか検討したり、ワークショップに参加するそれぞれの意向や都合をヒアリングしたりするな

ど、状況に応じて事前の準備に厚みを持たせた。コア企業1社に対する支援期間は、4か月を基本とす

るが、それぞれの状況に応じて柔軟に対応することとする。

4.2. 多様な支援事業の選出方針

本事業の目的のひとつとして、データ利活用によるイノベーション創出を促進するために必要な条件

を整理することがある。そこで本事業では、様々な組織や事業化テーマを支援することでそれぞれを比

較し、データ利活用によるイノベーション創出を促進するために必要な条件や環境を抽出することを試

みる。

様々な組織や事業化テーマからコア企業を選出するにあたって、企業の現実的なニーズを想定してみ

ると、データやデータの分析技術を活用した新ビジネスを創出したい企業には以下のようなパターンが

考えられる。

まずは、事業創出の検討プロセスでのパターンである。企業が置かれた状況によって、既にターゲッ

トを定め想定しているビジネスを実現するためにデータ入手やデータ利活用の方法を具体的に考えたい

というニーズと、明確なターゲット設定はまだであるもののデータや技術からビジネスを考えたいとい

う2種類のニーズがあると考えられる。前者をマーケットインの事業創出、後者をプロダクトアウトの

事業創出と表現することもできる。中には、そのどちらとも言えず、ターゲットや利用するデータ・技

術が曖昧で、事業テーマのみを定めて事業化創出の検討を始めた状態でのニーズも考えられる。

また、他社とのコミュニケーションについては、まずは自社内で検討した上で徐々に他社を巻き込ん

でいきたいと考える企業と、最初から関係する企業とビジネス検討を行いたいと考える企業とに大別で

きる。前者は、自社が持つデータや技術、ビジネスアイデアの流出等を恐れて他社との議論に慎重な企

業である。後者は、別のビジネスによる密な取引関係があったり何らかの企業団体に加盟したりして事

業創出を検討する以前から親密な関係を持つパターンと、そうではなく関係性が浅いながらも新規ビジ

ネスの創出に必要と考えるステークホルダーに呼びかけてビジネスアイデア創出段階から一緒に検討を

進め関係を構築していくパターンなどが考えられる。

このように多様なコア企業のニーズに沿って適切なサポートが行えることは、プラットフォーマの自

立を検証する観点からも重要と考える。よって、本事業における支援対象企業(コア企業)の選出の際

には、表 4-1に示す事業創生タイプとメンバー構成から成る事業のタイプにつき、できるだけ異なるタ

イプの事業を選出することとした。なお、コア企業は存在しなかったものの平成26年度調査事業で実

施した内容は、Ⅲ-Cに該当すると考えられる。

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表 4-1 データ利活用事業のタイプ分け

想定される各タイプの特徴は次のとおりである。

<事業創生のタイプによる分類>

I. ビジネスイメージ優先型

コア企業として、ターゲットや実現したいビジネスイメージがある程度見えているものの、利用する

データが具体的に定まっていなかったり、データの利活用方法を整理できていなかったりするために、

事業化ができていない状態にある場合は、このタイプに分類する。

具体的には、これまでの事業検討やアイデアソン等の取組みで様々なアイデアは出されているものの、

それを実現できていない事例や実現に向けた検討を進めているもののそれを加速させたい事例などが、

このタイプに相当する。

このタイプの事業では、コア企業のビジネス推進の意思は強いと考えられるので、やりたいビジネス

を実現させるための具体的な方法論が見出せれば、DDIの創出が期待できる。

II. データ・技術優先型

コア企業として、使いたいデータや技術は見えているものの、ビジネスイメージがまだ見えていない

状態にある場合は、このタイプに分類する。

研究開発型やプロダクトアウト型の企業に見られる傾向であり、将来のビジネス展開を目指しデータ

はどんどん蓄積されているものの、多量のデータが収集できすぎたことで逆に目的が定まらないような

事例などがこのタイプに相当する。

このタイプの事業では、コアとなるデータや技術は明らかになっているため、良い協業関係や共通の

事業目的を参加企業間で合意できると、DDIの創出が期待できる。

メンバー構成

A:

単独企業の検討チーム

B:

複数企業で親和性が

比較的高い検討チーム

C:

複数企業で比較的

オープンな検討チーム

事業創生タイプ

Ⅰ:

ビジネスイメージ

優先型

Ⅰ-A Ⅰ-B Ⅰ-C

Ⅱ:データ・技術

優先型

Ⅱ-A Ⅱ-B Ⅱ-C

Ⅲ:テーマ先行型 Ⅲ-A Ⅲ-B Ⅲ-C

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III. テーマ先行型

上記のようなタイプ以外にも、特定の分野やテーマを想定した上で、ニーズや必要なデータを考え、

DDI を創出させたいという要望も存在すると考えられ、このような状況にある場合は、このタイプに分類

する。

議論を先導する企業は明確ながらも、ある事業テーマにおいてそれぞれの思惑やデータを持つ企業が

集まり、議論を進めていくような事例がこのタイプに相当する。

このタイプの事業では、コア企業が想定するデータやビジネス上のゴールに大きく縛られることがな

い議論ができる。発散と収束がしやすい、程よい大きさのテーマ設定ができれば、DDIの創出が期待でき

る。

<メンバー構成によるタイプ分類>

A. 単独企業の検討チーム

データ利活用を検討する当初のチーム構成が、単独企業のみとなる場合は、このタイプに分類される。

このタイプの事業では、他社に対する守秘義務等を気にすることなく、自社内で自由で活発な議論を

行うことができると期待できる。また、自社内での十分な議論により、必要となるデータ保有企業等の

ステークホルダーを明らかにし、サポート企業を徐々に加え拡大させることで、コア企業自身の意向に

そった形での事業の検討・実行を進めることができると考えられる。

B. 複数企業で親和性が比較的高い検討チーム

データ利活用を検討する当初のチーム構成が、比較的親和性の高い複数企業である場合は、このタイ

プに分類される。既に取引関係がある企業群や地域産業振興のために集うベンチャー企業群がビジネス

検討を行う事例などが、このタイプに相当する。

このタイプの事業では、チームとして所有するデータや技術が豊富で、かつ互いの役割が何となく分

かっているため、各企業は参加の必然性や当事者意識を持ちながら自由で活発な議論が期待できる。

C. 複数企業で比較的オープンな検討チーム

データ利活用を検討する当初のチーム構成が、比較的親和性の低い複数企業となる場合は、このタイ

プに分類される。各企業間で面識はあるものの、前述の親和性が比較的高い検討チームのような強い関

係性はない企業群でビジネス検討を行う事例などが、このタイプに相当する。

このタイプの事業では、冒頭でのアイスブレークなどは必要となるが、異業種からの新鮮なビジネス

視点などを得られる可能性がある。

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(参考)その他の分類軸について

その他、支援事業のバリエーションを持たせるための分類軸として、以下のような観点も考えられる

が、今回の事業で、組織や分野を超えた DDI創出を実現へと導く、プラットフォーマとして必要な役割

や機能などをまとめるという目的もあるため、支援・検討プロセス観点でのバリエーションも考え、上

記2つの軸でコア企業を選出することとした。

今回採用を見送った分類軸の1つには、コア企業の企業規模が考えられる。データ利活用による新規

ビジネスは、少人数のいわゆるベンチャー企業に限らず、大企業から新規事業、企業内ベンチャーとし

て創出されることもある。大企業における新規事業や企業内ベンチャーの場合は、背景にある親組織の

データやリソース、他社との関係性等を使うことができ、データ利活用事業を展開する上で有利である

可能性が高い。一方で、組織の要請や制約を受けて自由にビジネスを展開することが難しいという不都

合を抱えることがある。また企業によっては必ずしも異部門間でのデータの共有・利活用が活発である

とは限らず、一概にデータ利活用による新ビジネスを進めやすいと言えるわけではない。

その他の分類軸としては、コア企業が顧客とする業界やターゲット(対企業か対消費者か)という違

いもよく用いられる。例えば、情報通信サービス業の中でも法人向けサービスと個人向けサービスでは、

求められるデータ利活用の質は大きく異なることが予想される。一方で、そのような意味での多様化は、

個々の状況に寄り添いすぎてしまうことになり、データ利活用によるイノベーション創出の本質が見え

にくくなってしまう可能性も考えられる。

そこで、多様な事業の基準として、事業創生タイプとメンバー構成の2つを考えることで、必要な条

件や環境を導き出すことをメインとし、個別の支援状況からも知見を得ることを狙った。

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5. 事業化支援の結果と考察

5.1. 各事業の支援状況と進捗および考察

本節では、各支援事業における支援内容と進捗状況等について報告する。なお、今回の支援事業は各

コア企業もしくはサポート企業の実ビジネスをサポートするものであり、その詳細を記述することはで

きないため、主に検討プロセスの概要につき、示すこととする。

支援事業①

(事業創生タイプとしてはⅠ型(ビジネスイメージ優先型)、メンバー構成としてはB型(複数企業で

親和性が比較的高い検討チーム)に相当。)

<支援開始時の状況>

支援対象は、地域の産業振興推進を目的とした機構(以下、産業振興推進機構と表記する)に加盟する

複数のベンチャー企業である。参加企業らは、それぞれがシーズとして関連しそうなデータや技術を保

有しており協業によりヘルスケア関連の新規ビジネスを立ち上げたいと考えていた。支援開始時参加企

業らでは、産業振興推進機構をハブとしてコミュニケーションはあったものの、新規ビジネスの内容検

討や具体化には至っていなかった。

<支援の内容>

—方針

参加企業らは共同ビジネスの意向と、新規ビジネスに組み込みたい各々が保有するデータまたは技術

をもっていたが、具体的な組み合わせ方やサービスの構想については検討ができていなかった。その為、

まず各企業が保有するデータ・技術の結合によりどのような事が期待できるのかビジネスアイデアを創

出し、目標とするビジネスイメージの共有・明確化を行った。その上で、ビジネスイメージがデータ・

技術から導出可能かの検証と実現に向けた計画策定を行い、計画進捗に伴うヒアリング・サポートを実

施した。

—支援手法

各企業が持つデータ・技術を DJにした上で DJの関係性マップを作成し、IMによるビジネスアイデア

創出を行う。創出したビジネスアイデアから、企業らにアイデアの選抜と実現の意思確認を行い検討グ

ループとして組織化した。その後検討グループにて APを実施した。

マップは参加企業らと産業振興推進機構で入手可能な DJのみで作成した。

IMに使用する関係性マップは通常データのみを DJとして取り扱うが、参加企業らではデータを取

得・分析する為のデバイス・分析アルゴリズム・ノウハウを保有していた為これらを擬似的な DJと

して取り扱った。

AP実施にあたっては、参加企業の中でコア企業となる事が想定される企業に事前打ち合わせを行っ

た。

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APを進める中では産業振興推進機構と連携して企業らのハブの役割を果たすとともに、同ビジネス

に関連すると想定されるプレーヤー(協業先になるであろうサポート企業)を適宜紹介した。

<支援結果>

IMで創出したアイデアの内1つを実現の目標として選抜した。アイデアの選抜と各社の実現意向確認

後、3社が共同ビジネスの主な企業となり、そこにサポート企業を加えて検討組織となった。AP実施に

より大きなビジネスイメージ及びスケジュールを作成・目標として共有された。但し、分析シナリオプ

ランニングでは一部 DJの変数を結びつけて実現性の検証することに難航するが、この時点で実証を行う

事が決定した。実証に向けては、オペレーション確認の実験を行った後、2か月間の実証を計画した。

支援企業らで自走する状態となった為、一度支援を終了した。

参加企業らによる実証の結果として、分析シナリオの再検討が必要なことが分かり、軌道修正を行っ

た。当初案を2つに分割した上で、それぞれ具体的なデータ利活用方策を考え実現に向けて動いていく

ことになり、その一部の検証については当事業での支援を再開することとした。

最新の状況としては、データを利活用したサービス像が固まりつつあり、今後2~3か月程度で、顧

客開拓を主とした事業内容の検証を行い、参加企業らが出資して本サービスを提供する新会社を立ち上

げていく予定である。また、分割したもう一方では、単一企業内ではあるがデータ利活用が十分に行え

ていない分野・職種間の連携サービスについて今後2か月程度で初期検証を行い早期に同企業の事業所

にて新サービスとして提供開始する予定である。

<考察>

データ利活用ビジネスが本プロセスを経て実行に至っている点が評価される。また、実証実験の結果

により、当初期待していた仮説が成立しないことが分かり、実現可能性の低いアイデアが棄却され、実

行性が高まった。

実行まで至った要因として、以下を挙げることができる。

参加企業らで複数名の推進者と産業振興推進機構に利害調整を行う協力者がおり、立場の異な

る複数企業が各プロセス及びその後の実行を支えたこと。

アイデアを構成するデータ・技術が参加企業らにとりコアなものであった事が事業推進の原動

力となっていること。

本新ビジネスにおいては、必要となるデータや技術を、検討参加企業内で保有・網羅しており、

それ以上のステークホルダーとデータ入手の交渉を行う必要がなかったこと。

APにより、実現性の低いアイデアが実現性の高いアイデアへと精緻化された、あるいは置き換

えられたこと。

仮説と実証結果が異なった事については以下の要因が考えられる。

IMの早い段階において、参加企業間でビジネスイメージが共有・合意され、ビジネス化を急ぐ

あまり、データの結合による発想・検証が弱まった。

技術を擬似的な DJとして取り扱い、インプット変数、アウトプット変数および大まかなアル

ゴリズムを表出化したが、アルゴリズムが対象企業の重要機密であるため、その概要情報さえ

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も十分開示されないことがあった。それにより、他の参加企業らがアルゴリズムイメージを把

握することを難しくし、検討に苦慮する場面があった。プラットフォーマからは検証のための

透明化と NDA締結を提案していたが、最終的には部分的な情報開示と参加企業ら確認可能なデ

モを用意することで対応し、限られた期間内に成果イメージを提示することが可能となった。

ヘルスケアサービスの性質上、新ビジネスのサービスで人が介在し判断する部分が入らざるを

得ず、人の知見部分については DJ及び変数として記述ができず、検証対象としてブラックボ

ックス化した。

これらの要因が重なり、IMDJプロセスによる仮説の早期検証を困難にしたものと考えられる。

本支援事例の参加企業は、分析シナリオプランニングが完了しない段階で実証に進むことを実践し

たが、実証結果からの軌道修正に伴って事業化を推進する全体のスキームの中で分析シナリオを検

証することの位置づけや重要性に気づき、戦略シナリオと分析シナリオの検討が進んだ。IMDJプロ

セスと本ケースのような早期検証の行動という両輪が上手く回るようになると、DDIが更に進展し

ていくものと考えられる。

<補足>

なお、今回支援した産業振興推進機構では、早期にビジネスを立ち上げていくため顧客開拓コーチン

グやコンサルティングを行う企業との協業を進めている。組織や分野を超えたデータ利活用というよう

な観点がある事案については、このような企業とプラットフォーマがタイアップする形で、ベンチャー

育成を図っていく方向性も具体的に検討したいとの打診を受けており、今後具体的な対応方針を決めて

いく予定である。組織や分野を超えたデータ利活用を促進するプラットフォーマが、単体でビジネス展

開するだけではなく、顧客の要望に応じて様々な支援ができるような体制を取っておくことで、プラッ

トフォーマとしての自立を成立させる方向性も検討に値するものと考えられる。

支援事業②

(事業創生タイプとしてはⅡ型(データ・技術優先型)、メンバー構成としては、A型(単独企業の検

討チーム)に相当)

<支援開始時の状況>

支援対象企業は、電力自由化という市場環境変化に際して自社の持つ環境のセンシング技術やデータ

分析技術をもとに新規ビジネスを立ち上げたいと考えている。新規ビジネスのコアとなる推定技術につ

いては対象企業により本事業の以前から開発が進められていた。電力のシステム改革により、業界では

多くの新しいビジネスモデルが検討されており、電力事業者は携帯電話事業者との連携など異業種のデ

ータ連携により新しいサービス・企業の競争力強化につなげる動きが加速している。支援対象企業にお

いても、具体的なビジネスアイデアは固まっていないものの、データ分析技術により推定したデータを

他社データと組み合わせて活用することにより、電力自由化後の市場に対して新しい価値提供ができる

と考え可能性を模索していた。

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<支援の内容>

—方針

電力自由化に向けた異業種連携は様々な方向性が想定される為、まず対象企業内で自社技術の位置づ

けを明確にし、その後想定されるデータ・サービスのステークホルダーとなる他社との連携を検討する。

—支援手法

まずは対象企業単独で IMを実施してビジネスアイデア創出を行う。その後 AP により優良と思われる

ビジネスアイデアの簡易検証とビジネスイメージの共有・明確化を行う。サポート企業候補が想定され

た後、再度 IMを通じたビジネスアイデアの再検討を行う。

DJは支援対象企業の DJと、関係が想定されるオープンデータ・他社が保有するデータの DJを使用

した。

初期 IMの参加メンバーは支援対象企業のコア技術の開発に関わるメンバーと、自社内の新規事業開

発に関連するメンバー数人を参加者とした。

APではステークホルダー毎の要求分析を行い、各プレーヤーがどのような課題を抱えており、各タ

ーゲットにどのような情報や知見あるいはサービスを提供するとメリットを感じられるか、ビジネ

スとして成立する可能性があるかにつき、検討を行った。

※なお、一般家庭向けの電力小売自由化は 2016年 4月から開始されるものであり、本検討を実施し

た時点(2015年 7月)では、施行される制度自体が流動的であったが、その時点での制度や検討動

向に基づき、ターゲット毎の課題・要求とそれに対応するためのデータ分析シナリオの整理を行っ

た。

<支援結果>

IM実施の結果出てきた様々なアイデアの中で、有力なアイデアを深堀するため APを実施した。

APの実施により、電力小売自由化後の環境における新サービスのビジネスイメージが明確化され、必

要なデータ・分析シナリオや顧客ターゲットが定まった。支援対象企業では、さらに顧客ニーズの確認

をする為、想定顧客に対するヒアリングと新制度適用後の新サービスのインパクトについて対象企業お

よびプラットフォーマも支援をして試算を進めた。

検証の結果、国の制度設計が進むにつれてサービスにより顧客が得られる金銭的メリットが想定より

小さくなる事が分かってきた。そのため支援対象企業において、本方向性でのビジネス化が中断となり、

支援を終了した。

支援対象企業としては、IMDJ プロセスの考え方を適用して別のサービス展開を再度検討することを考

えている。

<考察>

本ケースでは、IMDJプロセスによりビジネスアイデアの創出・具体化が進み、顧客ニーズ検証を行っ

ている。最終的にビジネス案が実行に至らなかった事は主として新規事業の不確実性に起因していると

考えられる。

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支援対象企業の副次的な期待として、本プロセスを通じて今まで気付いていない斬新なビジネスが創

出できるのではないかというものがあった。これについて IM終了後の反応として、ビジネス化の方向性

が共有できたという声がある反面、一部参加者からは新たな発見が少なかったという声があった。これ

は支援のフレームワーク・設計とも関係がある。IMDJプロセスは、IMの中で要求(社会・対象とする市

場ニーズ)を整理して、それをデータから論理的に組み立てて解決を図っている。ビジネスアイデアは

参加者の知見と論理的思考のもとに創出されるため、新たな発見という観点から言えば

ワークショップを通じて参加者の 1人から今まで他者が気付いていない要求がでてくる

既知の課題に対し、変数に着目することで今まで気付かなかったデータの組み合わせ方・結合方

法により解決方法が見つかる

既知の課題が、新しいデータ(DJ)により解決可能になる

(或いは、入手が難しいと考えていたデータに入手可能性がでてくる)

といった条件があるとき、新たな発見が生まれやすい。支援対象企業にとって電力業界は取引があるが

異業界であったので対象業界をよく知る他社や、想定されるデータのデータホルダーが IMに参加する事

で、よりこうした可能性を模索しやすくなると考えられる。

(但し、対象企業・技術の基礎となるビジネス確立の検討と、様々なステークホルダーが参画する事に

よる可能性の模索は、限られた時間の中で開催するワークショップではトレードオフの関係にある。本

ケースでは、自社が保有するコア技術の位置付けやビジネス確立が優先課題であり、段階的なプロセス

における導入時の検討として、本支援内容を設定した。)

<補足>

本ケースの検討プロセスでは、制度改定を前提とした対象企業のビジネスの特性上、各プレーヤーに

発生するリスクや事情についてフレームワーク上で重点的な検討がなされた。最終的には、制度設計側

の検討と回避策などが取られたことにより、本ビジネス案は民間の1プレーヤーのビジネスとして不適

当なものとなったが、同課題認識は制度設計検討におけるものと同じ性質をもっていたと考えられる。

様々なプレーヤーの角度から事実に基づく論理的な議論を促進する IMDJプロセスは、こうした公的な

側面をもつ事業検討や政策検討との親和性が高いことが示唆される。

支援事業③

(事業創生タイプとしてはⅡ型(データ・技術優先型)、メンバー構成としてはC型(複数企業で比較

的オープンな検討チーム)に相当)

<支援開始時の状況>

支援対象企業は M2Mのクラウドプラットフォームを武器としたビジネスを行っており、新たなマーケ

ットの開拓を目指して輸送分野におけるテレマティクスへの展開を図ろうとしていた。テレマティクス

は、ビッグデータ利用の対象としても期待されている分野であり、支援対象企業の新事業推進リーダー

には、その分野に対する知識や一定の人脈があり、新ビジネスについての大まかな構想はできているも

のの、1社単独の取組みではデータの入手や実現は難しい状況であった。

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<支援の内容>

—方針

本支援企業においては関連プレーヤーの巻き込みが重要であり、自動車のセンサーデータの一部開

示・共有が大きなポイントであった。当該データ利活用によるサービス可能性を検討し、データホルダ

ーや顧客・ステークホルダーに価値を理解してもらう事で、データの入手・サービスを実現する体制構

築を目論む。

—支援手法

ステークホルダーとして自動車製造業者、自動車整備業者、道路貨物運送業者、保険業者などに接触、

参加を図り、IMを実施する。本ケースにおいてはステークホルダーに新ビジネス検討に参加してもらう

事自体に大きなハードルがあり、参加企業の追加・離脱を経ながら複数回の IMを実施した。その後、AP

を実施しデータ利活用の具体方法について検討した。

DJ は IMに参加する各企業が保有するデータを使用。ただし準備についてはステークホル

ダーとの関係上、コア企業とプラットフォーマで用意することとした。

<支援結果>

ステークホルダーの巻き込みにあたっては、コア企業の新事業推進リーダーの人脈から検討協力企業

を募る他、同氏の人脈だけではリーチしにくいプレーヤーに対してプラットフォーマから参加打診を行

った。参加打診にあたっては打診先との打ち合わせ等を実施している。

初回の IMについてはデータホルダーである自動車製造業者の参加を得られず、コア企業と複数のステ

ークホルダーと IMを実施した。IMの結果、道路貨物運送分野からの課題・ニーズに対応するビジネスア

イデアの創出を行ったが、コア企業が想定していたビジネスイメージとズレが生じてしまったため、創

出したビジネスアイデアの評価および実現を目論むアイデアを決めるに至らなかった。

2回目の IMでは、再度の参加打診の結果、自動車製造業者が参加したワークショップを実施すること

ができた。ただし、事前の自動車製造業界とのコンタクト等の経験から、各ステークホルダーの都合を

前面に出すのではなく、社会的な観点からのメリットを考え各社が協力できる方向を探すという事での

アイデア創出を行った。IMの結果として、参加企業間では社会的なメリットを生み出すできたアイデア

を出せた。

このアイデアに対して、実現性の検証と実行を促進するための APを実施した。APの結果、データの分

析方針やプラン具体化は進んだものの、プランの実行については、各企業・ステークホルダーの事情が

絡み合意に至らなかった。

道路貨物運送分野におけるデータ活用を議論しようとした場合、電動化やネットワーク化が進むトラ

ックで現在取得している CAN データの有効活用する話があがる事があるがこれらを業界全体で共有でき

た場合の社会的な効果は少なくない。ただし、トラックメーカー各社は CANデータを用いたテレマティ

クスサービスを個社毎で展開しており、データの開示や共有は各社で展開しているビジネスを阻害する

可能性がある。また、貨物運送事業の運行管理の観点からすると、法規制とも密接に関わる問題であり

データの公開などに簡単には踏み切れない事情もある。

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その後、プラットフォーマが参加企業に継続検討の意向の個別に聞き取り等を行ったが、民間企業だ

けで検討を続けるのは難しいとの意見が多数であり、コア企業の新ビジネスについては実現に至らず支

援を終了した。

<考察>

協働する企業が互いに Win-Winになる方向性を模索するも、支援事業内ではデータ利活用の壁を超え

られなかった事例となる。本分野を民間主導で組織・分野を超えたデータ利活用を進めるためには、現

状の課題に即した具体的テーマの設定や段階的なゴール設定を行うことも必要だと考えられる。

また、ステークホルダーとのコンタクトを行う中では、可能性の検討以前に議論のテーブルに乗って

もらえないケースも散見され、今回のようなテーマに関して民間ビジネスが活発に発展していくために

は、各ステークホルダーの経営層の理解やサポートが必要であり、そのためには関係する所轄官庁や業

界団体の関与も強く期待される。

支援事業④

(事業創生タイプとしてはⅠ型(議論を重ねるうちにⅢ型へと遷移)、メンバー構成としてはA型(単

独企業の検討チーム)に相当)

<支援開始時の状況>

支援対象企業では飲食関連事業を展開しており、同業態の多くの企業と同じく最終消費者の情報に不

足を感じていた。支援対象企業は、他社と協力し、購買状況等のデータを利活用することにより新規顧

客の獲得や既存顧客のロイヤルカスタマー化を展開できないかと考えていた。また、当該企業では以前

から顧客接点を拡大する策の検討もなされており、これまで検討した施策を詳細化した上で、他社が保

有するデータの活用や他社のリソースを巻き込むことで、さらに斬新な展開に仕立てていきたいと希望

していた。

<支援の内容>

—方針

支援対象企業では、先行してメディア戦略としての顧客接点拡大策が検討されており、それらの検討

と連動した形でのデータ利活用を希望している。その為、まず支援対象企業で検討されている内容や背

景情報を確認するための打合せ・整理を行う。その上でデータ利活用により目指すビジネスイメージを

明確にし、実現するための分析シナリオの構築とステークホルダーの巻き込みを行う。

—支援手法

支援対象企業の既存検討内容については、打合せを中心とした整理を行う。方向性の具体化について

は、当該企業内で APを実施する。実現方法の構築・検証については IMにより必要データの関連性を確

認・分析方法を検討し、分析シナリオとしてまとめる。ステークホルダーの巻き込みは進行状況に応じ

て行い、再度 IMを実施する。

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<支援結果>

まず支援対象企業にて先行して検討していた施策と方向性の整理のために打合せを実施した。また、

データ利活用とデータホルダーを想定するため購買状況として具体的にはどのようなデータを取得した

いのか、そのデータを取得するにはどのような仕掛けが必要なのか等について検討・整理した。しかし、

支援対象企業内では先行して検討が進んでいた顧客接点拡大策との調整や、その背景にあった新規顧客

開拓や既存顧客のロイヤルカスタマー化へと議論が展開し、数度の打ち合わせの中ではデータ利活用に

向けた本事業のフォーカスが定まらない状況であった。

その為プラットフォーマ側から、議論するテーマを極力絞ることを目的に、顧客ターゲットを絞った

上でビジネス検討を行うよう軌道修正を行った。その結果として、目指すビジネスイメージとして支援

企業内のアイデアソンで生まれたアイデアを発展させて新規顧客開拓に関する施策として検討すること

となった。

支援対象企業のメンバーを対象に AP を実施して、アイデアからビジネスイメージの具体化を行った。

ビジネスイメージの具体化を行う中で、同アイデアが多大な負荷なく運用可能かの議論に、参加メンバ

ーの関心が集中した。プラットフォーマからは、DJを用いた IMにより外部データによる実現可能性の検

証が推奨されたが、支援対象企業では実現可能性が高いこと(外部データも活用した発展系を考える以

前に、試験的に実行することで当該アイデアの効果検証を行うこと。実施において運用負荷が低いこと)

を優先的に検討し、付随的にデータを収集・利活用する対応する方向となった。本ケースの支援につい

ては、組織・分野を超えたデータ利活用という目的から外れるためこの時点で支援を終了した。

なお、AP実施・具体化したプランは対象企業で自走しており、支援対象企業内で継続検討の後、ビジ

ネス実行に向けた実証が進んでいる。

<考察>

外部データの利活用を希望していた支援対象企業において、データ取得や利活用の優先度を下げたア

イデア実現が選択された。背景要因として、当初データ利活用に対する期待はあったものの、アイデア

を試験的に実行し、効果検証を行うことに重きをおいたため、検討アイデアにおいて外部データでなけ

ればいけない必然性が十分に大きく感じられなかったと考えられる。

支援対象企業にとり、この選択が合理的かの議論は別にして、本検討プロセスでは外部データを利活

用できた際の効果・可能性については十分には検討がなされなかった。データ(群)から導出できる知

見について考えるにはデータや変数に着目する必要があるが、DDIを推進するプラットフォーマから十分

な機会を提供できなかった事は反省点となる。ビジネス検討領域が定まらない中、今回は顧客ターゲッ

トを特定することでその検討領域を限定することとした。一方で、範囲の大きなビジネス検討領域の中

で関連性が高く入手可能性がありそうなデータから領域を限定する方法もあったと考える。具体的には、

プラットフォーマの強い介入の元で、関連する幾つかのデータを特定し、それらのデータからどのよう

なビジネスが実行可能か考える IMの実施等である。

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支援事業⑤

(事業創生タイプとしてはⅡ型(データ・技術優先型)、メンバー構成としては、B型(複数企業で親

和性が比較的高い検討チーム)に相当)

<支援開始時の状況>

各種のバイタルデータを活用したビジネス展開が各所で進んでいるが、支援対象のコア企業は脳波の

分析技術を持つベンチャー企業であり、その技術を活かして新たなビジネス展開を考えたいという要望

をもっていた。コア企業では、脳波分析技術と位置情報を組み合わせることでサービスが作れないかと

いう仮説をもっており、他の企業との連携・協働による実現を望んでいた。

<支援の内容>

—方針

コア企業には活用したい技術とベースとなる大まかなアイデアがあり、他社との協業による実現を望

んでいた。コア企業とプラットフォーマで同検討に参加する企業を集め、参加企業らでビジネスイメー

ジを明確化した後、そのビジネスイメージを実現するためのデータ結合のプランを構築する。

—支援手法

コア企業が考える方向性を参加企業らで活かすため、AP・IMの流れで実施した。

初回に APを実施した後、単日で完結する短い IMDJプロセスを2度繰り返し、参加企業間の擦り合わ

せとブビジネスイメージのラッシュアップを行った。

APではコア企業を中心として共有可能なビジネスイメージを検討し、IMでは想定ビジネスを実現する

ためのデータ結合の方法を構想する。最終的にデータ分析シナリオとして整理した。

実現に向けた取組みに際しては、プラットフォーマより追加のマッチングを実施した。

初回は、コア企業が持つ技術とイメージしているビジネス案を参加企業に説明し、APではステー

クホルダーの潜在要求からのアイデアのブラッシュアップを中心に実施した。

2回目の事前準備として各参加企業には、DJの提示とコア企業のもつ技術を利用したビジネスイ

メージの検討を依頼した。

2回目では、提示された DJの変数に対する着目度を高めるウォーミングアップを行い、IMによ

り各データやその組合せからデータがどのような使い方が可能なのか検討を行った。また、APと

関係性マップを用いて各参加企業が考えてきたビジネスイメージが DJからどのように実現でき

るのかを検討・議論した。これにより、より現実的な分析シナリオが構築できることを狙った。

3回目の事前準備は 2回目で創出された良いと思われるアイデアの整理を事前の宿題とした。

3回目では、プランの具体化を進める為の APを中心に実施した。特に分析シナリオのブラッビュ

アップに重点をおき、一部 IMに立ち返り DJの関係性マップを用いた検討を進めた。

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<支援結果>

参加企業らの時間的な制約もあり初回だけでは上手く検討できなかった部分を含め、IMDJプロセスを

繰り返し、以後の検討を続けることで、参加企業らで実現を目指すプランが作成された。

実現を目指すビジネスアイデアはコア企業や参加企業のデータを用いたサービスで、コア企業は自治

体なども巻き込んだ実証実験などへの展開を想定している。ワークショップ終了以降については、プラ

ットフォーマから技術やデータを持つ組織のマッチング等を行っており、プランのブラッシュアップは

継続して進んでいる。支援結果として、参加企業らは実現を目指した活動・提案を実施中である。

<考察>

本ケースは、コア企業が目指す方向で新たに他の企業との協業検討が始まり、データ利活用サービス

実現に向けた活動が進んでいる良き例である。しかし支援過程においては2つの点で手法の改善を行っ

ているため、以下に記載する。

1つ目の修正は、データへの着目度と想定ビジネスに対する検討度を高める為の修正である。初回の

ワークショップでは、コア企業のイメージを共有し要求分析や DJや技術などの要素の表出化まではスム

ーズに進んだ。参加メンバーはデータのハンドリングや分析等に慣れている参加企業も多く以後のデー

タから検討は上手く進行することを期待していたが、分析シナリオの構築では、参加メンバーは想定外

に苦戦していた。そのため、コア企業以外の参加企業にコア企業が期待する DJを使って各社が望ましい

と考えるビジネスを事前に検討してもらうこと、次のワークショップで DJの動詞化(※詳細は 5.3節を

参照)を用いて各 DJの可能性を検討した後に事前検討してきた望ましいビジネスを DJから実現する方

法を考えること、の2つの対応をとった。結果2度目のワークショップでは具体的な検討ができた。デ

ータ分析的思考に長けている事が当該ビジネスをデータから組み立てる事に直接的には寄与せず、当該

のビジネスやデータについて各参加者の理解と検討を深めることが必要であった。特にワークショップ

のような実施形態となる場合には、自社データの場合も当該ビジネスと結びつけた再検討するなど、限

られた時間で有効な議論をするための事前検討が重要である。

2つ目の修正は、本支援プロセスの期待の修正である。初回のワークショップの後にプラットフォー

マがコア企業の期待を再確認したところ、プラットフォーマの目論見とは食い違いが生じており、前述

のようなやりにくさを誘発させてしまったと考えられる。コア企業では、今まで思いつかなかったよう

なアイデアを外部と交流することで得たいというような期待をもっており、そのため初回ワークショッ

プでコア企業のビジネスイメージを具体化する段階で混乱が生じたものと思われる。(また一因として、

1つ目の修正で出てきたように、コア企業以外の参加企業が当該ビジネスを検討するためには一定の時

間と作業が必要であり、コア企業の感覚とギャップが生じやすい。)これについては DJを用いた論理的

な検証を行う IMDJプロセスが目指す方向性を再度説明し、コア企業とワークショップにて目標とすべき

事を確認した。

<参考> DJの動詞化

例えば、「携帯電話の通信記録」という DJに対して「人の行動をモニターする」という使い方・動作

を想定することを DJの動詞化と呼ぶ。本ケースにおいて、DJの組合せを考える際に、いきなり変数に着

目するだけでは発想が難しかったところに、上記のように DJから導くことが可能な動作を考えることで、

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動作を組み合わせて要求を満たすソリューションを考案しやすくなった。詳細は 5.3節を参照されたい。

これにより要求を満たすために不足している DJや変数に気づき補填する動きに繋がり、分析シナリオの

作成がスムーズに行われた。

支援事業⑥

(事業創生タイプとしてはⅢ型(テーマ先行型)、メンバー構成としてはB型(複数企業で親和性が比

較的高い検討チーム)に相当)

<支援開始時の状況>

本支援事業は、社会人学生も多く在籍する中京地区の MOT講座のメンバーを中心とした、ものづくり

事業創出の事案である。本講座では、世界のものづくりの拠点としての役割を担い、さらには ITやナノ

テクノロジー、環境技術などの融合によるイノベーションを牽引していける人材を輩出しようと、様々

な取組みがなされている。

<支援の内容>

—方針

ビジネスを推進していくというコア企業等は明確でないものの、参加者それぞれの事業や専門性など

は理解しているメンバーのため、ビジネスの方向性が見えて来たら、その後の実行に向けた役割分担な

どはスムーズに進むことも期待できる。参加者の想定する DJから有用なビジネスアイデアを、講座参加

メンバーから所属組織への提案から実現を目指す。

—支援手法

IM実施によるビジネスアイデアの創出を行う。ワークショップ実施にあたっては講座メンバーの全員

参加の希望があったため、誰もが DJを提示できるようあまり明確なテーマを設定せず各自が保有・着目

している DJの収集を行うこととし、ほぼ全員から提示を受けた。

出揃った DJを概観し、プラットフォーマと参加者で議論を進める方向性を「余暇を楽しむためのモノ

づくり」として IMを実施した。

<支援結果>

データや変数に関する着目度は高く、IM時でもデータ分析シナリオを意識したコミュニケーションが

できることで、データから導出されるであろうインサイトをよく検討できていた。

創出されたアイデアについて、各参加メンバー(あるいは出身企業)の意向や都合はそれぞれで、幾

つか可能性が高そうなアイデアについては具体的検討継続の打診などを行ったが、具体的な検討を継続

したいと申し出るチームは現れなかった。本支援については、この IMを実施した1回のワークショップ

で終了した。

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<考察>

他の支援事業では、ビジネス展開を急ぐあまりデータや変数への着目が弱まるケースもあり、運営面

での対策を講じてきた。本ケースでは、参加者のイノベーションに対する感度やデータ分析等に対する

知見が高いこともあり、DJを通じてデータと変数を読み取り・結合する IMの主目的はよく機能した。

組織や分野を超えたデータ利活用を促進するという意味や意義の理解は深まったものの、ビジネス展

開まで到達させることを考えた場合には、事前にある程度具体的なテーマやビジネス上のゴールイメー

ジを設定し、参加者側に一定の実行体制が必要であると考えられる。これらの結果からは、組織や分野

を超えたデータ利活用が推進されるためには、データサイエンティスト等のデータ分析能力の高い・或

いは慣れている参加者と、ビジネスとしての実行意欲の高い参加者・企業の両方がいること、さらに IM

のプロセスを通じて意図の調整と目的の合意をすることの重要性が示唆される。

こうした点から望ましい検討体制について考えると、コア企業とそのグループ企業や何らかの関係を

もった企業など親和性の高い企業群でビジネス実行のステークホルダーを構成し、その中にデータや変

数に着目した具体的な分析シナリオを考えることを得意とする企業・参加者がいることでプロセス及び

事後の役割分担が円滑に進んでいくことが考えられる。

また、この事例からは、このような形での体験会を実施した上で、個社毎の DDI創出ニーズに即した

具体的支援を行うようなプロセスが効果的であることも示唆され、プラットフォーマとしては今後検討

すべき事項と考える。

支援事業⑦

(事業創生タイプとしてはⅡ型(データ・技術優先型)、メンバー構成としては、A型(単独企業の検

討チーム)に相当)

<支援開始時の状況>

本支援事業は遺伝子解析技術を持つ企業が、事業の安定化を図るために、サービスラインナップを拡

充したいとの要望があり、データ利活用から展開する市場を検討したいと考えていた。

遺伝子解析技術を基軸とした個人向け遺伝子解析サービスマーケットには、様々な企業が参入してき

ており世間での話題性も高い状況にあるが、注目されているがゆえに競争の激しい分野である。よって、

単に解析結果だけをユーザーにフィードバックするだけではなく、ユーザーが満足する情報提供やサー

ビスに仕立て上げていかないと、生き残っていくことが難しい分野であるとも考えられる。

上記のように、支援対象企業の要望は、新サービスの構築ということであったが、その先には、遺伝

子情報や各種の医療データ等のビッグデータからのサービス検討に繋がる可能性もあり、本公募の対象

としても日本の先端産業の発展という観点からも魅力的である。また、支援対象企業のメンバーは、デ

ータ分析の知見も高く、かつデータ利活用に対する期待も高い分野と考えられる

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<支援の内容>

—方針

支援対象企業の希望として、まずは自社内での検討を優先しビジネスイメージ・特定市場への適用イ

メージをつくる。その後対象市場において必要なパートナーを設定して協業についての協議を進める。

—支援手法

支援内容としては、まずは自社で保有している各種のデータを DJとして用いて、IM実施によるビジネ

スアイデア創出を行った。

新サービスの展開検討という目的に合わせ、支援対象企業が保持するアンケートデータや新サー

ビス構築に関係が想定される DJ群をもとに関係性マップを作成した。

<支援結果>

IM実施では、ユーザーの要求などから新事業推進リーダーは活発な意見を出すものの、同社から参加

された検討メンバーとは意識が十分合致していないようで議論があまり活性化しなかった。

本支援を希望された新事業推進リーダーとしては、高度な遺伝子分析技術があっても、顧客に継続的

に支持されるサービスを確立していかないと事業を継続することは難しいという意識の下、このような

取組みに積極的に関与され、プラットフォーマ側からも APの継続提案なども行うが、AP実施まで至らな

かった。本内容については支援対象企業内で検討が中断された状態にある。

但し、その後の展開として支援事業①の進捗およびビジネスの拡大に際し、本支援対象企業が持つ遺

伝子解析技術や情報が有効活用できる可能性がありプラットフォーマから本支援対象企業のマッチング

を図っている。面談後、双方は興味を示しており、今後協業の検討が進む可能性がある。

<考察>

自社内の検討であれば、情報の流出・機密性等を気にせずに議論することができる一方、同じ組織の

人間でも必ずしも同じビジネス展開を考えている訳ではない。特に、タイプⅠの単独企業での検討やタ

イプⅡの親和性の高い企業間での検討では、新事業推進リーダーの指名により参加者が決まる場合も少

なくないが、そのような場合には組織内の意識が合っているか、事前の説明が十分なされているかにつ

き、注意が必要である。プラットフォーマとしては、必要に応じ、複数企業が参画する場合と同じく意

識・目的の擦り合わせが必要になる。

また、本ケースの参加者は技術者が中心であったが、そのような場合そもそもの目的を議論・検討す

る事は参加者側からみて難しい作業であるように感じられたが、早期に魅力的なビジネス上のゴールを

設定できれば、実現に向けて様々な方策を考えて貰える可能性があがるのかもしれない。

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支援事業⑧

(事業創生タイプとしてはⅠ型(ビジネスイメージ優先型)、メンバー構成としては、B型(複数企業

で親和性が比較的高い検討チーム)に相当)

<支援開始時の状況>

本支援事業は、地域の産業振興を推進するための機構(以下、産業振興推進機構と表記する。前述の

①とは異なる組織)に加盟する ITベンチャー企業を中心とした複数の企業が、共同で新規ビジネス立ち

上げを検討した事例である。参加企業らは、本支援を受ける前から地域農産品の消費者への提供方法の

改善検討をしていたが、他社のデータや技術を活用することでこの新規ビジネスを更に高度化すること

を考えていた。

<支援の内容>

—方針

参加企業らでは当該ビジネスで目指す方向性を持っていたが、具体的なビジネスアイデアには至って

いない状況であった。

参加企業らが目指す方向性は決まっている為、初めに参加企業らで目指すビジネス上のゴールを策定

し、その後それがどのようなデータの結合により実現が可能か分析シナリオを構築する。

—支援手法

チームとして目指す方向性はほぼ決まっているため、それを具体化するための AP を中心に実施する。

支援は、関係性マップを用いた課題意識の共有→AP実施→IMによるデータ結合方法の構築→実現に向け

たデータ・ステークホルダーの追加調整という流れで実施した。

参加企業のデータや変数に対する着目度を高めるため、参加企業に DJを提示して貰い DJの関係

性マップを作成した。DJは参加企業らが保有しないものを含め、当該ビジネスの実現に利用が想

定されるものを使用した。

複数企業での実施のため参加企業間の意識共有を目的とし、DJの関係性マップに着目しながら参

加者が考えている課題や思いを共有し、チームで検討すべき方向性につき統一を図った。

統一を図った方向性のもと、APの実施によりビジネスイメージの明確化を行った。

AP実施時にデータによるビジネスイメージの実現方法への苦戦が予想された為、IM実施前にデー

タへの着目と理解を深めるための DJの動詞化(※詳細は 5.3節を参照)を実施した。

各ワークショップ後には、プラットフォーマが議論した内容の課題や今後の展開につき簡単な取

り纏めを行い、IMDJ の理解を促進させると共に外部から見たチェック観点などを伝えた。

事後については、参加者からプラットフォーマへの期待等を明示化し、マッチング支援や進捗の

フォローを実施した。

<支援結果>

一連の IMDJプロセスは順調に推移し、分析シナリオの構築を通じて当該ビジネスに必要かつ不足して

いるデータが明らかとなった。必要なデータ・ステークホルダー等が参加企業内で完結しなかったため、

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IMDJプロセス終了後もプラットフォーマからデータ探索とマッチング支援を継続した。参加企業らはデ

ータ保有企業および消費者のニーズ発掘に有効な手段をもった企業を絞り込む他、資金調達手段の1つ

としてファンドを探したりする等、構築したビジネスアイデア・プランの実現に向けて動いている。

また、参加企業からは一連のプラットフォーマの支援に対して高い評価を得ている。

<考察>

産業振興推進機構の中で、参加企業らの関係ができていたこと、参加企業らの中で中心となる新事業

推進リーダーがいたことが、全体進捗の成功要因として考えられる。

また、想定されたビジネスアイデアを具体的なデータ利活用のプランとすることに参加企業らでは苦

労があったが、この解決には IM実施時の事前作業の効果が大きかった。事前作業では前述の DJの動詞

化という工夫を行うことで、分析シナリオの作成もスムーズに行うことができた。

<参考>

更なる DDI促進に向け、本支援事業のコア企業からは、更なる DDI促進に向け、以下のようなコメン

トも頂いており、一考に資するため、以下に紹介する。「地方にはその地方なりに IT化ビジネスのニー

ズやシーズがある。企業マッチング活動はとかく『アイデアのあるベンチャーを大企業やファンドが支

援する』形式になりがちだが、DDIのように、データや技術面からのサポートも重要である。DDIを発端

とした地方創成を進めるためには、『地方のアイデアを拾い上げ、都市部の企業がファンド面や技術面

で支援する仕掛け』を展開する必要があると考えられ、このようなスキームが完成すると、より良い地

方創成を全国展開できると考える。」

支援事業⑨

(事業創生タイプとしてはⅠ型(ビジネスイメージ優先型)、メンバー構成としては、B型(複数企業

で親和性が比較的高い検討チーム)に相当)

<支援開始時の状況>

コア企業は既にテレマティクス関連事業を推進している企業で、輸送分野に対する更なるサービス発

展のために、組織や分野を超えたデータ利活用を推進したいと考えていた。テレマティクスに関連した

データの利活用については、コア企業は以前より同社のサービス利用企業からの要請も受けていたが、

検討する機会や関係者それぞれのニーズの違いなどもあり、具体化には至っていない状況であった。テ

レマティクスのような事業においては、ステークホルダー間の調整を踏まえて事業検討を進めなければ

実現が難しく、コア企業はそうした機能への期待を含め本公募事業への応募に至った。

<支援の内容>

—方針

支援事業③での経験より

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メンバー構成は、参加企業間の親和性が高いことが望ましい。荷主・荷受企業等を含むコア企業

と取引関係がある企業を対象とし、関係するステークホルダーには可能な限り参加を要請する。

テーマ設定は、テレマティクスという大きなテーマを前面に出すのではなく、近い未来のビジネ

スを想定して足下の課題に適切に対応したものとする。ビジネス上の具体的なメリットについて

言及し、関係企業の参画メリットを明確にする。

議論は、データや変数に着目した議論となるように、運営上最大限の工夫を行う。

—支援手法

特に事前の参加企業の組成と関係・事情の調整に留意し、IMと APを行った。

DJの事前提供は、コア企業とプラットフォーマから他の参加企業に提示することとし、DJの概要

や変数に修正・加筆がある場合にはそれを反映した。それらの DJに基づき、関係性マップを作成

した。

IMで DJから様々なアイデアを創出し、方向性についての議論を進めた。その際には、「DJの動

詞化」「課題の仮説化」などのワークも実施し、データや変数への着目度を高めることに注力し

た。

ビジネスアイデアを抽出し APを実施することで実行可能なビジネスシナリオを構築した。

各回のアウトプットや議論を事務局が取り纏め、従前の検討におけるナレッジの有効活用とデー

タや変数に着目した議論を促した。

<支援結果>

支援開始時、参加企業はほぼ共通の課題感をもっていたが、解決の方向については意識差があった。

一連の IMDJプロセスは順調に進み、IMを通じたコミュニケーションにより参加企業らに有益と思われる

2つのビジネスアイデアが抽出され、それぞれのビジネスアイデアは APを通じてゴールの共有・設定と

分析シナリオと戦略シナリオの構築ができた。

2つのビジネスシナリオについては、支援後も当面継続して実施する意思が確認されている。1つの

ビジネスシナリオについては、既にユーザー企業から検討中のサービスへの対価想定が出されるなど、

ビジネスを実行していくための条件が揃っており、APで検討したアイデアを簡素化した形で、コア企業

がサービス構築を進める予定である。また、もうひとつのビジネスシナリオについては、複数企業でデ

ータを持ち寄り、APで検討したビジネスシナリオの検証を行う意思確認がなされている。

<考察>

テレマディクスという大きなテーマによる IMDJは支援事業③で一度暗礁に乗り上げることとなったが、

本支援事業ではその反省を踏まえた対応により検討を前に進めることができた。最も大きな要因は、テ

レマティクスを推進するためのルール・仕組み・プラットフォームに関する議論を排除し、テレマティ

クスに関連するアプリケーション分野の現下の課題を取り上げ、関係企業の参画メリットを明確にでき

たことだと考えられる。

コア企業とプラットフォーマはワークショップ実施の事前の調整を進め、コア企業の実業を踏まえた

次なる一手としてテレマティクスに関連する具体的な検討テーマを選択するに至っている。また、コア

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企業の新事業推進リーダーの積極的な関与によって、検討テーマに関係するほぼ全てのステークホルダ

ーがワークショップに参画したことで、本支援事業では各社の状況や課題を踏まえた具体的な対応策を

検討できていたことも、成功に至る大きな要因であったと思われる。

以上の各支援事業を行った結果から、平成26年度調査事業で想定した IMDJ プロセスはそのままで、

実行意欲の高いコア企業を中心とした IMDJワークショップを実施すれば DDIが促進するとの仮説に基づ

き本支援事業の設計を行ったが、この仮説は十分ではなく、更にいくつかの付帯条件が必要であること

が分かった。

それぞれの支援事業が置かれた環境やニーズに柔軟に対応することで支援を行ってきたが、具体的な

ビジネス創出までの動きをサポートするためには、事業タイプ別の対応と更なる運営の工夫が必要であ

ることも分かってきた。これらの知見につき、次節以降に示す。

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5.2. 事業タイプ別に見た DDI 創出のポイント

5.1節では、支援事業毎の状況を報告したが、本節では事業タイプ別に各タイプの特徴やビジネス創出

を後押しするために注意すべきポイントについて取り纏める。

<事業創生タイプの分類別のポイント>

I. ビジネスイメージ優先型

このタイプの事業では、コア企業のやりたいビジネスイメージがある程度見えているため、コア企業

の関心はその実現に向けた具体的なシナリオが構築され、実証・実現または構築ができるかどうかにあ

る。こうした状況下では、コア企業の関心はビジネスモデルが確立できるかという点へのみ高まりがち

となる。

この事業タイプにおける、DDI創出・ビジネス実現に向けたポイントは、データからどのような知見や

情報を引き出すのかというデータ利活用上のゴールの設定と、それを実証、実現させるための分析シナ

リオの構築をしっかり行う必要がある。

IMDJプロセスによる支援プロセスとしては、DJの組合せで様々なビジネスアイデアを考える IMを最

初に行うのではなく、APを先行させ、やりたい/やるべきビジネス実行・成功上のゴール(ユーザーは

どんな情報が分かる必要があるのか、データから何を検証しないといけないのか)を具体化した上で、

分析シナリオプランニングをしっかり行うことが DDIを創出させる上で重要であると考えられる。なお、

分析シナリオプランニングを行う際には、論理的な仮説を構築するための素材として、DJ間の変数同士

の繋がりを表現した関係性マップを用い、論理的な議論を行うという工夫も効果的であることが分かっ

た。

さらに、必要となるデータやステークホルダーを漏れなく抽出し、今後のタスクやスケジュールを明

確化することで、DDI創出の蓋然性が高まることが期待できる。

個別の事業における分析シナリオの詳細を公開することはできないが、どのような記述を想定してい

るのかについての例を図 5-1に示す。

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図 5-1 分析シナリオの記入例

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II. データ・技術優先型

このタイプの事業では、コア企業が保有するデータやデータ分析技術への着目度が高くなりがちで、

思考がプロダクトアウトになり、市場視点が弱いまま議論や検討を進めてしまうことがある。

この事業タイプにおける、DDI創出・ビジネス実現に向けたポイントは、早期に市場の声も反映し、ア

イデアやシナリオの見直しをかけるなどの行動を行うことである。

IMDJプロセスによる支援プロセスとしては、標準的なプロセスで良いと考えられるが、DJ収集の際に、

コア企業が利用必須と考えているデータや技術に対し、変数名や何らかの文脈で関連がありそうなデー

タや技術の DJを異なる分野等からも広く集めることで、コア企業が考えているデータの利用可能性が示

されるような関係性マップを作成すると良い。そのマップを用いて、ゲーム形式の IMを行うことで、デ

ータや技術の価値を最大化していくための様々な DJの組合せやアイデア発想を支援できる。その後、実

施したいビジネスイメージを参加者間で明確化・共有化し、更には AP具体化するというプロセスを踏む

と、DDIの創出に繋がる可能性が高いと考えられる。

III. テーマ先行型

このタイプの事業では、上記2つのタイプと異なり、用いるべき DJやビジネス上のゴールイメージが

明確に決まっていないため、それらを決めつつそれらを繋ぐシナリオを作成する必要がある。そのため

膨大な時間を要することが少なくない。コア企業を中心とした参加者の希望に応じて、DJかゴールのど

ちらかの軸足を早期に決め、分析シナリオ作りに早く行き着くようにさせることが重要である。また、

早期にビジネス実現に到達するためには、データ・技術優先型でも言及したように、ゴールの共有・明

確化を優先させることが効果的である。

IMDJプロセスによる支援プロセスとしては、設定したテーマに関連がありそうなデータや技術の DJを

広く集め、ゲーム形式の IM を行うことで、実施したいビジネスイメージを参加者間で明確化し共有する

ことが重要と考える。

ビジネスイメージを具体化し、共有化して行くプロセスとしては、データ・技術優先型と同じである

が、こだわりのデータや技術が明確でない分、ビジネスイメージを固めることに時間を要する可能性が

高い。そこで、ターゲットの絞り込み早期に図などして、思考の範囲を限定しながら検討を進めること

が、DDI創出に向けて有効と考える。

なお、ここで示した DJの取得の際には、DJストア[6]という過去のワークショップで利活用された DJ

の使われ方も含むデータベースから、様々なシーンで必要となる可能性がある DJ を推奨するツールを活

用したが、十分役立つことが分かった。

<参加企業の組合せによるタイプ別のポイント>

A. 単独企業の検討チーム

このタイプの事業では他社に対する守秘義務等を気にすることなく、自由で活発な議論を行うことが

できる。そのような自社内での事前検討を進めた上で、必要とするサポート企業を徐々に加えていくこ

とによって、コア企業の意向に沿った形での DDI創出へつなげていくことができる。

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このタイプの事業で注意しなければならないのは、必要以上に情報やアイデアの流出を気にするあま

り、自社のみでの検討が継続してしまうことにある。また、自社内の様々な都合や力学に左右されやす

いため、社内対応に追われてしまい、外部へ目が向かないことがある。強力なデータ利活用推進者が不

在だと、そのような障壁によって途中で頓挫してしまうこともあるので注意を要する。

オープンデータなどの活用で自社のみで斬新なビジネスが創出されるようであれば問題ないが、組織

や分野を超えたデータ活用に期待があるのであれば、市場やステークホルダーの動向等に関する情報収

集も兼ね早い段階から他社との交流を図り、オープンイノベーションに取り組む必要があると考える。

B. 複数企業で親和性が比較的高い検討チーム

このタイプの事業では、複数企業のデータや技術および人材というイノベーションの基盤が準備され、

また信頼関係のある企業同士の集まりであるため、自由で活発な議論へと発展しやすく、DDI創出の環境

としては望ましいチーム構成である。

ただし、各参加企業の意向や都合が入り混じってくることがあるため、ビジネス化に向けた方向性を

1つに定めるためにも、コア企業の意向を優先的させながら関係者の意向や都合を調整していくことが、

ビジネスアイデア実現の近道と考える。

C. 複数企業で比較的オープンな検討チーム

このタイプの事業では、Bと同様、複数企業のデータ等は集まる可能性は高いものの、情報流出に対

する懸念からあまり積極的な DJ公開などがなされないことがある。また、目的合意という観点では、そ

れぞれの参加企業の思惑がかみ合わない可能性も十分考えられる。その結果、お互いをけん制し合って

活発な議論ができなかったり、調整が難しい状況に陥ったりすることもある。

DDI創出のためには、時間をかけて互いの信頼関係の構築を図ることも重要と考えられるが、それ以上

にコア企業のビジネス推進に対する思いやリーダーシップが重要となるものと考えられる。

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5.3. 支援手法に対する考察

本節では支援方針から具体的に各企業を支援するにあたり、重要になると思われる手法・運用上のポ

イントについて考察する。

本公募では、平成26年度調査事業の状況から「実行意欲の高いコア企業を中心として IMDJプロセス

を用いたデータ利活用検討の支援が DDIの促進につながる」との仮説に基づき以下の方針で支援を実施

した。

支援方針

(1) ビジネス実行意欲のある企業を選出し、当該企業が参加して欲しいと考える企業を集め、議論を

行う。

(2) 新ビジネス実行に向けて議論するテーマ・内容は、実行意欲の高い企業の意向や状況に合わせて

設定する。

(3) 実現したい新ビジネスを実現していくための分析シナリオを明確化するための支援を強化する。

これらの方針に基づき本事業では、平成26年度調査事業で実施した標準的 IMDJ プロセスを各支援ケ

ースに合わせてさらに改良・カスタマイズをした。

1. 状況にあわせた支援プロセスの適用

5.2節タイプⅠのある程度やりたいことが明確な「ビジネスイメージ先行型」の企業を支援する場合、

IMDJプロセスの標準的プロセスが上手く働かない場合がある。DJから様々な利活用アイデアを出す IM

を実施した時に、コア企業が考えている方向とは異なるアイデアが提示されることで混乱が生じたり、

そもそもコア企業が考えていることが提示されるだけの場になったりする。支援方針の(2)に従い、

支援対象企業で検討済みの内容を活かせるように、IMDJプロセスを組み替えて提供を行っている。

プロセスを進めるためにはゴールの共有・明確化が必要だが、支援対象企業および事業創生タイプに

よって検討開始時の状況は異なる。そのため、やりたいイメージの具体度が低い場合は DDIのきっかけ

となるデータ利活用アイデア・利活用価値の創出に力点を置き、使いたい DJが明確な場合などは DJの

組み合わせに力点を置くべきである。他方、冒頭に挙げた既にやりたいことがある程度明確な「ビジネ

スイメージ先行型」では、既に検討している内容を活かすために APから実施し、その後、想定している

プランに欠けているデータやステークホルダー等に気付かせ、シナリオを強化する対応が望ましい。状

況にあわせた支援手法の分岐図を図 5-2に示す。

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図 5-2 様々な状況に対応した IMDJプロセス

2. 分析シナリオ構築を促す「要求の仮説化」と「DJの動詞化」

DJを組み合わせたビジネスアイデア創出を行う際に、ロジックがあまり明確ではないまま、漠然と「2

つのデータを組み合わせるとこのようなことができそうだ」という期待でビジネス化の議論が進んでし

まうことがある。新ビジネスを創出する上で、ビジネス化の議論はもちろん重要ではあるが、分析シナ

リオを構築することは、組織や分野を超えたデータ利活用を促進する上で、重要な要素である。分析シ

ナリオの検討が十分に行われないと、検討しているビジネスイメージと実際に必要となるデータやデー

タから得られる知見に乖離が発生する事が懸念される。真の意味で組織・分野を超えたデータ利活用を

活性化していくためにはデータや変数に着目した議論が非常に重要な要素になると考えられる。方針(3)

の具体策として、データへの着目と理解を深める個人ワーク(ウォーミングアップ)が有効であること

が分かっている。

ゴールから必要となるデータに着目させる方法として、「要求の仮説化」がある。これは各ステーク

ホルダーの要求や、設定したデータ利活用上のゴールを実現するためには、データからどのような知見

を導出する必要があるのかを明確にする作業である。また、データを起点としてデータからどのような

知見が導出され得るかに着目される方法が DJの動詞化である。

図 5-3、図 5-4には、「DJ の動詞化」と「要求の仮説化」のウォーミングアップを実施した際の、説

明資料を示す。参加者がウォーミングアップを行う時には、支援事業のテーマに沿った DJや要求を元に

プラットフォーマが思考展開の例を示すことで、より効果的になると考えられる。

DDIはやりたいが、具体的イメージ弱い(入口Ⅲ)

やりたいことがある程度明確(入口Ⅰ)

使いたいDJは明確(入口Ⅱ)

着目するDJとそこに繋がるDJを用いた、ゲーム型IMの実施

関係しそうなDJを用いた、ゲーム型IMの実施

ゴールを明確化するための要求分析(AP)の実施

上記を実現するための要素表出化・データ概要情報記載の詳細化

分析シナリオの構築/ 関係性マップを用いたシナリオの創出(論理的IM)

検証・実証

戦略シナリオの構築

シナリオの明確化

ゴールの共有・明確化

検討開始

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図 5-3 「DJの動詞化」例

DJの動詞化

DJの動詞化とは

変数への着目度を高め、DJを組み合わせたアイデアを出しやすくするために、「データからどのようなことがわかるか、データを使うと何ができるか」というデータが持つ機能に着目し、DJを述語として捉え直すことを「DJの動詞化」と呼ぶ。

ウォーミングアップ

DJの動詞化に身につけ、IMDJプロセス内で実践するためには、以下のようなウォーミングアップを行うと良い。

ポイント

当該データが取得・保管されている目的を考える

変数の繋がりやキーとなる変数を様々考えることで、上記以外の使い方を考える

ウォーミングアップ用の題材の例(DJとDJ含まれる変数例)

DJ 固定資産税台帳データ

変数 所有者の住所及び氏名又は名称並びにその所在、地番、地目、地積及び基準年度の価格又は比準価格、家屋番号、種類、構造など

動詞化の例

動詞化 各固定資産の所有者を特定する

利用変数 物件の所有者の住所及び氏名、名称並びにその所在、地番

動詞化 各固定資産の価値を追跡する

利用変数 物件の名称並びにその所在、基準年度毎の価格又は比準価格

動詞化 地域毎の土地の評価額を推定する

利用変数 物件の所在・地番・地目、基準年度の価格又は比準価格

動詞化 構造種別、経年別の建物評価額をモデル化する

利用変数 物件の種類・構造、基準年度の価格又は比準価格

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図 5-4 「要求の仮説化」例

これら2つのウォーミングアップは、分析シナリオにより DJとデータ利活用上のゴールを直接結び付

けることが難しい場合に、DJ とゴールそれぞれからパスを補完する働きがある。DJとゴールの関係性を

強化するこれらのウォーミングアップを行うことで、分析シナリオを明確に表現することが可能になる

(図 5-5)。

要求の仮説化

要求の仮説化とは

DJを組み合わせた分析シナリオの論理性や実現性を高めるために、そのような要求が「なぜ、どこから、何が関わって出てくるのか」という要求が出された背景や本質に着目し、データから検証可能な仮説や知見を導くことを「要求の仮説化」と呼ぶ。

ウォーミングアップ

要求の仮説化に身につけ、IMDJプロセス内で実践するためには、以下のようなウォーミングアップを行うと良い。

ポイント

要求に関係する具体的なターゲット・ステークホルダーを考える

要求が提起される背景要因について考える

要求が満たされていないことによって起こる問題について考える

要求が提起される状況について考える

ウォーミングアップ用の題材の例(要求・ソリューションの例)

「都内の交通事故を減らしたり、道路の混雑を解消したりするために、自転車専用レーンを設けてほしい」という要求を取上げる

仮説化の例

仮説化 「自転車と車」より「自転車と歩行者」の事故発生件数が高い可能性がある

検証方針 自転車が歩道、道路を通行していることによる事故発生件数を比較することで、検証できる

利用変数 事故発生件数、事故の原因、加害者、被害者

仮説化 自転車人口を増やせば、自動車が減り、道路の混雑が解消できる可能性がある

検証方針 自転車専用レーンを設けた国や自治体のデータから、混雑が解消したことを検証できる

利用変数 道路名、混雑状況、混雑時間帯、車両数、車両密度

仮説化 車による交通事故よりも自転車による交通事故の方が少なく、事故の規模も小さい可能性がある

検証方針 車・自転車による交通事故発生件数、事故発生率、事故の被害金額などを比較する

利用変数 車による事故発生件数、自転車による事故発生件数、事故の被害状況・被害の程度、被害金額、加害者、被害者

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図 5-5 データあるいは変数への着目度を高めるトレーニングイメージ

<補足>

なお、補足事項とはなるが、これらのワークが重要となるのは、以下のような背景がある。

① 近年、オープンイノベーションを実現しようと、アイデアソンなどの取組みが活発に行われてい

る。異業種との交流で斬新なアイデアを出すことや、沢山のアイデアを出すことが重要であると

の認識が広く認識されている。

② 最近の人工知能や機械学習などの発達につれ、多量のデータがあれば、これまで人間が思っても

みなかったゴールが発見されるのではないかなど、過度な期待が生まれている。

③ ビッグデータの活用が叫ばれる中、データは可能な限りオープンにされることが望ましいと考え

ている向きが少なからずある。

こうした期待がある一方で、「データ利活用上のゴール」は、企業の意思によって成り立つものであ

る。組織や分野を超えたデータ利活用を促進するためには、ゴールを参加企業らで共有・合意できるこ

とが重要であり、それを実現するための道具であるデータは、それに魅力を感じられた場合に、限定的

に共有されれば事足りる。道具であるデータをどのように使いこなすことで、ゴールを実現できるかの

仮説を構築するのが分析シナリオであり、それが明確化されると、コア企業が他社に対するデータ提供

交渉や、PFとしてのマッチングが進めやすくなることが期待できる。

DDI創出を促進するプラットフォーマが正しく機能するためには、これらの期待の方向性に対するマネ

ジメントを適切に行い、データに着目した検討を適切なプロセスで推し進めることも重要だと考えられ

る。

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5.4. DDI を促進するために必要な条件

本節では、データ利活用によるイノベーション創出を促進するために必要な条件を抽出・整理する。

前節で示した、データ利活用によるビジネス創出の各プロセスに対し、5.1節の各支援事業の進捗状況報

告で言及した進捗を左右した要因・ポイント等を割り当て、全ての支援事業がどのような状況であった

のかを取り纏めたものが表 5-1である。

プラットフォーマによる支援を終えても自主的なビジネス化検討が続いている支援事業と他の各支援

事業の状況を比べると、各プロセスを成功に導き、次のプロセスへと進んでいくために必要な条件が推

定できる。

まず、検討開始段階からコア企業の中心人物となる「新事業推進リーダー」が重要となることが確認

できる。例えば、事業⑥は IM実施の反応や期待は大きかったものの、継続検討に至らなかった。他の支

援事業のようにこの事業についても明確な新事業推進リーダーが存在していれば、ビジネス検討を続け

ることができた可能性が考えられる。

次のゴールの明確化段階で必要と考えられる要素を検討してみる。支援事業①は、APで各社が持つデ

ータや技術を用いて、ターゲットユーザーに提供すべき情報が何であるかを共有し、それを実現させる

ためのシナリオを明確化することで、実証に進むことができた。当初の検討では、参加企業の強い意向

で、各社が展開しているビジネスをどのように組み合わせて顧客に提供するかというオペレーション的

な議論が先行する形となり、実際にフィージビリティスタディなども行われたものの想定したような結

果が得られなかった。結果として2つのビジネスに分かれることとなったが、それぞれ目的を再度合意

し・それを実現するシナリオを明確化することで、再びビジネス創出に向けた動きがなされている。こ

れらから、市場や顧客の要求を踏まえた上で、データで示すべき情報・知見といったデータ利活用上の

ゴールを共有することが重要であると伺える。

実証に向けて、実現可能なデータの組合せを検討する段階においては、データ利活用上のゴールや目

的を達成するために具体的にデータをどのように利活用して実現するのか、ゴールや目的の妥当性を示

すために、データを用いてどのように検証するのかという仮説を明確化することが重要となる。そのよ

うな論理的な分析シナリオを作成することで、実現方法を共有でき、後に実際のデータを用いた検証や

実証の段階にスムーズに移行させることができる。この段階においては、プラットフォーマがアイデア

の創発に向けて一定の制約を含んだ思考過程を提示し、データや変数に着目した議論を行う環境を作る

ことが重要なポイントである。事業①の知見を得て、事業⑧や⑨においては、検討の当初からデータや

変数に着目した議論ができるよう様々な試みを行ったが、その効果は大きかった。ただし、IMDJの創始

者である大澤教授は、過度に誘導的な行為をプラットフォーマが行ってしまうと、今度は創造的認知科

学でいう不適切に強い制約が加わるため容認してはならないと厳重に注意している。有益な創造成果を

導く例としては、実施する IMDJ が目指すべきテーマを示したり、関係性マップ上のノードやリンクに該

当するアイデアについてのみの提示を許可するようなルール、あるいは用いる DJ の個数を限定するよう

な制約を設けたりすることが挙げられる。しかし、1980年代からよく知られたフィンケらの実験的法則

[16]から容易に推察されるように、「安全な都市づくり」というテーマを話しているときに「関係性マ

ップ上のこのノードの単語だけに注目しなさい」と視野を鋭く限定したり「自動車が突っ込んでも崩れ

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ない家屋を作る方法を考えましょう」などというテーマへの過度な限定を行ったりする行為は、創造性

を低下させると大澤教授は指導している。

最後の検証や実証の段階においては、いつまでに、誰が、何を行うのか、といった役割分担やスケジ

ュールを決めることで、直近の目標や予定が明確になり、実行までの期間を短くすることができるよう

にすることが重要と考えられる。

以上の分析から、各段階で DDIを進捗させるための重要なポイントは以下のように考えられる。

検討開始段階:「新事業推進リーダーの存在」

ゴール明確化の段階:「ゴール設定先行検討の合意」

分析シナリオ明確化の段階:「データや変数に着目した議論の誘導」

実証の段階:「役割分担・スケジュールの設定」

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表 5-1 データ利活用によるビジネス創出プロセスと各事業の状況

プロセス

性 各プロセスに必要な要素

(●印は、PFの役割)

Ⅰ-B

Ⅱ-A

Ⅱ-C

Ⅲ-A

Ⅱ-B

Ⅲ-B

Ⅲ-A

Ⅰ-B

Ⅰ-B

P0 検討開始 データ利活用推進者 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

◎ 新事業推進リーダー ○ ○ △ ○ ○ × △ ○ ○

P1 ゴールの共有・

明確化

新事業推進リーダー ○ △ △ △ △ × △ ○ ○

メンバーの積極/継続参加 ○ ○ △ ○ ○ △ △ ○ ○

対象市場の理解者 ○ △ △ ○ △ △ △ ○ ○

◎ ● データ利活用上のゴール設定の合意 ○ △ △ × ○ ○ × ○ ○

● ビジネス上のゴール設定の合意 ○ △ △ ○ △ × △ ○ ○

● テーマ規模の調整 ○ ○ × △ ○ △ △ ○ △

P2 シナリオの

明確化

分析スキル保有者 ○ ○ △ △ ○ - - △ △

コアとなるデータの理解者 ○ ○ △ △ ○ - - △ ○

● 各参加者からの DJ提示 ○ ○ × × ○ - - ○ ○

◎ ● データに着目した議論の誘導 ○ △ × × ○ - - ○ ○

P3 検証・実証 想定サービスに必要なデータ技術

の保有者 ○ ○

- - ○

- - △

新事業実行体制 ○ △ - - △ - - ○ ○

◎ ● 役割分担・スケジュール ○ △ - - ○ - - ○ ○

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5.5. プラットフォーマが果たすべき役割

5.4節で確認したDDIを促進するために必要なステークホルダーの役割をビジネス創出プロセスごとに

見ると図 5-6のように整理することができる。

図 5-6 プラットフォーマが果たすべき役割

検討開始段階からゴールの共有・明確化段階に至る過程では、支援事業①で見られたように、各社が

展開しているビジネスをどのように組み合わせて顧客に提供するかというオペレーション的な議論より

も市場や顧客の要求を踏まえたデータ利活用上のゴール(データで示すべき情報・知見)を共有するこ

とが重要であった。プラットフォーマとしては参加者がそのような意識を持ちゴールの共有を図ること

ができるよう、例えばゴールの共有・明確化を阻害するマネタイズの議論を抑える役を務めるべきであ

る。また、後になって議論の阻害要因・制約条件となりうる参加者の意向や都合は早めに確認しておき、

参加者間の調整を行っておくことが望ましい。チーム構成によっては新事業推進リーダーや他の参加者

がそのような調整役を行うメンバーがいる場合があるものの、参加者よりも全体を客観的に見渡すこと

のできるプラットフォーマが働きかけるほうがスムーズに調整できることが多い。

ゴールの共有・明確化段階からシナリオの共有・明確化段階に至る過程では、データから導き出すべ

きゴールを実証・実現するための分析シナリオプランニングを構築することが重要である。そのために

は、各参加者がデータや変数に着目した議論をできるように仕掛けることが必要となる。参加者が詳し

く知るデータを手掛かりとして、各種データや変数への着目が上がると期待できるため、プラットフォ

ーマとしては、参加者からの積極的な DJ提出を促すべきである。また、分析シナリオを構築していくた

検討開始ゴールの

共有・明確化

シナリオの

明確化検証・実証

•強力なデータ利活用推進者

•ビジネスリーダー•参加メンバー間の調整役

•コアとなるデータの理解者

•市場の理解者

•ビジネス推進者•想定サービスに必要なデータ保有者、技術者

•(手法の啓蒙)•(IMDJ体験会)•メンバー招集、紹介

•スケジュール/役割分担の設定

•データ分析による検証•協力者の招集、紹介

必要な役割

PF

の支援

データ利活用推進者によってビジネスアイデアの検討が開始された状態

「ビジネス実行・成功上のゴール」と「データ利活用上のゴール」を明確にする状態

ゴールに向けた戦略シナリオと分析シナリオ(実現可能なデータの組合せと処理)を明確にする状態

実データの入手や組合せ処理等を行い、課題がないか確認する状態

P0 P1 P2 P3

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めの思考方法を参加者が体験的に習得できるような場を提供しながら、より実証に移行しやすい分析シ

ナリオの構築を支援していくことが、プラットフォーマに求められることである。

実証段階では、スケジュールや役割分担について協力できる部分があれば協力し、また必要なマッチ

ングなどを行うことで、スムーズな実証ができるように支援していくことが求められる。

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6. まとめ

6.1. 調査報告まとめ

本事業では、平成26年度調査事業で利用した IMDJプロセスを一部改善しながら適用することで、ベ

ンチャー企業のデータ利活用ビジネスの創出を支援してきた。結果として4件の支援事業が支援終了後

も組織や分野を超えたデータ利活用によるビジネス創出に向け、自律的な活動を継続している。

各事業で支援を開始すると、ビジネスアイデアが提示されたら、早期にビジネスモデル等を考え、実

証していくことが重要であるという、戦略シナリオプランニングを重視し、分析シナリオプランニング

を軽視する意見が多く見られた。しかしながら、組織や分野を超えたデータ利活用が進む事業では、分

析シナリオプランニングも同様に重視した事業、途中から分析シナリオの重要性に気づき対応を強化し

た事業の方が、DDIの進捗は大きかった。分析シナリオが明確になることで、入手交渉すべきデータやデ

ータ入手後に検証すべき事項が明確になり、実行動を促す効果があると考えられる。

また、事業タイプ別の傾向から、事業創生タイプとしては、ビジネスイメージ優先型が、メンバー構

成としては、複数企業の親和性が比較的高いチームでの検討例が、DDI促進や検討の継続性の観点から優

位であることが分かった。また、これらの支援事業の過程と結果から、プラットフォーマの支援として、

ビジネス推進する主体であるコア企業、あるいはそれをデータや分析技術等の側面から支援するサポー

ト企業を含む検討チームの意識や状況を以下のように、遷移させていくことが重要であることが分かっ

た。

図 データ利活用によるビジネス創出プロセス(図 3-4再掲)

なお、上記のように意識や状況を遷移させていくためのポイントとして、DDIを促進するための条件お

よびプラットフォーマとしての役割で整理すると、以下のようになる。

■DDIを促進させるための条件(重要となるポイント)

・検討開始段階では、今後ビジネス創出を実現するという強い意向と権限を持つ、新事業推進リーダ

ーが検討メンバーの中に居ることが重要と考えられる。

検討開始ゴールの

共有・明確化

シナリオの

明確化検証・実証

P0 P1 P2 P3

n ビジネス実行・成功上のゴール

n データ利活用上のゴール

n 戦略シナリオ

n 分析シナリオ

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・ゴールの共有・明確化の段階では、ビジネスゴール設定を先行させることの合意を取りつけること

が重要である。大量かつ多様なデータから様々なビジネス可能性を考えることも必要だが、競争の

激しい現代では、早期にビジネスの検証を行っていくことが重要である。また、ゴールの設定にお

いても、ビジネス観点からのゴールだけではなく、各企業の果たすべき役割やデータを使って何を

実現したいのかというデータ利活用上のゴールの設定を早期に行うことも重要である。

・シナリオ共有・明確化の段階では、データ活用上のゴールの妥当性を検討すると共に、その検証や

実証のプロセスを明確にする、分析シナリオを構築することが重要である。このような思考は、一

般的なビジネス戦略検討では行われることが殆どないため、参加者は戸惑いを感じることが少なく

ない。そこで、プラットフォーマがアイデアの創発に向けて一定の制約を含んだ思考過程を提示し、

データや変数への着目度を高めた議論を行う環境を作ることが重要となると考えられる。

・実証の段階では、基本的に、参加企業(あるいは企業群)が主体的に実行することになるが、プラ

ットフォーマの支援の最中に、構築したシナリオを検証・実証していくための役割分担やスケジュ

ールを明確にしておくことが効果的と言える。

■プラットフォーマとしての役割

・検討開始段階からゴールの共有・明確化の過程では、一般的にはマネタイズ等のビジネス観点から

のゴールの話だけが優先してしまうことがあるが、データ利活用上のゴール設定の重要性を十分説

明すると共に、そのような検討がなされるよう場を調整していくことが重要な役割である。

・ゴールの共有・明確化の段階からシナリオの共有・明確化の段階では、分析シナリオプランニング

を構築することが重要となるが、プラットフォーマとしては、データや変数に着目した議論が行わ

れるようにするために、参加者からの DJの提示を促したり、ウォーミングアップを行ったりするな

ど具体的な行動が求められる。

・シナリオの共有・明確化から実証の段階では、検討チームの役割分担の中で、プラットフォーマと

しての役割も決めることで、マッチング支援などの対応をタイムリーに行うことが重要である。

ここで示したようなポイントを意識して、データ共有やマッチングサポート型のサービスを超え、組

織や分野を超えたデータ利活用をダイナミックに支援するプラットフォーマの役割を果たすことができ

れば、世界に先駆けてビッグデータの利活用によるビジネス創出を牽引していくことができると考える。

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6.2. DDI 創出促進に向けて

単にデータの概要情報を集めてカタログ化し提供する機能提供型のサービスを超えた、データの利活

用方法を検討することまでをダイナミックに支援するプラットフォーマ的な役割は、未だ社会に浸透し

ていないものの、その期待や可能性は大きく、このような活動が社会基盤として広まっていくことが望

ましい。

それに向けた一案として、各支援状況の結果としても効果の大きかった、「各地域の産業振興団体の

ような地域活性化の拠点に、プラットフォーマ的な役割を担って貰う」ことが考えられ、地方創生の取

組みの一プログラムとして環境を整備していくことを提言したい。

また、本公募の検討において、組織や分野を超えたデータ利活用を検討していると、個社のビジネス

創出の議論を超えて、国の規制制度に対する改善提言や、今後の政策として検討すべき事項等の議論に

発展することも少なくない。これらに対しては、既に IoT推進コンソーシアムの取組みで様々な支援が

開始されつつあるが、それらの動きとも協調する形で、組織や分野を超えたデータ利活用を促進するこ

とで、日本産業のプレゼンスを高めていけるようにすることが望ましい。

プラットフォーマの活動では、各企業が組織内でどのようなデータを取得・蓄積し、それらのデータ

をどのように利用しているのか、外部への提供が可能な状態にあるのかといった「データ保有の状況を

把握しておく」ことが望ましい。そのような蓄積を背景に、マッチング支援を強化していくことが実際

のビジネス創出のためには必要である。また、本支援事業を通じ、データの利活用方法の検討までをダ

イナミックに支援するプラットフォーマのあり方などがようやく整理できつつあるが、自立的な活動が

できる状況までには至っていないと考えられる。これらの対応については、各地域の産業振興団体との

協働という形で組織や分野を超えたデータ利活用を促進するための機会を増やすことで、その機能を高

度化していくことが可能であると考える。

また、現在、一企業内あるいは特定のグループ内での蓄積・利活用が進められている Webのアクセス

履歴や店舗における商品購入履歴あるいは携帯電話による移動履歴等のパーソナルデータを安心してよ

り広く活用する上では、国や業界団体による「制度やデータ利用ガイドライン」の整備が望まれる。

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7. 参考資料

7.1. 各支援事業のビジネス検討状況(詳細版)

ここでは、各支援事業のプロセスや進捗状況や結果について、5.1節より詳細な報告を行う。報告対象

は、コア企業の了承が得られた支援事業①、⑤、⑧の3事例である。

支援事業①

一般社団法人中野区産業振興推進機構(以下 ICTCO)加盟の、一般社団法人健康歯科協会が事業展開を

狙っているオーラルヘルスケアアドバイス事業(以下 OHA)を拡大するため、ICTCO加盟のベンチャー企

業の技術やデータを活用した協同事業を展開しようとする案件である。

ICTCOは、ICT、コンテンツ、ライフサポートの産業振興に資する活動を実施するため、中野区と連携

しながらインキュベーション事業を実施している。その事業化スキームは、多様な企業が連携した事業

を立ち上げる事を目指している。本「データ駆動型イノベーションを実行するプラットフォーム・プロ

セス支援」は、当機構が推進する事業化スキームにマッチすると考えられたため、今回の実証実験に参

画した。

まず、実証実験に参画する前段階から、「お口からのライフサポート実用化推進委員会」を ICTCO内

に立上げ、複数の事業者連携で前記 OHAを実現するべく推進し、数度の会合を実施していた。参加者は、

OHA を随身しようとしている一般社団法人健康歯科協会(医療関係)、オフィスワーカーのストレスを解

消するネイルサービス・ハンド、フットマッサージを提供する企業(ライフサポート系サービス提供企

業)、健康増進プログラム(運動療法)サービスを提供する企業(ライフサポート系ソリューション提

供企業)、脳波センサーを活用した様々なソリューションを検討している企業(システム開発系企業)、

同脈波を活用したソリューションを検討している企業(ライフサポート系ソリューション提供企業)、

地域包括ケアをサポートするシステムを開発している企業(システム開発系企業)等の医療関係、シス

テム開発系、ライフサポート系サービス提供企業であった。各担当者とも、自身のソリューションを社

会に展開する事をミッションとしていたため、参加者の自身の事業を組み込んだ包括的なサービスを目

指すモチベーションは高かった。また、参加者の中には競合となるメンバーは含めておらず、オープン

な議論が可能な場は出来上がっていたと考える。

この段階において、本報告書 3.2で挙げられている「1)潜在的欲求を深堀で来ているか。自社とし

てやるべきことが考え抜かれているか、目的意識が高まっているか、議論が発散していないか。」につ

いてどのような状況であったか顧みると、各企業が提案する事業単位では潜在的欲求は深堀されており、

自社としてやるべきことは考え抜かれているが、それぞれの事業がもう一歩飛躍するためには、何か足

りない部分がある。これを他社との連携で解消できないかという目的意識が各社にあったと言える。

また、「2)限られたデータの中でパラメータに着目したデータ活用議論がどれだけできているか」

については、ビジネスモデルに関する議論が主であり、データには着目できていなかった状況であった。

このため「3)データ分析シナリオが作成されているか」は作成できていなかった。

こういった状況の中、ワークショップは、参加企業が持ち寄った DJを用いた IM を実施したのち APを

実施した。IMにおいてはそれを実施する目的や意図を参加者が理解するのに時間がかかっていたように

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思える。参加者はおのおの自身の事業の事業化に関する経験を持ち、何かしらのフレームワークを活用

した事業化のための研修を受けた経験を持つ。各人の中では AP(ビジネスプランの検討)後にそれを実

現するための IM(必要なデータの洗い出しや検証)を実施するのが通常の流れであり、最初からデータ

を活用し、その連携からビジネスを想起するという手法は、これまで経験がないものであったのであろ

う。一方で、途中から事業化経験が豊富な参加者側が、事業化を実施する全体のスキームの中での IMの

位置づけに気づき、頭の中で AP(ビジネスプラン)を検討しながら IM(データ検討)を考えるという脳

内変換が始まり、議論が活性化し始めた。

結果として、脳波分析技術や、脈波分析技術により対象者の状態を把握し、相ふさわしいサービス(オ

ーラルケア、ネイル、ハンド・フットマッサージ、アクティブウォーク等)を提供するビジネスを構想

し、2015年 8月に 10人、2015 年 10月~11月に 100人を対象に実証実験を行った。2015年 8月に実施

した実証実験では、各対象者にすべての施術を体験してもらい、そのときの脳波の変動を測定した。こ

の結果をもとに 2015年 10月~11月の 100人を対象にした実証実験では、脳波により最適な施術を選定

し、その効果を評価した。あわせて、各施術の評価および、想定される単価をアンケート調査し、ビジ

ネス化に向けたマーケティングデータとした。しかしながら、脳波や脈波による評価結果は事前に期待

した効果は得られず、付加価値もしくはオプション的な活用をするという結果なった。

一方で、今回の参加者はヘルスケア分野の事業化を検討するメンバーではあるが、医療系から公的保

険外の自由診療サービスの実現を目指した参加者である健康歯科協会と、医療系(薬事法や、医療機器

等)とはなるべく距離を置きたいチームとの目的の乖離も徐々に明らかになってきら。さらに、この医

療系サービスと、それ以外のサービスを提供する提供者が保有するべき資格が施術毎に異なり、また、

サービスを提供する場所が、診療所(自治体に申請が必要)であることもハードルとなり、さらに、定

期的、継続的に提供したいサービスと、単発で提供可能なサービスとの差異も明らかとなってきた。結

果として IMや APの構築を進めるに従い、大きく2つのチームに分かれる事となった。

一つは、a)健康歯科協会を中心とする脈波変動、アクティブウォーク(運動療法)を実現するチーム

である。このチームは歯科診療の中で切らない、削らない、冠せないという歯科衛生士のみで実現可能

なサービスを提供する事を目指し、口腔ケア、食アドバイス、運動アドバイス、ストレスチェックの4

種のサービスを定期的、継続的に提供する事を目指している。歯科衛生士と管理栄養士は歯科医師と比

較して人月単価が安いため、自由診療で安い価格でサービスを提供する事が可能となる。

もう一つは、b)ネイル、ハンド、フットマッサージ、アクティブウォークと脳波を活用する単発のス

トレス解消、リラックスを実現するサービスを提供するチームである。こちらはもとの想定通り、脳波

を測定し必要な施術に分類するというものである。

現段階で、a)について、食のアドバイス(管理栄養士が提供)について、より具体化するため、再度

IM と APを実施し、a)に組み込んだうえで、ビジネス化の検討を行っている。

サービスモデル a)は、主として歯科医療分野で推進されている口腔内(歯周病)の状態と全身の状態(生

活習慣)を同時に改善していく事で、各個人が、重篤な状態に陥らないことを目指す。いずれも免疫機

能を強化する事につながり、それを唾液の成分(疲れ成分や歯周病菌の種類・数)で評価するサービス

となる。運動や食のアドバイスおよび脈波によるストレスチェックは生活習慣を改善するためのツール

として取り扱う。

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今回 IM+APにより、限られたデータの中でデータ利活用議論を実施するというフェーズを通過する事

で、以下の2点のメリットがあったと考える。

〇一般的なビジネスプラン構築のスキームでは得られない、個々の事業者の都合や乖離点、合意でき

る範囲、できない範囲等が明確になった結果、当所1つの事業体を想定していたチームで、2つの事業

化を目指す事となった。

〇世の中に、運動・食のアドバイスを行うサービスは数多くあり、歯周病の治療を行う歯科診療所も

多数存在する。一方で、これを組み合わせ、統合的に効果を評価するサービスは存在しない。IMDJによ

り、データの不整合がない状態でこの連携サービスを検討できたことは非常にメリットがあったと考え

る。

現在提供を想定しているサービス内容を取り纏めたものを図 7-1に掲載した。今後2~3か月程度で、

主として顧客開拓を主とした事業内容の検証を行い、会社立ち上げを実施する予定である。

図 7-1 提供を想定しているサービス内容

支援事業⑤

ICTCO加盟企業である、株式会社リトルソフトウェアをコア企業として、同社が保有する感性分析技術

を用いた、自転車の街乗り時のサービスのビジネス化に向けた検討を支援する案件である。スタート時

点でこの構想はコア企業のみのものであったが、コア企業では本支援事業を通じてビジネス・サービス

としての具体化の検討と、他社との協同事業化を望んでいた。

コア企業の要望に沿い、コア企業及びプラットフォーマで分担して地図提供会社、地図情報を利用し

たサービス提供会社およびシステム開発会社などに参加を呼びかけ検討を開始した。

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支援のプロセスについては本文中に記載の通り、初回はコア企業から自社が持つ感性分析技術や自転

車の街乗りへのビジネス展開のイメージを参加企業に共有した後、1時間程度の APで同ビジネスイメー

ジの要求分析と必要な DJ の想定を行った。2回目・3回目では短い IM と AP を繰り返し実施している。

繰り返しにより、ゴールの探索が進み、データや変数への着目度も徐々に高まり、データ利活用につい

て具体的な検討ができたと考える。ただし、コア企業を除く参加各社からの DJ の提示は十分ではなく、

この点では課題があった。

ワークショップにおける最終アイデアとして、「ユーザーは自転車の街乗りをする際に有用な情報の

提供を受けながら、自転車で訪れた場所における日記(SNS)と脳波等各種バイタルの情報を一緒に記録

することで自分らしさを発見できる」ということを目指したサービスが考案された。

当該のサービスで収集されるデータを基にした今後の展開として、地域におけるリラックスやストレ

スを感じるポイントを分析して行政などが活用できるようにすること等も想定している。ただし、その

ようなことが実現に至るためにはユーザーの協力・利用が前提であり、データ利活用を考える上でユー

ザーのメリットに基づくサービス検討が初めになされたことは有用だと考える。

上記の検討にあたるワークショップでは、ビジネス検討の幅を狭めないために、データだけではなく

ステークホルダーを分析シナリオの構成要素に含めて検討を行った。データのみを対象とする分析シナ

リオプランニングでは、分析シナリオの中に人や企業(の役割や活動)が存在しづらい。そのため、テ

ーマによってはビジネスアイデアが「データを分析し結果を提示して完結する」Web アプリケーションの

ようなサービスに偏りがちである。しかし、実際のビジネスでは、データと人の関わり方を含む一連の

プロセスを記述することが望ましいケースがある。以下は、DJ と変数を可視化する関係性マップで、デ

ータのみを対象とした場合とステークホルダーを含めた場合の例である。

図 7-2 DJの関係性マップ

図 7-3 DJとステークホルダーの関係性マップ

IMDJプロセスでは DJと変数からビジネスアイデアの創出・分析シナリオを構築している。また、データ

自身も何らかの1次情報を分析・組み合わせて得られている場合があり、インプットとアウトプットに

よって定義できる。人や企業も、「何かの情報を得て、思考や活動が変わり、結果として状況や環境が

変わることで、活動を変える」というように関数的に捉えれば、DJ のようにエージェントジャケットと

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して表現することができる。本支援事業においてはこうした手法を用いて、データと人の関わりも含む

一連のデータ利活用シナリオを作ることを目指した。

<その後の経過と展開>

IMDJプロセスによる一連のワークショップ終了後、コア企業は地図情報を活用したサービス展開会社

等に対し、協働事業提案を行っている。また、時間の都合によりワークショップ内では十分に検討する

ことができなかったビジネスモデルについても、継続して検討がされている。データや技術が先行で検

討が始まった本案件だが、サービスの具体的な想定が進むことで、ビジネスやオペレーションの観点か

らいくつかの問題や対応すべきことが見えてきている。

参加企業らによる問題の提起

・マーケット規模を考えると、自転車ユーザーだけを対象にする事でよいのか。歩行者も対象にでき

るのではないか。

・脳波だけで情報は十分なのか。リラックスやストレス評価は、もう少し多様な情報から収集すべき

ではないか。これは提供するサービスの根幹にかかわる評価指標に関する精度の問題。

・現状の脳波計では運動時の常時装着に難がある。これはデータ収集の精度の問題。

・地図会社やレンタル会社は、この自分発見ツールだけで収益を得るという構造を見出しにくい。自

転車を販売するための付加的サービスとして無料提供するのであれば、考えられる。地図会社も、ど

こで収益を得るのか、その収益ポイントが見出しにくい。これは顧客開拓上の問題。

・ ルート選定機能(アルゴリズム)が不十分。どのような指標でルートを選定するのかについては、

メンバーに専門家が居らず検討が不十分でないか。

ビジネス実現に向け、参加企業らではこれらの問題について、以下の方針で対応することとなった。

問題的により修正された内容

・自転車ユーザーのみでなく、歩行者も対象とする。

・脳波だけでは、リラックス/ストレスを評価するのに不十分。心拍変動、環境音、臭い香りの情報

を収集する事とする。

・プロダクトデザイナーと連携し、常時装着可能な脳波センサーを開発する事とする。心拍変動や環

境音については、スマホに装備されているカメラ、マイクにて収集する。

・3つの顧客ターゲットを新たに選定した。

個人ユーザー:自分発見ツールとして活用するユーザー。

企業ユーザー:まちなかのリラックスポイントやストレスポイントに出店したいサービスを持つ企

業。例えば、別記の YouCARE ユニットの出店ポイント選定ツールとして活用する等を想定。

自治体ユーザー:まちづくりへの活用。戦略的なリラックスポイントの構築や、ストレスポイント

の解消、観光ルート・散歩ルートの構築等を想定。

・ ルート選定については、プラットフォーマから技術ホルダーを紹介し、メンバーとして参加する。

こうした対応により、支援対象企業らでは、プラットフォーマによる支援終了後もデータを利活用した

ビジネスの実現に向けて活動を進めている。

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なお、これらの活動の発展系として、コア企業が加盟する ICTCO(中野区産業振興推進機構)内に、中野

区を実証フィールドとした、「人間情報・健康」に着目した様々なデータを収集し、それを活用した新

たな事業立上げを行う体制ができることとなった。同体制では、中野区内の様々な場所における音、臭

い・香り、人間が体感するストレスやリラックスの情報を収集・蓄積し、プラットフォームとして個人

情報を保護した状態で、個人ユーザー、企業ユーザー、自治体ユーザーにこうしたデータ・情報を提供

していくことを想定している。

図 7-4 中野人間情報・健康プラットフォーム 構成概要

支援事業⑧

一般社団法人信州オープンビジネスアライアンス(以下、SOBA)に加盟している企業らの農産物直売

所向けのソリューション拡充を支援した案件である。

SOBAは、長野県塩尻市が推進している「信州オープンソースソフトウェア(OSS)推進協議会」の活動

を起源として独立した長野県内 IT企業の協業連合組織であり、小規模企業が集まって協業できる場や枠

組み(協働型受託開発、協働型ソリューション企画開発)を提供し、大手 IT企業にしかなし得なかった

IT サービスを提供できることを目指している。今回の中心となる企業は、SOBAの農産物直売所研究会・

農産物直売所向けソリューション検討チームに所属するシステム開発会社等4社である。検討メンバー

のリーダーは、平成26年度事業のワークショップへの参加者であり、かつメンバーには農家兼業の個

人事業主が含まれていた。メンバー構成として本事業での分析手法の経験者、対象市場の理解者もおり、

儲かる農業を目指したソリューション実現に向けた参加者らのモチベーションも高かった。

同社らは、農産物直売所を対象とした協働型ソリューションの企画開発を行っている。農産物直売所

は、農家への売り場の場所貸し形式となっているのが一般的で、欠品や売れ残りが頻繁に発生している。

こうした課題に対し、同社らでは需給状況を見える化するソリューションを企画・構築しており、2016

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年 4 月からサービスを開始する予定である。本支援支持事業では、このサービスの二の矢・三の矢を放

つため、サービス拡充の検討支援をしている。

参考:参加企業らが提供を予定している農産物直売所向けソリューション

【プレスリリース】農直管理システム(仮称)の開発

http://officepdj.jp/data/20151211_PDJ_press.pdf

サービス拡充の具体的な内容は定まっていなかったものの、チーム全体としての方向性はほぼ決まっ

ており、また各参画企業にはそれぞれの思惑もあったことから、本文中に記載の通り以下の流れでワー

クショップを実施した。

① 関係性マップを用いた課題意識の共有

② AP実施

③ IMによるデータ結合方法の構築

④ 実現に向けたデータ・ステークホルダーの追加調整

ワークショップは2日程に亘り実施したが、①と②を1日程目で、③と④を2日程目で実施した。

1回のワークショップは5時間程度とし、それぞれのワークショップ前には宿題を課すなどして、当日

のワークショップの機会を有効活用できるようにした。

1日程目のワークショップでは、様々な課題認識やソリューションの方向性が出される中、大きな方

向性としては、「需要(農産物直売所への来店)の予測」と「隠れた需要を掘り起こすための情報提供」

というアイデアに収斂し、それらを APにて具体化することとした。

2日程目のワークショップでは、特に、「隠れた需要を掘り起こすための情報提供」をするためのデ

ータソースを検討し、消費者目線での情報提供するための幾つかのキーワードやデータソースを抽出す

ることができた。また、データ利活用のシナリオを効果的に進めるために、本論中で述べた「DJの動詞

化」などのワークも実施したが、これらも有効に機能したものと考えられる。

また、ワークショップ参加企業の当初の課題意識と期待は、以下のようなものであった。

「同業種・異業種との関わりあいの密度が低い、地方都市における ICTソリューション作りについては、

単一の企業の中でクローズに行われるケースが多く、イノベーションに繋がりにくい。それを解決する

ために当法人が設立し、地域の IT団体として寄り集まり、ソリューションの企画開発活動を展開する方

向に進んでいるが、それでも企業集約数には大きく制限を受け、マスイノベーションにつなげることは

難しい状況である。今回の活動では、『異業種・他業種とのかかわりあいの場』を期待しており、特に、

現在企画している農産物直売所のイノベーションに関係するデータソースを明確にし、そのデータホル

ダー探しや関係の構築の支援に期待したい。」

そこで1回目のワークショップには、様々な視点からの議論が行えるようソリューション検討チーム

以外からも塩尻市などに参加協力を得て、それらを実行に向けて具体化を諮る2回目のワークショップ

は、検討チームメンバーのみで行うこととした。また、ワークショップ後には、検討チームとプラット

フォーマとの役割分担を決め、プラットフォーマ側では、データホルダーの抽出を担うこととした。デ

ータホルダーとしては、東京に本社のある企業や地域の食文化に関する先進的な研究を行う地元大学の

先生などを探し出し、検討チームに繋げることができており、今後、更なる検討を進めていく準備が整

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いつつある。また、順次観光関連のデータホルダーにも触手を伸ばすことで、更なるソリューション拡

大を狙っていく予定である。

このような活動や支援を行うことで、参加企業からは、以下のような良い評価を得ることができた。

・メンバーのまとまった時間を確保し、手法に裏付けられたアクションプラニングの活動を行うことで、

単純なハッカソン活動ではない具体的なビジネスモデル案を案出することができた。

・現在、プラットフォーマたる事務局の皆さんには、データホルダー候補の拾い出しや、コネクション

探しなどを積極的に展開いただいているが、どれも単独の地方企業には難しいアクションアイテムで

あり、当プロジェクトの最終的な成果である「ビジネス化」への誘導をいただけた。

最後に地域活性化を担う SOBA の担当者より、地域活性化も睨んだ DDIを推進する上で、もっと必要な

支援や機能などについてもヒアリングを実施したので、その内容を記述しておく。

・地方にはその地方なりに IT化ビジネスのニーズやシーズがある。それを具体化するためには、アイデ

アの創出だけでなくファンドも必要である。また、創り出したビジネスモデルを運用するだけの組織

体力も必要である。これらを地方企業単独で回すことも非常に困難であり、比較的体力のある都市企

業との連携が欠かせない。よって、全国的に DDIを推進してゆくためには、「都市部だけに偏らない、

地方だけに肩入れしすぎない、地方と都市部とのデータとビジネスモデルの交流が必要」と考えられ

る。

・企業マッチング活動はとかく「アイデアのあるベンチャーを大企業やファンドが支援する」形式にな

りがちだが、DDIを発端とした地方創成を進めるためには、「地方のアイデアを拾い上げ、都市部の企

業がファンド面や技術面で支援する仕掛け」を展開する必要があると考える。関係する協議会運営な

どで、この点を工夫いただければより良い全国活動に展開できると思う。

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7.2. IMDJ の標準プロセスと

平成26年度調査事業で具体化されたビジネスシナリオ

平成26年度調査事業に続き、本事業でも利用した Innovators Marketplace® on Data Jackets (IMDJ)

の標準プロセスについて解説すると共に、平成26年度調査事業で具体化されたビジネスシナリオの概

要を記載する。

プロセス①:データジャケットの収集

Data Jacket(以下、DJと表記する)とは、あるデータがどのようなデータであるのかを説明・要約し

たメタデータであり、データそのものを共有するのではなく、データの概要のみを他者と共有する仕組

みである。東京大学の大澤教授らが 2013年に提案し、既にシステマティックな収集実施が進行している。

既存のデータあるいは収集中のデータに含まれる概要や変数、データ形式、共有可能な範囲、期待す

る利用価値(分析成果など)の概要を DJとして記述することで、データの中身を公開せずとも、データ

駆動型イノベーションのためのシナリオ立案に必要な最小限の情報を公開することが可能となる。その

データがどのような形式のもので、誰がどのような意図で取得したのか、またデータ取得にかかったコ

ストや期待する分析成果などを理解することが可能になる。この技術により、データの中身を公開する

ことなく、データに関する情報を理解することができる。

さらに、DJに記述されたメタデータをテキストマイニングツール(KeyGraph®など)を用いて分析する

ことで、人間だけでなく計算機においても可読となり、データ間の関連性を可視化することが可能とな

る[25]。この手法の利点として以下に示すような特長を挙げることができる。

各 DJ間の公開可能変数を元にデータの関連性を可視化することで、データの利用価値を判断す

る主体である人間の発想を支援することが可能となる。

DJの登録時点で期待できるデータの利用価値を記入することによって、以下のプロセス②から

新たに提案されるデータ利用方法の有用性や新規性等も評価して DJ提供者へのフィードバック

が可能となる。さらに、このフィードバックは、データを持ちながらも他社にはデータ提供し

ていないデータ保有組織がデータを他社と共有する動機付けとしても働く。

上記の期待される利用価値は、データ保有組織からの要求としての以下のプロセス②に投入し、

アイデアを引き出すドライブフォースとすることもできる。その結果、データ保有組織の希望

にかなうデータ分析技術や利用シナリオがフィードバックされる可能性も期待できる。

Web経由で DJを入力する仕組みは、既に上記の大澤研究室で実装され、収集実施から可視化、

ゲームの実施以降に至るまでのノウハウが蓄積されている。

このように、データの利用価値の明確化や理解が進めば、データ保有組織のデータ公開に対する動機

づけにもつながることが、これまでの調査研究から明らかとなっている。

プロセス②:IMDJの実施(DJ 結合によるアイデア創出)

Innovators Marketplace® on Data Jackets(以下、IMDJと表記する)は、様々な DJの関連を可視化

した関連性マップからデータの利用価値を策定し、イノベーションを促進するためのワークショップ型

/ゲーム型の方法論である。IMDJの前身である Innovators Marketplace([8] 、邦称は「イノベーショ

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平成26年度補正 先端課題に対応したベンチャー事業化支援等事業

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ンゲーム」[23]であるが国際的にはこの名称、以下 IMと表記する)はアイデア発想に必要となる基礎的

な情報の収集から、ワークショップにおけるアイデア発想、そして精緻化というアイデア収束プロセス

全体を含めた、イノベーションを促進させる方法である。古典的なアイデア発想法とは異なり、計算機

と人間の協創により、意思決定において重要な事象を発見し、その事象をチャンスとして意思決定に利

用するというモデルをもとに設計されたゲーム形式の創造技法である。

IMでは,テーマに応じて集められた情報群(データ)から,コンピュータを用いた可視化ツールによ

り関連性マップを作成する。すなわち、既存の技術に関する情報のひとつひとつを関連性マップ上でノ

ードとして可視化し、ノード間の関連性も同時に可視化することによって、それを見た参加者は技術に

関するキーワードを組み合わせ、意思決定において重要な判断材料となる事象や状況を検討しながらビ

ジネスに関するアイデアを創造していく。

図 7-5 関係性マップの例4

この IMはゲーム形式となっており、そのことが参加者の動機付けに役立つ。参加者は、それぞれに持つ

社会的な役割により様々な角度からアイデアを吟味し、実現可能性や有用性をゲーム中の架空の通貨に

よって評価する。そして多くの収入を得ると勝利するというゲームの性質によって、有益なアイデアが

生き残っていくという淘汰の仕組みが働く。また、IMは専門家やビジネスパーソン、研究者との効果的

なコミュニケーションの場としての役割も果たす。発散的にアイデアを創出するだけでなく、ゲーム中

のコミュニケーション及び淘汰作用による収束的思考を用いて消費者の要求を考慮したアイデア創出を

支援するのが IMの特徴である。

IMを開発した大澤研究室を起点として、IMの関連性マップにデータの関連性を表出させることにより、

データの組合せから有用なデータを発見するワークショップとして IMの派生である IMDJが実施されて

いる。IMDJでは DJの仕組みを導入し、データ同士の関連性を可視化させた関連性マップを用いてデータ

間のつながりの理解を促進させ、データの利用方法や利用価値策定の支援を行うことが可能である。

4 Keygraph®により作成。実際のワークショップでは黒丸部分には実際に登録された DJのタイトル名が掲

載されているが、一般公開できない DJのタイトルも含まれているため、上図では DJタイトルは分類名

で表記している。

車両情報

閲覧履歴

企業情報

企業情報

地価調査

SNS

設置場所

設置場所

広告配信

広告配信

アンケート危険度マップ

危険度マップ

設置場所

気象情報

使用ログ

プロープデータ

販売情報車両情報

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図 7-6 要求を考慮したデータ間のつながりの理解によるアイデア創出

プロセス③:実行動を促すためのアクション・プランニング(アイデアのシナリオ化)

シナリオとは、データなどから導かれた客観的な情報を元に、将来起こり得ることが予想される事象

やそれに応じた行動を系列化したものである。

人間はこのシナリオを読み解き、判断し、意思決定を行う。プロセス③では、IMで創出されたデータ

利活用アイデアを実現するために必要となる、変数や要素の関連性、リスクを洗い出し、意思決定を行

う際に生じる盲点をなくし、実行動を促すシナリオを策定する。

データに基づく意思決定のためのシナリオ創出には2つの段階が存在する。1つは意思決定の元とな

る分析結果を得るための分析シナリオプランニングであり、もう1つは分析結果をビジネスとして実現

/成立させるための戦略シナリオの生成である。「アクション・プランニング(以下、APと表記する)」

はこれら2つのシナリオを創出するために、東京大学大澤研究室で提案されてきたシナリオ創出手法で

ある。

前者の分析シナリオプランニングは IMにて創出されたデータ活用アイデアに用いられた DJから、DJ

に記述された変数を元に分析方法の検討を行う。このため、プロセス②でアイデアを出した人が元のア

イデアの説明をしたり、分析結果を利用する人が必要な分析結果の粒度や精度を要求したりすることに

よって分析方法を精緻化していく。このようにして、期待する結果を得るために必要な分析方法を評価

し選定するとともに、欠けている変数や新たなデータの存在を表出化させ、粒度の異なるデータ同士の

整合性についても検討を行う。これらはプロセス②で得られた段階では思いつきとも言えるデータ利活

用アイデアを実際に利活用できる分析シナリオとするために必須であり、現在までにこのステップから、

実用性や実行可能性の高いシナリオが生成され、成果をもたらしている。

後者の戦略シナリオのプランニングは主としてデータの分析・可視化等の結果を元に意思決定を行う

ビジネス実践者によって行われ、IMにて創出されたデータ活用アイデアを実現する上で必要なリソース

(分析技術、人的資源、時間配分、資金配分等)を論理的に検討していく段階を指す。データ活用アイ

デアを実現するために必要な要素を表出化させ、時系列や収益性、ステークホルダーの関連性などの適

切な系列化を行うことで、新ビジネスを実行する際の意思決定上の盲点とリスクを低減し、実行動を促

す戦略的なシナリオの創出を目的としている。

要求を提示し アイデア提案DJを組み合せて

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APの中で、実際に使用可能なリソースとの整合性も視野に入れることによって、データ利活用アイデ

ア自体の改訂も行われる。IMでは検討外となっていた有用なデータが検討に加わったり、検討外となっ

ていた分析手法が考慮されたりするなどの効果も得られることがこれまでの成果から分かっている。更

に、プロセス①・②で示されていたよりも本質的な潜在的要求、より実現性の高いデータの利用方法や

実現に影響を及ぼすステークホルダーの存在が明らかになるなどの効果も得られてきている。このため、

このプロセス③の段階ではデータの分析・可視化・加工などを行う情報技術者やデータの分析・可視化

等の結果を元に意思決定を行うビジネス実践者を中心としながらも、DJの提供者、データの所有者、デ

ータの利用方法(プロセス、ソリューション仮説等)の提案者を含むプレーヤーを適応的に追加しつつ

進めることが望ましい。

なお、Web上でのオンラインコミュニケーションではなく、対面式の卓上ゲーム型で行うワークショッ

プである理由を説明しておく。これまで、対面型の卓上ゲームとして実施するワークショップと並行し

て、イノベーションゲームのコミュニケーションや共有される関連マップ等の情報可視化を Web化し、

遠隔地から参加可能とした手法についても、実験を進めてきた。その結果、製造業を中心として一定の

発想支援効果は見られた[14],[15]。一方、Web上でのイノベーションゲームは卓上対面式と比較すると

発言数は向上するものの発言内容に責任感が乏しく、結果として実現可能性に乏しいアイデアが量だけ

多数集まる傾向が見られた[24]。よって、実現可能なビジネスシナリオを検討するためには、対面式の

卓上ゲーム型で行うワークショップであることが望ましい。

以上が、IMDJの標準的なプロセスである。平成26年度調査事業では、3つの議論テーマを設定し、

公募をかけたところ、54社、103名の参加、全 85件の DJ提供(DJを提供した企業は 54社中の 38社)

があり、そこから 82のビジネスアイデアが生まれた。ここで生まれたビジネスアイデアの 65%は複数の

組織の DJを組み合わせたアイデアであり、組織・分野を超えたビジネスアイデア創出プロセスの有効性

が確認できた。また、最終的には、12個のアイデアを具体的なビジネスシナリオに落とし込んでおり、

高い評価を得ているものもあった(表 7-1)。

図 7-7 平成26年度調査事業 実施の様子

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表 7-1 平成26年度調査事業で具体化されたビジネスシナリオの概要

シナリオNo. ビジネスシナリオ概要 データ概要情報(データの種類)

プローブデータ

購買履歴データ

プローブデータ

購買履歴データ

使用ログデータ

気象データ

購買履歴データ

SNSデータ

使用ログデータ

気象データ

購買履歴データ

経路探索ログ

車両計測データ

住宅地図

【追加DJ】プロープデータ

経路探索ログ

購買履歴データ

使用ログデータ

営業活動履歴データ

SNSデータ

閲覧ログ

会員データ

健康データ

勤怠記録

SNSデータ

スキルデータ

ヘルスケア3自宅にどういうアレルゲンがあるかといった情報を提示し、アレルゲンに対する対処方法のレコメンド情報の提供や、自動的に家がアレルゲンを解消してくれるサービス

【追加DJ】アレルゲン情報データ

購買履歴データ

アンケートデータ

モニター行動記録データ

閲覧ログ

位置情報データ

医師のスキルや設備、待ち時間などの情報を考慮した自分に合った病院を見つけるサービス

ヘルスケア4高齢者の見守りサービスだけではなく、食事や日々の健康状態のチェックから高齢者へ健康で長生きするためのコーチングをするサービス

観光4

実際の外国人旅行者がどういうルートで旅行し、それによってどういった評価を得たかといった情報から、今までは出てこなかった新しい観光情報をフェイススケールで表現することで、多国籍間にサポートするコンシェルジュサービス

ヘルスケア1健康な人にインセンティブを与える会社・社会の創生のために、健康モニタリングデータと疫学データを研究者に開放し、生活習慣から個人の将来の健康寿命(年齢)を診断するクラウドサービス

観光1混雑状況を把握した上で、外国人各個人の好みにあった観光情報をリコメンドしてくれるサービス

観光2外国人に対して、行動のデータを元にして、新しい観光スポットを発見して、それらの観光情報を旅行会社等に提供するコンサルティングサービス

ヘルスケア2

観光3

小売・物流1店舗の配送状況と、一般人の運転手の状況をマッチングするプラットフォームを構築して、一般の手の空いている運転手に業者の代わりに荷物を配送をしてもらえるような場を提供するサービス

小売・物流2地域内のピザやそばなどの各店舗の宅配配送員のリソースの空き状況を把握し、多種店舗間で配送員がリソース調整できるようにさせて地域配送を最適化するサービス

外国人旅行客(富裕層)に宿泊先で(個人に合わせた商品サンプルで)日本の製品を試して購入できるようにするホテルのショールーム化サービス&その利用・購入データの販売事業

小売・物流3

ビールの本数をモニタリングすることができるスマートビールホルダーを無料で配布して、各家庭に冷蔵庫に設置してもらい、消費者の生活スケジュールなどを基にビールがなくなりそうなタイミングで消費者にお知らせして発注できるサービス

小売・物流4小売店向けのプライベートCRMとして、天候予測情報とHEMSの生活情報などから、最適なタイミング・商品の買い物ができるようにするレコメンドするプロモーションシステム。

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以下に、平成26年度調査事業で具体化されたビジネスシナリオから2つの例を記載する。

例1)「小売・物流2:地域配送サービス」のビジネスシナリオ

概要

地域内のピザ屋やそば屋などの各店舗の宅配配送員のリソースの空き状況を把握し、多種店舗

間で配送員がリソース調整できるようにすることで地域配送を最適化するサービス。

初期アイデアにおける要求と創出されたアイデア

要求分析

プローブデータ購買履歴データ

組み合されたDJ

ロジスティクスの最適化、地域活性化を目指したい

要求

地域内のピザ屋やそば屋などの各店舗の宅配配送員のリソースの空き状況を把握し、多種店舗間で配送員がリソース調整できるようにすることで地域配送を最適化するサービス

創出されたアイデア

地域の配送サービス最適化

<消費者 側>早く、安く届けて欲しい

・混んでいると待たされる・配達時に在宅の必要あり

・まとめて配達して欲しい・待たずに、都合の良い時に届けて欲しい

地域配送リソースのシェア・「忙しくても待たせない」で顧客満足度アップ

・需要の変化に応じた供給側のデリバリーをサポート

・リソースの空き・不足を解決・クラウドでリソース情報を共有管理

・多忙時の機会ロスを減らしたい・閑散時の空きリソースを有効活用したい(利益も欲しい)

・閑散時の顧客獲得チャンスを拡大したい(他社配達時に宣伝)

・配送リソースがない、または余っている

・空いたリソースは利益を生まない

<配達サービス業者 側>配送の人手、配送員を雇うコストを減らしたい

アイデア名・概要 顕在欲求

顕在欲求の背景要因 潜在要求 潜在要求を考慮したアイデア概要

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要素表出化:ステークホルダーマネジメント

要素表出化:リソース・コスト管理

要素表出化:4P 要素

・消費者・多忙な店舗/配送リソース

が不足している業者

• 配送リソースが余っている業者 閑散時に空きがでる業者 リソースのみ保有する業者も可(個人タクシーなど)

• 商店組合 互助精神で賛同 集団で加盟してもらえる可能性あり

• 位置情報を提供する消費者 在宅状況を把握するため

• 配達員 働く機会の減少 労働密度(負荷)が高くなる

• 配送形態等が異なる店舗 配送形態、運ぶ物が違うため集積効果なしとの判断

• 同一業種の店舗 ライバル店舗の商品は運びたくない

• 消費者(一部) 別業者による配達に心理的抵抗感

• 気象データ提供会社 天気セールなどの販促のため(付加サービス)

需給バランスを天気で予測(運営側で必要)

• 地理情報提供会社 最短経路探索のため(付加サービス)

• システム・アプリ開発会社

• 配送リソースを全く持たない店舗 来客のみの店舗は相対的にサービス低下(有償で加盟を認めるべきか否か)

• 宅配便専門業者 小包の利用が増えた場合は競合となる

ターゲット 内部の協力者 内部の反対者・障壁

外部の協力者 外部の反対者・障壁

1年(都内の1エリアで試験展

開、その後拡大)

3千万円基本システム開発費

(リソース調整・クラウドアプリ等)

・リソース調整システム・天気情報による需要予測

モデル・最適経路検索システム

配送車用スマートフォンOR ビーコン

・店舗データ・地理情報データ・気象データ

・自動車プローブデータ(加入店舗より)

POSデータ(加入店舗より)

実現にかかる時間 実現にかかる予算 技術

資材(設備) データ・情報

事業者向け:リソースシェアアプリ・近くで空いているリソースが分かる・空いているリソースで小遣い稼ぎ

消費者向け:地域商材情報サイト・①すぐに、②まとめて、③在宅時に届けて

くれる地域サービスがわかる

店舗に月額の会員費(1,000円/月)

他社リソースの利用料(300円/回)

*消費者は無料で利用可

都内の店舗のあるエリアに対し、

クラウドのウェブサービスを展開(PCサイト・スマホタブレットアプ

リ)

・地域情報誌・掲示板等でエリアマーケティング

・経済活性化でプレスPR/行政からの後押しも期待

店舗へのDM or ポスティング・商店組合単位で人海営業活動

Product Price

Place Promotion

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要素系列化:実現までのプロセス

要素系列化:アイデア実現のゴール

実施内容:賛同店舗募集(モデル)目標50件

ステークホルダー:店舗、商店組合等

リソース:営業員、プロモーションツール

期間:3ヶ月

予算:100万円

実施内容:データ入手

ステークホルダー:情報提供会社

リソース:店舗情報、地理情報、気象情報

期間:1週間

予算:50万円

実施内容:システム開発

ステークホルダー:システム・アプリ開発会社

リソース:クラウド

期間:4ヶ月

予算:2000万円

実施内容:実運用、フィードバック

ステークホルダー:加盟店舗、運営管理母体

リソース:加盟店舗からのデータ、運営管理・検証者

期間:3ヶ月

予算:750万

実施内容:エリア拡大、プロモーション

ステークホルダー:店舗、商店組合、消費者

リソース:営業員、プロモーションツール、広告費

期間:1~4ヶ月

予算:1000万円

実施内容:第2次フェーズ機能拡充(最適配達提案システム等)

ステークホルダー:システム開発会社

リソース:蓄積したデータ、アナリスト

期間:3ヶ月

予算:1000万円

実施内容:第3次フェーズコンサルティングサービス等

ステークホルダー:店舗、コンサルタント

リソース:

期間:

予算:

ゴール1.1商業圏(参加店舗50件)で

実運用を完了

ゴール2.モデル事業をベースに全国展開

ゴール3.サービスから得られるデータから最適配達提

案システム等の機能拡充

総期間:

約1年(11~14ヶ月までに

全国展開)

総予算:

5000万円(開発費:3000万

運用費750万/年想定)

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要素系列化:収益モデルフロー図

要素系列化:システムフロー図

多忙/配達リソース不足

店舗

店舗(次期)

エンドユーザ○リソース分配システム

○多忙時も待たずに配達

○地域商材情報サイト・地域商材一括購入アプリ

¥月額固定費

¥利用料の1割

¥月額固定費

○最適配達提案システム(追加)

サービス提供事業者(クラウド)

配達に空きのある

店舗

地理情報会社気象会社

○地理データ等

¥データ利用料○配達リソース

¥利用料の9

繁忙時の機会ロスの減少要員確保が不要

余剰リソースの有効活用配達時に自社の宣伝

¥月額固定費

○リソース分配システム

他社の商品を運ぶことのリスク対応①月額固定費の一部から保険料を充当②評価ポイントを導入(評価システムによりクレームが入れば配達業者のポイントが減る)

推定市場規模 市場全体の推定利益額

1.7億円 1億円強

規模の仮定

対象エリア : 都市部 エリア内の業者数 : 50軒 全国エリア数 : 200エリア サービスを利用する業者数 : 50(軒)×200エリア=10,000軒 平均して3割の業者が一日3回のサービスを利用すると仮定

サービス事業者が得られる利益

固定費 : 1,000円/月 1,000(円/月)×12(月)×10,000(軒)=1.2億円/年

利用料 : 300円/回(うち90%配送業者、10%サービス事業者) 300(円/回)×10%×3(回/日)×200(営業日)×10,000×30%≒5400万円/年

消費者 共同配達店舗確認 地域の商材一括購入

出勤簿データ

店舗の繁忙度やリソース(車、人)の空き状況を管理

店舗の位置関係、配達状況を加味した最適な配達を提案

地理情報データ

• 地図• 渋滞、運転時間

自動車プローブ

• 配車ステータス• 車両位置情報

POSデータ

• 注文情報

• リソース状況

リソース分配システム(フェーズ1)

最適配達提案システム(フェーズ2)

リアルタイムの各種情報の分析に基づく

需要予測

観光客の属性・嗜好DB

・属性・嗜好・観光スケジュール<STEP2からは情報精度向上>

各店舗のリソースDB

・店舗情報・注文状況・リソース状況

地域商材情報サイト

地域商材注文サイト 近隣イベント情報

• 場所、日時• イベント内容

気象データ

• 場所、時間• 気象

地域の配達とリソースの

状況を集計

各店舗へ下記提供 リアルタイムな情報(渋滞、天候、イベントによる混雑)を使った需要予測

最適なリソース所有のコンサルティングサービス

各店舗 リソースの調達依頼 リソースの提供了承

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例2)「ヘルスケア4:個々の高齢者が何をモチベーションにどういった購買行動を起こしているのか

を個々人の趣味のデータ、行動のデータを用いて判定し、行動予測する」のビジネスシナリオ

概要

高齢者の見守りサービスだけではなく、食事や日々の健康状態のチェックを通して高齢者が健

康で長生きするためのコーチングをするサービス。

初期アイデアにおける要求と創出されたアイデア

要求分析

購買履歴データアンケートデータモニター行動記録データ

閲覧ログ位置情報データ

組み合されたDJ

高齢者が購買行動を起こすための動機付けについて知りたい

要求

高齢者の見守りサービスだけではなく、食事や日々の健康状態のチェックを通して高齢者が健康で長生きするためのコーチングをするサービス

創出されたアイデア

アイデア名・概要 顕在欲求

顕在欲求の背景要因 潜在要求 潜在要求を考慮したアイデア概要

個々の高齢者が何をモチベーションにどういった購買行動をおこしているのかを個々人の趣味のデータ、行動のデータを用いて判定し、行動予測する

日々の生活を豊かに暮らしたい 家族に迷惑をかけたくない 健康で長く生きたい

高齢者見守りサービス

見守られる側の視点

見守る側の視点

自分の食生活・運動に自信がない

さみしい

家族の安否確認を行いたい 独居が増えた 高齢者の事故・緊急対応の必要性

誰かとコミュニケーションをとりたい 自分に合った運動・食事を知りたい 社会参加したい(価値確認)

家族が突発的なトラブルに巻き込まれたくないどこ(位置)何をしている(身体の状態)感情の状態(楽しい等)

が知りたい

ビーコンを使って活動量を計測し管理する

かかりつけ栄養士・看護師による生活サポート

食事の嗜好に応じた料理教室・食事会

(いわゆる「見守りサービス」に対するニーズ)

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要素表出化:ステークホルダーマネジメント

要素表出化:リソース・コスト管理

要素表出化:4P 要素

要素系列化:実現までのプロセス

ターゲット 社内の協力者 社内の反対者・障壁

社外の協力者 社外の反対者・障壁

健康意識のある高齢者 家族

アプリ開発者 交渉者(営業)

訴訟リスクを考えた反対意見(うまくいかなかった時のブランド毀損)

行政 自治会、町会長 看護師、栄養士 通信キャリア アプリ運用会社 アプリ開発会社 スーパーマーケット

このサービスを受けられない人・地域(妬みのようなもの)

ターゲット高齢者の一部(既成概念、疑い)

不健康な人を相手にする既存の事業者

実現にかかる時間 実現にかかる予算 技術

資材(設備) データ・情報

実施地域・協力企業募集 栄養士、看護師募集 アプリ開発

1年

4000万円 ビーコンのセンシング

サーバ スマホ、タブレット ビーコン 集まる場所 公民館など

ビーコン反応したデータ 車両の乗車情報 食事情報(ログ) 運動情報(ログ) 購入履歴(スーパーなど)

Product Price

Place Promotion

高齢者向け生活コーチングサービス

広告料 自治体補助 利用料 ¥500~¥1,000

OB看護師の巡回等

人対応

+ クラウド 専任担当者

アプリケーション 実際の場所の提供(→コミュニティ形成) 地道にチラシ アプリ講習(→イベント連動)

ひとりでも楽しく暮らせる 人のつながり

「良さ」アピールの方向性

実施内容: ステークホルダー:

リソース:

期間:

予算:

実施内容: ステークホルダー:

リソース:

期間:

予算:

実施内容: ステークホルダー:

リソース:

期間:

予算:

実施内容: ステークホルダー:

リソース:

期間:

予算:

・実証エリアの選定・協賛企業の募集

栄養士・看護師募集

アプリ開発

アプリ運用

行政・ローカル企業

行政、自治会

アプリ開発会社

アプリ運用会社

営業

営業

サーバ、スマホ、タブレット、ビーコン

サーバ、スマホ、タブレット、ビーコン

6ヶ月2,000万円

6ヶ月1,000万円

平行

実施内容: ステークホルダー:

リソース:

期間:

予算:

実施内容: ステークホルダー:

リソース:

期間:

予算:

実施内容: ステークホルダー:

リソース:

期間:

予算:

実施内容: ステークホルダー:

リソース:

期間:

予算:

プロモーション

サービス改善⇒本稼働

他エリア展開

マザーズ上場

行政、ローカル企業、広告代理店

サービスユーザ、行政、ローカル企業

行政、ローカル企業

店舗、公共施設、折込チラシ

アプリログ、(グループディスカッション)

営業

3ヶ月

500万円

3ヶ月

500万円

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要素系列化:アイデア実現のゴール

要素系列化:収益モデルフロー図

要素系列化:システムフロー図

総期間:

総予算:

実証地域でのアプリ・サービス本稼働 1年

4,000万円

推定市場規模(2025年)

一般ユーザ(高齢者)

生活コーチングサービス提供事業者

データ販売先データ提供者

栄養士

看護師

ビーコン業者

通信キャリア

アプリ開発者スポンサー

自治体

コミュニティを作る!

生活コーチング&コミュニティサービス

料理教室 食事会

スポーツジム カップリング

生活コーチングサービス

サービス利用料

○ 食事内容チェック 定期的な問診 サービス情報提供

例)

広告○

¥データ使用料

データ提供

調剤薬局 健保

データ提供

○¥

データ使用料

¥報酬

業務支援○

¥報酬

受託・技術協力等

食事チェック

ヘルスチェック

【市場規模推定】

65歳以上(2025年)3,657万人 800万人

サービス料¥500/月× 4億円/月

(健康高齢者 80%)

(1都3県)

48億円/年

48億円(12ヶ月)

1,000万人(全国) (10%)

80万人

データ提供元事業者A データ提供元事業者B スーパーマーケット

保険会社 大手スポーツジム スーパー 自動車メーカー

ID変換テーブル

会員購買履歴

•会員情報•購入明細情報•商品情報•店舗情報

運動に関するデータ

•ユーザID•運動の種類、運動量•場所、日付•緯度・経度

会員マスタ

•ユーザID•性別・年齢•住所•ユーザセグメント

地図データ

•緯度・経度•ルート•高低•ジオコード

学習済みデータ

•ユーザセグメント•おすすめする商品カテゴリ

生活者の興味関心に関するデータ

•カテゴリ毎、記事毎アクセス数•ページ滞在時間•同一人物のアクセス履歴

保有モニターの食品購買・調理・消費記録

•購買(時期、場所、商品)•調理用途、調理物、調理時期•使用回数

生活者調査データ

•属性データ、家族情報•携帯キャリア、ペット、車、•バイク、オンラインショッピング•サイト内回遊情報

@スーパーのユーザID @passportID

@アプリのユーザID

@ユーザID@ユーザID

@ユーザID

@緯度・経度

@ユーザセグメント

(食事)(運動) (運転)

(購買)(購買)

食事記録

•ユーザID•年月日、時分秒•写真•製品名 •緯度・経度

スマホアプリにおける車両の位置情報つき走行データ

•車両ID•乗車日時•速度、燃料消費量

•緯度・経度

■おすすめ食事(購買)レコメンド

家計簿のデータ

•購入した商品名•商品販売価格•販売店舗情報•使用金額

•購入日

スマホアプリからの購買履歴

•商品情報•店舗情報•ユーザ情報•チェックイン情報

•受注情報

他社連動

アプリ・サービス内

(機械学習)

■地図上にマッピング

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平成26年度補正 先端課題に対応したベンチャー事業化支援等事業

(データ利活用促進支援事業:データ駆動型イノベーションを実行するプラットフォーム・プロセス支援) 報告書

KOZO KEIKAKU ENGINEERING Inc. 69

8. 参考文献

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[2] Deloitte LLP, Open growth: Stimulating demand for open data in the UK,

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en-data-in-the-uk.html (2012)

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Role-based Game plus Action Planning, International J. on Knowledge and Systems Science (2013)

[4] KDnuggets : Datasets for Data Mining and Data Science,

http://www.kdnuggets.com/datasets/index.html, (2015)

[5] Liu, C., Ohsawa, Y., and Suda, Y., Valuation of Data through Use Scenarios in Innovators'

Marketplace on Data Jackets, in Proc. IEEE International Conference on Data Mining MoDAT :

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[6] Ohsawa Lab: Data Jacket Project, http://www.panda.sys.t.u-tokyo.ac.jp/hayashi/djs/djs4ddi/,

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[10] Ohsawa, Y., Kido, H., Hayashi, T., and Liu, C., Data Jackets for Synthesizing Values in the

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[11] Ohsawa, Y., Liu, C., Suda, Y., and Kido, H., Innovators Marketplace on Data Jackets for

Externalizing the Value of Data via Stakeholders’, Requirement Communication, in Spring

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Advancement of Artificial Intelligence, Stanford University, CA, USA(2014)

[12] Ohsawa,Y., Hayashi,T., and Kido, H., Restructuring Incomplete Models in Innovators

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Springer Verlag (2016発刊予定)

[13] The home of the U.S. Government’s open data https://www.data.gov/, (2015)

[14] Wang, H., and Ohsawa, Y., Innovation support system for creative product design based on

chance discovery, Expert Systems with Applications 39, 4890-4897 (2012)

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平成26年度補正 先端課題に対応したベンチャー事業化支援等事業

(データ利活用促進支援事業:データ駆動型イノベーションを実行するプラットフォーム・プロセス支援) 報告書

KOZO KEIKAKU ENGINEERING Inc. 70

[15] Wang, H., Ohsawa, Y., iChance: A Web-Based Innovation Support System for Business Intelligence,

International Journal of Organizational and Collective Intelligence 2 (4), 48-61 (2011)

[16] ロナルド・A.フィンケ,トーマス・B.ウォード, 創造的認知-実験で探るクリエイティブな発想の

メカニズム, 森北出版株式会社, (2014)

[17] 横山, 菅原, 草野: データマネジメントプラットフォーム DMP入門, Impress R&D, (2013)

[18] 橋田:分散 PDSによる個人データの自己管理:Japlo Year Book pp.143-151, (2013)

[19] 経済産業省: 「データ駆動型イノベーション創出に関する調査事業」報告書,

http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/001102.pdf, (2015)

[20] 経済産業省: IoT推進コンソーシアムデータ流通促進ワーキンググループ,

http://www.iotac.jp/wg/data/, (2016)

[21] 経済産業省: 消費データの戦略的活用の促進に関する調査報告書,

http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2014fy/000949.pdf, (2014)

[22] 大澤幸生: データジャケット - 創造的コミュニケーションのあるデータ市場のために - , 人工知

能, Vol. 29, No. 6 (2014 年 11月) pp. 622-629

[23] 大澤幸生:イノベーションの発想技術, 日本経済新聞社(2013)

[24] 大澤幸生, 小橋りさ: 日用品企画実験における対面・Web上の議論の効果比較 ~ 提供者と受容

者の相互作用モデルの部分的検証として~ マーケティングジャーナル 122, 19-23 (2011)

[25] 大澤幸生, Nels E. Benson, 谷内田正彦: KeyGraph:語の共起グラフの分割統合によるキーワード

抽出, 電子通信学会誌論文誌 J82-D1 No.2, pp. 391-400, (1999)

■登録商標について

イノベーションゲームは、東京大学大澤幸生教授の登録商標です。

(日本:登録商標第 5335291 号)

Innovators Marketplaceは、東京大学大澤幸生教授の登録商標です。

(日本:登録商標第 5354657号、米国:Reg.No.4072825)

KeyGraphは、東京大学大澤幸生教授の登録商標です。

(日本:登録商標第 5586796 号、米国:Reg.No.4435146)